しかし、プラスチックの材料をリサイクルしようとするときに、種類の異なるプラスチックが含まれると、特許文献2に記載の廃棄プラスチックの比重分離方法にも示されるように、プラスチックの種類ごとに分別する必要があった。したがって、OPETなどの延伸フィルムを基材層とした場合に、PET以外の材料を用いてシートを形成すると、リサイクルの際には異素材を分離する必要があり、リサイクルが困難となっていた。
また、多層シートを形成する際に層間接着に接着剤を用いた場合は、再生されるプラスチックに接着剤が混入することは望ましくないためリサイクルの前に接着剤を除去する必要があり、リサイクルを困難にしていた。
そこで、本発明は、上記のような課題を解決することを目的に、基材層に延伸フィルムを用いながらも、シーラント層を無延伸フィルムとすることでリサイクル可能な袋容器を提供する。
本発明に係る袋容器は、多層のシート材料からなる袋容器であって、前記多層のシート材料は、シーラント層を形成する無延伸PET層と、前記無延伸PET層に重ねられ、基材層を形成する延伸PET層とを備え、前記無延伸PET層は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層であることを特徴とする。また、本発明に係る袋容器は、多層のシート材料からなる袋容器であって、前記シート材料は、シーラント層を形成する無延伸PET層と、前記無延伸PET層に重ねられ、基材層を形成する延伸PET層とを備え、前記無延伸PET層と前記延伸PET層とは、熱ラミネーション加工により積層されていることを特徴とする。
前記無延伸PET層は、例えばAPET層とすることができる。また、上述の袋容器の無延伸PET層は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層とするとよい。無延伸PET層をグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層とした場合、リサイクル可能としつつ、これに加えてシール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現した袋容器を提供することができる。
また、前記延伸PET層は、前記基材層を形成するとともに、前記無延伸PET層に積層される面と反対側の面にインクが印刷される装飾層を構成してもよく、前記インクは前記延伸PET層から除去されてもよい。
これらの袋容器によれば、無延伸PET層をシーラント層として熱溶着し、延伸PET層を基材層又は基材層としての装飾層として袋容器が形成される。この袋容器において、層間接着に接着剤を用いず、熱ラミネーション加工により無延伸PET層と延伸PET層とが積層されている。これにより、接着剤が袋容器を構成するシートに用いられることがなく、袋容器のリサイクルが容易となる。
また、延伸PET層と無延伸PET層とを分離し、無延伸PET層だけをリサイクルすることもできる。これらのように、この袋容器によれば、装飾層に延伸PET層を用いながらも、シーラント層を無延伸PET層とすることでリサイクル可能な袋容器を提供することができる。
さらに、延伸PET層にインクが印刷されるとき、印刷されたインクは、リサイクルを不能にするが、無延伸PET層に積層される面と反対側の面に印刷されているため、化学薬品等を露出した面に直接反応させて延伸PET層からリサイクル前に除去することができる。これにより、多層シートは、接着剤もインクも含まないため、リサイクルが容易となる。
または、延伸PET層からインクを除去しない場合であっても、延伸PET層と無延伸PET層を分離し、無延伸PET層だけをリサイクルすることもできる。したがって、この袋容器によれば、装飾層に延伸PET層を用いながらも、シーラント層を無延伸PET層とすることでリサイクル可能な袋容器を提供することができる。
上述のとおり、無延伸PET層をシーラント層とした場合、接着剤を用いることなく熱溶着(ヒートシール)により袋容器として成形することができる。ここで、無延伸PET層をAPET層として、APET層と延伸PET層(例えばOPET層)とを熱ラミネーション加工によりシート材として成形するに際し、熱履歴が加えられる。また、APET層と延伸PET層とがシート材として成形された後に袋容器として成形される際、さらに熱溶着(ヒートシール)が行われる。
ここで、シート材を袋容器に成形する際、シール性(ヒートシール性)が低下することが発見された。このようなシール性低下の問題は、熱ラミネーション加工の際の熱履歴によるものであると推測される。このようなシール性低下の問題の改善について、本発明の発明者がさらに検討したところ、無延伸PET層を、APETとグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(いわゆるGPET)とを混合して成形されるPET層とすれば、リサイクル可能としつつ、さらに熱履歴によるシール性低下の問題を改善することができるとの知見に至った。
そのため、本発明の袋容器は、前記無延伸PET層が、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層とするとよい。これにより、本発明の袋容器は、リサイクル可能としつつ、シール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現することができる。
本発明に係る他の袋容器は、多層のシート材料からなる袋容器であって、前記シート材料は、シーラント層を形成する無延伸PET層と、前記無延伸PET層に重ねられ、装飾層を形成する延伸PET層とを備え、前記延伸PET層は、前記無延伸PET層に積層される面にインクが印刷されており、前記無延伸PET層は、前記延伸PET層に中間層を介して重ねられ、前記中間層は、前記無延伸PET層に残存することなく、前記無延伸PET層と前記延伸PET層とを剥離可能に結合することを特徴とする。
この袋容器では、無延伸PET層をシーラント層として熱溶着し、延伸PET層を装飾層として袋容器が形成される。この袋容器において、無延伸PET層は、前記延伸PET層に積層される面に、前記無延伸PET層に残存することなく、前記無延伸PET層と前記延伸PET層とを剥離可能に中間層が形成されているため、無延伸PET層と延伸PET層とを剥離しても、無延伸PET層にインクおよび中間層の材料が残ることはない。
そのため、この袋容器は、無延伸PET層から延伸PET層を剥離して、インクの残らない無延伸PET層をリサイクルすることができる。したがって、この袋容器によれば、装飾層に延伸PET層を用いながらも、シーラント層を無延伸PET層とすることでリサイクル容易な袋容器を提供することができる。
上述の袋容器は、無延伸PET層を、APET層とすることができる。また、上述の袋容器の無延伸PET層は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層とするとよい。無延伸PET層をグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層とした場合、リサイクル可能としつつ、これに加えてシール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現した袋容器を提供することができる。
前記無延伸PET層と前記延伸PET層とは、接着剤を用いずに、熱ラミネーション加工により積層されていてもよい。そのようにすれば、無延伸PET層から延伸PET層を簡易に剥離でき、インクの残らない無延伸PET層を分離して、無延伸PET層のみリサイクルすることが可能になる。
前記無延伸PET層と前記延伸PET層とは接着剤加工により積層されていてもよい。そのようにすれば、無延伸PET層と延伸PET層、印刷層および接着剤層との間にはコーティング層が介在しているため、無延伸PET層と延伸PET層とを剥離しても、無延伸PET層に接着剤が残ることはない。これにより、インクおよび接着剤の残らない無延伸PET層を分離して、無延伸PETのみをリサイクルすることが可能になる。
本発明に係る袋容器のリサイクル方法は、シーラント層を形成する無延伸PETシートと、基材層を形成するとともにインクが印刷されて装飾層を構成する延伸PETシートとが積層された多層のシート材料から形成される袋容器において、前記無延伸PETシートを前記延伸PETシートから剥がす分離工程と、分離した前記無延伸PETシートを再利用する袋容器のリサイクル工程とを含むことを特徴とする。また、この無延伸PETシートは、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層であってもよい。
この袋容器のリサイクル方法によれば、分離工程により、インクを印刷されていない延伸PETシート又はインクを印刷された延伸PETシートが無延伸PETシートから剥がされ、無延伸PETシートをリサイクルすることができる。したがって、この袋容器によれば、基材層又は基材層としての装飾層に延伸PETシートを用いながらも、シーラント層を無延伸PETシートとするリサイクル容易な袋容器を提供することができる。
上述のリサイクル方法に係る袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができる。
本発明に係る袋容器のリサイクル方法は、熱ラミネーション加工により無延伸PETシートと延伸PETシートとが積層された多層のシート材料から形成されている袋容器において、前記シート材料をそのまま再利用するリサイクル工程を含むことを特徴とする。また、この無延伸PETシートは、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層であってもよい。
上述のリサイクル方法に係る袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができ、この無延伸PETシートは、ヒートシール可能なPETシートを含んでもよい。
この袋容器のリサイクル方法によれば、同じポリエチレンテレフタレート(PET)を原料とする無延伸PETシートと延伸PETシートとを再生し、かつ、これらはポリエチレンテレフタレート(PET)以外の材料を用いずに、熱ラミネーション加工により積層されているため、単一の原料により構成される袋容器から、同じ単一の原料へとリサイクルすることができる。したがって、この袋容器によれば、シーラント層を有する多層のシート材料から形成されていながらも、リサイクル容易な袋容器を提供することができる。
本発明に係る袋容器のリサイクル方法は、熱ラミネーション加工により無延伸PETシートと延伸PETシートとが積層されたシート材料から形成され、前記OPETは前記無延伸PETシートに積層される面と反対側の面にインクが印刷されている袋容器において、前記延伸PETシートからインクを除去する除去工程と、インクを除去された前記シート材料を再利用するリサイクル工程とを含むことを特徴とする。また、この無延伸PETシートは、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPET層であってもよい。
この袋容器のリサイクル方法によれば、無延伸PETシートをシーラント層として熱溶着し、延伸PETシートを装飾層として形成された袋容器において、延伸PETシートに印刷されたインクは、リサイクルを不能にするが、無延伸PETシートに積層される面と反対側の面に印刷されているため、化学薬品等を露出した面に直接反応させて延伸PETシートからリサイクル前に除去することができる。これにより、多層シートは、接着剤を含まず、インクも除去されるため、袋容器をそのままリサイクルすることができる。したがって、この袋容器によれば、装飾層に延伸PETシートを用いながらも、シーラント層を無延伸PETシートとすることでリサイクル容易な袋容器を提供することができる。
上述のリサイクル方法に係る袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができる。
また、前記除去工程は、前記延伸PETシートと前記インクとの間に洗浄剤を浸透させる浸透ステップと、前記インクを前記延伸PETシートから剥離させる剥離ステップとを含んでもよい。
すなわち、前記浸透ステップによって前記インクが前記延伸PETシートから剥離するための準備を行うことにより、より容易に袋容器のリサイクルを可能とする。
しかも、前記浸透ステップと前記剥離ステップとを分離させることにより、例えば各ステップで異なる溶液を使用することができ、それぞれのステップで溶液を再利用することができる。
本発明に係る多層シートのラミネート方法は、シーラント層を形成する無延伸PETシートと基材層を形成する延伸PETシートとが積層されたシート材料を形成するラミネート方法であって、前記延伸PETシートと前記無延伸PETシートとを準備する準備工程と、前記準備工程の後に、前記延伸PETシートと前記無延伸PETシートとを熱ラミネートする熱ラミネート工程とを含み、前記熱ラミネート工程は、前記延伸PETシート側から加熱して前記無延伸PETシートと積層することを特徴とする。
上述の多層シートのラミネート方法の無延伸PETシートは、APETシートとすることができる。また、本発明に係る多層シートのラミネート方法は、シーラント層を形成するとともにグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートである無延伸PETシートと、基材層を形成する延伸PETシートとが積層された多層のシート材料を形成するラミネート方法であって、前記延伸PETシートと前記無延伸PETシートとを準備する準備工程と、前記準備工程の後に、前記延伸PETシートと前記無延伸PETシートとを熱ラミネートする熱ラミネート工程とを含み、前記熱ラミネート工程は、前記延伸PETシート側から加熱して前記無延伸PETシートと積層する、ラミネート方法であってもよい。
また、前記延伸PETシートが、前記基材層を形成するとともに装飾層を構成し、前記準備工程は、インクを印刷された前記延伸PETシートを準備するステップを含んでもよい。
この多層シートのラミネート方法によれば、シーラント層を形成する無延伸PETシートと基材層又は基材層としての装飾層を形成する延伸PETシートとが熱ラミネートにより積層されて、多層のシート材料が形成される。ここで、本願発明者は、熱ラミネート工程において、シーラント層を形成する無延伸PETシート側を加熱してラミネートすると、ラミネートされた多層のシート材料において、無延伸PETシートをヒートシールしようとした場合にシール強度が低下することを発見した。
したがって、熱ラミネート工程において、無延伸PETシート側から加熱することなく、延伸PETシート側から加熱することで、シール強度の低下を抑制した多層のシート材料を形成することができ、このシート材料により、ヒートシール加工による袋容器を製造することにより、基材層又は基材層としての装飾層に延伸PETシートを用いながらも、シーラント層を無延伸PETシートとするリサイクル容易な袋容器を提供することができる。
本発明に係る袋容器は、無延伸PETシートと、前記無延伸PETシートに積層される延伸PETシートとを備える多層のシート材料からなる袋容器であって、前記シート材料は、前記無延伸PETシートをシーラント層、前記延伸PETシートを基材層とし、前記無延伸PETシートは、シーラント層となる内側に、嵌合部と、前記嵌合部に嵌合する被嵌合部とを形成され、前記嵌合部と前記被嵌合部とが嵌合することによりチャックされることを特徴とする。
この袋容器は、無延伸PETシートに設けられた嵌合部と被嵌合部とが嵌合することによりチャックにより封止可能である。嵌合部と被嵌合部は、少なくとも無延伸PET層との境界を、PET材料を主とする材料により作製され、またはシート材料に直接加工することにより、異素材を無延伸PETシートに取り付けることなく、無延伸PETシートに形成されている。そのため、無延伸PETシートは、嵌合部と被嵌合部を備えたままリサイクルすることができる。したがって、基材層に延伸PETシートを用いながらも、シーラント層を無延伸PETシートとするリサイクル容易な袋容器を提供することができる。
上述の袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができる。また、上述の袋容器は、無延伸PETシートを、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとするとよい。無延伸PETシートをグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとした場合、リサイクル可能としつつ、シール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現した袋容器を提供することができる。
本発明に係る袋容器は、無延伸PETシートと、前記無延伸PETシートに積層される
延伸PETシートとを備える多層のシート材料からなる袋容器であって、前記シート材料
は、前記無延伸PETシートをシーラント層、前記延伸PETシートを基材層とし、前記
多層のシート材料は、袋容器の開口と略並行に延在する少なくとも1つの折目部とを備
え、前記折目部を折り曲げることにより開口を閉鎖することを特徴とする。
この袋容器は、無延伸PETシートに設けられた折目部に沿って袋容器を開口側から折り曲げることにより、開口を封鎖することができる。無延伸PETシートは、罫線加工が可能であるため、折り曲げることができ、さらに、ホールド性に優れるため、折り曲げられた状態を維持することができる。
上述の袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができる。また、上述の袋容器は、無延伸PETシートを、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとするとよい。無延伸PETシートをグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとした場合、リサイクル可能としつつ、シール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現した袋容器を提供することができる。
本発明に係る袋容器は、無延伸PETシートと、前記無延伸PETシートに積層される延伸PETシートとを備える多層のシート材料からなる袋容器であって、前記シート材料は、前記無延伸PETシートをシーラント層、前記延伸PETシートを基材層として積層され、前記シート材料は点字部を備える。
この袋容器によれば、シート材料が主にPET材料で形成されているため、PET材料のホールド性を利用して、点字部を確実に形成することができる。したがって、この袋容器は、シート材料が点字部を備えるため、点字による情報を伝達することができる。
上述の袋容器は、無延伸PETシートを、APETシートとすることができる。また、上述の袋容器は、無延伸PETシートを、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとするとよい。無延伸PETシートをグリコール変性ポリエチレンテレフタレートとAPETとを混合して成形されるPETシートとした場合、リサイクル可能としつつ、シール性の低下を抑制して良好な熱溶着を実現した袋容器を提供することができる。
本発明によれば、基材層又は基材層としての装飾層に延伸PETフィルムを用いながらも、シーラント層を無延伸PETフィルムとすることでリサイクル可能な袋容器を提供することができる。
[第1の袋容器]
本発明の実施形態に係る第1の袋容器100について図1~3を用いて説明する。袋容器100は、角底袋の一形態であるボックスパウチ(登録商標)である。ボックスパウチ(登録商標)は、例えば、2つのローラシートを切断、折り曲げ加工および熱溶着加工(ヒートシール)等して形成できる。なお、図3は、説明を容易にするために、厚さを誇張して示されている。
袋容器100は、図1および図2に示すように、袋容器100の一対の正面部120が対向し、底面部140が、両正面部120の下端から連続して両正面部120の下端を繋ぎ、一対の側面部160が、両正面部120の側端から連続し、両正面部120の側端を繋ぐように形成される。袋容器100の底面部140および側面部160は、ガゼット部(マチ)として機能する。
なお、ボックスパウチ(登録商標)は、正面部120を他の形状に形成されていてもよく、例えば、キャラクターの形状に正面部120を形成し、正面部120の周辺を接合することで、そのキャラクターが直立したような印象を喚起する袋容器100を形成できる。
正面部120と側面部160とは、それぞれの周辺が重ね合わされ、熱溶着加工により接合された接合部181を備える。また、正面部120と底面部140とは、それぞれの周辺が重ね合わされ、熱溶着加工により接合された接合部182を備える。さらに、側面部160と底面部140とは、それぞれの周辺が重ね合わされ、熱溶着加工により接合された接合部183を備える。
袋容器100の各接合部181、182、183は、各面部の周辺に形成され、袋容器100の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部181、182、183は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。そのような袋容器100の製袋を可能とする装置として、例えば、特開2011-67997に記載された製袋機がある。
袋容器100の側面部160は、上下方向延びる第1の折目191と、第1の折目191の途中から分岐するように一の斜下方および他の斜下方に延びる第2の折目192とを有し、第1の折目191と第2の折目192とでY字状の折目が形成されている。さらに、底面部140は、長手方向に延びる第3の折目193を有する。各折目191、192、193は、いわゆる罫線加工がされている。しかし、折目は罫線加工されることなく、折り曲げられていてもよい。
罫線加工されることにより、折目に沿ってシート材料100sを容易に折り曲げることができる。側面部160は、第1および第2の折目191、192に沿って折り曲げられることにより、V字状に袋容器100の内側に折り込み可能に形成されており、不使用状態のときに袋容器100を折り畳み可能とされている。
袋容器100に使用される各シート材料100sは、図3に示すように、シーラント層を形成するAPET層102(無延伸PET層)と、APET層102に重ねられた基材層を形成するOPET層104(延伸PET層)と、OPET層104に重ねられた印刷層106とから構成される多層シートである。したがって、シート材料100sは、APET層102、OPET層104、印刷層106の順に重ねられている。なお、本実施形態では、無延伸PET層の一例としてAPET層が採用されたものを示しているが、後述するように無延伸PET層として、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート材料とAPET材料とを混合して成形される混合APET層702を採用してもよい。
シート材料100sは、OPET層104に印刷層106となるインクが塗布され、その後、APET層102と熱ラミネーション加工により重ねられる。これにより、一方の面にAPET層102、他方の面に印刷層106が露出したシート材料100sが形成される。そして、APET層102をシーラント層として熱溶着されて袋容器100が形成され、OPET層104を装飾層としてインクが印刷される。
シーラント層となるAPET層102(無延伸PET層)は、無延伸PETを材料として約80μmの厚みを有する無延伸PETシートである。PET材料の融点は250~280℃程度℃であるが、無延伸PETは、比較的低温で熱溶着可能であることが知られており、熱溶着加工されるシーラント層として用いることができる。また、無延伸PETは、透明性に優れ、耐油性、成形加工性、耐薬品性に優れている。本実施形態において、PET材料は、エチレンテレフタレート単位を80モル%以上含むポリエステルであり、とくにポリエチレンテレフタレートが好ましい。
基材層となり、かつ、装飾層を形成するOPET層104(延伸PET層)は、延伸PETを材料として12μmの厚みを有する延伸PETシートである。延伸PETは、延伸により薄膜化が容易であり、かつ印刷性に優れる。また、延伸PETは、PET材料を成膜後にXYの2軸方向に延伸(2軸延伸)することにより、分子が配向して結晶化し、強度と耐熱性を有する。さらに、延伸PETシートは、寸法安定性、耐薬品性、光学特性(透明性)などのバランスに優れる。これらにより、OPET層104は、APET層102が熱溶着加工されるときでも必要な形状が一定に保たれ、このようなシート材料100sの基材層として用いることができる。
印刷層106は、装飾層であるOPET層104にインクを印刷して形成され、5μm程度の厚みを有する。インクは、強アルカリの溶液により剥離し、かつ耐水性を有する。これにより、通常時にはOPET層104から剥離することなく、リサイクル等の際に強アルカリ性の溶液により剥離して除去できる。
袋容器100は、図2に示すように、APET層102が熱溶着加工されるシーラント層として機能することにより、袋容器100では、シート材料100sの露出するAPET層同士において熱溶着加工により接合される接合部181、182、183を形成している。
ここで、無延伸PETと、延伸PET又は他の合成樹脂とは、溶融温度が異なるため、熱溶着加工が困難となる場合がある。したがって、APET層の露出した面同士が直接接合されていることにより、接合部181、182、183は強固に接合されている。
第1の実施形態に係る袋容器100は、接合部181、182、183を剥がして展開することで複数のシート材料100sに戻すことができ、各シート材料100sは、印刷層106であるインクを除去すれば、APET層102およびOPET層104のPET材料のみとなり、シート材料100sのままリサイクルが可能になる。
また、第1の実施形態に係る袋容器100は、インクが印刷されず、シート材料100sが印刷層106を含んでいなくともよい。このときは、APET層102及びOPET層104のPET材料のみから構成されるため、シート材料100sを分離することなくそのまま再利用することができる。
[第2の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第2の袋容器200について図4を用いて説明する。袋容器200は、第1実施形態に係る袋容器100と同様のボックスパウチ(登録商標)であり、袋容器200の材料となるシート材料200sの層構成のみが袋容器100と異なる。したがって、以下はシート材料200sの層構成のみについて説明する。
袋容器200に使用される各シート材料200sは、図4に示すように、APET層202(無延伸PET層)と、APET層202に重ねられたコーティング層208と、コーティング層208に重ねられた接着層210と、接着層210に重ねられた印刷層206と、印刷層206に重ねられたOPET層204(延伸PET層)とからなる。したがって、シート材料200sは、APET層202、コーティング層208、接着層210、印刷層206、OPET層204の順に重ねられている。
第2の袋容器200のAPET層202(無延伸PET層)は、第1の袋容器100のAPET層102と同様に、無延伸PETを材料として約80μmの厚みを有する無延伸PETシートであり、シーラント層として機能する。
第2の袋容器200のOPET層204(延伸PET層)は、第1の袋容器100のOPET層104と同様に、延伸PETを材料として12μmの厚みを有する延伸PETシートであり、2軸延伸により形成され、基材層として機能する。
印刷層206は、OPET層204にインクが印刷されて形成される。インクは、従来よく知られる、合成樹脂用のインクである。第2の袋容器200においては、リサイクル時にインクの除去が考慮されないため、除去可能なインクに限定されない。印刷層206の厚さは、印刷されるインクの塗布量により調整される。
接着層210は、APET層202とOPET層204をドライラミネート可能な接着剤から形成される。接着剤としては、例えば、2液型ウレタン接着剤を用いることができる。接着層210は、印刷層206が形成されたOPET層204の上から塗布される。接着層210の厚さは、接着剤の塗布量により調整される。
コーティング層208は、APET層202に対して接着層210を界面剥離させる熱可塑性樹脂から形成される。コーティング層208は、OPET層204に印刷層206を挟んで形成された接着層210の上から、熱可塑性樹脂が塗布されて形成される。コーティング層208は、他の層と比較して非常に薄く形成されている。コーティング層208と接着層210は、APET層202とOPET層204とを剥離可能に結合する中間層として機能する。
第2の袋容器200は、第1の袋容器100と同様に、APET層202が熱溶着加工によるシーラント層として機能することにより、各面部が露出する無延伸PETフィルム層同士において熱溶着加工により接合されて形成される。
第2の袋容器200では、コーティング層208により接着層210がAPET層202に対して界面剥離することにより、APET層202側に接着剤等が残存することなく、APET層202のみを分離することができる。これにより、PET材料のみのAPET層202をシート材料200sから分離してリサイクルすることができる。
本実施の形態において、コーティング層208と接着層210の2層により中間層を形成したが、中間層は、APET層202に残存することなく、APET層202とOPET層204とを剥離可能にする結合するものであれば単層であってもよし、三層以上であってもよい。
[第3の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第3の袋容器300について図5を用いて説明する。袋容器300は、第1および第2の袋容器100、200と同様の形態のボックスパウチ(登録商標)であり、袋容器300の材料となるシート材料300sの層構成のみが袋容器100、200と異なる。したがって、以下はシート材料300sの層構成のみについて説明する。
袋容器300に使用される各シート材料300sは、図5に示すように、APET層302(無延伸PET層)、APET層302に重ねられたコーティング層308、コーティング層308に重ねられた印刷層306、印刷層306に重ねられたOPET層304(延伸PET層)からなる。したがって、シート材料300sは、APET層302、コーティング層308、印刷層306、OPET層304の順に積層されている。シート材料300sは、第2の袋容器200と異なり、接着層を備えず、熱ラミネート加工により積層される。
第3の袋容器300のAPET層302(無延伸PET層)は、第1および第2の袋容器100、200のAPET層102、202と同様に、無延伸PETを材料として約80μmの厚みを有する無延伸PETシートであり、シーラント層を形成する。
第3の袋容器300のOPET層304(延伸PET層)は、第1および第2の袋容器100、200のOPET層104、204と同様に、無延伸PETを材料として12μmの厚みを有する無延伸PETシートであり、2軸延伸により形成され、基材層を形成する。
コーティング層308は、APET層302に対してインク層を界面剥離させる熱可塑性樹脂から形成される。コーティング層308は、OPET層304に印刷された印刷層306に熱可塑性樹脂が塗布されて形成される。コーティング層は、PET層の密着性を向上させるアンカー効果を有していてもよい。コーティング層308は、他の層と比較して非常に薄い。
印刷層306は、OPET層304にインクが印刷されて形成される。インクは、従来よく知られる、合成樹脂用のインクである。第3の袋容器300においては、リサイクル時にインクの除去が考慮されないため、除去可能なインクに限定されない。印刷層306の厚さは、印刷されるインクの塗布量により調整される。
第3の袋容器300のシート材料300sは、無延伸PETシートに、印刷層306およびコーティング層308を塗布された延伸PETシートが熱ラミネート加工により積層されることにより形成される。これにより、コーティング層308は、APET層302とOPET層304とを剥離可能に結合する中間層として機能する。
第3の袋容器300は、第1および第2の袋容器100、200と同様に、APET層302が熱溶着加工によるシーラント層として機能することにより、各面部が露出する無延伸PETフィルム層同士において熱溶着加工により接合されて形成される。
第3の袋容器300では、コーティング層308が界面剥離することにより、APET層302側にインクが残存することなく、APET層302のみを分離することができる。これにより、PET材料のみのAPET層302をリサイクルすることができる。熱ラミネート加工により積層したシート材料300sは、接着剤により接着した場合より容易に分離することができる。ただし、コーティング層308は、熱ラミネート加工による積層を強固にする作用を有する。
[第4の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第4の袋容器400について図6を用いて説明する。袋容器400は、平袋の一形態である三方袋である。三方袋は、一対の矩形のシートが開口を除いた3辺で熱溶着されて形成される。
袋容器絵400は、第1の袋容器100のシート材料100sと同様の層構成を有するシート材料400sが矩形に切断され、両側辺および底辺が相互に熱溶着加工により接合された接合部481,482を有する。接合部481,482は、シート材料400sの露出したAPET層同士が直接接合されている。袋容器400の各接合部481,482は、矩形のシート材料400sの周辺に形成されるため、袋容器400の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。
第4の袋容器400は、図6に示すように、開口部の付近に開口と平行に延在するチャック部420を備える。チャック部420は、シート材料400sの袋容器400の内側となるAPET層402(無延伸PET層)に、嵌合部421と被嵌合部422とを形成することにより設けられる。
嵌合部421は、袋容器400の一方の正面部となるシート材料400sにおいて内側となるAPET層402に直線上に延在する凸状部を形成して設けられる。また、被嵌合部422は、他方の正面部となるシート材料400sにおいて内側となるAPET層402に直線上に延在する凹状部422aを形成して設けられる。
凸状部421aは、凹状部422aに挿入される嵌合部421となり、凹状部422aは凸状部421aを受けて保持する被嵌合部422となることにより、チャック部420が構成される。凸状部421aおよび凹状部422aは、シート材料400sに凸状の部材および凹状の部材を熱加工により取り付けて形成される。
そのような凸状の部材および凹状の部材は、PETを主原料とするPET材料から製作される。凸状の部材および凹状の部材は、PET材料単層から製作されてもよいし、PET材料にPP(ポリプロピレン)のような材料を共押により制作してもよい。また、凸状部421aおよび凹状部422aは、シート材料400sを金型加工等により直接加工して形成してもよい。なお、PET材料として柔軟性に優れた材料で、かつ低融点ポリエステルを用い、凸状の部材および凹状の部材の少なくともいずれか一方を形成すると製作が容易になる。
[第5の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第5の袋容器500について図7を用いて説明する。袋容器500は、袋容器400と同様に、平袋の一形態である三方袋である。第5の袋容器500は、袋容器400のチャック部420に代えて、開口付近に複数の折目部530を備える。袋容器500は、第4の袋容器400と構造、形状、シート材料の層構成等において同じである。以下は折目部530の構成のみについて説明する。
第5の袋容器500は、図7(A)に示すように、開口部Oの付近に開口と平行に延在する折目部530を備える。折目部530部はシート材料500sを罫線加工することにより形成されている。第5の袋容器500は、折目部530を設けることにより開口部O付近の折り曲げが容易になり、PET材料のホールド性と相まって、図7(B)に示すように、開口付近を折り曲げた状態で維持できる。
第5の袋容器500は、一方の正面部となるシート材料500sと、他方の正面部となるシート材料500sとに複数の罫線を形成する。各正面部において複数の罫線は、相互に平行に形成されている。
[第6の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第6の袋容器600について図8を用いて説明する。袋容器600は、袋容器400、500と同様に、平袋の一形態である三方袋である。第6の袋容器600は、点字部640を備える点で袋容器400、500と異なる。また、袋容器600は、チャック部および折目部を備えない。その他、袋容器600は、袋容器400、500と構造、形状、シート材料の層構成等において同じである。以下は点字部640の構成のみについて説明する。
第6の袋容器600は、一方のシート材料600sに複数の点字凸部640aからなる点字部640を備える。点字凸部640aはシート材料600sを金型加工することにより外側に突出するように形成されている。シート材料600sは、PET材料のホールド性により、確実に点字凸部640aを形成することができる。
シート材料600sに形成された点字部640は、複数の点字凸部640aから1つの文字「A」を形成している。しかし、点字部640は、複数の点字凸部640aから複数の文字または文章を形成してもよい。また、従来よく知られる点字の規則にしたがって、文章を形成してもよい。点字部640は指で読み取ることができる。
袋容器400、500、600は、平袋である三方袋を例に説明したが、他の袋容器に適用してもよい。例えば、袋容器100、200、300のようなガゼット袋に適用することができる。また、袋容器400、500、600は、シート材料100sと同様の層構成を有するシート材料について説明したが、シート材料200sまたはシート材料300sと同様の層構成を有するシート材料を適用してもよい。
[第7の袋容器]
次に、本発明の実施形態に係る第7の袋容器700について説明する。袋容器700は、第1実施形態に係る袋容器100と同様のボックスパウチ(登録商標)である。袋容器700は、使用されるシート材料700sの一部が袋容器100のシート材料100sと異なる。なお、袋容器700は、シート材料700sの一部が袋容器100のシート材料100sと異なること以外は、同様の構成とされている。したがって、以下の袋容器700の説明では、シート材料700sの層構成のみについて説明し、他の構成は詳細な説明を省略する。
袋容器700に使用されるシート材料700sは、図9に示すように、シーラント層を形成する混合APET層702(無延伸PET層)と、混合APET層702に重ねられた基材層を形成するOPET層104(延伸PET層)と、OPET層104に重ねられた印刷層106とから構成される多層シートである。したがって、シート材料700sは、混合APET層702、OPET層104、印刷層106の順に重ねられている。
なお、シート材料700sは、シート材料700sを構成する積層のうち、第1実施形態の袋容器100のシート材料100sのうち、APET層102に代えて混合APET層702とされたものであり、OPET層104、及び印刷層106は、第1実施形態の袋容器100のシート材料100sを構成するOPET層104、及び印刷層106と同様の構成である。そのため、以下のシート材料700sの説明では、混合APET層702について説明し、OPET層104及び印刷層106については第1実施形態の説明において用いた符号と同一の符号を用いて説明し、詳細な説明は省略する。
シーラント層となる混合APET層702は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート材料とAPET材料とを混合して成形されるPET層を材料として、約80μmの厚みを有する無延伸PETシートである。なお、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(いわゆるGPET)は、ポリエステルに、エチレングリコールの一定含量をシクロヘキサンジメタノール(CHDM)で代替した、グリコール変性ポリエステルである。PET材料の融点は250~280℃程度であるが、APETやGPET等の無延伸PETは、比較的低温で熱溶着可能であることが知られており、熱溶着加工されるシーラント層として用いることができる。
本実施形態の混合APET層702は、例えばAPETをリサイクルして得られたペレットにGPETの材料を、所定の割合で混合し、融解した後に成形して得ることができる。すなわち、GPETの混合比率を適宜調整して、リサイクルの無延伸PETシートを成形することができる。なお、PETのリサイクルにおいて、ペレットに限らず、フレーク等の種々の状態のPET材料からPETシートを成形することができる。
ところで、第1実施形態の袋容器100では、APET層102とOPET層104とが熱ラミネーション加工される際に熱履歴が加えられる。さらに、熱ラミネーション加工後に袋容器100として成形される際に、シール性(ヒートシール性)が弱くなるといった問題があった。ここで、APET層102に代えて混合APET層702を採用すると、熱履歴によると推測されるシール性の低下が軽減されるとの知見が得られた。そのため、APET層102に代えて混合APET層702を採用した本実施形態の袋容器700は、リサイクル可能としつつ、これに加えて良好なシール性を実現することができる。
なお、本実施形態では、第1実施形態の袋容器100のシート材料100sのうち、APET層102に代えて混合APET層702とした例を示したが、第2実施形態の袋容器200、第3実施形態の袋容器300、第4実施形態の袋容器400、第5実施形態の袋容器500、及び第6実施形態の袋容器600においても、APET層に代えて混合APET層を採用することができる。
例えば、図10に示すとおり、第2実施形態の袋容器200に使用されるシート材料200sのうち、APET層202に代えて混合APET層802としたシート材料800sを用いて袋容器200を形成してもよい。また、例えば、図11に示すとおり、第3実施形態の袋容器300に使用されるシート材料300sのうち、APET層302に代えて混合APET層902としたシート材料900sを用いて袋容器300を形成してもよい。これらの構成により、リサイクル可能としつつ、これに加えて良好なシール性を実現した袋容器を提供することができる。
[第1のリサイクル方法]
本発明の実施形態に係る第1のリサイクル方法S1について、図12を用いて説明する。第1のリサイクル方法S1は、第1の袋容器100をリサイクルする工程について説明する。
なお、以下の説明では、袋容器100をリサイクルする工程を例に挙げて説明するが、本実施形態の第1のリサイクル方法S1は、例えば、袋容器700をリサイクルする方法として用いてもよい。
第1のリサイクル方法S1は、袋容器100をシート材料100sに展開する工程(S1‐1)と、展開されたシート材料100sをチップ片に粉砕する工程(S1‐2)と、粉砕されたチップ片からインクを除去する工程(S1‐3)と、インクを除去されたチップ片を洗浄および脱水する工程(S1‐4)と、洗浄および脱水されたチップ片をペレットに加工する工程(S1‐5)と、加工されたペレットをPET材料として再利用するリサイクル工程(S1-6)とを含む。
まず、袋容器100をシート材料100sに展開する工程(S1‐1)では、使用済みの袋容器100をシート材料100sに展開する。具体的には、袋容器100のヒートシールされた接合部181、182、183を剥がし、折目191、192を伸ばすことにより、袋容器100を複数のシート材料100sに展開する(図2を参照)。
次いで、展開されたシート材料100sをチップ片に粉砕する工程(S1‐2)では、シート材料100sを、従来よく知られる破砕機に投入してチップ片に粉砕する。
次いで、粉砕されたチップ片からインクを除去する工程(S1‐3)では、強アルカリ性の溶液によりチップ片からインクを除去して、PET材料のみからなるチップ片を取り出すことができる。なお、チップ片を構成するAPET層およびOPET層は、アルカリの薬品に対して比較的強い耐性を有し、リサイクル困難とならない程度にチップ片の表面の変質を抑制されている。
ここで、チップ片からインクを除去する工程(S1-3)は、OPET層とインクの間に強アルカリ性の溶液を浸透させる浸透ステップ(S1-3-1)と、例えば水に漬けて攪拌し、インクをOPET層から剥離させる剥離ステップ(S1-3-2)とを含んでもよい。
次いで、インクを除去されたチップ片を洗浄および脱水する工程(S1‐4)では、PET材料のみからなるチップ片を、従来よく知られる洗浄装置に投入してチップ片を洗浄し、洗浄したチップ片を、従来よく知られる分別装置に投入してチップ片のみ分別し(異物を除去し)、分別したチップ片を、従来よく知られる脱水機に投入してチップ片に付着している水分を完全に除去する。
このとき、チップ片からインクを除去する工程(S1-3)が、浸透ステップ(S1-3-1)と剥離ステップ(S1-3-2)とに分かれる場合は、各ステップで異なる溶液を使用することができ、それぞれのステップで溶液を再利用することができる。また、浸透ステップ(S1-3-1)で用いる強アルカリ性の溶液が洗浄および脱水する工程(S1-4)において用いる水などの洗浄媒体に混入しないため、こうした洗浄媒体を回収して再利用することができる。
次いで、洗浄および脱水されたチップ片をペレットに加工する工程(S1‐5)では、洗浄および脱水されたチップ片を、従来よく知られる造粒機に投入してペレットに加工する。このとき、チップ片はPET材料のみから構成されており、また、チップ片は異物を含まないため、ペレットはPET材料のみを含む。
次いで、加工されたペレットをPET材料として再利用するリサイクル工程(S1-6)では、加工されたペレットを、従来よく知られたPETシート製造装置に投入し、PET材料を溶融後に成形してPETシートを製造する。
第1のリサイクル方法S1について第1の袋容器100を対象に説明してきた。しかし、第1のリサイクル方法S1は、印刷層がシート材料の少なくとも一方の面に露出しており、接合部がヒートシールにより接合され、かつシート材料が積層に接着剤を用いないような袋容器であれば、他の袋容器に適用されてもよい。
また、第1のリサイクル方法S1は、インクを除去したPET材料を取得できれば、工程を省略したり、工程を追加したり、工程の順序を変更してもよく、例えば、インクを除去した後に、チップ片に粉砕してもよい。例えば、袋容器をシート材料に展開する工程を省略し、袋容器形状のシート材料を直接、チップ片に粉砕してしてもよい。
なお、袋容器100にインクが印刷されないときは、シート材料100sをチップ片に粉砕する工程(S1-2)を経た後、そのまま、直接チップ片をペレットに加工する工程(S1-5)に進めばよい。
このときは、同じポリエチレンテレフタレート(PET)を原料とするAPET層102とOPET層104とを再生し、かつ、これらはポリエチレンテレフタレート(PET)以外の材料を用いずに、熱ラミネーション加工により積層されているため、単一の原料により構成される袋容器100から、同じ単一の原料へとそのままリサイクルすることができる。したがって、このときの袋容器100によれば、シーラント層であるAPET層を含む多層のシート材料から形成されていながらも、リサイクル容易な袋容器を提供することができる。
[第2のリサイクル方法]
本発明の実施形態に係る第2のリサイクル方法S2について、図13を用いて説明する。第2のリサイクル方法S2は、第2の袋容器200をリサイクルする工程について説明する。
なお、以下の説明では、袋容器200をリサイクルする工程を例に挙げて説明するが、本実施形態の第2のリサイクル方法S2は、例えば、袋容器800をリサイクルする方法として用いてもよい。
第2のリサイクル方法S2は、袋容器200をシート材料200sに展開する工程(S2‐1)と、展開されたシート材料200sからAPET層202を分離する工程(S2‐2)と、分離されたAPET層202をチップ片に粉砕する工程(S2‐3)と、粉砕されたチップ片を洗浄および脱水する工程(S2‐4)と、洗浄および脱水されたチップ片をペレットに加工する工程(S2‐5)と、加工されたペレットをPET材料として再利用するリサイクル工程(S2-6)とを含む。
まず、袋容器200をシート材料200sに展開する工程(S2‐1)では、使用済みの袋容器200をシートに展開する。具体的には、袋容器200のヒートシールされた接合部281、282、283を剥がし、折目291、292を伸ばすことにより、袋容器200がシート材料200sに展開される。
次いで、展開されたシート材料200sからAPET層202を分離する工程(S2‐2)では、展開されたシート材料200sからAPET層202が分離される。具体的には、シート材料200sをAPET層202側とOPET層204側との相対する方向に引っ張ることにより、APET層202がシート材料200sから分離される。このとき、コーティング層208の作用により接着層210がAPET層202に対して界面剥離する。これにより、APET層202に接着剤やインクが残留することなく、APET層202のみを分離できる。
次いで、分離されたAPET層202をチップ片に粉砕する工程(S2‐3)では、分離されたAPET層202を従来よく知られる破砕機にしてチップ片に粉砕する。このとき、APET層202には接着剤やインクの残存がなく、チップ片はPET材料のみからなる。
次いで、粉砕されたチップ片を洗浄および脱水する工程(S2‐4)では、PET材料のみからなるチップ片を、従来よく知られる洗浄装置に投入してチップ片を洗浄し、洗浄したチップ片を、従来よく知られる分別装置に投入してチップ片のみ分別し(異物を除去し)、分別したチップ片を従来よく知られる脱水機に投入してチップ片に付着している水分を完全に除去する。
次いで、洗浄および脱水されたチップ片をペレットに加工する工程(S2‐5)では、洗浄および脱水されたチップ片を、従来よく知られる造粒機に投入してペレットに加工する。このとき、チップ片はPET材料のみから構成されており、また、チップ片は異物を含まないため、ペレットはPET材料のみを含む。そして、加工されたペレットは、PET材料として再利用される。
次いで、加工されたペレットをPET材料として再利用するリサイクル工程(S2-6)では、加工されたペレットを、従来よく知られたPETシート製造装置に投入し、PET材料を溶融後に成形してPETシートを製造する。
上記したリサイクル方法は、シート材料を適切にリサイクルできれば、各工程に対して、順序の変更、追加、削除してもよい。例えば、シート材料を展開することなく粉砕したり、シート材料のままインクを除去した後にシート材料を粉砕するようにしてもよい。
第2のリサイクル方法S2は第2の袋容器200を対象に説明してきた。しかし、第2のリサイクル方法S2は、APET層202のみを分離できれば、他の袋容器にも適用できる。例えば、第3の袋容器300は、熱ラミネートにより積層されているAPET層302のみを分離することができ、第2のリサイクル方法S2を適用することができる。特に、第3の袋容器300は、熱ラミネートによりAPET層302が積層されているため、APET層302の分離が容易となり、リサイクルに適した袋容器といえる。また、第2のリサイクル方法S2は、APETシート(APET層)を分離してPET材料として再利用できれば、工程を省略したり、工程を追加したり、工程の順序を変更してもよい。
[ラミネートシステムおよびラミネート方法]
次に、本発明の実施形態に係るラミネート方法Rについて、図14及び図15を用いて説明する。ラミネート方法Rは、ラミネートシステム1により行われ、第1の袋容器のシート材料100sを形成する例について説明する。
なお、以下の説明では、第1実施形態の袋容器100のシート材料100sを形成する場合を例に挙げて説明するが、本実施形態のラミネート方法R及びラミネートシステム1は、例えば、袋容器700のシート材料700sを形成するものとして用いてもよい。
ラミネートシステム1は、APETシート12sの原反12を装着され、原反12からAPETシート12sを送り出す第1の送出装置20と、OPETシート14sの原反14を装着され、原反14からOPETシート14sを送り出す第2の送出装置30と、APETシート12sとOPETシート14sとを貼り合わせるラミネート装置40と、第1および第2の送出装置20、30から送り出されたPETシートをラミネート装置40に案内するガイド50と、ラミネート装置40によりラミネートされたシート材料100sを巻き取る巻取装置60とを備える。
第1の送出装置20に装着される原反12に巻かれるAPETシート12sは、無延伸PETを材料として約80μmの厚みを有する無延伸PETシートである。また、第2の送出装置30に装着される原反14に巻かれるOPETシート14sは、延伸PETを材料として12μmの厚みを有する延伸PETシートである。また、OPETシート14sは、APETシート12sが積層される面と反対側の面に印刷層106が形成されている。
ラミネート装置40は、ゴムローラ42と金属ローラ44とを備え、ゴムローラ42は、APETシート12s側からAPETシート12sを金属ローラ側44に向けて押圧しながら回転し、金属ローラ44は、OPETシート14s側からOPETシート14sをゴムローラ42側に押圧しながら回転することにより、APETシート12sとOPETシート14sとをラミネートする。ゴムローラ42と金属ローラ44の押圧力および回転速度は、ラミネート条件として適宜調整できる。
ラミネート装置40は、ゴムローラ42および金属ローラ44の少なくともいずれか一方を加熱可能に構成されている。したがって、ラミネート装置40は、APETシート12sとOPETシート14sとを加熱しながら積層、すなわち熱ラミネートすることができる。ゴムローラ42および金属ローラ44の少なくともいずれか一方を加熱する温度は、ラミネート条件として適宜調整できる。
ガイド50は、第1および第2の送出装置20、30から送り出されるAPETシート12sおよびOPETシート14sを重ねるようにラミネート装置40に案内する。また、巻取装置60は、シート材料100sを所定の張力をかけながら巻き取る。第1および第2の送出装置20、30の送り速度および巻取装置60の巻き取り速度を調整することで、ラミネート速度は、ラミネート条件として適宜調整できる。
本発明の実施形態に係るラミネート方法Rは、図15に示すように、APETシート12sの原反12およびOPETシート14sの原反14を準備する準備工程(R-1)と、準備されたAPETシート12sおよびOPETシート14sをラミネート装置40でラミネートする熱ラミネート工程(R-2)と、ラミネートされたシート材料100sを巻取装置60により巻き取る巻取工程(R-3)とを含む。
準備工程(R-1)では、原反12、14を準備し、第1および第2の送出装置20、30に装着する。さらに、原反12、14からAPETシート12sとOPETシート14sとがガイド50を介してラミネート装置40に送り出す。
熱ラミネート工程(R-2)では、第1および第2の送出装置20、30から送り出されたAPETシート12sとOPETシート14sとを重なるようにガイド50によりラミネート装置40に案内する(R-21)。さらに、案内されてラミネート装置40に重ねられて到達したAPETシート12sとOPETシート14sをラミネート装置40のゴムローラ42と金属ローラ44とで挟み、加熱しながら押圧する(R-22)。加熱および押圧されて積層されたシート材料100sをゴムローラ42および金属ローラ44の回転により送る(R-23)。
巻取工程(R1-3)では、熱ラミネートされたシート材料100sを所定の速度および張力で巻き取る。本実施形態において、巻取装置60は、シート材料100sのAPETシート12sが外側となるようにシート材料を巻き取る。しかし、巻取装置60は、シート材料100sのAPETシート12sが内側、すなわちOPETシート14sが外側となるようにシート材料を巻き取ってもよい。
シート材料100sを巻き終えたシート材料100sの原反は、例えば、特開2011-67997に記載された製袋機に投入されてボックスパウチ(登録商標)が製造される。
本実施形態において、ラミネート装置40は、金属ローラ44のみが加熱され、ゴムローラ42は加熱されない。これにより、シート材料100sは、OPETシート14s側のみから加熱されて積層される。これにより、APETシート12sが加熱されることを抑制される。これにより、袋容器を形成する際に、APETシート12sが熱溶着前に熱履歴を受けることにより熱溶着が困難になることを防止できる。
APETシート12sとOPETシート14sとを加熱する温度は、110℃以上、かつ、140℃未満が好ましい。110℃よりも低く、特に100℃未満のときは、APETシート12sとOPETシート14sとが十分に貼り合わされず、かつ、ラミネートが不十分となる。また、140℃以上のときは、シートに皴が生じることもある。
また、APETシート12sとOPETシート14sとを加熱する温度は、110℃以上、かつ、140℃未満の範囲の内でも、できるだけ低い温度であることがより好ましく、特に、加熱する温度は、110℃~120℃の範囲であることが望ましい。温度が低ければその分熱履歴を受けにくく、袋容器を形成するための熱溶着が容易なためである。
なお、このラミネート方法Rは、OPETシート14sに印刷層が形成されない場合にも適用することができ、その場合でも、印刷層106が形成される場合と同様に、APETシート12sが加熱されることを抑制されることによって、APETシート12sが熱溶着前に熱履歴を受けることにより熱溶着が困難になることを防止できる。