JP7338901B2 - ジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体 - Google Patents

ジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体 Download PDF

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Description

本発明は、ジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体に関する。
冷凍技術や冷蔵技術の発達により、長期間にわたり食品や医薬品等の製品の品質や安全性を保つことができるようになっている。また、低温輸送技術の発達と普及により、市場にも様々な冷凍食品や冷蔵食品が出回るようになってきている。このため、流通過程や貯蔵過程における物品の温度管理が重要になる。
例えば、設備インフラ業界や産業界においては、製品の温度管理が施設等のモニタリング及び製品化工程や品質管理上で重要な管理項目として知られている。現状では、製品が管理される設備に電子計測器を設置して温度管理が行われている。
しかし、食品及び医薬品等の温度管理を目的とした電子計測器の利用は、動作原理がバッテリー駆動型であるため個々の食品や医薬品に対して高コストである、取扱い上の簡便性がない、などの理由により本用途に適していない。
他の温度管理用ツールとしては、示温インク材料を利用したサーモラベル等が知られている。また、サーモラベルは、取扱いは簡便ではあるが、温度検知開始機能がない。示温インク材料は、発色反応が可逆的であるため、温度検知の対象や利用状況が限定される。加えて、サーモラベルは、高精度な温度測定が困難である。
そのため、温度感受性の高い製品の保管時間並びに保管温度を簡便かつ正確に検知でき、その表示が可能なインジケータ、タグ、ラベル等が必要とされている。
特許文献1には、特定の構造のフォトクロミック材料を含む光機能素子と、フォトクロミズムを利用した温度管理技術が開示されている。
ここで、フォトクロミズムとは、光の作用により単一の化学種が分子量を変えることなく吸収スペクトルの異なる2つの異性体(A,B)を可逆的に生成する現象である。また、フォトクロミズムは、異性体Aに特定波長の光(例えば紫外線)を照射すると、結合様式あるいは電子状態に変化が生じ、異性体Bに変換し、その結果、紫外・可視吸収スペクトルが変化して色が変わる現象である。
特許文献1に記載の光機能素子は、以下に示す3つの特徴を有している。特許文献1には、このような特徴を有する光機能素子を、温度履歴表示材として使用することが開示されている。
(i)スイッチオン機能を備える。
(ii)加熱により再生不可能な消色が起こる。
(iii)着色状態が可視化で安定である。
フォトクロミズムを利用した特許文献1に記載の技術は、外部刺激による色の変化を利用する原理であるため、電力消費はゼロである。また、曝される環境の温度変化を退色特性と経過時間による色の差から温度検知が行われることから、温度履歴の表示と記録及びエビデンス性を有する。
また、特許文献1に記載の技術は、小型で薄膜なデバイス仕様の実現が可能なことから、特許文献1に記載の技術を利用する場所や対象が限定されない。また、フレキシビリティ性が見込めることから、温度検知対象のサイズ等、種類を選ばない。
さらに、特許文献1に記載の技術を利用して、小型で薄膜なデバイスを実現する際は、ディスポーザル性、低コスト化、簡便性が期待でき、新たな温度インジケータとして有望である。
特開2014-15552号公報
しかしながら、特許文献1に記載のフォトクロミック材料は、管理温度が比較的高い温度、具体的には10~70℃程度の温度領域における温度管理には適しているものの、低温環境下、特に冷蔵、冷凍及び超低温の温度領域における温度管理には不向きである。
本発明は、低温環境下での温度管理に適したジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体を提供することを目的とする。
フォトクロミック材料であるジアリールエテン化合物の10時間半減期温度、すなわち、10時間後の濃度が初期濃度の半分となる温度が低いほど、低温環境下での温度管理に適している。
本発明者らは鋭意検討した結果、ジアリールエテン化合物の構造が10時間半減期温度に影響することを突き止めた。そして、10時間半減期温度が室温以下となるジアリールエテン化合物の構造を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様に係るジアリールエテン化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
Figure 0007338901000001
式(1)中、環Aは、5員環構造又は6員環構造を示しており、
Xは、硫黄原子(S)、NR又は酸素原子(O)であり、Rは水素原子(H)又はアルキル基であり、
及びYはそれぞれ独立に、炭素原子(C)又は窒素原子(N)であり、
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。
前記ジアリールエテン化合物は、下記一般式(1A)で表されることが好ましい。
Figure 0007338901000002
式(1A)中、6つのZはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はフッ素原子(F)であり、
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。
前記ジアリールエテン化合物において、前記R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~7のシクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~7のシクロアルキル基であり、他方がSiR であることが好ましい。
本発明の一態様に係る温度インジケータは、前記ジアリールエテン化合物を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る温度表示デバイスは、前記温度インジケータを有することを特徴とする。
前記温度表示デバイスは、基材を有し、前記基材の一方の面に前記温度インジケータが形成されていることが好ましい。
前記温度表示デバイスは、時間情報表示部を有し、平面視において、前記温度インジケータと前記時間情報表示部とが前記基材上の面方向に並んで形成されていることが好ましい。
前記温度表示デバイスは、前記基材の他方の面に粘着層及び剥離層がこの順で形成されていることが好ましい。
前記温度表示デバイスは、前記温度インジケータ上に保護層が形成されていることが好ましい。
前記温度表示デバイスにおいて、前記温度インジケータは少なくとも一方の面に粘着性を有し、前記一方の面に剥離層が形成されていることが好ましい。
本発明の一態様に係る包装体は、前記温度インジケータを有することを特徴とする。
本発明によれば、低温環境下での温度管理に適したジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体を提供できる。
本発明の第3の態様の温度表示デバイスの平面図である。 図1のII-II線における断面図である。 本発明の第3の態様における温度インジケータの退色特性の一例を示す図である。 本発明の第3の態様の温度表示デバイスの発行装置を示す概略図である。 本発明の第4の態様の温度表示デバイスの断面図である。 本発明の第5の態様の温度表示デバイスの断面図である。 本発明の第6の態様の温度表示デバイスの断面図である。 本発明の第7の態様の包装体の斜視図である。 実施例1における、波長581nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を示す図である。 実施例1における、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例2における、波長541nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を示す図である。 実施例2における、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例3における、波長591nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を示す図である。 実施例3における、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例4における、波長548nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を示す図である。 実施例4における、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例5における、退色度合い(A/A)と放置時間との関係を示す図である。 実施例5における、退色度合い(A/A)の自然対数を縦軸、放置時間を横軸にプロットした図である。 実施例5における、熱分解速度定数(k)の自然対数を縦軸、各温度の逆数を横軸にプロットした図である。 実施例12における、紫外線を照射する前の吸収スペクトルを示す図である。 実施例12における、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例12における、退色後の吸収スペクトルを示す図である。 実施例12における、紫外線を再度照射したときの吸収スペクトルを示す図である。 実施例13における、紫外線を照射する前の吸収スペクトルを示す図である。 実施例13における、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例13における、退色後の吸収スペクトルを示す図である。 実施例13における、紫外線を再度照射したときの吸収スペクトルを示す図である。 実施例14における、紫外線を照射する前の吸収スペクトルを示す図である。 実施例14における、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例14における、退色後の吸収スペクトルを示す図である。 実施例14における、紫外線を再度照射したときの吸収スペクトルを示す図である。 実施例15における、紫外線を照射する前の吸収スペクトルを示す図である。 実施例15における、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを示す図である。 実施例15における、退色後の吸収スペクトルを示す図である。 実施例15における、紫外線を再度照射したときの吸収スペクトルを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
ただし、以下に説明する実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、数や、位置や、大きさ等についての変更、省略、追加及びその他の変更が可能である。
なお、本明細書において、「低温環境下」とは、室温以下を意味する。「室温」とは、25℃を意味する。低温環境下は、例えば定温、冷蔵、冷凍、超低温等に分類できる。定温は、例えば5~25℃程度の温度領域のことである。冷蔵は、例えば-18~10℃程度の温度領域のことである。冷凍は、例えば-40~-18℃程度の温度領域のことである。超低温は、例えば-40℃以下程度の温度領域のことである。
また、後述する図5~8において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
[ジアリールエテン化合物]
本発明の第1の態様のジアリールエテン化合物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 0007338901000003
式(1)中、環Aは、5員環構造又は6員環構造を示しており、
Xは、硫黄原子(S)、NR又は酸素原子(O)であり、Rは水素原子(H)又はアルキル基であり、
及びYはそれぞれ独立に、炭素原子(C)又は窒素原子(N)であり、
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。
環Aは、5員環構造又は6員環構造を示している。本実施形態のジアリールエテン化合物において、紫外光照射による着色、着色状態の可視光下での優れた安定性、さらに、低温環境下での温度上昇による再生不可能な消色という機能は、RとRとが結合した部位同士の反応性の影響を強く受ける一方、環Aの構造の影響はそれほど大きくない。そのため、立体構造的には、環Aは、5員環構造及び6員環構造いずれでもよいが、5員環構造が好ましい。
Xは、硫黄原子(S)、NR又は酸素原子(O)である。
NRにおいて、Rは水素原子(H)又はアルキル基である。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
Xとしては、硫黄原子(S)が好ましい。
及びYはそれぞれ独立に、炭素原子(C)又は窒素原子(N)である。
及びYとしては、それぞれ炭素原子(C)が好ましい。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR である。
及びRにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~7がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。R及びRにおけるアルキル基は、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基のいずれでもよいが、第一級アルキル基又は第二級アルキル基が好ましく、第一級アルキル基がより好ましい。
及びRにおけるシクロアルキル基の炭素数は、3~7が好ましく、3~5がより好ましい。
SiR において、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基である。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。Rにおける芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、フェニル基(Ph)が好ましい。SiR の具体例としては、Si(CH、Si(CHCH、Si(CH(CH、SiC(CH(CH)(CH)、SiC(CH(Ph)(Ph)等が挙げられる。
ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度を、低温環境下での温度管理に適した温度に制御しやすい観点から、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~7のシクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~7のシクロアルキル基であり、他方がSiR であることが好ましい。
及びRの組み合わせは、ジアリールエテン化合物の用途(使用温度)に応じて決定すればよい。アルキル基又はシクロアルキル基の炭素数が大きくなるほど、ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度が低くなる傾向にある。
及びRの好ましい組み合わせとしては、R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基であり、他方がSiR である組み合わせが挙げられる。特に、RがSiR であると、ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度が低くなる傾向にある。
冷蔵又は冷凍の温度領域における温度管理に最適なジアリールエテン化合物が得られやすくなる点では、Rが炭素数2~10のアルキル基であり、RがSiR である組み合わせ、又はRがSiR であり、Rが炭素数1~10のアルキル基である組み合わせが好ましい。特に、Rが炭素数2~4の第一級アルキル基又は第二級アルキル基であり、Rがトリメチルシリル基(Si(CH)又はトリエチルシリル基(Si(CHCH)である組み合わせ、又はRがトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基であり、Rが炭素数1~2の第一級アルキル基である組み合わせがより好ましい。
超低温の温度領域における温度管理に最適なジアリールエテン化合物が得られやすくなる点では、RがSiR であり、Rが炭素数3~10のアルキル基である組み合わせが好ましい。特に、Rがトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基であり、Rが炭素数3~7の第一級アルキル基又は第二級アルキル基である組み合わせがより好ましい。
再生不可能な消色という機能を有する、すなわち、消色後に紫外線等の光を再度照射しても再発色しにくいジアリールエテン化合物が得られやすくなる点では、Rがメチル基又はイソプロピル基であり、Rがトリメチルシリル基である組み合わせ、又はRがトリメチルシリル基であり、Rがメチル基又はイソプロピル基である組み合わせが好ましい。
が炭素原子(C)である場合、Rは、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。Rにおけるアルコキシ基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
が窒素原子(N)である場合、Rは、電子対である。
が炭素原子(C)であり、Rが水素原子(H)又はアルキル基であることが好ましく、Rが水素原子(H)又は炭素数が1~3のアルキル基であることがより好ましい。
が炭素原子(C)である場合、Rは、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。Rにおけるアルコキシ基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
が窒素原子(N)である場合、Rは、電子対である。
が炭素原子(C)であり、Rが水素原子(H)又はアルキル基であることが好ましく、Rが水素原子(H)又は炭素数が1~3のアルキル基であることがより好ましい。
なお、R及びRにおけるフェニル基、アルキル基、アルコキシ基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に制限されないが、例えばシアノ基、アルキル基、アルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。Rにおけるアルコキシ基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
としては、水素原子(H)、フェニル基又は炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。Rにおけるアルコキシ基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
としては、水素原子(H)、フェニル基又は炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
これらの中でも、R及びRは、それぞれ、フェニル基であることが特に好ましい。なお、R及びRにおけるフェニル基、アルキル基、アルコキシ基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に制限されないが、例えばシアノ基、アルキル基、アルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。
環Aの好ましい構造としては、例えば、下記一般式(a1)、下記一般式(a2)、下記一般式(a3)又は下記一般式(a4)で表される構造が挙げられる。
Figure 0007338901000004
これらの構造において、6つのZはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はフッ素原子(F)である。6つのZは、全てフッ素原子(F)又は水素原子(H)であることが好ましい。可視光下における安定性に優れることから、6つのZは、全てフッ素原子(F)であることがより好ましい。
、R及びRはそれぞれ独立に、フェニル基又はアルキル基である。R、R及びRにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。なお、R、R及びRにおけるフェニル基、アルキル基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に制限されないが、例えばシアノ基、アルキル基、アルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。
、R及びRとしてはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数が1~5のアルキル基が好ましい。
紫外光照射による着色、着色状態の可視光下での優れた安定性、さらに、低温環境下での温度上昇による再生不可能な消色という機能を効果的に発揮する観点からは、前記一般式(1)において、Xは、硫黄原子(S)であることが好ましい。同様の観点から、Y及びYは、それぞれ炭素原子(C)であることが好ましい。また、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(H)、フェニル基もしくは炭素数1~5のアルキル基であるか、RとRとが互いに結合して6員環構造を形成していることが好ましい。さらに、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(H)、フェニル基もしくは炭素数1~5のアルキル基であるか、RとRとが互いに結合して6員環構造を形成していることが好ましい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(H)又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。また、R及びRは、それぞれフェニル基であることが特に好ましい。
とRとが互いに結合した6員環構造、RとRとが互いに結合した6員環構造としては、特に制限されないが、上記の機能を効果的に発揮する観点からは、好ましくはベンゼン環骨格が挙げられる。
紫外光照射による着色、着色状態の可視光下での優れた安定性、さらに、低温環境下での温度上昇による再生不可能な消色という機能を効果的に発揮する観点から、本実施形態のジアリールエテン化合物は、下記一般式(1A)で表されることが好ましい。
Figure 0007338901000005
式(1A)中、6つのZはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はフッ素原子(F)であり、
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。
一般式(1A)中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ前記一般式(1)中のR、R、R、R、R及びRと同じである。
一般式(1A)においては、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(H)又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。R及びRは、それぞれフェニル基であることが好ましい。また、RとRとが互いに結合してベンゼン環を形成していてもよい。同様に、RとRとが互いに結合してベンゼン環を形成していてもよい。一般式(1A)において、6つZが全てフッ素原子又は水素原子(H)であることが好ましく、可視光下における安定性に優れることから、6つZが全てフッ素原子(F)であることが特に好ましい。
さらに具体的には、上記の機能を効果的に発揮する観点から、本実施形態のジアリールエテン化合物は、下記一般式(1B)で表されることがより好ましい。
Figure 0007338901000006
式(1B)中、6つのZはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はフッ素原子(F)であり、
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基又はシアノ基であり、
は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基又はシアノ基、である。
一般式(1B)中のR、R、R及びRは、それぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びRと同じである。
一般式(1B)においては、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はメチル基であることが好ましい。一般式(1B)において、6つZが全てフッ素原子又は水素原子(H)であることが好ましく、可視光下における安定性に優れることから、6つZが全てフッ素原子(F)であることが特に好ましい。
一般式(1)で表されるジアリールエテン化合物の中でも、ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度を、低温環境下での温度管理に適した温度に制御しつつ、上記の機能を効果的に発揮する観点から、ジアリールエテン化合物は下記一般式(1C)で表されることが特に好ましい。
Figure 0007338901000007
式(1C)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR である。
一般式(1C)中のR及びRは、それぞれ前記一般式(1)中のR及びRと同じである。
前記一般式(1)で表されるジアリールエテン化合物の製造方法としては、特に制限されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、まず、下記一般式(2)で表されるジアリールエテン化合物の前駆体(以下、「前駆体(2)」ともいう。)を製造する。次に、5員環骨格(チオフェン)中の硫黄原子(S)を酸化して、スルホニル基(SO)に変換することにより、前記一般式(1)で表されるジアリールエテン化合物を製造することができる。
Figure 0007338901000008
前駆体(2)の5員環骨格中のSを酸化して、スルホニル基(SO)に変換する方法としては、特に制限されず、例えば、前駆体(2)を、m-クロロ過安息香酸などの過酸で酸化する方法などが挙げられる。
なお、一般式(2)中のXが硫黄原子(S)の場合、下記一般式(2A)で表される前駆体を酸化すると、ジアリールエテン化合物は下記一般式(1-1)で表されるジアリールエテン化合物と下記一般式(1-2)で表されるジアリールエテン化合物の混合物の状態で得られる。これらは、単離して用いてもよいし、混合物の状態で用いてもよい。
Figure 0007338901000009
一般式(2)、一般式(2A)、一般式(1-1)及び一般式(1-2)中の環A、X、Y、Y、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ前記一般式(1)中の環A、X、Y、Y、R、R、R、R、R及びRと同じである。
なお、ジアリールエテン化合物の製造において、出発原料、それらの使用量や割合、温度、時間、圧力、雰囲気及び溶媒の種類や使用量などの反応条件は、製造するジアリールエテン化合物の構造に応じて適宜設定すればよい。また、製造された化合物が所望のジアリールエテン化合物(1)であることは、例えば後述する実施例に示すように、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)、質量分析法などの一般的な有機分析手法により確認することができる。
ここで、前駆体(2)の製造方法の一例を説明する。なお、以下の説明は、前記一般式(2)中のXが硫黄原子(S)であり、RがSiR であり、Rがアルキル基又はシクロアルキル基である前駆体を製造する方法であるが、これにより本発明は限定されない。
まず、後述する実施例に示すように、化合物(3)と化合物(4)とを反応させ、化合物(5)を得る。
次いで、化合物(5)と環Aの由来となる環状化合物(A)とを反応させ、化合物(6)を得る。例えば、環Aが前記一般式(a1)で表される構造の場合、環状化合物(A)としてはシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン等が挙げられる。
Figure 0007338901000010
別途、後述する実施例に示すように、化合物(7)と臭素とを反応させて、化合物(8)を得る。なお、化合物(7)中のRは、アルキル基又はシクロアルキル基である。
Figure 0007338901000011
化合物(7)中のRが第一級アルキル基の場合、化合物(7)としては、例えば市販品を用いることができる。
化合物(7)中のRが第一級アルキル基以外の場合、化合物(7)は、例えば化合物(9)とケトン化合物(B)とを反応させ、化合物(10)を得た後、化合物(10)を還元して化合物(7)を得る。なお、化合物(10)中のRは、第一級アルキル基以外のアルキル基又はシクロアルキル基である。
Figure 0007338901000012
ケトン化合物(B)としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、ジエチルケトン、3-ヘキサノン、4-ヘプタノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
化合物(10)は例えば塩化アルミニウム(AlCl)と水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)とを用いて還元できる。
なお、Rが第一級アルキル基である化合物(7)の市販品がない場合は、有機リチウム化合物を用いて化合物(9)をリチオ化した後、得られた反応生成物とハロゲン化アルキル(R-X)とを反応させて、化合物(7)を得る。
有機リチウム化合物としては、例えばブチルリチウム等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル(R-X)としては、アルキル基としてRを有するものであれば特に限定されず、例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルなどのヨウ化アルキル(R-I);臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピルなどの臭化アルキル(R-Br)等が挙げられる。
また、Rがフェニル基である化合物(8)を得る場合は、例えばRが水素原子(H)である化合物(7)と臭素とを反応させた後、さらに芳香族ハロゲン化合物と反応させればよい。芳香族ハロゲン化合物としては、例えばヨードベンゼン、ブロモベンゼン、m-置換ヨードベンゼン、p-置換ヨードベンゼン等が挙げられる。
次いで、化合物(6)と化合物(8)とを反応させて、化合物(2B)を得る。
Figure 0007338901000013
本実施形態のジアリールエテン化合物は、例えば、下記の式で表されるように、紫外光照射により、R及びRが結合している2つのチオフェン環同士が環を形成(閉環)し、着色する(スイッチング機能)。この着色は、可視光下や、所定の温度(Δ)未満では安定であるが、この所定の温度(Δ)以上の条件に曝される(加熱される)ことにより、副生成物に分解されるため、消色(退色)する。この消色(退色)状態は、紫外光や可視光下で安定であり、着色から消色は不可逆的である。
Figure 0007338901000014
紫外光照射により、本実施形態のジアリールエテン化合物が環構造を形成して、前記一般式(11)で示される化合物となった後、副生成物に分解される際の温度は、R及びRの種類による影響を受ける。上述したように、R又はRのアルキル基又はシクロアルキル基の炭素数が大きくなるほど、ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度が低くなる傾向にある。すなわち、より低温で分解されて、消色する。よって、R及びRの種類を調整することによって、ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度を制御でき、所望の温度で着色を消色させることができる。
本実施形態のジアリールエテン化合物の10時間半減期温度は、室温以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、0℃以下がさらにこのましい。10時間半減期温度の下限値は特に制限されないが、ジアリールエテン化合物を冷蔵又は冷凍領域における温度管理に使用する場合、10時間半減期温度は-40℃以上が好ましく、-20℃以上がより好ましい。
ジアリールエテン化合物の10時間半減期温度の測定方法は、後述する実施例に記載のとおりである。
このように、本実施形態のジアリールエテン化合物は、特定の構造を有しているので、低温環境下での温度管理に適している。本実施形態のジアリールエテン化合物を温度センサーに利用する際には、作動温度(機能温度)を変化させることができる。本実施形態のジアリールエテン化合物は、所望の作動温度を設定し得るP型のフォトクロミズムの性能を有することから、フォトクロミック材料として用いることができる。
本実施形態のジアリールエテン化合物は、溶媒中では安定的な特性を示すためマイクロカプセル化されていてもよい。
ここで、「マイクロカプセル化」とは、溶媒にジアリールエテン化合物を拡散し溶融した溶液を内包する微小なカプセルに加工することである。
溶媒としては、有機溶媒、水等が挙げられる。有機溶媒としては、例えばヘキサン、トルエン等の炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類などが挙げられる。
マイクロカプセル化の方法としては、例えば公知の界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が挙げられる。
マイクロカプセルの平均粒子径は0.1~100μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、5~15μmがさらに好ましい。
[温度インジケータ]
本発明の第2の態様の温度インジケータは、上述した本発明の第1の態様のジアリールエテン化合物を含む。
温度インジケータは、光の照射により温度の検知が開始される機能を有する。温度インジケータは、例えば、特定の波長の光が照射されることにより初期化されて色強度が変化する。色情報を認識することで、温度インジケータが曝されていた温度、曝されていた温度における経過時間を確認することができる。
本発明の第1の態様のジアリールエテン化合物は、特定の波長の光が照射されることにより不可逆的に変色(有色化)し、熱により不可逆的に退色(消色)する。よって、温度インジケータに特定の波長の光を照射して変色させることにより、温度インジケータを初期化することができる。
すなわち、温度インジケータが実際に使用される直前に、温度インジケータに光を照射することによって温度インジケータが初期化される。よって、温度インジケータが保存される温度環境、すなわち温度インジケータが初期化される以前における温度環境には制約が少ない。例えば、低温環境下における温度管理をするための温度インジケータであっても、室温における保存が可能である。
温度インジケータに含まれるジアリールエテン化合物の含有量は、温度インジケータの全体の質量(総質量)に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。ジアリールエテン化合物の含有量が0.1質量%以上であれば、初期化濃度が薄くなりすぎず、良好に認識できるため、温度検知精度を維持できる。ジアリールエテン化合物の含有量が20質量%以下であれば、光照射による初期化の際、ジアリールエテン化合物の反応率が低下しにくく、未初期化部分が発生しにくいため、紫外線等の光を再度照射してもより再発色しにくくなる。
温度インジケータは、ジアリールエテン化合物に加え、バインダを含んでいてもよい。
バインダとしては、例えばポリビニルアセタール樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ニトロセルロース(硝化綿)、エチルセルロース、ポリアミド、イソプレンゴム等の環化ゴム、塩素化ポリオレフィン、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート等が挙げられる。
温度インジケータに含まれるバインダの含有量は、温度インジケータの全体の質量(総質量)に対して、80~99.9質量%が好ましく、90~99質量%がより好ましい。バインダの含有量が80質量%以上であれば、温度インジケータを成膜しやすい。バインダの含有量が99.9質量%以下であれば、温度インジケータ中のジアリールエテン化合物の量が充分となり、初期化濃度が薄くなりすぎず、良好に認識できるため、温度検知精度を維持できる。
温度インジケータの形状は特に制限されないが、膜状が好ましい。
温度インジケータが膜状の場合、その厚さは、100nm~50μmが好ましく、500nm~20μmがより好ましい。温度インジケータの厚さが100nm以上であれば、初期化濃度が薄くなりすぎず、良好に認識できるため、温度検知精度を維持できる。温度インジケータの厚さが50μm以下であれば、光照射による初期化の際、温度インジケータの内部にまで光が充分に到達できる。よって、ジアリールエテン化合物の反応率が低下しにくく、未初期化部分が発生しにくいため、紫外線等の光を再度照射してもより再発色しにくくなる。
[温度表示デバイス]
<第3の態様>
本発明の第3の態様の温度表示デバイスについて、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第3の態様の温度表示デバイス20を示す平面図である。図2は、図1の温度表示デバイス20のII-II線における断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の温度表示デバイス20は、基材21と、参照部22と、温度インジケータ23と、時間情報表示部24とを有する。温度インジケータ23は、基材21の一方の面に形成されている。平面視において、参照部22と、温度インジケータ23と、時間情報表示部24とは、基材21上の面方向に並んで形成されている。
温度表示デバイス20は、温度管理を行う対象となる製品等の対象物(例えば食品、医薬品等)のパッケージ等に装着される。
温度表示デバイス20は、温度管理の対象となる対象物に貼付して使用することが想定される。このため、対象物の製品の仕様、サイズ、使用方法などに基づいて、基材21の形状及び大きさが選択される。
基材21の材質としては、ガラス、プラスチック、合成紙、上質紙、金属(例えばアルミニウム等)などを挙げることができる。基材21は、合成紙又は上質紙であることが好ましい。温度表示デバイス20が低温下で使用され、結露が生じる可能性がある場合には、基材21として合成紙を使用することが好ましい。基材21として合成紙を使用すると、水分が基材21に染み込みにくく、強度が保たれる。
基材21は、板状、箔状等であってよい。基材21は、可撓性を有することが好ましい。基材21は、温度インジケータ23に照射される光(例えば紫外線)に対して透過性であってもよいし、非透過性であってもよい。基材21は、例えば平面視略矩形のカード状であってよい。
基材21の厚さは、参照部22及び温度インジケータ23を支持できる厚さであれば特に限定されないが、10μm~1.0mmが好ましく、50μm~0.5mmがより好ましい。
基材21の材質は、印字がしやすいものを選択するようにしてもよい。基材21の材質は、記録方式によらず、温度インジケータ23の形成、インク付着性、印字等のパターン配置等を考慮して選択してもよい。例えば、基材21の表面領域の少なくとも一部を感熱紙で構成した場合、当該領域は、加熱により発色する感熱紙領域となる。感熱記録式の印字記録装置を採用する場合は、前記感熱紙領域に印字することができる。
また、基材21と、参照部22及び温度インジケータ23との間に、感熱記録層(図示略)を設けてもよい。印字品質が向上する観点から、感熱記録層の厚さは、0.1~50μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましい。
参照部22は、温度インジケータ23の色を特定するための指標となる基準色を呈する。目視により温度インジケータ23を参照部22と比較することによって、温度インジケータ23の色を判定することができる。
参照部22の構成は特に限定されないが、外部環境(温度、光など)の影響で変色することなく所望の色強度を維持でき、耐水性、耐光性に優れた材料(例えば顔料)を含んでいることが好ましい。
参照部22は、温度検知の対象となる対象物に装着して使用することが想定される対象の製品の仕様、サイズ、使用方法などに基づいて形状及び大きさが適宜選択される。
温度インジケータ23は、上述した本発明の第2の態様の温度インジケータである。すなわち、本実施形態の温度表示デバイスは、本発明の第2の態様の温度インジケータを有する。
時間情報表示部24は、時間情報が印字される領域である。時間情報は、例えば、文字情報(文字としての印字)、バーコード、二次元コード等である。時間情報は、温度表示デバイス20を利用開始した時刻を示す時間情報である。なお、時間情報表示部24がバーコード、二次元コード等の場合、温度表示デバイス20が装着されている対象物に関する情報を含んでいてもよい。対象物に関する情報とは、例えば、製品名、対象物を識別するための識別情報等である。
時間情報表示部24は、温度表示デバイス20が初期化される前に時間情報が印字されていてもよいし、温度インジケータ23が初期化される時に時間情報が印字されてもよい。
時間情報表示部24は、温度検知の対象となる対象物に装着して使用することが想定される対象の製品の仕様、サイズ、使用方法などに基づいて形状及び大きさが適宜選択される。
なお、図1に示す温度表示デバイス20では、時間情報表示部24に時間情報が印字されている。
本実施形態の温度表示デバイス20は、例えば以下のようにして製造できる。
基材21上に、参照部22を形成する。参照部22を形成する方法としては、所望の色強度となるような顔料及び溶剤を含む溶液を調製し、この溶液を基材21上の一部に印刷した後、乾燥させる方法が挙げられる。
印刷方法としては、スクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、パッド印刷、オフセット印刷、シルク印刷、バーコーターを用いた印刷等が挙げられる。
基材21上に、温度インジケータ23を形成する。温度インジケータ23を形成する方法としては、例えばジアリールエテン化合物と、バインダと、溶剤とを含む溶液を調製し、この溶液を基材21上の一部に印刷した後、乾燥させる方法が挙げられる。
温度インジケータ23を形成する際に使用される溶剤は、温度インジケータ23や基材21の材料に応じて決定されるが、例えばミネラルスピリット、石油ナフサ、テレピン油、n-ブチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、テトラリン、酢酸、酢酸メトキシブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン、ジアセトンアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルセロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等が挙げられる。これらの材料を二種以上混合して溶剤として用いてもよい。中でも溶剤としては、トルエン、アセトンが好ましい。
ジアリールエテン化合物と、バインダと、溶剤とを含む溶液に含まれるジアリールエテン化合物の含有量は、前記溶液に適度な粘性が生じ、印刷の際に滲みにくく、前記溶液中にジアリールエテン化合物を均一に分散させることができるように適宜設定される。
印刷方法としては、参照部22を形成する際の印刷方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥温度は、20~100℃の間で、生産性と温度インジケータ23のダメージを考慮して決定することが好ましい。
なお、バインダとして熱硬化性樹脂や水性塗料などの無溶剤系樹脂を用いれば、溶剤を用いることなく温度インジケータ23を形成できる。すなわち、無溶剤系樹脂とジアリールエテン化合物とを混合し、得られた混合物を基材21上に印刷した後に加熱や乾燥により無溶剤系樹脂を硬化させることで、温度インジケータ23を形成する。この方法であれば、VOC(揮発性有機化合物)の排出を抑制できる。
また、ジアリールエテン化合物としてマイクロカプセル化されたものを用いる場合、例えばジアリールエテン化合物のマイクロカプセルをスクリーンインキに所望の濃度になるように混ぜた後、スクリーン印刷により基材21上に一部に印刷して、温度インジケータ23を形成してもよい。印刷方法としては、スクリーン印刷に限定されず、参照部22を形成する際の印刷方法と同様の方法を用いてもよい。
次に、温度表示デバイス20の使用方法の一例について説明する。図3は、温度インジケータ23の退色特性の一例を示す図である。図3の縦軸は、温度インジケータ23の色強度(例えば光吸収波長の光強度の吸収量や発色前を基準色とした場合の色差)であり、色強度が大きいほど濃い色である。横軸は、温度インジケータ23の初期化時からの経過時間を示す。
図3に示すように、温度インジケータ23は、特定の波長の光が照射されて有色となった後、時間とともに退色(消色)する。図3において、符号aは、第1の温度における色の経時変化を示す。符号bは、第1の温度より高い第2の温度における色の経時変化を示す。符号cは、第2の温度より高い第3の温度における色の経時変化を示す。このように、温度インジケータ23は、温度が高いほど退色(消色)が速くなる。色の強度は温度に応じた値となるため、色の強度に基づいて、温度表示デバイス20が置かれた環境の温度を知ることができる。
参照部22における色強度は、温度インジケータ23に含まれるジアリールエテン化合物を有色とした(つまり初期化した)時点からの色強度の変化を、所定の温度条件下で予め測定しておき、所定の経過時間における色強度に基づいて定めることができる。例えば、参照部22の色強度を、想定された温度環境下における温度表示デバイス20の初期化時からの所定の経過時間後に得られる色強度とする。ここでは、温度表示デバイス20を5℃下で初期化から10時間保持した時に得られる色強度とする。
次に、温度表示デバイス20を使用して対象物の温度管理を行う方法の一例について説明する。
まず、後述する発行装置を用いて、温度表示デバイス20の温度インジケータ23を初期化し、初期化された時刻を時間情報表示部24に印字する。なお本実施形態において、温度インジケータ23が初期化され、初期化された時刻等が時間情報表示部24に印字された状態の温度表示デバイス20を温度履歴管理ラベルと定義する。
発行装置には、あらかじめ温度表示デバイス20が備えられている。発行装置に備えられた温度表示デバイス20の温度インジケータ23は、発行装置に設けられた光源から光が照射され、温度インジケータ23が初期化される。時間情報表示部24には、発行装置の印字記録部により温度インジケータ23が初期化された時刻等が印字される。時刻等の情報は、コード化されて時間情報表示部24に印字されてもよい。温度インジケータ23が初期化され、初期化された時刻が時間情報表示部24に印字されることにより、温度履歴管理ラベルが生成される。温度履歴管理ラベルは、発行装置から搬出され、温度検知の対象となる製品に直ちに貼付される。
温度インジケータ23が初期化されてから10時間後、参照部22の色強度と、温度インジケータ23の色強度とを目視により比較する。温度インジケータ23の色強度が参照部22の色強度より高いと判断される場合、対象物は5℃より低い温度で保持されていたと推定される。温度インジケータ23の色強度が参照部22の色強度と同一と判断される場合、対象物は約5℃で保持されていたと推定される。温度インジケータ23の色強度が参照部22の色強度より低い場合、対象物は5℃より高い温度で保持されていたと推定される。
以上のように、温度表示デバイス20が初期化されてから所定の時間経過後に目視により参照部22の色強度と温度インジケータ23の色強度とを比べることにより、温度履歴管理ラベルを取り付けた対象物が想定通りの温度環境にあったか否かを推定できる。本実施形態における温度表示デバイス20は、前記対象物の温度管理時間があらかじめ設定されている場合に有効である。
なお、温度表示デバイスの発行装置として、例えば図4の発行装置50を用いることができる。発行装置50は、基材供給部55、印字記録部52、照射部53及び制御部51を備えている。また、発行装置50は、移動機構部(図示略)を備えている。
基材供給部55は、例えば、長尺の温度表示デバイス20Aが巻回されたロール551(例えばロール紙)を備えることができる。温度表示デバイス20Aは、温度表示デバイス20の切断前の形態であり、複数の温度表示デバイス20が連なって構成されている。
なお、基材供給部55は、予め所定の大きさに切断された温度表示デバイスを供給できる方式(枚葉式)を採用してもよい。
印字記録部52は、サーマルヘッドを用いた感熱記録式、インクリボン式、インクジェット式、電子写真式、レーザーマーキング式(レーザ光を照射して表面加工を行う方式)等、種々の印字記録方式が採用可能である。なかでも特に、感熱記録式を用いたサーマルプリンタが好ましい。サーマルプリンタは、動作音が非常に小さく、小型軽量に適した比較的簡単な構造で、コストが抑えられるという特長がある。また、サーマルプリンタは、インクリボン、インクカートリッジといったインク類を使用しないため、唯一の消耗品は感熱紙のみであり、簡便でランニングコストが抑えられるという利点もある。
印字記録部52は、温度表示デバイス20Aに、時刻や温度履歴管理ラベル40が取り付けられる対象物の情報等の表示情報を、温度表示デバイスにおける時間情報表示部に印字する。
照射部53は、温度インジケータに照射する照射光の光源を備えている。照射部53による照射光の波長は、例えば紫外光領域(例えば250~400nm)である。紫外線は、短波長から、可視光領域に近い長波長に至る広い範囲で温度インジケータの着色が可能である。照射部53は、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体の吸収スペクトルに基づいて、使用する照射光の波長を選択できる構成であることが望ましい。
光源としては、LED式、ランプ式等がある。光源は、温度表示デバイスの仕様、及び発行装置50の仕様に応じて選択することができる。小型の発行装置50においては、紫外線LEDを光源として用いるのが好適である。紫外線LEDは波長帯域が狭いため、温度表示デバイスの温度インジケータ部のフォトクロミック吸収スペクトルから波長を選択し、その波長の光を照射できる紫外線LEDを選択するのが好ましい。ランプ式のように広い波長帯域の光源を用いる場合は、温度インジケータ部の吸収スペクトルに応じて、フィルターにより照射光の発色特性を調整することも可能である。
照射部53は、光の照射時において発行装置50外に照射光が漏れないことが好ましい。照射部53は、印字記録部52より下流側(温度表示デバイス20Aの搬送方向の下流側)であって、発行装置50の出口(温度表示デバイス20Aが搬出される搬出口)に近い位置に設けられていてもよい。光照射により温度表示デバイス20Aの温度インジケータ部が温度検知を開始することから、照射部53が発行装置50の出口に近い位置にあると、温度検知の開始から短時間で対象製品に温度表示デバイスを貼付できるためである。また、印字記録部52が照射部53より搬送方向の上流側にあるため、印字の時点では温度検知が開始されていない。そのため、印字の際の加熱が温度インジケータの温度履歴に影響を与えない。よって、正確な温度履歴を表示することが可能となる。
制御部51は、例えば、相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。例えば、制御部51は、予め記憶されたプログラムをCPUにより実行する。
また、制御部51は、照射制御部、印字制御部、情報取得部、計時部及び位置制御部(いずれも図示略)を備えている。
照射制御部は、照射部53による温度表示デバイス20Aへの光の照射を制御する。印字制御部は、印字記録部52による温度表示デバイス20Aへの表示情報の印字を制御する。前記表示情報は、例えば、温度表示デバイス20Aの温度検知の開始時間になる時間情報、すなわち温度インジケータ23に光を照射することにより温度表示デバイス20Aを初期化した時刻情報や、商品情報等である。
情報取得部は、時間情報、商品情報を取得する。計時部は、照射部53において温度インジケータに光を照射する照射時刻を計時し、時刻情報(照射時刻)を出力する。この構成によれば、正確な時刻を温度表示デバイス20Aに印字できる。
位置制御部は、例えば基材供給部55から供給される温度表示デバイス20Aの搬送を制御する。位置制御部は、温度表示デバイス20Aの位置に合わせて照射制御部及び印字制御部に制御信号を出力し、印字記録部52及び照射部53を動作させる。
移動機構部は、モータ等の駆動部(図示略)によって長尺の温度表示デバイス20Aをロール551から繰り出し、印字記録部52及び照射部53を経て温度表示デバイスを送り出す。これによって温度表示デバイスが発行される。
以上の構成を有する発行装置50を用いれば、本発明の温度表示デバイスの初期化と、初期化された時刻等の印字の双方を行うことが可能である。
本発明の第3の態様の温度表示デバイス20は、上述したものに限定されない。例えば、温度インジケータ23の一部が基材21の一部に染み込んでいてもよい。
温度インジケータ23が基材21の一部に染み込む程度は、温度インジケータ23の形成方法に依存する。そのため、所望の温度インジケータ23の形態を得るには、温度インジケータ23の形成方法を適宜選択すればよい。例えば、温度インジケータ23の位置を制御するために、ジアリールエテン化合物、バインダ及び溶剤を含む溶液の粘度を規定してもよい。
温度表示デバイス20は、温度インジケータ23と基材21との間に、遮断層(図示略)を有していてもよい。遮断層の面積は、温度インジケータ23の面積より大きい。遮断層は、温度インジケータ23が基材21に直接接することを妨げるように配置される。遮断層を配置することにより、温度インジケータ23を形成するための溶剤やバインダ等が基材21に染み込むことで基材21が変色することを防ぐことができる。また、遮断層を配置することにより、基材21による温度インジケータ23の発色特性への影響を抑制することができる。
遮断層の材料としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ニトロセルロース(硝化綿)、エチルセルロース樹脂、ポリアミド、イソプレンゴム等の環化ゴム、塩素化ポリオレフィン、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート等が挙げられる。上記の材料は、紫外線硬化性等の光硬化性の樹脂であってもよい。遮断層の材料として、アクリル樹脂が好ましい。
遮断層の形成方法としては、以下の方法が挙げられる。まず上述の遮断層の材料及び溶剤を含む溶液を調製する。遮断層は、温度インジケータ23を形成する前に、基材21に遮断層の材料及び溶剤を含む溶液を印刷して乾燥することにより形成される。印刷方法としては、参照部22を形成する際の印刷方法と同様の方法が挙げられる。
温度表示デバイス20は、複数の色強度を有する参照部22を有していてもよい。また複数の温度インジケータ23を有していてもよい。
複数の参照部及び複数の温度インジケータを有していれば、温度表示デバイス20が貼付された対象物が管理温度範囲からどの程度逸脱したかを目視により容易に判定することが可能であり、本来管理されるべき温度範囲からどの程度逸脱したかを把握する必要がある場合に有用である。
温度表示デバイス20のその他の使用方法として、読取処理装置を用いた温度検知方法が挙げられる。この態様における温度表示デバイス20は、参照部22を設けなくてもよい。
読取処理装置は、撮像機能を有する、例えばスマートフォン、タブレット端末、専用装置等である。読取処理装置は、その撮像手段を介して温度履歴管理ラベルの情報(温度インジケータ23、時間情報表示部24を含む画像)を読み取り、読み取った情報に基づいて温度履歴管理ラベル(温度表示デバイス20)が貼付されている対象物が曝されていた温度と経過時間等を求める。読取処理装置は、求めた対象物が曝されていた温度と温度履歴管理ラベルの初期化時からの経過時間等を表示部に表示させる。
このように、読取処理装置を用いて温度履歴管理ラベルの情報を読み取って温度検知を行うことにより、温度履歴管理ラベルを初期化してからの任意の経過時間において、簡便に、より正確に温度履歴管理ラベルが貼付されている対象物の温度管理を行うことが可能である。
<第4の態様>
本発明の第4の態様の温度表示デバイスについて、図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第4の態様の温度表示デバイス20Bの断面図である。
本実施形態の温度表示デバイス20Bは、基材21の参照部22、温度インジケータ23及び時間情報表示部24が位置している面(基材の一方の面)とは反対側の面(基材の他方の面)に、粘着層31と、剥離層32とを有している以外は、第3の態様の温度表示デバイスと同じである。
粘着層31は、基材21と剥離層32との間に位置している。すなわち、基材21の他方の面に、粘着層31及び剥離層32がこの順で形成されている。
粘着層31の材料は、温度検知対象物に温度表示デバイス20Bを貼付することが可能であれば特に限定されない。
剥離層32の材料は、粘着層31から容易に剥離することが可能であれば特に限定されない。
温度表示デバイス20Bを使用する直前に剥離層32を粘着層31から剥がし、剥離層32が剥離された温度表示デバイス20Bを対象物に貼付して使用することができる。
<第5の態様>
本発明の第5の態様の温度表示デバイスについて、図6を参照して説明する。
図6は、本発明の第5の態様の温度表示デバイス20Cの断面図である。
本実施形態の温度表示デバイス20Cは、温度インジケータ23上に保護層33を有している以外は、第3の態様の温度表示デバイスと同じである。
保護層33は温度インジケータ23上(温度インジケータ23の基材21が位置している面とは反対側の面)に形成されている。保護層33の面積は、温度インジケータ23の面積より大きい。保護層33は、温度インジケータ23全体を覆うように配置されることが好ましい。保護層33を設けることにより、温度インジケータ23に対する温度、湿度、薬品等の影響を抑制することができる。また、保護層33は、時間情報表示部24への印字の際に、温度インジケータ23が加熱されることを防止する。温度表示デバイス20Cに保護層33を設けることにより、印字に用いられるサーマルプリンタ等の印字装置の印字位置精度が低い場合においても、温度インジケータ23への熱の影響を抑えることが可能である。保護層33は、温度インジケータ23上だけでなく、温度表示デバイス20Cの表面全体を覆っていてもよい。
保護層33は、熱的及び化学的に安定なシリコーン塗布層であることが好ましいが、熱的及び化学的に安定な層であれば、特に限定されない。例えば、保護層33として、ポリビニルアルコール等からなる水性エマルジョンコーティング層、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂からなる透明なフィルムからなるラミネート層などが挙げられる。
保護層33の形成方法としては、例えば、保護層33としてシリコーン塗布層を用いる場合、温度インジケータ23全体を覆うようにシリコーン塗布層を形成するための溶液を塗布して乾燥することにより形成することができる。他の方法として、保護層33としてラミネート層を用いる場合、温度インジケータ23全体を覆うようにラミネート層を配置し、圧着することでラミネート層を固定することで保護層33を形成することができる。
なお、温度表示デバイス20Cに保護層33を設けない場合であっても、温度表示デバイス20Cの寸法と、温度インジケータ23、時間情報表示部24のレイアウトを予め印字装置に記憶させておき、温度インジケータ23の位置を避けるように印字範囲を設定しておけばよい。このようにすることで、印字の際に温度インジケータ23を直接加熱することがなく、温度インジケータ23の温度特性に影響を与えずに時刻及びその他の情報を印字することが可能である。
また、本実施形態において、基材21の参照部22、温度インジケータ23、時間情報表示部24及び保護層33が位置している面とは反対側の面に、粘着層及び剥離層(いずれも図示略)がこの順で設けられていてもよい。
<第6の態様>
本発明の第6の態様の温度表示デバイスについて、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第6の態様の温度表示デバイス20Dの断面図である。
本実施形態の温度表示デバイス20Dは、剥離層32と、剥離層32上の温度インジケータ23Dと、温度インジケータ23D上の透明基材34とを有する。
温度インジケータ23Dは、本発明の第1の態様のジアリールエテン化合物と、バインダとを含む薄層であり、少なくとも一方の面に粘着性を有する。
バインダとしては、温度検知対象物に温度表示デバイス20Dを貼付することが可能であり、かつ、ナノインデンターを用いて測定した温度インジケータ23Dの硬度が60MPa以下となるような粘着剤が挙げられる。バインダとして粘着剤を用いることにより、温度インジケータ23Dは一方の面に加えて、一方の面以外の部分も粘着性を有する。
このような粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
温度インジケータ23Dに含まれるジアリールエテン化合物及びバインダの含有量は、本発明の第2の態様の温度インジケータと同様である。
剥離層32は、温度インジケータ23Dの一方の面に形成されている。
剥離層32の材料は、温度インジケータ23Dから容易に剥離することが可能であれば特に限定されない。
透明基材34は、温度インジケータ23Dの他方の面に形成されている。
透明基材34としては、温度インジケータ23Dを初期化する際の光照射の妨げにならず、かつ、所定の時間経過後の色の変化を目視や読取処理装置にて確認する際の妨げとならない、光を透過する材料からなる基材であれば特に制限されない。
透明基材34としては、ガラス基材、透明樹脂基材などが挙げられる。透明樹脂基材を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
温度表示デバイス20Dは、例えば剥離層32上に温度インジケータ23Dを形成した後、温度インジケータ23D上に透明基材34を形成することで製造できる。
温度インジケータ23Dを形成する方法としては、本発明の第3の態様における、基材上に温度インジケータを形成する方法と同様である。
透明基材34の形成方法としては、別途作製しておいた透明基材34を温度インジケータ23Dに貼り付ける方法、透明樹脂基材を形成する樹脂と溶剤とを含む溶液を塗布して乾燥する方法などが挙げられる。
また、透明基材34上に温度インジケータ23Dを形成しておき、この温度インジケータ23D上に剥離層32を貼り付けてもよい。
温度インジケータ23Dを構成するバインダは粘着性を有しているので、温度表示デバイス20Dを使用する直前に剥離層32を温度インジケータ23Dから剥がし、剥離層32が剥離された温度表示デバイス20Dを対象物に貼付して使用することができる。
温度表示デバイス20Dの使用方法としては、本発明の第3の態様で説明した読取処理装置を用いた温度検知方法が挙げられる。
[包装体]
本発明の第7の態様の包装体について、図8を参照して説明する。
図8は、本発明の第7の態様の包装体60の斜視図である。
本実施形態の包装体60は、温度管理を行う対象となる製品等の対象物(例えば食品、医薬品等)を包装する包装材61と、参照部22と、温度インジケータ23とを有する。平面視において、参照部22と、温度インジケータ23とは、包装材61上の面方向に並んで形成されている。
包装の形態としては特に限定されず、個装、内装、外装のいずれでもよい。
包装材61としては、段ボール、発泡スチロール、袋、箱、缶、瓶、樽等が挙げられる。
包装材61の材質としては、紙、プラスチック、ビニール、布、金属、ガラス、木等が挙げられる。
包装材61及びその材質は、包装の形態に応じて決定される。
参照部22は、温度インジケータ23の色を特定するための指標となる基準色を呈する。
参照部22としては、本発明の第3の態様の説明において先に例示した参照部が挙げられる。
温度インジケータ23は、上述した本発明の第2の態様の温度インジケータである。すなわち、本実施形態の包装体60は、本発明の第2の態様の温度インジケータを有する。
本実施形態の包装体60は、例えば以下のようにして製造できる。
包装材61上に、参照部22を形成する。参照部22を形成する方法は、本発明の第3の態様の説明において先に例示した参照部の形成方法と同様である。
包装材61上に温度インジケータ23を形成する。温度インジケータ23を形成する方法としては、例えば本発明の第1の態様のジアリールエテン化合物と、バインダと、溶剤とを含む溶液を調製し、この溶液を包装材61上の一部に印刷又は塗布した後、乾燥させる方法が挙げられる。バインダとしては、本発明の第2の態様の説明において先に例示したバインダが挙げられる。溶剤としては、本発明の第3の態様の説明において先に例示した溶剤が挙げられる。
印刷方法としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、パッド印刷、オフセット印刷、シルク印刷、バーコーターを用いた印刷等が挙げられる。
塗布方法としては、スプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法等が挙げられる。
乾燥温度は、20~100℃の間で、生産性と温度インジケータ23のダメージを考慮して決定することが好ましい。
なお、バインダとして熱硬化性樹脂や水性塗料などの無溶剤系樹脂を用いれば、溶剤を用いることなく温度インジケータ23を形成できる。すなわち、無溶剤系樹脂とジアリールエテン化合物とを混合し、得られた混合物を包装材61上に印刷又は塗布した後に加熱や乾燥により無溶剤系樹脂を硬化させることで、温度インジケータ23を形成する。
また、ジアリールエテン化合物としてマイクロカプセル化されたものを用いる場合、例えばジアリールエテン化合物のマイクロカプセルをスクリーンインキに所望の濃度になるように混ぜた後、スクリーン印刷により包装材61上に一部に印刷して、温度インジケータ23を形成してもよい。印刷方法としては、スクリーン印刷に限定されず、先に例示した印刷方法を用いてもよい。
こうして得られた包装体60で対象物を包装した後に、温度インジケータ23に光を照射して温度インジケータ23を初期化し、対象物の温度管理を行う。
なお、対象物を包装材61で包装した後に、包装材61上に参照部22及び温度インジケータ23を形成してもよい。
本発明の第7の態様の包装体60は、上述したものに限定されない。例えば、包装体60は、複数の色強度を有する参照部22を有していてもよい。また複数の温度インジケータ23を有していてもよい。
また、読取処理装置を用いて温度検知する場合には、包装体60は参照部22を設けなくてもよい。読取処理装置としては、本発明の第3の態様の説明において先に例示した読取処理装置が挙げられる。
本発明のその他の態様としては、以下の通りである。
<1> 前記一般式(1)で表される、ジアリールエテン化合物。
<2> 前記一般式(1A)で表される、前記<1>のジアリールエテン化合物。
<3> 前記一般式(1B)で表される、前記<2>のジアリールエテン化合物。
<4> 前記一般式(1C)で表される、前記<3>のジアリールエテン化合物。
<5> 前記R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~7のシクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~7のシクロアルキル基であり、他方がSiR である、前記<1>~<4>のいずれか1つのジアリールエテン化合物。
<6> 前記R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基であり、他方がSiR である、前記<5>のジアリールエテン化合物。
<7> 前記Rが炭素数2~10のアルキル基であり、前記RがSiR である、前記<5>又は<6>のジアリールエテン化合物。
<8> 前記Rが炭素数2~4の第一級アルキル基又は第二級アルキル基であり、前記Rがトリメチルシリル基(Si(CH)又はトリエチルシリル基(Si(CHCH)である、前記<7>のジアリールエテン化合物。
<9> 前記RがSiR であり、前記Rが炭素数1~10のアルキル基である、前記<5>又は<6>のジアリールエテン化合物。
<10> 前記Rがトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基であり、前記Rが炭素数1~2の第一級アルキル基である、前記<9>のジアリールエテン化合物。
<11> 前記RがSiR であり、前記Rが炭素数3~10のアルキル基である、前記<5>又は<6>のジアリールエテン化合物。
<12> 前記Rがトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基であり、前記Rが炭素数3~7の第一級アルキル基又は第二級アルキル基である、前記<11>のジアリールエテン化合物。
<13> 前記Rがメチル基又はイソプロピル基であり、前記Rがトリメチルシリル基である、前記<5>又は<6>のジアリールエテン化合物。
<14> 前記Rがトリメチルシリル基であり、前記Rがメチル基又はイソプロピル基である、前記<5>又は<6>のジアリールエテン化合物。
<15> 前記<1>~<14>のいずれか1つのジアリールエテン化合物を含む、温度インジケータ。
<16> バインダをさらに含む、前記<15>の温度インジケータ。
<17> 前記<15>又は<16>の温度インジケータを有する、温度表示デバイス。
<18> 基材を有し、前記基材の一方の面に前記温度インジケータが形成されている、前記<17>の温度表示デバイス。
<19> 時間情報表示部を有し、平面視において、前記温度インジケータと前記時間情報表示部とが前記基材上の面方向に並んで形成されている、前記<18>の温度表示デバイス。
<20> 前記基材の他方の面に粘着層及び剥離層がこの順で形成されている、前記<18>又は<19>の温度表示デバイス。
<21> 前記温度インジケータ上に保護層が形成されている、前記<17>~<20>のいずれか1つの温度表示デバイス。
<22> 前記温度インジケータは少なくとも一方の面に粘着性を有し、前記一方の面に剥離層が形成されている、前記<17>の温度表示デバイス。
<23> 前記<15>又は<16>の温度インジケータを有する、包装体。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、ジアリールエテン化合物及びその中間化合物の同定には、以下のH-NMR、13C-NMR、質量分析法の1つ以上を用いた。
H-NMR、13C-NMR>
核磁気共鳴スペクトル装置(ブルカーバイオスピン株式会社(Bruker BioSpin K.K.)製、型式「AV-300N」)を用いて、中間化合物及びジアリールエテン化合物を同定した。溶媒として重クロロホルムを用い、基準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
<質量分析法>
質量分析装置として、ブルカーバイオスピン株式会社(Bruker BioSpin K. K.)製の型式「FT-ICR/solariX(MALDI)」又は日本電子株式会社製の型式「JMS-700/700S(FAB)」を用いて、中間化合物及びジアリールエテン化合物を同定した。イオン化には、3-ニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
<製造例1>
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテンの合成)
化合物(5-1)と環状化合物(A-1)とを反応させ、化合物(6-1)を得た。TMSはトリメチルシリル基である。
なお、化合物(5-1)である3-ブロモ-2-トリメチルシリル-5-フェニルチオフェンは、S. Kobatake et al., New J. Chem., 2009,33(6),1362-1367に記載された方法により合成した。
Figure 0007338901000015
アルゴン雰囲気にした四ツ口フラスコに化合物(5-1)である3-ブロモ-2-トリメチルシリル-5-フェニルチオフェン2g(6.4mmol)を入れ、無水エーテル50mLに溶かした。-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液5mL(8mmol)をゆっくりと滴下し、1.5時間撹拌した。環状化合物(A-1)としてオクタフルオロシクロペンテン2mL(15mmol) を含む無水エーテル5mLをすばやく滴下し、5時間撹拌した。室温に戻して水でクエンチし、エーテルで抽出した。有機層を取り出し塩析を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過した後、残った溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン)で分離精製し、リサイクル分取HPLCでさらに精製し、化合物(6-1)を1.9g(4.5mmol)、収率70%で得た。
H-NMR及び13C-NMRと、質量分析法により、得られた化合物(6-1)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.339 and 0.342(s,9H),7.3-7.5(m,4H),7.5-7.5(m,2H).13C-NMR(75MHz,CDCl,TMS)δ=-0.054,125.0,126.3,128.3,128.5,129.2,133.2,143.6,150.7.HR-MS(MALDI):m/z=424.0546(M).Calcd for C1815SSi=424.0547.
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
化合物(6-1)と化合物(8-1)とを反応させ、化合物(2-1)を得た。Meはメチル基である。
なお、化合物(8-1)である3-ブロモ-2-メチル-5-フェニルチオフェンは、M. Irie et al., J. Am. Chem. Soc.,2000,122(20),4871-4876に記載された方法により合成した。
Figure 0007338901000016
アルゴン雰囲気にした三ツ口フラスコに化合物(8-1)である3-ブロモ-2-メチル-5-フェニルチオフェン290mg(1.1mmol)を入れ、無水THF10mLに溶かした。-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液0.9mL(1.4mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。無水THF5mLに溶かした化合物(6-1)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテン480mg(1.1mmol)を入れ、3時間撹拌した。その後、室温に戻し、水でクエンチした後、THFを留去し、エーテルで抽出した。有機層を取り出し塩析を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過した後、残った溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=95:5)で分離精製し、さらにリサイクル分取HPLC及び順相シリカゲルカラムを用いたHPLC (溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=95:5)で精製し、化合物(2-1)を440mg(0.76mmol)、収率69%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(2-1)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.06(s,9H),2.02(s,3H),7.19(s,1H),7.2-7.7(m,11H).
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化反応)
化合物(2-1)を酸化させ、化合物(1-11)及び化合物(1-12)を得た。
Figure 0007338901000017
化合物(2-1)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテン110mg(0.19mmol)と、ジクロロメタン5mLとを入れたナス型フラスコに、70質量%のm-クロロ過安息香酸110mg(0.45mmol)を加えて暗所で終夜撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して、ジクロロメタンで抽出、塩析した後、溶媒を留去した。ショートカラム(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=8:2)を通した後、リサイクル分取HPLCと順相シリカゲルカラムを用いたHPLC(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分離精製し、化合物(1-11)を18mg(0.029mmol)、収率15%で得た。同様に、化合物(1-12)を42mg(0.069mmol)、収率36%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(1-11)及び化合物(1-12)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化物であることを確認した。
化合物(1-1)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.26(s,9H),2.13(s,3H),6.56(s,1H),7.3-7.7(m,9H),7.6-7.7(m,2H).
化合物(1-1)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.14(s,9H),2.36(s,3H),6.81(s,1H),7.24(s,1H),7.3-7.6(m,8H),7.7-7.8(m,2H).
<製造例2>
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-エチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
化合物(6-1)と化合物(8-2)とを反応させ、化合物(2-2)を得た。Etはエチル基である。
なお、化合物(8-2)である3-ブロモ-2-エチル-5-フェニルチオフェンは、S. Kobatake et al., J. Am. Chem. Soc., 2000,122(49),12135-12141に記載された方法により合成した。
Figure 0007338901000018
アルゴン雰囲気にした三ツ口フラスコに化合物(8-2)である3-ブロモ-2-エチル-5-フェニルチオフェン400mg(1.5mmol)を入れ、無水THF10mLに溶かした。-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液1.0mL(1.6mmol)をゆっくりと滴下し、1.5時間撹拌した。無水THF5mLに溶かした化合物(6-1)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテン650mg(1.5mmol)を入れ、2.5時間撹拌した。その後、室温に戻し、水でクエンチした後、THFを留去し、エーテルで抽出した。有機層を取り出し塩析を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過した後、残った溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン)で分離精製し、リサイクル分取HPLCでさらに精製し、化合物(2-2)を550mg(0.93mmol)、収率62%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(2-2)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-エチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.07(s,9H),0.95(t,J=7.5Hz,3H),2.37(q,J=7.5Hz,2H),7.2-7.7(m,12H).
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-エチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化反応)
化合物(2-2)を酸化させ、化合物(1-21)及び化合物(1-22)を得た。
Figure 0007338901000019
化合物(2-2)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-エチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテン140mg(0.24mmol)と、ジクロロメタン5mLとを入れたナス型フラスコに、70質量%のm-クロロ過安息香酸140mg(0.57mmol)を加えて暗所で終夜撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して、ジクロロメタンで抽出、塩析した後、溶媒を留去した。ショートカラム(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=8:2)を通した後、リサイクル分取HPLCと順相シリカゲルカラムを用いたHPLC(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分離精製し、化合物(1-21)を20mg(0.032mmol)、収率13%で得た。同様に、化合物(1-22)を60mg(0.096mmol)、収率40%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(1-21)及び化合物(1-22)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-エチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化物であることを確認した。
化合物(1-2)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.28(s,9H),1.04(t,J=7.5Hz,3H),2.54(q,J=7.5Hz,2H),6.58(s,1H),7.3-7.7(m,11H).
化合物(1-2)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.14(s,9H),1.27(t,J=7.5Hz,3H),2.64(q,J=7.5Hz,2H),6.80(s,1H),7.22(s,1H),7.3-7.6(m,8H),7.7-7.8(m,2H).
<製造例3>
(2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェンの合成)
化合物(9-3)とケトン化合物(B-3)とを反応させ、化合物(10-3)を得た。
Figure 0007338901000020
アルゴン雰囲気下で四つ口フラスコに化合物(9-3)としてチオフェン9.3g(110mmol)と、エーテル100mLを加えた。0℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液83mL(130mmol)をゆっくりと滴下した。その後、1時間還流し、0℃でケトン化合物(B-3)として無水アセトン9.8mL(130mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。その後、水を入れ、希塩酸で酸性にして、エーテルで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で分離精製、化合物(10-3)を11g(77mmol)、収率70%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(10-3)が2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=1.67(s,6H),2.06(s,1H),6.92-6.98(m,2H),7.19(dd,J=4.7,1.5Hz,1H).
(2-イソプロピルチオフェンの合成)
化合物(10-3)を還元して化合物(7-3)を得た。
Figure 0007338901000021
アルゴン雰囲気下でフラスコに塩化アルミニウム36g(270mmol)を入れ、氷冷しながら、無水エーテル80mLをゆっくり滴下した。次いで、水素化リチウムアルミニウム5g(130mmol)を加え、化合物(10-3)である2-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)チオフェン11g(77mmol)の無水エーテル100mL溶液をゆっくり滴下した。その後、1.5時間還流し、20質量%の希硫酸で処理した。次いで、エーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、減圧蒸留 (55 C/3.9kPa)で精製し、化合物(7-3)を2.2g(17mmol)、収率23%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(7-3)が2-イソプロピルチオフェンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=1.34(d,J=6.9Hz,6H),3.19(sep,J=6.9Hz,1H),6.80(d,J=3.6Hz,1H),6.92(dd,J=5.1,3.6Hz,1H),7.11(d,J=5.1Hz,1H).
(3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェンの合成)
化合物(7-3)と臭素とを反応させた後、得られた中間体と芳香族ハロゲン化合物と反応させ、化合物(8-3)を得た。
Figure 0007338901000022
フラスコに酢酸15mLと、水1mLと、化合物(7-3)である2-イソプロピルチオフェン2.2g(17mmol)を入れ、氷冷しながら 臭素6g(38mmol)をゆっくり滴下した。その後、水浴で終夜攪拌した。その後、 水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出した。チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー (溶離液:n-ヘキサン)で分離精製、中間体を3g(11mmol)、収率61%で得た。
H-NMRにより、得られた中間体が3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=1.27(d,J=6.8Hz,6H),3.30(sep,J=6.8Hz,1H),6.85(s,1H).
次いで、アルゴン雰囲気にした四つ口フラスコに中間体である3,5-ジブロモ-2-イソプロピルチオフェン1.1g(3.9mmol)を無水THF20mLに入れ、-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液2.6mL(4.2mmol)をゆっくりと滴下した。1時間攪拌した後、ホウ酸トリ-n-ブチル2.2mL(8mmol)をさらに滴下し、攪拌した。1時間攪拌した後、水でクエンチして反応を止め、20質量%の炭酸ナトリウム水溶液7mLと、Pd(PPh84mg(0.074mmol)と、ヨードベンゼン0.75g(3.7mmol)とを加え、9時間加熱還流した。その後、希塩酸で中和し、エーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトマトフィー (溶離液:n-ヘキサン)で分離精製し、化合物(8-3)を730mg(2.6mmol)、収率67%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(8-3)が3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=1.33(d,J=6.8Hz,6H),3.34(sep,J=6.8Hz,3H),7.10(s,1H),7.20-7.55(m,5H).
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
化合物(6-1)と化合物(8-3)とを反応させ、化合物(2-3)を得た。
なお、iPrはイソプロピル基である。
Figure 0007338901000023
アルゴン雰囲気にした三ツ口フラスコに化合物(8-3)である3-ブロモ-2-イソプロピル-5-フェニルチオフェン450mg(1.6mmol)を入れ、無水THF10mLに溶かした。-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液1.2mL(1.9mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。無水THF5mLに溶かした化合物(6-1)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテン680mg(1.6mmol)を入れ、5時間撹拌した。その後、室温に戻し、水でクエンチした後、THFを留去し、エーテルで抽出した。有機層を取り出し塩析を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過した後、残った溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=95:5)で分離精製し、リサイクル分取HPLCでさらに精製し、化合物(2-3)を750mg(1.2mmol)、収率75%で得た。
H-NMR及び13C-NMRと、質量分析法により、得られた化合物(2-3)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.09(s,9H),0.92(d,J=6.7Hz,6H),2.84(sep,J=6.7Hz,1H),7.21(s,1H),7.2-7.7(m,1H).13C-NMR(75MHz,CDCl,TMS)δ=0.03,25.4,30.0,122.6,122.9,125.7,125.9,126.3,128.0,128.4,129.1,129.2,133.5,133.8,134.3,142.0,150.3,156.4.MS(MALDI):m/z=606.1300(M).Calcd for C3128Si=606.1300.
(1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化反応)
化合物(2-3)を酸化させ、化合物(1-31)及び化合物(1-32)を得た。
Figure 0007338901000024
化合物(2-3)である1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテン120mg(0.20mmol)と、ジクロロメタン5mLとを入れたナス型フラスコに、70質量%のm-クロロ過安息香酸120mg(0.49mmol)を加えて暗所で終夜撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して、ジクロロメタンで抽出、塩析した後、溶媒を留去した。ショートカラム(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)を通した後、リサイクル分取HPLCと順相シリカゲルカラムを用いたHPLC(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分離精製し、化合物(1-31)を23mg(0.036mmol)、収率18%で得た。同様に、化合物(1-32)を46mg(0.072mmol)、収率36%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(1-31)及び化合物(1-32)が1-(2-トリメチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化物であることを確認した。
化合物(1-3)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.30(s,9H),1.15(d,J=7.0Hz,6H),2.88(sep,J=7.0Hz,1H),6.79(s,1H),7.24(s,1H),7.3-7.7(m,10H).
化合物(1-3)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.16(s,9H),1.23(d,J=6.7Hz,6H),2.95(sep,J=6.7Hz,1H),6.78(s,1H),7.16(s,1H),7.3-7.6(m,8H),7.7-7.8(m,2H).
<製造例4>
(1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
化合物(6-4)と化合物(8-1)とを反応させ、化合物(2-4)を得た。TESはトリエチルシリル基である。
なお、化合物(6-4)である1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテンは、D. Kitagawa et al., J. Mater. Chem. C, 2017,5(25),6210-6215に記載された方法により合成した。
Figure 0007338901000025
アルゴン雰囲気にした三ツ口フラスコに化合物(8-1)である3-ブロモ-2-メチル-5-フェニルチオフェン410mg(1.6mmol)を入れ、無水THF10mLに溶かした。-78℃で1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液1.1mL(1.8mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。無水THF5mLに溶かした化合物(6-4)である1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)ヘプタフルオロシクロペンテン760mg(1.6mmol)を入れ、1時間撹拌した。その後、室温に戻し、水でクエンチした後、THFを留去し、エーテルで抽出した。有機層を取り出し塩析を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過した後、残った溶媒を留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液:n-ヘキサン)で分離精製し、化合物(2-4)を490mg(0.79mmol)、収率49%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(2-4)が1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンであることを確認した。
H-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.55(br,6H),0.81(br,9H),2.04(s,3H),7.18(s,1H),7.2-7.5(m,9H),7.6-7.7(m,2H).
(1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化反応)
化合物(2-4)を酸化させ、化合物(1-41)及び化合物(1-42)を得た。
Figure 0007338901000026
化合物(2-4)である1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテン120mg(0.19mmol)と、ジクロロメタン5mLとを入れたナス型フラスコに、70質量%のm-クロロ過安息香酸120mg(0.49mmol)を加えて暗所で終夜撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して、ジクロロメタンで抽出、塩析した後、溶媒を留去した。ショートカラム(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)を通した後、リサイクル分取HPLCと順相シリカゲルカラムを用いたHPLC(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分離精製し、化合物(1-41)を37mg(0.057mmol)、収率30%で得た。同様に、化合物(1-42)を24mg(0.037mmol)、収率19%で得た。
H-NMRにより、得られた化合物(1-41)及び化合物(1-42)が1-(2-トリエチルシリル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの酸化物であることを確認した。
化合物(1-4)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.73(q,J=7.7Hz,6H),0.90(t,J=7.7Hz,9H),2.16(s,3H),6.53(s,1H),7.3-7.5(m,9H),7.6-7.7(m,2H).
化合物(1-4)のH-NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=0.67(q,J=7.7Hz,6H),0.84(t,J=7.7Hz,9H),2.39(s,3H),6.83(s,1H),7.21(s,1H),7.3-7.5(m,8H),7.7-7.8(m,2H).
<製造例5>
(1-(1,1-ジオキシド-2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
特開2014-15552号公報に記載された方法により、化合物(1-5)である1-(1,1-ジオキシド-2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-イソプロピル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンを得た。
Figure 0007338901000027
<製造例6>
(1-(1,1-ジオキシド-2-シクロヘキシル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-シクロヘキシル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンの合成)
特開2014-15552号公報に記載された方法により、化合物(1-6)である1-(1,1-ジオキシド-2-シクロヘキシル-5-フェニル-3-チエニル)-2-(2-シクロヘキシル-5-フェニル-3-チエニル)ペルフルオロシクロペンテンを得た。
Figure 0007338901000028
<実施例1>
-60℃下において、製造例1で得られた化合物(1-11)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を照射し、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。波長581nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を図9Aに示す。また、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図9Bに示す。
化合物(1-11)に紫外線を照射すると、着色することが確認できた。これは、以下に示すように、化合物(1-11)の2つのチオフェン環同士が紫外線の照射により環を形成(閉環)したことを意味する。
Figure 0007338901000029
図9Bに示すように、開環体、すなわち化合物(1-11)は波長285nmに吸収スペクトルを有し、閉環体、すなわち光定常状態の化合物は波長581nmに吸収スペクトルを有していた。
<実施例2>
-60℃下において、製造例1で得られた化合物(1-12)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を照射し、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。波長541nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を図10Aに示す。また、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図10Bに示す。
化合物(1-12)に紫外線を照射すると、着色することが確認できた。これは、以下に示すように、化合物(1-12)の2つのチオフェン環同士が紫外線の照射により環を形成(閉環)したことを意味する。
Figure 0007338901000030
図10Bに示すように、開環体、すなわち化合物(1-12)は波長284nmに吸収スペクトルを有し、閉環体、すなわち光定常状態の化合物は波長541nmに吸収スペクトルを有していた。
<実施例3>
-80℃下において、製造例3で得られた化合物(1-31)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を照射し、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。波長591nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を図11Aに示す。また、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図11Bに示す。
化合物(1-31)に紫外線を照射すると、着色することが確認できた。これは、以下に示すように、化合物(1-31)の2つのチオフェン環同士が紫外線の照射により環を形成(閉環)したことを意味する。
Figure 0007338901000031
図11Bに示すように、開環体、すなわち化合物(1-31)は波長284nmに吸収スペクトルを有し、閉環体、すなわち光定常状態の化合物は波長591nmに吸収スペクトルを有していた。
<実施例4>
-60℃下において、製造例3で得られた化合物(1-32)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を照射し、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。波長548nmにおける吸光度と、紫外線の照射時間との関係を図12Aに示す。また、紫外線を照射する前と、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図12Bに示す。
化合物(1-32)に紫外線を照射すると、着色することが確認できた。これは、以下に示すように、化合物(1-32)の2つのチオフェン環同士が紫外線の照射により環を形成(閉環)したことを意味する。
Figure 0007338901000032
図12Bに示すように、開環体、すなわち化合物(1-32)は波長283nmに吸収スペクトルを有し、閉環体、すなわち光定常状態の化合物は波長548nmに吸収スペクトルを有していた。
<実施例5>
30℃、35℃、40℃、45℃の各温度下において、製造例1で得られた化合物(1-12)のトルエン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を約30秒照射して着色させた。次いで、各温度のまま放置して、経時的にセル中の色の変化を確認し、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。波長541nmにおける吸光度において、退色度合い(A/A)と放置時間との関係を図13Aに示す。また、退色度合い(A/A)の自然対数を縦軸、放置時間を横軸にプロットしたグラフを図13Bに示す。
なお、「A」は紫外線照射後0秒における波長541nmの吸光度であり、「A」は各放置時間における波長541nmの吸光度である。また、各温度下での測定は2回行った。
次いで、図13Bから、各温度での熱分解速度定数(k)を求めた。熱分解速度定数(k)の自然対数を縦軸、各温度の逆数を横軸にプロットしたグラフを図13Cに示す。
次いで、以下のようにして10時間半減期を求めた。
まず、熱分解反応を一次反応式とすると、下記式(i)が成り立つ。
ln(C/C)=kt ・・・(i)
式(i)中、「C」は化合物の初期濃度、「C」は化合物のt時間後の濃度、「k」は熱分解速度定数、tは反応時間である。
半減期は、化合物の濃度が初期濃度の半分に減少する時間、すなわちC=C/2となる時間である。よって、半減期と熱分解速度定数(k)とは下記式(ii)の関係となる。
1/2=ln2/k ・・・(ii)
一方、速度定数の温度依存性はアレニウスの式で表されることから、下記式(iii)が成り立つ。
k=A・exp(-E/RT) ・・・(iii)
式(iii)中、「A」は頻度因子、「E」は活性化エネルギー、「R」は気体定数(8.314J/mol・K)、「T」は絶対温度(K)である。
図13Cに示す直線の傾きから化合物の活性化エネルギー(E)を求め、そのy切片から頻度因子(A)を求めた。これらを式(iii)に代入し、式(ii)中においてt1/2=10hとなるときの温度(10時間半減期温度T)を求めた。結果を表1に示す。また、活性化エネルギー(E)及び頻度因子(A)と、0℃での半減期を表1に示す。
なお、表1中のR及びRは、前記一般式(1C)中のR及びRに相当する。
<実施例6>
製造例2で得られた化合物(1-22)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を15℃、20℃、25℃、30℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長553nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<実施例7>
製造例3で得られた化合物(1-32)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を0℃、5℃、10℃、15℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長548nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<実施例8>
製造例1で得られた化合物(1-11)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を0℃、5℃、10℃、15℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長581nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<実施例9>
製造例4で得られた化合物(1-41)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を-5℃、0℃、5℃、10℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長584nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<実施例10>
製造例2で得られた化合物(1-21)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を-20℃、-15℃、-10℃、-5℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長581nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<実施例11>
製造例3で得られた化合物(1-31)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を-50℃、-45℃、-40℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長591nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<比較例1>
製造例5で得られた化合物(1-5)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を60℃、70℃、80℃、90℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長550nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
<比較例2>
製造例6で得られた化合物(1-6)を用い、紫外線照射時及び放置時の温度を60℃、70℃、80℃に変更した以外は、実施例5と同様にして吸収スペクトルを測定し、10時間半減期温度等を求めた。ただし、10時間半減期温度等を求める際は、波長554nmにおける吸光度に基づいて図13A~図13Cと同様のグラフを作成した。結果を表1に示す。
Figure 0007338901000033
表1に示すように、実施例6~11で用いた化合物は、10時間半減期温度が22℃以下であった。
一方、比較例1、2で用いた化合物は、10時間半減期温度が60℃以上と高かった。
よって、本発明のジアリールエテン化合物は、低温環境下での温度管理に適している。
<実施例12>
-60℃下において、製造例1で得られた化合物(1-11)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を120秒照射して着色させ、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。紫外線を照射する前の吸収スペクトルを図14Aに示し、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図14Bに示す。
次いで、退色するまで40℃で放置した後、-60℃で吸収スペクトルを測定した。結果を図14Cに示す。
次いで、紫外線(波長313nm)を480秒照射し、吸収スペクトルを測定した。結果を図14Dに示す。
図14Bに示すように、光定常状態(PSS)の化合物、すなわち閉環体は波長581nmに吸収スペクトルを有していた。
一方、図14Dでは、波長581nm付近に吸収スペクトルは確認できなかった。すなわち、化合物(1-11)は、退色後、再び紫外線を照射しても再着色しないことが示された。
<実施例13>
-60℃下において、製造例1で得られた化合物(1-12)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を300秒照射して着色させ、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。紫外線を照射する前の吸収スペクトルを図15Aに示し、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図15Bに示す。
次いで、退色するまで55℃で放置した後、-60℃で吸収スペクトルを測定した。結果を図15Cに示す。
次いで、紫外線(波長313nm)を600秒照射し、吸収スペクトルを測定した。結果を図15Dに示す。
図15Bに示すように、光定常状態(PSS)の化合物、すなわち閉環体は波長541nmに吸収スペクトルを有していた。
一方、図15Dでは、波長541nm付近に吸収スペクトルは確認できなかった。すなわち、化合物(1-12)は、退色後、再び紫外線を照射しても再着色しないことが示された。
<実施例14>
-80℃下において、製造例3で得られた化合物(1-31)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を180秒照射して着色させ、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。紫外線を照射する前の吸収スペクトルを図16Aに示し、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図16Bに示す。
次いで、退色するまで0℃で放置した後、-80℃で吸収スペクトルを測定した。結果を図16Cに示す。
次いで、紫外線(波長313nm)を600秒照射し、吸収スペクトルを測定した。結果を図16Dに示す。
図16Bに示すように、光定常状態(PSS)の化合物、すなわち閉環体は波長591nmに吸収スペクトルを有していた。
一方、図16Dでは、波長591nm付近に吸収スペクトルは確認できなかった。すなわち、化合物(1-31)は、退色後、再び紫外線を照射しても再着色しないことが示された。
<実施例15>
-60℃下において、製造例3で得られた化合物(1-32)のn-ヘキサン溶液(濃度:約10-5mol/L)を石英セルに入れ、熔封した後、紫外線(波長313nm)を360秒照射して着色させ、吸光光度計(日本分光株式会社製、型式「V-560」)を用いて吸収スペクトルを測定した。紫外線を照射する前の吸収スペクトルを図17Aに示し、光定常状態(PSS)における吸収スペクトルを図17Bに示す。
次いで、退色するまで40℃で放置した後、-60℃で吸収スペクトルを測定した。結果を図17Cに示す。
次いで、紫外線(波長313nm)を780秒照射し、吸収スペクトルを測定した。結果を図17Dに示す。
図17Bに示すように、光定常状態(PSS)の化合物、すなわち閉環体は波長548nmに吸収スペクトルを有していた。
一方、図17Dでは、波長548nm付近に吸収スペクトルは確認できなかった。すなわち、化合物(1-32)は、退色後、再び紫外線を照射しても再着色しないことが示された。
本発明のジアリールエテン化合物、温度インジケータ、温度表示デバイス及び包装体は、低温環境下での温度管理に適している。
20,20A,20B,20C,20D…温度表示デバイス、21…基材、22…参照部、23,23D…温度インジケータ、24…時間情報表示部、31…粘着層、32…剥離層、33…保護層、34…透明基材、40…温度履歴管理ラベル、60…包装体、61…包装材。

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)で表される、ジアリールエテン化合物。
    Figure 0007338901000034
    (式(1)中、環Aは、5員環構造又は6員環構造を示しており、
    Xは、硫黄原子(S)、NR又は酸素原子(O)であり、Rは水素原子(H)又はアルキル基であり、
    及びYはそれぞれ独立に、炭素原子(C)又は窒素原子(N)であり、
    及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
    は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
    は、Yが炭素原子(C)である場合には、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、Yが窒素原子(N)である場合には、電子対であり、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。)
  2. 下記一般式(1A)で表される、請求項1に記載のジアリールエテン化合物。
    Figure 0007338901000035
    (式(1A)中、6つのZはそれぞれ独立に、水素原子(H)又はフッ素原子(F)であり、
    及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方がアルキル基又はシクロアルキル基であり、他方がSiR であり、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成しており、
    は、水素原子(H)、フェニル基、アルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基、又はRと互いに結合して環構造を形成している。)
  3. 前記R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~7のシクロアルキル基又はSiR であり、3つのRはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基又は芳香族基であり、R及びRの一方が炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~7のシクロアルキル基であり、他方がSiR である、請求項1又は2に記載のジアリールエテン化合物。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載のジアリールエテン化合物を含む、温度インジケータ。
  5. 請求項4に記載の温度インジケータを有する、温度表示デバイス。
  6. 基材を有し、前記基材の一方の面に前記温度インジケータが形成されている、請求項5に記載の温度表示デバイス。
  7. 時間情報表示部を有し、平面視において、前記温度インジケータと前記時間情報表示部とが前記基材上の面方向に並んで形成されている、請求項6に記載の温度表示デバイス。
  8. 前記基材の他方の面に粘着層及び剥離層がこの順で形成されている、請求項6又は7に記載の温度表示デバイス。
  9. 前記温度インジケータ上に保護層が形成されている、請求項5~8のいずれか一項に記載の温度表示デバイス。
  10. 前記温度インジケータは少なくとも一方の面に粘着性を有し、前記一方の面に剥離層が形成されている、請求項5に記載の温度表示デバイス。
  11. 請求項4に記載の温度インジケータを有する、包装体。
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