以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る内視鏡システムおよび蛍光画像出力方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施の形態1の概要)
以下の実施の形態1に係る内視鏡システムでは、光源は、被写体に対して、非可視光帯域の第1所定範囲(例えば、380nm~420nm)の波長を有する第1励起光(例えば、Violet光)と、非可視光帯域の第2所定範囲(例えば、690nm~810nm)の波長を有する第2励起光(例えば、IR光)とを出射する。光学フィルタは、第1所定範囲および第2所定範囲の波長のそれぞれを有する光(つまり、第1励起光および第2励起光)を遮断する。センサ部は、光学フィルタの出射側に配置され、第1励起光および第2励起光のそれぞれにより励起されて蛍光発光した被写体の撮像画像を生成する。第1励起光に基づく蛍光、および第2励起光に基づく蛍光のそれぞれの波長域は対応する励起光の波長より長波長側にシフトし、光学フィルタにより遮断されない。出力部は、被写体の撮像画像をモニタに出力する。
(実施の形態1に係る内視鏡システムの構成)
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の外観例を示す斜視図である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」は、図1に示すそれぞれの方向に従う。例えば、水平面に置かれたビデオプロセッサ30の上方向,下方向をそれぞれ「上」,「下」と称し、内視鏡10が観察対象を撮像する側を「前」と称し、内視鏡10がビデオプロセッサ30に接続される側を「後」と称する。
内視鏡システム5は、内視鏡10と、ビデオプロセッサ30と、モニタ40とを含む構成である。内視鏡10は、例えば医療用の軟性鏡である。ビデオプロセッサ30は、観察対象(例えば、人体の内部。以下同様。)に挿入された内視鏡10により撮像されて得られた撮像画像(例えば、静止画もしくは動画)に対して所定の画像処理を施してモニタ40に出力する。モニタ40は、ビデオプロセッサ30から出力された画像処理後の撮像画像のデータを表示する。画像処理は、例えば、色補正、階調補正、ゲイン調整であるが、これらの処理に限定されない。
内視鏡10は、例えば人体内に挿入され、観察対象の様子を被写体として撮像する。内視鏡10は、観察対象の内部に挿入されるスコープ13と、スコープ13の後端部が接続されるプラグ部16とを含む。スコープ13は、比較的長い可撓性を有する軟性部11と、軟性部11の先端に設けられた剛性を有する硬性部12とを含む。スコープ13の構造については後述する。
ビデオプロセッサ30は、筐体30zを有し、内視鏡10により撮像された撮像画像に対して画像処理を施し、画像処理後の撮像画像のデータを表示データとしてモニタ40に出力する。筐体30zの前面には、プラグ部16の基端部16zが挿入されるソケット部30yが配置される。プラグ部16の基端部16zがソケット部30yに挿入され、内視鏡10とビデオプロセッサ30とが電気的に接続されることで、内視鏡10とビデオプロセッサ30との間で電力および各種のデータもしくは情報(例えば、撮像映像のデータもしくは各種の制御情報)の送受信が可能となる。これらの電力および各種のデータ若しくは情報は、スコープ13の内部に挿通された伝送ケーブル(図示略)を介して、プラグ部16から軟性部11側に伝送される。また、硬性部12の内側に設けられたイメージセンサ22(言い換えると、固体撮像素子、図2参照)から出力される撮像画像のデータは、伝送ケーブルを介して、プラグ部16からビデオプロセッサ30に伝送される。また、軟性部11は、内視鏡10の操作部(図示略)への入力操作に応じて、可動(例えば屈曲)する。内視鏡10の操作部(図示略)は、例えばビデオプロセッサ30に近い内視鏡10の基端側に配置される。
ビデオプロセッサ30は、伝送ケーブルを介して伝送された撮像画像のデータに対し、所定の画像処理(上述参照)を施し、画像処理後の撮像画像のデータを表示データとして生成変換して、モニタ40に出力する。
モニタ40は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)もしくは有機EL(Electroluminescence)等の表示デバイスを用いて構成される。モニタ40は、ビデオプロセッサ30により画像処理が施された後の撮像画像(つまり、内視鏡10によって撮像された被写体の撮像画像)のデータを表示する。モニタ40に表示された撮像画像は、例えば内視鏡を用いた手術中に医者等によって視認される。
図2は、スコープ13の先端に設けられた硬性部12の内部構造を示す模式図である。硬性部12の先端面には、撮像窓12zが配置される。撮像窓12zは、例えば光学ガラスもしくは光学プラスチック等の光学材料を含んで形成され、被写体からの光を入射する。
硬性部12の先端面には、第1励起光光源ユニット332(図4参照)からのIR(Infrared Ray)励起光を伝送するための光ファイバ27Bの先端が露出する照射窓28yが配置される。硬性部12の先端面には、第2励起光光源ユニット333(図4参照)からのViolet励起光を伝送するための光ファイバ27Cの先端が露出する照射窓27zが配置される。光ファイバ27Bから、後述するように、ICG(インドシアニングリーン)の蛍光試薬を蛍光発光させるために適した波長(後述参照)を有するIR励起光(レーザ光)が出射される。また、光ファイバ27Cから、後述するように、5-ALAの蛍光試薬を蛍光発光させるために適した波長(後述参照)を有するViolet励起光(レーザ光)が出射される。
硬性部12の先端面には、可視光光源ユニット331(図4参照)からの可視光を伝送するための光ファイバ27Aの先端が露出する照射窓28zが配置される。なお、図2では可視光用の照射窓28zとViolet励起光用の照射窓27zとIR励起光用の照射窓28yとが別々に構成されているが、一つの照射窓に纏めて構成されてもよい。この場合、それぞれの光ファイバ27A,28B,27Cは一つの照射窓に纏めて導出される。
なお、IR励起光に対応する光ファイバ27BおよびViolet励起光に対応する光ファイバ27Cの配置数は、1つに限らず、それぞれの光ファイバがスコープ13内に収容可能であれば複数設けられてもよい。
硬性部12の内側には、撮像窓12z側からレンズ等の光学系24、励起光カットフィルタ23、イメージセンサ22が配置される。イメージセンサ22は、センサユニットSUを構成する。具体的には、センサユニットSUは、第1駆動回路21と、露光制御部EPと、イメージセンサ22とを含む構成である(図4参照)。光学系24は、単一のレンズで構成されてもよいし、複数枚のレンズを用いて構成されてもよい。
撮像窓12zから入射した光(具体的には、可視光、Violet励起光に基づいて蛍光発光した光、または、IR励起光に基づいて蛍光発光した光)は、光学系24に入射して光学系24により集光され、励起光カットフィルタ23を透過した後、第1駆動回路21の制御の下で動作する露光制御部EPを介して、イメージセンサ22の撮像面に結像する。スコープ13の硬性部12の内側に配置されるイメージセンサ22の大きさ(つまり、径方向の長さ)は10mm以下であるので、イメージセンサ22を内視鏡に適用可能である。
図3は、イメージセンサ22の構造を説明する模式図である。イメージセンサ22は、例えば、イメージセンサ22の前面に、非可視光(IRもしくはViolet)、赤色(R)、青色(B)および緑色(G)の波長の光をそれぞれ透過させる色フィルタ22zがベイヤ配列で配置されている。図3では、非可視光用画素をIR励起光に対する蛍光(つまり、Violet励起光から発生する蛍光は600nm~740nmで、可視光領域のR画素またはG画素でセンシング)を透過させることを示すために、便宜的に「IR/G」と示されている。なお、図3では、「IR/G」と示されているが、「IR/G」の代わりに「IR/R」と示されてもよい。イメージセンサ22は、例えば、各波長の光を受光する非可視光用画素、赤色用画素、青色用画素、および緑色用画素が複数配列された構造を有する撮像素子である。
イメージセンサ22は、例えば、CCD(Charged Coupled Device)もしくはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を用いて構成される。イメージセンサ22は、例えば四角形状に構成され、非可視光(例えば、IR光およびViolet光)、赤色光、青色光および緑色光を同時に受光可能な単板式カメラとして用いられる。
図4は、実施の形態1に係る内視鏡システム5のハードウェア構成例を示すブロック図である。内視鏡10は、前述したように、スコープ13の硬性部12の内側に設けられた、光学系24、励起光カットフィルタ23、イメージセンサ22、露光制御部EPおよび第1駆動回路21を備える。内視鏡10は、スコープ13の内側に挿通され、プラグ部16の基端部16zから硬性部12の先端面まで延びた光ファイバ27(図6参照、具体的には、光ファイバ27A,27B,27C)を備える。
第1駆動回路21、露光制御部EPおよびイメージセンサ22により、センサ部の一例としてのセンサユニットSUが構成される。
第1駆動回路21は、内視鏡10内の駆動部として動作し、露光制御部EPによる電子シャッタのオンオフを切り替えることで、イメージセンサ22における撮像のオンオフを切り替える。
露光制御部EPは、第1駆動回路21の制御の下で、イメージセンサ22の撮像面への光の入射のオン(つまり、電子シャッタのオン)と、イメージセンサ22の撮像面への光の入射のオフ(つまり、電子シャッタのオフ)とを切り替える。
イメージセンサ22は、第1駆動回路21によって露光制御部EPにより電子シャッタがオンされた場合、撮像面に結像された光学像を光電変換し、撮像画像の信号(データ)を、伝送ケーブルを介してビデオプロセッサ30内のイメージプロセッサ35に出力する。なお、イメージセンサ22による光電変換では、例えば光学像の露光および撮像画像の信号(データ)の生成や読み出しが行われる。
光学フィルタの一例としての励起光カットフィルタ23は、イメージセンサ22の前側(言い換えると、受光側)に配置され、可視光を透過させる。また、励起光カットフィルタ23は、光学系24を透過する光のうち、被写体により反射された励起光(具体的には、Violet励起光、IR励起光)の透過を遮断し、Violet励起光に基づく蛍光ならびにIR励起光に基づく蛍光をそれぞれ透過させる。つまり、実施の形態1に係る励起光カットフィルタ23は、特許文献1に記載のIR励起光カットフィルタとは異なり、複数の異なる波長帯域を有するViolet励起光ならびにIR励起光の透過を遮断する特性を有する(図5参照)。
励起光カットフィルタ23は、実施の形態1では、イメージセンサ22の前面に配置されているが、光学系24の光線の入射光路上に配置されていれば良く、光学要素上に直接配置することも出来る。また、励起光カットフィルタ23は入射光に対し角度依存性を有するので、光線の入射角度が小さい部分に配置することが望ましく、その角度は概ね25°以下であることが望ましい。
図5は、実施の形態1および比較例に係るそれぞれの励起光カットフィルタの特性例を示す図である。図5の符号a2は、比較例(具体的には、特許文献1参照)に係るIR励起光カットフィルタの特性を示す。比較例に係るIR励起光カットフィルタは、符号a2に示されるように、660nm~850nmの波長を有する光に対し、透過率0.1%以下(例えば0.01%以下)となる特性を有する。
内視鏡を用いた手術では、医者等が患部のリンパ節の状況を判別するために、観察対象である人体内に蛍光物質(蛍光試薬)であるICG(インドシアニングリーン)がIR励起光の照射前に予め投与されると、被写体である患部にICG(インドシアニングリーン)が集積する。ICG(インドシアニングリーン)は、IR励起光に基づいて励起されると、より高波長側(例えば860nm)の光で蛍光発光する。IR励起光の波長は例えば780nmもしくは808nmである。これにより、比較例に係るIR励起光カットフィルタは、780nmもしくは808nmの波長を有するIR励起光の透過を遮断できる。
従って、符号a2に示されるように、比較例に係るIR励起光カットフィルタでは、860nm付近の波長を有するICG(インドシアニングリーン)の蛍光の透過率が高く、780nmもしくは808nmの波長を有するIR励起光の透過率がほぼ0%であり、透過率が低い。このように、比較例に係るIR励起光カットフィルタは、IR励起光のうち、蛍光発光に寄与しないIR励起光の透過を遮断するので、良好なSN比(コントラスト)を得ることが出来る。また、比較例に係るIR励起光カットフィルタでは、例えば410nm~660nmの波長を有する可視光の透過率が高い。つまり、比較例に係るIR励起光カットフィルタでは、例えば410nmを超える410nm近傍の波長を有する光の透過率が高い。
しかし、上述したように、医者等が患者の体内にガン細胞等の腫瘍が存在する場合、その腫瘍部分を的確に判別するために蛍光物質(蛍光試薬)である5-ALAがViolet励起光の照射前に予め投与され、生合成された蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)が腫瘍部分に集積される。ここでいうViolet励起光は、蛍光物質(蛍光試薬)であるプロトポルフィリンIXを蛍光発光させるために適する波長(例えば、404nm)を有する光であり、例えば380nm~420nmの範囲の波長帯域を有する。この場合、比較例に係るIR励起光カットフィルタ(符号a2参照)によると、Violet励起光の波長(例えば404nm)の光は透過してしまうため、プロトポルフィリンIXの蛍光(例えば620nm~680nm)だけでなくViolet励起光自体もイメージセンサ22に結像されてしまう。このため、プロトポルフィリンIXの蛍光による撮像画像の画質が劣化して撮像画像の視認性が悪くなり、手術に支障をきたす可能性がある。
そこで、実施の形態1に係る励起光カットフィルタ23(符号a1参照)は、比較例に係るIR励起光カットフィルタが1つの透過禁止帯域(つまり、660nm~850nmの波長帯域)を有するのに対し、2つの透過禁止帯域を有する。具体的に、符号a1に示されるように、2つの透過禁止帯域は、380nm~420nmの波長帯域と、690nm~820nmの波長帯域である。前者の波長帯域は、例えばViolet励起光の透過を遮断するための帯域に対応する。後者の波長帯域は、例えばIR励起光の透過を遮断するための帯域に対応する。言い換えると、実施の形態1に係る励起光カットフィルタ23は、被写体により反射されたViolet励起光だけでなくIR励起光の透過を遮断することができる。なお、符号a1において、2つの透過禁止帯域は、380nm~420nmの波長帯域と、690nm~820nmの波長帯域であると上述したが、図5に示すように、380nm以下の波長帯域も透過禁止帯域(例えば、透過率が0.1%以下)としてもよい。380nm以下の波長帯域がカットされない場合、380nm以下の波長帯域は一般的には紫外領域ではあるものの、イメージセンサ22に入射する光は青色が強くなり、イメージセンサ22から出力される画像は青みがかる傾向にある。よって、イメージセンサ22から出力される画像は実際に目視した映像に比べると青色の強い画像となることがある。そこで、励起光カットフィルタ23は380nm~420nmだけでなく、380nm以下の波長帯域もカットすることにより、励起光カットフィルタ23はViolet励起光の透過を遮断でき、かつ、イメージセンサ22は目視映像に近い画像を出力することができる。なお、図5において、符号a1は200nm~420nmの波長帯域をカットする特性を示すが、200nmの波長帯域も同様にカットしてもよい。
また、図4に示すように、ビデオプロセッサ30は、コントローラ31、第2駆動回路32、光源ユニット33、イメージプロセッサ35、およびディスプレイプロセッサ36を備える。
コントローラ31は、内視鏡10による撮像処理を統括的に制御する。コントローラ31は、切替信号に基づいて、第2駆動回路32に対して可視光、IR励起光およびViolet励起光の両方、またはいずれかを照射するように発光を制御するための制御信号を生成して出力する。すなわち、コントローラ31の制御により、可視光、IR励起光、Violet励起光のいずれか1つまたは2つ、あるいは全てが出力される。この切り替えはユーザの操作により任意に行われても良い。また、コントローラ31は、第2駆動回路32に対するいずれかの光の発光制御と同期して、発光させる光に対応して内視鏡10内の第1駆動回路21の動作を制御する。切替信号は、ビデオプロセッサ30と接続されたフットスイッチ(図示略)に対する医者等の操作に基づいて生成されてよい。また、切替信号は、医者等が可視光、IR励起光およびViolet励起光のうちどの光を照射するかを音声で発した時に、その音声を解析した音声認識アプリケーション(図示略)の出力(つまり、音声認識結果)でもよい。
第2駆動回路32は、例えば光源駆動回路であり、コントローラ31からの制御信号に応じて、光源ユニット33(具体的には、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333)のそれぞれを駆動し、対応する光(具体的には、可視光、IR励起光、Violet励起光)を連続的に発光(照射)させる。それぞれの対応する光源ユニット(つまり、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333)は、撮像期間において、継続して点灯(連続点灯)し、対応する光(具体的には、可視光、IR励起光、Violet励起光)を被写体に連続して照射する。
この撮像期間は、観察部位を内視鏡10で撮像する期間を示す。撮像期間は、例えば、内視鏡システム5が、内視鏡10またはビデオプロセッサ30に設けられたスイッチ(図示略、例えばフットスイッチ)をオンにするユーザ操作を受け付けてから、オフにするユーザ操作を受け付けるまでの期間である。なお、スイッチはフットスイッチに限定されない。
また、第2駆動回路32は、それぞれの対応する光源ユニット(つまり、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333)を駆動し、対応する光(具体的には、可視光、IR励起光、Violet励起光)を所定間隔でパルス発光させてもよい。この場合、それぞれの対応する光源ユニット(つまり、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333)は、撮像期間において、断続的に点灯(パルス点灯)し、対応する光(具体的には、可視光、IR励起光、Violet励起光)を被写体にパルス照射する。なお、撮像期間において、例えばIR励起光もしくはViolet励起光が発光され、可視光が発光されないタイミングが、蛍光発光画像(つまり、IR励起光もしくはViolet励起光に基づく蛍光が撮像された画像)を撮像するタイミングとなる。
光源の一例としての光源ユニット33は、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333を有する。
第2駆動回路32は、可視光光源ユニット331を駆動し、可視光(つまり、白色光、400nm~700nm、図8参照)をパルス発光させる。可視光光源ユニット331は、レーザダイオード25A(図6および図7参照)を有し、撮像期間中の可視光画像を撮像するタイミング中に、可視光を被写体に向けてレーザダイオード25Aからパルス照射する。なお、蛍光発光の光は微弱な明るさである。一方、可視光は短いパルスでも強い光が得られる。
第2駆動回路32は、第1励起光光源ユニット332を駆動し、IR励起光(730nm~805nm、図8参照)をパルス発光させる。第1励起光光源ユニット332は、レーザダイオード25B(図6および図7参照)を有し、撮像期間中のIR励起光に基づく蛍光発光画像を撮像するタイミング中に、IR励起光を被写体に向けてレーザダイオード25Bからパルス照射する。
第2駆動回路32は、第2励起光光源ユニット333を駆動し、Violet励起光(380nm~420nm、図8参照)をパルス発光させる。第2励起光光源ユニット333は、レーザダイオード25C(図6および図7参照)を有し、撮像期間中のViolet励起光に基づく蛍光発光画像を撮像するタイミング中に、Violet励起光を被写体に向けてレーザダイオード25Cからパルス照射する。
イメージプロセッサ35は、イメージセンサ22から交互に出力される蛍光発光画像と可視光画像とに対して所定の画像処理を施し、所定の画像処理後の撮像画像のデータを表示データとしてディスプレイプロセッサ36に出力する。
例えば、イメージプロセッサ35は、蛍光発光画像の輝度が可視光画像の輝度と比べて低い場合、蛍光発光画像のゲインを上げるようにゲイン調整する。イメージプロセッサ35は、蛍光発光画像のゲインを上げる代わりに、可視光画像のゲインを下げることで、ゲイン調整してもよい。イメージプロセッサ35は、蛍光発光画像のゲインを上げ、かつ、可視光画像のゲインを下げることで、ゲイン調整してもよい。イメージプロセッサ35は、蛍光発光画像のゲインを可視光画像よりも大きく上げ、かつ、可視光画像のゲインを上げることで、ゲイン調整してもよい。
出力部の一例としてのディスプレイプロセッサ36は、イメージプロセッサ35から出力される表示データ(つまり、所定の画像処理後の撮像画像のデータ)を、モニタ40における映像表示に適したデータ形式(例えば、NTSC(National Television System Committee))信号等の表示信号に生成変換してモニタ40に出力する。
モニタ40は、ディスプレイプロセッサ36から出力される表示信号に従い、蛍光発光画像と可視光画像とを、例えば同一の領域、または左右もしくは上下で対比的に表示する。これにより、医者等のユーザは、モニタ40に表示された蛍光発光画像と可視光画像とを見比べながら、観察対象の患部の詳細を的確に把握できる。
図6は、光源ユニット33の構造概略の第1例を示す図である。図7は、光源ユニット33aの構造概略の第2例を示す図である。図7に示す光源ユニット33aの説明において、図6に示す光源ユニット33の説明と重複する内容については同一の符号を付与して簡略化または省略し、異なる内容について説明する。光源ユニット33は、上述したように、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333を有する。
図6に示すように、光源ユニット33では、可視光光源ユニット331と第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333とが放熱筐体29に対して略平行となるように嵌入されて固定されている。放熱筐体29は、例えばアルミニウム、銅、または窒化アルミニウムを含んで形成され、以下同様である。
具体的には、可視光光源ユニット331は、放熱筐体29に設けられた貫通孔29zに嵌入され、レーザダイオード25AとレンズOP1とを用いて構成される。貫通孔29zの一方は光ファイバ27Aが挿通され、貫通孔29zの他方はレーザダイオード25Aが係合される。貫通孔29zでは、レーザダイオード25Aから出射されたレーザ光(つまり、可視光)が光ファイバ27Aの入射面に入射し、光ファイバ27Aを通って内視鏡10の出射面としての照射窓28zに導かれる。また、レーザダイオード25Aは、貫通孔29zの開口部近傍で熱的に放熱筐体29と接触している。レーザダイオード25Aが発光時に発する熱は、放熱筐体29に伝わり、効率良く放熱される。これにより、レーザダイオード25Aの温度変化が少なくなり、レーザ光の波長ずれや発光量の変動を抑制できる。従って、内視鏡システム5は、安定したレーザ光による可視光(つまり、白色光)を得ることができる。
第1励起光光源ユニット332は、放熱筐体29に設けられた貫通孔29zに嵌入され、レーザダイオード25BとレンズOP2とを用いて構成される。貫通孔29zの一方は光ファイバ27Bが挿通され、貫通孔29zの他方はレーザダイオード25Bが係合される。貫通孔29zでは、レーザダイオード25Bから出射されたレーザ光(つまり、IR励起光)が光ファイバ27Bの入射面に入射し、光ファイバ27Bを通って内視鏡10の出射面としての照射窓28yに導かれる。また、レーザダイオード25Bは、貫通孔29zの開口部近傍で熱的に放熱筐体29と接触している。レーザダイオード25Bが発光時に発する熱は、放熱筐体29に伝わり、効率良く放熱される。これにより、レーザダイオード25Bの温度変化が少なくなり、レーザ光の波長ずれや発光量の変動を抑制できる。従って、内視鏡システム5は、安定したレーザ光によるIR励起光を得ることができる。
第2励起光光源ユニット333は、放熱筐体29に設けられた貫通孔29zに嵌入され、レーザダイオード25CとレンズOP3とを用いて構成される。貫通孔29zの一方は光ファイバ27Cが挿通され、貫通孔29zの他方はレーザダイオード25Cが係合される。貫通孔29zでは、レーザダイオード25Cから出射されたレーザ光(つまり、Violet励起光)が光ファイバ27Cの入射面に入射し、光ファイバ27Cを通って内視鏡10の出射面としての照射窓27zに導かれる。また、レーザダイオード25Cは、貫通孔29zの開口部近傍で熱的に放熱筐体29と接触している。レーザダイオード25Cが発光時に発する熱は、放熱筐体29に伝わり、効率良く放熱される。これにより、レーザダイオード25Cの温度変化が少なくなり、レーザ光の波長ずれや発光量の変動を抑制できる。従って、内視鏡システム5は、安定したレーザ光によるViolet励起光を得ることができる。
また、図7に示す光源ユニット33aの例では、可視光光源ユニット331と第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333とが放熱筐体29に嵌入されて固定されている。図7では、図6と異なり、可視光光源ユニット331と第2励起光光源ユニット333とは、第1励起光光源ユニット332に対して傾斜して嵌入されて固定されている。つまり、図7では、可視光光源ユニット331用の貫通孔29zと第2励起光光源ユニット333用の貫通孔29zとは、放熱筐体29内において、第1励起光光源ユニット332用の貫通孔29zに対して傾斜して設けられる。また、可視光光源ユニット331から照射される可視光、第1励起光光源ユニット332から照射されるIR励起機構、第2励起光光源ユニット333から照射されるViolet励起光は、それぞれ放熱筐体29aに嵌入されて固定された単一の光ファイバ27Dの入射面に入射し、光ファイバ27Dを通って内視鏡10の出射面としての照射窓(例えば照射窓27z)に導かれる。
さらに、光ファイバ27Dの一端側は放熱筐体29aに嵌入されて固定されるので、光ファイバ27Dに入射する光による熱が放熱筐体29aを介して効率的に放熱され、光ファイバ27Dが過度に熱くなることを抑制できる。
(実施の形態1に係る内視鏡システムの動作例)
図8は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の動作概要例を示す説明図である。
実施の形態1では、第2駆動回路32により、可視光光源ユニット331から光ファイバ27Aを通って可視光、第1励起光光源ユニット332から光ファイバ27Bを通ってIR励起光、第2励起光光源ユニット333から光ファイバ27Cを通ってViolet励起光のうちいずれかが、蛍光物質を含有する被写体に向けて照射される。可視光は、例えば400nm~700nmの波長を有するRGB光または白色光である。IR励起光は、例えば730nm~805nmの波長を有する励起光である。Violet励起光は、例えば380nm~420nmの波長を有する励起光である。
可視光は、被写体により反射されて、光学系24および励起光カットフィルタ23を透過してイメージセンサ22にて受光される。励起光カットフィルタ23は、前述したように、690nm~820nmの波長帯域の光の透過を遮断する。従って、被写体で反射された可視光は、例えば690nm~700nmの帯域の光がカットされるだけで、多くの可視光(具体的には、420nm~690nmの波長を有する可視光)がイメージセンサ22で受光される。イメージセンサ22で撮像された可視光による撮像画像は、イメージプロセッサ35およびディスプレイプロセッサ36の各処理を経て、モニタ40に出力される。
次に、ICG(インドシアニングリーン)を含有する被写体に対してIR励起光が照射されると、IR励起光に基づいてICG(インドシアニングリーン)が蛍光発光する。具体的には、820nm~900nmの波長の光で蛍光発光する。被写体により反射されたIR励起光の波長帯域(つまり、730nm~805nm)は、励起光カットフィルタ23の透過禁止帯域の一つ(具体的には、690nm~820nm)に含まれるため、IR励起光は励起光カットフィルタ23により透過が遮断される。しかし、IR励起光に基づく蛍光の波長帯域(つまり、820nm~900nm)は、励起光カットフィルタ23の透過禁止帯域に含まれないため、IR励起光に基づく蛍光は励起光カットフィルタ23を透過してセンサユニットSU内のイメージセンサ22で受光される。イメージセンサ22で撮像されたICG(インドシアニングリーン)の蛍光発光画像は、イメージプロセッサ35およびディスプレイプロセッサ36の各処理を経て、モニタ40に出力される。
また、体内で生合成され集積された蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)を含有する被写体に対してViolet励起光が照射されると、Violet励起光に基づいてプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)が蛍光発光する。具体的には、620nm~680nmの波長の光で蛍光発光する。被写体により反射されたViolet励起光の波長帯域(つまり、380nm~420nm)は、励起光カットフィルタ23の透過禁止帯域の一つ(具体的には、380nm~420nm)に含まれるため、Violet励起光は励起光カットフィルタ23により透過が遮断される。しかし、Violet励起光に基づく蛍光の波長帯域(つまり、620nm~680nm)は、励起光カットフィルタ23の透過禁止帯域に含まれないため、Violet励起光に基づく蛍光は励起光カットフィルタ23を透過してセンサユニットSU内のイメージセンサ22で受光される。イメージセンサ22で撮像されたプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)の蛍光発光画像は、イメージプロセッサ35およびディスプレイプロセッサ36の各処理を経て、モニタ40に出力される。
図9は、5-ALA用励起光と5-ALA用蛍光との特性例を示す図である。図10は、図5に示すそれぞれの励起光カットフィルタを用いた場合の5-ALA用蛍光の特性例を示す図である。図9および図10の説明において、Violet励起光に基づくプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)の蛍光を、「5-ALA用蛍光」と称している。
図9および図10の横軸は波長(nm:ナノメートル)を示し、図9および図10の縦軸はカウント数(つまり、光の強度を示す光量であるフォトンのカウント数)を示す。図10の説明において、図9の説明と重複する内容については同一の符号を付与して簡略化または省略し、異なる内容について説明する。
図9に示すように、符号e1は、第2励起光光源ユニット333から照射されるレーザ光であるViolet励起光(例えば、404nm)の波長特性を示す。一方、符号e2は、比較例として、試作されたLED(Light Emitting Diode)を光源として使用した場合のViolet励起光(例えば、416nm)の波長特性を示す。符号f1は、符号e1で示されるレーザ光であるViolet励起光に基づいてプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)が蛍光発光した際の蛍光の波長特性を示す。図9に示すように、Violet励起光の波長帯域内であっても、第2励起光光源ユニット333から照射される光がLED光でなくレーザ光が照射される方が、プロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)は正常に蛍光発光することが分かった。
図10において、符号f2は、符号e1で示されるレーザ光であるViolet励起光に基づく5-ALA用蛍光が実施の形態1に係る励起光カットフィルタ23(図5の符号a1参照)に入射した際の透過光の波長特性を示す。同様に、符号f3は、符号e1で示されるレーザ光であるViolet励起光に基づく5-ALA用蛍光が比較例に係るIR励起光カットフィルタ(図5の符号a2参照)に入射した際の透過光の波長特性を示す。
図10に示すように、符号f3に示す特性の方が符号f2に示す特性に比べて、例えば660nm以上の波長帯域における光量が低くなっている。これは、比較例に係るIR励起光カットフィルタの透過禁止帯域が660nmから開始し、一方で、実施の形態1に係る励起光カットフィルタ23の透過禁止帯域が690nmから開始されているためと考えられる。従って、実施の形態1に係る内視鏡システム5では、5-ALA用蛍光の光量は比較例に係るIR励起光カットフィルタを用いた場合に比べて相対的に多くイメージセンサ22において受光されるため、プロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)の蛍光発光画像の視認性が良好となり、医者等に対してガン細胞等の腫瘍の所在をより鮮明に認識させることが可能となる。
(実施の形態1に係る内視鏡システム5の動作)
次に、実施の形態1に係る内視鏡システム5の動作について、図11を参照して説明する。図11は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の動作手順の一例を詳細に説明するフローチャートである。図11では、例えば可視光が最初に照射され、その後に励起光が照射される例を説明しているが、この例に限定されることはなく、可視光、IR励起光およびViolet励起光のうちどの光が照射されるかは医者等の操作または音声に基づく切替信号に依存して決定されてよい。
図11において、内視鏡システム5は、内視鏡10またはビデオプロセッサ30に設けられたスイッチ(図示略)をオンにする医者等の操作を受け付けると、図11に示す処理を開始する(START参照)。
コントローラ31は、図11に示す処理が開始されると、先ず可視光を照射するように第2駆動回路32を駆動する。第2駆動回路32は、可視光光源ユニット331をオン(ON)にし(St1)、可視光を照射する(St2)。可視光光源ユニット331が可視光を照射すると、可視光は、スコープ13内の光ファイバ27Aを通って、照射窓28zから被写体に向けて照射され、患部を含む周囲の部位を照明する。患部等の被写体からの光は、撮像窓12zを通ると、光学系24によって集光される。患部等の被写体により反射された可視光は、励起光カットフィルタ23により一部の波長帯域(具体的には690nm~700nmの波長)が遮断されるが、殆どの波長帯域(具体的には420nm~690nm)の可視光は励起光カットフィルタ23を透過してイメージセンサ22の撮像面に結像する。
コントローラ31は、第1駆動回路21に対し、イメージセンサ22による光電変換を開始させる信号を出力する(イメージセンサON、St3)。第1駆動回路21は、コントローラ31からの信号を受け取ると、イメージセンサ22にセンサリセット信号を出力して、イメージセンサ22を露光開始前の状態に戻す(センサリセット、St4)。ここでは、例えばイメージセンサ22がCCDで構成される場合、第1駆動回路21は、露光によって蓄積された電荷をクリアする。
センサリセット後、第1駆動回路21は、イメージセンサ22に受光される光の露光時間を設定するように制御し(St5)、イメージセンサ22の電子シャッタをオンにする(St6)。これにより、被写体により反射された可視光のイメージセンサ22への露光が開始される。
第1駆動回路21は、ステップSt5で設定された露光時間が終了すると、イメージセンサ22の電子シャッタをオフにし(St7)、被写体からの可視光による露光を終了する。露光終了と同時に、イメージプロセッサ35は、イメージセンサ22からの可視光信号の読み出しを開始する(St8)。ここでいう可視光信号は、可視光の露光により得られる撮像画像の信号である。可視光信号の読み出しは、画素数に応じた読み出し時間の経過後、終了する。イメージプロセッサ35による可視光信号の読み出しが終了すると、ディスプレイプロセッサ36は、可視光信号から得られる可視光画像(つまり、可視光の撮像に基づく被写体の撮像画像)の表示データを、モニタ40に出力する。モニタ40は、可視光画像を表示する。
ステップSt8の後、蛍光(例えばViolet励起光に基づく蛍光)の撮像が行われる場合(St9、YES)、内視鏡システム5の処理はステップSt10に進む。一方、蛍光の撮像が行われない場合(St9、NO)、内視鏡システム5の処理はステップSt17に進む。
コントローラ31は、次に励起光(例えばViolet励起光)を照射するように第2駆動回路32を駆動する。第2駆動回路32は、第2励起光光源ユニット333をオン(ON)にし(St10)、Violet励起光を照射する(St11)。第2励起光光源ユニット333がViolet励起光を照射すると、Violet励起光は、スコープ13内の光ファイバ27Cを通って、照射窓27zから被写体に向けて照射され、患部を含む周囲の部位を照明する。このViolet励起光によって、体内で生合成され集積されたプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)を含有する被写体内において蛍光発光が生じる。患部等の被写体からの光(つまり、Violet励起光およびViolet励起光に基づく蛍光)は、撮像窓12zを通ると、光学系24によって集光される。患部等の被写体により反射されたViolet励起光は励起光カットフィルタ23により遮断されるとともに、患部等の被写体により反射されたViolet励起光に基づく蛍光は励起光カットフィルタ23を透過してイメージセンサ22の撮像面に結像する。
コントローラ31は、第1駆動回路21に対し、イメージセンサ22による光電変換を開始させる信号を出力する。第1駆動回路21は、コントローラ31からの信号を受け取ると、イメージセンサ22にセンサリセット信号を出力して、イメージセンサ22を露光開始前の状態に戻す(センサリセット、St12)。ここでは、例えばイメージセンサ22がCCDで構成される場合、第1駆動回路21は、露光によって蓄積された電荷をクリアする。
センサリセット後、第1駆動回路21は、イメージセンサ22に受光される光の露光時間を設定するように制御し(St13)、イメージセンサ22の電子シャッタをオンにする(St14)。これにより、被写体により反射されたViolet励起光に基づく蛍光のイメージセンサ22への露光が開始される。
第1駆動回路21は、ステップSt13で設定された露光時間が終了すると、イメージセンサ22の電子シャッタをオフにし(St15)、被写体からのViolet励起光に基づく蛍光による露光を終了する。露光終了と同時に、イメージプロセッサ35は、イメージセンサ22からの蛍光信号の読み出しを開始する(St16)。ここでいう蛍光信号は、Violet励起光に基づく蛍光の露光により得られる撮像画像の信号である。蛍光信号の読み出しは、画素数に応じた読み出し時間の経過後、終了する。イメージプロセッサ35による蛍光信号の読み出しが終了すると、ディスプレイプロセッサ36は、蛍光信号から得られる蛍光発光画像(つまり、Violet励起光に基づく蛍光の撮像に基づく被写体の撮像画像)の表示データを、モニタ40に出力する。モニタ40は、蛍光画像を表示する。
ステップSt16の後、蛍光(例えばIR励起光に基づく蛍光)の撮像が行われる場合(St9、YES)、内視鏡システム5の処理はステップSt10に進む。一方、蛍光の撮像が行われない場合(St9、NO)、内視鏡システム5の処理はステップSt17に進む。
内視鏡システム5による撮像が終了する場合(St17、YES)、コントローラ31は、内視鏡システム5による撮像が終了することを示す切替信号に応じて、可視光の照射をオフするように第2駆動回路32を駆動する。第2駆動回路32は、可視光光源ユニット331をオフ(OFF)にし(St19)、可視光の照射をオフする。
一方で、内視鏡システム5による撮像(例えば可視光信号の撮像)が継続される場合(St17、NO)、コントローラ31は、励起光光源(例えば第1励起光光源ユニット332または第2励起光光源ユニット333)をオフ(OFF)にする(St18)。ステップSt18の後、内視鏡システム5の処理はステップSt4に進む。なお、上述のSt10~St18の説明では、励起光光源として第2励起光光源ユニット333を用いる例を説明したが、もちろん、第1励起光光源ユニット332が用いられてもよい。また、第1励起光光源ユニット332および第2励起光光源ユニット333の両方が用いられても良い。St10において、第1励起光光源ユニット332および第2励起光光源ユニット333のいずれか一方または両方をONとするかはユーザの操作によって任意に選択可能である。
以上により、実施の形態1に係る内視鏡システム5では、光源ユニット33は、被写体に対して、非可視光領域の第1所定範囲(例えば380nm~420nm)の波長を有する第1励起光(例えばViolet励起光)と、第1所定範囲の波長と異なる非可視光帯域の第2所定範囲(例えば730nm~805nm)の波長を有する第2励起光(例えばIR励起光)とを出射する。励起光カットフィルタ23は、第1所定範囲および第2所定範囲の波長のそれぞれを有する光を遮断する。センサユニットSUは、励起光カットフィルタ23の出射側に配置され、IR励起光およびViolet励起光のそれぞれにより励起されて蛍光発光した被写体の撮像画像(つまり、蛍光発光画像)を生成する。ディスプレイプロセッサ36は、被写体の撮像画像をモニタ40に出力する。
これにより、内視鏡システム5は、内視鏡10による撮像時に、複数の蛍光物質(例えば、ICGおよびプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX))を蛍光発光させるためのそれぞれ異なる波長を有する励起光を適切にカットできる。従って、内視鏡システム5は、ICGもしくはプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)のいずれの蛍光物質を蛍光発光させる場合でも、IR励起光もしくはViolet励起光の影響を排除して、被写体による蛍光発光の光強度の低減を抑制でき、蛍光発光画像の視認性を的確に向上でき、医者等の正確な判断に資することができる。言い換えると、内視鏡システム5は、IR励起光およびViolet励起光のそれぞれにより蛍光発光画像の観察が阻害されることを抑制できる。
また、光源ユニット33は、可視光をさらに出射する。センサユニットSUは、励起光カットフィルタ23を通過(透過)した波長帯域の可視光に基づいて、被写体の可視光に基づく撮像画像を生成する。これにより、内視鏡システム5は、蛍光発光画像だけでなく、通常の可視光(いわゆる、白色光またはRGB光)を照射できるので、患部等の詳細がカラーで鮮明に表わされる可視光画像をモニタ40に表示できるので、医者等に患部の詳細を把握させることができる。
また、励起光カットフィルタ23の有する透過禁止帯域である第1所定範囲は380nm~420nmであり、第2所定範囲は690nm~820nmである。これにより、励起光カットフィルタ23は、380nm~420nmの波長帯域を有するViolet励起光が被写体により反射された場合に透過を遮断できるとともに、690nm~820nmの波長帯域を有するIR励起光が被写体により反射された場合に透過を遮断できる。従って、内視鏡システム5は、プロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)の蛍光発光画像におけるViolet励起光の影響を排除した視認性の高い蛍光発光画像を得られるとともに、ICG(インドシアニングリーン)の蛍光発光画像におけるIR励起光の影響を排除した視認性の高い蛍光発光画像を得られる。
また、励起光カットフィルタ23は、690nm~820nmの波長において透過率が0.1%以下となる特性を有する。これにより、励起光カットフィルタ23は、ICG(インドシアニングリーン)を蛍光発光させるためのIR励起光を的確に遮断できる。
また、光源ユニット33は、狭帯域のLEDまたはレーザダイオードを用いて構成される。これにより、内視鏡システム5は、可視光および各種の励起光の光強度を大きくでき、被写体により反射される可視光および蛍光発光の光強度を増大できる。従って、被写体の患部等の周囲を含む詳細な様子の観察が可能となる。また、内視鏡システム5は、励起光の光強度を大きくできるので、イメージセンサ22の大きさを小さくでき、内視鏡10の先端部のサイズを小さくできる。従って、内視鏡システム5は、被写体である患者への侵襲を低減できる。
また、励起光カットフィルタ23は、被写体に予め投与された5-ALA(5-アミノレブリン酸)が体内で生合成したプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)のViolet励起光に基づく蛍光を入射する。これにより、内視鏡システム5は、例えばガン細胞等の腫瘍の所在を鮮明に示すことが可能な、集積されたプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)がViolet励起光によって蛍光発光した際の蛍光発光画像を、Violet励起光を遮断した上で撮像できるので、視認性の高い蛍光発光画像をモニタ40に表示できる。
また、励起光カットフィルタ23は、被写体に予め投与されたICG(インドシアニングリーン)のIR励起光に基づく蛍光を入射する。これにより、内視鏡システム5は、例えばリンパ節の所在を鮮明に示すことが可能なICG(インドシアニングリーン)がIR励起光によって蛍光発光した際の蛍光発光画像を、IR励起光を遮断した上で撮像できるので、視認性の高い蛍光発光画像をモニタ40に表示できる。従って、医者等は、例えば5-ALA(5-アミノレブリン酸)の蛍光発光画像によってガン細胞等の腫瘍の所在を判別し、その後にICG(インドシアニングリーン)の蛍光発光画像によって腫瘍の周囲に切除してはいけないリンパ節が存在しないか否かを的確に判別できるので、より安全な内視鏡を用いた手術を行える。
また、イメージセンサ22は、内視鏡10の先端部(例えば、スコープ13の先端部)に配置される。これにより、内視鏡システム5は、従来の内視鏡システムでの、リレーレンズや光ファイバにより手元のカメラまで光を導く方法に比べ、イメージセンサ22に入射する蛍光発光の光強度の低減を抑制し、蛍光の受光量が多くできるので、同じ受光量を得るためのイメージセンサ22のサイズを小さくすることもできる。この場合、内視鏡システム5は、蛍光観察の精度を一層向上できる。
また、リレーレンズを用いると、蛍光観察装置に柔軟性を持たせる事ができないと言う課題に対し、イメージセンサ22の配置箇所より後段側に軟性部11を設けることができる。これにより、内視鏡10に内蔵されたセンサユニットSUを、より観察部位に近接した箇所あるいは所望の方向に向けることもできる。
また、センサユニットSUに含まれる四角形状のイメージセンサ22の対角の径の長さは10mm以下である。これにより、内視鏡システム5は、イメージセンサ22を内視鏡10に適用できる。また、イメージセンサ22の大きさを10mm以下としても、内視鏡システム5は、レーザ光等の強度の大きい光により励起される蛍光発光を観察することで、蛍光観察の精度を確保できる。
光源ユニット33は、コントローラ31に入力される切替信号に応じて、Violet励起光、IR励起光および可視光のうちいずれかを選択的に切り替えて出射する。これにより、医者等は、内視鏡を用いた手術中に、手指を用いずに足もしくは自ら発声した音声等に基づいて、患部に照射させるべき光(つまり、Violet励起光、IR励起光および可視光のうちいずれか)を任意に選択できるので、内視鏡システム5の利便性を向上できる。
図12は、光源ユニット33bの構造概略の第3例を示す図である。図13は、光源ユニット33cの構造概略の第4例を示す図である。図14は、光源ユニット33dの構造概略の第5例を示す図である。図15は、光源ユニット33eの構造概略の第6例を示す図である。図12~図15に示す光源ユニット33b~33eの説明において、図6に示す光源ユニット33の説明と重複する内容については同一の符号を付与して簡略化または省略し、異なる内容について説明する。
図12に示すように、光源ユニット33bは、第1励起光光源ユニット332およびViolet可視光源ユニット334を有する。Violet可視光源ユニット334が出射する光の波長はViolet励起光領域および可視光領域に相当する。すなわち、Violet可視光源ユニット334は、可視光光源ユニット331および第2励起光光源ユニット333に相当する。コントローラ31は、第1励起光光源ユニット332およびViolet可視光源ユニット334の一方または両方から出射するように光源ユニット33bを制御する。
Violet可視光源ユニット334は、放熱筐体29に設けられた貫通孔29zに嵌入され、Violet励起光領域および可視光領域を出射可能なLED25DとレンズOP4とを用いて構成される。貫通孔29zの一方には光ファイバ27Dが挿通され、貫通孔29zの他方にはLED25Dが係合される。貫通孔29zでは、LED25Dから出射された光(つまり、Violet励起光および可視光)が光ファイバ27Dの入射面に入射し、光ファイバ27Dを通って内視鏡10の出射面としての照射窓27zまたは28zに導かれる。なお、Violet可視光源ユニット334は、ON/OFF切り替え可能なカットフィルタをレンズOP4の出力側に設けてもよい。これにより、Violet可視光源ユニット334は、可視光又はViolet励起光のいずれか一方のみを出力することができる。
図13に示すように、光源ユニット33cは、第2励起光光源ユニット333および可視IR光源ユニット335を有する。可視IR光源ユニット335が出射する光の波長は可視光領域およびIR光領域に相当する。すなわち、可視IR光源ユニット335は、可視光光源ユニット331および第1励起光光源ユニット332に相当する。コントローラ31は、第2励起光光源ユニット333および可視IR光源ユニット335の一方または両方から出射するように光源ユニット33cを制御する。
可視IR光源ユニット335は、放熱筐体29に設けられた貫通孔29zに嵌入され、可視光領域およびIR光領域を出射可能なハロゲンランプ25EとレンズOP5とを用いて構成される。貫通孔29zの一方には光ファイバ27Eが挿通され、貫通孔29zの他方にはハロゲンランプ25Eが係合される。貫通孔29zでは、ハロゲンランプ25Eから出射された光(つまり、IR励起光および可視光)が光ファイバ27Eの入射面に入射し、光ファイバ27Eを通って内視鏡10の出射面としての照射窓28zまたは28yに導かれる。また、可視IR光源ユニット335はON/OFF切り替え可能なカットフィルタ37を有する。このカットフィルタ37は、例えば、可視光領域またはIR励起光領域をカットする。これにより、可視IR光源ユニット335は、可視光またはIR励起光のいずれか一方のみを出力することができる。あるいは、このカットフィルタ37は、Violet励起光領域をカットしてもよい。これにより、可視IR光源ユニット335は、確実にViolet励起光領域を除いた状態で、可視光およびIR励起光を出射できる。
図14に示すように、光源ユニット33dは、Violet可視IR光源ユニット336を有する。Violet可視IR光源ユニット336が出射する光の波長は、Violet光領域、可視光領域、およびIR光領域に相当する。すなわち、Violet可視IR光源ユニット336は、可視光光源ユニット331、第1励起光光源ユニット332、第2励起光光源ユニット333に相当する。
Violet可視IR光源ユニット336は、キセノンランプ25FとレンズOP6とカットフィルタ38Aおよび38Bとを用いて構成される。キセノンランプ25Fから出射された光(つまり、Violet励起光、IR励起光および可視光)がレンズOP6を介して光ファイバ27の入射面に入射し、光ファイバ27を通って内視鏡10の出射面としての照射窓27z、照射窓28z、または照射窓28yに導かれる。
また、カットフィルタ38Aおよび38Bは、互いに異なる特性を有し、異なる波長帯域の光をカットする。カットフィルタ38Aおよび38BはそれぞれON/OFF切り替え可能なように構成されるため、光源ユニット33dは所望の波長の光を出射できる。この切り替えにより、光源ユニット33dは、例えば、Violet励起光、IR励起光および可視光のうち、いずれか1つまたは2つ、あるいは全てをユーザの操作に応じて出射することができる。この切り替えは、例えば、ユーザによるカットフィルタ38Aおよび38Bの抜き差しによって実現される。すなわち、カットフィルタ38Aおよび38Bは、その機能を使用する場合は、キセノンランプ25FとレンズOP6との間に挿入され、その機能を使用しない場合は、抜き取られる。また他の例として、カットフィルタ38Aおよび38Bにシャッタ機構や回転機構を設け、これらの機構によりON/OFFを切り替えてもよい。この切り替えは、コントローラ31から指示によって実行されてもよい。
なお、カットフィルタ38Aおよび38Bの一方または両方は、特定の波長帯域を通過させるバンドバスフィルタによって実現されてもよい。また3つ以上のフィルタ(例えば、可視光が通過するバンドバスフィルタ、IR光が通過するバンドバスフィルタ、Violet光が通過するバンドバスフィルタ)がキセノンランプ25FとレンズOP6との間に配置されてもよい。
図15に示すように、光源ユニット33eでは、図6と同様に、可視光光源ユニット331と第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333とが放熱筐体29に対して略平行となるように嵌入されて固定されている。ただし、図15における第1励起光光源ユニット332および第2励起光光源ユニット333は、ともにIR励起光を出射する。但し、それぞれのIR励起光は波長が異なる。第1励起光光源ユニット332が有するレーザダイオード25B1は、波長780nmのIR励起光をレンズOP7および光ファイバ27B1を介して照射窓27z、照射窓28z、または照射窓28yより出射する。第2励起光光源ユニット333が有するレーザダイオード25B2は、波長808nmのIR励起光を、レンズOP8および光ファイバ27B2を介して照射窓から照射する。コントローラ31は、可視光光源ユニット331と第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333とのうち、いずれか1つまたは2つ、あるいは全てを出射するように制御する。
光源ユニット33eは、波長の異なるIR励起光を出射する第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333を有するため、状況に応じて適切な波長のIR励起光を選択可能である。例えば、第1励起光光源ユニット332が出射するIR励起光による蛍光発光の感度が悪い場合、光源ユニット33eは、第1励起光光源ユニット332の代わりに、第2励起光光源ユニット333がIR励起光を出射するように切り替えることができる。また、光源ユニット33eは、第1励起光光源ユニット332と第2励起光光源ユニット333とが同時に出射するように制御されてもよい。複数の光源によりIR励起光を出射することにより光量が大きくなり、イメージセンサ22は、高感度で蛍光画像を取得することができる。
なお、上述した光源ユニット33の第3例~第6例は、図7に示す第2例のように、一部の光源ユニットを傾斜させることにより、単一の光ファイバに光を集めるように構成してもよい。なお、上述した全てのレーザダイオードはLED等の他の光源に置き換えられても良い。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上述した実施の形態1では、出力デバイスとして、蛍光発光画像および可視光画像を画面に表示可能なモニタを示したが、モニタに限らない。出力デバイスは、蛍光発光画像および可視光画像を印刷可能なプリンタ、蛍光発光画像および可視光画像の各画像信号を出力可能な信号出力装置、蛍光発光画像および可視光画像の各画像データを記録媒体に記憶可能な記憶装置、等であってもよい。
上述した実施の形態1では、モニタ40は、図9および図10に示す各グラフを表示可能であってもよい。この場合、縦軸の光量(フォトン数)は、通常表示でもよいが、LOG表示としてもよい。LOG表示とした場合、ピーク光量の少ないLED光と、ピーク光量の多いレーザ光を同一のグラフ上でダイナミックに表示可能である。また、各グラフの光量は、相対値(例えば複数のレーザ光のピーク値のうち、最大のものを相対値100とする)で示されてもよい。
上述した実施の形態1では、コントローラ31、イメージプロセッサ35、ディスプレイプロセッサ36等のプロセッサは、物理的にどのように構成してもよい。また、プログラム可能なプロセッサを用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できるので、プロセッサの設計の自由度を高めることができる。プロセッサは、1つの半導体チップで構成してもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成してもよい。複数の半導体チップで構成する場合、実施の形態1に係る各制御をそれぞれ別の半導体チップで実現してもよい。この場合、それらの複数の半導体チップで1つのプロセッサを構成すると考えることができる。また、プロセッサは、半導体チップと別の機能を有する部材(コンデンサ等)で構成してもよい。また、プロセッサが有する機能とそれ以外の機能とを実現するように、1つの半導体チップを構成してもよい。複数のプロセッサが1つのプロセッサで構成されてもよい。