本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、駆動輪に動力を伝達する駆動源としてのエンジン及びモータと、エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達する自動変速機と、エンジンと駆動輪との間の動力伝達を解放または接続する動力伝達機構と、モータに電力を供給する蓄電部とを備え、自動変速機の変速段の切換え時における動力伝達機構の非完全係合期間にモータにトルクを出力させるハイブリッド車両の制御装置であって、蓄電部の蓄電量に応じて、自動変速機の変速段の切換え時における動力伝達機構の解放速度を変更する制御部を備えるよう構成されている。
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、自動変速機としてのトランスミッション3と、モータとしてのモータジェネレータ4と、駆動輪5と、ハイブリッド車両1を総合的に制御する制御部としてのHCU(Hybrid Control Unit)10と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)11と、トランスミッション3を制御するTCM(Transmission Control Module)12と、ISGCM(Integrated Starter Generator Control Module)13と、INVCM(Invertor Control Module)14と、BMS(Battery Management System)16とを含んで構成される。
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20と、スタータ21とが連結されている。ISG20は、ベルト22などを介してエンジン2のクランクシャフト18に連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフト18から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
本実施例では、ISG20は、ISGCM13の制御により、電動機として機能することで、エンジン2をアイドリングストップ機能による停止状態から再始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、ハイブリッド車両1の走行をアシストすることもできる。
スタータ21は、図示しないモータとピニオンギヤとを含んで構成されている。スタータ21は、モータを回転させることにより、クランクシャフト18を回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与えるようになっている。このように、エンジン2は、スタータ21によって始動され、アイドリングストップ機能による停止状態からISG20によって再始動される。
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速し、ドライブシャフト23を介して駆動輪5を駆動するようになっている。トランスミッション3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の変速機構25と、ノーマルクローズタイプの乾式クラッチによって構成される動力伝達機構としてのクラッチ26と、ディファレンシャル機構27と、図示しないアクチュエータとを備えている。
トランスミッション3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、TCM12により制御されたアクチュエータにより変速機構25における変速段の切換えとクラッチ26の接続及び解放が行なわれるようになっている。ディファレンシャル機構27は、変速機構25によって出力された動力をドライブシャフト23に伝達するようになっている。
モータジェネレータ4は、ディファレンシャル機構27に対して、チェーン28を介して連結されている。モータジェネレータ4は、電動機として機能する。
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータジェネレータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータジェネレータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
モータジェネレータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行なうようになっている。なお、モータジェネレータ4は、エンジン2から駆動輪5までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構27に連結される必要はない。
ハイブリッド車両1は、第1蓄電装置30と、蓄電部としての第2蓄電装置33を含む高電圧パワーパック34と、高電圧ケーブル35と、低電圧ケーブル36とを備えている。
第1蓄電装置30、第2蓄電装置33は、充電可能な二次電池から構成されている。第1蓄電装置30は鉛電池からなる。
第1蓄電装置30は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定された低電圧バッテリである。第1蓄電装置30の残容量や温度、充放電電流などの状態は、HCU10によって管理される。
第2蓄電装置33は、第1蓄電装置30より高電圧を発生するようにセルの個数等が設定された高電圧バッテリであり、例えば、100Vの出力電圧を発生させる。第2蓄電装置33は、例えば、リチウムイオン電池からなる。第2蓄電装置33の蓄電量や温度、充放電電流などの状態は、BMS16によって管理される。
ハイブリッド車両1には、電気負荷としての一般負荷37が設けられている。一般負荷37は、スタータ21及びISG20以外の電気負荷である。
一般負荷37は、安定した電力供給が要求されず、一時的に使用される電気負荷である。一般負荷37には、例えば、図示しないワイパー、及び、エンジン2に冷却風を送風する電動クーリングファンが含まれる。
第1蓄電装置30は、低電圧ケーブル36を介して、スタータ21と、ISG20と、電気負荷としての一般負荷37とに電力を供給可能に接続されている。
このように、第1蓄電装置30は、エンジン2を始動する始動装置としてのスタータ21及びISG20に少なくとも電力を供給するようになっている。
高電圧パワーパック34は、第2蓄電装置33に加えて、インバータ45と、INVCM14と、BMS16とを有している。高電圧パワーパック34は、高電圧ケーブル35を介して、モータジェネレータ4に電力を供給可能に接続されている。
インバータ45は、INVCM14の制御により、高電圧ケーブル35にかかる交流電力と、第2蓄電装置33にかかる直流電力とを相互に変換するようになっている。例えば、INVCM14は、モータジェネレータ4を力行させるときには、第2蓄電装置33が放電した直流電力をインバータ45により交流電力に変換させてモータジェネレータ4に供給する。
INVCM14は、モータジェネレータ4を回生させるときには、モータジェネレータ4が発電した交流電力をインバータ45により直流電力に変換させて第2蓄電装置33に充電する。
HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14及びBMS16は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14及びBMS16としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14及びBMS16としてそれぞれ機能する。
本実施例において、ECM11は、アイドリングストップ制御を実行するようになっている。このアイドリングストップ制御において、ECM11は、所定の停止条件の成立時にエンジン2を停止させ、所定の再始動条件の成立時にISGCM13を介してISG20を駆動してエンジン2を再始動させるようになっている。このため、エンジン2の不要なアイドリングが行なわれなくなり、ハイブリッド車両1の燃費を向上させることができる。
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線48、49が設けられている。
HCU10は、INVCM14及びBMS16にCAN通信線48によって接続されている。HCU10、INVCM14及びBMS16は、CAN通信線48を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
HCU10は、ECM11、TCM12及びISGCM13にCAN通信線49によって接続されている。HCU10、ECM11、TCM12及びISGCM13は、CAN通信線49を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
HCU10の入力ポートには、車速センサ51、アクセル開度センサ52、クラッチストロークセンサ53等の各種センサ類が接続されている。
車速センサ51は、ドライブシャフト23の回転速度などからハイブリッド車両1の速度を検出する。アクセル開度センサ52は、図示しないアクセルペダルの操作量をアクセル開度として検出する。クラッチストロークセンサ53は、クラッチ26の係合度を検出する。
HCU10は、変速時のクラッチ26が解放されている間、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクを出力するアシストトルク出力制御を実行するようになっている。「クラッチ26が解放されている間」とは、クラッチ26の完全係合が解除されている期間(以下、この期間を「非完全係合期間」という)であり、当該非完全係合期間には、いわゆる半クラッチ状態が含まれる。半クラッチ状態とは、クラッチ26の摩擦材同士がスリップした状態で係合して動力を伝達する状態をいう。
変速機構とエンジンとの間の動力伝達経路にクラッチが設けられた車両においては、変速時のクラッチの非完全係合期間中、エンジンからのトルクが駆動輪に伝達されないため、加減速感が喪失する、いわゆるトルク抜けが生じ、このトルク抜けによって空走感が生じてしまう。
アシストトルク出力制御は、変速時のクラッチの非完全係合期間中にモータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクを出力することで、トルク抜けによる空走感の発生を回避するものである。
HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量より少ない場合、アシストトルク出力制御を行なわない。
HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量以上でありアシストトルク出力制御を行なう場合、変速時のクラッチ26の解放速度を、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量より少ない場合に比べて速める。
HCU10は、変速開始時のクラッチ26の解放速度を第1速度とし、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力された後に、クラッチ26の解放速度を第1速度より速い第2速度に変更する。HCU10は、変速開始時の第2蓄電装置33の蓄電量に応じて規定量を設定する。HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量が低下しすぎないように規定量を設定する。
アシストトルクの規定量は、第2蓄電装置33の蓄電量に加え、第2蓄電装置33の温度を考慮して設定してもよい。第2蓄電装置33は、温度が低いと電気の取り出し量が減る。このとき、モータジェネレータ4のトルク出力量も減るため、その分を考慮して第2蓄電装置33の蓄電量が低下しすぎないように規定量を設定する。
HCU10は、運転者による動力性能向上要求がある場合、第2速度を更に速くする。HCU10は、例えば、変速開始の所定時間前から変速開始までの間のアクセル踏込量や時間に対するアクセル踏込量の増加量が所定値以上となった場合、運転者による動力性能向上要求があると判定する。
また、HCU10は、例えば、運転者により走行モードとして動力性能向上モードが選択されているときに、運転者による動力性能向上要求があると判定する。動力性能向上モードとは、通常時よりも車両の走行性能を向上させる走行モードである。例えば、スポーツモードやパワーモード、手動変速モードなどがある。いずれもスポーティな走行を行なうことに適する走行モードである。
HCU10は、運転者による動力性能向上要求がある場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、運転者による動力性能向上要求が無い場合に比べて速める。なお、変速中に運転者による動力性能向上要求が無くなった場合には、クラッチ26の係合速度を速めることを中止してもよい。
このようなクラッチ26の解放速度または係合速度の制御の概要について説明する。図2に示すように、アシストトルク出力制御が行なわれない場合は、Aの実線のように、第1速度でクラッチ26が解放され、変速処理が完了した後、第3速度でクラッチ26が接続される。
アシストトルク出力制御が行なわれる場合は、Bの実線のように、第1速度でクラッチ26が解放され始めるが、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力されたタイミングt0において、クラッチ26の解放速度が第1速度より速い第2速度に変更される。その後、変速処理が完了すると第3速度でクラッチ26が接続される。
アシストトルク出力制御が行なわれ、運転者による動力性能向上要求がある場合は、一点鎖線で示すように、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力されたタイミングt0において、クラッチ26の解放速度である第2速度が更に速くされる。また、変速処理が完了した後のクラッチ26の係合速度も第3速度より速められる。
これにより、変速に要する時間を短縮してハイブリッド車両1の走行性能を確保することができる。また、変速時間の短縮に伴い、変速時のモータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、電力消費量を減らすことができる。なお、変速処理に要する時間は、いずれの場合も同じ時間Tcで変わらない。
以上のように構成された本実施例に係る制御装置によるクラッチ制御処理について、図3を参照して説明する。なお、以下に説明するクラッチ制御処理は、HCU10が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
ステップS1において、HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量を検出する。
続いて、ステップS2において、HCU10は、変速を実行するか否かを判定する。HCU10は、例えば、車速やエンジン回転数などに基づいて変速を実行するか否かを判定する。変速を実行しないと判定した場合、HCU10は、処理を終了する。
変速を実行すると判定した場合、ステップS3において、HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量から、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するモータトルク付加量である規定量を算出する。
ステップS4において、HCU10は、第1速度でクラッチ26の解放を開始する。
ステップS5において、HCU10は、モータジェネレータ4のモータトルクが規定量に達したか否かを判定する。モータジェネレータ4のモータトルクが規定量に達していないと判定した場合、HCU10は、ステップS5の処理を繰り返す。
モータジェネレータ4のモータトルクが規定量に達したと判定した場合、ステップS6において、HCU10は、第2速度でクラッチ26の解放を続ける。
ステップS7において、HCU10は、変速処理が完了したか否かを判定する。変速処理が完了していないと判定した場合、HCU10は、ステップS7の処理を繰り返す。
変速処理が完了したと判定した場合、ステップS8において、HCU10は、第3速度でクラッチ26の係合を行ない、処理を終了する。
なお、運転者による動力性能向上要求がある場合は、第2速度及び第3速度を更に速くする。また、第2速度及び第3速度は、アクセル踏込量や時間に対するアクセル踏込変化量が大きいほど速くしてもよい。走行モードによる動力性能向上要求がある場合は、第2速度及び第3速度を所定量だけ速くすればよい。
このようなクラッチ制御処理による動作について図4及び図5を参照して説明する。図4は、アクセル踏込量が所定値以上となったことで動力性能向上要求があると判定された場合である。
時刻t1において、アクセルが踏み込まれ始め、時刻t2において、所定値以上となると動力性能向上要求があると判定される。
時刻t3において、クラッチ26の解放が第1速度で開始され、モータジェネレータ4のモータトルクが規定量に達した時刻t4において、クラッチ26の解放速度が、Bの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第2速度より速い一点鎖線で示す速度に速められる。
その後、クラッチ26の解放が完了し、変速処理が完了すると、Bの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第3速度より速い一点鎖線で示す速度でクラッチ26の係合が開始され、時刻t5において、クラッチ26の接続が完了し、モータジェネレータ4のモータトルクも無くなる。
図5は、運転者により走行モードとして動力性能向上モードが選択されたことで動力性能向上要求があると判定された場合である。
時刻t11において、アクセルが踏み込まれ始め、運転者により動力性能向上モードが選択されると動力性能向上要求があると判定される。
時刻t12において、クラッチ26の解放が第1速度で開始され、モータジェネレータ4のモータトルクが規定量に達した時刻t13において、クラッチ26の解放速度が、Bの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第2速度より速い一点鎖線で示す速度に速められる。
その後、クラッチ26の解放が完了し、変速処理が完了すると、Bの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第3速度より速い一点鎖線で示す速度でクラッチ26の係合が開始され、時刻t14において、クラッチ26の接続が完了し、モータジェネレータ4のモータトルクも無くなる。
このように、本実施例では、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量以上でありアシストトルク出力制御を行なう場合、変速時のクラッチ26の解放速度を、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量より少ない場合に比べて速める。
これにより、変速に要する時間を短くすることができ、ハイブリッド車両1の走行性能を確保することができる。また、変速時間の短縮に伴い、変速時のモータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、電力消費量を減らすことができる。
また、変速開始時のクラッチ26の解放速度を第1速度とし、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力された後に、クラッチ26の解放速度を第1速度より速い第2速度に変更する。
これにより、変速中に駆動輪5に伝達するトルクが一時的に減少する、いわゆるトルク抜け感の発生を抑えることができる。
また、第2蓄電装置33の蓄電量に応じてアシストトルクの規定量を設定する。これにより、第2蓄電装置33の蓄電量から出力可能なモータトルクの大きさによって、クラッチ26の解放速度を速める時期(クラッチ位置)が調整されるため、変速ショックの発生を抑制することができ、変速中のトルク抜けを抑制することができ、変速時間を短縮することができる。なお、アシストトルクの規定量は蓄電量のみに限らず、モータジェネレータ4や第2蓄電装置33の温度等のパラメータも考慮しても良い。モータジェネレータ4や第2蓄電装置33の温度が低い程、モータジェネレータ4からのアシストトルクの規定量は小さく設定される。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、第2速度を更に速くする。運転者による動力性能向上要求がある場合は、ハイブリッド車両1の素早い加速が求められる。この場合に、クラッチ26の解放速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制することができる。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、運転者による動力性能向上要求が無い場合に比べて速める。
運転者による動力性能向上要求がある場合は、ハイブリッド車両1の素早い加速が求められる。この場合に、クラッチ26の係合速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制することができる。
なお、本実施例においては、蓄電部としてバッテリを使用する場合を示したが、蓄電可能な装置であればよく、例えば、コンデンサなどでもよい。
また、動力伝達機構をクラッチ26で構成した場合を示したが、動力伝達を解放または接続できるものであればよい。
また、クラッチ26は、ノーマルクローズタイプの場合を示したが、ノーマルオープンタイプの場合であってもよい。
本実施例の第1の他の態様としては、図1におけるHCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量以上でありアシストトルク出力制御を行なう場合、変速開始時のクラッチ26の解放速度を第1速度とし、駆動輪5に伝達されるトルクが前述の実施例の規定量と等しくなったとき、クラッチ26の解放速度を第1速度より速い第2速度に変更し、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力を開始する。HCU10は、規定量と、エンジン2からトランスミッション3を介して出力されるトルクとの差をアシストトルクとする。
なお、モータジェネレータ4から出力可能なアシストトルクが変速開始時の駆動輪5の駆動トルク以上である場合は、変速開始時からクラッチ26を第2の速度で解放させ、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力を開始させてもよい。
HCU10は、運転者による前述の実施例の動力性能向上要求がある場合、第2速度を更に速くする。
HCU10は、変速時のクラッチ26の係合を開始させると、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するアシストトルクを減少させる。HCU10は、規定量と、エンジン2からトランスミッション3を介して出力されるトルクとの差をアシストトルクとする。
HCU10は、運転者による前述の実施例の動力性能向上要求がある場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、運転者による動力性能向上要求が無い場合に比べて速める。なお、変速中に運転者による動力性能向上要求が無くなった場合には、クラッチ26の係合速度を速めることを中止してもよい。
以上のように構成された本実施例の第1の他の態様に係る制御装置によるクラッチ制御処理について、図6を参照して説明する。なお、以下に説明するクラッチ制御処理は、HCU10が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
前述の実施例と同様に、ステップS1からステップS4において、HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量を検出し、変速を実行するか否かを判定し、変速を実行すると判定した場合、第2蓄電装置33の蓄電量から、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するモータトルク付加量である規定量を算出し、第1速度でクラッチ26の解放を開始する。
ステップS11において、HCU10は、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなったか否かを判定する。エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなっていないと判定した場合、HCU10は、ステップS11の処理を繰り返す。
エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなったと判定した場合、前述の実施例と同様に、ステップS6からステップS8において、HCU10は、第2速度でクラッチ26の解放を続け、クラッチ26が解放状態でトランスミッション3のギアの変更が完了することに基づいて変速処理が完了したか否かを判定し、変速処理が完了したと判定した場合、第3速度でクラッチ26の係合を行ない、処理を終了する。
このようなクラッチ制御処理による動作について図7を参照して説明する。図7は、アクセル踏込量が所定値以上となったことで動力性能向上要求があると判定された場合である。なお、図のクラッチ状態のKで示す線は、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量になるクラッチ状態を示している。
時刻t21において、アクセルが踏み込まれ始め、時刻t22において、所定値以上となると動力性能向上要求があると判定される。
時刻t23において、クラッチ26の解放が第1速度で開始され、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなった時刻t24において、クラッチ26の解放速度が、Cの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第2速度より速い一点鎖線で示す速度に速められる。同時に、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力が開始され、クラッチ26が完全に解放されたとき、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力される。
その後、クラッチ26の解放が完了し、変速処理が完了すると、Cの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第3速度より速い一点鎖線で示す速度でクラッチ26の係合が開始されると、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するアシストトルクが減らされる。時刻t25において、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達するとモータジェネレータ4のモータトルクが無くなる。そして、時刻t26において、クラッチ26の接続が完了する。
このように、本実施例の第1の他の態様では、アシストトルク出力制御を行なう場合、変速開始時のクラッチ26の解放速度を第1速度とし、駆動輪5に伝達されるトルクが前述の規定量と等しくなったとき、クラッチ26の解放速度を第1速度より速い第2速度に変更し、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力を開始する。
これにより、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量のトルクと同等となったとき、クラッチ26の解放速度が速められ、モータジェネレータ4からアシストトルクが出力される。このため、早期にクラッチ26を解放することができ、変速時間を短縮することができる。また、駆動輪5に伝達するトルクの動力源を、エンジン2からモータジェネレータ4に切り替えても、駆動輪5へのトルク抜けが発生することなく、駆動輪5への伝達トルクの変化を抑制させることができる。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、第2速度を更に速くする。運転者による動力性能向上要求がある場合に、クラッチ26の解放速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制することができる。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、運転者による動力性能向上要求が無い場合に比べて速める。
運転者による動力性能向上要求がある場合に、クラッチ26の係合速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制させることができる。なお、運転者による動力性能向上要求があることを判断するには、アクセル踏込量に代えて動力性能向上モードを有する複数の走行モード機能を設け、運転者により動力性能向上モードが選択された場合であっても良い。
本実施例の第2の他の態様としては、図1におけるHCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量が所定蓄電量以上でありアシストトルク出力制御を行なう場合、変速開始時のクラッチ26の解放速度を第1速度とし、駆動輪5に伝達されるトルクが前述の実施例の規定量と等しくなったとき、クラッチ26の解放速度を第1速度より速い第2速度に変更し、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力を開始する。HCU10は、規定量と、エンジン2からトランスミッション3を介して出力されるトルクとの差をアシストトルクとする。
また、HCU10は、変速時のクラッチ26の係合速度を、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなるまでは、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量以上になった後よりも速くする。
HCU10は、例えば、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなるまでのクラッチ26の係合速度を第4速度とし、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量以上になったときのクラッチ26の係合速度を第5速度としたとき、第4速度を第5速度より速くする。
HCU10は、クラッチ16の係合が開始されると、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するアシストトルクを減少させる。HCU10は、規定量と、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクとの差をアシストトルクとする。
HCU10は、運転者による前述の実施例の動力性能向上要求がある場合、第4速度及び第5速度を更に速くする。
以上のように構成された本実施例の第2の他の態様に係る制御装置によるクラッチ制御処理について、図8を参照して説明する。なお、以下に説明するクラッチ制御処理は、HCU10が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
前述の実施例と同様に、ステップS1からステップS4において、HCU10は、第2蓄電装置33の蓄電量を検出し、変速を実行するか否かを判定し、変速を実行すると判定した場合、第2蓄電装置33の蓄電量から、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するモータトルク付加量である規定量を算出し、第1速度でクラッチ26の解放を開始する。
ステップS11において、HCU10は、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなったか否かを判定する。エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなっていないと判定した場合、HCU10は、ステップS11の処理を繰り返す。
エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなったと判定した場合、前述の実施例と同様に、ステップS6からステップS7において、HCU10は、第2速度でクラッチ26の解放を続け、変速処理が完了したか否かを判定する。
ステップS21において、HCU10は、第4速度でクラッチ26の係合を開始する。
ステップS22において、HCU10は、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達したか否かを判定する。エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達していないと判定した場合、HCU10は、ステップS22の処理を繰り返す。
エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達したと判定した場合、ステップS23において、HCU10は、第5速度でクラッチ26の係合を行ない、処理を終了する。
このようなクラッチ制御処理による動作について図9を参照して説明する。図9は、アクセル踏込量が所定値以上となったことで動力性能向上要求があると判定された場合である。なお、図のクラッチ状態のKで示す線は、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量になるクラッチ状態を示している。
時刻t31において、アクセルが踏み込まれ始め、時刻t32において、所定値以上となると動力性能向上要求があると判定される。
時刻t33において、クラッチ26の解放がDの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第1速度より速い一点鎖線で示す速度で開始され、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなった時刻t34において、クラッチ26の解放速度が、Dの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第2速度より速い一点鎖線で示す速度に速められる。同時に、モータジェネレータ4から駆動輪5に対してアシストトルクの出力が開始され、クラッチ26が完全に解放されたとき、モータジェネレータ4から駆動輪5に対して規定量のアシストトルクが出力される。
その後、クラッチ26の解放が完了し、変速処理が完了すると、Dの実線で示す動力性能向上要求が無い場合の第3速度より速い一点鎖線で示す第4速度でクラッチ26の係合が開始されると、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するアシストトルクが減らされる。時刻t35において、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達するとモータジェネレータ4のモータトルクが無くなり、クラッチ26の係合速度が、第4速度よりも遅い第5速度にされる。そして、時刻t36において、クラッチ26の接続が完了する。
このように、本実施例の第2の他の態様では、アシストトルク出力制御を行なう場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量と等しくなるまでは、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量以上になったときよりも速くする。
これにより、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量のトルクと同等となるまでのクラッチ26の係合速度が速められる。このため、早期にクラッチ26を接続することができ、クラッチが解放されてから係合完了となるまでの時間を短縮させることができる。また、変速時間を短縮することができるとともに、第2蓄電装置33の電力消費量を抑制させることができる。
また、クラッチ16の係合が開始されると、モータジェネレータ4から駆動輪5に対するアシストトルクを減少させ、規定量と、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクとの差をアシストトルクとする。
これにより、クラッチ16の係合が開始されると、モータジェネレータ4のアシストトルクが減少され、エンジン2からトランスミッション3を介して駆動輪5に伝達されるトルクが規定量に達したときアシストトルクが無くなる。このため、変速中のモータジェネレータ4の駆動時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力消費量を抑制させることができる。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、第2速度を更に速くする。運転者による動力性能向上要求がある場合に、クラッチ26の解放速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制することができる。
また、運転者による動力性能向上要求がある場合、変速時のクラッチ26の係合速度を、運転者による動力性能向上要求が無い場合に比べて速める。
運転者による動力性能向上要求がある場合に、クラッチ26の係合速度を速めることで、より運転者の意に沿った走行性能を得ることができる。また、変速時間を短縮することができることで、モータジェネレータ4のトルク付与時間を短縮させることができ、第2蓄電装置33の電力の低下を抑制させることができる。なお、運転者による動力性能向上要求があることを判断するには、アクセル踏込量に代えて動力性能向上モードを有する複数の走行モード機能を設け、運転者により動力性能向上モードが選択された場合であっても良い。
本実施例では、各種センサ情報に基づきHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14及びBMS16が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。