[型枠ユニット]
本開示の型枠ユニットXは、少なくとも一枚の埋設パネル10と少なくとも一つの固定具30とを備える。本開示の型枠ユニットXは、コンクリート打設用型枠を形成する用途に使用される。
図1、図3は、本開示の一の実施形態に係る型枠ユニットXを表す。型枠ユニットXは、少なくとも一枚の埋設パネル10を備え、且つ、埋設パネル10ごとに少なくとも一組の固定具30を備える。前記固定具30は前記埋設パネル10にねじ20で固定される。
(埋設パネル)
本開示の埋設パネル10は、コンクリート構造物の形を作るせき板(=コンクリートに直接接する位置に配置される型枠)であって、コンクリート原料が硬化した後は、取り除かれることなくコンクリート構造物の一部を形成する。従って、本開示の埋設パネル10は、打ち込み用せき板である。また、従来のせき板を用いて型枠を形成する際は、せき板を支持するために仮設の型枠支保工を利用していたが、本開示の埋設パネル10は、その表面に固定具30(後で詳述する)が取付けられ、取付けられた固定具30によって埋設パネル10が組付け箇所に緊結され、組付けされる。そのため、型枠支保工を使用しなくても、型枠を形成することができる。
埋設パネル10は、面11およびこれとは反対の面12を有する矩形状の板材である。本実施形態では、平板状の繊維強化セメント板である。埋設パネル10において、その長手方向の寸法は例えば30~242cmであり、短手方向の寸法は例えば2~242cmである。なかでも、埋設パネル10の製造コストおよび運搬コストの抑制、並びに、埋設パネル10の組付け作業のしやすさの観点から、長手方向の寸法は30~200cmが好ましく、短手方向の寸法は2~100cm(特に、5~60cm)が好ましい。
尚、本明細書では、埋設パネル10を組付けてコンクリート打設用型枠を形成する際に、コンクリート充填区画の内側に向けて設置される面を面11とし、コンクリート充填区画の外側に向けて設置される面を面12とする。
前記平板状の繊維強化セメント板としては、例えば、スレートボード、珪酸カルシウム板、およびスラグ石膏板が挙げられる。スレートボードは、主原料として、例えば、セメント、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。珪酸カルシウム板は、主原料として、例えば、石灰質原料、珪酸質原料、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。スラグ石膏板は、主原料として、例えば、スラグ、石膏、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。これら繊維強化セメント板については、JIS A 5430に規格が定められている。耐水性の観点からは、前記繊維強化セメント板としては、スレートボードおよび珪酸カルシウム板が好ましい。また、スレートボードの市販品としては、例えば、株式会社エーアンドエーマテリアル製の「セルフレックス」が挙げられる。珪酸カルシウム板の市販品としては、例えば、株式会社エーアンドエーマテリアル製の「ハイラックM」が挙げられる。スラグ石膏板の市販品としては、例えば、吉野石膏株式会社製の「タイガーボード」が挙げられる。
埋設パネル10の厚さは、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上である。このような構成は、埋設パネル10の強度の確保の観点から好ましく、ひいては、埋設パネル10の運搬時および組付け作業時、並びにコンクリート打設の際の、埋設パネル10の破損や撓みを抑制するうえで好ましい。また、埋設パネル10の厚さは、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下である。このような構成は、埋設パネル10の軽量化の観点から好ましく、ひいては、埋設パネル10の製造コストおよび運搬コストの抑制、並びに、埋設パネル10の組付け作業のしやすさの観点から好ましい。
埋設パネル10は、固定具30をねじ止めするための貫通孔、すなわち埋設パネルの面11,12間を貫通する貫通孔13、が予め形成されていてもよいし、前記貫通孔13を形成可能なものであって、前記貫通孔13が未だ形成されてないものであってもよい。貫通孔13が未だ形成されてない場合、埋設パネル10は、図2に示すように、貫通孔形成予定箇所を示す印21を面11上及び/又は面12上に有するのが好ましい。
埋設パネル10に形成される貫通孔13の数は、埋設パネルの大きさや形状や、充填されるコンクリートの自重や荷重により埋設パネル10にかかる応力などに基づき求められる固定具30の数に応じて定められるものであるが、例えば1~20個、好ましくは4~10個の範囲である。貫通孔13の数が少なすぎるとコンクリートを充填した際にコンクリートの自重や荷重により埋設パネル10が歪むおそれがあり、多すぎると固定具30や連結部材の数が増えて組付け時の作業・時間・コストの増大や、コンクリートの均一な充填が困難になるなどのおそれがある。また、貫通孔13を設ける部位は、図8(埋設パネル10の11面側正面図)に示すように、一列に並ぶように設けてもよいし、四隅に設けてもよいし、四隅と中央に設けてもよいし、ジグザグに設けてもよい。
埋設パネル10の面11には、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する。さざなみ型模様は、さざ波様の連なりのある凸部を有し、波頭に相当する部位に角が立つ(言い換えると、波頭に相当する部位が盛り上がり、鋭頂を形成する)。さざなみ型模様は、例えば、高粘度のモルタル塗膜表面に、マスチックローラーを用いて凹凸を付与することにより形成することができる。
前記さざなみ型模様のモルタル硬化物層の厚みは、コンクリート原料に対する高い接着強度(付着強さ)を確保するという観点からは、好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。また、埋設パネル10に関する軽量化および作業性の改善の観点や、埋設パネル10の製造コストおよび運搬コストの抑制の観点からは、当該モルタル硬化物層の厚さは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
前記さざなみ型模様のモルタル硬化物層の最大厚みと最小厚みの差は、例えば1mm以上であり、好ましくは1.2mm以上、特に好ましくは1.5mm以上である。
前記さざなみ型模様のモルタル硬化物層の最小厚みを0とし、前記最大厚みを100とした場合に、80を越える厚みを有する部分の面積は、前記層面積全体の、例えば0.5~5%の範囲であり、面11への付着強度を高める点において、好ましくは1~5%の範囲、特に好ましくは1.5~3%の範囲である。
埋設パネル10の面11は、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有するため、投錨効果により、硬化後コンクリートとの接合性に優れ、前記さざなみ型模様のモルタル硬化物層の面11へのポリマーセメントモルタルへの付着強さは、例えば0.6N/mm2以上である。そのため、埋設パネル10が硬化後コンクリートの表面から剥離するのを防止することができる。
前記付着強さは、養生条件と養生期間により変動する。
例えば、湿空養生室(温度23±2℃、湿度80%以上)で養生する場合、養生期間が14日では、付着強さは、例えば0.6N/mm2以上である。また、養生期間が28日では、付着強さは、例えば0.6N/mm2以上、好ましくは0.7N/mm2以上である。
一般養生室(温度23±2℃、湿度50±5%)で養生する場合、養生期間が14日では、付着強さは、例えば0.6N/mm2以上、好ましくは0.7N/mm2以上、特に好ましくは0.8N/mm2以上、最も好ましくは0.9N/mm2以上である。また、養生期間が28日では、付着強さは、例えば0.6N/mm2以上、好ましくは0.8N/mm2以上、特に好ましくは0.9N/mm2以上、最も好ましくは1.0N/mm2以上である。
前記付着強さは、JIS A 6916 付着強さ試験7.13に準拠した方法で測定される。また、前記ポリマーセメントモルタルは、ダイセルファインケム製アクリル系粉末樹脂使用粉体(商品名「セルモル70」)1.5kgに水210gを加え、3分間フォバートミキサーで撹拌して得られる。
さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する埋設パネル10は、上述の繊維強化セメント板の一方の面の全体或いは一部に、高粘度のモルタルを塗布して、塗膜を形成し、形成された塗膜表面に、マスチックローラーを用いて凹凸を付与することにより形成することができる。前記モルタルの塗布量は、例えば0.8~3.0kg/m2である。
前記モルタルとしては、例えば、ポリマーセメントモルタル、エポキシ樹脂モルタル、およびカチオン系モルタルが挙げられる。
ポリマーセメントモルタルは、例えば、セメントと、細骨材と、水と、ポリマーディスパージョンまたは再乳化形粉末樹脂との混合物であるモルタルである。ポリマーディスパージョンとしては、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)およびアクリル樹脂があげられる。ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なエチレン酢酸ビニル樹脂の市販品としては、例えば、ダイセルファインケム株式会社製の「セルマイティ10」が挙げられる。ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なアクリル樹脂の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製の「スーパーペトロック400」が挙げられる。
カチオン系モルタルは、例えば、セメントと、細骨材と、水と、カチオン系ポリマーディスパージョンまたはカチオン系再乳化形粉末樹脂との混合物であるモルタルである。カチオン系ポリマーディスパージョンとしては、カチオン系スチレンブタジエンゴムおよびカチオン系アクリル樹脂が挙げられる。カチオン系ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なカチオン系スチレンブタジエンゴムの市販品としては、ダイセルファインケム株式会社製の「セルタル」が挙げられる。カチオン系ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なカチオン系アクリル樹脂の市販品としては、ダイセルファインケム株式会社製の「セルカチオン」が挙げられる。
エポキシ樹脂モルタルは、例えば、エポキシ樹脂と細骨材との混合物であるモルタルある。エポキシ樹脂モルタルの市販品としては、例えばコニシ株式会社製の「Kモルタル」が挙げられる。
上述のモルタル中の細骨材としては、例えば、珪砂、川砂、黒曜石パーライト、真珠岩パーライト、炭酸カルシウム粉が挙げられる。モルタル中には、一種類の細骨材が含まれてもよいし、二種類以上の細骨材が含まれてもよい。
繊維強化セメント板にポリマーセメントモルタルやカチオン系モルタルが塗布されると、塗布されたモルタル中の水分の多くが繊維強化セメント板に吸収され、当該モルタルがいわゆるドライアウトの状態に至りやすい。ドライアウト状態にあるモルタルでは、水和反応が阻害されて硬化不良や接着不良を生じることがある。このようなドライアウトを避けるためには、モルタル塗布前の繊維強化セメント板について、いわゆる吸水調整を行うのが好ましい。吸水調整手段としては、例えば、繊維強化セメント板に対する水の散布、および、繊維強化セメント板に対する吸水調整剤の塗布が、挙げられる。その吸水調整剤としては、例えば、合成樹脂のエマルジョンまたはポリマーディスパージョンを主成分とする、いわゆるセメントモルタル塗り用の吸水調整剤が挙げられる。そのような吸水調整剤中の合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、および合成ゴムが挙げられる。セメントモルタル塗り用の吸水調整剤の市販品としては、例えば、ダイセルファインケム株式会社製の「セルマイティ10」「セルタイト10」「セルロックJ」「セルプライマーJ」(いずれもエチレン酢酸ビニル系樹脂を含有する)、および、昭和電工建材株式会社製の「マルチプライマー」「ペルタスAC-300」(いずれもアクリル系樹脂を含有する)が、挙げられる。
埋設パネル10の面12には、その一部または全体にわたり、化粧面が設けられてもよいし、面11と同様にさざなみ型模様のモルタル硬化物層が設けられてもよい。
埋設パネル10の面12の一部または全体にわたり化粧面が設けられている場合、型枠ユニットXを使用してのコンクリート構造体の施工の後、埋設パネル10の外面に新たにモルタル化粧や塗装を施さなくてもよく、作業効率の観点から好ましい。
埋設パネル10の面12がさざなみ型模様のモルタル硬化物層を含む場合、当該施工後に埋設パネルの面12のさざなみ型模様のモルタル硬化物層に対してタイル貼り作業を実施するのに適する。
前記化粧面は、例えば、平滑平面成形面、塗料硬化膜表面、または化粧シート貼付面である。
前記平滑平面成形面は、例えば、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の作製過程で、化粧面形成予定箇所に接する表面が平滑平面である型板など型部材を使用して繊維強化セメント板をプレス成形または押出成形することにより、形成することができる。このような平滑平面成形面を有するパネル(繊維強化セメント板)として、せんい強化セメント板協会のスレートボードの一種である「フレキシブル板(化粧板仕上げタイプ)」が知られている。
前記塗料硬化膜表面は、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の化粧面形成予定箇所に塗料を塗布した後に硬化させることによって形成することができる。使用可能な塗料としては、例えば、有機系塗料、無機系塗料、および有機・無機複合系塗料が挙げられる。形成される塗料硬化膜表面の耐久性の観点からは、無機系塗料や有機・無機複合形塗料が好ましい。有機系塗料としては、例えば、アクリル樹脂塗料、エポキシ系塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ポリエステル塗料、およびビニルオルガノゾル塗料が挙げられる。無機系塗料としては、例えば、アルキルシリケート系塗料、光触媒酸化チタン含有無機塗料、シリカゾル系塗料、アルカリ金属塩系塗料、金属アルコキシド系塗料、セメントリシン系塗料、およびセメントスタッコ系塗料が挙げられる。有機・無機複合系塗料としては、例えば、シロキサン結合を含有する有機・無機複合系塗料、金属アルコキシド系塗料、セラミックス系塗料、および光触媒酸化チタン含有有機・無機複合系塗料が挙げられる。これら塗料は、充填剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、安定剤などその他の添加剤を顔料に加えて含有していてもよい。
前記化粧シート貼付面を形成するための化粧シートとしては、例えば、塩化ビニル化粧シート、熱可塑性樹脂化粧シート、熱硬化性樹脂化粧シート、薄葉化粧シート、およびいわゆるPタイルが挙げられる。塩化ビニル化粧シートは、例えば、顔料を混練した不透明の塩化ビニルシートに模様の印刷を施し、その印刷面上に透明な塩化ビニルフィルムを加熱接着し、当該印刷面側を必要に応じてエンボス加工して作製することができる。そのエンボス加工は、例えば、凹凸表面を有するロールでの加圧によって行うことができる。熱可塑性樹脂化粧シートは、例えば、シート構成樹脂として塩化ビニル樹脂の代りに各種可塑性樹脂を用いること以外は塩化ビニル化粧シート作製方法と同様にして、作製することができる。熱硬化性樹脂化粧シートは、坪量55~200g/m2の化粧紙にメラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸したものを、同様の熱硬化性樹脂を含浸したクラフト紙など基材シートに重ね、得られる積層体について多段式ホットプレス機または連続成形プレス機を使用して熱圧プレス成形することによって、作製ことができる。薄葉化粧シートは、例えば、坪量30g/m2程度の薄葉紙に着色ベタ印刷を施し、そのベタ印刷面上に図柄を印刷し、当該印刷面に対してアミノアルキッド樹脂塗料またはポリウレタン樹脂塗料などによる塗装仕上げを施すことによって、作製することができる。前記化粧シート貼付面を形成するための化粧シートは、好ましくは、塩化ビニル化粧シートおよびPタイルである。埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板に対する化粧シートの貼付方法としては、ウレタン樹脂や、ビニル樹脂、アクリル樹脂など接着性樹脂を介しての接着があげられる。
以上のような埋設パネル10としては、特開平8-312092号公報に記載のもの(但し、石綿は含有していないもの)、および、ダイセルファインケム株式会社製の「セル・ケコミパネル」や「セル・スリムステップボード」が、特に好ましい。
(固定具)
本開示の固定具30は、前記埋設パネル当接用の端面と、前記埋設パネルを組付けて型枠を形成する際に、前記埋設パネルを組付け箇所に固定するための連結手段とを有する部材である。
本開示の一の実施形態に係る固定具30は、図3に示される通り、前記埋設パネル10当接用の端面31を有し、前記端面31において埋設パネル10にねじ止めされる部材である。そして、前記固定具30は、組付け箇所側連結部材に連結可能である。そして、前記固定具30を利用すれば、埋設パネル10を組付けて型枠を形成する際に、埋設パネル10を組付け箇所に固定することができる。
前記固定具30は、例えば、前記埋設パネル10当接用の端面31を有する凸状部材であって、前記端面31において埋設パネル10にねじ止めされ、前記端面31とは反対側に、前記埋設パネル10を含む型枠ユニットXを組付けて型枠を形成する際に、前記埋設パネル10を組付け箇所に固定する連結手段を有する部材である。
前記埋設パネル10を組付け箇所に固定する連結手段としては、前記埋設パネル10を組付けて、コンクリート充填区画を形成する際に、前記埋設パネル10とコンクリート充填区画の内側から、前記埋設パネル10の面11に向かって延出する連結部材Sとを連結する手段であることが好ましく、前記埋設パネル10とコンクリート充填区画の内側から、前記埋設パネル10の面11に向かって延出する連結部材Sとのねじ締結手段であることがとりわけ好ましい。
前記固定具30は、好ましくは、前記埋設パネル10当接用の端面31を有する凸状部材であって、前記端面31において埋設パネル10にねじ止めされ、前記端面31とは反対側に、前記埋設パネル10を組付けて、コンクリート充填区画を形成する際に、コンクリート充填区画の内側から、前記埋設パネル10の面11に向かって延出する連結部材Sと連結する手段を有する部材である。これにより、埋設パネル10と連結部材Sとを連結することができ、後述のコンクリート構造物施工過程において、埋設パネル10の組付けを強固なものとすることができる。
前記固定具30は、より好ましくは、図10に示されるように、凸状部材からなる本体120と、前記本体の一端に設けられた埋設パネル当接用フランジ122とを備え、前記本体120の他端側軸部にネジ孔123,124を有する部材である。前記部材によれば、前記本体120の他端側から、少なくとも一端にネジ構造部を有する連結部材Sの前記ネジ構造部が前記ネジ孔123,124に螺合可能である。そして、連結部材Sのネジ構造部を固定具30のネジ孔123,124に螺合させれば、連結部材Sと埋設パネル10を緊結することができ、後述のコンクリート構造物施工過程において、埋設パネル10の組付けを強固なものとすることができる。
また、前記固定具30は、埋設パネル当接用フランジ122に、埋設パネル10にねじ止めするためのネジ孔部32を有していてもよい。前記固定具30が埋設パネル10にねじ止めするためのネジ孔部32を有する場合、図10(a)に示すように、前記ネジ孔部32は、連結部材Sのネジ構造部を螺合させるためのネジ孔123と連通して、貫通ネジ孔を形成していてもよく、図10(b)に示すように、連結部材Sのネジ構造部を螺合させるためのネジ孔124とは別に設けられていてもよい。
また、図10(c)に示すように、前記固定具30がネジ孔部32を有さない場合には、埋設パネル当接用フランジ122が埋設パネル10の面11に当接するよう固定具30をあてがった状態で、先端がとがったネジ(例えば、セルフタッピングネジ、ドリルネジ、ドリルタッピングネジ、ピアスネジ、建材用ネジ、ALCネジ、木ネジ等)を使用して、ねじ止めすることができる。この場合、前記先端がとがったネジが、固定具30の所定の位置に、真っすぐにねじこまれるように、固定具30に下穴を開けておいてもよい。
前記固定具30は1つのパーツで構成されていてもよいし、2つ以上のパーツで構成されていてもよい。1つのパーツで構成されている場合には、型枠ユニットXの部品点数を削減する効果が得られる。
前記固定具30が2つ以上のパーツで構成されている場合としては、図11,図12に示すような、筒状部材からなる本体125の一端に、埋設パネル当接用フランジ122を備える台座部30Aと、ナット部30Bとを含み、前記ナット部30Bは台座部30Aの筒状孔121内に、ナット部30Bのネジ孔126が台座部30Aの孔口から表出する向きに、嵌挿されてなる態様が挙げられる。当該固定具30は、フランジ122の埋設パネル当接面122Aにネジ孔部32を有し、当該ネジ孔部32からねじ止め用のネジ20が挿通可能である。このような固定具30としては、例えば、コンドーテック株式会社から販売されている商品名「断熱パット」や、三協テック株式会社から販売されている商品名「断熱コン(KPコン)」など、市販品を使用することができる。
このような構成によると、構成材料が互いに異なる台座部30Aおよびナット部30Bを備える固定具30を実現することが可能である。すなわち、埋設パネル10の傾きや歪みの抑制機能を担う埋設パネル当接用の端面31に求められる特性を踏まえて構成材料が選択された台座部30Aと、埋設パネル10の強固な組付けに寄与するネジ孔部32に求められる特性を踏まえて構成材料が選択されたナット部30Bと、を備える複合的な構成の固定具30を、実現することが可能なのである。
また前記固定具30は、上述のナット部30Bの代わりに、図5(a)に示すようなナット連結体30Cや図5(b)に示すようなナット連結体30Dを備えてもよい。
ナット連結体30Cは、二つのナット部34,35が自在継ぎ手を介して連結された構成を有するものである。ナット部34は、埋設パネル10にねじ止めするためのネジ孔部32を有する。ナット部35は、埋設パネル組付け箇所側連結部材であるいわゆるセパレータの端部のネジ構造部が螺合可能なネジ孔部32'を有する。ナット連結体30Dは、二つのナット部36,37とネジ部38とを備える。ナット部37とネジ部38は、自在継ぎ手を介して連結されている。ナット部36は、埋設パネル10にねじ止めするためのネジ孔部32を有する。前記ネジ孔部32には、ネジ部38も螺合可能である。ナット部37は、埋設パネル組付け箇所側連結部材であるいわゆるセパレータの端部のネジ構造部が螺合可能なネジ孔部32'を有する。
埋設パネル10にねじ止めされた台座部30のナット部30Bのネジ孔の位置又は向きと、連結部材Sのネジ構造部の位置又は向きとが一致しない場合には、台座部30Aとナット部30Bの組み合わせに代えて、台座部30Aと、ナット連結体30C又はナット連結体30Dを使用すれば、連結部材Sのネジ構造部をネジ孔に螺合させることが可能となり、型枠ユニットXを強固に組付けすることが可能となる。
そして、前記固定具30は、埋設パネル10の面11に、埋設パネル当接用端面31があてがわれた状態でねじ止めされる。1枚の埋設パネル10にねじ止めされる固定具30の数は、埋設パネルの大きさや形状や、充填されるコンクリートの自重や荷重により埋設パネル10にかかる応力などに基づき求められる固定具30の数に応じて定められるものであるが、例えば1~20個、好ましくは4~10個の範囲である。固定具30の数が少なすぎるとコンクリートを充填した際にコンクリートの自重や荷重により埋設パネル10が歪むおそれがあり、多すぎると固定具30や連結部材の数が増えて組付け時の作業・時間・コストの増大や、コンクリートの均一な充填が困難になるなどのおそれがある。また、埋設パネル10の面11における、前記固定具30のねじ止め部位は、図8(埋設パネル10の11面側正面図)に示すように、一列であってもよいし、四隅であってもよいし、四隅と中央であってもよいし、ジグザグであってもよい。
前記固定具30を前記埋設パネル10にねじ止めするのに使用されるネジ20は、その延び方向において埋設パネル10の厚さより長い寸法を有し、且つ、所定のネジ山を有する。ネジ20は、公知のものから選択できる。例えば、六角ボルト、六角穴付ボルト、座金組み込み六角ボルト、アイボルト、蝶ボルト、ナベ小ネジ、皿小ネジ、トラス小ネジ、バインド小ネジ、セルフタッピングネジ、ドリルネジ、ドリルタッピングネジ、ピアスネジ、建材用ネジ、ALCネジ、および木ネジから選択されたものを、ネジ20として使用することができる。また、ネジ20として、型枠固定用として公知の各種フォームタイ(登録商標)(或いは、ホームタイ(登録商標))のメスねじ部に棒ねじ(“寸切りねじ”や“全ねじ”と呼称されることもある)の一部をねじ込ませて残部を露出させたものを使用してもよい。そのフォームタイ(登録商標)(或いは、ホームタイ(登録商標))としては、市販のものを使用することができる。市販のフォームタイ(登録商標)としては、例えば、ナット付タイプのフォームタイ(登録商標)(岡部株式会社から販売されている商品名「フォームタイ(登録商標)C型 C8-150」など)、くさびタイプのフォームタイ(登録商標)(コンドーテック株式会社から販売されている商品名「くさび式ホンタイ 2K-60 W5/16・60角パイプ用」など)、および、ねじタイプのフォームタイ(登録商標)(コンドーテック株式会社から販売されている商品名「RBねじホンタイ(3形リブ座ナット・SWセット)8-180」など)が挙げられる。
(組付け箇所側連結部材S)
埋設パネル組付け箇所側連結部材Sは、例えば、型枠ユニットXを組付けて、コンクリート充填区画を形成した場合に、コンクリート充填区画の内側となる位置から、前記型枠ユニットXを構成する埋設パネル10の面11に向かって延出する部材である。
前記連結部材Sとしては、例えばセパレータが挙げられる。前記セパレータは、両端にネジ構造部を有するセパレータであってもよいし、片端にのみネジ構造部を有するセパレータであってもよい。また、前記セパレータは、直線状であってもよいし、任意の複数個所で屈曲していてもよい。更に、ネジ構造部を有する端とは反対側の端がフック状に曲げられていてもよいし、フックが取り付けられていてもよい。これらのセパレータは丸セパレータ、スタットセパレータ、片曲げセパレータ、両曲げセパレータ、アンカーセパレータ、フックセパレータなどの名称で知られている。
更に、前記連結部材Sとして、前記セパレータの2個以上が連結したものを使用してもよい。前記連結部材Sは、例えば、図4(a)に示すような複合セパレータや図4(b)に示す複合セパレータであってもよい。図4(a)に示す複合セパレータは、両端に正ネジ構造部を有するセパレータ41と、両端に逆ネジ構造部を有するか或いは図中左端に正ネジ構造部を有し且つ図中右端に逆ネジ構造部を有するセパレータ42と、これらが螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結金具43とを備える。図4(b)に示す複合セパレータは、両端に正ネジ構造部を有するセパレータ44,45と、両端に逆ネジ構造部を有する屈曲型のセパレータ46と、セパレータ44,46が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結金具47と、セパレータ45,46が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結金具48とを備える。連結金具43,47,48は、それぞれ、例えば、いわゆるターンバックルまたはジョイントナットである。型枠ユニットXの埋設パネル10の組付け箇所ないし組付け高さに応じて、上記各種セパレータを使い分けることができる。
そして、前記連結部材Sの一端は、前記固定具30の連結手段[例えば、連結部材Sの一端のネジ構造部と、ネジ孔(ネジ孔32,ネジ孔32’,ネジ孔123,ネジ孔124,ネジ孔126等)を用いて行う、ねじ締結手段]により保持される。すなわち、前記連結部材Sの一端は、前記固定具30とのねじ締結により保持される。
そして、前記連結部材Sの他端は、型枠ユニットXを組付けて、コンクリート充填区画を形成した場合に、コンクリート充填区画の内側となる位置に保持される。
前記連結部材Sの他端の保持方法としては、例えば、前記型枠ユニットXを組付けてコンクリート充填区画を形成した際に、前記型枠ユニットXと共に充填区画を形成する他のパネル(例えば、向かい側に位置する別の型枠ユニットXの埋設パネル及び/又は取外しパネル)に前記連結部材Sの他端が固定されていてもよい。前記型枠ユニットXと共に充填区画の一角を形成するのが既存のコンクリートである場合は、前記連結部材Sの他端が前記コンクリートに埋め込まれて、いわゆるアンカーボルトを形成していてもよい。また、前記連結部材Sの他端は、コンクリート充填区画の内側に存在する鉄骨や鉄筋などの鉄部材に溶接固定されてもよいし、前記鉄部材に連結金具を介して連結されていてもよい。また、前記連結部材Sの他端にフックが取り付けられている場合や、前記連結部材Sの他端がフック状に曲げられている場合には、前記フックをコンクリート充填区画の内側に存在する鉄骨や鉄筋などの鉄部材や別の連結部材Sに引っ掛けることにより連結されていてもよい。
前記連結金具としては、例えば、岡部株式会社から販売されている商品名「セパグリップ」、共栄製作所株式会社から販売されている商品名「エスケーユニバ」および商品名「ドマスター」、日本仮設株式会社から販売されている商品名「テツカブト(ナット付)」、株式会社国元商会から販売されている商品名「KSガッツ」、乾産業株式会社から販売されている商品名「セパジメ」、コンドーテック株式会社から販売されている商品名「ワイヤクリップ KMクリップ」、特開2008-214911号公報に記載されている「セパレータと鉄筋または丸棒とを接続するためのジョイント金具」、並びに、特開2003-013600号公報に記載されている「鉄筋とセパレータとの連結金具」が挙げられる。
(接続具)
型枠ユニットXは、図6(a)に示すような接続具50Aを更に備えてもよい。接続具50Aは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面12が面一となる態様で連ねて接続するためのものであって、本実施形態では少なくとも平プレート五壱および所定数の締結材52を備える(図6(a)は、四つの締結材52を備える場合の接続具50Aを例示的に表すものである)。隣接する二枚の埋設パネル10が接続具50Aによって接続された状態において、平プレート51は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたり、それらの例えば面12(外面)側にあてがわれている。締結材52は例えばドリルネジであり、締結材52がドリルネジである場合には、平プレート51および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された締結材52により、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる平プレート51の固定が実現される。このような接続具50Aにおいて、平プレート51は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたってそれらの面11(内面)側にあてがわれてもよいし、締結材52はボルトであってもよい。締結材52がボルトである場合には、平プレート51および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された当該ボルト(締結材52)と、そのネジ構造部に面11側にて締結されるナットとにより、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる平プレート51の固定が実現される。
型枠ユニットXがこのような接続具50Aを備えることは、型枠ユニットXを使用して形成されるコンクリート構造部(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)に、複数の埋設パネル10にわたる平坦な側壁面を適切に形成するうえで好ましい。また、このような接続具50Aを使用しつつ側壁面を形成した後、締結材52と、面12側に平プレート51があてがわれる場合には当該平プレート51とを、当該側壁面から取外し、締結材52が挿入されていた比較的に小さな埋設パネル貫通孔の少なくとも外側開口端部にモルタルを充填する補修を行うことにより、当該側壁面において良好な美観を確保することができる。
一組の接続具50Aが備える締結材52の数は、図6(a)では4個であるが、2、3または5個以上であってもよい。また、一組の隣接する二枚の埋設パネル10を接続するために使用される接続具50Aの数は、図6(a)では1個であるが、2または3個以上であってもよい。
型枠ユニットXは、図7(a)に示すような接続具50Aの代わりに、例えば特許4103729公報の図13(a)に記載された平ジョイナー(またはH型ジョイナー)を備えてもよい。
型枠ユニットXは、図6(b)に示すような接続具50Bを更に備えてもよい。接続具50Bは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10が互いに直交する態様、若しくは隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面11が交差する態様、で連ねて接続するためのものであって、本実施形態では少なくとも屈曲プレート53および所定数の締結材54を備える(図6(b)は、四つの締結材54を備える場合の接続具50Bを例示的に表すものである)。隣接する二枚の埋設パネル10が接続具50Bによって接続された状態において、屈曲プレート53は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたり、それらの例えば面12(外面)側にあてがわれている。締結材54は例えばドリルネジであり、締結材54がドリルネジである場合には、屈曲プレート53および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された締結材54により、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる屈曲プレート53の固定が実現される。このような接続具50Bにおいて、屈曲プレート53は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたってそれらの面11(内面)側にあてがわれてもよいし、締結材54はボルトであってもよい。締結材54がボルトである場合には、屈曲プレート53および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された当該ボルト(締結材54)と、そのネジ構造部に面11側にて締結されるナットとにより、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる屈曲プレート53の固定が実現される。
型枠ユニットXがこのような接続具50Bを備えることは、型枠ユニットXを使用して形成されるコンクリート構造部(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)に、横方向に連なって直角など所定角度をなす隣接平面を含む側壁面を適切に形成するうえで好ましい。また、このような接続具50Bを使用しつつ側壁面を形成した後、締結材54と、面12側に屈曲プレート53があてがわれる場合には当該屈曲プレート53とを、当該側壁面から取外し、締結材54が挿入されていた比較的に小さな埋設パネル貫通孔の少なくとも外側開口端部にモルタルを充填する補修を行うことにより、当該側壁面において良好な美観を確保することができる。
一組の接続具50Bが備える締結材54の数は、図6(b)では4個であるが、2、3または5個以上であってもよい。また、一組の隣接する二枚の埋設パネル10を接続するために使用される接続具50Bの数は、図6(b)では1個であるが、2または3個以上であってもよい。
また、図6(b)に示される二枚の埋設パネル10は、出隅部位を含む段差部を有するコンクリート構造物の当該段差部を形成するための配置をとる。これに対し、図6(b)に示される各埋設パネル10につきその表裏面(面11,12)を入れ変えた場合に当該二枚の埋設パネル10がとる配置は、入隅部位を含む段差部を有するコンクリート構造物の当該入隅部を形成するための配置である。
型枠ユニットXは、図7(b)に示すような接続具50Bの替わりに、例えば特許4103729公報の図13(b)に記載された出隅ジョイナー(または入隅ジョイナー、L型ジョイナー)を備えてもよい。
出隅ジョイナーは、例えばアルミニウム製や塩化ビニル樹脂製のものが、株式会社創建、フクビ化学工業株式会社、株式会社シンワ、株式会社サトウ巧材などから市販されており、これらのものを使用できる。
(高さ調整具)
型枠ユニットXは、図7(a)および図7(b)に示すような高さ調整具60Aを更に備えてもよい。このような構成は、本型枠ユニットを使用して行うコンクリート構造物の施工にあたり、埋設パネルの組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
高さ調整具60Aは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる埋設パネル10の高さ位置を調整するためのものであって、受け部材61と、受け部材61を支持する脚部材62とを備える。
受け部材61は、本実施形態では、埋設パネル10の厚さより幅の広い埋設パネル受容用の溝を有する。そのような構成に代えて、受け部材61は、埋設パネル受容用の溝を有さないものでもよい。例えば、受け部材61は、各種形状の平面プレートを埋設パネル当接部として有するものでもよい。その平面プレートは、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよい。或いは、受け部材61は、埋設パネル支持用棒状部材を埋設パネル当接部として有するものでもよい。その棒状部材は、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよいし、V字形状やU字形状を有するものであってもよい。受け部材61が上記溝を有さないこれら構成は、埋設パネル10の組付けにあたってその組付け箇所・配向の自由度を確保する観点から好ましい。
受け部材61の裏面(埋設パネルを受容する面の裏面)には、脚部材62と結合するためのネジ構造部或いはナット部を有するのが好ましい。図7(a)では、受け部材61の裏面から垂直方向に伸びるネジ構造部が設けられている。
脚部材62は受け部材61を支持する部材である。また、脚部材62は、高さ調整具60Aが埋設パネル10の高さ位置を調整する機能を発揮可能であれば、どのような構成のものでもよい。脚部材62は、少なくとも棒状部材を備える。
前記棒状部材としては、上述の連結部材Sとして使用される、セパレータや、2個以上のセパレータが連結金具63,66(例えば、ターンバックルまたはジョイントナット)を介して連結されたものを使用することができる。
棒状部材の一端には、受け部材61と結合するためのネジ構造部或いはナット部を有するのが好ましい。また、棒状部材の他端には、既存の床面などに当接するのに適した所定の形状や構造を有する土台を備えるのが好ましい。図7(a)では、棒状部材の一端はナット部を有し、前記ナット部に、受け部材61の裏面から垂直方向に伸びるネジ構造部が螺合されており、他端は床面に当接して角錐形状の土台に支持されている。
或いは、脚部材62は、既存の平面状床面に当接するのに好適な支持端面と当該端面とは反対の側にて開口するネジ孔部とを有する土台の、当該ネジ孔部に両切りボルトや棒ネジの一方端部がねじ込まれ且つその他方端部が上記ネジ構造部をなすものでもよい。支持端面とネジ孔部とを有する前記土台としては、例えば、図3を参照して上述した固定具30が挙げられる。固定具30における台座部30Aの端面31が平面状床面に当接するように設置した状態で、ナット部30Bのネジ孔部32に両切りボルトや棒ネジをねじ込むことにより、脚部材62が構成される。
或いは、脚部材62は、棒状部材の他端が既存のコンクリートに埋め込まれた構成を有するもの(いわゆる、アンカーボルト)であってもよいし、棒状部材の他端が鉄骨または鉄筋などの鉄部材に溶接固定された構成を有するものであってもよいし、連結金具を介して棒状部材の他端が鉄骨または鉄筋などの鉄部材に連結された構成を有するものであってもよい。前記の連結金具としては、例えば、岡部株式会社から販売されている商品名「セパグリップ」、共栄製作所株式会社から販売されている商品名「エスケーユニバ」および商品名「ドマスター」、日本仮設株式会社から販売されている商品名「テツカブト(ナット付)」、株式会社国元商会から販売されている商品名「KSガッツ」、乾産業株式会社から販売されている商品名「セパジメ」、コンドーテック株式会社から販売されている商品名「ワイヤクリップ KMクリップ」、特開2008-214911号公報に記載されている「セパレータと鉄筋または丸棒とを接続するためのジョイント金具」、並びに、特開2003-013600号公報に記載されている「鉄筋とセパレータとの連結金具」が挙げられる。
図7(a)および図7(b)は、脚部材62を二組備える場合の高さ調整具60Aを例示的に表すものであって、高さ調整具60Aは、一組の脚部材62を備えるものであってもよいし、三組以上の脚部材62を備えるものであってもよい。
図7(b)に示す高さ調整具60Aは、隣接する二枚の埋設パネル10を連ねた状態で受けてこれら埋設パネル10の高さ調整機能を同時に担う。型枠ユニットXがこのような高さ調整具60Aを備えることは、型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の施工にあたり、埋設パネル10の組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
型枠ユニットXは、図7(c)に示すような高さ調整具60Bを更に備えてもよい。高さ調整具60Bは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面11が直角など所定角度で交差する態様で連ねつつ当該埋設パネル10の高さ位置を調整するためのものであって、受け部材64と、受け部材64を支持する脚部材65を備える。型枠ユニットXがこのような高さ調整具60Bを備えることは、型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の施工にあたり、交差態様で隣接する二枚の埋設パネル10の組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
受け部材64は、本実施形態では、埋設パネル10の厚さより幅の広い埋設パネル受容用の溝を有する。そのような構成に代えて、受け部材64は、埋設パネル受容用の溝を有さないものでもよい。例えば、受け部材64は、各種形状の平面プレートを埋設パネル当接部として有するものでもよい。その平面プレートは、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよい。或いは、受け部材64は、埋設パネル支持用棒状部材を埋設パネル当接部として有するものでもよい。受け部材61が上記溝を有さないこれら構成は、埋設パネル10の組付けにあたってその組付け箇所・配向の自由度を確保する観点から好ましい。
図7(c)は、脚部材65を三組備える場合の高さ調整具60Bを例示的に表すものであって、高さ調整具60Bは、一組の脚部材65を備えるものであってもよいし、二組の脚部材65を備えるものであってもよいし、四組以上の脚部材65を備えるものであってもよい。高さ調整具60Bにおける脚部材65の構成は、高さ調整具60Aにおける脚部材65の構成と同様である。
前記型枠ユニットは、また、コンクリート打設用型枠を形成する型枠ユニットであって、
少なくとも一枚の埋設パネルと少なくとも一つの固定具とを備え、
前記埋設パネルは、コンクリート充填区画の内側に向けて設置される面に、モルタル硬化物層を有する部材であり、
前記固定具は、前記埋設パネル当接用の端面と、前記埋設パネルを組付けて型枠を形成する際に、前記埋設パネルを組付け箇所に固定するための連結手段とを有する部材であり、
前記モルタル硬化物層が下記特性を有するものであってもよい。
モルタル硬化物層特性:
モルタル硬化物層表面に、ポリマーセメントモルタルを塗布し、湿空養生(温度23±2℃、湿度80%以上)28日後のポリマーセメントモルタルの付着強さは0.7N/mm2以上であり、一般養生(温度23±2℃、湿度50±5%)28日後の付着強さは1.0N/mm2以上である。尚、前記付着強さは、JIS A 6916 付着強さ試験7.13に準拠した方法で測定される。また、前記ポリマーセメントモルタルは、ダイセルファインケム製アクリル系粉末樹脂使用粉体(商品名「セルモル70」)1.5kgに水210gを加え、3分間ミキサー(例えば、フォバートミキサーやハンドミキサー)で撹拌して得られる。
[コンクリート構造物施工方法]
本開示のコンクリート構造物施工方法は、上記型枠ユニットを使用してコンクリートを打設して、コンクリート構造物を施工する方法であって、
埋設パネル10の、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する面11上に固定具30をねじ止めして型枠ユニットXを組み立て、組み立てられた型枠ユニットXを、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する面が、コンクリート原料が充填されることとなる区画の内側に向くように配置する工程と、
配置された型枠ユニットXを前記固定具30で固定して、型枠を形成する工程2と、
形成された型枠内にコンクリート原料を充填する工程3とを含むことを特徴とする。
前記工程1では、組み立てられた型枠ユニットXは、埋設パネル10のさざなみ型模様のモルタル硬化物層を含む面11がコンクリート充填区画110の内側に向くように組み付けられる。
また、前記工程1にける、組み立てられた型枠ユニットXの配置は、当該型枠ユニットXの埋設パネル10が、コンクリート原料が充填されることとなる区画の上向面、下向面、及び側壁面から選択される少なくとも一面を形成するよう配置するのが好ましい。
前記工程2では、例えば、配置された型枠ユニットXの固定具30と、コンクリート充填区画の内側から、前記型枠ユニットXの面11に向かって延出する連結部材Sとを連結することで、前記型枠ユニットXを組付け箇所に固定することができる。尚、前記連結部材Sは、上述の組付け箇所側連結部材に相当する。
また、コンクリート原料の充填時に型枠ユニットXに歪みが生じるのを防止したり、型枠ユニットXの隙間からコンクリート原料が漏出するのを防止する等の目的で、型枠ユニットXの外側(すなわち、コンクリート充填区画側110とは反対側)に、例えば、桟木と呼ばれる木枠等の補強材を配置してもよい。補強材を使用した場合は、コンクリート原料が硬化した後に、型枠ユニットXをコンクリート構造物側に残しつつ、前記補強材は取り除けばよい。
前記コンクリート構造物には、上向き、下向き、或いは横向きに突き出る凸条構造部を含むコンクリート構造物や、上向き、下向き、或いは横向きに突き出る凸構造部を含むコンクリート構造物が含まれる。前記コンクリート構造物は、例えば、コンクリート製の、階段、立ち上がり段差、敷居、梁、窓枠、天井、床、柱、壁、擁壁、パラペット、及び架台から選択される少なくとも1種の構造物である。
前記コンクリート構造物が梁等の下向きに突き出る凸条構造部を含むコンクリート構造物である場合の型枠の形成方法を、図13を参照しつつ以下に説明する。
型枠ユニットX(埋設パネル10に固定具30がネジ20で止められたもの)を、梁100の表面に配置し、配置された型枠ユニットXの固定具30と、梁100に一端が固定され、型枠ユニットXの面11に向けて延出する連結部材Sとを連結することで、前記型枠ユニットXを固定して型枠を形成することができる。
前記コンクリート構造物が架台等の、上向きに突き出る凸構造部のなかでも特殊な形状(より詳細には、柱状構造部の上面が面取りされた形状、すなわち、柱状構造部の上面に角錐台状構造部が形成された形状)を含むコンクリート構造物である場合の型枠の形成方法を、図14、図15を参照しつつ以下に説明する。
まず、コンクリート充填区画110の内側に、鉄筋(必要に応じて、補助鉄骨も)127を配置する。
次に、型枠ユニットX(埋設パネル10に固定具30がネジ20で止められたもの)をコンクリート充填区画の側面を囲む位置と、コンクリート充填区画の上面を覆う位置に配置し、配置された型枠ユニットXの固定具30と、鉄筋若しくは補助鉄骨127とを連結する。これにより、前記型枠ユニットXを固定することができ、型枠を形成することができる。
従来、架台のような柱状構造部の上面に角錐台状構造部が形成された形状のコンクリート構造物を施工するには、まず、取外しパネルで型枠を形成して柱状構造部を形成し、その後、形成された柱状構造部の上面に、型枠を使用せず、コテ等によりコンクリートを塗布して角錐台状構造部を形成していた。しかし、角錐台状構造部を、型枠を使用せずに形成するには、コンクリート原料を層毎に塗布し、塗布されたコンクリート原料の上向面と側壁面とが形成予定の角錐台状構造と一致するよう整える作業を、形成予定の高さまで繰り返す必要がある。そのため、手間がかかり、コストの増大を招いていた。しかし、本開示の型枠ユニットXを使用すれば、柱状構造部と角錐台状構造部を区画するよう組付けた後は、コンクリート原料を充填して、先ず柱状構造部を形成し、その後、更にコンクリート原料を充填して、形成予定の角錐台状構造部の上面として固定されている型枠ユニットXにおける埋設パネル10の外周辺を“当たり”(すなわち、モルタルの仕上げ面の基準)として、型枠ユニットで覆われていない側面部分(図15中の点線部分)をコテ等で整えることだけで、容易に角錐台状構造部を形成することができ、手間とコストを削減しつつ、きれいに仕上げることができる。
さらには、取外しパネルで型枠を形成して柱状構造部(コンクリート充填区画80の側面を囲む位置)を形成し、その後、形成された柱状構造部の上面(コンクリート充填区画80の上面を覆う位置)のみに、本開示の型枠ユニットXを用いて、図14の形状のコンクリート構造物を施工することもできる。
立ち上がり段差を含むコンクリート構造物の型枠の形成方法を、図16を参照しつつ以下に説明する。
組み立てられた型枠ユニットXを、立ち上がり段差の蹴込み部に、組み立てられた型枠ユニットXの埋設パネル10の下端が、踏面或いは床面73より下に埋め込まれる状態で配置し、組み立てられた型枠ユニットXの固定具30と、コンクリート充填区画内部に設置された鉄筋若しくは補助鉄骨81とを連結することで、組み立てられた型枠ユニットXを固定して型枠Yを形成することができる。
型枠Yを形成した後は、形成された型枠内にコンクリート原料を供給する。まず、型枠Yによって形成されたコンクリート原料充填区画において、踏面或いは床面73が形成されることとなる高さに対応する高さ位置H1までコンクリート原料を供給する。この後、供給されたコンクリート原料を密実に充填するための締固めや、コテ等より踏面或いは床面73の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て、コンクリートを硬化させる。
次に、型枠Yによって形成されたコンクリート原料充填区画において、立ち上がり段差の上面77が形成される高さに対応する高さ位置H2まで更にコンクリート原料を供給する。この後、供給されたコンクリート原料を密実に充填するための締固めや、コテ等より踏面或いは床面73の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て、コンクリートを硬化させる。これにより、型枠ユニットXの埋設パネル10は、立ち上がり段差の蹴込み部を形成することとなる。
前記立ち上がり段差を含むコンクリート構造物としては、ユニットバスからの水漏れを防ぐための段差を含むコンクリート構造物、オフィスのフロア配線を設置するための段差を含むコンクリート構造物、外壁(例えば、ALC、ECP、パラペット等)を設置する場合において、外壁の隙間から雨水が浸入するのを防ぐために設けられる、凸条構造部を含むコンクリート構造物等が含まれる。
本開示のコンクリート構造物施工方法によれば、組み付けが容易であり、且つ施工後も取外しの必要がない上記型枠ユニットXを使用するため、コンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストを削減することができる。また、コンクリート構造物が、壁や天井、梁等の、上向面以外の面、すなわち下向面や側壁面、を含む場合、従来の施工方法においては、モルタルを一度に厚く塗布すると剥がれ易いため、薄く塗布し、コンクリートが硬化してから塗り重ねる方法により所定の厚さまで塗布することによりコンクリート構造物を形成する方法が採用されていたが、本開示のコンクリート構造物施工方法によれば、コンクリート構造物の基礎部分や骨組みを形成する鉄骨等に強固に固定されている型枠ユニット内にモルタルを一度充填するだけで所定の厚さを有するコンクリート構造物を形成することができる。また、硬化後のコンクリート構造物において、コンクリート構造物が壁などの側壁面や、天井や梁の底面等の下向面を含む場合、従来の施工法によるものは地震などによりコンクリート構造物が崩落することがあったが、本開示のコンクリート構造物施工方法によるものは、前記の通り、基礎部分や骨組みを形成する鉄骨等に強固に固定されている型枠ユニットがコンクリート構造物の表面を覆うため、地震などによりコンクリート構造物が崩落するのを防止することができる。
また、本開示のコンクリート構造物施工方法によれば、型枠ユニットXは施工後に取り外す必要がないため、例えば段差部を有するコンクリート構造物(一の上向面(第1上向面)とこれより上位にある別の上向面(第2上向面)と、前記二つの上向面の間の側壁面とからなる段差構造)施工の際には、側壁面を規定する型枠ユニットXを、第1上向面との間に隙間を設けること無く組付けることができる。そのため、隙間からのコンクリート原料の漏出を防止することができ、漏出したコンクリート原料により形成される余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業が不要となり、施工に要する作業・時間・コストを抑制することができる。
更に、本開示のコンクリート構造物施工方法では、上記型枠ユニットXを使用するため、従来ほど密に鉄筋を設けなくても、コンクリート構造物の強度を保持することができる。そのため、鉄筋の設置密度を下げることで、型枠内へのコンクリート原料の充填をスムーズに行うことができ、突き棒、棒状バイブレータ、または型枠バイブレータを使用して行う締固めも容易となる。これにより、コンクリート構造物に豆板(いわゆる、ジャンカ)が発生するのを抑制でき、強度や美観に優れたコンクリート構造物が形成できる。
組み付けられた状態にある埋設パネル10は、例えば図3に示すように、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を含む面11がコンクリート原料充填区画内に臨む内面をなす。型枠ユニットXにおける上述の固定具30は、その埋設パネル当接用の端面31が埋設パネル10の面11(内面)にあてがわれた状態において固定具30のネジ孔部32と埋設パネル10の貫通孔13とが連通可能な位置にある。そして、型枠ユニットXにおける上述のネジ20は、埋設パネル10の面12側からその貫通孔13に挿通されたうえで、面11側にある固定具30のネジ孔部32に螺合している。この固定具30は、本実施形態では、組付け箇所側連結部材であるセパレータSの端部のネジ構造部に連結されている。固定具30における埋設パネル当接用の端面31が広いほど、組付け状態にある埋設パネル10において意図しない傾きや歪みは抑えられる傾向にある。また、本実施形態では、鉛直方向においてコンクリート壁70の上面71形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10が組み付けられる。型枠ユニットXが備える各要素の以上のような複合的な連携により、型枠ユニットXの埋設パネル10は組み付けられる。
埋設パネル10の吸水調整効果が不十分な場合、埋設パネル10の組付け後、コンクリート原料の打設前に、当該埋設パネル10について吸水調整が必要となる場合がある。埋設パネル10について十分な吸水調整がなされていない状態でコンクリート打設が行われると、コンクリート原料中の水分の多くが埋設パネル10の繊維強化セメント素地に吸収され、当該コンクリート原料がいわゆるドライアウトの状態に至りやすい。ドライアウト状態にあるコンクリート原料では、水和反応が阻害されて硬化不良や接着不良を生じることがある。吸水調整手段としては、例えば、埋設パネル10の少なくとも面11に対する水の散布や、埋設パネル10の面11に対する吸水調整剤の塗布が挙げられる。具体的な吸水調整手段については、繊維強化セメント板に対するポリマーセメントモルタルやカチオン系モルタルを塗布する前の吸水調整に関して上記した吸水調整手段と同様である。埋設パネル10に対する水の散布による吸水調整は、コンクリート原料の打設時点までに蒸発する水分の量を考慮に入れたうえで、好ましくは、埋設パネル10の建築現場での組付け直前及び/又は組付け後に一回または数回行われる。一方、埋設パネル10に対する吸水調整剤の塗布による吸水調整は、埋設パネル10の製造後から建築現場でのコンクリート打設前までの任意の時期に、行うことができる。埋設パネル10の製造後から建築現場でのコンクリート打設前までの間において、一回の吸水調整を行ってもよいし、同一手段による吸水調整を複数回行ってもよいし、複数の異なる手段による吸水調整を各手段につき一回または複数回行ってもよい。
また、埋設パネル10を建築現場にて組み付けた後にコンクリート原料を打設する際、当該コンクリート打設箇所に既設のコンクリート部(床や壁等)などの吸水しやすい箇所がある場合には、これらの箇所にも、上記と同様の吸水調整を行ってもよい。
型枠ユニットXを使用して行うコンクリート壁70の施工においては、上述のように、その埋設パネル10は、形成されるコンクリート壁70と一体化してその段差部における上面71と上面72との間の側壁面をなす。型枠ユニットXの埋設パネル10は、施工後の取外し作業を要しない。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
また、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取外し作業を要しないため、コンクリート原料充填区画を規定する型枠Yの形成時に充分強固に組み付けるのに適する。このような埋設パネル10は、コンクリート打設時の歪みの発生を抑制するのに適し、従って、コンクリート打設時に取外しパネルが歪んだ場合に求められる補修作業を回避するのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取外し作業を要しないため、鉛直方向においてコンクリート壁70の上面71形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10を組み付けるのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、従来技術に関して上述したコンクリート余剰部分が形成されるのを回避するのに適し、そのような余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業を回避するのに適し、従って、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
更に加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように、硬化後コンクリートとの接合に適したさざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する面11に含む。このような構成は、打設コンクリートからの埋設パネル10の剥離を抑制するのに適する。
以上のように、上述の型枠ユニットXは、段差構造を伴うコンクリート構造物であるコンクリート壁70を効率よく形成するのに適するのである。
図9は、本開示の一の実施形態に係る他のコンクリート構造物施工方法を表す。本方法は、配線ケーブル設置箇所やバスルーム構築箇所でのいわゆる床段差を伴う図9(d)に示すようなコンクリート構造物80の施工方法であり、本実施形態では、以下のような型枠組立て工程と、第1コンクリート打設工程と、第2コンクリート打設工程と、型枠取外し工程とを含む(図9では、各工程を断面図で表す)。形成目的物であるコンクリート構造物80は、上面81とこれより上位にある上面82との段差構造(床段差)を伴うものである。
型枠組立て工程では、図9(a)に示すように型枠Zを形成する。具体的には、コンクリート構造物80の形成箇所において、縦筋や横筋などの鉄筋を配筋後、複数のパネルについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠Zを形成する。組み付けられる複数のパネルには、取外しパネルPと、形成目的物であるコンクリート構造物80における上面81と上面82の間の側壁面をなすこととなる、上述の型枠ユニットXにおける少なくとも一枚の埋設パネル10が含まれる。使用される埋設パネル10には、組付け作業までには必要数の貫通孔13が穿設される。そして、貫通孔13を有する埋設パネル10について組付け作業が行われる。当該組付け作業においては、隣接する二枚の埋設パネル10が上述の接続具50Aや接続具50Bを伴って接続される態様で組み付けられてもよい。また、埋設パネル10は、上述の高さ調整具60Aや高さ調整具60Bを伴って高さ調整される態様で組み付けられてもよい。
組み付けられた状態にある埋設パネル10においては、図3に示すように、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を含む面11がコンクリート原料充填区画内に臨む内面をなす。型枠ユニットXにおける上述の固定具30は、その埋設パネル当接用の端面31が埋設パネル10の面11(内面)にあてがわれた状態において、固定具30のネジ孔部32と埋設パネル10の貫通孔13とが連通可能な位置にある。型枠ユニットXにおける上述のネジ20は、埋設パネル10の面12側からその貫通孔13に挿通されたうえで、面11側にある固定具30のネジ孔部32に螺合している。この固定具30は、本実施形態では、組付け箇所側連結部材であるセパレータSの端部のネジ構造部に連結されている。固定具30における埋設パネル当接用の端面31が広いほど、組付け状態にある埋設パネル10において意図しない傾きや歪みは抑えられる傾向にある。また、本実施形態では、鉛直方向においてコンクリート構造物80の上面81形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10が組み付けられる。型枠ユニットXが備える各要素の以上のような複合的な連携により、型枠ユニットXの埋設パネル10は組み付けられる。
コンクリート構造物80の施工においては、次に、図9(b)に示すように、第1コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Zによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面81が形成されることとなる高さに対応する高さ位置L1(第1高さ位置)までコンクリート原料Mを打ち込んで供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面81の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経てコンクリートMを硬化させる。締固めは、突き棒、棒状バイブレータ、または型枠バイブレータを使用して行うことができる。
次に、図9(c)に示すように、第2コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Zによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面82が形成される高さに対応する高さ位置L2(第2高さ位置)まで更にコンクリート原料Mを供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面82の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経てコンクリートMを硬化させる。これにより、型枠ユニットXの埋設パネル10は、コンクリート構造物80と一体化し、その段差構造部分において上面81と上面82との間の側壁面をなすこととなる。
次に、図9(d)に示すように、型枠取外し工程が行われる。具体的には、型枠ユニットXの埋設パネル10をコンクリート構造物80側に残しつつ、取外しパネルPを取外して型枠Zを解体する。
以上のようにして、床段差を伴うコンクリート構造物80を施工することができる。
型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物80の施工においては、上述のように、その埋設パネル10は、形成されるコンクリート構造物80と一体化してその段差部における上面81と上面82との間の側壁面をなす。型枠ユニットXの埋設パネル10は、施工後の取外し作業を要しない。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
また、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取外し作業を要しないため、コンクリート原料充填区画を規定する型枠Zの形成時に充分強固に組み付けるのに適する。このような埋設パネル10は、コンクリート打設時の歪みの発生を抑制するのに適し、従って、従来の施工方法においてコンクリート打設時に取外しパネルPが歪んだ場合に求められる補修作業を回避するのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取外し作業を要しないため、鉛直方向においてコンクリート構造物80の上面81形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10を組み付けるのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、従来技術に関して上述したコンクリート余剰部分が形成されるのを回避するのに適し、そのような余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業を回避するのに適し、従って、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
更に加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように、硬化後コンクリートとの接合に適したさざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する面11に含む。このような構成は、打設コンクリートからの埋設パネル10の剥離を抑制するのに適する。
以上のように、上述の型枠ユニットXは、段差構造を伴うコンクリート構造物80を効率よく形成するのに適するのである。
[コンクリート構造物改修方法]
本開示のコンクリート構造物改修方法は、上記型枠ユニットXを使用してコンクリートを打設して、コンクリート構造物を改修する方法であって、
埋設パネル10の面上(好ましくは、面11上)に固定具30をねじ止めして型枠ユニットXを組み立て、組み立てられた型枠ユニットXの固定具30と、コンクリート構造物の被改修面から、前記型枠ユニットの面方向に延出する連結部材Sとを連結して、型枠を形成する工程1’と、
形成された型枠内にコンクリート原料を充填する工程2’とを含むことを特徴とする。
工程1’を、図17を参照しつつ説明する。前記工程1’は、型枠ユニットXをコンクリート構造物(図17では、窓枠102)の被改修面103及びコンクリート充填区画110に対向するよう配置し、型枠ユニットXの固定具30と連結部材Sの他端と連結することで、前記型枠ユニットXを固定して型枠を形成することができる。
尚、前記連結部材Sは、上述の組付け箇所側連結部材に相当する部材であり、前記連結部材Sは、その一端が、型枠ユニットXの埋設パネル10に対して、コンクリート構造物の被改修面103側に固定され、その他端が、型枠ユニットXの面11方向に延出している。
前記連結部材Sの一端をコンクリート構造物の被改修面103側に固定する方法としては、例えば、前記連結部材Sの一端が前記コンクリート構造物の被改修面103に埋め込まれて、いわゆる、アンカーボルトを形成していてもよいし、前記連結部材Sの一端が鉄骨または鉄筋などの鉄部材に溶接固定されていてもよいし、連結金具を介して棒状部材の他端が鉄骨または鉄筋などの鉄部材に連結されていてもよい。また、前記連結部材Sの他端にフックが取り付けられている場合や、前記連結部材Sの他端がフック状に曲げられている場合には、前記フックをコンクリート充填区画110の内側に存在する鉄骨または鉄筋などの鉄部材や別の連結部材Sに引っ掛けることにより連結されていてもよい。
本開示のコンクリート構造物改修方法によれば、組付けが容易であり、且つ施工後も取り外す必要がない上記型枠ユニットXを使用するため、コンクリート構造物の改修に要する作業・時間・コストを削減することができる。また、コンクリート構造物の被改修面が壁や天井等である場合、従来の施工方法においては、モルタルを一度に厚く塗布すると剥がれが生じる場合があるため、コテ等を用いて薄く塗布し、モルタルが硬化してから塗り重ねる方法により厚くする方法が採用されていたが、本開示のコンクリート構造物改修方法によれば、コンクリート構造物の基礎部分や骨組みを形成する鉄骨等に強固に固定された型枠ユニットXによって形成されたコンクリート充填区画内にモルタルを一度充填するだけで所定の厚さのコンクリート構造物改修部を形成することができる。
また、コンクリート構造物の被改修面が壁などの側壁面や、天井や梁の底面等の下向面である場合、従来の施工法によるものは地震などにより、硬化後のコンクリート構造物改修部が剥離したり崩落したりすることがあったが、本開示のコンクリート構造物施工方法によるものは、前記の通り、基礎部分や骨組みを形成する鉄骨等に強固に固定されている型枠ユニットXがコンクリート構造物の表面を覆うため、地震などにより改修部分が剥離或いは崩落するのを防止することができる。
尚、前記「コンクリート構造物改修部」とはコンクリート構造物の被改修面の上に、改修により形成される部分であり、本開示のコンクリート構造物改修方法により形成されるコンクリート構造物改修部は、型枠ユニットXとコンクリートとで形成されている。
更に、本開示のコンクリート構造物改修施工方法では、上記型枠ユニットXを使用するため、従来ほど密に配筋しなくても、或いは配筋を省いても、改修部分の強度を保持することができる。そのため、配筋密度を下げる、或いは配筋を省くことで、型枠内へのコンクリート原料の充填をスムーズに行うことができ、突き棒、棒状バイブレータ、または型枠バイブレータを使用して行う締固めも容易となる。これにより、改修部分に豆板(いわゆる、ジャンカ)が発生するのを抑制することができ、美しく、且つ強固に仕上げることができる。
[コンクリート構造物]
本開示のコンクリート構造物は、上記型枠ユニットXに含まれる埋設パネル10が、コンクリート構造物の上面、下面、及び側面から選択される少なくとも一面(一面の一部又は全部)を形成していることを特徴とする。尚、前記上面には斜め上面を含み、前記下面には斜め下面を含む。
本開示のコンクリート構造物には、上向き、下向き、或いは横向きに突き出る凸条構造部を含むコンクリート構造物や、上向き、下向き、或いは横向きに突き出る凸構造部を含むコンクリート構造物が含まれる。本開示のコンクリート構造物は、例えば、コンクリート製の、階段、立ち上がり段差、敷居、梁、窓枠、天井、床、柱、壁、擁壁、パラペット、及び架台から選択される少なくとも1種の構造物である。
本開示のコンクリート構造物は、コンクリート構造物の基礎部分や骨組みを形成する鉄骨等に強固に固定されている型枠ユニットXがコンクリート構造物の上面、下面、及び側面から選択される少なくとも一面を覆うため、コンクリートに剥がれが生じる恐れが無く、地震などにより崩落するのを防止することもができる。また、型枠ユニットXに含まれる埋設パネル10の面12がコンクリート構造物の表面に露出するが、前記面12に例えば化粧面等が形成されている場合には、美しい外観を有する。
以上、本開示の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
セメント(太平洋セメント製)、珪砂(三河硅石製)、寒水粉(日東粉化製)、及びメチルセルロース(上海恵広製)を空練りブレンドした後、適宜量の水と消泡剤(ADEKA製)をペール缶に投入し、ハンドミキサーでよく攪拌して、ポリマーセメントモルタルを得た。
スレートボード(株式会社エーアンドエーマテリアル製の「セルフレックス」)の一方の面に、株式会社豊運製のエチレン酢酸ビニル樹脂「HOUNシーラーN♯45」を塗布し、乾燥させた後、左官鏝を使用して前記ポリマーセメントモルタルを、厚さ1.5mm程度に塗り付けた。その後、塗り付けたポリマーセメントモルタルが乾かないうちにマスチック用ウールローラーを用いて、さざなみ型の凹凸を付けた。
その後、乾燥させて、さざなみ型模様のモルタル硬化物層を有する埋設パネルを得た。
比較例1
スレートボード(株式会社エーアンドエーマテリアル製の「セルフレックス」)の一方の面に、実施例1と同様に株式会社豊運製のエチレン酢酸ビニル樹脂「HOUNシーラーN♯45」を塗布し、乾燥させた後、左官鏝を使用して実施例1と同じポリマーセメントモルタルを、厚さ1.5mm程度に塗り付けた。その後、塗り付けたポリマーセメントモルタルが乾かないうちに、凹凸形状を有する型板をプレス成形して、その後乾燥させて、非さざなみ型の凹凸形状を有する埋設パネルを得た。
実施例1及び比較例1で得られた埋設パネルの凸凹面、及び凹凸面を形成する前の埋設パネル面(無加工)について、キーエンス株式会社製ワンショット3D形状測定器VR-3200G2を用いて高さデータを解析した。結果を下記表1に示す。
それぞれの凹凸面の任意な箇所で、横:約45mm×縦:約33mmの範囲の横:1900の等分線と、縦:1399の等分線との交点の2,658,100の地点について、一旦、ある基準高さからの高さを求め、それらの平均値を0.000mmとして、すべての測定点を換算し、平均値より高い地点の高さを+の値で示し、平均値より低い地点の高さを-の値で示した。結果を図18(a)、(b)、(c)に示す。
さらに、図19に、実施例1で得られた埋設パネル凹凸面の80%超の厚み部分を黒塗りで示す図(a)と、比較例1で得られた埋設パネル凹凸面の80%超の厚み部分を黒塗りで示す図(b)を示す。
また、実施例1および比較例1の凸凹面の3D画像である図18(a)、(b)の最大厚みと最小厚み、及び図19における80%超厚み部位の面積を、下記表2に示す。
<付着強度試験>
実施例及び比較例で得られた埋設パネルについて、JIS A 6916 付着強さ試験7.13の試験方法に準じて付着強さを測定した。
すなわち、実施例及び比較例で得られた埋設パネルを各々60mm×60mmにカットして埋設パネル片を作成した。埋設パネル片は3つずつ用意した。
ポリマーセメントモルタル(セメント混和用ポリマーディスパージュンを含むモルタル)として、ダイセルファインケム製アクリル系粉末樹脂使用粉体(商品名「セルモル70」)1.5kgに水210gを加え、3分間ハンドミキサーで撹拌してモルタルを得た。
前埋設パネル片の凹凸面に、得られたモルタルを、膜厚がほぼ均一に20mmになるよう塗工し、その後、埋設パネル片の凹凸面が垂直になるように設置した状態で、一般養生室(温度23±2℃、湿度50±5%)または湿空養生室(温度23±2℃、湿度80%以上)の中で、14日間或いは28日間養生して、ポリマーセメントモルタル硬化物付き埋設パネル片(=試験片)を得た。
得られた試験片について、下記方法で、ポリマーセメントモルタル硬化物の埋設パネル片への付着強度を測定した。
試験の手順は、養生終了1日前に、試験片を40mm×40mmの大きさに切断し、その後、一般養生室内において、前記試験片の面が水平になるよう設置し、前記試験片のポリマーセメントモルタル硬化物付着面に接着剤を塗り、上部引張り用鋼製治具を静かに載せ、軽くすり付けるように接着し24時間静置した後、下部引張り用鋼製治具及び鋼製当て板を用いて、試験片に対して鉛直方向に荷重速度1500~2000N/minの引張力を加えて最大引張荷重を求めた。3つの試験片のそれぞれの最大引張荷重とそれらから算出される付着強さの平均値を下記表3にまとめて示す。なお、何れの場合もモルタル部分の界面で破断した。