以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[第1の実施形態]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施形態の画像形成装置の概略断面図である。本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したレーザビームプリンタである。なお、画像形成装置100及びその要素に関して上、下は、重力方向(鉛直方向)に関する上、下を言うものであるが、それぞれ直上、直下のみを意味するものではなく、注目する要素又は位置を通る水平面よりも上側、下側を含むものである。
本実施形態の画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4個のステーション10Y、10M、10C、10Kを有する。各ステーション10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施形態では、ステーション10は、後述する感光体1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、感光体クリーニング装置6などを有して構成される。
像担持体としての回転可能なドラム型(円筒状)の感光体(感光ドラム)1は、図中矢印R1方向に回転駆動される。回転する感光体1の表面は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施形態では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光体1の表面は、露光手段としての露光装置3によって各ステーション10に対応する色の画像情報に応じて走査露光され、感光体1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光体1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光体1上にトナー像が形成される。なお、本実施形態では、露光装置3は、各色の画情報に応じて各感光体1を露光する1個のラスタ走査ユニットとして構成されている。露光装置3は、各色の画情報に応じて変調されたレーザ光Lを発する4個の半導体レーザ素子(図示せず)と、高速回転してレーザ光Lを各感光体1の軸方向に沿って走査する1個のポリゴンミラー3aと、を有する。そして、ポリゴンミラー3aによって走査された各レーザ光Lは、ミラー(図示せず)によって反射されながら所定の経路を進んだ後、各走査窓3bを通して各感光体1を露光する。
4個の感光体1と対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の支持ローラ(張架ローラ)としての駆動ローラ7a及びテンションローラ7bに張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ7aが回転駆動されることで図中矢印R2方向に周回移動(回転)する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光体1に対応して、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光体1に向けて付勢され、感光体1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部N1を形成する。上述のように感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写工程時に、一次転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性(現像時の帯電極性)とは逆極性の一次転写バイアス(一次転写電圧)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光体1上に形成されたY、M、C、Kの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
中間転写ベルト7の外周面側において、二次転写対向ローラ(二次転写内ローラ)を兼ねる駆動ローラ7aと対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ(二次転写外ローラ)8が配置されている。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して駆動ローラ7aに向けて付勢され、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とが接触する二次転写部N2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とに挟持されて搬送されている用紙などの記録材(シート、転写材)P上に二次転写される。二次転写工程時に、二次転写ローラ8には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写バイアス(二次転写電圧)が印加される。記録材Pは、給送装置12において収納部としてのカセット12aから給送部材としてのピックアップローラ12bなどにより送り出され、搬送部材としての搬送ローラ12cにより二次転写部N2に向けて搬送される。この記録材Pは、レジストローラ13によって中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて、二次転写部N2へと供給される。なお、本実施形態では、最も頻繁に使用されることが多いK用のステーション10Kが、中間転写ベルト7の表面の移動方向において二次転写部N2に最も近い位置に配置されている。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置9へと搬送される。定着装置9は、熱源を備えた定着ローラ9aと、定着ローラ9aに圧接する加圧ローラ9bとによって、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧して、記録材P上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出ローラ14によって、画像形成装置100の装置本体110の外部(ここでは、「機外」ともいう。)に排出(出力)される。
また、一次転写後に感光体1上に残留したトナー(一次転写残トナー)や紙粉は、感光体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置6によって感光体1上から除去されて回収される。感光体クリーニング装置6は、感光体1の表面に当接して配置されたクリーニング部材としてのクリーニングブレードによって、回転する感光体1の表面から一次転写残トナーや紙粉を掻き取って、クリーニング容器内に収容する。また、二次転写後に中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置15によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。
なお、本実施形態では、各ステーション10において、感光体1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及び感光体クリーニング装置6とは、一体的にカートリッジ化されてプロセスカートリッジ11を構成している。プロセスカートリッジ11は、装置本体110に対して着脱可能とされており、例えば感光体1や現像装置4が寿命に達した場合に新品と交換される。
また、本実施形態の画像形成装置100は、フルカラーモードと、ブラック単色モードと、で画像を出力することができる。フルカラーモードでは、Y、M、C、K用のステーション10Y、10M、10C、10Kの全てでトナー像を形成することができる。ブラック単色モードでは、Y、M、C、K用のステーション10Y、10M、10C、10KのうちK用のステーション10Kにおいてのみトナー像を形成することができ、Y、M、C用のステーションの動作は停止される。また、本実施形態の画像形成装置100は、両面プリントモード(自動両面印刷)で記録材Pの第1面と第2面とに画像を形成して出力することができる(フルカラーモード、ブラック単色モードのいずれでも可能)。両面プリントモードでは、第1面にトナー像が二次転写され、定着処理を受けた記録材Pは、両面搬送機構(図示せず)によって、第2面を中間転写ベルト7側に向けて再度二次転写部N2へと搬送される。そして、第2面にトナー像が二次転写され、定着処理を受けた記録材Pは、機外へと排出される。
2.感光体
感光体のHU(ユニバーサル硬さ値:以下、単に「HU」ともいう。)及び弾性変形率について説明する。HU及び弾性変形率は、測定装置として、圧子に連続的に荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読して連続的に硬さを求められる、微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。圧子としては、対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用した。最終荷重6mNまで段階的に荷重の条件を変化させて(各点0.1sの保持時間で273点)測定した。上記測定装置の出力チャートの概略を図6に示す。図6において、縦軸は荷重(mN)、横軸は押し込み深さh(μm)である。図6は、段階的に荷重を増加させて6mNまで荷重をかけ、その後同様に段階的に荷重を減少させた結果である。
HUは、6mNで押し込んだ時の同荷重下での押し込み深さから下記式(1)によって求められる値として規定される。
また、弾性変形率は、圧子が膜に対して行った仕事量(エネルギー)、すなわち、圧子の膜に対する荷重の増減によるエネルギーの変化より求められるものであり、下記式(2)によって求められる値として規定される。全仕事量Wt(nW)は、図6中のA-B-D-Aで囲まれる面積で表され、弾性変形の仕事量We(nW)は、図6中のC-B-D-Cで囲まれる面積で表される。
弾性変形率=We/Wt×100(%) (2)
有機感光体に求められる性能として、機械的劣化に対する耐久性が挙げられる。一般的に、膜の硬度は外部応力に対する変形量が小さいほど高く、感光体についても鉛筆硬度やビッカース硬度が高いものが機械的劣化に対する耐久性が向上するものと考えられている。しかしながら、これらの測定により得られる硬度が高いものが、必ずしも感光体の耐久性の向上を望めるものではないことがわかった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、HUと弾性変形率の値がある範囲の場合に、感光体の表面を形成する層(表層)の機械的劣化が起り難くなることを見出した。すなわち、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行い、最大荷重6mNで押し込んだ時のHUが150N/mm2以上、220N/mm2以下であり、かつ、弾性変形率が40%以上、65%以下である感光体を用いる。これによって、感光体の機械的劣化に対する耐久性が飛躍的に向上した。また、更なる特性の向上には、HUの値が160N/mm2以上、200N/mm2以下であることがより好ましい。
HUと弾性変形率を切り離してとらえることはできないが、例えばHUが220N/mm2を超えるものであるとき、次のようになる。つまり、弾性変形率が40%未満であると、感光体の弾性力が不足しているために、クリーニングブレードや帯電ローラと感光体との間に挟まれた紙粉やトナーによって局部的に大きな圧力がかかり、感光体に深い傷が発生してしまう。また、弾性変形率が65%より大きいと、弾性変形率は高くても弾性変形量は小さくなってしまうために、クリーニングブレードや帯電ローラと感光体との間に挟まれた紙粉やトナーによって局部的に大きな圧力がかかり、感光体に深い傷が発生してしまう。そのため、HUが高いものが必ずしも感光体として最適ではないと考えられる。一方、HUが150N/mm2未満であり、弾性変形率が65%を超えるものの場合、例え弾性変形率が高くても、塑性変形量も大きくなってしまう。そのため、クリーニングブレードや帯電ローラと感光体との間に挟まれた紙粉やトナーで擦られることで、感光体が削れたり細かい傷が発生したりしてしまう。
感光体1は、少なくとも表層が、重合又は架橋して硬化された化合物を含有していることが好ましい。なお、感光体1の表層の硬化手段としては、熱、可視光や紫外線などの光、あるいは放射線を用いることができる。感光体1の表層を形成する方法としては、次のような方法を採用することができる。つまり、表層用として用いられる、重合又は架橋により硬化可能な化合物を、融解又は含有している塗布溶液を用い、浸漬コーティング法(浸漬塗布法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティングなどにより被塗布面に塗布する。その後、この塗布された化合物を硬化手段により硬化する。上記塗布方法のうち、感光体1を効率よく大量生産する方法としては、浸漬コーティング法がもっとも好ましい。
次に、感光体1の層構成について説明する。図7は、感光体1の層構成を示す模式的な断面図である。感光体1は、図7(a)に示す単層型、あるいは図7(b)に示す積層型(機能分離型)として形成することができる。単層型の感光体1は、支持体(導電性基体)91上に、電荷発生物質と電荷輸送物質の双方を同一の層に含有する感光層93を有する層構成とされる。積層型の感光体1は、支持体91上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層94と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層95と、を順次又は逆順に積層した感光層93を有する層構成とされる。単層型、積層型のいずれにおいても、支持体91と感光層93との間に下引き層92を設けることが可能である。また、単層型、積層型のいずれにおいても、感光層93上に保護層(表面保護層)96を形成することが可能である。なお、支持体91としては、例えば、外径が30mmのシリンダ(ドラム基体)を用いることが可能である。
感光体1は、少なくとも表層が、熱、可視光や紫外線などの光、あるいは放射線により重合又は架橋させて硬化させることができる化合物を含有していることが好ましい。また、感光体1は、その特性、特に、残留電位などの電気的特性及び耐久性の観点から、電荷発生層94及び電荷輸送層95を順次積層した積層型(機能分離型)のものが好ましい。また、積層型の感光体1において、表層として保護層96を形成したものが更に好ましい。
感光体1の表層の重合又は架橋による硬化方法としては、感光体1の特性の劣化が少なく、残留電位の上昇が発生せず、十分な硬度を示すことができることから、放射線を用いることが好ましい。この放射線としては、電子線又はガンマ線が好ましい。これらのうちの電子線を使用する場合、加速器として、スキャニング型、エレクトロンカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型などの任意の形式を使用することが可能である。また、電子線を照射する場合においては、感光体1の電気特性及び耐久性能を発現するために、照射条件としては、加速電圧を250kV以下とすることが好ましく、150kV以下がより好ましい。また、照射線量を、10kJ/kg以上、1000kJ/kg以下の範囲内にすることが好ましく、15kJ/kg以上、500kJ/kg以下の範囲内とすることがより好ましい。加速電圧が上述の範囲の上限より大きいと、感光体1の特性に対する電子線照射による損傷(ダメージ)が増加する傾向がある。また、照射線量が上述の範囲の下限より少ないと、硬化が不十分となりやすい。また、線量が多い場合には、感光体1の特性の劣化が生じやすいため、線量は上述の範囲内から選択することが好ましい。
また、重合又は架橋により硬化可能な、感光体1の表層用の化合物としては、反応性の高さ、反応速度の速さ、及び硬化後に達成される硬度の高さの観点から、分子内に不飽和重合性官能基を含むものが好ましい。不飽和重合性官能基を分子内に有する分子の中でも、特に、アクリル基、メタクリル基及びスチレン基を有する化合物が好ましい。不飽和重合性官能基を有する化合物とは、その構成単位の繰り返しの状態により、モノマーとオリゴマーとに大別される。モノマーとは、不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく、比較的分子量の小さいものを示す。他方、オリゴマーとは、不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2~20程度の重合体である。また、ポリマー又はオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基が結合した、いわゆるマクロノマーを、感光体1の表層用の硬化性化合物として使用することも可能である。また、不飽和重合性官能基を有する化合物としては、感光体1の表層として必要とされる電荷輸送機能を満足させるために、電荷輸送化合物を採用することが好ましい。電荷輸送化合物の中でも、正孔輸送機能を持った不飽和重合性化合物を採用することが更に好ましい。
支持体91は、導電性を有するものであればよい。具体的には、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属やこれらの合金を、ドラム状又はシート状に形成したもの、アルミニウム及び銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫などをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又は結着樹脂とともに塗布することにより導電層を設けた金属、プラスチックフィルム又は紙、などを挙げることができる。
支持体91上には、バリアー機能と接着機能とを有する下引き層92を設けることができる。下引き層92は、感光層93の接着性改良、塗工性改良、支持体91の保護、支持体91上の欠陥の被覆、支持体91からの電荷注入性改良、又は感光層93の電気的破壊に対する保護などのために形成される層である。下引き層92の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N-メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、ニカワ及びゼラチンなどを使用することができる。これらの材料は、それぞれに適合した溶剤に溶解されて、支持体91の表面に塗布される。そして、下引き層92の膜厚(厚さ)は、0.1~2μmであることが好ましい。
感光体1が機能分離型のものである場合は、電荷発生層94と電荷輸送層95を積層する。電荷発生層94に用いる電荷発生物質としては、セレン-テルル(Se-Te)、ピリピウム、チアピリリウム系染料、又は各種の中心金属及び結晶系を有する(具体的には、例えば、α、β、γ、ε、及びX型などの結晶型を有する)フタロシアニン系化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、クナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン及びアモルファスシリコンなどを挙げることができる。また、感光体1が機能分離型のものである場合、電荷発生層94は、電荷発生物質を、0.3~4倍量の結着樹脂及び溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの分散手段によって良好に分散し、その分散液を被塗布面に塗布し、乾燥させて形成されるか、又は電荷発生物質の蒸着膜などの単独組成の膜として形成される。ここで、電荷発生層94の膜厚は、典型的には5μm以下であり、0.1~2μmであることが好ましい。また、結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
不飽和重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、電荷輸送層95として用いることができる。また、不飽和重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、保護層96として用いることができる。正孔輸送性化合物を保護層56として用いた場合、その下層にあたる電荷輸送層95は、適当な電荷輸送物質、例えばポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリスチルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサドール、トリアゾール、又はカルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレジンアミン誘導体、N-フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを、上述の電荷発生層用の樹脂から選択可能で適当な結着樹脂とともに溶剤に分散又は溶解した溶液を、上述の公知の方法によって塗布し、乾燥させて形成することができる。この場合の電荷輸送物質と結着樹脂との比率は、両者の全重量を100とした場合に、電荷輸送物質の重量が30~100の範囲内にあることが好ましく、50~100の範囲で適宜選択することが更に好ましい。電荷輸送層95における電荷輸送物質の重量が、これらの範囲より小さいと、電荷輸送能が低下し、感度低下や残留電位の上昇などの問題が発生する可能性がある。
感光層93の膜厚は、5~30μmの範囲であることが好ましい。なお、感光層93の膜厚とは、電荷発生層94、電荷輸送層95及び保護層96の膜厚を合計したものである。
感光体1の保護層96の形成方法としては、正孔輸送性化合物を含有する溶液を被塗布面に塗布した後、重合又は硬化反応させるのが一般的である。なお、予め正孔輸送性化合物を含む溶液を反応させることにより硬化物を得た後、再度溶剤中に分散又は溶解させたものなどを用いて、感光体1の保護層96を形成することも可能である。上述の溶液を塗布する方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、及びスピンコーティングなどが知られている。そして、効率性/生産性の観点から、溶液を塗布する方法としては、浸漬コーティング法が好ましい。なお、蒸着やプラズマ処理などの、その他公知の製膜方法を適宜選択することが可能である。
また、保護層96には、導電性粒子を混入させることも可能である。この導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラックなどを挙げることができる。導電性粒子としての金属は、具体的には、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、ステンレス及び銀を挙げることができる。また、導電性粒子としては、これらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したものなどを挙げることができる。また、導電性粒子としての金属酸化物は、具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。また、これらの金属酸化物は、それぞれ単独で用いたり、2種類以上を組み合わせて用いたりすることが可能である。なお、2種以上を組み合わせる場合には、単に混合することも可能であり、固溶体や融着を施すことも可能である。導電性粒子の平均粒径は、保護層96の透明性の観点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。さらに、上述した導電性粒子の材料において、透明性などの観点から金属酸化物を用いることが特に好ましい。保護層96における導電性金属酸化物粒子の割合は、直接的に保護層96の電気抵抗を決定する要因の1つである。したがって、保護層96の比抵抗は、1010~1015Ωcmの範囲が適しており、108~1013Ωmの範囲にすることが好ましい。また、保護層96には、フッ素原子含有樹脂粒子を含有させることも可能である。このフッ素原子含有樹脂粒子としては、4フッ化チレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から少なくとも1種類以上を適宜選択することが好ましい。上述のフッ素原子含有樹脂粒子としては、特に、4フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。なお、樹脂粒子の分子量や粒径は、適宜選択することが可能であり、分子量や粒径は特に限定されるものではない。保護層96におけるフッ素原子含有樹脂の割合は、保護層96の全質量に対して、典型的には5~40重量%であり、10~30重量%であることが好ましい。これは、フッ素原子含有樹脂粒子の割合が40重量%より多いと、保護層96の機械的強度が低下し易くなり、5重量%より少ないと保護層96の表面の離型性、保護層96の耐磨耗性や耐傷性が不十分になる可能性があるためである。分散性、結着性及び対候性をより向上させるために、保護層96中に、ラジカル補足剤や酸化防止剤などの添加物を加えることも可能である。また、保護層96の膜厚は、0.2~10μmの範囲であることが好ましく、0.5~6μmの範囲であることがより好ましい。
感光体1の削れ量の求め方及び測定方法について説明する。電子写真方式の画像形成装置(例えば、iR2545(キヤノン株式会社製))に試験対象の感光体1(外径約30mm)を装着する。そして、通常環境(20℃/50%RH)でトナー載り量0.025±0.015g/A4サイズの画像を1枚間欠で出力する通紙試験を行う。なお、1枚間欠とは、1枚の記録材Pに画像を形成して出力するジョブを、所定の間隔ごとに繰り返す出力方法(1枚の記録材Pに対する画像の出力ごとに、準備動作である前回転動作、後回転動作が行われる。)のことをいう。その後、感光体1の表層の膜厚を渦電流式膜厚計(Fisher社製)で測定し、初期の膜厚と比べて、どれだけ削れたかを計算する。その値を通紙枚数で割り、単位をμm/100K枚とする削れ量を求める。この感光体1の削れ量は、0.01μm/100K枚以上、1.0μm/100K枚以下であることが好ましい。また、0.1μm/100K枚以上、0.7μm/100K枚以下であることがより好ましい。これは、削れ量が0.01μm/100K枚未満の場合には、感光体1の表面がほとんど削れないために、本発明に従う制御によって前述の放電生成物などの付着物に起因する画像流れを抑制することが難しくなる。また、削れ量が1.0μm/100K枚より大きい場合には、感光体1の長寿命化の観点からは削れ量が大きすぎる。
3.ファン
本実施形態では、画像形成装置100は、機内の温度を低下させることが可能な送風手段として、主に機内から機外へと空気を排出する機能を有する排気ファン30を有する。本実施形態では、排気ファン30は、主に定着装置9からの熱を機内から機外に逃がして、機内の温度が上がりすぎることを抑制することを目的として設けられているため、機内において定着装置9の近くに配置されている。より詳細には、本実施形態では、排気ファン30は、重力方向に関して少なくとも一部が定着装置9と重なる位置であって、ヒータ20よりも定着装置9の近くに配置されている。ただし、排気ファン30の位置は、本実施形態における位置に限定されるものではない。排気ファン30は、装置本体110の筐体111に設けられた排気口(図示せず)に隣接して取り付けられている。
また、本実施形態では、画像形成装置100は、機内の温度を低下させることが可能な別の送風手段として、主に機外から機内へと空気を吸入する機能を有する吸気ファン40を有する。本実施形態では、吸気ファン40は、機内いおいて重力方向に関して現像装置4と重なる位置に配置されている。ただし、吸気ファン40の位置は、本実施形態における位置に限定されるものではない。吸気ファン40は、装置本体110の筐体111に設けられた吸気口(図示せず)に隣接して取り付けられている。
なお、排気ファン30、吸気ファン40としては、斯界にて一般的なものを任意に選択して用いることができる。排気ファン30、吸気ファン40は、制御部70によって回転/停止(ON/OFF)、あるいは風量(排気量、吸気量、送風量)の大小を電気的に制御可能であればよい。制御部70は、排気ファン30、吸気ファン40の回転/停止(ON/OFF)、あるいは風量(排気量、吸気量、送風量)を制御することで、機内から機外、あるいは機外から機内へ移動する空気の量を変化させることができる。ファンの風量は、一般に、単位時間当たりに送ることのできる風の量(例えばm3/min)などで表されるが、ファンの回転速度(あるいは回転数)で代表することができる。
また、排気ファン30、吸気ファン40の両方又は一方として、複数のファンを有していてよい。画像形成装置100は、例えば、4~10個程度のファンを有していることがある。
また、電子写真方式の画像形成装置では、吸気ファンが設けられないこともあるが、排気ファンついては設けられないことは少ない。そのため、詳しくは後述する本発明に従う「画像流れ対策モード」においては、排気ファン30は機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を制御するための重要な手段となる。また、本実施形態では、排気ファン30、吸気ファン40は、それぞれ回転速度可変のものであるが、これに限定されるものではなく、回転/停止(ON/OFF)を任意に制御可能なものであればよい。
4.機内温度、機外温湿度の検知
本実施形態では、画像形成装置100は、機内の環境を検知するための機内環境検知手段としての機内温湿度センサ50を有する。機内温湿度センサ50は、機内の空気の温度を検知する機内温度検知部(温度センサ)と、機内の空気の湿度を検知する機内湿度検知部(湿度センサ)と、を備えている。本実施形態では、機内温湿度センサ50は、機内において、重力方向に関して感光体1よりも上方かつ定着装置9よりも下方で、各ステーション10の配列方向の略中央に配置されている。ただし、機内温湿度センサ50の位置は本実施形態における位置に限定されるものではなく、感光体1の表面温度と十分の相関性を有する機内の温度を検知できる位置であればよい。また、複数の温度センサを用いてもよいし、感光体1の表面温度をより直接的に検知できる温度センサを用いてもよい。ここでは、本発明の理解を容易とするために、機内温湿度センサ50によって検知される温度は感光体1の表面温度と実質的に同じであるものとして説明する。なお、温度センサの検知結果と感光体1の表面温度とが異なり、それらの間に所定の相関関係がある場合には、その所定の相関関係に基づいて、温度センサの検知結果から感光体1の表面温度を求めることができる。該所定の相関関係の一例として、温度センサの検知温度よりも感光体1の表面温度の方が所定の温度だけ低い傾向があることがわかっている場合などが挙げられる。あるいは、感光体1の表面温度自体を求める代わりに、上記所定の相関関係に基づく差異分を見込んだ制御(閾値の設定など)としてもよい。また、機内温湿度センサ50は、詳しくは後述する本発明に従う「画像流れ対策モード」の制御以外の制御に用いられるものと兼用されてよい。
また、本実施形態では、画像形成装置100は、機外の環境を検知するための機外環境検知手段としての機外温湿度センサ(環境センサ)60を有する。機外温湿度センサ60は、機外の空気の温度を検知する機外温度検知部(温度センサ)と、機外の空気の湿度を検知する機外湿度検知部(湿度センサ)と、を備えている。本実施形態では、機外温湿度センサ60は、吸気ファン40の近傍に配置されている。機外温湿度センサ60は、機内において吸気ファン40により機外から機内に取り込まれた空気の温度と湿度とを検知できるようになっている。
5.ヒータ
本実施形態では、画像形成装置100は、感光体1を加熱(加温)するための加熱手段としてのヒータ(ドラムヒータ)20を有する。本実施形態では、ヒータ20は、感光体1の外部、特に、機内において感光体1(1Y、1M、1C、1K)よりも下方、かつ、露光装置3よりも上方に配置されている。ヒータ20は、本実施形態では4個設けられた感光体1のそれぞれを十分に加熱できるように設けられた単独又は複数の部分で構成されていてよい。
本実施形態では、ヒータ20は、ある温度で一定に発熱するものを好ましく用いることができる。本実施形態では、ヒータ20の一例として、PTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)ヒータを用いた。PCTヒータは、比較的安価で、ある温度で一定に発熱するものであるため、画像形成装置100の低コスト化に有利である。特に、ヒータ20としては、シート状に加工された材料を発熱部材として用いたPTCヒータを好ましく用いることができる。図2は、本実施形態においてヒータ20として用いたPTCヒータの概略構成を示す模式図である。ヒータ20は、発熱部材(PTC抵抗体)23と、対をなすヒータ電極24、24と、を有する。発熱部材23及びヒータ電極24、24は、シート22上に印刷されて形成されている。本実施形態では、制御部70によってヒータ電源21のON/OFFが制御され、ヒータ電源21がONされるとヒータ電源21からヒータ20の対をなす電極24、24にAC100Vの電圧が印加される。本実施形態では、ヒータ20としては設定温度(定温発熱温度)が50℃程度のものを用いた。これにより、夜間などの画像形成装置100の放置中に、排気ファン30及び吸気ファン40を停止した状態で、例えば画像形成装置100の周囲の環境の温度が30℃の場合に機内の温度を37℃に維持できる。
PTCヒータは、電圧を印加するとジュール熱により自己発熱し、自己温度がキュリー温度(Tc)を超えると、その電気抵抗値が対数的に増大する。電気抵抗値の増大に伴って電流が減少して消費電力(W)が抑えられるため、自己温度が低下する。そして、自己温度が低下して電気抵抗値が下がると電流が増加して、再び消費電力(W)が増して自己温度が増加する。この動作が繰り返されることにより、自己温度の自動制御機能を持った定温発熱体として働く。このようなPTCヒータは、外的に制御することなく、常にONとした状態で、ある一定の温度で一定に発熱できるメリットを有する。そのため、後述する本発明に従う「画像流れ対策モード」において適したヒータであるといえる。
本実施形態では、画像形成装置100が商用電源に接続され、メインスイッチがONとされた状態では、後述する特定の場合を除いて、ヒータ20は実質的に常にONとされる。なお、メインスイッチは、画像形成装置100が設置された後には、通常は常にONとされ、頻繁にOFFとされることはない。このように、実質的に常にヒータ20をONとすることで、夜間などの画像形成装置100の放置中に放電生成物などの感光体1の付着物が吸湿して画像流れの原因になることを抑制することができる。また、高湿環境下での画像形成動作中の画像流れの発生を抑制しやすい。なお、本実施形態では、夜間などの画像形成装置100の放置中には、ヒータ20は常にONとされる一方、排気ファン30及び吸気ファン40は停止される。
なお、ヒータ20は、感光体1を加熱することができるものであれば、PTCヒータに限定されるものではない。ただし、詳しくは後述する「画像流れ対策モード」で感光体1の表面温度を精度よく制御する観点から、ヒータ20は、感光体1の外部に配置されるものであり、更にある温度で一定に発熱するものであることが好ましい。
6.制御態様
図3は、本実施形態の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100には、制御手段としての制御部(制御回路、コントローラ)70が設けられている。制御部70は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU71、記憶手段としてのROM72、RAM73などのメモリ(記憶媒体)、外部の機器との通信を制御するインターフェース部74などを有して構成される。ROM72には、制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。書き換え可能なメモリであるRAM73には、制御部70に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納される。
制御部70には、前述したプロセスで画像形成を実行する機構部であるエンジン部の他、機内温湿度センサ50、機外温湿度センサ60、排気ファン駆動回路31、吸気ファン駆動回路41、ヒータ電源21などが接続されている。機内温湿度センサ50の温度検知結果、湿度検知結果を示す出力信号は、制御部70に入力される。なお、煩雑さを避けるために図示を省略しているが、機内温湿度センサ50の出力信号は、増幅器によって増幅され、A/D変換器でA/D変換されて、制御部70のCPU71に入力される。また、機外温湿度センサ60の温度検知結果、湿度検知結果を示す出力信号は、制御部70に入力される。なお、煩雑さを避けるために図示を省略しているが、機外温湿度センサ60の出力信号は、増幅器によって増幅され、A/D変換器でA/D変換されて、制御部70のCPU71に入力される。また、排気ファン駆動回路31は、排気ファン30に接続されており、制御部70の制御のもとで、排気ファン30の回転/停止(ON/OFF)、あるいは回転速度を制御する。また、吸気ファン駆動回路41は、吸気ファン40に接続されており、制御部70の制御のもとで、吸気ファン40の回転/停止(ON/OFF)、あるいは回転速度を制御する。
7.画像流れ対策モード
本実施形態の画像形成装置100は、70ppm~35ppmの画像形成速度の範囲のワイドレンジ製品群において、ヒータ20、排気ファン30及び吸気ファン40が共通化される場合の、中速機(例えば50ppmの製品)であることが想定されている。そのため、前述のように、排気ファン30及び吸気ファン40としては、高速機(例えば70ppmの製品)に合わせて排気(吸気)能力の比較的高いものが用いられている。また、ヒータ20としては、高速機に合わせて加熱能力の比較的低いものが用いられている。したがって、例えば高湿環境下において比較的少ない枚数の画像形成を比較的短い時間間隔で間欠的に行う場合などに、排気ファン30、吸気ファン40の能力が高すぎることで、感光体1の表面温度が下がりすぎて、画像流れが生じてしまう場合がある。
前述のように、この場合に、排気ファン30や吸気ファン40をOFFとして、ヒータ20の温調制御により機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を制御しようとすると、温度のリップルが大きく、画像流れを抑制し得る好ましい温度に維持することが難しい。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、画像形成動作中に、ヒータ20を温調制御せずに常にONとしたまま、排気ファン30や吸気ファン40のON/OFF(あるいは回転速度の増減)を制御することで、温度制御の反応が早く、機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を所望の範囲の温度に維持しやすいことを見出した。ここでは、この制御を「画像流れ対策モード」ともいう。なお、以下で更に詳しく説明するように、画像形成動作中に画像流れが発生しやすいのは高湿環境下である。そのため、上述のような「画像流れ対策モード」は高湿環境下において実施し、低湿環境下では画像形成動作中にヒータをOFFとする「省エネモード」を実施することができる。
ここで、ヒータ20を温調制御せずに常にONとするとは、ヒータ電源21からヒータ20に供給される電力が一定であることをいう。この場合、ヒータ電源21からヒータ20に供給される電力がパルス幅変調により制御される構成の場合、温調制御せずに常にONとするとは、100%のデューティー比で固定してヒータ電源21からヒータ20に電力を供給することに限定されるものではない。100%よりも小さいデューティー比、例えば70%のデューティー比で固定してヒータ電源21からヒータ20に電力を供給する場合も含む。
図4は、本実施形態の画像形成装置100の動作の概略を示すフローチャート図である。図4は、機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)の制御を説明するために簡略化されたものであり、画像形成装置100の動作において通常必要となる多くの制御の図示は省略されている。また、ここでは、画像形成装置100は、商用電源に接続され、メインスイッチがONとされているものとする。なお、ジョブとは、1つの開始指示により開始される単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作である。
図4(a)は、画像形成動作の全体の制御の概略を示すフローチャート図である。制御部70は、ジョブの開始指示が入力されると(S101)、機外温湿度センサ60による温度及び湿度の検知結果を読み取り、画像形成装置100の周囲の環境の絶対水分量を算出する(S102)。次に、制御部70は、S102で求めた絶対水分量を所定の環境閾値としての12.42g/kgより大きいか否かを判断する(S103)。この環境閾値は、本実施形態の画像形成装置100においてヒータ20をOFFとしても画像流れの発生を十分に抑制することのできる、予め実験などにより求められる環境の絶対水分量の境界値である。そして、制御部70は、S103において絶対水分量が12.42g/kgより大きいと判断した場合は、「画像流れ対策モード」を開始する(S104)。一方、制御部70は、S103において絶対水分量が12.42g/kg以下であると判断した場合は、「省エネモード」を開始する(S105)。「画像流れ対策モード」、「省エネモード」の詳細については後述する。その後、制御部70は、S104又はS105で決定した「画像流れ対策モード」又は「省エネモード」で画像形成を開始する(S106)。そして、制御部70は、ジョブにおいて指定された枚数の画像形成が終了したら(S107)、画像形成を終了するとともに、ジョブを待機する「待機モード」に入る(S108)。
図4(b)は、「画像流れ対策モード」の制御の手順の概略を示すフローチャート図である。制御部70は、図4(a)のS104で「画像流れ対策モード」を開始すると、ヒータ20をONとしたまま(S201)、排気ファン30及び吸気ファン40を停止させる(S202)。その後、制御部70は、定期的に機内温湿度センサ50による温度の検知結果を読み取り、機内の温度Tが所定の第1の温度閾値に到達したか否かを判断する(S204)。ここで、画像形成を行うと、機内の温度Tが上昇してくる。そして、制御部70は、S204において機内の温度Tが所定の第1の温度閾値に到達したと判断した場合は、排気ファン30及び吸気ファン40を稼働させる(S205)。その後、制御部70は、定期的に機内温湿度センサ50による温度の検知結果を読み取り(S206)、機内の温度Tが所定の第2の温度閾値(<第1の温度閾値)に到達したか否かを判断する(S207)。ここで、S205で排気ファン30及び吸気ファン40を稼働させると、機内の温度Tが低下してくる。そして、制御部70は、S207において機内の温度Tが第2の温度閾値に到達したと判断した場合は、排気ファン30及び吸気ファン40を停止させる(S208)。その後、制御部70は、図4(a)のS108で「待機モード」に入るまで、S203~S208の処理を繰り返す。このようにして、「画像流れ対策モード」での画像形成動作中に、機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を、画像流れを抑制するのに適した所望の範囲の温度に保つことができる。
ここで、第1の温度閾値は、第2の温度閾値よりも高い温度であり、トナーが固まる(トナー粒子が凝集する)温度よりも低い温度に設定される。最も高く想定した場合の第1の温度閾値の上限値としては、トナーの主成分たる樹脂のガラス転移温度Tgを例示することができる。ただし、トナーが固まる温度は、トナーの主成分たる樹脂のガラス転移温度Tgよりも低い温度であることが一般的である。ここで、トナーが固まる温度は、現像装置4内のトナーが昇温のために凝集し初め、そのトナーの凝集が画像に影響を及ぼす温度の下限値として、予め実験などにより求めることができる。具体的には、第1の温度閾値は、一般的なトナーが固まる温度よりも低い温度として、48℃以下、より詳細には45℃以下の温度であることが好ましい。本実施形態では、第1の温度閾値は45℃とした。
また、第2の温度閾値は、感光体1の表面温度を画像流れを十分に抑制し得る温度の下限値以上とし得る機内の温度(より詳細には機内温湿度センサ50で検知される温度)よりも高い温度に設定される。画像流れを十分に抑制し得る感光体1の表面温度は、画像形成装置100の構成などに応じて、実験などを通して求めることができる。具体的には、第2の温度閾値は、夜間などの画像形成装置100の放置中の機内の温度として設定される温度とすることができる。本実施形態では、この画像形成装置100の放置中の機内の温度は、ヒータ20をONとし、排気ファン30及び吸気ファン40をOFFとした状態で画像形成装置100を放置して略平衡に達した際の機内の温度に相当する。
なお、この画像形成装置100の放置中の温度は、画像形成装置100の周囲の環境の温度によって変化し得る。したがって、第2の温度閾値は、機外温湿度センサ60による温度の検知結果に応じて変更し得るように、予め機外の温度に応じて複数設定することができる。この機外の温度と第2の温度閾値との関係を示す情報は、テーブルデータなどとして予めROM72に格納しておくことができる。そして、制御部70は、第2の温度閾値を用いる際に、ROM72内のその情報に基づいて、機外温湿度センサ60による温度の検知結果に応じた第2の温度閾値を選択して用いることができる。例えば、画像形成装置100が30℃の環境で放置された場合に機内の温度が37℃になる場合には、その環境での第2の温度閾値は37℃に設定することができる。同様に、画像形成装置100が35℃の環境で放置された場合に機内の温度が42℃になる場合には、その環境での第2の温度閾値は42℃に設定することができる。同様に、画像形成装置100が27℃の環境で放置された場合に機内の温度が34℃になる場合には、その環境での第2の温度閾値は34℃に設定することができる。
また、画像流れの発生は、環境の絶対水分量で変わるため、ファンを停止する温度は、環境の絶対水分量に応じて変えることが好ましい。したがって、第2の温度閾値は、機外温湿度センサ60による温度及び湿度の検知結果に基づく絶対水分量に応じて変更し得るように、予め絶対水分量の温度に応じて複数設定することができる。この絶対水分量と第2の温度閾値との関係を示す情報は、テーブルデータなどとして予めROM72に格納しておくことができる。そして、制御部70は、第2の温度閾値を用いる際に、ROM72内のその情報に基づいて、機外温湿度センサ60による温度及び湿度の検知結果に基づいて求めた絶対水分量に応じた第2の温度閾値を選択して用いることができる。一般に、環境の絶対水分量が大きくなるにつれて、画像流れを抑制するのに適した感光体1の表面温度の下限値は高くなる傾向がある。したがって、典型的には、環境の絶対水分量が第1の値の場合の第2の温度閾値よりも、環境の絶対水分量が第1の値よりも大きい第2の値の場合の第2の温度閾値の方が大きい値になるように設定することができる。
ただし、画像形成装置100の構成などに応じて、所定の範囲の環境の絶対水分量において十分に画像流れを抑制できるように予め設定された固定の第2の温度閾値を用いてもよい。
また、図4(a)のS105において開始する「省エネモード」では、制御部70は次のような動作を行うことができる。つまり、画像形成動作中に、ヒータ20を常にOFFとし、排気ファン30及び吸気ファン40を常にONとすることができる。画像形成動作中には機内の温度は上昇する傾向にあり、また低湿環境下では高湿環境下と比べて画像形成動作中に画像流れは生じにくいので、ヒータ20をOFFとして省エネ化を図ることができる。一方、機内でのエアフローを一定に維持して画像に対する影響を抑制する観点などから排気ファン30や吸気ファン40は、画像形成動作中は常にONとすることが望ましい。なお、「画像流れ対策モード」では、このエアフローを一定とすることよりも、画像流れの抑制を優先して、排気ファン30及び吸気ファン40のON/OFFにより機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を所望の範囲の温度に維持している。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態における「省エネモード」の代わりに、次のような「通常モード」を実施することができる。つまり、低湿環境下において画像形成動作中にヒータ20を機内の温度に応じてON/OFF制御(温調制御)するとともに、排気ファン30及び吸気ファン40を常にONとする(あるいは機外の温度に応じてON/OFF制御する)。例えば、トナーの凝集を抑制する観点や他の任意の構成要素の好ましい動作条件の観点から、機内の温度が上がり過ぎるのを抑制できればよい。あるいは、画像形成装置100の周囲の環境によらずに、常に「画像流れ対策モード」で画像形成動作を行うようにしてもよい。
また、図4(a)のS108において開始する「待機モード」では、制御部70は次のような動作を行うことができる。つまり、ジョブの待機中に、ヒータ20を常にONとし、排気ファン30及び吸気ファン40を常にOFFとすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、ヒータ20を常にONとする代わりに、機内の温度に応じてヒータ20をON/OFF制御(温調制御)してもよい。また、排気ファン30及び吸気ファン40を常にOFFとする代わりに、機外の温度に応じて排気ファン30及び吸気ファン40をON/OFF制御してもよい。待機中に機内の温度(より詳細には感光体1の表面温度)を画像流れを抑制するのに適した所望の範囲の温度に維持できればよい。
なお、図4(b)のS203、S206において機内の温度を検知する間隔は適宜設定することができるが、例えばms単位の時間など、実質的にリアルタイムに温度を検知するようになっていてよい。
また、以上では、機内の温度を上昇させたい場合に排気ファン30及び吸気ファン40をOFF、機内の温度を低下させたい場合に排気ファン30及び吸気ファン40をONとするものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。機内の温度を上昇させたい場合に排気ファン30及び吸気ファン40の回転速度を第1の回転速度からこれよりも低い第2の回転速度に低下させてもよい。また、機内の温度を低下させたい場合に排気ファン30及び吸気ファン40の回転速度を第2の回転速度からこれよりも高い第1の回転速度に上昇させてもよい。また、排気ファン30、吸気ファン40の両方が設けられている場合であっても、これらは同期してON/OFF(あるいは回転速度を増減)させることに限定されるものではない。排気ファン30及び吸気ファン40のうちいずれか一方のみをON/OFF(あるいは回転速度を増減)させてもよい。さらに、排気ファン30、吸気ファン40の両方又は一方として複数のファンを有する場合は、その複数のファンのうち全部又は一部を任意にON/OFF(あるいは回転速度を増減)させることができる。例えば、画像形成装置100がファン(例えば排気ファン)を4個有する場合に、上述のフローにおいてファンをOFFするのに対応して、4個中の2個のファンをOFFとし、他の2個のファンをONとすることができる。そして、上述のフローにおいてファンをONするのに対応して、4個全てのファンをONとすることができる。この場合もファンをOFFする代わりに回転速度を低下させてもよい。また、複数のファンに関して、ON/OFF、回転速度の増減を任意に組み合わせることも可能である。
また、本実施形態では、「画像流れ対策モード」を開始すると、制御部70はまずファンをOFFとしたが、「画像流れ対策モード」の開始時の機内の温度に応じて、ファンの動作を変更してもよい。図5は、この場合の動作の一例のフローチャート図である。制御部70は、図4(a)のS104で「画像流れ対策モード」を開始すると、ヒータ20をONとしたまま(S301)、機内温湿度センサ50による温度の検知結果を読み取る(S302)。次に、制御部70は、機内の温度Tが第2の温度閾値<T<第1の温度閾値(第2の温度閾値より高く、かつ、第1の温度閾値より低い)を満たすか否かを判断する(S303)。そして、制御部70は、S303において満たすと判断した場合は、排気ファン30及び吸気ファン40をOFFとして(S305)、図4(b)のS203の処理に進む。また、制御部70は、S303において満たさないと判断した場合は、機内の温度TがT≦第2の温度閾値(第2の温度閾値以下)を満たすか否かを判断する(S304)。そして、制御部70は、S304で満たすと判断した場合は、排気ファン30及び吸気ファン40をOFFとして(S305)、図4(b)のS203の処理に進む。つまり、これらの場合は、「画像流れ対策モード」の開始時に排気ファン30及び吸気ファン40をOFFとする。一方、制御部70は、S304で満たさない、すなわち、機内の温度Tが第1の温度閾値以上(T≧第1の温度閾値)であると判断した場合は、排気ファン30及び吸気ファン40をONとして(S306)、図4(b)のS206の処理に進む。つまり、この場合は、「画像流れ対策モード」の開始時に排気ファン30及び吸気ファン40をONとする。なお、ファンのOFFの代わりに回転速度を低下させたり、複数のファンを任意にON/OFF(あるいは回転速度を増減)させたりしてもよいことは上述のとおりである。
8.実施例及び比較例
次に、本実施形態に従う実施例、及び実施例の比較対象としての比較例を参照して、本発明の効果について更に説明する。
(実施例1)
まず、外径30mmのアルミニウムシリンダ(軸線方向の長さ360mm)を、硬度試験用の感光体1、実機テスト用の感光体1のそれぞれのために用意した。また、導電層用の塗料を以下の手順で調整した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(重量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部を、平均粒径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調整した。この塗料を、上記シリンダ上に浸漬コーティング法で塗布し、140℃で30分乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
次に、N-メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調整した。この塗料を上記導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥して、0.6μmの中間層を形成した。
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2度が9.0度、14.2度、23.9度及び27.1度に強いピ-クを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラ-ル(商品名エスレックBM2、積水化学(株)製)3部及びシクロヘキサノン35部を平均粒径1mmガラスビ-ズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を上記中間層の上に浸漬コーティング法で塗布して50℃で10分間乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生層を形成した後、下記構造式(1)のスチリル化合物を10部及び下記構造式(2)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂10部をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調整した。この塗布液を上記電荷発生層上に浸漬コーティング方によって塗布し、120℃で1時間乾燥することによって膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
次いで、下記構造式(3)の正孔輸送性化合物60部をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し保護層用塗料を調整した。この保護層用塗料には、フッ素原子含有樹脂粒子として4フッ化エチレン樹脂を保護層の全重量に対して30重量%を含有させた。
この塗布液を上記電荷輸送層上にコーティングした後、画像形成領域(現像可能領域)が295mmであるので、シリンダの両端部32.5mm部分に電子線があたらないようにマスキングをし、酸素濃度10ppmの雰囲気下で加速電圧150KV、照射線量50KGyの条件で電子線を照射した。その後、マスキングをとって、引き続いて、同雰囲気下で感光体1の温度が100℃になる条件で10分加熱処理をおこない、膜厚5μmの保護層を形成して、感光体1を得た。
硬度試験用の感光体1を25℃/50%RHの環境下に24時間放置した後、前述した微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて、HU及び弾性変形率を求めた。その結果、感光体1のHUが190N/mm2、弾性変形率が46%であった。
実機テスト用の感光体1をiR2545(キヤノン株式会社製)に装着した。そして、通常環境下(20℃/50%RH)でトナー載り量0.025g/A4サイズの画像を1枚間欠で出力する通紙試験(100K)を行い、表層の膜厚を渦電流式膜厚計(Fisher社製)で測定した。その結果、感光体1の画像形成領域の削れ量は0.5μm/100K枚であった。
上記感光体1を用いて、高温高湿環境下(30℃/80%RH、絶対水分量21.58g/kg)において、「画像流れ対策モード」で画像を出力する試験を行った。試験には、本実施形態に従う画像形成装置100を用いた。この試験は、フルカラー画像の連続出力、フルカラー画像の1枚間欠出力(ジョブ間の間隔は1秒程度)、ブラック単色画像の連続出力、ブラック単色画像の1枚間欠出力(ジョブ間の間隔は1秒程度)、両面プリントモードでのフルカラー画像の連続出力の各動作設定で行った。「画像流れ対策モード」では、ヒータ20を常にONとしたまま、第1の温度閾値を45℃、第2の温度閾値を37℃として排気ファン30及び吸気ファン40のON/OFF制御を行った。
その結果、上記いずれの動作設定においても、機内の温度は37~45℃を維持した。また、上記いずれの動作設定においても、画像濃度が薄くなるような画像流れが発生することはなかった。また、上記試験を500K枚程度行っても画像不良は発生せず、感光体1の長寿命化が達成されていることがわかった。
(実施例2)
実施例1と実質的に同じ方法で作成した感光体1を用いて、高温高湿環境下(27℃/75%RH、絶対水分量16.87g/kg)において、実施例1で説明したものと同様の「画像流れ対策モード」で画像を出力する試験を行った。ただし、「画像流れ対策モード」では、ヒータ20を常にONとしたまま、第1の温度閾値を45℃、第2の温度閾値を35℃として排気ファン30及び吸気ファン40のON/OFF制御を行った。
その結果、前述のいずれの動作設定においても、機内の温度は35~45℃を維持した。また、前述のいずれの動作設定においても、画像濃度が薄くなるような画像流れが発生することはなかった。また、上記試験を500K枚程度行っても画像不良は発生せず、感光体1の長寿命化が達成されていることがわかった。
(実施例3)
実施例1と実質的に同じ方法で作成した感光体1を用いて、高温高湿環境下(32℃/85%RH、絶対水分量25.87g/kg)において、実施例1で説明したものと同様の「画像流れ対策モード」で画像を出力する試験を行った。ただし、「画像流れ対策モード」では、ヒータ20を常にONとしたまま、第1の温度閾値を45℃、第2の温度閾値を39℃として排気ファン30及び吸気ファン40のON/OFF制御を行った。
その結果、前述のいずれの動作設定においても、機内の温度は39~45℃を維持した。また、前述のいずれの動作設定においても、画像濃度が薄くなるような画像流れが発生することはなかった。また、上記試験を500K枚程度行っても画像不良は発生せず、感光体1の長寿命化が達成されていることがわかった。
(比較例1)
画像を出力する試験においてヒータ20を常にOFFとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、感光体1の表面温度が比較的短い期間で低下して35℃程度となり、画像が薄くなるような画像流れが発生することがあった。特に、ブラック単色画像の1枚間欠出力において顕著であった。
(比較例2)
画像を出力する試験においてヒータ20を常にONとし、排気ファン30及び吸気ファン40を常にOFFとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、感光体1の表面温度が比較的短い期間で上昇して48℃程度となるとともに、現像装置4内のトナーが固まり、画像上に黒い斑点のような画像不良が発生することがあった。特に、両面プリントモードでのフルカラー画像の連続出力において顕著であった。
(比較例3)
保護層を形成せず、膜厚が30μmであること以外は実施例1のものと同様の感光層を備えた感光体1を得た。この感光体1を用いて、実施例1と同様の試験を行った。この感光体1の画像形成領域の削れ量は2.5μm/10K枚であった。そして、画像を出力試験において、前述のいずれのモードにおいても画像流れは生じなかったが、感光体1の画像形成領域の電荷輸送層が比較的短い期間で削られて、65K枚を超えたあたりで削れムラによる画像不良が目立ちだした。
9.効果
このように、本実施形態では、画像形成装置100は、画像形成装置100の内部から外部への空気の排出又は画像形成装置100の外部から内部への空気の吸入の少なくとも一方を行うためのファン30、40を有する。また、画像形成装置100は、感光体1を加熱するためのヒータ20を有する。また、画像形成装置100は、ファン30、40の動作の制御を行う制御手段70を有する。そして、制御手段70は、画像形成動作中にヒータ20を温調制御せずにONとしたままファン30、40の動作を制御して感光体1の表面温度を制御するモード(画像流れ対策モード)を実行可能である。本実施形態では、画像形成装置100は、画像形成装置100の内部の温度を検知するための温度センサ50を有し、制御手段70は、画像流れ対策モードにおいて、ファン30、40を第1の状態として温度センサ50の検知結果が示す温度が第1の温度閾値に到達した場合にファン30、40を第1の状態よりも風量が大きい第2の状態とし、ファン30、40を第2の状態として温度センサ50の検知結果が示す温度が第1の温度閾値より小さい第2の温度閾値に到達した場合にファン30、40を第1の状態とするように制御を行う。ここで、上記第1の温度閾値は、トナーの凝集が起らない温度として予め設定された温度とすることができる。また、上記第2の温度閾値は、画像形成装置100の放置中に略平衡に達した際の画像形成装置100の内部の温度として予め設定された温度とすることができる。また、上記第1の状態はファンがOFFの状態で、上記第2の状態はファンがONの状態であるか、又は上記第1の状態はファンが第2の状態よりも小さい回転速度で回転する状態で、上記第2の状態はファンが第1の状態よりも大きい回転速度で回転する状態である。また、本実施形態では、画像形成装置100は、画像形成装置100の周囲の環境の絶対水分量を検知するための環境センサ60を有し、制御手段70は、環境センサ60の検知結果が示す絶対水分量が所定の環境閾値よりも大きい場合に、画像流れ対策モードを実行する。また、本実施形態では、制御手段70は、環境センサ60の検知結果が示す絶対水分量が上記所定の環境閾値以下の場合には、画像形成動作中にヒータ20をOFFとする別のモード(省エネモード)を実行する。
以上説明したように、本実施形態によれば、高湿環境下において、ヒータを温調制御することなく常にONとし、ファンの制御を行うことで、感光体1の表面温度を、画像流れを抑制するのに適した所望の範囲の温度に精度よく保つことが可能となる。また、本実施形態によれば、例えば高速機に合わせて比較的能力の高いファンを用いてワイドレンジ化を図っても、中速機や低速機(例えば画像形成速度が50ppm以下の製品)で画像流れが発生しやすくなるリスクを低減することができる。したがって、ワイドレンジ化による低コスト化などのメリットの最大化を図ることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、中間転写方式を採用したタンデム型のプリンタに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、上述の実施形態の構成の一部又は全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。画像形成装置は、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式、モノクロ/フルカラーの区別無く実施できる。また、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造などを加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。