JP7337524B2 - 微細加工装置、微細加工方法、転写型、及び転写物 - Google Patents

微細加工装置、微細加工方法、転写型、及び転写物 Download PDF

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本発明は、微細加工装置、微細加工方法、転写型、及び転写物に関する。
微細加工技術の一つとして、表面に微細凹凸構造が形成された原盤を樹脂シート等に押し当てることで、原盤上の微細凹凸構造を樹脂シート等に転写するインプリント技術が知られている。
原盤の製造方法として、レーザ光によるリソグラフィー及びドライエッチングによって凹凸構造を原盤用基材の表面に形成する技術が知られている。この技術によれば、可視光波長以下の平均周期を有する凹凸構造を原盤用基材の表面に形成することができる。したがって、この技術によれば、超微細な凹凸構造を作製できる。その一方で、この技術では、高精度なマスクが必要となるので、原盤の製造コストが大きくなる。さらに、製造設備が大掛かりになるので、初期コストに加え、メンテナンスに要するコストの負担も大きい。
他の原盤の製造方法としては、例えば、特許文献1~3に開示されているように、切削工具を用いた切削加工により凹凸構造を原盤用基材の表面に形成する技術が知られている。この技術では、先端にチップ(切削部)が形成された切削工具を用いて原盤用基材を切削することで、原盤用基材の表面に微細凹部を格子状に形成する。微細凹部に囲まれた部分が微細凸部となる。これにより、原盤用基材の表面に微細凹凸構造を形成する。この技術では、上述した技術のような超微細な凹凸構造を形成することは難しいが、比較的低コストで原盤を作製可能であるというメリットが有る。切削工具を用いた技術では、切削工具を原盤用基材に対して相対移動させることで、原盤用基材を切削する。
ところで、切削工具を用いた技術では、例えば特許文献1に開示されるように、切削工具を振動させながら原盤用基材を切削する場合がある。このような切削を行うことで、微細凹部の側壁または底部に振動波形を形成することができる。切削工具を振動させる目的は様々であるが、例えば転写物を光学用途に用いる場合、転写物の光学特性の向上が期待できる。
特開2015-71303号公報 特開2008-272925号公報 特開2004-344916号公報
しかし、本発明者が切削工具を振動させる技術について詳細に検討したところ、転写物の表面に振動波形の連続性が途切れる欠陥が発生する場合があることがわかった。このような欠陥は、転写物の外観を損ねるのみならず、転写物を光学用途に使用する場合に、転写物の光学特性を著しく低下させるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、欠陥の発生を抑制することが可能な、新規かつ改良された微細加工装置、微細加工方法、転写型、及び転写物を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、工具設置部と、工具設置部に設けられ、基材に微細凹部を形成可能な切削工具と、工具設置部を基材に対して相対移動させる駆動部と、工具設置部に設けられ、切削工具を基材の深さ方向及び面方向のうち少なくとも一方に振動させることが可能な振動部と、工具設置部を基材に対して相対移動させ、かつ切削工具を振動させながら基材を切削する切削工程を複数セット行う制御部と、を備え、制御部は、以下の切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように切削工程を行うことを特徴とする、微細加工装置が提供される。
切削条件(1):各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている。
切削条件(2):各セット間で振動の位相が揃っている。
ここで、切削工程は、同一箇所を繰り返し切削し、かつ前セットの切削深さよりも現セットの切削深さを深くする深掘り切削工程を含んでいてもよい。
また、切削工程は、前セットの切削位置に隣接する位置で現セットの切削を行う並列切削工程を含んでいてもよい。
また、基材は円柱または円筒形状であり、駆動部は、基材を基材の中心軸を回転軸として回転させる基材駆動部と、工具設置部を回転軸に平行な方向に移動させる工具移動部とを備え、制御部は、基材を回転させ、かつ工具設置部を回転軸に平行な方向に移動させることで、工具設置部を基材に対して相対移動させてもよい。
本発明の他の観点によれば、上述した微細加工装置を用いた微細加工方法であって、切削工具を工具設置部に設ける工程と、工具設置部を基材に対向する位置に設置する工程と、工具設置部を基材に対して相対移動させ、かつ切削工具を振動させながら基材を切削する切削工程を複数セット行う工程と、を含み、以下の切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように切削工程が行なわれることを特徴とする、微細加工方法が提供される。
切削条件(1):各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている。
切削条件(2):各セット間で振動の位相が揃っている。
本発明の他の観点によれば、表面に一又は複数の微細凹部が形成された基材を有し、微細凹部の側壁及び底部の少なくとも一方は、以下の振動波形条件(1)~(4)の少なくとも1つ以上を満たす振動波形を有することを特徴とする、転写型が提供される。
振動波形条件(1):振動波形が連続している。
振動波形条件(2):振動波形が複数の振動波形の合成波形となっており、かつ、複数の振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(3):基材上に複数列の微細凹部が形成されており、隣接する微細凹部間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(4):前記基材上に複数列の微細凹部が形成されており、2ピッチ毎に微細凹部間で振動波形の位相が揃っている。
ここで、基材は円柱または円筒形状であってもよい。
本発明の他の観点によれば、表面に一又は複数の微細凹部が形成された基材を有し、微細凹部の側壁及び底部の少なくとも一方は、以下の振動波形条件(1)~(4)の少なくとも1つ以上を満たす振動波形を有することを特徴とする、転写物が提供される。
振動波形条件(1):振動波形が連続している。
振動波形条件(2):振動波形が複数の振動波形の合成波形となっており、かつ、複数の振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(3):基材上に複数列の微細凹部が形成されており、隣接する微細凹部間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(4):前記基材上に複数列の微細凹部が形成されており、2ピッチ毎に微細凹部間で振動波形の位相が揃っている。
以上説明したように本発明によれば、切削条件(1)、(2)の少なくとも一方を満たす切削を行うので、欠陥の発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る微細加工装置1の全体構成を示すブロック図である。 本発明の別の実施形態に係る微細加工装置1の全体構成を示すブロック図である。 一実施形態に係る切削装置の詳細構成を示す断面図である。 切削パターンの一例である螺旋切削パターンを示す側面図である。 切削パターンの一例である輪切り切削パターンを示す側面図である。 切削パターンの一例であるスラスト切削パターンを示す側面図である。 切削パターンの一例である斜めスラスト切削パターンを示す側面図である。 原盤用基材の回転角度と切削工具の振動波形とを対比して示すタイミングチャートである。 微細凹部の具体例を示す斜視図である。 微細凹部の具体例を示す平面図である。 微細凹部の具体例を示す平面図である。 微細凹部の具体例を示す斜視図である。 微細凹部の具体例を示す平面図である。 微細凹部の具体例を示す斜視図である。 微細凹部の具体例を示す平面図である。 微細加工方法の一例のフローチャートである。 微細加工方法の一例のフローチャートである。 原盤(転写型)の一例を示す斜視図である。 原盤(転写型)の一例を示す斜視図である。 原盤(転写型)の一例を示す斜視図である。 転写物の一例を示す斜視図である。 転写物の一例を示す平面図である。 切削工具の振動波形の一例を示すグラフである。 微細凹部の振動波形の一例を示すグラフである。 切削工具の振動波形の一例を示すグラフである。 微細凹部の振動波形の一例を示すグラフである。 切削工具の振動波形の一例を示すグラフである。 微細凹部の振動波形の一例を示すグラフである。 切削工具の振動波形の一例を示すグラフである。 切削工具の振動波形の一例を示すグラフである。 実施例に係る微細凹部のSEM画像である。 比較例に係る微細凹部のマイクロスコープ画像である。 比較例に係る微細凹部のSEM画像である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.微細加工装置の構成>
まず、図1A及び図2に基づいて、本実施形態に係る微細加工装置1の構成について説明する。図1Aは、切削工具の振動と、原盤用基材(ロール)の回転とを同期させて切削を行う微細加工装置1の全体構成を示すブロック図である。微細加工装置1は、原盤用基材(ロール)100を切削することで、原盤用基材100の表面に微細凹部110を形成する。これにより、図10に示す原盤120を作製する。原盤用基材100は円柱または円筒形状となっている。原盤120は、例えばインプリンティング用の原盤であり、原盤120を転写型として図11A、図11Bに示す転写物200を作製することができる。原盤120及び転写物200については後述する。なお、図1Aの構成は、例えば、後述する輪切り切削パターン又は螺旋切削パターンの加工を行う場合に、採用することができる。
微細加工装置1は、主回転装置10(基材駆動部)と、従動回転装置12と、切削装置20と、制御装置70とを備える。
主回転装置10、原盤用基材100の中心軸、及び従動回転装置12は同軸上に配置される。図1Aの主回転装置10は、図示しないエンコーダを内蔵しており、エンコーダから主回転装置10の回転角度に関する回転情報(回転情報)を制御装置70に送信する。回転情報は、例えばパルス信号であり、主回転装置10が所定角度回転する毎に回転情報を制御装置70に送信する。ここで、所定角度はエンコーダの分解能によって定まる。例えば、エンコーダの分解能が1440000パルスとなる場合、所定角度は360/1440000°としてもよい。本実施形態では、主回転装置10の回転方向(言い換えれば、原盤用基材100の周方向)をy軸とする。y軸の正方向は従動回転装置12から見て反時計回りとする。主回転装置10による原盤用基材100の回転速度(回転数)は特に制限されないが、例えば1~100min-1であってもよい。
切削装置20は、加工ステージ30(工具移動部)と、送り軸31と、工具設置部40と、振動部50と、切削工具60とを備える。加工ステージ30には、工具設置部40が設置される。加工ステージ30は、送り軸31に沿って移動可能となっている。送り軸31は、主回転装置10の回転軸(言い換えれば、原盤用基材100の長さ方向)に平行な方向(基材の面方向、すなわち基材の表面に平行な方向)に伸びる。本実施形態では、送り軸31の延伸方向をx軸とし、図1中右方向をx軸の正方向とする。さらに、加工ステージ30は、切り込み軸方向(基材の深さ方向)にも移動可能となっている。本実施形態では、切り込み軸をz軸とし、図1中上方向(原盤用基材100に接近する方向)をz軸の正方向とする。したがって、加工ステージ30は、工具設置部40(より具体的には工具設置部40に設置される切削工具60)をx軸方向またはz軸方向に移動させることができる。このように、本実施形態では、主回転装置10が原盤用基材100をy軸方向に回転させる一方で、加工ステージ30が工具設置部40をx軸またはz軸方向に移動させる。これにより、工具設置部40は原盤用基材100に対して相対移動する。したがって、主回転装置10及び加工ステージ30は工具設置部40を原盤用基材100に対して相対移動させる駆動部として機能する。
工具設置部40は、加工ステージ30に設置され、加工ステージ30とともにx軸方向またはz軸方向に移動する。工具設置部40の位置は、x平面上の座標値として測定される。当該測定は、図示しない変位測定器によって行われる。変位測定器は、測定された工具設置部40のx座標値に関するx座標情報を制御装置70に出力する。工具設置部40には、ケース収納用凹部41が形成され、このケース収納用凹部41内に振動部50及び切削工具60が収納される。
振動部50は、切削工具60をx軸方向またはz軸方向に振動させる。このように、本実施形態では、加工ステージ30による加工軸(x軸)とは異なる加工軸(x軸)を作り出し、これらを独立して制御する。具体的には、振動部50は、工具収納ケース51、工具振動素子52a、53a、変位測定器52b、53bを備える。
工具収納ケース51は、切削工具60を収納する。工具収納ケース51は、工具設置部40に形成されたケース収納用凹部41内に設置される。工具振動素子52aは、切削工具60の基端部(底面)と工具収納ケース51の底面とを連結する。そして、工具振動素子52aは、切削工具60をz軸方向に振動させる。z軸は、z軸に平行な軸であり、z軸の正方向はz軸の正方向と同一方向である。工具振動素子52aの種類は特に問われず、切削工具60をz軸方向に移動させることができる機器であればどのようなものであってもよいが、高精度かつ高剛性な直動ステージであることが好ましい。工具振動素子52aの好ましい例としては、ピエゾ素子、リニアモータ、及び超音波素子等が挙げられる。工具振動素子52aの特に好ましい例はピエゾ素子である。工具振動素子52aの振動は制御装置70によって制御される。
変位測定器52bは、切削工具60のz軸方向の振動の変位をz座標値として測定する。変位測定器52bは、切削工具60のz軸方向の振動の変位を測定することができる機器であればどのようなものであってもよいが、高精度かつ小型であり、ヒステリシスが少ないものが好ましい。変位測定器52bの好ましい例としては、静電容量式、レーザ干渉式、感圧ピックテスタ式等の測定器等が挙げられる。変位測定器52bは、測定されたz座標値に関するz座標情報を制御装置70に出力する。
工具振動素子53aは、x軸方向に伸びており、工具収納ケース51の外壁面とケース収納用凹部41の外壁面とを連結する。そして、工具振動素子53aは、切削工具60をx軸方向に移動させる。x軸は、x軸に平行な軸であり、x軸の正方向は、x軸の正方向と同一方向である。工具振動素子53aの好ましい例としては、ピエゾ素子、リニアモータ、及び超音波素子等が挙げられる。工具振動素子53aの特に好ましい例はピエゾ素子である。工具振動素子53aの振動は制御装置70によって制御される。
変位測定器53bは、切削工具60のx軸方向の振動の変位をx座標値として測定する。変位測定器53bは、切削工具60のx軸方向の変位を測定することができる機器であればどのようなものであってもよいが、高精度かつ小型であり、ヒステリシスが少ないものが好ましい。変位測定器53bの好ましい例としては、静電容量式、レーザ干渉式、感圧ピックテスタ式等の測定器等が挙げられる。変位測定器53bは、測定されたx座標値に関するx座標情報を制御装置70に出力する。なお、本実施形態では、切削工具60のx座標値は、後述する工具先端部63のx座標値とする。
切削工具60は、工具設置部40に移動可能に設けられる。切削工具60は、工具本体61及び工具切削部(チップ)62を備える。工具本体61は、z軸方向に伸びる棒状部材である。切削工具60の底面は平滑であることが好ましい。底面には上述した工具振動素子52a等が設置されるからである。工具切削部62は、工具本体61の先端に取り付けられている。工具切削部62はテーパ形状となっている。工具切削部62の先端にある工具先端部63(作用点)が原盤用基材100に押し当てられ、原盤用基材100を切削する。工具先端部63の形状は特に制限されないが、例えば矩形であってもよく、曲面形状であってもよい。これにより、原盤用基材100の表面に微細凹部110を形成する。微細凹部110の底部110aの形状は工具先端部63の形状を反映したものになる。工具切削部62の材質は、例えばダイヤモンド、超硬合金、ハイスピード工具鋼、CBN(立方晶窒化ホウ素(Cubic boron nitride))などであっても良い。工具切削部62は、これらの材料を研磨することで作製される。また、レーザ照射、イオンミリング等によっても作製可能である。
なお、図2等は切削工具60を模式的に示したものである。したがって、切削工具60の形状は必ずしも図2等に示すものに限られない。例えば、工具本体61と工具切削部62とを一体的に作製してもよい。また、図2に示す例では加工ステージ30上に工具設置部40、振動部50、及び切削工具60の組が1組形成されているが、加工ステージ30上にはこれらが複数組形成されていてもよい。
図1Aの制御装置70は、主回転装置10及び切削装置20と通信ケーブル等で連結されており、これらの装置との間で情報(例えば主回転装置10の回転情報、工具設置部40のx座標情報、切削工具60のx座標情報)のやりとりが可能となっている。
具体的には、制御装置70は、制御演算部71、制御部72、及び増幅部73を備える。制御装置70は、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit、すなわちプロセッサ)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、各種入力操作装置(キーボード、マウス等)、ディスプレイ、任意波形発生器、通信装置等を備える。ROMには、制御装置70による処理に必要な情報、例えば加工プログラム等が記録されている。CPUは、ROMに記憶された加工プログラムを読み出して実行する。任意波形発生器は、任意の波形を任意の周波数及び電圧で発生させるための装置であり、後述する切削工具60のx座標値を出力するために使用される。
図1Aの制御演算部71は、主回転装置10から与えられた情報に基づいて、工具設置部40のx座標値及び切削工具60のx座標値(概略的にはx軸方向またはz軸方向の振動波形)を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。
制御部72は、制御演算部71から与えられた座標情報に基づいて、切削装置20の動作を制御する。具体的には、制御部72は、制御演算部71が算出したx座標値に切削工具60を移動させる旨の振動制御情報を生成し、増幅部73に出力する。増幅部73は振動制御情報を増幅して振動部50に出力する。振動部50の工具振動素子52a、53aは振動制御情報に基づいて駆動する。これにより、切削工具60が振動する。さらに、制御部72は、座標情報に基づいて加工ステージ30を制御することで、工具設置部40をx軸方向またはz軸方向に移動させる。これにより、原盤用基材100上に所望の切削パターンで微細凹部110が形成される。制御部72が行う制御の詳細な内容は後述する。
また、図1Bは、切削工具の振動と、当該切削工具の送り軸の座標とを同期させて切削を行う微細加工装置1の全体構成を示すブロック図である。なお、図1Bの全体構成は、切削工具の振動の同期方法が異なる点を除けば、上述した図1Aと概ね同じである。また、図1Bの構成は、例えば、後述するスラスト切削パターン又は斜めスラスト切削パターンの加工を行う場合に、採用することができる。以下、図1Aと異なる点についてのみ説明する。
図1Bの送り軸31は、図示しないスケールを内蔵しており、スケールから送り軸31の座標に関する位置情報を制御装置70に送信する。位置情報は、例えばパルス信号であり、送り軸31が所定距離だけ移動する毎に位置情報を制御装置70に送信することができる。なお、送り軸31の送り速度(移動速度)は、特に制限されないが、1,000~20,000mm/minであってもよく、望ましくは10,000mm/minである。
図1Bの制御装置70は、送り軸31及び切削装置20と通信ケーブル等で連結されており、これらの装置との間で情報(例えば送り軸31の位置情報、工具設置部40のx座標情報、切削工具60のx座標情報)のやりとりが可能となっている。
図1Bの制御演算部71は、送り軸31から与えられた情報に基づいて、工具設置部40のz座標値及び切削工具60のx座標値(概略的にはx軸方向またはz軸方向の振動波形)を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。
制御部72は、制御演算部71から与えられた座標情報に基づいて、切削装置20の動作を制御する。具体的には、制御部72は、制御演算部71が算出したx座標値に切削工具60を移動させる旨の振動制御情報を生成し、増幅部73に出力する。増幅部73は振動制御情報を増幅して振動部50に出力する。振動部50の工具振動素子52a、53aは振動制御情報に基づいて駆動する。これにより、切削工具60が振動する。さらに、制御部72は、座標情報に基づいて加工ステージ30を制御することで、工具設置部40をz軸方向に移動させる。これにより、原盤用基材100上に所望の切削パターンで微細凹部110が形成される。制御部72が行う制御の詳細な内容は後述する。
<2.制御部による処理の概要>
つぎに、図3、図4A、図4B、図4Cに基づいて、制御部72による処理の概要について説明する。制御部72は、上述したように、切削装置20の動作を制御する。より具体的には、制御部72は、切削工程を複数セット行う。ここで、切削工程は、工具設置部40を原盤用基材100に対して相対移動させ、かつ切削工具60を振動させながら原盤用基材100を切削する工程である。工具設置部40を原盤用基材100に対して相対移動させることで、微細凹部110が原盤用基材100上に形成され、図3に示す螺旋切削パターン、図4Aに示す輪切り切削パターン、図4Bに示すスラスト切削パターンまたは図4Cに示す斜めスラスト切削パターンが実現される。螺旋切削パターン、輪切り切削パターン、スラスト切削パターン及び斜めスラスト切削パターンは、前セットの切削位置に隣接する位置で現セットの切削を行う並列切削工程の一例である。微細凹部110は、底部110a及び側壁110bを有する。隣接する微細凹部110間の境界部分が微細凸部111となる。
螺旋切削パターンは、微細凹部110が原盤用基材100上に螺旋状に形成されるパターンである。この螺旋切削パターンは、概略的には以下の工程で作製される。すなわち、原盤用基材100を回転させる一方で、工具設置部40をx軸方向に比較的ゆっくりと移動させる。これにより、螺旋切削パターンが原盤用基材100上に形成される。原盤用基材100上に螺旋切削パターンを形成する場合、原盤用基材100の1または複数周分の切削を1セットの切削工程とする。制御部72は、切削工程を複数セット行うことで、螺旋状の微細凹部110を原盤用基材100の一方の端部から他方の端部まで形成する。なお、螺旋切削パターンを原盤用基材100上に形成した後、螺旋の傾斜方向を反転させて再度螺旋切削パターンを形成してもよい。この態様はクロス螺旋切削パターンとも称される。
輪切り切削パターンは、微細凹部110が原盤用基材100の周方向に沿って形成される。微細凹部110の延伸方向は原盤用基材100の軸方向に垂直な方向である。この輪切り切削パターンは、概略的には以下の工程で作製される。すなわち、工具設置部40のx座標を固定した上で、原盤用基材100を回転させる。これにより、微細凹部110が原盤用基材100上に形成される。微細凹部110が原盤用基材100上に1周分形成された後、工具設置部40をx方向に1ピッチ分移動させ、同様の処理を繰り返す。ここで、ピッチは隣接する微細凹部110間の距離、より詳細には微細凹部110の幅方向の中心線間の距離を意味する。これにより、輪切り状切削パターンが原盤用基材100上に形成される。原盤用基材100上に輪切り切削パターンを形成する場合、原盤用基材100の1または複数周分の切削を1セットの切削工程とする。制御部72は、切削工程を複数セット行うことで、輪切り状の微細凹部110を原盤用基材100の一方の端部から他方の端部まで形成する。
スラスト切削パターンは、微細凹部110が原盤用基材100の軸方向に沿って形成される。微細凹部110の延伸方向は原盤用基材100の軸方向に平行な方向である。このスラスト切削パターンは、概略的には以下の工程で作製される。すなわち、原盤用基材100を回転させずに、工具設置部40をx軸方向に移動させる。これにより、微細凹部110が原盤用基材100上に形成される。微細凹部110が原盤用基材100の一方の端部から他方の端部まで1列分形成された後、工具設置部40をスタート位置に移動させるとともに、原盤用基材100をy軸の正方向または負方向に1ピッチ分回転させて停止させ、同様の処理を繰り返す。ここで、ピッチは隣接する微細凹部110間の距離、より詳細には微細凹部110の幅方向の中心線間の距離を意味する。これにより、スラスト切削パターンが原盤用基材100上に形成される。原盤用基材100上にスラスト切削パターンを形成する場合、原盤用基材100の1または複数列分の切削を1セットの切削工程とする。制御部72は、切削工程を複数セット行うことで、原盤用基材100の軸方向に平行な複数列の微細凹部110を原盤用基材100の周面に形成する。
斜めスラスト切削パターンは、微細凹部110が原盤用基材100の軸方向に対して傾斜して形成される。この斜めスラスト切削パターンは、概略的には以下の工程で作製される。すなわち、原盤用基材100を比較的ゆっくりと回転させる一方で、工具設置部40をx軸方向に移動させる。これにより、微細凹部110が原盤用基材100上に形成される。微細凹部110が原盤用基材100の一方の端部から他方の端部まで1列分形成された後(或いは、微細凹部110が原盤用基材100上に1または複数周分形成された後)、工具設置部40をスタート位置に移動させるとともに、原盤用基材100のスタート回転角度(y座標)をy軸の正方向または負方向に1ピッチ分回転させて停止させ、同様の処理を繰り返す。これにより、斜めスラスト切削パターンが原盤用基材100上に形成される。原盤用基材100上に斜めスラスト切削パターンを形成する場合、原盤用基材100の1または複数列分の切削(或いは、原盤用基材100の1または複数周分の切削)を1セットの切削工程とする。制御部72は、切削工程を複数セット行うことで、原盤用基材100の軸方向に対して傾斜した複数列の微細凹部110を原盤用基材100の周面に形成する。
なお、螺旋切削パターンの微細凹部110は、原盤用基材100の軸方向に垂直な方向に対する傾斜角度が、典型的には0°超1°未満である。一方、斜めスラスト切削パターンの微細凹部110は、原盤用基材100の軸方向に垂直な方向に対する傾斜角度が、典型的には1°以上180°未満である(原盤用基材100の軸方向に対する傾斜角度が、典型的には0°超179°以下である)。但し、螺旋切削パターンまたは斜めスラスト切削パターンの選択は、切削工具の負荷や切削時間などを考慮して決定されるため、上述の傾斜角度の範囲はその限りではない。例えば、本実施形態では、原盤用基材100の軸方向に垂直な方向に対する傾斜角度が1°超である螺旋切削パターンを選択することもできる。
制御部72は、いずれの切削パターンにおいても、同一箇所を繰り返し切削する深掘り切削工程を行う場合がある。深掘り切削工程を行う場合、切削深さを変えて上述したいずれかの切削パターンを繰り返し行う。したがって、各切削深さにおける切削を深掘り切削工程の1セットとすればよい。したがって、制御部72は、前セットの切削深さよりも現セットの切削深さを深くする。
さらに、制御部72は、いずれの切削パターンにおいても、切削工具60を振動させながら切削を行う。これにより、微細凹部110の底部110a及び側壁110bの少なくとも一方が振動波形を有する。
さらに、制御部72は、以下の切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように切削工程を行う。好ましくは切削条件(1)、(2)の両方が満たされるように切削を行う。なお、切削条件(2)の「各セット間で位相が揃っている」とは、原盤用基材100の同一回転角度(y座標)に対する位相が各セット間で揃っていることを意味する。
切削条件(1):各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている。
切削条件(2):各セット間で振動の位相が揃っている。
ここで、一例として、図5に基づいて、図1Aの構成を用いた場合における切削条件(1)、(2)について説明する。図5の横軸は時刻を示す。上側のグラフL1は原盤用基材100の回転情報の出力タイミングを示す。時刻t、t、t、t、tで原盤用基材100の回転角度が0°、90°、180°、270°、360°(=0°)となっている。なお、ここでは、理解を容易にするために、原盤用基材100の回転角度が0°(=360°)であることを示す回転情報の出力タイミングを示す。下側のグラフL2、L3は切削工具60の振動波形(すなわち、各時刻における切削工具60のz座標値)を示す。図5の例では、原盤用基材100の1回転分の切削が1セットとなっている。つまり、グラフL2は現セットの振動波形を示し、グラフL3は次セットの振動波形を示す。
図5に示される通り、各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている(いずれも0°となっている)。したがって、切削条件(1)が満たされる。さらに、セット間で位相が揃っている。例えば、セットの始点での位相はいずれのセットにおいても0°となっており、同一回転角度(y座標値)での位相が揃っている。したがって、切削条件(2)が満たされる。
このように、制御部72は、切削工具60の振動と原盤用基材100の回転とを同期させた切削を行う。この結果、セット間で振動の連続性が保たれ、欠陥の発生が抑制される。例えば、上述した切削パターンのいずれにおいても、1または複数セット毎に振動波形の位相を揃えることができる。すなわち、隣接する微細凹部110同士で振動波形の位相を揃えることができる。螺旋切削パターン(及び斜めスラスト切削パターン)では、上記に加え、セット間の連結部分において、微細凹部110の振動波形の位相が揃っている。輪切り切削パターンでは、上記に加え、セットの始点及び終点の連結部分において、微細凹部110の振動波形の位相が揃っている。また、スラスト切削パターン(及び斜めスラスト切削パターン)では、上記に加え、セットの始点及び終点において、微細凹部110の振動波形の位相が揃っている。さらに、深掘り切削工程を行う場合、深掘りのセット間で振動の位相が揃っているため、微細凹部110の振動波形は、各セットにおける切削工具60の振動波形を正確に反映した形状となっている。なお、制御演算部71は、制御部72が上述した処理を行うことができるように、工具設置部40のx座標値、切削工具60のx座標値等を算出することとなる。振動の波形は特に制限されない。例えば振動の波形はSin波形となるが、これに限定されず、任意の振動波形であってもよい。例えば、振動の波形は台形波等であってもよい。なお、本実施形態では、「欠陥」とは、振動波形の連続性が途切れる箇所(段差等の形状が乱れる箇所)であって、肉眼もしくは何らかの顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡、マイクロスコープ等)によって観察可能であるものを意味する。
さらに、本実施形態では、加工ステージ30による加工軸(x軸)とは異なる加工軸(x軸)を作り出し、これらを独立して制御することで切削工具60の位置制御を行う。したがって、いわゆる点群データが不要になる。点群データは、切削工具60の3次元の位置データである。例えば、切削工具60をNC機器に取り付け、このNC機器を点群データで制御することで、切削工具60を移動させることは可能ではある。しかし、微細な加工が困難になる。例えば、螺旋切削パターンのピッチを0.01mmとし、点群データを1ピッチあたり10000点とする。この場合、切削工具60のx軸方向(送り方向)の0.01/10000mm毎に指示(切削工具60の移動指示)を出す必要になる。しかし、従来のNC機器はこのような分解能で駆動することができない。したがって、1ピッチあたりの点群データの数を減らすことになるが、この場合、加工精度が落ちる。本実施形態では、点群データが不要になるととともに、微細な加工が可能となる。
<3.制御部による処理の具体例>
つぎに、図6A~図8Bに基づいて、処理の具体例について説明する。図6A、図6Bは輪切り切削パターンの一例である。この例では、制御部72は、上述した輪切り切削パターンに沿った切削を行う。さらに、制御部72は、上述した切削条件(1)、(2)を満たすように切削工具60をz軸方向に振動させる。ここでは、原盤用基材100の1周分の切削を1セットの切削工程とする。さらに、制御部72は、切削工具60による切削領域を微細凹部110のピッチ間で重複させる。この結果、図6A、図6Bに示す微細凹部110が形成される。微細凹部110の底部110a、側壁110b及び微細凸部111は平面視で直線となっている。一方で、微細凸部111の上端部の高さがz軸方向に振動している。さらに、隣接する微細凸部111間で微細凸部111の振動波形が揃っている。なお、切削工具60による切削領域を微細凹部110のピッチ間で離間させた場合、図6Cに示す微細凹部110が形成される。この例では、微細凹部110の底部110aは平面視で直線となっている。一方で、微細凹部110の側壁110bの形状は平面視で振動波形となっている。側壁110bの振動波形の位相は隣接する微細凹部110間で揃っている。切削工具60の工具切削部62がテーパ形状となっているので、このような振動波形が形成される。
図7A、図7Bは輪切り切削パターンの一例である。この例では、制御部72は、上述した輪切り切削パターンに沿った切削を行う。さらに、制御部72は、上述した切削条件(1)、(2)を満たすように切削工具60をx軸方向に振動させる。ここでは、原盤用基材100の1周分の切削を1セットの切削工程とする。この結果、図7A、図7Bに示す微細凹部110が形成される。微細凹部110の底部110a、側壁110b及び微細凸部111の形状は平面視で振動波形となっている。隣接する微細凹部110間でこれらの振動波形の位相が揃っている。
図8A、図8Bは輪切り切削パターンの一例である。この例では、制御部72は、上述した輪切り切削パターンに沿った切削を行う。さらに、制御部72は、上述した切削条件(1)、(2)を満たすように切削工具60をz軸方向に振動させる。ここでは、原盤用基材100の2周分の切削を1セットの切削工程とする。さらに、制御部72は、切削工具60による切削領域を微細凹部110のピッチ間で隣接させる。この結果、図8A、図8Bに示す微細凹部110が形成される。微細凹部110の底部110aは平面視で直線となっており、側壁110b及び微細凸部111は平面視で振動波形となっている。一方で、微細凸部111の上端部の高さがz軸方向に振動している。さらに、微細凸部111の振動波形の位相が2ピッチ毎に(すなわち2周に1回)揃っている。隣接する微細凸部111の振動波形の位相は180°ずれることになる。切削工具60の工具切削部62がテーパ形状となっているので、このような振動波形が形成される。同様の切削を螺旋切削パターンでも行うことができる。この場合にも、原盤用基材100の2周分の切削を1セットの切削工程とすればよい。作製される原盤120の表面形状(SEM写真)を図20に示す。図20に示すように、欠陥は見受けられない。
以上、制御部72の処理の具体例を説明したが、制御部72が行う処理は上記の例に限定されないことはもちろんである。例えば、制御部72は、上記各具体例において切削条件(1)、(2)を満たすように深掘り切削工程を行ってもよい。さらに、制御部72は、螺旋切削パターン、スラスト切削パターンまたは斜めスラスト切削パターンにおいて切削条件(1)、(2)を満たすような切削を行ってもよい。
<4.誤差について>
ここで、切削条件(1)、(2)で示される通り、本実施形態では、切削工具の振動の位相をセット間または同一セットの始点及び終点で揃えることが非常に重要になる。ただし、実際の切削工程では、振動の位相を完全に揃えることは難しい。そこで、本発明者は、許容誤差について検討したところ、ある程度の許容誤差の範囲内であれば欠陥の発生が抑制されることがわかった。
例えば輪切り切削パターンでは、切削条件(1)の誤差が発生しうる。具体的には、いずれかのセットにおいて始点のy座標値と終点のy座標値がオーバーラップする(すなわち、終点のy座標値が始点のy座標値よりもy軸の正方向側にずれる)誤差が生じうる(ケース1)。さらに、いずれかのセットにおいて切削の終点が始点に届かない(すなわち、終点のy座標値が始点のy座標値よりもy軸の負方向側にずれる)誤差が生じうる(ケース2)。ケース1では、オーバーラップに伴う切削深さのズレ(段差)が0.5μm未満であれば欠陥の発生が抑制される。ケース2では、始点と終点との間が平坦部となる。この平坦部のy軸方向の長さが0.5μm未満であれば、欠陥の発生が抑制される。したがって、段差の深さまたは平坦部の長さが0.5μm未満となる範囲が許容誤差となる。これらの誤差が許容誤差範囲内であれば、切削条件(1)が満たされると言える。
螺旋切削パターン及び輪切り切削パターン、スラスト切削パターン、斜めスラスト切削パターンでは、切削条件(2)の誤差として、隣接する微細凹部60間で振動波形の位相がズレる誤差が生じうる。このような誤差が5°未満であれば欠陥の発生が抑制される。したがって、位相のズレが5°未満となる範囲が許容誤差となる。深掘り切削工程では、切削条件(2)の誤差として、セット間の振動の位相がずれる誤差が生じうる。このような誤差が5°未満であれば欠陥の発生が抑制される。したがって、位相のズレが5°未満となる範囲が許容誤差となる。これらの誤差が許容誤差範囲内であれば、切削条件(2)が満たされると言える。
<5.微細加工装置を用いた微細加工方法>
つぎに、微細加工装置1を用いた微細加工方法の一例を図9Aに示すフローチャートに沿って説明する。作業者は、以下に説明する工程を行うことで、原盤を作製する。
ステップS10において、作業者は、原盤用基材100を準備する。ここで、原盤用基材100の形状は特に制限されない。原盤用基材100の形状は、例えば円柱または円筒形状である。原盤用基材100の材質も特に制限されないが、加工面の平滑性を維持するために非晶質または、粒度の小さい材質であることが好ましい。原盤用基材100は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、オーステナイト系ステンレス、ジュラルミンなどが好ましい。より具体的な例として、S45C、SUS304等が挙げられる。
原盤用基材100の表面には被覆層が形成されてもよい。この場合、被覆層に微細凹部110が形成される。原盤用基材100の表面に被覆層を形成する方法は特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず、作業者は、被覆層を構成する材料(例えば、Cu、Ni-P合金等)を原盤用基材100の周面にめっきする。めっきの種類は特に問わないが、例えば電解めっき等であればよい。めっき直後の被覆層は、表面が荒れた形状となっていることが多い。そこで、原盤用基材100の周面に被覆層を形成した後に、被覆層の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理の内容は特に問われないが、例えば、平滑化用のバイト(切削部が曲面形状となったバイト)を用いて行われても良い。この方法では、例えば、作業者は、被覆層が形成された原盤用基材100及び平滑化用のバイトを精密旋盤に取り付ける。ついで、原盤用基材100を、原盤用基材100の中心軸を回転軸として回転させる。ついで、平滑化バイトの切削部を被覆層の一方の軸方向端部に押し付ける。ここで、軸方向は、原盤用基材100の中心軸方向を意味する。その後、原盤用基材100を回転させながら、平滑化バイトを一方の軸方向端部から他方の軸方向端部に移動させる。以上の工程により、被覆層が平滑化される。
ついで、作業者は、原盤用基材100を主回転装置10に設置する。
ステップS20において、作業者は、工具設置部40を加工ステージ30にセットする。さらに、作業者は、工具設置部40に振動部50を設ける。なお、振動部50が予め設けられた工具設置部40を準備しても良い。ステップS30において、作業者は、切削工具60を工具収納ケース51内に収納する。
ステップS40において、作業者は、制御システムの設定を行い、ステップS50において、作業者は、主回転装置10の回転速度の設定を行う。具体的には、作業者は、所望の微細凹凸パターンを得るために必要な情報を制御装置70に入力する。このような情報としては、例えば原盤用基材100の回転速度、工具設置部40の移動軌跡、移動速度、切削工具60による切削の深さ、振動の方向、振動の波形、振動の周波数、及び振動の振幅等が挙げられる。例えば、制御部72は、ディスプレイに入力画面を表示する。作業者は、入力操作装置を用いて上述した情報を入力する。制御部72は、与えられた情報では上述した切削条件(1)、(2)を満たす制御を行うことができない場合、情報の修正を作業者に促してもよい。この際、制御部72は、切削条件(1)、(2)を満たすために必要な数値の例を入力画面に表示してもよい。制御部72は、原盤用基材100の回転速度に関する情報を主回転装置10に出力する。
ステップS60において、主回転装置10は、原盤用基材100の回転を開始する。これにともない、主回転装置10は、原盤用基材100の回転角度に関する回転情報を制御装置70に出力する。
ステップS70~S80において、制御部72は、加工ステージ30を駆動することで、工具設置部40のx軸方向及びz軸方向の位置をスタート位置に移動させる。すなわち、工具設置部40を原盤用基材100に対向する位置に設置する。
ステップS90において、作業者は、制御システム(すなわち微細加工装置1)の運転を開始する。ステップS100において、制御装置70は、振動部50の同期運転を開始する。すなわち、制御演算部71は、主回転装置10から与えられた回転情報をトリガとして、切削工具60のx座標値を算出する。ここで、演算制御部71は、切削工具60の振動が上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方を満たすように、切削工具60のx座標値を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。制御部72は、制御演算部71が算出した座標値に切削工具60を移動させる旨の振動制御情報を生成し、増幅部73に出力する。増幅部73は振動制御情報を増幅して振動部50に出力する。振動部50の工具振動素子52a、53aは振動制御情報に基づいて駆動する。これにより、切削工具60が原盤用基材100の回転に同期して振動する。
ステップS110において、制御演算部71は、主回転装置10から与えられた回転情報に基づいて、工具設置部40のx座標値を算出する。ここで、演算制御部71は、上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように、工具設置部40のx座標値を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。制御部72は、座標情報、加工プログラム、及び作業者から入力された情報に従って工具設置部40を移動させる。これにより、ステップS120において、溝加工を行う。すなわち、原盤用基材100の表面に微細凹部110を形成する。すなわち、制御部72は、工具設置部40を原盤用基材100に対して相対移動させ、かつ切削工具60を振動させながら原盤用基材100を切削する切削工程を複数セット行う。さらに、制御部72は、上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように切削工程を行う。なお、制御部72は、変位測定器52b、53b等から与えられた座標情報の値が指示内容と異なる場合、何らかの異常発生処理(駆動を中止して作業者に通知する等)を行ってもよい。
ステップS130において、原盤用基材100の切削(加工)が完了する。つまり、原盤用基材100の一方の端部から他方の端部までの切削が完了する。深掘り切削工程を行う場合、さらに以下のステップS140~S160の処理を行う。ステップS140において、作業者は必要に応じて切削工具60を交換する。ステップS150において、作業者は、切削工具60の位置決めを行う。具体的には、前セットの深掘り切削工程よりも切削深さが深くなるように切削工具60の位置決めを行う。その後、作業者は、上述したステップS70~S130の処理を繰り返して行う。その後、本処理を終了する。
さらに、微細加工装置1を用いた微細加工方法の別の一例を図9Bに示すフローチャートに沿って説明する。作業者は、以下に説明する工程を行うことで、原盤を作製する。
ステップS10~S30は、上述したものと同様である。
ステップS40において、作業者は、制御システムの設定を行い、ステップS50’において、作業者は、送り軸31の送り速度の設定を行う。具体的には、作業者は、所望の微細凹凸パターンを得るために必要な情報を制御装置70に入力する。このような情報としては、例えば送り軸31の送り速度、工具設置部40の移動軌跡、切削工具60による切削の深さ、振動の方向、振動の波形、振動の周波数、及び振動の振幅等が挙げられる。例えば、制御部72は、ディスプレイに入力画面を表示する。作業者は、入力操作装置を用いて上述した情報を入力する。制御部72は、与えられた情報では上述した切削条件(1)、(2)を満たす制御を行うことができない場合、情報の修正を作業者に促してもよい。この際、制御部72は、切削条件(1)、(2)を満たすために必要な数値の例を入力画面に表示してもよい。制御部72は、送り軸31の送り速度に関する情報を送り軸31に出力する。
ステップS70、S75、S80において、制御部72は、加工ステージを駆動することで、工具設置部40のx軸方向及びz軸方向の位置をスタート位置に移動させる。すなわち、工具設置部40を原盤用基材100に対向する位置に設置する。また、制御部72は、原盤用基材100の回転軸をスタート位置に移動させる(スタート回転角度にする)。
ステップS90において、作業者は、制御システム(すなわち微細加工装置1)の運転を開始する。ステップS100において、制御装置70は、振動部50の同期運転を開始する。すなわち、制御演算部71は、送り軸31の座標情報(x座標値)をトリガとして、切削工具60のx座標値を算出する。ここで、演算制御部71は、切削工具60の振動が上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方を満たすように、切削工具60のx座標値を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。制御部72は、制御演算部71が算出した座標値に切削工具60を移動させる旨の振動制御情報を生成し、増幅部73に出力する。増幅部73は振動制御情報を増幅して振動部50に出力する。振動部50の工具振動素子52a、53aは振動制御情報に基づいて駆動する。これにより、切削工具60が送り軸31の座標に同期して振動する。
ステップS110において、制御演算部71は、送り軸31から与えられた位置情報に基づいて、工具設置部40のz座標値を算出する。ここで、演算制御部71は、上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように、工具設置部40のz座標値を算出する。制御演算部71は、算出された座標値に関する座標情報を制御部72に出力する。制御部72は、座標情報、加工プログラム、及び作業者から入力された情報に従って工具設置部40を移動させる。これにより、ステップS120において、溝加工を行う。すなわち、原盤用基材100の表面に微細凹部110を形成する。すなわち、制御部72は、工具設置部40を原盤用基材100に対して相対移動させ、かつ切削工具60を振動させながら原盤用基材100を切削する切削工程を複数セット行う。さらに、制御部72は、上述した切削条件(1)、(2)の少なくとも一方が満たされるように切削工程を行う。また、制御部72は、変位測定器52b、53b等から与えられた座標情報の値が指示内容と異なる場合、何らかの異常発生処理(駆動を中止して作業者に通知する等)を行ってもよい。
ステップS130において、原盤用基材100の切削(加工)が完了する。つまり、原盤用基材100の一方の端部から他方の端部までの切削が完了する。深掘り切削工程を行う場合、さらにステップS140~S160の処理を行う。ステップS140~S160は、上述したものと同様である。その後、本処理を終了する。
なお、切削工具60による切削距離は特に制限されない。例えば、切削距離は100km以下であってもよく、20km以下であっても良い。工具切削部62が損傷するまで切削を継続することができる。
微細凹部110の深さも特に制限されない。例えば、微細凹部110の深さは、1~200μmであってもよく、好ましくは3~30μmである。また、微細凹部110間の距離(いわゆるピッチ)も特に制限されない。例えば、微細凹部110のピッチは、5~500μmであってもよく、好ましくは10~100μmである。
<6.原盤の構成>
図10A、図10B、図10Cは、上記微細加工方法によって作製される原盤120の一例を示す。原盤120は、例えばインプリント技術に使用される転写型である。原盤120は円柱または円筒形状となっており、その周面には多数の微細凹部110が形成されている。微細凹部110の側壁110b及び底部110aの少なくとも一方は、以下の振動波形条件(1)~(4)の少なくとも1つ以上(好ましくは全て)を満たす振動波形を有する。
振動波形条件(1):振動波形が連続している。
振動波形条件(2):振動波形が複数の振動波形の合成波形となっており、かつ、複数の振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(3):原盤用基材100上に複数列の微細凹部110が形成されており、隣接する微細凹部110間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(4):原盤用基材100上に複数列の微細凹部110が形成されており、2ピッチ毎に(すなわち2周に1回)微細凹部110間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(1)は上述した切削条件(1)に対応するものである。切削条件(1)の切削で生じる誤差が許容誤差範囲内であれば、振動波形条件(1)が満たされると言える。振動波形条件(2)は、切削条件(2)を満たす深掘り切削工程に対応する。振動波形条件(3)、(4)は切削条件(2)を満たす輪切り切削パターン又は螺旋切削パターンに対応する。振動波形条件(2)~(4)における「位相が揃っている」とは、原盤120の同一のy座標に対する位相が揃っている、すなわち切削条件(2)の切削で生じる誤差が許容範囲内であることを意味する。なお、振動波形条件(4)では、隣接する微細凹部110の振動波形の位相は180°ずれることになる。図6A~図8Bは、微細凹部110の形状の例を示す。
原盤120の振動波形は振動波形条件(1)~(4)の少なくとも1つ以上を満たすので、振動波形の連続性が保たれ、欠陥の発生が抑制される。
<7.転写物の構成>
図11A、図11Bは原盤120の表面形状を転写することで作製される転写物200の一例を示す。転写物200は、転写物用基材210と、転写物用基材210の表面に形成された微細凹凸層220とを有する。微細凹凸層220には、多数の微細凹部230と、微細凹部230間に形成される微細凸部240とが形成されている。微細凹凸層220の表面形状は原盤120の表面形状の反転形状となっている。すなわち、微細凹部230の形状は微細凸部111の反転形状となっており、微細凸部240の形状は微細凹部110の反転形状となっている。図11A、図11Bに示す転写物200は、図7A、図7Bに示す原盤120を用いて作製されたものである。
微細凹部230の側壁230b及び底部230aの少なくとも一方は、以下の振動波形条件(1)~(4)の少なくとも1つ以上(好ましくは全て)を満たす振動波形を有する。
振動波形条件(1):振動波形が連続している。
振動波形条件(2):振動波形が複数の振動波形の合成波形となっており、かつ、複数の振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(3):転写物用基材210上に複数列の微細凹部230が形成されており、隣接する微細凹部230間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(4):転写物用基材210上に複数列の微細凹部230が形成されており、2ピッチ毎に微細凹部230間で振動波形の位相が揃っている。
振動波形条件(1)~(4)は原盤120の振動波形条件(1)~(4)に対応するものである。なお、転写物200の振動波形条件(2)~(4)における「位相が揃っている」とは、微細凹部230の延伸方向をy軸とした場合に、同一のy座標に対する位相が揃っていることを意味する。なお、振動波形条件(4)では、隣接する微細凹部230の振動波形の位相は180°ずれることになる。
転写物200の振動波形は振動波形条件(1)~(3)の少なくとも1つ以上を満たすので、振動波形の連続性が保たれ、欠陥の発生が抑制される。
<8.転写物の製造方法>
転写物200は、原盤120の微細凹部110を転写することで作製される。例えば、転写物用基材210上に未硬化の硬化性樹脂層を形成する。転写物用基材210の材質は転写物200の用途に応じて適宜選択されればよい。転写物用基材210の材質としては、例えばアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、塩化ビニル等が挙げられる。
硬化性樹脂の材質も転写物200の用途に応じて適宜選択されればよい。硬化性樹脂の材質としては、例えばエポキシ系硬化性樹脂、アクリル系硬化性樹脂等が挙げられる。
ついで、硬化性樹脂層に原盤120の表面を押し付ける。この状態で硬化性樹脂層を硬化させる。これにより、原盤120の表面形状を硬化性樹脂層に転写する。すなわち、転写物用基材210上に微細凹凸層220を形成する。ついで、原盤120を微細凹凸層220から引き剥がすことで、転写物200を作製する。本実施形態では、原盤120が円柱または円筒形状となっているので、いわゆるロール・ツー・ロールにより転写物200を連続的に作製することができる。
なお上記はあくまで転写物200の製造方法の一例であり、他の製造方法で作製されてもよいことはもちろんである。例えば、転写物用基材210を熱可塑性樹脂で構成しても良い。この場合、加熱により柔らかくした転写物用基材210に原盤120の表面を押し付ける。この状態で転写物用基材210を冷却することで、転写物用基材210の表面に微細凹凸層220を形成してもよい。
<1.実施例1>
つぎに、本実施形態の実施例を説明する。実施例1では、直径250mm、長さ1000mmの円柱形状の原盤用基材100を準備した。材質はS45Cとした。ついで、原盤用基材100にニッケルリンめっき処理を施すことで原盤用基材100上に被覆層を形成した。さらに、被覆層を平坦化した。平坦化のための具体的な処理は上述したとおりである。
ついで、微細加工装置1を準備した。ここで、切削工具60として工具先端部63がV形状となったダイヤモンドバイトを準備した。原盤用基材100の回転数は20min-1とし、切削工具60の振動波形はSin波形、振幅は10μm、周波数は300Hzとした。振動の方向はz軸方向とした。そして、上述した切削条件(1)、(2)を満たすように螺旋切削パターンの切削を行った。微細凹部110のピッチは70μmとした。さらに、上述した切削条件(1)、(2)を満たす深掘り切削工程を2セット行った。1セット目の切削深さと2セット目の切削深さとの差(具体的には、振動の変位の最大値同士の差)、すなわち切込み差は3μmとした。
ついで、作製された原盤120を用いて転写物を作製し、転写物の表面形状を倍率450倍のマイクロスコープ及び倍率100倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。この結果、微細凹部110には振動波形が連続して形成されており、欠陥は見受けられなかった。
<2.実施例2>
切削パターンを輪切り切削パターンとした他は実施例1と同様の試験を行った。輪切り切削パターンのピッチは実施例1と同様とした。この結果、微細凹部110には振動波形が連続して形成されており、欠陥は見受けられなかった。
<3.実施例3>
切削パターンをクロス螺旋切削パターンとした他は実施例1と同様の試験を行った。クロス螺旋切削パターンのピッチは実施例1と同様とした。この結果、微細凹部110には振動波形が連続して形成されており、欠陥は見受けられなかった。
<4.比較例1>
比較例1では、1セット目の深掘り切削工程と2セット目の深掘り切削工程との位相を45°ずらし、かつ、切込み差を0とした他は実施例1と同様の処理を行った。つまり、比較例1は、切削条件(2)を満たさない切削を行った。図12に振動波形を示す。図12の横軸は振動の位相(°)を示し、縦軸は振動の変位(z座標値+切込み差)を示す。グラフL11は1セット目の深掘り切削工程の振動波形を示し、グラフL12は2セット目の深掘り切削工程の振動波形を示す。グラフL11とグラフL12との差の最大値(以下、「深さ変動量」とも称する)Dは深さ設定値(振幅+切込み差)の25%程度である。図13のグラフL13は微細凹部110の振動波形を示す。横軸は微細凹部110の振動の位相(°)を示し、縦軸は微細凹部110の振幅を示す。なお、実施例1~3では、グラフL11、L12の位相が一致することになる。
比較例1で作製された転写物の表面形状を倍率450倍のマイクロスコープ及び倍率100倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。この結果、微細凹部110に欠陥が発見された。図21は、観察画像の例としてマイクロスコープ画像を示す。図21から明らかな通り、一部の微細凹部110から欠陥Aが発見された。
<5.比較例2>
比較例2では、1セット目の深掘り切削工程と2セット目の深掘り切削工程との位相差を90°とした他は比較例1と同様の処理を行った。比較例2では、深さ変動量Dは深さ設定値の50%となる。比較例2でも欠陥が発見された。
<6.比較例3>
比較例3では、1セット目の深掘り切削工程と2セット目の深掘り切削工程との位相差を180°とした他は比較例1と同様の処理を行った。比較例3では、深さ変動量Dは深さ設定値の100%となる。比較例3でも欠陥が発見された。
<7.比較例4>
比較例4では、1セット目の深掘り切削工程と2セット目の深掘り切削工程との位相差を10°とした他は比較例1と同様の処理を行った。比較例4では、深さ変動量Dは深さ設定値の5%となる。比較例4でも欠陥が発見された。
<8.比較例5>
比較例5では、1セット目の深掘り切削工程と2セット目の深掘り切削工程との位相差を5°とした他は比較例1と同様の処理を行った。比較例5では、深さ変動量Dは深さ設定値の3%となる。比較例5でも欠陥が発見された。
<9.比較例6>
比較例6では、切込み差を3μmとした他は比較例1と同様の処理を行った。図14に振動波形を示す。図14の横軸は振動の位相(°)を示し、縦軸は振動の変位(z座標値+切込み差)を示す。グラフL11は1セット目の深掘り切削工程の振動波形を示し、グラフL12は2セット目の深掘り切削工程の振動波形を示す。深さ変動量Dは深さ設定値の25%程度である。図15のグラフL13は微細凹部110の振動波形を示す。横軸は微細凹部110の振動の位相(°)を示し、縦軸は微細凹部110の振幅を示す。比較例6でも欠陥が発見された。
<10.比較例7>
比較例7では、切込み差を3μmとした他は比較例2と同様の処理を行った。深さ変動量Dは深さ設定値の50%程度である。比較例7でも欠陥が発見された。
<11.比較例8>
比較例8では、切込み差を3μmとした他は比較例3と同様の処理を行った。深さ変動量Dは深さ設定値の100%程度である。比較例8でも欠陥が発見された。図22に観察画像の一例としてSEM画像を示す。SEM画像から明らかな通り、比較例8では欠陥Aが発見された。
<12.比較例9>
比較例9では、切込み差を3μmとし、位相差を40°とした他は実施例1と同様の処理を行った。深さ変動量Dは深さ設定値の22%程度である。比較例9でも欠陥が発見された。
<13.比較例10>
比較例10では、切込み差を3μmとし、位相差を50°とした他は実施例1と同様の処理を行った。深さ変動量Dは深さ設定値の27%程度である。比較例10でも欠陥が発見された。
<14.比較例11>
比較例11では、振幅を3μmとし、切込み差を1.5μmとした他は比較例2と同様の処理を行った。図16に振動波形を示す。図16の横軸は振動の位相(°)を示し、縦軸は振動の変位(z座標値+切込み差)を示す。グラフL11は1セット目の深掘り切削工程の振動波形を示し、グラフL12は2セット目の深掘り切削工程の振動波形を示す。深さ変動量Dは深さ設定値の50%程度である。図17のグラフL13は微細凹部110の振動波形を示す。横軸は微細凹部110の振動の位相(°)を示し、縦軸は微細凹部110の振幅を示す。比較例11でも欠陥が発見された。
<15.比較例12>
比較例12では、振幅を3μmとし、切込み差を1.5μmとした他は比較例3と同様の処理を行った。深さ変動量Dは深さ設定値の100%程度である。比較例12でも欠陥が発見された。
<16.比較例13>
比較例13では、切削パターンを輪切り切削パターンとした他は比較例1と同様の処理を行った。比較例13でも欠陥が発見された。
<17.比較例14>
比較例14では、切削パターンを輪切り切削パターンとした他は比較例2と同様の処理を行った。比較例14でも欠陥が発見された。
<18.比較例15>
比較例15では、切削パターンを輪切り切削パターンとした他は比較例3と同様の処理を行った。比較例15でも欠陥が発見された。
<19.比較例16>
比較例16では、切削パターンを輪切り切削パターンとした。さらに、深掘り切削工程は行わず、切削条件(1)を満たさない切削を行った。具体的には、上述したケース1において、オーバーラップの長さが110μmとなり、段差が0.6μmとなるように切削を行った。切削の振動波形を図18に示す。図18の横軸はy座標値(°)を示し、縦軸は振動の変位(μm)を示す。グラフL4は始点近傍の振動波形を示し、グラフL5は終点近傍の振動波形を示す。距離D2は段差の深さを示し、距離D3はオーバーラップの長さを示す。比較例16では、始点と終点との境界部分において欠陥が発見された。
<20.実施例4>
オーバーラップの長さを6.2μm、段差を0.003μmとした他は比較例16と同様の処理を行った。この結果、欠陥は発見されなかった。
<21.比較例17>
比較例17では、切削パターンを輪切り切削パターンとした。さらに、深掘り切削工程は行わず、切削条件(1)を満たさない切削を行った。具体的には、上述したケース2において、平坦部の長さが0.55μmとなるように切削を行った。切削の振動波形を図19に示す。図19の横軸はy座標値(°)を示し、縦軸は振動の変位(μm)を示す。グラフL6は始点近傍の振動波形を示し、グラフL7は終点近傍の振動波形を示す。距離D4は平坦部の長さ(y軸方向の長さ)を示す。比較例17では、始点と終点との境界部分において欠陥が発見された。
<22.実施例5>
平坦部の長さを0.2μmとした他は比較例17と同様の処理を行った。この結果、欠陥は発見されなかった。
<23.実施例6>
切削パターンをスラスト切削パターンとした他は実施例1と同様の試験を行った。なお、実施例6では、切削工具60を、送り軸31の座標に同期させて振動させた。出力される切削工具60のx座標値は、任意波形発生器を用いて生成させた。また、原盤用基材100を回転させずに加工を開始するとともに、送り軸31のエンコーダの1個目のトリガを検出したら、任意波形を発生させて、工具設置部40を駆動させるようにした。この結果、微細凹部110には振動波形が連続して形成されており、欠陥は発見されなかった。
<24.実施例7>
切削パターンを斜めスラスト切削パターンとした他は実施例6と同様の試験を行った。なお、実施例7の斜めスラスト切削パターンでは、原盤用基材100の軸方向に対する微細凹部110の傾斜角度を15°とした。この結果、微細凹部110には振動波形が連続して形成されており、欠陥は発見されなかった。
以上の結果を表1、2にまとめて示す。
Figure 0007337524000001
Figure 0007337524000002
切削条件(1)、(2)を満たす実施例では欠陥が発見されなかったのに対し、切削条件(1)、(2)を満たさない比較例1~17では、欠陥が発見された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、上記の実施形態では切削工具60の振動の波形はSin波形となるが、これに限定されず、任意の振動波形であってもよい。例えば、振動の波形は台形波等であってもよい。
また、例えば、上記実施形態では、原盤用基材100を円柱または円筒形状としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、原盤用基材100は平板状であってもよい。この場合、y軸は微細凹部の長さ方向とすればよい。また、切削対称を原盤用基材としたが、他の基材の切削に本実施形態を適用してもよい。
1 微細加工装置;10 主回転装置;12 従動回転装置;20 切削装置;30 加工ステージ;31 送り軸;40 工具設置部;41 ケース収納用凹部;50 振動部;51 工具収納ケース;52a、53a 工具振動素子;52b、53b 変位測定器;60 切削工具;61 工具本体;62 工具切削部;63 工具先端部;70 制御装置;71 制御演算部;72 制御部;73 増幅部;100 原盤用基材;110 微細凹部;110a 底部;110b 側壁;111 微細凸部;120 原盤;200 転写物;210 転写物用基材;220 微細凹凸層;230 微細凹部;230a 底部;230b 側壁;240 微細凸部

Claims (4)

  1. 工具設置部と、
    前記工具設置部に設けられ、円柱または円筒形状である基材に微細凹部を形成可能な切削工具と、
    前記基材を前記基材の中心軸を回転軸として回転させる基材駆動部と、
    前記工具設置部を前記回転軸に平行な方向に送り軸に沿って移動させることが可能な工具移動部と、
    前記工具設置部に設けられ、前記切削工具を前記基材の深さ方向及び面方向のうち少なくとも一方に振動させることが可能な振動部と、
    前記工具設置部を前記基材に対して相対移動させ、かつ前記切削工具を振動させながら前記基材を切削する切削工程を複数セット行う制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記振動部による切削工具の振動を、前記基材駆動部による前記基材の回転、または、前記工具移動部の送り軸の座標と同期させて切削工程を行い、
    前記制御部は、以下の切削条件(1)、(2)の両方が満たされるように前記切削工程を行うことを特徴とする、微細加工装置。
    切削条件(1):各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている。
    切削条件(2):各セット間で振動の位相が揃っている。
  2. 前記切削工程は、同一箇所を繰り返し切削し、かつ前セットの切削深さよりも現セットの切削深さを深くする深掘り切削工程を含むことを特徴とする、請求項1記載の微細加工装置。
  3. 前記切削工程は、前セットの切削位置に隣接する位置で現セットの切削を行う並列切削工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の微細加工装置。
  4. 請求項1~の何れか1項に記載の微細加工装置を用いた微細加工方法であって、
    前記切削工具を前記工具設置部に設ける工程と、
    前記工具設置部を前記基材に対向する位置に設置する工程と、
    前記工具設置部を前記基材に対して相対移動させ、かつ前記切削工具を振動させながら前記基材を切削する切削工程を複数セット行う工程と、を含み、
    前記切削工程は、前記振動部による切削工具の振動を、前記基材駆動部による前記基材の回転、または、前記工具移動部の送り軸の座標と同期させて行われ、
    以下の切削条件(1)、(2)の両方が満たされるように前記切削工程が行なわれることを特徴とする、微細加工方法。
    切削条件(1):各セットの始点と終点で振動の位相が揃っている。
    切削条件(2):各セット間で振動の位相が揃っている。
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