以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の繊維処理剤は、カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩を含む。
本発明において有機アンモニウム塩は、窒素原子をイオン中心とする有機カチオンまたはNH4
+、および/または有機アニオンを含む。
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、特に限定されるものではないが、窒素原子をイオン中心とするカチオン、例えば、アンモニウムカチオン(有機基で置換された有機アンモニウムカチオンNR4
+(Rは少なくとも1つが有機基でその他は水素原子)及びNH4
+)や、アンモニウムカチオンの他に、カチオンの窒素原子が有機基で置換された有機アンモニウム塩のカチオンとして、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、イソキノリニウムカチオン、オキサゾリニウムカチオン、チアゾリニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、グアニジウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン、トリアジニウムカチオン、キノリニウムカチオン、インドリニウムカチオン、キノキサリニウムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、カチオン性アミノ酸等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。なお、ここで例示したカチオンは、記載したとおりの基本構造のカチオンの他、水素結合性官能基等の置換基を含むものを包含する総称として示している。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンに水素結合性官能基を有することが好ましい。
水素結合性官能基としては、特に限定されないが、例えば、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基、窒素に直接結合した水素原子等が挙げられる。
酸素含有基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボキシ基、カルボキシレート基、尿素基、ウレタン基、アミド基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバミン酸基、カルバメート基等が挙げられる。
窒素含有基としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
硫黄含有基としては、特に限定されないが、例えば、硫酸基(-O-S(=O)2-O-)、スルホニル基(-S(=O)2O-)、スルホン酸基(-S(=O)2-)、メルカプト基(-SH)、チオエーテル基(-S-)、チオカルボニル基(-C(=S)-)、チオ尿素基(-N-C(=S)-N-)、チオカルボキシ基(-C(=S)OH)、チオカルボキシレート基(-C(=S)O-)、ジチオカルボキシ基(-C(=S)SH)、ジチオカルボキシレート基(-C(=S)S-)等が挙げられる。
リン含有基としては、特に限定されないが、例えば、リン酸基(-O-P(=O)(-O-)-O-)、ホスホン酸基(-P(=O)(-O-)-O-)、ホスフィン酸基(-P(=O)-O-)、亜リン酸基(-O-P(-O-)-O-)、亜ホスホン酸基(-P(-O-)-O-)、亜ホスフィン酸基(-P-O-)ピロホスフェート基[(-O-P(=O)(-O-))2―O-]等が挙げられる。
これらの中でも、カチオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、エステル基、エーテル基、窒素に直接結合した水素原子が好ましい。これらの中でも、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、エーテル基、窒素に直接結合した水素原子がより好ましく、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、窒素に直接結合した水素原子がさらに好ましく、水酸基、窒素に直接結合した水素原子が特に好ましい。
また、カチオンに水素結合性官能基を持つアルキル基を有しても良く、水素結合性官能基が結合したアルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基、アルキルエステル基等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキル基は、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
上記カルボキシアルキル基は、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
ここで、アルキル部位が酸素原子を含む場合、該酸素原子は、例えば、アルキル部位にエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を形成する。したがって本発明において「アルキル部位が酸素原子を含む」とは、酸素原子を含む原子団として窒素原子等のヘテロ原子をも含む基によってアルキル部位が中断もしくは水素原子が置換される場合を包含する。
上記ヒドロキシアルキル基としては、モノヒドロキシアルキル基、ポリヒドロキシアルキル基を挙げることができ、これらの具体例としては、アルキル部位が酸素原子を含まないヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、アルコキシヒドロキシアルキル基、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル基等が挙げられるが、それぞれのアルキル部位に酸素原子を含んでも良い。
モノヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシプロパン-2-イル基、2-ヒドロキシプロパン-2-イル基、1-ヒドロキシブタン-1-イル基、2-ヒドロキシブタン-1-イル基、3-ヒドロキシブタン-1-イル基、4-ヒドロキシブタン-1-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシブタン-2-イル基、2-ヒドロキシブタン-2-イル基、3-ヒドロキシブタン-2-イル基、4-ヒドロキシブタン-2-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-ヒドロキシペンタン-1-イル基、6-ヒドロキシヘキサン-1-イル基、7-ヒドロキシヘプタン-1-イル基、8-ヒドロキシオクタン-1-イル基、9-ヒドロキシノナン-1-イル基、10-ヒドロキシデカン-1-イル基等が挙げられる。モノヒドロキシアルキル基は、炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~3のものがさらに好ましい。
ポリヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、1,2-ジヒドロキシエチル基等のジヒドロキシエチル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基等のジヒドロキシプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基等のジヒドロキシプロパン-2-イル基;トリヒドロキシプロパン-1-イル基;トリヒドロキシプロパン-2-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基等のジヒドロキシブタン-1-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基等のトリヒドロキシブタン-1-イル基;テトラヒドロキシブタン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基等のジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;トリヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;テトラヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基等のジヒドロキシブタン-2-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基等のトリヒドロキシブタン-2-イル基;テトラヒドロキシブタン-2-イル基;1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基;ジ、トリ、テトラ、又はペンタヒドロキシペンタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、またはヘキサヒドロキシヘキサン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、またはヘプタヒドロキシヘプタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシオクタン-1-イル基等が挙げられる。ポリヒドロキシアルキル基は、水酸基を2~6個有する炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。また、次式で表わされる分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基は好ましいものとして例示される。
(式中、R11は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又は炭素数1~4の直鎖状のモノヒドロキシアルキル基を示す。)
以上のポリヒドロキシアルキル基の中でも、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基、ペンタヒドロキシヘキサン-1-イル基が好ましい。
上記カルボキシアルキル基としては、モノカルボキシアルキル基、ポリカルボキシアルキル基を挙げることができ、これらの具体例としては、上記において例示したモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基をカルボキシ基に置換したもの(アルキル部位に酸素原子を含んでも良い)が挙げられる。
上記モノカルボキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロパン-1-イル基、2-カルボキシプロパン-1-イル基、3-カルボキシプロパン-1-イル基、1-カルボキシプロパン-2-イル基、2-カルボキシプロパン-2-イル基、1-カルボキシブタン-1-イル基、2-カルボキシブタン-1-イル基、3-カルボキシブタン-1-イル基、4-カルボキシブタン-1-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-カルボキシブタン-2-イル基、2-カルボキシブタン-2-イル基、3-カルボキシブタン-2-イル基、4-カルボキシブタン-2-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-カルボキシペンタン-1-イル基、6-カルボキシヘキサン-1-イル基、7-カルボキシヘプタン-1-イル基、8-カルボキシオクタン-1-イル基、9-カルボキシノナン-1-イル基、10-カルボキシデカン-1-イル基等が挙げられる。カルボキシアルキル基は、炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましい。
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、上記において例示したジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基の一部をカルボキシ基に置換したもの(アルキル部位に酸素原子を含んでも良い)が挙げられる。水酸基およびカルボキシ基を各々1個有するモノヒドロキシカルボキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)、1-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(セリン)、2-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(トレオニン)等が挙げられる。ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)が好ましい。
上記アルキルエステル基としては、特に限定されないが、例えば、上記において例示したカルボキシアルキル基のカルボキシ基をエステル化したものが挙げられる。エステル基を1固有するモノアルキルエステル基としては、例えば、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)、1-エトキシエタン-2-イル基などが挙げられる。アルキルエステル基としては、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)が好ましい。
カチオンにおける水素結合性官能基以外の官能基としては、例えば、アルキル基を挙げることができる。アルキル基は、炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状が好ましく、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状が更に好ましく、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐状がさらに好ましい。アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロパン-1-イル基、プロパン-2-イル基、ブタン-1-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ペンタン-1-イル基、1-メチルブタン-1-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、3-メチルブタン-1-イル基、1-エチルブタン-1-イル基、1,1-ジメチルプロパン-1-イル基、1,2-ジメチルプロパン-1-イル基、2,2-ジメチルプロパン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。
本発明の効果を得る点において、本発明に使用される有機アンモニウム塩のカチオンに1個以上の水素結合性官能基を持つアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子を有するすることが好ましい。この場合、カチオンにおける官能基を導入可能な部位(窒素部位や、窒素と共に環を構成する炭素部位などの、基本骨格となる化学構造に含まれる原子)のうちいずれかが水素結合性官能基を持つアルキル基で置換されるとともに、それ以外の部位は、アルキル基で置換されていてもよい。上記水素結合性官能基は、水酸基が好ましい。
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、前記式(I)で表されるアンモニウムカチオンが特に好ましい。
好ましい態様において、nは1~4の整数である。nが1以上であると、官能基R1が存在することで、本発明の効果、すなわち紙類等の繊維製品にやわらかさやしっとり感を付与しつつ、同時に厚み感やしっかり感も付与することや、品質(やわらかさとしっかり感)の湿度環境依存性を低減することに適している。
この観点より、特に好ましい態様では、R1が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、モノカルボキシアルキル基、モノヒドロキシカルボキシアルキル基もしくはモノアルキルエステル基(エステル基を1個有するアルキルエステル基)であり(好ましくは炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基、より好ましくは炭素数1~6で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基)、nが1~4の整数である。
その中でも好ましい態様では、R2が水素原子であり、好ましい別の態様では、R2が炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4)である。R2がアルキル基である場合、一定のしっかり感を持ちつつ、やわらかさに優れた繊維処理剤が得られる傾向がある。
特に好ましい別の態様では、R1のうち少なくとも1つが水酸基を2個以上(好ましくは2~8、より好ましくは2~5)有する炭素数1~10(好ましくは1~6)で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基であり、nが1~4の整数である。その中でも好ましい態様では、R2は水素原子である。R1がポリヒドロキシアルキル基である場合、水酸基をより多く有しているため、しっかり感がより向上する傾向がある。
本発明に使用される有機アンモニウム塩のアニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、ホウ素系アニオン、フッ素系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸系アニオン等が挙げられ、それらの中でも硫黄系アニオン、リン系アニオン、カルボン酸系アニオンが好ましい。
前記ハロゲン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、クロリドイオン、ブロミドイオン、ヨードイオン等が挙げられる。
前記硫黄系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、スルホナートアニオン、水素スルホナートアニオン、アルキルスルホナートアニオン(例えば、メタンスルホナート、エチルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホナート、スチレンスルホナート、3-スルホプロピルメタクリレートアニオン、3-スルホプロピルアクリレート等)、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、アルキルスルファートアニオン(例えば、メチルスルファートアニオン、エチルスルファートアニオン、ブチルスルファートアニオン、オクチルスルファートアニオン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファートアニオン等)等が挙げられる。
前記リン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、二水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、水素ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン(例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファートアニオン、ジブチルホスファートアニオン等)、アルキルホスホナートアニオン(例えば、メチルホスホナートアニオン、エチルホスホナートアニオン、プロピルホスホナートアニオン、ブチルホスホナートアニオン、メチルメチルホスホナートアニオン等)、アルキルホスフィナートアニオン、ヘキサアルキルホスファートアニオン等が挙げられる。
前記シアン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラシアノボレートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等が挙げられる。
前記ホウ素系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラフルオロボレートアニオン、ビスオキサレートボラートアニオン、テトラフェニルボレートアニオンのようなテトラアルキルボレートアニオン等が挙げられる。
前記フッ素系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド等)、パーフルオロアルキルスルホナートアニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフラートアニオン、パーフルオロオクタンスルホーナートアニオン等)、フルオロホスファートアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスファートアニオン、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファートアニオン等)、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン等)、フルオロハイドロジェネートアニオン等が挙げられる。
前記窒素酸化物系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸アニオン、亜硝酸アニオンが挙げられる。
前記カルボン酸系アニオンは、分子中に、少なくとも1個以上のカルボン酸アニオン(-COO-)を持つ有機酸アニオンであり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を持つ官能基を含んでいても良い。特に限定されないが、カルボン酸系アニオンとしては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸アニオン、不飽和脂肪族カルボン酸アニオン、脂環式カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオン、カルボニルカルボン酸アニオン、アルキルエーテルカルボン酸アニオン、ハロゲンカルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン等が挙げられる。(以下に挙げるカルボン酸アニオンの炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む)
前記飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数1~22が好ましい。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記不飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数3~22が好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、マレイン酸、フマル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記脂環式カルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、シクロヘキサン環骨格を有する脂環式カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記芳香族カルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環又は複数の環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり炭素数6~20が好ましい。中でも、ベンゼン環骨格を有する芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、安息香酸、ケイヒ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数2~24が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する炭素数2~7の飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、セレブロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数3~22が好ましい。具体的には、例えば、リシノール酸、リシノレイン酸、リシネライジン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数4~20が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する6員環骨格の脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、シキミ酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。また、水酸基を有する環状ラクトンからプロトンが解離したアニオンも好ましく使用でき、具体的には、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸等からプロトン解離したアニオンが挙げられる。
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環あるいは複数の環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、1~3個の水酸基を有するベンゼン環骨格の芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記カルボニルカルボン酸アニオンは、分子内にカルボニル基を有する炭素数3~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のカルボニル基を有する炭素数3~7のカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3((CH2)pCO(CH2)q)COO-(p及びqは0~2の整数を示す。)で表わされるカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、ピルビン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記アルキルエーテルカルボン酸アニオンは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル カルボン酸アニオンを含む、分子内にエーテル基を有する炭素数2~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のエーテル基を有する炭素数2~12のアルキルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3(CH2)rO(CH2)sCOO-(r及びsは0~4の整数を示す。)で表わされるアルキルエーテルカルボン酸アニオン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酪酸、エトキシ酪酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記ハロゲンカルボン酸アニオンとしては、炭素数2~22のハロゲンカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタクロロプロピオン酸、ペンタブロモプロピオン酸、パーフルオロノナン酸、パークロロノナン酸、パーブロモノナン酸等のフッ素置換のハロゲンカルボン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
前記アミノ酸アニオンとしては、特に限定されないが、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、サルコシン、アミノ酪酸、メチルロイシン、アミノカプリル酸、アミノヘキサン酸、ノルバリン、アミノ吉草酸、アミノイソ酪酸、チロキシン、クレアチン、オルニチン、オパイン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン、デスモシン等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、アニオンに水素結合性官能基を有することが好ましく、官能基としては酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合可能な基が含まれ、上記の硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオンが好ましい。
アニオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基が好ましく、中でも水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基がより好ましい。また、本発明の効果をより高めるためには、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンとアニオンの両方に水素結合性官能基を有する有機塩が特に望ましい。
本発明の繊維処理剤に使用される有機アンモニウム塩は、安全性の観点からカチオン、アニオンのいずれかもしくは両方に、天然系化合物を使用することが好ましい。例えば、カチオンとしては、コリンカチオン、アセチルコリンカチオン、カルニチンカチオン等が挙げられ、アニオンとしては、クエン酸アニオン、乳酸アニオン、リンゴ酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、グリコール酸アニオン、酒石酸アニオン、キナ酸アニオン、酢酸アニオン、酪酸アニオン、カプロン酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、コハク酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、アラニンアニオン、グリシンアニオン等が挙げられ、有機アンモニウム塩としては、例えば、コリンクエン酸塩、コリン乳酸塩、コリンリンゴ酸塩、コリンアスコルビン酸塩、コリングリコール酸塩、コリン酒石酸塩、コリンキナ酸塩、コリン酢酸塩、コリン酪酸塩、コリンカプロン酸塩、コリンカプリル酸塩、コリンカプリン酸塩、コリンコハク酸塩、コリンオレイン酸塩、コリンリノール酸塩、コリンアラニン塩、コリングリシン塩を始めとするコリンアミノ酸塩、アセチルコリンクエン酸塩、アセチルコリン乳酸塩、アセチルコリンリンゴ酸塩、アセチルコリンアスコルビン酸塩、アセチルコリングリコール酸塩、アセチルコリン酒石酸塩、アセチルコリンキナ酸塩、アセチルコリン酢酸塩、アセチルコリンカプロン酸塩、アセチルコリンカプリル酸塩、アセチルコリンカプリン酸塩、アセチルコリンコハク酸塩、アセチルコリンオレイン酸塩、アセチルコリンリノール酸塩、アセチルコリンアラニン塩、アセチルコリングリシン塩を始めとするアセチルコリンアミノ酸塩、カルニチンクエン酸塩、カルニチン乳酸塩、カルニチンリンゴ酸塩、カルニチンアスコルビン酸塩、カルニチングリコール酸塩、カルニチン酒石酸塩、カルニチンキナ酸塩、カルニチン酢酸塩、カルニチン酪酸塩、カルニチンカプロン酸塩、カルニチンカプリル酸塩、カルニチンカプリン酸塩、カルニチンコハク酸塩、カルニチンオレイン酸塩、カルニチンリノール酸塩、カルニチンアラニン塩、カルニチングリシン塩を始めとするカルニチンアミノ酸塩等が挙げられる。
安全性の点において、カチオンがモノヒドロキシアルキルを有する場合、トリエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリエタノールアンモニウムカチオンが好ましい。
また、安全性、使用上の観点から、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、医薬部外品原料規格(外原規)、日本薬局方(日局)、日本薬局方外医薬部外品規格(局外規)、医薬品添加物規格(薬添規)、食品添加物公定書(食添)に記載された化合物を原料に用いることが好ましく、カチオン、アニオンいずれかもしくはの両方の原料が外原規、日局、局外規、薬添規、食添に記載された有機アンモニウム塩、および外原規に記載された有機アンモニウム塩を用いることがより好ましい。特に限定されないが、例えば、カチオンとしてはモノエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオン、トリエタノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、アニオンとしては酢酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、パルミチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、乳酸アニオン、グリコール酸アニオン、コハク酸アニオン、クエン酸アニオン、クロリドアニオン、フマル酸アニオン、リン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン等が挙げられる。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、本発明の効果を発揮する点から、カチオンとアニオンの両方に水素結合性官能基を有する有機塩が特に望ましい。
本発明の繊維処理剤は、有機アンモニウム塩が、無水状態(無水物)であってもよく、空気中の水分を吸収した水和物であってもよい。水和物とは、化合物を空気中25℃で放置した時、吸水し、その水分率が飽和状態となった化合物をいう。空気中25℃で放置した時、吸水しない化合物は、水和物が無く、無水物である。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、水和物であると、水和物中の水分の蒸発が抑制され、長期間保水・保湿の効果が持続する。そのため、本発明に使用される有機アンモニウム塩に、水和水を超える水を溶解し空気中に放置して水の減少を観察した場合、水和水の蒸発が抑制されるため、水分減少率が経時で減少する。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、25℃で液体、固体のいずれであってもよいが、本発明の効果を発揮する点から、無水物および水和物が、25℃で液体であることが好ましい。25℃で液体であると、紙類等の繊維製品にやわらかさやしっとり感を付与しつつ、同時に厚み感やしっかり感も付与することができ、紙類等の繊維製品の品質(やわらかさとしっかり感)の湿度環境依存性を低減できるとともに、特に、やわらかさの維持や、一定量以上添加しても固さがでにくい点に優れている。また、無水物および水和物が25℃で液体の場合、いずれの濃度でも、例えば、塗布面の透明性が高く、外観に優れた塗布面が得られる。また、これら液体の有機アンモニウム塩の無水物、水和物および希釈物は、有機アンモニウム塩の結晶が析出したり、凝集して固化したりする等の使用上の問題が生じない。本発明の繊維処理剤は、塩構造を有する有機アンモニウム塩を含むことから帯電防止効果を付与することができ、帯電防止(静電気防止)が可能となる。さらに、有機アンモニウム塩が、使用時に、液体の場合、塗布面に、まんべんなく(均一に)コーティングされるため帯電防止効果は向上し、その有機アンモニウム塩の融点(凝固点)は好ましくは25℃未満、より好ましくは-5℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。25℃で液体であると、他の添加剤と使用する場合、溶媒、基剤として使用可能である。また、繊維製品への浸透性に優れる。本発明に使用される有機アンモニウム塩の融点(凝固点)は好ましくは25℃未満、より好ましくは-5℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、低湿度環境下においても揮発せず、残存して水分を長期に保持し、長期間保水・保湿効果を維持する観点から好ましい。保水・保湿の効果を繊維製品に付与する点において、繊維製品の表面がマイナス電荷を帯びている場合、本発明に使用される有機アンモニウム塩のカチオンが相互作用して、長時間にわたり繊維製品の表面に固定化することが可能である。
また、繊維製品の表面に、本発明に使用される有機アンモニウム塩が有する例えば酸素含有基、窒素含有基等、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合性官能基と相互作用、結合する官能基を有する場合、カチオンおよび/またはアニオンに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩は、繊維製品に良好に長時間固定化することが可能である。
本発明の繊維処理剤に使用される有機アンモニウム塩は、親水性に優れ、分子サイズが小さく、浸透圧が高いことから例えば、繊維製品への浸透性に優れる。繊維製品は主に表面がマイナスに帯電しているため、本発明の繊維処理剤に使用される有機アンモニウム塩は、吸着しやすく好適である。
紙等の植物性繊維に対して、本発明の繊維処理剤に使用される水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩は、繊維の水酸基に対して水素結合するため、保持性、浸透性に優れ有用である。さらに、紙の表面はマイナスに帯電しているため、本発明の繊維処理剤に使用される有機アンモニウム塩は、吸着しやすく好適である。
本発明の繊維処理剤は、保水性が高く不揮発性のため、バリア性に優れ、長期間乾燥を防ぐことが可能である。
本発明の繊維処理剤は、以上に説明した有機アンモニウム塩やその水和物であってもよいが、この有機アンモニウム塩を含む組成物であってもよい。組成物の態様は特に限定されないが、例えば、本発明に使用される有機アンモニウム塩を水や溶媒等に溶解または分散したもの等が挙げられる。
溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、アセトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル等が挙げられ、これらは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また組成物は添加剤を含んでもよく、特に限定されないが、例えば、pH調整剤、顔料、樹脂粒子、界面活性剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、酸化防止剤、昆虫忌避剤等の成分が挙げられる。
本発明に使用される有機アンモニウム塩のうち室温で液体のものは、他の組成物や上記添加剤の溶媒、媒体としても機能する。
本発明の繊維処理剤は、本発明に使用される有機アンモニウム塩を予め製造した後に水や溶媒、他の成分と混合して組成物とする他に、カチオン、アニオンの原料となるそれぞれの化合物を水や溶媒、他の成分と混合して組成物としてもよい。
本発明の繊維処理剤は、各種の繊維製品、例えば、紙類、不織布、織物、編物等に用いることができる。繊維製品は、各種の形状であってよいが、本発明の効果を発揮する点から、シート状が好ましい。本発明の繊維処理剤は、このような繊維製品にやわらかさやしっとり感を付与しつつ、同時に厚み感やしっかり感も付与することができ、繊維製品の品質(やわらかさとしっかり感)の湿度環境依存性を低減できる。
繊維は天然でも合成でもよいが、本発明の効果を発揮する点から、水素結合性の官能基を有する繊維、例えば、セルロースまたはその誘導体の繊維、パルプ、木綿、毛、生糸、麻、キュプラ、レーヨン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維等が好ましい。
本発明の繊維処理剤は、本発明の効果を発揮する点から、繊維を処理する基剤として用いることができる。ここで繊維を処理する組成物における基剤としての前記有機アンモニウム塩の含有量は、水を除く全量に対して30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。なお、繊維を処理する組成物の配合成分は有効分を基準とし、かつ前記のとおり水分を除く値を示している。
本発明の繊維処理剤で繊維を処理する際には、本発明の効果を発揮する点から、本発明の繊維処理剤における前記有機アンモニウム塩の量が、処理する繊維を基準として2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。特に、紙類処理剤としては15質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
本発明の繊維処理剤は、繊維処理剤が、紙類処理剤であることが好ましい。特に、ローションティッシュ用薬剤として好適に用いることができる。
本発明の紙類処理剤には、本発明に使用される有機アンモニウム塩の他、保湿剤等の他の成分を配合することができる。
保湿剤としては、多価アルコールを用いることができる。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリンエーテル、イソプレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、糖アルコール類や糖類であってもよく、糖アルコール類としては、例えば、ソルビトール、イノシトール、グルコシルトレハロース、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、フルクトース、オリゴ糖アルコール、マルチトール、還元パラチノース、還元水飴、還元澱粉加水分解物等が挙げられる。糖類としては、例えば、果糖、ブドウ糖、乳糖、キシロース、プシコース、麦芽糖、水飴、オリゴ糖、マルトース、トレハロース、ラクトース、パラチニット、ショ糖、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ステビア、甘草、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の紙類処理剤において、保湿剤としては、多価アルコール以外の成分を多価アルコールと併用してもよい。このような保湿剤としては、例えば、アミノ酸類、吸湿性を有するアルカリ類・酸類とそれらの塩類が挙げられる。アミノ酸類としては、例えば、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファン等が挙げられる。吸湿性を有するアルカリ類・酸類とそれらの塩類としては、例えば、パンテテイン-S-スルホン酸塩、トリメチルグリシン、ベタイン、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸塩、ピロリン酸カリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの保湿剤の中でも、グリセリンが好ましい。保湿剤を使用する場合、本発明の効果を発揮する点から、本発明の繊維処理剤における前記有機アンモニウム塩の含有量は、保湿剤との合計量に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
本発明において、紙類処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記以外の他の成分を原料として添加することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、水、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、油性成分、増粘剤、防カビ剤、防腐剤、消泡剤、香料、色素類、pH調整剤、エキス類、抗酸化剤、抗炎症剤、無機鉱物、無機塩、水溶性高分子等が挙げられる。
本発明の紙類処理剤は、常法に従って各原料を均一に混合することによって製造することができ、例えば、各原料が溶解する温度で撹拌混合することにより得ることができる。
本発明の紙類処理剤は、溶融している状態でも、可溶化している状態でも、乳化している状態でも、分散している状態でもよい。
紙類としては、例えば、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、フェイシャルティッシュ、ポケットティッシュ、紙ハンカチ、紙タオル等が挙げられる。
紙類処理剤で紙類を処理する方法としては、例えば、紙類に塗布する方法等が挙げられる。紙類に塗布する方法としては、例えば、転写、噴霧等が挙げられる。これらの方法で紙類に塗布する方式としては、例えば、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式、スプレー方式、ローターダンプニング方式等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1~表4に示す化合物は以下の方法で合成、入手した。
化合物No.1~4、6~8、10、11:特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物No.5、9:特開2012-031137号公報に記載の方法で合成した。
化合物No.12:特開2016-041682号公報に記載の方法で合成した。
化合物No.13:乳酸アンモニウム(株式会社武蔵野化学研究所製)
化合物No.14:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(富士フィルム和光純薬株式会社製)
化合物No.15:乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)
化合物No.16:リン酸(関東化学株式会社製)
化合物No.17:グリセリン(和光純薬工業株式会社製)
(1)水和物の有無、n水和物、25℃の外観評価、凝固点
表1に記載の水和物の有無、n水和物(水和水の数)、25℃の外観評価、凝固点は次の方法で行った。水分量はカールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック製KF-200)にて測定した。
水和物の有無については、各化合物を空気中25℃で放置した時、吸水し、その水分率が飽和状態となった化合物を水和物とした。一方で、吸水しない化合物を無水物とした。水和物の水和水の数は、飽和後の水分率と化合物の分子量より算出した。25℃の外観評価(液体もしくは固体)については、無水物及び水和物は、空気中25℃放置後に外観を確認した。さらに、水和物の無水状態の外観については、吸水飽和した化合物を60℃で減圧乾燥し、無水物とした後、外観を確認した。凝固点は、水和物となるものは水和物、水和物とならないものは無水物を恒温器(福島工業製FMU-133I)に一定期間静置し、結晶の有無を確認する方法で評価した。
評価の結果を表1に示す。
(2)保水性試験(水分減少率)
化合物の20wt%水溶液を調製し、カールフィッシャー水分計で水分率が20.0wt%であることを確認した(試験前水分率A)。それらのサンプル1.0gをスクリュー管に加え蓋をしない状態で、40℃25%RHに設定した恒温恒湿器(東京理化器械株式会社製KCL-2000W)中に、24時間静置した。24時間後の水分率を再度、測定し(試験後水分率B)、下記式を用いて、水分減少率を算出し、保水性を評価した。
試験前水分率A(%)
試験後水分率B(%)
水分減少率(%)=[(A(%)-B(%))/A(%)]×100
評価の結果を表2に示す。
(3)繊維処理剤で処理した紙の評価
やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持について、試験機器を用いたB値、2HB値と、パネルによる官能評価により評価した。
[やわらかさ(B値)]
各物質が紙の質量に対して約20wt%±3wt%塗布された塗布紙を作製し、KES力学特性の物性値によって評価した。塗布紙は25℃、40%R.H.で一日調湿し、測定に供した。
試験機器として純曲げ試験機FB-2-S(カトーテック(株))を用い、試料2枚(1組)、10×10cmの塗布紙の曲げた時のかたさ、回復性を測定し、曲げ剛性(B値)の値を得た。B値から以下の基準で評価した。
評価基準
◎:B値が0.068未満
○:B値が0.068以上0.12未満
×:B値が0.12以上
[しっかり感(2HB値)]
各物質が紙の質量に対して約20wt%±3wt%塗布された塗布紙を作製し、KES力学特性の物性値によって評価した。塗布紙は25℃、40%R.H.で一日調湿し、測定に供した。
試験機器として純曲げ試験機FB-2-S(カトーテック(株))を用い、試料2枚(1組)、10×10cmの塗布紙の曲げた時のかたさ、回復性を測定し、曲げヒステリシス(2HB)の値を得た。2HB値から以下の基準で評価した。
評価基準
◎:2HB値が0.112以上
○:2HB値が0.100より大きく0.112未満
×:2HB値が0.100以下
[やわらかさの維持(水分減少率)]
評価基準
◎:水分減少率が8.0%未満
○:水分減少率が8.0%以上12.0%未満
×:水分減少率が12.0%以上
[総合評価]
上記の各評価に基づき以下の基準で総合評価を行った。
評価基準
◎+:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が3つ
◎:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が2つ、かつ△や×がない
○:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が1つ、かつ△や×がない、またはすべて○、かつ×や△がない
×:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で×がある
[やわらかさ(官能評価)]
上記のB値、2HB値の測定に用いた塗布紙と同様に作製した塗布紙を、熟練した10名のパネルにより、官能評価を行った。処理後のサンプルについて、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、6名以上
○:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、4名以上6名未満
×:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、4名未満
[しっかり感(官能評価)]
上記のB値、2HB値の測定に用いた塗布紙と同様に作製した塗布紙を、熟練した10名のパネルにより、官能評価を行った。処理後のサンプルについて、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:厚みがあって、しっかりしていると回答したパネルが10名中、6名以上
○:厚みがあって、しっかりしていると回答したパネルが10名中、4名以上6名未満
×:厚みがあって、しっかりしていると回答したパネルが10名中、4名未満
[やわらかさの維持(官能評価)]
上記のB値、2HB値の測定に用いた塗布紙と同様に作製した塗布紙を、熟練した10名のパネルにより、官能評価を行った。処理後1週間を経過したサンプルについて、以下の基準で評価した
評価基準
◎:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、6名以上
○:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、4名以上6名未満
×:やわらかく、しっとりしていると回答したパネルが10名中、4名未満
評価の結果を表3に示す。
(4)繊維処理剤で処理した布の評価
ウールのニットの質量に対し、各試料が5~10%付着しているサンプルを使用し、官能評価を実施した。サンプルは試料を0.25~1%含有した処理液(40~50℃)に10~20分浸漬し、所定量になる様処理液をしぼり、80℃で乾燥させて作製した。以下の官能評価は熟練した10名のパネルにより行った。
[やわらかさ]
処理後のサンプルについて、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:やわらかいと回答したパネルが10名中、6名以上
○:やわらかいと回答したパネルが10名中、4名以上6名未満
×:やわらかいと回答したパネルが10名中、4名未満
[型崩れなさ]
処理後のサンプルについて、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:やわらかいが型崩れしにくいと回答したパネルが10名中、6名以上
○:やわらかいが型崩れしにくいと回答したパネルが10名中、4名以上6名未満
×:やわらかいが型崩れしにくいと回答したパネルが10名中、4名未満
[やわらかさの維持]
処理後1週間経過したサンプルについて、以下の基準で評価した。
評価基準
○:風合いが変わらないと回答したパネルが10名中、5名以上
△:風合いが変わらないと回答したパネルが10名中、3名以上5名未満
×:風合いが変わらないと回答したパネルが10名中、3名未満
[総合評価]
上記の各評価に基づき以下の基準で総合評価を行った。
評価基準
◎+:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が3つ
◎:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が2つ、かつ△や×がない
○:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で◎が1つ、かつ△や×がない、またはすべて○、かつ×や△がない
×:やわらかさ、しっかり感、やわらかさの維持の評価で×がある
評価の結果を表4に示す。
上記の各表における評価結果において、まず実施例1~16は、水分減少率が全て12.0%未満であったのに対して、比較例1~4の水分減少率はそれぞれ12.0%以上であったことから、水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩の保水性が高いことが確認された。また、実施例1~9、13、14の水分減少率と、実施例12、15の水分減少率との比較において、25℃で液体である水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩はさらに保水性が高いことがわかった。繊維は水素結合性官能基同士の水素結合によって形状を保持しているが、有機アンモニウム塩が保持する水により、繊維間の水素結合が遮断されることで、やわらかくなるため、保水性が高い有機アンモニウム塩ほど湿度環境に依存されずにやわらかさを維持できたと示唆された。
実施例21、25、29、30のやわらかさが◎であったことから、有機アンモニウム塩のカチオンのR1が水素結合性官能基を1つもち、R2、R3、R4がアルキル基であると、一定のしっかり感を持ちつつ、やわらかさに優れた繊維処理剤が得られることがわかった。これは、セルロースの水酸基と有機アンモニウム塩のカチオンの水酸基は水素結合するが、カチオンのアルキル基はセルロースの水酸基と反発するため、セルロース同士の水素結合が程よく切れ、やわらかさが向上したと推測される。また、セルロース同士の水素結合が程よく切れることで、有機アンモニウム塩の水酸基と未結合のセルロースの水酸基が大気中の水分と結合しやすくなり、繊維中に多くの水を保持できるようになるため、しっとり感が向上したと考えられる。そのため、実施例21、25、29、30は最もやわらかさやしっとり感を発現したと示唆された。
実施例17~32と比較例6~8の対比において、表3に示した2HB値(しっかり感)では、実施例が優れていることが確認できた。このことから、しっかり感については、塩構造が重要であることが示唆された。
また、カチオンに水素結合性官能基を2個以上有する実施例17~20、22~24、28、31において、2HB値(しっかり感)がより高かった。これは、セルロースの水酸基と有機アンモニウム塩の水素結合性官能基が水素結合することで、セルロース同士の結合をよりしっかりしたものにするため、しっかり感が向上したためと推測される。
また、カチオンが同じである実施例17~19、22、28の比較において、アニオンに水素結合性官能基の数が多いほど、しっかり感が向上する傾向があることがわかった。
実施例17~19、22、28のカチオンの原料である比較例5は、水素結合性官能基を2個以上有するため、しっかり感は◎であったものの、有機アンモニウム塩ではないため、やわらかさに欠け、繊維処理剤としては満足のいくものではなかった。
このやわらかさとしっかり感という2つの相反する物性はセルロース同士の結合の微妙なバランスによって実現されており、本発明の有機アンモニウム塩によって特異的に発現するものである。
また、しっかり感が◎である実施例17と、やわらかさが◎である実施例25を混合した実施例32は、しっかり感、やわらかさがともに◎となり、本発明の有機アンモニウム塩を2種類以上混ぜることにより、やわらかさとしっかり感のバランスをコントロールすることができることがわかった。
実施例17~32について、試験機器を用いたB値、2HB値の評価と官能評価との評価は一致していた。