JP7336982B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、弾性部材のシートに対する固定方法に「かしめ」と呼ばれる、被加工物の固定部分を変形させて他の部材に固定する工法を利用した伸縮性シート、及び該伸縮性シートを用いた吸収性物品に関する。
使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材として、2枚のシート間に糸ゴム等の弾性部材を伸長状態で接合してなる伸縮性シートが使用されている。斯かる伸縮性シートにおいて、弾性部材のシートに対する固定方法としては従来、接着剤による接着や融着が汎用されているが、近年、かしめを利用した技術が提案されている。例えば特許文献1には、かしめを利用した伸縮性シートを、紙おむつの胴周り部の外装シートとして使用することが記載されている。特許文献1に記載の伸縮性シートにおいては、2枚のシート間に伸長状態で配置された弾性部材の幅方向の両端部近傍に、該2枚のシートどうしの接合部が該弾性部材を挟んで対向配置されて対をなし、その接合部の対によって該弾性部材が挟圧されて塑性変形しており、これにより該弾性部材は、該シートとの摩擦力のみによって該シートに固定されている(かしめられている)。このようなかしめを利用した伸縮性シートは、弾性部材が接着剤で接着されていないため、通気性や柔らかさが確保された伸縮部を形成することができるとされている。
特許文献2には、吸収性物品の構成部材として使用されている伸縮性シートにおいて、弾性部材のシートに対する固定方法として、かしめと接着剤による接着とを併用し、弾性部材の延在方向の端部の固定に接着剤を使用することが記載されている。特許文献2に記載の技術によれば、弾性部材のシートへの固定強度が、かしめのみを利用した場合に比べて向上し、弾性部材の抜けが防止されるとされている。
特開2008-154998号公報 国際公開第2018/122970号
特許文献1及び2に記載の如き、かしめを利用した伸縮性シート、すなわち、弾性部材がシートどうしの接合部によって挟圧された構成を有し、該弾性部材が、該弾性部材の表面と該シートとの摩擦力によって該シートに固定されている伸縮性シートは、従来、次のようにして製造されている。すなわち、搬送方向に連続する2枚のシート間に同方向に引張力がかけられた伸長状態の弾性部材が配置された長尺の積層体を作製し、搬送中の該積層体における該弾性部材の延在方向の両端部近傍に対して、熱を伴うエンボス加工、超音波融着加工などの融着加工を施すことで、該弾性部材の伸長方向に沿って該2枚のシートどうしの融着部(接合部)を複数形成した後、該積層体を所定の製品単位長さに切断することによって、かしめを利用した伸縮性シートが得られる。
前記の伸縮性シートの製造方法では、融着加工の実施前に、本来は2枚のシート間において直線状に配置されているべき弾性部材が蛇行し、そのため、融着加工時に弾性部材がシートとともに押圧され切断されてしまうという問題があった。特に、伸縮性シートで汎用されている糸状ないし紐状の弾性部材は、搬送時の引張力が小さい(伸長率が低い)ほど蛇行しやすいため、弾性部材が比較的低伸長率で固定された伸縮性シートを製造する場合は、前記の弾性部材の切断の問題がより深刻となり得る。特許文献1及び2には、斯かる問題に対する有効な解決方法は記載されていない。
したがって本発明の課題は、所定の伸長率で配置された弾性部材を具備する伸縮性シートを、該伸長率の高低にかかわらず安定的に製造し得る、伸縮性シートの製造方法を提供することに関する。
また本発明の課題は、外観が良好な吸収性物品を提供することに関する。
本発明は、相対向する2枚のシート間に弾性部材が一方向に延在し、該弾性部材の延在方向に伸縮性を有する伸縮性シートの製造方法である。
前記伸縮性シートの一実施形態では、前記2枚のシートどうしの接合部が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側に該弾性部材に対して近接配置されて接合部対を構成し、該接合部対が、該弾性部材の延在方向に複数間欠配置されている。
前記伸縮性シートの一実施形態では、前記弾性部材が、該弾性部材の延在方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されている。
本発明の伸縮性シートの製造方法の一実施形態では、2枚のシート間に弾性部材を一方向に伸長させた状態で配置し、その伸長状態の弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側の複数箇所にて、該2枚のシートどうしを接合して複数の接合部対を形成する、接合部形成工程を有する。
本発明の伸縮性シートの製造方法の一実施形態では、前記弾性部材の伸長状態を解除して該弾性部材を弛緩させ、その弛緩に伴う該弾性部材の幅方向長さの増加により、該弾性部材における前記接合部対に挟まれた部分の該接合部対との密着性を弛緩前に比べて高めることで、所定の伸長率で伸長された状態の該弾性部材を該接合部対によって挟圧する、弾性部材弛緩工程とを有する。
本発明の伸縮性シートの製造方法の一実施形態では、前記弾性部材について、前記接合部形成工程における伸長状態での伸長率を、製造結果物である前記伸縮性シートが自然状態にあるときの伸長率に比べて高くする。
また本発明は、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、排泄液を吸収保持する吸収体を具備する吸収性物品である。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記横方向に伸縮性を有する伸縮性シートを含む。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記伸縮性シートは、相対向する2枚のシートと、両シート間に配置され、前記横方向に延在する弾性部材とを具備する。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記2枚のシートどうしの接合部が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側に該弾性部材と接触するように配置されて接合部対を構成し、該接合部対が、前記横方向に複数間欠配置されている。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記弾性部材が、前記横方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されている。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記伸縮性シートの前記横方向の端部に、前記弾性部材が配置されていない弾性部材非配置領域が存在している。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記弾性部材非配置領域は、前記横方向に間欠配置された複数の前記接合部対のうち、少なくとも該横方向の最外方に位置する横方向最外方接合部対と、該横方向最外方接合部対と該横方向において最も近接する接合部対とを含む。
本発明の吸収性物品の一実施形態では、前記弾性部材の前記横方向の端部が、前記接合部対に位置している。
また本発明は、前記の本発明の製造方法によって製造された伸縮性シートである。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
本発明によれば、所定の伸長率で配置された弾性部材を具備する伸縮性シートを、該伸長率の高低にかかわらず安定的に製造し得る、伸縮性シートの製造方法が提供される。また本発明によれば、外観が良好な吸収性物品が提供される。
図1は、本発明によって製造される伸縮性シートの一実施形態を一部破断して模式的に示す平面図である。 図2は、図1に示す伸縮性シートの要部を拡大して模式的に示す平面図である。 図3は、図1に示す伸縮性シートが弛緩した状態を模式的に示す斜視図である。 図4は、本発明の伸縮性シートの製造方法の実施に使用可能な製造装置の概略構成を示す図である。 図5(a)は、図4に示す製造装置における受けロールの周面部の一部を模式的に示す平面図、図5(b)は、該周面部の斜視図である。 図6は、図4の符号P1で示す位置における第1凸部対の流れ方向(MD)と直交する方向(CD)に沿う断面を模式的に示す断面図である。 図7は、図4の符号P2で示す位置(超音波処理位置)の流れ方向(MD)と直交する方向(CD)に沿う断面を模式的に示す断面図である。 図8は、図7の一部(第1凸部対及びその近傍)の拡大断面図である。 図9(a)は、弾性部材弛緩工程の実施前の弾性部材の状態を模式的に示す図、図9(b)は、弾性部材弛緩工程の実施後の弾性部材の状態を模式的に示す図である。 図10は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの自然状態を模式的に示す斜視図である。 図11は、図10に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(表面シート側)を模式的に示す展開平面図である。 図12は、図10に示すおむつの要部を拡大して模式的に示す平面図である。 図13は、本発明の範囲外の使い捨ておむつの図12相当図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
先ず、本発明の伸縮性シートの製造方法により製造される伸縮性シートについて説明する。
前記伸縮性シートは、2枚のシート(図中符号「11」又は「12」で示す部材)間に弾性部材(図中符号「13」で示す部材)が一方向に延在し、該弾性部材の延在方向(図中符号「X」で示す方向)に伸縮性を有する。
前記伸縮性シートの一実施形態では、前記2枚のシートどうしの接合部(図中符号「15a」又は「15b」で示す部材)が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向(図中符号「Y」で示す方向)の両側に該弾性部材に対して近接配置されて接合部対(図中符号「15」で示す部材)を構成し、該接合部対が、該弾性部材の延在方向に複数間欠配置されている。
前記伸縮性シートの一実施形態では、前記弾性部材が、該弾性部材の延在方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されている。
図1には、前記伸縮性シートの一実施形態である伸縮性シート10が示されており、伸縮性シート10は前記の構成を備えている。
図1は、伸縮性シート10を引き伸ばして最大伸長状態にしたときの一部破断平面図である。最大伸長状態とは、伸縮性シート10を構成する各弾性部材を伸長させて、該伸縮性シート10が設計寸法(該弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法)となるまで、該伸縮性シート10を構成するシートを引き伸ばした状態のことである。なお、図1に示す破断部分においては、後述する第1接合部15a,15bの図示を省略している。
伸縮性シート10は、第1シート11と、該第1シートと対向配置される第2シート12とを有する。2枚のシート11,12の間には糸ゴム等の線状の弾性部材13が複数本配置されている。具体的には、複数の弾性部材13が、所定の間隔を空けて間欠的に配されている。複数本の弾性部材13は互いに交差せずに一方向に延在している。各弾性部材13は、2枚のシート11,12の間に伸長状態で固定されている。以下の説明において、弾性部材13の延在方向(伸縮方向)を「X方向」ともいう。また、弾性部材13の延在方向と直交する方向すなわち弾性部材13の幅方向を「Y方向」ともいう。
第1シート11は繊維シートからなる。第1シート11は親水性の繊維シート又は疎水性の繊維シートであり得る。第1シート11が親水性のシートである場合には後述する種々の利点が生じる。親水性の繊維シートは、該繊維シートの任意の箇所から採取した構成繊維の水との接触角が90度未満となるものである。繊維の水との接触角の測定は、例えば特開2015-142721号公報の記載の方法に従って行うことができる。後述する接合部(融着部)の形成を容易にする観点から、第1シートは、熱融着性の樹脂からなる合成繊維に親水性を付与した繊維を構成繊維として含む親水性不織布であることが好ましい。熱融着性の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。繊維シートを構成する繊維は、表面のみが熱融着性の樹脂からなる芯鞘型の複合繊維等であってもよい。
第2シート12も繊維シートからなる。第2シート12は、第1シート11と同様に、親水性の繊維シートであってもよく、あるいは疎水性の繊維シートであってもよい。疎水性の繊維シートは、該繊維シートの任意の箇所から採取した構成繊維の水との接触角が90度以上となるものである。前記と同様の観点から、第2シート12は、前述した熱融着性の樹脂からなる合成繊維を構成繊維として含むシートであることが好ましい。第1シート11と第2シート12とでは、形成材料が同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。
第1シート11及び第2シート12は複数の接合部によって接合されている。本発明では、両シート11,12の接合形態は特に制限されず、例えば接着剤による接着でもよいが、典型的には、融着である。「融着」とは、熱によって両シート11,12に溶融部分が生じ、該溶融部分どうしが混ざり合った後に冷却することで当該部分が一体的に結合することをいう。本実施形態では、両シート11,12の接合部は融着部である。
伸縮性シート10は、両シート11,12の接合部(融着部)として、弾性部材13を挟んでY方向の両側に位置する一対の第1接合部15a,15bからなる第1接合部対15を有している。第1接合部対15は、複数の弾性部材13それぞれの延在方向(X方向)に複数間欠配置されている。1個の第1接合部対15を構成する2個の第1接合部15a,15bは、1本の弾性部材13を挟んでY方向に対向配置され、各接合部15a,15bは、該弾性部材13に接触し、より具体的には図2に示すように、該弾性部材13に食い込んでこれを押圧している。
また本実施形態では、伸縮性シート10は、両シート11,12の接合部(融着部)として、第1接合部対15(第1接合部15a,15b)に加えて更に、Y方向に対向配置された一対の第2接合部16a,16bからなる第2接合部対16を有している。第2接合部対16は、図1に示すように、Y方向に間欠配置された複数の弾性部材13どうし間に配置されており、弾性部材13とは接触していない。また、第2接合部対16は、X方向に複数間欠配置され、且つX方向において第1接合部対15と同位置に配置されている。つまり本実施形態では、伸縮性シート10において、弾性部材13と接触する第1接合部対15と、弾性部材13と非接触の第2接合部対16とが、Y方向に交互に配置され、両接合部対15,16は、それぞれ、X方向に間欠配置されている。
このように、伸縮性シート10に、弾性部材13の固定とは無関係な第2接合部対16が形成されていると、伸縮性シート10の両面(第1シート11側の表面及び第2シート12側の表面)において後述する襞構造を形成することが容易になる。
なお本発明では、第2接合部対16(弾性部材13と非接触の接合部対)は必須ではなく、無くてもよい。後述する使い捨ておむつ1(図10参照)を構成する伸縮性シート10Aは、第2接合部対16(第2接合部16a,16b)を有していない。
伸縮性シート10における複数の弾性部材13は、それぞれ、複数の第1接合部対15によって両シート11,12の間に挟圧されている。より具体的には図2に示すように、各弾性部材13は、第1接合部対15を構成する一方の第1接合部15aと他方の第1接合部15bとの間において、両接合部15a,15bによってY方向の両側から押圧されて塑性変形しており、すなわち第1接合部対15によってかしめられている。つまり弾性部材13は、第1接合部対15を構成する第1接合部15a,15b間において、該弾性部材13の表面と第1シート11及び第2シート12との摩擦のみによって、両シート11,12の間に固定されている。
伸縮性シート10において、弾性部材13は、接着剤や融着等の接合手段によっては両シート11,12の間に固定されていない。つまり、伸縮性シート10の少なくとも伸縮部(弾性部材13が伸長状態で固定された領域)では、両シート11,12と弾性部材13とは、接着剤による接合も融着もしていない。これにより、伸縮性シート10は、第1シート11及び第2シート12が本来的に有する良好な風合いや通気性が維持されて形成される。また、伸縮性シート10は伸縮性に富んだものとなる。
弾性部材13が、第1接合部対15を構成する一方の第1接合部15aと他方の第1接合部15bとによって挟圧されることで第1シート11及び第2シート12に固定される仕組みは、次のようなものである。すなわち、弾性部材13を伸長状態とした上で、弾性部材13の幅方向(Y方向)の両端部近傍で両シート11,12どうしを伸長方向に間欠的に融着するなどして接合することで、第1接合部15a,15bからなる第1接合部対15を弾性部材13に沿って複数配置した後、弾性部材13を両シート11,12ごと切断するなどして弾性部材13の伸長状態を解除すると、弾性部材13は弛緩してY方向に膨張するが、第1接合部対15の配置位置では、弾性部材13のY方向の両側に位置する第1接合部15a,15bによって弾性部材13の膨張が規制されるため、弾性部材13は第1接合部15a,15bによって挟圧された状態となる(図2参照)。その結果、弾性部材13が、接着剤無しで、両シート11,12との摩擦力のみによって、両シート11,12に固定された状態となる。
このような、第1接合部対15による弾性部材13の挟圧(弾性部材13とシート11,12との摩擦のみによる固定)をより安定的に実現する観点から、第1接合部対15を構成する一方の第1接合部15aと他方の第1接合部15bとの間の長さD(図2参照。以下、「第1接合部対15の間隔D」ともいう。)、すなわち、接合部対15を構成する一方の第1接合部15aにおける弾性部材13側の側縁151aと他方の第1接合部15bにおける弾性部材13側の側縁151bとの間の間隔Dに対する、伸縮性シート10の弛緩状態における弾性部材13の直径d2(図2参照)の比率(d2/D)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上である。d2/Dの値は高いほど好ましい。d2/Dの値に比例して、弾性部材13の表面と第1シート11及び第2シート12との摩擦力が高くなるためである。伸縮性シート10の弛緩状態における弾性部材13の直径d2とは、伸縮性シート10の弛緩状態において、弾性部材13が挟圧されていない部位での該弾性部材13の幅方向長さ(Y方向の長さ、直径)のことである。
前記のd2を繊度で言い換えた場合、該繊度は、伸縮性シート10の伸縮性を確実なものとする観点から、好ましくは155dtex以上、より好ましくは310dtex以上、そして、好ましくは1240dtex以下、より好ましくは940dtex以下である。
図3には、伸縮性シート10の弛緩状態が示されている。伸縮性シート10の弛緩状態においては、弾性部材13が収縮して、伸縮性シート10はX方向(弾性部材13の延在方向)の幅が狭くなる。この幅が狭くなることで行き場を失った第1シート11及び第2シート12は、それぞれ、X方向に間欠配置された複数の第1接合部対15(第1接合部15a,15b)や第2接合部対16(第2接合部16a,16b)を折曲の起点にして、図3に示す如くに、厚み方向Zに沿って互いに離れるように突出変形し、その結果、弛緩状態の伸縮性シート10の両面(第1シート11側の表面及び第2シート12側の表面)に、複数の凸条部17と該複数の凸条部17間に位置する凹状部とからなる、襞構造が形成される。複数の凸条部17及び複数の前記凹状部は、それぞれ、Y方向に沿って連続して延びている。凸条部17の内部は空洞である。
前記襞構造を有する伸縮性シート10を、例えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材、特に着用者の肌と当接し得る部材として用いた場合には、主として凸条部17の作用効果により、該シート10と肌との接触面積が小さくなって、該接触面積に対する汗の拡散面積の比率が大きくなるので、汗の蒸散効果が向上するとともに、汗で濡れた該シート10と肌との接触面積が減少するので、該吸収性物品の装着感が向上する。また、前記襞構造を有する伸縮性シート10は、該襞構造によって柔軟な風合いと優れた外観とを呈するため、該シート10を含む吸収性物品は、良好な外観を有するものとなる。
前述の伸縮性シート10の作用効果(汗の蒸散効果等)をより一層確実に発現させる観点から、伸縮性シート10の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
Y方向に沿って隣り合う2本の弾性部材13間の間隔Le(図1参照)に対する、Y方向に沿う第2接合部対16の長さL16(図1参照)の比率(L16/Le)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.70以上である。L16/Leの値は、接合強度の確保の点から、1に近いほど好ましい。
Y方向に沿って隣り合う2本の弾性部材13間の間隔Leは、1mm以上であることが好ましい。またLeの値は、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることが更に好ましい。Leの値は、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上8mm以下であることがより好ましく、1mm以上6mm以下であることが更に好ましい。
X方向に沿って隣り合う2つの接合部対15,15(16,16)の間隔Lf(図1参照)は、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。Lfの下限値に特に制限はないが、該下限値はなるべく小さい方が、汗の拡散面積が大きくなるため好ましい。
第1接合部対15及び第2接合部対16それぞれのX方向の長さ(幅)は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下である。当該幅の下限値に特に制限はなく、小さいほど好ましい。
第1及び第2シート11,12としては、それぞれ、例えばエアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布等、及びこれら2以上を積層一体化させてなる積層体等を用いることができる。前記襞構造(図3参照)を、見た目に美しく、感触のよい柔軟なものとする観点から、両シート又は一方のシートとして用いられる繊維シートは、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等であることが好ましい。不織布の坪量は、好ましくは5g/m2以上50g/m2以下、より好ましくは8g/m2以上30g/m2以下である。
第1及び第2シート11,12は、別体の2枚のシートに限られるものではなく、1枚のシートを折り曲げて相対向する2面を形成し、一方の面を構成する部分を1枚のシート、他方の面を構成する部分をもう1枚のシートとすることもできる。
弾性部材13の形成材料としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる各種公知の弾性材料を特に制限なく用いることができる。例えば素材としては、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、あるいはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
次に、本発明の伸縮性シートの製造方法について、前述した伸縮性シート10の製造方法を例にとり説明する。図4には、伸縮性シート10の製造に好適に用いられる製造装置20が示されている。
製造装置20は、超音波処理部21を備えている。
超音波処理部21は、超音波ホーン31を備えた超音波処理機30と、超音波ホーン31の先端部の振動印加面31tと対向する位置に配置された受けロール40とを備えており、処理対象物である第1シート11と第2シート12と弾性部材13との積層体14を、超音波ホーン31の振動印加面31tと、受けロール40の周面部40t(具体的には、後述する凸部対41,42の先端面)との間に挟んで超音波振動を印加することで、積層体14に融着部である第1接合部15a,15b(第1接合部対15)及び第2接合部16a,16b(第2接合部対16)を形成し、両シート11,12を接合する。
伸縮性シート10の製造時における流れ方向(機械方向、以下「MD」ともいう。)は、製造結果物である伸縮性シート10又はその製造中間体である後述の積層体14における弾性部材13の延在方向(X方向)と一致し、MDに直交する方向(以下、「CD」ともいう。)は、該伸縮性シート10又は積層体14における弾性部材13の幅方向(Y方向)と一致する。また、受けロール40の回転軸は、CDに平行で、MDに直交している。
超音波処理機30は、超音波発振器(図示せず)、コンバーター(図示せず)、ブースター(図示せず)及び超音波ホーン31を備え、これらは互いに接続されている。
前記超音波発振器は、前記コンバーターと電気的に接続されており、該超音波発振器により発生された周波数15~50kHz程度の波長の高電圧の電気信号が、該コンバーターに入力される。
前記コンバーターは、ピエゾ圧電素子等の圧電素子を内蔵し、前記超音波発振器から入力された電気信号を、圧電素子により機械的振動に変換する。
前記ブースターは、前記コンバーターから発せられた機械的振動の振幅を調整、好ましくは増幅して超音波ホーン31に伝達する。
超音波ホーン31は、アルミ合金やチタン合金などの金属でできており、使用する周波数帯で正しく共振するように設計されている。超音波ホーン31の先端部の振動印加面31tは、処理対象物の一方の面(本実施形態では第2シート12)に当接する。
前記ブースターから超音波ホーン31に伝達された超音波振動は、超音波ホーン31の内部においても増幅、又は減衰されて、処理対象物に印加される。
超音波処理機30としては、市販の超音波ホーン、コンバーター、ブースター、超音波発振器を組み合わせて用いることができる。
超音波処理機30は、可動台(図示せず)に固定されており、該可動台の位置を、受けロール40の周面部40tに近づく方向に沿って進退させることで、超音波ホーン31の振動印加面31tと、受けロール40の周面部40t(具体的には、後述する凸部対41,42の先端面)との間のクリアランス、及び処理対象物に対する押圧力を調節可能とされている。
超音波処理部21は、超音波振動を印加する処理対象物を加熱する加熱手段を備えている。本実施形態では、受けロール40の周面部40tの温度が調整可能に設計されており、周面部40tに接触する処理対象物を所望の温度に加熱することができる。受けロール40は、例えば、周面部40tを加熱するヒーター(図示せず)と、周面部40tの温度を測定する温度センサー(図示せず)とを内蔵する。
受けロール40は、処理対象物が巻きかけられる周面部40tに凹凸を有する。具体的には図5に示すように、受けロール40の周面部40tには、第1接合部対15形成用の第1凸部対41と、第2接合部対16形成用の第2凸部対42とがそれぞれ複数設けられている。両凸部対41,42は、それぞれ、受けロール40の周方向(回転方向R)に間欠配置されて列を形成し、その第1凸部対41の列と第2凸部対42の列とが、受けロール40の回転軸方向(CD)に交互に配置されている。
複数の第1凸部対41は、それぞれ、CDに間隔を置いて配置された一対の第1凸部41a,41bと、両凸部41a,41b間に位置する第1凹部43とを有する。
複数の第2凸部対42は、それぞれ、CDに間隔を置いて配置された一対の第2凸部42a,42bと、両凸部42a,42b間に位置する第2凹部44とを有する。
第1凸部対41の第1凹部43は、第2凸部対42の第2凹部44に比べて、幅(CDの長さ)が短い。また第1凹部43は、第2凹部44に比べて、受けロール40の径方向外方に突出しており、すなわち受けロール40の回転中心から遠い(図7参照)。
第1凸部対41の第1凹部43には、弾性部材13が導入される。第2凸部対42の第2凹部44には弾性部材13は導入されない。
なお図5では、説明のために第1シート11の記載を省いており、第1凹部43に弾性部材13が直接導入され、弾性部材13と受けロール40の周面部40tとが接触しているが、伸縮性シート10の製造時には、図6に示すように、第1凹部43には弾性部材13に先立って第1シート11が導入されるため、弾性部材13は受けロール40と非接触である。
第1凹部43は、図6に示すように、CDに沿う断面視において略矩形形状を有している。第1凹部43は、伸長状態の弾性部材13の少なくとも一部が収容される容積を有している。換言すれば、第1凹部43は、該凹部43に弾性部材13が収容された状態において、該弾性部材13が、第1凸部対41の上面から一部突出し得るような容積を有している。第1凹部43のCDに沿う長さ、すなわち第1凸部対41のCDに沿う開口幅(図8中符号cで示す長さ)は、目的とする伸縮性シート10における第1接合部対15の間隔D(図2参照)に概ね相当する。
前述の如く構成された製造装置20を用いた伸縮性シート10の製造方法は、2枚のシート11,12間に弾性部材13を一方向に伸長させた状態で配置し、その伸長状態の弾性部材13を挟んで該弾性部材13のY方向(CD)の両側の複数箇所にて、該2枚のシート11,12どうしを接合して複数の接合部対15,16を形成する、接合部形成工程を有する。
また、製造装置20を用いた伸縮性シート10の製造方法は、弾性部材13の伸長状態を解除して該弾性部材13を弛緩させ、その弛緩に伴う該弾性部材13の幅方向長さ(直径)の増加により、該弾性部材13における接合部対15,16に挟まれた部分の該接合部対15,16との密着性を弛緩前に比べて高めることで、所定の伸長率で伸長された状態の該弾性部材13を該接合部対15,16によって挟圧する、弾性部材弛緩工程を有する。
本実施形態では、先ず、図4に示すように、原反11aから長尺帯状の第1シート11を連続的に繰り出して受けロール40の周面部40t上に導入するとともに、複数の巻回体13aそれぞれから長尺の弾性部材13を連続的に繰り出し、該周面部40t上の第1シート11上に配置する。弾性部材13を第1シート11上に配置した段階(例えば、図4中符号P1で示す位置)では、各弾性部材13は、伸長状態となっている。またこの段階では、各弾性部材13は、図6に示すように、受けロール40の周面部40tに設けられた第1凸部対41の第1凹部43に該弾性部材13の一部が収容された状態で搬送される。第1凹部43には弾性部材13に先立って第1シート11が収容されており、弾性部材13は受けロール40と接触していない。
次いで、図4に示すように、原反12aから長尺帯状の第2シート12を連続的に繰り出し、受けロール40の周面部40t上に導入する。これにより周面部40t上に、第1シート11と第2シート12との間に伸長状態の弾性部材13が配置された長尺の積層体14(伸縮性シート10の製造中間体)が形成される。この長尺の積層体14は、受けロール40のR方向への回転によって、図4中符号P2で示す、超音波ホーン31による処理対象物の押圧位置(超音波処理位置)へ搬送され、その搬送途中で、受けロール40が内蔵する前記加熱手段などにより予熱される。
次いで、図4及び図7に示すように、超音波処理位置P2にて、積層体14を受けロール40の凸部対41,42の先端面と超音波ホーン31の振動印加面31tとの間に挟んで加圧しつつ、両シート11,12に超音波振動を印加する(前記接合部形成工程)。これにより、両シート11,12における、第1凸部41a,41b及び第2凸部42a,42bの先端面と重なる部分が発熱し、第1シート11及び/又は第2シート12が溶融、再度固化することで、融着部である第1接合部15a,15b(第1接合部対15)及び第2接合部16a,16b(第2接合部対16)が形成される。第1接合部対15は、積層体14における第1凸部対41との接触部分に形成され、第2接合部対16は、積層体14における第2凸部対42との接触部分に形成される。弾性部材13は、第1凹部43内に該弾性部材13の一部が収容された状態になっており、該弾性部材13は第1シート11及び第2シート12の何れにも接合されず、非接合状態が維持される。
次いで、図4に示すように、第1接合部対15及び第2接合部対16が形成された長尺帯状の積層体14を、製造装置20が備える切断部22にて、所定の製品単位長さに切断する(前記弾性部材弛緩工程)。これにより、複数の枚葉の伸縮性シート10が得られる。
図9には、前記弾性部材弛緩工程の実施前後の弾性部材13の状態が示されている。図9(a)は、前記弾性部材弛緩工程の実施前、すなわち弾性部材13(積層体14)の切断前の状態(長尺帯状の積層体14における弾性部材13の状態)を示し、図9(b)は、前記弾性部材弛緩工程の実施後、すなわち弾性部材13(積層体14)が切断されて弾性部材13の伸長状態が解除された状態(枚葉の伸縮性シート10における弾性部材13の状態)を示す。なお、図9では、第2接合部対16(第2接合部16a,16b)の図示を省略している。
切断前の長尺帯状の積層体14において、複数の弾性部材13は、それぞれ、図9(a)に示すように、伸長状態となっている。この伸長状態の弾性部材13を、前記のように第1シート11及び第2シート12ごと切断するなどして、該伸長状態を解除すると、図9(b)に示すように、弾性部材13が弛緩し、弾性部材13の長さが短くなるとともに、弾性部材13の幅方向長さ(直径)が増加する。このとき、弾性部材13の直径は、第1接合部対15の間隔D以上となるので、弾性部材13の伸長状態の解除によって、弾性部材13における第1接合部対15に挟まれた部分の該第1接合部対15との密着性が、弛緩前(伸長状態の解除前)のそれに比べて高められることになる。すなわち、弾性部材13と第1接合部対15(第1接合部15a,15b)とは、弾性部材13の伸長状態の解除前(積層体14の切断前)は、図9(a)に示す如くに互いに非接触(すなわち密着性ゼロ)であるか、又は互いに接触していたとしても弾性部材13の塑性変形を実質的に生じさせない程度の低い密着性で接触しているが、弾性部材13の伸長状態の解除後(積層体14の切断後)は、弾性部材13の弛緩により、弾性部材13が第1接合部15a,15bによってY方向の両側から挟圧されて塑性変形する程度の高い密着性で接触する。つまり、積層体14を切断して得られた枚葉の伸縮性シート10において、複数の弾性部材13は、それぞれ、第1接合部対15において、接着剤無しで、第1シート11及び第2シート12の摩擦のみによって、両シート11,12に固定されている。
ところで、従来の伸縮性シートの製造方法では、前述したとおり、弾性部材の蛇行に起因して、シートどうしの融着加工によって弾性部材が意図せずに切断されてしまうという問題があった。この問題は、前述の製造装置20を用いた伸縮性シート10の製造方法でも起こり得る。すなわち伸縮性シート10の製造方法において、超音波ホーン31による第1接合部対15の形成前に弾性部材13が蛇行し、第1接合部対15の形成時に弾性部材13がシート11,12とともに超音波ホーン31によって押圧され切断されてしまうことが懸念される。
しかしながら本発明では、弾性部材13について、「前記接合部形成工程における伸長状態での伸長率」、すなわち「弾性部材13を伸長状態で搬送する際の伸長率」(以下、「搬送伸長率」ともいう。)を、「製造結果物である伸縮性シート10が自然状態(非伸長状態)にあるときの伸長率」(以下、「製品伸長率」ともいう。)に比べて高くしており、これにより前記懸念は払拭されている。すなわち本発明の伸縮性シートの製造方法によれば、弾性部材13について前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立しており、更に言えば本発明では、搬送伸長率を、製品伸長率のみならず、従来の伸縮性シートの製造方法における搬送伸長率よりも大きくしていることにより、伸縮性シートの製造時における弾性部材13の切断が効果的に抑制されるので、製品伸長率の高低を問わず、伸縮性シートを安定的に製造することができる。その理由の詳細は下記のとおりである。
弾性部材13の幅方向長さ(Y方向の長さ、直径)は、該弾性部材13の伸長率が高いほど短く、該弾性部材13の伸長率が低いほど太くなるところ、弾性部材13の伸長率に関して、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立する場合、前記接合部形成工程の実施後で前記弾性部材弛緩工程の実施前においては、図9(a)に示すように、伸長状態の弾性部材13の幅方向長さが第1接合部対15の間隔Dに対して短く、該弾性部材13と第1接合部対15を構成する第1接合部15a,15bとの間に隙間が生じた状態となり得る。すなわち前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立することで、前記接合部形成工程の実施直前(第1接合部対15の形成直前)においては、第1接合部対15(第1接合部15a,15b)の形成予定位置からCDに所定距離離間した位置に、伸長状態の弾性部材13が配置されるようになるため、超音波ホーン31によって予定どおりに第1接合部対15の形成予定位置が押圧されたときに、弾性部材13が意図せずに押圧され切断される不都合が効果的に抑制される。また、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)の成立は、伸縮性シート10の製造時に弾性部材13を高伸長率で搬送することに繋がり、それは弾性部材13の搬送時における蛇行の抑制に繋がる。そして、弾性部材13の搬送時における蛇行が抑制されれば、伸縮性シート10の製造時に弾性部材13が意図せずに切断される不都合も抑制される。
従来の伸縮性シートの製造方法では、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が実質的に成立しておらず、搬送伸長率と製品伸長率とが実質的に同じである、換言すれば、搬送伸長率が製品伸長率に対して十分に大きくないため、前記接合部形成工程の実施直前において、第1接合部対15の形成予定位置と伸長状態の弾性部材13とが重なりやすく、そのため、第1接合部対15の形成時に弾性部材13が超音波ホーン31によって押圧され切断されやすい。このように、従来技術で搬送伸長率と製品伸長率とを実質的に同じとしている理由の1つとして、いわゆる弾性部材(糸ゴム)の抜けを防止又は最小限にする点が挙げられる。すなわち従来は、伸縮性シートにおける弾性部材の延在方向(伸縮方向)の端部に、後述する弾性部材非配置領域13N(図11参照)の如き、「弾性部材を狭圧するための接合部対間に配された弾性部材と、伸縮方向における各接合部の間の隙間」(弾性部材を挟圧するための接合部対は配置されているが、弾性部材が配置されていない領域)が形成されることを避ける傾向が強く、そのために、接合部対による弾性部材のかしめの効力を、弾性部材の伸長状態の解除後速やかに発現させるべく、搬送伸長率を製品伸長率と実質的に同じに設定して、伸長状態の弾性部材と該弾性部材を挟んで両側に位置する接合部との間の長さをなるべく短くしていた。
これに対し本発明では、弾性部材の抜けをある程度許容する代わりに、従来問題視されてきた、伸縮性シートの製造時における弾性部材の切断や蛇行の問題を解決するべく、前述のとおり、弾性部材について搬送伸長率>製品伸長率を採用し、搬送伸長率を、製品伸長率のみならず、従来の伸縮性シートの製造方法における搬送伸長率よりも大きくしている。
本発明でいう、「弾性部材の伸長率」とは、弾性部材の張設具合の指標となるもので、弾性部材の自然状態(非伸長状態)での長さを100としたときに何%伸長しているかを示すものである。例えば弾性部材が伸長され、その長さが120となっているとき、伸長率は120%である。
弾性部材13の搬送伸長率と製品伸長率との比率は、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立することを前提として、搬送伸長率/製品伸長率として、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下である。
弾性部材13の搬送伸長率は、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立することを前提として、好ましくは200%以上、より好ましくは220%以上、更に好ましくは240%以上である。弾性部材13の搬送伸長率の上限については、特に制限されないが、高伸長を原因とする弾性部材13の切断を防止する観点から、好ましくは440%以下、より好ましくは420%以下、更に好ましくは400%以下である。
弾性部材13の製品伸長率は、特に制限されず、伸縮性シート10の用途等に応じて適宜設定することができる。例えば伸縮性シート10を使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材として使用する場合、弾性部材13の製品伸長率は、好ましくは150%以上、より好ましくは170%以上、そして、好ましくは400%以下、より好ましくは380%以下である。
前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)を確実に成立させて本発明の所定の効果をより安定的に奏させるようにする観点から、「前記接合部形成工程における弾性部材13の伸長状態での幅方向長さ(直径)」に対する、「第1接合部対15を構成する一方の接合部15aと他方の接合部15bとの間の長さD(第1接合部対15の間隔D)」の割合、すなわち、伸長状態の弾性部材13が記載されている図9(a)を参照して、「第1接合部対15の間隔D/伸長状態の弾性部材13の幅方向長さ」は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下である。前記の割合(間隔D/伸長状態の弾性部材13の幅方向長さ)の調整は、伸縮性シート10の製造時における弾性部材13の伸長率(引張力)を適宜調整することで実施してもよく、間隔Dに対応する、受けロール40の第1凸部対41の開口幅c(図8参照)を調整することで実施してもよく、両方を組み合わせて実施してもよい。
前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)を確実に成立させて本発明の所定の効果をより安定的に奏させるようにする観点から、前記接合部形成工程における弾性部材13の搬送伸長率を、該弾性部材13の直径が第1接合部対15の間隔Dの80%未満となるように調整することが好ましく、特に75%以下、とりわけ70%以下に調整することが好ましい。また、斯かる弾性部材13の直径の間隔Dに対する割合の下限については特に制限されないが、前記接合部形成工程での弾性部材13の過剰伸長による切断防止、ガイドロールの摩耗防止の観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。
第1接合部対15の間隔Dは、弾性部材13の所望の製品伸長率に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、好ましくは0.12mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.6mm以下である。
第1接合部対15の間隔Dを設定するに当たっては、弾性部材13の製品伸長率と間隔Dとの対応関係を示す検量線を予め作成しておき、該検量線に基づいて、所望の製品伸長率に対応する間隔Dを設定する方法を採用することができる。
また、第1接合部対15の間隔Dは、前記接合部形成工程における弾性部材13の伸長状態での幅方向長さすなわち直径a(図8参照)に対して、好ましくは1.0倍超2.0倍以下である。
なお前述したとおり、第1接合部対15の間隔Dは、第1凹部43のCDに沿う長さ、すなわち第1凸部対41のCDに沿う開口幅c(図8参照)に概ね相当するので、開口幅cについても、前記接合部形成工程における弾性部材13の伸長状態での直径a(図8参照)との関係で、前記範囲に設定することが好ましい。
伸長状態の弾性部材13の直径aは、第1凹部43の深さb(図8参照)に対して、好ましくは1.1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以上1.5倍以下、更に好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である。
前記接合部形成工程における弾性部材13の伸長状態での幅方向長さ、すなわち伸長状態の弾性部材13の直径a(図8参照)は、弾性部材13の搬送伸長率と密接に関連する。すなわち、弾性部材13の搬送伸長率が高いと、弾性部材13の伸長状態での幅方向長さ(直径a)が短く、弾性部材13の搬送伸長率が低いと、弾性部材13の伸長状態での幅方向長さ(直径a)が長くなる。斯かる傾向を踏まえ、前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)の成立の観点、及び高伸長を原因とする弾性部材13の切断を防止する観点などから、前記接合部形成工程における弾性部材13の伸長状態での幅方向長さ(直径a)は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。
次に、本発明の吸収性物品について説明する。
前記吸収性物品は、着用者の前後方向、すなわち腹側から股間部を介して背側に延びる方向に対応する縦方向(図中符号「X1」で示す方向)と、該縦方向に直交する横方向(図中符号「Y1」で示す方向)とを有する。
以下の説明において、特に言及しない限り、縦方向は、吸収性物品の縦方向又はその構成部材(例えば吸収体)における縦方向に沿う方向であり、横方向は、吸収性物品の横方向又はその構成部材における横方向に沿う方向である。
前記吸収性物品の一実施形態では、着用者の股間部に配され、着用者の陰茎等の排泄部に対向する排泄部対向部(図示せず)を含む股下部(図中符号「B」で示す部分)と、該股下部よりも着用者の腹側(前側)に配される腹側部(図中符号「A」で示す部分)と、該股下部よりも着用者の背側(後側)に配される背側部(図中符号「C」で示す部分)との3つに区分される。
前記吸収性物品の一実施形態では、尿等の排泄液を吸収保持する吸収体(図中符号「5」で示す部材)を具備する。
図10及び図11には、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ1が示されており、おむつ1は前記の構成を備えている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち着用者の肌から相対的に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、すなわち着用者の肌から相対的に遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
おむつ1は、いわゆるパンツ型使い捨ておむつであり、図10に示すように、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部WH及び一対のレッグ開口部LH,LHを有する。より具体的には、おむつ1は、吸収体5を含む吸収性本体2と、吸収性本体2よりも着用者の肌から遠い側、すなわち吸収性本体2の非肌対向面側に配置された外装体7とを具備しており、腹側部A及び背側部Cそれぞれにおける外装体7の縦方向X1に沿う両側縁部7Sどうしが接合されて、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部WH及び一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。吸収性本体2と外装体7とは接着剤によって接合されている。吸収性本体2は平面視矩形形状を有し、その長手方向をおむつ1の縦方向X1に一致させて、腹側部Aから股下部Bを介して背側部Cにわたって縦方向X1に延在している。
腹側部A及び背側部Cは、典型的にはそれぞれ、縦方向X1においてサイドシール部Sと同位置にある部分、すなわちおむつ1の着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を含む。腹側部Aはおむつ1の前身頃の一部であり、背側部Cはおむつ1の後身頃の一部である。股下部Bは、おむつ1の前身頃から後身頃にわたって存在する。
本発明において、腹側部A、股下部B及び背側部Cは、展開且つ伸長状態のおむつ1を縦方向X1に三等分した場合の各領域であり得る。
吸収性本体2は、着用者の肌から相対的に近い位置に配置された液透過性の表面シート3、着用者の肌から相対的に遠い位置に配置された液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性(要するに防漏性)の裏面シート4、及び両シート3,4間に介在配置された吸収体5を含んで構成されている。吸収性本体2を構成するこれらの部材どうし3,4,5は、接着剤等の公知の接合手段により一体とされている。
吸収性本体2の縦方向X1に沿う両側には、一対の防漏カフ6,6が設けられている。各防漏カフ6は、それぞれ、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性の防漏カフ形成用シート60と、該シート60に伸長状態で固定された弾性部材61とを含んで構成されている。
前述の各部材3~6としては、この種の吸収性物品において通常使用されているものを特に制限なく用いることができる。
本実施形態では、外装体7が、腹側部A(前身頃)を構成する腹側外装体7Aと、背側部C(後身頃)を構成する背側外装体7Cとをそれぞれ独立に有し、吸収性本体2が両外装体7A,7C間に架け渡して固定されている。両外装体7A,7Cは、それぞれ、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態において矩形形状を有している。ここでいう「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
おむつ1は、横方向Y1に伸縮性を有する伸縮性シート10Aを含む。伸縮性シート10Aは、第2接合部対16(第2接合部16a,16b)、すなわち弾性部材13と非接触の接合部対を有していない点以外は、前述した伸縮性シート10と同様に構成されており、弾性部材13は第1接合部対15(第1接合部15a,15b)(以下、単に、「接合部対15」、「接合部15a」、「接合部15b」ともいう。)によって挟圧されている。伸縮性シート10Aについて特に説明しない構成は、前述の伸縮性シート10についての説明が適宜適用される。
本実施形態では、伸縮性シート10Aを構成する複数の弾性部材13は、それぞれ、横方向Y1に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の接合部対15によって挟圧されている。すなわち、伸縮性シート10Aにおいて、複数の弾性部材13は、それぞれ、接合部対15を構成する一方の接合部15aと他方の接合部15bとの間において、第1シート11及び第2シート12との摩擦のみによって、両シート11,12の間に固定されており、接着剤や融着等の接合手段によっては両シート11,12の間に固定されていない。
本実施形態では、外装体7(腹側外装体7A、背側外装体7C)が伸縮性シート10Aを含んで構成されており、より具体的には、外装体7が伸縮性シート10Aからなる。
本実施形態では、外装体7を構成する伸縮性シート10Aが具備する2枚のシート11,12のうち、第1シート11が、吸収体5(吸収性本体2)から相対的に遠い位置に配置されておむつ1の外面を形成し、第2シート12が、吸収体5(吸収性本体2)から相対的に近い位置に配置されておむつ1の内面を形成している。
なお、図示の形態とは逆に、第2シート12が吸収体5から相対的に遠い位置に配置され、第1シート11が、吸収体5から相対的に近い位置に配置されてもよい。
吸収体5から相対的に遠い位置に配置された第1シート11は、吸収体5から相対的に近い位置に配置された第2シート12よりも縦方向X1の長さが長く、第2シート12の縦方向X1の端縁から延出する延出部11Eを有し、該延出部11Eが、第2シート12の肌対向面側に折り返されて、吸収性本体2の縦方向X1の端部を被覆している。
おむつ1は、伸縮性シート10Aの横方向Y1の端部、換言すれば、縦方向X1に沿う縁部に、弾性部材13が配置されていない弾性部材非配置領域13Nが存在する点で特徴付けられる。
本実施形態では、弾性部材非配置領域13Nは、図11に示すように、腹側外装体7A及び背側外装体7Cそれぞれの横方向Y1の両端部(縦方向X1に沿う両側縁部)に存在しており、サイドシール部Sを含んでいる。弾性部材非配置領域13Nは、両外装体7A,7Cそれぞれの縦方向X1の全長にわたって存在している。
弾性部材非配置領域13Nは、図12に示すように、横方向Y1に間欠配置された複数の接合部対15のうち、少なくとも横方向Y1の最外方に位置する横方向最外方接合部対15と、該横方向最外方接合部対15と横方向Y1において最も近接する他の接合部対15とを含む。すなわち、横方向Y1に延在する1本の弾性部材13又は該1本の弾性部材13の仮想延長線上に位置する複数の接合部対15に、横方向最外方接合部対15と1番として、横方向Y1の外方から内方に向かって順次番号を付与した場合、弾性部材非配置領域13Nは、少なくとも2番目の接合部対15と該2番目の接合部対15よりも横方向Y1の外方に位置する領域とを含み、それらの全域にわたって弾性部材13が配置されていない領域である。
図示の形態では、弾性部材非配置領域13Nは更に、2番目の接合部対15と3番目の接合部対15との間も含む。
伸縮性シート10Aは、前述した伸縮性シート10と同様の方法で製造されたものであり、弾性部材13について前記大小関係(搬送伸長率>製品伸長率)が成立しているものである。典型的には、伸縮性シート10Aの製造時における弾性部材13の搬送伸長率は、従来に比べて高く設定されるため、伸縮性シート10Aの製造時に弾性部材13を切断してその伸長状態を解除したときの該弾性部材13の収縮度合は、従来に比べて大きなものとなる。そのため、製造結果物である伸縮性シート10Aにおける弾性部材13の切断端部の位置は、伸縮性シート10Zの如き従来品に比べて、横方向Y1の内方寄り(吸収性本体2寄り)となり、その結果、伸縮性シート10Aの横方向Y1の両端部の接合部対15、具体的には前記の1番目及び2番目の接合部対15に弾性部材13が配置されていない状態が生じ、弾性部材非配置領域13Nが形成される。
伸縮性シート10Aは、前述した伸縮性シート10と同様に、弾性部材13のシート11,12に対する固定に「かしめ」を利用したものであり、斯かる固定に接着剤は使用されていない。したがって弾性部材非配置領域13Nにおいては、少なくとも弾性部材13の仮想延長線上にはホットメルト接着剤等の接着剤が存在しない。典型的には、弾性部材非配置領域13Nの全域に接着剤が存在しない。
図12に示すように、弾性部材13の横方向Y1の端部は、接合部対15に位置している。換言すれば、弾性部材非配置領域13Nと弾性部材13の配置領域との境界が、接合部対15に位置している。図示の形態では、弾性部材13の横方向Y1の端部(弾性部材非配置領域13Nと弾性部材13の配置領域との境界)は、3番目の接合部対15に位置している。ここでいう、「接合部対に位置」とは、弾性部材13の横方向Y1の端部が、接合部対15(接合部15a,15bの間)と重なっている場合のみならず、接合部対15の近傍(具体的には、接合部対15から好ましくは5mm以内、より好ましくは3mm以内)に位置している場合を含む。
図13には、従来のパンツ型使い捨ておむつの典型例であるおむつ1Zが示されている。おむつ1Zは、外装体7が伸縮性シート10Zで構成されている点以外は、おむつ1と同様に構成されている。伸縮性シート10Zは、「かしめを利用した伸縮性シート」の従来品であり、本発明に係る伸縮性シート10Aとの主な相違点は、前述した、弾性部材13に関する搬送伸長率と製品伸長率との比率である。すなわち、伸縮性シート10Aは前述したとおり「搬送伸長率>製品伸長率」であるのに対し、従来品である伸縮性シート10Zは概ね「搬送伸長率=製品伸長率」である。
前記の相違点に起因して、従来品のおむつ1Zでは、図13に示すように、外装体7(伸縮性シート10Z)において、複数の弾性部材13がそれぞれ横方向最外方接合部対(1番目の接合部対)15に達し、更には、各弾性部材13の横方向Y1の端部(切断端部)が1番目の接合部対15から横方向Y1の外方に延出している。図13では、この1番目の接合部対15から延出する各弾性部材13の端部が、平面視で一様に湾曲した形態で配置されているが、実際のおむつでは個々バラバラの形態で配置されることが多く、乱雑な印象を与える。これに対し、本発明に係るおむつ1の外装体7(伸縮性シート10A)は、図11及び図12に示すとおりであり、横方向Y1の両端部に弾性部材非配置領域13Nが位置し、且つ弾性部材13の横方向Y1の端部が接合部対15に位置していて、おむつ1Zのように接合部対15から横方向Y1の外方に大きく延出していないので、おむつ1Zに比べて外観が良好である。
また、伸縮性シート10Aにおいては、弾性部材13のシート11,12に対する固定方法が、接着剤による接着や融着ではなく、「かしめ」を利用した接合部対15(接合部15a,15b)による挟圧であるため、仮に、弾性部材13の横方向Y1の端部(切断端部)が、前記の「接合部対に位置」の定義の範囲で、接合部対15から横方向Y1の外方に多少延出したとしても、接合部対15がその弾性部材13の切断端部の位置を規制するガイドとして機能するため、複数の弾性部材13それぞれの切断端部が整然と配置された状態となりやすく、おむつ1の外観が向上し得る。
また本実施形態では、図10に示すように、外装体7を構成する伸縮性シート10Aの表面(肌対向面及び非肌対向面)に、前述した凸条部17を含む襞構造が形成されるため、おむつ1はこの点でも外観に優れる。伸縮性シート10Aは、第2接合部対16(第2接合部16a,16b)を有していないが、それでも伸縮性シート10と同様に襞構造を形成し得る。なお、おむつ1において、伸縮性シート10Aに代えて、第2接合部対16を有する伸縮性シート10を使用することは当然に可能であり、その場合は、襞構造がより一層安定的に形成され得る。
弾性部材非配置領域13Nの横方向Y1の長さ、すなわち、「外装体7(伸縮性シート10A)の横方向Y1の端部(縦方向X1に沿う側縁)から弾性部材13の横方向Y1の端部にわたる長さ」(以下、「弾性部材13の抜け長さ13NL」ともいう。)は、特に制限されないが、おむつ1の外観向上と伸縮域の確保とのバランスの観点から、伸縮性シート10A(外装体7)の横方向Y1の全長に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、そして、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下である。
弾性部材13の抜け長さ13NLは、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下である。
本発明の吸収性物品は、前記実施形態の如きパンツ型使い捨ておむつに制限されず、人体から排出される体液(尿、経血、軟便、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、いわゆるファスニングテープを具備する展開型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ等も包含される。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、接合部対15,16の形成手段として、超音波処理による融着を利用したが、熱を伴うエンボス加工による融着を利用してもよい。
また、前記実施形態のおむつ1では、外装体7が、腹側部A(前身頃)を構成する部材と背側部C(後身頃)を構成する部材とをそれぞれ独立に有し、吸収性本体2が両部材に架け渡して固定された形態であった、これに代えて、腹側部Aから背側部Cにわたって連続的に延在する形態であってもよい。
前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
相対向する2枚のシート間に弾性部材が一方向に延在し、該弾性部材の延在方向(X)に伸縮性を有する伸縮性シートであって、
前記2枚のシートどうしの接合部(第1接合部15a,15b)が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向(Y)両側に該弾性部材に対して近接配置されて接合部対(第1接合部対15)を構成し、該接合部対が、該弾性部材の延在方向に複数間欠配置され、
前記弾性部材が、該弾性部材の延在方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されている、伸縮性シートの製造方法であって、
2枚のシート間に弾性部材を一方向に伸長させた状態で配置し、その伸長状態の弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側の複数箇所にて、該2枚のシートどうしを接合して複数の接合部対を形成する、接合部形成工程と、
前記弾性部材の伸長状態を解除して該弾性部材を弛緩させ、その弛緩に伴う該弾性部材の幅方向長さの増加により、該弾性部材における前記接合部対に挟まれた部分の該接合部対との密着性を弛緩前に比べて高めることで、所定の伸長率で伸長された状態の該弾性部材を該接合部対によって挟圧する、弾性部材弛緩工程とを有し、
前記弾性部材について、前記接合部形成工程における伸長状態での伸長率(搬送伸長率)を、製造結果物である前記伸縮性シートが自然状態にあるときの伸長率(製品伸長率)に比べて高くする、伸縮性シートの製造方法。
<2>
前記弾性部材は、前記2枚のシートとの摩擦のみによって、該2枚のシートに固定されている、前記<1>に記載の伸縮性シートの製造方法。
<3>
前記接合部形成工程の実施後で且つ前記弾性部材弛緩工程の実施前において、伸長状態前記弾性部材と該弾性部材に対して近接配置された前記接合部対との間に、隙間が生じている、前記<1>又は<2>に記載の伸縮性シートの製造方法。
<4>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での幅方向長さに対する、前記接合部対を構成する一方の前記接合部と他方の前記接合部との間の長さの割合が、1.3以上3.5以下である、前記<1>~<3>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<5>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での幅方向長さに対する、前記接合部対を構成する一方の前記接合部と他方の前記接合部との間の長さの割合が、1.5以上3.3以下である、前記<1>~<4>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<6>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での伸長率を、該弾性部材の幅方向長さ(直径)が、前記接合部対を構成する一方の前記接合部と他方の前記接合部との間の長さに対して80%未満となるようにする、前記<1>~<5>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<7>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での伸長率を、該弾性部材の幅方向長さ(直径)が、前記接合部対を構成する一方の前記接合部と他方の前記接合部との間の長さに対して、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下であり、また、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上となるようにする、前記<1>~<6>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<8>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での幅方向長さが、0.1mm以上0.5mm以下である、前記<1>~<7>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<9>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での幅方向長さが、0.2mm以上0.4mm以下である、前記<1>~<8>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<10>
前記接合部対を構成する一方の接合部と他方の接合部との間の長さ(D)が、好ましくは0.12mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.6mm以下である、前記<1>~<9>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<11>
前記接合部対を構成する一方の接合部と他方の接合部との間の長さ(D)に対する、前記伸縮性シートの弛緩状態における前記弾性部材の幅方向長さ(直径)(d2)の比率(d2/D)が、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上である、前記<1>~<10>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<12>
前記接合部形成工程では、周面部に前記接合部対形成用の凸部対(第1凸部対41)が複数設けられたロール(受けロール40)の該周面部上にて、前記2枚のシートの間に伸長状態の前記弾性部材が配置された積層体を形成するとともに、該2枚のシートのうちの一方と該弾性部材とを、該凸部対を構成する一対の凸部(第1凸部41a,41b)間に位置する凹部(第1凹部43)に収容し、その状態で該積層体における該2枚のシートどうしを接合して複数の前記接合部対を形成し、
前記接合部形成工程における伸長状態の前記弾性部材の幅方向長さ(直径)(a)が、前記凹部の深さ(b)、又は前記接合部対を構成する一方の接合部と他方の接合部との間の長さ(D)に対して、好ましくは1.1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以上1.5倍以下、更に好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である、前記<1>~<11>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<13>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での伸長率(搬送伸長率)と、前記伸縮性シートが自然状態(非伸長状態)にあるときの該弾性部材の伸長率(製品伸長率)との比率が、前者>後者を前提として、前者/後者として、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下である、前記<1>~<12>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<14>
前記接合部形成工程における前記弾性部材の伸長状態での伸長率(搬送伸長率)が、好ましくは200%以上、より好ましくは220%以上、更に好ましくは240%以上、そして、好ましくは440%以下、より好ましくは420%以下、更に好ましくは400%以下である、前記<1>~<13>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<15>
前記伸縮性シートは、前記2枚のシートどうしの接合部として、前記弾性部材を挟んで前記幅方向(Y)両側に該弾性部材に対して近接配置された第1接合部対(15)と、該幅方向に間欠配置された複数の該弾性部材どうし間に配置されて該弾性部材とは接触しておらず、該幅方向に対向配置された一対の接合部(第2接合部16a,16b)からなる第2接合部対(16)とを有し、
前記幅方向に沿って隣り合う2本の前記弾性部材間の間隔(Le)に対する、該幅方向に沿う前記第2接合部対の長さ(L16)の比率(L16/Le)が、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.70以上である、前記<1>~<14>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<16>
前記幅方向に沿って隣り合う2本の前記弾性部材13間の間隔(Le)が、好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上8mm以下、更に好ましくは1mm以上6mm以下である、前記<1>~<15>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<17>
前記延在方向(X)に沿って隣り合う2つの前記接合部対(第1接合部対15、第2接合部対16)の間隔(Lf)が、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である、前記<1>~<16>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<18>
前記接合部対(第1接合部対15、第2接合部対16)の前記延在方向(X)の長さ(幅)が、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下である、前記<1>~<17>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<19>
前記接合部形成工程では、ロール(受けロール40)の周面部上にて、前記2枚のシートの間に伸長状態の前記弾性部材が配置された積層体を形成し、該ロールを回転させて該積層体を所定の押圧位置に搬送し、該押圧位置にて、該積層体を該周面部と超音波ホーンの先端部の振動印加面との間に挟んで超音波振動を印加することで、前記接合部対を形成し、
前記積層体の前記押圧位置への搬送途中で、前記ロールが内蔵する加熱手段により該積層体を予め加熱する、前記<1>~<18>の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
<20>
前記<1>~<19>の何れか1項に記載の製造方法によって製造された伸縮性シート。
<21>
着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、排泄液を吸収保持する吸収体を具備する吸収性物品であって、
前記横方向に伸縮性を有する伸縮性シートを含み、
前記伸縮性シートは、相対向する2枚のシートと、両シート間に配置され、前記横方向に延在する弾性部材とを具備し、
前記2枚のシートどうしの接合部が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側に該弾性部材と接触するように配置されて接合部対を構成し、該接合部対が、前記横方向に複数間欠配置され、
前記弾性部材が、前記横方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されており、
前記伸縮性シートの前記横方向の端部に、前記弾性部材が配置されていない弾性部材非配置領域が存在し、
前記弾性部材非配置領域は、前記横方向に間欠配置された複数の前記接合部対のうち、少なくとも該横方向の最外方に位置する横方向最外方接合部対と、該横方向最外方接合部対と該横方向において最も近接する接合部対とを含み、
前記弾性部材の前記横方向の端部が、前記接合部対に位置している、吸収性物品。
<22>
前記弾性部材の前記横方向の端部が、前記接合部対(第1接合部対15)と重なっているか、又は該接合部対から好ましくは5mm以内、より好ましくは3mm以内に位置している、前記<21>に記載の吸収性物品。
<23>
更に、前記吸収体の非肌対向面側に配された外装体を具備し、
前記吸収性物品の前身頃及び後身頃それぞれにおける前記外装体の前記縦方向に沿う両側縁部どうしが接合されて一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されており、
前記外装体が前記伸縮性シートを含み、前記弾性部材非配置領域が前記サイドシール部を含む、前記<21>又は<22>に記載の吸収性物品。
<24>
前記外装体の前記横方向の端部(前記縦方向に沿う側縁)から前記弾性部材の該横方向の端部にわたる長さ」(弾性部材13の抜け長さ13NL)が、該外装体の該横方向の全長に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、そして、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下である、前記<23>に記載の吸収性物品。
<25>
前記外装体の前記横方向の端部(前記縦方向に沿う側縁)から前記弾性部材の該横方向の端部にわたる長さ」(弾性部材13の抜け長さ13NL)が、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下である、前記<23>又は<24>に記載の吸収性物品。
<26>
前記弾性部材非配置領域における前記弾性部材の仮想延長線上に接着剤が存在しない、前記<21>~<25>の何れか1項に記載の吸収性物品。
10,10A,10Z 伸縮性シート
11 第1シート
12 第2シート
13 弾性部材
15 第1接合部対
15a,15b 第1接合部
16 第2接合部対
16a,16b 第2接合部
17 凸条部
20 製造装置
21 超音波処理部
30 超音波処理機
31 超音波ホーン
40 受けロール40
41 第1凸部対
41a,41b 第1凸部
42 第2凸部対
42a,42b 第2凸部
43 第1凹部
44 第2凹部
22 切断部
1,1Z パンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 吸収性本体
3 表面シート
4 裏面シート
5 吸収体
6 防漏カフ
7 外装体
7A 腹側外装体(伸縮性シート)
7C 背側外装体(伸縮性シート)
13N 弾性部材非配置領域
X1 縦方向
Y1 横方向
A 腹側部
B 股下部
C 背側部

Claims (3)

  1. 着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、排泄液を吸収保持する吸収体を具備する吸収性物品であって、
    前記横方向に伸縮性を有する伸縮性シートを含み、
    前記伸縮性シートは、相対向する2枚のシートと、両シート間に配置され、前記横方向に延在する弾性部材とを具備し、
    前記2枚のシートどうしの接合部が、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の幅方向両側に該弾性部材と接触するように配置されて接合部対を構成し、該接合部対が、前記横方向に複数間欠配置され、
    前記弾性部材が、前記横方向に所定の伸長率で伸長された状態で、複数の前記接合部対によって挟圧されており、
    前記伸縮性シートの前記横方向の端部に、前記弾性部材が配置されていない弾性部材非配置領域が存在し、
    前記弾性部材非配置領域は、前記横方向に間欠配置された複数の前記接合部対のうち、少なくとも該横方向の最外方に位置する横方向最外方接合部対と、該横方向最外方接合部対と該横方向において最も近接する接合部対とを含み、
    前記弾性部材の前記横方向の端部が、前記接合部対に位置しており、
    更に、前記吸収体の非肌対向面側に配された外装体を具備し、
    前記吸収性物品の前身頃及び後身頃それぞれにおける前記外装体の前記縦方向に沿う両側縁部どうしが接合されて一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されており、
    前記外装体が前記伸縮性シートを含み、前記弾性部材非配置領域が前記サイドシール部を含む、吸収性物品。
  2. 前記弾性部材非配置領域における前記弾性部材の仮想延長線上に接着剤が存在しない、請求項に記載の吸収性物品。
  3. 前記伸縮性シートは、前記縦方向に対向配置された一対の第2接合部からなる第2接合部対を更に有し、
    前記第2接合部対は、前記横方向に複数間欠配置され、且つ前記弾性部材と非接触であり、
    前記伸縮性シートは、弛緩状態において、前記接合部対及び前記第2接合部対を折曲の起点として襞構造を形成する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
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