以下、図面を参照して本願の開示する基板処理方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する基板処理方法が限定されるものではない。
[装置構成]
本実施形態に係る基板処理に使用する装置の一例を説明する。以下では、プラズマ処理装置と加熱装置によって本実施形態に係る基板処理する場合を例に説明する。
最初に、本実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成の一例を示す図である。本実施形態では、プラズマ処理装置100を、誘導結合プラズマ(ICP)型のプラズマ処理装置とした場合を例に説明する。
プラズマ処理装置100は、金属製(例えばアルミニウム製)の筒状に形成された処理室(チャンバ)102を備える。
処理室102の底部には、半導体ウエハ(以下「ウエハ」とも称する。)Wを載置するための載置台110が設けられている。載置台110は、アルミニウムなどで円柱状に成形されている。載置台110には、ヒータ111が設けられている。ヒータ111は、ヒータ電源112に接続され、ヒータ電源112から供給される電力により発熱する。載置台110は、ヒータ111によってウエハWの温度を制御する。なお、図示しないが、載置台110にはウエハWを静電気力により吸着保持する静電チャックや冷媒流路などの温度調整機構等、必要な機能を設けることができる。プラズマ処理装置100は、エッチング装置として用いる場合、載置台110にはイオンをウエハWに引き込むための高周波バイアスが印加される。
処理室102の天井部には、例えば、石英ガラスやセラミックなどで構成された板状の誘電体104が載置台110に対向するように設けられている。具体的には誘電体104は例えば円板状に形成され、処理室102の天井部に形成された開口を塞ぐように気密に取り付けられている。
処理室102には、ウエハWの処理に用いる各種のガスを供給するガス供給部120が接続される。処理室102の側壁部には、ガス導入口121が形成されている。ガス導入口121には、ガス供給配管122を介してガス供給部120が接続されている。
ガス供給部120は、ウエハWの処理に用いる各種のガスのガス供給源に、それぞれガス供給ラインを介して接続されている。各ガス供給ラインは、基板処理のプロセスに対応して適宜分岐し、開閉バルブ、流量制御器が設けられている。ガス供給部120は、各ガス供給ラインに設けられた開閉バルブや流量制御器を制御することにより、各種のガスの流量を制御する。ガス供給部120は、基板処理のプロセスに応じて各種のガスをガス導入口121に供給する。ガス導入口121に供給された各種のガスは、ガス導入口121から処理室102内に供給される。なお、図1では、ガス供給部120を処理室102の側壁部からガスを供給するように構成した場合を例に挙げているが、必ずしもこれに限られない。例えば処理室102の天井部からガスを供給するように構成してもよい。この場合には、例えば、誘電体104の中央部にガス導入口を形成して、誘電体104の中央部からガスを供給するようにしてもよい。
処理室102の底部には、処理室102内の雰囲気を排出する排気部130が排気管132を介して接続されている。排気部130は、例えば、真空ポンプにより構成され、処理室102内を所定の圧力まで減圧する。処理室102の側壁部には、ウエハ搬出入口134が形成されている。ウエハ搬出入口134には、ゲートバルブ136が設けられている。例えば、ウエハWを搬入する際には、ゲートバルブ136を開いて図示しない搬送アームなどの搬送機構によってウエハWを処理室102内の載置台110上に載置し、ゲートバルブ136を閉じてウエハWの処理を行う。
処理室102の天井部には、誘電体104の上側面(外側面)に平面状の高周波アンテナ140と、高周波アンテナ140を覆うシールド部材160が配設されている。高周波アンテナ140は、アンテナ素子142が設けられている。アンテナ素子142は、例えば銅、アルミニウム、ステンレスなどの導体で構成された渦巻きコイル状に形成される。アンテナ素子142には、高周波電源150が接続されている。高周波電源150は、プラズマを生成するアンテナ素子142に所定の周波数の高周波(例えば40MHz)を所定のパワーで供給する。なお、高周波電源150から出力される高周波は、上述した周波数に限られるものではない。例えば13.56MHz,27MHz,40MHz,60MHzなど様々な周波数の高周波を供給できる。
アンテナ素子142に高周波電源150から高周波が供給されると、処理室102内には、誘導磁界が形成される。形成された誘導磁界によって、処理室102内に導入されたガスが励起され、ウエハW上にプラズマが生成される。なお、高周波アンテナ140は、アンテナ素子142が複数設けられ、それぞれのアンテナ素子142に高周波電源150から同じ周波数または異なる周波数の高周波が印加されてもよい。例えば、プラズマ処理装置100は、高周波アンテナ140に、誘電体104の中央部と周辺部に分けてアンテナ素子142をそれぞれ設け、誘電体104の中央部と周辺部でそれぞれプラズマを制御してもよい。また、プラズマ処理装置100は、処理室102の天井部に設けられる高周波アンテナ140の他に、載置台110を構成する下部電極に高周波電力を供給し、プラズマを生成してもよい。
プラズマ処理装置100は、生成したプラズマによって、ウエハWに対して、エッチングや成膜などのプラズマ処理を実施することができる。
上記構成のプラズマ処理装置100は、制御部190によって動作が統括的に制御される。制御部190は、CPUを備えプラズマ処理装置100の各部を制御するプロセスコントローラ191と、ユーザインターフェース192と、記憶部193とを備える。
プロセスコントローラ191は、プラズマ処理装置100の各種の動作を制御する。例えば、プロセスコントローラ191は、ガス供給部120からの各種のガスの供給動作を制御する。また、プロセスコントローラ191は、高周波電源150からアンテナ素子142に供給する高周波の周波数およびパワーを制御する。また、プロセスコントローラ191は、ヒータ電源112からヒータ111へ供給する電力を制御してヒータ111の発熱量を制御することで、ウエハWの温度を制御する。
ユーザインターフェース192は、オペレーターがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
記憶部193には、プラズマ処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ191の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース192からの指示等にて任意のレシピを記憶部193から呼び出してプロセスコントローラ191に実行させることで、プロセスコントローラ191の制御下で、プラズマ処理装置100での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体などに格納された状態のものを利用したり、または、他の装置から、例えば、専用回線を介して随時伝送させてオンラインで使用したりすることも可能である。コンピュータ記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等が挙げられる。
次に、本実施形態に係る加熱装置の構成の一例を説明する。図2は、実施形態に係る加熱装置の概略構成の一例を示す図である。本実施形態では、加熱装置200は、図1示したプラズマ処理装置100と別体に設けられており、図示しない搬送アームなどの搬送機構によってウエハWが加熱装置200とプラズマ処理装置100に搬送される。
加熱装置200は、金属製(例えばアルミニウム製)の筒状(例えば円筒状)に形成された処理室202を備える。
処理室202の底部には、ウエハWを載置するための載置台210が設けられている。載置台210は、アルミニウムなどで円柱状に成形されている。載置台210には、ヒータ211が設けられている。ヒータ211は、ヒータ電源212に接続され、ヒータ電源212から供給される電力により発熱する。載置台210は、ヒータ211によってウエハWの温度を制御する。なお、図示はしないが、載置台210にはウエハWを静電気力により吸着保持する静電チャック等、必要に応じて様々な機能を設けることができる。
処理室202の底部には、処理室202内の雰囲気を排出する排気部230が排気管232を介して接続されている。排気部230は、例えば、真空ポンプにより構成され、処理室202内を所定の圧力まで減圧する。処理室202の側壁部には、ウエハ搬出入口234が形成されている。ウエハ搬出入口234には、ゲートバルブ236が設けられている。例えば、ウエハWを搬入する際には、ゲートバルブ236を開いて図示しない搬送アームなどの搬送機構によってウエハWを処理室202内の載置台210上に載置し、ゲートバルブ236を閉じてウエハWの処理を行う。
加熱装置200は、載置台210に載置されたウエハWをヒータ211によって所定の温度に加熱する加熱処理を実施する。
上記構成の加熱装置200は、制御部290によって動作が統括的に制御される。制御部290は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROMまたは補助記憶装置に格納されたプログラムや、プラズマ処理のプロセス条件に基づいて動作し、装置全体の動作を制御する。なお、制御部290は、加熱装置200の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。制御部290が外部に設けられている場合、制御部290は、有線または無線等の通信手段によって、加熱装置200を制御することができる。
次に、本実施形態に係る基板処理方法について説明する。半導体装置を製造する際、ウエハWには、自然酸化膜が形成される場合がある。この自然酸化膜を除去する必要がある場合がある。
図3は、酸化膜が形成されたウエハの一例を示す図である。ウエハWは、下地となるシリコン(Si)層10上に、SiO2膜11が設けられている。SiO2膜11には、パターンPが形成されている。図3では、パターンPとして、Si層10に到達する開口がSiO2膜11に形成されている。ウエハWは、SiO2膜11の上面およびパターンPが形成された側面がSiN膜12で覆われている。また、ウエハWは、パターンPが形成された底部のSi層10に自然酸化膜14(SiO2)が形成されている。Si層10は、自然酸化膜14の下部となる部分がシリコンゲルマニウムなどに変化しているため、パターンを変えて示している。この自然酸化膜14を、例えば、特許文献1の技術を用いて、SiN膜12を維持したまま除去することが考えられる。
しかし、SiN膜12は、前工程などにおいて、ダメージを受けている場合がある。その場合、例えば、特許文献1の技術を用いるとSiN膜12が除去されてしまう。
そこで、本実施形態では、次のような基板処理を行って自然酸化膜14などの酸化膜を除去する。図4は、実施形態に係る酸化膜を除去する基板処理の流れの一例を説明する図である。図4(A)には、図3と同様に、自然酸化膜14が形成されたウエハWが示されている。
最初に、ウエハWにシリコン含有膜を成膜する。例えば、図4(B)に示すように、Atomic Layer Deposition(ALD)により、ウエハWにSiO2膜20を成膜する。例えば、プラズマ処理装置100は、ガス供給部120からシリコン(Si)を含有する原料ガスを処理室102に供給してウエハW表面に原料ガスを吸着させる。ウエハWに吸着する原料ガスの吸着量は、供給時間と共に増加し飽和する。ここで言う飽和とは、最表面に化学吸着が進み、それ以上化学吸着が進まない状態や、吸着するサイトがすべて占有されて吸着が進まない状態である。次いで、プラズマ処理装置100は、ガス供給部120から反応ガスを処理室102に供給すると共に、高周波電源150からアンテナ素子142に高周波電力を印加してプラズマを生成する。これにより、反応ガスが活性化し、ウエハWに吸着した原料ガスを反応ガスの活性種が改質して成膜される。原料ガスとしては、例えば、トリジメチルアミノシラン(TDMAS)、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)が用いられる。反応ガスとしては、酸素(O2)ガス等の酸化ガスを用いることができる。反応ガスは、プラズマ化されてウエハWに供給される。ALDを用いて成膜を行う場合、プラズマ処理装置100は、原料ガスおよび反応ガスを交互に供給するサイクルを複数回繰り返すことにより、所望の膜厚の薄膜を形成する。ALDでは、ウエハWに吸着する原料ガスの吸着量を飽和させているため、パターンPの上面、側面および底面に膜を均一に成膜できる。
次に、エッチングガス、例えば、フルオロカーボンガスを用いてプラズマを生成してウエハWに対して異方性のエッチング処理を行ってALD膜(SiO2膜20)をエッチバックする。プラズマ処理装置100は、ガス供給部120から、C4F8ガスなどのフルオロカーボンガス(CxFy)を処理室102に供給すると共に、高周波電源150からアンテナ素子142に高周波電力を印加してプラズマを形成してエッチングする。フルオロカーボンガスを用いてエッチングすると、ウエハWの表面に堆積物が多く生じて膜21が形成される。一方、図4(C)に示すように、パターンPの底部のSiO2膜20および自然酸化膜14上がエッチングされて除去される。
次に、ALD膜(SiO2膜20)を除去するChemical Removal(CR)処理を行う。CR処理とは、化学反応により除去対象を除去(エッチング)する処理である。CR処理の詳細は、後述する。これにより、図4(D)に示すように、SiN膜12にダメージがある場合でも、SiN膜12が除去されることを抑制しつつ自然酸化膜14を除去できる。
なお、図4の例では、ウエハWの非エッチング対象とされた、パターンPの底部以外の領域に選択的にSiO2膜20を成膜するため、ALDによりSiO2膜20を等方的に成膜した後、異方性エッチングによりエッチバックした。しかし、成膜方法は、ALDに限定されるものではなく、何れの方式であってもよい。例えば、成膜方法は、Chemical Vapor Deposition(CVD)、Physical Vapor Deposition(PVD)、Direct Current Superposition(DCS)、不飽和ALDであってもよい。不飽和ALDは、原料ガスの吸着を飽和させない、あるいは、ウエハWに吸着した原料ガスの改質を飽和させない、あるいは、原料ガスの吸着とウエハWに吸着した原料ガスの改質を飽和させない、ALDである。不飽和ALDは、原料ガスを表面全体に吸着させない場合の他、完全に改質させない場合もある。DCSは、電極材料をスパッタし基板上に成膜する成膜方法である。例えば、DCSでは、プラズマ処理装置において、電極材料を含んだ上部電極に負の直流電圧を印加して電極材料をスパッタし基板上に成膜する。DCSの詳細については、例えば、米国特許出願公開第2018/0151333号明細書に開示されている。
図5は、実施形態に係る酸化膜を除去する基板処理の流れの他の一例を説明する図である。図5(A)には、図3と同様に、自然酸化膜14が形成されたウエハWが示されている。
最初に、ウエハWにシリコン含有膜を成膜する。例えば、図5(B)に示すように、CVDにより、ウエハWにSiO2膜20を成膜する。例えば、プラズマ処理装置100は、ガス供給部120から、例えば、SiCl4ガス、O2ガスを処理室102に供給すると共に、高周波電源150からアンテナ素子142に高周波電力を印加してプラズマを形成してウエハWにSiO2膜20を成膜する。
次に、例えば、フルオロカーボンガスを用いてプラズマを生成してウエハWに対して異方性のエッチング処理を行ってSiO2膜20をエッチバックする。これにより、図5(C)に示すように、パターンPの底部のSiO2膜20および自然酸化膜14上が主にエッチングされて除去される。
次に、SiO2膜20を除去するCR処理を行う。CR処理の詳細は、後述する。これにより、図5(D)に示すように、SiN膜12にダメージがある場合でも、SiN膜12が取れることを抑制しつつ自然酸化膜14を除去できる。
図6は、実施形態に係る酸化膜を除去する基板処理の流れの他の一例を説明する図である。図6(A)には、図3と同様に、自然酸化膜14が形成されたウエハWが示されている。
最初に、ウエハWにシリコン含有膜を成膜する。例えば、図6(B)に示すように、不飽和ALDにより、ウエハWにSiO2膜20を成膜する。不飽和ALDでは、ウエハWの表面やパターンPの側面となる部分にSiO2膜20が成膜される。このため、エッチバックを行うことなく、ウエハWの非エッチング対象とされた、パターンP底部以外の領域に選択的にSiO2膜20を成膜できる。
次に、SiO2膜20を除去するCR処理を行う。CR処理の詳細は、後述する。これにより、図6(C)に示すように、SiN膜12にダメージがある場合でも、SiN膜12が除去されることを抑制しつつ自然酸化膜14を除去できる。
次に、本実施形態に係るCR処理について説明する。図7は、実施形態に係るCR処理の流れの一例を説明する図である。図7(A)に示すウエハWは、下地となるSi層10上に、SiO2膜20が設けられている。
最初に、SiO2膜20が設けられているウエハWの表層に、反応層をプラズマにより形成する。プラズマ処理装置100は、ガス供給部120から、NF3ガス、NH3ガス、Arガスなどのガスを導入し、プラズマを生成する。これにより、図7(A)に示すように、NHxFyが生成される。例えば、以下のような反応により、NH4F、NH4・HFなどのNHxFyが生成される。
NF3+NH3 →NHxFy(NH4F+NH4・HFなど)
生成されたNH4F、NH4・HFは、SiO2膜と以下のように反応し、図7(B)に示すように、反応層として(NH4)2SiF6(アンモニウムフルオロシリケート(ammonium fluorosilicate)が形成される。以下、(NH4)2SiF6を「AFS」とも称する。なお、CR処理では、AFSの形成をガス供給のみで行ってもよい。例えば、HFガスとNH3ガスを供給することで、AFSを形成できる。AFSは、プラズマを用いて成膜すると、反応速度が向上し、プラズマを用いずに成膜するとダメージレスで成膜できる。
NHxFy+SiO2→(NH4)2SiF6+H2O↑
AFSは、100℃よりも高くなると昇華する。このため、反応層を形成する際、ウエハWを100℃以下の所定温度に制御する。プラズマ処理装置100は、例えば、ヒータ電源112からヒータ111へ供給する電力を制御してヒータ111の発熱量を制御することで、ウエハWを100℃以下の所定温度に制御する。
次に、ウエハWにエネルギーを与えて反応層を除去する。反応層は、例えば、電子線、プラズマ、熱、マイクロ波などにより反応層にエネルギーを与えることで除去できる。例えば、図7(C)に示すように、ウエハWを加熱して反応層を除去する。本実施形態では、ウエハWを100℃以上の所定温度(例えば、300℃)に加熱する。これにより、以下に示すような反応が生じて(NH4)2SiF6が昇華する。これにより、ウエハWから膜(例えば、SiO2膜20)が除去される。なお、反応層を電子線、プラズマ、マイクロ波などによりエネルギーを与えて除去してもよい。
(NH4)2SiF6 →SiF4+2NH3+2HF
ここで、プラズマ処理装置100により、ウエハWを、例えば、300℃に加熱した場合、載置台110の温度も高くなり、次のウエハWに対して基板処理が実施可能となるまで時間が長くなり、生産性が低下する。AFS形成後のウエハWを加熱装置200に搬送し、加熱装置200によりウエハWを100℃以上の所定温度(例えば、300℃)に加熱する。このように、プラズマ処理装置100と加熱装置200により基板処理を実施することで、処理間の温度昇降の時間を削減できるので基板処理の生産性を向上させることができる。なお、本実施形態では、プラズマ処理装置100と加熱装置200により基板処理を実施する場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、プラズマ処理装置100によりウエハWを加熱して反応層を除去してもよい。これにより、単一のプラズマ処理チャンバ102で基板処理を実施できる。
CR処理は、SiまたはSiNのエッチングレートに比べてSiO2を高いエッチングレートで除去できる。図8は、実施形態に係るCR処理によるエッチング量の一例を示す図である。図8には、NF3ガス、NH3ガスなどのガスを導入しつつプラズマを生成するプラズマ処理時間を変えた場合の、Si、SiNおよびSiO2のエッチング量の変化が示されている。図8に示すように、CR処理は、SiおよびSiNに比べてSiO2のエッチング量が大きく、SiまたはSiNのエッチングレートに比べてSiO2を高いエッチングレートで除去できる。
なお、CR処理では、パーティクルの除去やウエハWの状態を調整するために加熱、プラズマ処理等の前処理を実施してもよい。
次に、本実施形態に係る基板処理の流れを簡単に説明する。図9は、実施形態に係る基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。ウエハWは、基板処理を実施する際に、搬送機構によって搬送されて加熱装置200およびプラズマ処理装置100に提供される。ウエハWには、例えば、図3に示したように、自然酸化膜14が形成されている。
ウエハWにシリコン含有膜を成膜する(ステップS10)。例えば、プラズマ処理装置100は、ALDによりウエハWにSiO2膜20を成膜する。そして、プラズマ処理装置100は、フルオロカーボンガスを用いてプラズマを生成してウエハWに対して異方性のエッチング処理を行ってSiO2膜20をエッチバックする。これにより、パターンPの底部のSiO2膜20および自然酸化膜14がエッチングされる。なお、例えば、図6に示した不飽和ALDなどにより、ウエハWの表面やパターンPの側面にSiO2膜20を成膜できる場合、エッチバックは行わなくてもよい。
次に、ウエハWの状態を調整するために加熱、プラズマ処理、インヒビター吸着等の前処理を実施する(ステップS11)。例えば、プラズマ処理装置100は、ヒータ電源112からヒータ111へ電力を供給してヒータ111によりウエハWをプレヒートする。
次に、反応層(例えばAFS)が昇華しないように、ウエハWを100℃以下の所定温度に制御する(ステップS12)。例えば、プラズマ処理装置100は、ヒータ電源112からヒータ111へ供給する電力を制御してヒータ111の発熱量を制御することで、ウエハWを100℃以下の所定温度に制御する。
次に、ウエハWの表層に反応層を形成する(ステップS13)。例えば、プラズマ処理装置100は、ガス供給部120から、NF3ガス、NH3ガス、ArガスなどのCR処理に用いる各種のガスを導入すると共にプラズマを生成する。これにより、ウエハWには、反応層として、AFSの層が形成される。
次に、ウエハWを加熱して反応層(例えばAFS)を昇華させることで反応層を除去する(ステップS14)。例えば、ウエハWを加熱装置200に搬送し、加熱装置200によりウエハWを100℃以上の所定温度(例えば、300℃)に加熱する。これにより、ウエハWからSiO2膜20が除去される。
なお、本実施形態に係る基板処理では、ステップS10~S14を1回実施する流れを例示したが、必要に応じてステップS10~S14を複数回繰り返してもよい。
以上のように、本実施形態に係る基板処理では、パターンPを有する処理対象の基板(ウエハW)の第1領域(パターンPの底部以外の領域)に選択的にシリコン含有膜(SiO2)を成膜する。次に、基板処理では、シリコン含有膜が成膜された基板の表層に反応層(AFS)をプラズマにより形成する。次に、基板処理では、基板を加熱して反応層を除去することで基板の第1領域以外の第2領域(パターンPの底部)に形成されたシリコン含有膜を除去する。これにより、本実施形態に係る基板処理は、第2領域に形成されたシリコン含有膜を除去できる。
また、基板(ウエハW)は、シリコン層10に設けられたSiO2膜11にシリコン層10に到達するパターンPが形成され、SiO2膜11の上面およびパターンPの側面がSiN膜12で覆われ、パターンPの底部のシリコン層10に自然酸化膜14が形成されている。基板処理では、少なくともパターンPの側面にSiO2膜20を成膜する。基板処理では、NF3ガスおよびNH3ガスを供給しつつプラズマを生成してSiO2膜20および自然酸化膜14と反応させて反応層として(NH4)2SiF6を形成する。また、基板処理では、反応層を除去することで自然酸化膜14を除去する。これにより、本実施形態に係る基板処理は、SiN膜12にダメージがある場合でも、SiN膜12が取れることを抑制しつつ自然酸化膜14を除去できる。
また、基板処理では、基板の温度を100℃以下として反応層を形成する。また、基板処理では、基板の温度を100℃以上として反応層を昇華させる。これにより、本実施形態に係る基板処理は、シリコン含有膜を除去するエッチング量を制御できる。
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
例えば、実施形態では、処理対象の基板を半導体ウエハとした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。処理対象の基板は、ガラス基板など、他の基板であってもよい。
また、実施形態では、プラズマ処理装置100をICP型のプラズマ処理装置とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。プラズマ処理装置100は、任意の形式のプラズマ処理装置であってよい。例えば、プラズマ処理装置100は、容量結合型平行平板のプラズマ処理装置であってよい。また、プラズマ処理装置100は、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ、リモートソースで生成したラジカルリッチプラズマを配管等を介して処理室102に供給するリモートソース型などのプラズマ処理装置であってよい。
また、実施形態では、ウエハWの加熱をヒータで行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ウエハWを加熱できれば、何れの加熱方式を用いてもよい。例えば、ウエハWをプラズマや、赤外線ランプ、電子線照射などで加熱してもよい。
また、実施形態では、プラズマ処理装置100と加熱装置200により基板処理を実施する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。実施形態に係る基板処理は、プラズマ処理装置100、加熱装置200以外の装置も組み合わせて実施してもよい。
また、本実施形態に係る基板処理では、ウエハWに形成されたSiO2などのシリコン含有膜と同種のシリコン含有膜(SiO2)を成膜する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、基板処理では、SiO2と異なるSiNなどのシリコン含有膜を成膜してもよい。例えば、図6に示した基板処理では、SiO2膜20を成膜したが、SiO2膜20の代わりに、ウエハWに対してCVDやALDによりSiN膜を成膜することで、パターンPの上面やパターンPの側面にSiN膜を成膜できる。自然酸化膜14は、CR処理を行うことで除去できる。また、SiN膜12は、新たなSiN膜で覆われる。このため、SiN膜12にダメージがある場合でも、CR処理によるSiN膜12が除去されることを抑制できる。
また、図9に示した基板処理の流れでは、ステップS10の後、前処理(ステップS11)を実施する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、前処理(ステップS11)は、ステップS10の前に実施してもよく、ステップS12の後に実施してもよい。
また、実施形態に係る基板処理は、パターンを有する処理対象の基板を提供する工程と、基板に膜を成膜する工程と、基板の表層に反応層をプラズマにより形成する工程と、基板にエネルギーを与えて反応層を除去する工程と、を有する。これにより、その他の様々な効果が得られることを見出した。以下、一例を用いて効果を説明する。
例えば、CR処理で形成される反応層の量は温度依存を持つ。このため、CR処理は、反応層を形成する際のウエハWの温度に応じて、SiO2膜を除去する量が変化する。図10は、実施形態に係るウエハの温度の変化によるエッチング量の変化の一例を示す図である。図10には、ウエハWの温度を10℃、50℃、90℃とした場合での、反応層を生成する処理時間に対するエッチング量の変化が示されている。ウエハWの温度を10℃とした場合は、処理時間が長くなるほどエッチング量が増加する。一方、ウエハWの温度を90℃とした場合は、エッチングがほぼ生じず、処理時間が長くなってもエッチング量がゼロ付近を推移する。一方、ウエハWの温度を50℃とした場合は、処理時間が短いとエッチング量が処理時間に応じて若干増加するが、処理時間が長くなるとエッチング量が増加せず、エッチング量が飽和する。図10の例では、ウエハWの温度が50℃の場合、処理時間が40秒以降、エッチング量が増加せず、エッチング量が飽和している。よって、CR処理では、反応層を形成する際のウエハWの温度を制御することにより、SiO2膜を除去する量を制御できる。反応層を形成する際のウエハWの温度をエッチング量が飽和する温度(例えば、50℃)としたCR処理を繰り返すことで、SiO2膜のエッチング量を精度よく制御できる。また、成膜処理とCR処理を組み合わせて実施することで、SiO2膜の膜厚を精度よく制御できる。
また、CR処理は、ウエハWのSiO2膜11に形成されたパターンPの粗密ある場合、同じ処理を行っても、パターンPの粗密に応じて、パターンPのエッチング量が変化する場合がある。また、CR処理は、パターンPのエッチング量が、反応層を形成する際のウエハWの温度によっても変化量が変化する。例えば、CR処理では、温度が低い場合、粗いパターンPの方が密なパターンPよりも大きく幅が変化し、温度が高い場合、密なパターンPの方が粗いパターンPよりも大きく幅が変化する。よって、CR処理は、反応層を形成する際のウエハWの温度を制御することで、パターンPの幅を制御できる。
また、成膜処理とCR処理を実施することで、ライン状のパターンPのLine Width Roughness(LWR)、Line Edge Roughness(LER)が改善する。図11は、実施形態に係るライン状のパターンのLWR、LERの改善を説明する図である。図11(A)には、ライン状のパターンPが示されている。成膜処理では、パターンPと同種の膜を成膜する。例えば、パターンPがSiO2膜に形成されている場合、成膜処理では、CVDによりSiO2を成膜する。CVDでは、パターンPの間の幅が広いところに多く成膜され、パターンPの間の幅が狭いところに少なく成膜される。これにより、図11(B)に示すように、ライン状のパターンPは、側面の凹凸が軽減される。しかし、パターンP間の幅は、成膜によって狭くなる。そこで、ライン状のパターンPにCR処理を実施する。例えば、反応層を生成する際のウエハWの温度を50℃としてCR処理を実施する。CR処理は、等方的にエッチングする。これにより、図11(C)に示すように、パターンP間の幅を当初と同等に戻すことができる。この図11(A)~(C)に示す成膜処理とCR処理を繰り返し実施することで、ライン状のパターンPのLWR、LERが改善する。
また、成膜処理とCR処理を実施することで、パターンPの形状を制御できる。成膜処理は、成膜方法によって成膜される領域および成膜量が異なる。例えば、CVDは、パターンPの上部に多く成膜される。ALDは、一様に成膜される。CR処理は、パターンPの下部よりも上部が若干多くエッチングする。よって、CVD、ALDなどの成膜処理とCR処理を繰り返し実施することで、パターンPの形状を制御できる。
図12は、実施形態に係るパターンの形状の変化の一例を示す図である。図12(A)には、ウエハWが示されている。ウエハWは、下地層30(例えばシリコン層)上に、パターンPが設けられている。パターンPは、例えば、SiO2膜に形成されている。図12(A)では、パターンPは、上部の幅が下部の幅よりも小さいテーパー状の形状とされている。例えば、CVDにより、パターンPと同種のSiO2膜31をウエハWに成膜する。CVDでは、上部(Top)ほど厚く成膜される。これにより、図12(B)に示すように、パターンPは、上部の幅が下部の幅と同程度(断面が矩形状)になる。その後、SiO2膜をCR処理する。CR処理は、等方的に略一様にエッチングする。これにより、図12(C)に示すように、パターンPを、上部の幅と下部の幅がほぼ等しく、側面が垂直な形状とすることができる。この後下地のエッチング対象膜をエッチングしてもよい。
図13は、実施形態に係るパターンの形状の変化の他の一例を示す図である。図13(A)には、初期状態のパターンPが示されている。初期状態のパターンPは、上部の幅と下部の幅がほぼ等しく、側面が垂直な形状とされている。図13(B)には、初期状態のパターンPにCVDを実施した場合のパターンPの一例を示している。CVDは、成膜時間が長くなるほど、上部が厚く成膜される。CVDの成膜時間を適切に制御することで、パターンPは、上部の幅が下部の幅よりも大きい逆テーパー状の形状となる。次に、SiO2膜32をCR処理する。CR処理は、等方的に略一様にエッチングする。これにより、図13(C)に示すように、パターンPを、下部の幅が当初より小さい、逆テーパー状の形状することができる。形状変更後のパターンを用いてエッチング対象膜をエッチングしてもよい。
図14は、実施形態に係るパターンの形状の変化の他の一例を示す図である。図14(A)には、下地層30上にパターンPが設けられている。また、例えば、CVDとCR処理を行うことで、パターンPの上部にSiO2膜31が形成されている。パターンPは、SiO2膜31が形成されたことにより、上部の幅と下部の幅が初期状態とほぼ等しい状態で、高さが増加している。さらにCR処理を行うと、図14(B)に示すように、パターンPの幅を小さくすることができる。形状変更後のパターンを用いてエッチング対象膜をエッチングしてもよい。
このように成膜処理とCR処理を実施することで、パターンPの形状(マスクの形状)を制御できる。
また、成膜処理で成膜するシリコン含有膜や、有機膜などの膜は、エッチングのマスクとして用いることができる。また、成膜処理で成膜するシリコン含有膜や、有機膜などの膜は、エッチングの保護膜として用いることができる。
図15は、実施形態に係る膜をマスクとして用いたエッチングの一例を示す図である。図15(A)に示すように、ウエハWには、被エッチング膜40が設けられている。被エッチング膜40は、例えば、Si膜またはSiN膜である。被エッチング膜40上には、マスク41(例えば、SiO2膜)が設けられている。マスク41には、パターンPが形成されている。例えば、CVDまたはALDにより、ウエハWにマスク41と同種の膜42(例えば、SiO2膜)を成膜する。これにより、マスク41を厚くできる。マスク41を用いて、被エッチング膜40をエッチングする。被エッチング膜40がSi膜である場合、ハロゲンガスでエッチングする。被エッチング膜40がSiN膜である場合、CHF系ガスでエッチングする。ここで、図15(A)に示すように、マスク41を厚くできることから、被エッチング膜40をより長時間エッチングできる。図15(B)に示すように、被エッチング膜40は、パターンPに沿ってエッチングされる。そして、膜42を除去する。例えば、SiO2膜を除去するCR処理を行う。これにより、図15(C)に示すように、マスク41および膜42などのSiO2膜を除去できる。
図16は、実施形態に係る膜を保護膜として用いたエッチングの一例を示す図である。図16(A)に示すように、ウエハWには、被エッチング膜40が設けられている。被エッチング膜40は、例えば、Si膜または、SiN膜である。被エッチング膜40上には、マスク41(例えば、SiO2膜)が設けられている。マスク41には、パターンPが形成されている。被エッチング膜40は、パターンPに沿ってエッチングされてホールHが形成されている。例えば、ALDにより、ウエハWに膜42(例えば、SiO2膜)を成膜する。これにより、図16(A)に示すように、マスク41の表面および被エッチング膜40のホールHの内面が膜42で覆われ、保護される。そして、異方性エッチングによりウエハWをエッチングする。これにより、図16(B)に示すように、ホールHの側壁を膜42で保護しつつホールHをさらに深くエッチングできる。そして、SiO2膜を除去するCR処理を行う。これにより、図16(C)に示すように、マスク41および膜42を除去できる。
次に、上述したような、エッチング処理を含んだ基板処理の流れを説明する。図17は、実施形態に係る基板処理の流れの他の一例を示すフローチャートである。図17に示す基板処理は、図9に示したS10の後に、さらにウエハWのエッチングする工程(ステップS20)を含む。これにより、パターン(マスク)を保護できるので、被エッチング膜40をより長時間エッチングできる。また、ホールHの側壁を保護しつつホールHをさらに深くエッチングできる。なお、図17に示した基板処理の流れでは、ステップS10の後、ステップS20を実施する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS20は、ステップS14の後に実施してもよい。
ところで、CR処理は、SiO2膜などのシリコン含有膜に反応層(AFS)を形成し、反応層を昇華させることで、シリコン含有膜をエッチングする。しかし、シリコン含有膜に、反応層の形成や、反応層の昇華を阻害する阻害要因となる膜を形成した場合、CR処理は、シリコン含有膜のエッチングが阻害される。図18Aは、実施形態に係る阻害要因となる膜の一例を示す図である。例えば、カーボン膜には、AFSを形成できない。このため、シリコン含有膜50にカーボンの膜(以下「カーボン膜」とも称する。)51が形成されている場合、CR処理を実施してもAFSが形成されないため、シリコン含有膜50のエッチングが阻害される。図18Bは、実施形態に係る阻害要因となる膜の他の一例を示す図である。例えば、SiCl4やSiBr4のガスを供給すると、シリコン含有膜50には、SiClxやSiBrxによる膜52を成膜される。シリコン含有膜50にSiClxやSiBrxの膜52が形成されている場合、AFSの形成でNF3ガス、NH3ガス、Arガスが供給されると、膜52は、AFSと共に、NH4F、NH4Cl、NH4Brなどの揮発しにくい物質による膜53に改質される。このため、シリコン含有膜50にSiClxやSiBrxの膜52が形成されている場合、CR処理を実施してもAFSが揮発しにくくなるため、シリコン含有膜50のエッチングが阻害される。
図19は、実施形態に係るCR処理によるパターンの形状の変化の一例を説明する図である。図19(A)には、ウエハWの一例が示されている。ウエハWは、下地となる下地層30(例えばシリコン層)上に、SiO2膜32が設けられている。SiO2膜32には、パターンPが形成されている。図19は、ウエハWに阻害要因となる膜を設けていない場合のCR処理によるパターンPの形状の変化を示している。CR処理では、NF3ガス、NH3ガス、Arガスなどの各種のガスを導入すると共にプラズマを生成する。これにより、SiO2膜32には、図19(B)に示すように、AFSの層33が形成される。そして、CR処理では、ウエハWを加熱し、AFSの層33を除去する。これにより、図19(C)に示すように、SiO2膜32がエッチングされて各パターンPが全体的に小さくなり、パターンP間の幅が広くなってなる。
図20は、実施形態に係る成膜処理およびCR処理によるパターンの形状の変化の一例を説明する図である。図20(A)には、図19と同様に、パターンPが形成されたウエハWが示されている。図20は、阻害要因となる膜を成膜した場合のCR処理によるパターンの形状の変化を示している。例えば、CH4やArのガスを供給すると共にプラズマを生成して、図20(B)に示すように、阻害要因となる膜としてカーボン膜51をウエハWに成膜する。なお、カーボン膜51は、ALDにより成膜してもよい。このカーボン膜51が形成されたウエハWにCR処理を実施した場合、カーボン膜51にAFSが形成されないため、図20(C)に示すように、エッチングされない。カーボン膜51は、O2ガスを供給すると共にプラズマを生成することで、図20(D)に示すように、除去できる。
図21は、実施形態に係る成膜処理およびCR処理によるパターンの変化の一例を示す図である。図21の「初期」には、ウエハWに形成されたパターンPの初期形状が示されている。また、パターンPの高さ(Height)が示されている。また、パターンP上部でのパターンP間の幅がTop-CD(Critical Dimension)として示されている。
図21の「CR」は、阻害要因となる膜を設けずに、CR処理を実施した際のパターンPの形状の変化を示している。「CR」は、CR処理を5サイクル実施した結果である。「CR」は、パターンPの高さが初期状態から減少している。また、「CR」では、パターンPの幅が初期状態から減少してため、パターンP間の幅(Top-CD)が初期状態から増加している。
図21の「SiCl4+CR」は、阻害要因となる膜としてSiClxを成膜してCR処理を実施した際のパターンPの形状の変化を示している。「SiCl4+CR」は、SiCl4ガスを供給しつつプラズマを生成してSiClxの膜をSiO2膜32に成膜した後、CR処理を実施し、O2ガスを供給しつつプラズマを生成してSiClxを除去することを1サイクルとし、5サイクル実施した結果である。「SiCl4+CR」では、SiClxを成膜した影響でパターンPの高さが初期状態から若干増加している。また、「SiCl4+CR」では、SiClxを成膜した影響でパターンPの幅が横方向にも若干増加しており、パターンP間の幅(Top-CD)が初期状態から若干減少している。
図21の「Carbon+CR」は、阻害要因となる膜としてカーボン膜を成膜してCR処理を実施した際のパターンPの形状の変化を示している。「Carbon+CR」では、SiCl4ガスを供給しつつプラズマを生成してカーボン膜をSiO2膜32に成膜した後、CR処理を実施し、O2ガスを供給しつつプラズマを生成してカーボン膜を除去することを1サイクルとし、5サイクル実施した結果である。「Carbon+CR」では、パターンPの高さおよびパターンP間の幅が初期状態と同程度なっている。
図22は、実施形態に係るパターンの高さ、幅の変化の一例を示す図である。図22の下部には、図21に示した「CR」、「SiCl4+CR」、「Carbon+CR」についての「初期」からのパターンPの高さ(Height)の変化量、パターンPの幅(CD/2)の変化量が示されている。なお、パターンPは、両側面がそれぞれエッチングされるため、パターンPの幅の変化量は、「初期」からのパターンP間の幅(Top-CD)の変化量の1/2の値としている。また、図22の上部には、「CR」、「SiCl4+CR」、「Carbon+CR」についての「初期」からのパターンPの高さ(Height)の変化量、パターンPの幅(CD/2)の変化量をエッチング量としてグラフに示している。例えば、「CR」は、パターンPの高さ(Height)の変化量が9nm、パターンPの幅(CD/2)の変化量が8.4nmとなっており、パターンPが縦方向および横方向にもエッチングされている。「SiCl4+CR」は、パターンPの高さ(Height)の変化量が-4.2nm、パターンPの幅(CD/2)の変化量が-0.6nmとなっており、SiClxを成膜した影響でパターンPが縦方向に増加している。「Carbon+CR」は、パターンPの高さ(Height)の変化量が0.905nm、パターンPの幅(CD/2)の変化量が-1.3nmとなっており、パターンPの高さおよびパターンP間の幅の変化が小さいことからパターンPのエッチングが阻害されている。
実施形態に係る基板処理では、このような阻害要因となる膜を成膜した後、CR処理を実施することで、パターンPの形状を制御できる。図23は、実施形態に係る成膜処理およびCR処理によるパターンの形状の変化の一例を説明する図である。図23(A)には、図19と同様に、パターンPが形成されたウエハWが示されている。例えば、CH4やArのガスを供給すると共にプラズマを生成して、図23(B)に示すように、阻害要因となる膜としてカーボン膜51をウエハWに成膜する。なお、カーボン膜51は、ALDにより成膜してもよい。そして、O2ガスを導入してプラズマを生成することで、図23(C)に示すように、パターンPの上部のカーボン膜51を除去する。O2ガスによるプラズマは、パターンPの上部側からカーボン膜51をエッチングする。このため、プラズマの処理時間等の条件を調整することで、パターンPの上部のカーボン膜51を除去できる。このようにパターンPの上部のカーボン膜51が除去されたウエハWにCR処理を実施する。CR処理では、図23(D)に示すように、SiO2膜11は、カーボン膜51が除去されたパターンPの上部にAFSの層33が形成され。このため、パターンPの上部側がエッチングされる。そして、O2ガスを供給すると共にプラズマを生成してカーボン膜51を除去する。これにより、図23(E)に示すように、パターンPの幅を大きく変えることなく、パターンPの高さを低くすることができる。
図24は、実施形態に係る成膜処理およびCR処理によるパターンの変化の一例を示す図である。図24には、図21に示した「初期」、「CR」、「Carbon+CR」のパターンPの形状の変化が示されている。
図24の「Carbon+Mod.+CR」は、図23に示したように、阻害要因となる膜としてカーボン膜51を成膜し、パターンPの上部のカーボン膜51を除去してCR処理を実施した際のパターンPの形状の変化を示している。「Carbon+Mod.+CR」では、パターンPの高さが初期状態から減少している。また、「Carbon+Mod.+CR」では、パターンPの幅が初期状態から若干減少しており、パターンP間の幅が初期状態から若干増加している。この理由は、パターンPの上側のカーボン膜51が除去されてパターンPの上側の側面もエッチングされてしまうためである。図23に示すように、「Carbon+Mod.+CR」では、パターンPの上側で幅が減少している。
図25は、実施形態に係るパターンの高さ、幅の変化の一例を示す図である。図25の下部には、図24に示した「CR」、「Carbon+CR」、「Carbon+Mod.+CR」についての「初期」からのパターンPの高さ(Height)の変化量、パターンPの幅(CD/2)の変化量が示されている。「CR」および「Carbon+CR」は、図22と同じものを示している。また、図24の上部には、「CR」、「Carbon+CR」、「Carbon+Mod.+CR」についての「初期」からのパターンPの高さ(Height)の変化量、パターンPの幅(CD/2)の変化量をエッチング量としてグラフに示している。「Carbon+Mod.+CR」は、パターンPの高さ(Height)の変化量が11.6nm、パターンPの幅(CD/2)の変化量が3.565nmとなっており、パターンPの横方向よりも縦方向が大きくエッチングされる。このように、阻害要因となる膜の成膜処理とCR処理を実施することで、パターンPを横方向よりも縦方向に大きくエッチングでき、パターンPの形状(マスクの形状)を制御できる。
また、上記の実施形態に係るプラズマ処理装置100では、ウエハWが載置される載置台110の載置面全面にヒータ111を1つ設けて、ウエハWの温度を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。載置台110の載置面を複数のゾーンに分割し、それぞれのゾーンにヒータ111を設けて、ゾーンごとにウエハWの温度を制御してもよい。載置台110の載置面は、同心円状に分割されてもよく、さらに、周方向に分割されてもよい。図26は、実施形態に係る載置台の載置面のゾーン分割の一例を示す図である。図26には、載置台110の載置面115が示されている。載置面115にはウエハWが載置される。載置面115は、複数のゾーン116に分割されている。図26の例では、載置面115は、同心円状に分割され、さらに周方向に分割されている。成膜処理およびCR処理は、温度によって成膜量やエッチング量が変化する。よって、このように載置面115を複数のゾーン116に分割し、ゾーン116ごとにウエハWの温度を制御することで、各ゾーン116に対応するウエハWの領域ごとにパターンPの形状を制御できる。例えば、成膜処理では、ウエハWのセンターとエッジとでパターンPのCDがばらつくことが多い。そこで、載置台110の載置面115の各ゾーン116の温度をCDのばらつきが小さくなるように温度制御することで、形成されるパターンPのCDをそろえることができる。なお、温度制御は、パターンPのCDを均一にする制御に限定されるものではなく、パターンPのCDがあえて不均一となるように制御してもよい。例えば、後工程でパターンPのCDがウエハWのセンターとエッジで不均一となる場合、後工程の後にパターンPのCDの均一とするため、ウエハWのセンターとエッジでパターンPのCDが不均一となるように各ゾーン116の温度を制御してもよい。
図27は、実施形態に係る被処理体の温度と成膜量との関係の一例を説明するための図である。基板処理装置において処理されるウエハWは例えば、直径約300mmの円盤形状である。ウエハWに対して成膜処理を実行するときウエハWの温度によって成膜量が変動することが知られている。図27の(A)は、ウエハWの温度と成膜量との関係を示す。(A)に示すように、ウエハW温度が高くなると成膜量は増加し、ウエハW温度が低くなると成膜量が減少する。
他方、エッチング等の処理時にはウエハWの中心部分では形状異常(例えばボーイング)が小さく、ウエハWのエッジ部分で形状異常が大きくなる傾向があることが知られている。
そこで、形状異常が小さい傾向がある中心部の温度を、形状異常が大きい傾向があるエッジ部よりも低くなるよう載置台110の各ゾーン116の温度を制御する。このように制御すれば、形成される膜の膜厚をウエハWの半径方向位置に応じて調整することができ、形成される膜の面内均一性を向上できる。
また、膜厚制御のために図27の(B)に示すように径方向および周方向に分割された複数のゾーンを設けて、各々独立に温度制御できるようにすることで、面内均一性の向上以外にも、温度制御を利用できる。例えば、ウエハWの位置ごとに形成する膜の厚みを変える等の処理も実現できる。