JP7336738B2 - 撥水部材、並びにそれを用いた建築部材及び水廻り部材 - Google Patents

撥水部材、並びにそれを用いた建築部材及び水廻り部材 Download PDF

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Description

本発明は、撥水部材、並びにそれを用いた建築部材及び水廻り部材に関する。
近年、外壁材などの建築部材や、キッチン、バス、トイレなどの水廻り部材に撥水性を付与することにより、水垢など汚れを付着し難くしたり、付着した場合でも除去し易くする要求が高まっている。そのため、これらの部材に撥水性を付与する研究が盛んに行われている。
特許文献1では、基材と、該基材上に設けられた、光触媒性酸化物とシリコーン樹脂またはシリカと撥水性フッ素樹脂とを含有している表面層と、を備える防汚性部材を開示している。そして、表面層の最表面には、撥水性樹脂と光触媒性酸化物が微視的に分散しかつ露出して存在しており、光触媒性酸化物は、光触媒作用により光触媒性酸化物自らが親水化している。この表面では、親水性部分になじみ易い親水性の付着物は隣接する疎水性部分になじまず、疎水性部分になじみ易い疎水性の付着物は隣接する親水性部分になじまないため、親水性付着物も疎水性付着物も部材表面に付着し難いことが記載されている。
特開2001-88247号公報
特許文献1の防汚性部材において、表面層はゾルゲル法により形成されている。具体的には、光触媒性酸化物とシリカゾルとアルコキシシランと撥水性樹脂と溶媒とを混合してなるコーティング液を基材の表面に塗布した後、熱処理を施すことにより、表面層を形成している。そのため、得られた表面層は、溶媒の揮発に起因して多数の気孔を有していることから、長期間の使用により撥水性樹脂は大気と接触して酸化劣化してしまうという問題があった。また、基材と表面層とは熱膨張率に差があることから、長期間の使用により基材から表面層が剥離してしまうという問題があった。さらに、ゾルゲル法では膜厚の薄い表面層しか得られないため、摩擦等の物理力や経年劣化によっても表面層が剥離してしまうという問題があった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、撥水性樹脂を用いた場合でも長期的に安定な撥水部材、並びに当該撥水部材を用いた建築部材及び水廻り部材を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る撥水部材は、金属酸化物及び金属水酸化物の少なくとも一方を含む無機物質によって構成されるマトリックス部と、マトリックス部の内部に分散した状態で存在する撥水性樹脂とを含有し、マトリックス部の断面における気孔率が20%以下である。
本発明の第二の態様に係る建築部材は、上述の撥水部材を備える。
本発明の第三の態様に係る水廻り部材は、上述の撥水部材を備える。
図1は、本実施形態に係る撥水部材の一例を概略的に示す断面図である。 図2(a)は、本実施形態に係る撥水部材の断面を拡大して示す概略図である。図2(b)は、無機物質の粒子群の粒界近傍を概略的に示す断面図である。 図3は、本実施形態に係る撥水部材の他の例を概略的に示す断面図である。 図4は、本実施形態に係る撥水部材の他の例を概略的に示す断面図である。 図5は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置1の反射電子像を示す図である。 図6は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置1の反射電子像を二値化したデータを示す図である。 図7は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置2の反射電子像を示す図である。 図8は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置2の反射電子像を二値化したデータを示す図である。 図9は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置3の反射電子像を示す図である。 図10は、実施例1-1の試験サンプルにおいて、位置3の反射電子像を二値化したデータを示す図である。 図11Aは、実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルにおいて、飛行時間型二次イオン質量分析法による表面分析結果を示す図である。 図11Bは、実施例2-4及び比較例2-1の試験サンプルにおいて、飛行時間型二次イオン質量分析法による表面分析結果を示す図である。 図12は、参考例で用いた水硬性アルミナのX線回折パターン、並びにICSDに登録されたベーマイト(AlOOH)及びギブサイト(Al(OH))のパターンを示すグラフである。 図13は、参考例の試験サンプルのX線回折パターン、並びにICSDに登録されたベーマイト及びギブサイトのX線回折パターンを示すグラフである。
以下、図面を参照して本実施形態に係る撥水部材、並びに当該撥水部材を用いた建築部材及び水廻り部材について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[撥水部材]
本実施形態の撥水部材100は、図1に示すように、無機物質によって構成されるマトリックス部10と、マトリックス部10の内部に分散した状態で存在する撥水性樹脂20とを有している。マトリックス部10は、図2に示すように、無機物質からなる複数の粒子11により構成されており、無機物質の粒子11同士が互いに結合することにより、マトリックス部10が形成されている。
マトリックス部10を構成する無機物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有していることが好ましい。本明細書において、アルカリ土類金属は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムに加えて、ベリリウム及びマグネシウムを包含する。卑金属は、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、すず、水銀、タリウム、鉛、ビスマス及びポロニウムを包含する。半金属は、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルを包含する。この中でも、無機物質は、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有していることが好ましい。これらの金属元素を含有する無機物質は、後述するように、加圧加熱法により、無機物質に由来する連結部を容易に形成することが可能となる。
無機物質は、上記金属元素の酸化物及び水酸化物の少なくとも一つを含有することが好ましい。また、無機物質は、上記金属元素の酸化物及び水酸化物の少なくとも一つを主成分として含有することがより好ましい。つまり、無機物質は、上記金属元素の酸化物及び水酸化物の少なくとも一つを50mol%以上含有することが好ましく、80mol%以上含有することがより好ましい。なお、上述の金属元素の酸化物は、金属元素に酸素のみが結合した化合物に加え、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩及びホウ酸塩を包含している。このような無機物質は、大気中の酸素及び水蒸気に対する安定性が高いことから、マトリックス部10の内部に撥水性樹脂20を分散させることにより、撥水性樹脂20と酸素及び水蒸気との接触を抑制して、撥水性樹脂20の劣化を抑えることができる。
マトリックス部10を構成する無機物質は、酸化物であることが特に好ましい。無機物質が上記金属元素の酸化物からなることにより、より耐久性の高い撥水部材100を得ることができる。なお、金属元素の酸化物は、金属元素に酸素のみが結合した化合物であることが好ましい。
マトリックス部10を構成する無機物質は、多結晶体であることが好ましい。つまり、無機物質の粒子11は結晶質の粒子であり、マトリックス部10は多数の粒子11が凝集してなるものであることが好ましい。マトリックス部10を構成する無機物質が多結晶体であることにより、無機物質がアモルファスからなる場合と比べて、耐久性の高い撥水部材100を得ることができる。なお、無機物質の粒子11は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有する結晶質の粒子であることがより好ましい。また、無機物質の粒子11は、上記金属元素の酸化物及び水酸化物の少なくとも一つを含有する結晶質の粒子であることが好ましい。無機物質の粒子11は、上記金属元素の酸化物及び水酸化物の少なくとも一つを主成分とする結晶質の粒子であることがより好ましい。
マトリックス部10を構成する無機物質は、ベーマイトであることも好ましい。ベーマイトは、AlOOHの組成式で示されるアルミニウム酸化水酸化物である。ベーマイトは、水に不溶であり、酸及びアルカリにも常温下では殆ど反応しないことから化学的安定性が高く、さらに脱水温度が500℃前後と高いことから耐熱性にも優れるという特性を有する。また、ベーマイトは、比重が3.07程度であるため、マトリックス部10がベーマイトからなる場合には、軽量であり、かつ、化学的安定性に優れる撥水部材100を得ることができる。
マトリックス部10を構成する無機物質がベーマイトである場合、粒子11は、ベーマイト相のみからなる粒子であってもよく、ベーマイトと、ベーマイト以外の酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムとの混合相からなる粒子であってもよい。例えば、粒子11は、ベーマイトからなる相と、ギブサイト(Al(OH))からなる相が混合した粒子であってもよい。
マトリックス部10を構成する無機物質の粒子11の平均粒子径は特に限定されないが、300nm以上30μm以下であることがより好ましく、300nm以上10μm以下であることがさらに好ましく、300nm以上5μm以下であることが特に好ましい。無機物質の粒子11の平均粒子径がこの範囲内であることにより、粒子11同士が強固に結合し、マトリックス部10の強度を高めることができる。また、無機物質の粒子11の平均粒子径がこの範囲内であることにより、後述するように、マトリックス部10の内部に存在する気孔の割合が20%以下となることから、撥水性樹脂20の劣化を抑制することが可能となる。なお、本明細書において、「平均粒子径」の値としては、特に言及のない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用する。
無機物質の粒子11の形状は特に限定されないが、例えば球状とすることができる。また、粒子11は、ウィスカー状(針状)の粒子、又は鱗片状の粒子であってもよい。ウィスカー状粒子又は鱗片状粒子は、球状粒子と比べて他の粒子との接触性が高まり、マトリックス部10の強度が向上しやすい。そのため、粒子11としてこのような形状の粒子を用いることにより、撥水部材100全体の強度を高めることが可能となる。なお、ウィスカー状の粒子11としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化アルミニウム(Al)の少なくとも一つを含有する粒子を用いることができる。
撥水部材100において、マトリックス部10は、親水性又は疎水性とすることができる。ここで、マトリックス部10が親水性である場合、マトリックス部10の表面10aでは、撥水性樹脂20に起因する撥水性部位と、無機物質に起因する親水性部位が存在する。そして、親水性部位になじみ易い親水性の付着物は撥水性部位になじみ難く、撥水性部位になじみ易い疎水性の付着物は親水性部位になじみ難いため、親水性付着物及び疎水性付着物は表面10aに付着し難くなる。また、たとえ表面10aに親水性付着物及び疎水性付着物が付着したとしても、容易に除去することが可能となる。
さらに、マトリックス部10が親水性であることにより、マトリックス部10に対して帯電防止性を付与することが可能となる。つまり、例えば、マトリックス部10の親水性部位に大気中の水分が付着することにより、マトリックス部10の表面に静電気の導電パスが形成される。これにより、マトリックス部10の帯電が抑制されるため、埃等の静電的な汚れの付着を低減することが可能となる。
ここで、マトリックス部10を構成する無機物質は、実質的に水和物を含まないことが好ましい。本明細書において、「無機物質は、実質的に水和物を含有しない」とは、無機物質に故意に水和物を含有させたものではないことを意味する。そのため、無機物質に水和物が不可避不純物として混入した場合は、「無機物質は、実質的に水和物を含有しない」という条件を満たす。なお、ベーマイトは金属酸化水酸化物であることから、本明細書においては水和物に包含されない。
なお、マトリックス部10を構成する無機物質は、カルシウム化合物の水和物を含まないことが好ましい。ここでいうカルシウム化合物は、ケイ酸三カルシウム(エーライト、3CaO・SiO)、ケイ酸二カルシウム(ビーライト、2CaO・SiO)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al)、カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al・Fe)、硫酸カルシウム(CaSO・2HO)である。マトリックス部10を構成する無機物質が上記カルシウム化合物の水和物を含む場合、得られる撥水部材は、マトリックス部の断面における気孔率が20%を超える可能性がある。そのため、無機物質は、上記カルシウム化合物の水和物を含まないことが好ましい。また、マトリックス部10を構成する無機物質は、リン酸セメント、リン酸亜鉛セメント、及びリン酸カルシウムセメントも含まないことが好ましい。無機物質がこれらのセメントを含まないことにより、得られる撥水部材の気孔率を20%以下にすることが可能となる。
マトリックス部10の内部に分散する撥水性樹脂20は、有機化合物からなり、撥水性を示す樹脂であることが好ましい。また、撥水性樹脂20は、水に対する静的接触角が90°以上である樹脂を用いることが好ましい。撥水性樹脂20としては、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一方を用いることができる。フッ素樹脂は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。シリコーン樹脂は、シロキサン結合を分子骨格に有し、側鎖に、例えば表面自由エネルギーが小さいメチル基を持つものであることが好ましい。
撥水部材100において、マトリックス部10は、無機物質の粒子群により構成されていることが好ましい。つまり、マトリックス部10は、無機物質からなる複数の粒子11により構成されており、無機物質の粒子11同士が互いに結合することにより、マトリックス部10が形成されていることが好ましい。この際、粒子11同士は、点接触の状態であってもよく、粒子11の粒子面同士が接触した面接触の状態であってもよい。そして、撥水性樹脂20は、マトリックス部10の内部で略均一に分散した状態で存在することが好ましい。ただ、撥水性樹脂20は、無機物質の粒子11の粒界に存在することが好ましい。図2に示すように、撥水性樹脂20が隣接する無機物質の粒子11の間に偏在することにより、無機物質の粒子11間の空隙を埋めるように撥水性樹脂20が変形する。そのため、マトリックス部10の内部に存在する気孔の割合をより低減することが可能となる。
撥水部材100において、マトリックス部10が無機物質の粒子群により構成されている場合、隣接する無機物質の粒子11の間には、撥水性樹脂20が存在していてもよい。ただ、図2に示すように、隣接する無機物質の粒子11の間には、撥水性樹脂20以外に、非晶質の無機化合物を含むアモルファス部30が存在していてもよい。アモルファス部30が存在することにより、隣接する無機物質の粒子11同士がアモルファス部30を介して結合するため、マトリックス部10の強度をより高めることが可能となる。なお、アモルファス部30は、少なくとも無機物質の粒子11の表面に接触するように存在することが好ましい。また、アモルファス部30は、隣接する無機物質の粒子11の間に加えて、無機物質の粒子11と撥水性樹脂20との間、及び、隣接する撥水性樹脂20の間に存在していてもよい。
アモルファス部30は、非晶質の無機化合物を含むことが好ましい。具体的には、アモルファス部30は、非晶質の無機化合物のみからなる部位であってもよく、非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物とが混在してなる部位であってもよい。また、アモルファス部30は、非晶質の無機化合物の内部に結晶質の無機化合物が分散した部位であってもよい。
無機物質の粒子11及びアモルファス部30は同じ金属元素を含有し、当該金属元素はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。つまり、粒子11を構成する無機化合物と、アモルファス部30を構成する非晶質の無機化合物は、少なくとも同じ金属元素を含有していることが好ましい。また、粒子11を構成する無機化合物と、アモルファス部30を構成する非晶質の無機化合物は化学組成が同じであってもよく、化学組成が異なっていてもよい。具体的には、金属元素が亜鉛である場合、粒子11を構成する無機化合物とアモルファス部30を構成する非晶質の無機化合物は、両方とも酸化亜鉛(ZnO)であってもよい。または、粒子11を構成する無機化合物がZnOであるが、アモルファス部30を構成する非晶質の無機化合物はZnO以外の亜鉛含有酸化物であってもよい。
なお、アモルファス部30が非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物とが混在してなる部位の場合、非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物は化学組成が同じであってもよく、また化学組成が互いに異なっていてもよい。
撥水部材100において、粒子11及びアモルファス部30は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素の酸化物を含有することが好ましい。このような金属元素の酸化物は耐久性が高いことから、撥水性樹脂20と酸素及び水蒸気との接触を長期間に亘って抑制して、撥水性樹脂20の劣化を抑えることができる。
粒子11及びアモルファス部30の両方に含まれる金属元素の酸化物は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、並びに酸化亜鉛と酸化マグネシウムとの複合体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。後述するように、これらの金属元素の酸化物を用いることにより、簡易な方法でアモルファス部30を形成することが可能となる。
上述のように、マトリックス部10を構成する無機物質は、ベーマイトであってもよい。この場合、マトリックス部10の粒子11は、ベーマイト相のみからなる粒子であってもよく、ベーマイトと、ベーマイト以外の酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムとの混合相からなる粒子であってもよい。そして、この場合、隣接する粒子11は、アルミニウムの酸化物及び酸化水酸化物の少なくとも一方を介して結合していることが好ましい。つまり、粒子11は、有機化合物からなる有機バインダーで結合しておらず、アルミニウムの酸化物及び酸化水酸化物以外の無機化合物からなる無機バインダーでも結合していないことが好ましい。なお、隣接する粒子11がアルミニウムの酸化物及び酸化水酸化物の少なくとも一方を介して結合している場合、当該アルミニウムの酸化物及び酸化水酸化物は結晶質であってもよく、また、非晶質であってもよい。
なお、マトリックス部10がベーマイトからなる場合、ベーマイト相の存在割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。ベーマイト相の割合が増加することにより、軽量であり、かつ、化学的安定性及び耐熱性に優れたマトリックス部10を得ることができる。なお、マトリックス部10におけるベーマイト相の割合は、X線回折法によりマトリックス部10のX線回折パターンを測定した後、リートベルト解析を行うことにより、求めることができる。
撥水部材100において、マトリックス部10の断面における気孔率は20%以下であることが好ましい。つまり、マトリックス部10の断面を観察した場合、単位面積あたりの気孔の割合の平均値が20%以下であることが好ましい。気孔率が20%以下の場合には、緻密な無機物質の内部に、撥水性樹脂20を封止することができる。そのため、撥水部材100の外部からの酸素及び水蒸気と、撥水性樹脂20との接触率が減少することから、撥水性樹脂20の酸化分解を抑制し、長期間に亘って撥水性樹脂20の撥水性を維持することが可能となる。なお、マトリックス部10の断面における気孔率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。マトリックス部10の断面における気孔率が小さいほど、撥水性樹脂20と酸素及び水蒸気との接触が抑制されるため、撥水性樹脂20の劣化を防ぐことが可能となる。
本明細書において、気孔率は次のように求めることができる。まず、マトリックス部10の断面を観察し、マトリックス部10、撥水性樹脂20及び気孔を判別する。そして、単位面積と当該単位面積中の気孔の面積とを測定し、単位面積あたりの気孔の割合を求める。このような単位面積あたりの気孔の割合を複数箇所で求めた後、単位面積あたりの気孔の割合の平均値を、気孔率とする。なお、マトリックス部10の断面を観察する際には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。また、単位面積と当該単位面積中の気孔の面積は、顕微鏡で観察した画像を二値化することにより測定してもよい。
撥水部材100の形状は特に限定されないが、例えば板状とすることができる。また、撥水部材100(マトリックス部10)の厚みtは特に限定されないが、例えば50μm以上とすることができる。上述のように、特許文献1の表面層はゾルゲル法により形成されているため、数μm以下の薄膜しか得ることができない。しかし、本実施形態の撥水部材100は、後述するように、加圧加熱法により形成している。そのため、厚みの大きな撥水部材100を容易に得ることができる。なお、撥水部材100(マトリックス部10)の厚みtは1mm以上とすることができ、1cm以上とすることもできる。撥水部材100(マトリックス部10)の厚みtの上限は特に限定されないが、例えば50cmとすることができる。
撥水部材100において、撥水性樹脂20は、マトリックス部10の表面10aから内部にかけて連続的に存在せず、かつ、マトリックス部10の表面10aに膜状に存在していないことが好ましい。具体的には、撥水性樹脂20は、マトリックス部10の内部に分散した状態で存在していることが好ましい。また、撥水性樹脂20の一部は、マトリックス部10の内部で偏析してもよい。ただ、図3に示すように、偏析した撥水性樹脂20aがマトリックス部10の表面10aから内部にかけて連続的に存在していないことが好ましい。マトリックス部10の表面10aに存在する撥水性樹脂20aは、大気中の酸素及び水蒸気に接触して劣化する可能性がある。マトリックス部10の表面10aから内部にかけて連続的に存在している撥水性樹脂20aも、表面10aに存在する撥水性樹脂20aの酸化劣化に起因して劣化する可能性がある。そのため、撥水性樹脂20の劣化を抑制する観点から、撥水性樹脂20は、マトリックス部10の表面10aから内部にかけて連続的に存在していないことが好ましい。
また、マトリックス部10の内部に分散している撥水性樹脂20に関し、撥水性樹脂20の一部がマトリックス部10の表面10aに膜状に存在していないことが好ましい。この場合、膜状の撥水性樹脂20は、大気中の酸素及び水蒸気に晒されることから、酸化劣化する可能性がある。
撥水部材100において、マトリックス部10は、マトリックス部10の表面10aから内部にかけて連通する空隙10bを有しないことが好ましい。マトリックス部10の内部の撥水性樹脂20は、無機物質の粒子11により覆われているため、酸化劣化し難い。ただ、図4に示すように、マトリックス部10に空隙10bが存在する場合、空隙10bを通じてマトリックス部10の内部に酸素及び水蒸気が到達してしまい、マトリックス部10の内部の撥水性樹脂20と接触する可能性がある。そのため、撥水性樹脂20の酸化劣化を抑制する観点から、マトリックス部10は、表面10aから内部にかけて連通する空隙10bを有しないことが好ましい。
このように、本実施形態の撥水部材100は、金属酸化物及び金属水酸化物の少なくとも一方を含む無機物質によって構成されるマトリックス部10と、マトリックス部10の内部に分散した状態で存在する撥水性樹脂20とを含有する。そして、マトリックス部10の断面における気孔率が20%以下である。撥水部材100では、撥水性樹脂20がマトリックス部10の内部全体に分散している。つまり、マトリックス部10の内部において、撥水性樹脂20の粒子は凝集せず、単分散の状態で存在している。これにより、撥水部材100は全体が撥水性を有することから、撥水部材100を加工しても、撥水部材100の撥水性を維持することができる。これに対し、特許文献1のように、基材上に撥水性の表面層を設けた場合、表面を加工すると表面層が除去されてしまうため、表面加工ができないという問題がある。
また、撥水部材100は、断面における気孔率が20%以下である。そのため、酸素及び水蒸気と撥水性樹脂20との接触率が減少することから、撥水性樹脂20の酸化分解を抑制し、長期間に亘って撥水部材100の撥水性を維持することが可能となる。さらに、マトリックス部10は、内部の気孔が少なく、無機物質が緻密となっていることから、撥水部材100は高い強度を有するセラミックス部材となる。
上述のように、特許文献1の防汚性部材は、基材と表面層との熱膨張率の差により、表面層が剥離してしまう可能性がある。しかしながら、撥水部材100では、撥水性樹脂20がマトリックス部10の内部に高分散していることから、剥離の問題が生じず、長期間に亘って高い安定性を保つことができる。
撥水部材100において、マトリックス部10は撥水性樹脂20よりも体積比率が大きいことが好ましい。撥水部材100は、親水性であるマトリックス部10と撥水性である撥水性樹脂20との体積比率を変えることより、撥水部材100の撥水性を制御することができる。つまり、マトリックス部10の体積比率を撥水性樹脂20よりも高めることにより、撥水性樹脂20の周囲を無機物質の粒子11で覆いやすくなるため、撥水部材100の撥水性を抑えることが可能となる。逆に、撥水性樹脂20の体積比率をマトリックス部10よりも高めることにより、撥水性樹脂20が増加することから、撥水部材100の撥水性をより高めることが可能となる。ただ、撥水性樹脂20の劣化をより抑制する観点から、マトリックス部10は撥水性樹脂20よりも体積比率が大きいことが好ましい。
また、撥水部材100は、水に対する静的接触角が90°以上であることが好ましい。撥水部材100の静的接触角が90°以上であることにより、水垢など汚れを付着し難くしたり、仮に付着した場合でも容易に除去することが可能となる。なお、撥水部材100は、水に対する静的接触角が100°以上であることがより好ましい。
次に、本実施形態に係る撥水部材100の製造方法について説明する。撥水部材100は、無機物質の粒子と撥水性樹脂との混合物を、溶媒を含んだ状態で加圧して加熱することにより製造することができる。このような加圧加熱法を用いることにより、無機物質の一部が溶出して無機物質同士が互いに結合するため、撥水性樹脂20が内部に分散したマトリックス部10を形成することができる。
具体的には、まず、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末を混合して混合粉末を調製する。無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末の混合方法は特に限定されず、乾式又は湿式で行うことができる。また、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末は空気中で混合してもよく、不活性雰囲気下で混合してもよい。
次に、混合粉末に溶媒を添加する。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、混合粉末を加圧及び加熱した際に、無機物質の一部を溶解することが可能なものを用いることができる。また、溶媒としては、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成することが可能なものを用いることができる。このような溶媒としては、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、水、アルコール、ケトン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。酸性水溶液としては、pH1~3の水溶液を用いることができる。アルカリ性水溶液としては、pH10~14の水溶液を用いることができる。酸性水溶液としては、有機酸の水溶液を用いることが好ましい。また、アルコールとしては、炭素数が1~12のアルコールを用いることが好ましい。
無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物は、上述のように、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末を混合した後、溶媒を添加する方法で調製することができる。ただ、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物の調製方法は、このような方法に限定されない。当該混合物の調製方法としては、まず、撥水性樹脂と溶媒とを混合する。この際、撥水性樹脂は溶媒に溶解させてもよく、溶解させなくてもよい。そして、撥水性樹脂と溶媒との混合物に、無機物質の粉末を添加することにより、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物を調製してもよい。
次いで、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物を、金型の内部に充填する。当該混合物を金型に充填した後、必要に応じて金型を加熱してもよい。そして、金型の内部の混合物に圧力を加えることにより、金型の内部が高圧状態となる。この際、無機物質及び撥水性樹脂が緻密化すると同時に、無機物質の粒子同士が互いに結合する。
ここで、溶媒として、無機物質の一部を溶解するものを用いた場合、高圧状態では、無機物質を構成する無機化合物が溶媒に溶解する。溶解した無機化合物は、無機物質と撥水性樹脂との間の空隙、無機物質の間の空隙、及び撥水性樹脂の間の空隙に浸入する。そして、この状態で混合物中の溶媒を除去することにより、無機物質と撥水性樹脂との間、無機物質の間及び撥水性樹脂の間に、無機物質に由来する連結部が形成される。また、溶媒として、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成するものを用いた場合、高圧状態では、無機物質を構成する無機化合物が溶媒と反応する。そして、反応により生成した他の無機物質が、無機物質と撥水性樹脂との間の空隙、無機物質の間の空隙、及び撥水性樹脂の間の空隙に充填され、他の無機物質に由来する連結部が形成される。
無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物の加熱加圧条件は、溶媒として、無機物質の一部を溶解するものを用いた場合、無機物質の表面の溶解が進行するような条件であれば特に限定されない。また、当該混合物の加熱加圧条件は、溶媒として、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成するものを用いた場合、無機物質と溶媒との反応が進行するような条件であれば特に限定されない。例えば、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物を、50~300℃に加熱した後、10~600MPaの圧力で加圧することが好ましい。なお、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物を加熱する際の温度は、80~250℃であることがより好ましく、100~200℃であることがさらに好ましい。また、無機物質と撥水性樹脂と溶媒とを含む混合物を加圧する際の圧力は、50~400MPaであることがより好ましく、50~200MPaであることがさらに好ましい。
そして、金型の内部から成形体を取り出すことにより、撥水部材100を得ることができる。なお、無機物質と撥水性樹脂との間、無機物質の間及び撥水性樹脂の間に形成された、無機物質に由来の連結部は、上述のアモルファス部30であることが好ましい。
ここで、セラミックスからなる無機部材の製造方法としては、従来より焼結法が知られている。焼結法は、無機物質からなる固体粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱することにより、焼結体を得る方法である。ただ、焼結法では、例えば1000℃以上に固体粉末を加熱する。そのため、焼結法を用いて無機物質と撥水性樹脂からなる撥水部材を得ようとしても、高温での加熱により撥水性樹脂が炭化してしまうため、撥水部材が得られない。しかしながら、本実施形態の撥水部材100の製造方法では、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末を混合してなる混合物を、300℃以下という低温で加熱するため、撥水性樹脂の炭化が起こり難い。そのため、無機物質からなるマトリックス部10の内部に撥水性樹脂20を安定的に分散させ、撥水性を付与することができる。
さらに、本実施形態の製造方法では、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末を混合してなる混合物を、加熱しながら加圧していることから、無機物質が凝集して緻密なマトリックス部10となる。その結果、マトリックス部10内部の気孔が少なくなることから、撥水性樹脂20の酸化劣化を抑制しつつも、高い強度を有する撥水部材100を得ることができる。
次に、マトリックス部10を構成する無機物質がベーマイトである撥水部材100の製造方法について説明する。無機物質がベーマイトである撥水部材は、水硬性アルミナと、撥水性樹脂と、水を含む溶媒とを混合した後、加圧して加熱することにより製造することができる。水硬性アルミナは、水酸化アルミニウムを加熱処理して得られる酸化物であり、ρアルミナを含んでいる。このような水硬性アルミナは、水和反応によって結合及び硬化する性質を有する。そのため、加圧加熱法を用いることにより、水硬性アルミナの水和反応が進行して水硬性アルミナ同士が互いに結合しつつ、ベーマイトに結晶構造が変化することにより、マトリックス部10を形成することができる。
具体的には、まず、水硬性アルミナの粉末と、撥水性樹脂と、水を含む溶媒とを混合して混合物を調製する。水を含む溶媒は、純水又はイオン交換水であることが好ましい。ただ、水を含む溶媒は、水以外に、酸性物質又はアルカリ性物質が含まれていてもよい。また、水を含む溶媒は水が主成分であればよく、例えば有機溶媒(例えばアルコールなど)が含まれていてもよい。
水硬性アルミナに対する溶媒の添加量は、水硬性アルミナの水和反応が十分に進行する量であることが好ましい。溶媒の添加量は、水硬性アルミナに対して20~200質量%が好ましく、50~150質量%がより好ましい。
次いで、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合してなる混合物を、金型の内部に充填する。当該混合物を金型に充填した後、必要に応じて金型を加熱してもよい。そして、金型の内部の混合物に圧力を加えることにより、金型の内部が高圧状態となる。この際、水硬性アルミナが高充填化し、水硬性アルミナの粒子同士が互いに結合することで、高密度化する。具体的には、水硬性アルミナに水を加えることにより、水硬性アルミナが水和反応し、水硬性アルミナ粒子の表面に、ベーマイトと水酸化アルミニウムが生成する。そして、金型内部で当該混合物を加熱しながら加圧することにより、生成したベーマイトと水酸化アルミニウムが隣接する水硬性アルミナ粒子の間を相互に拡散して、水硬性アルミナ粒子同士が徐々に結合する。その後、加熱により脱水反応が進行することで、水酸化アルミニウムからベーマイトに結晶構造が変化する。なお、このような水硬性アルミナの水和反応、水硬性アルミナ粒子間の相互拡散、及び脱水反応は、ほぼ同時に進行すると推測される。
そして、金型の内部から成形体を取り出すことにより、複数の粒子11同士がアルミニウムの酸化物及び酸化水酸化物の少なくとも一方を介して結合し、さらに撥水性樹脂が分散した撥水部材を得ることができる。
なお、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合してなる混合物の加熱加圧条件は、水硬性アルミナと当該溶媒との反応が進行するような条件であれば特に限定されない。例えば、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合してなる混合物を、50~300℃に加熱しつつ、10~600MPaの圧力で加圧することが好ましい。なお、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合してなる混合物を加熱する際の温度は、80~250℃であることがより好ましく、100~200℃であることがさらに好ましい。また、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合してなる混合物を加圧する際の圧力は、50~600MPaであることがより好ましく、200~600MPaであることがさらに好ましい。
このように、撥水部材の製造方法は、無機物質の粉末と撥水性樹脂の粉末を混合して混合物を得る工程と、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒を混合物に添加した後、当該混合物を加圧及び加熱する工程とを有する。また、撥水部材の製造方法は、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒に、撥水性樹脂を混合する工程と、撥水性樹脂を含んだ溶媒に無機物質の粉末を混合して混合物を得る工程と、当該混合物を加圧及び加熱する工程とを有する。そして、混合物の加熱加圧条件は、50~300℃の温度で、10~600MPaの圧力とすることが好ましい。本実施形態の製造方法では、このような低温条件下で撥水部材100を成形することから、撥水性樹脂20の炭化を抑制して、撥水性を有するセラミックス部材を得ることができる。
また、無機物質がベーマイトである撥水部材100の製造方法は、水硬性アルミナと撥水性樹脂と水を含む溶媒とを混合して混合物を得る工程と、当該混合物を加圧及び加熱する工程とを有する。そして、混合物の加熱加圧条件は、50~300℃の温度で、10~600MPaの圧力とすることが好ましい。この製造方法では、低温条件下で撥水部材を成形することから、得られる部材はベーマイト相を主体とする。そのため、軽量であり、かつ、化学的安定性に優れた撥水部材を簡易な方法で得ることができる。
なお、撥水部材100は、表面を平滑にするために、マトリックス部10の表面10aを研磨してもよい。ただ、マトリックス部10の表面10aを研磨した場合、表面10aから露出した撥水性樹脂20が研磨により展延され、表面10aに撥水性樹脂20の薄膜が形成される場合がある。この場合、薄膜状の撥水性樹脂20により、撥水部材100の表面全体の撥水性を向上させることができる。なお、薄膜状の撥水性樹脂20はマトリックス部10の表面10aに露出しているため、酸素及び水蒸気と接触して酸化劣化する可能性がある。しかし、マトリックス部10の内部の撥水性樹脂20は、上述のように、酸化劣化が抑制されている。そのため、薄膜状の撥水性樹脂20が劣化して撥水性が低下した場合、撥水部材100の表面を研磨することにより、マトリックス部10の内部の撥水性樹脂20を露出させて、撥水性を回復させることができる。
[建築部材、水廻り部材]
次に、本実施形態の建築部材及び水廻り部材について説明する。
本実施形態の建築部材は、上述の撥水部材100を備えている。建築部材は建築用に製造された部材であり、本実施形態では少なくとも一部に撥水部材100が使用されている。撥水部材100は、上述のように、厚みの大きな板状とすることができ、さらに高い強度及び耐久性に加えて、耐傷性にも優れている。また、撥水部材100は、一般的なセラミックス部材と同様に切断することができると共に、表面加工しても、撥水性樹脂20に由来の撥水性を維持することができる。そのため、撥水部材100は、建築部材として好適に用いることができる。建築部材としては特に限定されないが、例えば、外壁材(サイディング)、屋根材などを挙げることができる。また、建築部材としては、道路用材料、外溝用材料も挙げることができる。
なお、上述のように、撥水部材100において、マトリックス部10は親水性であることが好ましい。この場合、マトリックス部10の表面10aでは、撥水性部位と親水性部位が存在するため、親水性付着物と疎水性付着物の両方が付着し難くなる。そのため、このような撥水部材100を用いた建築部材は、汚れが付着し難いことから、良好な外観を長期間に亘って維持することが可能となる。
本実施形態の水廻り部材は、上述の撥水部材100を備えている。水廻り部材としては、キッチン、浴室、トイレ、洗面化粧台で用いる部材を挙げることができる。上述のように、撥水部材100は、高い強度及び耐久性に加えて、耐傷性にも優れている。また、撥水部材100は、一般的なセラミックス部材と同様に切断することができると共に、表面加工しても、撥水性樹脂20に由来の撥水性を維持することができる。このように、撥水部材100は水垢など汚れが付着し難く、付着した場合でも除去できることから、水廻り部材として好適に用いることができる。
以下、実施例及び参考例により本実施形態の撥水部材をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
(試験サンプルの調製)
<実施例1-1>
無機粒子として、平均粒子径D50が約1μmの酸化亜鉛粒子(株式会社高純度化学研究所製、純度99.99%)を準備した。また、撥水性樹脂として、平均粒子径D50が約4μmのポリテトラフルオロエチレン粒子(多木化学株式会社製、PTFE微粉末KTL-8N)を準備した。そして、酸化亜鉛粒子に対して9体積%となるようにPTFE粒子を秤量した後、酸化亜鉛粒子とPTFE粒子とを、メノウ製の乳鉢と乳棒を用い、アセトンを加えて湿式混合することにより、混合粉末を得た。
次に、得られた混合粉末を、内部空間を有する円筒状の成形用金型(Φ10)の内部に投入した。さらに、成形用金型の内部に充填した混合粉末に、1Mの酢酸を、酸化亜鉛粒子1gに対して200μLとなるように添加した。そして、当該酢酸を含んだ混合粉末に、50MPa、150℃、30分の条件で加熱及び加圧することにより、本例の試験サンプルを得た。
<比較例1-1>
ポリテトラフルオロエチレン粒子を添加しなかったこと以外は実施例1-1と同様にして、本例の試験サンプルを得た。
(試験サンプルの評価)
<表面観察>
実施例1-1及び比較例1-1の試験サンプルを目視で観察した結果、試験サンプルの表面はいずれも酸化亜鉛粒子に由来した白色を呈していた。また、実施例1-1及び比較例1-1の試験サンプルは、焼結体のような高い硬度を有していた。
<接触角測定>
まず、実施例1-1及び比較例1-1の試験サンプルの表面を平滑にするために、研磨紙を用いて試験サンプルの表面を手で1分間研磨した。このとき、研磨紙は、リファインテック株式会社のコバックスP2000(#2000)を用いた。そして、研磨後の試験サンプルにエアダスターを用いて空気を吹き付けて、表面の埃を除去した。
次に、協和界面科学株式会社製の自動接触角計(CAW150)を用いて、実施例1-1及び比較例1-1の試験サンプルにおける、イオン交換水に対する静的接触角を測定した。具体的には、実施例1-1及び比較例1-1の試験サンプルにおける研磨した表面について、それぞれ3箇所の静的接触角を測定し、平均値を各試験サンプルの静的接触角とした。
そして、実施例1-1の試験サンプルの静的接触角は、それぞれ108.3°、106.8°、108.2°であったことから、実施例1-1の試験サンプルの静的接触角は、107.8°であった。また、比較例1-1の試験サンプルの静的接触角は、それぞれ53.1°、45.1°、66.5°であったことから、比較例1-1の試験サンプルの静的接触角は55.8°であった。
<気孔率測定>
まず、円柱状である実施例1-1の試験サンプルの断面に、クロスセクションポリッシャー加工(CP加工)を施した。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、試験サンプルの断面について、20000倍の倍率で反射電子像を観察した。試験サンプルの断面の3か所(位置1~3)を観察することにより得られた反射電子像を、図5、図7及び図9に示す。観察した反射電子像において、白色の粒子が酸化亜鉛(無機物質の粒子11)であり、やや黒色に見える粒子が撥水性樹脂20であり、黒色部が気孔40である。
次いで、3視野のSEM像についてそれぞれ二値化することにより、気孔部分を明確にした。図5、図7及び図9の反射電子像を二値化した画像を、それぞれ図6、図8及び図10に示す。そして、二値化した画像から気孔部分の面積割合を算出し、平均値を気孔率とした。具体的には、図6より、位置1の気孔部分の面積割合は4.7%であった。図8より、位置2の気孔部分の面積割合は4.3%であった。図10より、位置3の気孔部分の面積割合は4.9%であった。そのため、実施例1-1の試験サンプルの気孔率は、位置1~3の気孔部分の面積割合の平均値である4.6%であった。
このように、実施例1-1の試験サンプルは、撥水性樹脂が分散した状態で存在しているため、撥水性を有していた。また、図5、図7及び図9より、撥水性樹脂は、酸化亜鉛粒子の粒界に存在することが分かる。そして、試験サンプルの気孔率が10%未満であることから、撥水性樹脂は大気及び水蒸気との接触が抑制され、酸化劣化が抑えられることが分かる。
[実施例2]
(試験サンプルの調製)
<実施例2-1>
無機粒子として、実施例1-1と同じ酸化亜鉛粒子を準備した。また、撥水性樹脂として、実施例1-1と同じポリテトラフルオロエチレン粒子を準備した。そして、酸化亜鉛粒子に対して10体積%となるようにPTFE粒子を秤量した後、酸化亜鉛粒子とPTFE粒子とを、メノウ製の乳鉢と乳棒を用い、アセトンを加えて湿式混合することにより、混合粉末を得た。
次に、得られた混合粉末を、内部空間を有する円筒状の成形用金型(Φ10)の内部に投入した。さらに、成形用金型の内部に充填した混合粉末に、1Mの酢酸を、酸化亜鉛粒子1gに対して200μLとなるように添加した。そして、当該酢酸を含んだ混合粉末に、50MPa、150℃、30分の条件で加熱及び加圧することにより、成形体を得た。
次に、成形体の表面を平滑にするために、研磨紙を用いて成形体の表面を手で1分間研磨した。なお、研磨紙は、実施例1と同じものを用いた。そして、研磨後の成形体にエアダスターを用いて空気を吹き付けて、表面の埃を除去することにより、本例の試験サンプルを得た。
<実施例2-2>
酸化亜鉛粒子に対して20体積%となるようにPTFE粒子を添加したこと以外は実施例2-1と同様にして、成形体を得た。さらに、当該成形体を実施例2-1と同様に研磨することにより、本例の試験サンプルを得た。
<実施例2-3>
実施例2-1と同様にして、酸化亜鉛粒子に対して10体積%のPTFE粒子を添加した成形体を得た。そして、本例では、研磨工程を施さず、当該成形体をそのまま試験サンプルとして使用した。
<実施例2-4>
実施例2-2と同様にして、酸化亜鉛粒子に対して20体積%のPTFE粒子を添加した成形体を得た。そして、本例では、研磨工程を施さず、当該成形体をそのまま試験サンプルとして使用した。なお、実施例2-4では、同様の方法で3つの試験サンプルを作製した。
<比較例2-1>
ポリテトラフルオロエチレン粒子を添加しなかったこと以外は実施例2-1と同様にして成形体を得た。さらに、当該成形体を実施例2-1と同様に研磨することにより、本例の試験サンプルを得た。
<比較例2-2>
ポリテトラフルオロエチレン粒子を添加しなかったこと以外は実施例2-1と同様にして成形体を得た。そして、本例では、研磨工程を施さず、当該成形体をそのまま試験サンプルとして使用した。
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-2の試験サンプルにおける、PTFE粒子の添加量及び研磨工程の有無を、表1及び表2に纏めて示す。
Figure 0007336738000001
Figure 0007336738000002
(試験サンプルの評価)
<接触角測定>
実施例1と同じ自動接触角計を用いて、実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-2の試験サンプルにおける、イオン交換水に対する静的接触角を測定した。具体的には、実施例2-1及び実施例2-2並びに比較例2-1の試験サンプルについては、研磨した表面における3箇所の静的接触角を測定し、平均値を各試験サンプルの静的接触角とした。また、実施例2-3及び実施例2-4並びに比較例2-2の試験サンプルについては、平坦な表面における3箇所の静的接触角を測定し、平均値を各試験サンプルの静的接触角とした。なお、実施例2-4については、2つの試験サンプルについて静的接触角を測定した。各試験サンプルの静的接触角の測定結果を、表1及び表2に合わせて示す。
表1に示すように、実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルは、静的接触角が100°を超えている。そのため、試験サンプルの表面は高い撥水性を示すことが分かる。これに対して、比較例2-1の試験サンプルはPTFE粒子を含んでいないため、静的接触角が10°未満となり、撥水性が低いことが分かる。
また、表2に示すように、実施例2-3及び実施例2-4の試験サンプルは比較例2-2の試験サンプルと比較して、静的接触角が大きくなっていることが分かる。そのため、研磨工程を施さなくても、本実施形態に係る試験サンプルは撥水性が向上することが分かる。
なお、表2に示すように、実施例2-4については、2つの試験サンプルに対して静的接触角を測定した。その結果、2つの試験サンプルの静的接触角は30°程度の差が生じた。このような結果となった理由は明らかになっていないが、試験サンプルの表面に位置するPTFE粒子の量及び/又は分散度合いの影響により、このような静的接触角の差が生じたものと推測される。
<飛行時間型二次イオン質量分析法による表面分析>
実施例2-1、実施例2-2及び実施例2-4並びに比較例2-1の試験サンプルに対して、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により表面分析を行った。TOF-SIMSは、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面から放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差を利用して質量分離する手法である。そして、TOF-SIMSでは、試料表面から1nm以下の深さに存在する元素又は分子種に関する情報を得ることができる。
TOF-SIMSは、装置として、ION-TOF社製の飛行時間型二次イオン質量分析装置TOF.SIMSを用い、以下の条件で測定を行った。また、実施例2-4の試験サンプルについては、作製した3つの試験サンプルのうち、静的接触角を測定していない1つのサンプルについて表面分析を行った。実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルにおける表面分析結果を図11Aに示し、実施例2-4及び比較例2-1の試験サンプルにおける表面分析結果を図11Bに示す。
一次イオン:Bi3+
一次イオン加速電圧:30kV
分析領域:500μm×500μm
二次イオン極性:Negative
照射深度:~数nm
観察元素:CF(m/z=31)、Zn(m/z=64)
図11Aに示すように、実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルでは、表面全体でCF(炭素-フッ素)が検出されている。つまり、実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルでは、CFが表面全体に広がるように分布していることが分かる。これに対して、図11Bに示すように、実施例2-4の試験サンプルでは、CF(炭素-フッ素)が点在するように検出されている。つまり、実施例2-4の試験サンプルでは、CFが表面全体に広がっているわけではなく、局所的に位置していることが分かる。なお、比較例2-1の試験サンプルでは、CFが殆ど検出されなかった。
TOF-SIMSによる表面分析より、実施例2-1及び実施例2-2の試験サンプルでは、研磨工程によりPTFE粒子が展延され、試験サンプルの表面にPTFEの薄膜が形成されていることが分かる。これに対して、研磨工程を行わない実施例2-4の試験サンプルでは、PTFE粒子が展延されず、表面に点在していることが分かる。そして、上述の接触角測定及び表面分析の結果より、PTFE粒子が展延され、試験サンプルの表面にPTFEの薄膜が形成されることにより、試験サンプル全体の撥水性が高まることが分かる。
[参考例]
(試験サンプルの調製)
無機粒子として、住友化学株式会社製、水硬性アルミナBK-112を準備した。なお、当該水硬性アルミナは、中心粒径が16μmである。ここで、図12では、上記水硬性アルミナ粉末のX線回折パターン、並びにICSDに登録されたベーマイト(AlOOH)及びギブサイト(Al(OH))のパターンを示している。図12に示すように、水硬性アルミナは、ベーマイトとギブサイトとの混合物であることが分かる。なお、図12には示されていないが、水硬性アルミナにはρアルミナも含まれている。
次いで、水硬性アルミナに対して80質量%となるようにイオン交換水を秤量した後、水硬性アルミナとイオン交換水とを、メノウ製の乳鉢と乳棒を用いて混合することにより、混合物を得た。次に、得られた混合物を、内部空間を有する円筒状の成形用金型(Φ10)の内部に投入した。そして、当該混合物を、50MPa、120℃、20分の条件で加熱及び加圧することにより、本例の試験サンプルを得た。なお、本例の試験サンプルは、焼結体のような高い硬度を有していた。
(試験サンプルの評価)
<X線回折測定>
参考例の試験サンプルについて、X線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した。図13では、参考例の試験サンプルのX線回折パターン、並びにICSDに登録されたベーマイト及びギブサイトのX線回折パターンを示す。図13より、参考例の試験サンプルは、主としてベーマイトからなる構造体であることが分かる。そのため、図12及び図13に示すように、低温焼結法により、原料のギブサイト(水酸化アルミニウム)がベーマイトへ変化することが分かる。
このように、低温焼結法により、ベーマイトからなるマトリックス部10が得られることが分かる。そのため、このマトリックス部10に撥水性樹脂20を分散させることにより、軽量であり、かつ、化学的安定性に優れる撥水部材100を得ることができる。
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
特願2019-59184号(出願日:2019年3月26日)及び特願2019-152540号(出願日:2019年8月23日)の全内容は、ここに援用される。
本開示によれば、撥水性樹脂を用いた場合でも長期的に安定な撥水部材、並びに当該撥水部材を用いた建築部材及び水廻り部材を提供することができる。
10 マトリックス部
10a マトリックス部の表面
10b 空隙
11 無機物質の粒子
20 撥水性樹脂
100 撥水部材

Claims (14)

  1. ベーマイトを主成分として含む無機物質からなる複数の粒子により構成されており、前記無機物質の粒子同士が互いに結合することにより形成され、さらに厚みが50μm以上であるマトリックス部と、
    前記マトリックス部の内部に分散した状態で存在する撥水性樹脂と、
    を含有し、
    前記無機物質の粒子同士は、前記無機物質に由来する連結部を介して互いに結合しており、
    前記マトリックス部の断面における気孔率が20%以下であり、
    前記撥水性樹脂は、前記マトリックス部の表面から内部にかけて連続的に存在しない、撥水部材。
  2. 前記撥水性樹脂は、前記マトリックス部の表面に膜状に存在していない、請求項1に記載の撥水部材。
  3. 前記マトリックス部は前記撥水性樹脂よりも体積比率が大きい、請求項1又は2に記載の撥水部材。
  4. 前記マトリックス部は親水性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の撥水部材。
  5. 水に対する静的接触角が90°以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の撥水部材。
  6. 前記マトリックス部は、前記マトリックス部の表面から内部にかけて連通する空隙を有しない、請求項1から5のいずれか一項に記載の撥水部材。
  7. 前記マトリックス部の断面における気孔率が10%以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の撥水部材。
  8. 前記無機物質は多結晶体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の撥水部材。
  9. 前記撥水性樹脂は、前記無機物質の粒子の粒界に存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の撥水部材。
  10. 前記連結部は、非晶質の無機化合物を含むアモルファス部である、請求項1から9のいずれか一項に記載の撥水部材。
  11. 前記無機物質の粒子及び前記アモルファス部は同じ金属元素を含有する、請求項10に記載の撥水部材。
  12. ベーマイトを主成分として含む無機物質によって構成されるマトリックス部と、
    前記マトリックス部の内部に分散した状態で存在する撥水性樹脂と、
    を含有し、
    前記マトリックス部の断面における気孔率が20%以下である、撥水部材。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の撥水部材を備える建築部材。
  14. 請求項1から12のいずれか一項に記載の撥水部材を備える水廻り部材。
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