JP7335743B2 - 軸受異常予知装置および軸受異常予知方法 - Google Patents
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Description
[先行文献1]
先行文献1では、軸受のハウジングに取り付けた加速度センサからの振動加速度信号に基づいて軸受の異常を診断し、異常ありと診断した場合には、その異常の発生頻度を確認することで異常の種類を判別する(特許文献1)。
この先行文献1における異常有無の判定方法は、振動加速度のスペクトルデータに転動体通過周波数が検出された場合には異常と判定し、転動体通過周波数が検出されなければ正常と判定する(明細書段落[0019])。
軸受の運用時間に応じて摩耗等により軸受の性能が劣化し、軸受に生じる振動が変化するため、軸受の異常診断においては予め定めた振動の閾値との対比による判定では誤診断が発生し得る。
先行文献2は、振動検出部、特徴周波数成分抽出部、異常診断部に加え、運用度算出部、閾値設定部からなる異常診断装置であって、上述の誤診断を減らすため、軸受の運用履歴から算出される運用度に基づいて設定した閾値により異常診断を行う。
この先行文献2における異常診断の方法は、外輪軌道面の剥離等による軸受振動の特徴周波数成分の全てが診断閾値以上である場合に、軸受の異常と判断する(明細書段落[0075])。
先行文献3は、振動センサ、簡易診断部、フィルタ処理部、演算処理部、精密診断部、損傷レベル診断部から構成される状態監視装置であって、精度良く、且つ効率良く診断ができるように、簡易診断部で軸受の異常有無を診断し、精密診断部と損傷レベル診断部でそれぞれ異常発生部位と損傷の程度を特定する。
前記簡易診断部における軸受の異常有無の診断方法は、振動センサにより検出された信号波形から得られる実効値、ピーク値、波効率の少なくとも一つの簡易診断値を算出して各閾値と比較し、簡易診断値が閾値を超える場合に、軸受の異常と診断する(明細書段落[0025])。
先行文献の従来技術は、いずれも軸受に剥離または摩耗等が発生した後に、それに伴って発生する振動レベルの増加を検出し、軸受の異常診断を行っている。
前記転がり軸受3の回転時の振動を検出する振動検出手段14と、
この振動検出手段14の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受3に過度の昇温の兆候があると判定する判定手段16と、を備えている。
前記閾値は、この値未満となると過度の昇温の兆候があると判定できる値であって、設計等によって任意に定める閾値であり、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な閾値を求めて定められる。
そこで、この構成によると、振動検出手段14の検出値が閾値未満になったとき、転がり軸受3に過度の昇温があると判定する。このように転がり軸受3の振動の低下を検出することで、転がり軸受3に過度の昇温が発生する兆候を捉えることができる。したがって、転がり軸受3に過度の昇温が発生する前に回転速度を低減するなどの対処をすることで、転がり軸受等の異常による経済的損失等を削減することができる。軸受の異常判別に振動検出値を用いる場合、通常は閾値以上である場合に異常とするが、通常とは逆に閾値未満であると過度の昇温の兆候があると判定するため、より早期に兆候を検出して対処することができる。
なお、転がり軸受3として、アキシアル荷重およびラジアル荷重の両方を負荷可能な転がり軸受を適用してもよい。
前記振動検出手段14の検出値をエンベロープ処理したエンベロープスペクトルを得る演算処理部16aと、
この演算処理部16aで求めたエンベロープスペクトルに対し、前記転がり軸受3における転動体3bの通過周波数に相当する周波数帯域の振動レベルの低下を検出することで、前記転がり軸受3に過度の昇温の兆候があると判定する異常判定部16bと、を有してもよい。
前記転がり軸受3の回転時の振動を検出する振動検出過程と、
この振動検出過程の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受3の過度の昇温の兆候があると判定する判定過程と、を備えている。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な閾値を求めて定められる。
この発明の実施形態に係る軸受異常予知装置および軸受異常予知方法を図1ないし図4と共に説明する。実施形態に係る軸受異常予知装置は、例えば、鉄道車両駆動装置に用いられる。
図1は、この実施形態に係る軸受異常予知装置を備えた鉄道車両駆動装置の要部の断面図である。鉄道車両駆動装置は、駆動源である電動機Mの回転駆動力を減速機1を介して減速し図示外の車輪へ伝達する。減速機1は、ハウジング2、転がり軸受3、軸4、小歯車5および大歯車6を備える。ハウジング2は、転がり軸受3、軸4の一部、小歯車5および大歯車6を収容する部材であり、ハウジング本体(軸箱)である歯車箱7と、この歯車箱7の軸方向両側の開口端にそれぞれ複数のボルト8により締結される蓋体である軸受蓋9,10とを有する。
軸受異常予知装置15は、前記転がり軸受3の過度の昇温を予知する装置であり、振動検出手段14と、回転速度検出器19と、判定手段16と、警報手段17とを備える。振動検出手段14は、転がり軸受3の回転時の振動を検出する。この振動検出手段14として、例えば、加速度センサ、速度センサ、変位センサ等の振動センサが挙げられるが、加速度センサが望ましい。また振動センサは10kHz以上測定可能なものを使用するのが望ましい。振動検出手段14は、この例では、歯車箱7の外周面における軸方向中間付近部に取り付けられている。測定対象振動の方向は径方向でも軸方向でもよい。
図2は、この実施形態に係る軸受異常予知方法を表すフローチャートである。図1も適宜参照しつつ説明する。この軸受異常予知方法は、前記転がり軸受3の過度の昇温を予知する。軸受異常予知方法は、転がり軸受3の回転時の振動を検出する振動検出過程S1と、この振動検出過程S1の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受3の過度の昇温の兆候があると判定する判定過程S2と、この判定過程S2で過度の昇温の兆候があると判定したときアラーム信号等を出力する警報過程S3とを有する。判定過程S2では、振動検出過程S1で検出された検出値が閾値以上であるとき、振動検出過程S1に戻る。
振動検出過程S1は振動検出手段14により実行され、判定過程S2は判定手段16により実行され、警報過程S3は警報手段17により実行される。
鉄道車両駆動装置における小歯車5が設けられる軸(小歯車軸)4用の円すいころ軸受は、内部すきまとして所望のアキシアルすきまを有するように装置に組み込まれる。この用途の円すいころ軸受の過度の昇温は、特に低温環境下において鉄道車両駆動装置を始動した際に、円すいころ軸受から生じる熱により前記小歯車軸4が熱膨張することで、内輪鍔面と円すいころ(ころ)3bの大端面とが過大な接触面圧で接触しながら摺動することによって発生する。円すいころ軸受が過度の昇温となる前の過程で、小歯車軸4の熱膨張により、円すいころ軸受のアキシアルすきまは徐々に小さくなり、これに伴って円すいころ軸受の回転による振動のレベルが低下する(図3)。このとき、振動のエンベロープスペクトルは、円すいころ軸受の転動体通過周波数のレベルが低下する(図4)。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
産業機械、工作機械、ロボット等に軸受異常予知装置を適用することも可能である。
異常予知を行う転がり軸受は、円すいころ軸受に限定されるものではなく、例えば、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、円筒ころ軸受等にも適用し得る。
駆動源は、電動機に限定されるものではなく、例えば内燃機関であってもよい。
Claims (6)
- 所望のアキシアルすきまを有する転がり軸受の過度の昇温を予知する軸受異常予知装置であって、
前記転がり軸受の回転時の振動を検出する振動検出手段と、
前記転がり軸受から生じる熱により前記所望のアキシアルすきまが小さくなることに伴って前記振動検出手段の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受に過度の昇温の兆候があると判定する判定手段と、を備えた軸受異常予知装置。 - 転がり軸受の過度の昇温を予知する軸受異常予知装置であって、
前記転がり軸受の回転時の振動を検出する振動検出手段と、
この振動検出手段の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受に過度の昇温の兆候があると判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、
前記振動検出手段の検出値をエンベロープ処理したエンベロープスペクトルを得る演算処理部と、
この演算処理部で求めたエンベロープスペクトルに対し、前記転がり軸受における転動体の通過周波数に相当する周波数帯域の振動レベルの低下を検出することで、前記転がり軸受に過度の昇温の兆候があると判定する異常判定部と、を有する軸受異常予知装置。 - 請求項1または請求項2に記載の軸受異常予知装置において、前記転がり軸受の温度を検出する温度検出手段を備え、前記判定手段は、前記振動検出手段の検出値と、前記温度検出手段の検出値とを用いて前記転がり軸受の過度の昇温を予知する軸受異常予知装置。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の軸受異常予知装置において、前記判定手段で前記転がり軸受に過度の昇温の兆候があると判定したとき、警報信号を出力する警報手段を有する軸受異常予知装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の軸受異常予知装置において、鉄道車両の駆動する駆動源と、この駆動源の回転駆動力を減速して車輪に伝達する減速機とを備える鉄道車両駆動装置に用いられる軸受異常予知装置。
- 所望のアキシアルすきまを有する転がり軸受の過度の昇温を予知する軸受異常予知方法であって、
前記転がり軸受の回転時の振動を検出する振動検出過程と、
前記転がり軸受から生じる熱により前記所望のアキシアルすきまが小さくなることに伴って前記振動検出過程の検出値が閾値未満になったとき、前記転がり軸受の過度の昇温の兆候があると判定する判定過程と、を備えた軸受異常予知方法。
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