以下、図面を参照して本発明の農作業機について説明する。但し、本発明の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する。
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は農作業機が圃場に対して作業をしながら進行する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、農作業機が前方を向いた状態における左右方向を示す。
また、本願の明細書及び特許請求の範囲において、平面視における農作業機の中心線(進行方向に平行な線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心から遠い側を「外側」という。「耕す」は、少なくとも「代かき」、「耕耘」、及び「砕土」を含む。
以下の実施形態では、農作業機として代かき機を代表的に例示するが、この例に限定されない。例えば、代かき機以外にも耕耘機、砕土機など、圃場を耕す農作業機に本発明を適用することができる。また、特に技術的な矛盾が生じない限り、異なる実施形態間の技術を組み合わせることができる。また、特に技術的な矛盾が生じない限り、ある実施形態の変形例として挙げられた技術思想は、他の実施形態にも適用することができる。
[農作業機100の構成]
本実施形態の農作業機100は、前進しながら無人で作業を行う自走式の作業機である。図1は、本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。図1に示すように、農作業機100は、フレーム200、前輪300、後輪400、作業部500、第1整地部材600、第1昇降機構700、第2昇降機構800、及び連結部材900を有する。説明の便宜上、図1において、一部の構成(特に第1昇降機構700及び第2昇降機構800)については、実際は見えない部分も含めて、全ての部材を実線で示した。図1の直線101は、前輪300及び後輪400の各々の下端を結ぶ直線である。直線103は、農作業機100が圃場を作業する場合に想定される圃場表面を示す直線である。図1に示す農作業機100の状態は作業部500及び第1整地部材600が下降した下降状態である。この状態で農作業機100の作業が行われるため、この状態を作業状態という場合がある。
フレーム200は、メインフレーム210、前輪フレーム220、及び後輪フレーム230を備える。詳細は後述するが、前輪フレーム220及び後輪フレーム230は、それぞれ一対で(2つ)設けられている(図2参照)。メインフレーム210は、農作業機100の骨格を構成する部材である。メインフレーム210は、前輪300と後輪400との間において、前輪300と後輪400とを結ぶ方向に延びている。一対の前輪フレーム220は、メインフレーム210の前方側に接続されており、メインフレーム210から下方に延びている。各前輪フレーム220の下端付近には前輪300が取り付けられている。一対の後輪フレーム230は、メインフレーム210の後方側に接続されており、メインフレーム210から下方に延びている。各後輪フレーム230の下端付近には後輪400が取り付けられている。
前輪フレーム220は、メインフレーム210から下方に、ほぼ垂直に延びている。前輪フレーム220はメインフレーム210に固定されている。つまり、前輪フレーム220とメインフレーム210との位置関係は変化しない。一方、後輪フレーム230は、メインフレーム210から後方斜め下方に延びている。後輪フレーム230は、メインフレーム210に対して回動可能に接続されている。つまり、後輪フレーム230が回動し、メインフレーム210から下方に、ほぼ垂直に延びる位置に移動することで、農作業機100の後端を上方に移動させることができる。
作業部500は、前輪300と後輪400との間に設けられている。つまり、農作業機100はミッドマウント方式の農作業機である。作業部500は、所定の作業幅W3で圃場を耕す部材である(図2参照)。例えば、作業部500は、代かき、耕耘、及び砕土などの作業を行う部材である。作業部500は、上記の作業のうち、複数の作業を行う機能を有していてもよい。作業部500は、後述する第1昇降機構700を介してメインフレーム210に接続(支持)されている。第1昇降機構700は作業部500を昇降自在に支持している。
作業部500は、フレーム510、ロータ520、シールドカバー530、エプロン540、及び第2整地部材550を備える。ロータ520はフレーム510に対して回転自在に取り付けられている。ロータ520は回転する爪軸と、爪軸に取り付けられた複数の作業爪を有しており、その作業爪を回転させながら所定の作業幅W3で圃場を耕耘又は攪拌する(図2参照)。エプロン540はロータ520の後方において、シールドカバー530に対して回動可能に設けられている。なお、シールドカバー530とフレーム510との位置関係は固定されているため、シールドカバー530をフレーム510の一部と見なすこともできる。
第2整地部材550はロータ520(作業爪)の後方に設けられている。第2整地部材550はエプロン540に対して回動可能に設けられている。エプロン540及び第2整地部材550は、圃場に接触することで、ロータ520による作業によって耕耘又は攪拌された圃場を均平化する。なお、左右方向におけるエプロン540の幅及び第2整地部材550の幅は、作業幅W3と必ずしも一致する必要はなく、エプロン540の幅及び第2整地部材550の幅を作業幅W3より小さく構成することも可能である。
第1昇降機構700は、メインフレーム210と作業部500とを連結し、圃場に対する作業部500の傾きを一定に保ったまま作業部500を昇降させる。第1昇降機構700は、作業部500よりも前方側に設けられている。換言すると、第1昇降機構700は、前後方向において作業部500と前輪300との間に設けられている。
第1昇降機構700は、第1平行リンク710、シリンダ740(動力部)、及び動力伝達部750を有する。第1平行リンク710は、メインフレーム210、取付部211、及びフレーム510に接続されている。具体的には、第1平行リンク710の前端がメインフレーム210及び取付部211に接続され、第1平行リンク710の後端が作業部500に接続されている。なお、取付部211はメインフレーム210に固定されている。つまり、取付部211とメインフレーム210との位置関係は固定されている。換言すると、取付部211は、メインフレーム210と一体となって移動する。第1平行リンク710の2つのリンクアームは、それぞれの前端を中心として回動することで第1平行リンク710の後端が上下に揺動し、作業部500が昇降移動する。なお、第1平行リンク710の詳細な構成は後述する。第1平行リンク710によって、圃場に対する作業部500の傾きが一定に保たれたまま作業部500を昇降させることができる。本実施形態では、取付部211はメインフレーム210に溶接で固定されている。ただし、上記の固定方法は一例に過ぎず、溶接の代わりにナットで固定されてもよく、その他の手法で固定されてもよい。
シリンダ740は取付部211に対して回動可能に接続されている。シリンダ740が伸縮することで第1平行リンク710に回転動力を与える。本実施形態では、シリンダ740は、シリンダチューブ側が取付部211に固定され、ピストンロッド側が動力伝達部750に接続されて上方又は下方に伸縮する。動力伝達部750は、取付部211及び第1平行リンク710に回動可能に接続されている。動力伝達部750は、シリンダ740の伸縮動作を第1平行リンク710に伝達する。シリンダ740が収縮することで作業部500が上昇し、シリンダ740が伸長することで作業部500が下降する。
第1整地部材600は、後輪フレーム230及び後輪400の後方に設けられている。第1整地部材600は、後輪フレーム230に対して回動可能に支持されている。第1整地部材600は、作業部500によって耕された後に、後輪400が通過した後の圃場を整地する部材である。第1整地部材600の接地面は、当該接地面が前方を向くように傾斜している。第1整地部材600は、後述する第2昇降機構800を介して後輪フレーム230に接続(支持)されている。
第2昇降機構800は、後輪フレーム230と第1整地部材600とを連結し、圃場に対する第1整地部材600の傾きを一定に保ったまま第1整地部材600を昇降させる。第2昇降機構800は、後輪フレーム230から後方に延びている。この構成によって、第1整地部材600は後輪400よりも十分に後方で圃場に接地させることができる。
第2昇降機構800は、第2平行リンク810、回動規制部840、及び弾性部材850を有する。第2平行リンク810は、後輪フレーム230と第1整地部材600とに接続されている。具体的には、第2平行リンク810の前端が後輪フレーム230に接続され、第2平行リンク810の後端が第1整地部材600に接続されている。第2平行リンク810の2つのリンクアームは、それぞれの前端を中心として回動することで後端が上下に揺動し、第1整地部材600が昇降移動する。なお、第2平行リンク810の詳細な構成は後述する。第2平行リンク810によって、圃場に対する第1整地部材600の傾きが一定に保たれたまま第1整地部材600を昇降させることができる。
回動規制部840は、後輪フレーム230に対して回動可能に接続されている。回動規制部840は、後述する連結部材900を介して第1平行リンク710に接続されている。また、回動規制部840は、第2平行リンク810の下方への回動を規制する。第1平行リンク710が上方に回動すると、その動力は連結部材900によって回動規制部840に伝達され、回動規制部840が上方に回動する。この回動規制部840の回動によって第2平行リンク810が上方に回動する。なお、第2平行リンク810は上方への回動は規制されていない。つまり、第2平行リンク810は、回動規制部840に規制されることなく上方に回動可能である。
弾性部材850は、一端(前方側の端部)が後輪フレーム230に固定され、他端(後方側の端部)が第2平行リンク810に固定されている。弾性部材850は、平衡状態から伸長された状態で後輪フレーム230及び第2平行リンク810に固定されており、第2平行リンク810に対して下方に回動させる動力を与えている。つまり、弾性部材850によって、第1整地部材600は圃場に押しつけられる。弾性部材850として、例えば引っ張りコイルばねを用いることができる。
連結部材900は、一方(前方側の端部)が第1昇降機構700と連結され、他方(後方側の端部)が第2昇降機構800と連結され、2つの昇降機構の昇降動作を連動させる。つまり、第1昇降機構700による作業部500の上昇に伴って第2昇降機構800の第2平行リンク810が上方へ回動し、第1昇降機構700による作業部500の下降に伴って第2昇降機構800の第2平行リンク810が下方へ回動する。連結部材900は、第1平行リンク710及び回動規制部840に接続されている。これらの接続構造の詳細は後述する。連結部材900はワイヤを含むフレキシブルケーブルである。具体的には、連結部材900として、アウターケーシング910、アウターケーシング内部を移動可能なインナーワイヤ920、及びアウターケーシングの両端に設けられたアウターエンド部材930を含むリンクケーブルを用いることができる。インナーワイヤ920は、一端(前方側の端部)が第1平行リンク710の後端に接続され、他端(後方側の端部)が回動規制部840に接続されている。アウターケーシングの両端に設けられたアウターエンド部材930のうち、一方(前方側の端部)のアウターエンド部材930はナットで作業部500と固定され、他方(後方側の端部)のアウターエンド部材930はナットで後輪フレーム230と固定されている。
作業部500を上昇させるように第1平行リンク710が上方に回動すると、第1平行リンク710に接続されたインナーワイヤ920の前端が前方に引っ張られ、その結果、インナーワイヤ920の後端に接続された回動規制部840が上方に回動する。回動規制部840は、第2平行リンク810の下方への回動は規制するが上方への回動は規制しないため、回動規制部840が上方に回動すると回動規制部840の回動に伴って第2平行リンク810が上方に回動する。この第2平行リンク810の回動によって第1整地部材600が上昇する。作業部500及び第1整地部材600が連動して上昇した状態を図3に示す。図3に示す農作業機100の状態は作業部500及び第1整地部材600が上昇した上昇状態である。この状態では農作業機100の作業が行われないので、この状態を非作業状態という場合がある。
作業部500が圃場を耕すときは、作業部500が圃場を適切に耕すことができる高さに調整される。例えば、作業時に農作業機100が前進走行するときは、図1のように作業部500及び第1整地部材600は下降して、所定の耕深で圃場を耕すよう構成されている。一方、農作業機100が作業をせず枕地旋回するときは、図3のように作業部500及び第1整地部材600が上昇する。また、例えば、農作業機100が畦を乗り越えて圃場から脱出する際に、作業部500及び第1整地部材600が上昇する。
図示しないが、メインフレーム210には、農作業機100を動作させるために各種機能部材が設けられている。各種機能部材として、例えば、エンジン、トランスミッション、旋回機構、駆動制御機構、通信機構、及び燃料タンクなどの部材が備えられている。通信機構がサーバとの通信によってサーバ又はリモコンから制御信号を受信する。サーバから受信した制御信号に基づいて、駆動制御機構がエンジン、トランスミッション、及び旋回機構を駆動する。これらの動作によって農作業機100の自動走行が実行される。なお、旋回機構は、農作業機100の進行方向に対して、前輪300だけを左右に傾けてもよく、後輪400だけを左右に傾けてもよく、両輪を傾けてもよい。なお、前輪300及び後輪400の左右の車輪をそれぞれ個別に制御してもよい。つまり、前輪300及び後輪400の左右の車輪が非平行状態になるように制御されてもよい。
図1では、第1昇降機構700が前端を中心として回動する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第1昇降機構700の後端がメインフレーム210に対して回動可能に接続され、第1平行リンク710の後端を中心として回動することで第1平行リンク710の前端が上下に揺動する構成であってもよい。又は、上記のような回動ではなく、上下の平行移動によって第1昇降機構700の昇降動作が行われてもよい。例えば、シリンダ740の伸縮動作の方向に作業部500が移動してもよい。
また、第1昇降機構700が前後方向において前輪300と作業部500との間に設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第1昇降機構700が前後方向において作業部500と後輪400との間に設けられていてもよい。この場合、第1平行リンク710は、上記のように後端を中心として回動してもよい。又は、第1昇降機構700が前後方向において作業部500と重なる位置(作業部500の上方)に設けられていてもよい。この場合、第1昇降機構700の昇降動作が上下の平行移動によって行われてもよい。
また、連結部材900としてリンクケーブルが用いられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、連結部材900として剛性を有する棒状又は板状の部材が用いられてもよい。又は、連結部材900は、第1昇降機構700及び第2昇降機構800に物理的に接続されていなくてもよい。例えば、連結部材900は第1昇降機構700及び第2昇降機構800の昇降動作を連動して制御するコントローラであってもよい。
また、前輪フレーム220がメインフレーム210に固定され、後輪フレーム230がメインフレーム210に対して回動可能に接続された構成を例示したがこの構成に限定されない。例えば、後輪フレーム230が前輪フレーム220と同様にメインフレーム210に固定され、回動しなくてもよい。又は、前輪フレーム220が後輪フレーム230と同様にメインフレーム210に対して回動可能に接続されてもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す平面図である。図2において、説明の便宜上、連結部材900は省略されている。また、図1と同様に、図2において、一部の構成(特に作業部500)については、実際は見えない部分も含めて、全ての部材を実線で示した。
図2に示すように、前輪300及び後輪400の各々は、農作業機100の左右に備えられている。第1整地部材600は、農作業機100を後方から見た場合に、少なくとも後輪400と重なる位置に設けられている。換言すると、第1整地部材600は、平面視において、後輪400に対して作業の進行方向(前進方向)とは反対方向の延長線上に設けられている。さらに換言すると、第1整地部材600は、左右方向(後輪400の車軸が延びる方向)において、少なくとも後輪400と同じ位置に設けられている。つまり、第1整地部材600は、少なくとも後輪400の真後ろに、後輪400と重複するように設けられている。農作業機100は、このような構成を備えることで、第1整地部材600が後輪400によって発生した轍を均平化することができる。左右方向において、第1整地部材600の作業幅W1は後輪400の外輪幅W2よりも大きい。なお、外輪幅W2は、左右方向において後輪400の左の車輪の左端と右の車輪の右端との距離である。
左右方向において、作業部500の作業幅W3は前輪300の外輪幅W4よりも大きい。なお、外輪幅W4は、左右方向において前輪300の左の車輪の左端と右の車輪の右端との距離である。また、作業幅W3は、作業部500が圃場を耕す領域における左右方向の幅である。作業幅W3が外輪幅W4よりも大きいことで、前輪300によって発生した轍を均平化することができる。なお、作業幅W3は、外輪幅W4と同じであってもよく、外輪幅W4よりも小さくてもよい。また、作業幅W3は後輪400の外輪幅W2よりも大きい。
左右方向において、第2整地部材550の幅W5は後輪400の内輪幅W6よりも小さい。なお、内輪幅W6は、左右方向において、後輪400の左の車輪の右端と右の車輪の左端との距離である。エプロン540は、前後方向の位置によって、左右方向の幅が異なる形状を有している。エプロン540の前方側では、エプロン540の幅は作業幅W3とほぼ同じ幅であり、エプロン540の後方側では、エプロン540の幅は第2整地部材550の幅W5とほぼ同じ幅である。
なお、本実施形態では、一対の前輪フレーム220に前輪300を2個、一対の後輪フレーム230に後輪400を2個支持させた4輪構成としているが、一対の前輪フレーム220に代えて1つの前輪フレーム220を有する構成とし、前輪フレーム220に前輪300を1個、後輪フレーム230に後輪400を2個支持させた3輪構成としてもよい。また、前輪300及び後輪400の各々は、車輪ではなく、各々独立して駆動するクローラを備えてもよく、前輪300及び後輪400の一方が車輪を備え、他方がクローラを備えてもよい。車輪に代えてクローラが用いられる場合、前方クローラの最前端の動輪を前輪と定義することができ、後方クローラの最後端の動輪を後輪と定義することができる。また、第1整地部材600によって轍を均平化することができれば、前輪300と後輪400との間に履板(シュー)が設けられた無限軌道を用いてもよい。本実施形態の前輪300及び後輪400に代えて無限軌道が用いられる場合、無限軌道の最前端の動輪を前輪と定義することができ、最後端の動輪を後輪と定義することができる。
図2では、第1整地部材600が左右の後輪400の後方であって左右の後輪400の左端から右端にわたって連続して設けられた構成(いわゆる一体もの)を例示したが、この構成に限定されない。例えば、左右の後輪400に対して各々独立して第1整地部材600が設けられていてもよい。つまり、右側の後輪400の後方に設けられた第1整地部材600と、左側の後輪400の後方に設けられた第1整地部材600とが左右に分離して設けられていてもよい。換言すると、左右の後輪400の後方に複数の第1整地部材600が設けられていてもよい。
[第1昇降機構700の構成]
図4は、本発明の一実施形態に係る農作業機において、第1昇降機構の昇降状態を示す側面図である。図4を用いて第1昇降機構700の第1平行リンク710、シリンダ740、動力伝達部750の構成を詳細に説明する。図4の(A)は図1に示す下降状態(作業状態)における第1昇降機構700の側面図を示す。図4の(B)は図3に示す上昇状態(非作業状態)における第1昇降機構700の側面図を示す。
図4に示すように、第1平行リンク710は、2つの第1リンクアーム711、713を有する。第1リンクアーム711の一端(前方側の端部)は、接続部715においてメインフレーム210に回動可能に接続されており、第1リンクアーム711の他端(後方側の端部)は、接続部719においてフレーム510に回動可能に接続されている。第1リンクアーム713の一端(前方側の端部)は、接続部717においてメインフレーム210に固定されている取付部211に回動可能に接続されており、第1リンクアーム713の他端(後方側の端部)は、接続部721においてフレーム510に回動可能に接続されている。
接続部715、717、719、721の4点を結ぶ形状は略平行四辺形である。この構成により、第1平行リンク710は、それぞれの接続部を頂点とする平行四辺形の回動機構を構成する。この回動機構により、第1平行リンク710に接続されたフレーム510の水平面に対する角度は変わらない。つまり、第1平行リンク710は、フレーム510を備える作業部500全体の圃場に対する傾きを維持したまま、作業部500を昇降させることができる。
動力伝達部750は、第1アーム部751及び第2アーム部753を有する。第1アーム部751の一端(下方側の端部)と第2アーム部753の一端(後方側の端部)とは接続部755で回動可能に接続されている。第1アーム部751の他端(上方側の端部)は接続部723において第1リンクアーム711に回動可能に接続されている。第2アーム部753の他端(前方側の端部)は接続部757においてメインフレーム210に固定されている取付部211の下端に回動可能に接続されている。シリンダ740の一端(下方側の端部)は接続部741において第2アーム部753の後方かつ接続部755の近傍に回動可能に接続され、シリンダ740の他端(上方側の端部)は接続部743においてメインフレーム210に固定されている取付部211の上端に回動可能に接続されている。
インナーワイヤ920は、接続部921において第1リンクアーム711の後端に固定された取付部725に回動可能に接続されている。アウターエンド部材930は、フレーム510に固定された取付部511に固定されている。本実施形態では、取付部725は第1リンクアーム711に溶接で固定されている。また、取付部511はフレーム510に溶接で固定されている。アウターエンド部材930は取付部511にナットで固定されている。ただし、上記の固定方法は一例に過ぎず、溶接の代わりにナットで固定されてもよく、ナットの代わりに溶接で固定されてもよい。又は、上記の部材はその他の手法で固定されてもよい。
図4の(A)の下降状態からシリンダ740が収縮すると、シリンダ740の一端が接続された第2アーム部753が上方に回動し、第2アーム部753と接続された第1アーム部751が上方に持ち上げられる。第1アーム部751が持ち上げられることによって第1アーム部751の他端が接続された第1リンクアーム711が上方に回動し、その回動に伴い第1リンクアーム711の他端に接続された作業部500の一部であるフレーム510が上昇する(図4の(B)参照)。(A)の状態から(B)の状態に変化する際に、第1リンクアーム711を有する第1平行リンク710は上述した回動機構であるため、作業部500が上昇しても作業部500の圃場に対する傾きは変わらない。一方、第1リンクアーム711の圃場に対する傾きは変化するため、第1リンクアーム711に固定された取付部725に接続されたインナーワイヤ920の接続部921とアウターエンド部材930との距離が大きくなるように、インナーワイヤ920が前方に引っ張られる。
図4では、第1リンクアーム711がメインフレーム210に接続され、第1リンクアーム713がメインフレーム210に固定されている取付部211に接続された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第1リンクアーム711、713の両方がメインフレーム210又はメインフレーム210に固定されている取付部211に接続されていてもよい。また、第1リンクアーム711、713のいずれか一方が、フレーム510ではなく、フレーム510に固定されたフレーム510とは異なる部材に接続されていてもよい。
[第2昇降機構800の構成]
図5は、本発明の一実施形態に係る農作業機において、第2昇降機構の昇降状態を示す側面図及び平面図である。図5を用いて、第2昇降機構800の第2平行リンク810、回動規制部840、及び弾性部材850の構成を詳細に説明する。図5の(A)は図1に示す下降状態(作業状態)における第2昇降機構800の側面図を示す。図5の(B)は図3に示す上昇状態(非作業状態)における第2昇降機構800の側面図を示す。図5の(C)は第2昇降機構800の平面図を示す。
図2及び図5に示すように、第2平行リンク810は、第2上側リンクアーム811、第2下側リンクアーム813を有する。一対の後輪フレーム230の間をかけ渡すように連結フレーム239の両端が後輪フレーム230に接続されており、連結フレーム239には取付部231、233が固定されている。本実施形態では、第2平行リンク810を2組有する。具体的には、右から第2上側リンクアーム811、第2下側リンクアーム813、第2下側リンクアーム813、第2上側リンクアーム811の順に連結フレーム239に接続されている(図2参照)。第2上側リンクアーム811の一端(前方側の端部)は、接続部815において取付部231に回動可能に接続されており、第2上側リンクアーム811の他端(後方側の端部)は、接続部819において第1整地部材600に対して回動可能に接続されている。第2下側リンクアーム813の一端(前方側の端部)は、接続部817において取付部233に回動可能に接続されており、第2下側リンクアーム813の他端(後方側の端部)は、接続部821において第1整地部材600に対して回動可能に接続されている。なお、連結フレーム239と後輪フレーム230との位置関係は固定されているため、連結フレーム239を後輪フレーム230の一部と見なすこともできる。つまり、第2上側リンクアーム811、第2下側リンクアーム813はいずれも後輪フレーム230に対して回動可能に接続されているとも言える。本実施形態では、取付部231、233が連結フレーム239に溶接で固定されている。ただし、上記の固定方法は一例に過ぎず、溶接の代わりにナットで固定されてもよく、その他の手法で固定されてもよい。
接続部815、817、819、821の4点を結ぶ形状は略平行四辺形である。この構成により、第2平行リンク810は、それぞれの接続部を頂点とする平行四辺形の回動機構を構成する。この回動機構により、第2平行リンク810に接続された第1整地部材600の水平面に対する角度は変わらない。つまり、第2平行リンク810は、第1整地部材600の圃場に対する傾きを維持したまま、第1整地部材600を昇降させることができる。
回動規制部840は、第2上側リンクアーム811に対して設けられているが、第2下側リンクアーム813に対しては設けられていない。回動規制部840は、接続部841において連結フレーム239に固定されている取付部231に回動可能に接続されている。回動規制部840の上端にある接続部843には、インナーワイヤ920が接続されている。つまり、インナーワイヤ920が回動規制部840を支持することによって、回動規制部840の下方へ回動する下限位置が規制されている。インナーワイヤ920が前方に引っ張られると、回動規制部840は接続部841を中心に上方に回動する。回動規制部840は係止部845を有する。図5の(C)に示すように、回動規制部840は第2上側リンクアーム811を左右から挟む2つの板状部材で構成されており、係止部845はこれらの板状部材の間をかけ渡すように設けられている。図5の(A)及び(B)に示す状態において、係止部845は第2上側リンクアーム811に対して、第2上側リンクアーム811の下方から接することで係止している。つまり、インナーワイヤ920が前方に引っ張られて回動規制部840が上方に回動すると、係止部845によって第2上側リンクアーム811が押し上げられるように上方に回動する。
弾性部材850は、一端が接続部851に接続され、他端が接続部853にそれぞれ接続されている。接続部851は、連結フレーム239に固定されている取付部231に設けられている。接続部853は、取付部823に設けられている。取付部823は第2上側リンクアーム811に固定されている。本実施形態では、取付部823は第2上側リンクアーム811にネジで固定されている。ただし、上記の固定方法は一例に過ぎず、ネジ固定の他に溶接で固定されてもよく、ナットで固定されてもよい。
図5の(A)に示す作業状態において、弾性部材850は、平衡状態から伸長された状態で両端を接続部851、853に固定されている。そのため、弾性部材850は、第2上側リンクアーム811に対して第1整地部材600を下方に回動させる動力を与えている。つまり、作業状態において、第1整地部材600は弾性部材850によって圃場に押しつけられる。図5の(B)に示すように、インナーワイヤ920が前方に引っ張られて回動規制部840が上方に回動すると、その回動に伴って回動規制部840の係止部845が第2上側リンクアーム811を上方に回動させる。この動作によって第1整地部材600が上昇すると、弾性部材850は図5の(A)の状態からさらに伸長する。
なお、上記のように、回動規制部840は第2上側リンクアーム811の下方への回動を規制しているが、上方への回動は規制していない。したがって、図5の(A)の作業状態において、第2上側リンクアーム811は上方へ回動可能であるため、作業状態であっても第1整地部材600を上方に持ち上げることができる(図6参照)。
以上のように、農作業機100は、作業を行わない旋回時、後進時、畦乗り越え時に作業部500及び第1整地部材600を上昇させ、作業を再開するときは作業部500及び第1整地部材600を下降させる必要があるが、本実施形態に係る農作業機100によると、作業部500及び第1整地部材600の各々の昇降動作が連動するため、1つの動力部(シリンダ740)によってこれらの部材の昇降動作を制御することができる。
また、第1整地部材600が後輪400のさらに後方に設けられているため、第1昇降機構700が作業部500よりも前方に設けられていることで、農作業機100の前後の重量バランスを安定させることができる。このような構成において、第1リンクアーム711の後端が上下に揺動して作業部500の昇降動作が行われる場合、第1昇降機構700に含まれる部材の前後方向への移動量が小さい。しかし、第1昇降機構700と第1整地部材600に連結される第2昇降機構800とを連結する連結部材900として可撓性のあるインナーワイヤ920を用いることで移動量を確保することができ、第1整地部材600を上昇させるために必要な動力を得ることができる。
作業部500が前輪300と後輪400との間にあることで、農作業機100の前後方向における重量バランスが安定し、農作業機100の移動を安定化することができる。また、後輪400の後方に第1整地部材600が設けられていることで、作業部500の作業の後に後輪400によって発生した轍を均平化することができる。このような構成によって、走行機体による牽引を必要としない、新たな構成の自走式農作業機を実現することができる。
なお、上記の実施形態では、第1整地部材600及び第2整地部材550に設けられた接地部材が板状の部材である構成が例示されているが、この構成に限定されない。例えば、これらの接地部材は、板状部材の他にローラー、カゴローラー、ケンブリッジローラーなど、轍を均平化することができる他の部材であってもよい。
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態の作業機を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。