JP7335512B2 - 温度測定装置及び温度測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、温度測定装置及び温度測定方法に関する。
還元鉄を製造するプロセスの一つとして、粉状の鉄鉱石と、粉状の石炭やコークス等の炭材とを混合して、例えばペレットやブリケットのような塊成化物とし、炉床が移動しながら塊成化物を加熱炉に装入して高温に加熱することで、鉄鉱石中の酸化鉄を還元して固体状金属鉄を得る方法がある。
上述のような方法において、加熱炉の加熱には一般的にバーナーが用いられ、還元鉄の原料である塊成化物は、バーナー及び加熱炉の炉壁からの輻射熱によって、外部から伝熱的に加熱される。
これまでに、塊成化物の温度と金属化率との間に相関があることが確認されており、加熱炉内の塊成化物を測温することにより、操業や品質を管理できる可能性がある。加熱炉の温度測温を行う技術として、例えば、下記の特許文献1には、加熱炉内の塊成化物の輝度分布を表す撮像画像を取得し、当該撮像画像に基づいて塊成化物の温度を測定する温度測定方法が開示されている。
この温度測定方法では、撮像画像から、輝度値が所定の第1の閾値以下である低輝度部を抽出し、抽出された低輝度部について迷光寄与割合を算出し、この迷光寄与割合が所定の第2の閾値以下である部分を、温度測定部分として抽出して温度測定部分の輝度測定値から当該温度測定部分の温度を算出している。
特開2016-23314号公報
しかしながら、加熱炉内で処理している塊成化物を測温して操業や品質を管理するためには、上記の特許文献1のように、迷光寄与割合を利用して、迷光の影響が少ない温度測定部分の温度を算出するだけでなく、加熱炉内で時々刻々と変化する迷光の影響をより正確に把握し、塊成化物の温度を一段と高精度に測定することが望まれている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、塊成化物の温度を一段と高精度に測定することができる温度測定装置及び温度測定方法を提供することを目的とする。
本発明の温度測定装置は、加熱炉の内部における塊成化物の温度を測定する温度測定装置であって、前記加熱炉の内部の前記塊成化物を撮像し、前記塊成化物の輝度分布を表わす撮像画像を生成する撮像装置と、前記撮像画像に演算処理を実施して、前記塊成化物の温度を算出する演算処理装置と、を備え、前記演算処理装置は、前記撮像画像から、輝度値が第1の閾値以下である低輝度部を抽出する低輝度部抽出部と、前記低輝度部の形状を表わした形状情報から、半球の立体角2πに対する、前記低輝度部に迷光が入射する立体角の割合を、迷光寄与割合fとして算出する迷光寄与割合算出部と、前記低輝度部のうち、前記迷光寄与割合fが所定の第2の閾値以下である部分を温度測定部分として抽出する温度測定部分抽出部と、前記温度測定部分の輝度値と、前記塊成化物の上面の輝度値と、前記迷光寄与割合fとに基づいて、迷光により生じる測定温度の誤差を示す迷光誤差温度を算出する迷光誤差温度算出部と、前記温度測定部分の輝度値から算出した温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、前記温度測定部分の温度を、前記低輝度部の温度として算出する温度算出部と、を備える。
また、本発明の温度測定方法は、加熱炉の内部における塊成化物の温度を測定する温度測定方法であって、撮像装置を用いて、前記加熱炉の内部の前記塊成化物を撮像し、前記塊成化物の輝度分布を表わす撮像画像を生成する撮像ステップと、前記撮像画像に演算処理を実施して、前記塊成化物の温度を算出する演算処理ステップと、を有し、前記演算処理ステップは、前記撮像画像から、輝度値が第1の閾値以下である低輝度部を抽出する低輝度部抽出ステップと、前記低輝度部の形状を表わした形状情報から、半球の立体角2πに対する、前記低輝度部に迷光が入射する立体角の割合を、迷光寄与割合fとして算出する迷光寄与割合算出ステップと、前記低輝度部のうち、前記迷光寄与割合fが所定の第2の閾値以下である部分を温度測定部分として抽出する温度測定部分抽出ステップと、前記温度測定部分の輝度値と、前記塊成化物の上面の輝度値と、前記迷光寄与割合fとに基づいて、迷光により生じる測定温度の誤差を示す迷光誤差温度を算出する迷光誤差温度算出ステップと、前記温度測定部分の輝度値から算出した温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、前記温度測定部分の温度を、前記低輝度部の温度として算出する温度算出ステップと、を有する。
本発明によれば、迷光寄与割合fに基づいて最適な温度測定部分を抽出するとともに、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて、温度測定部分の温度を、前記低輝度部の温度として算出するようにしたことから、塊成化物の温度を一段と高精度に測定することができる。
本実施形態に係る温度測定装置の構成を示した説明図である。 本実施形態に係る温度測定装置が備える撮像装置を説明するための説明図である。 本実施形態に係る炉内塊成化物の輝度分布を示した撮像画像の例である。 本実施形態で採用した塊成化物隣接モデルの説明図である。 θ=45°としたときの角度φと迷光寄与割合fとの関係を示した説明図である。 迷光寄与割合fと迷光誤差温度との関係を示したグラフである。 本実施形態に係る温度測定装置が備える演算処理装置のうち画像処理部の構成の一例を示したブロック図である。 特徴点の検出方法及び低輝度部の角度φの計算方法を説明するための説明図である。 本実施形態に係る温度測定処理手順の一例を示したフローチャートである。 温度測定部分の検出例を示した説明図である。 算出した温度と迷光誤差温度との時系列的な推移を示したグラフである。 図11に示した温度及び迷光誤差温度の中から、迷光誤差温度が許容値以下のときの温度と迷光誤差温度とを抽出し、抽出した温度と迷光誤差温度との時系列的な推移を示したグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(1)<温度測定装置の全体構成について>
まず、本発明の実施形態に係る温度測定装置10について、図1を参照しながら説明する。
本実施形態に係る温度測定装置10は、例えば、炉床が移動しながら塊成化物を加熱し還元していく回転炉床炉のような還元炉や、その他の種々の加熱炉において、当該加熱炉の内部における塊成化物の温度を測定する装置である。
図1に示す加熱炉は、移動式の炉床の形状が略円形状となっている回転炉床炉であり、炉内は、第1ゾーンから第Nゾーン(N:任意の整数)まで、複数のゾーンに区分けされている。また、加熱炉の炉壁(側壁)には、図1に示したような、炉内を観察するための観察窓が複数設けられている。
本実施形態に係る温度測定装置10は、図1に示すように、撮像装置100及び演算処理装置200を備える。
(2)<撮像装置について>
撮像装置100は、加熱炉の炉内塊成化物を撮像して、塊成化物の輝度分布を表わす撮像画像を生成する装置である。撮像装置100は、レンズ等の各種光学素子と、CCD(Charge Coupled Device)、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、を有している。ここで、本実施形態に係る撮像装置100は、静止画像を生成可能なものであってもよく、動画像を生成可能なものであってもよい。また、本実施形態に係る撮像装置100は、モノクロ画像を撮像可能なものであってもよいし、カラー画像を撮像可能なものであってもよい。なお、カラー画像を撮像可能な撮像装置を利用する場合には、1チャンネルの画像を生成すればよい。すなわち、画像の生成手段としては、RGB成分のうちR,G,Bのいずれかの成分だけを利用しても良いし、RGB色空間からYCbCr色空間への変換を行い、Y成分のみを利用しても良い。
撮像装置100は、後述する演算処理装置200により制御されており、所定のフレームレート毎に、演算処理装置200から撮像のためのトリガ信号が出力される。撮像装置100は、演算処理装置200から出力されたトリガ信号に応じて、加熱炉内の炉内塊成化物の熱放射を撮像し、生成した画像を演算処理装置200に出力する。
図2は、本実施形態に係る撮像装置100の設置状態を説明するための説明図であり、図3は、本実施形態に係る画像の例を示した説明図である。
本実施形態に係る撮像装置100は、炉内の状態を観察するための観察窓に設置されており、約2m先にある炉内塊成化物の熱放射を撮像した輝度画像(撮像画像)を得る。撮像装置100は、例えば、角度θで斜め上から見下ろすように炉内を撮像している。ここで、図2に示したように、角度θは、撮像装置100の中心光軸と、加熱炉の炉床法線方向とのなす角の大きさとして規定される。
(3)<炉内の塊成化物の迷光寄与を抑えた温度測定方法について>
炉内での塊成化物は、バーナーや炉壁等による高温の輻射を受けているため、実際よりも輝度値が高くなっている。塊成化物の見掛けの温度をT[K]とし、黒体放射輝度をL(T)[W/(m・sr)]とし、塊成化物の放射率をεとすると、観測輝度ε・L(T)[W/(m・sr)]は、下記の式(1)により表すことができる。なお、以下の式(1)では、塊成化物の表面を完全拡散面と仮定している。
Figure 0007335512000001
式(1)の右辺第1項において、Tは、塊成化物の真の温度(実際の温度)[K]を示し、L(T)[W/(m・sr)]は、真の温度T[K]での黒体放射輝度を示し、ε・L(T)[W/(m・sr)]は、真の温度T[K]で観測されるはずの塊成化物の真の放射輝度を示す。
式(1)の右辺第2項において、fは迷光寄与割合を示し、Tは、迷光源の温度[K]を示し、L(T)[W/(m・sr)]は、温度がT[K]のときの黒体放射輝度を示し、ε・L(T)[W/(m・sr)]は、迷光源の温度がT[K]のときの塊成化物の放射輝度を示す。
ここで、塊成化物の上面は周囲に迷光を遮るものがないため、迷光の入射角を立体角で規定しようとすると、炉壁を見込む立体角Ωが、Ω=2πとなることから、上記の式(1)においてf=1となり、単純に放射温度計で測温をする場合、実際の温度より高温の出力を検出してしまう。一方、図3に例示したような、撮像装置100により撮像された画像において、複数の塊成化物が隣接し、塊成化物の隙間となる部分では、互いの塊成化物の外形(例えば、塊成化物の上面)により迷光が制限されるため、迷光寄与割合が小さくなる。その結果、例えば、図3において丸で囲った部分のように、撮像画像において輝度が暗い部分が観測されることとなる。
本明細書では、かかる迷光寄与割合を、以下の図4のような塊成化物を直方体で近似したモデル(塊成化物隣接モデル)で見積もることとしている。図4のように複数の塊成化物で隙間を形成するモデルとしては、塊成化物間に三角形状の隙間を形成できれば、必ずしも直方体モデルである必要はないが、以下では直方体モデルについて詳細に説明する。実際の操業に用いられる塊成化物は、例えば30mm×25mm×20mm程度のような大きさを有する回転楕円体であるため、以下で説明するような直方体モデルを用いた場合であっても、実際に観測される現象を十分に説明することができる。
図4の左図は、3つの塊成化物が平面的に近接した状態を上方から見た場合を模式的に示しており、図4の右図は、3つの塊成化物のうち、塊成化物(2)と塊成化物(3)との関係を側方から見た場合を模式的に示している。
撮像装置100によって、図4中で、撮像装置光軸方向として示した矢印の方向から、塊成化物(1)~塊成化物(3)により生じた隙間(開口部)を観測した場合を考える。このとき、図2にも示したように、撮像装置100の観測方向(すなわち、光軸方向)と鉛直方向(炉床法線方向)のなす角をθとすると、塊成化物(2)の側面のうち塊成化物(3)の輪郭線に隣接する部分(図4の右図に、点Qとして示す。)に対しては、図4の右図のような鉛直方向から角度θの領域の迷光が入る。
一方、平面方向では、点Qには図4の左図に示す角度φ’の領域の迷光が入る。点Qが、平面図上で塊成化物(1)、塊成化物(2)が交わり、かつ、撮像装置100から一番遠くなる点(最遠点)である点Pとは異なる場合には、角度φ’は塊成化物(1)と塊成化物(2)のなす角度φとは異なるものとなる。しかしながら、一般に角度φと角度φ’との差異は小さく、両者が等しいと見なしても迷光の入射量に与える影響は少ないので、ここでは角度φ’=角度φとして以降の議論を進める。このとき点Qに入る迷光の立体角Ωは、図4に示した直方体モデルから、以下の式(2)のように表わされる。
Figure 0007335512000002
よって、迷光寄与割合fは、上記の式(2)のΩを半球の立体角2πで割ることで、以下の式(3)のように表わされることとなる。
Figure 0007335512000003
ここで、塊成化物上面では、θ=π/2、φ=2πとなるため、f=1となるが、例えばθ=π/4、φ=π/3のとき、f=0.05となり、迷光の寄与は塊成化物上面の5%となる。例えばθ=π/4としたとき、角度φと迷光寄与割合fとの関係は、図5のようになっている。
次に、迷光寄与割合fの値によって迷光による測温誤差がどの程度に抑制されるかを説明する。
炉内の塊成化物を撮像した撮像画像から、迷光寄与割合fが1となる塊成化物の上面の高温部の輝度と、迷光寄与割合fの低温部(すなわち、f≠1である部分)の輝度とを調べたとき、両者の輝度は、上記式(1)より、それぞれ式(4-1)、式(4-2)となる。ここで、高温部の輝度は、例えば、(a)画像上の最高輝度や、(b)以下に述べる低温部を中心に塊成化物の辺の2~3倍程度の長さを一辺とする領域の中の最高輝度、とする。なお、以下の式(4-1)及び式(4-2)において、T[K]、T[K]は、それぞれ高温部及び低温部の見掛けの温度であり、Tr1[K]、Tr2[K]は、それぞれ高温部及び低温部の真の温度である。
Figure 0007335512000004
ここで、高温部と低温部とは塊成化物を介して接触しているため、Tr1=Tr2と仮定すると、上記式(4-1)及び式(4-2)を連立して、以下の式(4-3)を得ることができる。以下の式(4-3)において、左辺は、塊成化物の黒体輝度に対応し、右辺第1項は、塊成化物の測定輝度に対応し、右辺第2項は、塊成化物で迷光により生じる測定温度の誤差(以下、迷光誤差温度と称する)[℃]に対応する。以下の式(4-3)から明らかなように、迷光誤差温度の上限は、高温部及び低温部の測定温度と、低温部の迷光寄与割合fと、で記述することができる。
Figure 0007335512000005
また、式(4-3)を変形して、以下の式(4-3’)を得ることができる。
Figure 0007335512000006
式(4-3’)において、左辺は、真の温度と見掛けの温度との差であることから、迷光に起因する輝度上の誤差を示している。そのため、この左辺の輝度に対応する温度差(T-Tr2)を、迷光による誤差に対応した、迷光誤差温度ということができる。
式(4-3’)に基づく、迷光寄与割合fと迷光誤差温度(T-Tr2)との関係のグラフを、図6に示す。
図6に示すように、(T-T=150[℃]の場合に比べ、迷光誤差温度が大きくなる傾向にある)T-T=200[℃]の場合であっても、f≦0.05となる部分の測温を行うことで、迷光誤差温度が25[℃]以下と、実用上問題の無い精度で測温することが可能になる。逆に言えば、実際の操業において規定されている迷光誤差温度の最大値に基づき、上記の式(4-3’)で与えられる迷光誤差温度が、かかる操業規定値以下となるように、迷光寄与割合fの閾値を設定すればよい。なお、迷光寄与割合fが予め定めた閾値以下の領域を、以後の説明では低迷光部と称することがある。
このように、必要な測温精度に応じて迷光寄与割合fに閾値を定め、迷光寄与割合fが閾値以下となる温度抽出部分を検出して、温度抽出部分の輝度値に対応する温度を算出することで、迷光による測温誤差を抑えて測温することが可能となる。
なお、式(4-3)はTr1=Tr2という仮定のもとで算出したが、一般にはTr1≧Tr2である。Tr1≧Tr2であるとき、迷光誤差温度の影響は式(4-3)より小さい。また、式(4-1)及び式(4-2)では、高温部の放射率と低温部の放射率とが等しいとして式(4-3)を算出している(すなわち、式(4-3)中の全ての放射率をεとしている)。
なお、以上説明した直方体モデルでは、3つの塊成化物が平面的に近接した状態で考えたが、実際は、塊成化物が2層以上に重なった部分の隙間の輝度を観察する場合も考えられる。その際は、θ、φの値が図4の場合よりも減少するため、迷光の寄与がさらに小さくなる。また、実際の塊成化物の形状は丸みを帯びた形状であるため、θが図4に示す直方体モデルより減少し、その結果、迷光の寄与が小さくなる場合が多いと期待される。このように、本実施形態に係る直方体モデルは、低迷光部の形状を三角形で近似するモデルであり、また、迷光寄与割合fを一番大きめに見積もるモデルであるといえる。
ここで、本実施形態では、直方体でモデル近似したような、低輝度部の形状を表わした形状情報から迷光寄与割合fを求めることができ、L(T)及びL(T)は、それぞれ高温部と低温部の見掛け上の観測値であることから、測定することで知ることができるため、上記の式(4-3’)に基づいて、迷光誤差温度を算出できる。そのため、温度抽出部分の輝度値から算出した見掛けの温度の中から、迷光誤差温度が所定の許容値以下にある(即ち、誤差の影響が小さい)、温度のみを抽出することも可能である。
従って、迷光誤差温度に所定の許容値を設け、測定した温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、温度のみを抽出すれば、温度精度の信頼性が高い温度のみを得ることができ、さらに迷光による測温誤差を抑えて測温することが可能となる。また、迷光誤差温度を基準にして抽出した、塊成化物の真の温度から、式(4-3’)に基づいて、見掛けの温度を算出することも可能となる。
なお、迷光誤差温度の所定の許容値は、過去の操業における試行錯誤の結果、20℃とするのが好ましく、15℃とするのが更に好ましい。
(4)<演算処理装置の全体構成について>
次に、図1を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200の全体構成について説明する。本実施形態に係る演算処理装置200は、撮像装置100により撮像された画像に対して演算処理を実施し、低迷光部を検出して温度算出を行う。
この演算処理装置200は、図1に示したように、撮像制御部201と、画像処理部203と、表示制御部205と、記憶部207と、を主に備える。
撮像制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。撮像制御部201は、本実施形態に係る撮像装置100による加熱炉内の撮像制御を実施する。より詳細には、撮像制御部201は、加熱炉内の撮像を開始する場合に、撮像装置100に対して撮像を開始させるための制御信号を送出する。
画像処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像処理部203は、撮像装置100から取得した画像の撮像データに対して、以下で説明するような画像処理を行い、温度算出を行う。画像処理部203は、得られた加熱炉の塊成化物の温度情報を、表示制御部205に伝送する。なお、この画像処理部203については、以下で改めて詳細に説明する。
表示制御部205は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部205は、画像処理部203から伝送された加熱炉の塊成化物の温度情報を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、温度測定装置10の利用者は、加熱炉の塊成化物の温度情報を、その場で把握することが可能となる。
記憶部207は、演算処理装置200が備える記憶装置の一例である。記憶部207には、本実施形態に係る演算処理装置200が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部207は、撮像制御部201、画像処理部203、表示制御部205等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
(5)<画像処理部について>
続いて、図7及び図8を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える画像処理部203について、詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る演算処理装置200が有する画像処理部203の構成の一例を示したブロック図であり、図8は、特徴点の検出方法及びラベリング部213の角度φの計算方法を説明するための説明図である。
本実施形態に係る画像処理部203は、図7に示すように、低輝度部抽出部211と、ラベリング部213と、輪郭抽出部215と、特徴点抽出部217と、迷光寄与割合算出部219と、温度測定部分抽出部221と、迷光誤差温度算出部223と、温度算出部225と、を主に備える。以下で、各処理部の説明を行う。
低輝度部抽出部211は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。低輝度部抽出部211は、撮像装置100により生成された撮像画像から、予め指定した覗き孔の付着物等が写りこむ部分を除いた領域を輝度観察領域としたうえで、当該輝度観察領域中の最高輝度の半分の値を第1の閾値として、二値化処理を実施する。これにより、二値化処理前の輝度値が第1の閾値以下であるために二値化後の画素値が0となる低輝度部と、二値化後の画素値が1となる部分と、を含む二値化画像が、生成されることとなる。なお、かかる二値化閾値(第1の閾値)は、二値化後の画素値が0となる画素が全体の5~10%程度になるように、自動調整してもよい。また、低輝度部抽出部211は、輝度観察領域を予め複数の部分領域に分割しておき、画像上の部分領域毎に適当な二値化閾値を定めるようにしてもよい。低輝度部抽出部211は、以上のようにして低輝度部が抽出されている二値化画像(低輝度部画像とも称する)を生成すると、生成した二値化画像を、後段のラベリング部213へと出力する。
ラベリング部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。ラベリング部213は、低輝度部抽出部211により生成された二値化画像に対してラベリング処理を実施し、二値化画像における輝度値が0である画素が集まった領域(すなわち、低輝度部)を、領域ごとにラベル付けする。また、ラベリング部213は、各低輝度部の画素数を調べ、画素数が所定値以下(例えば20画素以下)の領域に対しては、ラベリングをせず、以下の処理を実施しないようにしてもよい。ラベリング部213は、以上のようにして各低輝度部に対してラベル付けを行うと、ラベル付けの結果を、後段の輪郭抽出部215へと出力する。
輪郭抽出部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。輪郭抽出部215は、ラベリング部213によってラベル付けされた領域(すなわち、低輝度部)について、低輝度部の外形に対応する輪郭点を抽出し、画素毎にその座標値を記憶する。ここで、輪郭点の抽出を行うための処理については、特に限定されるものではなく、一般的なエッジ検出処理を利用することができる。例えば、輪郭抽出部215は、各低輝度部に対して、ラプラシアンフィルタ等の微分フィルタを用いたフィルタ処理を実施して、輪郭点を抽出することができる。このようにして抽出された輪郭点の座標値に関する情報が、低輝度部の形状を表わした形状情報として用いられる。輪郭抽出部215は、以上のようにして各低輝度部について形状情報を生成すると、得られた形状情報を、後段の特徴点抽出部217へと出力する。
特徴点抽出部217は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴点抽出部217は、各低輝度部について、輪郭抽出部215によって抽出された輪郭点の座標値に関する情報を利用して、撮像装置100から最も遠い位置に存在する輪郭点(最遠点)を特定する。その上で、特徴点抽出部217は、最遠点を通る撮像装置100の光軸により2つの部分領域に区分される各ラベリング領域について、それぞれの部分領域に含まれる輪郭点の集合を特徴点とする。以下、図8を参照しながら、具体的に説明する。なお、図8では、加熱炉の炉周方向をX軸方向とし、撮像装置100の中心光軸方向をY軸方向としている。また、炉中心側から観察窓側(撮像装置100側)に向かう方向を、Y軸の正方向としている。
特徴点抽出部217は、まず、各低輝度部の輪郭の座標について、Y座標が最小の点、すなわち、撮像装置100から最も遠い位置に存在する最遠点を、点P(Xp、Yp)として抽出する。その後、特徴点抽出部217は、塊成化物の輪郭のうち、後に述べる直線近似を行うための上記最遠点側の所定の範囲を設定するために、点Pの座標に応じて設定される矩形領域を考える。ここで、点Pの座標に応じて設定される矩形領域の大きさは、炉内に存在する塊成化物の大きさに基づいて設定することができる。
矩形領域の大きさがあまりに小さいと、後に述べる直線近似の際、塊成化物の表面の凹凸等による輪郭の微小な変化の影響を大きく受けてしまう。また、矩形領域の大きさがあまりに大きいと、塊成化物の輪郭全体で直線近似の計算をしてしまうこととなり、点P近傍の輪郭のなす角度を精度よく計算できない。そこで、矩形領域の大きさは、最大でも塊成化物の1辺の大きさよりも小さくなるように設定し、好ましくは、塊成化物の1辺の大きさの1/3程度とすることが好ましい。矩形領域の大きさを塊成化物の1辺の大きさの1/3程度とすることで、以下で詳述するような近似直線の算出処理において、精度よく近似直線を算出することが可能となる。なお、以下では、X方向に20画素×Y方向に15画素の矩形領域を考慮する場合を例に挙げて、具体的に説明する。
特徴点抽出部217は、点Pの座標(Xp、Yp)に基づいて、上記矩形領域のうち、輪郭点の座標がXp-x1≦x≦XpかつYp≦y≦Yp+y1(x1及びy1は、過去の操業実績から特定される数値であり、例えば、x1=10、y1=15とし、Xp-10≦x≦XpかつYp≦y≦Yp+15)となる画像上の領域(図8中に領域1として示す。)に含まれる画素集合(塊成化物の輪郭に対応する画素集合)を、直線近似を行うための所定の範囲の輪郭である集合Aとして、特徴点とする。
また、特徴点抽出部217は、上記矩形領域のうち、輪郭点の座標がXp≦x≦Xp+x1かつYp≦y≦Yp+y1(Xp≦x≦Xp+10かつYp≦y≦Yp+15)となる画像上の領域(図8中に領域2として示す。)に含まれる画素集合(塊成化物の輪郭に対応する画素集合)を、直線近似を行うための所定の範囲の輪郭である集合Bとして、特徴点とする。
特徴点抽出部217は、以上のようにして矩形領域の集合A及び集合Bの2つの部分領域に関する情報を生成すると、得られた情報を、後段の迷光寄与割合算出部219へと出力する。
迷光寄与割合算出部219は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。迷光寄与割合算出部219は、特徴点抽出部217によって規定された、上記矩形領域のうちの2つの部分領域(例えば、図8における領域1及び領域2)のそれぞれについて、当該部分領域に含まれる輪郭の範囲(すなわち、上記集合A及び集合B)を直線近似した、最遠点を通る近似直線を算出する。より詳細には、迷光寄与割合算出部219は、各部分領域に含まれる輪郭点(換言すれば、集合A及び集合Bとして規定される特徴点)の座標を参照し、各部分領域における輪郭点の分布を直線近似することで、最遠点を通る2つの近似直線を算出する。その後、迷光寄与割合算出部219は、算出した2つの近似直線のなす角φと、撮像装置100の光軸方向と炉床の法線方向とのなす角θと、を利用して、上記式(3)に基づき、迷光寄与割合fを算出する。以下では、再び図8を参照しながら、実施される処理について具体的に説明する。
迷光寄与割合算出部219は、まず、特徴点抽出部217により抽出された各低輝度部の画素集合A、Bより、点Pを通る2本の近似直線式(すなわち、図8の領域1における近似直線式と、領域2における近似直線式)を求め、Y軸となす角φ1、φ2を求める。ここで、近似直線式を求める方法については、特に限定されるものではなく、例えば、最小二乗法やハフ変換等といった公知の方法により求めることが可能である。その後、迷光寄与割合算出部219は、φ=φ1+φ2として2つの直線のなす角φを求める。算出したφが、図4左に示した角度φに相当する。そして、迷光寄与割合算出部219は、撮像装置100の入射角θ(入射角θは、撮像装置100の設置条件によって決まる定数となる。)と求めたφとから、式(3)より迷光寄与割合fを計算する。
迷光寄与割合算出部219は、上記の式(3)に基づき、各低輝度部の迷光寄与割合fを算出すると、算出した各低輝度部の迷光寄与割合fを、後段の温度測定部分抽出部221と迷光誤差温度算出部223に出力する。
温度測定部分抽出部221は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。温度測定部分抽出部221は、迷光寄与割合算出部219によって求められた各低輝度部の迷光寄与割合fと、所定の第2の閾値とを利用して、求められた迷光寄与割合fの閾値判断を行う。すなわち、温度測定部分抽出部221は、元々迷光が一定量遮られる塊成化物の間の隙間の領域で温度測定を行っており、迷光に基づく誤差の低減を図っているが、更に、そうした塊成化物間の隙間の領域の内でも、特に迷光寄与割合fが予め定めた第2の閾値以下であれば、着目している低輝度部を低迷光部として扱うことができるため、こうした第2の閾値以下である部分を検出し、これを温度測定部分として取り扱うようにしている。
温度測定部分抽出部221は、以上のようにして温度測定部分を抽出すると、温度測定部分の抽出結果を、後段の迷光誤差温度算出部223と温度算出部225とに出力する。
迷光誤差温度算出部223は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。迷光誤差温度算出部223は、撮像装置100により生成された撮像画像から、迷光寄与割合fの値が1となる塊成化物の上面の輝度値と、温度測定部分抽出部221で検出した温度測定部分の輝度値とをそれぞれ算出する。これにより、迷光誤差温度算出部223は、算出した塊成化物の上面の輝度値と、算出した温度測定部分の輝度値と、迷光寄与割合算出部219で算出した迷光寄与割合fとから、上記の式(4-3’)で与えられる迷光誤差温度を算出することができる。
より具体的には、算出した塊成化物の上面の輝度値を温度に換算した当該上面の見掛けの上面温度と、算出した温度測定部分の輝度値を温度に換算した温度測定部分の見掛けの温度と、算出した迷光寄与割合fとを、上記の式(4-3’)に代入することで迷光誤差温度を算出する。迷光誤差温度算出部223は、以上のようにして、各撮像画像が得られるごとに迷光誤差温度を算出すると、時系列的に得られる迷光誤差温度の算出結果を、後段の温度算出部225へと順次出力する。
なお、迷光誤差温度算出部223による、輝度値から温度への換算の一例としては、例えば、輝度値と温度との関係を表した検量線を挙げることができる。このような輝度値と温度との関係を表す関係式は、例えば記憶部207に検量線データとして格納されることが好ましい。
温度算出部225は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。温度算出部225は、温度測定部分抽出部221により温度測定部分として検出された低輝度部について、かかる低輝度部を構成する画素の輝度値のうち最小輝度値を与える画素を特定する。この場合、検出した温度測定部分の最小輝度値を与える画素は、図4において鉛直方向から角度θ、平面方向角度φとなる点Qに対応する画素となる。
温度算出部225は、最小輝度値を基に算出した塊成化物の温度測定部分の温度のデータから、迷光誤差温度が所定の許容値より大きくなっている温度のデータを間引いて、迷光誤差温度が許容値以下となっている温度データのみを抽出し、この塊成化物の温度の抽出結果に関する情報を、例えば表示制御部205に出力する。表示制御部205における温度の表示方法については、特に限定されるものではなく、抽出した塊成化物の温度のみや、これに加えて抽出する前の塊成化物の全ての温度、時系列に変動する迷光誤差温度等を、数値として表示しても良いし、温度を色相に変換して、塊成化物の温度を色で表示してもよい。
また、温度算出部225は、抽出した温度情報等を示したデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけて、履歴情報として記憶部207に記録してもよい。
なお、温度算出部225は、画像中の複数の低輝度部について最小輝度値を与える画素の座標を入手し、温度と座標を対応させることで画像上の温度分布を求め、温度分布の中から、迷光誤差温度が許容値以下の温度分布のみを抽出してもよい。すなわち、温度算出部225は、迷光誤差温度が許容値以下になっている、加熱炉の炉径方向の温度分布を求めることが可能である。
また、温度算出部225は、式(4-3’)に基づいて、見掛けの温度を求めて、出力してもよい。
(6)<温度測定方法について>
続いて、図9を参照しながら、本実施形態に係る温度測定方法の流れについて簡単に説明する。図9は、本実施形態に係る温度測定方法の一例を示したフローチャートである。
本実施形態に係る温度測定装置10の撮像装置100は、演算処理装置200における撮像制御部201の制御のもとで加熱炉内の塊成化物を撮像して、塊成化物の輝度分布に関する撮像画像を生成し(ステップS101)、生成した撮像画像を演算処理装置200に出力する。
温度測定装置10の演算処理装置200が備える画像処理部203は、撮像装置100から出力された撮像画像を取得すると、取得した撮像画像のデータを低輝度部抽出部211に伝送する。低輝度部抽出部211は、予め定められた第1の閾値を利用し、取得した撮像画像に対する二値化画像を生成することで、迷光の影響が少ない低輝度部を抽出し(ステップS103)、得られた抽出結果をラベリング部213に出力する。
ラベリング部213は、二値化した後の輝度値が0である領域についてラベリング処理を行い(ステップS105)、得られた結果を輪郭抽出部215に出力する。
輪郭抽出部215は、低輝度部の輪郭を抽出し(ステップS107)、得られた輪郭の座標値を特徴点抽出部217へと出力する。
特徴点抽出部217は、各低輝度部の輪郭の座標について、y座標が最小の点を点P(座標(Xp、Yp))として抽出し、輪郭点の座標がXp-x1≦x≦XpかつYp≦y≦Yp+y1となる画像上の領域に含まれる画素集合をAとして特徴点とするとともに、Xp≦x≦Xp+x1かつYp≦y≦Yp+y1となる画像上の領域に含まれる画素集合をBとして特徴点とし(ステップS109)、迷光寄与割合算出部219に出力する。
迷光寄与割合算出部219は、各低輝度部の画素集合A、Bより、点Pを通る2本の近似直線式を求め、Y軸となす角φ1、φ2を求める。その後、迷光寄与割合算出部219は、φ=φ1+φ2として2つの直線のなす角φを求める。続いて、迷光寄与割合算出部219は、撮像装置の入射角θとφから、上記の式(3)より迷光寄与割合fを計算し(ステップS111)、温度測定部分抽出部221及び迷光誤差温度算出部223に出力する。
温度測定部分抽出部221は、算出された迷光寄与割合fが予め定められた第2の閾値以下であれば、黒体と同様に扱えるような、低輝度部の中でも特に迷光の影響が少ない低迷光部分であるとして、着目している低輝度部を温度測定部分として検出し(ステップS113)、迷光誤差温度算出部223及び温度算出部225に出力する。
迷光誤差温度算出部223は、撮像装置100により生成された撮像画像から、迷光寄与割合fの値が1となる塊成化物の上面の輝度値と、温度測定部分抽出部221で検出した温度測定部分の輝度値とをそれぞれ算出し、算出した塊成化物の上面の輝度値と、算出した温度測定部分の輝度値と、迷光寄与割合算出部219で算出した迷光寄与割合fとから、上記の式(4-3’)で与えられる迷光誤差温度を算出し(ステップS115)、温度算出部225に出力する。
温度算出部225は、温度測定部分の最小輝度値を事前の検証により特定した温度校正式に代入し、その部分の塊成化物の温度として出力する(ステップS117)。そして、温度算出部225は、迷光誤差温度と許容値との関係から、算出した塊成化物の温度のデータの中から、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いた温度データを算出し(ステップS119)、算出した温度を塊成化物の最終的な温度として出力する。
(7)<作用及び効果>
以上の構成において、温度測定装置10では、加熱炉の内部における塊成化物を撮像した撮像画像から、輝度値が所定の第1の閾値以下である低輝度部を抽出し(低輝度部抽出ステップ)、抽出された低輝度部のうち、低輝度部の形状を表わした形状情報から、低輝度部に迷光が入射する立体角の半球の立体角2πに対する割合である迷光寄与割合fを算出する(迷光寄与割合算出ステップ)。
温度測定装置10では、迷光寄与割合算出ステップとして、まず、複数の塊成化物で囲まれた隙間を形成するモデルを用いて、抽出された低輝度部について、形状情報に対応する低輝度部の輪郭のうち、撮像装置100から最も遠い位置に存在する最遠点となる点P(図8)を隙間の頂点として特定する。次いで、最遠点の点Pを通る、撮像装置100の光軸により、2つに区分される輪郭のそれぞれについて、輪郭のうち、最遠点(点P)側の所定の範囲を直線近似した最遠点の点Pを通る近似直線を算出する。そして、算出した2つの近似直線のなす角φと、撮像装置100の光軸方向と炉床の法線方向とのなす角θと、を利用して、迷光寄与割合fを算出する。
温度測定装置10では、抽出された低輝度部のうち、迷光寄与割合算出ステップにより算出した迷光寄与割合fが所定の第2の閾値以下である部分を温度測定部分として抽出する(温度測定部分抽出ステップ)。また、温度測定装置10では、抽出された温度測定部分の輝度値と、迷光寄与割合fが1である塊成化物の上面の輝度値と、迷光寄与割合fとに基づいて、迷光誤差温度を算出する(迷光誤差温度算出ステップ)。
また、温度測定装置10では、温度測定部分の輝度値を基に算出した温度測定部分の温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる温度を算出する(温度算出ステップ)。
このように、温度測定装置10では、迷光寄与割合fに基づいて最適な温度測定部分を抽出するとともに、所定の許容値よりも大きい迷光誤差温度に対応する温度のデータを間引いて迷光誤差温度が許容値以下にある温度を、塊成化物の低輝度部の温度として算出するようにしたことから、迷光誤差温度が許容値超で誤差が大きいと推測される、不自然な挙動を示す温度を省くことができ、かくして、塊成化物の温度を一段と高精度に測定することができる。
なお、上述した実施形態においては、温度測定部分の温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、温度測定部分の温度から、真の温度を求めているが、逆に、そのようにして求めた、真の温度に基づいて、式(4-3’)から、見掛けの温度を求めるようにすることもできる。そうすることで、工業的にモニターすべき温度を、真の温度でも、見掛けの温度でも、適宜使い分けることができるようになる。
以下では、実験例を示しながら、本発明の実施形態に係る温度測定装置及び温度測定方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実験例は、本発明の実施形態に係る温度測定装置及び温度測定方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る温度測定装置及び温度測定方法が下記に示す例に限定されるものではない。
本実験例では、実際の操業に用いられる30mm×25mm×20mm程度の大きさの塊成化物が装入された操業中の加熱炉を、観察窓に設けたCCDカメラにより観察し、得られた画像データに対して本発明に係る画像処理を実施した。なお、図2に示した撮像装置の設置角度θは、45度である。
以下の実験例では、図6から迷光寄与割合fの閾値(第2の閾値)を0.05として、f≦0.05となる低迷光部を温度測定部分として検出した。温度測定部分の最小輝度値から、予め求めておいた温度校正式により温度を算出した。
図10に、温度測定部分の検出例を示した。図10の上段は、CCDカメラより得られた撮像画像であり、図10の中段は、上述した本実施形態に係るラベリング処理により当該撮像画像から得られたラベリング画像(すなわち、ラベリング処理された低輝度部画像)であり、図10の下段は、上述した本実施形態に係る輪郭抽出処理によりラベリング画像から得られた輪郭抽出画像である。輪郭抽出画像内において、点線の丸で囲った部分が、検出された温度測定部分(低迷光部1,2)である。
そして、加熱炉の内部を撮像した撮像画像に基づいて、上記の画像処理を行い塊成化物の上面の輝度値から求めた上面温度と、検出した温度測定部分の最低輝度から求めた温度と、算出した迷光誤差温度とを時系列にプロットしてゆき、これら温度の時系列的な推移を確認したところ、図11に示すような結果が得られた。
そして、迷光輝度温度の許容値を15[℃]とし、図11の結果から、迷光誤差温度が15[℃]より大きくなっている温度のデータを間引いて、迷光誤差温度が15[℃]以下のときの、塊成化物の上面温度と、温度測定部分の温度と、迷光誤差温度とをそれぞれ抽出し、抽出した温度の時系列的な推移を確認したところ、図12に示すような結果が得られた。
図11及び図12から明らかなように、迷光誤差温度が15[℃]より大きくなっている温度のデータを間引いて得られたデータからなる温度を算出することで、迷光誤差温度が15[℃]超で誤差が大きいと推測される不自然な温度変化を省くことができ、塊成化物の温度について定常的な時間的推移を知ることができた。以上の結果から明らかなように、本実施形態によって、塊成化物の温度を一段と高精度に測温することが可能となる。
10 温度測定装置
100 撮像装置
200 演算処理装置
203 画像処理部
211 低輝度部抽出部
213 ラベリング部
215 輪郭抽出部
217 特徴点抽出部
219 迷光寄与割合算出部
221 温度測定部分抽出部
223 迷光誤差温度算出部
225 温度算出部

Claims (4)

  1. 加熱炉の内部における塊成化物の温度を測定する温度測定装置であって、
    前記加熱炉の内部の前記塊成化物を撮像し、前記塊成化物の輝度分布を表わす撮像画像を生成する撮像装置と、
    前記撮像画像に演算処理を実施して、前記塊成化物の温度を算出する演算処理装置と、
    を備え、
    前記演算処理装置は、
    前記撮像画像から、輝度値が第1の閾値以下である低輝度部を抽出する低輝度部抽出部と、
    前記低輝度部の形状を表わした形状情報から、半球の立体角2πに対する、前記低輝度部に迷光が入射する立体角の割合を、迷光寄与割合fとして算出する迷光寄与割合算出部と、
    前記低輝度部のうち、前記迷光寄与割合fが所定の第2の閾値以下である部分を温度測定部分として抽出する温度測定部分抽出部と、
    前記温度測定部分の輝度値と、前記塊成化物の上面の輝度値と、前記迷光寄与割合fとに基づいて、迷光により生じる測定温度の誤差を示す迷光誤差温度を算出する迷光誤差温度算出部と、
    前記温度測定部分の輝度値から算出した温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、前記温度測定部分の温度を、前記低輝度部の温度として算出する温度算出部と、
    を備える、温度測定装置。
  2. 前記温度算出部は、
    前記低輝度部の温度として算出した温度から、前記温度測定部分の見掛けの温度を算出する、請求項1に記載の温度測定装置。
  3. 前記所定の許容値が20℃である、請求項1又は2に記載の温度測定装置。
  4. 加熱炉の内部における塊成化物の温度を測定する温度測定方法であって、
    撮像装置を用いて、前記加熱炉の内部の前記塊成化物を撮像し、前記塊成化物の輝度分布を表わす撮像画像を生成する撮像ステップと、
    前記撮像画像に演算処理を実施して、前記塊成化物の温度を算出する演算処理ステップと、
    を有し、
    前記演算処理ステップは、
    前記撮像画像から、輝度値が第1の閾値以下である低輝度部を抽出する低輝度部抽出ステップと、
    前記低輝度部の形状を表わした形状情報から、半球の立体角2πに対する、前記低輝度部に迷光が入射する立体角の割合を、迷光寄与割合fとして算出する迷光寄与割合算出ステップと、
    前記低輝度部のうち、前記迷光寄与割合fが所定の第2の閾値以下である部分を温度測定部分として抽出する温度測定部分抽出ステップと、
    前記温度測定部分の輝度値と、前記塊成化物の上面の輝度値と、前記迷光寄与割合fとに基づいて、迷光により生じる測定温度の誤差を示す迷光誤差温度を算出する迷光誤差温度算出ステップと、
    前記温度測定部分の輝度値から算出した温度のデータから、所定の許容値より大きい迷光誤差温度に対応するデータを間引いて得られたデータからなる、前記温度測定部分の温度を、前記低輝度部の温度として算出する温度算出ステップと、
    を有する、温度測定方法。
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