JP7334138B2 - 鉄道橋の変位推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、列車が走行する鉄道橋から得られる加速度データに基づいて発生する変位を推定する鉄道橋の変位推定方法に関するものである。
各分野において状態監視を目的とした加速度モニタリングが進められている。橋梁についても、特許文献1,2などに開示されているように、加速度センサを設置し、常時モニタリングと測定結果の分析により状態の変化を評価することが行われている。
常時モニタリングのための変位測定は、加速度や速度測定と比較して一般的にコストが大きい。このため、簡易かつ安価に計測できる加速度波形から変位波形を得ることができれば、実務上の利益は大きい。
一方において変位は、実測加速度を2階時間積分することで得られるように理解されるが、加速度を時間積分して変位を算出する操作は、1/2π(≒0.16)Hzより低い周波数領域においては変位の絶対値が著しく増幅される。
このような積分誤差を除去するために、特許文献1では加速度センサの計測値にウェーブレット変換を行い、対象物の変位解析に適した周波数範囲内で、先のウェーブレット変換によって得られたウェーブレット係数を2階積分した結果に対してウェーブレット逆変換を行うことで、対象物の変位を算出している。
一方、特許文献2では、加速度センサの計測値を2階積分して変位量を算出した後、計測値に含まれる重力成分と計測誤差に起因する積分誤差の一部を第1演算部で除去して算出された変位量を、第2演算部で平滑化して平滑化変位量がピークを示すタイミングの前後に出現するボトムを制御点とするスプライン曲線を特定する。さらに、第1演算部により算出された変位量からスプライン曲線が示す値を減算して、第1演算部により算出される変位量に残存する積分誤差を除去する。
特開2016-148549号公報 特開2018-204952号公報
しかしながら、特許文献1に開示された手法では、ウェーブレット逆変換を行う周波数範囲を対象物毎に適切に設定する必要がある。また、特許文献2に開示された手法では、加速度データの2階積分を行ったうえで積分誤差を除去するための処理を繰り返すため、計算コストが高くなる。
そこで、本発明は、列車という外力の特定がしやすい鉄道橋を対象として、加速度データから簡易かつ安価に高精度の変位波形を求めることができる鉄道橋の変位推定方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の鉄道橋の変位推定方法は、列車が走行する鉄道橋から得られる加速度データに基づいて発生する変位を推定する鉄道橋の変位推定方法であって、鉄道橋を列車が通過したときの加速度波形を取得するステップと、前記鉄道橋のスパン長、前記列車の長さに関する種別情報及び列車速度に関するデータを取得するステップと、前記鉄道橋の固有振動数及び減衰比を使って前記鉄道橋の変位に対する周波数応答関数を求めるステップと、前記加速度波形に基づく動的変位波形を算出するステップと、周波数領域の評価区間を設定して、前記周波数応答関数を使って静的最大変位を同定するステップと、補正する周波数領域として設定された補正区間の線形振動理論に基づく静的変位波形を生成するステップと、前記動的変位波形の前記補正区間を前記静的変位波形に置き換えることで、列車通過時の変位波形を生成するステップとを備えたことを特徴とする。
このように構成された本発明の鉄道橋の変位推定方法では、鉄道橋のスパン長と列車の長さに関する種別情報及び列車速度に関するデータを使用する。さらに、加速度波形に基づく動的変位波形に対して、補正区間として設定された周波数領域では、線形理論解に基づく静的変位波形に置き換えて列車通過時の変位波形を生成する。
このように列車という外力の特定がしやすい鉄道橋を対象とすることで、加速度データから簡易に変位波形を求めることができるようになる。また、低周波数領域などノイズなどが大きくなる区間については、実測された加速度データではなく、線形理論解に基づく静的変位波形を使用することで、低い計算コストで高精度の変位波形を求めることができる。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。 列車荷重列による外力の周波数特性を例示した説明図である。 1自由度系の周波数応答関数の説明図である。 残留波形の切り出し方法を例示した説明図である。 評価区間と補正区間の概念を説明するための説明図である。 列車通過時の最大加速度の検証結果を示した説明図である。 スパン長が比較的短い場合の変位の補正波形を例示した説明図である。 スパン長が比較的長い場合の変位の補正波形を例示した説明図である。 静的最大変位ys maxの推定精度を検証した結果の説明図である。 静的最大変位ys maxの推定精度を検証した別の結果の説明図である。 変位の最大値の推定精度を検証した結果の説明図である。 図11Aの続きの説明図である。 鉄道橋の振動特性を説明するために示した変位の最大値の推定精度の説明図である。 図12Aの続きの説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
本実施の形態で説明する鉄道橋は、単純スパン橋梁である。
この単純スパン橋梁である鉄道橋は、列車が走行することによって、繰り返し外力が作用する。外力が作用した際に鉄道橋に発生する変位は、構造物の状態によって変化する。すなわち、鉄道橋に発生する変位や変位波形をモニタリングすることで、鉄道橋の劣化の程度などの状態が把握できるようになる。
ここで、鉄道橋では、走行する列車の種別や、列車の走行により鉄道橋が影響を受けている時間が明確にできるため、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、それらの情報を有効に活用することで、簡易かつ安価に高精度の変位波形を求める。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、適用対象となる鉄道橋のひび割れなどの非線形や、列車と鉄道橋の相互作用の影響などのモデル化が煩雑な因子をモデル化せずに、可能な限りノンパラメトリックな方法とするために、線形振動理論を活用して、列車通過時の加速度波形に基づいた変位波形の復元を行うこととした。
まず、単純スパン橋梁の動的応答の線形振動理論の概要について説明する。
以下では、単純スパンで表現される鉄道橋の列車通過時の動的応答に関して、線形梁理論に基づく定式化を行う。具体的には、単純梁の静的応答、単純梁の動的応答、列車荷重列による外力の周波数特性、単純梁の周波数特性について説明を行う。そして、これらの基本的な理論に基づき展開された式を用いて、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の説明を行うこととする。
まず、単純梁の静的応答について説明する。
単純梁に荷重列が作用する場合の動的応答は、以下の式で記述できる。
ここで、車両の各輪軸jの初期位置をx0(j)として、一定速度vにて鉄道橋の上を通過しているとした単純梁の応答が、1次モードのみで表されると仮定したときに、モーダルリダクションにより以下の展開が成立する。
ここで、yはモード変位であり着目点の変位(鉄道橋のスパン中央変位)、meqは等価質量、Ceqは等価減衰、keqは等価剛性である。
そして、式を展開していくと以下のように記述することができる。
λ(t)の最大値を有効軸重倍率λpとしてλ(t)を基準化し、PeqpPoと定義する。さらに、κを外力と自重の比の無次元量として、次式のように定義する。
外力項に着目して書き換えた上記[数3]で示した式のうち、質量項と減衰項とを無視した場合の変位となる静的応答ys(t)は、以下のように記述できる。
上記λ(t)(λの上バー省略)の最大値が1であることから、ys(t)の時刻歴上の最大値ys maxは、以下のように記述できる。
有効軸重倍率λpとスパン長Lbの関係からすると、単純梁のスパン長Lbの増加と共に有効軸重倍率λpは増加する。また、軸配置の関係で、スパン長Lbに対して変位に有効に作用する軸数が相対的に減少するため、反共振点となるスパン長Lbで有効軸重倍率λpの増加はなだらかになる。
続いて、単純梁の動的応答について説明する。
上記[数3]の式の関係と、ω2 eq=keq/meq、Ceq=2ξeqωeqの関係とを用いると、以下の式が記述できる。
ここで、zを等価モード座標上の応答値yと静的応答ysの比として定義すると、以下の式に書き換えられる。
さらに、外力項と速度パラメータαをそれぞれ以下のように記述する。
上記[数8]の式の時間tを無次元化したものと、[数9]の式の関係を用いると、動的応答yと静的応答ysの比であるzは、次の関係式を解くことにより得られる。
すなわち、zはα、減衰比ξeq及び輪軸配置λ(λの上バー省略)をパラメータとした上記運動方程式を解くことで得られる。特に、動的応答の最大値ydが重要な評価指標となる。また、z(τ)(τの上バー省略)の最大値は衝撃係数と呼ばれ、以下の式によりiαとして定義される。
ここで、ydは動的応答の最大値である。
続いて、列車荷重列による外力の周波数特性について説明する。
上記[数3]の式の外力項のP0λ(t)について着目すると、時間に依存して変動する成分はλ(t)のみである。以降、時間領域においてモード外力λ(t)の周波数領域の特徴について考察する。λ(t)のフーリエ変換F(λ)をFλ(ω)と記述すると以下の式が得られる。
また、上式は次のように各輪重jの和として記述できる。
そして、展開を続けると、以下の式が得られる。
ここで、Fλ0(ω)は単一車軸による加振スペクトルであり、複数車輪の繰り返し効果はΣje-iωt 0 (j)により表現される。このΣje-iωt 0 (j)について、各車両kの輪軸配置が[x0+kLvx0+kLv+ax0+kLv+bx0+kLv+a+b]により記述できることを用いて展開を続ける。
上記[数13]、[数14]及び[数15]の式をまとめると、Fλ(ω)は以下のように展開される。
続いて、パラメータを整理するために無次元化を行う。無次元化の方法としてはいくつかの方法が考えられる。例えば、ωv(=vπ/Lb)を基準として、tb=π/ωv、Ω=ω/ωvのように記述すると、上記[数16]の式の各成分について以下の関係が得られる。
一方で、ωvLv(=vπ/Lv)を基準として、tb=π/ωv、Ω=ω/ωvLvのように記述すると、上記[数16]の式の各成分について以下の関係が得られる。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、上記[数18]の関係を用いることとして、[数16]の式をまとめると、次の式が得られる。
ここで、Fwv(ω)は先述したように単一車軸による加振スペクトルであり、梁長さであるスパン長Lbを速度vで通過する加振周波数ωvに依存する成分である。また、Ft0(ω)は、先頭輪軸が梁に進入する時刻t0による位相差を表す成分であり、FLv(ω),Fa(ω),Fb(ω)はそれぞれ複数輪軸の繰り返し効果を表す成分である。
図2に、列車荷重列による外力の周波数特性の一例を示した。図2の縦軸は、上記[数18]に示した各式のそれぞれの周波数関数の絶対値、横軸はΩ(=ω/ωvLv)である。|Ft0j(ω)|は絶対値が1であることから、図2への記載を省略している。ここで、それぞれのパラメータは、Lb=50,V=285,t0=0.5,nv=16,Lv=25,a=2.5,b=17.5のように設定した。
|Fa(ω)|は、車軸間隔aによる成分であり、Ω=1+2kLv/a(kは非負正数)を満足する場合に周期的に0となる関数である。
|Fb(ω)|は、台車中心間隔bによる成分であり、|Fa(ω)|と同様の形状であり、Ω=1+2kLv/b(kは非負正数)を満足する場合に周期的に0となる関数である。
|FLv(ω)|は、車両長Lv,車両数nvによる成分であり、特徴的な形状が確認できる。FLv(ω)の分子が0となるのはΩ=(1+2k)/nv(kは非負正数)を満足するときであるが、分母が周期的に0となるΩ=1+2k(kは非負正数)となる場合には0とはならず、前後と比較して局所的に大きな値を示している。
|Fwv(ω)|は、スパン長Lbに依存する成分であり、Ωの増加とともに全体的に減少する傾向にある。また、Ω=1+2kLv/Lb(kは非負正数)を満足する場合に周期的に0となる特徴を有する。
|Fλ(ω)|(λの上バーは省略)は、上記したそれぞれ成分の積となるが、形状としては|FLv(ω)|の成分の影響が強く残っているように見られる。Ω=2k(k=1,2,3,4,6,7,8,9,11,12,13,14,16,・・・)となるときに、周期的に大きくなる極大値を示している。
続いて、単純梁の周波数特性について説明する。
列車通過時の単純梁の変位応答は、1次モードのみを考慮することにより概ね再現が可能であることから、1自由度系の変位応答の周波数特性について考えることとする。一般に、固有角振動数ωsとモード減衰比ξsを有する1自由度系の変位に対する伝達関数(周波数応答関数)Sdは、Ωs=ω/ωsの関係を用いて以下の式により表される。
また、加速度に対する伝達関数(周波数応答関数)Saは、次式により表される。
図3に、上記[数20]の式で示す1自由度系の伝達関数Sdを示す。この図から、減衰比ξsにより|Sd|が変化するのは0.8<Ωs<1.2程度の範囲であり、それ以外の領域では減衰比ξsの影響は小さい。
また、Ωs<0.5の領域では、|Sd|<1.3程度を満足し、Ωsが0に近づくとき、|Sd|が1に漸近する特徴がある。これは、1自由度系の各固有角振動数ωsより半分以下の周波数成分は増幅されても30%程度未満となり、外力の周波数特性が既知となればこの領域の変位の周波数応答は外力特性の1倍-1.3倍となることを意味している。
以上で説明した単純スパン橋梁の動的応答の線形振動理論の考え方を踏まえて、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法で適用する単純スパン橋梁の加速度積分による変位波形の復元方法について説明する。
鉄道橋の変位波形y(t)が線形理論により算出できる場合には、上記[数10]の式を解くことで得られるが、静的変位波形ys、固有振動数feq、減衰比ξeqといったパラメータをそれぞれ同定する必要がある。ところが、パラメータ同定に基づく手法は、実際の橋梁の応答が線形系を仮定できる場合が限られていることから、モデル化誤差の影響が大きくなることや、計算負荷が大きく常時モニタリング等で得られた大量のデータを処理するのに向いていないことなどの問題がある。特に、線形理論で表現される固有振動数feqと減衰比ξeqは、橋梁の振動特性に関するパラメータであるが、コンクリート橋梁の場合には材料が非線形となることや、列車と橋梁の動的相互作用の影響などにより、厳密には時々刻々変化することから,定常な1自由度系を仮定する場合にはこの誤差も無視できない場合がある。
図1には、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の概略の処理の流れを示す。本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、可能な限りモデルを仮定せずに変位波形を得ることができるような処理を行っている。
まず、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法を適用する前提として、以下のことを仮定する。
(前提1)実測されるデータとして使用するのは、鉄道橋の軌道面直下でスパン中央の単点の加速度波形のみとする。要するに、鉄道橋のスパン中央に設置された加速度センサから得られた加速度波形のみを実測の加速度データとして使用する。
(前提2)橋梁のスパン長Lb、通過した列車種別は、既知の情報とする。列車種別は、車両長Lv、車軸間隔a、台車中心間隔bという列車の長さに関する種別情報である。
(前提3)列車の輪重P0は未知ではあるが、全車両で同一の値とする。
(前提4)列車速度v(m/s)(V(km/h))は、鉄道橋を通過中において一定で変化しない。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、図1のステップS31-S34に示すように、加速度波形の低周波のごく一部のみを補正するだけであるが、補正のためにいくつかのパラメータを同定する必要がある。
一方、外力特性に関しては、鉄道車両を対象とする場合には、種別も一定の範囲に限られ、軸配置も事前に明確に分かるという特徴があることから、これを利用して理論モデルを仮定する。すなわち、外力は上記[数1]の式の右辺により表現できるものとする。
また、加速度波形により同定するパラメータは、車両数nv、列車通過速度(列車速度V=3.6v,通過中に変化する場合もあるが一定の平均値として扱う)、第一車軸が鉄道橋に進入する時刻t0、静的最大変位(静的たわみ)ys maxである。静的最大変位ys maxは、上記[数5]の式から分かるように輪重P0にだけでなく、未知数である鉄道橋の等価剛性keqにも依存するが、ここでは外力特性に関するパラメータとして扱う。
また、車両数nv、列車速度V、列車の進入する時刻t0については、経験的に多くの方法から得られることが知られているので、詳細な説明は省略して、既知として扱う。鉄道橋の特性に関しては、車両数nv、列車速度V、列車の進入する時刻t0が事前に得られている場合には、残留波形の時刻領域が明確化されることから、これを用いて固有振動数feqと減衰比ξeqとを同定する。
続いて、固有振動数feqと減衰比ξeqの同定方法について説明する。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、静的最大変位ys maxを同定することになるが、この同定において鉄道橋の周波数応答関数Sdを利用する。周波数応答関数Sdの周波数領域において0.5feq以下に着目すると、周波数応答関数Sdの絶対値は大きく変化しないことから、周波数応答関数Sdのパラメータとなる固有振動数feq及び減衰比ξeqを厳密に求める必要はない可能性がある。しかしながら、鉄道橋の振動特性(feq,ξeq)が全く未知の場合には、加速度波形から何らかの方法で同定する必要がある。ここでは、鉄道橋の列車通過後の残留波形を利用して、固有振動数feqと減衰比ξeqとを同定する。
図4に、残留波形の切り出し方法を説明するための図を示す。列車通過後の残留波形を実測波形から切り出す方法としては、波形の形状を一つずつ確認しながら、手動で列車通過時の時間帯を判断し切り出す方法がある。この方法では、大量のモニタリングデータを処理することは難しい。
一方、固有振動数feq及び減衰比ξeqの同定は、車両数nv、列車速度v、列車の進入する時刻t0を同定した後となることから、これらの情報と車両長Lvの情報を用いて、t0=nvLv/v以降を残留波形と判別することも可能である。
そして、切り出した加速度の残留波形を周波数領域にフーリエ変換する。さらに、鉄道橋のスパン長Lbに基づいて120Lb -0.8以下の周波数領域に着目し、極大点のうち最大の値を示す周波数を固有振動数feqとする。また、残留波形の時間領域の極大値を、大きい順に4つ抽出し、4点の値から対数減衰率を3通り計算して平均値を求め、減衰比ξeqとする。
続いて、静的最大変位ys maxの同定方法について説明する。ここでまた、1自由度系の強制振動を考え、上記[数9]をフーリエ変換すると次式が得られる。
ここで、フーリエ変換子Fを用いると、Y=F(y)、Fλ=F(λ)であるため、上式は次のように記述できる。
さらに、上記[数5]の式の関係を用いると、静的最大変位ys maxは次式により定義される。
ここで、上式の右辺は、変位の周波数成分Y(ω)と、列車通過による外力の周波数成分F(ω)及び鉄道橋の周波数応答関数Sd(ω)であり、周波数領域で定義された関数である。ここで、上述したように周波数応答関数Sdの計算仮定である橋梁系が線形1自由度でノイズが全く無い状態であれば、上記[数24]は全周波数領域で成立する。
しかしながら、測定された加速度の低周波領域は、加速度センサの応答特性上、精度が低いことが多い上に、単純に積分した場合には、変位の低周波領域はノイズの増幅の影響を受けやすい。さらに,実際の橋梁の応答は2次以上の高次モード及び非線形性が発生することを考えると、実際の鉄道橋の条件下において、上記[数24]が成立する周波数領域は限られた領域となる。
静的最大変位ys maxの同定においては、ノイズや橋梁の高次モードや振動特性の不確かさの影響を受けにくい特定の周波数領域を利用することに、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の特徴がある。特に、車両と構造物の動的相互作用や橋梁の非線形応答は、鉄道橋の振動特性でも固有振動数feq付近において影響を及ぼすことから、固有振動数feq周辺の周波数成分を用いないことにより、静的最大変位ys maxの同定精度を向上させることができる。
具体的には、静的最大変位ys maxは、次式により同定する。
ここで、ωe1,ωe2は、|Y/FλSd|の平均値を算出する評価区間となる周波数の下限及び上限であり、以下のように定義する。
<適用範囲feq≧2v/Lv
ωe1=0.5×πv/b ,ωe2=2×πv/b
ここで、Lvは車両長、bは台車中心間隔である。
<適用範囲feq<2v/Lv
ωe1=0.1×2πfeq ,ωe2=0.5×2πfeq
続いて、補正方法について説明する。
次式で示すように、周波数領域で定義された変位Dを逆フーリエ変換F-1すると、時間領域の変位波形dが得られる。
ここで、実測された加速度波形のデータを、時間領域に対してameasure、周波数領域に対してAmeasureと定義する。そして、次式により、周波数領域において直接積分した場合の変位波形Dmeasureを得ることも可能である。
直接積分する手法では、ameasureに含まれる低周波ノイズを積分操作により増幅してしまうため、評価に耐えうるデータを復元することは実質的に不可能である。加速度を直接積分した場合の誤差は、主に低周波領域に混入するノイズを時間積分の過程で増幅してしまうことに起因している。
そこで、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、実測された加速度を鉄道橋の準静的成分及び動的成分に分解し、ノイズの影響を強く受ける準静的成分のみを理論解により補正する。
上述したように線形理論においては、橋梁応答において、静的成分と動的成分(衝撃係数)とを分離でき、それぞれの応答波形を算出することは可能であるが、ここで言う準静的成分は、橋梁の強制振動において慣性力や減衰力を無視した復元力のみを考慮して得られる変位応答を意味するものではない。
そして、加速度の実測波形に対して、周波数分析などで静的応答に寄与の大きい低周波領域と、動的応答に寄与が大きい高周波領域とを2分することは不可能である。従って、単純に、周波数領域においてある境界を設定し、それ以下の低周波成分を有する波形を準静的成分とし、それ以上の高周波成分を有する波形を動的成分と称することとする。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、低周波領域のみを線形振動を仮定したDtheoryにより補正したDmodifiedを以下の式により定義する。
ここで、ωmは補正境界角周波数であり、以下に示す値を用いた。
<適用範囲feq≧2v/Lv
ωm=πv/b
<適用範囲feq<2v/Lv
ωm=0.5feq
そして、上記[数28]により定義されたDmodifiedを、上記[数26]の式で示すように逆フーリエ変換することで、変位の復元波形dmodifiedを得ることができる。
図5に、評価区間と補正区間の概念図を示した。
次に、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法(本手法)の妥当性について検証した結果を説明する。
まず、実測される加速度と変位波形の生成について説明する。
列車通過時の動的応答として、鉄道橋のスパン中央の加速度a(t)と変位d(t)とを、次の式により理論的に算出する。
ここで、F-1は逆フーリエ変換子、A(ω)は周波数領域上の加速度、D(ω)は周波数領域上の変位である。
周波数領域上の加速度A(ω)及び変位D(ω)は、上述した[数20]及び[数21]の式を用いて次式により算出できる。
上記[数29],[数30]に示す周波数領域上の処理により、[数3]の式で上述したような時間軸上の運動方程式を数値積分するよりも、格段に高速に列車通過時の動的応答の算出が可能となる。
実測された加速度から変位応答波形を復元することを考えた場合、加速度の実測波形には単純梁の純粋な応答以外にも自己ノイズが混入しており、時間軸上の絶対値に付加されている。このノイズには、測定対象とする列車荷重以外の風や地盤振動等の外乱に起因するもの、電源や測定機器の特性によるものなどがある。本来、自己ノイズはセンサの電気回路等から発生する内的な要因のものであるが、このような内的な要因と常時微動や温度特性等の外的な要因とを分離することは困難である。このため、この検証では、静置状態に含まれる外的な要因及びA/D変換性能を含む加速度センサシステム(加速度計)としてのノイズを自己ノイズと考えることとする。すなわち、加速度計を設置した状態で列車が通過せずに実測される振動が、自己ノイズとなる。
そこで、上記[数29]の式により算出された理論解に、ノイズεを付加する。
ここで、εは平均が0、分散がσε 2で定義される正規分布に従う乱数によりモデル化する。
加速度を時間積分して変位を算出する操作は、加速度の各周波数成分に1/(iω)2を乗ずることと同義となることから、1/2π(≒0.16)Hzより低い周波数領域においては、変位の絶対値が著しく増幅されることとなる。一般的な加速度計で、この低周波領域を高精度で測定可能な周波数範囲としたものは少ない。さらに、センサの性能によって例え測定可能であったとしても、積分操作を加える場合には上記した低周波の増幅により、ノイズも増幅されることとなる。すなわち、約0.2Hz以下の周波数成分は、積分操作による誤差の増幅の影響により、得られた変位データの信頼性は著しく低いものとなる。速度を時間積分して変位を算出する場合には、積分操作が1回で済む分、ノイズの増幅は小さくなる。
検証ケースでは、列車に関するパラメータは列車速度Vのみとして、V=10,60,・・・,410,460km/hとした。車両数nvは12両、軸重P0は120kN、列車の進入時刻t0は2秒で固定値とした。
鉄道橋に関するパラメータは、スパン長Lbのみとして、Lb=10,20,・・・,90,100mとした。鉄道橋の単位長さあたりの質量m(上バーは省略)と固有振動数feqは、スパン長Lbに基づき以下の関係を仮定した。
ここで、鉄道橋の単位長さあたりの質量m(上バーは省略)は、単線のコンクリート橋梁を想定し、固有振動数feqは比較的に柔構造の橋梁を想定した値である。また、減衰比ξeqは2%の固定値とした。
一方、ノイズの標準偏差σεは、0.001,0.005,0.010,0.015,0.020とした。ノイズの標準偏差σεは、センサの種類や設置状況などに大きく依存するが、0.001から0.005程度となる場合が多い。
図6に、列車通過時の最大加速度amaxを示す。最大加速度amaxは、上記[数29]の式で示す加速度a(t)の時刻歴から絶対値の最大を抽出した。図6から、列車速度Vが遅くなるほど、またスパン長Lbが長くなるほど最大加速度amaxが小さくなっており、スパン長Lb及び列車速度Vに依存して、0.01から8程度の間で変化することが分かる。ここで、誤差の標準偏差σεは0.001m/s2から-0.020m/s2である。スパン長Lb=50m、列車速度V=260km/hの場合の最大加速度amaxは0.244であり、σε=0.005とすると95%信頼領域としては0.01m/s2程度であることから、SN比は25程度となる。
続いて、本手法の検証結果について説明する。
図7及び図8に、横軸を経過時間(Time(s))、縦軸を変位(Disp(mm))として、検証結果となる変位の補正波形を例示した。図7は、スパン長Lbが比較的短い場合の検証結果であり、図8は、スパン長Lbが比較的長い場合の検証結果である。
これらの検証結果は、ノイズの標準偏差σεが0.001m/s2で、列車速度Vが260km/hの場合の結果である。図中の凡例「Exact」は変位の正解波形を示し、凡例「Estimated」が本手法による補正波形を示している。また、凡例「Modified part」は、本手法による補正がされる前の低周波領域の波形を示している。これらの結果は、車両数nvと列車速度Vが既知、すなわち正確に同定されているという条件の下の結果である。
これらの図から、変位の正解波形(Exact)と本手法の補正波形(Estimated)とは、ほぼ一致した波形で重なって図示されており、本手法の妥当性が確認できる。他方、本手法による補正前の波形(Modified part)は、いずれのケースも時刻が2sから6sの範囲で大きく正解波形と異なっており、本手法の補正によって変位の推定精度が高められたと言える。このように本手法は、波形の最大値だけでなく形状が再現できることから、疲労のように振幅や繰り返し回数が評価指標となる問題に対しても、有効であることが分かる。
続いて、鉄道橋の振動特性feqの推定精度について説明する。
本手法では、残留波形の周波数分析によるアルゴリズムを用いており、ノイズの大きさが推定結果に及ぼす影響は小さいと思われる。一方、スパン長Lbが長く、列車速度Vが高速領域となるほど、推定精度が低下する傾向となることが確認できた。また、列車速度Vが10km/hと60km/hの低速の場合や、反共振速度に近いケースでは、波形に含まれる動的成分が小さく、残留波形の絶対値が小さくなることから、推定誤差が大きくなる傾向にあることが分かった。
続いて、静的最大変位ys maxの推定精度について説明する。
図9に、ノイズの標準偏差σεが0.001m/s2の場合の静的最大変位ys maxの推定精度を示し、図10に、ノイズの標準偏差σεが0.005m/s2の場合の静的最大変位ys maxの推定精度を示した。
これらの結果は、図1に示したフローチャートにおいて、既知の情報として車両数nvと列車速度Vを同定し(ステップS11)、鉄道橋の振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)が既知、すなわち正確に同定された条件(ステップS22)の下の結果である。
これらの図表に示した推定誤差は、推定値/正解値-1により算出した。これらの結果から、列車速度Vが低速で、スパン長Lbが長く、ノイズが大きくなるほど推定誤差が大きくなる傾向が確認できる。これは、低速で長スパンでノイズが大きい場合は、加速度の絶対値が小さくなり、SN比が小さくなるためである。また、ほとんどの領域で推定誤差は正の値を示しており、安全側の評価となっていることがわかる。
推定誤差が正の値を示すのは、上述したように周波数領域の評価区間において、ノイズの絶対値が影響を及ぼしているためと考えられる。このことは、補正の過程において、事前に得られるノイズの周波数分布を考慮すれば精度が向上することを示唆している。実用上は、ノイズの標準偏差σεが0.005m/s2以下で列車速度Vが110km/h以上の領域に着目すればよく、概ね5%以下の推定誤差の精度で静的最大変位ys maxを推定することが可能であることが分かる。
続いて、最大変位の推定精度について説明する。
図11A及び図11Bは、変位の最大値の推定精度を検証した結果の説明図である。この検証結果は、ノイズの標準偏差σεが0.005m/s2の場合の変位の最大値推定精度を例示している。
これらの結果も、図1に示したフローチャートにおいて、既知の情報として車両数nvと列車速度Vを同定し(ステップS11)、鉄道橋の振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)が既知、すなわち正確に同定された条件(ステップS22)の下の結果である。
図11Aの上段の図中の凡例「exact」は最大たわみ及びアップリフトの正解値を示し、凡例「Estimatesたわみ」及び「Estimatedアップリフト」が本手法による推定値を示している。また、図11Bの図表は、最大たわみの精度を示しており、推定値/正解値-1により算出している。
これらの図から、ほとんどのケースで正側(アップリフト)と負側(最大たわみ)の最大変位を正確に評価できており、上述したように変位波形も正確に復元できている。また、列車速度Vが低速で、スパン長Lbが長く、ノイズの標準偏差σεが大きくなるほど推定誤差が大きくなる傾向が確認できた。すなわち、ノイズの標準偏差σεが0.001m/s2の場合は、列車速度Vが110km/h以上の領域で概ね2%以下の推定誤差の精度、ノイズの標準偏差σεが0.005m/s2の場合は、列車速度Vが160km/h以上の領域で概ね2%以下の推定誤差の精度が得られた。
実用上は、ノイズの標準偏差σεが0.005m/s2以下で列車速度Vが110km/h以上の領域に着目すればよく、概ね5%以下の推定誤差の精度で最大変位を推定することが可能であることが分かる。
ここで、図12A及び図12Bに、鉄道橋の振動特性を説明するために変位の最大値の推定精度を示した。この図には、ノイズの標準偏差σεが0.001m/s2の場合の変位の最大値推定精度を示している。
この結果は、上記[数20]の式に示す周波数応答関数Sdの算定において、鉄道橋の振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)を概算値として与えた場合の結果である。すなわちこの図は、周波数応答関数Sdの正確さが波形の復元結果に与える影響を表している。
具体的には、固有振動数feqに実際には50Lb -0.8で与えたところに70Lb -0.8とし、減衰比ξeqに実際には0.02で与えたところに0.01として、周波数応答関数Sdを算出した。この図を見ると全体的に誤差が増加しており、その傾向は長スパンで高速領域において顕著となっている。これは、減衰比ξeqを実際よりも小さく設定したことから、|Sd|が過大に計算されたためである。ただし、スパン長Lbが30m以下の領域では推定誤差は概ね10%以内、スパン長Lbが100mの場合でも概ね20%以下であり、鉄道橋の振動特性の同定を省略して概算値として与えた場合でも、一定の推定精度を有していることが分かる。
本手法で用いた振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)の同定アルゴリズムは非常に簡単なものであり、特定の列車速度Vにおいて推定精度が大きく低下するが、一般的に橋梁応答を常時モニタリングするような場合には、広い列車速度Vの範囲の複数の測定データにおいて、これらの値が突然変化するようなことは考えにくいことから、事前に得られている情報を活用して、同定された値の尤もらしさを勘案しながら周波数応答関数Sdを計算することが望ましい。
鉄道橋の振動特性の性能の変化を確認するために固有振動数feqと減衰比ξeqを同定することは意義のあることであり、超低速、反共振速度などの悪条件下においても、より高度な手法を用いることで振動特性の精緻な同定は可能であるが、計算負荷が著しく増大する一方、最終的な評価目的である変位波形の推定精度向上に寄与する割合は小さい。
次に、本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法の処理の流れと作用について説明する。
本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、図1のフローチャートに示すように、ステップS1において、単純スパン橋梁である鉄道橋のスパン中央に設置された加速度センサによって列車通過時に計測された加速度波形の計測値(加速度データ)を取得する。
続いてステップS11,S12では、車両数nv及び列車の通過速度である列車速度Vの同定と、鉄道橋に列車が進入する時刻t0の同定をすることになるが、上述したようにこれらの値は、既知の値が使用できる。
さらに、橋梁特性の同定が必要な場合は、ステップS21において、加速度波形の中から残留波形を抽出し(図4参照)、振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)の同定を行う(ステップS22)。
鉄道橋の振動特性(固有振動数feq,減衰比ξeq)が得られていれば、周波数応答関数Sdを算出することができる(ステップS13)。また、ステップS14では、計測された加速度波形を使って動的変位波形(動的波形)Dmeasureを算出する([数27]参照)。
さらにステップS15,S16では、周波数領域の評価区間を設定して(図5参照)、静的最大変位ys maxを同定する([数25]参照)。ここまでが、静的最大変位ys maxの同定方法となる。
そして、ステップS31からステップS34では、加速度波形から得られた動的変位波形Dmeasureの補正を行う。まずステップS31では、境界とする角周波数である補正境界角周波数ωmより低周波となる周波数領域を、補正区間に設定する(図5参照)。
続いてステップS32では、補正区間について、線形振動理論に基づく静的変位波形(準静的波形Dtheory)を生成する。一方、補正区間以外については、動的変位波形Dmeasureを動的波形Dmesureとしてそのまま保存する(ステップS33)。
そして、ステップS34では、補正区間の準静的波形Dtheoryと補正境界角周波数ωm以上の周波数領域の動的波形Dmesureとを合成したDmodifiedを生成する([数28]参照)。さらに、このDmodifiedを逆フーリエ変換([数26]参照)することで、補正後の列車通過時の変位波形dmodifiedを復元する(ステップS40)。
このように構成された本実施の形態の鉄道橋の変位推定方法では、鉄道橋のスパン長Lbと列車の長さに関する種別情報(車両長Lv,車両数nv,車軸間隔a,台車中心間隔b)及び列車速度Vに関する既知のデータを有効に利用する。そのうえで、加速度波形に基づく動的変位波形(動的波形Dmesure)に対して、補正区間として設定された周波数領域では、線形理論解に基づく静的変位波形(準静的波形Dtheory)に置き換えて列車通過時の変位波形を生成する。
このように列車という外力の特定がしやすい鉄道橋を対象とすることで、加速度データから簡易に変位波形を求めることができるようになる。また、低周波数領域などノイズなどが大きくなる区間については、実測された加速度データではなく、線形理論解に基づく静的変位波形を使用することで、低い計算コストで高精度の変位波形を求めることができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。

Claims (6)

  1. 列車が走行する鉄道橋から得られる加速度データに基づいて発生する変位を推定する鉄道橋の変位推定方法であって、
    鉄道橋を列車が通過したときの加速度波形を取得するステップと、
    前記鉄道橋のスパン長、前記列車の長さに関する種別情報及び列車速度に関するデータを取得するステップと、
    前記スパン長、前記種別情報及び前記列車速度に基づいて同定される前記鉄道橋の固有振動数及び減衰比を使って前記鉄道橋の変位に対する周波数応答関数を求めるステップと、
    前記加速度波形に基づく動的変位波形を算出するステップと、
    周波数領域の評価区間を設定して、前記周波数応答関数を使って静的最大変位を同定するステップと、
    補正する周波数領域として設定された補正区間の線形振動理論に基づく静的変位波形を生成するステップと、
    前記動的変位波形の前記補正区間を前記静的変位波形に置き換えることで、列車通過時の変位波形を生成するステップとを備えたことを特徴とする鉄道橋の変位推定方法。
  2. 前記列車の長さに関する種別情報は、車両長、車軸間隔、台車中心間隔及び車両数であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道橋の変位推定方法。
  3. 前記補正する周波数領域は、角周波数に基づいて設定される境界より低周波となる周波数領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道橋の変位推定方法。
  4. 境界として設定される前記角周波数は、列車速度と車両長の比と固有振動数との関係によって異なることを特徴とする請求項3に記載の鉄道橋の変位推定方法。
  5. 前記固有振動数及び減衰比は、前記列車の通過後の前記加速度波形から残留波形を抽出して同定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉄道橋の変位推
    定方法。
  6. 前記加速度波形は、単純スパン橋梁である前記鉄道橋のスパン中央に設置された加速度センサの計測値であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鉄道橋の変位推定方法。
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