JP7332771B1 - コンクリート構造物の補強方法及び構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続繊維補強材が破断強度に至る前にコンクリート構造物から剥がれることを回避することのできるコンクリート構造物の補強方法及び構造を提供する。【解決手段】下地処理したコンクリート構造物の表面102のセメント水和物組織に、浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm2以上、引張せん断強さが10N/mm2以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/m2にて塗布し、表面強化層110Aが形成されたコンクリート構造物100の表面102に連続繊維補強材1を接着して一体化する。【選択図】図7

Description

本発明は、橋梁や高架道路などの土木建築構造物における道路橋床版のようなコンクリート構造物に連続繊維補強材を使用して補修補強(以下、単に「補強」という。)するコンクリート構造物の補強方法及び構造に関するものである。
橋梁や高架道路などの土木建築構造物における道路橋床版のようなコンクリート構造物は、長年の使用により、劣化或いは損傷を受け、コンクリート床版にひび割れなどが発生する。そのために、従来、例えば炭素繊維、アラミド繊維などの連続強化繊維を使用した繊維強化シートのような連続繊維補強材をコンクリート床版の表面に接着剤(結合材)にて貼り付けることにより、補強することが行われている。
特許文献1には、本願添付の図12を参照して説明すれば、強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シート、即ち、ストランドシート1を、コンクリート構造物100の表面102に結合材104などにて接着して一体化する構造物の補強方法が開示されており、一例として、
(a)前記コンクリート構造物100の表面102を下地処理する工程、
(b)前記下地処理したコンクリート構造物100の表面102に、塗り継ぎ用接着剤105を塗布し、次いで、結合材104としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(c)前記(b)工程にて打設した前記無機系結合材料104の上に、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した前記繊維強化シート1を前記塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物100の表面102に接着する工程、
(d)前記繊維強化シート1が接着された前記コンクリート構造物100の表面102に、結合材104としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が開示されている。また、前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物100の表面102にプライマー(図12には図示せず)を塗布し、前記プライマーが硬化した後に、前記(b)工程を行うことも記載されている。
斯かるコンクリート構造物の補強方法及びそれによって達成されるコンクリート構造物の補強構造は、繊維強化シート(ストランドシート)のような連続繊維補強材を使用することにより、繊維強化シートを構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高く、工期を短縮することが可能であるといった繊維強化シートを使用したときの特長を有すると共に、結合材としてセメント系材料とされる無機系結合材料を使用した場合においてはコンクリート構造物と無機系結合材料との接着を極めて強固とすることができ、繊維強化シートが破断強度に至る前にセメント材料から剥がれることを回避することができる、といった優れた作用効果を有している。また、結合材として無機材料のセメント系材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な繊維強化シートを火災などから守り、不燃材料として扱える、といった大きな優位性をも持っている。
本発明者らは、上記特許文献1に記載されるコンクリート構造物の補強方法を、特に、道路橋床版のようなコンクリート構造物に適用し、更に、繊維強化シートが破断強度に至る前のセメント材料から剥がれを回避し、補強効果を更に向上させることができないかを検討した。本発明者らの研究実験の結果、上記特許文献1に記載の補強方法は、以下の課題を有していることが分かった。
つまり、道路橋床版のようなコンクリート構造物においては、コンクリート床版の上面は、通常、例えば、アスファルトなどの舗装材200にて舗装が施されており、コンクリート床版の上面の補強を行う際は、舗装材200を道路橋床版の上面102から除去するために、ブレーカによる斫り、或いは、必要によりウォータジェットなどによるコンクリート表面の脆弱部の除去といった下地処理作業が行われている。
コンクリート構造物100は、図13に示すように、鉄筋コンクリート、無鉄筋コンクリートにかかわらず、コンクリート母材であるセメントは、骨材である粗骨材(砂利や砕石)100A或いは細骨材(砂や砕砂)100Bをセメントペースト(セメントに水を加えたペースト、即ち、「セメント水和物」)100Cで固めたものであるが、上述のようなブレーカによるコンクリート床版上面の下地処理作業により、コンクリート母材における骨材とセメントペーストの界面には幅0.01mm程度、長さ5mm程度のマイクロクラックが発生することが知られている。従来、コンクリート構造物と繊維強化シートとの固着強度の向上を図るために、上述したように、必要に応じてコンクリート床版の上面にプライマーを塗布することが行われているが、斯かるプライマー塗布は、コンクリート構造物と繊維強化シートとの接着剤(結合材)などによる固着強度の向上を図るためのものであって、マイクロクラックにプライマーを浸透させることを主目的とするものではない。
一方、特許文献2には、例えば、床版のようなコンクリート構造物の補修では、斫り処理が行われることにより健全なコンクリートにも微細ひび割れや浮石などの脆弱部が発生し、補修部の再劣化を促進させることがあるとの問題認識の下に、斯かる問題を解決するべく、増厚工法又は断面修復工法によるコンクリート構造物の補修方法において、劣化部撤去後のコンクリート部に、23℃における粘度が100mPa・s未満の常温硬化型エポキシ樹脂(低粘度エポキシ樹脂)を塗布することが提案されている。つまり、特許文献2には、低粘度エポキシ樹脂は、浸透深さに関しては、浸透深さは粘度に依存しており、粘度を下げることにより、コンクリートのひび割れ部に浸透しやすくなり、コンクリート脆弱部への浸透もし易くなるとし、低粘度エポキシ樹脂の粘度は、23℃における粘度が100mPa・s未満(好ましくは10~80mPa・s)とされ、また、塗布量としては、100~1000g/m(好ましくは、200~600g/m)であることが記載されている。
更に、特許文献3に記載の発明は、道路橋用コンクリート床版の防水工法に関するものであるが、樹脂接着剤として2500mPa・s/20℃以下の粘度を有するエポキシ樹脂接着剤をコンクリート床版に塗布、含浸させた後、エポキシ樹脂接着塗布面に加熱されたアスファルト防水材を塗布し、これらのエポキシ樹脂接着剤とアスファルト防水材とを硬化する、ことが記載されている。また、エポキシ樹脂接着剤の粘度の下限値は、粘度が低すぎると接着剤が床版のクラックにも浸透して、このクラックの間隙に一旦充填された接着剤はその後クラックの深部に流失したり、あるいはコンクリートの内部に浸透したりして、クラック内に隙間が生じてしまう結果、エポキシ樹脂接着剤による止水効果が低下するため、100mPa・s/20℃以上であることが好ましい、ことが記載されている。
なお、特許文献3において、エポキシ樹脂接着剤の塗布量は、0.15~0.40kg/mとされ、浸透深さは10mm以上であることが記載されている。
特開2011-208352号公報 特開2013-256835号公報 特開2008-57119号公報
上記特許文献1に記載されるコンクリート構造物の補強方法に関する本発明者らの研究実験の結果によると次のことが分かった。
つまり、上記特許文献1に記載するように、舗装材を道路橋床版の上面から除去するためにブレーカによる斫り作業などを施工したコンクリート床版の上面102にプライマーを塗布することにより、上述したようにコンクリート構造物100と繊維強化シート1との接着剤(結合材)などによる固着強度の向上を図ることができるが、一方、多孔質とされる「セメント水和物」100Cの組織そのものまでには、プライマーは浸透されていないことが分かった。その理由は、従来のプライマーは、粘度が23℃において15000mPa・sec程度であり、粘度が高いために、多孔質である「セメント水和物」100C内の骨材まで浸透していないことが分かった。
また、コンクリート構造物100に連続繊維補強材による補強を行った場合には、補強前の下地コンクリートの状態によっては、荷重の作用によって接着した連続繊維補強材が剥離することが知られている。本発明者らの研究実験によると、剥離した連続繊維補強材の多くは、母材コンクリートの極く僅かの表層での破壊を起因として発生する場合が多いことが分かった。
そこで、本発明者らは更に研究実験を行うことによって、コンクリート表層に、詳しくは後述するが、所定の物性値をもった材料であって、斫り時に発生したマイクロクラックに浸透・固化してクラックを補修するとともに、セメント水和物組織にも浸透し、硬化する浸透性有機材料(浸透性樹脂)を、所定の粘度、塗布量にて塗布することによって、コンクリート表層に所定厚(即ち、0.1~3.0mm)とされる表面強化層を面的に形成して、その後、連続繊維補強材1をコンクリート構造物100に固結することにより、コンクリート構造物100と連続繊維補強材1との固着強度の向上を図ることが可能であることを見出した。
一方、特許文献2には、低粘度エポキシ樹脂の浸透深さに関しては、上述したように、浸透深さは粘度に依存しており、粘度を下げることにより、コンクリートのひび割れ部に浸透し易くなるとし、23℃における粘度が100mPa・s未満の低粘度エポキシ樹脂は、塗布量500g/mで最大16.8mmまで浸透することが記載されている。
一般に、斯界における一般的技術常識として、コンクリート構造物表面に、500g/mの塗布量にて無溶剤型の低粘度エポキシ樹脂(比重1.2程度)を塗布し、塗布した全てのエポキシ樹脂がコンクリート構造物表面に浸透した場合、計算上、平均深さは0.4mm程度となることが理解される。従って、特許文献2にて、最大で16.8mmの浸透ということは、コンクリート構造物表面に対してブレーカーの斫りによる損傷を与えた場合の、部分的な最高到達深さを記載しているものと推察される。つまり、特許文献2の発明では、斫りにより生じた微細ひび割れ(即ち、マイクロクラック)に23℃における粘度が100mPa・s未満の、所謂、低粘度の常温硬化型エポキシ樹脂を短時間の内に充填し、硬化することによって、微細ひび割れ部、即ち、脆弱部を短時間に補修せんとするものであることが理解される。なお、特許文献2の発明は、エポキシ樹脂の強度などの機械的物性については何ら言及していない。また、一般的にコンクリート構造物は夏場の直射日光などで加熱された場合、気温よりも高温になることが知られており、その温度でも十分に性能が確保されなければならない。
そして、特許文献3には、上述したように、エポキシ樹脂接着剤の粘度の下限値は、粘度が低すぎると接着剤が床版のクラックにも浸透して、このクラックの間隙に一旦充填された接着剤はその後クラックの深部に流失したり、あるいはコンクリートの内部に浸透したりして、クラック内に隙間が生じてしまう結果、エポキシ樹脂接着剤による止水効果が低下するため、100mPa・s/20℃以上であることが好ましく、また、エポキシ樹脂接着剤の塗布量は、0.15~0.40kg/mとされ、浸透深さは10mm以上であることが記載されている。一方、上限値が2500mPa・sとされるのは、接着剤が床版のクラックにも浸透して、このクラックの間隙に一旦充填されるために必要な上限値ではないかと推測される。なお、特許文献3の発明は、エポキシ樹脂の強度などの機械的物性については何ら言及していない。
このように、特許文献2、3には、本発明者らが成した新規な知見、即ち、コンクリート表層に、十分な耐熱性も含めた所定の物性値をもった材料であって、かつ、セメント水和物組織に浸透し、硬化する浸透性有機材料(浸透性樹脂)を、所定の粘度、塗布量にて塗布することによって、床版上面に生じたマイクロクラックへの浸透は勿論のこと、マイクロクラックが生じていないコンクリート健全部にも、浸透し硬化し、コンクリート表層に所定厚(即ち、0.1~3.0mm)とされる表面強化層を連続的かつ面的に形成し、その後、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、結合材などにて連続繊維補強材1をコンクリート構造物100に固結することにより、コンクリート構造物100と連続繊維補強材1との固着強度の向上を図ることが可能であることについての教示、又は、示唆は全くない。
本発明は、上述のような本発明者らによる新規な知見に基づくものである。
本発明の主たる目的は、コンクリート構造物に連続繊維補強材を極めて強固に接着することができ、夏場の直射日光による加熱環境においても、連続繊維補強材が破断強度に至る前にコンクリート構造物から剥がれることを回避することのできるコンクリート構造物の補強方法及び構造を提供することである。
本発明の他の目的は、コンクリート構造物と連続繊維補強材との結合材としてセメント系材料の無機系結合材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な連続繊維補強材を火災などから守り、複合構造(或いは構造物)としては不燃材料として扱うことができ、しかも、連続繊維補強材が破断強度に至る前にコンクリート構造物からの剥がれを回避することのできるコンクリート構造物の補強方法及び構造を提供することである。
上記目的は本発明に係るコンクリート構造物の補強方法及び構造にて達成される。要約すれば、第1の本発明によると、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記コンクリート構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、該表面のマイクロクラックに浸透し硬化するとともに、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上とされ、室温1日(即ち、23℃24時間)+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上である浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法が提供される。
第2の本発明によると、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、該表面のマイクロクラックに浸透するとともに、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上とされ、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上である浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
(e)前記(d)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(f)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法が提供される。
第3の本発明によると、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、該表面のマイクロクラックに浸透するとともに、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上とされ、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上である浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(d)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法が提供される。
第4の本発明によると、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、該表面のマイクロクラックに浸透するとともに、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上とされ、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上である浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
(d)前記(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法が提供される。
上記第1~第4の本発明の他の実施態様によると、前記浸透性樹脂は、常温硬化型エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが適用可能であるが、好適には常温硬化型エポキシ樹脂が用いられる。
第5の本発明は、上記いずれかの構成のコンクリート構造物の補強方法にて得られるコンクリート構造物の補強構造である。
本発明の構造物の補強方法及び構造によれば、従来のプライマーによるマイクロクラックへの浸透だけにとどまらず、下地処理したコンクリート構造物の表面のセメント水和物組織にも浸透性樹脂が浸透し、硬化することで面的に強化層が形成されることにより、コンクリート構造物に連続繊維補強材を極めて強固に接着することができ、連続繊維補強材が破断強度に至る前にコンクリート構造物から剥がれることを回避することができることに加え、浸透する樹脂は十分な耐熱性を有していることから、夏場の直射日光による加熱環境にも耐えることができる。また、本発明によれば、コンクリート構造物と連続繊維補強材との結合材としてセメント系材料の無機系結合材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な連続繊維補強材を火災などから守り、構造物としては、不燃材料として扱い得るといった大きな優位性を有しており、しかも、連続繊維補強材が破断強度に至る前にコンクリート構造物から剥がれることを回避することができる。
図1は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材の一実施例を示す斜視図である。 図2(a)、(b)は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材を構成する繊維強化プラスチック線材の断面図である。 図3(a)、(b)は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材の他の実施例を示す斜視図である。 図4(a)、(b)は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材の他の実施例を示す図である。 図5(a)、(b)は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材の他の実施例を示す図である。 図6(a)~(c)は、本発明の構造物の補強方法及び構造に使用し得る連続繊維補強材の他の実施例を示す図である。 図7(a)~(h)は、本発明の構造物の補強方法の一実施例を説明する工程図である。 図8(A)、(B)は、図7(a)~(h)に示す工程図で説明される本発明の構造物の補強方法を説明するフロー図である。 図9(a)~(f)は、本発明の構造物の補強方法の他の実施例を説明する工程図である。 図10(A)、(B)は、図9(a)~(f)に示す工程図で説明される本発明の構造物の補強方法を説明するフロー図である。 図11(a)、(b)は、本発明の構造物の補強方法及び構造を実証するための建研式接着試験を説明する図であり、図11(a)は接着試験装置の斜視図であり、図11(b)は、実験供試体と鋼製アタッチメントの概略断面図である。 図12は、従来の構造物の補強方法にて得られる補強構造の一例を示す概略模式図である。 図13は、コンクリート構造物におけるコンクリート母材の構造を説明する概略模式図である。 図14は、浸透性樹脂が塗布されたコンクリート構造物におけるコンクリート母材断面を炭素マッピング観察行った結果を示す写真である。
以下、本発明に係るコンクリート構造物の補強方法及び構造を実施例に則して図面を参照して更に詳しく説明する。
実施例
(連続繊維補強材)
本発明においては、橋梁や高架道路などの土木建築構造物における道路橋床版のようなコンクリート構造物が連続繊維補強材を使用して補強されるが、連続繊維補強材としては、種々の形態の連続繊維補強材を使用することができる。連続繊維補強材の実施例を具体的に具体例1~3として説明する。しかし、本発明で使用する連続繊維補強材の形態は、これら具体例に示すものに限定されるものではない。
具体例1
図1及び図2に、本発明に係るコンクリート構造物の補強方法に使用する連続繊維補強材1の一例を示す。本具体例にて連続繊維補強材1は、連続した繊維強化プラスチック線材(即ち、ストランド)2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材2を互いに線材固定材3にて固定された繊維強化シート1、所謂、ストランドシートとされる。
繊維強化プラスチック線材2は、一方向に配向された多数本の連続した強化繊維fにマトリクス樹脂Rが含浸され硬化された細長形状(細径)のものであり、弾性を有している。従って、斯かる弾性の繊維強化プラスチック線材2をスダレ状に、即ち、線材2が互いに近接離間して引き揃えられたシート形状とされる繊維強化シート1は、その長手方向に弾性を有している。そのために、例えば、長尺とされる繊維強化シート1は、搬送時には、所定半径にて巻き込んだ状態にて持ち運ぶことも可能であり、極めて可搬性に富んでいる。また、繊維強化シート1は、繊維強化プラスチック線材2にて構成されているために、搬送時に、未含浸強化繊維シートのように、強化繊維の配向が乱れたり、糸切れを生じるといった心配は全くない。
更に説明すると、細径の繊維強化プラスチック線材2は、直径(d)が0.5~3mmの略円形断面形状(図2(a))であるか、又は、幅(w)が1~10mm、厚み(t)が0.1~2mmとされる略矩形断面形状(図2(b))とし得る。勿論、必要に応じて、その他の種々の断面形状とすることができる。また、繊維強化プラスチック線材2は、使用時における接着力を向上させるために、その表面が、ショットブラストや、金ブラシなどを用いて目荒らしを行い粗面とするのが好ましい。
上述のように、一方向に引き揃えスダレ状とされた繊維強化シート1において、各線材2は、互いに空隙(g)=0.05~3.0mmだけ近接離間して、線材固定材3にて固定される。また、このようにして形成された繊維強化シート1の長さ(L)及び幅(W)は、補強される構造物の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W)は、100mm~10mとされる。又、長さ(L)は、1~5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
また、繊維強化シート1の長さ(L)を1~5m程度として、幅Wをこれより長く1~10m程度として製造することも可能である。この場合、繊維強化プラスチック線材2を伸ばした状態で繊維強化プラスチック線材2に対して直角方向に巻き、スダレ状に巻き込んで搬送することもできる。
更に説明すれば、繊維強化プラスチック線材2は、例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)fを6000~24000本収束した樹脂未含浸の単繊維束を複数本、一方向に平行に引き揃えて使用される。強化繊維fとしては、炭素繊維に限定されるものでなく、その他に、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、高強度ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
繊維強化プラスチック線材2に含浸されるマトリクス樹脂Rは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、樹脂含浸量は、30~70重量%、好ましくは、40~60重量%とされる。
又、各線材2を線材固定材3にて固定する方法としては、図1に示すように、例えば、線材固定材3として横糸を使用し、一方向にスダレ状に配列された複数本の線材2から成るシート形態とされる線材、即ち、連続した線材シートを、線材に対して直交して一定の間隔(P)にて打ち込み、編み付ける方法を採用し得る。横糸3の打ち込み間隔(P)は、特に制限されないが、作製された繊維強化シート1の取り扱い性を考慮して、通常10~100mm間隔の範囲で選定される。
このとき、横糸3は、例えば直径2~50μmのガラス繊維或いは有機繊維を複数本束ねた糸条とされる。又、有機繊維としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用される。
各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図3(a)に示すように、線材固定材3としてメッシュ状支持体シートを使用することができる。
つまり、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた複数本の線材2、即ち、線材シートの片側面、又は、両面を、例えば直径2~50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製したメッシュ状の支持体シート3により支持した構成とすることもできる。
この場合には、例えば、2軸構成とされるメッシュ状支持体シート3を構成する縦糸4及び横糸5の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3をスダレ状線材シートの両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸4及び横糸5の部分をスダレ状線材シートに溶着する。
メッシュ状支持体シート3は、2軸構成のほかに、ガラス繊維を3軸に配向して形成したり、或いは、ガラス繊維を線材2に対して直交する横糸5のみを配置した、所謂、1軸に配向して形成して前記シート状に引き揃えた複数本の線材2に接着することもできる。
又、上記線材固定材3の糸条としては、例えばガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維も又好ましく用いられる。
更に、各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図3(b)に示すように、線材固定材3として、例えば、粘着テープ又は接着テープなどとされる可撓性帯材を使用することができる。可撓性帯材3は、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に、複数本の繊維強化プラスチック線材2の片側面、又は、両面を貼り付けて固定する。
つまり、可撓性帯材3として、幅(w1)2~30mm程度の、塩化ビニルテープ、紙テープ、布テープ、不織布テープなどの粘着テープ又は接着テープが使用される。これらテープ3を、通常、10~100mm間隔(P)で各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に貼り付ける。
更に、可撓性帯材3としては、ナイロン、EVA樹脂などの熱可塑性樹脂を帯状に、線材2の長手方向に対して垂直方向に片側面、又は、両面に熱融着させることによっても達成される。
更には、織機方式による織成繊維強化シートとすることもできる。
つまり、図4(a)に示すように、
(a)縦糸として、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、互いに所定のg空隙を持たせて平行に配列し、且つ、補助縦糸6を、平行に配列された繊維強化プラスチック線材2の間に所定の間隔P0にて平行に配列し、両側縁部に沿って耳部feを配置し、
(b)平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2にて形成されるシート状の繊維強化プラスチック線材2のいずれかの側に位置するように、繊維強化プラスチック線材2の長手方向に沿って所定間隔Pにて横糸3を配置し、且つ、横糸3は、縦糸2及び補助縦糸6に織り込まれることによって、平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2をシート状に固定する、
ことによって作製される。
更には、図4(b)に示すように、
(a)縦糸として、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、互いに所定の空隙gを持たせて平行に配列し、両側縁部に沿って耳部feを配置し、
(b)互いに平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2に対して、繊維強化プラスチック線材2の長手方向に沿って所定間隔にて横糸3を織り込み、シート状の織物を製織する、
ことによって作製される。
具体例2
図5(a)に、本発明に係る構造物の補強方法に使用する連続繊維補強材1の他の例を示す。本具体例にて連続繊維補強材1は、連続した複数の強化繊維fを一方向に引き揃えた強化繊維シート1A(図5(b))に樹脂Rを含浸し、前記樹脂が硬化されたシート状の連続繊維補強材、即ち、繊維強化プラスチックシート(FRP板)1とすることができる。
更に説明すれば、強化繊維シート1Aは、図5(b)に示すように、一方向に引き揃えた連続した強化繊維fから成る強化繊維シート1Aをメッシュ状の支持体シートなどとされる線材固定材3にて保持した構成とすることができる。例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)fを6000~24000本収束した樹脂未含浸の単繊維束を複数本、一方向に平行に引き揃えて使用される。炭素繊維シート1Aの繊維目付は、通常、30~1000g/mとされる。
線材固定材3としてのメッシュ状の支持体シートは、上記具体例1にて説明したと同様の構成とすることができる。つまり、縦糸4及び横糸5の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3をシート状に配列した強化繊維シート1Aの片面或いは両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸4及び横糸5の部分を強化繊維シート1Aに溶着することができる。
次いで、強化繊維シート1Aに樹脂Rを含浸し、前記樹脂を硬化することによってシート状の連続繊維補強材、即ち、繊維強化プラスチックシート(FRP板)1とする。この繊維強化繊維シート1Aは、一方向或いは複数方向に繊維が配列した単層或いは複数層から成るFRP板とすることもでき、幅(W)が100mm~10m、厚み(t)が0.1~100mmとされる略矩形断面形状(図5(a))とし得る。勿論、必要に応じて、その他の種々の幅、厚さとすることができる。
上記強化繊維シート1Aにおいて、強化繊維fとしては、炭素繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、高強度ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
また、強化繊維シート1Aに含侵される樹脂Rとしては、上記具体例1のマトリクス樹脂と同様に、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、繊維体積含有率(Vf)は、40~75%、好ましくは、50~70%とされる。
本具体例2においては、上述のように、連続繊維補強材1は、図5(b)に示す強化繊維シート1Aに樹脂Rを含浸し、前記樹脂が硬化されたシート状の連続繊維補強材(FRP板)1であるとして説明したが、図1などを参照して説明した上記具体例1に示す、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃えて作製された繊維強化シート、所謂、ストランドシート1に、上記具体例2と同様の樹脂Rを含浸し、前記樹脂を硬化することによってシート状の連続繊維補強材、即ち、FRP板とすることもできる。この場合のFRP板1の繊維体積含有率(Vf)は、40~75%、好ましくは、50~70%とされる。
具体例3
図6(a)、(b)、(c)に、本発明に係る構造物の補強方法に使用する連続繊維補強材1の他の例を示す。本具体例にて連続繊維補強材1は、連続した複数の強化繊維fを一方向に引き揃えた強化繊維ロッド1B(図6(b))に樹脂Rを含浸し、前記樹脂が硬化されたロッド状の連続繊維補強材、即ち、繊維強化プラスチックロッド(FRPロッド)1(図6(a))とされる。また、強化繊維ロッド1は、使用時における接着力を向上させるために、その表面が、ショットブラストや、金ブラシなどを用いて目荒らしを行い粗面とするのが好ましい。
FRPロッド1は、直径(D1)が5~30mmの略円形断面形状(図6(a)参照)とされるか、又は、図6(c)に示すように、幅(W1)が5~300mm、厚み(T1)が1~20mmとされる略矩形断面形状とし得る。勿論、必要に応じて、その他の種々の断面形状とすることができる。
また、このようにして形成されたFRPロッド1の長さ(L)は、補強されるコンクリート構造物の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、取扱い上の問題から、一般に、長さ(L)は、1~5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
また、FRPロッド1は、補強されるコンクリート構造物100の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、コンクリート構造物の表面102に、互いに空隙5~500mmだけ近接離間して、互いに平行に整列して配置され、固着される。
更に説明すれば、FRPロッド1は、上記具体例にて説明したと同様に、例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)fを6000~24000本収束した樹脂未含浸の単繊維束を複数本、一方向に平行に引き揃えて使用される。強化繊維fとしては、炭素繊維に限定されるものでなく、その他に、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、高強度ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
FRPロッド1に含浸されるマトリクス樹脂Rは、上記具体例1、2にて説明したマトリクス樹脂Rと同様に、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、樹脂含浸量は、30~70重量%、好ましくは、40~60重量%とされる。
(補強方法)
第1の実施例
次に、図7(a)~(h)及び図8(A)、(B)を参照して、本発明に従ったコンクリート100の補強方法及び補強構造の第1の実施例について説明する。
本発明の第1の実施例によれば、具体例1~3を参照して説明したような連続繊維補強材1を用いて、コンクリート構造物100の補強が行われる。本実施例では、具体例1にて説明したシート状の連続繊維補強材、即ち、繊維強化シート(ストランドシート)1を使用するものとして説明する。つまり、本実施例では繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に敷き揃え、線材2を互いに線材固定材3にて固定した繊維強化シート1を、コンクリート構造物100の表面に結合材104などを使用して接着して一体化する。
コンクリート構造物の補強に際して、曲げモーメント及び軸力を主として受ける部材(構造物)に対しては、曲げモーメントにより生じる引張応力或いは圧縮応力の主応力方向に繊維強化プラスチック線材2の方向を概ね一致させて接着することで、繊維強化シート1が効果的に応力を負担し、効率的に構造物の耐荷力を向上させることが可能である。
(第1工程)
コンクリート構造物100の被補強面(即ち、被接着面)101を補強するべく、例えばコンクリート道路橋床版においては、コンクリート構造物(コンクリート母材)100の上面に施工されている舗装材(図示せず)をブレーカによる斫り作業により除去して、被補強面101を露出させたり、或いは、図7(a)、(b)に示すように、コンクリート構造物100の被補強面101の脆弱部101aを、ディスクサンダー、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどの研削手段50により除去し、構造物100の被接着面101を適度な粗度を持つ面102となるように下地処理をする。
(第2工程)
下地処理した面102に浸透性の表面強化層形成材(「浸透性樹脂」と言うこともある。)110を塗布する(図7(c))。浸透性樹脂110としては、常温硬化型エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が用いられ、好適には常温硬化型エポキシ樹脂が使用される。
ここで、浸透性樹脂110は、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上(通常、200N/mm以下)、室温1日(即ち、23℃24時間)+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる。引張せん断強さは10N/mm以上(通常、40N/mm以下)とされ、圧縮強さが50N/mm未満、引張せん断強さが10N/mm未満では、「セメント水和物」100Cの組織に浸透して形成される表面強化層110Aとしての機能を十分に達成することができない。つまり、本発明にて、表面強化層110Aを形成するに当たり、特に、浸透性樹脂110の硬化時における圧縮強さは50N/mm以上とされることが重要である。すなわち、母材となる床版コンクリートの圧縮強度は、一般に、20~40N/mmで作製されており、従って、母材強度以上の物性値を有した浸透性樹脂110が損傷のないコンクリート母材健全部においても浸透することで、十分な強度を有した表面強化層110Aを形成することが可能となる。
また、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃未満の場合は、夏場の直射日光を受けて加熱された状態では、浸透した樹脂そのものがゴム状態になってしまい、十分な付着性能を発揮することができない。なお、浸透性樹脂110のTg値が100℃を超える場合は、硬化した樹脂が脆くなり易く、繊維補強材に応力が作用した際に樹脂の破壊が生じる可能性があるいった問題がある。従って、浸透性樹脂110のTg値は、50~100℃、好ましくは60~80℃の範囲に入ることが重要である。
本発明におけるガラス転移点温度(Tg)は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter:DSC)によりJIS K7121プラスチックの転移温度測定方法に基づいて求めた値である。測定装置としては、株式会社日立ハイテクサイエンス製(商品名:DSC7020)を使用した。
また、浸透性樹脂110は、例えば、上記第1工程を実施することにより生じた母材コンクリートのマイクロクラックのみならず、「セメント水和物」100Cの組織そのもの(即ち、マイクロクラックが生じていない無損傷のセメント水和物健全部)に浸透し、硬化することが極めて重要であり、そのために、下地処理した面102に塗布する際の浸透性樹脂110の粘度及び塗布量は、上述の硬化時の物性値と共に極めて重要である。
本発明によれば、浸透性樹脂110は、粘度が23℃において100~300mPa・secとされる。本発明における粘度は、JISK7117-1:1999に基づいてB型粘度計を使用して測定したものであり、測定装置としては、東機産業株式会社製「TVB22H型粘度計」(商品名)を使用した。
上述したように、従来、床版上面の連続施工を前提とした工法で使用されるプライマーの粘度値は15000mPa・sec程度である。この従来のプライマーの粘度値に比較すると、本発明に従った浸透性樹脂110の粘度値、即ち、23℃において100~300mPa・secは極めて低粘度とされる。本発明にて、粘度が23℃で100mPa・sec未満を実現させるには、大量の溶剤または希釈剤の添加が必要となり、揮発によるプライマーの体積減少及び揮発時間を終了するまで、次工程へ進めないといった問題がある。更には、粘度が低過ぎると、クラックの深部に流失したりするといった問題が生じる可能性がある。また、粘度が300mPa・secを超えると、浸透性能が低下して母材コンクリートの骨材部まで浸透せず、付着性能の向上が見込めないといった問題が生じる。つまり、粘度が上限値300mPa・secを超えると、無損傷(即ち、マイクロクラックが生じていない健全状態)のセメント水和物に浸透して表面硬化層0.1~3.0mm(好ましくは、0.4~1.5mm)を形成することができないといった問題が生じる。
なお,浸透性樹脂110は,チクソトロピックインデックス(TI値)(B型粘度計による異なる回転数による粘度の測定値の比(2rpmでの粘度)÷(20rpmでの粘度)が1程度であることが好ましい。
更に、本発明によれば、浸透性樹脂110は、塗布量が0.5~1.5kg/m、好ましくは、0.5~1.0kg/mとされる。上述したように、従来、必要により下地処理した面にプライマーが塗布されているが、マイクロクラックのみの補修を狙ったプライマー(例えばエポキシ性プライマー)は塗布量が0.2kg/m程度とされているのに比較すると、本発明によれば、浸透性樹脂110の塗布量は極めて大とされている。しかし、塗布量が0.5kg/m未満では,塗布面全面に付着性能を向上させるための表面強化層の形成には不十分であり、1.5kg/mを超えると、プライマー溜まりを形成し,これが発熱反応によってひび割れを発生させるといった問題が生じる。
本発明によれば、上記粘度の浸透性樹脂110を上記塗布量にて、下地処理したコンクリート構造物表面102、例えば、コンクリート床版上面102に塗布することにより、浸透性樹脂110が母材コンクリートのマイクロクラックのみならず、「セメント水和物」100Cの組織そのものにも浸透され、コンクリート床版上面102に表面硬化層110Aを形成する。表面硬化層110Aの層厚(T110A)は、0.1mm以上、好ましくは、0.4mm以上とされる。上限値は特に限定されるものではないが、現実的には一般に3.0mm以下とされ、1.5mm以下が好ましい。表面強化層110Aの厚さが、0.1mm未満であると、詳しくは後述するように、表面強化層110Aが繊維強化シート1との接着強度の増大が望めないこととなる。また、表面強化層110Aの層厚(T110A)を、例えば、3.0mm程度にまで増加させたとしても、母材コンクリートでの破壊が卓越するため、接着強度の増大がそれ程望めず、また、層厚(T110A)の増大は、浸透性樹脂110の塗布量が増大することとなり、材料コストが増大し、不経済になるばかりでなく、また、補強施工時間の増大をも余儀なくされ、好ましいものではない。つまり、表面強化層110Aの層厚(T110A)は、0.1~3.0mm、好ましくは、0.4~1.5mmとされる。
なお、表面強化層110Aは、走査型電子顕微鏡―エネルギー分散型X線分析にて、浸透性樹脂に由来する炭素元素をマッピングすることによって画像的に確認することができる。図14は、後述する本発明の実験例として浸透性樹脂を塗布したコンクリート母材の断面を炭素マッピング観察を行った結果を示す写真であるが、表面から少なくとも0.1mm以上、最大では0.4mm以上の深さのセメント水和物組織内に浸透性樹脂に由来する炭素原子が満遍なく存在していて、表面強化層110Aが形成されていることが分かる。
(第3工程)
上記第2工程(図7(c))にてコンクリート構造物100の下地処理した面102に塗布した浸透性樹脂110が「セメント水和物」100Cの組織(及び、表面近傍領域に存在するマイクロクラック)に浸透して硬化し、コンクリート構造物上面102に表面強化層110Aが形成されると、この表面強化層110Aに塗り継ぎ用接着剤105を塗布する(図7(d))。次いで、好ましくは、塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、結合材104を所要の厚さ(T)にて打設する(図7(e))。打設厚さ(T)は、被接着面102の表面の凹凸、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2~10mm程度とされる。
塗り継ぎ用接着剤105は、種々の樹脂が適用可能であるが、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上であることが必要である。ガラス転移点温度(Tg)が50℃未満の場合は、夏場の直射日光を受けて加熱された状態では、塗り継ぎ用接着剤105がゴム状態になってしまい、十分な付着性能を発揮することができない。なお、塗り継ぎ用接着剤105のTg値が100℃を超える場合は、硬化した接着剤が脆くなり易く、繊維補強材に応力が作用した際に接着剤の破壊が生じる可能性があるという問題がある。従って、塗り継ぎ用接着剤105のTg値は、50~100℃、好ましくは60~80℃の範囲に入ることが重要である。
繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の樹脂が硬化している線材表面に有効に付着する塗り継ぎ用接着剤105としては、具体的には、常温硬化型エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好適に使用される。塗り継ぎ用接着剤105は、通常、500~4000g/m塗布される。
結合材104としては、無機系結合材料であるセメント系材料、即ち、セメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートを用いる。
本実施例では、使用する連続繊維補強材1は、上記具体例1で説明した構成の連続繊維補強材である繊維強化シート(ストランドシート)とされ、線材2の直径(d)が最大3mm、間隔(g)が最小0.05mmとされる。斯かる繊維強化シート1は、コンクリート構造物100の面102に保持して線材2、2間から結合材104が染み出して繊維強化シート1が固結されるのが好ましい。従って、繊維強化シート1とコンクリート構造物100の結合材104がコンクリートの表面に塗布(打設)され未硬化の状態で、コンクリート構造物100の面に対して打設厚さ(T)が5mm以上であっても滴下、ダレ落ちをほとんど生じず、結合材104の塗布面に線材2、2の間隙(g)0.05mm、線材2の直径(d)3mmの繊維強化シート1を1MPa以下の圧力で加えた状態で線材2、2間を結合材104が通過し、且つ、ダレ落ちない性状であることが望ましい。
結合材104である無機系結合材料に増粘、増結効果を持たせるために、更には、曲げ靱性を加えるために、無機系結合材料に、繊維材、例えば、鋼繊維、或いは、ビニロン繊維等の有機繊維が混入されてもよい。
具体的には、例えば、鋼繊維の場合、直径0.6~1.0mm、長さ30~100mmの鋼繊維を、無機系結合材料に対して0.2~0.5%(重量)の割合で加えるのがよい。ビニロン繊維の場合には、直径5~20μm、長さ4~6mmの繊維を、無機系結合材料に対して0.05~2%(重量)の割合で加えるのがよい。
本実施例にて結合材104として、流動性がミニスランプ試験において65±15mmの範囲に入るセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料が好適に使用され、従って結合材104は,母材コンクリート表面の不陸修正材としても機能することができる。そのために、従来の連続繊維シート接着工法のように予め不陸修正材を用いて平滑化した後に接着用樹脂を塗布する必要がなく、不陸修正と繊維強化シート1との接着が一度の結合材塗布で同時に行えるため極めて効率的である。
(第4工程)
図7(f)に示すように、構造物表面に接着する繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布する。
塗り継ぎ用接着剤105は、上述したものと同様のものであり、繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の表面にムラなく塗布されることが必要である。通常、繊維強化シート1に対して500~4000g/m塗布される。
また、必要補強量が多い場合には、コンクリート構造物表面に複数層の繊維強化シート1を接着することが可能である。
(第5工程)
次いで、図7(g)に示すように、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した繊維強化シート1を、塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、コンクリート構造物の表面、即ち、上記第3工程にて表面に打設した結合材104の上に接着する。
(第6工程)
図7(h)に示すように、コンクリート構造物100の表面102に接着した繊維強化シート1の上に更に結合材104を、即ち、上記第3工程にて使用したと同様の結合材104、即ち、無機系結合材料を、厚さTaにて塗布してゴムベラなどで平滑に仕上げる。これにより、繊維強化シート1は、より強固に構造物100に一体化される。打設厚さ(Ta)は、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2~10mm程度とされる。この時、繊維強化シート1をローラーやゴムベラで押え付けて接着界面の空気層を強化繊維プラスチック線材2、2の隙間gから排気するようにすると良い。
(第7工程)
更に、複数層の繊維強化シート1を貼り付ける場合は、上記と同様に、結合材104の塗布(打設)、繊維強化シート1の貼り付け、必要に応じて結合材104の上塗り、を繰り返すことで複数層の繊維強化シート1をコンクリート構造物100と一体化することが可能である。
また、道路橋床版のようなコンクリート構造物100においては、上述のようにして補強されたコンクリート構造物100の上面には、通常、例えば、アスファルトなどの舗装材200(図12参照)にて舗装が施される。
以上、本発明の第1の実施例によれば、図7(a)~(h)を参照して説明した本発明の構造物の補強方法の作業工程(第1~第7工程)を実施することにより、要するに、図8(A)にフロー図で示すように、以下の工程(a)~(e)を備えた補強方法が実施されることが理解されるであろう。
つまり、図8(A)を参照すると、本発明に従った本発明の構造物の補強方法は、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記コンクリート構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法とされる。
なお、本発明の第1の実施例によれば、上述の図7(a)~(h)を参照して説明した本発明の構造物の補強方法の作業工程における作業手順を若干変更して、図8(B)にフロー図で示す補強形態にて実施することも可能である。
つまり、図7(a)~(h)の作業工程及び図8(A)のフロー図によれば、上記本発明の補強方法では、作業工程の第4、第5工程(図7(f)、(g))にて、即ち、図8(A)に示す補強工程(d)にて、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布し、結合材104を塗布した構造物表面に繊維強化シート1を押し付けて接着するものとした。しかし、図8(B)の補強工程(d)、(e)に記載するように、先ず、第4工程(図7(f))では塗り継ぎ用接着剤105を構造物表面に塗布し、次いで、第5工程(図7(g))にて、塗り継ぎ用接着剤105が塗布されていない繊維強化シート1を塗り継ぎ用接着剤105を塗布した構造物表面に押し付けることにより、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布すると同時に、繊維強化シート1を構造物表面に接着することができる。
つまり、本発明の第1の実施例によれば、図8(B)のフロー図で示す補強実施形態にて実施することも可能であり、この場合、本発明に従った本発明の構造物の補強方法は、以下に示すように、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
(e)前記(d)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(f)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法とされる。
上述にて理解されるように、本発明の補強方法に使用される塗り継ぎ用接着剤105は、繊維強化シート1或いは構造物表面に塗布されるが、施工現場の勾配にかかわらず良好な塗付を可能とするためには、その粘度が23℃において100~200,000mPa・secの範囲にあり、チクソトロピックインデックス(TI値)(B型粘度計による異なる回転数による粘度の測定値の比(2rpmでの粘度)÷(20rpmでの粘度))が1~8の範囲に入るものであることが好ましい。
すなわち、粘度が100mPa・secより小さくTI値が1より小さいとダレ等により厚み確保が困難となり、好ましくない。また逆に、粘度が200,000mPa・secより大きくTI値が8より大きいと、作業性の低下及び繊維強化シート間への充填不良となり、好ましくない。
また,室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上の接着剤を用いることで,夏場の直射日光の加熱による昇温時にも十分な性能を発揮することができる。
上述にて理解されるように、本発明係るコンクリート構造物の補強方法及びそれによって達成されるコンクリート構造物の補強構造によると、コンクリート構造物100の表面102に表面強化層110Aを形成し、塗り継ぎ用接着剤105、結合材104などを介して連続繊維補強材1をコンクリート構造物100に接着する構成とされるので、コンクリート構造物100と連続繊維補強材1との接着を極めて強固とすることができ、連続繊維補強材1が破断強度に至る前にコンクリート構造物(セメント母材)から剥がれることを回避することができる、といった優れた作用効果を有している。また、連続繊維補強材1として、例えば繊維強化シート(ストランドシート)、及び、詳しくは後述するFRPシート、FRPロッドを使用することにより、連続繊維補強材1を構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高く、工期を短縮することが可能であるといった特長を有する。更には、結合材104としてセメント系材料の無機系結合材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な連続繊維補強材を火災などから守り、不燃材料として扱える、といった大きな優位性をも持っている。
第2の実施例
次に、図9(a)~(f)及び図10(A)、(B)を参照して、本発明に従ったコンクリート100の補強方法及び補強構造の第2の実施例について説明する。
(第1工程)
上述の第1の実施例と同様に、コンクリート構造物100の被補強面(即ち、被接着面)101を補強するべく、例えばコンクリート道路橋床版においては、コンクリート構造物(コンクリート母材)100の上面に施工されている舗装材(図示せず)をブレーカによる斫り作業により除去して、被補強面101を露出させたり、或いは、図9(a)、(b)に示すように、コンクリート構造物100の被補強面101の脆弱部101aを、ディスクサンダー、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどの研削手段50により除去し、構造物100の被接着面101を適度な粗度を持つ面102となるように下地処理をする。
(第2工程)
下地処理した面102に表面強化層形成材(浸透性樹脂)110を塗布する(図9(c))。浸透性樹脂110は、上記第1の実施例と同様ものを、同様の粘度及び塗布量にてコンクリート構造物表面102に塗布する。これにより、図9(d)に示すように、浸透性樹脂110が母材コンクリートのマイクロクラックのみならず、「セメント水和物」100Cの組織そのものにも浸透し、硬化され、コンクリート床版上面102に表面硬化層110Aを形成する。
(第3工程)
図9(d)に示すように、繊維強化シート1に、上記第1の実施例で使用したと同様の塗り継ぎ用接着剤105を塗布する。
(第4工程)
また、上記第2工程(図9(c))にてコンクリート構造物100の下地処理した面102に塗布した浸透性樹脂110が硬化し、コンクリート構造物上面102に表面強化層110Aが形成されると(図9(d))、図9(e)に示すように、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した繊維強化シート1を、塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、表面強化層110Aが形成されたコンクリート構造物面102に押し付けてコンクリート構造物の表面102に接着する。塗り継ぎ用接着剤105は、上記第1の実施例と同様のものを使用する。
塗り継ぎ用接着剤105は、繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の表面にムラなく塗布されることが必要であり、通常、繊維強化シート1に対して500~4000g/m塗布される。
(第5工程)
繊維強化シート1に塗布した塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、繊維強化シート1を接着したコンクリート構造物表面102に結合材104を所要の厚さ(T)にて打設する(図9(f))。打設厚さ(T)は、被接着面102の表面の凹凸、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2~10mm程度とされる。この時、繊維強化シート1をローラーやゴムベラで押え付けて接着界面の空気層を強化繊維プラスチック線材2、2の隙間gから排気するようにすると良い。
結合材104としては、上記第1の実施例で説明したと同様の無機系結合材料であるセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートを用いる。
上記第1の実施例で説明したように、結合材104である無機系結合材料には、増粘、増結効果を持たせるために、更には、曲げ靱性を加えるために、無機系結合材料に、繊維材、例えば、鋼繊維、或いは、ビニロン繊維等の有機繊維を加えることが好ましい。
また、本実施例によれば、繊維強化シート1を使用した場合には、各線材2の間には0.05~3mm程度の適度の間隔(g)を設けることができるので、通気性が良好であり、補強対象構造物100と繊維強化シート1との間の空気が、又は、後述するように、繊維強化シート1を複数枚積層した場合においては、繊維強化シート1、1相互の層間の空気が容易に排出され、浮きや膨れの発生が生じにくい。
更に、高粘度の結合材104を用いるので、結合材104は、コンクリート表面の不陸修正材としても機能することができる。従って、通常の連続繊維シート接着工法のように予め不陸修正材を用いて平滑化した後に接着用樹脂を塗布する必要がなく、不陸修正と繊維強化シート1との接着が一度の結合材塗布で同時に行えるため極めて効率的である。
従来の連続繊維シート接着工法と同様に100~1000mm程度の幅広のシート状補強材、即ち、繊維強化シート1を用いるので、補強構造物100の補強面全面を覆って接着することが容易である。また、従来の50mm程度の幅狭のFRPプレートを接着する工法に比べて接着面積を広くとることが可能であり接着面の剥離が生じにくく、高い補強効果を得ることができる。
(第6工程)
更に、複数層の繊維強化シート1を貼り付ける場合は、上記と同様に、繊維強化シート1の貼り付け、結合材104の塗布(打設)、を必要に応じて繰り返すことで複数層の繊維強化シート1をコンクリート構造物100と一体化することが可能である。
また、道路橋床版のようなコンクリート構造物100においては、上述のようにして補強されたコンクリート構造物100の上面には、通常、例えば、アスファルトなどの舗装材200(図12参照)にて舗装が施される。
以上、本発明の第2の実施例によれば、図9(a)~(f)を参照して説明した本発明の構造物の補強方法の作業工程(第1~第6工程)を実施することにより、要するに、図10(A)にフロー図で示すように、以下の工程(a)~(d)を備えた補強方法が実施されることが理解されるであろう。
つまり、図10(A)を参照すると、本発明に従った本発明の構造物の補強方法は、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(d)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法とされる。
なお、本発明の第2の実施例によれば、上述の図9(a)~(f)を参照して説明した本発明の構造物の補強方法の作業工程における作業手順を若干変更して、図10(B)にフロー図で示す補強形態にて実施することも可能である。
つまり、図9(a)~(f)の作業工程及び図10(A)のフロー図によれば、本発明の補強方法では、作業工程の第3、第4工程(図9(d)、(e))にて、即ち、図10(A)に示す補強工程(c)にて、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布し、構造物表面に繊維強化シート1を押し付けて接着するものとした。しかし、図10(B)の補強工程(c)、(d)に記載するように、先ず、第3工程(図9(d))に示す補強工程(c)では、塗り継ぎ用接着剤105を構造物表面に塗布し、次いで、第4工程(図9(e))にて、繊維強化シート1を塗り継ぎ用接着剤105を塗布した構造物表面に押し付けることにより、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布すると同時に、繊維強化シート1を構造物表面に接着することができる。
つまり、本発明の第2の実施例によれば、図10(B)のフロー図で示す補強実施形態にて実施することも可能であり、この場合、本発明に従った本発明の構造物の補強方法は、以下に示すように、連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織にも浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
(c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
(d)前記(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
(e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法とされる。
上記第2の実施例によるコンクリート構造物の補強方法及びそれによって達成されるコンクリート構造物の補強構造は、上記第1の実施例と同様の作用効果を達成することができる。つまり、上述にて理解されるように、本発明係るコンクリート構造物の補強方法及びそれによって達成されるコンクリート構造物の補強構造によると、コンクリート構造物100の表面102に表面強化層110Aを形成し、塗り継ぎ用接着剤105、結合材などを介して連続繊維補強材1をコンクリート構造物100に接着する構成とされるので、コンクリート構造物100と連続繊維補強材1との接着を極めて強固とすることができ、連続繊維補強材1が破断強度に至る前にコンクリート構造物(セメント母材)100から剥がれることを回避することができる、といった優れた作用効果を有している。また、連続繊維補強材1として、例えば繊維強化シート(ストランドシート)、及び、詳しくは後述するFRPシート、FRPロッドを使用することにより、連続繊維補強材1を構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高く、工期を短縮することが可能であるといった特長を有する。更には、結合材104としてセメント系材料の無機系結合材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な連続繊維補強材を火災などから守り、不燃材料として扱える、といった大きな優位性をも持っている。
第3の実施例
上記第1及び第2の実施例においては、本発明に従ったコンクリート100の補強方法及び補強構造では、具体例1にて説明したシート状の連続繊維補強材、即ち、繊維強化シート(ストランドシート)1を使用するものとして説明した。しかし、本発明では、連続繊維補強材1として、具体例2、3にて説明したシート状の連続繊維補強材、即ち、FRP板1、或いは、ロッド状の連続繊維補強材、即ち、FRPロッド1を使用することもできる。この場合においても、上記第1、第2の実施例にて説明した工程に従ったコンクリート100の補強方法を実施して、同様の補強構造を得ることができる。
ただ、具体例2にて説明したシート状の連続繊維補強材、即ち、FRP板1を使用した場合には、第1の実施例の第3工程などにおいて結合材を塗布した場合などに、結合材などが連続繊維補強材1のプラスチック線材2の線間に染み出すようなことはない。また、具体例3で説明したロッド状の連続繊維補強材、即ち、FRPロッド1は、補強されるコンクリート構造物100の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、コンクリート構造物の表面102に、互いに空隙5~500mmだけ近接離間して、互いに平行に整列して配置され、固着される。しかし、第3の実施例においても、上記第1、第2の実施例にて説明したコンクリート100の補強方法及び補強構造により得られると同様の作用効果を達成することができる。
次に、本発明に係る構造物の補強方法及び補強構造の作用効果を実証するために以下の実験を行った。
実験例1(建研式接着試験)
本実験例では、本発明に従って補強されたコンクリート構造物100におけるコンクリート構造物表面(被補強面)102と連続繊維補強材1との接着性能の評価試験を、JIS A 6909に規定する建研式接着試験に準じて行った。
本実験例に使用したコンクリート構造物実験供試体100Tの形状、寸法、及び、接着試験法の概略を図11(a)に示す。実験供試体100Tは、図11(a)に示すように、長さ(L0)が1800mm、幅(W0)が900mm、高さ(H0)が500mmとされた。
次いで、実験供試体100Tの下地処理表面102に、表面強化層形成材(浸透性樹脂)110として常温硬化型エポキシ樹脂(鹿島道路(株)製「浸透性KSプライマー」(商品名)を23℃における粘度を160mPa・sec、チクソトロピックインデックス(TI値)(B型粘度計における異なる回転数による粘度の測定値の比(2rpmでの粘度)÷(20rpmの粘度)を1に調整したのち、0.5kg/mの塗布量となるようにローラー刷毛により塗布した。
なお、使用した浸透性樹脂(常温硬化型エポキシ樹脂)110は、硬化時における圧縮強さが119N/mm、引張せん断強さが14.9N/mmであった。また、室温(23℃)24時間プラス100℃2時間硬化させた後のガラス転移点温度(Tg)は54℃であった。
なお,使用した浸透性樹脂(常温硬化型エポキシ樹脂)110が未硬化の内に、実験供試体100Tの表面102にコンクリート接着用のエポキシ樹脂(鹿島道路(株)製「KSボンド」(商品名)121をローラー刷毛により0.9kg/m塗布し(塗布厚:略0.7mm)、次いで、図11(a)、(b)に示すように、縦、横の寸法が(L1)40mm×(W1)40mmとされる鋼製アタッチメント(治具)120を実験供試体100Tの表面102に接着した。そして、実験に用いたコンクリート接着用エポキシ樹脂の室温(23℃)24時間プラス100℃2時間硬化させた後のガラス転移点温度(Tg)は80℃であった。
その後、鋼製アタッチメント120を荷重Pfにて上方へと引っ張り、付着強度試験を行い、実験供試体100Tの表面における破壊状態(コンクリート破壊、或いは、アタッチメント接着剤121の破壊)を観察し、接着性能を評価した。付着強度試験結果を表1に示す。
表1では、上述のようにして本発明に従って実験供試体100Tの表面102に浸透性樹脂を塗布して表面硬化層110Aを形成した試験結果を実験例1~9として示し、また、実験供試体100Tの表面102に浸透性樹脂を塗布せず、従って、表面硬化層110Aが形成されていない試験結果を比較例1~9として示す。なお、本付着強度試験では、実験例及び比較例で使用した実験供試体100Tのコンクリート母材は同じものを使用した。
Figure 0007332771000002
試験結果から、本発明に従って実験供試体100Tの表面102に浸透性樹脂110を塗布して表面硬化層110Aを形成した実験例1~9に示す試験体は、実験供試体100Tの表面102に表面硬化層110Aを有していない比較例1~9に示す試験体に比較して、破壊強度が1.16倍高くなったことが確認された。
実験例2(表面強化層の確認)
本実験例では、実験例1で実施例となる浸透性樹脂と、比較例となるコンクリート接着用の汎用エポキシ樹脂をそれぞれ別個に塗布したコンクリート供試体の表面からサンプルを採取して断面試料を作成し、走査型電子顕微鏡‐エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いて倍率100倍、加速電圧15kVにて浸透性樹脂に由来する炭素元素のマッピングを行うことにより表面強化層の確認を行った。
その結果、図14に示すように、実施例となる浸透性樹脂に由来する炭素がコンクリート母材の表面から少なくとも0.1mm以上、最大では0.4mm以上の深さにまで骨材を除く水和物組織内に満遍なく存在することが確認され、浸透性樹脂がコンクリート水和物の組織そのものに浸透し、表面強化層110Aが形成されていることが分かった。
1 連続繊維補強材(繊維強化プラスチックシート、繊維強化プラスチックロッド)
2 繊維強化プラスチック線材
3 線材固定材(横糸、メッシュ支持体シート、可撓性帯材)
100 コンクリート構造物
100A 粗骨材
100B 細骨材
100C セメント水和物
104 結合材
105 塗り継ぎ用接着剤
110 表面強化層形成材(浸透性樹脂)
110A 表面強化層

Claims (7)

  1. 連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
    (a)前記コンクリート構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織に浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
    (c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    (d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
    (e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  2. 連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織に浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
    (c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    (d)前記(c)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
    (e)前記(d)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
    (f)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  3. 連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織に浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
    (c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布した前記連続繊維補強材を前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
    (d)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  4. 連続強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された連続繊維補強材を、コンクリート構造物の表面に接着して一体化するコンクリート構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記(a)工程にて下地処理した前記コンクリート構造物の表面に、前記コンクリート構造物のマイクロクラックの生じていない表面のセメント水和物組織に浸透し、硬化することで0.1~3.0mmの層厚を有する表面強化層を形成する、硬化時における圧縮強さが50N/mm以上、引張せん断強さが10N/mm以上、室温1日+100℃2時間の条件で硬化させた場合のガラス転移点温度(Tg)が50℃以上とされる浸透性樹脂であって、23℃における粘度が100~300mPa・secの浸透性樹脂を塗布量が0.5~1.5kg/mにて塗布する工程、
    (c)前記表面強化層が形成されたコンクリート構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤を塗布する工程、
    (d)前記(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記連続繊維補強材を押し付けて前記コンクリート構造物の表面に接着する工程、
    (e)前記連続繊維補強材が接着された前記コンクリート構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  5. 前記浸透性樹脂は、常温硬化型エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補強方法。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補強方法にて得られるコンクリート構造物の補強構造。
  7. 前記浸透性樹脂は、常温硬化型エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート構造物の補強構造。
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