以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料は、リガンドと基材とを含む水不溶性担体を含み、上記リガンドは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基が2級アミド基の炭素原子と結合した構造を有していることを特徴としている。
「リガンド」とは、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能を付与するために、水不溶性担体に含まれる化学構造を意味する。上記リガンドは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基が、2級アミド基の炭素原子と結合した構造を有している。上記置換基は、いずれも酸性官能基又は塩基性官能基ではない点が共通している。
「基材」とは、リガンドと相互作用が可能である材料を表す。基材としては、例えば、芳香環、水酸基等、炭素カチオンとの反応性を有する官能基を繰り返し構造中に含む高分子材料であり、ポリ(芳香族ビニル化合物)(例えば、ポリスチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール等の合成高分子材料や、セルロース、コラーゲン、キチン、キトサン、デキストラン等の天然高分子材料、さらに、上記合成高分子材料や上記天然高分子材料にアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アセタール基、エーテル基等が付与された誘導体でもよく、例えば、ポリスチレン誘導体であれば、ポリp-クロロメチルスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリβ-メチルスチレン、ポリp-tert-ブトキシスチレン、ポリp-アセトキシスチレン、ポリp-(1-エトキシエトキシ)スチレンが挙げられる。これらの高分子材料の組成に、特に制限はなく、単独重合体、上記高分子材料のモノマーを複数種類用いた共重合体又は複数の上記高分子材料を物理的にブレンドして用いてもよい。特に、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料において、ポリ(芳香族ビニル化合物)(例えば、ポリスチレン)若しくはその誘導体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)若しくはその誘導体、ポリスルホン若しくはその誘導体又はポリエーテルスルホン若しくはその誘導体が好ましく、ポリスチレン若しくはポリスルホン又はそれらの誘導体、つまりポリスチレン若しくはその誘導体又はポリスルホン若しくはその誘導体がより好ましい。中でも単位重量当たりの芳香環の数が多く、リガンドが導入しやすいことから、ポリスチレン又はその誘導体がさらに好ましい。
また、基材に用いる材料は、架橋構造を含んでいてもよい。当該架橋構造に制限はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の二官能性モノマーを共重合することで架橋構造を導入した材料や、アルデヒドのような架橋剤を材料中の芳香環、水酸基等の官能基と反応させることで架橋構造を導入した材料が好ましく、調達の容易性から二官能性化合物を材料中の芳香環、水酸基等の官能基と反応させることで架橋構造を導入した材料がより好ましく、ホルムアルデヒドを架橋剤として用いるのがさらに好ましい。
「担体」とは、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能を有するリガンド及びリガンドを担持する基材を含む材料を意味する。
「水不溶性担体」とは、水に不溶性の担体である。ここで、水に不溶とは、水不溶性担体を水に入れた前後の乾燥重量変化が1%以下であることを意味する。この乾燥重量変化は水不溶性担体を乾燥重量の9倍量の37℃の水に1時間浸漬した後にピンセット等で引き上げ、残った水を50℃以下で真空乾燥させた後に残った固形分の乾燥重量の浸漬前の材料乾燥重量に対する割合である。不溶化されていない場合は、実際に使用する場合に材料由来の溶出物が多くなる危険性があり、安全上好ましくない。水不溶性担体の形状に特に限定はないが、フィルム形状、粒子形状又は繊維形状が好ましく、繊維形状がより好ましい。体外循環の治療で使用することを考えると、比表面積が大きく、柔軟に変形可能で取り扱い性に優れる繊維形状、特に海島繊維形状が好ましい。さらに、上記繊維形状を加工した形状としては、糸束、ヤーン、ネット、編地、織物又は不織布が好ましく、表面積が大きく、流路抵抗の小ささを考慮すると糸束、編地、織物又は不織布がより好ましい。さらに、使用する際の除去材料の充填や液体の流路の均一性を考慮すると、編地又は織物が好ましい。
「乾燥重量」とは、乾燥状態の固体の重量を意味する。ここで乾燥状態の固体とは、当該固体中に含まれる液体成分の量が1重量%以下の状態の固体を表し、固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。
「リガンドと基材とを含む水不溶性担体」とは、リガンドと基材とを構成成分として含む水不溶性担体を表し、リガントと基材が、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合又は疎水性相互作用等で相互作用している構造を含む担体を表す。水不溶性担体の安定性の観点から、リガンドと基材とは、共有結合、イオン結合、水素結合又はファンデルワールス結合により結合していることが好ましく、共有結合又はイオン結合により結合していることがより好ましい。
活性化白血球-活性化血小板複合体との相互作用のしやすさから、リガンドは、共有結合、イオン結合、水素結合又はファンデルワールス結合により基材の表面に結合していることが好ましく、共有結合又はイオン結合により基材の表面に結合していることがより好ましい。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
「炭化水素基」とは、水素原子と炭素原子から構成される化学構造を表し、直鎖又は分岐構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、直鎖又は分岐構造を有するアルケニル基、アリール基及びアリールアルキル基を含む。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基又はデシル基の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基又はアリル基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基又はトリチル基が挙げられる。アリールアルキル基の例としては、ベンジル基又はフェネチル基が挙げられる。また、さらにポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンのように上記構造を組み合わせたポリマー構造を有していてもよい。活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能の観点からは、2級アミド基周辺の立体障害が少ないことが好ましいため、炭素数1~10の炭化水素基、つまり、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基又はデシル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基)、炭素数2~10のアルケニル基(例えば、ビニル基又はアリル基)、炭素数6~10のアリール基(例えば、フェニル基又はトリル基)又は炭素数7~10のアリールアルキル基(例えば、ベンジル基又はフェネチル基)が好ましい。サイトカインの吸着能の観点で炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基がより好ましい。ここで、炭素数1~6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
「ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基」とは、上記の炭化水素基、又は、上記の炭化水素基の一部が、上記のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基により置換された炭化水素基を表す。置換基の位置や数に特に制限はなく、複数種類の置換基によって置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の炭化水素基に加えて、クロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、1-クロロプロピル基、2-クロロプロピル基、3-クロロプロピル基、1-クロロブチル基、2-クロロブチル基、3-クロロブチル基、4-クロロブチル基、ブロモメチル基、1-ブロモエチル基、2-ブロモエチル基、1-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、1-ブロモブチル基、2-ブロモブチル基、3-ブロモブチル基又は4-ブロモブチル基が挙げられる。ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の炭化水素基に加えて、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基又は4-ヒドロキシブチル基が挙げられる。ケトン基で置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の炭化水素基に加えて、プロパノン基又はブタノン基が挙げられる。エーテル基で置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の炭化水素基に加えて、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、イソプロポキシメチル基、イソプロポキシエチル基、イソプロポキシプロピル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基又はブトキシプロピル基が挙げられる。エステル基で置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の炭化水素基に加えて、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基が挙げられる。
上記炭化水素基において、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基の置換位置は、2級アミド基と結合していない側の末端が好ましい。
上記リガンドにおける炭化水素基としては、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基がより好ましく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基がより好ましい。サイトカイン除去性能の観点からは、上記2級アミド基の炭素原子と結合する炭化水素基は、無置換体が好ましい。
本発明の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料は、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能を阻害しない範囲で、上記リガンド中、上記炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基に加えて、荷電を有する官能基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基)で一部が置換されていてもよい。水不溶性担体に含まれる上記荷電を有する官能基量は、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去の亢進、血小板の除去の抑制の観点から、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり0.9mmol以下であることが好ましく、0.8mmol以下であることがより好ましく、0.4mmol以下であることがさらに好ましく、0mmolであることが最も好ましい。つまり、本発明の一態様としては、リガンドと基材とを含む水不溶性担体を含み、上記リガンドは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基が、2級アミド基の炭化水素基と結合している構造であり、上記置換基に加えて、アミノ基やスルホン酸基等の荷電を有する官能基で置換された炭化水素基が上記2級アミド基の炭化水素基と結合していてもよく、但し、上記水不溶性担体に含まれる上記官能基量は、上記水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり0.9mmol以下である、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料である。本発明の別の態様としては、リガンドと基材とを含む水不溶性担体を含み、上記リガンドは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基が、2級アミド基の炭化水素基と結合している構造であり、上記置換基に加えて、アミノ基やスルホン酸基等の荷電を有する官能基で置換された炭化水素基が上記2級アミド基の炭化水素基と結合していてもよく、但し、上記水不溶性担体に含まれる上記官能基量は、上記水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり0.4mmol以下である、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料である。
「荷電を有する官能基」とは、陽性荷電又は陰性荷電を有する官能基を意味し、その化学構造としては、例えば、陽性荷電を有する官能基(塩基性官能基)であるアミノ基又は陰性荷電を有する官能基(酸性官能基)であるスルホン酸基若しくはカルボキシル基が挙げられ、荷電を有する官能基としては、アミノ基又はスルホン酸基が好ましい。なお、上記官能基は、同一又は異なる官能基を複数組み合わせていてもよい。
「アミノ基」とは、アミンを部分構造として一つ以上含む構造を意味し、例えば、アンモニア由来のアミノ基、アミノメタン、アミノエタン、アミノプロパン、アミノブタン、アミノペンタン、アミノヘキサン、アミノヘプタン、アミノオクタン、アミノドデカン等の1級アミン由来のアミノ基、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、フェニルエチルアミン、モノメチルアミノヘキサン、3-アミノ-1-プロペン等の2級アミン由来のアミノ基、トリエチルアミン、フェニルジエチルアミン、アミノジフェニルメタン等の3級アミン由来のアミノ基、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン(重量平均分子量500~100000)、N-メチル-2,2’-ジアミノジエチルアミン、N-アセチルエチレンジアミン若しくは1,2-ビス(2-アミノエトキシエタン)等のアミノ基を複数有する化合物(以下、ポリアミン)由来のアミノ基が挙げられる。ポリアミンの分子量が大きいとアミノ基自体の立体障害が大きくなり、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能を阻害してしまうことから、ポリアミンに含まれるアミノ基の数が2~7であり、かつポリアミン全体が直鎖構造である事が好ましく、例えば、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンテトラミン、ペンタエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、ヘキサエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンヘプタミン又はオクタエチレンヘプタミン由来のアミノ基が好ましく、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン又はポリエチレンイミン由来のアミノ基が好ましく、テトラエチレンペンタミン由来のアミノ基がさらに好ましい。また、上記アミノ基は、1級又は2級アミン由来のアミノ基であることがより好ましい。
「スルホン酸基」とは、スルホン酸を部分構造として一つ以上含む構造を意味し、例えば、スルホン酸、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、2-メチルベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸又はフルオロスルホン酸、クロロスルホン酸等のハロスルホン酸が挙げられる。
「2級アミド基」とは、アミド基の窒素原子に水素原子以外の置換基が一つ結合した構造を意味する。当該置換基としては、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数1~6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)又は炭素数1~6の直鎖アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基又はn-ヘキシレン基)であることがより好ましく、炭素数1~3の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基又はプロピル基)がさらに好ましい。2級アミド基において、上記置換基(例えば、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルキレン基)側で基材と結合していることが好ましい。
水不溶性担体に含まれるアミド基量は、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能の観点から、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり1.0~7.0mmolであることが好ましい。
リガンドと基材とを含む水不溶性担体の構造の好ましい様式として、例えば、以下の一般式(I)で示される構造が挙げられる。
[式(I)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を表し、波線は基材との結合位置を表し、nは、1~6の整数を表す。]
Rは、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基であることが好ましく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基であることがより好ましく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であることがより好ましい。
nは、1~3の整数であることが好ましい。
Rは、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、nは、1~6の整数であることが好ましく、Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、nは、1~3の整数であることがより好ましく、Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、nは、1~3の整数であることがより好ましく、Rは、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、nは、1~3の整数であることがより好ましい。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能の観点から、Rは、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、nは、1~6の整数であり、水不溶性担体に含まれるアミド基量は、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり1.0~7.0mmolであることが好ましく、Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、nは、1~3の整数であり、水不溶性担体に含まれるアミド基量は、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり1.0~7.0mmolであることがより好ましく、Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、nは、1~3の整数であり、水不溶性担体に含まれるアミド基量は、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり1.0~7.0mmolであることがより好ましく、Rは、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、nは、1~3の整数であり、水不溶性担体に含まれるアミド基量は、水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たり1.0~7.0mmolであることがより好ましい。
「白血球」とは、顆粒球、単球又はリンパ球のことを表す。炎症性疾患の治療を目的とする場合は顆粒球及び/又は単球が血液中から除去されることが好ましい。
「活性化白血球」とは、サイトカインやlipopolysaccharide(以下、LPS)等によりサイトカインや活性酸素等を放出する白血球を意味し、例えば、活性化顆粒球や活性化単球が挙げられる。活性化の程度は、活性化白血球が放出する活性化酸素量を測定することで判別できる。また、活性化白血球と活性化していない白血球の表面抗原は異なるため、活性化白血球特有の表面抗原の発現を免疫蛍光染色やフローサイトメトリー等で測定することで判別でき、例えば、CD11b(activated)陽性細胞を活性化白血球とすることができる。
「活性化血小板」とは、サイトカイン、アデノシン二リン酸及びセロトニン等を放出する血小板を意味する。活性化の程度は、活性化血小板が放出するサイトカイン量を測定することで判別できる。また、活性化血小板と活性化していない血小板の表面抗原は異なるため、活性化血小板特有の表面抗原の発現を免疫蛍光染色やフローサイトメトリー等で測定することで判別でき、例えば、CD62P陽性細胞を活性化血小板とすることができる。
「活性化白血球-活性化血小板複合体」とは、活性化白血球と活性化血小板とが結合した複合体であれば特に限定されないが、例えば、活性化顆粒球-活性化血小板複合体や活性化単球-活性化血小板複合体が挙げられる。炎症性疾患の患者においては、自己組織への貪食及びサイトカインを放出して病態に直接関与していると考えられる活性化白血球-活性化血小板複合体を除去することが、その治療に必要と考えられる。
「サイトカイン」とは、感染や外傷等の刺激により、免疫細胞を始めとする各種の細胞から産生され細胞外に放出されて作用する一群のタンパク質を意味し、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン1~インターロイキン15、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、ハイモビリティーグループボックス-1、エリスロポエチン及び単球走化因子等が挙げられ、特に、インターロイキン6、インターロイキン8(IL-8)、ハイモビリティーグループボックス-1が炎症性疾患の原因物質とされている。
本実施形態に係る活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料は、炎症性疾患を効率的に治療する観点で、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去に加えて、炎症性疾患の原因の一つである白血球も除去できることが好ましい。そして、炎症性疾患をより効率的に治療する観点で、活性化白血球-活性化血小板複合体及び白血球の除去に加えて、活性化白血球-活性化血小板複合体が産生するサイトカインも除去できることがより好ましく、サイトカインの中でも、炎症性疾患の主要原因物質であるインターロイキン8を除去できることがさらに好ましい。つまり、本実施形態に係る活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料は、白血球及び活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料であることが好ましく、白血球、サイトカイン及び活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料であることがより好ましく、白血球、インターロイキン8及び活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料であることがさらに好ましい。
「除去材料」とは、除去対象物を除去することが可能な材料であり、少なくとも当該材料の一部に水不溶性担体を含む材料を意味し、水不溶性担体単独及び適当な補強材に水不溶性担体を固定化又は混合されたものも含む。固定化又は混合の操作は、形状に加工する前に行ってもよいし、加工した後に行ってもよい。
上記除去材料の形状に特に限定はないが、フィルム形状、粒子形状又は繊維形状が好ましく、繊維形状がより好ましい。体外循環の治療で使用することを考えると、比表面積が大きく、柔軟に変形可能で取り扱い性に優れる繊維形状、特に海島繊維形状が好ましい。さらに、上記繊維形状を加工した形状としては、糸束、ヤーン、ネット、編地、織物又は不織布が好ましく、表面積が大きく、流路抵抗の小ささを考慮すると糸束、編地、織物又は不織布がより好ましい。さらに、使用する際の除去材料の充填や液体の流路の均一性を考慮すると、編地又は織物が好ましい。除去の方法としては、例えば、吸着や濾過によって除去対象物を除去する方法が挙げられる。
補強材の化学構造としては、例えば、芳香環又は水酸基を繰り返し構造中に含まない高分子等が挙げられ、その材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート若しくはポリテトラフルオロエチレン等の単独重合体、上記高分子材料のモノマーを複数種類用いた共重合体、又は上記単独重合体及び上記共重合体からなる群から選択される複数種類の材料を物理的にブレンドした材料等が挙げられる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。
「吸着」とは、除去対象物が除去材料に付着し、容易に剥離しない状態を意味する。具体的にはイオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス結合等の分子間相互作用によって除去対象物が除去材料に付着した状態を指すが、吸着の様式はこれに限定されない。
除去材料が繊維形状である場合は、当該繊維の繊維径はいずれの太さであってもよいが、血球が通過できる流路の確保という観点からは、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、1mm以下が好ましい。
「繊維径」とは、水不溶性担体を構成している織物、不織布又は編地等を形成する繊維の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて2000倍の写真をそれぞれ撮影し、各写真あたり10箇所(計100箇所)の繊維の直径を測定した値の平均値をいう。
上記一般式(I)で示される構造でリガンドが基材に結合している水不溶性担体は、例えば、スキーム1に示すように、基材(II)へのN-ヒドロキシアルキルアミド誘導体(III)の導入反応によって製造することができる。
[式中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を表し、波線は、基材との結合位置を表し、nは、1~6の整数を表す。]
基材(II)及びN-ヒドロキシアルキルアミド誘導体(III)は、購入することができるか、又は公知の方法で製造することができる。なお、基材は、繊維形状に成形されたものが好ましく、ポリスチレン又はその誘導体を含む繊維がより好ましい。
酸(Acid)としては、例えば、硫酸、塩酸若しくは硝酸又はハロゲン化アルミニウム(III)(例えば、塩化アルミニウム(III))若しくはハロゲン化鉄(III)(例えば、塩化鉄(III))等のルイス酸が挙げられ、硫酸又は塩化鉄(III)が好ましい。
導入反応に用いる反応溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン、ニトロプロパン、クロロベンゼン、トルエン又はキシレンが挙げられるが、ニトロベンゼン又はニトロプロパンが好ましい。
導入反応の反応温度は、0~90℃が好ましく、5~40℃がより好ましい。
導入反応の反応時間は、1分間~120時間が好ましく、5分間~24時間がより好ましい。
また、反応溶液中に基材を添加する前にパラホルムアルデヒドが溶解した溶液を反応溶液に添加してもよい。パラホルムアルデヒドを溶解させる溶媒に制限はないが、反応溶液の溶媒組成と同じであることが好ましい。パラホルムアルデヒド溶液を添加してから基材を添加するまでの時間は1~30分間が好ましく、1~5分間がより好ましい。
また、スキーム2に示すように、上記一般式(I)で示される構造でリガンドが基材に結合している水不溶性担体を酸加水分解し、アルキルアミン化基材(IV)を製造し、得られたアルキルアミン化基材(IV)とカルボン酸誘導体(V)とを縮合反応することで、上記一般式(I)で示される構造でリガンドが基材に結合している水不溶性担体を得ることができる。
[式中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を表し、波線は、基材との結合位置を表し、nは、1~6の整数を表す。]
無機酸としては、硫酸又は塩酸が好ましい。
酸加水分解の反応温度は、80~130℃が好ましい。
酸加水分解の反応時間は、10~30時間が好ましい。
縮合反応に用いるカルボン酸誘導体(V)の量は、アルキルアミン化基材(IV)に対して3~30当量が好ましく、5~15当量がより好ましい。
縮合反応に用いる縮合剤(Condensing agent)としては、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn-水和物、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩又はジシクロヘキシルカルボジイミドが挙げられるが、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn-水和物が好ましい。
縮合反応に用いる縮合剤(Condensing agent)の量は、アルキルアミン化基材(IV)に対して、3~10当量が好ましく、5~7当量がより好ましい。
縮合反応に用いる反応溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)又はこれらの混合溶媒等が挙げられるが、水又はメタノールが好ましい。
縮合反応の反応温度は、20~50℃が好ましい。
縮合反応の反応時間は、2~24時間が好ましい。
縮合反応に用いる縮合剤(Condensing agent)及びカルボン酸誘導体(V)は、購入することができるか、又は公知の方法で製造することができる。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料中、水不溶性担体に含まれるアミド基量は、当該除去材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かすことで水不溶性担体のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性担体を塩酸中で加熱することによりアミド基を加水分解し、生成したアミノ基を塩酸でイオン交換し、水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定することで決定することができる。補強材を含まない除去材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料中、水不溶性担体に含まれる陽性荷電を有する官能基量(例えば、アミノ基量)は、当該除去材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かすことで水不溶性担体のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性担体中の塩基性官能基(例えば、アミノ基)を塩酸でイオン交換し、水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定することより決定することができる。固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。また、重量減少量が1重量%を上回る場合は、再度80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、重量減少量が1重量%を下回るまで繰り返すことで乾燥状態にできる。補強材を含まない除去材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料中、水不溶性担体に含まれる陰性荷電を有する官能基量(例えば、スルホン酸基量)は、当該除去材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かすことで水不溶性担体のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性担体中の酸性官能基(例えば、スルホン酸基)を水酸化ナトリウム水溶液でイオン交換し、塩酸で逆滴定することより決定することができる。固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。また、重量減少量が1重量%を上回る場合は、再度80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、重量減少量が1重量%を下回るまで繰り返すことで乾燥状態にできる。補強材を含まない除去材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料中、水不溶性担体に陽性荷電を有する官能基と陰性荷電を有する官能基の両方が含まれる場合、当該水不溶性担体に含まれる荷電を有する官能基量は、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かすことで水不溶性担体のみを取り出して乾燥後に、その乾燥重量を測定し、当該水不溶性担体中の荷電を有する官能基を塩酸でイオン交換し、水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定することより決定することができる。固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。また、重量減少量が1重量%を上回る場合は、再度80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、重量減少量が1重量%を下回るまで繰り返すことで乾燥状態にできる。補強材を含まない除去材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。
また、本発明は、上記の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器を提供することを特徴としている。
「血液浄化器」とは、血液を体外に循環させて、血液中の老廃物や有害物質を取り除くことを目的とする医療材料を少なくとも一部に有する製品のことをいい、例えば、人工腎臓用モジュールや体外循環カラム等が挙げられる。
さらに、上記の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器は、炎症性疾患治療用途に好適に用いることができる。炎症性疾患治療用として使用する場合、上記の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器と患者とを血液回路で接続し、本発明の血液浄化器に当該患者から取り出した血液を通過させ、これを患者に戻すという血液体外循環方法が好ましい。血液等の処理時間としては、血液成分によるさらなる炎症誘発を抑制する観点から、持続的な処理が好ましく、4時間以上がより好ましく、24時間以上がさらに好ましい。
上記の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料を備える血液浄化器は、他の体液処理方法や医療機器と併用しても構わない。他の体液処理方法や医療機器としては、例えば、血漿交換、腹膜透析、血漿分離器、ヘモフィルター、人工心肺又はECMO(Exttacorporeal membrane oxygenation)が挙げられる。
上記の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料の、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能、白血球の除去性能、血小板の除去性能の評価方法としては、例えば、活性化白血球-活性化血小板複合体、白血球及び血小板を含む液体に上記除去材料を含浸し、含浸後に液体中の活性化白血球-活性化血小板複合体、白血球及び血小板の減少量を評価し、それらの除去率をそれぞれ算出する方法が挙げられる。また、入口及び出口を有する容器に上記除去材料を充填し、活性化白血球-活性化血小板複合体、白血球及び血小板を含む液体を通液させて、入口及び出口でのそれらの濃度の変化からそれらの除去率をそれぞれ算出する方法を用いることもできる。
活性化白血球-活性化血小板複合体の濃度の測定は、例えば、活性化白血球-活性化血小板複合体を含む液体に活性化血小板と特異的に結合する活性化検出試薬(活性化血小板検出試薬)と、活性化白血球と特異的に結合する活性化検出試薬(活性化白血球検出試薬/活性化顆粒球検出試薬/活性化単球検出試薬)を反応させ、両方の試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターを用いることができる。
白血球の濃度の測定は、例えば、白血球を含む液体に白血球検出試薬を反応させ、試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターや血球計算機を用いることができる。
血小板の濃度の測定は、例えば、血小板を含む液体に血小板検出試薬を反応させ、試薬と結合した血球分画を測定することにより行われる。当該測定には、フローサイトメーターや血球計算機を用いることができる。
活性化血小板検出試薬は、非活性化血小板及び白血球と結合せず、活性化血小板と結合性を有するものであり、例えば、活性化血小板特異的な細胞表面マーカーを認識する抗CD62P抗体(Anti-human CD62P(P-Selectin)Antibody Data Sheet,BioLegend.)を用いることができる。また、活性化白血球検出試薬は、非活性化白血球及び血小板と結合せず、活性化白血球と結合性を有するものであり、所望の白血球成分に特異的な又は共通の細胞表面マーカーの抗体が挙げられ、活性化顆粒球及び活性化単球の検出試薬としては、例えば、抗CD11b抗体を用いることができる。なかでも、活性化したコンフォメーションを特異的に検出することができるactivated抗CD11b抗体を用いることで活性化顆粒球及び活性化単球を特異的に検出することが可能となる(Anti-human CD11b(activated)Antibody Data Sheet,BioLegend.)。また、白血球の検出には抗CD45抗体を用いることができる。顆粒球の検出には、前方散乱光と側方散乱光を組み合わせてもよいが、抗CD45抗体と側方散乱光を組み合わせてもよく、抗CD45抗体と抗CD66b抗体を組み合わせてもよい。単球の検出には、前方散乱光と側方散乱光を組み合わせてもよいが、抗CD45抗体と側方散乱光を組み合わせてもよく、抗CD45抗体と抗CD14抗体を組み合わせてもよい。リンパ球の検出には、前方散乱光と側方散乱光を組み合わせてもよいが、抗CD45抗体と側方散乱光を組み合わせてもよく、抗CD4抗体や抗CD8抗体を組み合わせてもよく、また、CD45陽性細胞からCD66b陽性細胞とCD14陽性細胞を差し引いた細胞集団をリンパ球とすることも可能である。血小板の検出には抗CD41抗体を用いることができる。
前記検出試薬には、結合の確認のための指標が付されているのが好ましい。当該指標は、採用する検出方法に従い、任意に選択される。操作の簡便さや定量性からフローサイトメーターによる測定を用いるが、この場合に、検出試薬は蛍光標識される。蛍光標識も特に限定はなく、例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、若しくはAPC(Allophycocyanin)による標識を採用することができる。活性化白血球検出試薬と活性化血小板検出試薬とは異なる蛍光物質で標識される。これらの標識された検出試薬は、常法に従い製造できるが、市販品としても入手できる。
活性化白血球-活性化血小板複合体検出試薬及び白血球と前記の検出試薬との反応は、採用する検出試薬に応じて適宜設定される。前記の検出試薬が抗体である場合は、通常の免疫反応に従えばよい。活性化白血球-活性化血小板複合体検出試薬及び白血球検出試薬の反応液は特に限定されないが、所望により、検出反応中の細胞成分の活性化を抑制するのに有効量のアジ化ナトリウムやホルムアルデヒドを含ませてもよい。また、反応温度は、特に限定されないが、細胞成分の活性化を抑制する上で、4℃程度にて行うのが好ましい。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料を使用する際の安全性を考慮すると、除去材料が接触する液体のpHを変化させないこと、例えば、当該除去材料を、液性が中性付近の液体に含浸した場合に、含浸後の液体の液性は中性付近であることが望ましい。
上記除去材料の安全性の評価方法として、例えば、当該除去材料を一定時間、一定温度で液体中に含浸し、含浸後の液体中のpHを測定する方法が挙げられる。
また、体外循環療法を行う際、患者の出血リスクを低減するために一定数以上の血小板数を患者の血液中に維持する必要がある。体外循環療法を実施することで血小板が20%以上除去されてしまう場合には血小板輸血等の血小板数を増やす処置により、出血のリスクを抑えることが必要になる。そのため、血小板の吸着量が少ない材料を用いて体外循環療法を実施できれば、追加の処置なしで患者の血液中に一定数以上の血小板数を維持することが可能となるため、追加の処置に起因する患者への副作用を除外でき、さらに、臨床現場での作業負担も軽減できると考えられる。
さらに、抗凝固剤の吸着能を有する材料を用いて体外循環療法を行う場合、体外循環療法中の血液凝固防止を目的として、血液中の抗凝固剤の濃度管理が必要である。抗凝固剤の吸着量が20%を上回る材料を用いる場合には、血液凝固を防止するために専門的な管理が必要とされる。そのため、抗凝固剤の吸着量が低い材料を用いて体外循環療法を実施できれば、抗凝固剤吸着による抗凝固剤の濃度減少が抑えられるため、血液中の抗凝固剤の濃度管理が簡便になり、体外循環療法中の血液凝固のリスクをより低減できる。
上記除去材料の抗凝固剤除去性能の評価方法としては、例えば抗凝固剤を溶解した生理食塩液に除去材料を含浸し、含浸後の生理食塩液中の抗凝固剤濃度減少量を評価し、抗凝固剤の除去率を算出する方法が挙げられる。
「抗凝固剤」とは、血液凝固を阻害する物質であり、例えば、ヘパリン、低分子ヘパリン、メシル酸ナファモスタット又はアルガトロバンが挙げられる。
活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料のサイトカイン除去性能の評価方法としては、例えば、サイトカインを溶解したウシ胎児血清(以下、FBS)に当該除去材料を含浸し、含浸前後のFBS中のサイトカイン濃度を測定し、含浸前後のサイトカイン濃度からサイトカインの除去率を算出する方法が挙げられる。
以下、本発明の活性化白血球-活性化血小板複合体の除去材料について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(紡糸)
以下の成分を用いて、紡糸速度1250m/分の製糸条件で、1フィラメントあたり704島の海島繊維(繊維径:3dtex、20μm)を36フィラメント束ねた繊維(以下、繊維A)を得た。
島成分: ポリプロピレン
海成分: ポリスチレン
複合比率(重量比率): 島:海=50:50
(編地の作製)
得られた繊維Aを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)を用いて、横編で編地(以下、編地A)を作製した。
(アミド化編地の作製)
ニトロベンゼン46wt%、硫酸46wt%、パラホルムアルデヒド1wt%及びN-メチロール-α-クロルアセトアミド(以下、NMCA)7wt%を10℃以下で混合、撹拌、溶解させた反応液(以下、NMCA化反応液)を調製した。5℃に冷却した当該NMCA化反応液40mLに、1.0gの上記編地Aを加え、反応液を5℃に保ったまま2時間反応させた。その後、反応液から編地Aを取り出し、40mLのニトロベンゼンに編地Aを浸漬し洗浄した。続いて編地Aを取り出し、メタノールに浸漬し洗浄を行い、除去材料Aを得た。
NMCAを添加しない以外は、除去材料Aの製法と同操作を行うことで、除去材料Bを得た。
NMCAの添加濃度を7wt%から0.7wt%とした以外は、除去材料Aの製法と同操作を行うことで、除去材料Cを得た。
NMCA化反応液と編地Aとの反応時間を2時間から24時間とした以外は、除去材料Aの製法と同操作を行うことで、除去材料Dを得た。
1.0gの除去材料Aに対し、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して、25℃で30分間攪拌し、反応後の除去材料Aを取り出し、水に浸漬し洗浄を行い、除去材料Eを得た。
除去材料C1.0g及び6M塩酸100mLを、200mLナスフラスコに添加し、24時間130℃で加熱還流し、還流後に濾紙で濾別することで、酸加水分解後の除去材料Cを得た。次に、1.0gの酸加水分解後の除去材料Cに対し、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して、25℃で30分間攪拌し、濾紙を用いて濾別し、除去材料Fを得た。
除去材料Cを除去材料Aとした以外は除去材料Fの製法と同操作を行うことで、除去材料Gを得た。
除去材料Cを除去材料Dとした以外は除去材料Fの製法と同操作を行うことで、除去材料Hを得た。
除去材料H1.0g、酢酸0.63mLをメタノール25mLに添加し、25℃で1時間攪拌した。当該反応液に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物を1.4g添加し、30℃で24時間攪拌し、反応させた。その後、反応液から反応後の除去材料Hを取り出し、反応後の除去材料H1.0gに対し、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して、25℃で30分間攪拌し、除去材料Iを得た。
酢酸0.63mLを安息香酸1.2gとした以外は、除去材料Iの製法と同操作を行うことで、除去材料Jを得た。
酢酸0.63mLをヘキサン酸1.1mLとし、除去材料Hを除去材料Fとした以外は、除去材料Iの製法と同操作を行うことで、除去材料Kを得た。
除去材料Fを除去材料Gとした以外は、除去材料Kの製法と同操作を行うことで、除去材料Lを得た。
除去材料Fを除去材料Hとした以外は、除去材料Kの製法と同操作を行うことで、除去材料Mを得た。
(テトラエチレンペンタミン化編地の作製)
テトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)の濃度が3mM、トリエチルアミンの濃度が474mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの除去材料Aを浸して40℃で3時間反応させた。その後、反応液から反応後の除去材料Aを取り出し、500mLのDMSOに浸漬し洗浄、500mLのメタノールに浸漬し洗浄、500mLの水に浸漬し洗浄して、除去材料Nを得た。
TEPAの濃度を3mMから5mMとした以外は、除去材料Nの製法と同操作を行うことで、除去材料Oを得た。
TEPAの濃度を3mMから20mMとした以外は、除去材料Nの製法と同操作を行うことで、除去材料Pを得た。
TEPAの濃度を3mMから2mMとした以外は、除去材料Nの製法と同操作を行うことで、除去材料Qを得た。
(スルホン酸置換アミド化編地の作製)
除去材料Hを除去材料Gとし、酢酸0.63mLを酢酸0.32mLおよびα-スルフォフェニル酢酸0.53gとした以外は、除去材料Iの製法と同操作を行うことで、除去材料Rを得た。
除去材料Hを除去材料Gとし、酢酸0.63mLを酢酸0.32mLおよびα-スルフォフェニル酢酸1.06gとした以外は、除去材料Iの製法と同操作を行うことで、除去材料Sを得た。
除去材料Hを除去材料Gとし、酢酸0.63mLを酢酸0.32mLおよびα-スルフォフェニル酢酸1.59gとした以外は、除去材料Iの製法と同操作を行うことで、除去材料Tを得た。
上記製法により得られた除去材料N~Tは、いずれも水不溶性担体に含まれる荷電を有する官能基量よりもリガンド導入量(アミド基導入量と同値)の方が多いことから、いずれも除去材料A由来のクロロメチル基がリガンド中に残存している。例えば、除去材料Nの場合、後述の表7に記載の通り、アミド基量が4.7mmol/gに対し、荷電を有するテトラエチレンペンチル基量(アミノ基量の5分の1の値)が0.16mmol/gとなるので、リガンドに含まれるクロロメチル基の一部がテトラエチレンペンチル基で置換された構造となっており、4.54mmol/gは、クロロメチル基のまま残存している。また、除去材料Rの場合、後述の表9に記載の通り、アミド基量が4.7mmol/gに対し、荷電を有するα-スルフォフェニル基量(スルホン酸基量と同値)が0.4mmol/gとなるので、リガンドに含まれクロロメチル基の一部がα-スルフォフェニル基で置換された構造となっており、4.3mmol/gは、クロロメチル基のまま残存している。
(水不溶性担体に含まれるアミド基量の測定)
除去材料Aに含まれる水不溶性担体Aに含まれるアミド基量は、当該水不溶性担体A中のアミド基を加水分解することで生成したアミノ基量を、酸塩基逆滴定により測定することで決定した。200mLナスフラスコに除去材料Aを5.0g、100mLのトルエンを添加し、150℃で24時間還流し、補強材として添加されているポリプロピレンを溶解させ除去した。還流後の除去材料Aを、100℃に加温した2Lのトルエンにすみやかに添加、洗浄し、補強材を含まない除去材料Aを単離した。そして、得られた補強材除去後の除去材料Aをメタノールで洗浄し、乾燥機にて80℃で48時間静置することで水不溶性担体Aを得た。次に、当該水不溶性担体A1.0gと6M塩酸100mLを200mLナスフラスコに添加し、24時間130℃で還流した。還流後、濾紙で濾別することで水不溶性担体Aを回収し、酸加水分解後の水不溶性担体Aを得た。次に、ポリプロピレン製容器に対し、得られた酸加水分解後の水不溶性担体Aを全量、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して30分攪拌後、濾紙を用いて濾別した。次にイオン交換水50mLに濾別した酸加水分解後の水不溶性担体Aを添加して30分間攪拌し、濾紙を用いて濾別した。酸加水分解後の水不溶性担体Aを添加したイオン交換水のpHが7になるまでイオン交換水に添加、濾別を繰り返し、酸加水分解後の水不溶性担体Aを添加したイオン交換水のpHが7になった後に、酸加水分解後の水不溶性担体Aを80℃常圧条件で48時間静置し、乾燥させた。次に、ポリプロピレン製容器に当該水不溶性担体Aを全量と0.1M塩酸を60mL添加し、10分間攪拌した。攪拌後、溶液のみを5mL抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。次に、得られた溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。滴下後10分間の攪拌、pHの測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を越えた際の水酸化ナトリウム水溶液滴下量を1.0g当たりの滴定量とした。1.0g当たりの滴定量と以下の式1を用いて、水不溶性担体Aの乾燥重量1.0g当たりのアミド基の含量を算出した。同様の操作を除去材料B~E及びI~Tで行った。結果を表2、表3、表5、表7~表9に示す。
水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量(mmol/g)={添加した0.1M塩酸の液量(60mL)/抜き取った塩酸の液量(5mL)}×1.0g当たりの滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1M) ・・・式1
(水不溶性担体に含まれるアミノ基量の測定)
除去材料Aに含まれる水不溶性担体Aに含まれるアミノ基量は、当該水不溶性担体A中のアミノ基量を、酸塩基逆滴定することより決定した。水不溶性担体Aに含まれるアミド基量の測定と同様の操作で、除去材料Aから水不溶性担体Aを得た。脱塩後の水不溶性担体Aを80℃常圧条件で48時間静置した後、ポリプロピレン製容器に当該水不溶性担体Aを1.0gと0.1M塩酸を30mL添加し、10分間攪拌した。攪拌後、溶液のみを5mL抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。次に、得られた溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。滴下後10分間の攪拌、pHの測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を越えた際の水酸化ナトリウム水溶液滴下量を1.0g当たりの滴定量とした。1.0g当たりの滴定量と以下の式2を用いて、水不溶性担体Aの乾燥重量1.0g当たりのアミノ基量を算出した。同様の操作を除去材料E、M、N、O、P及びQで行った。結果を表3、表5及び表7に示す。
水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミノ基量(mmol/g)={添加した0.1M塩酸の液量(30mL)/抜き取った塩酸の液量(5mL)}×1.0g当たりの滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1M) ・・・式2
(水不溶性担体に含まれるスルホン酸基量の測定)
除去材料Aに含まれる水不溶性担体Aに含まれるスルホン酸基量は、当該水不溶性担体A中のスルホン酸基量を、酸塩基逆滴定することより決定した。水不溶性担体Aに含まれるアミド基量の測定と同様の操作で、除去材料Aから水不溶性担体Aを得た。脱塩後の水不溶性担体Aを80℃常圧条件で48時間静置した後、ポリプロピレン製容器に当該水不溶性担体A1.0gと6M塩酸を50mL添加し、10分間攪拌した。攪拌後、塩酸溶液から不溶性担体Aを取り出し、イオン交換水50mLに入ったポリプロピレン製容器に入れ、10分間攪拌した。次に、イオン交換水から不溶性担体A1.0gを取り出し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液30mLの入ったポリプロピレン製容器に入れ、10分間攪拌した。次に、水酸化ナトリウム水溶液の溶液のみを5mL抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。得られた水酸化ナトリウム水溶液に対して、0.1Mの塩酸を0.1mL滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。滴下後10分間の攪拌、pHの測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが6.0を下回った際の塩酸滴下量を1.0g当たりの滴定量とした。1.0g当たりの滴定量と以下の式3を用いて、水不溶性担体Aの乾燥重量1.0g当たりのスルホン酸基量を算出した。同様の操作を除去材料R、S及びTで行った。結果を表8及び表9に示す。
水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのスルホン酸基量(mmol/g)={添加した0.1M水酸化ナトリウムの液量(30mL)/抜き取った水酸化ナトリウム水溶液の液量(5mL)}×1.0g当たりの滴定量(mL)×塩酸濃度(0.1M) ・・・式3
(実施例1)
除去材料Cの活性化白血球-活性化血小板複合体及び白血球の除去性能を確認するため、健常ヒトボランティア血液に除去材料Cを所定時間含浸して取り出し、含浸前後の溶液中の活性化白血球-活性化血小板複合体及び白血球の減少量を測定した。以下に測定方法を示す。
除去材料Cを直径10mmの円板状に切り抜いた後、これを3枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。LPSを70EU/mLになるよう添加した健常ヒトボランティア血液を37℃、30分間、65rpmで振とうすることで、血液を活性化させた。次に、除去材料Cを入れた前記容器に、除去材料C1.0cm3に対して10mLとなるように活性化させた血液を添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した。その後、血液中から除去材料Cを取り除き、血液サンプルを回収した。通液後得られたサンプルを細胞の表面抗原を表1に示した蛍光標識抗体にて染色後にVersaLyseを用いて溶血処理をして、静置後は氷冷、暗所に保管し、速やかに各サンプルに含まれる細胞数を測定した。なお、生細胞の判定には、ethidium monoazide bromideを、細胞数のカウントには、Flow Count(BECKMAN COULTER)を用いた。測定にはフローサイトメトリー(BD FACDCaliburII(Becton, Dickinson and Company))を用いた。解析には、FLOWJO(トミーデジタルバイオロジー株式会社)を使用した。活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の濃度を算出した。除去材料Cをいれずに、活性化させた血液を37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した血液サンプルをブランクサンプルとし、除去材料Cと同様の操作により、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の濃度を算出した。除去材料Cの各血球成分の除去率を、次に示す式4~式7によりそれぞれ算出した。結果を表2に示す。
活性化顆粒球-活性化血小板複合体除去率(%)={(ブランクサンプルの活性化顆粒球-活性化血小板複合体濃度)-(除去材料Cと反応後の活性化顆粒球-活性化血小板複合体濃度)}/(ブランクサンプルの活性化顆粒球-活性化血小板複合体濃度)×100 ・・・式4
活性化単球-活性化血小板複合体除去率(%)={(ブランクサンプルの活性化単球-活性化血小板複合体濃度)-(除去材料Cと反応後の活性化単球-活性化血小板複合体濃度)}/(ブランクサンプルの活性化単球-活性化血小板複合体濃度)×100 ・・・式5
顆粒球除去率(%)={(ブランクサンプルの顆粒球濃度)-(除去材料Cと反応後の顆粒球濃度)}/(ブランクサンプルの顆粒球濃度)×100 ・・・式6
単球除去率(%)={(ブランクサンプルの単球濃度)-(除去材料Cと反応後の単球濃度)}/(ブランクサンプルの単球濃度)×100 ・・・式7
(実施例2)
除去材料Aについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2、表3及び表8に示す。
(実施例3)
除去材料Dについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例4)
除去材料Eについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例5)
除去材料Iについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例6)
除去材料Jについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例7)
除去材料Kについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例8)
除去材料Lについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例9)
除去材料Mについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
(実施例10)
除去材料Nについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表3に示す。
(実施例11)
除去材料Oについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表3に示す。
(比較例1)
除去材料Bについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表2に示す。
表2において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、リガンドに含まれる炭化水素基とは、2級アミド基の炭素原子と結合している、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を意味する。
表2の結果から、本願の除去材料は、活性化白血球-活性化血小板複合体の除去性能に優れていることが明らかとなり、さらに、白血球の除去性能も有していることが明らかとなった。
表3において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、アミノ基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミノ基量を意味する。
表3の結果から、本願の除去材料は、一部にアミノ基を有している官能基を導入されていても、活性化白血球-活性化血小板複合体及び白血球の除去性能を維持できることが明らかとなった。
(実施例12)
除去材料E1gを蒸留水20mLに50℃で24時間浸漬した。浸漬後に除去材料Eを蒸留水から取り出し、得られた蒸留水のpHを卓上型pHメーター(LAQUA、pH METER F-52、HORIBA)を用いて測定した。測定は、pHメーターの電極を25℃の溶液に浸すことで行った。また、pH測定前には中性リン酸塩標準液(リン酸一カリウム水溶液(3.40g/L)、和光純薬工業(株)社製)及びフタル酸塩標準液(フタル酸水素カリウム水溶液(10.21g/L)、和光純薬工業(株)社製)を用いて校正を行った。結果を表4に示す。
(実施例13)
除去材料Jについて、実施例12と同様の操作を行い、溶液のpHを測定した。結果を表4に示す。
(実施例14)
除去材料Mについて、実施例12と同様の操作を行い、溶液のpHを測定した。結果を表4に示す。
表4において、リガンドに含まれる炭化水素基とは、2級アミド基の炭素原子と結合している、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を意味する。
表4の結果から、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基が、2級アミド基の炭素原子と結合している構造であるリガンドを含む除去材料では、いずれもpHが中性付近であったため、使用時に接触する液体(例えば、血液)のpH変化を誘発するリスクが少なく、安全性に優れることが明らかとなった。
(実施例15)
除去材料Aを直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを3枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。ヘパリンナトリウムを4U/mLになるように生理食塩液を添加して調製し、円板状に切り抜いた除去材料Aを、除去材料A1.0cm3に対して30mLとなるように4U/mLのヘパリン溶液に添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した。その後、血液中から除去材料Aを取り除き、反応後の溶液を回収した。次に、反応後の溶液のヘパリン濃度を吸光度計で測定した。ヘパリン濃度の指標として210nmの波長の吸光度を用いた。結果を表5に示す。また、除去材料Aを添加しない以外は同操作を行ったサンプルを、ブランクサンプルとした。ブランクサンプルのヘパリン濃度から以下の式8によりヘパリン除去率を算出した。
除去材料Aのヘパリン除去率(%)={ブランクサンプルのヘパリン濃度(U/mL)―転倒混和後のヘパリン濃度(U/mL)}/ブランクサンプルのヘパリン濃度(U/mL)×100 ・・・式8
(実施例16)
除去材料Eについて、実施例15と同様の操作を行い、ヘパリン除去率を示した。結果を表5に示す。
(実施例17)
除去材料Mについて、実施例15と同様の操作を行い、ヘパリン除去率を示した。結果を表5に示す。
(実施例18)
除去材料Oについて、実施例15と同様の操作を行い、ヘパリン除去率を示した。結果を表5に示す。
(実施例19)
除去材料Pについて、実施例15と同様の操作を行い、ヘパリン除去率を示した。結果を表5に示す。
表5において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、アミノ基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミノ基量を意味する。
表5の結果から、アミノ基量が低いほどヘパリンの吸着能が低くなることが明らかとなった。
(実施例20)
除去材料Aのサイトカイン除去性能を確認するため、サイトカインを含む液体に除去材料Aを所定時間含浸して取り出し、含浸前後の溶液中のサイトカイン減少量を測定した。以下に測定方法を示す。
除去材料Aを直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを4枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、サイトカインの一種であるインターロイキン8(以下、IL-8)の濃度が2000pg/mLなるように調製した牛胎児血清(Fetal Bovine Serum、以下、FBS)を除去材料1cm3に対して30mLとなるように添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した後、ELISA法にてFBS中のIL-8濃度を測定した。転倒混和前のIL-8濃度から以下の式9によりIL-8除去率を算出した。結果を表6に示す。
除去材料AのIL-8除去率(%)={転倒混和前のIL-8濃度(pg/mL)―転倒混和後のIL-8濃度(pg/mL)}/転倒混和前のIL-8濃度(pg/mL)×100 ・・・式9
(実施例21)
除去材料Eについて、実施例20と同様の操作を行い、IL-8除去率を示した。結果を表6に示す。
(実施例22)
除去材料Jについて、実施例20と同様の操作を行い、IL-8除去率を示した。結果を表6に示す。
(実施例23)
除去材料Mについて、実施例20と同様の操作を行い、IL-8除去率を示した。結果を表6に示す。
(比較例2)
除去材料Bについて、実施例20と同様の操作を行い、IL-8除去率を示した。結果を表6に示す。
表6において、リガンドに含まれる炭化水素基とは、2級アミド基の炭素原子と結合している、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ケトン基、エーテル基及びエステル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭化水素基を意味する。
表6の結果から、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基が2級アミド基の炭素原子と結合している構造であるリガンドを有している除去材料は、サイトカイン除去性能も有していることが明らかとなった。
(実施例24)
除去材料Aを直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを4枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。LPSを70EU/mLになるよう添加した健常ヒトボランティア血液を37℃のインキュベータ内で30分間転倒混和することで、血液を活性化させた。次に、除去材料Aを入れた前記容器に、除去材料A1.0cm3に対して20mLとなるように活性化させた血液を添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した。その後、血液中から除去材料Aを取り除き、血液サンプルを回収した。通液後得られたサンプルを、血球計算機(シスメックス,多項目自動血球分析装置 XT-1800i)で測定し、血小板の濃度を算出した。除去材料Aをいれずに、活性化させた血液を37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した血液サンプルをブランクサンプルとし、除去材料Aと同様の操作により、血小板の濃度を算出した。除去材料Aの血小板除去率を、次に示す式10により算出した。結果を表7、表9に示す。
血小板除去率(%)={(ブランクサンプルの血小板濃度)-(除去材料Aと反応後の化血小板濃度)}/(ブランクサンプルの血小板濃度)×100 ・・・式10
(実施例25)
除去材料Qについて、実施例24と同様の操作を行い、血小板除去率を示した。結果を表7に示す。
(実施例26)
除去材料Nについて、実施例24と同様の操作を行い、血小板除去率を示した。結果を表7に示す。
表7において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、アミノ基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミノ基量を意味する。
表7の結果から、アミノ基量が少ないほど血小板除去性能が低くなることが示された。
(実施例27)
除去材料Qについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表3に示す。
(実施例28)
除去材料Rについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表8に示す。
(実施例29)
除去材料Sについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表8に示す。
(実施例30)
除去材料Tについて、実施例1と同様の操作を行い、活性化顆粒球-活性化血小板複合体、活性化単球-活性化血小板複合体、顆粒球及び単球の除去率を示した。結果を表8に示す。
表8において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、スルホン酸基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのスルホン酸基量を意味する。
表8の結果から、本願の除去材料は、一部にスルホン酸基を有している官能基を導入されていても、活性化白血球-活性化血小板複合体及び白血球の除去性能を維持できることが明らかとなった。
(実施例31)
除去材料Rについて、実施例24と同様の操作を行い、血小板除去率を示した。結果を表9に示す。
(実施例32)
除去材料Sについて、実施例24と同様の操作を行い、血小板除去率を示した。結果を表9に示す。
表9において、アミド基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのアミド基量を意味し、スルホン酸基量とは、水不溶性担体に含まれる水不溶性担体の乾燥重量1.0g当たりのスルホン酸基量を意味する。
表9の結果から、スルホン酸基量が少ないほど血小板除去性能が低くなることが示された。