以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
また、本明細書等において、一重項励起状態(S*)は、励起エネルギーを有する一重項状態のことである。また、S1準位は一重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー準位のことである。また、三重項励起状態(T*)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、T1準位は、三重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い三重項励起状態(T1状態)の励起エネルギー準位のことである。なお、本明細書等において、単に一重項励起状態および一重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、S1状態およびS1準位を表す場合がある。また、三重項励起状態および三重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、T1状態およびT1準位を表す場合がある。
また、本明細書等において蛍光性材料とは、一重項励起状態から基底状態へ緩和する際に可視光領域に発光を与える化合物である。燐光性材料とは、三重項励起状態から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える化合物である。換言すると燐光性材料とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な化合物の一つである。
なお、本明細書等において、室温とは0℃以上40℃以下の範囲の温度をいう。
また、本明細書等において、青色の波長領域は、400nm以上490nm未満であり、青色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、緑色の波長領域は、490nm以上580nm未満であり、緑色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、赤色の波長領域は、580nm以上680nm以下であり、赤色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、2種の発光スペクトルが同じ波長領域にそれぞれ発光スペクトルピークを有する場合でも、ピーク波長が異なる場合、該2種の発光スペクトルは異なる色の発光であるとみなす場合がある。なお、発光スペクトルピークは、極大値またはショルダーを含むものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について、図1乃至図6を用いて以下説明する。
<発光素子の構成例>
まず、本発明の一態様の発光素子の構成について、図1を用いて、以下説明する。
図1(A)は、本発明の一態様の発光素子150の断面模式図である。
発光素子150は、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する。
また、図1(A)に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極102を陰極として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つまり、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい。
なお、EL層100の構成は、図1(A)に示す構成に限定されず、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119の中から選ばれた少なくとも一つを有する構成とすればよい。あるいは、EL層100は、正孔または電子の注入障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、または電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であってもよい。
<発光素子の発光機構>
次に、発光層130の発光機構について、以下説明を行う。
本発明の一態様の発光素子150においては、一対の電極(電極101及び電極102)間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が、それぞれEL層100に注入され、電流が流れる。キャリア(電子および正孔)の再結合によって生じる励起子のうち、一重項励起子と三重項励起子の比(以下、励起子生成確率)は、統計的確率により、1:3となる。すなわち、一重項励起子が生成する割合は25%であり、三重項励起子が生成する割合は75%であるため、三重項励起子を発光に寄与させることが、発光素子の発光効率を向上させるためには重要である。したがって、発光層130には、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を用いると好ましい。
三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料として、燐光を発することができる化合物(以下、燐光性材料ともいう)が挙げられる。本明細書等において、燐光性材料とは、低温(例えば77K)以上室温以下の温度範囲(すなわち、77K以上313K以下)のいずれかにおいて、燐光を呈し、且つ蛍光を呈さない化合物のことをいう。該燐光性材料としては、スピン軌道相互作用の大きい金属元素を有すると好ましく、具体的には遷移金属元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、または白金(Pt))を有することが好ましく、中でもイリジウムを有することで、一重項基底状態と三重項励起状態との間の直接遷移に係わる遷移確率を高めることができ好ましい。
また、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、TADF材料が挙げられる。なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、室温または低温における蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.2eV以下であることが好ましい。
また、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、ペロブスカイト構造を有する遷移金属化合物のナノ構造体が挙げられる。特に金属ハロゲン化物ペロブスカイト類のナノ構造体がこのましい。該ナノ構造体としては、ナノ粒子、ナノロッドが好ましい。
図1(B)は本発明の一態様である発光素子の発光層130を表す断面模式図である。本発明の一態様では、発光層130は化合物131及び化合物132を有する。化合物131は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、化合物132は一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。信頼性の高い発光素子を得るためには、化合物132として蛍光性材料を用いることが好ましい。ここで、発光層130において、化合物131はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。すなわち図1(C)においては、ホスト材料はエネルギードナー、ゲスト材料はエネルギーアクセプターとしての機能を有する。また、本発明の一態様の発光素子において、化合物131は上述のように、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有するため、発光層130からはエネルギードナーである化合物131からの発光及びエネルギーアクセプターである化合物132からの発光を得ることができる。上述のようにエネルギードナーとして、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、エネルギーアクセプターとして、蛍光性材料を用いた発光素子を本明細書では三重項増感素子と呼称する場合がある。
<発光層の構成例1>
図1(C)は、本発明の一態様の発光素子中の発光層におけるエネルギー準位の相関の一例である。本構成例では化合物131にTADF材料を用いた場合について示している。
また、発光層130における化合物131と、化合物132と、のエネルギー準位の相関を図1(C)に示す。なお、図1(C)における表記及び符号は、以下の通りである。
・Host(131):化合物131
・Guest(132):化合物132
・TC1:化合物131のT1準位
・SC1:化合物131のS1準位
・SG:化合物132のS1準位
・TG:化合物132のT1準位
ここで、電流励起によって生じた化合物131の三重項励起エネルギーに着目する。化合物131はTADF性を有する。そのため、化合物131は三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図1(C) ルートA1)。化合物131が有する一重項励起エネルギーは、化合物132へ移動することができる。(図1(C) ルートA2)。このとき、SC1≧SGであると好ましい。ここで、ルートA2の過程は化合物131の発光の過程(化合物131のS1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物131が有する一重項励起エネルギーは化合物131の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物131からの発光及び化合物132からの発光の2種類の発光を得ることができる。なお、電流励起によって生じた化合物131の一重項励起エネルギーも同様に化合物131及び化合物132の発光へ変換される。
なお、具体的には、化合物131の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSC1とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、SC1≧SGであることが好ましい。また、化合物131の発光スペクトルは、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。
化合物131で生じた三重項励起エネルギーが、上記ルートA1及びルートA2を経てゲスト材料である化合物132のS1準位へエネルギー移動し化合物132が発光することによって、効率良く三重項励起エネルギーを蛍光発光に変換することができる。ルートA2において、化合物131がエネルギードナー、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。また、本発明の一態様の発光素子において、化合物131はエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能する。
化合物131がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって、化合物131の励起エネルギーは化合物131の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また、化合物131及び化合物132の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
また、図1(C)に示すように、化合物131のS1準位は化合物132のS1準位よりも高い。そのため、化合物131からの発光スペクトルは化合物132よりも短波長側に得られる。より具体的には、化合物131の発光スペクトルのピーク波長が、化合物132の発光スペクトルのピーク波長よりも短波長側に位置する。該構成とすることによって、効率良く化合物131から化合物132へエネルギー移動することができ、発光効率が良好な多色発光素子を得ることができる。
ここで、発光層130において、化合物131と化合物132は混合されている。そのため、上記ルートA1及びルートA2と競合して化合物131の三重項励起エネルギーが化合物132の三重項励起エネルギーへ変換される過程(図1(C)ルートA3)が起こり得る。化合物132は蛍光性材料であるため、化合物132の三重項励起エネルギーは発光に寄与しない。すなわち、ルートA3のエネルギー移動が生じると発光素子の発光効率が低下してしまう。なお実際は、TC1からTGへのエネルギー移動(ルートA3)は、直接ではなく、化合物132のTGよりも高位の三重項励起状態に一度エネルギー移動し、その後内部変換によりTGになる経路があり得るが、図中ではその過程を省略している。以降の本明細書中における望ましくない熱失活過程、すなわちTGへの失活過程は、全て同様である。
ここで、分子間のエネルギー移動機構として、フェルスター機構(双極子-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)が知られている。エネルギーアクセプターである化合物132が蛍光性材料であるため、ルートA3のエネルギー移動はデクスター機構が支配的である。一般的に、デクスター機構はエネルギードナーである化合物131とエネルギーアクセプターである化合物132の距離が1nm以下で有意に生じる。そのため、ルートA3を抑制するためには、ホスト材料とゲスト材料の距離、すなわちエネルギードナーとエネルギーアクセプターの距離を遠ざけることが重要である。
また、化合物131の一重項励起エネルギー準位(SC1)から、化合物132の三重項励起エネルギー準位(TG)へのエネルギー移動は、化合物132における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移動過程になりにくいため、図示していない。
図1(C)中のTGはエネルギーアクセプター中の発光団に由来するエネルギー準位であることが多い。そのため、より詳細にはルートA3を抑制するためには、エネルギードナーとエネルギーアクセプターが有する発光団の距離を遠ざけることが重要である。
そこで、本発明者らはエネルギーアクセプターとして、エネルギードナーとの距離を遠ざけるための保護基を有する蛍光性材料を用いることで、上記発光効率の低下を抑制可能であることを見出した。
<保護基を有する蛍光性材料の概念>
図2(A)に一般的な蛍光性材料である、保護基を有さない蛍光性材料をゲスト材料としてホスト材料に分散させた場合の、図2(B)に本発明の一態様の発光素子に用いる、保護基を有する蛍光性材料をゲスト材料としてホスト材料に分散させた場合の概念図を示す。ホスト材料はエネルギードナー、ゲスト材料はエネルギーアクセプターと読み替えても構わない。ここで、保護基は、発光団とホスト材料との距離を遠ざける機能を有する。図2(A)において、ゲスト材料301は発光団310を有する。一方、図2(B)において、ゲスト材料302は発光団310と保護基320を有する。また、図2(A)及び(B)においてゲスト材料301及びゲスト材料302はホスト材料330に囲まれている。図2(A)では発光団とホスト材料の距離が近いため、ホスト材料330からゲスト材料301へのエネルギー移動として、フェルスター機構によるエネルギー移動(図2(A)及び(B)中、ルートA4)とデクスター機構によるエネルギー移動(図2(A)及び(B)中、ルートA5)の両方が生じうる。デクスター機構によるホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのエネルギー移動が生じゲスト材料の三重項励起状態が生成すると、ゲスト材料が蛍光性材料である場合、三重項励起エネルギーが無放射失活するため、発光効率低下の一因となる。
一方、図2(B)では、ゲスト材料302は保護基320を有している。そのため、発光団310とホスト材料330の距離を遠ざけることができる。よって、デクスター機構によるエネルギー移動(ルートA5)を抑制することができる。
ここで、ゲスト材料302が発光するためには、デクスター機構を抑制しているため、ゲスト材料302はフェルスター機構によりホスト材料330からエネルギーを受け取る必要がある。すなわち、デクスター機構によるエネルギー移動は抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動を効率良く利用することが好ましい。フェルスター機構によるエネルギー移動もホスト材料とゲスト材料の距離に影響を受けることが知られている。一般に、ホスト材料330とゲスト材料302の距離が1nm以下ではデクスター機構が優勢となり、1nm以上10nm以下ではフェルスター機構が優勢となる。一般にホスト材料330とゲスト材料302の距離が10nm以上ではエネルギー移動は生じにくい。ここで、ホスト材料330とゲスト材料302の距離はホスト材料330と発光団310との距離と読み替えて構わない。
よって、保護基320は発光団310から1nm以上10nm以下の範囲に広がると好ましい。より好ましくは1nm以上5nm以下である。該構成とすることで、ホスト材料330からゲスト材料302へのデクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、効率良くフェルスター機構によるエネルギー移動を利用することができる。そのため、高い発光効率を有する発光素子を作製することができる。
本発明の一態様の発光素子には、発光層に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しながら、フェルスター機構によるエネルギー移動を効率良く利用することができるため、本発明の一態様の発光素子は発光効率が高い発光素子を得ることができる。さらに、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料をホスト材料に利用することによって、燐光発光素子と同等の高い発光効率を有する蛍光発光素子を作製できる。また、安定性が高い蛍光性材料を用いて発光効率を向上させることができるので、信頼性の良好な発光素子を作製できる。また、ホスト材料に利用した三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料からの発光も得ることによって、通常、発光層を積層させなければ得られない多色発光素子を、1層の発光層で得ることができる。
ここで、発光団とは、蛍光性材料において、発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は一般的にπ結合を有しており、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。また、他の態様として、発光団とは、環平面上に遷移双極子ベクトルが存在する芳香環を含む原子団(骨格)と見なすことができる。また、一つの蛍光性材料が複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環を有する場合、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環のうち、最も低いS1準位を有する骨格を該蛍光性材料の発光団と考える場合がある。また、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環のうち、最も長波長側に吸収端を有する骨格を該蛍光性材料の発光団と考える場合がある。また、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環それぞれの発光スペクトルの形状から該蛍光性材料の発光団を予想できる場合がある。
縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光性材料は蛍光量子収率が高いため好ましい。
また保護基として用いられる置換基は、発光団及びホスト材料が有するT1準位よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する必要がある。そのため飽和炭化水素基を用いることが好ましい。π結合を有さない置換基は三重項励起エネルギー準位が高いためである。また、π結合を有さない置換基は、キャリア(電子またはホール)を輸送する機能が低い。そのため、飽和炭化水素基はホスト材料の励起状態またはキャリア輸送性にほとんど影響を与えずに、発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができる。また、π結合を有さない置換基とπ共役系を有する置換基を同時に有する有機化合物においては、π共役系を有する置換基側にフロンティア軌道{HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道ともいう)及びLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道ともいう)}が存在する場合が多く、特に発光団がフロンティア軌道を有する場合が多い。後述するように、デクスター機構によるエネルギー移動には、エネルギードナー及びエネルギーアクセプターのHOMOの重なりと、LUMOの重なりが重要になる。そのため、飽和炭化水素基を保護基に用いることによって、エネルギードナーであるホスト材料のフロンティア軌道と、エネルギーアクセプターであるゲスト材料のフロンティア軌道との距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
保護基の具体例としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が挙げられる。また、保護基は発光団とホスト材料との距離を遠ざける必要があるため、嵩高い置換基が好ましい。そのため、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基を好適に用いることができる。特にアルキル基としては、嵩高い分岐鎖アルキル基が好ましい。また、該置換基は4級炭素を有すると嵩高い置換基となるため特に好ましい。
また、保護基は1つの発光団に対して5個以上有すると好ましい。該構成とすることで、発光団全体を保護基で覆うことができるため、ホスト材料と発光団との距離を適当に調整することができる。また、図2(B)では発光団と保護基が直接結合している様子を表しているが、保護基は発光団と直接結合していない方がより好ましい。例えば、保護基はアリーレン基やアミノ基等の2価以上の置換基を介して発光団と結合していても良い。該置換基を介して保護基が発光団と結合することによって、効果的に発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができる。そのため、発光団と保護基が直接結合しない場合、保護基は1つの発光団に対して4個以上有すると、効果的にデクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
また、発光団と保護基を結ぶ2価以上の置換基はπ共役系を有する置換基であると好ましい。該構成とすることで、ゲスト材料の発光色やHOMO準位、ガラス転移点等の物性を調整することができる。なお、保護基は発光団を中心に分子構造を見た際に、最も外側に配置されると好ましい。
<保護基を有する蛍光性材料と分子構造例>
ここで下記構造式(102)で示される、本発明の一態様の発光素子に用いることができる蛍光性材料である、N,N’-[(2-tert-ブチルアントラセン)-9,10-ジイル]-N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミン(略称:2tBu-mmtBuDPhA2Anth)の構造を示す。2tBu-mmtBuDPhA2Anthにおいて、アントラセン環が発光団であり、ターシャリーブチル基(tBu基)が保護基として作用する。
上記2tBu-mmtBuDPhA2Anthの球棒モデルによる表示を図3(B)に示す。なお図3(B)は2tBu-mmtBuDPhA2Anthを図3(A)の矢印の方向(アントラセン環面に対して水平方向)から見た時の様子を表している。図3(B)の網掛け部分は発光団であるアントラセン環面の直上部分を表しており、該直上部分に保護基であるtBu基が重なる領域を有することが分かる。例えば、図3(B)中、矢印(a)で示す原子は、該網掛け部分と重なるtBu基の炭素原子であり、矢印(b)で示す原子は、該網掛け部分と重なるtBu基の水素原子である。すなわち、2tBu-mmtBuDPhA2Anthは発光団面の一方の直上に保護基を構成する原子が位置し、他方の面直上にも、保護基を構成する原子が位置している。該構成とすることによって、ゲスト材料がホスト材料に分散した状態であっても、発光団であるアントラセン環の平面方向および垂直方向の双方において、アントラセン環とホスト材料の距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
また、デクスター機構によるエネルギー移動は、例えばエネルギー移動に係わる遷移がHOMOとLUMOとの間の遷移である場合、ホスト材料とゲスト材料のHOMOの重なり及びホスト材料とゲスト材料のLUMOの重なりが重要である。両材料のHOMO及びLUMOが重なるとデクスター機構は有意に生じる。そのため、デクスター機構を抑制するためには、両材料のHOMO及びLUMOの重なりを抑制することが重要である。すなわち、励起状態に関わる骨格とホスト材料との距離を遠ざけることが重要である。ここで、蛍光性材料においては、HOMO及びLUMO共に発光団が有することが多い。例えば、ゲスト材料のHOMO及びLUMOは発光団の面の上方と下方(2tBu-mmtBuDPhA2Anthにおいては、アントラセン環の上方と下方)に広がっている場合、発光団の面の上方及び下方を保護基で覆うことが分子構造において重要である。
また、ピレン環やアントラセン環のような発光団として機能する縮合芳香環や縮合複素芳香環は、該環平面上に遷移双極子ベクトルが存在する。よって図3(B)においては2tBu-mmtBuDPhA2Anthは遷移双極子ベクトルが存在する面、すなわちアントラセン環の面直上に、保護基であるtBu基が重なる領域を有すると好ましい。具体的には、複数の保護基(図3(A)、(B)においてはtBu基)を構成する原子の少なくとも一つが、縮合芳香環または縮合複素芳香環(図3(A)、(B)においてはアントラセン環)の一方の面の直上に位置し、かつ、前記複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、前記縮合芳香環または縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置する。該構成とすることによって、ゲスト材料がホスト材料に分散した状態であっても、発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。また、アントラセン環のような発光団を覆うようにtBu基が配置されていることが好ましい。
<発光層の構成例2>
図4(C)は、本発明の一態様の発光素子150の発光層130におけるエネルギー準位の相関の一例である。図4(A)に示す発光層130は、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、蛍光性材料であると好ましい。また、本構成例では、化合物131と化合物133は励起錯体を形成する組合せである。
化合物131と化合物133との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有する化合物であり、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であることが、より好ましい。この場合、ドナー-アクセプター型の励起錯体を形成しやすくなり、効率よく励起錯体を形成することができる。また、化合物131と化合物133との組み合わせが、正孔輸送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
また、効率よく励起錯体を形成するホスト材料の組み合わせとしては、化合物131及び化合物133のうち一方のHOMO準位が他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが好ましい。なお、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位と同等、または化合物131のLUMO準位が化合物133のLUMO準位と同等であってもよい。
なお、化合物のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される化合物の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物133が電子輸送性を有する場合、図4(B)に示すエネルギーバンド図のように、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物131のLUMO準位が化合物133のLUMO準位より高いことが好ましい。このようなエネルギー準位の相関とすることで、一対の電極(電極101および電極102)から注入されたキャリアである正孔及び電子が、化合物131および化合物133に、それぞれ注入されやすくなり好適である。
なお、図4(B)において、Comp(131)は化合物131を表し、Comp(133)は化合物133を表し、ΔEC1は化合物131のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔEC3は化合物133のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔEEは化合物133のLUMO準位と化合物131のHOMO準位とのエネルギー差を表す、表記及び符号である。
また、化合物131と化合物133とが形成する励起錯体は、化合物131にHOMOの分子軌道を有し、化合物133にLUMOの分子軌道を有する励起錯体となる。また、該励起錯体の励起エネルギーは、化合物133のLUMO準位と化合物131のHOMO準位とのエネルギー差(ΔEE)に概ね相当し、化合物131のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(ΔEC1)及び化合物133のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(ΔEC3)より小さくなる。したがって、化合物131と化合物133とで励起錯体を形成することで、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。また、より低い励起エネルギーを有するため、該励起錯体は、安定な励起状態を形成することができる。
また、発光層130における化合物131と、化合物132と、化合物133と、のエネルギー準位の相関を図4(C)に示す。なお、図4(C)における表記及び符号は、以下の通りである。
・Comp(131):化合物131
・Comp(133):化合物133
・Guest(132):化合物132
・SC1:化合物131のS1準位
・TC1:化合物131のT1準位
・SC3:化合物133のS1準位
・TC3:化合物133のS1準位
・SG:化合物132のS1準位
・TG:化合物132のT1準位
・SE:励起錯体のS1準位
・TE:励起錯体のT1準位
本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する化合物131と化合物133とで励起錯体を形成する。励起錯体のS1準位(SE)と励起錯体のT1準位(TE)とは、互いに隣接したエネルギー準位となる(図4(C) ルートA6参照)。
励起錯体の励起エネルギー準位(SEおよびTE)は、励起錯体を形成する各物質(化合物131および化合物133)のS1準位(SC1およびSC3)より低くなるため、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光素子150の駆動電圧を低減することができる。
励起錯体のS1準位(SE)とT1準位(TE)は、互いに隣接したエネルギー準位であるため、逆項間交差しやすく、TADF性を有する。そのため、励起錯体は三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図4(C) ルートA7)。励起錯体が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(図4(C) ルートA8)。このとき、SE≧SGであると好ましい。ルートA8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。ここで、ルートA8の過程は励起錯体の発光の過程(励起錯体のS1準位から基底状態への遷移または励起錯体のT1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、励起錯体が有する一重項及び三重項励起エネルギーは励起錯体の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は励起錯体からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。
励起錯体がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131及び化合物133の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって、励起錯体の励起エネルギーは励起錯体の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132及び化合物133の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
なお、具体的には、励起錯体の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSEとし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、SE≧SGであることが好ましい。また、励起錯体の発光スペクトルは、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。
なお、励起錯体のTADF性を高めるには、化合物131および化合物133の双方のT1準位、すなわちTC1およびTC3が、TE以上であることが好ましい。その指標としては、化合物131および化合物133の燐光スペクトルの最も短波長側の発光ピーク波長が、いずれも励起錯体の最大発光ピーク波長以下であることが好ましい。あるいは、励起錯体の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSEとし、化合物131および化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において各々接線を引き、それらの外挿線の波長のエネルギーを各化合物のTC1およびTC3とした際に、SE-TC1≦0.2eV、かつ、SE-TC3≦0.2eVであることが好ましい。
発光層130で生じた三重項励起エネルギーが、上記ルートA6及び励起錯体のS1準位からゲスト材料へのS1準位へのエネルギー移動(ルートA8)を経ることで、ゲスト材料が発光することができる。よって、発光層130に励起錯体を形成する組合せの材料を用いることで、蛍光発光素子の発光効率を高めることができる。
ここで、本発明の一態様である発光素子では、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA9で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光素子を得ることができる。
上記に示すルートA6乃至A8の過程を、本明細書等において、ExSET(Exciplex-Singlet Energy Transfer)またはExEF(Exciplex-Enhanced Fluorescence)と呼称する場合がある。別言すると、発光層130は、励起錯体から蛍光性材料への励起エネルギーの供与がある。
<発光層の構成例3>
本構成例では、上述のExEFを利用した発光素子の化合物133として、燐光性材料を用いた場合について説明する。すなわち、励起錯体を形成する化合物の一方に燐光性材料を用いた場合について説明する。
本構成例では励起錯体を形成する一方の化合物に重原子を有する化合物を用いる。そのため、一重項状態と三重項状態との間の項間交差が促進される。よって、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移が可能な(すなわち燐光を呈することが可能な)励起錯体を形成することができる。この場合、通常の励起錯体とは異なり、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TE)がエネルギードナーの準位となるため、TEが発光材料である化合物132の一重項励起エネルギー準位(SG)以上であることが好ましい。具体的には、重原子を用いた励起錯体の発光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをTEとし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、TE≧SGであることが好ましい。
このようなエネルギー準位の相関とすることで、生成した励起錯体の三重項励起エネルギーは、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TE)から化合物132の一重項励起エネルギー準位(SG)へエネルギー移動することができる。なお、励起錯体のS1準位(SE)とT1準位(TE)は、互いに隣接したエネルギー準位であるため、発光スペクトルにおいて、蛍光と燐光とを明確に区別することが困難な場合がある。その場合、発光寿命によって、蛍光または燐光を区別することが可能な場合がある。
なお、上記構成で用いる燐光性材料はIr、Pt、Os、Ru、Pd等の重原子を含んでいることが好ましい。すなわち、励起錯体が有する三重項励起エネルギー準位からゲスト材料の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となれば良い。上述のような燐光性材料から構成される励起錯体や燐光性材料からゲスト材料へのエネルギー移動は、エネルギードナーの三重項励起エネルギー準位からゲスト材料(エネルギーアクセプター)の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となるため好ましい。よって、図4(C)中のルートA7の過程を経ることなく、励起錯体の三重項励起エネルギーをルートA8の過程によってゲスト材料のS1準位(SG)へ移動させることができる。すなわち、ルートA6及びルートA8の過程のみでゲスト材料のS1準位へ三重項及び一重項励起エネルギーを移動させることができる。ルートA8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。ここで、ルートA8の過程は励起錯体の発光の過程(励起錯体のS1準位またはT1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、励起錯体が有する一重項励起エネルギーまたは三重項励起は化合物131の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物131からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。また、本構成例において、発光層130における化合物133の濃度を調整することによって化合物133に由来する発光も得ることができる。
化合物133及び励起錯体がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131及び化合物133の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって、化合物133及び励起錯体の励起エネルギーは化合物133の発光、励起錯体の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132及び化合物133の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
ここで、本発明の一態様である発光素子では、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA9で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光素子を得ることができる。
<発光層の構成例4>
本構成例では上述のExEFを利用した発光素子の化合物133として、TADF性を有する材料を用いた場合について図4(D)を用いて説明する。
化合物133はTADF材料であるため、励起錯体を形成していない化合物133は、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図4(D)ルートA10)。化合物133が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(図4(D) ルートA11)。このとき、SC3≧SGであると好ましい。
先の発光層の構成例と同様に、本発明の一態様の発光素子では、図4(D)中のルートA6乃至ルートA8を経て、三重項励起エネルギーがゲスト材料である化合物132へ移動する経路と、図4(D)中のルートA10及びルートA11を経て化合物132へ移動する経路が存在する。三重項励起エネルギーが蛍光性材料へ移動する経路が複数存在することで、さらに発光効率を高めることができる。ルートA8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。ルートA11において、化合物133がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。ここで、ルートA11の過程は化合物133の発光の過程(化合物133のS1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物133が有する一重項励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物133からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。また、上述のように、ルートA8の過程は励起錯体の発光の過程(励起錯体のS1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、励起錯体が有する一重項励起エネルギーは励起錯体の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は励起錯体からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。
化合物133及び励起錯体がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131及び化合物133の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって、化合物133及び励起錯体の励起エネルギーは化合物133の発光、励起錯体の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132及び化合物133の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
本構成例において、励起錯体及び化合物133がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。
<発光層の構成例5>
図5(A)は発光層130に4種の材料を用いた場合について示している。図5(A)において発光層130は化合物131、化合物132、化合物133、化合物134と、を有する。本発明の一態様において、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133が燐光性材料である場合について説明する。化合物132は、蛍光発光を呈するゲスト材料である。また、化合物131は化合物134と励起錯体を形成する有機化合物である。
また、発光層130における化合物131と、化合物132と、化合物133と、化合物134のエネルギー準位の相関を図5(B)に示す。なお、図5(B)における表記及び符号は、以下の通りであり、その他の表記及び符号は図4(C)に示す表記及び符号と同様である。
・Comp(134):化合物134
・SC4:化合物134のS1準位
・TC4:化合物134のT1準位
本構成例に示す、本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する化合物131と化合物134とで励起錯体を形成する。励起錯体のS1準位(SE)と励起錯体のT1準位(TE)とは、互いに隣接したエネルギー準位となる(図5(B) ルートA12参照)。
上記の過程によって生成した励起錯体は、上述の通り、励起エネルギーを失うことによって励起錯体を形成していた2種類の物質は、また元の別々の物質として振る舞う。
励起錯体の励起エネルギー準位(SEおよびTE)は、励起錯体を形成する各物質(化合物131および化合物134)のS1準位(SC1およびSC4)より低くなるため、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光素子150の駆動電圧を低減することができる。
ここで、化合物133は燐光性材料であると、一重項状態と三重項状態との間の項間交差が許容される。そのため、励起錯体が有する一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が速やかに化合物133へと移動する(ルートA13)。このとき、TE≧TC3であると好ましい。また、化合物133が有する三重項励起エネルギーを効率良く化合物132の一重項励起エネルギーへと変換することができる(ルートA14)。ここで、図5(B)に示すように、TE≧TC3≧SGであると、化合物133の励起エネルギーが一重項励起エネルギーとして効率良くゲスト材料である化合物132へ移動するため好ましい。具体的には、化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをTC3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、TC3≧SGであることが好ましい。また、化合物133の発光スペクトルのピーク波長は、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。ルートA14において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。ここで、ルートA14の過程は化合物133の発光の過程(化合物133のT1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物133が有する三重項励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物133からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。
このとき、化合物131と化合物134との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔輸送性を有する化合物であり、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、より好ましい。
化合物133がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131、化合物133及び化合物134の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって化合物133の励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132、化合物133及び化合物134の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
また、効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、化合物131及び化合物134のうち一方のHOMO準位が他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが好ましい。
また、化合物131と化合物134とのエネルギー準位の相関は、図5(B)に限定されない。すなわち、化合物131の一重項励起エネルギー準位(SC1)は、化合物134の一重項励起エネルギー準位(SC4)より高くても低くてもよい。また、化合物131の三重項励起エネルギー準位(TC1)は、化合物134の三重項励起エネルギー準位(TC4)より高くても低くてもよい。
また、本発明の一態様における発光素子において、化合物131はπ電子不足骨格を有すると好ましい。該構成とすることで、化合物131のLUMO準位が低くなり、励起錯体の形成に好適となる。
また、本発明の一態様における発光素子において、化合物131はπ電子過剰骨格を有すると好ましい。該構成とすることで、化合物131のHOMO準位が高くなり、励起錯体の形成に好適となる。
ここで、本発明の一態様である発光素子では、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA15で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光素子を得ることができる。
なお、上記に示すルートA12及びA13の過程を、本明細書等においてExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と呼称する場合がある。別言すると、発光層130は、励起錯体から化合物133への励起エネルギーの供与がある。よって、本構成例は、ExTETを利用可能な発光層に保護基を有する蛍光性材料を混合した構成と言うことができる。
<発光層の構成例6>
本構成例では、上述の発光層の構成例5で説明した化合物134にTADF性を有する材料を用いた場合について説明する。
図5(C)は発光層130に4種の材料を用いた場合について示している。図5(C)において発光層130は化合物131、化合物132、化合物133、化合物134と、を有する。本発明の一態様において、化合物133は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。化合物132は、蛍光発光を呈するゲスト材料である。また、化合物131は化合物134と励起錯体を形成する有機化合物である。
ここで、化合物134はTADF材料であるため、励起錯体を形成していない化合物134は、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図5(C) ルートA16)。化合物134が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(図5(C) ルートA17)。このとき、SC4≧SGであると好ましい。ここで、ルートA17の過程は化合物134の発光の過程(化合物134のS1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物134が有する一重項励起エネルギーは化合物134の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物134からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。また、発光層の構成例5で示したように化合物133が有する三重項励起エネルギーを効率良く化合物132の一重項励起エネルギーへと変換することができ(ルートA14)、化合物133からの発光も得ることができる。
化合物133及び化合物134がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131、化合物133及び化合物134の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって化合物133及び化合物134の励起エネルギーは化合物133の発光、化合物134の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132、化合物133及び化合物134の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
具体的には、化合物134の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSC4とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、SC4≧SGであることが好ましい。また、化合物134の発光スペクトルは、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。
先の発光層の構成例と同様に、本発明の一態様の発光素子では、図5(C)中のルートA12乃至ルートA14を経て、三重項励起エネルギーがゲスト材料である化合物132へ移動する経路と、図5(C)中のルートA16及びルートA17を経て化合物132へ移動する経路が存在する。三重項励起エネルギーが蛍光性材料へ移動する経路が複数存在することで、さらに発光効率を高めることができる。ルートA14において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。また、ルートA17において、化合物134はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。
上述のように、本発明の一態様の発光素子は、エネルギー移動の経路によって、多色発光を得ることができる。また、発光層130における化合物132、化合物133及び化合物134の濃度を調整することで、発光色を調整することができる。すなわち、発光層130における化合物132、化合物133及び化合物134の濃度を調整することで、化合物132からの発光強度、化合物133からの発光強度、励起錯体からの発光強度を調整することができる。
<発光層の構成例7>
図6(B)は、本発明の一態様の発光素子150の発光層130におけるエネルギー準位の相関の一例である。図6(A)に示す発光層130は、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133が燐光性材料である場合について説明する。
なお、図6(B)及び後述する図6(C)における表記及び符号は、以下の通りである。
・Comp(131):化合物131
・Comp(133):化合物133
・Guest(132):化合物132
・SC1:化合物131のS1準位
・TC1:化合物131のT1準位
・TC3:化合物133のT1準位
・TG:化合物132のT1準位
・SG:化合物132のS1準位
本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する化合物131において主としてキャリアの再結合が生じることにより、一重項励起子及び三重項励起子が生じる。ここで化合物133は燐光性材料であるため、TC3≦TC1という関係の材料を選択することで、化合物131で生じた一重項及び三重項励起エネルギー双方を化合物133のTC3準位へ移動することができる(図6(B)ルートA18)。なお、一部のキャリアは、化合物133で再結合し得る。
なお、上記構成で用いる燐光性材料はIr、Pt、Os、Ru、Pd等の重原子を含んでいることが好ましい。燐光性材料を化合物133として用いた場合、エネルギードナーの三重項励起エネルギー準位からゲスト材料(エネルギーアクセプター)の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となるため好ましい。よって、化合物133の三重項励起エネルギーをルートA19の過程によってゲスト材料のS1準位(SG)へ移動させることができる。ルートA19において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。この場合、TC3≧SGであると、化合物133の励起エネルギーが効率良くゲスト材料である化合物132の一重項励起状態へ移動するため好ましい。ここで、ルートA19の過程は化合物133の発光の過程(化合物133のT1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物133が有する三重項励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物133からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。
化合物133がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131及び化合物133の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって化合物133の励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132及び化合物133の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
具体的には、化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをTC3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、TC3≧SGであることが好ましい。また、化合物133の発光スペクトルは、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。
ここで、本発明の一態様である発光素子では、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA20で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光素子を得ることができる。
<発光層の構成例8>
図6(C)は、本発明の一態様の発光素子150の発光層130におけるエネルギー準位の相関の一例である。図6(C)に示す発光層130は、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133がTADF性を有する化合物である場合について説明する。
図6(C)における表記及び符号は、以下の通りであり、その他の表記及び符号は図6(B)に示す表記及び符号と同様である。
・SC3:化合物133のS1準位
本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する化合物131において主としてキャリアの再結合が生じることにより、一重項励起子及び三重項励起子が生じる。ここでSC3≦SC1かつTC3≦TC1という関係の材料を選択することで、化合物131で生じた一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギー双方を化合物133のSC3及びTC3準位へ移動することができる(図6(C)ルートA21)。なお、一部のキャリアは、化合物133で再結合し得る。
ここで、化合物133はTADF材料であるため、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図6(C) ルートA22)。また、化合物133が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる(図6(C)ルートA23)。このとき、SC3≧SGであると好ましい。ここで、ルートA23の過程は化合物133の発光の過程(化合物133のS1準位から基底状態への遷移)と競合する。すなわち、化合物133が有する一重項励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光へと変換される。そのため、本発明の一態様の発光素子は化合物133からの発光及び化合物132からの発光を得ることができる。
化合物133がエネルギードナーとして機能するとともに、発光材料としても機能するためには、化合物131及び化合物133の総量に対して化合物132の濃度は0.01wt%以上2wt%以下であると好ましい。該構成とすることによって化合物133の励起エネルギーは化合物133の発光及び化合物132の発光に効率良く変換できるため、効率の良い多色発光素子を得ることができる。また化合物131、化合物132及び化合物133の濃度を調整することによって、発光色を調整することができる。
具体的には、化合物133の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSC3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、SC3≧SGであることが好ましい。また、化合物133の発光スペクトルは、化合物132の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なると好ましい。ルートA21乃至ルートA23の過程を経ることで、発光層130中の三重項励起エネルギーを化合物132の蛍光発光へ変換することができる。ルートA23において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。
ここで、本発明の一態様である発光素子では、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA24で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光素子を得ることができる。
<エネルギー移動機構>
ここで、フェルスター機構と、デクスター機構について説明する。ここでは、励起状態である第1の材料から基底状態である第2の材料への励起エネルギーの供与に関し、第1の材料と第2の材料との分子間のエネルギー移動過程について説明するが、どちらか一方が励起錯体の場合も同様である。
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、第1の材料及び第2の材料の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振動の共鳴現象によって第1の材料が第2の材料にエネルギーを受け渡し、励起状態の第1の材料が基底状態になり、基底状態の第2の材料が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す。
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、第1の材料の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(ν)は、第2の材料のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、第1の材料と第2の材料の分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K2は、第1の材料と第2の材料の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0から4)である。なお、ランダム配向の場合はK2=2/3である。
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、第1の材料と第2の材料が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態の第1の材料の電子と、基底状態の第2の材料との電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数であり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、第1の材料の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、第2の材料の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、第1の材料と第2の材料の分子間距離を表す。
ここで、第1の材料から第2の材料へのエネルギー移動効率φETは、数式(3)で表される。krは、第1の材料の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光)の速度定数を表し、knは、第2の材料の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し、τは、実測される第1の材料の励起状態の寿命を表す。
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)が相対的に小さくなれば良いことがわかる。
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(3)に数式(1)を代入することでτを消去することができる。したがって、フェルスター機構の場合、エネルギー移動効率φETは、第1の材料の励起状態の寿命τに依存しない。また、エネルギー移動効率φETは、発光量子収率φが高い方が良いと言える。
また、第1の材料の発光スペクトルと第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、第2の材料のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意味する。なお、第2の材料における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、第2の材料において三重項励起状態が係わるモル吸光係数は無視できる量である。このことから、フェルスター機構による第1の材料の励起状態から第2の材料への三重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視でき、第2の材料の一重項励起状態へのエネルギー移動過程のみ考慮すればよい。
また、フェルスター機構によるエネルギー移動速度は数式(1)より第1の材料と第2の材料の分子間距離Rの6乗に反比例する。また上述のように、Rが1nm以下ではデクスター機構によるエネルギー移動が優勢となる。そのため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めるためには、分子間距離は1nm以上10nm以下が好ましい。よって、上述の保護基は嵩高くなりすぎないことが求められるため、保護基を構成する炭素数は3以上10以下が好ましい。
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(2)によれば、速度定数kh*→gを大きくするには第1の材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)と第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いことがわかる。したがって、エネルギー移動効率の最適化は、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることによって実現される。
また、数式(3)に数式(2)を代入すると、デクスター機構におけるエネルギー移動効率φETは、τに依存することが分かる。デクスター機構は、電子交換に基づくエネルギー移動過程であるため、第1の材料の一重項励起状態から第2の材料の一重項励起状態へのエネルギー移動と同様に、第1の材料の三重項励起状態から第2の材料の三重項励起状態へのエネルギー移動も生じる。
本発明の一態様の発光素子においては、第2の材料は蛍光性材料であるため、第2の材料の三重項励起状態へのエネルギー移動効率は低いことが好ましい。すなわち、第1の材料から第2の材料へのデクスター機構に基づくエネルギー移動効率は低いことが好ましく、第1の材料から第2の材料へのフェルスター機構に基づくエネルギー移動効率は高いことが好ましい。
また、既に述べたように、フェルスター機構におけるエネルギー移動効率は、第1の材料の励起状態の寿命τに依存しない。一方、デクスター機構におけるエネルギー移動効率は、第1の材料の励起寿命τに依存し、デクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させるためには、第1の材料の励起寿命τは短いことが好ましい。
そこで、本発明の一態様は、第1の材料として励起錯体や燐光性材料、TADF材料を用いる。これらの材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。フェルスター機構のエネルギー移動効率は、エネルギードナーの発光量子収率に依存するため、燐光性材料、励起錯体、あるいはTADF材料のように三重項励起状態のエネルギーを発光に変換できる第1の材料は、その励起エネルギーをフェルスター機構により第2の材料に移動させることができる。一方、本発明の一態様の構成により、第1の材料(励起錯体またはTADF材料)の三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差を促進させ、第1の材料の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることができる。また、第1の材料(燐光性材料または燐光性材料を用いた励起錯体)の三重項励起状態から一重項基底状態への遷移を促進させ、第1の材料の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることができる。その結果、第1の材料の三重項励起状態から蛍光性材料(第2の材料)への三重項励起状態へのデクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させることができる。
また、本発明の一態様の発光素子では、上述の通り、第2の材料として保護基を有する蛍光性材料を用いる。そのため、第1の材料と第2の材料の分子間距離を大きくすることができる。よって、本発明の一態様の発光素子では、第1の材料に三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を、第2の材料に保護基を有する蛍光性材料を用いることによって、デクスター機構によるエネルギー移動効率を低下させることができる。その結果、発光層130における三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制することができ、発光効率の高い発光素子を提供することができる。
<材料>
次に、本発明の一態様に係わる発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
≪発光層≫
発光層130に用いることができる材料について、それぞれ以下に説明する。本発明の一態様の発光素子の発光層には、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有するエネルギーアクセプターと、発光団に保護基を有するエネルギードナーを用いる。三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、TADF性材料や燐光性材料が挙げられる。
エネルギーアクセプターとして機能する化合物132が有する発光団としては、例えばフェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光性材料は蛍光量子収率が高いため好ましい。
また、保護基としては炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基が好ましい。
炭素数1以上10以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられるが、後述する炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基が特に好ましい。なお、該アルキル基はこれらに限定されない。
炭素数3以上10以下のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。該シクロアルキル基はこれらに限定されない。また該シクロアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1乃至7のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基、のような炭素数5乃至7のシクロアルキル基や、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6乃至12のアリール基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。該分岐鎖アルキル基はこれらに限定されない。
炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。該トリアルキルシリル基はこれらに限定されない。
また、該エネルギーアクセプターの分子構造としては、発光団と2つ以上のジアリールアミノ基が結合し、ジアリールアミノ基が有するアリール基のそれぞれが少なくとも一つの保護基を有する構造であると好ましい。該アリール基のそれぞれに少なくとも2つの保護基が結合するとさらに好ましい。保護基の数が多い方が、発光層に該ゲスト材料を用いた場合、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制する効果が大きいためである。なお、分子量の増大を抑制し、昇華性を保つため、ジアリールアミノ基はジフェニルアミノ基であることが好ましい。
また、発光団に2つ以上のアミノ基を結合させることによって、発光色を調整しつつ、量子収率が高い蛍光性材料を得ることができる。また、該アミノ基は発光団に対して対称の位置に結合すると好ましい。該構成とすることによって、高い量子収率を有する蛍光性材料とすることができる。
また、発光団に直接保護基を導入するのではなく、ジアリールアミンが有するアリール基を介して保護基を導入しても構わない。該構成とすることで、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、どの方向からでもホスト材料と発光団との距離を遠ざけることができるため好ましい。また、発光団に直接保護基を結合させない場合、保護基は発光団1つに対して4つ以上導入することが好ましい。
また、図3で示したように、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、発光団すなわち縮合芳香環または縮合複素芳香環の一方の面の直上に位置し、かつ、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、該縮合芳香環または該縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置する構成が好ましい。その具体的な手法としては、以下のような構成が挙げられる。すなわち、発光団である縮合芳香環または縮合複素芳香環が、2以上のジフェニルアミノ基と結合し、該2以上のジフェニルアミノ基中のフェニル基は、それぞれ独立に、3位および5位に保護基を有する。
このような構成とすることで、図3にて示したように、フェニル基上の3位または5位の保護基が、発光団である縮合芳香環または縮合複素芳香環の直上に来るような立体配置を取ることができる。その結果、該縮合芳香環または該縮合複素芳香環の面の上方及び下方を効率良く覆うことができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
以上で述べたようなエネルギーアクセプター材料としては、例えば、下記一般式(G1)または(G2)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
一般式(G1)及び(G2)中、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表し、Ar1乃至Ar6はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基を表し、X1乃至X12はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表し、R1乃至R10はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。
炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、該芳香族炭化水素基はこれらに限定されない。また、該芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1乃至7のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基、のような炭素数5乃至7のシクロアルキル基や、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6乃至12のアリール基等が挙げられる。
一般式(G1)中、炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環は上述の発光団を表し、上述の骨格を用いることができる。また、一般式(G1)及び(G2)中、X1乃至X12は保護基を表す。
また、一般式(G2)では、保護基がアリーレン基を介して発光団であるキナクリドン骨格と結合されている。該構成とすることによって、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。なお、発光団に直接結合する保護基を有していても構わない。
また、該エネルギーアクセプター材料としては、下記一般式(G3)または(G4)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
一般式(G3)及び(G4)中、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表しX1乃至X12はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。
また、保護基がフェニレン基を介して発光団と結合されていると好ましい。該構成とすることによって、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。また、発光団と保護基がフェニレン基を介して結合し、該フェニレン基に2つの保護基が結合される場合、一般式(G3)及び(G4)に示すように、該2つの保護基はフェニレン基に対してメタ位で結合されると好ましい。該構成とすることによって、発光団を効率良く覆うことができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。一般式(G3)で表される有機化合物の一例としては、上述の2tBu-mmtBuDPhA2Anthが挙げられる。すなわち、本発明の一態様において、一般式(G3)は特に好ましい例である。
また、該エネルギーアクセプター材料としては、下記一般式(G5)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
一般式(G5)中、X1乃至X8はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表し、R11乃至R18はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上25以下のアリール基のいずれか一を表す。
炭素数6以上25以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、スピロフルオレニル基等が挙げられる。なお、炭素数6以上25以下のアリール基はこれらに限定されない。なお、該アリール基が置換基を有する場合、該置換基としては、上述の炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基が挙げられる。
アントラセン化合物は発光量子収率が高く、発光団の面積が小さいため、保護基によってアントラセンの面の上方及び下方を効率良く覆うことができる。一般式(G5)で表される有機化合物の一例としては、上述の2tBu-mmtBuDPhA2Anthが挙げられる。
また、一般式(G1)乃至(G5)で挙げられる化合物の一例を以下に構造式(102)乃至(105)及び(200)乃至(284)に示す。なお、一般式(G1)乃至(G5)で挙げられる化合物はこれらに限定されない。また、構造式(102)乃至(105)及び(200)乃至(284)に示す化合物は本発明の一態様の発光素子のゲスト材料に好適に用いることができる。なお、該ゲスト材料はこれらに限定されない。
また、本発明の一態様の発光素子のゲスト材料に好適に用いることができる材料の一例を構造式(100)及び(101)に示す。なお、該ゲスト材料はこれらに限定されない。
化合物133がエネルギードナーとして機能する場合、例えばTADF材料を用いることができる。化合物133のS1準位とT1準位とのエネルギー差は小さいことが好ましく、具体的には0eVより大きく0.2eV以下である。
化合物133は、正孔輸送性を有する骨格と、電子輸送性を有する骨格と、を有することが好ましい。あるいは、化合物133は、π電子過剰骨格または芳香族アミン骨格と、π電子不足骨格と、を有することが好ましい。そうすることで、分子内でドナー-アクセプター型の励起状態を形成しやすくなる。さらに、化合物133の分子内でドナー性とアクセプター性が共に強くなるよう、電子輸送性を有する骨格と、正孔輸送性を有する骨格と、が直接結合する構造を有することが好ましい。あるいは、π電子過剰骨格または芳香族アミン骨格と、π電子不足骨格と、が直接結合する構造を有すると好ましい。分子内でのドナー性とアクセプター性を共に強くすることで、化合物133のHOMOにおける分子軌道が分布する領域と、LUMOにおける分子軌道が分布する領域との重なりを小さくすることができ、化合物133の一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネルギー準位とのエネルギー差を小さくすることが可能となる。また、化合物133の三重項励起エネルギー準位を高いエネルギーに保つことが可能となる。
TADF材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等が挙げられる。
また、一種の材料から構成されるTADF材料としては、π電子過剰骨格及びπ電子不足骨格を有する複素環化合物も用いることができる。具体的には、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起状態の準位と三重項励起状態の準位の差が小さくなるため、特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。
化合物133が三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有さない場合、化合物131と化合物133または化合物131と化合物134の組合せとしては、互いに励起錯体を形成する組み合わせが好ましいが、特に限定はない。一方が電子を輸送する機能を有し、他方が正孔を輸送する機能を有すると好ましい。化合物131としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げられる。
また、以下の正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いることができる。
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
これら正孔輸送性の高い材料として、例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
また、芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14乃至炭素数42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
また、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9-H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)-ベンゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のアミン化合物、カルバゾール化合物、チオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。
電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい材料(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物や金属錯体などを用いることができる。具体的には、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。
例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
化合物133または化合物134としては、化合物131と励起錯体を形成できる材料が好ましい。具体的には、上記で示した正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いることができる。この場合、化合物131と化合物133または化合物131と化合物134とで形成される励起錯体の発光ピークが、化合物132(蛍光性材料)の最も長波長側(低エネルギー側)の吸収帯と重なるように化合物131と化合物133または化合物131と化合物134、および化合物132(蛍光性材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。
また、化合物133としては、燐光性材料を用いることができる。燐光性材料としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられる。また、ポルフィリン配位子を有する白金錯体や有機イリジウム錯体が挙げられ、中でも例えば、イリジウム系オルトメタル錯体等の有機イリジウム錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。この場合、化合物133(燐光性材料)は三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯を有する。また化合物133の発光ピークが、化合物132(蛍光性材料)の最も長波長側(低エネルギー側)の吸収帯と重なるよう化合物133、および化合物132(蛍光性材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。また、化合物133が燐光性材料の場合であっても、化合物131と励起錯体を形成して構わない。励起錯体を形成する場合、燐光性材料は常温で発光する必要はなく、励起錯体を形成した際に常温で発光できればよい。この場合、例えば、Ir(ppz)3などを燐光性材料として用いることができる。
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpptz-dmp)3)、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz)3)、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b)3)、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)3)、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz1-mp)3)、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)3)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi)3)、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmpimpt-Me)3)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:Fir6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Firpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Fir(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率にも優れるため、特に好ましい。
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)3)、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)3)、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(nbppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)2(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq)3)、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)2(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)2(dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq)3)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
また、上述のエネルギードナーとして用いることができる材料としては、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類を挙げることができる。該金属ハロゲン化物ペロブスカイト類は下記一般式(g1)乃至(g3)のいずれかで表すことができる。
(SA)MX3:(g1)
(LA)2(SA)n-1MnX3n+1:(g2)
(PA)(SA)n-1MnX3n+1:(g3)
上記一般式においてMは2価の金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す。
2価の金属イオンとしては具体的には、鉛、スズなどの2価の陽イオンが用いられている。
ハロゲンイオンとしては、具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素などのアニオンが用いられる。
また、nは1乃至10の整数を表しているが、一般式(g2)または一般式(g3)において、nが10よりも大きい場合、その性質は一般式(g1)で表される金属ハロゲン化物ペロブスカイト類に近いものとなる。
また、LAはR30-NH3
+で表されるアンモニウムイオンを表す。
一般式R30-NH3
+で表されるアンモニウムイオンにおいて、R30は炭素数2乃至20のアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基のいずれか1又は炭素数2乃至20のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基と、炭素数1乃至12のアルキレン基、ビニレン基、炭素数6乃至13のアリーレン基及びヘテロアリーレン基の組み合わせからなる基であり、後者の場合はアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は複数連なっていても良く、同じ種類の基が複数個用いられても良い。なお、上記アルキレン基、ビニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基が複数連なっている場合、アルキレン基、ビニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基の総数は35以下であることが好ましい。
また、SAは一価の金属イオンまたはR31-NH3
+で表され、R31が炭素数1乃至6のアルキル基であるアンモニウムイオンを表す。
また、PAは、NH3
+-R32-NH3
+若しくはNH3
+-R33-R34-R35-NH3
+、またはアンモニウムカチオンを有する分岐ポリエチレンイミンの一部または全部を表し、当該部分の価数は+2である。なお、一般式中の電荷はほぼつりあっている。
ここで、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類の電荷は、上記式により材料中すべての部分において厳密に釣り合っているものではなく、材料全体の中性が概ね保たれていれば良い。材料中には局所的に遊離のアンモニウムイオンや遊離のハロゲンイオン、不純物イオンなどその他のイオンなどが存在する場合があり、それらが電荷を中和している場合がある。また、粒子や膜の表面、結晶のグレイン境界などでも局所的に中性が保たれていない場合があり、必ずしもすべての場所において、中性が保たれていなくとも良い。
なお、上記式(g2)における(LA)には例えば、下記一般式(a-1)乃至(a-11)、一般式(b-1)乃至(b-6)で表される物質などを用いることができる。
また、上記一般式(g3)における(PA)は、代表的には下記一般式(c-1)、(c-2)及び(d)のいずれかで表される物質およびアンモニウムカチオンを有する分岐ポリエチレンイミンなどの一部分、または全部を表しており、+2価の電荷を有している。これらポリマーは、複数の単位格子にわたって電荷を中和している場合があり、また、異なる二つのポリマー分子が有する電荷一つずつによって一つの単位格子の電荷が中和されている場合もある。
但し、上記一般式においてR20は炭素数2乃至18のアルキル基を表し、R21、R22およびR23は水素または炭素数1乃至18のアルキル基を表し、R24は下記構造式および一般式(R24-1)乃至(R24-14)を表す。また、R25およびR26はそれぞれ独立に水素または炭素数1乃至6のアルキル基を表す。また、Xは上記(d-1)乃至(d-6)のいずれかの組で表されるモノマーユニットAおよびBの組み合わせを有し、Aがu個、Bがv個含まれている構造を表している。なお、AおよびBの並び順は限定されない。また、mおよびlはそれぞれ独立に0乃至12の整数であり、tは1乃至18の整数である。また、uは0乃至17の整数、vは1乃至18の整数であり、u+vは1乃至18の整数である。
なお、これらは例示であり、(LA)、(PA)として用いることができる物質はこれらに限られることはない。
一般式(g1)で表される(SA)MX3の組成を有する3次元構造の金属ハロゲン化物ペロブスカイト類では、中心に金属原子Mを置き6個の頂点にハロゲン原子を配置した正八面体構造が各頂点のハロゲン原子を共有して3次元に配列することで骨格を形成している。この各頂点にハロゲン原子を有する正八面体の構造ユニットをペロブスカイトユニットと呼ぶことにする。このペロブスカイトユニットが孤立して存在するゼロ次元構造体、頂点のハロゲン原子を介して1次元的に連結した線状構造体、2次元的に連結したシート状構造体、3次元的に連結した構造体があり、更にペロブスカイトユニットが2次元的に連結したシート状構造体が複数層積層して形成される複雑な2次元構造体もある。更により複雑な構造体もある。これらのペロブスカイトユニットを有するすべての構造体の総称として、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類と定義して用いる。
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
また、発光層130において、化合物131、化合物132、化合物133及び化合物134以外の材料(化合物135)を有していても良い。その場合、化合物131及び化合物133(または化合物134)が効率よく励起錯体を形成するためには、化合物131及び化合物133(または化合物134)のうち一方のHOMO準位が発光層130中の材料のうち最も高いHOMO準位を有し、他方のLUMO準位が発光層130中の材料のうち最も低いLUMO準位を有すると好ましい。そのようなエネルギー準位の相関とすることで、化合物131と化合物135とで励起錯体を形成する反応を抑制することができる。
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物133(または化合物134)が電子輸送性を有する場合、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位および化合物135のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物133のLUMO準位が化合物131のLUMO準位および化合物135のLUMO準位より低いことが好ましい。この場合、化合物135のLUMO準位は、化合物131のLUMO準位より高くても低くてもよい。また、化合物135のHOMO準位は、化合物133のHOMO準位より高くても低くてもよい。
発光層130に用いることが可能な材料(化合物135)としては、特に限定はないが、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記化合物131及び化合物132のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光層130へ正孔と電子を注入する機能を有する。電極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体などを用いて形成することができる。金属としてはアルミニウム(Al)が典型例であり、その他、銀(Ag)、タングステン、クロム、モリブデン、銅、チタンなどの遷移金属、リチウム(Li)やセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム(Mg)などの第2族金属を用いることができる。遷移金属としてイッテルビウム(Yb)などの希土類金属を用いても良い。合金としては、上記金属を含む合金を使用することができ、例えばMgAg、AlLiなどが挙げられる。導電性化合物としては、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)、タングステン及び亜鉛を含有したインジウム酸化物などの金属酸化物が挙げられる。導電性化合物としてグラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。上述したように、これらの材料の複数を積層することによって電極101及び電極102の一方または双方を形成しても良い。
また、発光層130から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方を通して取り出される。したがって、電極101及び電極102の少なくとも一つは可視光を透過する機能を有する。光を透過する機能を有する導電性材料としては、可視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。また、光を取り出す方の電極は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。光を取り出す方の電極に金属や合金などの光透過性の低い材料を用いる場合には、可視光を透過できる程度の厚さ(例えば、1nmから10nmの厚さ)で電極101及び電極102の一方または双方を形成すればよい。
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する電極には、可視光を透過する機能を有し、且つ導電性を有する材料を用いればよく、例えば上記のようなITOに代表される酸化物導電体層に加えて、酸化物半導体層、または有機物を含む有機導電体層を含む。有機物を含む有機導電体層としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を含む層、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を含む層等が挙げられる。また、透明導電層の抵抗率としては、好ましくは1×105Ω・cm以下、さらに好ましくは1×104Ω・cm以下である。
また、電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニレンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)等の電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。また、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミンおよびカルバゾール誘導体を用いることができる。また、芳香族炭化水素およびスチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例示した材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
上記正孔輸送性材料として、正孔注入層111の材料として例示した材料を用いることができる。また、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用いることができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。電子キャリアの移動を制御する層は、上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であり、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、ノズルプリント法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
なお、量子ドットとしては、コロイド状量子ドット、合金型量子ドット、コア・シェル型量子ドット、コア型量子ドット、などを用いてもよい。また、2族と16族、13族と15族、13族と17族、11族と17族、または14族と15族の元素グループを含む量子ドットを用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドットを用いてもよい。
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。
また、発光層に用いることができる高分子化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](略称:MEH-PPV)、ポリ(2,5-ジオクチル-1,4-フェニレンビニレン)等のポリフェニレンビニレン(PPV)誘導体、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(略称:PF8)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,8-ジイル)](略称:F8BT)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(2,2’-ビチオフェン-5,5’-ジイル)](略称F8T2)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニレン)-alt-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-alt-(2,5-ジメチル-1,4-フェニレン)]等のポリフルオレン誘導体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(略称:P3HT)等のポリアルキルチオフェン(PAT)誘導体、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。また、これらの高分子化合物や、PVK、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](略称:PTAA)等の高分子化合物に、発光性の化合物をドープして発光層に用いてもよい。発光性の化合物としては、先に挙げた発光性の化合物を用いることができる。
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電極102側から順に積層しても良い。
なお、本発明の一態様に係る発光素子を形成できる基板としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
例えば、本明細書等においては、様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る。基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含むセルロースナノファイバ(CNF)や紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよい。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと電気的に接続された電極上に発光素子150を作製してもよい。これにより、FETによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子に好適に用いることのできる有機化合物の合成法の一例について、一般式(G1)及び(G2)で表される有機化合物を例に説明する。
<一般式(G1)で表される有機化合物の合成方法>
上記一般式(G1)で表される有機化合物は、種々の反応を適用した合成方法により合成することができる。例えば、下記に示す合成スキーム(S-1)および(S-2)により合成することができる。化合物1と、アリールアミン(化合物2)と、アリールアミン(化合物3)とをカップリングすることにより、ジアミン化合物(化合物4)を得る。
続いて、ジアミン化合物(化合物4)と、ハロゲン化アリール(化合物5)と、ハロゲン化アリール(化合物6)とをカップリングすることにより、上記一般式(G1)で表される有機化合物を得ることができる。
なお、上記合成スキーム(S-1)および(S-2)において、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表し、Ar1乃至Ar4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基を表し、X1乃至X8はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。該縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、クリセン、フェナントレン、スチルベン、アクリドン、フェノキサジン、フェノチアジン等が挙げられる。特にアントラセン、ピレン、クマリン、キナクリドン、ペリレン、テトラセン、ナフトビスベンゾフランであると好ましい。
なお、上記合成スキーム(S-1)及び(S-2)において、パラジウム触媒を用いたブッフバルト・ハートウィッグ反応を行う場合、X10乃至X13はハロゲン基又はトリフラート基を表し、ハロゲンとしては、ヨウ素又は臭素又は塩素が好ましい。当該反応では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等のパラジウム化合物と、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル等の配位子を用いることができる。また、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。また、溶媒として、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。なお、当該反応で用いることができる試薬類は、これらの試薬類に限られるものではない。
また、上記合成スキーム(S-1)及び(S-2)において行う反応は、ブッフバルト・ハートウィッグ反応に限られるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いたカップリング反応、銅、又は銅化合物を用いたウルマン反応等を用いることができる。
上記合成スキーム(S-1)において、化合物2と化合物3とが異なる構造である場合、化合物1と化合物2とを先に反応させてカップリング体とし、得られたカップリング体と、化合物3とを反応させることが好ましい。なお、化合物1に対して、化合物2及び化合物3を段階的に反応させる場合は、化合物1は、ジハロゲン体であることが好ましく、X10及びX11は異なるハロゲンを用いて選択的に1つずつアミノ化反応を行うことが好ましい。
さらに合成スキーム(S-2)において、化合物5と化合物6とが異なる構造である場合、化合物4と化合物5とをまず反応させてカップリング体を得てから、さらに得られたカップリング体と化合物6とを反応させることが好ましい。
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す発光素子の構成と異なる構成の発光素子について、図7を用いて、以下説明を行う。なお、図7において、図1(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
<発光素子の構成例2>
図7は、発光素子250の断面模式図である。図7に示す発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(発光ユニット106及び発光ユニット108)を有する。複数の発光ユニットのうちいずれか一つの発光ユニットは、図1(A)に示した、EL層100と同様な構成を有すると好ましい。つまり、図1(A)で示した発光素子150は、1つの発光ユニットを有し、発光素子250は、複数の発光ユニットを有すると好ましい。なお、発光素子250において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子250の構成としては、逆であっても構わない。
また、図7に示す発光素子250において、発光ユニット106と発光ユニット108とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット108に、EL層100と同様な構成を用いると好ましい。
また、発光素子250は、発光層120と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層120の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層170の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
発光素子250は発光ユニット106及び発光ユニット108が有するいずれかの層に本発明の一態様に係る化合物が含まれていればよい。なお、該化合物が含まれる層として好ましくは発光層120または発光層170である。
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加された構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用いればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正孔輸送層を設けない構成であっても良い。あるいは、発光ユニットの陰極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの電子注入層または電子輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには電子注入層または電子輸送層を設けない構成であっても良い。
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電膜を含む層とを組み合わせて形成してもよい。
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図7において、電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注入する。
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的には、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率であっても機能する。
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
また、図7においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。発光素子250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる。
なお、上記各構成において、発光ユニット106及び発光ユニット108、に用いるゲスト材料が呈する発光色としては、互いに同じであっても異なっていてもよい。発光ユニット106及び発光ユニット108、で互いに同じ色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250は少ない電流値で高い発光輝度を呈する発光素子となり好ましい。また、発光ユニット106及び発光ユニット108、で互いに異なる色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250は多色発光を呈する発光素子となり好ましい。この場合、発光層120及び発光層170のいずれか一方もしくは双方、に発光波長の異なる複数の発光材料を用いることによって、発光素子250が呈する発光スペクトルは異なる発光ピークを有する発光が合成された光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる。
上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層120及び発光層170、の光を互いに補色の関係とすることによって、白色発光を得ることができる。特に、演色性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色と青色とを有する発光、になるようゲスト材料を選択することが好適である。
発光層120及び発光層170の一方または両方に実施の形態1で示した発光層130の構成を用いると好ましい。該構成にすることによって、発光効率及び信頼性が良好な発光素子を得ることができる。発光層130に含まれるゲスト材料は蛍光性材料である。そのため、発光層120及び発光層170の一方または両方に実施の形態1で示した発光層130の構成を用いることで、高効率、高信頼性を有する発光素子を得ることができる。
また、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子の場合、それぞれの発光ユニットに用いるゲスト材料が呈する発光色は、互いに同じであっても異なっていてもよい。同色の発光を呈する発光ユニットを複数有する場合、この複数の発光ユニットが呈する発光色は、その他の色と比較して、少ない電流値で高い発光輝度を得ることができる。このような構成は、発光色の調整に好適に用いることができる。特に、発光効率が異なり且つ、異なる発光色を呈するゲスト材料を用いる場合に好適である。例えば、3層の発光ユニットを有する場合、同色の蛍光性材料を有する発光ユニットを2層、該蛍光性材料とは異なる発光色を呈する燐光材料を有する発光ユニットを1層とすることで、蛍光発光と燐光発光の発光強度を調整することができる。すなわち、発光ユニットの数によって発光色の強度を調整可能である。
このような蛍光発光ユニットを2層、燐光発光ユニットを1層有する発光素子の場合、青色蛍光性材料を含む発光ユニットを2層及び黄色燐光材料を含む発光ユニットを1層含有する発光素子、青色蛍光性材料を含む発光ユニットを2層及び、赤燐光材料及び緑燐光材料を含む発光ユニットを1層有する発光素子または、青色蛍光性材料を含む発光ユニットを2層及び赤燐光材料、黄色燐光材料及び緑燐光材料を含む発光ユニットを1層有する発光素子、であると効率良く白色発光が得られるため好ましい。このように本発明の一態様の発光素子は、燐光発光ユニットと適宜組み合わせることができる。
また、発光層120または発光層170の少なくとも一つを層状にさらに分割し、当該分割した層ごとに異なる発光材料を含有させるようにしても良い。すなわち、発光層120、または発光層170の少なくとも一つが2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する材料を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する材料を用いる構成などがある。この場合、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料あっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。互いに異なる色の発光を呈する機能を有する複数の発光材料を有する構成により、三原色や、4色以上の発光色からなる演色性の高い白色発光を得ることもできる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光素子を用いた発光装置について、図8(A)及び図8(B)を用いて説明する。
図8(A)は、発光装置を示す上面図、図8(B)は図8(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース側駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート側駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB:Printed Wiring Board)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態を含むものとする。
次に、上記発光装置の断面構造について図8(B)を用いて説明する。素子基板610上に駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と画素部602中の一つの画素が示されている。
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は種々のCMOS回路、PMOS回路、NMOS回路で形成しても良い。また本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく、外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用TFT611と電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆うように絶縁物614が形成されている。絶縁物614は、ポジ型の感光性樹脂膜を用いることにより形成することができる。
また、絶縁物614上に形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料として感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲面をもたせることが好ましい。該曲面の曲率半径は0.2μm以上0.3μm以下が好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型、ポジ型、いずれの感光材料も使用することができる。
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617により、発光素子618が形成されている。発光素子618は実施の形態1及び実施の形態2の構成を有する発光素子であると好ましい。なお、画素部は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1及び実施の形態2で説明した構成を有する発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、樹脂若しくは乾燥材又はその両方で充填される場合もある。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光素子を用いた発光装置を得ることができる。
<発光装置の構成例1>
図9には発光装置の一例として、白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)を形成した発光装置の例を示す。
図9(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1026、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032、赤色画素1044R、緑色画素1044G、青色画素1044B、白色画素1044Wなどが図示されている。
また、図9(A)、図9(B)には着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、図9(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
図9(B)では赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034Bをゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。図9(B)に示すように着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられても良い。
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。
<発光装置の構成例2>
トップエミッション型の発光装置の断面図を図10(A)及び図10(B)に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。TFTと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜1021と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
発光素子の下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、図10(A)及び図10(B)のようなトップエミッション型の発光装置である場合、下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bは反射電極とすることが好ましい。なお、第2の電極1029は光を反射する機能と、光を透過する機能を有すると好ましい。また、第2の電極1029と下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bとの間でマイクロキャビティ構造を適用し特定波長の光を増幅する機能を有すると好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態1及び実施の形態3で説明したような構成とし、白色の発光が得られるような素子構造とする。
図9(A)、図9(B)、図10(A)及び図10(B)において、白色の発光が得られるEL層の構成としては、発光層を複数層用いること、複数の発光ユニットを用いることなどにより実現すればよい。なお、白色発光を得る構成はこれらに限られない。
図10(A)及び図10(B)のようなトップエミッション構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマトリックス)1030を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層(ブラックマトリックス)1035はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
また、図10(A)では赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行う構成を示したが、図10(B)に示すように、赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行っても構わない。また、フルカラー表示を行う構成はこれらに限定されない。例えば、また、赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
本発明の一態様に係る発光素子は、ゲスト材料として蛍光性材料を用いる。蛍光性材料は燐光材料と比較し、スペクトルがシャープであるため、色純度が高い発光を得ることができる。そのため、本実施の形態に示す発光装置に該発光素子を用いることによって、色再現性が高い発光装置を得ることができる。
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光素子を用いた発光装置を得ることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器及び表示装置について説明する。
本発明の一態様によって、平面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器及び表示装置を作製できる。また、本発明の一態様により、曲面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器及び表示装置を作製できる。また、上述のように色再現性が高い発光素子を得ることができる。
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
図11(A)、(B)に示す携帯情報端末900は、筐体901、筐体902、表示部903、及びヒンジ部905等を有する。
筐体901と筐体902は、ヒンジ部905で連結されている。携帯情報端末900は、折り畳んだ状態(図11(A))から、図11(B)に示すように展開させることができる。これにより、持ち運ぶ際には可搬性に優れ、使用するときには大きな表示領域により、視認性に優れる。
携帯情報端末900には、ヒンジ部905により連結された筐体901と筐体902に亘って、フレキシブルな表示部903が設けられている。
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部903に用いることができる。これにより、高信頼性を有する携帯情報端末を作製することができる。
表示部903は、文書情報、静止画像、及び動画像等のうち少なくとも一つを表示することができる。表示部に文書情報を表示させる場合、携帯情報端末900を電子書籍端末として用いることができる。
携帯情報端末900を展開すると、表示部903が曲率半径が大きい状態で保持される。例えば、曲率半径1mm以上50mm以下、好ましくは5mm以上30mm以下に湾曲した部分を含んで、表示部903が保持される。表示部903の一部は、筐体901から筐体902にかけて、連続的に画素が配置され、曲面状の表示を行うことができる。
表示部903は、タッチパネルとして機能し、指やスタイラスなどにより操作することができる。
表示部903は、一つのフレキシブルディスプレイで構成されていることが好ましい。これにより、筐体901と筐体902の間で途切れることのない連続した表示を行うことができる。なお、筐体901と筐体902のそれぞれに、ディスプレイが設けられる構成としてもよい。
ヒンジ部905は、携帯情報端末900を展開したときに、筐体901と筐体902との角度が所定の角度よりも大きい角度にならないように、ロック機構を有することが好ましい。例えば、ロックがかかる(それ以上に開かない)角度は、90度以上180度未満であることが好ましく、代表的には、90度、120度、135度、150度、または175度などとすることができる。これにより、携帯情報端末900の利便性、安全性、及び信頼性を高めることができる。
ヒンジ部905がロック機構を有すると、表示部903に無理な力がかかることなく、表示部903が破損することを防ぐことができる。そのため、信頼性の高い携帯情報端末を実現できる。
筐体901及び筐体902は、電源ボタン、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク等を有していてもよい。
筐体901または筐体902のいずれか一方には、無線通信モジュールが設けられ、インターネットやLAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)などのコンピュータネットワークを介して、データを送受信することが可能である。
図11(C)に示す携帯情報端末910は、筐体911、表示部912、操作ボタン913、外部接続ポート914、スピーカ915、マイク916、カメラ917等を有する。
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部912に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
携帯情報端末910は、表示部912にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部912に触れることで行うことができる。
また、操作ボタン913の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部912に表示される画像の種類の切り替えを行うことができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
また、携帯情報端末910の内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯情報端末910の向き(縦か横か)を判断して、表示部912の画面表示の向きを自動的に切り替えることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部912に触れること、操作ボタン913の操作、またはマイク916を用いた音声入力等により行うこともできる。
携帯情報端末910は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。携帯情報端末910は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、動画再生、インターネット通信、ゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
図11(D)に示すカメラ920は、筐体921、表示部922、操作ボタン923、シャッターボタン924等を有する。またカメラ920には、着脱可能なレンズ926が取り付けられている。
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部922に用いることができる。これにより、高信頼性を有するカメラを作製することができる。
ここではカメラ920を、レンズ926を筐体921から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ926と筐体921とが一体となっていてもよい。
カメラ920は、シャッターボタン924を押すことにより、静止画または動画を撮像することができる。また、表示部922はタッチパネルとしての機能を有し、表示部922をタッチすることにより撮像することも可能である。
なお、カメラ920は、ストロボ装置や、ビューファインダーなどを別途装着することができる。または、これらが筐体921に組み込まれていてもよい。
図12(A)は、掃除ロボットの一例を示す模式図である。
掃除ロボット5100は、上面に配置されたディスプレイ5101、側面に配置された複数のカメラ5102、ブラシ5103、操作ボタン5104を有する。また図示されていないが、掃除ロボット5100の下面には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット5100は、その他に赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを備えている。また、掃除ロボット5100は、無線による通信手段を備えている。
掃除ロボット5100は自走し、ゴミ5120を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
また、掃除ロボット5100はカメラ5102が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ5103に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ5103の回転を止めることができる。
ディスプレイ5101には、バッテリーの残量や、吸引したゴミの量などを表示することができる。掃除ロボット5100が走行した経路をディスプレイ5101に表示させてもよい。また、ディスプレイ5101をタッチパネルとし、操作ボタン5104をディスプレイ5101に設けてもよい。
掃除ロボット5100は、スマートフォンなどの携帯電子機器5140と通信することができる。カメラ5102が撮影した画像は、携帯電子機器5140に表示させることができる。そのため、掃除ロボット5100の持ち主は、外出先からでも、部屋の様子を知ることができる。また、ディスプレイ5101の表示をスマートフォンなどの携帯電子機器5140で確認することもできる。
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ5101に用いることができる。
図12(B)に示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106、障害物センサ2107および移動機構2108を備える。
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、ディスプレイ2105は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット2100の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、移動機構2108を用いてロボット2100が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ2105に用いることができる。
図12(C)はゴーグル型ディスプレイの一例を表す図である。ゴーグル型ディスプレイは、例えば、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー5005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ5007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、第2の表示部5002、支持部5012、イヤホン5013等を有する。
本発明の一態様の発光装置は表示部5001および第2の表示部5002に用いることができる。
また、図13(A)、(B)に、折りたたみ可能な携帯情報端末5150を示す。折りたたみ可能な携帯情報端末5150は筐体5151、表示領域5152および屈曲部5153を有している。図13(A)に展開した状態の携帯情報端末5150を示す。図13(B)に折りたたんだ状態の携帯情報端末5150を示す。携帯情報端末5150は、大きな表示領域5152を有するにも関わらず、折りたためばコンパクトで可搬性に優れる。
表示領域5152は屈曲部5153により半分に折りたたむことができる。屈曲部5153は伸縮可能な部材と複数の支持部材とで構成されており、折りたたむ場合は、伸縮可能な部材が伸びて、屈曲部5153は2mm以上、好ましくは5mm以上の曲率半径を有して折りたたまれる。
なお、表示領域5152は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。本発明の一態様の発光装置を表示領域5152に用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を様々な照明装置に適用する一例について、図14を用いて説明する。本発明の一態様である発光素子を用いることで、発光効率が良好な、信頼性の高い照明装置を作製できる。
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
また、本発明の一態様の発光素子を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
図14は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成することもできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を適用して照明装置及び電子機器を得ることができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の照明装置及び電子機器に適用することが可能である。
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表1に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。
<発光素子の作製>
以下に、本実施例で作製した発光素子の作製方法を示す。
≪比較発光素子1の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン(MoO3)と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が1:0.5になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、PCCPを厚さが20nmになるように蒸着した。
次に、正孔輸送層112上に発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(Mptz1-mp)3と、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(Mptz1-mp)3)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。発光層130においては、Ir(Mptz1-mp)3がIrを有する燐光性材料であり、4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3は励起錯体を形成する組合せである。
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが20nmになるよう、及びNBPhenの厚さが10nmになるよう、順次蒸着した。次に、電子輸送層118上に、電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸着した。
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子1を封止した。具体的には、ガラス基板に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し、該ガラス基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子1を得た。
≪発光素子2の作製≫
発光素子2は先に示す比較発光素子1と、発光層130の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子1と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表1に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。なお、発光素子2の発光層130中、構造式(100)で表される有機化合物である、2-tert-ブチル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-tert-ブチルフェニル)-9,10-アントラセンジアミン(略称:2tBu-ptBuDPhA2Anth)が発光団の周りに保護基を有するゲスト材料である。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子1及び発光素子2の特性を測定した。輝度およびCIE色度の測定には色彩輝度計(トプコン社製、BM-5A)を用い、電界発光スペクトルの測定にはマルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、PMA-11)を用いた。
比較発光素子1及び発光素子2の外部量子効率-輝度特性を図15に示す。また、比較発光素子1及び発光素子2に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図16にそれぞれ示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。なお、図16には発光素子2のゲスト材料である、2tBu-ptBuDPhA2Anthのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルを合わせて示す。
なお、2tBu-ptBuDPhA2Anthのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用いた。図16に示す発光スペクトル及び吸収スペクトルは、2tBu-ptBuDPhA2Anthのトルエン溶液の各スペクトルから、トルエンのみを石英セルに入れて測定した各スペクトルを差し引いたスペクトルである。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子1及び発光素子2の素子特性を表2に示す。
図16に示すように、比較発光素子1の発光スペクトルは、ピーク波長が502nmであり、半値幅が91nmであった。これは、4,6mCzP2Pm及びIr(Mptz1-mp)3それぞれから得られる発光スペクトルと異なるため、比較発光素子1から得られる発光は4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3から形成される励起錯体の発光であることが分かった。また、発光素子2の発光スペクトルは、ピーク波長が524nmであり、半値幅が67nmであった。発光素子2の発光スペクトルは、主として2tBu-ptBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光であるが、図16に示すように、発光素子2の発光スペクトルは、2tBu-ptBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。
ここで、発光素子2の発光スペクトルは440nm付近から470nm付近に2tBu-ptBuDPhA2Anthとは異なる発光を含んでいる。発光素子2は発光を呈する材料として4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3との励起錯体及びゲスト材料である2tBu-ptBuDPhA2Anthを含んでいる。また、440nm付近から470nm付近の発光は、図16より4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3との励起錯体の発光にも含まれている。よって、上述及び図16より発光素子2からは該励起錯体と該ゲスト材料双方からの発光を得られていることが分かった。以上より本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。また、図4(C)に示したように、励起錯体が有する励起エネルギーは励起錯体の発光と、ゲスト材料の発光に寄与することができる。
発光素子2は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図15及び表2で示すように、外部量子効率25%を超える非常に高い発光効率を示した。本結果より本発明の一態様の発光素子では、発光団の周囲に保護基を有する蛍光性材料を用いるため、三重項励起子の無放射失活が抑制され、一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーの双方が蛍光性材料及び励起錯体の発光に効率良く変換されていると言える。
一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成する一重項励起子の生成確率が最大で25%であるため、外部への光取り出し効率を30%とした場合、蛍光発光素子の外部量子効率は、最大で7.5%となる。しかし、発光素子2においては、外部量子効率が7.5%より高い効率が得られている。これは、一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成した一重項励起子に由来する発光に加えて、三重項励起子からのエネルギー移動に由来する発光、または励起錯体における逆項間交差によって三重項励起子から生成した一重項励起子に由来する発光が蛍光性材料より得られているためである。すなわち、発光素子2はExEFを利用した発光素子である。
<CV測定結果>
次に、各発光素子の発光層に用いた、4,6mCzP2Pm及びIr(MPtz1-mp)3の電気化学的特性(酸化反応特性および還元反応特性)をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定した。測定方法及び算出方法を以下に示す。
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20乃至25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
CV測定の結果、4,6mCzP2Pmの酸化電位は0.95V、還元電位は-2.06Vであった。また、CV測定より算出した4,6mCzP2PmのHOMO準位は-5.89eV、LUMO準位は-2.88eVであった。また、Ir(Mptz1-mp)3の酸化電位は0.49V、還元電位は-3.17Vであった。また、CV測定より算出したIr(Mptz1-mp)3のHOMO準位は-5.39eV、LUMO準位は-1.77eVであった。
以上のように、4,6mCzP2PmのLUMO準位は、Ir(Mptz1-mp)3のLUMO準位より低く、Ir(Mptz1-mp)3のHOMO準位は、4,6mCzP2PmのHOMO準位より高い。そのため、発光層に該化合物を用いた場合、電子および正孔が、効率よく4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3にそれぞれ注入され、4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3とで励起錯体を形成することができる。
また図16より、2tBu-ptBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と該励起錯体の発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子2は上述の励起錯体の励起エネルギーを受け取り発光することができる。
なお図16より4,6mCzP2PmとIr(Mptz1-mp)3との励起錯体から得られる発光スペクトルは2tBu-ptBuDPhA2Anthから得られる発光スペクトルよりも短波長側にピークを有する。そのため、該励起錯体が有する励起エネルギーは効率良く2tBu-ptBuDPhA2Anthへエネルギー移動することができる。よって本発明の一態様によって、発光効率が良好な多色発光素子を作製することができる。
<発光素子の信頼性測定>
次に、比較発光素子1及び発光素子2の2.0mAにおける定電流駆動試験を行った。その結果を図17に示す。図17より蛍光性材料を発光層に有する発光素子2の方が比較発光素子1よりも信頼性が良好であることが分かった。これは、蛍光性材料を加えることによって、発光層内の励起エネルギーを効率良く発光に変換できていることを示唆している。蛍光性材料は発光速度が速いため、発光層中の励起状態の分子は、蛍光性材料に励起エネルギーを受け渡すことで、速やかに基底状態へ戻ることができる。そのため、蛍光性材料を加えることによって、輝度劣化の要因となり得る、分子の劣化や消光因子の発生を抑制することができる。三重項増感素子において、一般的な蛍光材料を用いると、発光層中の三重項励起子が失活してしまい、発光効率が良好かつ信頼性も良好な発光素子を作製することは困難である。しかし、本発明の一態様の発光素子では、発光団の周囲に保護基を有する蛍光性材料を用いるため、三重項励起子の失活を抑制できる。そのため、高効率かつ高信頼性の発光素子を作製することができる。
以上より本発明の一態様の発光素子によって、高効率、高信頼性を有する多色発光素子を提供することができる。
本実施例では、先の実施例とは異なる本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表3に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。
<発光素子の作製>
以下に、本実施例で作製した発光素子の作製方法を示す。
≪比較発光素子3の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン(MoO3)と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が1:0.5になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、PCCPを厚さが20nmになるように蒸着した。
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPと、Firpicと、を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Firpic)が0.5:0.5:0.1、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。続いて、発光層130(1)上に発光層130(2)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPと、Firpicと、を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Firpic)が0.8:0.2:0.1、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが20nmになるよう、及びNBPhenの厚さが10nmになるよう、順次蒸着した。次に、電子輸送層118上に、電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸着した。
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子3を封止した。具体的には、ガラス基板に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し、該ガラス基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子3を得た。
≪発光素子4、比較発光素子5及び発光素子6の作製≫
発光素子4の作製工程は、先に示す比較発光素子3の作製工程と発光層130が、比較発光素子5及び発光素子6の作製工程は比較発光素子3の作製工程と正孔輸送層112及び発光層130が異なり、それ以外の工程は比較発光素子3と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表3に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。
比較発光素子3及び比較発光素子5は発光層130に蛍光性材料を有さないが、発光素子4及び発光素子6は保護基を有する蛍光性材料を有している。また、本実施例では、4,6mCzP2PmとPCCPとが励起錯体を形成する組合せであり、Firpic及びIr(Fppy-iPr)3がIrを有する燐光性材料である。よって、発光素子4及び発光素子6では励起錯体または燐光性材料がエネルギードナーとなるため、三重項励起エネルギーを蛍光発光に変換できる発光素子である。また、発光素子4及び発光素子6の発光層は、ExTETを利用可能な発光層に蛍光性材料を加えた発光層であるともいえる。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子3、発光素子4、比較発光素子5及び発光素子6の素子特性を測定した。なお、測定方法は実施例1と同様である。
比較発光素子3、発光素子4、比較発光素子5及び発光素子6の外部量子効率-輝度特性を図18に示す。また、比較発光素子3及び発光素子4に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図19に示す。同様に、比較発光素子5及び発光素子6にそれぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図20に示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。なお図19及び図20には、発光素子4及び発光素子6のゲスト材料である、2tBu-ptBuDPhA2Anthのトルエン溶液の発光と吸収スペクトルを合わせて示す。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子3、発光素子4、比較発光素子5及び発光素子6の素子特性を表4に示す。
図19に示すように、比較発光素子3の発光スペクトルは、ピーク波長が473nm及び501nmであり、半値幅が72nmであった。これは、Firpicに由来する発光である。また、発光素子4の発光スペクトルは、ピーク波長が527nmであり、半値幅が69nmであった。発光素子4の発光スペクトルは、主として2tBu-ptBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光であるが、図19に示すように、発光素子4の発光スペクトルは、2tBu-ptBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。実施例1に示した発光素子2と同様に、発光素子4から得られる発光スペクトルには、2tBu-ptBuDPhA2Anthの発光に加えてエネルギードナーである、Firpicの発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。また、図5(B)に示したように、Ir錯体であるFirpicが有する励起エネルギーはFirpicの発光と、ゲスト材料の発光に寄与することができる。
図20に示すように、比較発光素子5の発光スペクトルは、ピーク波長が482nm及び507nmであり、半値幅が65nmであった。これは、Ir(Fppy-iPr)3に由来する発光である。また、発光素子6の発光スペクトルは、ピーク波長が524nmであり、半値幅が68nmであった。発光素子6の発光スペクトルは、主として2tBu-ptBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光であるが、図20に示すように、発光素子6の発光スペクトルは、2tBu-ptBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。実施例1に示した発光素子2と同様に、発光素子6から得られる発光スペクトルには、2tBu-ptBuDPhA2Anthの発光に加えてエネルギードナーである、Ir(Fppy-iPr)3の発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。また、図5(B)に示したように、Ir錯体であるIr(Fppy-iPr)3が有する励起エネルギーはIr(Fppy-iPr)3の発光と、ゲスト材料の発光に寄与することができる。
また、発光素子4及び発光素子6は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図18及び表4で示すように、外部量子効率20%を超える高い発光効率を示した。本結果より、本発明の一態様の発光素子では、三重項励起子の無放射失活が抑制され、発光に効率良く変換されていると言える。よって、保護基を有するゲスト材料を発光層に用いることによって、ホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのデクスター機構によるエネルギー移動および三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制できることが分かった。
<CV測定結果>
次に、各発光素子の発光層に用いた、4,6mCzP2Pm及びPCCPの電気化学的特性(酸化反応特性および還元反応特性)をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定した。測定は実施例1に示す方法と同様に行った。
上述のように、CV測定より算出した4,6mCzP2PmのHOMO準位は-5.89eV、LUMO準位は-2.88eVであった。同様にPCCPのHOMO準位は-5.63eV、LUMO準位は-1.96eVであった。
以上のように、4,6mCzP2PmのLUMO準位は、PCCPのLUMO準位より低く、PCCPのHOMO準位は、4,6mCzP2PmのHOMO準位より高い。そのため、発光層に該化合物を用いた場合、電子および正孔が、効率よく4,6mCzP2PmとPCCPにそれぞれ注入され、4,6mCzP2PmとPCCPとで励起錯体を形成することができる。比較発光素子3の発光スペクトルはFirpicに由来する発光が、比較発光素子5の発光スペクトルはIr(Fppy-iPr)3に由来する発光が得られている。すなわち、4,6mCzP2PmとPCCPからFirpicまたはIr(Fppy-iPr)3への励起エネルギーの供与がある。よって、比較発光素子3及び比較発光素子5はEXTETを利用した発光素子であると言える。発光素子4は比較発光素子3に保護基を有する蛍光性材料を添加した発光素子とみることができ、発光素子6は比較発光素子5に保護基を有する蛍光性材料を添加した発光素子とみることができる。よって、発光素子4及び発光素子6はExTETを利用した発光素子に保護基を有する蛍光性材料を添加した発光素子であると言える。
また、図19に示すように、2tBu-ptBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯とFirpicの発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子4は上述のFirpicの励起エネルギーを受け取り発光することができる。同様に図20に示すように、2tBu-ptBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯とIr(Fppy-iPr)3の発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子4は上述のIr(Fppy-iPr)3の励起エネルギーを受け取り発光することができる。
<発光素子の信頼性測定>
次に、比較発光素子3、発光素子4、比較発光素子5、発光素子6の2.0mAにおける定電流駆動試験を行った。その結果を図21に示す。図21より蛍光性材料を発光層に有する発光素子4及び発光素子6の方が比較発光素子3及び比較発光素子5よりも信頼性が良好であることが分かった。これは、実施例1で述べたように、蛍光性材料を加えることによって、発光層内の励起エネルギーを効率良く発光に変換できていることを示唆している。よって、本発明の一態様の発光素子では、三重項増感素子において、保護基を有する蛍光性材料を用いることで、高効率かつ高信頼性の発光素子を作製することができる。
以上より、本発明の一態様の発光素子はホスト材料として励起錯体または燐光性材料を好適に用いることができる。また、ExTETを利用可能な発光層に蛍光性材料を加えた構成でも好適に用いることができる。
本実施例では、先の実施例とは異なる本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表5に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。
≪比較発光素子7の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン(MoO3)と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が1:0.5になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、mCzFLPを厚さが20nmになるように蒸着した。
次に、正孔輸送層112上に発光層130として、4,6mCzP2Pmと、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)と、を重量比(4,6mCzP2Pm:4PCCzBfpm)が0.8:0.2、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。4PCCzBfpmはTADF材料であり、比較発光素子7は4PCCzBfpmに由来する発光が得られる。
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが20nmになるよう、及びNBPhenの厚さが10nmになるよう、順次蒸着した。次に、電子輸送層118上に、電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸着した。
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子7を封止した。具体的には、ガラス基板に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し、該ガラス基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子7を得た。
≪比較発光素子8及び発光素子9の作製≫
比較発光素子8及び発光素子9は先に示す比較発光素子7と、発光層130の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子7と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表5に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。なお、発光素子9の発光層130中、FirpicはIrを有する燐光性材料であり、エネルギードナーとして機能する。また、構造式(103)で表される有機化合物である、2,6-ジ-tert-ブチル-N,N,N’,N’-テトラキス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-9,10-アントラセンジアミン(略称:2,6tBu-mmtBuDPhA2Anth)が発光団の周りに保護基を有するゲスト材料である。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子7、比較発光素子8及び発光素子9の特性を測定した。なお、測定方法は実施例1と同様である。
比較発光素子7、比較発光素子8及び発光素子9の外部量子効率-輝度特性を図22に示す。また、比較発光素子7、比較発光素子8及び発光素子9に、2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図23に示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。また、図23には発光素子9のゲスト材料である、2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthのトルエン溶液の発光と吸収スペクトルを合わせて示す。2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthのトルエン溶液の発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定方法は実施例1に示す方法と同様に行った。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子7、比較発光素子8及び発光素子9の素子特性を表6に示す。
図23に示すように、比較発光素子7の発光スペクトルは、ピーク波長が488nmであり、半値幅が92nmであった。これは、4PCCzBfpmに由来する発光である。また、比較発光素子8の発光スペクトルは、ピーク波長が471nm及び501nmであり、半値幅が75nmであった。比較発光素子8の発光スペクトルは、Firpicに由来する発光である。発光素子9の発光スペクトルは、ピーク波長が511nmであり、半値幅が69nmであった。2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光であるが、図23に示すように、発光素子9の発光スペクトルは、2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。発光素子9から得られる発光スペクトルには、2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthの発光に加えてエネルギードナーである、Firpicの発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。
また、発光素子9は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図22及び表6で示すように、外部量子効率15%を超える高い発光効率を示した。本結果より、本発明の一態様の発光素子では、三重項励起子の無放射失活が抑制され、発光に効率良く変換されていると言える。よって、保護基を有するゲスト材料を発光層に用いることによって、ホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのデクスター機構によるエネルギー移動および三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制できることが分かった。
上述のように、4PCCzBfpmはTADF材料であり、Firpicは燐光性材料である。また、図23に示すように、2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と4PCCzBfpmの発光スペクトル及びFirpicの発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子9は上述の4PCCzBfpm及び/またはFirpicの励起エネルギーを受け取り発光することができる。
<発光素子の蛍光寿命測定>
次に比較発光素子7、比較発光素子8、及び発光素子9の蛍光寿命測定を行った。測定にはピコ秒蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製)を用いた。本測定では、発光素子に矩形パルス電圧を印加し、その電圧の立下りから減衰していく発光をストリークカメラにより時間分解測定した。パルス電圧は10Hzの周期で印加し、繰り返し測定したデータを積算することにより、S/N比の高いデータを得た。また、測定は室温(300K)で、発光素子の輝度が1000cd/m2付近になるよう印加パルス電圧を3Vから4V付近で印加し、印加パルス時間幅が100μsec、負バイアス電圧が-5V(素子駆動のOFF時)、測定時間範囲が20μsecの条件で行った。測定結果を図43に示す。なお、測定結果を図43において、縦軸は、定常的にキャリアが注入されている状態(パルス電圧のON時)における発光強度で規格化した強度で示す。また、横軸は、パルス電圧の立下りからの経過時間を示す。
図43に示す減衰曲線について、指数関数によりフィッティングを行ったところ、比較発光素子7は、0.2μs以下の早い蛍光成分と11μs程度の遅延蛍光成分を有する発光を示し、遅延蛍光成分の割合は30%程度であることが分かった。比較発光素子7からは4PCCzBfpmに由来する発光が観測される。よって、4PCCzBfpmはTADF材料であることが示された。
また、比較発光素子8は、1μs程度の発光成分を有する発光を示し、発光素子9は、0.4μs以下の蛍光成分を有する発光を示すことが分かった。また、図43から、比較発光素子8においては、10μs以上の遅延蛍光成分は観測されず、燐光発光が観測された。また、発光素子9からは、比較発光素子8より早い発光が観測された。このことから、発光素子9からは、蛍光発光が観測され、励起エネルギーが効率よく発光に変換されていることが示唆される。
<発光素子の信頼性測定>
次に、比較発光素子8及び発光素子9の2.0mAにおける定電流駆動試験を行った。その結果を図24に示す。図24より蛍光性材料を発光層に有する発光素子9の方が比較発光素子8よりも信頼性が良好であることが分かった。これは、実施例1で述べたように、蛍光性材料を加えることによって、発光層内の励起エネルギーを効率良く発光に変換できていることを示唆している。よって、本発明の一態様の発光素子では、三重項増感素子において、保護基を有する蛍光性材料を用いることで、高効率かつ高信頼性の発光素子を作製することができる。
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表7に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。
≪比較発光素子10及び発光素子11の作製≫
比較発光素子10及び発光素子11は先に示す比較発光素子8と、発光層130の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子8と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表7に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。なお、比較発光素子10及び発光素子11の発光層130中、8-(ジベンゾチオフェン-4-イル)-4-フェニル-2-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4Ph-8DBt-2PCCzBfpm)はTADF材料である。また、発光素子11の発光層130中、2,6-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-9,10-アントラセンジアミン(略称:2,6Ph-mmtBuDPhA2Anth)が発光団の周りに保護基を有するゲスト材料である。発光素子11は図6(C)に示す、本発明の一態様の発光素子である。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子10及び発光素子11の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。
発光素子11の外部量子効率-輝度特性を図29に示す。また、比較発光素子10及び発光素子11に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図30にそれぞれ示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。なお、図30には発光素子11のゲスト材料である、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルを合わせて示す。2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthのトルエン溶液の発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定方法は実施例1に示す方法と同様に行った。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子10及び発光素子11の素子特性を表8に示す。
図30に示すように、比較発光素子10の発光スペクトルは、ピーク波長が516nmであり、半値幅が93nmであった。これは、4Ph-8DBt-2PCCzBfpmに由来する発光である。発光素子11の発光スペクトルは、ピーク波長が540nmであり、半値幅が71nmであった。これは、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光を含むが、図30に示すように、発光素子11の発光スペクトルは、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。発光素子11から得られる発光スペクトルには、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの発光に加えてエネルギードナーである、4Ph-8DBt-2PCCzBfpmの発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。
また、発光素子11は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図29及び表8で示すように、外部量子効率の最大値が15%を超える高い発光効率を示した。本結果より、本発明の一態様の発光素子では、三重項励起子の無放射失活が抑制され、発光に効率良く変換されていると言える。よって、保護基を有するゲスト材料を発光層に用いることによって、ホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのデクスター機構によるエネルギー移動および三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制できることが分かった。
上述のように、4Ph-8DBt-2PCCzBfpmはTADF材料である。また、図30に示すように、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と4Ph-8DBt-2PCCzBfpmの発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子11では、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthが4Ph-8DBt-2PCCzBfpmの励起エネルギーを受け取り発光していることが分かった。
<発光素子の蛍光寿命測定>
次に比較発光素子10の蛍光寿命測定を行った。測定にはピコ秒蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製)を用いた。本測定では、発光素子に矩形パルス電圧を印加し、その電圧の立下りから減衰していく発光をストリークカメラにより時間分解測定した。パルス電圧は10Hzの周期で印加し、繰り返し測定したデータを積算することにより、S/N比の高いデータを得た。また、測定は室温(300K)で、発光素子の輝度が1000cd/m2付近になるよう印加パルス電圧を3Vから4V付近で印加し、印加パルス時間幅が100μsec、負バイアス電圧が-5V(素子駆動のOFF時)、測定時間範囲が200μsecの条件で行った。測定結果を図31に示す。なお、図31において、縦軸は、定常的にキャリアが注入されている状態(パルス電圧のON時)における発光強度で規格化した強度で示す。また、横軸は、パルス電圧の立下りからの経過時間を示す。
図31に示す減衰曲線について、指数関数によりフィッティングを行ったところ、比較発光素子10は、0.4μs以下の早い蛍光成分と89μs程度の遅延蛍光成分を有する発光を示すことが分かった。比較発光素子10からは4Ph-8DBt-2PCCzBfpmに由来する発光が観測される。よって、4Ph-8DBt-2PCCzBfpmはTADF材料であることが示された。
<発光素子の信頼性測定>
次に、比較発光素子10及び発光素子11の2.0mAにおける定電流駆動試験を行った。その結果を図32に示す。図32より蛍光性材料を発光層に有する発光素子11の方が比較発光素子10よりも信頼性が良好であることが分かった。これは、実施例1で述べたように、蛍光性材料を加えることによって、発光層内の励起エネルギーを効率良く発光に変換できていることを示唆している。よって、本発明の一態様の発光素子では、三重項増感素子において、保護基を有する蛍光性材料を用いることで、高効率かつ高信頼性の発光素子を作製することができる。
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表9に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。
≪比較発光素子12及び発光素子13の作製≫
比較発光素子12は先に示す比較発光素子8と、発光層130及び電子輸送層118(2)の膜厚の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子8と同様の作製方法とした。また、発光素子13は先に示す比較発光素子8と、発光層130の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子8と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表9に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。なお、比較発光素子12及び発光素子13の発光層130中、2,4,6-トリス(9H-カルバゾール-9-イル)-3,5-ビス(3,6-ジフェニルカルバゾール-9-イル)ベンゾニトリル(略称:3C2zDPhCzBN)はTADF材料である。このことは非特許文献1に記載されている。また、発光素子13の発光層130中、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthが発光団の周りに保護基を有するゲスト材料である。発光素子13は図6(C)に示す、本発明の一態様の発光素子である。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子12及び発光素子13の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。
比較発光素子12及び発光素子13の外部量子効率-輝度特性を図33に示す。また、比較発光素子12及び発光素子13に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図34にそれぞれ示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。なお、図34には発光素子13のゲスト材料である、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルを合わせて示す。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子12及び発光素子13の素子特性を表10に示す。
図34に示すように、比較発光素子12の発光スペクトルは、ピーク波長が506nmであり、半値幅が81nmであった。これは、3C2zDPhCzBNに由来する発光である。発光素子13の発光スペクトルは、ピーク波長が540nmであり、半値幅が73nmであった。これは2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthに由来する緑色の発光を含むが、図34に示すように、発光素子13の発光スペクトルは、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの発光スペクトルと異なっている。発光素子13から、得られる発光スペクトルには、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの発光に加えてエネルギードナーである、3C2zDPhCzBNの発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。
また、発光素子13は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図33及び表10で示すように、外部量子効率の最大値が20%を超える高い発光効率を示した。本結果より、本発明の一態様の発光素子では、三重項励起子の無放射失活が抑制され、発光に効率良く変換されていると言える。よって、保護基を有するゲスト材料を発光層に用いることによって、ホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのデクスター機構によるエネルギー移動および三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制できることが分かった。また、発光素子13はTADF材料のみが発光材料である比較発光素子12よりも高い発光効率を有していることが分かる。
上述のように、3C2zDPhCzBNはTADF材料である。また、図34に示すように、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と3C2zDPhCzBNの発光スペクトルが重なりを有することが分かる。よって、発光素子13では、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthが3C2zDPhCzBNの励起エネルギーを受け取り発光していることが分かった。
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例と該発光素子の特性について説明する。本実施例で作製した発光素子の構成は図1(A)と同様である。素子構造の詳細を表11に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。
≪比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16の作製≫
比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16は先に示す比較発光素子8と、発光層130の構成のみ異なり、それ以外の工程は比較発光素子8と同様の作製方法とした。素子構造の詳細は表11に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。なお、比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16の発光層130中、3C2zDPhCzBNはTADF材料である。また、比較発光素子15中、N,N´-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)は発光団の周りに保護基を有さない蛍光性材料である。また、発光素子16の発光層130中、1,3,8,10-テトラ-tert-ブチル-7,14-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5,12-ジヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(略称:Oct-tBuDPQd)が発光団の周りに保護基を有するゲスト材料である。発光素子16は図6(C)に示す、本発明の一態様の発光素子である。
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。
比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16の外部量子効率-輝度特性を図35に示す。また、比較発光素子14及び発光素子16に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図36に示す。また、比較発光素子14及び比較発光素子15に、それぞれ2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図37に示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。なお、図36には発光素子16のゲスト材料である、Oct-tBuDPQdのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルを合わせて示す。また、図37には比較発光素子15のゲスト材料である、DPQdのトルエン溶液の吸収及び発光スペクトルを合わせて示す。
また、1000cd/m2付近における、比較発光素子14、比較発光素子15及び発光素子16の素子特性を表12に示す。
図36及び37に示すように、比較発光素子14の発光スペクトルは、ピーク波長が506nmであり、半値幅が81nmであった。これは、3C2zDPhCzBNに由来する発光である。また、発光素子16の発光スペクトルは、ピーク波長が524nmであり、半値幅が33nmであった。これはOct-tBuDPQdに由来する緑色の発光を含むが、図36に示すように、発光素子16の発光スペクトルは、Oct-tBuDPQdの発光スペクトルと異なっている。発光素子16から得られる発光スペクトルには、Oct-tBuDPQdの発光に加えてエネルギードナーである、3C2zDPhCzBNの発光が含まれていることが分かった。よって、本発明の一態様の発光素子からは、多色発光を得ることができる。また、比較発光素子15の発光スペクトルは、ピーク波長が526nmであり、半値幅が26nmであった。これはDPQdに由来する緑色の発光であるが、図37に示すように、比較発光素子15の発光スペクトルは、DPQdの発光スペクトルと異なっている。比較発光素子15から得られる発光スペクトルには、DPQdの発光に加えてエネルギードナーである、3C2zDPhCzBNの発光が含まれていることが分かった。
また、発光素子16は、蛍光性材料に由来する発光を示しているにも関わらず、図35及び表12で示すように、外部量子効率の最大値が20%を超える高い発光効率を示した。本結果より、本発明の一態様の発光素子では、三重項励起子の無放射失活が抑制され、発光に効率良く変換されていると言える。また、比較発光素子15よりも発光素子16の方が外部量子効率が高い結果となった。比較発光素子15と発光素子16は発光層に用いた蛍光性材料が異なる。この結果から、保護基を有する蛍光性材料を用いることによって、保護基を有さない蛍光性材料を用いた場合よりも発光効率が高い発光素子が得られることが分かった。これは、発光層中の三重項励起子のデクスター機構による失活が抑制されたためである。
(参考例1)
本参考例では、実施例1及び実施例2に用いた保護基を有する蛍光性材料である2tBu-ptBuDPhA2Anthの合成法について説明する。
1.2g(3.1mmol)の2-tert-ブチルアントラセンと、1.8g(6.4mmol)のビス(4-tert-ブチルフェニル)アミンと、1.2g(13mmol)のナトリウム t-ブトキシドと、60mg(0.15mmol)の2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(略称:SPhos)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に35mLのキシレンを加え、この混合物を減圧脱気した後、混合物に40mg(70μmol)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加え、この混合物を窒素気流下、170℃で4時間攪拌した。
撹拌後、得られた混合物にトルエン400mLを加えてから、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:066-05265)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:537-02305)、酸化アルミニウムを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、褐色固体を得た。
この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:トルエン=9:1)により精製したところ、目的物の黄色固体を得た。得られた黄色固体をトルエンとヘキサンとエタノールにて再結晶したところ、目的物の黄色固体を1.5g、収率61%で得た。本合成スキームを下記(A-1)に示す。
得られた黄色固体1.5gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力4.5Paの条件で、黄色固体を315℃で15時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の黄色固体を収量1.3g、回収率89%で得た。
また、本合成で得られた黄色固体の1H NMRによる測定結果を以下に示す。また、1H NMRチャートを図25及び図26に示す。なお、図25(B)は、図25(A)における6.5ppm乃至9.0ppmの範囲の拡大図である。また、図26は、図25(A)における0.5ppm乃至2.0ppmの範囲の拡大図である。この結果から、目的物である2tBu-ptBuDPhA2Anthが得られたことがわかった。
1H NMR(CDCl3,300MHz):σ=8.20-8.13(m、2H)、8.12(d、J=8.8Hz、1H)、8.05(d、J=2.0Hz、1H)、7.42(dd、J=9.3Hz、2.0Hz、1H)、7.32-7.26(m、2H)7.20(d、J=8.8Hz、8H)、7.04(dd、J=8.8Hz、2.4Hz、8H)、1.26(s、36H)、1.18(s、9H)。
(参考例2)
本参考例では、実施例3に用いた保護基を有する蛍光性材料である2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthの合成法について説明する。
1.1g(2.5mmol)の2,6-ジ-tert-ブチルアントラセンと、2.3g(5.8mmol)のビス(3,5-tert-ブチルフェニル)アミンと、1.1g(11mmol)のナトリウム t-ブトキシドと、60mg(0.15mmol)の2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(略称:SPhos)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に25mLのキシレンを加え、この混合物を減圧脱気した後、混合物に40mg(70μmol)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加え、この混合物を窒素気流下、150℃で6時間攪拌した。
撹拌後、得られた混合物にトルエン400mLを加えてから、フロリジール、セライト、酸化アルミニウムを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、褐色固体を得た。
この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:トルエン=9:1)により精製したところ、目的物の黄色固体を得た。得られた黄色固体をヘキサンとメタノールにて再結晶したところ、目的物の黄色固体を0.45g、収率17%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(B-1)に示す。
得られた黄色固体0.45gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.0Paの条件で、黄色固体を275℃で15時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の黄色固体を収量0.37g、回収率82%で得た。
また、上記ステップ1で得られた黄色固体の1H NMRによる測定結果を以下に示す。また、1H NMRチャートを図27及び図28に示す。なお、図27(B)は、図28(A)における6.5ppm乃至9.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。また、図28は、図27(A)における0.5ppm乃至2.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。この結果から、2,6tBu-mmtBuDPhA2Anthが得られたことがわかった。
1H NMR(CDCl3,300MHz):σ=8.11(d、J=9.3Hz、2H)、7.92(d、J=1.5Hz、1H)、7.34(dd、J=9.3Hz、2.0Hz、2H)、6.96-6.95(m、8H)、6.91-6.90(m、4H)、1.13-1.12(m、90H)。
(参考例3)
本参考例では、実施例4に用いた保護基を有する蛍光性材料である2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの合成法について説明する。
<ステップ1:2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthの合成>
1.8g(3.6mmol)の9,10-ジブロモ-2,6-ジフェニルアントラセンと、2.8g(7.2mmol)のビス(3,5-tert-ブチルフェニル)アミンと、1.4g(15mmol)のナトリウム t-ブトキシドと、60mg(0.15mmol)のSPhosを200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に36mLのキシレンを加え、この混合物を減圧脱気した後、混合物に40mg(70μmol)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加え、この混合物を窒素気流下、150℃で3時間攪拌した。撹拌後、得られた混合物にトルエン400mLを加えてから、フロリジール、セライト、酸化アルミニウムを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、褐色固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:トルエン=9:1)により精製したところ、黄色固体を得た。得られた黄色固体を酢酸エチルとエタノールにて再結晶したところ、目的物の黄色固体を0.61g、収率15%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(C-1)に示す。
得られた黄色固体0.61gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.8Paの条件で、黄色固体を280℃で15時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の黄色固体を収量0.56g、回収率91%で得た。
また、上記ステップ1で得られた黄色固体の1H NMRによる測定結果を以下に示す。また、1H NMRチャートを図38及び図39に示す。なお、図38(B)は、図38(A)における6.5ppm~9.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。また、図39は、図38(A)における0.5ppm~2.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。この結果から、2,6Ph-mmtBuDPhA2Anthが得られたことがわかった。
1H NMR(CDCl3,300MHz):σ=8.35(d、J=1.5Hz、2H)、8.24(d、J=8.8Hz、2H)、7.60(dd、J=1.5Hz、8.8Hz、2H)、7.43-7.40(m、4H)、7.35-7.24(m、6H)、7.03-7.02(m、8H)、6.97-6.96(m、4H)、1.16(s、72H)。
(参考例4)
本参考例では、実施例4に用いたTADF材料である4Ph-8DBt-2PCCzBfpmの合成法について説明する。
<ステップ1;2,8-ジクロロ-4-フェニル[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンの合成>
まず、2,4,8-トリクロロ[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン10g(37mmol)、フェニルボロン酸4.5g(371mmol)、2M炭酸カリウム水溶液37g、トルエン180mL、エタノール18mLを500mLの三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した。この混合物にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド1.3g(1.8mmol)を加え、80℃で16時間撹拌した。所定時間経過後、得られた反応混合物を濃縮し、水を加えて吸引ろ過した。得られたろ物をエタノールで洗浄し、固体を得た。この固体をトルエンに溶解して、セライト・アルミナ・セライトの順に積層したろ過材を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して目的物である白色固体を11g、収率91%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(D-1)に示す。
<ステップ2;8-クロロ-4-フェニル-2-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンの合成>
次に、ステップ1で得られた2,8-ジクロロ-4-フェニル[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン5.0g(16mmol)、9-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール6.5g(16mmol)、tert-ナトリウムブトキシド3.1g(32mmol)、キシレン150mLを300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。ここにジ-tert-ブチル(1-メチル-2,2-ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン(略称:cBRIDP)224mg(0.64mmol)、アリルパラジウム(II)クロリド ダイマー58mg(0.16mmol)を加え、90℃で7時間加熱撹拌した。得られた反応混合物に水を加え、水層をトルエンにて抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、トルエン:ヘキサン=1:1の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、目的物である黄色固体を5.5g、収率50%で得た。ステップ2の合成スキームを下記(D-2)に示す。
<ステップ3;8-(ジベンゾチオフェン-4-イル)-4-フェニル-2-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4Ph-8DBt-2PCCzBfpm)の合成>
次に、上記ステップ2で得られた8-クロロ-4-フェニル-2-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン2.25g(3.3mmol)、4-ジベンゾチオフェンボロン酸0.82g(3.6mmol)、フッ化セシウム1.5g(9.8mmol)、キシレン35mLを三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物を60℃に昇温し、ここにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)60mg(0.065mmol)と、2’-(ジシクロヘキシルホスフィノ)アセトフェノンエチレンケタール77mg(0.2mmol)を加え100℃で16時間加熱撹拌した。ここに、さらにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)30mg(0.032mmol)、2’-(ジシクロヘキシルホスフィノ)アセトフェノンエチレンケタール36mg(0.1mmol)を加え、110℃で7時間、120℃で7時間加熱撹拌した。得られた反応物に水を加え、吸引ろ過し、ろ物をエタノールで洗浄した。この固体をトルエンに溶解し、セライト・アルミナ・セライトの順に積層したろ過材を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、トルエンにて再結晶を行い目的物である黄色固体を1.87g、収率68%で得た。ステップ3の合成スキームを下記(D-3)に示す。
なお、上記ステップ3で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、1H-NMRチャートを図40(A)及び(B)に示す。図40(B)は、図40(A)における7.0ppm~10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これらから4Ph-8DBt-2PCCzBfpmが得られたことがわかった。
1H-NMR.δ(CDCl3):7.33(t,1H),7.41-7.53(m,7H),7.59(t,1H),7.62-7.70(m,7H),7.72-7.75(m,2H),7.83(dd,1H),7.87(dd,1H),7.93-7.95(m,2H),8.17(dd,1H),8.23-8.26(m,4H),8.44(d,1H),8.52(d,1H),8.75(d,1H),8.2(d,2H),9.02(d,1H),9.07(d,1H)。
(参考例5)
本参考例では、実施例6に用いた保護基を有する蛍光性材料であるOct-tBuDPQdの合成法について説明する。
<ステップ1:1,4-シクロヘキサジエン-1,4-ジカルボン酸,2,5-ビス[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルの合成>
5.6g(24mmol)の1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボン酸ジメチルと、10g(48mmol)の3,5-ジ-tert-ブチルアニリンを、還流管を付けた200mL三口フラスコに入れ、この混合物を170℃で2時間撹拌した。得られた赤橙色固体にメタノールを加えてスラリー化し、混合物を吸引ろ過により回収した。得られた固体をヘキサンとメタノールにて洗浄し乾燥させたところ、目的物の赤橙色固体を12g、収率82%で得た。ステップ1の合成スキームを以下(E-1)に示す。
得られた固体の1H NMRの数値データを以下に示す。これにより、目的化合物が得られたことがわかった。
1H NMR(クロロホルム-d,500MHz):δ=10.6(s、2H)、7.20(t、J=1.5Hz、2H)、6.94(d、J=2.0Hz、4H)、3.65(s、6H)、3.48(s、4H)、1.33(s、36H)。
<ステップ2:1,4-ベンゼンジカルボン酸,2,5-ビス[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルの合成>
ステップ1で得られた12g(20mmol)の1,4-シクロヘキサジエン-1,4-ジカルボン酸,2,5-ビス[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルと、150mLのトルエンとを、還流管を付けた300mL三口フラスコに入れた。この混合物に空気をバブリングしながら15時間還流した。撹拌後、析出した固体を吸引ろ過で回収し、得られた固体をヘキサンとメタノールを用いて洗浄したところ、目的物の赤色固体を7.3g得た。得られたろ液を濃縮しさらに固体を得た。この固体をヘキサンとメタノールを用いて洗浄し吸引ろ過により回収したところ、目的物の赤色固体を3.1g得た。よって、目的化合物を計10.4g、収率85%で得た。ステップ2の合成スキームを以下(E-2)に示す。
得られた固体の1H NMRの数値データを以下に示す。これにより、目的化合物が得られたことがわかった。
1H NMR(クロロホルム-d,500MHz):δ=8.84(s、2H)、8.18(s、2H)、7.08(d、J=2.0Hz、4H)、7.20(t、J=1.0Hz、2H)、3.83(s、6H)、1.34(s、36H)。
<ステップ3:1,4-ベンゼンジカルボン酸,2,5-ビス[N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルの合成>
ステップ2で得られた4.0g(6.7mmol)の1,4-ベンゼンジカルボン酸,2,5-ビス[(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルと、3.9g(14.6mmol)の1-ブロモ-3,5-ジ-tert-ブチルベンゼンと、0.46g(7.3mmol)の銅と、50mgのヨウ化銅(0.26mmol)と、1.0g(7.3mmol)の炭酸カリウムと、10mLのキシレンとを、還流管を付けた200mL三口フラスコに入れ、混合物の減圧脱気をした後、系内を窒素置換した。この混合物を20時間還流した。得られた混合物に、0.46g(7.3mmol)の銅と、50mgのヨウ化銅(0.26mmol)を加えて更に16時間還流した。得られた混合物にジクロロメタンを加えてスラリー化した。吸引ろ過にて固体を除去し、得られたろ液を濃縮した。得られた固体をヘキサンとエタノールで洗浄した。洗浄した固体を、ヘキサン/トルエンを用いて再結晶したところ、目的化合物の黄色固体を4.4g、収率72%で得た。ステップ3の合成スキームを以下(E-3)に示す。
得られた固体の1H NMRの数値データを以下に示す。これにより、目的化合物が得られたことがわかった。
1H NMR(クロロホルム-d,500MHz):δ=7.48(s、2H)、6.97(t、J=2.0Hz、4H)、7.08(d、J=1.5Hz、8H)、3.25(s、6H)、1.23(s、72H)。
<ステップ4:1,3,8,10-テトラ-tert-ブチル-7,14-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5,12-ジヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(略称:Oct-tBuDPQd)の合成>
ステップ3で得られた4.4g(4.8mmol)の1,4-ベンゼンジカルボン酸,2,5-ビス[N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ]-ジメチルエステルと、20mLのメタンスルホン酸を、還流管を付けた100mL三口フラスコに入れ、この混合物を160℃で7時間撹拌した。この混合物を常温まで冷ましてから、300mLの氷水へゆっくり注いだ後常温になるまで放置した。この混合物を自然ろ過し、得られた固体を水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。この固体をトルエンに溶かし、得られたトルエン溶液を水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:537-02305)と酸化アルミニウムを通してろ過した。得られたろ液を濃縮したところ、3.3gの黒褐色固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製したところ、目的化合物の赤橙色固体を150mg、収率5%で得た。ステップ4の合成スキームを以下(E-4)に示す。
また、上記ステップ4で得られた黄色固体の1H NMRによる測定結果を以下に示す。また、1H NMRチャートを図41(A)(B)及び図42に示す。なお、図41(B)は、図41(A)における6.5ppm乃至9.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。また、図42は、図41(A)における0.5ppm乃至2.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。この結果から、Oct-tBuDPQdが得られたことがわかった。
1H NMR(クロロホルム-d,500MHz):δ=8.00(s、2H)、7.65(t、J=2.0Hz、2H)、7.39(d、J=1.0Hz、4H)、7.20(d、J=2.0Hz、2H)、6.50(d、J=1.0Hz、2H)、1.60(s、18H)、1.39(s、36H)、1.13(s、18H)。