(実施形態)
図1及び図2に示されるように、一実施形態に係るアイソレータ10は、第1アイソレータ11と、第2アイソレータ12と、磁性体40とを備える。第1アイソレータ11は、第1コア21と、第2コア22と、第1非相反性部材31とを備える。第2アイソレータ12は、第3コア23と、第4コア24と、第2非相反性部材32とを備える。第1アイソレータ11は、第1コア21の第1端211に入力される電磁波を所定値以上の透過率で第2端212に透過させ、第2端212に入力される電磁波を所定値未満の透過率で第1端211に透過させる。つまり、第1アイソレータ11は、第1端211から第2端212に向かう電磁波の透過率が第2端212から第1端211に向かう電磁波の透過率より大きくなるように構成されている。第2アイソレータ12は、第3コア23の第1端231に入力される電磁波を所定値以上の透過率で第2端232に透過させ、第2端232に入力される電磁波を所定値未満の透過率で第1端231に透過させる。つまり、アイソレータ10は、第1端211から第2端212に向かう電磁波の透過率が第2端212から第1端211に向かう電磁波の透過率より大きくなるように構成されている。その結果、第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12は、一方向に電磁波を伝達できる。
アイソレータ10は、基板50によって保持されていてよい。基板50は、基材52と、クラッド54とを備える。基材52は、基材面52aを有する。クラッド54は、基材面52aにおいて基材52と接している。基材52は、金属等の導体、シリコン等の半導体、ガラス、又は樹脂等を含んで構成されてよい。本実施形態において、基材52は、シリコン(Si)であるとするが、これに限られず、他の種々の材料であってよい。
クラッド54は、第1アイソレータ11と、第2アイソレータ12と、磁性体40とを保持してよい。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24、並びに、クラッド54は、誘電体を含んで構成されてよい。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24は、誘電体線路とも称される。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24、並びに、クラッド54の材質は、第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24の比誘電率がクラッド54の比誘電率よりも大きくなるように定められる。言い換えれば、第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24、並びに、クラッド54の材質は、クラッド54の屈折率が第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24それぞれの屈折率より大きくなるように定められる。このようにすることで、第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24を伝搬する電磁波は、クラッド54との境界において全反射され得る。その結果、第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24を伝搬する電磁波の損失が低減され得る。本実施形態において、第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24の材質は、シリコン(Si)であるとするが、これに限られず、他の種々の材料であってよい。クラッド54の材質は、石英ガラス又はシリコン酸化膜(SiO2)であるとするが、これに限られず、他の種々の材料であってよい。シリコン及び石英ガラスの比誘電率はそれぞれ、約12及び約2である。シリコンは、約1.2μm~約6μmの近赤外波長を有する電磁波を低損失で伝搬させ得る。第1コア21、第2コア22、第3コア23又は第4コア24は、シリコンで構成される場合、光通信で使用される1.3μm帯又は1.55μm帯の波長を有する電磁波を低損失で伝搬させ得る。
第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24、並びに、クラッド54の比誘電率は、空気の比誘電率よりも大きくされてよい。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24、並びに、クラッド54の比誘電率が空気の比誘電率よりも大きくされることで、アイソレータ10からの電磁波の漏れが抑制され得る。結果として、アイソレータ10から外部に電磁波が放射されることによる損失が低減され得る。
第1コア21と第2コア22とはそれぞれ、Y軸方向に延在している。第1コア21及び第2コア22が延在する方向は、第1方向とも称される。第1コア21と第2コア22とは、クラッド54を介して、X軸方向に並んで位置している。第1コア21と第2コア22とは、クラッド54を介して電磁的に結合している。第1コア21と第2コア22とが並ぶ方向は、第2方向とも称される。第1方向と第2方向とは、交差している。
第3コア23と第4コア24とはそれぞれ、Y軸方向に延在している。第3コア23及び第4コア24が延在する方向は、第3方向とも称される。第3コア23と第4コア24とは、クラッド54を介して、X軸方向に並んで位置している。第3コア23と第4コア24とは、クラッド54を介して電磁的に結合している。第3コア23と第4コア24とが並ぶ方向は、第4方向とも称される。第3方向と第4方向とは、交差している。
図1において、第1方向と第3方向とは、一致している。第1方向と第3方向とは、互いに異なる方向に対応してよい。図1において、第2方向と第4方向とは、一致している。第2方向と第4方向とは、互いに異なる方向に対応してよい。
第1コア21は、第1端211と、第2端212とを有する。第1端211は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端212は、Y軸の正の方向の側に位置する。第1アイソレータ11は、第1コア21との間で電磁波を入出力可能に構成されている第1ポート111及び第2ポート112を更に備えてよい。第1ポート111及び第2ポート112はそれぞれ、第1コア21の端面として構成されてよいし、外部装置と接続され、電磁波を伝搬可能なカプラとして構成されてもよい。第1ポート111は、第1コア21の第1端211の側に位置する。第2ポート112は、第1コア21の第2端212の側に位置する。第1ポート111から第1コア21に入力された電磁波は、第2ポート112に向けて第1コア21を伝搬する。第2ポート112から第1コア21に入力された電磁波は、第1ポート111に向けて第1コア21を伝搬する。
第2コア22は、第1端221と、第2端222とを有する。第1端221は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端222は、Y軸の正の方向の側に位置する。
第1コア21と第2コア22とは、延在する方向の少なくとも一部において、互いに沿って位置してよい。第1コア21と第2コア22とは、延在する方向の少なくとも一部において、互いに平行となるように位置してよい。第1コア21又は第2コア22は、少なくとも一部において直線状の構造を有してよい。第1コア21と第2コア22とは、これらのような簡易な構造を有することによって容易に形成され得る。
第3コア23は、第1端231と、第2端232とを有する。第1端231は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端232は、Y軸の正の方向の側に位置する。第2アイソレータ12は、第3コア23との間で電磁波を入出力可能に構成されている第3ポート121及び第4ポート122を更に備えてよい。第3ポート121及び第4ポート122はそれぞれ、第3コア23の端面として構成されてよいし、外部装置と接続され、電磁波を伝搬可能なカプラとして構成されてもよい。第3ポート121は、第3コア23の第1端231の側に位置する。第4ポート122は、第3コア23の第2端232の側に位置する。第3ポート121から第3コア23に入力された電磁波は、第4ポート122に向けて第3コア23を伝搬する。第4ポート122から第3コア23に入力された電磁波は、第3ポート121に向けて第3コア23を伝搬する。
第4コア24は、第1端241と、第2端242とを有する。第1端241は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端242は、Y軸の正の方向の側に位置する。
第3コア23と第4コア24とは、延在する方向の少なくとも一部において、互いに沿って位置してよい。第3コア23と第4コア24とは、延在する方向の少なくとも一部において、互いに平行となるように位置してよい。第3コア23又は第4コア24は、少なくとも一部において直線状の構造を有してよい。第3コア23と第4コア24とは、これらのような簡易な構造を有することによって容易に形成され得る。
第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24は、導波路とも称される。並んで位置する2つの導波路は、平行導波路とも称される。上述のとおり、第1コア21と第2コア22とは、クラッド54を介して電磁的に結合している。第3コア23と第4コア24とは、クラッド54を介して電磁的に結合している。つまり、平行導波路に含まれる2つの導波路は、クラッド54を介して電磁的に結合している。これによって、一方の導波路に入力された電磁波は、その導波路を伝搬する間に他方の導波路に移り得る。つまり、第1コア21を伝搬する電磁波の少なくとも一部は、第2コア22に移り得る。その結果、第2コア22の第1端211及び第2端222から電磁波が入力されない場合でも、第2コア22を電磁波が伝搬し得る。一方で、第2コア22を伝搬する電磁波の少なくとも一部は、第1コア21に移り得る。その結果、電磁的に結合している第1コア21と第2コア22との間で電磁波が互いに移り得る。また、第3コア23を伝搬する電磁波の少なくとも一部は、第4コア24に移り得る。その結果、第4コア24の第1端241及び第2端242から電磁波が入力されない場合でも、第4コア24を電磁波が伝搬し得る。一方で、第4コア24を伝搬する電磁波の少なくとも一部は、第3コア23に移り得る。その結果、電磁的に結合している第3コア23と第4コア24との間で電磁波が互いに移り得る。
平行導波路において、一方の導波路から他方の導波路へ移る電磁波の割合を表すパラメータは、結合係数ともいう。一方の導波路から他方の導波路へ電磁波が全く移らない場合、結合係数は0であるとする。一方の導波路から他方の導波路へ全ての電磁波が移る場合、結合係数は1であるとする。結合係数は、0以上且つ1以下の値であるとする。結合係数は、各導波路の形状、各導波路間の距離、又は、導波路が互いに沿う長さ等に基づいて決定される。例えば、結合係数は、各導波路の形状が近似するほど高くなり得る。第1アイソレータ11における各導波路間の距離は、第1コア21と第2コア22との間の距離に対応してよい。第2アイソレータ12における各導波路間の距離は、第3コア23と第4コア24との間の距離に対応してよい。
電磁波は、一方の導波路を伝搬しながら他方の導波路に移る。したがって、導波路間で移る電磁波の割合は、電磁波が伝搬する距離に応じて変化する。つまり、結合係数は、電磁波が導波路の中で伝搬する距離に応じて変化する。結合係数の極大値は、各導波路の形状又は各導波路間の距離等に基づいて決定され得る。結合係数の極大値は、1以下の値であってよい。
平行導波路において、導波路が互いに沿う区間の始点における結合係数は0である。始点から、結合係数が極大値となる位置までの長さは、結合長とも称される。導波路が互いに沿う長さが結合長に等しい場合、導波路が互いに沿う区間の終点における結合係数は、極大値であり得る。結合長は、各導波路の形状又は各導波路間の距離等に基づいて決定され得る。
第1コア21から第2コア22に移った電磁波は、第2コア22においても第1コア21における伝搬方向と同じ方向に伝搬する。第2コア22において、電磁波が第1端221又は第2端222に到達した場合、電磁波は、第1端221又は第2端222から放射されたり、第1端221又は第2端222で反射されて逆方向に伝搬したりする。
第3コア23から第4コア24に移った電磁波は、第4コア24においても第3コア23における伝搬方向と同じ方向に伝搬する。第4コア24において、電磁波が第1端241又は第2端242に到達した場合、電磁波は、第1端241又は第2端242から放射されたり、第1端241又は第2端242で反射されて逆方向に伝搬したりする。
第1非相反性部材31は、Y軸方向に延在し、第2コア22と並んで位置している。第1非相反性部材31は、第2コア22の少なくとも一部に対して接触していてよい。第1非相反性部材31は、第2コア22に対してX軸の正の方向の側に位置してよい。つまり、第1非相反性部材31は、第1コア21と第2コア22との間に位置しないように構成されてよい。これによって、第1コア21と第2コア22との間の電磁的な結合が強まる。
第2非相反性部材32は、Y軸方向に延在し、第4コア24と並んで位置している。第2非相反性部材32は、第4コア24の少なくとも一部に対して接触していてよい。第2非相反性部材32は、第4コア24に対してX軸の正の方向の側に位置してよい。つまり、第2非相反性部材32は、第3コア23と第4コア24との間に位置しないように構成されてよい。これによって、第3コア23と第4コア24との間の電磁的な結合が強まる。
図2に示されるように、Y軸に交差する断面において、第2コア22と第1非相反性部材31との形状、及び、第4コア24と第2非相反性部材32との形状は、点対称とならないように構成される。第2コア22と第1非相反性部材31との形状、及び、第4コア24と第2非相反性部材32との形状は、さらに線対称とならないように構成されてもよい。第2コア22と第1非相反性部材31とは、第1非対称コアを形成しているともいえる。第4コア24と第2非相反性部材32とは、第2非対称コアを形成しているともいえる。第1非対称コアと第2非対称コアとは、単に非対称コアとも称される。
非対称コアの断面が点対称に近いか否かを表す指標として、対称度が用いられ得る。対称度は、非対称コアの断面形状と、所定点を中心としてその断面形状を180度回転させて得られる断面形状との間で、一致する部分が含まれる割合によって表されてよい。対称度が高い断面形状は、点対称に近いといえる。非対称コアは、その断面形状の対称度が低くなるように構成されてよい。
非対称コアの断面において、第2コア22及び第4コア24それぞれの面積は、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32の面積よりも大きく構成されてよい。このようにすることで、非対称コアを伝搬する電磁波のうち、第2コア22又は第4コア24を伝搬する電磁波の割合が増加する。結果として、非対称コアにおける電磁波の損失が低減され得る。
非対称コアの断面は、非対称コアの中で伝搬する電磁波の強度が最大となる部分に第2コア22又は第4コア24が位置するように構成されてよい。このようにすることで、電磁波の強度が高い部分が第2コア22又は第4コア24の中で伝搬し得る。結果として、非対称コアにおける電磁波の損失が低減され得る。
第1コア21及び第1非対称コア、並びに、第3コア23及び第2非対称コアは、シングルモードでの導波条件を満たしてよい。第1コア21及び第1非対称コア、並びに、第3コア23及び第2非対称コアがシングルモードでの導波条件を満たす場合、第1コア21及び第1非対称コア、並びに、第3コア23及び第2非対称コアを伝搬する信号の波形が崩れにくくなる。シングルモードでの導波条件を満たす第1コア21及び第1非対称コアを組み合わせた第1アイソレータ11、及び、第3コア23及び第2非対称コアを組み合わせた第2アイソレータ12は、光通信に適したものとなり得る。
第1コア21、第2コア22、第3コア23又は第4コア24の比誘電率は、X軸方向又はZ軸方向に沿って一様に分布してよいし、X軸方向又はZ軸方向に沿って変化するように分布してもよい。例えば、第1コア21の比誘電率は、X軸方向の中央部で最も大きくなり、クラッド54に近づくにつれて小さくなるように分布してよい。この場合、第1コア21は、グレーデッド・インデックス型光ファイバと同様の原理で電磁波を伝搬させ得る。
以下、第1アイソレータ11の構成に基づいて電磁波の伝搬の態様が説明される。以下の説明における電磁波の伝搬の態様は、原則として第2アイソレータ12の構成でも成り立つ。必要に応じて、第2アイソレータ12の構成に基づく態様が説明される。
第1ポート111を介して第1コア21の第1端211から入力された電磁波は、第2端212に向けて伝搬する。つまり、電磁波は第1コア21をY軸の正の方向に伝搬する。第1端211から第2端212に向かう方向は、S12方向とも称される。第1コア21を伝搬する電磁波は、第1コア21をS12方向に伝搬した距離に基づく結合係数に応じた割合で、第2コア22に移る。電磁波が第1コア21をS12方向に伝搬する場合の結合係数は、第1結合係数ともいう。
第2ポート112を介して第1コア21の第2端212から入力された電磁波は、第1端211に向けて伝搬する。つまり、電磁波は第1コア21をY軸の負の方向に伝搬する。第2端212から第1端211に向かう方向は、S21方向とも称される。第1コア21を伝搬する電磁波は、第1コア21をS21方向に伝搬した距離に基づく結合係数に応じた割合で、第2コア22に移る。電磁波が第1コア21をS21方向に伝搬する場合の結合係数は、第2結合係数ともいう。
第2コア22を含む非対称コアは、電磁波がS12方向に伝搬する場合と、電磁波がS21方向に伝搬する場合とで、異なる伝搬特性を有する。非対称コアの伝搬特性が電磁波の伝搬方向に基づいて異なる場合、第1結合係数と第2結合係数とは互いに異なる。つまり、第1非相反性部材31は、第1結合係数と第2結合係数とを異ならせる。
第1非相反性部材31は、電磁波がS12方向に伝搬する場合とS21方向に伝搬する場合とにおいて、それぞれ異なる伝搬特性を有するような材料で構成されてよい。電磁波の伝搬方向によって異なる伝搬特性を有する材料は、非相反性材料ともいう。第1非相反性部材31は、非相反性材料として、例えば、磁性ガーネット、フェライト、鉄、コバルト等の磁性体を含んで構成されてよい。第1非相反性部材31の比誘電率は、式(1)のようにテンソルで表され得る。
テンソルの各要素は、複素数で表されてよい。各要素の添え字として用いられている数字は、X軸、Y軸及びZ軸に対応してよい。要素として複素数を有し、比誘電率を表すテンソルは、複素比誘電率テンソルともいう。
第1非相反性部材31は、非相反性材料を所定の濃度で含んでよい。所定の濃度は、Y軸に交差する断面の中で変化してよい。所定の濃度は、アイソレータ10に入力される電磁波の偏光方向に沿って見た少なくとも一部において変化してよい。
図2に示されるように、第1非相反性部材31は、第2コア22に対して、X軸の正の方向の側に偏って位置してよい。第1非相反性部材31は、複素比誘電率テンソルで表される比誘電率を有する。第2コア22と第1非相反性部材31とを含む非対称コアを、S12方向に伝搬する電磁波の位相と、S21方向に伝搬する電磁波の位相との差は、位相差とも称される。非対称コアの対称度が低いほど、位相差が大きくなる。位相差が大きいほど、非対称コアにおける電磁波の伝搬特性の非相反性が大きくなる。
第1非相反性部材31は、所定方向の磁界が印加される場合に非相反性を発現し得る。所定方向は、非対称コアの断面形状、又は、対称度に基づいて決定されてよい。第1アイソレータ11は、磁性体40が発生する磁界Hを非相反性部材31に印加することによって、非対称コアに非相反性を発現させる。磁性体40は、鉄、コバルト、又はニッケル等の強磁性体であってよい。磁性体40は、強磁性体に着磁することによって構成されてよい。磁性体40は、例えば、フェライト磁石又はネオジム磁石等の永久磁石であってもよい。
図3を参照して、非相反性を有する導波路と非相反性を有しない導波路との間の位相差が説明される。第1コア21は、非相反性を有しない導波路に対応する。第2コア22と第1非相反性部材31とを含む非対称コアは、非相反性を有する導波路に対応する。第1コア21と非対称コアとにおいて、電磁波は、波数ベクトルkとして表されるように、Y軸の正の方向に対応するS12方向に伝搬すると仮定する。電磁波は、電界ベクトルEとして表されるように、X軸に沿う電界成分を有すると仮定する。非対称コアにおいて、第1非相反性部材31は、第2コア22に対して、X軸の正の方向の側に位置すると仮定する。
第1非相反性部材31に、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに交差する磁界H1又はH2が印加されることによって、第1非対称コアは、非相反性を発現する。磁界Hは、磁性体40によって生じている。第1非対称コアが非相反性を発現する場合、第1非対称コアを伝搬する電磁波の位相は、第1コア21をS12方向に伝搬する電磁波の位相に対して進んだり遅れたりする。第1非対称コアが発現する非相反性の大きさは、伝搬する電磁波の位相の進み又は遅れの大きさに対応する。伝搬する電磁波の位相の進み又は遅れの大きさは、磁界Hのうち、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに直交する方向の成分の大きさに基づいて定まる。第1アイソレータ11において、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに直交する方向は、第5方向とも称される。
第1非相反性部材31が位置する部分に印加される磁界Hは、第5方向の成分と、それ以外の成分とを含む。第1アイソレータ11における磁性体40の位置は、第5方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように定められる。このようにすることで、第1非対称コアが非相反性を発現しやすくなる。
第2非相反性部材32に、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに交差する磁界H1又はH2が磁界Hとして印加されることによって、第2非対称コアは、非相反性を発現する。磁界Hは、磁性体40によって生じている。第2非対称コアが非相反性を発現する場合、第2非対称コアを伝搬する電磁波の位相は、第3コア23をS12方向に伝搬する電磁波の位相に対して進んだり遅れたりする。第2非対称コアが発現する非相反性の大きさは、伝搬する電磁波の位相の進み又は遅れの大きさに対応する。伝搬する電磁波の位相の進み又は遅れの大きさは、磁界Hのうち、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに直交する方向の成分の大きさに基づいて定まる。第2アイソレータ12において、波数ベクトルk及び電界ベクトルEに直交する方向は、第6方向とも称される。
第2非相反性部材32が位置する部分に印加される磁界Hは、第6方向の成分と、それ以外の成分とを含む。第2アイソレータ12における磁性体40の位置は、第6方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように定められる。このようにすることで、非対称コアが非相反性を発現しやすくなる。
本実施形態において、アイソレータ10は、磁性体40を1つだけ備えてよい。1つの磁性体40が第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とに磁界Hを印加できる。つまり、1つの磁性体40が複数のアイソレータに磁界Hを印加できる。このようにすることで、磁性体40の数又は磁性体40の実装面積が低減され得る。その結果、アイソレータ10が小型化され得る。
伝搬する電磁波の位相が進むか遅れるかは、第1非相反性部材31に印加される磁界Hの向きによって定まる。例えば、第1非相反性部材31にZ軸の負の方向の磁界H1が印加される場合に非対称コアを伝搬する電磁波の位相が進むと仮定する。上記仮定において、磁界Hの向きがZ軸の正の方向の磁界H2に変更される場合に非対称コアを伝搬する電磁波の位相は遅れる。
伝搬する電磁波の位相が進むか遅れるかは、電界ベクトルEの方向が水平である場合に、波数ベクトルkの向きに対して第1非相反性部材31が第2コア22より右側に位置するか左側に位置するかによって定まる。例えば、図3に示されるように、電磁波がY軸の正の方向に対応するS12方向に伝搬し、第1非相反性部材31が第2コア22よりも電磁波の伝搬方向に向かって右側に位置し、且つ、第1非相反性部材31に磁界H1が印加される場合に、電磁波の位相が進むと仮定する。上記仮定において、第1非相反性部材31が第2コア22より左側に位置するように変更される場合、非対称コアをS12方向に伝搬する電磁波の位相は遅れる。図3の構成例において、電磁波が逆にS21方向に進む場合、第1非相反性部材31は、電磁波の伝搬方向に向かって左側に位置する。したがって、電磁波の位相は、電磁波がS12方向に伝搬する場合に進むとすれば、電磁波がS21方向に伝搬する場合に遅れる。逆に、電磁波の位相は、電磁波がS12方向に伝搬する場合に遅れるとすれば、電磁波がS21方向に伝搬する場合に進む。これによって、非対称コアにおいて非相反性が発現する。
平行導波路の一方の導波路において非相反性が発現する場合、第1結合係数が極大値となる位置の周期と、第2結合係数が極大値となる位置の周期とが異なり得る。つまり、第1アイソレータ11において、第1コア21の第1端211の側を始点とした結合長と、第1コア21の第2端212の側を始点とした結合長とが異なり得る。電磁波の伝搬方向に応じて結合長が異なることによって、平行導波路の延在方向に沿った位置に応じて第1結合係数と第2結合係数との差が変化する。
第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点における第1結合係数が大きいほど、第1コア21に入力されてS12方向に伝搬する電磁波のうち、第2コア22に移り第2コア22の第2端222に到達する電磁波の割合が大きくなる。逆に、第1コア21に入力されてS12方向に伝搬する電磁波のうち、第1コア21の第2端212に到達し第2ポート112から出力される電磁波の割合が小さくなる。つまり、第1ポート111に入力される電磁波の強度に対する、第2ポート112から出力される電磁波の強度の比が小さくなる。第1ポート111に入力される電磁波の強度に対する、第2ポート112から出力される電磁波の強度の比は、S12方向に伝搬する電磁波に対する透過率とも称される。S12方向に伝搬する電磁波から見た、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点は、その範囲の第2端212側の端に対応する。
第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点における第1結合係数が大きい場合、S12方向に伝搬する電磁波に対する透過率が低くなり得る。一方で、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点における第1結合係数が小さい場合、第2コア22に移る電磁波の割合が小さくなるので、S12方向に伝搬する電磁波に対する透過率が高くなり得る。
第2ポート112から第1コア21に入力されS21方向に伝搬する電磁波は、S12方向に伝搬する電磁波が第1アイソレータ11から受ける作用と同一の作用を受け得る。その作用によって、S21方向に伝搬する電磁波の一部は、第2コア22の第1端221に到達する。第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点における第2結合係数が大きいほど、S21方向に伝搬する電磁波に対する透過率が低くなる。S21方向に伝搬する電磁波から見た、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点は、その範囲の第1端211側の端に対応する。
第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点において第1結合係数と第2結合係数とが異なることによって、S12方向に伝搬する電磁波に対する透過率と、S21方向に伝搬する電磁波に対する透過率とが異なり得る。つまり、第1アイソレータ11は、第1結合係数と第2結合係数とを異ならせることによって、一方向に電磁波を伝搬させやすくし、逆方向に電磁波を伝搬させにくくするように機能する。第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点において第2結合係数が第1結合係数よりも大きい場合、第1アイソレータ11は、S12方向に電磁波を伝搬させやすくし、S21方向に電磁波を伝搬させにくくするように機能し得る。第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合している範囲の終点において第1結合係数及び第2結合係数がそれぞれ略0及び略1とされる場合、S12方向に伝搬する電磁波に対する透過率と、S21方向に伝搬する電磁波に対する透過率との差が大きくされ得る。結果として、第1アイソレータ11の機能が向上され得る。
第1アイソレータ11において、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数と第2結合係数との差が大きいほど、電磁波の伝搬方向に応じた透過率の差が大きくなる。例えば、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数と第2結合係数との差が極大値となるように第1コア21及び非対称コアの長さが定められてよい。このようにすることで、第1アイソレータ11における電磁波の伝搬方向に応じた透過率の差が極大となり得る。非対称コアの非相反性の大きさが調整されることによって、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数と第2結合係数との差の大きさが調整されてもよい。
平行導波路の一方の導波路が非相反性を有する場合、S12方向に伝搬する電磁波に対する平行導波路の結合長は、S21方向に伝搬する電磁波に対する平行導波路の結合長と異なり得る。第1アイソレータ11においてS12方向に伝搬する電磁波に対する結合長は、L1と表されるとする。第1アイソレータ11においてS21方向に伝搬する電磁波に対する結合長は、L2と表されるとする。第1アイソレータ11は、L1とL2とが異なるように構成されてよい。
平行導波路において2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さが結合長に等しい場合、結合係数が極大値となり得る。2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さがL1である場合、2つの導波路が電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数が極大値となり得る。2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さが結合長の2倍に等しい場合、結合係数が極小値となり得る。2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さが2L1である場合、2つの導波路が電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数が極小値となり得る。
2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さがL1の奇数倍である場合、2つの導波路が電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数が極大値となり得る。2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さがL1の偶数倍である場合、2つの導波路が電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数が極小値となり得る。2つの導波路が電磁的に結合する範囲の長さがL2の奇数倍である場合、及び、L2の偶数倍である場合それぞれで、2つの導波路が電磁的に結合する範囲の終点における第2結合係数が極大値及び極小値となり得る。L1及びL2は、平行導波路における最短の結合長となり得る長さであり、単位結合長とも称される。つまり、結合長は、単位結合長の奇数倍であってよい。
第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の長さが調整されることによって、第1結合係数及び第2結合係数が調整され得る。第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の長さは、S21方向に伝搬する電磁波に対する単位結合長の奇数倍と略同一であってよい。このようにすることで、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第2結合係数が大きくされ得る。第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の長さは、S12方向に伝搬する電磁波に対する単位結合長の偶数倍と略同一であってよい。このようにすることで、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数が小さくされ得る。このようにすることで、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点において、第2結合係数が第1結合係数より大きくされ得る。
平行導波路における電磁波の伝搬モードは、偶モードと奇モードとを含み得る。偶モードは、平行導波路を構成する各導波路において、伝搬する電磁波の電場が同じ方向を向くモードである。奇モードは、平行導波路を構成する各導波路において、伝搬する電磁波の電場が反対の方向を向くモードである。電磁波は、平行導波路の実効屈折率に基づいて、平行導波路を伝搬し得る。平行導波路の実効屈折率は、平行導波路を構成する各導波路の形状、導波路を構成する材料の比誘電率、又は、電磁波の伝搬モード等に基づいて決定され得る。電磁波が偶モードで伝搬する場合の平行導波路の実効屈折率は、偶モード屈折率ともいう。電磁波が奇モードで伝搬する場合の平行導波路の実効屈折率は、奇モード屈折率ともいう。偶モード屈折率及び奇モード屈折率はそれぞれ、n
even及びn
oddと表されるものとする。平行導波路における結合長は、以下の式(2)で表され得る。
(L:結合長、m:奇数、λ
0:真空中の波長)
第1アイソレータ11の一方のポートに入力される電磁波のうち、他方のポートから出力されない電磁波の量は、減衰量ともいう。電磁波の減衰量が大きい場合、その電磁波の透過率は低いといえる。第1アイソレータ11におけるS12方向及びS21方向に伝搬する電磁波の減衰量は、有限要素法等を用いたシミュレーションによって算出され得る。第1アイソレータ11は、所定の周波数を有する電磁波について、S12方向に伝搬する電磁波の減衰量とS21方向に伝搬する電磁波の伝搬量とを異ならせるように機能し得る。第1アイソレータ11が電磁波の伝搬方向ごとに減衰量を異ならせるように機能し得る所定の周波数帯は、第1アイソレータ11の動作周波数とも称される。第1アイソレータ11の動作周波数は、第1アイソレータ11の構成に基づいて、任意に決定され得る。つまり、任意の動作周波数において、第1コア21と非対称コアとが電磁的に結合する範囲の終点における第1結合係数は、第2結合係数よりも大きくされ得る。
第1アイソレータ11は、第2コア22の第1端221及び第2端222に、電磁波を放射するアンテナをさらに備えてよい。アンテナは、第1端221及び第2端222に到達した電磁波を効率よく放射し得る。アンテナによって、第1端221及び第2端222で電磁波が反射しにくくなる。結果として、第1アイソレータ11の機能が向上され得る。
第2コア22は、第1端221及び第2端222に切断面を有してよい。切断面は、アンテナとして機能してよい。切断面は、その法線ベクトルの向きがY軸に対して傾きを有するように構成されてよい。言い換えれば、切断面の法線ベクトルは、第2コア22における電磁波の伝搬方向に交差してよい。切断面の法線ベクトルの向きとY軸との間の角度は、90度に近づけられてよい。切断面の法線ベクトルの向きとY軸との間の角度が90度に近い場合、第2コア22は、第1端221及び第2端222において、その厚みが緩やかに減少するテーパ形状を有するように構成される。結果として、第1端221及び第2端222における電磁波の反射率が低減され得る。
第1アイソレータ11は、第2コア22の第1端221及び第2端222の外側に電磁波吸収部材をさらに備えてよい。電磁波吸収部材は、第1端221及び第2端222から放射される電磁波を吸収する。このようにすることで、第1アイソレータ11から放射される電磁波が第1アイソレータ11の周辺に位置する他の回路に影響を及ぼしにくくなる。
図1及び図2に例示される第1アイソレータ11において、磁性体40は、第1コア21から見て第2コア22より遠くに位置する。第2アイソレータ12において、磁性体40は、第3コア23から見て第4コア24より遠くに位置する。磁性体40の磁化方向は、Z軸に沿っている。この配置によって、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32に波数ベクトルk及び電界ベクトルEに交差する磁界Hが印加される。磁性体40の位置は、第1非相反性部材31に印加される磁界Hの第5方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように、且つ、第2非相反性部材32に印加される磁界Hの第6方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように定められる。
第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12は、図1及び図2に例示される構成に限られず、種々の形態で構成されてよい。例えば、図4に示されるように、磁性体40は、断面視において、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32よりもZ軸の正の方向の側に位置する第1磁性体と、Z軸の負の方向の側に位置する第2磁性体とを含んでよい。第1磁性体の磁化方向と第2磁性体の磁化方向とは、互いに反対を向いている。このようにすることで、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32に印加される磁界Hは、第1磁性体と第2磁性体との間に生じる。その結果、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32に印加される磁界Hは、アイソレータ10の周囲の磁界による影響を受けにくくなる。
図5に示されるように、アイソレータ10は、電流46を流す導線44を備えてもよい。導線44に流れる電流46は、ビオ・サバールの法則に基づく方向に磁界を生じる。電流46は、導線44をY軸の負の方向に流れるとする。この場合、第1非相反性部材31に印加される磁界Hは、Z軸の負の方向を向いている。第2非相反性部材32に印加される磁界Hは、Z軸の正の方向を向いている。このようにすることで、1つの構成によって、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12に磁界Hが印加され得る。その結果、アイソレータ10が小型化され得る。磁性体40及び導線44は、磁界印加部とも称される。
図6及び図7に示されるように、磁性体40の磁化方向がZ軸方向に沿っていてもよい。この場合、第1非相反性部材31に印加される磁界の向きと、第2非相反性部材32に印加される磁界の向きとが同じになる。図3に基づいて説明したように、第1非対称コアにおいてS12方向に伝搬する電磁波の位相が第1コア21に対して進むか遅れるかは、第1非相反性部材31に印加される磁界の向きと、第2コア22と第1非相反性部材31との位置関係とに基づいて決定される。また、第2非対称コアにおいてS12方向に伝搬する電磁波の位相が第3コア23に対して進むか遅れるかは、第2非相反性部材32に印加される磁界の向きと、第4コア24と第2非相反性部材32との位置関係とに基づいて決定される。
第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12の両方で同じ方向に電磁波が伝搬すると仮定する。この場合、第1アイソレータ11において第1非対称コアを伝搬する電磁波の位相が第1コア21を伝搬する電磁波の位相より進むとすれば、第2アイソレータ12において第2非対称コアを伝搬する電磁波の位相が第3コア23を伝搬する電磁波の位相より遅れる。つまり、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とで、S12方向に伝搬する電磁波の位相の進みと遅れとの関係が互いに逆になる。
一方で、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とで互いに異なる方向に電磁波が伝搬すると仮定する。この場合、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とで、位相の進みと遅れとの関係が一致する。図6及び図7の例において、第1アイソレータ11は、電磁波の入力を受け付ける第1ポート111をY軸の負の方向の側に備え、電磁波を出力する第2ポート112をY軸の正の方向の側に備える。第2アイソレータ12は、電磁波の入力を受け付ける第3ポート121をY軸の正の方向の側に備え、電磁波を出力する第4ポート122をY軸の負の方向の側に備える。このようにすることで、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とで、S12方向に伝搬する電磁波の位相の進みと遅れとの関係が一致する。
図8に示されるように、第1アイソレータ11の出力と第2アイソレータ12の入力とは、接続コア29によって接続されてもよい。この場合、第1アイソレータ11は、第2ポート112を備えない。第2アイソレータ12は、第3ポート121を備えない。このように、第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とが直列に接続されることによって、アイソレータ10における一方向への電磁波の透過率と、反対方向への電磁波の透過率との差が大きくされ得る。その結果、アイソレータ10の機能が向上し得る。
図9に示されるように、アイソレータ10は、第1アイソレータ11と、第2アイソレータ12と、第3アイソレータ13と、第4アイソレータ14と、磁性体40とを備えてよい。
第1アイソレータ11は、第1コア21と、第2コア22と、第1非相反性部材31とを備える。第2アイソレータ12は、第3コア23と、第4コア24と、第2非相反性部材32とを備える。第3アイソレータ13は、第5コア25と、第6コア26と、第3非相反性部材33とを備える。第4アイソレータ14は、第7コア27と、第8コア28と、第4非相反性部材34とを備える。
第1コア21は、Y軸方向に延在し、第1端211と、第2端212とを有する。第1端211は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端212は、Y軸の正の方向の側に位置する。第1アイソレータ11は、第1コア21との間で電磁波を入出力可能に構成されている第1ポート111及び第2ポート112を更に備えてよい。第2コア22は、第1コア21に沿って延在し、第1端221と、第2端222とを有する。第1端221は、Y軸の負の方向の側に位置する。第2端222は、Y軸の正の方向の側に位置する。第1非相反性部材31は、第2コア22に沿って位置する。
第3コア23は、X軸方向に延在し、第1端231と、第2端232とを有する。第1端231は、X軸の負の方向の側に位置する。第2端232は、X軸の正の方向の側に位置する。第2アイソレータ12は、第3コア23との間で電磁波を入出力可能に構成されている第3ポート121及び第4ポート122を更に備えてよい。第4コア24は、第3コア23に沿って延在し、第1端241と、第2端242とを有する。第1端241は、X軸の負の方向の側に位置する。第2端242は、X軸の正の方向の側に位置する。第2非相反性部材32は、第4コア24に沿って位置する。
第5コア25は、Y軸方向に延在し、第1端251と、第2端252とを有する。第1端251は、Y軸の正の方向の側に位置する。第2端252は、Y軸の負の方向の側に位置する。第3アイソレータ13は、第5コア25との間で電磁波を入出力可能に構成されている第5ポート131及び第6ポート132を更に備えてよい。第6コア26は、第5コア25に沿って延在し、第1端261と、第2端262とを有する。第1端261は、Y軸の正の方向の側に位置する。第2端262は、Y軸の負の方向の側に位置する。第3非相反性部材33は、第6コア26に沿って位置する。
第7コア27は、X軸方向に延在し、第1端271と、第2端272とを有する。第1端271は、X軸の正の方向の側に位置する。第2端272は、X軸の負の方向の側に位置する。第4アイソレータ14は、第7コア27との間で電磁波を入出力可能に構成されている第7ポート141及び第8ポート142を更に備えてよい。第8コア28は、第7コア27に沿って延在し、第1端281と、第2端282とを有する。第1端281は、X軸の正の方向の側に位置する。第2端282は、X軸の負の方向の側に位置する。第4非相反性部材34は、第8コア28に沿って位置する。
磁性体40の磁化方向は、Y軸の正の方向であってよい。磁性体40が生じる磁界Hは、第1非相反性部材31、第2非相反性部材32、第3非相反性部材33及び第4非相反性部材34それぞれにおいて、Y軸の負の方向に印加される。図9のアイソレータ10は、第1アイソレータ11、第2アイソレータ12、第3アイソレータ13及び第4アイソレータ14それぞれに電磁波を入出力する向きが時計回りになるように構成されている。このようにすることで、S12方向に伝搬する電磁波の位相の進みと遅れとの関係が第1アイソレータ11、第2アイソレータ12、第3アイソレータ13及び第4アイソレータ14それぞれで一致する。第1アイソレータ11、第2アイソレータ12、第3アイソレータ13及び第4アイソレータ14それぞれに電磁波を入出力する向きは、反時計回りになるように構成されてもよい。この場合でも、S12方向に伝搬する電磁波の位相の進みと遅れとの関係が第1アイソレータ11、第2アイソレータ12、第3アイソレータ13及び第4アイソレータ14それぞれで一致する。
(アイソレータ10の製造方法)
図1及び図2に例示されているアイソレータ10は、図10Aから図10Lまでに例示される断面図に沿ったプロセスフローによって製造されてよい。
図10Aに示されるように、基板50は、基材面52aを有する基材52と、基材面52aの上に位置するクラッド54とを備える。
図10Bに示されるように、クラッド54に、トレンチ71が形成される。トレンチ71は、側壁71Sによって区画される溝又は穴に対応する。トレンチ71は、例えばRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングで形成されてよい。
図10Cに示されるように、トレンチ71の内部に第1コア21と第2コア22と第3コア23と第4コア24とが成膜される。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24は、同じ材料で構成される場合、同時にトレンチ71内に成膜されてよい。第1コア21、第2コア22、第3コア23及び第4コア24は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。
図10Dに示されるように、第1コア21と第2コア22と第3コア23と第4コア24とが成膜されたトレンチ71がクラッド54によって埋められる。その結果、第1コア21と第2コア22と第3コア23と第4コア24とが基板50に埋め込まれる。クラッド54は、プラズマCVD又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。クラッド54を成膜した後の基板50の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等のプロセスによって平坦化されてよい。
図10Eに示されるように、第2コア22及び第4コア24に隣接する位置にトレンチ72が形成される。トレンチ72は、側壁72Sによって区画される溝又は穴に対応する。トレンチ72は、例えばRIE等のドライエッチングで形成されてよい。トレンチ72のドライエッチングは、第2コア22及び第4コア24が側壁72Sで覆われ、露出しないように実行されてよい。このようにすることで、ドライエッチングプロセスが第2コア22及び第4コア24にダメージを与えにくくなる。第2コア22及び第4コア24を覆う側壁72Sは、フッ酸エッチング等のウェットエッチングプロセスによってエッチングされてよい。このようにすることで、第2コア22及び第4コア24は、トレンチ72の形成によって露出しても、ダメージを受けにくくなる。
図10Fに示されるように、トレンチ72の内部に第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32が成膜される。第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32は、同じ材料で構成される場合、同時にトレンチ72内に成膜されてよい。第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32は、プラズマCVD又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。内部に第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32が成膜されるトレンチ72は、第1トレンチとも称される。
図10Gに示されるように、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32が成膜されたトレンチ72がクラッド54によって埋められる。その結果、第1非相反性部材31及び第2非相反性部材32が基板50に埋め込まれる。クラッド54は、プラズマCVD又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。クラッド54を成膜した後の基板50の表面は、CMP等のプロセスによって平坦化されてよい。
図10Hに示されるように、トレンチ73が形成される。トレンチ73は、側壁73Sによって区画される溝又は穴に対応する。トレンチ73は、例えばRIE等のドライエッチングで形成されてよい。トレンチ73が形成される位置及びトレンチ73の深さは、磁性体40の位置に基づいて定まる。磁性体40の位置は、上述のとおり、第1非相反性部材31が位置する部分に印加される磁界Hの第5方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように、且つ、第2非相反性部材32が位置する部分に印加される磁界Hの第6方向の成分がそれ以外の成分より大きくなるように定められる。
図10I及び図10Jに示されるように、トレンチ73の内部に磁性体40が成膜される。磁性体40は、プラズマCVD又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。内部に磁性体40が成膜されるトレンチ73は、第2トレンチとも称される。磁性体40が第1磁性体と第2磁性体とを含む場合、第1磁性体と第2磁性体との間に埋め込み材56が成膜されてもよい。埋め込み材56は、トレンチ71又は72の上面を埋める材料と同じであってよいし、クラッド54と同じ材料であってもよい。
図10Kに示されるように、磁性体40が成膜されたトレンチ73がクラッド54によって埋められる。その結果、磁性体40が基板50に埋め込まれる。クラッド54は、プラズマCVD又はスパッタ等のプロセスによって成膜されてよい。クラッド54を成膜した後の基板50の表面は、CMP等のプロセスによって平坦化されてよい。
図10Lに示されるように、磁性体40が着磁される。着磁は、基板50に対して磁界Hを印加することによって行われてよい。磁性体40の磁化方向、及び、磁化の強さを制御することによって、アイソレータ10において非対称コアに発現させる非相反性の大きさが制御される。
以上、図10Aから図10Lまでを参照して説明してきたプロセスフローによって、図1及び図2に例示されているアイソレータ10が製造され得る。
(電磁波送信器100の実施形態)
第1アイソレータ11と第2アイソレータ12とを備えるアイソレータ10は、電磁波を送信する構成と組み合わされて使用されてよい。図11に示されるように、電磁波送信器100は、第1アイソレータ11と、第2アイソレータ12と、光源110とを備える。電磁波送信器100は、光源110から第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12に電磁波を入力し、第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12から受信器140に向けて電磁波を出力する。第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12は、光源110から受信器140に向けて伝搬する電磁波の透過率が受信器140から光源110に向けて伝搬する電磁波の透過率より大きくなるように構成される。このようにすることで、光源110に向けて電磁波が入射しにくくなる。その結果、光源110が保護され得る。
光源110は、例えば、LD(Laser Diode)又はVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)等の半導体レーザであってよい。光源110は、可視光に限られず種々の波長の電磁波を射出するデバイスを含んでよい。光源110は、基板50の上に第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12とともに形成されてよい。光源110は、偏光方向がX軸方向となるような直線偏光の電磁波を第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12に入力してよい。
電磁波送信器100は、変調器120と信号入力部130とをさらに備えてよい。変調器120は、電磁波の強度を変化させることによって変調する。変調器120は、光源110とアイソレータ10との間ではなく、アイソレータ10と受信器140との間に位置してもよい。変調器120は、例えば、電磁波をパルス変調してもよい。信号入力部130は、外部装置等からの信号の入力を受け付ける。信号入力部130は、例えばD/Aコンバータを含んでよい。信号入力部130は、変調器120に信号を出力する。変調器120は、信号入力部130で取得した信号に基づいて、電磁波を変調する。
光源110は、変調器120及び信号入力部130を含んで構成されてもよい。この場合、光源110は、変調した電磁波を出力し、第1アイソレータ11及び第2アイソレータ12に入力してもよい。
図12に示されるように、電磁波送信器100は、基板50の上に実装されてよい。光源110は、変調器120を介して、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の負の方向の側の端部に接続するように実装されてよい。この場合、変調器120は、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の負の方向の側の端部に接続するように実装される。光源110は、変調器120を介さずに、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の負の方向の側の端部に接続するように実装されてよい。受信器140は、変調器120を介さずに、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の正の方向の側の端部に接続するように実装されてよい。受信器140は、変調器120を介して、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の正の方向の側の端部に接続するように実装されてよい。この場合、変調器120は、第1コア21及び第3コア23それぞれのY軸の正の方向の側の端部に接続するように実装される。信号入力部130は、電気配線80によって変調器120に接続されてよい。電気配線80は、Z軸方向から基板50を平面視した場合に、磁性体40と重ならないように位置してよい。このようにすることで、電気配線80が伝送する電気信号は、磁性体40による磁界Hの影響を受けにくくなる。また、電気配線80で伝送される電気信号によって生じる磁界が、磁性体40が生じる磁界Hに影響を及ぼしにくくなる。
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1トレンチは、第2トレンチと識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
本開示において、X軸、Y軸、及びZ軸は、説明の便宜上設けられたものであり、互いに入れ替えられてよい。本開示に係る構成は、X軸、Y軸、及びZ軸によって構成される直交座標系を用いて説明されてきた。本開示に係る各構成の位置関係は、直交関係にあると限定されるものではない。