多結晶のシリコン基板を用いた太陽電池(多結晶シリコン型太陽電池)は、例えば、比較的高い変換効率を有し、大量生産にも適している。また、シリコンは、例えば、地球上に大量に存在している酸化シリコンから得られる。さらに、多結晶のシリコン基板は、例えば、キャスト法で得られたシリコンのインゴットから切り出されたシリコンのブロックの薄切りによって比較的容易に得られる。このため、多結晶シリコン型太陽電池は、長年にわたって太陽電池の全生産量において高いシェアを占め続けている。
ところで、太陽電池の変換効率を向上させるためには、例えば、多結晶のシリコン基板よりも単結晶のシリコン基板を用いる方が有利であると考えられる。
そこで、例えば、シリコン融液を用いて、鋳型の底部上に配置した種結晶を起点として上方に向けて結晶粒を成長させるモノライクキャスト法によって、擬似的な単結晶(擬似単結晶)の領域を有するシリコンのインゴットを製造することが考えられる。擬似単結晶は、種結晶の結晶方位を受け継いで一方向に成長することで形成されたものである。この擬似単結晶には、例えば、ある程度の数の転位が存在していてもよいし、粒界が存在していてもよい。
このモノライクキャスト法では、例えば、一般的なキャスト法と同様に、シリコンのインゴットを製造する際に、鋳型内の側壁を起点とした歪みおよび欠陥が生じやすく、シリコンのインゴットの外周部分は、欠陥が多く存在している状態になりやすい。このため、例えば、シリコンのインゴットのうちの外周部分を切り落としてシリコンのブロックを形成した上で、このシリコンのブロックを薄切りにすることで、欠陥の少ない高品質のシリコン基板を得ることが考えられる。ここでは、例えば、底面および上面の面積が大きくなるようにシリコンのインゴットの大型化を図ることで、シリコンのインゴットにおいて切り落とされる外周部が占める割合を減じることができる。その結果、例えば、シリコンのインゴットの生産性を向上させることができる。
ところが、例えば、鋳型内の底部上に配置するための種結晶の大型化を図ることは容易でない。このため、シリコンのインゴットの大型化を図るために、例えば、鋳型内の底部上に、複数の種結晶を並べた上で、シリコン融液を用いて、鋳型内において鋳型の底部側から上方に向かってシリコンの擬似単結晶を成長させることが考えられる。
しかしながら、例えば、複数の種結晶が相互に隣接している箇所およびその箇所の近傍の部分を起点として上方に向かって成長させたシリコンの擬似単結晶の部分には、多くの欠陥が生じ得る。これにより、シリコンのインゴット、シリコンのブロックおよびシリコンの基板において、欠陥の増大による品質の低下が生じ得る。
そこで、本開示の発明者らは、シリコンのインゴット、シリコンのブロック、シリコンの基板および太陽電池について、品質を向上させることができる技術を創出した。
これについて、以下、第1実施形態およびその変形例について図面を参照しつつ説明する。図面においては同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものである。図1、図2、図4から図5(b)、図8(a)から図11および図13から図35(b)には、それぞれ右手系のXYZ座標系が付されている。このXYZ座標系では、鋳型121、シリコンインゴットIn1,In1a,In1bおよびシリコンブロックBk1,Bk1a,Bk1bの高さ方向ならびにシリコン基板1,1a,1bの厚さ方向が+Z方向とされている。また、このXYZ座標系では、鋳型121、シリコンインゴットIn1,In1a,In1b、シリコンブロックBk1,Bk1a,Bk1bおよびシリコン基板1,1a,1bのそれぞれの1つの幅方向が+X方向とされ、+X方向と+Z方向との両方に直交する方向が+Y方向とされている。
<1.第1実施形態>
<1-1.シリコンインゴットの製造装置>
第1実施形態に係るシリコンのインゴット(シリコンインゴットともいう)In1(図19(a)および図19(b)を参照)の製造装置は、例えば、第1方式の製造装置(第1製造装置ともいう)1001および第2方式の製造装置(第2製造装置ともいう)1002などを含む。第1製造装置1001および第2製造装置1002は、何れも、鋳型121の底部121b上に配置した種結晶部を起点として結晶粒を成長させるモノライクキャスト法によって、擬似単結晶の領域(擬似単結晶領域ともいう)を有するシリコンインゴットIn1を製造するための装置である。
<1-1-1.第1製造装置>
第1製造装置1001について、図1を参照しつつ説明する。第1製造装置1001は、坩堝111から鋳型121内に注いだ溶融状態のシリコンの液(シリコン融液ともいう)を鋳型121内で凝固させる方式(注湯方式ともいう)で、シリコンインゴットを製造する製造装置である。
図1で示されるように、第1製造装置1001は、例えば、上部ユニット1101と、下部ユニット1201と、制御部1301と、を備えている。
上部ユニット1101は、例えば、坩堝111と、第1上部ヒータH1uと、側部ヒータH1sと、を有する。下部ユニット1201は、例えば、鋳型121と、鋳型保持部122と、冷却板123と、回転軸124と、第2上部ヒータH2uと、下部ヒータH2lと、第1測温部CHAと、第2測温部CHBと、を有する。坩堝111および鋳型121の素材には、例えば、シリコンの融点以上の温度において、溶融、変形、分解およびシリコンとの反応が生じにくく、不純物の含有量が低減された素材が適用される。
坩堝111は、例えば、本体部111bを有する。本体部111bは、全体が有底の略円筒形状の構成を有する。ここで、坩堝111は、例えば、第1内部空間111iと、上部開口部(第1上部開口部ともいう)111uoと、を有する。第1内部空間111iは、本体部111bによって囲まれた状態にある空間である。例えば、第1上部開口部111uoは、第1内部空間111iが坩堝111外の上方の空間に接続するように開口している状態にある部分である。また、例えば、本体部111bは、この本体部111bの底部を貫通している下部開口部111bo、を有する。本体部111bの素材には、例えば、石英ガラスなどが適用される。第1上部ヒータH1uは、例えば、第1上部開口部111uoの真上において平面視で円環状に位置している。側部ヒータH1sは、例えば、本体部111bを側方から囲むように平面視で円環状に位置している。
例えば、第1製造装置1001を用いてシリコンインゴットIn1を製造する際には、上部ユニット1101において、坩堝111の第1内部空間111iに、第1上部開口部111uoからシリコンインゴットIn1の原料である固体状態の複数のシリコンの塊(シリコン塊ともいう)が充填される。このシリコン塊は、例えば、粉末状態のシリコン(シリコン粉末ともいう)を含んでいてもよい。この第1内部空間111iに充填されたシリコン塊は、例えば、第1上部ヒータH1uおよび側部ヒータH1sによる加熱によって溶融される。そして、例えば、下部開口部111bo上に設けられたシリコン塊が加熱によって溶融されることで、第1内部空間111i内の溶融したシリコン融液MS1(図10を参照)が下部開口部111boを介して下部ユニット1201の鋳型121に向けて注がれる。ここで、上部ユニット1101では、例えば、坩堝111に下部開口部111boが設けられず、坩堝111が傾斜されることで、坩堝111内から鋳型121内に向けてシリコン融液MS1が注がれてもよい。
鋳型121は、全体が有底の筒状の構成を有する。鋳型121は、例えば、底部121bと、側壁部121sと、を有する。ここで、鋳型121は、例えば、第2内部空間121iと、上部開口部(第2上部開口部ともいう)121oと、を有する。例えば、第2内部空間121iは、底部121bおよび側壁部121sによって囲まれた状態にある空間である。例えば、第2上部開口部121oは、第2内部空間121iが鋳型121外の上方の空間に接続するように開口している状態にある部分である。換言すれば、例えば、第2上部開口部121oは、第1方向としての+Z方向に開口している状態にある。第2上部開口部121oは、例えば、鋳型121の+Z方向の端部に位置している。底部121bおよび第2上部開口部121oの形状には、例えば、正方形状の形状が適用される。そして、底部121bおよび第2上部開口部121oの一辺は、例えば、300ミリメートル(mm)から800mm程度とされる。第2上部開口部121oは、例えば、坩堝111から第2内部空間121i内へのシリコン融液MS1の注入を受け付けることができる。ここで、側壁部121sおよび底部121bの素材には、例えば、シリカなどが適用される。さらに、側壁部121sは、例えば、炭素繊維強化炭素複合材料と、断熱材としてのフェルトと、が組み合わされることで構成されてもよい。
また、図1で示されるように、第2上部ヒータH2uは、例えば、鋳型121の第2上部開口部121oの真上において環状に位置している。環状には、例えば、円環状、三角環状、四角環状または多角環状などが適用される。下部ヒータH2lは、例えば、鋳型121の側壁部121sの+Z方向における下部から上部にかけた部分を側方から囲むように環状に位置している。下部ヒータH2lは、例えば、複数の領域に分割されて、各領域の温度が独立して制御されてもよい。
鋳型保持部122は、例えば、鋳型121を下方から保持している状態で鋳型121の底部121bの下面と密着するように位置している。鋳型保持部122の素材には、例えば、グラファイトなどの伝熱性の高い素材が適用される。ここで、例えば、鋳型保持部122と、鋳型121のうちの側壁部121sと、の間に断熱部が位置していてもよい。この場合には、例えば、側壁部121sよりも底部121bから、鋳型保持部122を介して冷却板123に優先的に熱が伝えられ得る。断熱部の素材には、例えば、フェルトなどの断熱材が適用される。
冷却板123は、例えば、回転軸124の回転によって上昇または下降を行うことができる。例えば、冷却板123は、回転軸124の回転によって上昇することで、鋳型保持部122の下面に接触することができる。また、例えば、冷却板123は、回転軸124の回転によって下降することで、鋳型保持部122の下面から離れることができる。換言すれば、冷却板123は、例えば、鋳型保持部122の下面に対して離接可能に位置している。ここで、冷却板123が鋳型保持部122の下面に接触することを「接地」ともいう。冷却板123には、例えば、中空の金属板などの内部に水またはガスが循環する構造を有するものが適用される。第1製造装置1001を用いてシリコンインゴットIn1を製造する際には、例えば、鋳型121の第2内部空間121i内にシリコン融液MS1を充填させた状態で、冷却板123を鋳型保持部122の下面に接触させることで、シリコン融液MS1の抜熱を行うことができる。このとき、シリコン融液MS1の熱は、例えば、鋳型121の底部121bと、鋳型保持部122と、を介して冷却板123に伝わる。これにより、例えば、シリコン融液MS1は、冷却板123によって底部121b側から冷却される。
第1測温部CHAおよび第2測温部CHBは、例えば、温度を計測することができる。ただし、例えば、第2測温部CHBは無くてもよい。第1測温部CHAおよび第2測温部CHBは、例えば、アルミナ製または炭素製の細い管で被覆された熱電対などによって温度に係る測定が可能である。そして、例えば、制御部1301などが有する温度検知部において、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBのそれぞれで生じる電圧に応じた温度が検出される。ここで、第1測温部CHAは、例えば、下部ヒータH2lの近傍に位置している。第2測温部CHBは、例えば、鋳型121の底部121bの中央部の下面付近に位置している。
制御部1301は、例えば、第1製造装置1001における全体の動作を制御することができる。制御部1301は、例えば、プロセッサ、メモリおよび記憶部などを有する。この制御部1301は、例えば、記憶部内に格納されているプログラムを、プロセッサによって実行することで、各種制御を行うことができる。例えば、制御部1301によって、第1上部ヒータH1u、第2上部ヒータH2u、側部ヒータH1sおよび下部ヒータH2lの出力が制御される。制御部1301は、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBを用いて得られる温度および時間の経過の少なくとも一方に応じて、第1上部ヒータH1u、第2上部ヒータH2u、側部ヒータH1sおよび下部ヒータH2lの出力を制御することができる。また、制御部1301は、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBを用いて得られる温度および時間の経過の少なくとも一方に応じて、回転軸124による冷却板123の昇降を制御することができる。これにより、例えば、制御部1301は、鋳型保持部122の下面に対する冷却板123の離接を制御することができる。
<1-1-2.第2製造装置>
第2製造装置1002について、図2を参照しつつ説明する。第2製造装置1002は、鋳型121内において、シリコンインゴットIn1の原料である固体状態の複数のシリコン塊を溶融させることで生成したシリコン融液MS1を凝固させる方式(鋳型内溶解方式ともいう)で、シリコンインゴットIn1を製造する製造装置である。
図2で示されるように、第2製造装置1002は、例えば、本体ユニット1202と、制御部1302と、を備えている。
本体ユニット1202は、例えば、鋳型121と、鋳型保持部122と、冷却板123と、回転軸124と、伝熱部125と、鋳型支持機構126と、側部ヒータH22と、第1測温部CHAと、第2測温部CHBと、を有する。ここでは、上述した第1製造装置1001と同様な構成および機能を有する部分には、同一の名称および同一の符号が付されている。以下では、第2製造装置1002のうちの第1製造装置1001とは構成および機能が異なる部分について説明する。
伝熱部125は、例えば、鋳型保持部122の下部に対して連結された状態にある。伝熱部125は、例えば、鋳型保持部122の下部に対して連結された状態にある複数本の部材(伝熱部材ともいう)を有する。複数本の伝熱部材には、例えば、4本の伝熱部材が適用される。伝熱部材の素材には、例えば、グラファイトなどの伝熱性の高い素材が適用される。ここでは、例えば、冷却板123は、回転軸124の回転によって上昇することで、伝熱部125の下部に接触することができる。また、例えば、冷却板123は、回転軸124の回転によって下降することで、伝熱部125の下部から離れることができる。換言すれば、冷却板123は、例えば、伝熱部125の下部に対して離接可能に位置している。より具体的には、冷却板123は、例えば、各伝熱部材の下部に対して離接可能に位置している。ここでは、冷却板123が伝熱部125の下部に接触することを「接地」ともいう。第2製造装置1002を用いてシリコンインゴットIn1を製造する際には、例えば、鋳型121の第2内部空間121i内にシリコン融液MS1を充填させた状態で、冷却板123を伝熱部125の下部に接触させることで、シリコン融液MS1の抜熱を行うことができる。このとき、シリコン融液MS1の熱は、例えば、鋳型121の底部121bと、鋳型保持部122と、伝熱部125と、を介して冷却板123に伝わる。これにより、例えば、シリコン融液MS1は、冷却板123によって底部121b側から冷却される。
側部ヒータH22は、例えば、鋳型121の側壁部121sの+Z方向における下部から上部にかけた部分を側方から囲むように平面視で環状に位置している。側部ヒータH22の近傍には、例えば、第1測温部CHAが位置している。側部ヒータH22は、例えば、複数の領域に分割されて、各領域の温度が独立して制御されてもよい。
鋳型支持機構126は、例えば、鋳型保持部122を下方から支持している状態にある。鋳型支持機構126は、例えば、鋳型保持部122を下方から支持するようにこの鋳型保持部122に対してそれぞれ連結された状態にある複数本のロッドを有する。複数本のロッドは、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダーなどの昇降機構によって上下方向に移動可能である。このため、鋳型支持機構126は、鋳型保持部122を介して鋳型121を昇降させることができる。
制御部1302は、例えば、第2製造装置1002における全体の動作を制御することができる。制御部1302は、例えば、プロセッサ、メモリおよび記憶部などを有する。この制御部1302は、例えば、記憶部内に格納されているプログラムを、プロセッサによって実行することで、各種制御を行うことができる。例えば、制御部1302によって、側部ヒータH22の出力、回転軸124による冷却板123の昇降および鋳型支持機構126による鋳型121の昇降が制御される。制御部1302は、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBを用いて得られる温度および時間の経過の少なくとも一方に応じて、側部ヒータH22の出力および伝熱部125の下部に対する冷却板123の離接を制御することができる。ここで、制御部1302は、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBのそれぞれで生じる電圧に応じた温度を検出することが可能な温度検知部を有する。
<1-2.シリコンインゴットの製造方法>
<1-2-1.第1製造装置を用いたシリコンインゴットの製造方法>
第1製造装置1001を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法について、図3から図11を参照しつつ説明する。この第1製造装置1001を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法では、例えば、図3で示されるように、ステップSp1の第1工程と、ステップSp2の第2工程と、ステップSp3の第3工程と、ステップSp4の第4工程と、がこの記載の順に行われる。これにより、例えば、結晶方位が揃った高品質のシリコンインゴットIn1が簡便に製造される。図4、図5および図8(a)から図11には、各工程における坩堝111および鋳型121の双方の状態あるいは鋳型121の状態が示されている。
<<第1工程(ステップSp1)>>
ステップSp1の第1工程では、上述した第1製造装置1001を準備する。この第1製造装置1001は、例えば、第1方向としての+Z方向に開口している第2上部開口部121oを有する鋳型121を含む。
<<第2工程(ステップSp2)>>
ステップSp2の第2工程では、例えば、上記第1工程で準備した鋳型121内の底部121b上に単結晶シリコンの種結晶部群200sを配置する。ここでは、第2工程において、ステップSp21、ステップSp22およびステップSp23の3工程がこの記載の順に行われる。
ステップSp21では、例えば、図4で示されるように、鋳型121の内壁面上に、離型材の塗布によって離型材の層(離型材層ともいう)Mr1を形成する。この離型材層Mr1の存在によって、例えば、鋳型121内でシリコン融液MS1が凝固する際に鋳型121の内壁面にシリコンインゴットIn1が融着しにくくなる。離型材層Mr1の材料には、例えば、窒化珪素、炭化珪素および酸化珪素などのうちの1種以上の材料が適用される。離型材層Mr1は、例えば、窒化珪素、炭化珪素および酸化珪素の1種以上の材料を含むスラリーが、鋳型121の内壁面に塗布またはスプレーなどによってコーティングされることで、形成され得る。スラリーは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの有機バインダと溶剤とを主に含む溶液中に、窒化珪素、炭化珪素および酸化珪素のうちの1種の材料または2種以上の材料の混合物の粉末を添加することで生成された溶液を攪拌することで生成される。
ステップSp22では、図5(a)および図5(b)で示されるように、鋳型121内の底部121b上に、種結晶部群200sを配置する。このとき、例えば、ステップSp21で鋳型121の内壁面上に形成した離型材層Mr1を乾燥させる際に、種結晶部群200sを離型材層Mr1に貼り付けてもよい。
ここで、例えば、種結晶部群200sの第1方向としての+Z方向に向いている各上面の面方位が、ミラー指数における(100)であれば、種結晶部群200sが容易に製造され得る。また、例えば、後述するシリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際における結晶成長の速度が向上し得る。また、種結晶部群200sの上面の形状は、例えば、図5(b)で示されるように、平面視した場合に、矩形状または正方形状とされる。また、種結晶部群200sの厚さは、例えば、坩堝111から鋳型121内にシリコン融液MS1が注入される際に、種結晶部群200sが、底部121bまで溶けない程度の厚さとされる。具体的には、種結晶部群200sの厚さは、例えば、5mmから70mm程度とされる。また、種結晶部群200sの厚さは、例えば、10mmから30mm程度であってもよい。
ここでは、例えば、シリコンインゴットIn1の底面積の大型化による鋳造効率の向上および種結晶の大型化の難しさなどが考慮されて、底部121b上に複数の種結晶を含む種結晶部群200sを配置する。種結晶部群200sは、例えば、第1種結晶部Sd1と、第2種結晶部Sd2と、第1中間種結晶部Cs1と、を含む。具体的には、例えば、鋳型121内の底部121b上に、第1種結晶部Sd1と、第1中間種結晶部Cs1と、第2種結晶部Sd2と、を第1方向としての+Z方向に垂直である第2方向としての+X方向においてこの記載の順に隣接するように配置する。換言すれば、例えば、第1種結晶部Sd1と第2種結晶部Sd2との間に、第1中間種結晶部Cs1を配置する。第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2のそれぞれは、単結晶シリコンで構成されている部分(単に種結晶部ともいう)である。第1中間種結晶部Cs1は、1つ以上の単結晶シリコンを含む部分(単に中間種結晶部ともいう)である。また、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれは、例えば、-Z方向に向いて平面視した場合に矩形状の外形を有する。ただし、この外形は矩形状に限定されない。
そして、ここでは、第2方向としての+X方向において、第1種結晶部Sd1の幅(第1種幅ともいう)Ws1および第2種結晶部Sd2の幅(第2種幅ともいう)Ws2よりも、第1中間種結晶部Cs1の幅(第3種幅ともいう)Ws3の方が小さい。換言すれば、第2方向としての+X方向において、第1種幅Ws1および第2種幅Ws2のそれぞれは、第3種幅Ws3よりも大きい。ここで、例えば、底部121bの内壁面が、一辺の長さが350mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、第1種幅Ws1および第2種幅Ws2のそれぞれは、例えば、50mmから250mm程度とされる。第3種幅Ws3は、例えば、5mmから20mm程度とされる。
第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2のそれぞれには、例えば、板状またはブロック状の単結晶シリコンが適用される。第1中間種結晶部Cs1には、例えば、1つ以上の棒状の単結晶シリコンが適用される。換言すれば、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれに、同じ材料の単結晶シリコンが適用される。ここで、第1中間種結晶部Cs1は、例えば、第1方向としての+Z方向および第2方向としての+X方向の双方に直交する第3方向としての+Y方向に沿った長手方向を有する。この第1中間種結晶部Cs1は、例えば、1つの単結晶シリコンであってもよいし、第3方向としての+Y方向に並ぶように位置している2つ以上の単結晶シリコンを有していてもよいし、第2方向としての+X方向に並ぶように位置している2つ以上の単結晶シリコンを有していてもよい。
ここで、例えば、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を第1回転角度関係とする。また、例えば、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転角度関係を第2回転角度関係とする。この場合には、ステップSp22において、例えば、第1回転角度関係および第2回転角度関係のそれぞれが、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となるように、種結晶部群200sを配置する。「対応粒界」とは、粒界を挟んで隣接する、同一の結晶格子を有する2つの結晶粒が、共通する結晶方位を回転軸として相対的に回転した関係を有する場合に、この2つの結晶粒に共通した結晶格子の位置が規則的に並んだ格子点を形成している粒界のことをいう。この対応粒界を挟んで隣接する2つの結晶粒を第1結晶粒と第2結晶粒とした場合に、対応粒界において第1結晶粒の結晶格子がN個の格子点ごとに第2結晶粒の結晶格子の格子点と共通していれば、この格子点の出現周期を示すNを、対応粒界の「Σ値」という。
この「Σ値」について単純立方格子を例に挙げて説明する。図6では、単純立方格子のミラー指数の(100)面における格子点Lp1の位置が、実線La1で描かれた互いに直交する複数の縦線と複数の横線との交点で示されている。図6の例では、単純立方格子の単位格子(第1単位格子ともいう)Uc1は、太い実線で囲まれた正方形の部分である。図6には、単純立方格子をミラー指数における[100]方位に沿った結晶軸を回転軸として時計回りに36.52度(36.52°)回転させた後の単純立方格子のミラー指数の(100)面における格子点Lp2の位置が、破線La2で描かれた互いに直交する複数の直線の交点で示されている。ここでは、回転前の格子点Lp1と回転後の格子点Lp2とが重なり合う点(対応格子点ともいう)Lp12が周期的に生じる。図6では、周期的な複数の対応格子点Lp12の位置に黒丸が付されている。図6の例では、複数の対応格子点Lp12で構成される格子(対応格子ともいう)における単位格子(対応単位格子ともいう)Uc12は、太い破線で囲まれた正方形の部分である。ここで、実線La1の交点で格子点Lp1の位置が示された回転前の単純立方格子(第1格子ともいう)と、破線La2の交点で格子点Lp2の位置が示された回転後の単純立方格子(第2格子ともいう)と、の間における対応度(対応格子点の密度)を示す指標として、Σ値が用いられる。ここでは、Σ値は、例えば、図6で示される対応単位格子Uc12の面積S12を第1単位格子Uc1の面積S1で除することで算出され得る。具体的には、Σ値=(対応単位格子の面積)/(第1単位格子の面積)=(S12)/(S1)の計算式によってΣ値が算出され得る。図6の例では、算出されるΣ値は5となる。このようにして算出されるΣ値は、粒界を挟んで隣接する、所定の回転角度関係を有している第1格子と第2格子との間における対応度を示す指標として使用され得る。すなわち、Σ値は、粒界を挟んで隣接する所定の回転角度関係を有しており且つ同一の結晶格子を有する2つの結晶粒の間における対応度を示す指標として使用され得る。
ここでは、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係には、例えば、1度から3度程度の誤差が許容され得る。この誤差は、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1を準備する際に切断で生じる誤差、ならびに第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1を配置する際に生じる誤差などを含む。これらの誤差は、例えば、後述するシリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際に緩和され得る。
ここで、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1の第1方向としての+Z方向に向いている各上面の面方位が、ミラー指数における(100)である場合を想定する。別の観点から言えば、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>である場合を想定する。
この場合には、対応粒界には、例えば、Σ値が5の対応粒界、Σ値が13の対応粒界、Σ値が17の対応粒界、Σ値が25の対応粒界およびΣ値が29の対応粒界のうちの何れか1つの対応粒界が適用される。Σ値が5の対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係は、例えば、36度から37度程度であり、35度から38度程度であってもよい。Σ値が13の対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係は、例えば、22度から23度程度であり、21度から24度程度であってもよい。Σ値が17の対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係は、例えば、26度から27度程度であり、25度から28度程度であってもよい。Σ値が25の対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係は、例えば、16度から17度程度であり、15度から18度程度であってもよい。Σ値が29の対応粒界(ランダム粒界ともいう)に対応する単結晶シリコンの回転角度関係は、例えば、43度から44度程度であり、42度から45度程度であってもよい。第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1の各結晶方位は、X線回折法または電子後方散乱回折(Electron Back Scatter Diffraction Patterns:EBSD)法などを用いた測定で確認され得る。
ここでは、例えば、シリコンの結晶のミラー指数における面方位が(100)である上面が第1方向としての+Z方向に向くように、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1を配置することが考えられる。これにより、例えば、後述するシリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際における結晶成長の速度が向上し得る。その結果、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として上方に向けて結晶粒を成長させることで形成される、擬似単結晶が容易に得られる。したがって、シリコンインゴットIn1の品質を容易に向上させることができる。
第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれは、例えば、次のようにして準備され得る。まず、例えば、図7(a)で示されるように、チョクラルスキー(CZ)法において単結晶シリコンを成長させる方向に沿ったミラー指数の結晶方位を<100>とすることで、円柱状の単結晶シリコンの塊(単結晶シリコン塊ともいう)Mc0を得る。ここで、単結晶シリコン塊Mc0が、ミラー指数における面方位が(100)である上面Pu0と、ミラー指数における面方位が(110)である特定の線状領域Ln0が存在している外周面Pp0と、を有する場合を想定する。この場合には、次に、図7(a)で示されるように、単結晶シリコン塊Mc0の外周面Pp0に存在している線状領域Ln0を基準として、単結晶シリコン塊Mc0を切断する。図7(a)には、単結晶シリコン塊Mc0が切断される位置(被切断位置ともいう)が細い二点鎖線Ln1で仮想的に描かれている。ここでは、単結晶シリコン塊Mc0から、例えば、図7(b)で示されるように、ミラー指数における面方位が(100)である矩形状の板面Pb0をそれぞれ有する複数の単結晶シリコンの板(単結晶シリコン板ともいう)Bd0を切り出すことができる。この複数の単結晶シリコン板Bd0は、例えば、第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2として使用され得る。また、図7(b)で示されるように、例えば、二点鎖線Ln2で仮想的に描かれた被切断位置に沿って単結晶シリコン板Bd0を切断することで、単結晶シリコン板Bd0から棒状の単結晶シリコン(単結晶シリコン棒ともいう)St0を切り出すことができる。このとき、単結晶シリコン板Bd0の板面Pb0の4辺と、被切断位置を示す二点鎖線Ln2と、が成す角度が、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度とされる。ここで得られる単結晶シリコン棒St0は、例えば、第1中間種結晶部Cs1を構成する1つの単結晶シリコンとして使用され得る。
また、ここでは、図8(a)で示されるように、例えば、鋳型121内の底部121b上に、第2方向としての+X方向において微小な幅(第1微小幅ともいう)Dt1の空間(第1微小空間ともいう)Se1を空けて第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1とを配置する。また、例えば、第2方向としての+X方向において微小な幅(第2微小幅ともいう)Dt2の空間(第2微小空間ともいう)Se2を空けて第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2とを配置する。ここで、第1微小幅Dt1および第2微小幅Dt2としては、例えば、100マイクロメートル(μm)から500μm程度に設定される。
また、ここでは、図8(b)で示されるように、例えば、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との間の第1微小空間Se1の第2方向としての+X方向における幅が、第1方向としての+Z方向に行くほど若干拡がるように、鋳型121内の底部121b上に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1とが配置されてもよい。また、例えば、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間の第2微小空間Se2の第2方向としての+X方向における幅が、第1方向としての+Z方向に行くほど若干拡がるように、鋳型121内の底部121b上に、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2とが配置されてもよい。ここで、例えば、第1種結晶部Sd1の上面を第1上面Us1とし、第2種結晶部Sd2の上面を第2上面Us2とし、第1中間種結晶部Cs1の上面を第3上面Us3とする。この場合には、例えば、第1上面Us1と第3上面Us3とが小さな角度(第1小角度ともいう)θ1を成すように、鋳型121内の底部121b上に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1とを配置する。また、例えば、第2上面Us2と第3上面Us3とが小さな角度(第2小角度ともいう)θ2を成すように、鋳型121内の底部121b上に、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2とを配置する。ここで、第1小角度θ1および第2小角度θ2は、それぞれ1度から3度程度に設定される。このような配置は、例えば、鋳型121内の底部121bおよびこの底部121b上に塗布される離型材層Mr1のうちの少なくとも一方が第1方向としての+Z方向に向けて僅かに突出するような凸形状とされることで、実現され得る。
ところで、例えば、鋳型121内の下部の領域において、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上に、固体状態のシリコン塊が配されてもよい。このシリコン塊には、例えば、比較的細かいブロック状のシリコンの塊が適用される。
ステップSp23では、図9で示されるように、坩堝111の第1内部空間111iにシリコン塊PS0が導入される。ここでは、例えば、坩堝111内の下部の領域から上部の領域に向けてシリコン塊PS0が充填される。このとき、例えば、シリコンインゴットIn1においてドーパントとなる元素がシリコン塊PS0と混合される。シリコン塊PS0には、例えば、シリコンインゴットIn1の原料としてのポリシリコンの塊が適用される。ポリシリコンの塊には、例えば、比較的細かいブロック状のシリコンの塊が適用される。ここで、p型のシリコンインゴットIn1を製造する場合には、ドーパントとなる元素には、例えば、ホウ素またはガリウムなどが適用される。n型のシリコンインゴットIn1を製造する場合には、ドーパントとなる元素には、例えば、リンなどが適用される。また、ここでは、例えば、坩堝111の下部開口部111boの上を塞ぐように閉塞用のシリコン塊(閉塞用シリコン塊ともいう)PS1が充填される。これにより、例えば、第1内部空間111iから下部開口部111boに至る経路が塞がれる。
ここで、例えば、次の第3工程が開始される前には、鋳型保持部122の下面に冷却板123が接地されていない状態に設定されてもよい。
<<第3工程(ステップSp3)>>
ステップSp3の第3工程では、例えば、上記第2工程において鋳型121内の底部121b上に配置した単結晶シリコンの種結晶部群200sをシリコンの融点付近まで昇温した状態で、鋳型121内へシリコン融液MS1を注入する。具体的には、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1をシリコンの融点付近まで昇温した状態で、鋳型121内へシリコン融液MS1を注入する。
第3工程では、例えば、図10で示されるように、鋳型121の上方および側方に配置された第2上部ヒータH2uおよび下部ヒータH2lによって、シリコンの種結晶部群200sを、シリコンの融点である1414℃付近まで昇温する。ここで、例えば、上記第2工程において、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上に、固体状態のシリコン塊が配されていれば、このシリコン塊が溶融されてもよい。ここでは、種結晶部群200sが鋳型121の底部121bに密着しているため、種結晶部群200sから底部121bへの熱伝達によって種結晶部群200sは溶解せずに残存する。
また、第3工程では、例えば、図10で示されるように、坩堝111内に配されたシリコン塊PS0が加熱によって溶融され、坩堝111内にシリコン融液MS1が貯留された状態となる。ここでは、例えば、坩堝111の上方および側方に配置された第1上部ヒータH1uおよび側部ヒータH1sによって、シリコン塊PS0をシリコンの融点を超える1414℃から1500℃程度の温度域まで加熱して、シリコン融液MS1とする。図10では、ヒータによる加熱が斜線のハッチングを付した矢印で描かれている。このとき、坩堝111の下部開口部111boの上を塞いでいる閉塞用シリコン塊PS1が加熱されることで、閉塞用シリコン塊PS1が溶融する。この閉塞用シリコン塊PS1を溶融させるためのヒータが存在していてもよい。閉塞用シリコン塊PS1の溶融により、坩堝111の第1内部空間111iから下部開口部111boに至る経路が開通した状態となる。その結果、例えば、坩堝111内のシリコン融液MS1が、下部開口部111boを介して鋳型121内に注がれる。これにより、例えば、図10で示されるように、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上面がシリコン融液MS1で覆われている状態となる。
また、第3工程では、例えば、図10で示されるように、鋳型保持部122の下面に冷却板123を接地させる。これにより、例えば、鋳型121内のシリコン融液MS1から鋳型保持部122を介した冷却板123への抜熱が開始される。図10には、冷却板123の上昇を示す実線の矢印と、シリコン融液MS1から鋳型保持部122を介した冷却板123への熱の移動を示す白抜きの矢印と、が付されている。ここで、鋳型保持部122の下面に冷却板123が接地されるタイミング(接地タイミングとも言う)には、例えば、坩堝111内から鋳型121内にシリコン融液MS1を注ぎ始めた時点から予め設定された所定時間が経過したタイミングが適用され得る。また、接地タイミングには、例えば、坩堝111内から鋳型121内にシリコン融液MS1が注がれ始める直前のタイミングが適用されてもよい。接地タイミングは、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBなどの第1製造装置1001の測温部を用いて検出される温度に応じて制御されてもよい。
<<第4工程(ステップSp4)>>
ステップSp4の第4工程では、例えば、上記第3工程において鋳型121内へ注入されたシリコン融液MS1に対して、鋳型121の底部121b側から上方に向かう一方向の凝固(一方向凝固ともいう)を行わせる。
第4工程では、例えば、図11で示されるように、鋳型121内のシリコン融液MS1から鋳型保持部122を介した冷却板123への抜熱によって、鋳型121内のシリコン融液MS1が底部121b側から冷却される。これにより、例えば、シリコン融液MS1の底部121b側から上方に向かう一方向凝固が行われる。図11には、シリコン融液MS1内における熱の移動を示す太い破線の矢印と、シリコン融液MS1から鋳型保持部122を介した冷却板123への熱の移動を示す白抜きの矢印と、が付されている。ここでは、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBなどを用いて検出される温度に応じて、鋳型121の上方および側方に配置された第2上部ヒータH2uおよび下部ヒータH2lの出力が制御される。図11では、ヒータによる加熱が斜線のハッチングを付した矢印で描かれている。ここでは、例えば、第2上部ヒータH2uおよび下部ヒータH2lの付近の温度を、シリコンの融点の近傍程度の温度に保持する。これにより、例えば、鋳型121の側方からのシリコンの結晶成長が生じにくく、上方としての+Z方向への単結晶シリコンの結晶成長が生じやすい。ここで、例えば、下部ヒータH2lが複数の部分に分割されていれば、第2上部ヒータH2uと分割された下部ヒータH2lの一部とでシリコン融液MS1を加熱し、分割された下部ヒータH2lの他の一部ではシリコン融液MS1を加熱しないようにしてもよい。
この第4工程では、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固をゆっくりと進行させることで、鋳型121内においてシリコンインゴットIn1が製造される。このとき、例えば、単結晶シリコンの種結晶部群200sに含まれる、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として、擬似単結晶が成長する。
ここでは、例えば、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との間の第1回転角度関係を引き継いで、第1種結晶部Sd1を起点として成長した擬似単結晶と、第1中間種結晶部Cs1を起点として成長した擬似単結晶と、の境界に対応粒界を含む粒界(第1の機能性粒界ともいう)が生成し得る。換言すれば、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界の上方に対応粒界が生成し得る。また、例えば、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間の第2回転角度関係を引き継いで、第1中間種結晶部Cs1を起点として成長した擬似単結晶と、第2種結晶部Sd2を起点として成長した擬似単結晶と、の境界に対応粒界を含む粒界(第2の機能性粒界ともいう)が生成し得る。換言すれば、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との境界の上方に対応粒界が生成し得る。これにより、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、対応粒界が随時形成されるときに歪みが緩和され、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。また、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、第1種結晶部Sd1と第2種結晶部Sd2との間では相対的に転位が生じやすいものの、2つの機能性粒界で転位が消滅しやすく、2つの機能性粒界に挟まれた擬似単結晶領域に転位が閉じ込められやすい。ここで、例えば、第1種結晶部Sd1の第1種幅Ws1および第2種結晶部Sd2の第2種幅Ws2のそれぞれよりも、第1中間種結晶部Cs1の第3種幅Ws3の方が小さければ、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。
さらに、ここでは、例えば、図8(a)または図8(b)で示された、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との間における第1微小空間Se1の存在によって、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第1の機能性粒界が、XY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。また、例えば、図8(a)または図8(b)で示された、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間における第2微小空間Se2の存在によって、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第2の機能性粒界が、XY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。このとき、随時生成される第1の機能性粒界および第2の機能性粒界に曲がりが存在することで、例えば、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなり、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。
このようにして、例えば、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥が低減されれば、シリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。
ここで、例えば、上記第2工程において、第1回転角度関係および第2回転角度関係のそれぞれが、ミラー指数における<100>方位に沿った仮想軸を回転軸とした、Σ値が29の対応粒界に対応する回転角度関係となるように、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1を配置してもよい。この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との境界のそれぞれの上方にΣ値が29の対応粒界(ランダム粒界)が形成され得る。このとき、例えば、ランダム粒界における歪みの緩和によって欠陥が生じにくい。これにより、例えば、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥がさらに低減され得る。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1の品質がさらに向上し得る。
また、ここで、例えば、シリコンインゴットIn1が、第1方向(+Z方向)とは逆の方向(-Z方向)における一方の端部(第1端部ともいう)を含む第1部分と、第1端部とは反対側の他方の端部(第2端部ともいう)を有する第2部分と、を有していてもよい。シリコンインゴットIn1の第1端部から第2端部までの全長を100としたときに、第1部分は、例えば、第1端部を基準として0から30程度の部分であってもよいし、第2部分は、例えば、第1端部を基準として50程度から100の部分であってもよい。ここで、例えば、第1部分における対応粒界では、第2部分における対応粒界よりもΣ値が29の対応粒界(ランダム粒界)の割合が大きくてもよい。これにより、例えば、第1部分において、ランダム粒界における歪みの緩和によって欠陥が生じにくくなっている。このため、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固によって製造されるシリコンインゴットIn1では、高さ方向において低い第1部分における欠陥が低減され得る。したがって、シリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。また、ここでは、第2部分における対応粒界では、第1部分における対応粒界よりもΣ値が5の対応粒界の割合が大きくてもよい。これにより、例えば、第2部分において結晶品質を向上させることができる。また、シリコンインゴットIn1における対応粒界の存在および種類については、電子後方散乱回折(EBSD)法などを用いた測定で確認され得る。ここでは、例えば、Σ値が5である対応粒界とΣ値が29である対応粒界とが重複して検出される部分については、Σ値が5である対応粒界が存在している部分として扱う。
また、ここで、例えば、上記第2工程において、第2方向としての+X方向における第1種結晶部Sd1の第1種幅Ws1と第2種結晶部Sd2の第2種幅Ws2とは、同一であっても異なっていてもよい。ここでは、例えば、第1種幅Ws1と第2種幅Ws2との組において幅を異ならせた状態とすれば、CZ法などで得た円柱状の単結晶シリコン塊Mc0から切り出される相互に幅が異なる短冊状の種結晶部を、第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2として利用することができる。これにより、例えば、高品質のシリコンインゴットIn1を容易に製造することができる。
また、ここで、例えば、図5(a)および図5(b)で示されるように、種結晶部群200sの外周部と鋳型121の内壁の側面部(内周側面部ともいう)との間に間隙GA1が存在してもよい。さらに、例えば、間隙GA1に、種結晶部群200sに隣接するように単結晶シリコンの1つ以上の種結晶(外周部種結晶ともいう)が配置されてもよい。この場合には、例えば、種結晶部群200sの外周部と鋳型121の内周側面部との間における環状の間隙GA1を埋めるように、鋳型121の底部121bの外周部に沿って1つ以上の単結晶が配置され得る。図5(a)および図5(b)の例では、1つ以上の外周部種結晶は、例えば、第1外周部種結晶領域および第2外周部種結晶領域を含み得る。第1外周部種結晶領域は、第1種結晶部Sd1に隣接している種結晶の領域である。第2外周部種結晶領域は、第2種結晶部Sd2に隣接している種結晶の領域である。そして、例えば、第1種結晶部Sd1と第1外周部種結晶領域との間で、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした回転方向における角度関係が、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となるように設定される。また、例えば、第2種結晶部Sd2と第2外周部種結晶領域との間で、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした回転方向における角度関係が、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となるように設定される。
このような構成が採用されれば、例えば、第1種結晶部Sd1と第1外周部種結晶領域との間の回転角度関係を引き継いで、第1種結晶部Sd1を起点として成長した擬似単結晶と、第1外周部種結晶領域を起点として成長した擬似単結晶と、の境界に対応粒界を含む粒界(機能性粒界)が形成されやすい。換言すれば、第1種結晶部Sd1と第1外周部種結晶領域との境界の上方に対応粒界が形成され得る。また、例えば、第2種結晶部Sd2と第2外周部種結晶領域との間の回転角度関係を引き継いで、第2種結晶部Sd2を起点として成長した擬似単結晶と、第2外周部種結晶領域を起点として成長した擬似単結晶と、の境界に対応粒界を含む粒界(機能性粒界)が形成されやすい。換言すれば、第2種結晶部Sd2と第2外周部種結晶領域との境界の上方に対応粒界が形成され得る。これにより、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、対応粒界が随時形成されるときに歪みが緩和され、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。また、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、鋳型121の内周側面部を起点として転位が生じても、鋳型121の内周側面部に沿って環状に位置している機能性粒界において転位の進展(転位の伝播ともいう)がブロックされ得る。その結果、例えば、第1種結晶部Sd1を起点として成長した擬似単結晶および第2種結晶部Sd2を起点として成長した擬似単結晶における欠陥が低減され得る。換言すれば、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。
ところで、種結晶部群200sは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1の大型化が可能となる。
<1-2-2.第2製造装置を用いたシリコンインゴットの製造方法>
第2製造装置1002を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法について、図12から図17を参照しつつ説明する。この第2製造装置1002を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法では、例えば、図12で示されるように、ステップSt1の第1工程と、ステップSt2の第2工程と、ステップSt3の第3工程と、ステップSt4の第4工程と、がこの記載の順に行われる。これにより、例えば、結晶方位が揃った高品質のシリコンインゴットIn1が簡便に製造される。図13から図17には、各工程における鋳型121の状態が示されている。
<<第1工程(ステップSt1)>>
ステップSt1の第1工程では、上述した第2製造装置1002を準備する。この第2製造装置1002は、例えば、第1方向としての+Z方向に開口している上部開口部121oを有する鋳型121を含む。
<<第2工程(ステップSt2)>>
ステップSt2の第2工程では、例えば、上記第1工程で準備した鋳型121内の底部上に単結晶シリコンの種結晶部群200sを配置する。ここでは、第2工程において、ステップSt21、ステップSt22およびステップSt23の3工程がこの記載の順に行われる。
ステップSt21では、例えば、図13で示されるように、鋳型121の内壁面上に、離型材の塗布によって離型材層Mr1を形成する。この離型材層Mr1は、上述した図3のステップSp21と同様にして形成され得る。
ステップSt22では、図14(a)および図14(b)で示されるように、鋳型121内の底部121b上に、種結晶部群200sを配置する。ここでは、上述した図3のステップSp22と同様にして種結晶部群200sが配置され得る。
ステップSt23では、図15で示されるように、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上にシリコン塊PS0が導入される。ここでは、例えば、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上面から鋳型121の上部の領域に向けてシリコン塊PS0が充填される。このとき、例えば、シリコンインゴットIn1においてドーパントとなる元素がシリコン塊PS0と混合される。シリコン塊PS0には、例えば、シリコンインゴットIn1の原料としてのポリシリコンの塊が適用される。ポリシリコンの塊には、例えば、比較的細かいブロック状のシリコンの塊が適用される。ここで、p型のシリコンインゴットIn1を製造する場合には、ドーパントとなる元素には、例えば、ホウ素またはガリウムなどが適用される。n型のシリコンインゴットIn1を製造する場合には、ドーパントとなる元素には、例えば、リンなどが適用される。ここで、例えば、次の第3工程が開始される前には、鋳型保持部122に連結された伝熱部125の下部に冷却板123が接地されていない状態に設定される。
<<第3工程(ステップSt3)>>
ステップSt3の第3工程では、例えば、図16で示されるように、鋳型121内において、側部ヒータH22による加熱によって、上記第2工程において配置した種結晶部群200sの上で、シリコン塊PS0を溶融させてシリコン融液MS1を生成する。これにより、例えば、鋳型121内において、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1の上で、シリコン塊PS0が溶融されて、シリコン融液MS1が生成される。ここでは、例えば、側部ヒータH22の出力および鋳型支持機構126による鋳型121の昇降が適宜制御される。図16では、ヒータによる加熱が斜線のハッチングを付した矢印で描かれており、冷却板123および鋳型121の昇降のそれぞれを示す実線の矢印が付されている。また、ここでは、種結晶部群200sは、例えば、鋳型121の底部121bに密着しているため、種結晶部群200sから底部121bへの熱伝達によって種結晶部群200sは溶解せずに残存し得る。これにより、例えば、図16で示されるように、鋳型121内の底部121b上に配置された単結晶シリコンの種結晶部群200sの上面がシリコン融液MS1で覆われている状態となる。
また、第3工程では、例えば、図16で示されるように、伝熱部125の下部に冷却板123を接地させる。これにより、例えば、鋳型121内のシリコン融液MS1から鋳型保持部122および伝熱部125を介した冷却板123への抜熱が開始される。ここで、伝熱部125の下部に冷却板123が接地されるタイミング(接地タイミング)には、例えば、鋳型121内でシリコン塊PS0を溶融させ始めた時点から予め設定された所定時間が経過したタイミングが適用され得る。また、接地タイミングには、例えば、鋳型121内でシリコン塊PS0を溶融させ始める直前のタイミングが適用されてもよい。接地タイミングは、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBなどの第2製造装置1002の測温部を用いて検出される温度に応じて制御されてもよい。
<<第4工程(ステップSt4)>>
ステップSt4の第4工程では、例えば、上記第3工程において鋳型121内で生成されたシリコン融液MS1に対して、鋳型121の底部121b側から上方に向かう一方向の凝固(一方向凝固)を行わせる。
第4工程では、例えば、図17で示されるように、鋳型121内のシリコン融液MS1から鋳型保持部122および伝熱部125を介した冷却板123への抜熱によって、鋳型121内のシリコン融液MS1が底部121b側から冷却される。これにより、例えば、シリコン融液MS1の底部121b側から上方に向かう一方向凝固が行われる。図17には、シリコン融液MS1内における熱の移動を示す太い破線の矢印と、シリコン融液MS1から鋳型保持部122および伝熱部125を介した冷却板123への熱の移動を示す白抜きの矢印と、が付されている。ここでは、例えば、第1測温部CHAおよび第2測温部CHBなどを用いて検出される温度に応じて、側部ヒータH22の出力および鋳型支持機構126による鋳型121の昇降が制御される。図17では、ヒータによる加熱が斜線のハッチングを付した矢印で描かれており、鋳型121の昇降を示す実線の矢印が付されている。ここでは、例えば、側部ヒータH22の付近の温度を、シリコンの融点の近傍程度の温度に保持する。これにより、例えば、鋳型121の側方からのシリコンの結晶成長が生じにくく、上方としての+Z方向への単結晶シリコンの結晶成長が生じやすい。ここで、例えば、側部ヒータH22が複数の部分に分割されていれば、分割された側部ヒータH22の一部でシリコン融液MS1を加熱し、分割された側部ヒータH22の他の一部ではシリコン融液MS1を加熱しないようにしてもよい。
この第4工程では、例えば、上述した図3のステップSp4の第4工程と同様に、シリコン融液MS1の一方向凝固をゆっくりと進行させることで、鋳型121内においてシリコンインゴットIn1が製造される。このとき、例えば、単結晶シリコンの種結晶部群200sに含まれる、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として擬似単結晶が成長する。
ところで、第2製造装置1002を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法の一例においても、例えば、上述した第1製造装置1001を用いたシリコンインゴットIn1の製造方法の一例と同様に、種結晶部群200sの外周部と鋳型121の内周側面部との間に間隙GA1が存在してもよい。そして、例えば、間隙GA1に、種結晶部群200sに隣接するように単結晶シリコンの1つ以上の種結晶(外周部種結晶)が配置されてもよい。これにより、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、鋳型121の内周側面部を起点として転位が生じても、鋳型121の内周側面部に沿って環状に位置するように生成される機能性粒界において転位の進展(転位の伝播ともいう)がブロックされ得る。その結果、例えば、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。また、種結晶部群200sは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1の大型化が可能となる。
<1-2-3.シリコンインゴットの製造方法の第1変形例>
第1実施形態に係るシリコンインゴットIn1の製造方法の第2工程において、上記種結晶部群200sが、例えば、図18(a)で示されるように、種結晶部群200saに変更された、第1変形例に係るシリコンインゴットIn1a(図20(a)および図20(b)参照)の製造方法が採用されてもよい。種結晶部群200saは、上記種結晶部群200sをベースとして、上述した第1種結晶部Sd1(図5(b)および図14(b)参照)が、第1方向としての+Z方向に垂直であり且つ第2方向としての+X方向に交差している第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第1種結晶部Sd1a、第2中間種結晶部Cs2および第3種結晶部Sd3に変更された構成を有する。換言すれば、種結晶部群200saは、例えば、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2、第3種結晶部Sd3、第1中間種結晶部Cs1および第2中間種結晶部Cs2を含む。
この場合には、例えば、鋳型121の底部121b上に、図18(a)で示されるように、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2、第3種結晶部Sd3、第1中間種結晶部Cs1および第2中間種結晶部Cs2を配置する。より具体的には、例えば、鋳型121の底部121b上において、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2とを配置し、第3方向としての+Y方向において順に隣接するように、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3とを配置する。そして、例えば、第1中間種結晶部Cs1のうちの第3方向としての+Y方向に沿った長手方向の途中の部分に、第2中間種結晶部Cs2のうちの第2方向としての+X方向に沿った長手方向の端部が当接するように、第1中間種結晶部Cs1と第2中間種結晶部Cs2とを配置する。換言すれば、例えば、第1中間種結晶部Cs1と第2中間種結晶部Cs2とを、T字状に交差するように配置する。また、ここでは、例えば、鋳型121の底部121b上において、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第3種結晶部Sd3と第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2とが配置され得る。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1種結晶部Sd1aの幅(第1種幅)Ws1および第2種結晶部Sd2の幅(第2種幅)Ws2よりも、第1中間種結晶部Cs1の幅(第3種幅)Ws3の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1種幅Ws1および第2種幅Ws2のそれぞれは、第3種幅Ws3よりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第1種結晶部Sd1aの幅(第4種幅ともいう)Ws4および第3種結晶部Sd3の幅(第5種幅ともいう)Ws5よりも、第2中間種結晶部Cs2の幅(第6種幅ともいう)Ws6の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4種幅Ws4および第5種幅Ws5のそれぞれは、第6種幅Ws6よりも大きい。
ここで、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第1回転角度関係とする。また、例えば、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第2回転角度関係とする。第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第3回転角度関係とする。また、例えば、第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第4回転角度関係とする。この場合には、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1との間における第1回転角度関係、第1中間種結晶部Cs1と第2種結晶部Sd2との間における第2回転角度関係、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間における第3回転角度関係および第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3との間における第4回転角度関係のそれぞれが、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となるように、種結晶部群200saを配置する。ここでは、例えば、第3種結晶部Sd3と第1中間種結晶部Cs1との間における回転角度関係が、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となり得る。
このような第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aの製造方法によれば、例えば、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2、第3種結晶部Sd3、第1中間種結晶部Cs1および第2中間種結晶部Cs2をそれぞれ起点としたシリコン融液MS1の一方向凝固によって擬似単結晶を成長させる際に、対応粒界をそれぞれ含む第1の機能性粒界、第2の機能性粒界、第3の機能性粒界および第4の機能性粒界を形成することができる。ここで、例えば、第1の機能性粒界は、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1との境界の上方に形成され得る。例えば、第2の機能性粒界は、第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界の上方に形成され得る。例えば、第3の機能性粒界は、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との境界の上方に形成され得る。例えば、第4の機能性粒界は、第3種結晶部Sd3と第2中間種結晶部Cs2との境界の上方に形成され得る。その結果、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、対応粒界が随時形成されつつ、歪みが緩和され得る。また、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、第1種結晶部Sd1aと第2種結晶部Sd2との間および第1種結晶部Sd1aと第3種結晶部Sd3との間の各領域の上方では、相対的に転位が生じやすいものの、2つの機能性粒界が形成される際に転位が消滅しやすく、2つの機能性粒界に挟まれた擬似単結晶領域に転位が閉じ込められやすい。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1aの品質が向上し得る。
さらに、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1との間および第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間のそれぞれに、図8(a)または図8(b)で示した第1微小空間Se1と同様な微小空間を存在させてもよい。この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第1の機能性粒界および第3の機能性粒界が、それぞれXY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。また、例えば、第2種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との間および第3種結晶部Sd3と第2中間種結晶部Cs2との間のそれぞれに、図8(a)または図8(b)で示した第2微小空間Se2と同様な微小空間を存在させてもよい。この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第2の機能性粒界および第4の機能性粒界が、それぞれXY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。ここで、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、随時生成される第1の機能性粒界、第2の機能性粒界、第3の機能性粒界および第4の機能性粒界のそれぞれに曲がりが存在することで、色々な方向の歪みが各機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積のさらなる増加によって歪みが吸収され易くなる。これにより、例えば、シリコンインゴットIn1aにおける欠陥が低減され得る。
ところで、種結晶部群200saは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。さらに、種結晶部群200saは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1aの大型化が可能となる。
<1-2-4.シリコンインゴットの製造方法の第2変形例>
第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aの製造方法の第2工程において、上記種結晶部群200saが、例えば、図18(b)で示されるように、種結晶部群200sbに変更された、第2変形例に係るシリコンインゴットIn1b(図21(a)および図21(b)参照)の製造方法が採用されてもよい。種結晶部群200sbは、上記種結晶部群200saをベースとして、上述した第2種結晶部Sd2(図18(a)参照)が、第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第2種結晶部Sd2b、第3中間種結晶部Cs3および第4種結晶部Sd4に変更され、第1中間種結晶部Cs1が、第1種結晶部Sd1aと第2種結晶部Sd2bとの間に位置している第1中間種結晶部Cs1bと、第3種結晶部Sd3と第4種結晶部Sd4との間に位置している第4中間種結晶部Cs4と、に変更された構成を有する。換言すれば、種結晶部群200sbは、例えば、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2b、第3種結晶部Sd3、第4種結晶部Sd4、第1中間種結晶部Cs1b、第2中間種結晶部Cs2、第3中間種結晶部Cs3および第4中間種結晶部Cs4を含む。
この場合には、例えば、鋳型121の底部121b上に、図18(b)で示されるように、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2b、第3種結晶部Sd3、第4種結晶部Sd4、第1中間種結晶部Cs1b、第2中間種結晶部Cs2、第3中間種結晶部Cs3および第4中間種結晶部Cs4を配置する。より具体的には、例えば、鋳型121の底部121b上において、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1bと第2種結晶部Sd2bとを配置する。また、例えば、第3方向としての+Y方向において順に隣接するように、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3とを配置する。また、例えば、第3方向としての+Y方向において順に隣接するように、第2種結晶部Sd2bと第3中間種結晶部Cs3と第4種結晶部Sd4とを配置する。また、例えば、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第3種結晶部Sd3と第4中間種結晶部Cs4と第4種結晶部Sd4とを配置する。そして、図18(b)の例では、第1中間種結晶部Cs1bおよび第4中間種結晶部Cs4で構成される部分と、第2中間種結晶部Cs2および第3中間種結晶部Cs3で構成される部分と、が十字状に交差するように位置している。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1種結晶部Sd1aの幅(第1種幅)Ws1および第2種結晶部Sd2bの幅(第2種幅)Ws2よりも、第1中間種結晶部Cs1の幅(第3種幅)Ws3の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1種幅Ws1および第2種幅Ws2のそれぞれは、第3種幅Ws3よりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第1種結晶部Sd1aの幅(第4種幅)Ws4および第3種結晶部Sd3の幅(第5種幅)Ws5よりも、第2中間種結晶部Cs2の幅(第6種幅)Ws6の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4種幅Ws4および第5種幅Ws5のそれぞれは、第6種幅Ws6よりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第2種結晶部Sd2bの幅(第7種幅ともいう)Ws7および第4種結晶部Sd4の幅(第8種幅ともいう)Ws8よりも、第3中間種結晶部Cs3の幅(第9種幅ともいう)Ws9の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第7種幅Ws7および第8種幅Ws8のそれぞれは、第9種幅Ws9よりも大きい。また、例えば、第2方向としての+X方向において、第3種結晶部Sd3の幅(第10種幅ともいう)Ws10および第4種結晶部Sd4の幅(第11種幅ともいう)Ws11よりも、第4中間種結晶部Cs4の幅(第12種幅ともいう)Ws12の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第10種幅Ws10および第11種幅Ws11のそれぞれは、第12種幅Ws12よりも大きい。
ここで、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1bとの間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第1回転角度関係とする。また、例えば、第1中間種結晶部Cs1bと第2種結晶部Sd2bとの間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第2回転角度関係とする。また、例えば、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第3回転角度関係とする。また、例えば、第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第4回転角度関係とする。また、例えば、第2種結晶部Sd2bと第3中間種結晶部Cs3との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第5回転角度関係とする。また、例えば、第3中間種結晶部Cs3と第4種結晶部Sd4との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第6回転角度関係とする。また、例えば、第3種結晶部Sd3と第4中間種結晶部Cs4との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第7回転角度関係とする。また、例えば、第4中間種結晶部Cs4と第4種結晶部Sd4との間における、第1方向としての+Z方向に沿った仮想軸を中心とした単結晶シリコンの回転方向の角度関係を、第8回転角度関係とする。この場合には、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1bとの間における第1回転角度関係、第1中間種結晶部Cs1bと第2種結晶部Sd2bとの間における第2回転角度関係、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間における第3回転角度関係、第2中間種結晶部Cs2と第3種結晶部Sd3との間における第4回転角度関係、第2種結晶部Sd2bと第3中間種結晶部Cs3との間における第5回転角度関係、第3中間種結晶部Cs3と第4種結晶部Sd4との間における第6回転角度関係、第3種結晶部Sd3と第4中間種結晶部Cs4との間における第7回転角度関係および第4中間種結晶部Cs4と第4種結晶部Sd4との間における第8回転角度関係のそれぞれが、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係となるように、種結晶部群200sbを配置する。
このような第2変形例に係るシリコンインゴットIn1bの製造方法によれば、例えば、第1種結晶部Sd1a、第2種結晶部Sd2b、第3種結晶部Sd3、第4種結晶部Sd4、第1中間種結晶部Cs1b、第2中間種結晶部Cs2、第3中間種結晶部Cs3および第4中間種結晶部Cs4をそれぞれ起点としたシリコン融液MS1の一方向凝固によって擬似単結晶を成長させる際に、対応粒界をそれぞれ含む、第1の機能性粒界、第2の機能性粒界、第3の機能性粒界、第4の機能性粒界、第5の機能性粒界、第6の機能性粒界、第7の機能性粒界および第8の機能性粒界を形成することができる。ここで、例えば、第1の機能性粒界は、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1bとの境界の上方に形成され得る。例えば、第2の機能性粒界は、第2種結晶部Sd2bと第1中間種結晶部Cs1bとの境界の上方に形成され得る。例えば、第3の機能性粒界は、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との境界の上方に形成され得る。例えば、第4の機能性粒界は、第3種結晶部Sd3と第2中間種結晶部Cs2との境界の上方に形成され得る。例えば、第5の機能性粒界は、第2種結晶部Sd2bと第3中間種結晶部Cs3との境界の上方に形成され得る。例えば、第6の機能性粒界は、第4種結晶部Sd4と第3中間種結晶部Cs3との境界の上方に形成され得る。例えば、第7の機能性粒界は、第3種結晶部Sd3と第4中間種結晶部Cs4との境界の上方に形成され得る。例えば、第8の機能性粒界は、第4種結晶部Sd4と第4中間種結晶部Cs4との境界の上方に形成され得る。その結果、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、対応粒界が随時形成されつつ、歪みが緩和され得る。また、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、第1種結晶部Sd1aと第2種結晶部Sd2bとの間の領域、第1種結晶部Sd1aと第3種結晶部Sd3との間の領域、第2種結晶部Sd2bと第4種結晶部Sd4との間の領域、および第3種結晶部Sd3と第4種結晶部Sd4との間の領域のそれぞれの上方では、相対的に転位が生じやすいものの、2つの機能性粒界が形成される際に転位が消滅しやすく、2つの機能性粒界に挟まれた擬似単結晶領域に転位が閉じ込められやすい。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1bの品質が向上し得る。
さらに、例えば、第1種結晶部Sd1aと第1中間種結晶部Cs1bとの間、第1種結晶部Sd1aと第2中間種結晶部Cs2との間、第2種結晶部Sd2bと第3中間種結晶部Cs3との間および第3種結晶部Sd3と第4中間種結晶部Cs4との間のそれぞれに、図8(a)または図8(b)で示した第1微小空間Se1と同様な微小空間を存在させてもよい。この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第1の機能性粒界、第3の機能性粒界、第5の機能性粒界および第7の機能性粒界が、それぞれXY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。また、例えば、第2種結晶部Sd2bと第1中間種結晶部Cs1bとの間、第3種結晶部Sd3と第2中間種結晶部Cs2との間、第4種結晶部Sd4と第3中間種結晶部Cs3との間および第4種結晶部Sd4と第4中間種結晶部Cs4との間のそれぞれに、図8(a)または図8(b)で示した第2微小空間Se2と同様な微小空間を存在させてもよい。この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、第2の機能性粒界、第4の機能性粒界、第6の機能性粒界および第8の機能性粒界が、それぞれXY平面に沿った仮想的な平面上において曲がっているような態様で生成し得る。ここで、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固がゆっくりと進行する際に、随時生成される第1の機能性粒界、第2の機能性粒界、第3の機能性粒界、第4の機能性粒界、第5の機能性粒界、第6の機能性粒界、第7の機能性粒界および第8の機能性粒界のそれぞれに曲がりが存在していれば、色々な方向の歪みが各機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積のさらなる増加によって歪みが吸収され易くなる。これにより、例えば、シリコンインゴットIn1bにおける欠陥が低減され得る。
ところで、種結晶部群200sbは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。さらに、種結晶部群200sbは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の種結晶部と、これらの3つ以上の種結晶部のうちの隣り合う2つの種結晶部の間のそれぞれに位置している中間種結晶部と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1bの大型化が可能となる。
<1-3.シリコンインゴット>
<1-3-1.シリコンインゴットの構成>
第1実施形態に係るシリコンインゴットIn1の構成について、図19(a)および図19(b)を参照しつつ説明する。図19(a)および図19(b)の例では、シリコンインゴットIn1の形状は、直方体状である。このシリコンインゴットIn1は、例えば、上述した第1製造装置1001または第2製造装置1002を用いた、上述した第1実施形態に係るシリコンインゴットIn1の製造方法によって製造され得る。
図19(a)および図19(b)で示されるように、シリコンインゴットIn1は、例えば、第1面F1と、第2面F2と、第3面F3と、を有する。図19(a)および図19(b)の例では、第1面F1は、第1方向としての+Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(上面ともいう)である。第2面F2は、第1面F1とは逆側に位置している。図19(a)および図19(b)の例では、第2面F2は、第1方向とは逆の第4方向としての-Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(下面ともいう)である。第3面F3は、第1面F1と第2面F2とを接続している状態で第2面F2から第1面F1に向かう第1方向としての+Z方向に沿って位置している。図19(a)および図19(b)の例では、第3面F3は、第1方向としての+Z方向に沿った4つの面(側面ともいう)を含む。
このシリコンインゴットIn1は、例えば、第1擬似単結晶領域Am1、第2擬似単結晶領域Am2および第1中間領域Ac1を備えている。ここでは、例えば、第1擬似単結晶領域Am1と、第1中間領域Ac1と、第2擬似単結晶領域Am2とは、第1方向としての+Z方向に垂直である第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。第1擬似単結晶領域Am1および第2擬似単結晶領域Am2、は、それぞれ擬似単結晶で構成されている領域である。
第1擬似単結晶領域Am1は、例えば、第1種結晶部Sd1を起点としたシリコン融液MS1の一方向凝固によって、第1種結晶部Sd1の結晶構造および結晶方位を引き継ぐように形成された擬似単結晶の領域(単に擬似単結晶とも称する)である。このため、第1擬似単結晶領域Am1は、例えば、第1種結晶部Sd1に対応する領域と、この第1種結晶部Sd1に対応する領域の上方に位置している領域と、を含む。図19(a)および図19(b)の例では、第1種結晶部Sd1に対応する領域は、第1方向としての+Z方向に向いた矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた矩形状の下面と、を有する直方体状の領域である。そして、第1擬似単結晶領域Am1は、直方体状の第1種結晶部Sd1に対応する領域を最下部として含む、直方体状の領域である。
第2擬似単結晶領域Am2は、例えば、第2種結晶部Sd2を起点としたシリコン融液MS1の一方向凝固によって、第2種結晶部Sd2の結晶構造および結晶方位を引き継ぐように形成された擬似単結晶領域である。このため、第2擬似単結晶領域Am2は、例えば、第2種結晶部Sd2に対応する領域と、この第2種結晶部Sd2に対応する領域の上方に位置している領域と、を含む。図19(a)および図19(b)の例では、第2種結晶部Sd2に対応する領域は、第1方向としての+Z方向に向いた矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた矩形状の下面と、を有する直方体状の領域である。そして、第2擬似単結晶領域Am2は、直方体状の第2種結晶部Sd2に対応する領域を最下部として含む、直方体状の領域である。
第1中間領域Ac1は、1つ以上の擬似単結晶領域を含む領域(単に中間領域ともいう)である。第1中間領域Ac1は、例えば、第1中間種結晶部Cs1を起点としたシリコン融液MS1の一方向凝固によって、第1中間種結晶部Cs1の結晶構造および結晶方位を引き継ぐように形成された領域である。このため、第1中間領域Ac1は、例えば、第1中間種結晶部Cs1に対応する領域と、この第1中間種結晶部Cs1に対応する領域の上方に位置している領域と、を含む。図19(a)および図19(b)の例では、第1中間種結晶部Cs1に対応する領域は、第1方向としての+Z方向に向いた細長い矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた細長い矩形状の下面と、を有する棒状の領域である。そして、第1中間領域Ac1は、棒状の第1中間種結晶部Cs1に対応する領域を最下部として含む、板状の領域である。このため、例えば、第1擬似単結晶領域Am1と第1中間領域Ac1との境界(第1境界ともいう)B1および第2擬似単結晶領域Am2と第1中間領域Ac1との境界(第2境界ともいう)B2のそれぞれの形状が、矩形状となっている。
ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1擬似単結晶領域Am1の幅(第1の幅ともいう)W1および第2擬似単結晶領域Am2の幅(第2の幅ともいう)W2のそれぞれは、第1中間領域Ac1の幅(第3の幅ともいう)W3よりも大きい。ここで、例えば、シリコンインゴットIn1の第1面F1および第2面F2のそれぞれが、一辺の長さが350mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1の幅W1および第2の幅W2は、それぞれ50mmから250mm程度とされる。また、例えば、第3の幅W3は、2mmから25mm程度とされる。
また、ここでは、例えば、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれが、対応粒界を有する。ここで、例えば、第1擬似単結晶領域Am1および第2擬似単結晶領域Am2のそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に垂直な面の面方位、ならびに第1中間領域Ac1に含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に垂直な面の面方位が、ミラー指数における(100)である場合を想定する。別の観点から言えば、例えば、第1擬似単結晶領域Am1および第2擬似単結晶領域Am2のそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1中間領域Ac1に含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>である場合を想定する。この場合には、対応粒界は、例えば、Σ値が5の対応粒界、Σ値が13の対応粒界、Σ値が17の対応粒界、Σ値が25の対応粒界およびΣ値が29の対応粒界のうちの少なくとも1つを含む。このような構成を有するシリコンインゴットIn1は、例えば、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させて、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方に対応粒界を形成することで実現され得る。そして、この対応粒界が形成される際に、例えば、歪みの緩和によってシリコンインゴットIn1に欠陥が生じにくくなる。
さらに、ここでは、例えば、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1境界B1および第2境界B2のそれぞれが、第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンインゴットIn1が採用されれば、例えば、シリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。
ここで、例えば、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。ここでは、波状の第1境界B1および第2境界B2のそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコンインゴットIn1の上記構成を採用することで、欠陥の低減によってシリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。ここで、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いた測定で確認され得る。また、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンインゴットIn1をXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
また、ここでは、例えば、図19(a)および図19(b)で示されるように、シリコンインゴットIn1は、4つの側面を含む第3面F3に沿って位置している領域(外周部領域ともいう)A0を有していてもよい。外周部領域A0は、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に鋳型121の内周側面部を起点として生じた転位による欠陥を含み得る。この外周部領域A0は、例えば、後述するシリコンブロックBk1(図22(a)および図22(b)などを参照)およびシリコン基板1(図27(a)および図27(b)などを参照)を製造する際に、シリコンインゴットIn1から切除される。
また、ここでは、例えば、第1擬似単結晶領域Am1および第2擬似単結晶領域Am2のそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1中間領域Ac1に含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>とされてもよい。このような構成は、例えば、鋳型121の底部121b上に、上面の面方位がミラー指数における(100)となるように種結晶部群200sを配置し、種結晶部群200sの結晶方位を受け継いでシリコン融液MS1を一方向に成長させることで実現され得る。また、この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際における結晶成長の速度が向上し得る。これにより、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として上方に向けて結晶粒を成長させることで形成される、第1擬似単結晶領域Am1、第2擬似単結晶領域Am2および第1中間領域Ac1が容易に得られる。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1の品質を容易に向上させることができる。さらに、ここで、例えば、第1境界B1および第2境界B2のそれぞれに位置している対応粒界が、Σ値が29の対応粒界を含んでいてもよい。この場合には、例えば、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させてシリコンインゴットIn1を製造する際に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方にΣ値が29のランダム粒界が随時形成される。このとき、例えば、このランダム粒界において歪みがさらに緩和されて欠陥が生じにくくなる。
また、ここで、例えば、第1の幅W1と第2の幅W2とは、同一であっても異なっていてもよい。例えば、第1の幅W1と第2の幅W2とが異なる値を有していれば、鋳型121の底部121b上に配置する第1種結晶部Sd1と第2種結晶部Sd2との間で幅が異なっていてもよい。これにより、例えば、CZ法などで得た円柱状の単結晶シリコン塊Mc0から切り出される相互に幅が異なる短冊状の種結晶部を、第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2として利用することができる。その結果、例えば、高品質のシリコンインゴットIn1を容易に製造することができる。換言すれば、例えば、シリコンインゴットIn1の品質を容易に向上させることができる。
ところで、シリコンインゴットIn1は、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1の大型化が可能となる。
<1-3-2.第1変形例に係るシリコンインゴットの構成>
上記シリコンインゴットIn1は、例えば、第1擬似単結晶領域Am1の代わりに、図20(a)および図20(b)で示されるように、第1方向としての+Z方向に垂直であり且つ第2方向としての+X方向に交差している第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第1擬似単結晶領域Am1aと、第2中間領域Ac2と、第3擬似単結晶領域Am3と、を有する、第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aとされてもよい。このようなシリコンインゴットIn1aは、例えば、上述した第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aの製造方法によって製造され得る。
図20(a)および図20(b)で示されるように、シリコンインゴットIn1aは、例えば、第1擬似単結晶領域Am1a、第2擬似単結晶領域Am2、第3擬似単結晶領域Am3、第1中間領域Ac1および第2中間領域Ac2を備えている。より具体的には、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第1中間領域Ac1と第2擬似単結晶領域Am2とが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第2中間領域Ac2と第3擬似単結晶領域Am3とが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。そして、例えば、第1中間領域Ac1のうちの第3方向としての+Y方向に沿った方向の途中の部分に、第2中間領域Ac2のうちの第2方向としての+X方向に沿った方向の端部が当接するように、第1中間領域Ac1と第2中間領域Ac2とが位置している。換言すれば、例えば、第1中間領域Ac1と第2中間領域Ac2とは、T字状に交差するように位置している。ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第3擬似単結晶領域Am3と第1中間領域Ac1と第2擬似単結晶領域Am2とが位置し得る。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1擬似単結晶領域Am1aの幅(第1の幅)W1および第2擬似単結晶領域Am2の幅(第2の幅)W2よりも、第1中間領域Ac1の幅(第3の幅)W3の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1の幅W1および第2の幅W2のそれぞれは、第3の幅W3よりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第1擬似単結晶領域Am1aの幅(第4の幅ともいう)W4および第3擬似単結晶領域Am3の幅(第5の幅ともいう)W5よりも、第2中間領域Ac2の幅(第6の幅ともいう)W6の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4の幅W4および第5の幅W5のそれぞれは、第6の幅W6よりも大きい。ここで、例えば、シリコンインゴットIn1aの第1面F1および第2面F2のそれぞれが、一辺の長さが350mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1の幅W1、第2の幅W2、第4の幅W4および第5の幅W5は、それぞれ50mmから250mm程度とされ、第3の幅W3および第6の幅W6は、それぞれ2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第1中間領域Ac1との境界(第1境界)B1aが対応粒界を有する。例えば、第1中間領域Ac1と第2擬似単結晶領域Am2との第2境界B2が対応粒界を有する。例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第2中間領域Ac2との境界(第3境界ともいう)B3が対応粒界を有する。例えば、第2中間領域Ac2と第3擬似単結晶領域Am3との境界(第4境界ともいう)B4が対応粒界を有する。ここでは、例えば、第3擬似単結晶領域Am3と第1中間領域Ac1との境界が、対応粒界を有し得る。
また、ここでは、例えば、第1境界B1a、第2境界B2、第3境界B3および第4境界B4のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1境界B1aおよび第2境界B2のそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。第3境界B3および第4境界B4のそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンインゴットIn1aが採用されれば、例えば、シリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域が増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1aにおける欠陥が低減され得る。
ここで、例えば、第1境界B1a、第2境界B2、第3境界B3および第4境界B4のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1aの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1境界B1aおよび第2境界B2のそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。波状の第3境界B3および第4境界B4のそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1aの製造に適したシリコンインゴットIn1aの上記構成を採用することで、欠陥の低減によってシリコンインゴットIn1aの品質が向上し得る。ここで、第1境界B1a、第2境界B2、第3境界B3および第4境界B4のそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いた測定で確認され得る。また、第1境界B1a、第2境界B2、第3境界B3および第4境界B4のそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンインゴットIn1aをXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコンインゴットIn1aは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコンインゴットIn1aは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1aの大型化が可能となる。
<1-3-3.第2変形例に係るシリコンインゴットの構成>
上記シリコンインゴットIn1aは、例えば、図21(a)および図21(b)で示されるように、第2擬似単結晶領域Am2の代わりに、第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第2擬似単結晶領域Am2bと、第3中間領域Ac3と、第4擬似単結晶領域Am4と、を有する、第2変形例に係るシリコンインゴットIn1bとされてもよい。このようなシリコンインゴットIn1bは、例えば、上述した第2変形例に係るシリコンインゴットIn1bの製造方法によって製造され得る。
図21(a)および図21(b)で示されるように、シリコンインゴットIn1bは、例えば、第1擬似単結晶領域Am1a、第2擬似単結晶領域Am2b、第3擬似単結晶領域Am3、第4擬似単結晶領域Am4、第1中間領域Ac1b、第2中間領域Ac2、第3中間領域Ac3および第4中間領域Ac4を備えている。より具体的には、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第1中間領域Ac1bと第2擬似単結晶領域Am2bとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第2中間領域Ac2と第3擬似単結晶領域Am3とが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第2擬似単結晶領域Am2bと第3中間領域Ac3と第4擬似単結晶領域Am4とが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第3擬似単結晶領域Am3と第4中間領域Ac4と第4擬似単結晶領域Am4とが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。
ここで、第1中間領域Ac1bと第4中間領域Ac4とは、例えば、第3方向としての+Y方向に沿った1つの板状の領域を構成していてもよいし、相互に第2方向としての+X方向にずれていてもよい。また、第2中間領域Ac2と第3中間領域Ac3とは、例えば、第2方向としての+X方向に沿った1つの板状の領域を構成していてもよいし、相互に第3方向としての+Y方向にずれていてもよい。図21(b)の例では、第1中間領域Ac1bおよび第4中間領域Ac4で構成される部分と、第2中間領域Ac2および第3中間領域Ac3で構成される部分と、が十字状に交差するように位置している。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1擬似単結晶領域Am1aの幅(第1の幅)W1および第2擬似単結晶領域Am2bの幅(第2の幅)W2よりも、第1中間領域Ac1bの幅(第3の幅)W3の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1の幅W1および第2の幅W2のそれぞれは、第3の幅W3よりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第1擬似単結晶領域Am1aの幅(第4の幅)W4および第3擬似単結晶領域Am3の幅(第5の幅)W5よりも、第2中間領域Ac2の幅(第6の幅)W6の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4の幅W4および第5の幅W5のそれぞれは、第6の幅W6よりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第2擬似単結晶領域Am2bの幅(第7の幅ともいう)W7および第4擬似単結晶領域Am4の幅(第8の幅ともいう)W8よりも、第3中間領域Ac3の幅(第9の幅ともいう)W9の方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第7の幅W7および第8の幅W8のそれぞれは、第9の幅W9よりも大きい。例えば、第2方向としての+X方向において、第3擬似単結晶領域Am3の幅(第10の幅ともいう)W10および第4擬似単結晶領域Am4の幅(第11の幅ともいう)W11よりも、第4中間領域Ac4の幅(第12の幅ともいう)W12の方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第10の幅W10および第11の幅W11のそれぞれは、第12の幅W12よりも大きい。ここで、例えば、シリコンインゴットIn1aの第1面F1および第2面F2のそれぞれが、一辺の長さが350mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1の幅W1、第2の幅W2、第4の幅W4、第5の幅W5、第7の幅W7、第8の幅W8、第10の幅W10、第11の幅W11は、それぞれ50mmから250mm程度とされる。また、第3の幅W3、第6の幅W6、第9の幅W9および第12の幅W12は、それぞれ2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第1中間領域Ac1bとの境界(第1境界)B1aが対応粒界を有する。例えば、第1中間領域Ac1bと第2擬似単結晶領域Am2bとの境界(第2境界)B2bが対応粒界を有する。例えば、第1擬似単結晶領域Am1aと第2中間領域Ac2との境界(第3境界)B3が対応粒界を有する。例えば、第2中間領域Ac2と第3擬似単結晶領域Am3との境界(第4境界)B4が対応粒界を有する。例えば、第2擬似単結晶領域Am2bと第3中間領域Ac3との境界(第5境界ともいう)B5が対応粒界を有する。例えば、第3中間領域Ac3と第4擬似単結晶領域Am4との境界(第6境界ともいう)B6が対応粒界を有する。例えば、第3擬似単結晶領域Am3と第4中間領域Ac4との境界(第7境界ともいう)B7が対応粒界を有する。例えば、第4中間領域Ac4と第4擬似単結晶領域Am4との境界(第8境界ともいう)B8が対応粒界を有する。
また、例えば、第1境界B1a、第2境界B2b、第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5、第6境界B6、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1境界B1a、第2境界B2b、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。さらに、第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5および第6境界B6のそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンインゴットIn1bが採用されれば、例えば、シリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域がさらに増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積のさらなる増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1bにおける欠陥が低減され得る。
ここで、例えば、第1境界B1a、第2境界B2b、第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5、第6境界B6、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1bの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1境界B1a、第2境界B2b、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。また、波状の第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5および第6境界B6のそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1bの製造に適したシリコンインゴットIn1bの上記構成を採用することで、欠陥の低減によってシリコンインゴットIn1bの品質が向上し得る。ここで、第1境界B1a、第2境界B2b、第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5、第6境界B6、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いた測定で確認され得る。また、第1境界B1a、第2境界B2b、第3境界B3、第4境界B4、第5境界B5、第6境界B6、第7境界B7および第8境界B8のそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンインゴットIn1bをXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコンインゴットIn1bは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコンインゴットIn1bは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1bの大型化が可能となる。
<1-4.シリコンブロック>
<1-4-1.シリコンブロックの構成>
第1実施形態に係るシリコンのブロック(シリコンブロックともいう)Bk1の構成について、図22(a)および図22(b)を参照しつつ説明する。図22(a)および図22(b)の例では、シリコンブロックBk1の形状は、直方体状である。このシリコンブロックBk1は、例えば、上述したシリコンインゴットIn1から、比較的欠陥が存在している状態になりやすいシリコンインゴットIn1の外周部分をワイヤーソー装置などで切除することで製造され得る。ここで、シリコンインゴットIn1の外周部分は、例えば、シリコンインゴットIn1のうち、第1面F1に沿った第1の厚さを有する部分と、第2面F2に沿った第2の厚さを有する部分と、第3面F3に沿った第3の厚さを有する部分と、を含む。第1の厚さは、例えば、数mmから20mm程度とされる。第2厚さは、例えば、種結晶部群200sに対応する領域が切除される程度の厚さとされる。第3厚さは、例えば、外周部領域A0が切除される程度の厚さとされる。
図22(a)および図22(b)で示されるように、シリコンブロックBk1は、例えば、第4面F4と、第5面F5と、第6面F6と、を有する。図22(a)および図22(b)の例では、第4面F4は、第1方向としての+Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(上面ともいう)である。第5面F5は、第4面F4とは逆側に位置している。図22(a)および図22(b)の例では、第5面F5は、第1方向とは逆の第4方向としての-Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(下面ともいう)である。第6面F6は、第4面F4と第5面F5とを接続している状態で第5面F5から第4面F4に向かう第1方向としての+Z方向に沿って位置している。図22(a)および図22(b)の例では、第6面F6は、第1方向としての+Z方向に沿った4つの面(側面ともいう)を含む。
また、シリコンブロックBk1は、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1A、第2A擬似単結晶領域Am2Aおよび第1A中間領域Ac1Aを備えている。ここでは、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aと、第1A中間領域Ac1Aと、第2A擬似単結晶領域Am2Aと、は第1方向としての+Z方向に垂直である第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。
第1A擬似単結晶領域Am1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aは、それぞれ擬似単結晶で構成されている領域(擬似単結晶領域)である。第1A擬似単結晶領域Am1Aは、例えば、シリコンインゴットIn1の第1擬似単結晶領域Am1の少なくとも一部によって構成されている領域である。第2A擬似単結晶領域Am2Aは、例えば、シリコンインゴットIn1の第2擬似単結晶領域Am2の少なくとも一部によって構成されている領域である。図22(a)および図22(b)の例では、第1A擬似単結晶領域Am1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aは、それぞれ、第1方向としての+Z方向に向いた矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた矩形状の下面と、を有する、直方体状の領域である。
第1A中間領域Ac1Aは、1つ以上の擬似単結晶領域を含む領域(中間領域)である。第1A中間領域Ac1Aは、例えば、シリコンインゴットIn1の第1中間領域Ac1の少なくとも一部によって構成されている領域である。図22(a)および図22(b)の例では、第1A中間領域Ac1Aは、第1方向としての+Z方向に向いた細長い矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた細長い矩形状の下面と、を有する板状の領域である。このため、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aと第1A中間領域Ac1Aとの境界(第1A境界ともいう)B1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aと第1A中間領域Ac1Aとの境界(第2A境界ともいう)B2Aのそれぞれの形状が、矩形状となっている。ここで、第1A中間領域Ac1Aは、例えば、第3方向としての+Y方向に沿った長手方向を有する。
ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aの幅(第1Aの幅ともいう)W1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aの幅(第2Aの幅ともいう)W2Aのそれぞれは、第1A中間領域Ac1Aの幅(第3Aの幅ともいう)W3Aよりも大きい。ここで、例えば、シリコンブロックBk1における第4面F4および第5面F5のそれぞれが、一辺の長さが300mmから320mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Aの幅W1Aおよび第2Aの幅W2Aは、それぞれ50mmから250mm程度とされる。また、例えば、第3Aの幅W3Aは、2mmから25mm程度とされる。
また、ここでは、例えば、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれが、対応粒界を有する。ここで、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1A、第2A擬似単結晶領域Am2Aおよび第1A中間領域Ac1Aのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に垂直な面の面方位が、ミラー指数における(100)である場合を想定する。別の観点から言えば、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1A中間領域Ac1Aに含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>である場合を想定する。
この場合には、対応粒界は、例えば、Σ値が5の対応粒界、Σ値が13の対応粒界、Σ値が17の対応粒界、Σ値が25の対応粒界およびΣ値が29の対応粒界のうちの少なくとも1つを含む。このような構成を有するシリコンブロックBk1は、例えば、シリコンブロックBk1のもととなるシリコンインゴットIn1を製造する際に、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させて、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方に対応粒界を形成することで実現され得る。そして、この対応粒界が形成される際には、例えば、歪みの緩和によってシリコンインゴットIn1に欠陥が生じにくい。このため、例えば、このシリコンインゴットIn1の外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1における欠陥も低減され得る。
さらに、ここでは、例えば、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれが、第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンブロックBk1が採用されれば、例えば、シリコンブロックBk1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1の外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1における欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンブロックBk1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンブロックBk1の品質が向上し得る。ここでは、波状の第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコンブロックBk1の上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコンブロックBk1の品質が向上し得る。ここで、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いて確認され得る。また、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2AのそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンブロックBk1をXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
また、ここでは、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1A中間領域Ac1Aに含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>方位とされてもよい。このような構成は、例えば、鋳型121の底部121b上に、上面の面方位がミラー指数における(100)となるように種結晶部群200sを配置し、種結晶部群200sの結晶方位を受け継いでシリコン融液MS1を一方向に成長させることで実現され得る。また、この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際における結晶成長の速度が向上し得る。これにより、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として上方に向けて結晶粒を成長させることで形成される、第1A擬似単結晶領域Am1A、第2A擬似単結晶領域Am2Aおよび第1A中間領域Ac1Aを備えたシリコンインゴットIn1が容易に製造され得る。そして、例えば、シリコンインゴットIn1からシリコンブロックBk1を切り出すことで、シリコンブロックBk1の品質を容易に向上させることができる。
さらに、ここで、例えば、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aに位置している対応粒界が、Σ値が29の対応粒界を含んでいてもよい。この場合には、例えば、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させてシリコンブロックBk1のもととなるシリコンインゴットIn1を製造する際に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方にΣ値が29のランダム粒界が随時形成され、このランダム粒界において歪みがさらに緩和されて欠陥が生じにくくなる。このため、例えば、さらに欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコンブロックBk1の上記構成を採用すれば、さらに欠陥の低減によってシリコンブロックBk1の品質を向上させることができる。
また、ここで、例えば、第1Aの幅W1Aと第2Aの幅W2Aとは、同一であっても異なっていてもよい。ここでは、例えば、第1Aの幅W1Aと第2Aの幅W2Aとが異なる値を有していれば、鋳型121の底部121b上に配置する第1種結晶部Sd1と第2種結晶部Sd2との間で幅が異なっていてもよい。これにより、例えば、CZ法などで得た円柱状の単結晶シリコン塊Mc0から切り出される相互に幅が異なる短冊状の種結晶部を、第1種結晶部Sd1および第2種結晶部Sd2として利用することができる。その結果、例えば、高品質のシリコンブロックBk1を容易に製造することができる。換言すれば、例えば、シリコンブロックBk1の品質を容易に向上させることができる。
また、ここで、例えば、シリコンブロックBk1が、第1方向(+Z方向)とは逆の第4方向(-Z方向)における第4面F4側の端部(第3端部ともいう)を含む第3部分と、第3端部とは反対側(第5面F5側)の他方の端部(第4端部ともいう)を有する第4部分と、を有していてもよい。シリコンブロックBk1の第3端部から第4端部までの全長を100としたときに、第3部分は、例えば、第3端部を基準として0から30程度の部分であってもよいし、第4部分は、例えば、第3端部を基準として50程度から100の部分であってもよい。ここで、例えば、第3部分における対応粒界では、第4部分における対応粒界よりもΣ値が29の対応粒界(ランダム粒界)の割合が大きくてもよい。これにより、例えば、第3部分において、ランダム粒界における歪みの緩和によって欠陥が生じにくくなっている。このため、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固によって製造されるシリコンインゴットIn1から切り出されたシリコンブロックBk1では、高さ方向において低い第3部分における欠陥が低減され得る。したがって、シリコンブロックBk1の品質が向上し得る。また、ここでは、例えば、第4部分における対応粒界では、第3部分における対応粒界よりもΣ値が5の対応粒界の割合が大きくてもよい。これにより、例えば、第4部分において結晶品質を向上させることができる。また、シリコンブロックBk1における対応粒界の存在および種類については、電子後方散乱回折(EBSD)法などを用いた測定で確認され得る。ここでは、例えば、Σ値が5である対応粒界とΣ値が29である対応粒界とが重複して検出される部分については、Σ値が5である対応粒界が存在している部分として扱う。
ところで、シリコンブロックBk1は、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域と、を含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンブロックBk1の大型化が可能となる。
<1-4-2.第1変形例に係るシリコンブロックの構成>
上記シリコンブロックBk1は、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aの代わりに、図23(a)および図23(b)で示されるように、第1方向としての+Z方向に垂直であり且つ第2方向としての+X方向に交差している第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと、第2A中間領域Ac2Aと、第3A擬似単結晶領域Am3Aと、を有する、第1変形例に係るシリコンブロックBk1aとされてもよい。シリコンブロックBk1aは、例えば、上述した第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aの製造方法によって製造され得るシリコンインゴットIn1aから、比較的欠陥が存在している状態になりやすいシリコンインゴットIn1aの外周部分をワイヤーソー装置などで切除することで製造され得る。
図23(a)および図23(b)で示されるように、シリコンブロックBk1aは、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aa、第2A擬似単結晶領域Am2A、第3A擬似単結晶領域Am3A、第1A中間領域Ac1Aおよび第2A中間領域Ac2Aを備えている。より具体的には、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第1A中間領域Ac1Aと第2A擬似単結晶領域Am2Aとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第2A中間領域Ac2Aと第3A擬似単結晶領域Am3Aとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。そして、例えば、第1A中間領域Ac1Aのうちの第3方向としての+Y方向に沿った方向の途中の部分に、第2A中間領域Ac2Aのうちの第2方向としての+X方向に沿った方向の端部が当接するように、第1A中間領域Ac1Aと第2A中間領域Ac2Aとが位置している。換言すれば、例えば、第1A中間領域Ac1Aと第2A中間領域Ac2Aとは、T字状に交差するように位置している。ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第3A擬似単結晶領域Am3Aと第1A中間領域Ac1Aと第2A擬似単結晶領域Am2Aとが位置し得る。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aaの幅(第1Aの幅)W1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aの幅(第2Aの幅)W2Aよりも、第1A中間領域Ac1Aの幅(第3Aの幅)W3Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1Aの幅W1Aおよび第2Aの幅W2Aのそれぞれは、第3Aの幅W3Aよりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aaの幅(第4Aの幅ともいう)W4Aおよび第3A擬似単結晶領域Am3Aの幅(第5Aの幅ともいう)W5Aよりも、第2A中間領域Ac2Aの幅(第6Aの幅ともいう)W6Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4Aの幅W4Aおよび第5Aの幅W5Aのそれぞれは、第6Aの幅W6Aよりも大きい。ここで、例えば、シリコンブロックBk1aの第4面F4および第5面F5のそれぞれが、一辺の長さが300mmから320mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Aの幅W1A、第2Aの幅W2A、第4Aの幅W4Aおよび第5Aの幅W5Aは、それぞれ50mmから250mm程度とされ、第3Aの幅W3Aおよび第6Aの幅W6Aは、それぞれ2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第1A中間領域Ac1Aとの境界(第1A境界)B1Aaが対応粒界を有する。例えば、第1A中間領域Ac1Aと第2A擬似単結晶領域Am2Aとの第2A境界B2Aが対応粒界を有する。例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第2A中間領域Ac2Aとの境界(第3A境界ともいう)B3Aが対応粒界を有する。例えば、第2A中間領域Ac2Aと第3A擬似単結晶領域Am3Aとの境界(第4A境界ともいう)B4Aが対応粒界を有する。ここでは、例えば、第3A擬似単結晶領域Am3Aと第1A中間領域Ac1Aとの境界が、対応粒界を有し得る。
また、ここでは、例えば、第1A境界B1Aa、第2A境界B2A、第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1A境界B1Aaおよび第2A境界B2Aのそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンブロックBk1aが採用されれば、例えば、シリコンブロックBk1aのもととなるシリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域が増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1aにおける欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1aの外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1aにおける欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1A境界B1Aa、第2A境界B2A、第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンブロックBk1aのもととなるシリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1aの品質が向上するため、シリコンインゴットIn1aの外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1aの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1A境界B1Aaおよび第2A境界B2Aのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。波状の第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1aの製造に適したシリコンブロックBk1aの上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコンブロックBk1aの品質が向上し得る。ここで、第1A境界B1Aa、第2A境界B2A、第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いて確認され得る。また、第1A境界B1Aa、第2A境界B2A、第3A境界B3Aおよび第4A境界B4AのそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンブロックBk1aをXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコンブロックBk1aは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコンブロックBk1aは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンブロックBk1aの大型化が可能となる。
<1-4-3.第2変形例に係るシリコンブロックの構成>
上記シリコンブロックBk1aは、例えば、図24(a)および図24(b)で示されるように、第2A擬似単結晶領域Am2Aの代わりに、第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第2A擬似単結晶領域Am2Abと、第3A中間領域Ac3Aと、第4A擬似単結晶領域Am4Aと、を有する、第2変形例に係るシリコンブロックBk1bとされてもよい。シリコンブロックBk1bは、例えば、上述した第2変形例に係るシリコンインゴットIn1bの製造方法によって製造され得るシリコンインゴットIn1bから、比較的欠陥が存在している状態になりやすいシリコンインゴットIn1bの外周部分をワイヤーソー装置などで切除することで製造され得る。
図24(a)および図24(b)で示されるように、シリコンブロックBk1bは、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aa、第2A擬似単結晶領域Am2Ab、第3A擬似単結晶領域Am3A、第4A擬似単結晶領域Am4A、第1A中間領域Ac1Ab、第2A中間領域Ac2A、第3A中間領域Ac3Aおよび第4A中間領域Ac4Aを備えている。より具体的には、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第1A中間領域Ac1Abと第2A擬似単結晶領域Am2Abとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第2A中間領域Ac2Aと第3A擬似単結晶領域Am3Aとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第2A擬似単結晶領域Am2Abと第3A中間領域Ac3Aと第4A擬似単結晶領域Am4Aとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第3A擬似単結晶領域Am3Aと第4A中間領域Ac4Aと第4A擬似単結晶領域Am4Aとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。
ここで、第1A中間領域Ac1Abと第4A中間領域Ac4Aとは、例えば、第3方向としての+Y方向に沿った1つの板状の領域を構成していてもよいし、相互に第2方向としての+X方向にずれていてもよい。また、第2A中間領域Ac2Aと第3A中間領域Ac3Aとは、例えば、第2方向としての+X方向に沿った1つの板状の領域を構成していてもよいし、相互に第3方向としての+Y方向にずれていてもよい。図24(b)の例では、第1A中間領域Ac1Abおよび第4A中間領域Ac4Aで構成される部分と、第2A中間領域Ac2Aおよび第3A中間領域Ac3Aで構成される部分と、が十字状に交差するように位置している。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aaの幅(第1Aの幅)W1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Abの幅(第2Aの幅)W2Aよりも、第1A中間領域Ac1Abの幅(第3Aの幅)W3Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1Aの幅W1Aおよび第2Aの幅W2Aのそれぞれは、第3Aの幅W3Aよりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aaの幅(第4Aの幅)W4Aおよび第3A擬似単結晶領域Am3Aの幅(第5Aの幅)W5Aよりも、第2A中間領域Ac2Aの幅(第6Aの幅)W6Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4Aの幅W4Aおよび第5Aの幅W5Aのそれぞれは、第6Aの幅W6Aよりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第2A擬似単結晶領域Am2Abの幅(第7Aの幅ともいう)W7Aおよび第4A擬似単結晶領域Am4Aの幅(第8Aの幅ともいう)W8Aよりも、第3A中間領域Ac3Aの幅(第9Aの幅ともいう)W9Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第7Aの幅W7Aおよび第8Aの幅W8Aのそれぞれは、第9Aの幅W9Aよりも大きい。例えば、第2方向としての+X方向において、第3A擬似単結晶領域Am3Aの幅(第10Aの幅ともいう)W10Aおよび第4A擬似単結晶領域Am4Aの幅(第11Aの幅ともいう)W11Aよりも、第4A中間領域Ac4Aの幅(第12Aの幅ともいう)W12Aの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第10Aの幅W10Aおよび第11Aの幅W11Aのそれぞれは、第12Aの幅W12Aよりも大きい。
ここで、例えば、シリコンブロックBk1bの第4面F4および第5面F5のそれぞれが、一辺の長さが300mmから320mm程度である矩形状または正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Aの幅W1A、第2Aの幅W2A、第4Aの幅W4A、第5Aの幅W5A、第7Aの幅W7A、第8Aの幅W8A、第10Aの幅W10A、第11Aの幅W11Aは、それぞれ50mmから250mm程度とされる。また、第3Aの幅W3A、第6Aの幅W6A、第9Aの幅W9Aおよび第12Aの幅W12Aは、それぞれ2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第1A中間領域Ac1Abとの境界(第1A境界)B1Aaが対応粒界を有する。例えば、第1A中間領域Ac1Abと第2A擬似単結晶領域Am2Abとの境界(第2A境界)B2Abが対応粒界を有する。例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aaと第2A中間領域Ac2Aとの境界(第3A境界)B3Aが対応粒界を有する。例えば、第2A中間領域Ac2Aと第3A擬似単結晶領域Am3Aとの境界(第4A境界)B4Aが対応粒界を有する。例えば、第2A擬似単結晶領域Am2Abと第3A中間領域Ac3Aとの境界(第5A境界ともいう)B5Aが対応粒界を有する。例えば、第3A中間領域Ac3Aと第4A擬似単結晶領域Am4Aとの境界(第6A境界ともいう)B6Aが対応粒界を有する。例えば、第3A擬似単結晶領域Am3Aと第4A中間領域Ac4Aとの境界(第7A境界ともいう)B7Aが対応粒界を有する。例えば、第4A中間領域Ac4Aと第4A擬似単結晶領域Am4Aとの境界(第8A境界ともいう)B8Aが対応粒界を有する。
また、例えば、第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5A、第6A境界B6A、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。さらに、第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5Aおよび第6A境界B6Aのそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコンブロックBk1bが採用されれば、例えば、このシリコンブロックBk1bのもととなるシリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域がさらに増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積のさらなる増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1bにおける欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1bの外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1bにおける欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5A、第6A境界B6A、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコンブロックBk1bのもととなるシリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1bの品質が向上し、シリコンインゴットIn1bの外周部分の切除によって得られるシリコンブロックBk1bの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。また、波状の第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5Aおよび第6A境界B6Aのそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1bの製造に適したシリコンブロックBk1bの上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコンブロックBk1bの品質が向上し得る。ここで、第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5A、第6A境界B6A、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いた測定で確認され得る。また、第1A境界B1Aa、第2A境界B2Ab、第3A境界B3A、第4A境界B4A、第5A境界B5A、第6A境界B6A、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8AのそれぞれがXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、シリコンブロックBk1bをXY平面に沿ってワイヤーソーなどで切断し、その切断面をフッ酸などでエッチングした後に、光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコンブロックBk1bは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している第1A中間領域Ac1Abと同様な中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコンブロックBk1bは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している第2A中間領域Ac2Aと同様な中間領域とを含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンブロックBk1bの大型化が可能となる。
<1-5.小シリコンブロック>
ここで、例えば、図25(a)および図25(b)で記載されているように、シリコン基板1を製造するために、第2方向としての+X方向でシリコンブロックBk1を2等分し、第3方向としての+Y方向でシリコンブロックBk1を2等分する場合を想定する。例えば、シリコンブロックBk1を、YZ平面に沿った第1切断面Cl1に沿って切断し、XZ平面に沿った第2切断面Cl2に沿って切断することで、4つの比較的小さなシリコンのブロック(小シリコンブロックともいう)が得られる。4つの小シリコンブロックは、第1小シリコンブロックBk11、第2小シリコンブロックBk12、第3小シリコンブロックBk13および第4小シリコンブロックBk14を含む。シリコンブロックBk1は、例えば、ワイヤーソー装置などで切断される。
図25(a)および図25(b)の例では、第1小シリコンブロックBk11は、第1A擬似単結晶領域Am1Aの一部を含む。第2小シリコンブロックBk12は、第1A擬似単結晶領域Am1Aの一部、第1A中間領域Ac1Aの一部および第2A擬似単結晶領域Am2Aの一部を含む。第3小シリコンブロックBk13は、第1A擬似単結晶領域Am1Aの一部を含む。第4小シリコンブロックBk14は、第1A擬似単結晶領域Am1Aの一部、第1A中間領域Ac1Aの一部および第2A擬似単結晶領域Am2Aを含む。ここで、第4小シリコンブロックBk14では、例えば、図26(a)および図26(b)で示されるように、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aの第1Aの幅W1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aの第2Aの幅W2Aのそれぞれが、第1A中間領域Ac1Aの第3Aの幅W3Aよりも大きくてもよい。第1Aの幅W1Aと、第2Aの幅W2Aと、は同一であっても異なっていてもよい。
<1-6.シリコン基板>
<1-6-1.シリコン基板の構成>
第1実施形態に係るシリコンの基板(シリコン基板ともいう)1の構成について、図27(a)および図27(b)を参照しつつ説明する。図27(a)および図27(b)の例では、シリコン基板1は、板状であって、矩形状の表裏面を有する。このシリコン基板1は、例えば、上述した第4小シリコンブロックBk14などの小シリコンブロックを、第1方向としての+Z方向において所定の間隔で、第4面F4および第5面F5に平行なXY平面に沿って薄切りにすることで製造され得る。図27(a)および図27(b)の例では、第4小シリコンブロックBk14をそれぞれ薄切りにすることで作製したシリコン基板1が示されている。ここでは、例えば、ワイヤーソー装置などを用いて、第4小シリコンブロックBk14を薄切りにすることで、厚さが100マイクロメートル(μm)から300μm程度であり且つ一辺が150mm程度の正方形状の板面を有するシリコン基板1が作製され得る。シリコン基板1の表層において小シリコンブロックの切断時に生じたダメージ層は、例えば、水酸化ナトリウム溶液などを用いたエッチングによって除去され得る。
図27(a)および図27(b)で示されるように、シリコン基板1は、例えば、第7面F7と、第8面F8と、第9面F9と、を有する平板状の基板である。第8面F8は、第7面F7の裏側に位置している。第9面F9は、第7面F7と第8面F8とを接続している状態で第8面F8から第7面F7に向かう第1方向としての+Z方向に沿って位置している外周面である。図27(a)および図27(b)の例では、第7面F7は、第1方向としての+Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(前面ともいう)である。第8面F8は、第1方向とは逆の第4方向としての-Z方向を向いた矩形状または正方形状の面(裏面ともいう)である。第9面F9は、第7面F7および第8面F8のそれぞれの4辺に沿った外周面である。
また、シリコン基板1は、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1B、第2B擬似単結晶領域Am2Bおよび第1B中間領域Ac1Bを備えている。第1B擬似単結晶領域Am1Bと、第1B中間領域Ac1Bと、第2B擬似単結晶領域Am2Bと、は第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。第1B擬似単結晶領域Am1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bは、それぞれ擬似単結晶で構成されている領域(擬似単結晶領域)である。
第1B擬似単結晶領域Am1Bは、例えば、シリコンブロックBk1の第1A擬似単結晶領域Am1Aの少なくとも一部によって構成されている領域である。第2B擬似単結晶領域Am2Bは、例えば、シリコンブロックBk1の第2A擬似単結晶領域Am2Aの少なくとも一部によって構成されている領域である。図27(a)および図27(b)の例では、第1B擬似単結晶領域Am1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bのそれぞれは、第1方向としての+Z方向に向いた矩形状の前面と、第4方向としての-Z方向に向いた矩形状の裏面と、を有する、板状の領域である。
第1B中間領域Ac1Bは、1つ以上の擬似単結晶領域を含む領域(中間領域)である。第1B中間領域Ac1Bは、例えば、シリコンブロックBk1の第1A中間領域Ac1Aの少なくとも一部によって構成されている領域である。図27(a)および図27(b)の例では、第1B中間領域Ac1Bは、第1方向としての+Z方向に向いた細長い矩形状の上面と、第4方向としての-Z方向に向いた細長い矩形状の下面と、を有する、棒状の領域である。ここでは、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Bと第1B中間領域Ac1Bとの境界(第1B境界ともいう)B1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bと第1B中間領域Ac1Bとの境界(第2B境界ともいう)B2Bのそれぞれの形状が、第3方向としての+Y方向に沿った細長い形状となっている。そして、例えば、第1B中間領域Ac1Bは、第3方向としての+Y方向に沿った長手方向を有する。
ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Bの幅(第1Bの幅ともいう)W1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bの幅(第2Bの幅ともいう)W2Bのそれぞれは、第1B中間領域Ac1Bの幅(第3Bの幅ともいう)W3Bよりも大きい。ここで、例えば、シリコン基板1における第7面F7および第8面F8が、一辺の長さが150mm程度である正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Bの幅W1Bおよび第2Bの幅W2Bのそれぞれは、50mmから100mm程度とされる。また、例えば、第3Bの幅W3Bは、2mmから25mm程度とされる。
また、ここでは、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれが、対応粒界を有する。ここで、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1B、第2B擬似単結晶領域Am2Bおよび第1B中間領域Ac1Bのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に垂直な面の面方位が、ミラー指数における(100)である場合を想定する。別の観点から言えば、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1B中間領域Ac1Bに含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>である場合を想定する。この場合には、対応粒界は、例えば、Σ値が5の対応粒界、Σ値が13の対応粒界、Σ値が17の対応粒界、Σ値が25の対応粒界およびΣ値が29の対応粒界のうちの少なくとも1つを含む。このような構成を有するシリコン基板1は、例えば、シリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1を製造する際に、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させて、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方に対応粒界を形成することで実現され得る。そして、この対応粒界が形成される際に、例えば、歪みの緩和によってシリコンインゴットIn1に欠陥が生じにくい。このため、例えば、このシリコンインゴットIn1の外周部分の切除によって得られたシリコンブロックBk1の薄切りで得たシリコン基板1における欠陥も低減され得る。
さらに、ここでは、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれが、第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコン基板1が採用されれば、例えば、シリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1の外周部分の切除および薄切りによって得られるシリコン基板1における欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界が増加し、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1の外周部分の切除によって得られたシリコンブロックBk1の薄切りで得られるシリコン基板1の品質が向上し得る。ここでは、波状の第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコン基板1の上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコン基板1の品質が向上し得る。ここで、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いて確認され得る。また、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのそれぞれが第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、第7面F7または第8面F8に適宜エッチングを施した後に、第7面F7または第8面F8を光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
また、ここでは、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位、ならびに第1B中間領域Ac1Bに含まれる1つ以上の擬似単結晶における第1方向としての+Z方向に沿った結晶方位が、ミラー指数における<100>方位とされてもよい。このような構成は、例えば、シリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1を作製する際に、鋳型121の底部121b上に、上面の面方位がミラー指数における(100)となるように種結晶部群200sを配置し、種結晶部群200sの結晶方位を受け継いでシリコン融液MS1を一方向に成長させることで実現され得る。また、この場合には、例えば、シリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際における結晶成長の速度が向上し得る。これにより、例えば、第1種結晶部Sd1、第2種結晶部Sd2および第1中間種結晶部Cs1のそれぞれを起点として上方に向けて結晶粒を成長させることで形成される、第1擬似単結晶領域Am1、第2擬似単結晶領域Am2および第1中間領域Ac1を備えたシリコンインゴットIn1が容易に製造され得る。そして、例えば、シリコンインゴットIn1からシリコンブロックBk1を経てシリコン基板1を切り出すことで、シリコン基板1の品質を容易に向上させることができる。また、第1B擬似単結晶領域Am1B、第1B中間領域Ac1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bのそれぞれにおける第1方向としての+Z方向を向いた上面の面方位がミラー指数における(100)であれば、例えば、後述する太陽電池素子10(図30から図32参照)にシリコン基板1を適用する際に、シリコン基板1の上面に、乾式または湿式のエッチングによって微細な凹凸(テクスチャ)が形成されやすくなる。
さらに、ここで、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bに位置している対応粒界が、Σ値が29の対応粒界を含んでいてもよい。この場合には、例えば、種結晶部群200sを起点として擬似単結晶を成長させてシリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1を製造する際に、第1種結晶部Sd1と第1中間種結晶部Cs1との境界および第2種結晶部Sd2と第1中間種結晶部Cs1との境界のそれぞれの上方にΣ値が29のランダム粒界が随時形成され、このランダム粒界において歪みがさらに緩和されて欠陥が生じにくくなる。このため、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコン基板1の上記構成を採用すれば、さらに欠陥の低減によってシリコン基板1の品質を向上させることができる。
また、ここで、例えば、第1Bの幅W1Bと第2Bの幅W2Bとは、同一であっても異なっていてもよい。ところで、シリコン基板1は、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域と、を含んでいてもよい。
<1-6-2.第1変形例に係るシリコン基板の構成>
上記シリコン基板1は、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Bの代わりに、図28(a)および図28(b)で示されるように、第1方向としての+Z方向に垂直であり且つ第2方向としての+X方向に交差している第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第1B擬似単結晶領域Am1Baと、第2B中間領域Ac2Bと、第3B擬似単結晶領域Am3Bと、を有する、第1変形例に係るシリコン基板1aとされてもよい。このようなシリコン基板1aは、例えば、上述した第1変形例に係るシリコンインゴットIn1aの製造方法によって製造され得るシリコンインゴットIn1aから、比較的欠陥が存在している状態になりやすいシリコンインゴットIn1aの外周部分をワイヤーソー装置などで切除した後に、切断および薄切りなどを行うことで製造され得る。
図28(a)および図28(b)で示されるように、シリコン基板1aは、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Ba、第2B擬似単結晶領域Am2B、第3B擬似単結晶領域Am3B、第1B中間領域Ac1Bおよび第2B中間領域Ac2Bを備えている。より具体的には、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第1B中間領域Ac1Bと第2B擬似単結晶領域Am2Bとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第2B中間領域Ac2Bと第3B擬似単結晶領域Am3Bとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。そして、例えば、第1B中間領域Ac1Bのうちの第3方向としての+Y方向に沿った長手方向の途中の部分に、第2B中間領域Ac2Bのうちの第2方向としての+X方向に沿った長手方向の端部が当接するように、第1B中間領域Ac1Bと第2B中間領域Ac2Bとが位置している。換言すれば、例えば、第1B中間領域Ac1Bと第2B中間領域Ac2Bとは、T字状に交差するように位置している。ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において順に隣接するように、第3B擬似単結晶領域Am3Bと第1B中間領域Ac1Bと第2B擬似単結晶領域Am2Bとが位置し得る。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Baの幅(第1Bの幅)W1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bの幅(第2Bの幅)W2Bよりも、第1B中間領域Ac1Bの幅(第3Bの幅)W3Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1Bの幅W1Bおよび第2Bの幅W2Bのそれぞれは、第3Bの幅W3Bよりも大きい。また、例えば、第3方向としての+Y方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Baの幅(第4Bの幅ともいう)W4Bおよび第3B擬似単結晶領域Am3Bの幅(第5Bの幅ともいう)W5Bよりも、第2B中間領域Ac2Bの幅(第6Bの幅ともいう)W6Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4Bの幅W4Bおよび第5Bの幅W5Bのそれぞれは、第6Bの幅W6Bよりも大きい。ここで、例えば、シリコン基板1aにおける第7面F7および第8面F8のそれぞれが、一辺の長さが150mm程度である正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Bの幅W1B、第2Bの幅W2B、第4Bの幅W4Bおよび第5Bの幅W5Bのそれぞれは、50mmから100mm程度とされる。また、例えば、第3Bの幅W3Bおよび第6Bの幅W6Bのそれぞれは、2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第1B中間領域Ac1Bとの境界(第1B境界)B1Baが対応粒界を有する。例えば、第1B中間領域Ac1Bと第2B擬似単結晶領域Am2Bとの第2B境界B2Bが対応粒界を有する。例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第2B中間領域Ac2Bとの境界(第3B境界ともいう)B3Bが対応粒界を有する。例えば、第2B中間領域Ac2Bと第3B擬似単結晶領域Am3Bとの境界(第4B境界ともいう)B4Bが対応粒界を有する。ここでは、例えば、第3B擬似単結晶領域Am3Bと第1B中間領域Ac1Bとの境界が、対応粒界を有し得る。
また、ここでは、例えば、第1B境界B1Ba、第2B境界B2B、第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1B境界B1Baおよび第2B境界B2Bのそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコン基板1aが採用されれば、例えば、シリコン基板1aのもととなるシリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域が増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1aにおける欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1aに外周部分の切除、切断および薄切りなどが施されることで得られるシリコン基板1aにおける欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1B境界B1Ba、第2B境界B2B、第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコン基板1aのもととなるシリコンインゴットIn1aの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1aの品質が向上するため、シリコンインゴットIn1aに外周部分の切除、切断および薄切りなどが施されることで得られるシリコン基板1aの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1B境界B1Baおよび第2B境界B2Bのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。波状の第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1aの製造に適したシリコン基板1aの上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコン基板1aの品質が向上し得る。ここで、第1B境界B1Ba、第2B境界B2B、第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いて確認され得る。また、第1B境界B1Ba、第2B境界B2B、第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのそれぞれが第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、第7面F7または第8面F8に適宜エッチングなどを施した後に、第7面F7または第8面F8を光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコン基板1aは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコン基板1aは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。
<1-6-3.第2変形例に係るシリコン基板の構成>
上記シリコン基板1aは、例えば、図29(a)および図29(b)で示されるように、第2B擬似単結晶領域Am2Bの代わりに、第3方向としての+Y方向において順に隣接している、第2B擬似単結晶領域Am2Bbと、第3B中間領域Ac3Bと、第4B擬似単結晶領域Am4Bと、を有する、第2変形例に係るシリコン基板1bとされてもよい。このようなシリコン基板1bは、例えば、上述した第2変形例に係るシリコンインゴットIn1bの製造方法によって製造され得るシリコンインゴットIn1bから、比較的欠陥が存在している状態になりやすいシリコンインゴットIn1bの外周部分をワイヤーソー装置などで切除した後に、切断および薄切りを行うことで製造され得る。
図29(a)および図29(b)で示されるように、シリコン基板1bは、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Ba、第2B擬似単結晶領域Am2Bb、第3B擬似単結晶領域Am3B、第4B擬似単結晶領域Am4B、第1B中間領域Ac1Bb、第2B中間領域Ac2B、第3B中間領域Ac3Bおよび第4B中間領域Ac4Bを備えている。より具体的には、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第1B中間領域Ac1Bbと第2B擬似単結晶領域Am2Bbとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第2B中間領域Ac2Bと第3B擬似単結晶領域Am3Bとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第2B擬似単結晶領域Am2Bbと第3B中間領域Ac3Bと第4B擬似単結晶領域Am4Bとが、第3方向としての+Y方向において、この記載の順に隣接している。また、例えば、第3B擬似単結晶領域Am3Bと第4B中間領域Ac4Bと第4B擬似単結晶領域Am4Bとが、第2方向としての+X方向において、この記載の順に隣接している。
ここで、第1B中間領域Ac1Bbと第4B中間領域Ac4Bとは、例えば、第3方向としての+Y方向に沿った1つの棒状の領域を構成していてもよいし、相互に第2方向としての+X方向にずれていてもよい。また、第2B中間領域Ac2Bと第3B中間領域Ac3Bとは、例えば、第2方向としての+X方向に沿った1つの棒状の領域を構成していてもよいし、相互に第3方向としての+Y方向にずれていてもよい。図29(b)の例では、第1B中間領域Ac1Bbおよび第4B中間領域Ac4Bで構成される部分と、第2B中間領域Ac2Bおよび第3B中間領域Ac3Bで構成される部分と、が十字状に交差するように位置している。
また、ここでは、例えば、第2方向としての+X方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Baの幅(第1Bの幅)W1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bbの幅(第2Bの幅)W2Bよりも、第1B中間領域Ac1Bbの幅(第3Bの幅)W3Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第1Bの幅W1Bおよび第2Bの幅W2Bのそれぞれは、第3Bの幅W3Bよりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Baの幅(第4Bの幅)W4Bおよび第3B擬似単結晶領域Am3Bの幅(第5Bの幅)W5Bよりも、第2B中間領域Ac2Bの幅(第6Bの幅)W6Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第4Bの幅W4Bおよび第5Bの幅W5Bのそれぞれは、第6Bの幅W6Bよりも大きい。例えば、第3方向としての+Y方向において、第2B擬似単結晶領域Am2Bbの幅(第7Bの幅ともいう)W7Bおよび第4B擬似単結晶領域Am4Bの幅(第8Bの幅ともいう)W8Bよりも、第3B中間領域Ac3Bの幅(第9Bの幅ともいう)W9Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第3方向としての+Y方向において、第7Bの幅W7Bおよび第8Bの幅W8Bのそれぞれは、第9Bの幅W9Bよりも大きい。例えば、第2方向としての+X方向において、第3B擬似単結晶領域Am3Bの幅(第10Bの幅ともいう)W10Bおよび第4B擬似単結晶領域Am4Bの幅(第11Bの幅ともいう)W11Bよりも、第4B中間領域Ac4Bの幅(第12Bの幅ともいう)W12Bの方が小さい。換言すれば、例えば、第2方向としての+X方向において、第10Bの幅W10Bおよび第11Bの幅W11Bのそれぞれは、第12Bの幅W12Bよりも大きい。
ここで、例えば、シリコン基板1bの第7面F7および第8面F8のそれぞれが、一辺の長さが150mm程度である正方形状である場合を想定する。この場合には、例えば、第1Bの幅W1B、第2Bの幅W2B、第4Bの幅W4B、第5Bの幅W5B、第7Bの幅W7B、第8Bの幅W8B、第10Bの幅W10Bおよび第11Bの幅W11Bのそれぞれは、50mmから100mm程度とされる。また、例えば、第3Bの幅W3B、第6Bの幅W6B、第9Bの幅W9Bおよび第12Bの幅W12Bのそれぞれは、2mmから25mm程度とされる。
そして、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第1B中間領域Ac1Bbとの境界(第1B境界)B1Baが対応粒界を有する。例えば、第1B中間領域Ac1Bbと第2B擬似単結晶領域Am2Bbとの境界(第2B境界)B2Bbが対応粒界を有する。例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Baと第2B中間領域Ac2Bとの境界(第3B境界)B3Bが対応粒界を有する。例えば、第2B中間領域Ac2Bと第3B擬似単結晶領域Am3Bとの境界(第4B境界)B4Bが対応粒界を有する。例えば、第2B擬似単結晶領域Am2Bbと第3B中間領域Ac3Bとの境界(第5B境界ともいう)B5Bが対応粒界を有する。例えば、第3B中間領域Ac3Bと第4B擬似単結晶領域Am4Bとの境界(第6B境界ともいう)B6Bが対応粒界を有する。例えば、第3B擬似単結晶領域Am3Bと第4B中間領域Ac4Bとの境界(第7B境界ともいう)B7Bが対応粒界を有する。例えば、第4B中間領域Ac4Bと第4B擬似単結晶領域Am4Bとの境界(第8B境界ともいう)B8Bが対応粒界を有する。
また、例えば、第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5B、第6B境界B6B、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態にある。ここで、曲がっている状態は、例えば、弓形に湾曲している状態、S字状に曲がっている状態、波打つように曲がっている状態およびうねるように曲がっている状態のうちの少なくとも1つの状態を含む。第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれが第2方向としての+X方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。さらに、第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5Bおよび第6B境界B6Bのそれぞれが第3方向としての+Y方向において曲がっていることで存在している範囲の幅は、例えば、数mmから20mm程度とされる。このような構成を有するシリコン基板1bが採用されれば、例えば、このシリコン基板1bのもととなるシリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、種々の方向を向いている曲がりを有する機能性粒界が随時形成され、その機能性粒界が存在する領域がさらに増加し得る。これにより、例えば、さらに色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積のさらなる増加によって歪みがさらに吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1bにおける欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1bに外周部分の切除、切断および薄切りなどが施されることで得られるシリコン基板1bにおける欠陥も低減され得る。
ここで、例えば、第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5B、第6B境界B6B、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれが、第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において、波打つように曲がっている状態にある場合を想定する。この場合には、例えば、シリコン基板1bのもととなるシリコンインゴットIn1bの作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時形成される曲がりを有する機能性粒界が存在する領域が増加し得る。このとき、例えば、歪みが緩和される対応粒界が存在する機能性粒界がさらに増加するため、欠陥が低減され得る。その結果、例えば、シリコンインゴットIn1bの品質が向上し、シリコンインゴットIn1bに外周部分の切除、切断および薄切りなどが施されることで得られるシリコン基板1bの品質が向上し得る。ここでは、波状の第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれの第2方向としての+X方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。また、波状の第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5Bおよび第6B境界B6Bのそれぞれの第3方向としての+Y方向における振幅の最大値は、例えば、数mmから20mm程度とされる。
そして、ここでは、例えば、欠陥が低減され得るシリコンインゴットIn1bの製造に適したシリコン基板1bの上記構成を採用すれば、欠陥の低減によってシリコン基板1bの品質が向上し得る。ここで、第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5B、第6B境界B6B、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれにおける各種の対応粒界の存在および各種の対応粒界の存在比率は、例えば、EBSD法などを用いた測定で確認され得る。また、第1B境界B1Ba、第2B境界B2Bb、第3B境界B3B、第4B境界B4B、第5B境界B5B、第6B境界B6B、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのそれぞれが第1方向としての+Z方向に垂直なXY平面に沿った仮想的な断面において曲がっている状態は、例えば、第7面F7または第8面F8に適宜エッチングなどを施した後に、第7面F7または第8面F8を光学顕微鏡で観察することで確認され得る。
ところで、シリコン基板1bは、例えば、第2方向としての+X方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。また、シリコン基板1bは、例えば、第3方向としての+Y方向に並んでいる、3つ以上の擬似単結晶領域と、これらの3つ以上の擬似単結晶領域のうちの隣り合う2つの擬似単結晶領域の間のそれぞれに位置している中間領域とを含んでいてもよい。これにより、例えば、さらなるシリコンインゴットIn1bの大型化が可能となる。
<1-7.太陽電池素子>
上述したシリコンインゴットIn1,In1a,In1bからの切り出しによってシリコンブロックBk1,Bk1a,Bk1bを経て作製されるシリコン基板1,1a,1bのそれぞれは、例えば、太陽電池としての太陽電池素子10の半導体基板に用いられる。換言すれば、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1,In1a,In1bの製造に適した構成を有するシリコン基板1,1a,1bを備えた太陽電池素子10が採用される。これにより、例えば、太陽電池素子10の出力特性などの品質が向上し得る。
太陽電池素子10の構成の一例について、図30から図32を参照しつつ説明する。太陽電池素子10は、光が入射する受光面10aと、この受光面10aの反対側の面である非受光面10bと、を有する。
図30から図32で示されるように、太陽電池素子10は、例えば、シリコン基板1と、反射防止膜2と、第1電極4と、第2電極5と、を備えている。
シリコン基板1は、例えば、第1導電型の第1半導体層1pと、この第1半導体層1pの受光面10a側に位置している第2導電型の第2半導体層1nと、を有する。例えば、第1導電型がp型であれば、第2導電型がn型とされる。また、例えば、第1導電型がn型であれば、第2導電型がp型とされる。ここで、例えば、第1導電型がp型であれば、シリコンインゴットIn1の導電型をp型とするために、ドーパントとなる元素として、ホウ素などが採用される。ここで、例えば、シリコンインゴットIn1におけるホウ素の濃度(単位体積あたりの原子の個数)が、1×1016個/立方センチメートル(atoms/cm3)から1×1017atoms/cm3程度であれば、シリコン基板1における比抵抗は、0.2オームセンチメートル(Ω・cm)から2Ω・cm程度となる。シリコン基板1に対するホウ素のドーピング方法としては、例えば、適量のホウ素元素の単体、またはホウ素の含有濃度が既知である適量のシリコン塊が、シリコンインゴットIn1の製造時に混合される方法が考えられる。また、ここで、例えば、第1導電型がp型である場合には、シリコン基板1における第7面F7側の表層部にリンなどの不純物を拡散によって導入することで、第2半導体層1nが生成され得る。これにより、例えば、第1半導体層1pと第2半導体層1nとがpn接合領域1pnを形成している状態となる。
また、シリコン基板1は、例えば、第8面F8側に位置している、BSF(Back-Surface-Field)領域1Hpを有していてもよい。このBSF領域1Hpは、例えば、シリコン基板1の第8面F8側の領域に内部電界を形成し、第8面F8の近傍における少数キャリアの再結合を低減する役割を有する。これにより、例えば、太陽電池素子10の光電変換効率が低下しにくい。BSF領域1Hpは、第1半導体層1pと同一の導電型を有する。BSF領域1Hpが含有する多数キャリアの濃度は、第1半導体層1pが含有する多数キャリアの濃度よりも高い。例えば、シリコン基板1がp型を有する場合には、シリコン基板1の第8面F8側の表層部にホウ素またはアルミニウムなどのドーパントとなる元素を拡散によって導入することで、BSF領域1Hpが形成され得る。ここでは、BSF領域1Hpにおけるドーパントの濃度は、例えば、1×1018atoms/cm3から5×1021atoms/cm3程度とされる。
反射防止膜2は、例えば、シリコン基板1の受光面10a側の第7面F7上に位置している。反射防止膜2は、受光面10aにおける所望の波長域の光に対する反射率を低減させて、シリコン基板1内に所望の波長域の光が吸収されやすくする役割を果たす。これにより、例えば、シリコン基板1における光電変換で生成されるキャリアの量が増大し得る。反射防止膜2の素材には、例えば、窒化珪素、酸化チタンおよび酸化珪素などのうちの1種以上の素材が適用される。ここで、例えば、反射防止膜2の素材に応じて反射防止膜2の厚さが適宜設定されれば、所望の波長域の入射光がほとんど反射しない条件(無反射条件ともいう)が実現され得る。具体的には、例えば、反射防止膜2の屈折率が、1.8から2.3程度とされ、反射防止膜2の厚さが、50ナノメートル(nm)から120nm程度とされる。
第1電極4は、例えば、シリコン基板1の受光面10a側の第7面F7上に位置している。図30および図32で示されるように、第1電極4は、例えば、第1出力取出電極4aと、複数の線状の電極(線状電極ともいう)としての第1集電電極4bと、を有する。図30および図32の例では、第1電極4は、第2方向としての+X方向に沿った長手方向を有する3本の第1出力取出電極4aと、第3方向としての+Y方向に沿った長手方向を有する43本の線状の第1集電電極4bと、を有する。各第1出力取出電極4aの少なくとも一部は、各第1集電電極4bと交差している状態にある。第1出力取出電極4aの線幅は、例えば、0.6mmから1.5mm程度とされる。第1集電電極4bの線幅は、例えば、25μmから100μm程度とされる。このため、第1集電電極4bの線幅は、第1出力取出電極4aの線幅よりも小さい。複数の線状の第1集電電極4bは、第2方向としての+X方向において、所定の間隔(第1間隔ともいう)De1で、相互に略平行な状態で並んでいる。所定の第1間隔De1は、例えば、1.5mmから3mm程度とされる。第1電極4の厚さは、例えば、10μmから40μm程度とされる。第1電極4は、例えば、複数の第1集電電極4bにおける+Y方向の端部同士をつなぐように位置している補助電極4cと、複数の第1集電電極4bにおける-Y方向の端部同士をつなぐように位置している補助電極4cと、を有していてもよい。補助電極4cの線幅は、例えば、第1集電電極4bの線幅と略同一とされる。第1電極4は、例えば、シリコン基板1の第7面F7側に、銀ペーストを所望のパターンで塗布した後に、この銀ペーストを焼成することで、形成され得る。銀ペーストは、例えば、銀を主成分とする粉末、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどが混合されることで生成され得る。主成分は、含有している成分のうち最も含有率が高い成分を意味する。銀ペーストの塗布法には、例えば、スクリーン印刷法などが適用される。
第2電極5は、例えば、シリコン基板1の非受光面10b側の第8面F8上に位置している。図31および図32で示されるように、第2電極5は、例えば、第2出力取出電極5aと、第2集電電極5bと、を有する。図31および図32の例では、第2電極5は、+X方向に沿った長手方向を有する3本の第2出力取出電極5aを有する。第2出力取出電極5aの厚さは、例えば、10μmから30μm程度とされる。第2出力取出電極5aの線幅は、例えば、1mmから4mm程度とされる。この第2出力取出電極5aは、例えば、第1電極4と同様な素材および製法で形成され得る。第2出力取出電極5aは、例えば、シリコン基板1の第8面F8側に、銀ペーストが所望のパターンで塗布された後に、この銀ペーストが焼成されることで、形成され得る。第2集電電極5bは、例えば、シリコン基板1の第8面F8側において第2出力取出電極5aが形成される領域の大部分を除く略全面にわたって位置している。第2集電電極5bの厚さは、例えば、15μmから50μm程度とされる。第2集電電極5bは、例えば、シリコン基板1の第8面F8側に、アルミニウムペーストを所望のパターンで塗布した後に、このアルミニウムペーストを焼成することで形成され得る。アルミニウムペーストは、例えば、アルミニウムを主成分とする粉末、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどが混合されることで生成され得る。アルミニウムペーストの塗布法には、例えば、スクリーン印刷法などが適用される。
このような構成を有する太陽電池素子10では、例えば、図33(a)で示されるように、第1B境界B1Bが曲がっていることで第2方向としての+X方向において存在している範囲の幅(存在幅)Ww1は、第1集電電極4bの線幅よりも大きくなっている場合が想定される。この場合には、例えば、太陽電池素子10の受光面10aを平面視したときに、第1B境界B1Bが、1本の第1集電電極4bを挟む2つの領域Ar1,Ar2にまたがるように位置している構成が考えられる。このような構成では、例えば、図33(b)で示されるように、受光面10aに対する光の照射に応答してpn接合領域1pnで光電変換によって発生するキャリアは、複数の第1集電電極4bのうちのキャリアの発生箇所P1から最も近い第1集電電極4bによって集電される。第1導電型がp型である場合には、キャリアとしての電子が第1集電電極4bによって集電される。
一方、例えば、図34(a)で示されるように、仮に、1本の第1集電電極4bに沿って第1B境界B1Bが直線状に位置していれば、複数の第1集電電極4bのうちのキャリアの発生箇所P1から最も近い第1集電電極4bとの間に第1B境界B1Bが存在している場合が想定される。この場合には、例えば、図34(b)で示されるように、発生箇所P1で発生するキャリアは、複数の第1集電電極4bのうちのキャリアの発生箇所P1から2番目に近い第1集電電極4bによって集電される。このとき、例えば、シリコン基板1内におけるキャリアの移動距離が長くなることで、キャリアの再結合が生じやすくなり、光電変換効率が低下しやすくなる。
このため、例えば、図33(a)および図33(b)で示されたように、第1B境界B1Bが曲がっていることで第2方向としての+X方向において存在している範囲の存在幅Ww1が第1集電電極4bの線幅よりも大きくなっていれば、光電変換効率の向上によって、太陽電池素子10の品質が向上し得る。ここでは、第1B境界B1Bを挙げて説明したが、例えば、第2B境界B2Bが曲がっていることで第2方向としての+X方向において存在している範囲の幅が第1集電電極4bの線幅よりも大きくなっていれば、光電変換効率の向上によって、太陽電池素子10の品質が向上し得る。
ここで、例えば、図33(a)で示されるように、第2方向としての+X方向において第1B境界B1Bが曲がっていることで存在している範囲の存在幅Ww1が、複数の線状電極としての第1集電電極4bの第1間隔De1よりも大きくてもよい。具体的には、例えば、第1間隔De1が1.6mmであり、第1集電電極4bの線幅が50μmであり、存在幅Ww1が数mmから数十mmであるような構成が考えられる。このような構成が採用されれば、例えば、太陽電池素子10の受光面10aを平面視したときに、第1B境界B1Bが、1本の第1集電電極4bを挟む2つの領域Ar1,Ar2にまたがるように位置しやすくなる。この場合には、例えば、太陽電池素子10において光の照射に応じて光電変換で生じるキャリアが、第1B境界B1Bの存在によって第1集電電極4bに集電されにくくなる不具合が生じにくい。これにより、例えば、太陽電池素子10の出力特性などの品質が向上し得る。ここでは、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bのうちの少なくとも一方の境界が、第1間隔De1よりも大きな第2方向としての+X方向において存在している範囲の存在幅Ww1を有していてもよい。
<1-8.第1実施形態のまとめ>
第1実施形態に係るシリコンインゴットIn1は、例えば、第2方向としての+X方向において、第1擬似単結晶領域Am1と第2擬似単結晶領域Am2との間に1つ以上の擬似単結晶領域を含む第1中間領域Ac1を有する。ここで、例えば、第2方向としての+X方向において、第1擬似単結晶領域Am1および第2擬似単結晶領域Am2のそれぞれの幅を、第1中間領域Ac1の幅よりも大きくする。また、例えば、第1擬似単結晶領域Am1と第1中間領域Ac1との第1境界B1および第2擬似単結晶領域Am2と第1中間領域Ac1との第2境界B2のそれぞれが対応粒界を有する。そして、例えば、第1境界B1および第2境界B2が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態にある。このような構成を有するシリコンインゴットIn1が採用されれば、例えば、シリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。したがって、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。
また、第1実施形態に係るシリコンブロックBk1は、例えば、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aと第2A擬似単結晶領域Am2Aとの間に1つ以上の擬似単結晶領域を含む第1A中間領域Ac1Aを有する。ここで、例えば、第2方向としての+X方向において、第1A擬似単結晶領域Am1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aのそれぞれの幅を、第1A中間領域Ac1Aの幅よりも大きくする。また、例えば、第1A擬似単結晶領域Am1Aと第1A中間領域Ac1Aとの第1A境界B1Aおよび第2A擬似単結晶領域Am2Aと第1A中間領域Ac1Aとの第2A境界B2Aのそれぞれが対応粒界を有する。そして、例えば、第1A境界B1Aおよび第2A境界B2Aが、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態にある。このような構成を有するシリコンブロックBk1が採用されれば、例えば、シリコンブロックBk1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。これにより、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。ここでは、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコンブロックBk1の構成が採用されることで、欠陥の低減によってシリコンブロックBk1の品質が向上し得る。
また、第1実施形態に係るシリコン基板1は、例えば、第2方向としての+X方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Bと第2B擬似単結晶領域Am2Bとの間に1つ以上の擬似単結晶領域を含む第1B中間領域Ac1Bを有する。ここで、例えば、第2方向としての+X方向において、第1B擬似単結晶領域Am1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bのそれぞれの幅を、第1B中間領域Ac1Bの幅よりも大きくする。また、例えば、第1B擬似単結晶領域Am1Bと第1B中間領域Ac1Bとの第1B境界B1Bおよび第2B擬似単結晶領域Am2Bと第1B中間領域Ac1Bとの第2B境界B2Bのそれぞれが対応粒界を有する。そして、例えば、第1B境界B1Bおよび第2B境界B2Bが、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態にある。このような構成を有するシリコン基板1が採用されれば、例えば、シリコン基板1のもととなるシリコンインゴットIn1の作製時においてシリコン融液MS1の一方向凝固が進行する際に、随時生成される対応粒界を有する機能性粒界に曲がりが存在することになる。このとき、例えば、機能性粒界における接線方向が場所によって種々変化している状態となり、色々な方向の歪みが機能性粒界で吸収され易くなるとともに、機能性粒界の面積の増加によって歪みが吸収され易くなる。これにより、例えば、シリコンインゴットIn1における欠陥が低減され得る。ここでは、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適したシリコン基板1の構成が採用されることで、欠陥の低減によってシリコン基板1の品質が向上し得る。
また、例えば、欠陥が生じにくいシリコンインゴットIn1の製造に適した構成を有するシリコン基板1を備えた太陽電池素子10が採用されることで、太陽電池素子10の出力特性などの品質が向上し得る。
<2.他の実施形態>
本開示は上述の第1実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良などが可能である。
上記第1実施形態において、シリコンインゴットIn1,In1a,In1bのそれぞれでは、例えば、第1境界B1,B1aおよび第2境界B2,B2bのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコンインゴットIn1a,In1bのそれぞれでは、例えば、第3境界B3および第4境界B4のうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコンインゴットIn1bでは、例えば、第5境界B5および第6境界B6のうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。シリコンインゴットIn1bでは、例えば、第7境界B7および第8境界B8のうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。
上記第1実施形態において、シリコンブロックBk1,Bk1a,Bk1bのそれぞれでは、例えば、第1A境界B1A,B1Aaおよび第2A境界B2A,B2Abのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコンブロックBk1a,Bk1bのそれぞれでは、例えば、第3A境界B3Aおよび第4A境界B4Aのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコンブロックBk1bでは、例えば、第5A境界B5Aおよび第6A境界B6Aのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。シリコンブロックBk1bでは、例えば、第7A境界B7Aおよび第8A境界B8Aのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。
上記第1実施形態において、シリコン基板1,1a,1bのそれぞれでは、例えば、第1B境界B1B,B1Baおよび第2B境界B2B,B2Bbのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコン基板1a,1bでは、例えば、第3B境界B3Bおよび第4B境界B4Bのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。また、シリコン基板1bでは、例えば、第5B境界B5Bおよび第6B境界B6Bのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。シリコン基板1bでは、例えば、第7B境界B7Bおよび第8B境界B8Bのうちの少なくとも一方の境界が、第1方向としての+Z方向に垂直な仮想的な断面において曲がっている状態または波打つように曲がっている状態にあってもよい。
上記第1実施形態に係る太陽電池素子10では、例えば、第7面F7が非受光面10b側に位置し、第8面F8が受光面10a側に位置するようにシリコン基板1が配置されてもよい。換言すれば、例えば、複数の線状電極としての第1集電電極4bは、第7面F7または第8面F8の上に位置していればよい。
上記第1実施形態において、例えば、図35(a)で示されるように、シリコンインゴットIn1における第2境界B2が第1方向としての+Z方向に行くにつれて第2方向としての+X方向に進むように第1方向としての+Z方向に対して傾斜している部分(第1傾斜部ともいう)TL1を含んでいてもよい。具体的には、例えば、第1傾斜部TL1は、YZ平面に対して傾斜している。図35(a)の例では、第2境界B2が斜め上方に延びるように位置している。また、例えば、図35(b)で示されるように、シリコンブロックBk1における第2A境界B2Aが第1方向としての+Z方向に行くにつれて第2方向としての+X方向に進むように第1方向としての+Z方向に対して傾斜している部分(第1A傾斜部ともいう)TL1Aを含んでいてもよい。具体的には、例えば、第1A傾斜部TL1Aは、YZ平面に対して傾斜している。図35(b)の例では、第2A境界B2Aが斜め上方に延びるように位置している。第1傾斜部TL1および第1A傾斜部TL1Aの第2方向としての+X方向において存在している幅は、例えば、数mmから数十mm程度とされる。
このような構成は、例えば、次のようにして実現され得る。まず、鋳型121の底部121b上の中央よりも第2方向としての+X方向にずれた位置に第1中間種結晶部Cs1を配置する。次に、鋳型121内で底部121b側から上方(+Z方向)に向けてシリコン融液MS1の一方向凝固を行わせる際に、鋳型121の周囲からの加熱状態などを適宜調整することで、シリコン融液MS1と固体状態のシリコンとの境界が第1方向としての+Z方向に張り出すような凸形状とされる。このような構成が採用されれば、シリコン融液MS1の一方向凝固が行われる際に、例えば、底部121b側から上方に向けて伝播している転位の上方に第2境界B2が形成されるようにシリコン融液MS1が凝固し得る。このとき、例えば、上方に向けた転位の伝播が第2境界B2によってブロックされ得る。また、例えば、転位が比較的発生しやすい鋳型121内の周辺に近づくように第2境界B2が斜行するようにシリコン融液MS1が凝固することによって、上方に向けた転位の伝播が第2境界B2でブロックされやすくなる。これにより、例えば、製造されるシリコンインゴットIn1における欠陥が低減され、シリコンインゴットIn1の品質が向上し得る。また、例えば、シリコンインゴットIn1から切り出されるシリコンブロックBk1の品質も向上し得る。
上記第1実施形態において、例えば、第2方向と第3方向とが、互いに直交することなく、90度とは異なる角度を成すように交差してもよい。上記第1実施形態の第1変形例および第2変形例では、例えば、第2方向と第3方向とが成す角度を、対応粒界に対応する単結晶シリコンの回転角度関係に含まれるように設定する態様が考えられる。また、上述した第2方向と第3方向とが互いに直交している状態には、例えば、第2方向と第3方向とが90度を成している状態を基準として、1度から3度程度の誤差が許容され得る。具体的には、第2方向と第3方向とが互いに直交している場合における第2方向と第3方向とが成す角度には、例えば、87度から93度の範囲の角度が含まれてもよい。ここで、第2方向と第3方向とが成す角度において90度を基準として生じる誤差は、例えば、種結晶部および中間種結晶部を準備する際に切断で生じる誤差、ならびに種結晶部および中間種結晶部を配置する際に生じる誤差などを含む。
上記第1実施形態において、例えば、シリコンインゴットIn1,In1a,In1bの第1面F1および第2面F2ならびにシリコンブロックBk1,Bk1a,Bk1bの第4面F4および第5面F5のそれぞれは、矩形状ではなく、シリコン基板1,1a,1bの形状などに応じた種々の形状を有していてもよい。
上記第1実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。