本発明に係る自律型掃除機の実施形態について図1から図13を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
図1は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、いわゆるロボットクリーナである。自律型掃除機1は、本体2に搭載される二次電池3の電力を消費して自律で移動する。自律型掃除機1は、掃除場所としての被掃除領域Aの被掃除面f、つまり床面を網羅的に動き回って掃除する。自律型掃除機1は、掃除運転の後、充電台5へ帰巣して次の掃除運転を待機する。充電台5に帰巣した自律型掃除機1は、次の掃除運転を待機している最中、二次電池3を充電する。そのため、自律型掃除機1は、使用者による充電の手間を省き、かつ使用者の求めによる突発的な掃除運転に対応できる。
充電台5は、居室内の被掃除面fに設置可能である。充電台5は、自律型掃除機1を円滑に接続または離脱可能である。充電台5は、自律型掃除機1が接続された状態で、商用交流電源から二次電池3へ電力を導く電源コード6を備えている。電源コード6は、二次電池3へ送電する電路である。
図2は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の左側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の底面図である。
図1に加えて、図2および図3に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、本体2と、本体2を移動させる移動部11と、本体2の下方の被掃除面fを掃除する掃除部12と、本体2の周囲の被検知物を検知する検知部13と、検知部13、移動部11、および掃除部12を制御して自律型掃除機1の運転を制御する制御部15と、移動部11、掃除部12、検知部13、および制御部15を含む自律型掃除機1の各部へ電力を供給する二次電池3と、を備えている。
なお、図2および図3の実線矢印Fは、自律型掃除機1の前進方向である。図2および図3の実線矢印Bは、自律型掃除機1の後退方向である。
本体2は、例えば合成樹脂製の本体ケース21と、本体ケース21の側面に設けられるバンパー22と、を備えている。本体2は、平面視において非定幅図形状を有している。本体2の前縁部23は直線状の形状を有している。
本体ケース21は、本体2の外殻である。
バンパー22は、本体2の側縁部25に設けられている。
移動部11は、複数の駆動輪26と、対応する駆動輪26を個別に駆動させる複数の電動機27と、複数の駆動輪26とともに被掃除面f上の本体2を支える従動輪28と、を備えている。
それぞれの駆動輪26は、本体2を移動させる力を被掃除面fへ伝える。それぞれの駆動輪26は、本体2の幅方向、つまり本体2の左右幅方向に延びる車軸のまわりに転がる。複数の駆動輪26は、少なくとも本体2の幅方向、つまり本体2の左右方向に離間する一対の駆動輪26を含んでいる。駆動輪26は、懸架装置、いわゆるサスペンションによって被掃除面fに押さえつけられている。
それぞれの電動機27は、それぞれの駆動輪26を個別に独立して駆動させる。換言すると、自律型掃除機1は、それぞれの電動機27を個別かつ独立に制御して、それぞれの駆動輪26を個別かつ独立に駆動させる。自律型掃除機1は、本体2の幅方向に離間する一対の駆動輪26を同じ方向へ回転させることによって直進し、一対の駆動輪26を異なる方向へ回転させることによって旋回する。また、自律型掃除機1は、左右の駆動輪26の出力を上下させて前進、または後退の速度を調整したり、左右の駆動輪26の出力を相違させて旋回半径の大小を調整したりすることができる。自律型掃除機1の直進は、自律型掃除機1の前進、および自律型掃除機1の後退を含んでいる。自律型掃除機1の旋回は、自律型掃除機1の右旋回、およびは、自律型掃除機1の左旋回を含んでいる。
自律型掃除機1は、左右の電動機27を異なる方向に回転させ、かつ左右の電動機27を同程度の出力で駆動させて、その場で旋回する、いわゆる超信地旋回(spin turn、neutral turn、counter-rotation turn)を行うことができる。また、自律型掃除機1は、左右いずれか一方の電動機27を停止させ、左右いずれか他方の電動機27を駆動させて、停止している駆動輪26を軸にして旋回する、いわゆる信地旋回(pivot turn、skid turn)を行うことができる。さらにまた、自律型掃除機1は、左右の電動機27を異なる回転速度で駆動させて、前進または後退しながら弧を描いて進路を変える、いわゆる緩旋回(power turn)を行うことができる。なお、超信地旋回、信地旋回、および緩旋回を総称して単に旋回と言う。
なお、本実施形態に係る自律型掃除機1の移動部11は、左右一対の駆動輪26に代えて無限軌道を備えていても良い。また、移動部11は、左右それぞれに複数、配置される駆動輪26を備えていても良い。いずれの場合であっても、超信地旋回する時の旋回中心を超信地旋回中心Cn1と呼び、信地旋回をするときの旋回中心を信地旋回中心Cn2と呼び、緩旋回をするときの旋回中心を緩旋回中心と呼ぶ。超信地旋回中心Cn1は本体2の重心に一致していることが好ましい。
また、本実施形態では、説明を簡単にするために、駆動輪26は左右一対あり、左右の駆動輪26の車軸は一直線に配置されているものとする。超信地旋回中心Cn1は、左右の駆動輪26の中間にあって、車軸の延長線上に位置するものとする。信地旋回中心Cn2は、左右いずれか一方の駆動輪26の接地点に位置するものとする。
従動輪28は、本体2の下部の幅方向の略中央部、かつ後部に配置されている。従動輪28は、円形の回転体であり、例えばキャスターである。従動輪28は、自律型掃除機1の前進、後退、および旋回に容易に追従して向きを変え、自律型掃除機1の移動を安定させる。なお、駆動輪26および従動輪28に支えられる自律型掃除機1の重心は、一対の駆動輪26と従動輪28とがなす三角形の内側に配置されていることが好ましい。換言すると、自律型掃除機1は、より安定して移動することができる。従動輪28はなくても良い。
掃除部12は、本体2の底部に設けられている。掃除部12は、本体2の真下、およびその周囲の被掃除面fの塵埃を掃除する。掃除部12は、例えば、負圧を生じさせて塵埃を吸引する吸込掃除部31、および本体2の下方の床面を拭き掃除もしくは磨き掃除する拭き掃除部32のいずれかを含んでいる。
吸込掃除部31は、本体2の底面に設けられる吸込口34と、吸込口34に配置される回転ブラシ35と、回転ブラシ35を回転駆動させるブラシ用電動機36と、本体2の後部に設けられる塵埃容器37と、本体2内に収容されて塵埃容器37に流体的に接続される電動送風機38と、を備えている。
吸込口34は、電動送風機38が発生させる負圧によって空気とともに塵埃を吸い込む。吸込口34は、本体2の底部の前縁部23に配置されている。吸込口34は、本体2の幅方向に延びている。換言すると、吸込口34の左右方向の開口幅は、吸込口34の前後方向の開口幅よりも大きい。本体2の底面が自律走行時に被掃除面fに対向し、対面しているため、吸込口34は、被掃除面f上の塵埃、または回転ブラシ35が被掃除面fから掻き上げた塵埃を容易に吸い込むことができる。
回転ブラシ35の回転中心線は、自律型掃除機1の幅方向に向けられている。自律型掃除機1を被掃除面f上に走行可能な状態で置いたとき、回転ブラシ35は、被掃除面fに接触する。そのため、回転駆動する回転ブラシ35は、被掃除面f上の塵埃を掻き上げる。掻き上げられた塵埃は、吸込口34へ効率的に吸い込まれる。
ブラシ用電動機36は、回転ブラシ35を正転または逆転させる。回転ブラシ35の正転方向は、前進時に自律型掃除機1の推進力を補助する方向である。回転ブラシ35の逆転方向は、後退時に自律型掃除機1の推進力を補助する方向である。
塵埃容器37は、電動送風機38が発生させる吸込負圧によって吸込口34から吸い込まれる塵埃を蓄積する。塵埃容器37は、塵埃を濾過捕集するフィルターや、遠心分離や直進分離などの慣性分離によって塵埃を蓄積する分離装置である。遠心分離は、サイクロン分離とも呼ばれる。直進分離は、直進する空気と塵埃との慣性力の差で塵埃と空気とを分離する分離方式である。塵埃容器37は、本体2へ着脱可能であり、また開閉可能である。使用者は、塵埃容器37を本体2から一時的に取り外して、塵埃容器37を開いて塵埃容器37に蓄積された塵埃を容易に廃棄したり、塵埃容器37を清掃したり、洗浄したりすることができる。
電動送風機38は、二次電池3の電力を消費して駆動する。電動送風機38は、塵埃容器37から空気を吸い込んで吸込負圧を生じさせる。塵埃容器37に発生した負圧は、吸込口34に作用する。本体2は、電動送風機38の排気(清浄な空気)を、本体2の外側へ流出させる排気口を有している。
拭き掃除部32は、本体2の底部、かつ吸込口34の真後ろに配置されている。拭き掃除部32は、例えば本体2の底面に着脱可能な不織布等の繊維材料製の拭き掃除シート39を備えている。拭き掃除シート39は、自律型掃除機1を被掃除面f上に走行可能な状態で置いたとき、被掃除面fに接触する。拭き掃除シート39は、駆動輪26が被掃除面fで空転しない程度の圧力で、被掃除面fに押し当てられていることが好ましい。拭き掃除シート39と本体2の底面との間には、発泡樹脂などの弾性部材が設けられている。この弾性部材は、拭き掃除シート39を被掃除面fに均一の圧力で押し当てる。
なお、吸込掃除部31と拭き掃除部32との配置の前後は逆であっても良い。つまり、図2のように、吸込掃除部31が本体2の底部の前縁部23に配置され、拭き掃除部32が吸込掃除部31の直後に配置されていても良いし、拭き掃除部32が本体2の底部の前縁部23に配置され、吸込掃除部31が拭き掃除部32の直後に配置されていても良い。いずれの配置関係であっても、吸込掃除部31および拭き掃除部32のいずれか一方は、前縁部23に沿って配置されている。換言すると、掃除部12は、本体2の底部において、最も前側に配置されている。
検知部13は、本体2の移動にともなって本体2に近づく被検知物O、または本体2に接触する被検知物Oを検知する。検知部13は、本体2に設けられて自律型掃除機1の周囲の画像を撮影するカメラ部41と、本体2に設けられて本体2が自律型掃除機1以外の物体、つまり被検知物Oに接近したことを検知する近接検知部42と、本体2に設けられて本体2が自律型掃除機1以外の物体、つまり被検知物Oに接触したことを検知する接触検知部43と、を含んでいる。
カメラ部41は、本体2の正面に設けられている。カメラ部41は、自律型掃除機1の前方、つまり前進時の走行方向を撮影する。
自律型掃除機1は、カメラ部41に代えて、または加えて、ステレオカメラとは異なる原理によって撮影範囲における奥行きの情報を得る距離測定装置45を備えていても良い。
近接検知部42は、例えば赤外線センサーや、超音波センサーである。赤外線センサーを利用する近接検知部42は、赤外線を発する発光素子と、光を受けとって電気信号に変換する受光素子と、を備えている。近接検知部42は、発光素子から赤外線を放ち、被検知物Oで反射される赤外線を受光素子で受光して電力に変換し、変換された電力が一定以上になると、被検知物Oが一定距離内に近づいたことを検知する。つまり、近接検知部42は、本体2が被検知物Oに接触する以前に検知する。超音波センサーを利用する近接検知部42は、赤外線に代えて超音波を利用して被検知物Oを検知する。
接触検知部43は、いわゆるバンパーセンサーである。接触検知部43は、移動する本体2が被検知物Oに接触した際に、本体2への衝撃を緩和するバンパー22に連動している。バンパー22は、被検知物Oに接触した際に、本体2の内側へ向かって押し込まれるように変位する。接触検知部43は、このバンパー22の変位を検知して本体2が被検知物Oに接触したことを検知する。接触検知部43は、例えばバンパー22の変位によって入り、切りされるマイクロスイッチ、またはバンパー22の変位量を非接触で測定する赤外線センサーや、超音波センサーを含んでいる。
二次電池3は、移動部11、掃除部12、検知部13、および制御部15を含む自律型掃除機1の各部で消費される電力を蓄えている。二次電池3は、例えばリチウムイオン電池であり、充放電を制御する制御回路を有している。この制御回路は、二次電池3の充放電に関する情報を制御部15へ出力している。
次いで、自律型掃除機1の本体2について詳細に説明する。なお、第一例の本体2、第二例の本体2A(以下、単に「本体2A」と言う。)、および第三例の本体2B(以下、単に「本体2B」と言う。)において、同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図4は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第一例の概略的な平面図である。
図4に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1の本体2は、超信地旋回する時の超信地旋回中心Cn1から本体2の前端50および左右それぞれの側端51までの第一距離R1を半径とする第一円Ci1の外側領域OR1に突出する前半部52と、前半部52に連接する後半部53と、を有している。本体2の前半部52は、超信地旋回中心Cn1よりも前側の部位であって、本体2の後半部53は、超信地旋回中心Cn1よりも後ろ側の部位である。本体2の前端50は、超信地旋回中心Cn1を通って真正面へ向かって延びる仮想的な線分、つまり本体2の前後方向へ延びる中心線CLと本体2の前縁部23とが交わる部位である。中心線CLは、本体2を左右に二分する。本体2の側端51は、超信地旋回中心Cn1を通って左右それぞれの側方へ向かって延びる仮想的な線分、つまり本体2の左右方向へ延びる線分と本体2の側縁部25とが交わる部位である。線分は、本体2を前後に二分する。
また、本体2の前後長、および本体2の最大幅は、実質的に第一距離R1の2倍である。換言すると、本体2は、一辺の長さが第一距離R1の2倍であって、各辺が前後左右に延びる仮想的な正方形に納まる。この正方形の対角線の交点は、超信地旋回中心Cn1に実質的に一致する。
さらに、信地旋回中心Cn2は、本体2を囲む仮想的な正方形を本体2の前後方向へ二等分し、かつ超信地旋回中心Cn1を通る線分の上に配置される。
前半部52は、直線状の前縁部23と、左右一対の側縁部25と、を有している。
前縁部23は、本体2の前端50を含み、かつ超信地旋回中心Cn1を通って本体2の前後方向へ延びる中心線CLに実質的に直交する。前縁部23は、直線状に延びている。換言すると、前縁部23は、本体2の左右方向、または幅方向へ延びている。自律型掃除機1が被掃除領域Aの境界、例えば壁Wへ向かって真っ直ぐに前進すると、本体2の前縁部23は、壁Wに正対して向き合い、対面し、対向する。そして、自律型掃除機1が前進して壁Wに到達すると、本体2の前縁部23は、壁Wに微小な隙間を隔てて、または壁Wに接触した状態で壁Wに倣う。したがって、本体2の底面、かつ本体2の前縁部23に沿って配置される掃除部12は、壁際を掃除することができる。
なお、自律型掃除機1は、本体2の前縁部23に正面へ向けて設けられる近接検知部42の検出結果や、前縁部23に設けられるバンパーの変位を検出する接触検知部43の検出結果に基づいて、本体2を壁際に接近させる。
左右一対の側縁部25は、右側の駆動輪26を信地旋回中心Cn2Rにして信地旋回する場合に信地旋回中心Cn2Rから遠い方の左側の側縁部25Lと、左側の駆動輪26を信地旋回中心Cn2Lにして信地旋回する場合に信地旋回中心Cn2Lから遠い方の右側の側縁部25Rと、を含んでいる。
前縁部23と側縁部25とは、鈍角をなして交わっている。換言すると、前縁部23と側縁部25との連接部56は、鈍角の形状を有している。そして、側縁部25の前端部は、前縁部23に鈍角をなして交わって本体2が信地旋回中に障害物、例えば壁Wに接した場合には本体2と壁Wとの干渉を緩和する形状を有している。つまり、前縁部23および左側の側縁部25Lとの連接部56Lは、鈍角の形状を有している。そして、左側の側縁部25Lの前端部は、前縁部23に鈍角をなして交わって本体2が信地旋回中に障害物、例えば壁Wに接した場合には本体2と壁Wとの干渉を緩和する形状を有している。また、前縁部23および右側の側縁部25Rとの連接部56Rは、鈍角の形状を有している。そして、右側の側縁部25Rの前端部は、前縁部23に鈍角をなして交わって本体2が信地旋回中に障害物、例えば壁Wに接した場合には本体2と壁Wとの干渉を緩和する形状を有している。
ここで、前縁部23の延長線である第一仮想線VL1を設定する。
また、それぞれの本体2の側端51を通って自律型掃除機1の真正面へ向かって延びる仮想線VL2を設定する。仮想線VL2は左右一対ある。つまり、一対の仮想線VL2は、左側の側端51Lを通って真正面へ向かって延びる仮想線VL2Lと、右側の側端51Rを通って真正面へ向かって延びる仮想線VL2Rと、を含んでいる。それぞれの仮想線VL2は、本体2を左右に二分する中心線CLに平行な線分であって、対応する側端51L、51Rを通っている。
そして、側縁部25は、信地旋回中心Cn2から本体2の側端51までの第二距離R2を半径とする第二円Ci2と、前縁部23の延長線である第一仮想線VL1と、第一仮想線VL1に直行し、かつ側端51を通る第二仮想線VL2と、に囲まれる領域の内側に配置されている。つまり、左側の側縁部25Lは、右側の信地旋回中心Cn2Rから本体2の左側の側端51Lまでの第二距離R2Rを半径とする第二円Ci2Rと、第一仮想線VL1と、左側の側端51Lを通る第二仮想線VL2Lと、に囲まれる領域SLの内側に配置されている。右側の側縁部25Rは、左側の信地旋回中心Cn2Lから本体2の右側の側端51Rまでの第二距離R2Lを半径とする第二円Ci2Lと、第一仮想線VL1と、右側の側端51Rを通る第二仮想線VL2Rと、に囲まれる領域SRの内側に配置されている。
側縁部25は、本体2の外側へ向かって膨らむ形状を有している。つまり、側縁部25は、連接部56と側端51とを通る直線よりも本体2の外側へ突出している。また、側縁部25は、本体2の外側へ向かって膨らむ凸状の曲線形状、または曲面形状を有している。
側縁部25の一部、または全部には、バンパー22が設けられている。バンパー22は、本体2の緩衝部であって、本体2の前後方向において、側縁部25の全長に設けられていることが好ましい。バンパー22は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂(fluorocarbon polymers)のように高い滑性を有していたり、シリコーンゴム(silicone rubber)のように弾性を有していたり、起毛のように緩衝性および滑性に優れている素材で構成されていることが好ましい。
なお、本体2は、右方向へ旋回する場合であっても、左側へ旋回する場合であっても、同じような態様で旋回できることが好ましい。そこで、本体2は、左右対称な形状であることが好ましい。したがって、左右の側縁部25L、25Rは、平面視において、実質的に本体2を左右に二分する中心線CLを対称軸とする線対称な形状を有することが好ましい。
ここで、それぞれの信地旋回中心Cn2L、Cn2Rを通って自律型掃除機1の真正面へ向かって延びる第三仮想線VL3を設定する。第三仮想線VL3は左右一対ある。つまり、一対の第三仮想線VL3は、左側の信地旋回中心Cn2Lを通って真正面へ向かって延びる第三仮想線VL3Lと、右側の信地旋回中心Cn2Rを通って真正面へ向かって延びる第三仮想線VL3Rと、を含んでいる。それぞれの第三仮想線VL3は、本体2を左右に二分する中心線CLに平行な線分であって、対応する信地旋回中心Cn2L、Cn2Rを通っている。
そして、前縁部23と側縁部25との連接部56は、それぞれの信地旋回中心Cn2L、Cn2Rを通って自律型掃除機1の真正面へ向かって延びる左右一対の第三仮想線VL3に挟まれる領域Gの内側に位置している。換言すると、前縁部23と左側の側縁部25Lとの連接部56Lは、領域Gの内側に位置し、前縁部23と右側の側縁部25Rとの連接部56Rは、領域Gの内側に位置している。
後半部53は、超信地旋回中心Cn1を中心とし、超信地旋回中心Cn1から側縁部25L、25Rの後端までの第三距離R3を半径とする第三円Ci3の内側領域に納まっている。第三距離R3は、第一距離R1に実質的に等しい。
図4に、被掃除領域Aを画定し、かつ直交する2つの壁W、つまり被掃除領域Aの角、あるいは隅を二点鎖線で示す。一方の壁Wfは、自律型掃除機1の本体2の真正面に位置し、他方の壁Wrは、自律型掃除機1の本体2の右側方に位置している。自律型掃除機1は、本体2の直線状の前縁部23を微小な隙間を隔てて壁Wに寄せた状態、または前縁部23を壁Wに接触させた状態で壁際を掃除する。掃除部12が本体2の前縁部23に沿って配置されているため、自律型掃除機1は、壁際を確実に掃除することができる。前縁部23を微小な隙間を隔てて壁Wに寄せた状態、または前縁部23を壁Wに接触させた状態を、以下、単に「前縁部23が壁際に沿った状態」と言う。
ところが、自律型掃除機1は、図4に示すように、前縁部23が壁際に沿った状態で、その場で進行方向を変えることが難しい。換言すると、自律型掃除機1は、前縁部23が壁際に沿った状態で超信地旋回することが難しい。前縁部23が壁際に沿った状態では、第一円Ci1の外側領域OR1に突出する部位が壁Wに接して自律型掃除機1の超信地旋回を阻害する。
そこで、自律型掃除機1は、信地旋回をして壁際から脱し、他の場所へ移動する。図4に示すような状況では、自律型掃除機1は、右側方の壁Wrから遠い方の信地旋回中心Cn2、つまり左側の信地旋回中心Cn2Lを時計回りに信地旋回して壁際から離脱する。このとき、連接部56L、56Rを含む本体2の前縁部23および左側の側縁部25Lは、正面の壁Wfから遠ざかるような軌跡を描いて移動する。また、右側の連接部56Rを含む右側の側縁部25Rは、右側の領域SR内に納まっているため、右側方の壁Wrに接する。
そして、右側の側縁部25Rの前端部は、前縁部23に鈍角をなして交わっているため、本体2が信地旋回中に右側方の壁Wrに接した場合には本体2と右側方の壁Wrとの干渉を緩和する。このとき、右側の駆動輪26は、本体2を信地旋回させる駆動力を被掃除面fへ伝える一方、信地旋回中心Cn2Lである左側の駆動輪26は、単に支点として停止している。自律型掃除機1が信地旋回を継続すると、右側の側縁部25Rは右側方の壁Wrを滑りつつ、右側方の壁Wrから受ける反力によって支点である左側の駆動輪26を接地面である被掃除面f上で滑らせる。左側の駆動輪26は、右側方の壁Wrから離れる方向へ滑る。したがって、本体2は、右側方の壁Wrから離れる方向へ移動しながら信地旋回して壁際から脱し、他の場所へ移動する。
つまり、自律型掃除機1は、前縁部23と側縁部25とが被掃除領域Aの角に、実質的に隙間無く位置した状態で本体2を被掃除領域Aの角に緩やかに干渉させながら信地旋回することができる。
図5Aから図5Eは、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第一例における掃除手順の一例である。
第一例の本体2を備える自律型掃除機1は、図4および図5Aから図5Eに示す手順で被掃除領域Aの角を掃除する。
先ず、図4に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角に進入し、正面の壁Wfの壁際を掃除する。そして、図5Aに示すように、自律型掃除機1は、左側の信地旋回中心Cn2Lを時計回りに信地旋回して右側方の壁Wrに右側の側縁部25Rを接触させる。この状態では、本体2の側縁部25Rが右側方の壁Wrに干渉して信地旋回は難しい。しかしながら、本実施形態に係る自律型掃除機1は、右側の駆動輪26の駆動を継続し、側縁部25Rを右側方の壁Wrで滑らせながら信地旋回中心である左側の駆動輪26を右側方の壁Wrから離れる方向へ滑らせて、側縁部25Rと右側方の壁Wrとの干渉を次第に緩和する。そして、図5Bに示すように、側縁部25Rと右側方の壁Wrとの干渉が解消する位置まで信地旋回中心である左側の駆動輪26が滑ると、自律型掃除機1は、信地旋回することができる。図5Cに示すように、信地旋回した自律型掃除機1は、本体2の正面の向きを180度転換する。つまり、本体2の後半部53は、正面の壁Wfを向く。
なお、左側の駆動輪26の滑り位置によっては、本体2が図5Cに示すように正面の壁Wfに接しない場合がある。そのような場合、自律型掃除機1は、図5Cに示すように本体2を正面の壁Wfの壁際まで後退させる。
次いで、図5Dに示すように、自律型掃除機1は、正面の壁Wfの壁際で反時計回りに超信地旋回する。壁際で超信地旋回した自律型掃除機1は、本体2の正面の向きを90度転換する。つまり、本体2の前半部52は、右側方の壁Wrを向く。
次いで、図5Eに示すように、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角に進入し、右側方の壁Wrの壁際を掃除する。しかして、被掃除領域Aの角が掃除される。自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角を掃除した後、右側の信地旋回中心Cn2Rを反時計回りに信地旋回して被掃除領域Aの角から離脱し、または一旦後退して時計回りに超信地旋回して被掃除領域Aの角から離脱して、移動を継続する。
なお、本体2は、左右対称な形状を有しているので、壁Wが本体2の正面と左側方とにあった場合であっても、右側の信地旋回中心Cn2Rを反時計回りに信地旋回することで、自律型掃除機1は、その場を容易に離脱することができる。したがって、自律型掃除機1は、図4に示すように角を本体2の右側方に見た状態、および角を本体2の左側方に見た状態の双方で、被掃除領域Aの角を掃除できる。そのため、自律型掃除機1は、定幅図形状の本体を有する従来の掃除機に比べて、被掃除領域Aの角をより奥まで掃除することができる。
図6は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第二例の概略的な平面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1の本体2Aの最大幅は、実質的に第一距離R1の2倍である。本体2Aの最大幅は、本体2Aの左右の側端51の間の距離に相当する。本体2の前後長は、第一距離R1の2倍より小さい。
そして、側縁部25は、信地旋回中心Cn2から本体2の側端51までの第二距離R2を半径とする第二円Ci2と、前縁部23の延長線である第一仮想線VL1と、第一仮想線VL1に直行し、かつ側端51を通る第二仮想線VL2と、に囲まれる領域の内側に配置されている。つまり、左側の側縁部25Lは、右側の信地旋回中心Cn2Rから本体2の左側の側端51Lまでの第二距離R2Rを半径とする第二円Ci2Rと、第一仮想線VL1と、左側の側端51Lを通る第二仮想線VL2Lと、に囲まれる領域SLの内側に配置されている。右側の側縁部25Rは、左側の信地旋回中心Cn2Lから本体2の右側の側端51Rまでの第二距離R2Lを半径とする第二円Ci2Lと、第一仮想線VL1と、右側の側端51Rを通る第二仮想線VL2Rと、に囲まれる領域SRの内側に配置されている。
また、本体2Aの連接部56Aは、それぞれの信地旋回中心Cn2L、Cn2Rを通って真正面へ向かって延びる左右一対の第三仮想線VL3に挟まれる領域Gの外側に位置している。換言すると、前縁部23と左側の側縁部25Lとの連接部56ALは、領域Gの外側に位置し、前縁部23と右側の側縁部25Rとの連接部56ARは、領域Gの外側に位置している。換言すると、前縁部23の左側の一部23aL、および前縁部23の右側の一部23aRが、領域Gの外側に位置している。
つまり、第二例の本体2Aは、第一例の本体2と異なり、左右の連接部56AL、56ARが領域Gの外側に位置している。そのため、第二例の本体2Aの前縁部23が壁際に沿った状態では、領域Gの外側にあり、かつ信地旋回中心Cn2に近い方の前縁部23の一部が、壁Wに接して自律型掃除機1の信地旋回を阻害する。例えば、第二例の本体2Aが左側の信地旋回中心Cn2Lを中心に信地旋回する場合には、領域Gの外側にあり、かつ左側の信地旋回中心Cn2Lに近い前縁部23の左側の一部23aLが、正面の壁Wfに接して自律型掃除機1の信地旋回を阻害する。
そこで、第二例の本体2Aは、前縁部23と側縁部25とが被掃除領域Aの角に、実質的に隙間無く位置した状態で、先ず真後ろへ後退し、その後に信地旋回する。図6に示すような状況では、自律型掃除機1は、真後ろへ後退し、その後に右側方の壁Wrから遠い方の信地旋回中心Cn2、つまり左側の信地旋回中心Cn2Lを時計回りに信地旋回して壁際から離脱する。このとき、自律型掃除機1が真後ろへ後退する距離は、信地旋回中心Cn2と信地旋回中心Cn2に近い方の連接部56Aとの間の距離Ln1から信地旋回中心Cn2と前縁部23との間の最短の距離Ln2を引いた距離以上であれば良い。したがって、信地旋回して壁際から離脱するために、自律型掃除機1が真後ろへ後退する距離は、[数1]のように表現できる。
[数1]
(後退する距離)≧(距離Ln1)-(距離Ln2)
なお、壁際で信地旋回して進行方向を反転させるためには、本体2Aの後半部53が壁Wに干渉しないように、自律型掃除機1が真後ろへ後退する距離は、超信地旋回中心Cn1と後端部までの距離、つまり第一距離R1から距離Ln2を引いた距離以上後退する。したがって、壁際で信地旋回して進行方向を反転させるために、自律型掃除機1が真後ろへ後退する距離は、[数2]のように表現できる。
[数1]
(後退する距離)≧(第一距離R1)-(距離Ln2)
そうすると、左側の連接部56ALを含む前縁部23の左側の一部23aLは、正面の壁Wfに一時的に接近するものの、後退した距離(距離Ln1から距離Ln2を引いた距離)を超えて正面の壁Wfに近づくことなく移動する。
また、右側の連接部56ARを含む右側の側縁部25Rは、第一例の本体2と同様に、右側方の壁Wrに干渉する。しかしながら、本実施形態に係る自律型掃除機1は、信地旋回を継続し、側縁部25Rを右側方の壁Wrで滑らせながら信地旋回中心である左側の駆動輪26を右側方の壁Wrから離れる方向へ滑らせ、右側方の壁Wrと右側の側縁部25Rとの干渉を緩和しながら信地旋回を継続する。
つまり、自律型掃除機1は、側縁部25が被掃除領域Aの角に、実質的に隙間無く位置した状態で被掃除領域Aの角に本体2Aを干渉させることなく信地旋回することができる。
図7Aから図7Gは、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第二例における掃除手順の一例である。
第二例の本体2Aを備える自律型掃除機1は、図6および図7Aから図7Gに示す手順で被掃除領域Aの角を掃除する。
先ず、図6に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角に進入し、正面の壁Wfの壁際を掃除する。そして、図7Aに示すように、自律型掃除機1は、一旦後退して正面の壁Wfと本体2Aとの間に適宜の隙間を隔てる。この隙間は、[数1]または[数2]の関係を満たす。そして、図7Bに示すように、自律型掃除機1は、左側の信地旋回中心Cn2Lを時計回りに信地旋回して右側方の壁Wrに右側の側縁部25Rを接触させる。この状態では、本体2Aの側縁部25Rが右側方の壁Wrに干渉して信地旋回は難しい。しかしながら、本実施形態に係る自律型掃除機1は、右側の駆動輪26の駆動を継続し、側縁部25Rを右側方の壁Wrで滑らせながら信地旋回中心である左側の駆動輪26を右側方の壁Wrから離れる方向へ滑らせて、側縁部25Rと右側方の壁Wrとの干渉を次第に緩和する。そして、図7Cに示すように、右側方の壁Wrと右側の側縁部25Rとの干渉が解消する位置まで信地旋回中心である左側の駆動輪26が滑ると、自律型掃除機1は、信地旋回することができる。図7Dに示すように、信地旋回した自律型掃除機1は、本体2の正面の向きを180度転換する。つまり、本体2の後半部53は、正面の壁Wfを向く。
次いで、図7Eに示すように、自律型掃除機1は、本体2Aを正面の壁Wfの壁際まで後退させる。
次いで、図7Fに示すように、自律型掃除機1は、正面の壁Wfの壁際で反時計回りに超信地旋回する。壁際で超信地旋回した自律型掃除機1は、本体2Aの正面の向きを90度転換する。つまり、本体2Aの前半部52は、右側方の壁Wrを向く。
次いで、図7Gに示すように、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角に進入し、右側方の壁Wrの壁際を掃除する。しかして、被掃除領域Aの角が掃除される。自律型掃除機1は、被掃除領域Aの角を掃除した後、一旦後退して右側の信地旋回中心Cn2Rを反時計回りに信地旋回して被掃除領域Aの角から離脱し、または一旦後退して時計回りに超信地旋回して被掃除領域Aの角から離脱して、移動を継続する。
自律型掃除機1は、前後方向へ容易に移動できる一方で、真横へ容易に移動できない。そのため、信地旋回または超信地旋回を阻害する壁Wが本体2Aの正面にある場合には、図7Aに示すように後退することによって、自律型掃除機1は、正面の壁Wfに邪魔されずに旋回できる。しかしながら、信地旋回または超信地旋回を阻害する壁Wが本体2Aの側方にある場合には、自律型掃除機1は、側方の壁Wと本体2Aとの間に旋回のための隙間を隔てるよう、真横へ移動できない。そこで、自律型掃除機1は、壁Wに側縁部25を滑らせることで本体2Aの信地旋回中心を壁Wから遠ざけて信地旋回を継続できる。そのため、自律型掃除機1は、側方の壁Wによって超信地旋回することが妨げられていても、壁Wから遠い方の信地旋回中心Cn2の回りに信地旋回することで、容易に転進することができる。
なお、本体2Aは、左右対称な形状を有しているので、壁Wが本体2Aの正面と左側方とにあった場合であっても、先ず後退し、その後に右側の信地旋回中心Cn2Rを反時計回りに信地旋回することで、自律型掃除機1は、その場を容易に離脱することができる。したがって、自律型掃除機1は、図4に示すように角を本体2Aの右側方に見た状態、および角を本体2Aの左側方に見た状態の双方で、被掃除領域Aの角を掃除できる。そのため、自律型掃除機1は、定幅図形状の本体を有する従来の掃除機に比べて、被掃除領域Aの角をより奥まで掃除することができる。
図8は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第三例の斜視図である。
図9は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第三例の左側面図である。
図10は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の本体の第三例の底面図である。
図8から図10に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1の吸込掃除部31Bは、本体2Bの正面および底面に開口する吸込口34Bと、吸込口34Bに配置される回転ブラシ35Bと、を備えている。
また、吸込掃除部31Bは、本体2Bの前縁部23に揺動可能に設けられて回転ブラシ35Bの一部を覆うブラシカバー58を備えている。
吸込口34Bは、本体2Bの底部の前縁部23および正面に渡っている。換言すると、吸込口34Bは、本体2Bの下方および本体2の前方へ向かって開口している。
回転ブラシ35Bは、本体2Bの前縁部に沿って延びる回転中心線の周りに回転することができる。回転ブラシ35Bの外周部の一部は、吸込口34Bの外側に配置されている。つまり、回転ブラシ35Bのブラシ毛59は、吸込口34Bの外側に突出して延びている。換言すると、回転ブラシ35Bのブラシ毛59は、本体2Bの底面の下方へ突出して延び、かつ前縁部23の前方へ突出して延びている。
したがって、自律型掃除機1を被掃除面f上に走行可能な状態で置いたとき、回転ブラシ35Bは、被掃除面fに接触する。そのため、回転駆動する回転ブラシ35は、被掃除面f上の塵埃を掻き上げる。掻き上げられた塵埃は、吸込口34へ効率的に吸い込まれる。
また、自律型掃除機1は、壁Wに微小な隙間を隔てて、または壁Wに接触させた状態で壁Wに前縁部23を倣わせたとき、回転ブラシ35Bは、壁Wに接触する。そのため、回転ブラシ35Bは、自律型掃除機1の旋回時に、本体2Bの前縁部23と壁Wとの干渉を緩和し、前縁部23が壁Wに接触する以前に、先んじて壁Wに接触する。そして、自律型掃除機1は、駆動輪26の駆動を継続し、回転ブラシ35Bを壁Wで滑らせながら旋回中心を壁Wから離れる方向へ滑らせて、回転ブラシ35Bと壁Wとの干渉を次第に緩和する。
ブラシカバー58は、本体2Bの前縁部23の前方へ突出した位置で中立し、前縁部23が壁Wに接近すると回転ブラシ35Bに押さえ付けられるように後退して本体2Bに近づく。ブラシカバー58が本体2Bに近づくことによって、吸込口34が絞られて吸込口34に吸い込まれる空気の風速が増し、壁際における塵埃の吸込力が増す。
図11は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の側縁部の拡大平面図である。
図12は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機の側縁部の拡大平面図である。
本実施形態に係る自律型掃除機1の側縁部25は、図11に示すような凹凸形状の繰り返しや、波形状の繰り返しであっても良いし、図12に示すような、一部のみが突出する形状であっても良い。側縁部25は、図11および図12に外形線OLで示すような側縁部25の突出部位を結んだ線(包絡線)が、連接部56と側端51とを通る直線よりも本体2の外側へ突出し、かつ第二円Ci2と、第一仮想線VL1と、第二仮想線VL2と、に囲まれる領域S内に位置していれば良い。また、側縁部25が領域S内に位置していれば、本体2、2A、2Bの連接部56は、本体2、2A、2Bの平面視において円弧形状、つまり角Rのように明確な角を有していない形状であっても良い。
図13は、本発明の実施形態に係る自律型掃除機のブロック図である。
図2から図3に加えて図13に示すように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、制御部15、および二次電池3に加えて通信部61を備えている。
通信部61は、充電台5に赤外線信号を送信する、例えば赤外線発光素子を含む送信部61aと、および充電台5やリモートコントローラーからの赤外線信号を受信する、例えばフォトトランジスタを含む受信部61bと、を備えている。
検知部13のカメラ部41は、例えばデジタルカメラである。つまり、カメラ部41は、撮影した画像を電気信号に変換する撮像素子41a(イメージセンサー)と、撮像素子41aに像を結ぶ(生じさせる)光学系41bと、を備えている。撮像素子41aは、例えば、CCDイメージセンサー(Charge-Coupled Device image sensor)や、CMOSイメージセンサー(Complementary metal-oxide-semiconductor image sensor)である。そのため、自律型掃除機1は、カメラ部41で撮影した画像のデジタルデータを即座に取り扱うことができる。つまり、カメラ部41で撮影される画像は、例えば画像処理回路を利用することで所定のデータ形式に圧縮したり、二値画像に変換したり、グレースケールに変換したりすることができる。カメラ部41は、例えば可視光領域の画像を撮影する。可視光領域の画像は、例えば赤外領域の画像に比べて画質が良好であり、複雑な画像処理を施すことなく使用者に視認可能な情報を容易に提供できる。
カメラ部41は、いわゆるステレオカメラである。カメラ部41は、撮影する画像が、自律型掃除機1の幅方向の中心線を延長した前方の位置を含む撮影範囲で重なり合っている。カメラ部41は、撮影範囲における奥行き、つまり自律型掃除機1からみた離間距離の情報を得ることができる。奥行きの情報を含む画像を「距離画像」と呼ぶ。
カメラ部41には、LED(Light Emitting Diode)や電球などの照明装置が併設されていても良い。照明装置は、カメラ部41の撮影範囲の一部または全部を照らす。照明装置は、家具などの障害物の陰のような暗い場所や、夜間などの暗い環境下であっても、カメラ部41による適切な画像の取得を可能にする。
撮像素子41aの受光面には、多数の画素が並べられている。受光面の各画素は、受けた光を電気信号に変換する。各画素が受けた光の情報を各画素の位置に応じて統合させることで、カメラ部41が撮影した景色を表す画像が得られる。一般的な撮像素子41aは、カラー画像を撮影する。カラー画像は、例えば赤、緑、および青の三つの色を混ぜて表現される。
距離測定装置45は、奥行きの情報を得ようとする範囲に光を照射する発光部45aと、発光部45aから照射された光の反射光を受光する受光部45bと、を備えている。自律型掃除機1は、発光部45aの発光開始から受光部45bで反射光を受光するまでの時間差に基づいて自律型掃除機1から被検知物Oまでの距離情報を取得できる。発光部45aは、例えば赤外線や、可視光を照射する。
制御部15は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、中央処理装置で実行(処理)される各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する補助記憶装置(例えば、Read Only Memory、ROM)、プログラムの作業領域が動的に確保される主記憶装置(例えば、Random access memory、RAM)を備えている。補助記憶装置は、例えば不揮発性メモリのように書き換え可能なものであることが好ましい。
制御部15は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池3、および通信部61に電気的に接続されている。制御部15は、通信部61を介して充電台5、およびリモートコントローラーから受信する指令に応じて移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池3を制御する。
制御部15は、自律型掃除機1の自律移動を制御する自律移動制御部71と、検知部13の動作を制御する検知制御部72と、を含んでいる。自律移動制御部71、および検知制御部72は、演算プログラムである。
自律移動制御部71は、被掃除領域Aの環境地図情報(Environment Map)を記憶する地図情報記憶部73と、移動部11を制御して本体2、2A、2Bを自律で移動させる移動制御部78と、吸込掃除部31のブラシ用電動機36、および電動送風機38の動作を制御する掃除制御部79と、を備えている。
地図情報記憶部73は、補助記憶装置に確保される記憶領域に構築されたデータの集合であって、適宜のデータ構造を有している。地図情報記憶部73は、補助記憶装置から主記憶装置に読み込まれて利用され、適宜の更新を経て、補助記憶装置へ上書きされる。
環境地図情報は、自律型掃除機1の自律移動に用いられる情報であり、少なくとも掃除対象となる場所において、自律型掃除機1が移動可能な領域の形状を含む情報である。環境地図情報は、例えば整然と配列された一辺10センチメートルの矩形の集合として構築されている。環境地図情報は、自律型掃除機1の使用に際して、事前に準備されるものであっても良いし、Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)によって自己位置推定と同時に作成されるものであっても良い。環境地図情報は、掃除運転にともなう移動の過程で作成、および更新されても良い。SLAMで環境地図情報を作成する場合には、自律型掃除機1は、検知部13の他に、エンコーダなどの種々のセンサーを備えていることが好ましい。移動制御部78は、これら検知部13および種々のセンサーから取得する情報に基づいて環境地図情報を作成する。
移動制御部78は、環境地図情報および検知制御部72の検知結果に基づいて移動部11を制御して自律型掃除機1を自律で移動させる。移動制御部78は、電動機27に流れる電流の大きさ、および向きを制御して、電動機27を正転、または逆転させる。移動制御部78は、電動機27を正転、または逆転させることで、駆動輪26の駆動を制御している。
また、移動制御部78は、検知制御部72の検知結果、例えば、近接検知部42の検出結果に基づいて、被掃除領域A内の障害物を回避したり、被掃除領域Aの境界、つまり壁際と本体2、2A、2Bとの間に所要の隙間を隔てつつ壁際に沿って移動したりする。さらに、移動制御部78は、検知制御部72の検知結果、例えば、接触検知部43の検出結果に基づいて、障害物や壁のギリギリまで接近して障害物の際や壁際を掃除する。
掃除制御部79は、ブラシ用電動機36、および電動送風機38を個別に制御する。
検知制御部72は、カメラ部41の動作を制御する。検知制御部72は、所定の時間間隔毎にカメラ部41に画像を撮影させる。検知制御部72は、カメラ部41で撮影された画像を検知結果記憶部81に記憶する。カメラ部41で撮影された画像は、検知結果記憶部81は、主記憶装置に確保されている。検知結果記憶部81は、カメラ部41で撮影された画像を記憶する。検知結果記憶部81は、複数の画像を記憶可能な容量を有している。
検知結果記憶部81は、カメラ部41で撮影された画像を表す画像情報を無加工で記憶しても良いし、画像の解析処理に必要な情報を残す限りにおいてデータサイズを減らすように加工した画像情報を記憶しても良い。検知結果記憶部81に記憶される画像情報は、例えば、カメラ部41で撮影された画像をグレースケールに変換した画像であっても良い。グレースケールに変換した画像を、カメラ部41で撮影された元の画像と同じく画像と呼ぶ。グレースケール画像の場合には、画像の画素値は輝度値と一致する。グレースケールに変換した画像を保存する場合には、制御部15は、元画像を記憶する場合に比べて、検知結果記憶部81に割り当てるメモリ領域の容量(リソース)を少量で済ませることが可能である。また、グレースケールに変換した画像を以後の解析処理に使用する場合には、制御部15は、元画像を処理する場合に比べて中央処理装置の負荷を軽減できる。画像のグレースケール化を含む画像処理は、カメラ部41で実行されても良い。カメラ部41で画像処理を実行することによって、中央処理装置の負荷が軽減される。
また、検知制御部72は、照明装置の点灯と消灯とを制御する。照明装置は、画像を明るくして解析処理の容易化と精度向上とを容易にする。
さらに、検知制御部72は、近接検知部42の検出結果、つまり被検知物Oが本体2、2A、2Bに接近したこと、およびその時の被検知物Oと本体2、2A、2Bとの離間距離を検知結果記憶部81に記憶する。
また、検知制御部72は、接触検知部43の検出結果、つまり被検知物Oが本体2、2A、2Bに接触したことを検知結果記憶部81に記憶する。
ところで、自律移動制御部71は、近接検知部42の検出結果、および接触検知部43の検出結果の少なくともいずれかを参照して、被検知物Oを回避しながら被掃除領域Aを自律移動する。ただし、図4から図5E、および図6から図7Gに示すように、壁Wに接触しながら旋回して進行方向を変える場合には、近接検知部42の検出結果、および接触検知部43の検出結果の少なくともいずれかを参照して、被検知物Oとしての壁Wを回避すると、意図通りの旋回を行えない場合がある。そこで、自律移動制御部71は、近接検知部42および接触検知部43が本体2、2A、2Bの前方および一方の側方に被検知物Oを検知した場合には、近接検知部42および接触検知部43の検知を無効化して超信地旋回、信地旋回、緩旋回を含む旋回によって本体2、2A、2Bの進行方向を変える。
以上のように、本実施形態に係る自律型掃除機1は、直線状の前縁部23と、信地旋回中心Cn2から遠い方の側縁部25と、前縁部23に沿って配置される掃除部12と、を備えている。そして、側縁部25の前端部は、前縁部23に鈍角をなして交わって本体2、2A、2Bが信地旋回中に障害物、例えば壁Wに接した場合には本体2、2A、2Bと障害物との干渉を緩和する形状を有している。そのため、自律型掃除機1は、定幅図形状の本体を備える従来の自律型掃除機に比べて、被掃除領域Aの壁際や角の塵埃をより確実に掃除できる一方で、被掃除領域Aの壁際や角との干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
また、自律型掃除機1は、信地旋回中心Cn2から本体2、2A、2Bの側端51までの第二距離R2を半径とする第二円Ci2と、前縁部23の延長線である第一仮想線VL1と、第一仮想線VL1に直行し、かつ側端51を通る第二仮想線VL2と、に囲まれる領域の内側に配置される側縁部25を備えている。そのため、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの壁際や角に側縁部25を接触させ、かつ側縁部25を被掃除領域Aの壁際や角で滑らせて、干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
さらに、自律型掃除機1は、本体2、2A、2Bの外側へ向かって膨らむ形状を有する側縁部25を備えている。そのため、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの壁際や角と側縁部25との接触部位の滑り易さを向上させ、干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
さらに、自律型掃除機1は、本体2、2A、2Bの外側へ向かって膨らむ曲線形状を有する側縁部25を備えている。そのため、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの壁際や角と側縁部25との接触部位の滑り易さをさらに向上させ、干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
さらに、自律型掃除機1は、側縁部25に設けられるバンパー22を備えている。そのため、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの壁際や角で側縁部25を確実に滑らせて、干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
また、自律型掃除機1は、前縁部23の前方へ突出して延びるブラシ毛59を有する回転ブラシ35Bを備えている。そのため、自律型掃除機1は、被掃除領域Aの壁際や角に前縁部23が接触する前に回転ブラシ35Bを接触させ、かつ回転ブラシ35Bを被掃除領域Aの壁際や角で滑らせて、干渉を緩和しながら容易に離脱して転進することができる。
さらに、自律型掃除機1は、本体2Bの前縁部23に揺動可能に設けられて回転ブラシ35Bの一部を覆うブラシカバー58を備えている。そのため、自律型掃除機1は、回転ブラシ35Bによる旋回性能を有しつつ、ブラシカバー58を壁Wに接触させて吸込口34Bを絞り、壁際における塵埃の吸込性能を向上できる。
また、自律型掃除機1は、信地旋回中心Cn2を通って真正面へ向かって延びる左右一対の第三仮想線VL3に挟まれる領域Gの内側に位置する連接部56L、56Rを有している。そのため、自律型掃除機1は、前縁部23と側縁部25とが被掃除領域Aの角に、実質的に隙間無く位置した状態で本体2の前縁部23を壁Wに干渉させることなく信地旋回することができる。
さらに、自律型掃除機1は、近接検知部42および接触検知部43が本体2、2A、2Bの前方および一方の側方に被検知物Oを検知した場合には、近接検知部42および接触検知部43の検知を無効化して超信地旋回、信地旋回、緩旋回を含む旋回によって本体2、2A、2Bの進行方向を変える。そのため、自律型掃除機1は、通常の自律走行時において被検知物Oを容易に回避しながら被掃除領域Aを掃除できる一方、被掃除領域Aの角において円滑な旋回動作を行って容易に離脱することができる。
したがって、本実施形態に係る自律型掃除機1によれば、被掃除領域Aの壁際や角における掃除能力に優れ、かつ被掃除領域Aの壁際や角から円滑に脱して転進できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。