以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
[給湯システムの構成]
図1は、実施の形態に係る給湯装置が適用される給湯システムの全体構成を示すブロック図である。図1には、実施の形態に係る給湯システムが適用される浴室100の内部および浴室100の外部の構成が模式的に示されている。
浴室100内部では、床面に浴槽90が設置され、浴槽90より上方の壁面に浴室リモコン40が設置されている。浴室100の天井側の壁面には、浴室換気乾燥暖房機20が設置されている。なお、以下、浴室換気乾燥暖房機20は「浴室暖房機20」と省略して表記される。
図1を参照して、実施の形態に係る給湯システムは、給湯装置10と、浴室暖房機20と、循環配管24,92とを備える。
給湯装置10は、浴室100の外部(屋外または屋内)に設置されており、浴室100内の浴槽90および浴室暖房機20と、一対で1組の循環配管92,24を介してそれぞれ接続されている。
浴槽90には、循環配管92を経由して、給湯装置10から湯張りのための注湯が行なわれる。また、浴槽90と給湯装置10との間で、風呂追い焚きのために、湯水が循環されて加熱される。
浴室暖房機20には、給湯装置10から循環配管24を経由して、所定温度(たとえば80℃)の熱媒が供給される。熱交換器205(図2参照)は、浴室暖房機20内の循環配管24上に設けられている。熱媒体が給湯装置10において加熱され、循環配管24内で循環されることにより、熱交換器205が加熱される。
給湯装置10は、給湯機能、浴室暖房機能、風呂追焚機能、および注湯機能を有する。各機能について、簡単に説明する。
給湯機能は、外部から導入された水道水などの水を、給湯装置10内の熱交換器によって加熱する。具体的には、給湯装置10は、バーナを有する。給湯装置10内に導入された水は、熱交換器を通過する間にバーナの燃焼熱によって給湯設定温度まで加熱されて、出力される。加熱された湯水は、たとえば給湯栓に供給される。
注湯機能は、浴槽90に湯水を張る。注湯機能は、外部から導入された水道水などの水を、給湯機能と同様に熱交換器によって加熱した後、注湯弁の開閉切換制御により循環配管92を経由して浴槽90へ供給する。
風呂追焚機能は、循環配管92を経由して、浴槽90内の湯水を浴槽90と給湯装置10との間で循環させる、浴槽90内の湯水は、給湯装置10内の液-液熱交換器で加熱されて、浴槽90へ戻される。
浴室暖房機能は、浴室暖房機20の熱交換器205(図2参照)での放熱により低温になった熱媒体を、循環配管24を経由して給湯装置10へ戻す。給湯装置10内の熱交換器を通過する間にバーナの燃焼熱によって熱媒を加熱して、熱交換器205に戻す。さらに、浴室暖房機20は、ファン206(図2参照)を回転させる。これにより、熱交換器205周辺の加熱された空気が、温風として吹き出し口21を通じて浴室100へ供給される。給湯装置10には、熱媒体を循環配管24内で循環させるためのポンプが設けられる。
給湯システムは、ユーザからの操作を受け付けるための台所リモコン30、浴室リモコン40、サブリモコン50および浴室暖房リモコン80と、通信アダプタ60と、無線LAN(Local Area Network)ルータ70とをさらに備える。
台所リモコン30、浴室リモコン40およびサブリモコン50は、給湯機能、風呂追焚機能、注湯機能および浴室暖房機能の少なくとも1つについて、ユーザ指示の入力を受け付けるとともに、これらの機能についての情報を含む種々の情報を表示する。
具体的には、台所リモコン30は、浴室100の外部であって、たとえば台所の壁面に設置される。サブリモコン50は、浴室100の外部であって、たとえば居室の壁面に設置される。台所リモコン30、浴室リモコン40およびサブリモコン50の各々は、表示部、操作部および音声出力部を有する。操作部は、給湯装置10を運転可能状態とするためのスイッチ(たとえば、運転スイッチ(SW))、注湯機能を実行させるためのスイッチ(たとえば、風呂自動SW、足し湯SW、足し水SW)、風呂追焚機能を実行させるためのスイッチ(たとえば、追焚SW)、および浴室暖房機能を実行させるためのスイッチ(たとえば、浴室暖房SW)の少なくとも1つを含む。台所リモコン30、浴室リモコン40およびサブリモコン50は「操作端末」の一実施例に対応する。
浴室リモコン40は、人検知センサ46を有する。人検知センサ46は、浴室リモコン40のケースに設置されており、浴室100内における人の有無および人の動きを検知するように構成される。人検知センサ46は、たとえば焦電型赤外線センサによって構成される。人検知センサ46は、浴室暖房機20のケースに設置されてもよく、あるいは浴室リモコン40および浴室暖房機20とは独立して設置されてもよい。
浴室暖房リモコン80は、浴室100の外部であって、たとえば脱衣場の壁面に設置される。浴室暖房リモコン80は、浴室暖房機能について、ユーザ指示の入力を受け付けるとともに、この機能についての情報を含む種々の情報を表示する。浴室暖房リモコン80は、表示部、操作部および音声出力部を有する。操作部は浴室暖房機能を実行させるためのスイッチ(浴室暖房SW)を含む。浴室暖房リモコン80は「操作端末」の一実施例に対応する。
給湯装置10は、給湯機能、浴室暖房機能、追焚機能、注湯機能における給湯システムの動作を制御するためのコントローラ12を有する。コントローラ12は、台所リモコン30、浴室リモコン40、サブリモコン50および浴室暖房機20と双方向に通信可能に接続される。
図1の例では、コントローラ12は、通信線32を介して台所リモコン30と双方向に通信可能に接続され、通信線52を介してサブリモコン50と双方向に通信可能に接続され、通信線42を介して浴室リモコン40と双方向に通信可能に接続される。通信線32,42,52は、たとえば2心通信線である。なお、コントローラ12とリモコン30,40,50の各々との間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、また、有線であっても無線であってもよい。
コントローラ12は、通信線26を介して浴室暖房機20の各部の動作を制御するためのコントローラ22と双方向に通信可能に接続される。コントローラ12とコントローラ22との間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、また、有線であっても無線であってもよい。
浴室暖房機20のコントローラ22は、通信線82を介して浴室暖房リモコン80と双方向に通信可能に接続される。通信線82は、たとえば2心通信線である。なお、コントローラ22と浴室暖房リモコン80との間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、また、有線であっても無線であってもよい。
通信アダプタ60は、通信線32を介してコントローラ12と接続される。通信アダプタ60は、屋外(たとえば住宅の外壁の周辺またはガレージなど)に設置することができる。通信アダプタ60は、屋内に配置された無線LANルータ70と通信接続される。LANルータは、所定の通信規格に従う通信ケーブルによって通信アダプタ60と通信接続される有線LANルータであってもよい。
無線LANルータ70は、通信網の代表例であるインターネットに接続されている。これにより、通信アダプタ60は、無線LANルータ70を経由して、インターネットに接続されたスマートフォン75をはじめとする外部機器との間で双方向にデータを送受信することができる。したがって、スマートフォン75は、通信アダプタ60から給湯システムの運転状態を示す情報を取得することができる。
また、スマートフォン75は、ユーザからの給湯機能、浴室暖房機能、風呂追焚機能および注湯機能に関する運転指令を受け付けることができる。スマートフォン75が受け付けた運転指令は、通信アダプタ60を経由して給湯装置10のコントローラ12に転送される。コントローラ12は、転送された運転指令に従って、給湯装置10および浴室暖房機20の動作を制御する。これによると、ユーザは、たとえば外出先からスマートフォン75を用いて、給湯システムを遠隔操作することができる。スマートフォン75は「操作端末」の一実施例に対応する。
[浴室暖房機の構成]
図2は、浴室暖房機20の内部の構成を部分的に示す図である。
図2を参照して、浴室暖房機20は、熱動弁204と、熱交換器205と、ファン206と、風向板203と、浴室温度センサ210と、コントローラ22とを含む。
熱交換器205には熱媒体が供給される。熱動弁204は、熱媒体の流路である循環配管24と熱交換器205との接続部分を開閉する。
ファン206は、回転することにより、熱交換器205によって加熱された空気(熱交換器205周辺の空気)を、吹き出し口21を介して排出する。これにより、浴室100に暖気が送られる。風向板203は、吹き出し口21の内側に設けられ、浴室100に送られる暖気の向きを変更可能に構成される。
浴室温度センサ210は、浴室100内の温度(以下、「浴室温度」とも称する)を検知し、検知した浴室温度を示す信号をコントローラ22へ出力する。なお、浴室リモコン40の内部にも浴室100内の温度を検知する温度センサ44(図3参照)が設けられている場合、温度センサ44が浴室温度センサとして利用されてもよい。
コントローラ22は、給湯装置10のコントローラ12および浴室暖房リモコン80と双方向に通信可能に接続される。コントローラ22は、コントローラ12から送信される浴室暖房機能についての運転指令および、浴室暖房リモコン80からのユーザの入力設定操作に基づき、浴室暖房機20がユーザ指示に従って運転されるように、コントローラ12と協働して浴室暖房機20の各部の動作を制御する。浴室暖房機20の動作については後述する。
[給湯システムのハードウェア構成]
図3は、給湯システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3を参照して、給湯装置10のコントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)120と、メモリ122と、タイマ124と、入力装置128と、出力装置130と、インターフェイス126とを含む。
CPU120は、メモリ122に格納されたプログラムを実行することにより、給湯システム(給湯装置10および浴室暖房機20)の動作を制御する。CPU120は、給湯システムの制御において、タイマ124が計時する時刻を利用してもよい。
入力装置128は、たとえばスイッチであり、コントローラ12への情報の入力を受け付ける。入力装置128は、入力された情報をCPU120へ出力する。出力装置130は、たとえば表示装置および音声出力回路である。
CPU120は、インターフェイス126を介して、給湯システム内の他の機器と通信する。具体的には、CPU120は、インターフェイス126を介して、台所リモコン30、サブリモコン50、通信アダプタ60、浴室リモコン40および浴室暖房機20のコントローラ22との間で情報をやり取りする。特に、浴室リモコン40からCPU120に送信される情報には、人検知センサ46の出力が含まれる。CPU120は、人検知センサ46の出力に基づいて、ユーザが浴室100へ入室したことを検知することができる。CPU120は、ユーザの入室が検知されると、当該検知に基づいた運転指令を生成し、生成した運転指令を浴室暖房機20のコントローラ22へ送信する。
図3では、給湯システムのうち、給湯機能を実現する部分が給湯回路110として示され、注湯機能を実現する部分が注湯回路112として示され、風呂追焚機能を実現する部分が風呂追焚回路114として示され、浴室暖房機能を実現する部分が浴室暖房回路200として示される。注湯回路112は、給湯回路110内の出湯管から分岐して浴槽90へ給湯するためにも利用される循環配管92(図1参照)を有している。浴室暖房回路200は、図2で説明したコントローラ22、循環配管24、熱動弁204、ファン206、風向板208および浴室温度センサ210に加えて、循環配管24内で熱媒を循環させるためのポンプ202を有している。CPU120は、インターフェイス126を介して、給湯回路110、注湯回路112、風呂追焚回路114および浴室暖房回路200の動作を制御する。
[給湯システムの動作]
次に、実施の形態に係る給湯システムの動作について説明する。以下の説明では、台所リモコン30、浴室リモコン40、サブリモコン50、浴室暖房リモコン80およびスマートフォン75を「操作端末」と総称する場合がある。以下、給湯システムにおける浴室暖房運転について説明する。
(浴室暖房運転)
操作端末の浴室暖房SWがオン操作されると、コントローラ12は浴室暖房運転を開始する。さらに、コントローラ12は、操作端末の自動運転SWまたは追焚SWがオン操作されたときに、注湯運転または風呂追焚運転に連動して浴室暖房運転を自動的に開始する構成としてもよい。
具体的には、コントローラ12は、給湯装置10のバーナによる、循環配管24内の熱媒の加熱を開始する。浴室暖房機20では、コントローラ22が熱動弁204を開くと、ポンプ202の駆動によって循環配管24内の熱媒体が循環する。これにより、加熱された熱媒体が熱交換器205に供給される。さらに、コントローラ22は、ファン206を回転させる。これにより、吹き出し口21を通って浴室100内に温風が供給される。
コントローラ22は、ファン206の回転速度を変化させることにより、強風、弱風というように風量を制御することができる。また、コントローラ22は、風向板203を傾けることによって、吹き出し口21から吹き出される温風の風向きを制御することができる。
コントローラ22は、浴室温度センサ210により検知される浴室温度を示す信号を、通信線26を介してコントローラ12へ送信する。コントローラ12は、浴室温度センサ210により検知される浴室温度を監視する。コントローラ22は、設定暖房温度に対する浴室温度の偏差に応じて、ファン206の回転速度、すなわち温風の風量を制御する。浴室温度が上昇して設定暖房温度に達すると、コントローラ22は、ファン206の回転を停止させる。
なお、浴室暖房の完了後、浴室暖房SWがオン状態であれば、コントローラ22は、設定時間が経過するまで、または浴室暖房SWがオフされるまで、浴室温度を設定暖房温度に保つために浴室暖房運転を実行する。具体的には、コントローラ22は、浴室温度センサ210により検知される浴室温度と設定暖房温度との偏差に応じて、ファン206を間欠動作させる。
図4は、本実施の形態に係る給湯システムにおける浴室暖房運転を説明するための図である。
図4(1)には、浴室100内に人が居ない場合における浴室暖房運転の様子が例示される。浴室100内に人が居ない場合、コントローラ12は、入浴前を想定して、浴室100内を急速に温めるように、浴室暖房機20を制御する。具体的には、コントローラ12は、浴室暖房機20の吹き出し口21から下向きの強風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成する。「下向き」とは、浴室100の天井から床面に向かう風向きをいう。コントーラ12は、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。
これにより、図4(1)中に矢印A1で示すように、浴室暖房機20の吹き出し口21から下向きの強風が吹き出される。吹き出された温風が浴室100内を循環することによって浴室100内が暖められる。
しかしながら、ユーザが入浴中である場合(図4(2)参照)には、ユーザの身体が濡れているため、図4(1)のような風向きでは、吹き出された温風が直接的にユーザに当たるため、ユーザが寒さを感じることが懸念される。
そのため、コントローラ12は、浴室暖房運転中に人検知センサ46の出力に基づいて浴室100内のユーザが検知されると、ユーザに温風が当たって寒さを感じさせることがないように、浴室暖房機20を制御する。
図4(2)には、浴室100内にユーザMが居る場合における浴室暖房運転の様子が例示される。コントローラ12は、浴室暖房機20の吹き出し口21から横向きの弱風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成する。「横向き」とは、浴室100の天井から壁面に向かう風向きをいう。コントローラ12は、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。
これにより、図4(2)中に矢印A2で示すように、浴室暖房機20の吹き出し口21から横向きの弱風が吹き出される。吹き出された温風が浴室100内を循環することによって浴室100内が暖められる。
しかしながら、吹き出し口21から横向きに吹き出された温風は、浴室100の床面まで届きにくくなるため、主に浴室100内の天井付近に滞留することになる。また、温風の風量を減少させたことで浴室暖房機20の暖房能力が低下する。その結果、浴室100全体が暖まりにくくなり、未だ浴室暖房が完了していない状態では、却ってユーザに寒さを感じさせてしまうことが懸念される。
そこで、本実施の形態に係る給湯システムでは、コントローラ12は、浴室暖房運転の実行中、浴室100内のユーザが検知された場合には、浴室温度に従って、浴室100内に吹き出す温風の風量を変化させるように、浴室暖房機20を制御することとする。具体的には、コントローラ12は、浴室温度が低いときの方が、浴室温度が高いときよりも浴室100内に吹き出す温風の風量が多くなるようにファン206を制御するための運転指令を生成する。
たとえば、コントローラ12は、ユーザが検知されているときの浴室温度と予め設定された閾値温度とを比較し、当該浴室温度が閾値温度よりも低い場合には、浴室暖房機20から吹き出す温風の風量を減少させないように構成する。すなわち、コントローラ12は、浴室温度が閾値温度よりも低い場合には、ユーザの検知によっても浴室暖房機20の暖房能力を低下させないこととする。なお、閾値温度は、設定暖房温度よりも低い温度であって、ユーザが寒さを感じるおそれのある浴室温度に応じて設定することができる。閾値温度は固定値であってもよく、設定暖房温度とともにユーザが任意に設定することができる値であってもよい。
上記構成によると、ユーザが検知されているときの浴室温度が閾値温度よりも低い場合には、コントローラ12は、浴室暖房機20の吹き出し口21から横向きの強風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成する。コントローラ12は、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。
このようにすると、浴室暖房機20の吹き出し口21から横向きに吹き出される温風の風量は強風のままであるため、浴室100の天井付近に温風が滞留することを抑制することができる。したがって、浴室100の床面まで温風を行き渡らせて浴室100全体を暖めることができる。なお、浴室温度が上昇して閾値温度に達すると、入浴中のユーザに寒さを感じさせないと判定されるため、コントローラ12は、浴室暖房機20から吹き出される温風の風量を減少させる。
一方、ユーザが検知されているときの浴室温度が閾値温度以上である場合には、コントローラ12は、浴室暖房機20の吹き出し口21から横向きの弱風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成し、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。このときの浴室暖房運転は、図4(2)に示したとおりである。ただし、浴室100内が既に閾値温度以上の温度に暖められているため、仮に温風が浴室100の天井付近に滞留しても、入浴中のユーザに寒さを感じさせてしまうことを防ぐことができる。
本実施の形態では、ユーザが検知されているときの浴室温度が閾値温度以上である場合には、浴室暖房機20から吹き出される温風の風向きおよび風量を変更する構成としたが、浴室暖房機20から吹き出される温風の風向きおよび風量のいずれか一方を変更する構成としてもよい。たとえば、コントローラ12は、温風の風向きを下向きとしたまま、風量を強風から弱風に変更してもよい。あるいは、コントローラ12は、温風の風量を強風としたまま、風向きを下向きから横向きに変更してもよい。
なお、ユーザを検知して温風の風向きを横向きに変更する場合、コントローラ12は、設定暖房温度も変更することができる。具体的には、コントローラ12は、設定暖房温度を、予め設定されている温度から上昇させるように構成される。
これは、吹き出し口21から横向きに温風を吹き出した場合、浴室100の天井付近、すなわち浴室暖房機20の周辺が優先的に暖められることに起因する。詳細には、浴室暖房機20の周辺が優先的に暖められると、浴室100全体が未だ暖まっていないにもかかわらず、浴室暖房機20内の浴室温度センサ210により検知される浴室温度が設定暖房温度に達したことに応じて、コントローラ22がファン206を停止させる場合が起こり得る。この場合、浴室100への温風の供給が途絶えることで、浴室100内が冷えてしまうことが懸念される。
そこで、上述したように、コントローラ12は、温風の風向きを横向きに変更した場合には設定暖房温度を上昇させることで、浴室暖房が完了したと判定されるまでの浴室暖房運転時間を実質的に延長させる。これにより、浴室100全体が暖まるまで温風を供給し続けることが可能となる。なお、設定暖房温度の上昇量については、固定値としてもよく、浴室暖房機20の暖房能力および浴室100の容積などに応じて可変に設定してもよい。
図4で説明した浴室暖房運転時の浴室暖房機20の制御は、図5に示すテーブルにまとめることができる。図5には、浴室100内に人が居ない場合(人非検知の場合)、および浴室100内のユーザが検知された場合(人検知の場合)の各々について、浴室暖房機20から吹き出される温風の風量および風向き、ならびに設定暖房温度の制御仕様が示されている。特に、人検知の場合については、浴室温度が閾値温度よりも低いとき、および、浴室温度が閾値温度以上であるときの各々における温風の風量、風向きおよび設定暖房温度の制御仕様が示されている。
なお、図4および図5では、人非検知時の温風の風量を強風とし、人検知時の温風の風量を強風、弱風の2段階で切り替える構成を説明したが、人検知時の浴室温度が閾値温度より高いときには、人非検知時に比べて温風の風量を減少させ、人検知時の浴室温度が閾値以上のときには、人非検知時の温風の風量を維持する構成としてもよい。少なくとも人が検知されたときの浴室温度が低いときの方が、浴室温度が高いときよりも温風の風量が多くなる構成とすれば、入浴中のユーザが寒さを感じることを防止することができるため、入浴時のユーザの快適性を向上させることができる。
図6は、ユーザの入室が検知されたときの浴室温度が閾値温度よりも高い場合における浴室温度の時間的変化の一例を示す図である。
図6に示される浴室温度の波形L1,L2は、浴室暖房運転時に浴室温度センサ210により検知される浴室温度の時間的変化を示す。波形L1は、ユーザが検知されない場合の浴室温度の時間的変化を示し、波形L2は、ユーザが検知された場合の浴室温度の時間的変化を示している。
ユーザ非検知の場合には、時刻t0で浴室暖房運転が開始されると、浴室暖房機20から下向きの強風が吹き出されることにより、波形L1に示すように、浴室100内が急速に暖められる。浴室温度が上昇して設定暖房温度に達すると(時刻t2)、コントローラ22は、浴室温度を設定暖房温度に保つために浴室暖房運転を実行する。浴室温度と設定暖房温度との偏差に応じて、ファン206を間欠動作させることにより、浴室温度が設定暖房温度付近に保たれる。
これに対して、浴室暖房運転中の時刻t1にてユーザの入室が検知された場合には、時刻t1での浴室温度T1が閾値温度よりも高いことから、浴室暖房機20から横向きの弱風が吹き出される。波形L2に示すように、入室検知後は、風量を減少したことにより、入室検知前と比較して浴室温度の上昇速度が遅くなる。
ユーザの入室が検知されると、設定暖房温度は、入室検知前の設定暖房温度よりも高い温度に変更される。浴室温度が上昇して変更後の設定暖房温度に達すると(時刻t3)、コントローラ22は、浴室温度を設定暖房温度に保つために浴室暖房運転を実行する。
図7は、ユーザの入室が検知されたときの浴室温度が閾値温度よりも低い場合における浴室温度の時間的変化の一例を示す図である。
図7に示される浴室温度の波形L1,L3は、浴室暖房運転時に浴室温度センサ210により検知される浴室温度の時間的変化を示す。波形L1は、ユーザが検知されない場合の浴室温度の時間的変化を示し、波形L3は、ユーザが検知された場合の浴室温度の時間的変化を示している。なお、図7の波形L1は図6の波形L1と同じものである。
図7では、浴室暖房運転中の時刻t4にてユーザの入室が検知された場合には、時刻t4での浴室温度T2が閾値温度よりも低いため、浴室暖房機20から横向きの強風が吹き出される。風量を維持したことで、波形L3に示すように、入室検知後においても、入室検知前と同程度の上昇速度が実現される。
浴室温度が上昇して閾値温度に達すると(時刻t5)、温風の風量が強風から弱風に切り替えられる。その結果、入室温度が閾値温度に達した後は、閾値温度に達する前と比較して浴室温度の上昇速度が遅くなる。
図6と同様に、図7においても、ユーザの入室が検知されると、設定暖房温度は、入室検知前の設定暖房温度よりも高い温度に変更される。浴室温度が上昇して変更後の設定暖房温度に達すると(時刻t6)、コントローラ22は、浴室温度を設定暖房温度に保つために浴室暖房運転を実行する。
図8は、浴室暖房運転時における浴室暖房機20の制御処理を説明するためのフローチャートである。図8に示された制御処理は、たとえば、コントローラ12のCPU120およびコントローラ22によって実行することができる。
図8を参照して、コントローラ12は、ステップS01により、操作端末において浴室暖房SWがオン操作されたか否かを判定する。たとえば、台所リモコン30、サブリモコン50、スマートフォン75および浴室暖房リモコン80のいずれかにおいて浴室暖房SWがオン操作されると、ステップS01はYES判定とされる。一方で、浴室暖房SWのオン操作がない場合には、ステップS01はNO判定とされ、以降の処理は起動されない。
コントローラ22は、浴室暖房SWがオン操作されると(S01にてYES)、ステップS02により、タイマ(図示せず)をスタートさせる。タイマは、浴室暖房運転時間を計時するように構成される。
コントローラ12は、ステップS03により、給湯装置10のバーナによる、循環配管24内の熱媒の加熱を開始する。ステップS04にてコントローラ22が熱動弁204を開くと、コントローラ12は、ステップS05により、ポンプ202を運転させることにより、循環配管42内の熱媒体を循環させる。さらに、コントローラ22は、ステップS06により、ファン206を回転させる。
浴室暖房運転が開始されると、コントローラ22は、ステップS07により、タイマがカウントアップしたか否かを判定する。タイマにより計時される浴室暖房運転時間が、予め設定されている浴室暖房運転時間に到達した場合、ステップS07はYES判定とされる。一方、計時される浴室暖房運転時間が予め設定されている浴室暖房運転時間に満たない場合、ステップS07はNO判定とされる。この場合、コントローラ22は浴室暖房運転の実行を継続する。一方、タイマがカウントアップすると(S07にてYES)、コントローラ22は、ステップS16により、浴室暖房運転を停止する。
浴室暖房運転の実行中(S07にてNO)、コントローラ12は、ステップS08により、人検知センサ46の出力に基づいて浴室100内のユーザの有無を検知する。浴室100内にユーザが検知されない場合(S08にてNO)、コントローラ12は、ステップS17およびS18により、浴室暖房機20の吹き出し口21から下向きに強風が吹き出されるように、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。具体的には、コントローラ12は、下向きの強風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成し、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。さらに、コントローラ12は、ステップS19により、設定暖房温度を予め設定されている温度に維持する。
これに対して、ステップS08にて浴室100内のユーザが検知されると(S08にてYES)、コントローラ12はステップS09に進み、浴室温度センサ210により検知される浴室温度と、閾値温度とを比較する。
浴室温度センサ210により検知される浴室温度が閾値温度以上である場合(S09にてYES)、コントローラ12は、ステップS10およびS12により、浴室暖房機20から横向きに弱風が吹き出されるように、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。具体的には、コントローラ12は、横向きの弱風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成し、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。
一方、浴室温度が閾値温度未満である場合(S09にてNO)、コントローラ12は、ステップS11およびS12により、浴室暖房機20から横向きに強風が吹き出されるように、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。具体的には、コントローラ12は、横向きの強風を吹き出すように風量および風向きを制御するための運転指令を生成し、生成した運転指令をコントローラ22へ送信する。コントローラ22は、コントローラ12からの運転指令に従って、ファン206の回転速度および風向板203の傾きを制御する。
なお、浴室温度が閾値温度未満である場合(S09にてNO)には、ユーザの検知の前後で風量を変化させない(たとえば、強風を維持する)ことから、コントローラ12は、コントローラ22に対して、風量および風向きを制御するための運転指令の生成および運転指令の送信を行なわない構成とすることができる。
さらに、コントローラ12は、ステップS13により、設定暖房温度を予め設定されている温度よりも高い温度に変更する。
コントローラ22は、ステップS14により、浴室温度センサ210により検知される浴室温度と、ステップS13またはS19に基づく設定暖房温度とを比較する。浴室温度が設定暖房温度より低い間(S14にてNO)は、コントローラ22はステップ07に戻り、浴室100内のユーザの有無および浴室温度と閾値温度との比較に基づいて生成された運転指令に従って、浴室暖房機20から吹き出される温風の風量および風向きを制御する。
浴室温度が設定暖房温度以上になると(S14にてYES)、コントローラ22は、ステップS15により、浴室温度と設定暖房温度との偏差に応じて、ステップS15により、ファン206を間欠動作させる。
なお、図8では、タイマにより計時される浴室暖房運転時間が設定時間に達したことに応じて浴室暖房運転を停止する構成としたが、コントローラ12は浴室暖房SWがオフ操作されたときにも浴室暖房運転を停止する。
以上説明したように、本実施の形態に係る給湯装置によれば、浴室内のユーザが検知された場合には、浴室温度が低いときの方が、浴室温度が高いときよりも浴室暖房機から吹き出される温風の風量が多くなる構成とすることにより、浴室温度が低いときには、温風の風量を多くして浴室内を迅速に暖めることで、ユーザが寒さを感じないようにすることができる。一方、浴室温度が高いときには、温風の風量を抑えることで、温風が当たってユーザが寒さを感じることを防ぐことができる。このようにすると、入浴中のユーザが寒さを感じることを防止できるため、入浴時のユーザの快適性を向上させることができる。
(その他の構成例)
上述した実施の形態では、ユーザが検知された場合に、浴室温度と閾値温度とを比較した結果に基づいて、強風および弱風のいずれかを選択する構成を例示したが、コントローラ12による風量制御は、浴室温度が低いときの方が、浴室温度が高いときよりも浴室100内に吹き出す温風の風量を多くする構成であればよい。したがって、たとえば、ユーザが検知された場合に、浴室暖房機20から吹き出される温風の風量を減少させる構成とした上で、浴室温度が低くなるほど、温風の風量の減少量を小さくする構成としてもよい。
図9は、ユーザが検知されているときの浴室温度と、浴室暖房機20から吹き出される温風の風量との関係を模式的に示す図である。
図9中のL10で示される関係は、上述した実施の形態で説明した、ユーザ検知時の浴室温度と温風の風量との関係を表している。すなわち、ユーザ検知時の浴室温度が閾値温度より低ければ温風の風量を強風とし、当該浴室温度が閾値温度以上であれば温風の風量を弱風としている。
これに対して、図9中のL11で示される関係では、ユーザが検知されると、浴室温度が低い場合の方が、浴室温度が高い場合よりも、ユーザ検知前の風量に対する減少量が小さくなるように構成される。その結果、ユーザが検知されている場合、浴室温度が低いときの方が、浴室温度が高いときよりも温風の風量が多くなる。
関係L11は、予め実験により取得することができる。これにより、コントローラ12は、浴室暖房運転中にユーザが検知されると、関係L11を表す演算式に従って、風量を設定することができる。なお、浴室温度に基づいた風量の設定方法としては、図9の関係L11に従って連続的に風量を変化させる方法、または、風量を段階的に変化させる方法のいずれを用いてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。