以下に、本発明の実施の形態によるブレ補正装置を備える撮像装置の一例について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態によるブレ補正装置を備える撮像装置の一例を示す図である。そして、図1(a)は撮像装置を破断して示す図であり、図1(b)は撮像装置の制御系を示す図である。
図示の撮像装置、例えば、デジタルカメラ(以下単にカメラと呼ぶ)であり、カメラボディ1および撮影レンズユニット(以下単に撮影レンズと呼ぶ)2を備えている。そして、カメラボディ1に撮影レンズ2が装着される。
撮影レンズ2には、被写体像(光学像)を取り込む複数のレンズからなる撮影光学系3と、撮影レンズ2を制御するレンズシステム制御12と、撮像光学系3を駆動するレンズ駆動部13とが備えられている。カメラボディ1には、撮影レンズ2を介して光学像が結像する撮像素子6が備えられている。さらに、カメラボディ1には、背面表示装置9a、EVF9b、ブレ補正部14、ブレ検知部15、シャッタ機構16、およびシャッタ駆動部17が備えられている。加えて、カメラボディ1には、カメラシステム制御部5、画像処理部7、メモリ8、および操作検出部10が備えられ、図1(a)に示す背面表示装置9aおよびEVF9bは図1(b)においては表示部9として一括して示されている。
なお、カメラシステム制御部5は電気接点11を介してレンズシステム制御部12と通信を行い、さらに、電気接点11を介してカメラボディ1から撮影レンズ2に電力が供給される。
レンズ駆動部13は、レンズシステム制御部12の制御下で、撮像光学系3に備えられた焦点レンズおよび絞りなどを駆動する。ブレ検知部15は光軸4の回りの回転を含むカメラの回転ブレを検知する。ブレ検知部15には、例えば、振動ジャイロが用いられる。ブレ補正部14は撮像素子6を光軸4に直交する平面において並進させるとともに光軸4の回りに回転させて、後述するようにブレを補正する。
シャッタ駆動部17は、カメラシステム制御部5の制御下で、シャッタ機構16を駆動してシャッタ幕を走行させ撮像素子6の露光を行う。撮像素子6には撮像光学系3を介して光学像が結像し、撮像素子6は光電変換によって光学像に応じた画像信号を出力する。
画像処理部7には、例えば、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、および補間演算回路が備えられている。画像処理部7は撮像素子6の出力である画像信号に所定の画像処理を施して記録用の画像データを生成する。なお、色補間処理部が画像処理部7に備えられており、色補間処理部はベイヤ配列の画像信号に対して色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像データを生成する。また、画像処理部7は、予め定められた手法を用いて画像(静止画)、動画、および音声などに対して圧縮を行う。
画像処理部7の出力である画像データからはピント評価量および露光量が得られる。カメラシステム制御部5は、ピント評価量および露光量に応じてレンズシステム制御部12によって撮影光学系3を駆動制御する。これによって、適切な光量の光学像が撮像素子6に結像する。
カメラシステム制御部5は画像処理部7を制御してメモリ8に画像データを記録する。さらに、カメラシステム制御部5は画像データに応じた画像を表示部9に表示する。
カメラシステム制御部5は撮像の際のタイミング信号などを出力する。さらには、カメラシステム制御部5はユーザー操作に応じてカメラを制御する。例えば、シャッターレリーズ釦(図示せず)の押下を操作検出部10が検出すると、カメラシステム制御部5は撮像素子6を駆動するとともに、画像処理部7を制御して圧縮処理などを行う。
さらに、カメラシステム制御部5は表示部9に撮影などに係る情報を表示する。なお、背面表示装置9aにはタッチパネルが備えられ、当該タッチパネルは操作検出部10に接続されている。カメラシステム制御部5は、ブレ検知部15で得られた検知結果に基づいてブレ補正部14を制御する。
図2および図3は、図1に示すブレ補正部を説明するための図である。そして、図2(a)はブレ補正部の構成を示す斜視図であり、図2(b)はブレ補正部を分解して示す斜視図である。また、図3(a)はブレ補正部を上側から見た図であり、図3(b)は図3(a)に示すA-A線に沿った断面図である。なお、図2および図3に示す座標系においてZ軸の正方向に撮影レンズ2が位置する。
図2において、Z軸方向は光軸4と平行な方向である。ブレ補正部14は可動部(可動部材)50、上面固定部(固定部材)60、および下面固定部(固定部材)70を有している。そして、可動部50には撮像素子6が搭載される。
可動部50は、後述するように、撮像光学系の光軸に直交する方向に移動可能である。可動部50は、可動枠51、コイル53a~53c、磁気センサ54a~54c、およびシールド部材56a~56cを備え、可動部50にはFPC(フレキシブルプリント回路基板)55が接続される。
上面固定部60には、上面ヨーク61および永久磁石62a~62fが備えられている。下面固定部70はベース板(支持部材)71を有し、ベース板71にはボール転動面72a~72cが規定されている。さらに、下面固定部70にはメインスペーサ73a~73c、サブスペーサ74aおよび74b、および下面ヨーク75が備えられている。そして、下面ヨーク75には永久磁石76a~76fが配置され、ボール転動面72a~72cにはそれぞれ転動ボール77a~77cが位置する。
図示の例では、上面ヨーク61および磁石62a~62fと下面ヨーク75および磁石76a~とが磁気回路を形成して、所謂閉磁路となる。磁石62a~62fは上面ヨーク61に吸着した状態で接着固定されている。同様に、磁石76a~76fは下面ヨーク75に吸着した状態で接着固定されている。これら磁石の各々は光軸4の方向に着磁されている。そして、隣接する磁石同士である磁石62aおよび62b、磁石62cおよび62d、および磁石62eおよび62fは互いに異なる向きに着磁されている。同様に、磁石76aおよび76b、磁石76cおよび76d、および磁石76eおよび76fは互いに異なる向きに着磁されている。
図3(b)において、磁石62e、磁石62f、磁石76e、および磁石76fに示されたSおよびNは着磁方向を表している。つまり、隣接する磁石62eおよび磁石62fの着磁方向は互いに異なり、同様に、隣接する磁石76eおよび磁石76fの着磁方向は互いに異なる。
互いに対向する位置に配置される磁石である磁石62aおよび76a、磁石62bおよび76b、磁石62cおよび76c、磁石62dおよび76d、磁石62eおよび76e、および磁石62fおよび76fは互いに同一の向きに着磁される。
図3(b)において、対向する位置に配置される磁石62eおよび磁石76eの着磁方向は同一の向きであり、同様に、対向する位置に配置される磁石62fおよび磁石76fの着磁方向が同一の向きである。
このように磁石の着磁方向を規定することによって、上面ヨーク61と下面ヨーク75との間において光軸4の方向に強い磁束密度が生じる。
上面ヨーク61と下面ヨーク75との間には、メインスペーサ73a~73cとサブスペーサ74aおよび74bが配置され、上面ヨーク61と下面ヨーク75とを所定の間隔に保っている。上面ヨーク61と下面ヨーク75との間には隙間をおいて可動部50が配置されている。メインスペーサ73a~73cの各々においてその円筒側面部にはゴムが設けられており、これによって、可動部50の機械的端部(所謂ストッパー)が形成される。
ベース板71には、磁石76a~76fをよけるようにして穴が形成されており、この穴からは磁石の面が突出する。そして、ビス(図示せず)によって、ベース板71と下面ヨーク75とが固定され、ベース板71よりも厚み方向の寸法が大きい磁石76a~76fがベース板71から突出するようにして固定される。
可動枠51に前述の各要素が固定されて可動部50が構成される。可動枠51は樹脂材で成形されており、可動枠51には、撮像素子6、FPC55、およびシールド部材(導電性部材)56a~56cが搭載されている。さらに、実装部材であるFPC55の下面固定部70側(Z軸負の方向)の面にはコイル53a~53cが実装されており、FPC55からコイル53a~53cに駆動に要する電力が供給される。
なお、FPC55はコネクタ(図示せず)を介して外部に接続される。コイル53a~53cの各々は巻き線によって規定される中空部の軸方向(軸心方向)が光軸4と略平行となっており、さらに、撮像素子6に対して略同一平面に配置されている。さらに、コイル53a~53cにおいて、巻き線の中空部内にはそれぞれ磁気センサ54a~54cが配置されている。例えば、図3(b)においては、コイル53cにおいて、巻き線の中空部内に磁気センサ54cが配置されることが示されている。
磁気センサ54a~54cは前述の磁気回路を用いて可動部50が光軸4に対して略直交平面上を移動した際の位置を検出する。なお、磁気センサ54a~54cの各々には、例えば、ホール素子が用いられる。
磁気センサ54a~54cもFPC55に実装されたコネクタ(図示せず)を介して外部に接続される。可動枠51には、それぞれコイル53a~53cの外周に沿って周回する非磁性の金属からなるシート状導体(非磁性導電部材)であるシールド部材56a~56cが配置されている。
図4は、図2および図3に示す可動部の構成を説明するための図である。そして、図4(a)は可動枠、コイル、およびシールド部材を示す斜視図であり、図4(b)は1つのコイルおよびシールド部材を示す斜視図である。なお、図4(a)においては、撮像素子6の外形が破線示されている。
図4(a)において、シールド部材56a~56cは、それぞれ可動枠51とコイル53a~53cとの間においてコイル53a~53cの外周を覆うように配置され、所定の手法によって可動枠51に固定されている。シールド部材56a~56cはそれぞれコイル53a~53cの外周によって規定される面に少なくともその一部が対向することが望ましい。
ここでは、図4(b)に示すように、例えば、シールド部材56aは、コイル53aの外周の規定する全面に対向する面を有している。シールド部材56a~56cの各々において、シート状導体が有する厚みは0.2mm程度とされ、例えば、材質はアルミニウムである。
シールド部材56a~56cはそれぞれコイル53a~53cの外周で規定される全面に対向しているので、そのシート状導体が有する幅はコイル53a~53cが巻軸の方向に有する厚さと同一である。
さらに、シールド部材56a~56cは透滋率が低く導電率が高い材料で成形することが望ましい。ここでは、シールド部材56a~56cの各々はアルミニウムで成形される。例えば、シールド部材56a~56cが上面ヨーク61および下面ヨーク75のように透滋率の高い磁性材であると、上面固定部60および下面固定部70からなる磁気回路の磁束を乱してしまう。この結果、コイル53a~53cに効率的に磁束が到達しないことがある。さらには、磁性材であると磁石62a~62fおよび磁石76a~76fの磁力によって、シールド部材56a~56cが引っ張られて可動部50の駆動制御が妨げられることがある。このため、シールド部材56a~56cは透滋率が低いことが望ましい。なお、導電率が高い方が望ましい理由については後述する。
上述の構成で、コイル53a~53cに電流を流すと、フレミングの左手の法則に従った力が発生して可動部50が駆動される。そして、磁気センサ54a~54cによる検知結果を用いてフィードバック制御が行われる。つまり、磁気センサ54a~54cによる検知結果を用いてコイル53a~53cに流す電流を制御すれば、光軸4に直交する平面において併進方向および略光軸4と平行な軸に回りの回転方向に可動部50を駆動することができる。
例えば、コイル53cの電流を制御することによって、可動部50はX軸に平行な方向に併進移動する。また、コイル53aおよび53bの電流を制御することによって、可動部50をY軸に平行な方向に併進移動又は光軸4と平行な軸の回りに回転移動させることができる。
カメラシステム制御部5は、コイル53a~53cに電流を流す際、駆動電圧を制御するために駆動電圧においてパルス幅のデューティ比を制御する所謂PWM制御を行う。PWM制御においては、高周波の交流信号のデューティ比を制御して電圧を制御することになる。この際には、コイル53a~53cにはPWM制御に応じた駆動電圧による低周波の直流電流とともに、PWM制御の駆動周波数に応じた振幅の小さい高周波の交流電流が重畳して流れることとなる。
このように、コイル53a~53cに電流を流すことによって、コイル53a~53cによって磁場が形成される。そして、当該磁場によって撮像素子6の出力である画像信号に磁気ノイズが生じる。特に、PWM制御の駆動周波数に応じた高周波の電流の変化によって発生する磁場が撮像素子6の出力である画像信号に影響を与える。
図3(b)に示すように、可動枠51に配置された撮像素子6はベースとなる基材部6a、受光部を含むチップ部6b、およびガラス部6cを有している。チップ部6bはシリコン層を有し、受光部は撮影光学系3を介して光を集光し光電変換を行う。そして、チップ部6bの内部には受光部の出力信号を受ける回路部が配置されている。
チップ部6bに備えられたランド部はワイヤーボンディング(図示せず)によって基材部6aに備えられた配線層に接続されており、さらに、配線層は基板(図示せず)に接続されている。そして、コイル53cが配置される平面と略同一の平面に撮像素子6が配置される。このように、コイル53a~53cと撮像素子6とを配置することによってブレ補正部14を薄型化することができる。なお、図3(b)で説明した撮像素子6は上記の構成に限らず、受光した光を出力信号として回路部に出力できる構成であればよい。したがって、例えば基材部6aを持たず、チップ部6bが直接基板6dにワイヤーボンディング等で接続される構成などであってもよい。
一方、撮像素子6およびコイル53a~53cを可動部50に配置して、さらに略同一平面上に位置づけると、次の問題が生じる。
前述のように、撮像素子6においてチップ部6bにコイル53a~53cの磁場が到達すると、磁気ノイズとして撮像素子6で得られる画像に悪影響を与える。例えば、撮影レンズ2にコイルを有するブレ補正部を備えて、撮影レンズに備えられた防振レンズを光軸に直交する方向に駆動してブレ補正を行う手法がある。この場合には、コイルから撮像素子までの距離が長いので、撮像素子に与える磁場の影響は少ない。
一方、前述のようにブレ補正部14によって撮像素子を移動させる場合には、コイル53a~53cの磁場が撮像素子6に影響を与えることが多く、磁気ノイズによる悪影響が増大する。
そこで、第1の実施形態においては、図3で説明したようにシールド部材56a~56cを配置してブレ補正部14を薄型化しつつ、シールド部材56a~56cによって撮像素子6に対するコイル53a~53cの磁場の影響を低減する。特に、前述のPWM制御の駆動周波数に応じた高周波電流の変化によって生じる高周波の磁場の影響を低減することができる。
図5は、図3(b)に示す断面図においてコイルの磁場を説明するための要部を拡大して示す図である。
まず、図5を参照して、コイル53cから発生する磁場について説明する。実線矢印81はコイル53cで発生した磁場を示す。なお、コイル53cから発生する磁場は、実線矢印81で示すよりも大量に密に生じているが、撮像素子6に対する影響を説明するため、ここでは模式的に示されている。
コイル53cの中空部において上面側から発生した磁場は実線矢印81で示すように発生して、破線矢印82a~82eで示すように分岐および合流して、コイル53cの中空部において下面側に達する。シールド部材56cは導電性の高いアルミニウムで成形されているので、表皮効果によって磁場はシールド部材56cをほとんど通過せず、破線矢印82a~82cで示すようにシールド部材56cを避ける。
破線矢印82dはコイル53cよりも撮像素子6の近くに位置するコイル53cの外周とシールド部材56cとの隙間91を通過する磁場を示す。破線矢印82aおよび82bは実線矢印81から分岐して、隙間91を通過する破線矢印82dで示すように合流する磁場である。
このうち破線矢印82bで示すように、チップ部6bに到達する磁場が強いと、撮像素子6に磁気ノイズによる悪影響が生じる。また、破線矢印82cで示すように、破線矢印82bから分岐してシールド部材53cを迂回しつつチップ部6bに到達する磁場も撮像素子6に磁気ノイズよる悪影響を及ぼす。
図6は、図3に示すブレ補正部に備えられたシールド部材による磁場の低減を説明するための図である。そして、図6(a)はコイルおよびシールド部材に生じる磁場を示す斜視図であり、図6(b)はコイルおよびシールド部材に流れる電流を示す上面図である。
図6(a)において、実線矢印81はコイル53cの磁場を示し、実線矢印83はシールド部材56cに流れる電流による磁場を示す。図6(b)において、実線矢印101はコイル53cに流れる電流を示し、実線矢印103はコイル53cで発生した磁場の結合によって流れる電流を示す。なお、コイル53cおよびシールド部材56cで発生する磁場は、大量に密に発生しているが、撮像素子6に対する影響を説明するため、ここでは模式的に示されている。同様にして、電流も模式的に示されている。
実線矢印101で示すように電流がコイル53cに流れると、コイル53cの巻線からは実線矢印81で示すように磁場が発生する。この磁場がコイル53cの外周を周回するシールド部材56cに到達すると、実線矢印103で示すようにコイル53cに流れる電流(矢印101)とは逆方向のループを形成した電流が流れる。
磁場の結合によって、コイル53cとは逆方向の電流がシールド部材56cに流れる。よって、シールド部材56cから発生する磁場(実線矢印83)は、コイル53cから発生する磁場(実線矢印81)と逆方向となる。従って、シールド部材56cにはコイル53cの磁場を打ち消す方向に磁場が発生して、撮像素子6に到達する磁場を低減することができる。
なお、シールド部材56cの磁場(打消し磁場)はシールド部材56cに電流(実線矢印103)が流れることで発生する。シールド部材56cに流れる電流103と打消し磁場とは比例関係にあるので、電流(実線矢印)103が増加すると、打消し磁場も増加する。このため、シールド部材56cは導電率の高い部材であることが望ましい。
図5および図6においては、コイル53cの一方向に電流が流れた際の磁場の発生について説明したが、実際の駆動ではPWM制御に応じた電圧が印加され、交流成分が含まれる。その結果、磁場は逆方向のベクトルとなり、図6に示す実線矢印81と逆の経路を辿る。この際には、打消し磁場も逆の方向となるので、シールド部材53cによって同様の効果が得られる。
なお、上述の例では、コイル53cの磁場とシールド部材56cとの関係について説明したが、コイル53aおよび53bとシールド部材56aおよび56bの間においても同様の効果が得られる。
このように、コイル53a~53cおよび撮像素子6が配置された可動部50を有するブレ補正部14において、シールド部材56a~56cをコイル53a~53cの外周を周回する位置に配置する。これによって、コイル53a~53cで発生した磁場の撮像素子6に対する悪影響を低減して、ブレ補正部14を小型化することができる。
なお、第1の実施形態ではシールド部材56a~56cの配置について説明したが、シールド部材56a~56cの全てを備える必要はない。例えば、撮像素子6と特に距離が近いコイルについてシールド部材を配置するようにしてもよい。
さらに、第1の実施形態ではシールド部材をシート状の導体としたが、シールド部材はコイルの磁場の低減に寄与する打消し磁場を発生させる電流を流すことができる導体であればよい。よって、可動枠51に備えられたコイルの外周に位置する箇所に導電の塗装を施すようにしてもよい。このようにしても、ブレ補正部を小型化して、撮像素子6に対する磁場の悪影響を低減することができる。
また、前述のように、シールド部材56はコイルの外周を周回するようにすればよいので、例えば、FPC55とコイルとを接続する引き出し線を追加させるためにシールド部材の一部に切り欠けなどを設けるようにしてもよい。
加えて、シールド部材は、ブレ補正部の組み立ての際にコイルの位置を規制する位置規制機構を備えるようにしてもよい。あるいは、コイルとシールド部材の位置ずれを規制する位置規制部材を備えていてもよい。これによって、シールド部材による磁場低減効果をコイルの位置ずれによって変化することを防ぐことができる。
第1の実施形態では、可動枠51を樹脂製としたが、可動枠51は導電性の部材で成形してもよい。この際には、シールド部材は可動枠51よりも導電率が高いことが望ましい。
また、樹脂性の可動枠51を補強するため、内部にインサート成型で可動枠51と一体に成形された導電体(インサート部材)をコイルの外周を周回させてシールド部材とするようにしてもよい。この際に、インサート成型のシールド部材にコイルの位置を規制する位置規制機構を備えるようにしてもよい。あるいは、コイルとインサート成型のシールド部材の位置ずれを規制する位置規制部材を備えていてもよい。これによって、コイルの位置ずれによって磁場低減効果が変化することを防止しつつ、ブレ補正部を小型および軽量化して撮像素子6に対する磁場の悪影響を低減することができる。
ここで、第1の実施例によるシールド部材による磁場打消し効果を確認するため、次のようにして電磁界シミュレーションを行った。
図7は、電磁界シミュレーションのモデルを示す図である。そして、図7(a)は電磁界シミュレーションモデルを示す斜視図であり、図7(b)はコイルとシールド部材を上方から見た図である。
また、図8はシールド部材の形状を変えた際の撮像素子の位置に相当する観測面に到達する磁場に係るシミュレーション結果を示す図である。そして、図8(a)はシールド部材の厚さを変えた際のシミュレーション結果を示す図であり、図8(b)はシールド部材の幅を変えた際のシミュレーション結果を示す図である。なお、電磁界シミュレーションは、市販の電磁界シミュレーション(ANSYS社製「Maxwell3D」)を用いて行った。
図7において、L1はコイル111の中空部短辺の長さを示し、L2は中空部長辺の長さを示す。そして、L3はコイル111の外周短辺側の長さを示し、L4は外周長辺側の長さを示す。ここで、コイル111の断面高さをhとし、幅方向の長さをw1とする。
当該モデルでは、例えば、L1は3mm、L2は17mm、L3は9mm、L4は23mm、hは2mm、そして、w1は3mmである。シート状に成形シールド部材112はコイル111と空間0.5[mm]を隔てて配置され、略長方形状である。シールド部材112において、コイル111の幅w1と同一方向の厚さをtとし、コイル111の高さhと同一方向の幅をw2とする。
ここでは、シールド部材112の厚さtおよび幅w2を変化させた際の撮像素子の位置に相当する観測面Mに到達する磁場をシミュレーションした。なお、観測面Mは縦18mm、横28mm、のシート状とし、観測面Mの面内に到達する磁場の最大値をシュミレーションした。
観測面Mの位置は図7に示すZ軸に相当する巻軸に平行な方向で、コイル111の巻軸中心124と観測面Mの中心点123との距離を5.6mmとした。また、コイル111の巻軸に対して略直交する平面における距離を、図7に示すX軸に相当するコイル111の短辺に平行な方向において25.6mmとし、さらにY軸に相当する長辺に平行な方向において6.4mmとした。なお、観測面Mの横方向とコイル111の長辺とはY軸と平行な向きである。
電磁界シミュレーションを行うに当たって、コイル111の材質を銅とし、導電率を58000000S/mとした。また、シールド部材112の材質をアルミニウムとし、導電率38000000S/mとした。そして、コイル111に周波数300kHz、振幅約610mAの正弦波電流を印加した。
図8(a)には、シールド部材112が存在しない状態、そして、シールド部材112において幅w2を2mmとして、厚さtを0.01mm~0.5mmに変化された際のシミュレーション結果が示されている。
図8(a)において、横軸はシールド部材112の厚さtであり、縦軸はシールド部材112が存在しない状態を基準として観測面Mに到達する最大磁場の低減率[%]を示す。
図8(b)には、シールド部材112が存在しない状態、そして、シールド部材112において厚さtを0.04mmとして、幅w2を0.1mm~2mmに変化させた際のシミュレーション結果が示されている。
図8(b)において、横軸はシールド部材112の幅w2であり、縦軸はシールド部材112が存在しない状態を基準として観測面Mに到達する最大磁場の低減率[%]を示す。
図8(a)に示すように、シールド部材112の厚さtがより厚くなるにつれて、観測面Mに到達する磁場が低減することがわかる。具体的には、シールド部材112に流れる交流電流の周波数とシールド部材112の導電率とから求められる表皮深さ約0.15mmに相当する厚さtまでは低減率が大きく上昇する。また、表皮深さ約0.15mm以上に相当する厚さtでは、低減率の上昇率が緩やかとなる。つまり、コイル111の磁場の結合によってシールド部材112に流れる電流が磁場の低減効果に寄与しているために上述のような状態となる。
図8(a)から容易に理解できるように、シールド部材112の厚さtが表皮深さの1/10倍である0.015mm程度であっても観測面Mに到達する磁場を約30%低減することができる。よって、シールド部材112の厚さtは少なくとも表皮効果から得られる表皮深さの約1/10倍であることが望ましい。より望ましくは、シールド部材112の厚さtが表皮深さ以上あることが望ましい。
なお、シールド部材112が厚すぎると、コイル53と可動枠51との隙間を広くする必要があり、ブレ補正部12のサイズが大きくなる。また、加工も難しくなってコストアップとなる。シールド部材112の厚さtが表皮深さの4倍である0.6mm以上では厚さに対する磁場の低減率[%]の上昇は小さい。
よって、小型化を図りつつ、シールド部材112による低減効果を得るためには、シールド部材112の厚さは表皮深さの4倍以下であることが望ましい。つまり、シールド部材112の厚さは表皮効果に応じて求められる表皮深さの1/10~4倍の範囲とすることが望ましい。
図8(b)に示すように、シールド部材112の幅w2が大きくなるにつれて、観測面Mに到達する磁場が低減することがわかる。具体的には、シールド部材112の幅w2がコイル111の高さhの1/4倍まではほぼ線形に低減率は上昇する。シールド部材112の幅w2がコイル111の高さhの1/4倍以上では、徐々に低減率の上昇が緩やかになる。
図8(b)から容易に理解できるように、シールド部材112の幅w2がコイル111の幅の1/10倍である0.2mmであっても観測面Mに到達する磁場を約10%低減することができる。よって、シールド部材112の幅w2は少なくともコイル111の高さhの1/10倍あることが望ましい。
なお、シールド部材112の幅w2を大きくすると、コイル111に対向して配置される永久磁石およびコイル111を実装するFPCと干渉することになる。このような干渉を防ぐには、ブレ補正部14を光軸方向に大きくするなどの必要がある。
よって、シールド部材112の幅w2は最大でコイル111の高さhと同程度が望ましく、コイル111の製造ばらつきおよび実装位置ずれなどを考慮すると、シールド部材112の幅w2はコイル111の1.2倍以下とすることが望ましい。つまり、シールド部材112においてコイルの軸心方向の幅をコイルの軸心方向の長さの1/10~1.2倍の範囲とすることが望ましい。
このように、本発明の第1の実施形態では、ブレ補正装置(ブレ補正部)を小型化して撮像素子に対する磁場の影響を低減することができる。
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態によるブレ補正装置を備えるカメラについて説明する。なお、第2の実施形態によるカメラの構成は図1に示すカメラと同様であり、ブレ補正部14の構成も図3および図4で説明したブレ補正部14と同様である。
第2の実施形態においては、第1の実施形態で説明した可動枠51に代わって、非磁性のアルミダイキャストで成形された可動枠57を用いる。また、第1の実施形態では、可動枠51の空孔部にコイル53を配置してコイルの外周を可動枠51が覆う構成とした。一方、第2の実施形態では、可動枠57はコイルの外周の半分のみを覆う構成である。そして、可動枠57と電気的に接続されたシート状導体であるシールド部材を配置する。
図9は、本発明の第2の実施形態によるカメラで用いられるブレ補正部において可動枠、シールド部材、およびコイルを示す斜視図である。なお、ここでは、撮像素子6の外形が破線で示されている。
図9を参照して、ここでは、可動枠57が覆うコイルの外周部分について、コイル53aによって説明する。コイル53aの巻軸中心を通って、撮像素子6に最も近い辺に平行な直線92を引いた際に、直線92に対して撮像素子6に近い側のコイル53aの外周部分を可動枠57が覆う。コイル53bおよび53cについても、同様にコイルの巻軸中心を通る直線を引いて領域を半分に分割して、撮像素子6に近い側を可動枠57で覆うようにする。
このような構成によって、可動枠57のサイズを小さくしてブレ補正部14を小型化することができる。
次に、シールド部材の構成についてシールド部材58aによって説明する。シールド部材58aは可動枠57と電気的に導通している。可動枠57とシールド部材58aとを接続することによってコイル53aの外周部分を覆うようにしている。具体的には、可動枠57がコイル53aを覆う外周半分の端部121および122にシート状導体58aを接続し、シールド部材58aはコイル53aの外周部分に対向する面を備えている。コイル53bおよび53cについても同様に可動枠57がコイル53bおよび53cの各々の外周半分を覆う。
シート状の導体57bおよび57cは、コイル53bおよび53cにおいて可動枠57が覆う外周半分の端部に接続され、コイル53bおよび53cに対向する面を有するように配置される。
このようにして、可動枠57とシールド部材とによってコイル53の外周を覆うようにする。
シールド部材58a~58cの配置による磁場低減効果について説明する。
前述のように、電気的に導通した可動枠57およびシールド部材58a~58cがコイル53の外周を覆う。コイル53a~53cの磁場が可動枠57およびシールド部材58a~58cに結合すると、コイル53a~53cと逆方向に電流が発生する。この電流によって、コイル53a~53cで発生する磁場を打ち消す方向に磁場が発生して、撮像素子6に到達する磁場を低減することができる。
なお、第2の実施形態では、ブレ補正部14をより小型化することができる。例えば、第1の実施形態で説明したように可動枠の空孔部にコイル53a~53cを配置すると、コイルの外周を空孔部を規定する壁面で覆うこととなる。この場合、強度および製造上の制約からコイル53a~53cにおいて撮像素子から遠い側の外周を覆う空孔部を規定する壁面部分は一定の厚さを備える必要がある。
一方、第2の実施形態では、コイル53a~53cにおいて撮像素子6から遠い側の外周に薄いシート状導体であるシールド部材58a~58cを配置する。これによって、ブレ補正部14のサイズを小型化することができる。
さらに、第2の実施形態では、可動部50を軽量化することができる。前述のように、コイル53a~53cの外周半分を可動枠57で覆い、残りの外周半分をシート状導体であるシールド部材58a~58cで覆う。これによって、可動枠の空孔部にコイル53a~53cを配置する場合に比べて、可動枠57の一部を軽量なシート状の導体に置き換えることができる。この結果、可動部50が軽量化して、ブレ補正部14を軽量化することができる。
さらに、第2の実施形態では、ブレ補正部14の消費電力を低減することができる。上述のように、第2の実施形態では可動部50を軽量化することができる。可動部50を軽量化することによって、ブレ補正の際に可動部50を駆動する場合又は可動部50の位置に保持する場合に必要な力が小さくて済む。この結果、ブレ補正部14の消費電力を低減することができる。
このように、本発明の第2の実施形態では、可動枠57およびシールド部材58a~58cによってコイル53a~53cの外周を覆うようにしたので、ブレ補正部14を小型化して撮像素子6に対する磁場の影響を低減することができる。
なお、第2の実施形態では、シールド部材58a~58cの配置について説明したが、シールド部材58a~58cを用いる必要はない。例えば、撮像素子6と特に距離が近いものなど少なくとも一つ以上のコイルに対して適用するようにしてもよい。
さらに、第2の実施形態では、可動枠57がコイル53a~53cの外周の半分を覆うようにしたが、コイル53a~53cの全てに適用する必要はなく、少なくとも一つ以上のコイルに適用するようにしてもよい。
ところで、打消し磁場を発生させるためには、可動枠57およびシールド部材58a~58cによってコイル53a~53cの外周を覆う構造を備えていればよい。よって、可動枠57がコイル53a~53c外周の半分を覆う場合に限らず、少なくとも一部を覆う構成としてもよい。又は、コイル53a~53cの外周を半分以上覆うようにしてもよい。
さらには、第2の実施形態では、電気的に導通した可動枠57とシールド部材58a~58cによってコイル53の外周を覆うようにすればよい。よって、例えば、FPC55とコイル53a~53cを接続する引き出し線を通すために可動枠57又はシールド部材58a~58cに切り欠きなどが形成するようにしてもよい。
加えて、シールド部材58a~58cは、コイル53a~53cがFPC55に実装される面と反対の面に配置される導電性の部材であってもよい。例えば、FPC55の撓みを防ぐために配置する金属性の裏打ち部材(金属部材)をシールド部材58a~58cとして用いるようにしてもよい。
図10は、本発明の第2の実施形態に係るブレ補正部において裏打ち部材をシールド部材として用いた例を説明するための図である。そして、図10(a)は可動枠、コイル、および裏打ち部材を示す斜視図であり、図10(b)は光軸の方向において反対側から見た斜視図である。
なお、図10(a)においては、上面が被写体側とされ、図10(b)においては裏打ち部材が下面側とされている。また、ここでは、撮像素子6の外形が破線で示されている。
コイル53a~53cはFPC55(図10には示さず)に実装されている。コイル53a~53bのFPC55における実装面と反対の面に導電性の裏打ち部材59が配置される。裏打ち部材59は、シールド部材58a~58cを構成する折り曲げ部を有している。裏打ち部材59の折り曲げ部は、可動枠57がコイル53aを覆う外周半分の端部で可動枠57に接続されている。
上述のような構成によって、シールド部材を新たに追加することなく、撮像素子6に対する磁場の影響を低減することができる。なお、コイル53a~53cの位置ずれを防止する位置ずれ防止機構を有するようにしてもよい。これによって、シールド部材58a~58cによる磁場低減効果がコイル53の位置ずれで変化することを防止することができる。
このように、本発明の第2の実施形態においても、ブレ補正装置(ブレ補正部)を小型化して撮像素子に対する磁場の影響を低減することができる。