前記の各特許文献のように、部材同士の連結箇所のほか、基礎と部材との連結箇所などに金属部品を組み込み、その弾塑性変形を利用する技術は、様々なものが提案されている。しかし課題は残っており、特許文献1のように、部材同士を連結するボルトを弾塑性変形させる場合、ボルトという性質上、その素材が限定されるほか、長さや太さについても規格などによる制限があり、変形の特性を精密に調整することは難しい。また特許文献3では、緩衝軸として全ネジボルトを用いているが、同様にその素材や太さなどには制限があり、やはり、変形の特性を精密に調整することは難しい。
このように、衝撃荷重の緩和に各種ボルトの弾塑性変形を利用する場合、その変形の特性を精密に調整することは難しく、使用箇所に応じた最適な物を選択できない可能性があり、その結果、剛性が不足して日常的な外力で不快な揺れを生じる恐れがあるほか、逆に剛性が必要以上に高くなり、本来の機能を発揮できず、部材の破損を招く恐れがある。
また、金属部品の弾塑性変形を利用して衝撃荷重を緩和する場合、その弾性変形が限界に達し、塑性変形を生じてしまう局面で指す「耐力」についても、設計段階で諸条件に応じて自在に設定できることが望ましい。ただしこれについても、金属部品として各種ボルトを使用する場合、その素材や長さや太さなどによる制限が生じるため、自在に設定することは難しい。したがって、各種ボルトの弾塑性変形に依存することのない他の方法を検討すべきだが、その費用が極端に上昇することは避けるべきであり、従来の連結構造との互換性を確保することが望ましい。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、木造建築を始めとする各種木構造において、部材の破損を防ぐため、使用箇所に応じて剛性や耐力を調整可能であり、また従来との互換性にも配慮された連結構造の提供を目的としている。
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一方材と他方材が隣接しており、該一方材と該他方材を棒状の緩衝軸を介して互いに引き寄せ合う連結構造であって、前記緩衝軸は、その中央に位置する中央域と、該中央域を挟み込むように配置される接続域と、からなり、該中央域は該接続域よりも横断面が小さく、また個々の該接続域の端面にはメネジまたはオネジのいずれかを設けてあり、前記一方材には、前記他方材との接触面に対して直交方向に伸びる下穴を設けてあり、該下穴の奥方には該一方材と一体化される埋設具を埋め込んであり、前記下穴において、前記埋設具よりも入り口側には前記緩衝軸を配置してあり、該緩衝軸の外周面は該下穴の内周面と対向しており、且つ該緩衝軸のメネジまたはオネジは、該埋設具と螺合しており、該埋設具と該緩衝軸は直列で並んだ状態で一体化しており、前記他方材は、前記下穴を塞ぐような状態で前記一方材に接触しており、且つ該他方材には、該下穴と同心に揃う位置に小穴を設けてあり、前記緩衝軸から見て該小穴の反対側には、該緩衝軸と螺合するナットまたは固定ボルトのいずれかを配置することで該緩衝軸を該他方材に取り付けてあり、前記一方材と前記他方材を引き離すような荷重は、前記中央域を介して伝達されることを特徴とする。
本発明による連結構造は、柱と梁や、梁同士や、柱脚金物と柱など、木造建築の骨格を構成する部材を据え付けるために用い、連結される二部材のうち、一方を一方材と称し、残る一方を他方材と称するものとする。そして一方材と他方材は面接触しており、この接触面を跨ぐように金属部品を組み込み、一方材と他方材を引き寄せて密着させる。なお一方材については、各種木材であることを前提とするが、他方材については各種木材に限定されるものではなく、柱脚金物などの金属部品になる場合もあれば、基礎などのコンクリート構造物になる場合もある。
緩衝軸は、棒状の金属部品で、その中央に位置する中央域を接続域で挟み込んだ構成で、一方材に形成した下穴に埋め込む。この接続域は、緩衝軸を一方材や他方材に取り付けるための部位で、概ね一定の横断面を維持している。対して、接続域で挟み込まれる中央域は、隣接する接続域に対して横断面を小さくした部位で、緩衝軸全体では、中央域だけがくびれた外観になり、各種の引張試験で用いる試験片に類似している。そのため、両方の接続域を保持して引張荷重を作用させるならば、横断面の小さい中央域の応力が増大し、そこに弾塑性変形が集中することになる。なお緩衝軸の製造方法は自在であり、一塊の金属から一体的に形成する場合もあれば、複数の金属を接合する場合もある。
緩衝軸を一方材や他方材に取り付けるため、個々の接続域の端面にはメネジまたはオネジを設けるほか、緩衝軸に工具を掛けて回転させるため、接続域の端面には、六角形の頭部などを設けることがある。なお緩衝軸を埋め込む下穴は、一方材と他方材との接触面に対して概ね直交方向に伸びるものとする。そして下穴に埋め込まれた緩衝軸単体は、弾塑性変形を生じることを考慮し、下穴に固着させることなく変位可能とする。
埋設具は、一方材の下穴に埋め込み、一方材と一体化させる金属部品で、その具体例としてはラグスクリューや異形棒鋼やシャフトやパイプが挙げられ、そのうちラグスクリューについては、その側周面から突出する凸条を下穴の内周面に食い込ませ、一方材と緩みなく一体化させる。また異形棒鋼は、下穴に埋め込み、接着剤で一方材と一体化させる。そのほかシャフトやパイプについては、下穴に埋め込んだ後、これと交差するように固定ピンを打ち込み、一方材と一体化させる。
本発明では、一本の下穴に埋設具と緩衝軸が直列で配置されることになるが、埋設具は下穴の奥方に配置され、緩衝軸は下穴の入り口側に配置される。さらに緩衝軸のメネジまたはオネジは、隣接する埋設具に螺合させ、双方を一体化させる。したがって緩衝軸は、埋設具を介して一方材と一体化することになる。対して、緩衝軸を他方材に取り付ける方法は様々であり、その具体例としては、他方材についても何らかの金属部品を取り付け、この金属部品と緩衝軸を螺合させることもできれば、緩衝軸から突出するオネジを他方材の中に差し込み、その先部にナットを螺合させ、緩衝軸の端面に他方材を密着させることもできる。そのほか一箇所の連結構造において、埋設具と緩衝軸は、一組だけ使用することも可能だが、ネジリや曲げモーメントなどを考慮し、複数組とすることが多い。
このように、一方材と他方材を互いに引き寄せ合う連結構造において、一方材に形成した下穴に埋設具と緩衝軸を直列で埋め込み、緩衝軸を介して一方材と他方材を引き寄せ、しかも緩衝軸には、くびれを有する中央域を設けることで、一方材と他方材を引き離す方向に過大な衝撃荷重が作用した場合、緩衝軸の中央域の応力が増大して大きな弾塑性変形を生じ、バネのような機能を発揮する。そのため、一方材などに作用する衝撃荷重が緩和される。なお緩衝軸は専用の金属部品であり、その中央域の横断面および長さを自在に調整可能で、使用箇所に応じた最適な剛性や耐力を設定することができる。
請求項2記載の発明は、一方材と他方材が隣接しており、該一方材と該他方材を棒状の緩衝軸を介して互いに引き寄せ合う連結構造であって、前記緩衝軸は、その中央に位置する中央域と、該中央域を挟み込むように配置される接続域と、からなり、該中央域は該接続域よりも横断面が小さく、また個々の該接続域の端面にはメネジまたはオネジのいずれかを設けてあり、前記一方材には、前記他方材との接触面に対して直交方向に伸びる下穴を設けてあり、該下穴の奥方には該一方材と一体化される埋設具を埋め込んであり、前記下穴において、前記埋設具よりも入り口側には前記緩衝軸を配置してあり、該緩衝軸の外周面は該下穴の内周面と対向しており、且つ該緩衝軸のメネジまたはオネジは、該埋設具と螺合しており、該埋設具と該緩衝軸は直列で並んだ状態で一体化しており、前記一方材と前記他方材との接触箇所には、一方片と他方片とからなる組合金具を配置してあり、該一方片は、前記緩衝軸を介して該一方材に取り付けてあり、また該他方片は該他方材に取り付けてあり、該一方片と該他方片を一体化することで該一方材と該他方材が互いに引き寄せ合う状態になり、前記一方材と前記他方材を引き離すような荷重は、前記中央域を介して伝達されることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様、一方材に埋設具と緩衝軸を埋め込んでいるが、一方材と他方材との接触箇所に組合金具を配置してある点は、請求項1記載の発明と異なる。この組合金具は、従来から普及している製品を流用可能であり、一方片と他方片を互いに密着させた後、双方を何らかの手段で変位不能に一体化することで一方材と他方材を連結する。そして一方片は、一方材の下穴に埋め込んだ緩衝軸に接触させ、さらにボルトやナットなどで緩衝軸と一体化させる。したがって一方片は、緩衝軸と埋設具を介して一方材に取り付けられる。なお、他方片の取り付け方法については自在だが、一方片と同様、何らかの埋設具を介在させることが多い。このように、一方材と他方材との連結に組合金具を用いることで、一方材や他方材の加工方法や現地での施工手順などは、従来とほぼ同一になる。
請求項3記載の発明は、施工作業の簡素化と緩衝軸の屈曲防止を実現するもので、一方材の下穴の入り口側は、緩衝軸よりも大径としてあり、下穴と緩衝軸との隙間を埋めるように筒状のサポートカラーを組み込んであり、緩衝軸はその軸線に沿って伸縮することを特徴とする。一方材の下穴については、その奥側に埋設具を埋め込むほか、手前側に緩衝軸を埋め込むことになるが、下穴の入り口側を大径化することで、埋設具の埋め込みが容易になり、施工作業の簡素化が実現する。またこの大径化により、緩衝軸の周囲には隙間が形成されることになるが、これを埋めるように筒状のサポートカラーを組み込むことで、過大な荷重が作用した場合でも、緩衝軸の屈曲が規制され、緩衝軸はその軸線に沿って伸縮することになる。
請求項1記載の発明のように、一方材と他方材を互いに引き寄せ合う連結構造において、一方材に形成した下穴に埋設具と緩衝軸を直列で埋め込み、緩衝軸を介して一方材と他方材を引き寄せ、しかも緩衝軸には、くびれを有する中央域を設けることで、一方材と他方材を引き離す方向に過大な衝撃荷重が作用した場合、緩衝軸の中央域の応力が増大して大きな弾塑性変形を生じ、バネのような機能を発揮する。そのため、一方材などに作用する衝撃荷重が緩和され、木造建築などの安全性が確保される。
緩衝軸は、その目的に特化した専用の金属部品であり、その中央域の横断面および長さを自在に調整可能である。そのため、使用箇所に応じて剛性や耐力を最適に設定することができ、不快な揺れや部材の破損を防ぐことができる。また緩衝軸は単純な形状であるため、個別に製造する場合でも、その費用を抑制可能である。さらに緩衝軸は、従来のラグスクリューなどと直列に配置するため、埋設具(ラグスクリューなど)を埋め込む下穴の長さを調整するだけで緩衝軸を無理なく配置可能である。したがって、従来の連結構造との互換性を確保できるため、その導入費用が極端に上昇することはない。
請求項2記載の発明のように、一方片と他方片とからなる組合金具を用いて一方材と他方材を連結し、さらに一方片は、緩衝軸を介して一方材に取り付けることで、請求項1記載の発明と同様、使用箇所に応じて剛性や耐力を最適に設定することができる。また組合金具は、従来から普及している製品を流用可能であり、従来の連結構造との互換性を確保できるため、一方材や他方材の加工方法や現地での施工手順などに大きな変更はなく、その導入費用が極端に上昇することはない。
請求項3記載の発明のように、一方材の下穴の入り口側は、緩衝軸よりも大径とするほか、下穴と緩衝軸との隙間を埋めるように筒状のサポートカラーを組み込むことで、埋設具の埋め込みが容易になり、施工作業の簡素化が実現する。またこの大径化により、緩衝軸の周囲には隙間が形成されることになるが、これを埋めるように筒状のサポートカラーを組み込むことで、過大な荷重が作用した場合でも、緩衝軸の屈曲が規制され、緩衝軸はその軸線に沿って伸縮することになり、伸縮を繰り返した場合でも緩衝軸の機能が変化することはなく、連結構造の挙動の変化も防ぐことができる。
図1は、本発明による連結構造の具体例を示しており、ここでは階段状の組合金具を用いて一方材81と他方材91を連結することを想定している。この図の一方材81は水平方向に伸びる梁であり、また他方材91は直立する柱であり、一方材81の端面を他方材91の側面に接触させ、この接触面に組合金具を配置しており、組合金具を介して一方材81と他方材91を連結している。なお一方材81と他方材91のいずれも、木造建築の骨格を構成する部材で、集成材などの各種木材を所定の形状に加工したものである。
組合金具は、一方片41と他方片51の二要素を中心に構成され、一方材81と他方材91との接触面の中央付近に配置される。そのうち一方片41は、その一側面を階段状に仕上げた形状で、この一側面の中間には上向きの受け面42が形成され、その上下には直立する壁面43が形成され、さらに上下の壁面43のいずれにも、固定ボルト38を差し込むための抜け穴47を設けてある。この抜け穴47は反対面に到達しているほか、その入り口には、固定ボルト38の頭部を収容するためのザグリ46を設けてある。そのほか受け面42の中央には、メネジ45を形成してあるほか、このメネジ45を挟み込むように二箇所にピン穴44を設けてある。
組合金具の他方片51は、一方片41を上下反転させたような形状で、その中間には下向きの押圧面52が形成され、その上下には直立する壁面53が形成され、さらに上下の壁面53のいずれにも、固定ボルト38を差し込むための抜け穴57とザグリ56を設けてある。そのほか、他方片51の上面中央には縦穴55を設けてあるほか、この縦穴55を挟み込むように二箇所にピン穴54を設けてあり、縦穴55とピン穴54のいずれも押圧面52に到達している。
一方片41と他方片51を接近させ、他方片51の押圧面52を一方片41の受け面42に載せ、併せて双方の壁面43、53を接触させると、一方片41と他方片51は直方体状の一つの塊になり、その後、縦穴55からメネジ45に向けて寄せボルト49を差し込み、これを締め付けると一方片41と他方片51が分離不能に密着し、さらに双方のピン穴54、44を貫くように貫通ピン48を打ち込むと、一方片41と他方片51が強固に一体化する。なお組合金具を埋め込むため、一方材81の端部には収容溝85を加工してある。収容溝85は、組合金具の大半を覆い隠すことができるよう、一方材81の底面には到達しておらず、その手前で途切れている。
一方片41は、埋設具21と緩衝軸11を介して一方材81に取り付ける。対する他方片51は埋設具24だけを介して他方材91に取り付けるが、この図での埋設具21、24は、汎用のラグスクリューを用いている。埋設具21、24の側周面には、螺旋状に伸びる凸条26が突出しているほか、施工時に工具を掛けるため、埋設具21、24の一端面には、六角形の頭部27を形成してある。そして一方材81側の埋設具21については、頭部27の中心からオネジ29が突出しているが、他方材91側の埋設具24については、頭部27の中心にメネジ28を形成してある。さらに一方材81の収容溝85の奥面には、埋設具21を埋め込むための下穴84を加工してあり、他方材91についても、その側面から有底の下穴94を加工してあり、これらの下穴84、94に埋設具21、24を埋め込むと、その凸条26が下穴84、94の内周面に食い込み、埋設具21、24は一方材81や他方材91と強固に一体化される。なお下穴84、94は、一方材81と他方材91のいずれも、上下に二本が並んでおり、それぞれに埋設具21、24を埋め込む。
緩衝軸11は、一方材81と他方材91を引き寄せるほか、連結構造に作用する衝撃荷重を緩和する役割を担う棒状で、中央域15を接続域16、17で挟み込んだ構成である。そして二箇所の接続域16、17は同径だが、中央域15はこれよりも絞り込まれて小径としてあり、引張荷重が作用した際は中央域15の応力が増大して弾塑性変形が誘発され、バネのように機能する。また緩衝軸11の組み込みを考慮し、一方の接続域16の端面には六角形の頭部14を形成してあり、その中心にはメネジ19を形成してあり、反対側の接続域17の端面にもメネジ19を形成してある。この図のように、緩衝軸11は比較的単純な形状であり、その製造に要する費用は抑制可能である。そのため、個別の連結箇所に応じて最適な緩衝軸11を提供することも容易である。
一方材81の下穴84は、埋設具21と緩衝軸11を直列で収容可能な長さを確保してあり、その奥方に埋設具21を埋め込んだ後、緩衝軸11を埋め込み、埋設具21のオネジ29と緩衝軸11のメネジ19(図の右側の方)を接触させ、さらに緩衝軸11の頭部14を利用してオネジ29とメネジ19を螺合させ、下穴84の中で埋設具21と緩衝軸11を一体化させる。その際、緩衝軸11の端面は、下穴84の入り口と段差なく並べ、一方片41が緩衝軸11と接触できるようにする。また他方材91についても、その下穴94に埋設具24を埋め込むが、この端面は下穴94の入り口と段差なく並べ、他方片51が埋設具24と接触できるようにする。
一方片41や他方片51は、固定ボルト38を用いて一方材81や他方材91に取り付ける。この固定ボルト38は、一方片41の抜け穴47から緩衝軸11のメネジ19に向けて差し込まれるほか、他方片51の抜け穴57から埋設具24のメネジ28に向けて差し込まれるが、固定ボルト38の頭部は、一方片41や他方片51のザグリ46、56に埋め込まれ、壁面43、53から突出することはない。したがって双方の壁面43、53は、無理なく接触可能である。また当然ではあるが、下穴84、94と抜け穴47、57は、同心に配置する。
図2は、図1の一方材81と他方材91を連結する過程を示している。一方材81の下穴84には、埋設具21と緩衝軸11を直列で埋め込み、さらに収容溝85には一方片41を配置し、その後、一方片41から緩衝軸11に向けて固定ボルト38を差し込み、これを締め付けると、一方片41が収容溝85の奥面に密着し、一方材81に固定される。なお緩衝軸11は、先の図1のように、オネジ29とメネジ19との螺合によって埋設具21と一体化しており、また一方片41は、埋設具21と緩衝軸11を介して一方材81に固定されている。そして他方材91については、埋め込まれた埋設具24を覆い隠すように他方片51を配置し、その後、固定ボルト38を差し込むと、他方片51が他方材91に固定される。
一方材81に一方片41を取り付け、他方材91に他方片51を取り付けた後、一方材81と他方材91を接近させ、他方片51の押圧面52を一方片41の受け面42に載せ、且つ双方の壁面43、53を接触させると、図の下方のように、一方片41と他方片51は一つの塊のようになり、併せて一方材81と他方材91が接触する。この状態で寄せボルト49を差し込むと、一方片41と他方片51は変位不能に一体化し、さらに貫通ピン48を打ち込むと、一方片41と他方片51はより強固に一体化し、一方材81と他方材91の連結が完了する。
図3は、図1の一方材81と他方材91が連結した状態を示している。一方材81と他方材91を連結した後は、一方片41と他方片51の全体が収容溝85に埋め込まれるため、一方片41と他方片51の底部や側部が覆い隠され、美観などの面で優れている。さらに一方材81の上に床板などを敷設すると、一方片41を始めとする全ての金属部品が覆い隠される。
そして図の下方のように、一方材81と他方材91を引き離す方向に過大な衝撃荷重が作用すると、その荷重は緩衝軸11を介して伝達されるが、必然的にその中央域15の応力が局地的に増大するため、ここに大きな変形を生じ、図のように細長く引き伸ばされた状態になる。その結果、一方材81や他方材91に作用する衝撃荷重が緩和され、割れなどの破損を防ぐことができる。なお緩衝軸11が引き伸ばされた後は、一方材81と他方材91に隙間が生じるほか、一方片41と他方片51は収容溝85から飛び出す。
図4は、図1とは異なる組合金具を用いた連結構造を示している。この図の組合金具は、いずれも角棒状の一方片61と他方片71で構成され、そのうち一方片61は、単純な角棒状の棒体62に先鋭部63や受け帯65を設けたもので、先鋭部63は、文字通り、棒体62の端部をクサビ状に仕上げた部位で、棒体62の下部に位置している。また受け帯65は、棒体62を囲むように横に飛び出た部位で、棒体62の上部に位置している。残る他方片71については、一方片61を上下反転させたような構成で、棒体72の上部に先鋭部75を設け、棒体72の下部に受け帯73を設けてある。そして、双方の先鋭部63、75を相手方の受け帯73、65の内側に差し込むことで、棒体62、72同士が密着する。当然ながら、先鋭部63、75と受け帯73、65は、棒体62、72同士が緩みなく密着可能な形状に仕上げてある。
組合金具の先鋭部63、75を相手方の受け帯73、65の内側に差し込んだ後、一方片61と他方片71を変位不能に一体化するため、貫通ピン68を打ち込む。そのため一方片61の側面にはピン穴64を設けてあるほか、他方片71については、棒体72から板を突出させ、その先にピン穴74を設けてある。そのほか個々の棒体62、72の側面には、固定ボルト38を差し込むための抜け穴67、77を設けてあり、その入り口には、固定ボルト38の頭部を収容するためのザグリ66、76を設けてある。
この図では、一方材82と他方材92のいずれも水平方向に伸びる梁であり、一方材82の端面が他方材92の側面に接触し、組合金具を用いて双方を連結する。さらに埋設具22については、側周面にリブ32が形成された異形棒鋼を用いており、接着剤33で一方材82などに固定する。
この図の緩衝軸12は、横断面の小さい中央域15を挟み込むように接続域16、17が配置されており、図の右側の接続域17の端面にはオネジ18が突出しており、図の左側の接続域16の端面には頭部14が形成され、その中心にはメネジ19を形成してある。また埋設具22は、一方材82側と他方材92側で同じ物を用いており、その一端面の中心にはメネジ28を形成してある。そして一方材82と他方材92のいずれも、埋設具22を埋め込むための下穴84、94を加工してあり、他方材92の下穴94は、埋設具22の長さに応じた有底としてあり、埋め込まれた埋設具22を接着剤33で固定することになるが、その際、埋設具22の端面は、下穴94の入り口と段差なく並べ、その後、他方片71を埋設具22に接触させ、固定ボルト38で他方片71を他方材92に固定する。
一方材82の端部には、組合金具を収容するための収容溝85を加工してあるが、この収容溝85は施工作業などを考慮し、一方材82の上下両面を結んでおり、一方材82の下方から組合金具を視認することができる。また収容溝85の奥面には下穴84を加工してあり、そこに埋設具22と緩衝軸12を埋め込むが、埋設具22は下穴84の奥方に配置し、緩衝軸12はその手前側に配置し、さらに埋設具22のメネジ28と緩衝軸12のオネジ18を螺合させ、埋設具22と緩衝軸12を直列で一体化する。なおここでも、埋設具22は接着剤33で固定するほか、緩衝軸12の端面は、下穴84の入り口と段差なく並べ、一方片61が緩衝軸12に接触できるようにする。
一方材82の下穴84に埋設具22と緩衝軸12を埋め込んだ後、緩衝軸12を覆い隠すように一方片61を配置し、次に一方片61の抜け穴67から緩衝軸12のメネジ19に向けて固定ボルト38を差し込むと、一方片61が一方材82に固定される。その後、一方材82を吊り上げ、他方片71の真上に一方片61を配置し、一方材82を徐々に下降させると、双方の先鋭部63、75が相手方の受け帯73、65の内側に入り込み、一方片61が他方片71で支持された状態になり、引き続き、一方材82の横穴86から貫通ピン68を打ち込み、これが一方片61と他方片71の双方のピン穴64、74を貫くことで、一方片61と他方片71は変位不能に一体化し、一方材82と他方材92の連結が完了する。
図5は、図4の一方材82と他方材92を連結する過程を示している。一方材82の下穴84には埋設具22と緩衝軸12を直列で埋め込み、さらに収容溝85に一方片61を配置した後、一方片61から緩衝軸12に向けて固定ボルト38を差し込み、これを締め付けると、一方片61が収容溝85の奥面に密着し、一方材82に固定される。なお緩衝軸12は、先の図4のように、メネジ28とオネジ18との螺合によって埋設具22と一体化しており、一方片61は、埋設具22と緩衝軸12を介して一方材82に固定されている。また他方材92については、埋め込まれた埋設具22を覆い隠すように他方片71を配置し、その後に固定ボルト38を差し込み、他方片71を他方材92に固定する。
一方材82に一方片61を取り付け、他方材92に他方片71を取り付けた後、一方材82と他方材92を接近させ、双方の先鋭部63、75を相手方の受け帯73、65の内側に差し込むと、図の下方のように、一方片61と他方片71は一つの塊のようになり、併せて一方材82と他方材92が接触する。この状態で貫通ピン68を打ち込むと、一方片61と他方片71は変位不能に一体化し、一方材82と他方材92の連結が完了する。以降、一方材82と他方材92を引き離す方向に過大な衝撃荷重が作用すると、緩衝軸12の中央域15の応力が局地的に増大し、ここに大きな変形を生じ、一方材82や他方材92に作用する衝撃荷重が緩和され、割れなどの破損を防ぐことができる。なお図5の左下には、一方片61と他方片71を密着させた状態を描いてある。
図6は、柱の据え付けに緩衝軸13を用いた場合を示している。ここでの一方材83は、基礎100に据え付けられる柱だが、基礎100と一方材83は直に接触することがなく、その間に柱脚金物が挟み込まれる。柱脚金物は、金属板を枠状に組み上げた構成だが、この柱脚金物は、一方材83と連結される他方材93に相当する。そして、基礎100から突出するアンカーボルト101を差し込むため、他方材93の下部には大穴99を設けてあり、実際に他方材93を基礎100に据え付ける際は、大穴99にアンカーボルト101を差し込むと共に、他方材93の底面を基礎100の上面に載せ、その後、アンカーボルト101にナット39を螺合させる。なおこのナット39が大穴99に落下しないよう、大径のワッシャ102で大穴99を塞いでいる。
一方材83を他方材93に引き寄せるため、埋設具23と緩衝軸13を用いている。ここでの埋設具23は丸棒状のシャフトであり、一方材83の底面に加工した下穴84に埋め込み、さらに埋設具23と交差するように固定ピン87を打ち込むことで、埋設具23が一方材83に固定される。この固定ピン87を打ち込むため、埋設具23の側周面には側穴36を設けてあり、また一方材83の側面には、下穴84と交差するように横穴86を加工してあり、横穴86と側穴36を同心に揃えた後、固定ピン87を打ち込む。
緩衝軸13は、横断面の小さい中央域15を接続域16、17で挟み込んだ構成で、図の上側の接続域17の端面にはオネジ18が突出しており、図の下側の接続域16の端面には六角形の頭部14が形成され、その中心からオネジ18が突出している。そして緩衝軸13は、埋設具23と直列で下穴84に埋め込まれるが、埋設具23は下穴84の奥方に配置され、緩衝軸13は下穴84の入り口側に配置される。また埋設具23の底面中心には、メネジ28を形成してあり、これに緩衝軸13のオネジ18を螺合させることで、埋設具23と緩衝軸13を一体化することができる。
緩衝軸13の下方のオネジ18は、他方材93の上部に設けた小穴98に差し込み、小穴98を通過したオネジ18にナット39を螺合させることで、緩衝軸13を他方材93に引き寄せることができる。緩衝軸13は、他方材93と埋設具23との間に配置されるため、一方材83を持ち上げる方向に衝撃荷重が作用した場合、その荷重は緩衝軸13で受け止められるが、その際、緩衝軸13の中央域15が変形することで、一方材83の破損を防ぐ。
図7は、図6の柱を基礎100に据え付けた状態を示している。埋設具23のメネジ28と緩衝軸13のオネジ18を螺合させ、埋設具23と緩衝軸13を直列で一体化させた後、一方材83の下穴84に埋設具23と緩衝軸13を埋め込み、埋設具23の側穴36と一方材83の横穴86を同心に揃えた後、横穴86から埋設具23に向けて固定ピン87を打ち込み、埋設具23を一方材83に固定する。また緩衝軸13のオネジ18(下方に突出する方)は、他方材93の小穴98に差し込み、小穴98から突出したオネジ18にナット39を螺合させ、これを締め付けると、一方材83が他方材93に引き寄せられる。
柱脚金物に相当する他方材93は、基礎100の上面に載せることになるが、その大穴99にはアンカーボルト101が差し込まれており、アンカーボルト101にワッシャ102を組み込んだ後にナット39を螺合させ、これを締め付けると、他方材93が基礎100の上面に固定されるため、一方材83は、他方材93を介して基礎100に据え付けられる。なお図の上方には、埋設具23と緩衝軸13を他方材93に固定する様子を描いてあり、緩衝軸13のオネジ18が他方材93の内部に到達しており、そこにナット39を螺合させている。
この図の場合、施工手順は自在に選択可能で、埋設具23と緩衝軸13を一方材83に埋め込んだ後、一方材83を他方材93に載せ、他方材93の内部でナット39を締め付け、柱を基礎100に据え付けることができる。別の手順としては、埋設具23と緩衝軸13を他方材93に取り付け、その後、吊り上げた一方材83を下降させ、その下穴84に埋設具23と緩衝軸13を差し込み、最後に固定ピン87を打ち込み、柱を基礎100に据え付けることもできる。
図8は、図1の連結構造にサポートカラー89を組み込む場合を示している。ここでの連結構造は、サポートカラー89を組み込むことを除き、図1と全く同じであり、一方材81側の埋設具21は、下穴84の奥方に埋め込む。そしてこの埋め込みの際は、凸条26を下穴84の内周面に食い込ませるため、大きなトルクが必要になり、埋設具21を回転させる工具も相応の強度が必要になる。したがって、この工具が無理なく使用できるよう、図のように、下穴84の内径を途中で変化させ、入り口側を大径とすることがある。その結果、緩衝軸11を下穴84の入り口側に埋め込んだ際、緩衝軸11と下穴84に隙間が生じてしまい、緩衝軸11の保持が難しくなり、施工時の手間が増えるほか、施工後、連結構造にせん断荷重が作用すると、緩衝軸11が下穴84の中で屈曲し、一方材81と他方材91との変形を誘発する恐れがある。
このような事態に対応するため、緩衝軸11と下穴84との隙間には、サポートカラー89を組み込むことが望ましい。サポートカラー89は単純な筒状の金属部品で、下穴84の入り口側に埋め込むだけだが、これによって緩衝軸11を埋設具21と同心に揃えることができるほか、緩衝軸11が下穴84の中で屈曲することを防ぎ、せん断荷重に対する強度が向上する。なおサポートカラー89は、単に緩衝軸11と隣接しているだけであり、引張荷重による緩衝軸11の変形を妨げることはない。またこの図において、他方材91側は図1と全く同じであり、一方材81と他方材91が連結した後の外観についても、図1と全く同じである。
図9は、先の図8に対し、サポートカラー88を長尺化した場合を示している。この図の連結構造は、先の図8と全く同じ形態だが、サポートカラー88については、緩衝軸11と同等の長さを確保してあり、サポートカラー88の内部には緩衝軸11の中央域15が収容されるほか、中央域15を挟んで対向する左右の接続域16、17も一体で収容される。したがって、荷重によって緩衝軸11が変形する際は、その接続域16、17がサポートカラー88の内周面に沿って擦れ合うように変位することになり、仮に引き伸ばされた後に圧縮荷重が作用した場合でも、左右の接続域16、17は同心を維持することになる。その結果、圧縮荷重によって中央域15が押し縮められる際は、この荷重の偏りが抑制され、中央域15が屈曲することなく押し潰され、次第に元の形状に近づいていく。なお、この図のようなサポートカラー88がない場合、圧縮荷重による変形で緩衝軸11の端部などが下穴84の内周面に食い込み、左右の接続域16、17が同心を維持できなくなる恐れがある。
図10は、図9の縦断面を示しており、図の上方は当初の状態であり、図の下方は引張荷重によって緩衝軸11が塑性変形した状態である。この図のように、一方材81と他方材91はL字状に連結されており、一方材81に加工された下穴84については、その奥方に埋設具21を埋め込んであるほか、入り口側に緩衝軸11を埋め込んであり、埋設具21と緩衝軸11は同心で一体化しており、さらに一方材81の収容溝85には一方片41を配置してあり、一方片41は、固定ボルト38を介して緩衝軸11と一体化している。また他方材91については、その側面から伸びる下穴94に埋設具24を埋め込んであり、この埋設具24を覆い隠すように他方片51を配置してあり、他方片51は、固定ボルト38を介して埋設具24と一体化している。そして一方片41と他方片51は、寄せボルト49などを介して一体化しており、一方片41と他方片51を介して一方材81と他方材91が連結されている。
一方材81の下穴84の内径について、緩衝軸11を収容する入り口側では、緩衝軸11の外径よりも大きくしてあり、必然的に緩衝軸11の外周には隙間が確保され、そこに筒状のサポートカラー88を埋め込んである。このサポートカラー88は、緩衝軸11と同等の長さを確保してあり、サポートカラー88の内部の中心付近では、緩衝軸11の中央域15が収容されており、さらにサポートカラー88の内部の両端付近では、緩衝軸11の接続域16、17が収容されており、しかもサポートカラー88と接続域16、17との隙間は必要最小限としてある。そのため緩衝軸11に過大な圧縮荷重が作用した場合でも、左右の接続域16、17は同心で並ぶことになり、中央域15は屈曲することなく押し潰される。
図10の下方では、一方材81と他方材91を引き離すような引張荷重が作用し、緩衝軸11の中央域15が大きく引き伸ばされているが、このように塑性変形を生じた状態においても、図の左側の接続域16は、サポートカラー88から離脱していない。そのためここでも、左右の接続域16、17は同心で並んでいる。なお緩衝軸11の頭部14は、当初、図10の上方のように、サポートカラー88の内部に収容されている。しかし緩衝軸11が変形した後は、図10の下方のように、頭部14がサポートカラー88から離脱し、収容溝85に入り込むこともある。この場合においても、接続域16の一部はサポートカラー88の内部に収容されている。
図11は、図10のような塑性変形を生じた後、一方材81と他方材91を接近させる方向に圧縮荷重が作用した場合を示しており、図の上方は接近の途中段階であり、図の下方は当初の状態に戻った最終段階である。このように、緩衝軸11の左右の接続域16、17のいずれもサポートカラー88の内部に収容されている場合、緩衝軸11に圧縮荷重が作用すると、その中央域15は屈曲することなく押し潰されていく。したがって下方の図のように、当初の状態に戻った際、中央域15は元の形状に戻り、次に同様の荷重が作用した場合でも、同様の挙動を示すことになる。