JP7323104B2 - 補強繊維及びその製造方法、並びにそれを用いた成形体 - Google Patents
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Description
具体的に、特許文献3には、ゴムの加硫に用いられる加硫剤と反応する不飽和炭素結合及びエポキシ基を有する接着化合物を含む接着剤を用いる技術が提案されている。特許文献4には、(ブロックド)イソシアネート化合物及び/又はアミン系硬化剤(A)と、エポキシ化合物(B)と、ゴムラテックス(C)と、を含み、レゾルシン及びホルマリンを含まない有機繊維コード用接着剤組成物を用いた接着方法が提案されている。特許文献5には、液状ゴムが付着したゴム補強用繊維として、機械的せん断力により分割・細径化する技術が提案されている。
また、特許文献4に記載された接着剤を用いた方法は、従来のRFLを用いた方法と同等かそれ以上の接着力を有するものの、有機繊維コードの表面に接着剤層を形成した後、実質的には高温(180℃及び240℃)によって加熱処理する必要があった。補強繊維としてしばしば用いられるポリビニルアルコール系繊維等の有機繊維をかかる方法で処理した場合、劣化によって補強繊維としての性能が落ちる危険性があった。また、特許文献5に記載された技術は、ゴム補強用繊維を機械的せん断力により分割・細径化し、ゴム成型体の製造で用いるマトリックス・ゴムの基本性能を損なうことなく分散性及び補強性を向上させる技術であるが、ゴムとの接着力においては更なる改善が求められていた。
そこで、従来のRFLを用いた方法と同程度の接着力を有しながら、汎用的な繊維が劣化しない接着方法が求められていた。
[1]親水性繊維及び接着成分を含有する補強繊維であって、
該親水性繊維の表面の少なくとも一部に該接着成分を有し、
該接着成分が酸化した共役ジエン系ゴムを含む、補強繊維。
[2]前記[1]に記載の補強繊維の製造方法。
[3]前記[1]に記載の補強繊維を用いた、成形体。
本発明の補強繊維は、親水性繊維及び接着成分を含有する補強繊維であって、該親水性繊維の表面の少なくとも一部に該接着成分を有し、該接着成分が酸化した共役ジエン系ゴム(以下、「酸化共役ジエン系ゴム」とも称する)を含む。本発明によれば、前記接着成分に含まれる酸化共役ジエン系ゴムが親水性繊維の表面の少なくとも一部に存在することで、補強繊維とゴムとの濡れ性が改善され、かつ該酸化共役ジエン系ゴムの有する多重結合とゴム等とが反応し結合を形成するため、優れた接着力を有する補強繊維を得ることができる。
なお、本発明において、前記接着成分は、前記親水性繊維中に含まれていてもよいが、該親水性繊維の表面の少なくとも一部には存在するものである。
本発明において用いる接着成分は、酸化共役ジエン系ゴムを含むものであれば特に制限はない。本発明によれば、酸化共役ジエン系ゴムが被着体であるゴム及び親水性繊維のそれぞれと相互作用することによって、両者を接着させる。酸化共役ジエン系ゴムは少なくとも一部に被着ゴムと似た分子構造を有するため、分子鎖が絡み合い相互作用する。また、酸化共役ジエン系ゴムと被着ゴムは加硫によって共有結合を形成することで強い凝集力が生じ、接着性が向上する。更に、酸化共役ジエン系ゴムは、後述するとおり分子内に酸化反応によって生じた酸素を含む官能基や結合を含むことで電気的に分極しており、親水性繊維と水素結合を中心とした相互作用をすることで接着性が向上すると考えられる。
前記共役ジエン単量体としては、例えば、ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(以下、「イソプレン」とも称する)、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチルー1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、及びクロロプレン等が挙げられる。これら共役ジエンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸化共役ジエン系ゴムは、加硫時の反応性の観点から、分子内にイソプレン及びブタジエンから選ばれる1種以上に由来する単量体単位を有することが好ましい。
前記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、1-ブテン、及びイソブチレン等のオレフィンなどが挙げられる。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化共役ジエン系ゴムが前記エチレン性不飽和単量体及び/又は前記芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を含有する場合、その含有量は50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましい。
酸化共役ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、取り扱い性の観点から、120,000以下が好ましく、75,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましく、そして、接着性を向上させる観点から、10,000超が好ましく、20,000以上がより好ましい。
酸化共役ジエン系ゴムのMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量である。
酸化共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)は1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.0が更に好ましく、1.0~1.5がより更に好ましく、1.0~1.3が特に好ましく、1.0~1.2が最も好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、酸化共役ジエン系ゴムの粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比を意味する。
本発明において「液状」とは、酸化共役ジエン系ゴムの38℃で測定した溶融粘度が0.1~4,000Pa・sであることを示す。該溶融粘度は1~2,000Pa・sがより好ましく、1~1,000Pa・sが更に好ましい。酸化共役ジエン系ゴムの溶融粘度は、38℃においてブルックフィールド型粘度計により測定した値である。
原料共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単量体及び任意で共役ジエン以外の他の単量体を、例えば、乳化重合法、又は溶液重合法等により重合して得ることができる。
前記乳化重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩等が挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩などが挙げられる。
分散溶媒としては通常、水が使用され、重合時の安定性が阻害されない範囲で、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
得られる原料共役ジエン系ゴムの分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウムなどが挙げられる。
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、重合化物を凝固させた後、分散溶媒を分離することによって重合化物を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、原料共役ジエン系ゴムが得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した原料共役ジエン系ゴムとして回収してもよい。
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属などが挙げられる。これらアニオン重合可能な活性金属の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
前記有機アルカリ金属化合物の使用量は、原料共役ジエン系ゴムの溶融粘度、分子量などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
前記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、原料共役ジエン系ゴムを析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより原料共役ジエン系ゴムを単離できる。
原料共役ジエン系ゴムの製造方法としては、前記方法の中でも、溶液重合法が好ましい。
原料共役ジエン系ゴムのビニル含量は99モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましい。本明細書において、「ビニル含量」とは、原料共役ジエン系ゴムに含まれる、共役ジエン単位の合計100モル%中、1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位(1,4-結合以外で結合をしている共役ジエン単位)の合計モル%を意味する。ビニル含量は、1H-NMRを用いて1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位由来に由来するシグナルと1,4-結合で結合をしている共役ジエン単位に由来するシグナルの積分値比から算出することができる。
原料共役ジエン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
製造方法(1)は、原料共役ジエン系ゴムを酸化温度以上の温度で熱処理する方法である。該熱処理は、酸素を含む雰囲気下、好ましくは空気雰囲気下で行われる。
熱処理の温度は、原料共役ジエン系ゴムが酸化する温度であれば特に制限はないが、酸化の反応速度を高め、生産性を向上させる観点から、150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、190℃以上が更に好ましい。後述のように原料共役ジエン系ゴムの酸化が親水性繊維の表面で行われる場合、繊維の劣化を防ぐという観点から、240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。
熱処理の時間は、原料共役ジエン系ゴムが劣化しない範囲であれば特に制限はないが、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましい。
また、原料共役ジエン系ゴムに熱ラジカル発生剤を添加することにより酸化反応に必要な温度を下げることもできる。
前記過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、ペルオキシオクタン酸t-ブチル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、ペルオキシイソ酪酸t-ブチル、過酸化ラウロイル、ペルオキシピバル酸t-アミル、ペルオキシピバル酸t-ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
製造方法(2)は、原料共役ジエン系ゴムの吸収波長の光を照射することで活性化させて酸素と反応させる方法である。
製造方法(2)は、酸素を含む雰囲気下、好ましくは空気雰囲気下で行われる。使用する光の波長は原料共役ジエン系ゴムが吸収してラジカル反応を起こす波長であれば特に制限はないが、原料共役ジエン系ゴムが強く吸収する紫外線が好ましい。
また、原料共役ジエン系ゴムに光ラジカル発生剤を添加することにより酸化反応に必要な光の照射量を下げることもできる。
本発明において、酸化共役ジエン系ゴムは、酸化反応によって生じた酸素を含む官能基や結合を分子内に含む。該官能基や結合としては、具体的には、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合等が挙げられる。これらの官能基や結合が多くなるにつれ、親水性繊維との相互作用が強まり、ゴムとの接着性が向上する。
具体的には、酸化共役ジエン系ゴムを重クロロホルム中に溶解させて、室温下で1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.2ppmに検出される溶媒シグナルをリファレンスとした際の、反応性の二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子に由来するシグナルの積分値A、アルデヒド基の水素原子に由来するシグナルの積分値B、及びカルボキシル基の水素原子に由来するシグナルの積分値Cをそれぞれ測定する。そして、該アルデヒド基及び該カルボキシル基の水素原子に由来するシグナルの積分値の合計(B+C)の、該共役ジエン系ゴム中の反応性の二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子に由来するシグナルの積分値Aに対する比、すなわち該アルデヒド基及び該カルボキシル基の存在比を下記式により算出することがより好ましい。
なお、反応性の二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子に由来するシグナルは、通常4.0~6.0ppmの範囲に検出され、アルデヒド基の水素原子に由来するシグナル及び/又はカルボキシル基の水素原子に由来するシグナルは、通常9.0~12.5ppmの範囲に検出される。
また、前記接着成分は、ゴムとの接着力を阻害しない範囲内で、酸化共役ジエン系ゴム以外の他の成分を含んでもよい。
前記他の成分としては、他のポリマー、酸、アルカリ、酸化防止剤、硬化剤、分散剤、顔料、染料、接着助剤、カーボンブラック、及び油剤等が挙げられる。
前記他の成分の含有量は、例えば油剤を含む場合、酸化ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは1~10,000質量部、より好ましくは30~5,000質量部、更に好ましくは50~1,000質量部である。
前記接着成分中の酸化共役ジエン系ゴムの含有量は、ゴムとの接着力を向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
本発明の補強繊維は、親水性繊維及び接着成分を含有する補強繊維であって、該親水性繊維の表面の少なくとも一部に該接着成分を有するものである。本発明に用いることができる親水性繊維としては、合成繊維、天然繊維、及び再生繊維等を挙げることができる。親水性繊維は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような熱可塑性樹脂の具体例は、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂〔ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド9C(ノナンジアミンとシクロヘキサンジカルボン酸からなるポリアミド)等の脂肪族ポリアミド;ポリアミド9T(ノナンジアミンとテレフタル酸からなるポリアミド)等の芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成される半芳香族ポリアミド;ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の芳香族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリアミド等〕、ポリアクリルアミド系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、及びポリアミド系樹脂が好ましい。親水性の合成繊維は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの親水性の合成繊維は、親水性をより高めるべく、後述する親水化処理をさらに施してもよい。
親水性の再生繊維としては、レーヨン、リヨセル、キュプラ、及びポリノジック等の再生セルロース繊維が挙げられる。
これらの天然繊維及び再生繊維は、それぞれ1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの親水性の天然繊維及び再生繊維は、親水性をより高めるべく、後述する親水化処理をさらに施してもよい。
本発明においては、親水性繊維を用いることにより接着成分に含まれる酸化共役ジエン系ゴムと親水性繊維とが強い親和効果を発現し、接着成分と該親水性繊維が強固に結びつくことから、ゴムに対する接着力をより優れたものとすることができる。
なお、ポリビニルアルコール系繊維としては、本発明の補強繊維を自動車用ホース、特に自動車用ブレーキオイルホースに好適に用いる観点から、株式会社クラレから商品名「ビニロン」として市販されており、単糸繊度が0.1~30dtex程度のものを好適に用いることができる。
本発明の補強繊維の製造方法は、親水性繊維の表面の少なくとも一部に前記接着成分を付着又は含有させる工程を含むものであれば特に制限はない。
親水性繊維に前記接着成分を付着させる際には、該接着成分の他に溶媒として、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及び酢酸エチル等を用いてもよい。溶媒を用いる場合、その使用量は、接着成分と溶媒との合計中、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは60~99.9質量%、更に好ましくは70~99.0質量%である。
方法(I)としては、親水性繊維の表面に前記接着成分からなる接着層を形成する方法であれば特に制限はないが、前記接着成分を親水性繊維の表面に付着させる工程を含む方法(I-1)、原料共役ジエン系ゴムを含む接着前駆成分(以下、単に「接着前駆成分」とも称する)を親水性繊維の表面に付着させた後、該原料共役ジエン系ゴムを酸化する方法(I-2)等が挙げられる。
前記接着成分又は前記接着前駆成分を親水性繊維に付着させる方法に特に制限はない。例えば、酸化共役ジエン系ゴム又は原料共役ジエン系ゴムを水中油滴型エマルションにして付着させる方法、酸化共役ジエン系ゴム又は原料共役ジエン系ゴムを溶媒に溶かして付着させる方法、酸化共役ジエン系ゴム又は原料共役ジエン系ゴムが液状である場合には、粘度を調整してそのまま付着させる方法等が挙げられる。
前記接着成分又は前記接着前駆成分を付着させる方法として、浸漬、ロールコーター、ノズル(スプレー)塗布、及び刷毛塗り等が挙げられ、これらの中から1種以上の方法により行うことが好ましい。
水中油滴型エマルションや溶媒に溶かして付着させる場合には、水又は溶媒を風乾等の乾燥処理により揮発させることが好ましい。
工程1-1:原料共役ジエン系ゴムを含む接着前駆成分を親水性繊維の表面に付着させる工程
工程1-2:工程1-1で得られた前記接着前駆成分が付着した親水性繊維を熱処理する工程
工程1-1では前述のいずれかの付着方法により前記接着前駆成分を、親水性繊維の表面に付着させればよい。
工程1-2の熱処理は、好ましくは150~240℃の処理温度で0.1秒~2分の処理時間で行うことが好ましい。これにより、原料共役ジエン系ゴムが酸化され、本発明の補強繊維を製造することができる。
熱処理の温度は、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、そして、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。熱処理の温度が前記範囲内であると、酸化共役ジエン系ゴム中の反応性多重結合量が減少することなく、接着力を向上させることができ、更に繊維の劣化も抑制し、着色等の品質も良好となる。
機械的方法としてはホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパーサーミキサー、コロイドミル、パイプラインミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波乳化機等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて使用できる。
化学的方法としては、反転乳化法、D相乳化法、HLB温度乳化法、ゲル乳化法及び液晶乳化法等種々の方法が挙げられ、簡便に粒子径の細かいエマルションが得られる観点から反転乳化法が好ましい。また粒子径の細かいエマルションを得るためには、酸化共役ジエン系ゴム又は原料共役ジエン系ゴムの粘度を下げる目的で適当な温度(例えば30~80℃)で加熱しながら前記作業を実施することが好ましい場合もある。エマルション調製の際はエマルションの安定性向上の観点から、固形分濃度20~80質量%で調製することが好ましく、30~70質量%がより好ましい。
本発明の補強繊維の製造方法は、前記接着成分を原料の一部として含有する繊維として製造する方法(II)であってもよい。
方法(II)としては、酸化共役ジエン系ゴムを含む接着成分と原料樹脂との混合物を紡糸して繊維を形成する方法(II-1)、原料共役ジエン系ゴムを含む接着前駆成分と原料樹脂との混合物を紡糸して繊維を形成した後、該繊維に含まれる原料共役ジエン系ゴムを酸化する方法(II-2)等が挙げられる。
前記補強繊維が前記接着成分又は前記接着前駆成分を原料の一部として含有する場合の該接着成分及び該接着前駆成分以外の原料について特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン、トリアセテート、ジアセテート、ポリアミド、及びこれらの混合物が挙げられ、中でも、該接着成分又は該接着前駆成分との混合容易性、及び補強繊維の強度の観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
工程2-1:原料共役ジエン系ゴムを含む接着前駆成分と原料樹脂との混合物を紡糸して繊維を得る工程
工程2-2:工程2-1で得られた繊維を熱処理する工程
工程2-1では前述のいずれかの方法により繊維を形成すればよい。
工程2-2の熱処理は、好ましくは150~240℃の処理温度で0.1秒~2分の処理時間で行うことが好ましい。これにより、原料共役ジエン系ゴムが酸化され、本発明の補強繊維を製造することができる。
熱処理の温度は、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、そして、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。熱処理の温度が前記範囲内であると、酸化共役ジエン系ゴム中の反応性多重結合量が減少することなく、接着力を向上させることができ、更に繊維の劣化も抑制し、着色等の品質も良好となる。
また、紡糸の際の延伸と熱処理は同時であってもよい。
前記補強繊維中の前記親水性繊維及び前記接着成分の合計含有量は、ゴムとの接着力の向上及び補強強度の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
本発明の補強繊維は、単糸繊度が0.1dtex以上30dtex以下のマルチフィラメントであることが好ましい。単糸繊度は0.1dtex未満であってもよいが工業的に製造することが難しいことから0.1dtex以上が好ましい。また、単糸繊度が30dtex以下であると、補強繊維とした場合における繊維の表面積が大きくなるため、ゴムとの接着性が向上する。当該観点から、前記補強繊維は、単糸繊度がより好ましくは0.3dtex以上、更に好ましくは0.5dtex以上、より更に好ましくは1dtex以上であり、そして、より好ましくは20dtex以下、更に好ましくは15dtex以下、より更に好ましくは10dtex以下であるマルチフィラメントであることが好ましい。
本発明の成形体は、前記補強繊維を用いたものであれば特に限定されない。中でも、前記補強繊維がゴムとの優れた接着性を有することから、特に前記補強繊維とゴム成分とを用いた成形体(以下、「ゴム成形体」とも称する)が好ましい。前記ゴム成形体に用いられる補強繊維は、ゴムの形態保持という観点からは、該補強繊維を少なくとも一部に含む織物又は編物として用いられることが好ましく、該補強繊維を少なくとも一部に含む織物又は編物からなる補強層とゴム層とを積層した積層体として用いられることがより好ましい。
前記ゴム成形体は、例えば自動車用タイヤ等のタイヤ、コンベアベルト、タイミングベルト等のベルト、ホース、及び防振ゴム等のゴム製品の部材として使用することができ、中でも、タイヤ、ベルト、又はホースとして用いることがより好ましい。
前記自動車用タイヤとしては、例えばベルト、カーカス プライ、ブレーカー、ビードテープ等の補強繊維とゴム成分との複合材からなる各種部材に使用できる。
前記ホースとしては、種々の用途における各種流体の輸送を目的に使用することができ、例えば、自動車用の流体輸送用ホースに好適であり、特に、自動車用の液体燃料用ホース、自動車用のブレーキオイルホース、及び冷媒用ホースに用いることが好ましく、自動車用のブレーキオイルホースに用いることがより好ましい。
ゴム成分としては、特に限定はされないが、例えば、NR(天然ゴム)、IR(ポリイソプレンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPM(エチレン-プロピレン共重合体ゴム)EPDM(エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム)、IIR(ブチルゴム)、ハロゲン化ブチルゴム、CR(クロロプレンゴム)等が挙げられる。これらの中でも、NR、IR、BR、SBR、EPDM、CRを用いることが好ましく、EPDMを用いることがより好ましい。また、これらのゴム成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。タイヤ用途においては、タイヤ工業において一般的に用いられるものが使用できる。中でも、天然ゴム単独、あるいは天然ゴムとSBRを組み合わせて使用することが好ましい。天然ゴムとSBRを組み合わせる際は、ゴムの加硫戻りによる物性低下を抑制する観点から、天然ゴムとSBRとの質量比(天然ゴム/SBR)を50/50~90/10の範囲とすることが好ましい。
前記SBRの重量平均分子量(Mw)は100,000~2,500,000であることが好ましく、150,000~2,000,000であることがより好ましく、200,000~1,500,000であることが更に好ましい。前記の範囲である場合、加工性と機械強度を両立することができる。なお、SBRの重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
前記SBRとしては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、SBRに官能基が導入された変性SBRを用いてもよい。官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
機械強度の向上等の物性の改善などの観点からは、前記フィラーの中でも、カーボンブラック及びシリカが好ましい。
前記カーボンブラックの平均粒径は、5~100nmが好ましく、5~80nmがより好ましく、5~70nmが更に好ましい。なお、前記カーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定してその平均値を算出することにより求めることができる。
前記シリカの平均粒径は、0.5~200nmが好ましく、5~150nmがより好ましく、10~100nmが更に好ましい。
なお、前記シリカの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定して、その平均値を算出することにより求めることができる。
前記ゴム組成物において、前記ゴム成分100質量部に対する前記フィラーの含有量は20~150質量部が好ましく、25~130質量部がより好ましく、25~110質量部が更に好ましい。
また、前記フィラーとして、シリカ及びカーボンブラック以外のフィラーを用いる場合には、その含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、20~120質量部が好ましく、20~90質量部がより好ましく、20~80質量部が更に好ましい。
これらフィラーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
内側ゴム層と外側ゴム層を構成するゴム成分としては、前述のものが挙げられる。中でも、内側ゴム層を構成するゴム成分としては、EPDM、SBR等が挙げられ、外側ゴム層を構成するゴム成分としては、EPDM、CR等が挙げられる。前記補強層は、補強繊維を編組して形成することができる。
前記ブレーキオイルホースの製造方法としては、内側ゴム層の外表面上に、前記補強繊維を編組した補強層(第1補強層)を形成する。2層の補強層を形成する場合には、第1補強層の外表面上に更に中間ゴム層を形成し、該中間ゴム層の外表面上に、前記補強繊維を編組した補強層(第2補強層)を形成してもよい。そして、補強層(第1補強層又は第2補強層)の外表面上に外側ゴム層を形成し、加硫することにより製造することができる。
加硫温度は、ブレーキオイルホースの各層の構成材料の種類等により適宜選択できるが、ゴムと補強繊維の劣化を抑制し、ゴムと補強繊維との接着力を向上させる観点から、200℃以下であることが好ましい。
・下記式(1a)で表される単量体単位を有する液状ポリイソプレン(LIR)の製造
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、ヘキサン1200g及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)26.2gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、イソプレン1200gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、液状ポリイソプレン(LIR)(Mw:32,000、Mn:28,000、Mw/Mn:1.1、溶融粘度:74Pa・s)を得た。
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、ヘキサン1260g及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)36.3gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1260gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、液状ポリブタジエン(LBR)(Mw:27,000、Mn:26,000、Mw/Mn:1.0、溶融粘度:40Pa・s)を得た。
(重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布の測定方法)
原料共役ジエン系ゴムのMw、Mn及びMw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
原料共役ジエン系ゴムの38℃における溶融粘度は、ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS. INC.製)により測定した。
調製例1:液状ポリイソプレン(LIR)のエマルションの調製
製造例1で得られた液状ポリイソプレン(LIR)250gに乳化剤(ポリオキシエチレンアルキル(C=12~15)エーテルフォスフェート)(商品名「フォスファノールRS-710」、東邦化学工業株式会社製)15gを加えて20分間撹拌した。続いて撹拌しながら水177gを少しずつ添加した。所定量の水を添加後、20分撹拌することで、液状ポリイソプレン(LIR)のエマルションを得た。
製造例2で得られた液状ポリブタジエン(LBR)250gに乳化剤(ポリオキシエチレンアルキル(C=12~15)エーテルフォスフェート)(商品名「フォスファノールRS-710」、東邦化学工業株式会社製)15gを加えて20分間撹拌した。続いて撹拌しながら水177gを少しずつ添加した。所定量の水を添加後、20分撹拌することで、液状ポリブタジエン(LBR)のエマルションを得た。
補強繊維約10gを試料として採取し、その質量Xを測定した。試料から接着成分を抽出し、抽出質量Yを測定した。抽出には溶媒にトルエンを用い、ソックスレー抽出器で3時間抽出を行った。接着成分付着量を下記式により算出した。
補強繊維に対する接着成分の付着量(質量%)=(Y/X)×100
実施例1及び2として、繊維表面の少なくとも一部に接着成分からなる接着層を有する補強繊維を製造し、以下のとおり評価した。
実施例1では、製造例1で得られた液状ポリイソプレン(LIR)を200mlのガラスビーカーに4.0g測り取り、200℃の空気の熱風中で15分間熱処理することで酸化させて、酸化した液状ポリイソプレン(1)(酸化LIR(1))を得た。
実施例2では、同様に製造例1で得られた液状ポリイソプレン(LIR)を200℃の空気の熱風中で10分間熱処理することで、酸化した液状ポリイソプレン(2)(酸化LIR(2))を得た。
次いで、それぞれの酸化LIRを固形分濃度が4質量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、この溶液中に親水性繊維としてポリビニルアルコール系繊維であるビニロン繊維(株式会社クラレ製「クラロン1239」、総繊度1330dtex、単糸繊度6.65dtex)を浸漬した後、引き上げてドラフト内で風乾させた。このようにして接着成分を付着させたビニロンを撚り数80T/mで撚って繊維コードを作製した。なお、接着成分の付着量は前述した測定方法により測定した。結果を表1に示す。
<1H-NMR測定条件>
装置名:超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製「Lambda500」)
観測周波数 :500MHz
溶媒 :重クロロホルム
ポリマー濃度 :4質量%
測定温度 :25℃
積算回数 :600回
パルス遅延時間:3.836秒
サンプル回転速度:10Hz~12Hz
パルス幅(90°パルス):6.75μsec
得られた1H-NMRスペクトルにおいて、反応性の二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子に由来するシグナル(通常、4.0~6.0ppmで観察される)の積分値A、アルデヒド基の水素原子に由来するシグナル(通常、9.0~10.5ppmで観察される)の積分値B、及びカルボキシル基の水素原子に由来するシグナル(通常、10.0~12.5ppmで観察される)の積分値Cをそれぞれ測定して、下記式より比を求めた。
[アルデヒド基及びカルボキシル基の存在比]=[(B+C)/A]
接着成分を付着させずに、ビニロン繊維(株式会社クラレ製「クラロン1239」、総繊度1330dtex、単糸繊度6.65dtex)を用いて、撚り数80T/mで撚って繊維コードを作製した。
実施例1において、ビニロン繊維の代わりに疎水性のポリエステル系繊維であるPET繊維(東レ株式会社製「702C」、総繊度1670dtex、単糸繊度5.80dtex)、を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で繊維コードを作製した。
実施例1において、接着成分として酸化のための熱処理を行っていない液状ポリイソプレン(LIR)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で繊維コードを作製した。
前述の実施例及び比較例で作製した繊維コードを、繊維コード同士が重ならないようにスダレ状にマスキングテープ上に並べて固定した後、これと、別途EPDMゴム(住友化学株式会社製「エスプレン501A」)を用い、下記配合組成により調製したEPDMゴムを主成分とする未加硫のゴム組成物(以下、「EPDM未加硫ゴム」とも称する)(幅25.4mm、長さ240mm)とを重ね合わせた(繊維コードとEPDM未加硫ゴムとの重ね合わせた部分の長さは190mmであった)。次いで、150℃、圧力20kg/cm2の条件で30分間プレス加硫することにより評価用シートを作製した。
EPDMゴム :100質量部
フィラー(カーボンブラック) : 60質量部
軟化剤(パラフィン系プロセスオイル) : 20質量部
架橋剤(硫黄粉) :1.5質量部
加硫助剤(亜鉛華2種、ステアリン酸) : 6質量部
加硫促進剤(チアゾール系、チウラム系) :1.5質量部
得られた評価用シートについて、繊維コードをゴムからT型剥離させるときに要した力(N/25.4mm)を測定し、ゴム接着力として評価した。結果を表1に示す。ゴム接着力の評価結果は、数値が大きいほど補強繊維とゴムとの接着力が大きいことを示す。
得られた評価用シートの初期引張抵抗度を、測定機(インストロン3365)を使用してJIS L 1013:2010に従って測定した。剥離速度50mm/minで200mm動かして剥離試験を行い、繊維コードとゴムとを剥離した。
チャートに現れる最初のピークから10mmと最後のピークから10mmを除いた範囲で現れる多数のピークから最高点5点と最低点5点を取り出して平均した値を繊維とゴムの初期引張抵抗度とした。なお、ピーク同士が2mm以上離れているもののみから値を採取した。結果を表1に示す。 初期引張抵抗度の評価結果は、数値が大きいほど補強繊維とゴムとを接着した際の補強強度が高いことを示す。
実施例3として、繊維表面の少なくとも一部に接着成分からなる接着層を有する補強繊維を製造し、以下のとおり評価した。
調製例1で得られた液状ポリイソプレン(LIR)のエマルションからなる接着前駆成分を、固形分濃度が4質量%となるように、それぞれ水に分散させた。この分散液に対してポリビニルアルコール系繊維であるビニロン繊維(株式会社クラレ製「クラロン1239」、総繊度1330dtex、単糸繊度6.65dtex)を浸漬した後、ローラーで搾液した。次いで、得られた繊維を120℃で30秒間乾燥処理し、更に200℃で30秒間熱処理することで接着層を酸化させた。このようにして接着成分を付着させたビニロンを撚り数80T/mで撚って繊維コードを作製した。なお、実施例3における接着成分の付着量は前述した測定方法により測定した。
実施例3において、液状ポリイソプレン(LIR)のエマルションの代わりに、調製例2で得られた液状ポリブタジエン(LBR)のエマルションを用いたこと以外は実施例3と同様の方法で繊維コードを作製した。
実施例3において、120℃で30秒間乾燥処理した後、200℃での熱処理を行わなかったこと以外は実施例3と同様の方法で繊維コードを作製した。
参考例1は、ビニロン繊維(株式会社クラレ製「クラロン1239」、総繊度1330dtex、単糸繊度6.65dtex)に、付着量が3.0質量%となるように公知のRFL処理を施した。このようにして接着成分を付着させたビニロンを撚り数80T/mで撚って繊維コードを作製した。なお、使用したRFLは下記の方法にて調製した。
A液 水 :300質量部
レゾルシン : 22質量部
ホルムアルデヒド(有効分37質量%) : 33質量部
水酸化ナトリウム水溶液(有効分10質量%) : 7質量部
上記A液を25℃の温度で6時間熟成した。
ビニルピリジン変性SBRラテックス(有効分40質量%):244質量部
上記B液を熟成済みのA液と混合した後、25℃の温度で16時間熟成してRFL液を製造した。なお、繊維への付着量を調整するために上記操作後に水で2倍に希釈した。
実施例3、4、比較例4及び参考例1で得られた繊維コードについて、前記と同様の方法でゴム接着力及び初期引張抵抗度を評価した。結果を表2に示す。
実施例3において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、再生セルロース系繊維であるレーヨン繊維(Cordenka製「Cordenka700」、総繊度1840dtex、単糸繊度1.84dtex)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法で繊維コードを作製した。
実施例3において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、後述の親水化処理を行ったポリエステル系繊維であるPET繊維(東レ株式会社製「702C」、総繊度1670dtex、単糸繊度5.80dtex)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法で繊維コードを作製した。
比較例4において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、再生セルロース系繊維であるレーヨン繊維(Cordenka製「Cordenka700」、総繊度1840dtex、単糸繊度1.84dtex)を用いたこと以外は比較例4と同様の方法で繊維コードを作製した。
比較例4において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、後述の親水化処理を行ったポリエステル系繊維であるPET繊維(東レ株式会社製「702C」、総繊度1670dtex、単糸繊度5.80dtex)を用いたこと以外は比較例4と同様の方法で繊維コードを作製した。
参考例1において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、再生セルロース系繊維であるレーヨン繊維(Cordenka製「Cordenka700」、総繊度1840dtex、単糸繊度1.84dtex)を用いたこと以外は参考例1と同様の方法で繊維コードを作製した。
参考例1において、親水性繊維としてビニロン繊維の代わりに、後述の親水化処理を行ったポリエステル系繊維であるPET繊維(東レ株式会社製「702C」、総繊度1670dtex、単糸繊度5.80dtex)、を用いたこと以外は参考例1と同様の方法で繊維コードを作製した。
下記の組成に調製した親水化処理剤中にポリエステル系繊維であるPET繊維(東レ株式会社製「702C」、総繊度1670dtex、単糸繊度5.80dtex)を浸漬した後、ローラーで搾液した。次いで、得られた繊維を130℃で60秒間乾燥処理し、更に240℃で60秒間熱処理して巻き取ることで、親水化処理を行ったPET繊維を作製した。
水 :96.96質量部
メイカノートDM-3031 CONC: 22質量部
デナコールEX-614B : 7質量部
親水化処理剤にはブロックドイソシアネートとエポキシ樹脂を用いて調製した。なお、ブロックドイソシアネートとして、明成化学工業株式会社製の「メイカノートDM-3031 CONC」を、エポキシ樹脂として、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX-614B」を用いた。
実施例5、6、比較例5、6及び参考例2、3で得られた繊維コードについて、前記と同様の方法でゴム接着力及び初期引張抵抗度を評価した。結果を表3に示す。
実施例7として、繊維が接着成分を原料の一部として含有する補強繊維を以下のとおり製造し、評価した。
ポリビニルアルコール単独重合体(以下、「PVA」とも称する)(粘度平均重合度:1,700、鹸化度:99モル%以上)2.4kgを水に浴解した後、調製例1で得られた液状ポリイソプレン(LIR)のエマルション472gを加えて、PVAとLIRとの純分質量比が90:10の水溶液を作製した。更に前記水溶液100質量部に対してホウ酸を2質量部の割合で添加して原液を調製した。
次いで、水酸化ナトリウム20g/L、及び硫酸ナトリウム320g/Lの割合で水に浴解した70℃の凝固浴(一浴)中へ該原液を湿式紡糸し、ローラー延伸、中和、湿熱延伸、水洗、乾燥した。
次いで、240℃で乾熱延伸を行ってボビンに巻取ることによりPVA系繊維(総繊度2000dtex、単糸繊度2.00dtex)を得た。得られた繊維を80T/mで撚糸して繊維コードを作製した。
実施例7において、PVAのみを用いて固形分濃度12重量%になるよう原液を調製したこと以外は実施例7と同様にしてPVA系繊維からなる繊維コードを得た。
実施例7及び比較例7で得られた繊維コードについて、前記と同様の方法でゴム接着力を評価した。結果を表4に示す。
Claims (8)
- 親水性繊維及び接着成分を含有する補強繊維であって、
該親水性繊維の表面の少なくとも一部に該接着成分を有し、
該接着成分が共役ジエン系ゴムを含み、
前記親水性繊維が、ポリビニルアルコール系繊維、再生セルロース系繊維、及び疎水性繊維の表面を親水化処理した繊維から選ばれる1種以上であり、
前記疎水性繊維がポリエステル系繊維であり、
該共役ジエン系ゴムが、アルデヒド基及び/又はカルボキシル基を分子内に含み、該共役ジエン系ゴムを重クロロホルム中に溶解させて、室温下で1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒シグナル(7.2ppm)をリファレンスとしたときにおける、該アルデヒド基及び該カルボキシル基の水素原子に由来する9.0~12.5ppmの範囲内にあるシグナルの積分値の合計が、該共役ジエン系ゴム中の反応性の二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子に由来するシグナルの積分値に対して、15,000分の1以上、1000分の1以下であり、かつ、分子内にイソプレン及びブタジエンから選ばれる1種以上に由来する単量体単位を有する、
補強繊維。 - 前記補強繊維が、単糸繊度が0.1dtex以上30dtex以下のマルチフィラメントである、請求項1に記載の補強繊維。
- 前記共役ジエン系ゴムが、液状である、請求項1又は2に記載の補強繊維。
- 前記接着成分の付着量が、前記補強繊維に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の補強繊維。
- 請求項1~4のいずれかに記載の補強繊維を少なくとも一部に含む、織物又は編物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の補強繊維を用いた、成形体。
- 更にゴム成分を用いた、請求項6に記載の成形体。
- 前記成形体がタイヤ、ベルト又はホースである、請求項7に記載の成形体。
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