JP7322837B2 - シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、シリコーン変性ポリイミド樹脂は、シロキサン結合を含むため耐酸性やフッ化物イオンに対する耐性が低く、それをコーティング剤として使用した場合、そのコーティング層が酸性水溶液やフッ化物イオンを含む水溶液によって破壊されてしまうという問題がある。
1. (A)下記式(1)で表されるシリコーン変性ポリイミド樹脂:100質量部、
Ee-Ff-Gg (1)
(式(1)中、E、FおよびGは、ランダムに結合する繰り返し単位であり、Eは、式(2)で示されるジアミノ変性シリコーン由来の2価の基であり、Fは、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物由来の2価の基であり、Gは、ジアミン由来の2価の基である。ただし、f+e+g=100mol%であり、f/(e+g)のmol比は、0.9~1.1であり、前記eとgの和を100とすると前記eは30~90である。)
-Im-X-Im- (3)
(式(3)中、Imは、環状イミド構造を端に含む環状の基を表し、Xは、単結合、-O-、-S-、-S(→O)-、-S(=O)2-、-C(=O)-、-NRN-(RNは、炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-CRB 2-(RBは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-RAr h-(RArは、炭素原子数6~12の2価のアリーレン基を表し、hは、1~6の整数を表す。hが2以上のとき、RArは互いに同一でも異なっていてもよい。)、-RAr h-(ORAr)i-(RArおよびhは、前記と同じ意味を表し、iは、1~5の整数を表す。)、炭素原子数1~12の直鎖状または分岐状アルキレン基、炭素原子数5~12のシクロアルキレン基、および炭素原子数7~12のアリーレンアルキレン基から選択される2価の基を表す。)
(B)硬化剤:0.1~10質量部、
(C)溶剤:100~700質量部、
(D)酸化防止剤:0.01~1質量部、および
(E)下記一般式(4)で表されるベンゾトリアゾール誘導体:0.001~0.1質量部
を含むことを特徴とするシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
2. 前記Imが、下記の基から選ばれる少なくとも1種である1のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
3. 前記Gで表されるジアミン由来の2価の基において、ジアミンが、テトラメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および4,4'-(4,4'-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリンから選ばれる1または2のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
4. 前記式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、30,000~100,000である1~3のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
5. 前記(B)硬化剤が、熱分解性ラジカル開始剤である1~4のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
6. 1~5のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物の硬化物、
7. (α)25℃における貯蔵弾性率が0.1~100MPa
(β)ガラス転移点(Tg)が0℃未満、かつ、
(γ)1mm厚のシートにおける40℃での水蒸気透過度が100g/m2・day以下である6の硬化物、
8. 1~5のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなる接着剤、
9. 1~5のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなるコーティング剤
を提供する。
したがって、本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、電子材料、光学材料および車載機器等の接着剤やコーティング剤として好適に利用でき、特に、高信頼性が必要な半導体デバイスを使用するための接着剤やコーティング剤として好適に使用できる。
本発明に係るシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、(A)シリコーン変性ポリイミド樹脂、(B)硬化剤、(C)溶剤、(D)酸化防止剤および(E)ベンゾトリアゾール誘導体を含むものである。
(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂は、本組成物の主剤(ベースポリマー)であって、本発明では下記式(1)で表されるものを用いる。
Ee-Ff-Gg (1)
式(3)中、Imは、環状イミド構造を端に含む環状の基を表し、Xは、単結合、-O-、-S-、-S(→O)-、-S(=O)2-、-C(=O)-、-NRN-(RNは、炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-CRB 2-(RBは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-RAr h-(RArは、炭素原子数6~12の2価のアリーレン基を表し、hは、1~6の整数を表す。hが2以上のとき、RArは互いに同一でも異なっていてもよい。)、-RAr h-(ORAr)i-(RArおよびhは、上記と同じ意味を表し、iは、1~5の整数を表す。)、炭素原子数1~12の直鎖状または分岐状アルキレン基、炭素原子数5~12のシクロアルキレン基、および炭素原子数7~12のアリーレンアルキレン基から選択される2価の基を表す。
具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,3-ブチレン、テトラメチレン、1,3-ペンチレン、1,4-ペンチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、2-(3-プロポ-1-オキシ)エタ-1-イレン、3-(3-プロポ-1-オキシ)プロパ-1-イレン、4-(3-プロポ-1-オキシ)ブタ-1-イレン、5-(3-プロポ-1-オキシ)ペンタ-1-イレン、6-(3-プロポ-1-オキシ)ヘキサ-1-イレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘプチレン、1,4-シクロヘプチレン、N,N-ピペリジニレン、1,4-ジオキサシクロヘキサ-2,5-イレン基等が好ましく、入手の容易性からトリメチレン基がより好ましい。
なお、上記アルキル基は、それらの水素原子の一部または全部がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
特に、R3、R4のいずれか一方または双方が炭素原子数2~6のアルケニル基であることが好ましく、したがって、R3,R4の組み合わせとしては、メチル基とビニル基、エチル基とビニル基、プロピル基とビニル基、ビニル基とビニル基が好適である。
また、炭素原子数6~10のアリール基は、その水素原子の一部または全部が上述した炭素原子数1~10のアルキル基等で置換されていてもよく、芳香環中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
その具体例としては、フェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、インデニル基等が挙げられる。
さらに、炭素原子数7~16のアラルキル基も、その水素原子の一部または全部が上述した炭素原子数1~10のアルキル基等で置換されていてもよく、芳香環中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
その具体例としては、フェニルメチル、2-フェニル-1-エチル、3-フェニル-1-プロピル、フェニルブチル、3-フェニル-1-ペンチル、4-フェニル-1-ペンチル、5-フェニル-1-ペンチル、6-フェニル-1-ヘキシル、7-フェニル-1-ヘプチル、8-フェニル-1-オクチレン、9-フェニル-1-ノニル、10-フェニル-1-デシル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル基等が挙げられる。
これらの中でも、R3およびR4としては、メチル基、フェニル基、2-フェニル-1-エチル基、2-フェニル-2-メチル-1-エチル基、3-フェニル-2-プロピル基が好ましい。
特に、R3、R4の組み合わせとしては、メチル基とフェニル基、メチル基と2-フェニル-1-エチル基、メチル基と2-フェニル-2-メチル-1-エチル基、フェニル基とフェニル基が好適である。
特に、RBとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基が好適である。
また、hは1~6の整数である。
好適なRArとしては、下記で示される基が挙げられる。
-RAr h(ORAr)i-の具体例としては、下記のような基が挙げられる。下記式において、-O-はどの位置に結合されていてもよく、結合数も1~4個の範囲内である。
炭素原子数7~12のアリーレンアルキレン基の具体例としては、2-(4-(2-エタ-1-イレン)-1-フェニレン)エタ-1-イレン基等が挙げられる。
そのような2価の基を与えるジアミンの具体例としては、テトラメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-(4,4'-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリン等の芳香族ジアミンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、f+e+gのmolの和が100mol%で、f/(e+g)のmol比が0.9~1.1であるが、適度な分子量を維持するために、f/(e+g)のmol比は0.95~1.05が好ましく、0.98~1.02がより好ましい。
さらに、eとgの和を100とするとeは30~90であるが、防湿性を考慮すると30~70が好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すこともある)によるポリスチレン換算値である(以下、同じ)。
例えば、まず、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンおよび上記式(2)で表される化合物の両末端にそれぞれアミノ基が結合したジアミノ変性シリコーンを溶剤中に仕込み、低温、即ち20~50℃程度で反応させて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を製造する。次に、得られたポリアミック酸の溶液を、好ましくは80~200℃、より好ましくは140~180℃の温度に昇温し、ポリアミック酸の酸アミドを脱水閉環反応させることにより、シリコーン変性ポリイミド樹脂の溶液を得、この溶液を水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の溶剤に投入して沈殿させ、沈殿物を乾燥することにより、シリコーン変性ポリイミド樹脂を得ることができる。
また、アルデヒド化合物として、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチロアルデヒド等の炭素原子数2~6のアルキルを含むアルデヒド化合物を添加することもできる。
この場合の添加量は、原料の酸無水物に対し、目的の分子量に合わせ、1~10モル%の範囲で使用することが好ましい。
上記脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ピバル酸、無水トリフルオロ酢酸、無水安息香酸等の酸無水物が挙げられる。脱水剤の使用量は、ジアミン1モルに対して1~10モルとするのが好ましい。
イミド化触媒の具体例としては、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-へプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルイミダゾール(NMI)、ピリジン、2,6-ルチジン、1,3,5-コリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ピラジン、キノリン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ-[2,2,2]オクタン(DABCO)等の第3級アミンが挙げられる。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5~10モルとするのが好ましい。
本イミド化手法は工程中で反応液が高温にさらされることが無く、得られる樹脂が着色しにくいという点で有効である。
(B)成分である硬化剤としては、熱でラジカルを発生して樹脂を重合させて硬化物を形成することができる熱分解性ラジカル開始剤が好ましい。
熱分解性ラジカル開始剤としては、アゾ化合物や有機過酸化物を用いることができる。
なお、上述した硬化剤は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(C)成分である溶剤は、組成物の粘度を下げ、基板などへの塗布性や、作業性を改善するために用いられる。
溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス-2-(2-メトキシエトキシ)エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、γ-バレロラクトン、(株)ダイセル製のセルトールシリーズの3-メトキシブチルアセテート(MBA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BMGAC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)、シクロヘキサノールアセテート(CHXA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(DPMNP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、1,4-ブタンジオールジアセテート(1,4-BDDA)、1,3-ブチレングリコールアセテート(1,3-BGDA)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(1,6-HDDA)等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤などの有機溶剤が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(C)溶剤は、(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂の溶解性を損なわない範囲で用いることができ、通常、(A)成分に対し、100~700質量部で用いることができる。
(D)成分である酸化防止剤は、得られる硬化物の耐熱性を改善させる目的で添加される成分であり、フェノール化合物系酸化防止剤、有機硫黄化合物系酸化防止剤、アミン化合物系酸化防止剤、リン化合物系酸化防止剤等の従来公知の酸化防止剤から適宜選択して用いることができる。
フェノール化合物系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4'-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、2,2'-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート、2,5,7,8-テトラメチル-2(4',8',12'-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
なお、フェノール化合物系酸化防止剤では、フェノール水酸基に加え、以下の例示と重複するが、リン原子、硫黄原子、アミンのいずれかを少なくとも一つ以上同一分子中に含む化合物も列挙した。
アミン化合物系酸化防止剤の具体例としては、N,N'-ジアリル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
リン化合物系酸化防止剤の具体例としては、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート等が挙げられる。
以上で示した各酸化防止剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)成分のベンゾトリアゾール誘導体は、各種金属との接着性をさらに強固にする成分であり、下記一般式(4)で示される化合物である。
ただし、塗布装置等により使用可能な粘度は異なるため、上記の粘度に限定されるものではない。
このような硬化物を与える本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、接着剤やコーティング剤として好適に利用できる。
この接着剤やコーティング剤は、電子材料、光学材料および車載機器等に使用でき、特に、高信頼性が必要な半導体デバイスを使用する分野に好適に使用できる。
また、本実施例において、分子量測定は、東ソー(株)製GPC装置HLC-8320GPCを用い、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算で行った。赤外線吸収スペクトル(IR)測定には、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製NICOLET6700を使用した。貯蔵弾性率測定には、(株)日立ハイテクサイエンス製DMS7100を使用した。ガラス転移点測定には、(株)日立ハイテクサイエンス製DMS7100を使用し、tanδが最大になったときの温度をガラス転移点とした。粘度は、回転粘度計により測定した25℃における値である。
なお、下記例で「部」は質量部を示す。
[合成例1]
撹拌羽、温度計、および窒素導入管を備えた反応容器に、2,2-ビス(3,4-アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol)、4,4'-(4,4'-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリン〔2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン〕12.3g(0.03mol)、無水フタル酸1.48g(0.01mol)、およびシクロヘキサノン559gを入れ、25℃で2時間撹拌後、下記式(i)で表されるオルガノポリシロキサン221.2g(0.07mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌を行った。次に、反応容器に、トルエン56gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。得られた反応溶液をメタノールに滴下して再沈殿を行い、シロキサン量が79質量%のシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。
この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm-1および1,720cm-1にイミド基の吸収が確認された。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は27,000であった。
撹拌羽、温度計、および窒素導入管を取り付けた反応容器に、2,2-ビス(3,4-アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol)、4,4'-(4,4'-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリン<2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン>12.3g(0.03mol)、無水フタル酸1.48g(0.01mol)、およびシクロヘキサノン336gを入れ、25℃で2時間撹拌後、下記式(ii)で表されるオルガノポリシロキサン112.0g(0.07mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌を行った。次に、反応容器に、トルエン37gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。得られた反応溶液をメタノールに滴下して再沈殿を行い、シロキサン量が66質量%のシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm-1および1,720cm-1にイミド基の吸収が確認された。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は54,000であった。
撹拌羽、温度計、および窒素導入管を取り付けた反応容器に、2,2-ビス(3,4-アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol)、4,4'-(4,4'-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリン<2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン>12.3g(0.03mol)、無水フタル酸1.48g(0.01mol)、およびシクロヘキサノン336gを入れ、25℃で2時間撹拌後、下記式(iii)で表されるオルガノポリシロキサン112.0g(0.07mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌を行った。次に、反応容器に、トルエン37gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。得られた反応溶液をメタノールに滴下して再沈殿を行い、シロキサン量が66質量%のシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。
この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm-1および1,720cm-1にイミド基の吸収が確認された。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は54,000であった。
表1に示す組成で下記の各成分を混合し、シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物を得た。
(A1):合成例1で得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂
(A2):合成例2で得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂
(A3):合成例3で得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂
(B):カヤレン6-70(化薬アクゾ(株)製)
(C):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(D1):アデカスタブLA-77Y((株)ADEKA製)
(D2):イルガノックス3114(BASFジャパン(株)製)
(1)密着性
各実施例および比較例のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物を無酸素銅板(スタンドテストピース社製)上に厚さ80μmとなるように塗布し、50℃,30分、100℃,60分、150℃,120分の順で熱硬化させて硬化皮膜を得た。
この皮膜の密着性を碁盤目剥離試験(JIS K5400)の方法で評価し、100マス中に残存したマス目の数Xを示した。
(2)貯蔵弾性率
各実施例および比較例のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物をフッ素系コーティングが施された鉄板上に塗布し、50℃,30分、100℃,60分、150℃,120分の順で熱硬化させて厚さ0.3mmのシートを作製した。このシートについて、貯蔵弾性率を測定した。
(3)ダイシェア強度測定
シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物をそれぞれ無酸素銅板(スタンドテストピース社製)上に3μLを塗布し、そこに1mm角のケイ素チップを置いた。それを、50℃,30分、100℃,60分、および150℃,120分の順で熱硬化させ、25℃まで冷却したものを測定用試験片とした。
得られた試験片について、万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用いてケイ素チップを水平方向に押し、チップが剥がれた時のせん断強度を測定した。なお、測定は各7回行い、最大値および最小値を除いた5点の平均値を記載した。
(4)水蒸気透過度
シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物をそれぞれフッ素系コーティングが施された鉄板上に塗布し、50℃,30分、100℃,60分、150℃,120分の順で熱硬化させて厚さ1mmのシートを作製した。このシートについて、L80-5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を使用し、40℃(JIS K7129A)の条件にて水蒸気透過度を測定した。
(5)耐酸性
JASO M611-92(自動車技術会)を参考に、以下の手順で行った。
1.シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物をそれぞれバーコーターNo.44を使用して無酸素銅板(スタンドテストピース社製)上に塗布し、50℃,30分、100℃,60分、および150℃,120分の順で熱硬化させてコート基材を作製した。
2.作製したコート基材をガラス瓶内に立て掛け、コート基材が酸性水溶液(硫酸:400ppm、フッ化アンモニウム:200ppmおよび酢酸:20,000ppm含有)に全浸漬されるように充填し、80℃,24時間の条件で耐久試験を行った。
3.コート基材を取り出し、イオン交換水で洗浄を行った後、基材表面の外観を確認した。
4.上記2、3の工程を繰り返し、基材表面のコーティングを保つことができた日数を評価した。
Claims (9)
- (A)下記式(1)で表されるシリコーン変性ポリイミド樹脂:100質量部、
Ee-Ff-Gg (1)
(式(1)中、E、FおよびGは、ランダムに結合する繰り返し単位であり、Eは、式(2)で示されるジアミノ変性シリコーン由来の2価の基であり、Fは、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物由来の2価の基であり、Gは、ジアミン由来の2価の基である。ただし、f+e+g=100mol%であり、f/(e+g)のmol比は、0.9~1.1であり、前記eとgの和を100とすると前記eは30~90である。)
-Im-X-Im- (3)
(式(3)中、Imは、環状イミド構造を端に含む環状の基を表し、Xは、単結合、-O-、-S-、-S(→O)-、-S(=O)2-、-C(=O)-、-NRN-(RNは、炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-CRB 2-(RBは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~12の1価炭化水素基を表す。)、-RAr h-(RArは、炭素原子数6~12の2価のアリーレン基を表し、hは、1~6の整数を表す。hが2以上のとき、RArは互いに同一でも異なっていてもよい。)、-RAr h-(ORAr)i-(RArおよびhは、前記と同じ意味を表し、iは、1~5の整数を表す。)、炭素原子数1~12の直鎖状または分岐状アルキレン基、炭素原子数5~12のシクロアルキレン基、および炭素原子数7~12のアリーレンアルキレン基から選択される2価の基を表す。)
(B)硬化剤:0.1~10質量部、
(C)溶剤:100~700質量部、
(D)酸化防止剤:0.01~1質量部、および
(E)下記一般式(4)で表されるベンゾトリアゾール誘導体:0.001~0.1質量部
を含むことを特徴とするシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。 - 前記Gで表されるジアミン由来の2価の基において、ジアミンが、テトラメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および4,4'-(4,4’-イソプロピルジエンジフェニル-1,1'-ジイルジオキシ)ジアニリンから選ばれる請求項1または2記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。
- 前記式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、30,000~100,000である請求項1~3のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。
- 前記(B)硬化剤が、熱分解性ラジカル開始剤である請求項1~4のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物の硬化物。
- (α)25℃における貯蔵弾性率が0.1~100MPa
(β)ガラス転移点(Tg)が0℃未満、かつ、
(γ)1mm厚のシートにおける40℃での水蒸気透過度が100g/m2・day以下である請求項6記載の硬化物。 - 請求項1~5のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなる接着剤。
- 請求項1~5のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなるコーティング剤。
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