JP7320845B2 - 標的物質検出方法及び標的物質検出キット - Google Patents

標的物質検出方法及び標的物質検出キット Download PDF

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Description

本発明は、液体試料中に存在する標的物質を磁場を利用して移動させたときの光信号の変化を利用して前記標的物質を検出する標的物質検出方法及び前記標的物質検出方法の実施に好適に用いられる標的物質検出キットに関する。
近年、溶液中に存在する微小物質、特にDNA、RNA、タンパク質、ウイルス、細菌等の生体関連物質を標的物質として、これらを検出・定量する方法の開発が進められている。
前記標的物質に磁性粒子を結合させた結合体を磁場の印加前後で比較観察することで前記標的物質の検出を行う外力支援型センサ{例えば、外力支援近接場照明バイオセンサ(External-Force-Assisted Near Field Illumination Biosensor)、非特許文献1,2参照}は、その一つであり、前記磁性粒子と結合した前記標的物質に基づく光信号が前記磁場の印加前後で移動する一方、検出に用いる検出チップ表面のキズ等に由来するノイズ信号が前記磁場の印加前後で移動しないことを利用して、前記ノイズ信号を排除した前記標的物質の高精度検出を可能とする。
前記外力支援型センサを用いた前記標的物質の検出場面では、前記標的物質に対し、前記磁場の印加前後で移動可能な前記磁性粒子と、前記光信号を発生可能な光応答性物質とをそれぞれ結合させた結合体を調製することが行われる。
具体的には、先ず、前記標的物質の被検体液と、前記磁性粒子及び前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる第1の結合物質を含む第1液と、前記光応答性物質及び前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる第2の結合物質を含む第2液とを用意する。
ここで、前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質は、前記標的物質と結合可能な物質から選択されるが、これに加えて、前記磁性粒子及び前記光応答性物質とも結合する必要があるため、前記磁性粒子と結合する前記第1の結合物質と前記光応答性物質と結合する前記第2の結合物質とは、別の物質から選択されている。
次に、前記被検体液に前記第1液を加えて所定時間反応させ、前記標的物質に前記第1の結合物質を介して前記磁性粒子を結合させる。その後、前記被検体液に前記第2液を加えて所定時間反応させ、前記標的物質に前記第2の結合物質を介して前記光応答性物質を結合させ、前記標的物質に前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質を介して前記磁性粒子及び前記光応答性物質が結合した前記結合体を得る。
または、前記第1液及び前記第2液を加える順番を変え、先に前記第2液を加え、後に前記第1液を加えることで、前記標的物質に前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質を介して前記磁性粒子及び前記光応答性物質が結合した前記結合体を得る。
前記被検体液に前記第1液と前記第2液とを加える順番は、選択された前記第1の結合物質と前記第2の結合物質との間で、前記標的物質との親和性(結合し易さ)の高低で決まり、前記第1の結合物質の親和性が低い場合には、前記第1液を先に加え、前記第2の結合物質の親和性が低い場合には、前記第2液を先に加える。
即ち、前記標的物質との親和性が高い方の結合物質を先に加えると、前記標的物質の結合部位がこの結合物質との結合で埋まり、後に加えられる前記標的物質との親和性が低い方の結合物質が結合せず、延いては、前記磁性粒子及び前記光応答性物質のいずれかが前記標的物質との結合体を形成せず、検出対象から外れることとなる。
こうした手順は、ユーザにとって煩雑であり、効率的な検出試験の実施を妨げる。
加えて、前記手順に従う場合でも、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質との間で、前記標的物質に対する親和性に差があると、時間の経過に伴い、親和性の高い方の結合が支配的となり、親和性の低い方の結合物質が親和性の高い方の結合物質に置換され、延いては、前記磁性粒子及び前記光応答性物質のいずれかが前記標的物質との結合体を形成せず、検出対象から外れることとなる。
したがって、前記磁性粒子及び前記光応答性物質を前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質を介して過不足なく前記標的物質に結合させるためには、前記第1液を加えてから前記第2液を加えるまでの時間管理が必要となり、効率的な検出試験の実施をより一層妨げることとなっている。
また、以上に説明した手順の相違や時間の経過により、検出対象であるものが検出対象から外れることは、検出結果の精度を低下させるとともに検出結果の不安定化を招く。
安浦 雅人、藤巻 真「微量検出のための導波モードイメージセンサの開発」電気学会研究会資料 センサ・マイクロマシン部門総合研究会(2016年6月29日,30日)、pp.45~52、一般社団法人電気学会(2016年) M. Yasuura and M. Fujimaki, Sci. Rep. Vol. 6, pp. 39241-1-39241-7 (2016)
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、前記外力支援型センサを用いて、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質を検出可能な標的物質検出方法及び標的物質検出キットを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、次の通りである。即ち、
<1> 標的物質に第1の結合物質を介して磁性粒子を結合させ、かつ、前記標的物質に第2の結合物質を介して光応答性物質を結合させた結合体を用いて前記標的物質を検出する方法であって、液体試料が表面上に導入されるとともに裏面側又は前記表面側から照射される光の透過光を伝搬光として前記光が照射される側と反対の面側に伝搬可能とされる透光板、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面側から照射される光の反射光を前記伝搬光として前記表面上方に伝搬可能な反射板、前記液体試料が前記表面上に導入される導入板及び前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面に対して全反射条件で照射される光により前記表面上に近接場光を発生可能な検出板のいずれかで形成される液体試料導入板が配され、かつ、前記液体試料が前記液体試料導入板の前記表面上に保持可能とされる液体試料保持部に対し、前記液体試料導入板の表面上に前記液体試料を導入し保持する液体試料導入保持工程と、前記液体試料導入板が前記透光板で形成されるときに前記液体試料導入板の前記裏面側から前記光を照射する裏面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記透光板及び前記反射板のいずれかで形成されるときに前記液体試料導入板の前記表面側から前記光を照射する表面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記導入板で形成されるときに前記液体試料導入板上に保持される前記液体試料に対して前記液体試料導入板の側面側から前記光を照射する側面側光照射工程及び前記液体試料導入板が前記検出板で形成されるときに前記表面に対して全反射条件で前記光を照射する全反射光照射工程のいずれかである光照射工程と、前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向及び前記液体試料導入板から遠ざかる方向のいずれかの方向に移動させる第1の結合体移動工程並びに前記液体試料導入板の前記裏面側に配される磁場印加部からの磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で前記磁場印加部を前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、前記磁場印加部の移動に追従させて前記結合体を移動させる第2の結合体移動工程のいずれかである結合体移動工程と、前記結合体移動工程に伴う前記結合体の移動を前記伝搬光又は前記近接場光に基づく光信号の信号変化を2次元画像により検出する光信号検出工程と、を含み、前記液体試料が、前記標的物質と前記第1の結合物質を介して結合される前記磁性粒子と、前記標的物質と前記第2の結合物質を介して結合され、前記磁性粒子と異なる物質である前記光応答性物質と、前記磁性粒子が結合された状態の前記第1の結合物質と、前記光応答性物質が結合された状態の前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の結合物質が用いられることを特徴とする標的物質検出方法。
<2> 標的物質が同一型の被結合部位を複数有する物質であり、結合物質が前記被結合部位と特異的に結合可能な物質である前記<1>に記載の標的物質検出方法。
<3> 液体試料が、標的物質の被検体液に対し、それぞれが結合物質と結合された状態の磁性粒子及び光応答性物質を含む一液の検出液を混合させて調製される前記<1>から<2>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<4> 光応答性物質が、伝搬光又は近接場光の照射を受けて散乱光を発生させる前記<1>から<3>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<5> 光応答性物質が、伝搬光又は近接場光の照射を受けて蛍光を発生させる前記<1>から<3>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<6> 光信号検出工程が伝搬光に基づく光信号の信号変化を検出する工程であるときに、光応答性物質が前記伝搬光の照射を受けて光吸収を生じる光吸収物質を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<7> 磁性粒子が、直径5nm~6,500nmの球状粒子である前記<1>から<6>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<8> 光応答性物質が、直径50nm~6,500nmの球状粒子である前記<1>から<7>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<9> 結合体移動工程が第1の結合体移動工程であるときに、更に、液体試料導入保持工程後、結合体移動工程前に、引き寄せ磁場の印加により液体試料中の結合体の全部又は一部を一旦液体試料導入板の表面上に引き寄せる結合体引き寄せ工程を実施する前記<1>から<8>のいずれかに記載の標的物質検出方法。
<10> 標的物質と第1の結合物質を介して結合される磁性粒子と、前記標的物質と第2の結合物質を介して結合され、前記磁性粒子と異なる物質である光応答性物質と、前記磁性粒子が結合された状態の前記第1の結合物質と、前記光応答性物質が結合された状態の前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とが同一の結合物質で構成される一液の検出液を有することを特徴とする標的物質検出キット。
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決でき、前記外力支援型センサを用いて、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質を検出可能な標的物質検出方法及び標的物質検出キットを提供することができる。
第1の結合物質Bと第1の結合物質Bよりも親和性の低い第2の結合物質Bとを用いる場合の状況を説明する説明図である。 第1の結合物質Bと第1の結合物質Bよりも親和性の高い第2の結合物質Bとを用いる場合の状況を説明する説明図である。 第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで同一の結合物質が用いられる場合の状況を説明する説明図である。 標的物質Tに結合物質B,Bを介して磁性粒子M及び光応答性物質Oが合計で3つ結合した結合体を示す説明図である。 標的物質検出装置1の説明図である。 撮像デバイスで観察される観察視野内の液体試料導入板の表面上の様子を模式的に示す図である。 図6におけるA-A線断面図である。 結合体移動工程後、撮像デバイスで観察される観察視野内の液体試料導入板の表面上の様子を模式的に示す図(1)である。 図8におけるA-A線断面図である。 標的物質検出装置1Aの説明図である。 標的物質検出装置1Bの説明図である。 結合体移動工程後、撮像デバイスで観察される観察視野内の液体試料導入板の表面上の様子を模式的に示す図(2)である。 図12におけるA-A線断面図である。 標的物質検出装置10の説明図である。 結合体移動工程後、撮像デバイスで観察される観察視野内の液体試料導入板の表面上の様子を模式的に示す図(3)である。 図15におけるA-A線断面図である。 標的物質検出装置20の説明図である。 標的物質検出装置20Aの説明図である。 標的物質検出装置30の説明図である。 標的物質検出装置40の説明図である。 結合体移動工程前における、液体試料導入板の前記表面上の様子を示す図(1)である。 結合体移動工程後における、液体試料導入板の前記表面上の様子を示す図(1)である。 標的物質検出装置50の説明図である。 結合体移動工程前における、液体試料導入板の前記表面上の様子を示す図(2)である。 結合体移動工程後における、液体試料導入板の前記表面上の様子を示す図(2)である。 実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の動画中の一の時点での画像を示す図である。 実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記動画中の前記一の時点から7秒経過後の画像を示す図である。 実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の動画中の一の時点での画像を示す図である。 実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の前記動画中の前記一の時点から5.3秒経過後の画像を示す図である。 比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の動画中の一の時点での画像を示す図である。 比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記動画中の前記一の時点から6.3秒経過後の画像を示す図である。 比較例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の動画中の一の時点での画像を示す図である。 比較例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の前記動画中の前記一の時点から2.7秒経過後の画像を示す図である。
本発明に係る標的物質検出方法は、標的物質に磁性粒子を結合させた結合体を磁場の印加前後で比較観察することで前記標的物質の検出を行う外力支援型センサ、例えば外力支援近接場照明バイオセンサ(External-Force-Assisted Near Field Illumination Biosensor)を用いて実施することができる。
本発明に係る前記標的物質検出方法の説明に先立って、前記外力支援型センサを詳細に説明する。なお、以下では、前記外力支援型センサを「標的物質検出装置」と称して説明を行う。
(標的物質検出装置)
前記標的物質検出装置は、液体試料保持部と、光照射部と、磁場印加部と、光信号検出部とを有し、必要に応じて、その他の部を有する。
<液体試料保持部>
前記液体試料保持部は、液体試料導入板が配され、かつ、液体試料が前記液体試料導入板の表面上に保持される部である。
-液体試料導入板-
前記液体試料導入板は、前記液体試料が表面上に導入されるとともに裏面側又は前記表面側から照射される光の透過光を伝搬光として前記光が照射される側と反対の面側に伝搬可能とされる透光板、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面側から照射される光の反射光を前記伝搬光として前記表面上方に伝搬可能な反射板、前記液体試料が前記表面上に導入される導入板、及び、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面に対して全反射条件で照射される光により前記表面上に近接場光を発生可能な検出板のいずれかで形成される。
なお、前記伝搬光とは、一般に発生源から数百nm~数μm以内の距離だけ離れた位置で急激な減衰を示す近接場光を含まない光とされるが、本明細書においても、前記近接場光を含まないことを意味し、前記液体試料導入板の前記表面から数百nm~数μm以内の距離だけ離れた位置で急激な減衰を示すことのない光を意味する。また、前記近接場光とは、前記液体試料導入板の前記表面から数百nm~数μm以内の距離だけ離れた位置で急激な減衰を示す光を意味する。
前記透光板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の透過型顕微鏡や公知の落射型顕微鏡の観察用ステージに用いられるガラス板、プラスチック板などの公知の透光板を用いることができる。
また、前記反射板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の落射型顕微鏡の観察用ステージに用いられるガラス板、プラスチック板、金属板などの公知の反射板を用いることができる。
また、前記導入板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記透光板、前記反射板を含み、この他の液体試料を導入するための公知の板状部材を用いることができる。
また、前記検出板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の表面プラズモン共鳴センサや公知の導波モードセンサに用いられる検出板などの公知の検出板を用いることができる。
前記液体試料導入板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記表面が前記結合体の吸着を抑制する吸着抑制剤で表面処理されていることが好ましい。このような表面処理が施されていると、前記結合体が前記液体試料導入板の前記表面に吸着されることが抑制され、前記磁場印加部による移動を補助することができる。
前記吸着抑制剤としては、特に制限はなく、前記結合体を構成する物質の種類に応じて、公知の吸着抑制剤から適宜選択することができる。
例えば、前記表面処理の手法として、前記標的物質が前記タンパク質である場合には、前記タンパク質の吸着を抑制する公知のブロッキング法を選択することができる。前記ブロッキング法としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレングリコールを用いる手法、エタノールアミンを用いる方法、スキムミルクを用いる方法、シランカップリング剤を用いる方法などが挙げられる。
前記液体試料保持部の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液体試料導入板そのもので構成されてもよく、また、前記液体試料をカバーガラス等の板状透光部材と前記液体試料導入板とで挟み、前記液体試料の液層を前記液体試料導入板の前記表面上に保持する構成でもよい。
また、前記液体試料保持部の構成としては、底面が前記液体試料導入板で構成される枡状の液体セルで構成することもできる。
なお、前記液体試料保持部としては、1つの前記液体試料導入板の前記表面上の領域を複数に分画してマルチチャンネル化させてもよい。
また、前記液体試料保持部としては、外部と前記液体試料導入板の表面上の空間との間で送液可能な流路が形成されることが好ましい。
即ち、前記標的物質検出装置によれば、前記液体試料導入板に吸着した夾雑物の存在を無視した前記標的物質の検出を行うことができることから、前記液体試料導入板の洗浄処理を逐次行うことなく次の検出を行うことができるため、前記液体試料保持部に前記流路が形成される場合、前記流路を介した前記液体試料の導入と排出とを通じて前記液体試料を交換するだけで次の検出を進めることができ、より一層、検出操作を効率化させることができる。
なお、本明細書において「洗浄処理」とは、前記液体試料導入板の前記表面に吸着した前記夾雑物を物理的な磨き処理や化学薬品を用いた剥離処理、溶解処理によって取り除く処理を意味し、前記液体試料の交換時に水で濯ぐ処理を含まない。
<光照射部>
前記光照射部は、裏面側光照射部、表面側光照射部、側面側光照射部及び全反射光照射部のいずれかで形成される。
前記裏面側光照射部は、前記液体試料導入板が前記透光板で形成されるときに前記液体試料導入板の前記裏面から前記光を照射可能とされる。
前記裏面側光照射部の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の透過型顕微鏡に用いられる公知の光照射部と同様に構成することができる。
前記表面側光照射部は、前記液体試料導入板が前記透光板及び前記反射板のいずれかで形成されるときに前記液体試料導入板の前記表面側から前記光を照射可能とされる。
前記表面側光照射部の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の落射型顕微鏡や実体顕微鏡に用いられる公知の光照射部と同様に構成することができる。
前記側面側光照射部は、前記液体試料導入板が前記導入板で形成されるときに前記液体試料導入板上に保持される前記液体試料に対して前記液体試料導入板の側面側から前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向で前記光を照射可能とされる。
前記側面側光照射部の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の光照射部と同様に構成することができる。
前記全反射光照射部は、前記液体試料導入板が前記検出板で形成されるときに前記表面に対して全反射条件で前記光を照射可能とされる。前記表面における全反射は、前記検出板の前記表面において全反射条件を満たすことが可能であれば、前記光の入射方向に特に制限はない。例えば、前記検出板表面を導波路構造にすることで、前記検出板の前記表面側、前記裏面側又は前記側面側に形成したグレーティング、若しくは、前記表面側、前記裏面側又は前記側面側に配したプリズムを介して前記導波路構造に前記光を前記表面側から導入し、前記導波路構造内での全反射を利用して前記検出板表面での全反射条件を満たすことができる。また、前記プリズムは前記検出板の一部構造として形成されてもよい。
前記全反射光照射部の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の全反射顕微鏡や公知の表面プラズモン共鳴センサや公知の導波モードセンサに用いられる公知の光照射部と同様に構成することができる。
なお、前記裏面側光照射部、前記表面側光照射部、前記側面側光照射部及び前記全反射光照射部における光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のランプ、LED装置、レーザ光照射装置などの発光装置を用いることができる。
また、前記裏面側光照射部、前記表面側光照射部及び前記全反射光照射部としては、前記光源以外の光学要素についても特に制限はなく、公知の光学顕微鏡、公知の表面プラズモン共鳴センサや公知の導波モードセンサに用いられる公知の光学要素を目的に応じて適宜採用して構成することができる。
<磁場印加部>
前記磁場印加部は、第1の磁場印加部及び第2の磁場印加部のいずれかで形成される。前記第1の磁場印加部及び前記第2の磁場印加部のいずれの磁場印加部も、前記液体試料導入部の前記表面上に導入された前記結合体を移動させる役割を有し、前記標的物質検出装置では、前記結合体の移動を前記標的物質の検出に利用する。
-第1の磁場印加部-
前記第1の磁場印加部は、前記液体試料導入板の前記表面側又は前記側面側に配されるとともに前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向及び前記液体試料導入板から遠ざかる方向のいずれかの方向に移動させる部材である。
前記第1の磁場印加部としては、このような部材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の電磁石及び永久磁石を用いて構成することができる。なお、前記永久磁石を用いる場合、例えば、移動部材に前記永久磁石を保持し、前記永久磁石による前記磁場が前記液体試料導入板の前記表面上に及ぶ近接状態と前記永久磁石による前記磁場が前記液体試料導入板の前記表面上に及ばない離間状態との間で移動制御し、前記液体試料導入板の前記表面上に対する前記磁場の印加状態をオン-オフさせる構成とすることができる。また、例えば、公知の磁気シールド部材を、前記液体試料導入板の前記表面上に前記磁場を印加させる開放状態と前記液体試料導入板の前記表面上に前記磁場を印加させない遮蔽状態とで開閉制御し、前記液体試料導入板の前記表面上に対する前記磁場の印加状態をオン-オフさせる構成とすることができる。また、前記電磁石を用いる場合には、前記電磁石の励磁と消磁とを通じて前記液体試料導入板の前記表面上に対する前記磁場の印加状態のオン-オフ制御を行うことができる。
また、前記第1の磁場印加部としては、特に制限はないが、貫通孔が形成されている、或いはU字型などの不完全な環状、或いは複数の部材が環状乃至不完全な環状に配置された構成であることが好ましい。このように前記第1の磁場印加部を形成すると、前記表面側光照射部を用いた場合に前記貫通孔或いは前記環状乃至前記不完全な環状の内側を通じた前記液体試料導入板の前記表面側からの光照射が可能となるとともに、前記表面側光照射部、前記裏面側光照射部、前記側面側光照射部及び前記全反射光照射部のいずれの場合も前記液体試料導入板の前記表面上方に伝搬される前記伝搬光に基づく光信号を前記貫通孔或いは前記環状に配置された部材の内側を通じて前記光信号検出部で検出することが可能となる。なお、前記環状に配置された部材は、前記光照射や光信号の光路を妨げない配置であれば特に制限はなく、磁場の印加状態の制御が個別に行えるものでもよい。
-第2の磁場印加部-
前記第2の磁場印加部は、前記液体試料導入板の前記裏面側に配されるとともに前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面側に引き寄せ可能とされるとともに前記磁場を印加した状態で前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動可能とされる部材である。
前記第2の磁場印加部としては、このような部材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の電磁石及び永久磁石を用いて構成することができる。例えば、スライド部材上に前記電磁石又は前記永久磁石を保持し、前記液体試料導入板の前記表面側光照射部、前記裏面側光照射部、前記側面側光照射部又は前記全反射光照射部における前記光照射部から前記光を照射する領域(検出領域)の近傍に前記電磁石又は前記永久磁石を位置させる初期状態と、前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に向けて前記電磁石又は前記永久磁石を移動させた状態との間で移動制御させることで構成することができる。なお、前記電磁石を用いる場合、前記移動制御中、連続的或いは断続的に励磁させた状態とする。また、前記移動制御中に励磁の強度を変化させてもよい。
また、複数の前記電磁石又は永久磁石を配置し、各部材における前記磁場の印可状態を制御することによっても、前記スライド部材上に前記電磁石又は前記永久磁石を保持して前記移動制御を行う構成と同等の効果を得ることができる。
また、前記第2の磁場印加部としては、特に制限はないが、貫通孔が形成されている、或いはU字型などの不完全な環状、或いは複数の部材が環状乃至不完全な環状に配置された構成であることが好ましい。このように前記第2の磁場印加部を形成すると、前記裏面側光照射部において前記貫通孔或いは前記環状乃至前記不完全な環状の内側を通じた前記液体試料導入板の裏面側からの光照射が可能となる。なお、前記環状に配置された部材は、前記光照射や光信号の光路を妨げない配置であれば特に制限はなく、磁場の印加状態の制御が個別に行えるものでもよい。
<光信号検出部>
前記光信号検出部は、前記液体試料導入板の前記表面側、前記裏面側又は前記側面側に配されるとともに前記第1の磁場印加部による前記磁場の印加及び前記第2の磁場印加部の移動に伴う前記結合体の移動を前記伝搬光又は前記近接場光に基づく光信号の信号変化により検出可能とされる。
前記光信号検出部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、フォトダイオード、光電子増倍管などの公知の光検出器や対物レンズ等の公知の光学要素を用いて構成することができる。
また、前記光信号検出部としては、特に制限はないが、前記液体試料導入板の前記表面上の検出領域の様子を2次元画像として取得可能とされることが好ましい。前記2次元画像を取得できると、光点や暗点として現れる前記2次元画像中の前記光信号の位置情報やサイズ情報を容易に取得することができ、前記結合体の移動前後の前記2次元画像同士を比較して、前記光信号が前記結合体に関与する情報であるのか、或いは、前記液体試料導入板の前記表面上のキズ、前記夾雑物、光源出力の揺らぎ等の前記結合体に関与しない情報であるのかを明確に区別することが可能となる。このような2次元画像の取得を可能とするには、前記光信号検出部として撮像デバイスを選択すればよい。さらには、前記2次元画像を連続的に撮像し、動画として観察を行うと、光点や暗点として現れる前記2次元画像中の前記光信号が移動する様子をより明確に識別することができる。
前記撮像デバイスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどの公知のイメージセンサを用いることができる。
なお、前記光信号検出部により前記光信号を検出する方法としては、前記光信号検出部の結像可能範囲外及び前記近接場光の発生領域(前記液体試料導入板の前記表面から数百nm~数μm上方の領域)外に存在する前記結合体の検出漏れを防ぐため、一旦、前記液体試料導入板の前記表面上ないし前記表面近傍に前記結合体を配した後に検出を実施する方法が好ましい。
また、前記標的物質を検出することとしては、前記標的物質の有無の検出、前記標的物質の存在量の検出(定量測定)、前記標的物質の存在状況のリアルタイム観察等が挙げられる。
前記磁場印加部による前記結合体の移動に伴う前記光信号検出部における検出について説明する。
前記光信号検出部で検出される前記伝搬光に基づく前記光信号には、公知の前記透過型顕微鏡や前記落射型顕微鏡で取得される光信号と同様に、前記液体試料導入板の前記表面上方に伝搬される前記伝搬光の前記液体試料に対する透過光や反射光の光信号1と、前記液体試料中の前記結合体に前記伝搬光が照射されたときに発生し、光信号1と識別可能な光信号2と、前記液体試料中の前記夾雑物に前記伝搬光が照射されたときに発生し、光信号1と識別可能な光信号3と、前記液体試料導入板の前記表面に存在するキズや前記表面に吸着した前記夾雑物に前記伝搬光が照射されたときに発生する光信号4などが存在する。また、前記光信号には、光源出力の揺らぎなどを原因とするノイズ信号も含まれる。
バックグラウンド信号として処理される光信号1を除き、光信号2~4や前記ノイズ信号を区別することができない場合、検出精度の低下を招くこととなる。
しかしながら、前記標的物質検出装置では、前記結合体の前記第1の磁場印加部及び前記第2の磁場印加部で形成される前記磁場印加部に基づいて前記結合体を移動させ、その移動を前記伝搬光に基づく前記光信号の信号変化として検出するため、光信号2と光信号3,4及び前記ノイズ信号とを明確に区別することができる。
即ち、光信号3,4や前記ノイズ信号は、前記第1の磁場印加部による磁場の印加前後及び前記第2の磁場印加部の移動前後において変化しない光信号であるのに対し、光信号2は、前記磁性粒子を含む前記結合体に起因するため、前記第1の磁場印加部による磁場の印加前後及び前記第2の磁場印加部の移動前後において変化する光信号であることから、前記伝搬光に基づく前記光信号の信号変化を検出することで、前記結合体、延いては前記結合体を構成する前記標的物質の検出を高精度に行うことができる。
ここで、変化する前記光信号として着目される光信号2の態様としては、前記標的物質の検出に用いる検出材の種類や前記標的物質検出装置の光学系の種類に応じて様々な態様を取り得る。即ち、光信号2としては、前記結合体が前記伝搬光の照射を受けたときに発する、散乱光、反射光、位相差、微分干渉に基づく透過光、前記光応答性物質の蛍光、燐光等の発光、及び前記結合体の光吸収に基づく光信号等が挙げられる。なお、前記位相差、前記微分干渉に基づく透過光を光信号2として検出する場合、前記液体試料保持部、前記光照射部及び前記光信号検出部のそれぞれを、公知の位相差顕微鏡、公知の微分干渉顕微鏡における光学系にしたがって構成する。
また、光信号2の変化の態様としては、強度の増減、位相変化、位置移動、焦点ずれ、及び出現・消失が挙げられる。
また、前記光信号検出部で検出される前記近接場光に基づく前記光信号には、公知の表面プラズモン共鳴センサや公知の導波モードセンサで取得される光信号と同様に、前記液体試料中の前記結合体に前記近接場光が照射されたときに発生する光信号5と、前記液体試料中の前記夾雑物に前記近接場光が照射されたときに発生する光信号6と、前記液体試料導入板の前記表面に存在するキズや前記表面に吸着した前記夾雑物に前記近接場光が照射されたときに発生する光信号7などが存在する。また、前記光信号には、光源出力の揺らぎなどを原因とするノイズ信号も含まれる。
即ち、前記近接場光を利用する場合も、前記伝搬光を利用する場合と同様、光信号5~7や前記ノイズ信号を区別することができない場合、検出感度の低下を招くこととなる。
しかしながら、前記標的物質検出装置では、前記結合体の前記第1の磁場印加部及び前記第2の磁場印加部で形成される前記磁場印加部に基づいて前記結合体を移動させ、その変化を前記近接場光に基づく前記光信号の信号変化として検出するため、光信号5と光信号6,7及び前記ノイズ信号とを明確に区別することができる。
即ち、光信号6,7や前記ノイズ信号は、前記第1の磁場印加部による磁場の印加前後及び前記第2の磁場印加部の移動前後において変化しない光信号であるのに対し、光信号5は、前記磁性粒子を含む前記結合体に起因するため、前記第1の磁場印加部による磁場の印加前後及び前記第2の磁場印加部の移動前後において変化する光信号であることから、前記近接場光に基づく前記光信号の信号変化を検出することで、前記結合体、延いては前記結合体を構成する前記標的物質の検出を高精度に行うことができる。
ここで、変化する前記光信号として着目される光信号5の態様としては、前記光応答性物質の種類や前記標的物質検出装置の光学系の種類に応じて様々な態様を取り得る。即ち、光信号5としては、前記結合体が前記近接場光の照射を受けたときに発する散乱光、蛍光等の発光、及び前記結合体の光吸収に基づく光信号等が挙げられる。
また、光信号5の変化の態様としては、強度の増減、位置移動、及び出現・消失が挙げられる。
<その他の部>
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第3の磁場印加部、公知の透過型顕微鏡、公知の落射型顕微鏡、公知の全反射顕微鏡、公知の表面プラズモン共鳴センサ、公知の導波モードセンサ等に用いられる任意の部が挙げられる。
-第3の磁場印加部-
前記第3の磁場印加部は、前記磁場印加部が前記第1の磁場印加部で形成されるときに、更に、前記液体試料導入板の前記裏面側に配されるとともに前記液体試料導入板に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せ可能とされる部である。
前記磁場印加部が前記第2の磁場印加部で形成される場合、前記液体試料中の前記結合体が前記磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せられる。そのため、前記光信号検出部による前記光信号の検出を前記液体試料導入板の前記表面ないしその近傍に焦点を当てて行うことで、前記表面上に引き寄せられた前記結合体の移動状況を検出することができる。
しかしながら、前記磁場印加部が前記第1の磁場印加部で形成される場合、前記光信号検出部による前記光信号の検出を前記液体試料導入板の前記表面ないしその近傍に焦点を当てて行う際、必ずしも前記結合体が前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せられた状態ではなく、例えば、前記液体試料を前記液体試料導入板に導入させた直後においては、前記結合体が前記液体試料の液層中に浮遊した状態とされる。浮遊状態の前記結合体が前記光信号検出部で前記光信号を検出可能な結像可能範囲の外方や前記近接場光の発生領域の外方に存在すると、前記結合体が検出されないこととなる。
したがって、前記光信号検出部による前記光信号の検出を前記液体試料導入板の前記表面ないしその近傍に焦点を当てて行う際、前記液体試料を前記液体試料導入板に導入させた後、前記結合体が前記液体試料導入板の前記表面上に重力沈降することを待つ必要があり、検出の準備に時間を要することとなる。特に、前記結合体の比重が小さい場合、より長い時間を要することとなる。
そこで、前記第3の磁場印加部による前記磁場の印加により、前記液体試料の液層中に浮遊する前記結合体を前記液体試料導入板の前記表面側に引き寄せることで、検出の準備時間を短縮化させ、より効率的な検出を行うことができる。
前記第3の磁場印加部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の電磁石及び永久磁石を用いて構成することができる。
なお、前記第3の磁場印加部は、前記結合体を前記液体試料導入板の前記表面側に引き寄せた後、前記第1の磁場印加部による前記結合体の移動を妨げないよう、前記結合体を引き寄せる前記磁場の印加状態を弱める強度調整や停止するオン-オフ制御が求められる。この点、前記永久磁石を用いる場合、例えば、移動部材に前記永久磁石を保持し、前記永久磁石による前記磁場が前記液体試料の液層中に及ぶ近接状態と前記永久磁石による前記磁場が前記液体試料導入板の前記液体試料の液層中に及ばない離間状態との間で移動制御し、前記磁場の印加状態の前記強度調整又は前記オン-オフ制御を実施する構成とすることができる。また、前記電磁石を用いる場合には、前記電磁石の励磁と消磁とを通じて前記磁場の印加状態の前記強度調整又は前記オン-オフ制御を行うことができる。また例えば、公知の磁気シールド部材を用いて、前記結合体に対して前記表面上に引き寄せる前記磁場を印加させた開放状態と前記結合体に対して前記表面上に引き寄せる前記磁場を印加させない遮蔽状態とで制御し、前記磁場の印加状態をオン-オフさせる構成とすることができる。
また、前記第3の磁場印加部としては、特に制限はないが、貫通孔が形成されている、或いはU字型などの不完全な環状、或いは複数の部材が環状乃至不完全な環状に配置された構成であることが好ましい。このように前記第3の磁場印加部を形成すると、前記裏面側光照射部において前記貫通孔或いは前記環状乃至前記不完全な環状の内側を通じた前記液体試料導入板の前記裏面側からの光照射が可能となる。なお、前記環状に配置された部材は、前記光照射や光信号の光路を妨げない配置であれば特に制限はなく、磁場の印加状態の制御が個別に行えるものでもよい。
また、前記第3の磁場印加部を有すると、前記液体試料導入板の前記表面上の前記検出領域に前記結合体を寄せ集めて濃縮することができ、より高精度に前記標的物質の検出を行うことができる。
(標的物質検出方法)
本発明の標的物質検出方法は、液体試料導入保持工程と、光照射工程と、結合体移動工程と、光信号検出工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を含む。
<液体試料導入保持工程>
前記液体試料導入保持工程は、前記液体試料が表面上に導入されるとともに裏面側又は前記表面側から照射される光の透過光を伝搬光として前記光が照射される側と反対の面側に伝搬可能とされる透光板、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面側から照射される光の反射光を前記伝搬光として前記表面上方に伝搬可能な反射板、前記液体試料が前記表面上に導入される導入板、及び、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面に対して全反射条件で照射される光により前記表面上に近接場光を発生可能な検出板のいずれかで形成される液体試料導入板が配され、かつ、前記液体試料が前記液体試料導入板の前記表面上に保持可能とされる液体試料保持部に対し、前記液体試料導入板の前記表面上に前記液体試料を導入し保持する工程である。
-液体試料-
前記液体試料は、それぞれ標的物質と結合体を形成する磁性粒子及び光応答性物質と、前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる第1の結合物質と、前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる第2の結合物質とを含む。
前記標的物質としては、例えば、DNA、RNA、ウイルス、カプシドタンパク質等のウイルス様粒子を含む各種タンパク質、エクソソームやマイクロベシクルやラージオンコソーム等の細胞外小胞、菌、汚染物質などが挙げられる。
また、前記標的物質の存在等を検証する前記標的物質の被検体液としては、例えば、血液、唾液、尿、液体薬品、環境水、上下水、飲料、食品のホモジナイズ溶液、ぬぐい液、粉末等の固体試料を水等の溶媒に溶解させた溶液、気相中のガスや微粒子などを捕集した気相濃縮液などが挙げられる。
前記磁性粒子の役割は、前記標的物質と結合体を形成した状態で、前記磁場の印加に伴う移動を生じさせることにある。
前記磁性粒子としては、前記役割を奏するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の磁気ビーズ等を用いることができる。
前記光応答性物質の役割は、前記標的物質と結合体を形成した状態で、前記伝搬光又は前記近接場光に基づく前記光信号を生じさせることにある。
前記光応答性物質としては、前記役割を奏するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記伝搬光又は前記近接場光の照射を受けて散乱光を発生させる光散乱物質や、蛍光を発生させる蛍光物質や、光吸収を生じる光吸収物質を用いることができる。
前記光散乱物質及び前記光吸収物質としては、それぞれの性質を備えるように調製されたポリスチレンビーズ等の樹脂粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノロッド、金ナノスター等の金属ナノ粒子などの公知の粒子を用いることができる。また、前記蛍光物質としては、蛍光色素、量子ドット、蛍光ビーズ、量子ドット入りビーズ、蛍光染色剤などの公知の蛍光材料を用いることができる。
なお、本明細書において、「光応答性」とは、前記伝搬光又は前記近接場光の照射を受けて前記光信号検出工程で信号変化を検出可能な光信号を生じる性質を指す。
前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質は、前記標的物質に対し前記磁性粒子及び前記光応答性物質を結合させる役割を有し、前記磁性粒子及び前記光応答性物質と結合した状態で前記標的物質と結合し、前記標的物質に前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質を介して前記磁性粒子及び前記光応答性物質が結合された結合体を形成させる。
ここで、前記標的物質検出方法では、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の結合物質を用いることが肝要とされる。その理由を図1~3を用いて具体的に説明する。なお、図1は、第1の結合物質Bと第1の結合物質Bよりも親和性の低い第2の結合物質Bとを用いる場合の状況を説明する説明図であり、図2は、第1の結合物質Bと第1の結合物質Bよりも親和性の高い第2の結合物質Bとを用いる場合の状況を説明する説明図であり、図3は、第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで同一の結合物質が用いられる場合の状況を説明する説明図である。
今、標的物質Tの前記被検体液に、第1の結合物質Bが結合された状態の磁性粒子Mと、第2の結合物質Bが結合された状態の光応答性物質Oとを加えたときの状況について考えてみる。
第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで異なる結合物質を用い、第1の結合物質Bよりも第2の結合物質Bの方が標的物質Tに対する親和性が低いとすると、図1に示すように、親和性の高い第1の結合物質Bが標的物質Tに優先的に結合し、第1の結合物質Bを介した標的物質Tと磁性粒子Mとの結合が得られるものの、第2の結合物質Bを介した標的物質Tと光応答性物質Oとの結合が得られない状況が発生する。この場合、光応答性物質Oに基づく光信号を検出できないため、標的物質Tが検出対象外となる。
また、第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで異なる前記結合物質を用い、第1の結合物質Bよりも第2の結合物質Bの方が標的物質Tに対する親和性が高いとすると、図2に示すように、親和性の高い第2の結合物質Bが標的物質Tに優先的に結合し、第2の結合物質Bを介した標的物質Tと光応答性物質Oとの結合が得られるものの、第1の結合物質Bを介した標的物質Tと磁性粒子Mとの結合が得られない状況が発生する。この場合、磁場の印加前後で標的物質Tと光応答性物質Oとの結合体を移動させることができず、光応答性物質Oに基づく光信号をノイズ信号と区別できないため、標的物質Tが検出対象外となる。
こうした状況を避けるため、標的物質Tの前記被検体液に対し、親和性の低い方の前記結合物質を先に加え、標的物質Tに対する親和性の高い方の前記結合物質を後に加える手法が採られている。
しかしながら、こうした手法によっても、時間の経過に伴い、親和性の高い方の結合が支配的となり、親和性の低い方の前記結合物質が親和性の高い方の前記結合物質に置換され、図1,2に示す状況と同様になる。
そのため、この手法では、標的物質Tと磁性粒子M及び光応答性物質Oとの結合体が形成されるタイミングを時間管理して実施する必要がある。
こうした手法は、ユーザにとって煩雑で、効率的な検出試験の実施の妨げとなるばかりか、手順の相違や時間の経過により、検出対象であるものが検出対象から外れることとなって、検出結果の精度を低下させるともに検出結果の不安定化を招く。
一方、第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで同一の前記結合物質を用いると、標的物質Tに対する双方の親和性が等しいことから、標的物質Tに対する結合機会が競争的となり、その結果、図3に示すように、標的物質Tと磁性粒子M及び光応答性物質Oとの結合体が得られ易い。
したがって、第1の結合物質Bと第2の結合物質Bとで同一の前記結合物質を用いることで、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質Tを検出することが可能となる。
前記結合物質としては、特に制限はなく、前記標的物質及び前記検出材の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、前記標的物質と前記磁性粒子及び前記光応答性物質との間で、公知の抗原-抗体反応、アプタマーによる結合、DNAハイブリダイゼーション、ビオチン-アビジン結合、キレート結合、アミノ結合などによる結合を与える諸物質を用いることができる。具体的には、モノクローナル抗体、アプタマー、DNAプローブ、RNAプローブ、ペプチド、プロテインA、プロテインG、アビジン及びその誘導体(ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等)、ビオチンなどが挙げられる。
なお、ある抗原に対して結合可能な異なる多種類の抗体の集合体であるポリクローナル抗体は、前記磁性粒子と前記光応答性物質とのそれぞれに同一の結合物質を付与することを担保できないため、前記結合物質として好ましくない。
以上の通り、前記標的物質検出方法では、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで、同一の前記結合物質が用いられるため、同一型の被結合部位を複数有するタイプの前記標的物質(例えば、ウイルス、カプシドタンパク質等のウイルス様粒子、エクソソームやマイクロベシクルやラージオンコソーム等の細胞外小胞)の検出に特に適しており、前記結合物質としては、前記被結合部位と特異的に結合可能な物質であることが好ましい。
前記磁性粒子及び前記光応答性物質について、更に説明を加える。
前記磁性粒子及び前記光応答性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記磁性粒子及び前記光応答性物質は、前記標的物質に対し1つずつ、最少2つ結合されていれば、その結合体を検出対象とすることができる。
しかしながら、前記標的物質の大きさに対し、前記磁性粒子及び前記光応答性物質の大きさが過大であり、前記標的物質に対して前記磁性粒子及び前記光応答性物質が2つだけ結合可能な状況であると、前記標的物質に結合する2つの粒子が2つとも前記磁性粒子となるか前記光応答性物質となって、検出対象から外れる危険性が増大する。
そのため、1つの前記標的物質に対し、前記磁性粒子及び前記光応答性物質が3つ以上結合可能であるように前記磁性粒子及び前記光応答性物質の大きさの上限を設定し、前記標的物質に結合する3つ以上の前記磁性粒子及び前記光応答性物質のうち、いずれか1つが残りの粒子と異なる種類となる機会を付与することが好ましい(図4参照)。なお、図4は、標的物質Tに結合物質B,Bを介して磁性粒子M及び光応答性物質Oが合計で3つ結合した結合体を示す説明図である。
前記標的物質検出装置(前記外力支援型センサ)を用いて検出が求められる前記標的物質の大きさとしては、一般に1nm~1,000nm程度であり、1つの前記標的物質に対し、前記磁性粒子及び前記光応答性物質を合計で3つ結合させるためには、これらの直径が前記標的物質の直径の約6.5倍以内である必要があり、よって、前記直径の上限としては、6,500nmであることが好適であり、1,000nmであることがより好適である。
また、前記磁性粒子の直径の下限に関し、前記磁性粒子が小さすぎると、前記磁性粒子の磁化の値が小さくなり、前記光信号の移動に十分な力を受けることが難しくなるおそれがある。そのため、前記磁性粒子の直径の下限としては、5nmであることが好適である。前記磁性粒子の直径が5nm以上であると、一般的な永久磁石による磁界を用いて検出を行うことができる。
よって、前記磁性粒子としては、直径5nm~6,500nmの球状粒子であることが好ましく、直径5nm~1,000nmの球状粒子であることがより好ましい。
また、前記光応答性物質の直径の下限に関し、前記散乱光を用いて前記光信号を発生させる場合、前記光応答性物質が小さすぎると、検出を行う光学系の検出限界を超えて検出できないおそれがある。そのため、前記光応答性物質の直径の下限としては、50nmであることが好適である。前記光応答性物質の直径が50nm以上であると、可視光波長域(400nm~700nm)の一般的な光源を用いて検出を行うことができる。
よって、前記光応答性物質としては、前記散乱光を用いて前記光信号を発生させる場合、直径50nm~6,500nmの球状粒子であることが好ましく、直径50nm~1,000nmの球状粒子であることがより好ましい。
なお、前記球状粒子としては、真球状に加え、楕円球状等のいびつな球状粒子も含み、前記いびつな球状粒子における前記直径としては、その粒子の最大径が該当する。
前記液体試料の調製の場面では、1つの前記標的物質に対して前記磁性粒子及び前記光応答性物質を3つ以上結合させる観点から、前記標的物質の含有数に対し、前記磁性粒子及び前記光応答性物質の合計の含有数が3倍以上となるように調製を行うことが好ましい。
特に、前記磁性粒子及び前記光応答性物質の合計の含有数が多ければ多い程、前記標的物質に対する結合数が増え、引いては、前記標的物質を高精度に検出することができる。したがって、前記標的物質の含有数に対し、前記標的物質との結合に飽和をもたらす含有数以上で前記磁性粒子及び前記光応答性物質を含有させてもよい。なお、この場合、前記液体試料中に存在する前記標的物質の数は、検出前の段階では未知であるが、経験則から想定される前記標的物質の数からみて、過剰量導入すればよい。
前記液体試料の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記標的物質の被検体液を前記液体試料保持部に保持させた後、前記第1の結合物質と結合させた前記磁性粒子及び前記第2の結合物質と結合させた前記光応答性物質を前記被検体液に添加して混合する方法、(2)前記液体試料保持部に対する導入前に、前記標的物質の前記被検体液を前記液体試料保持部に保持させた後、前記第1の結合物質と結合させた前記磁性粒子及び前記第2の結合物質と結合させた前記光応答性物質を前記被検体液に添加して混合する方法、(事前混合法)などの方法を挙げることができる。
中でも、前記(2)の事前混合法によれば、混合容器内の前記磁性粒子及び前記磁性粒子を含む前記結合体を前記混合容器越しに磁石で集め、これらが前記磁石により流れ落ちないようにしつつ、混合液の一部を分離することで、前記液体試料保持部に導入される前記液体試料に対して夾雑物等の混入を抑制することができるとともに、前記液体試料保持部に導入される前記液体試料において、前記結合体の濃縮を行うことができる。その結果、前記(1)の方法を適用する場合よりも、より高精度な検出を実施することができる。
また、前記被検体液に前記第1の結合物質と結合させた前記磁性粒子及び前記第2の結合物質と結合させた前記光応答性物質を加える方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(3)前記被検体液に対し、前記第1の結合物質と結合させた前記磁性粒子を含む液体と、前記第2の結合物質と結合させた前記光応答性物質を含む液体との二液を加える方法(二液法)、(4)前記被検体液に対し、前記第1の結合物質と結合させた前記磁性粒子と、前記第2の結合物質と結合させた前記光応答性物質とを含む一液の検出液を加える方法(一液法)が挙げられる。
中でも、前記(4)の一液法によれば、前記検出液を予め調製し保存しておくことで、前記標的物質の前記被検体液に対し、それぞれが前記結合物質と結合された状態の前記磁性粒子及び前記光応答性物質を含む一液の前記検出液を混合させるだけで前記液体試料を調製することができ、検出前の前処理を効率的に行うことができる。
前記結合体としては、重力沈降を促進させる重り物質を含むように調製してもよい。即ち、前記重り物質を含む前記結合体では、前記液体試料導入板の表面上に沈降させ易く、検出操作を開始するまでの時間を短縮化させることができ、特に、前記重り物質を含まない前記結合体の比重が小さい場合に用いることができる。
前記重り物質としては、このような性質を有する物質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の金ナノ粒子などを挙げることができる。
前記重り物質としては、前記標的物質と結合させて前記結合体を形成することが好ましく、結合方法としては、例えば、物理吸着、抗原-抗体反応、アプタマーによる結合、DNAハイブリダイゼーション、ビオチン-アビジン結合、キレート結合、アミノ結合などの公知の結合方法を用いることができる。
<光照射工程>
前記光照射工程は、前記液体試料導入板が前記透光板で形成されるときに前記液体試料導入板の前記裏面側から前記光を照射する裏面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記透光板及び前記反射板のいずれかで形成されるときに前記液体試料導入板の前記表面側から前記光を照射する表面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記導入板で形成されるときに前記液体試料導入板上に保持される前記液体試料に対して前記液体試料導入板の側面側から前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向で前記光を照射する側面側光照射工程、並びに、前記液体試料導入板が前記検出板で形成されるときに前記表面に対して全反射条件で前記光を照射する全反射光照射工程のいずれかの工程である。
なお、前記裏面側光照射工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記裏面側光照射部により実施することができる。
また、前記表面側光照射工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記表面側光照射部により実施することができる。
また、前記側面側光照射工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記側面側光照射部により実施することができる。
また、前記全反射光照射工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記全反射光照明部により実施することができる。
<結合体移動工程>
前記結合体移動工程は、前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向及び前記液体試料導入板から遠ざかる方向のいずれかの方向に移動させる第1の結合体移動工程並びに前記液体試料導入板の前記裏面側に配される磁場印加部からの磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で前記磁場印加部を前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、前記磁場印加部の移動に追従させて前記結合体を移動させる第2の結合体移動工程のいずれかの工程である。
なお、前記第1の結合体移動工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記第1の磁場印加部により実施することができる。
また、前記第2の結合体移動工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記第2の磁場印加部により実施することができる。
また、前記第1の結合体移動工程及び前記第2の結合体移動工程としては、それぞれ前記光信号検出工程を挟みながら繰り返し行うことで、検出精度を高めることができる。このように前記第1の結合体移動工程を繰り返し行う際、それぞれの結合体移動工程において、前記第1の磁場印加部を前記液体試料導入板に対する相対な位置を変更し、前記結合体を移動させる方向を変えて、前記結合体を移動させてもよい。同様の、異なる方向への結合体の移動は、前記第1の磁場印加部を複数個設置して、順番に異なる方向から磁場を印加することよっても実施可能である。また、同様に、前記第2の磁場印加部において、繰り返し前記第2の結合体移動工程を行う際、それぞれの前記第2の結合体移動工程において、前記磁場印加部を前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ異なる方向に移動させ、前記結合体を移動させる方向を変えて、前記結合体を移動させてもよい。さらには、前記第1の磁場印可部と前記第2の磁場印可部双方を有する前記標的物質検出装置においては、前記第1の結合体移動工程と前記第2の結合体移動工程を織り交ぜて実施することができる。
また、前記結合体移動工程において、磁場印加時に前記液体試料導入板を前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に動かすことによって、同様の効果を得てもよい。
<光信号検出工程>
前記光信号検出工程は、前記結合体移動工程に伴う前記結合体の移動を前記伝搬光又は前記近接場光に基づく光信号の信号変化により検出する工程である。
また、前記光信号検出工程は、前記伝搬光又は前記近接場光に基づく光信号のうち、前記結合体が前記伝搬光又は前記近接場光を受けたときに前記光応答性物質から生じ、1つの前記標的物質に対し前記磁性粒子と前記光応答性物質が結合した前記結合体に基づく光信号のみを信号変化の対象として検出する工程である。
なお、前記光信号検出工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記光信号検出部により実施することができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結合体引き寄せ工程を挙げることができる。
-結合体引き寄せ工程-
前記結合体引き寄せ工程は、前記結合体移動工程が前記第1の結合体移動工程であるときに、更に、前記液体試料導入保持工程後、前記結合体移動工程前に、引き寄せ磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を一旦前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せる工程である。
前記結合体移動工程が前記第1の結合体移動工程により実施される場合、前記光信号検出工程で前記光信号の検出を前記液体試料導入板の前記表面ないしその近傍に焦点を当てて行う際、必ずしも前記結合体が前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せられた状態ではなく、例えば、前記液体試料を前記液体試料導入板に導入させた直後においては、前記結合体が前記液体試料の液層中に浮遊した状態とされる。浮遊状態の前記結合体が前記光信号検出工程で前記光信号を検出可能な結像可能範囲の外方や前記近接場光の発生領域の外方に存在すると、前記結合体が検出されないこととなる。
したがって、前記光信号検出工程による前記光信号の検出を前記液体試料導入板の前記表面ないしその近傍に焦点を当てて行う際、前記液体試料を前記液体試料導入板に導入させた後、前記結合体が前記液体試料導入板の前記表面上に重力沈降することを待つ必要があり、検出の準備に時間を要することとなる。特に、前記結合体の比重が小さい場合、より長い時間を要することとなる。
そのため、前記結合体移動工程が前記第1の結合体移動工程であるときに、更に、前記結合体引き寄せ工程を実施して、検出の準備時間を短縮化させ、より効率的な検出を行うことが好ましい。
なお、前記結合体引き寄せ工程としては、前記標的物質検出装置において説明した前記第3の磁場印加部により実施することができる。
前記結合体引き寄せ工程を実施する場合で、かつ、前記第1の結合体移動工程を前記結合体を前記液体試料導入板から遠ざかる方向に移動させて実施する場合では、特に制限はないが、前記液体試料導入保持工程後、前記結合体引き寄せ工程、前記結合体移動工程及び前記光信号検出工程をこの順で複数回繰返して実施すること(交互磁場印加)が好ましい。
前記交互磁場印加によって、同一の前記結合体に起因する前記光信号が繰返し検出されることとなるため、検出の精度を向上させることができる。更には、前記交互磁場印加を周期的に実施し、同一の前記結合体に起因する前記光信号の周波数に対して公知のロックイン増幅器を適用することによって、この光信号を増幅することも可能であり、検出の感度を向上させることができる。
(標的物質検出キット)
続いて、本発明の標的物質検出キットについて説明する。
前記標的物質検出キットは、標的物質と結合体を形成する磁性粒子及び前記標的物質と前記結合体を形成する光応答性物質と、前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる第1の結合物質と、前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とが同一の結合物質で構成される一液の検出液を有する。
なお、前記標的物質、前記磁性粒子、前記光応答性物質及び前記結合物質等としては、前記標的物質検出方法について説明した事項を適用することができる。
前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質を用いる場合、前記標的物質に対する親和性が等しいことから、前記検出液を親和性の差に応じて2液に分け、添加する順番を決定する必要がない。
また、前記検出液を一液として調製し保存しておくと、前記標的物質の前記被検体液に前記検出液を加えるだけで前記液体試料を調製することができ、検出前の前処理を効率的に行うことができる。
特に、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで親和性に差がないことから、これら結合物質が前記標的物質に結合する反応が同時並行的に生じ、前記標的物質と前記結合物質を介した前記磁性粒子及び前記光応答性物質との前記結合体を短時間に得ることができ、検出前の前処理に要する時間を短縮化させて、より一層の効率化を図ることができる。
以下では、図面を参照しつつ、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態について図5等を参照しつつ説明する。第1の実施形態では、標的物質検出装置1を用いる。なお、図5は、標的物質検出装置1の説明図である。
図5に示すように標的物質検出装置1は、公知の透過型顕微鏡に準じて構成され、液体試料導入板2と、光照射部3と、第1の磁場印加部4と、撮像デバイス5a及び対物レンズ5bで構成される光信号検出部5とで構成される。なお、撮像デバイス5aは、例えば、公知のCCDイメージセンサ等で構成され、2次元画像の取得が可能とされる。
液体試料導入板2は、前記標的物質及び前記標的物質と前記結合体を形成する前記磁性粒子を含む液体試料が表面上に導入されるとともに裏面側から照射される光Lの透過光Tを伝搬光として前記表面上方に伝搬可能とされる透光板で形成される。また、液体試料導入板2は、自身で液体試料保持部を構成し、前記表面上に前記液体試料が導入された後、前記液体試料を覆うようにカバーガラス等を配することで前記液体試料を保持する。
光照射部3は、液体試料導入板2の前記裏面側から光Lを照射可能とされる裏面側光照射部として構成される。
また、第1の磁場印加部4は、液体試料導入板2の前記表面側に配されるとともに液体試料導入板2の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板2から遠ざかる方向に移動させるように構成される。ここで、第1の磁場印加部4は、中央に貫通孔が形成された環状の電磁石で形成され、光照射部3から照射される光Lの透過光Tに基づく光信号が前記貫通孔を通じて光信号検出部5で検出可能とされる。
光信号検出部5は、液体試料導入板2の前記表面側に配されるとともに第1の磁場印加部4による前記磁場の印加前後における前記伝搬光に基づく光信号の信号変化を検出可能とされる。
標的物質検出装置1を用いて、第1の実施形態に係る標的物質検出方法を実施する。
先ず、液体試料導入板2の前記表面上に前記液体試料を導入し、保持させる(液体試料導入保持工程)。
ここで、前記液体試料としては、それぞれ前記標的物質と結合体を形成する前記磁性粒子及び前記光応答性物質と、前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる前記第1の結合物質と、前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることが肝要である(図1~図3参照)。
次に、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板2の前記表面上に重力沈降した後、液体試料導入板2の裏面側から光Lを照射し(光照射工程)、対物レンズ5bを調整して前記表面ないしその近傍を結像可能範囲内に入れ、撮像デバイス5aで前記表面上の光信号を取得する(光信号検出工程)。ここで、結像可能範囲とは、焦点深度及びその近傍における光信号を取得可能な範囲を指す。
このときの撮像デバイス5aで観察される観察視野内の液体試料導入板2の前記表面上の様子を模式的に図6に示す。
図6に示すように、観察視野内の液体試料導入板2の前記表面上には、例えば、液体試料導入板2の前記表面上方に伝搬される前記伝搬光の前記液体試料に対する透過光の光信号(バックグラウンド信号)とのコントラスト差により前記バックグラウンド信号と識別可能な4つの光信号a~dが観察される。図6では、光信号a,dが光点として観察されることを示しており、光信号b,cが暗点として観察されることを示している。
また、このときの光信号aを発生させる物質a’と光信号bを発生させる物質b’とを液体試料導入板2の側面から見たときの様子を図7に示す。なお、図7は、図6におけるA-A線断面図である。また、図7中の矢印Bは、光信号を取得可能な結像可能範囲を示している。
図7に示すように、物質a’及び物質b’は、液体試料導入板2の前記表面上に重力沈降された状態とされる。
次に、第1の磁場印加部4の前記電磁石を励磁して液体試料導入板2の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により第1の磁場印加部4に向けて引き寄せ、前記結合体を液体試料導入板2から遠ざかる方向に移動させる(結合体移動工程)。
次に、結像可能範囲及び観察視野を維持したまま前記結合体を液体試料導入板2から遠ざかる方向に移動させた後の液体試料導入板2の前記表面上の光信号を撮像デバイス5aで取得する(光信号検出工程)。
前記結合体移動工程後、撮像デバイス5aで観察される観察視野内の液体試料導入板2の前記表面上の様子を模式的に図8に示す。
前記結合体移動工程前の様子を示す図6と、前記結合体移動工程後の様子を示す図8との比較を通じて理解されるように、光信号a,bは、前記結合体移動工程前後で光信号が変化し、光信号c,dは、前記結合体移動工程前後で光信号が変化しない。
このことから、光信号a,bを発生させる物質a’,b’は、第1の磁場印加部4に引き寄せられる前記磁性粒子を含む前記結合体であり、前記標的物質を含むものであることが分かる。
これに対し、前記結合体移動工程前後で変化が確認されない、光信号c,dは、液体試料導入板2の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号であることが分かる。
前記結合体移動工程後の光信号aを発生させる物質a’と光信号bを発生させる物質b’とを液体試料導入板2の側面から見たときの様子を図9に示す。図9は、図8におけるA-A線断面図である。また、図9中の矢印Bは、光信号を取得可能な結像可能範囲を示している。
図9に示すように、物質a’及び物質b’は、第1の磁場印加部4での前記磁場の印加により、液体試料導入板2から遠ざかる方向に移動された状態とされる。
光信号aは、前記結合体移動工程前後で光点のサイズが大きく観察される(図8参照)。これは、物質a’が光信号検出部5の結像可能範囲内に存在するものの、前記結合体移動工程前における液体試料導入板2の前記表面にピントを合せた状態での焦点深度からは外れるため、光点のサイズが大きく観察されるものである(図9参照)。
これに対し、光信号bは、前記結合体移動工程後、消失することが確認される(図8参照)。これは、物質b’が光信号検出部5の結像可能範囲外に移動したためである(図9参照)。
以上のように、第1の実施形態に係る標的物質検出方法では、前記標的物質に基づく光信号を、液体試料導入板2の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号と明確に区別して検出することができるため、前記標的物質を高精度に検出することができる。また、液体試料導入板2の前記表面上に前記夾雑物が吸着している場合でも、その存在を無視した検出を行うことができるため、必ずしも検出ごとに液体試料導入板2に対する前記洗浄処理を行う必要がなく、効率的な検出を行うことができる。
加えて、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることから、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質を検出することができる。
次に、第1の実施形態の第1の変形例について図10を用いて説明する。第1の変形例では、標的物質検出装置1Aを用いる。なお、図10は、標的物質検出装置1Aの説明図である。
図10に示すように、標的物質検出装置1Aでは、標的物質検出装置1に対し、更に、第3の磁場印加部6を配して構成される。なお、この他は、標的物質検出装置1と同様であるため、説明を省略する。
第3の磁場印加部6は、液体試料導入板2の裏面側に配されるとともに液体試料導入板2に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板2の表面上に引き寄せ可能とされ、ここでは、貫通孔が形成された環状の電磁石で形成され、光照射部3が前記貫通孔を通じて液体試料導入板2の裏面側から光を照射可能とされる。
標的物質検出装置1Aを用いる場合、標的物質検出装置1を用いた検出のように、前記液体試料導入保持工程後、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板2の前記表面上に重力沈降することを待つことなく、前記液体試料導入保持工程後、前記結合体移動工程前に、第3の磁場印加部6での引き寄せ磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を一旦液体試料導入板2の表面上に引き寄せることができる(結合体引き寄せ工程)。
したがって、第1の実施形態の第1の変形例によれば、第1の実施形態が有する利点に加えて、検出に要する時間を短時間化させ、より効率的な前記標的物質の検出を行うことができる。
次に、第1の実施形態の第2の変形例について図11を用いて説明する。第2の変形例では、標的物質検出装置1Bを用いる。なお、図11は、標的物質検出装置1Bの説明図である。
図11に示すように、標的物質検出装置1Bでは、標的物質検出装置1における第1の磁場印加部4に代えて、第1の磁場印加部7を配して構成される。なお、この他は、標的物質検出装置1と同様であるため、説明を省略する。
第1の磁場印加部7は、電磁石により構成されるとともに、液体試料導入板2の前記表面上の検出領域(前記裏面側において光照射部3による光の照射を受け、前記表面上方に前記伝搬光を生じさせる領域)に対して斜め上方に配され、液体試料導入板2の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板2の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させる(第1の結合体移動工程)。
第1の磁場印加部7を用いて実施した前記第1の結合体移動工程後に、撮像デバイス5aで観察される観察視野内の液体試料導入板2の前記表面上の様子を模式的に図12に示す。なお、前記第1の結合体移動工程前における様子は、図6と同様である。
前記第1の結合体移動工程前の様子を示す図6と、前記第1の結合体移動工程後の様子を示す図12との比較を通じて理解されるように、光信号a,bは、前記第1の結合体移動工程前後で光信号が変化し、光信号c,dは、前記第1の結合体移動工程前後で光信号が変化しない。
したがって、第1の実施形態の第2の変形例によれば、第1の実施形態と同様に、光信号a,bを発生させる物質a’,b’が前記標的物質を含み、光信号c,dが液体試料導入板2の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号であると判断することができる。
第1の磁場印加部7を用いて実施した前記第1の結合体移動工程後に、光信号aを発生させる物質a’と光信号bを発生させる物質b’とを液体試料導入板2の側面から見たときの様子を図13に示す。なお、図13は、図12におけるA-A線断面図である。また、図13中の矢印Bは、光信号を取得可能な結像可能範囲を示している。
図13に示すように、物質a’及び物質b’は、第1の磁場印加部7による斜め上方からの引き寄せ磁場により、それぞれ、液体試料導入板2の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分x,xと、液体試料導入板2から遠ざかる方向のベクトル成分y,yとを持つ方向に移動する。
したがって、第1の実施形態の第2の変形例では、物質a’及び物質b’を液体試料導入板2から遠ざかる方向にのみ移動させる第1の実施形態と、前記第1の結合体移動工程後の様子が相違する。
この相違点は、前記標的物質の検出負担を軽減することにつながる。
即ち、図8及び図12を比較しつつ、光信号a,bに基づく前記標的物質の検出を試みた場合について検討すると、光信号bについては、両図とも光信号の消失する結果であり変わりがないが、光信号aについては、図8で示すケースではサイズ変化に基づく前記標的物質の検出のみとなり、移動に基づく前記標的物質の検出が行えないのに対し、図12で示すケースではサイズ変化に基づく前記標的物質の検出に加え、移動に基づく前記標的物質の検出を行うことができる点で、図12で示すケースの方が前記標的物質の検出を行い易い。
したがって、第1の実施形態の第2の変形例では、より一層、高精度に前記標的物質の検出を行うことができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態を図14等を参照しつつ説明する。第2の実施形態では、標的物質検出装置10を用いる。なお、図14は、標的物質検出装置10の説明図である。
図14に示すように、標的物質検出装置10は、公知の透過型顕微鏡に準じて構成され、液体試料導入板12と、光照射部13と、第2の磁場印加部18と、撮像デバイス15a及び対物レンズ15bで構成される光信号検出部15とで構成される。
液体試料導入板12、光照射部13及び光信号検出部15は、第1の実施形態の標的物質検出装置1における液体試料導入板2、光照射部3及び光信号検出部5と同様に構成することができ、標的物質検出装置10は、第1の磁場印加部4に代えて第2の磁場印加部18を配する点で標的物質検出装置1と相違する。以下、相違点について説明する。
第2の磁場印加部18は、液体試料導入板12の前記裏面側に配されるとともに液体試料導入板12の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板12の前記表面上に引き寄せ可能とされるとともに前記磁場を印加した状態で液体試料導入板12の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動可能とされる。ここで、第2の磁場印加部18は、貫通孔が形成された環状の永久磁石と前記永久磁石をX又はXの方向にスライド移動させるスライド移動部材(不図示)とで形成され、光照射部13が前記貫通孔を通じて液体試料導入板12の裏面側から光を照射可能とされる。
前記結合体の移動は、第2の磁場印加部18を磁場印加部として、第2の磁場印加部18からの前記磁場の印加により液体試料導入板12の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を液体試料導入板12の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で第2の磁場印加部18を液体試料導入板12の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、第2の磁場印加部18の移動に追従させて前記結合体を移動させることにより行う(第2の結合体移動工程)。また、第2の磁場印加部18を、環状に配置された複数の部材により構成した場合、各部材毎に磁場印加状態を制御することでスライド移動部材を用いずに第2の結合体移動工程を行うことも可能である。
この第2の磁場印加部18を用いる場合、前記第2の結合体移動工程において、前記磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を液体試料導入板12の表面上に引き寄せるため、前記液体試料導入保持工程後、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板12の前記表面上に重力沈降することを待つ必要がない。
前記第2の結合体移動工程後に、撮像デバイス15aで観察される観察視野内の液体試料導入板12の前記表面上の様子を模式的に図15に示す。なお、前記第2の結合体移動工程前における様子は、図6と同様である。
前掲図6と、前記第2の結合体移動工程後の様子を示す図15との比較を通じて理解されるように、光信号a,bは、前記第2の結合体移動工程前後で光信号が変化し、光信号c,dは、前記第2の結合体移動工程前後で光信号が変化しない。
したがって、第2の実施形態によれば、光信号a,bを発生させる物質a’,b’が前記標的物質を含み、光信号c,dが液体試料導入板12の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号であると判断することができる。
前記第2の結合体移動工程後に、光信号aを発生させる物質a’と光信号bを発生させる物質b’とを液体試料導入板12の側面から見たときの様子を図16に示す。なお、図16は、図15におけるA-A線断面図である。なお、図16中の矢印Bは、光信号を取得可能な結像可能範囲を示している。
図16に示すように、物質a’及び物質b’は、第2の磁場印加部18からの前記磁場の印加により液体試料導入板12の前記表面上に引き寄せられた後、第2の磁場印加部18の液体試料導入板12の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向への移動(図14中の方向X又はX)に基づき、第2の磁場印加部18の移動に追従して液体試料導入板12の前記表面の面内方向と平行な方向に移動する。
なお、図15,16では、物質a’及び物質b’が観察視野内で移動する例を示しているが、第2の磁場印加部18を液体試料導入板12の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向で、かつ、矩形状の観察視野を律するいずれかの一辺の方向と平行な方向に、前記一辺の長さよりも長い距離で移動させると、前記観察視野内の物質a’及び物質b’を観察視野外まで移動させることができ、光信号a,bの消失に基づく高精度の検出を行うことができる。
また、第1及び第2の実施形態における標的物質検出装置では、光学系を公知の正立顕微鏡の構成にしたがって、液体試料導入板2,12の前記裏面側から光を照射し、前記表面側に透過する前記伝搬光に基づく前記光信号を光信号検出部5,15で検出することとしているが、公知の倒立顕微鏡の構成にしたがって、前記液体試料導入板の前記表面側から光を照射し、前記裏面側に透過する前記伝搬光に基づく前記光信号を、前記裏面側に配された前記光信号検出部で検出することとしてもよい。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態を図17等を参照しつつ説明する。第3の実施形態では、標的物質検出装置20を用いる。なお、図17は、標的物質検出装置20の説明図である。
図17に示すように標的物質検出装置20は、公知の落射型顕微鏡に準じて構成され、液体試料導入板22と、光照射部23と、第1の磁場印加部24と、撮像デバイス25a、対物レンズ25b及びハーフミラー(ダイクロイックミラー等)25cで構成される光信号検出部25とで構成される。なお、撮像デバイス25aは、例えば、公知のCCDイメージセンサ等で構成され、2次元画像の取得が可能とされる。また、ハーフミラー25cは、反射によって液体試料導入板22の前記表面上に照射光を導入するための光照射部23の光学要素としても用いられる。
液体試料導入板22は、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面側から照射される光Lの反射光Rを前記伝搬光として前記表面上方に伝搬可能な反射板で形成される。また、液体試料導入板22は、自身で前記液体試料保持部を構成し、前記表面上に前記液体試料が導入された後、前記液体試料を覆うようにカバーガラス等を配することで前記液体試料を保持する。
光照射部23は、ハーフミラー25cによる反射光により液体試料導入板22の前記表面側から光Lを照射可能とされる表面側照射部として構成される。
また、第1の磁場印加部24は、液体試料導入板22の前記表面側に配されるとともに液体試料導入板22の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板22から遠ざかる方向に移動させるように構成される。ここで、第1の磁場印加部24は、中央に貫通孔が形成された環状の電磁石で形成されており、光照射部23から照射される光Lが前記貫通孔を通じて液体試料導入板22に照射可能とされるとともに光Lの反射光Rに基づく光信号が前記貫通孔を通じて光信号検出部25で検出可能とされる。
光信号検出部25は、液体試料導入板22の前記表面側に配されるとともに第1の磁場印加部24による前記磁場の印加前後における前記伝搬光に基づく光信号の信号変化を検出可能とされる。
なお、液体試料導入板22、光照射部23及び光信号検出部25(撮像デバイス25a、対物レンズ25b、ハーフミラー25c)は、公知の落射型顕微鏡にしたがって構成することができる。
標的物質検出装置20を用いて、第3の実施形態に係る標的物質検出方法を実施する。
先ず、液体試料導入板22の前記表面上に前記液体試料を導入し、保持させる(液体試料導入保持工程)。
ここで、前記液体試料としては、それぞれ前記標的物質と結合体を形成する前記磁性粒子及び前記光応答性物質と、前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる前記第1の結合物質と、前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることが肝要である(図1~図3参照)。
次に、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板22の前記表面上に重力沈降した後、光照射部23から照射される光Lをハーフミラー25cを介して液体試料導入板22の前記表面側に照射し(光照射工程)、照射対物レンズ25bを調整して前記表面ないしその近傍を結像可能範囲内に入れ、撮像デバイス25aで前記表面上の光Lの反射光Rに基づく光信号を取得する(光信号検出工程)。
次に、第1の磁場印加部24の前記電磁石を励磁して液体試料導入板22の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により第1の磁場印加部24に向けて引き寄せ、前記結合体を液体試料導入板22から遠ざかる方向に移動させる(第1の結合体移動工程)。
次に、結像可能範囲及び観察視野を維持したまま前記結合体を液体試料導入板22から遠ざかる方向に移動させた後の液体試料導入板22の前記表面上の光信号を撮像デバイス25aで取得する(光信号検出工程)。
このように実施される第3の実施形態では、前記光信号検出工程における前記第1の結合体移動工程前後における光信号が、前掲図6,8のように得られ、前記標的物質に基づく光信号を、液体試料導入板22の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号と明確に区別して検出することができる。
したがって、第3の実施形態によれば、前記標的物質を高精度に検出することができる。また、液体試料導入板22の前記表面上に前記夾雑物が吸着している場合でも、その存在を無視した検出を行うことができるため、必ずしも検出ごとに液体試料導入板22に対する前記洗浄処理を行う必要がなく、効率的な検出を行うことができる。また、前記散乱光、前記反射光、前記蛍光、前記光吸収等の様々な現象に基づいて発生する光信号を識別信号として取り扱うことができ、幅広い分野での利用を期待することができる。また、光信号の変化の態様として、焦点ずれに加えて消失する現象を利用することもできるため、明確に光信号の変化を捉えることができる。
加えて、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることから、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質を検出することができる。
次に、第3の実施形態の変形例を図18を用いて説明する。第3の実施形態では、標的物質検出装置20Aを用いる。なお、図18は、標的物質検出装置20Aの説明図である。
図18に示すように、標的物質検出装置20Aでは、標的物質検出装置20に対し、更に、第3の磁場印加部26が配されるとともに第1の磁場印加部24に代えて第1の磁場印加部27が配された構成とされる。なお、この他は、標的物質検出装置20と同様であるため、説明を省略する。
第3の磁場印加部26は、電磁石で形成され、液体試料導入板22の裏面側に配されるとともに液体試料導入板22に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板22の前記表面上に引き寄せ可能とされる。
第3の磁場印加部26によれば、標的物質検出装置20を用いた場合のように、前記液体試料導入保持工程後、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板22の前記表面上に重力沈降することを待つことなく、前記液体試料導入保持工程後、前記結合体移動工程前に、第3の磁場印加部26での引き寄せ磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を一旦液体試料導入板22の表面上に引き寄せることができる(結合体引き寄せ工程)。
したがって、第3の実施形態の変形例によれば、第3の実施形態が有する利点に加えて、検出に要する時間を短時間化させ、より効率的な前記標的物質の検出を行うことができる。
また、第1の磁場印加部27は、電磁石により構成されるとともに、液体試料導入板22の側方に配され、液体試料導入板22の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板2の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させる(第1の結合体移動工程)。
第1の磁場印加部24に代えて第1の磁場印加部27を用いる場合、前記光信号検出工程における前記第1の結合体移動工程前後における光信号が、前掲図6,12のように得られ、前記標的物質に基づく光信号を、液体試料導入板22の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号と明確に区別して検出することができる。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態を図19等を参照しつつ説明する。第4の実施形態では、標的物質検出装置30を用いる。なお、図19は、標的物質検出装置30の説明図である。
図19に示すように、標的物質検出装置30は、公知の落射型顕微鏡に準じて構成され、液体試料導入板32と、光照射部33と、第2の磁場印加部38と、撮像デバイス35a、対物レンズ35b及びハーフミラー35cで構成される光信号検出部35とで構成される。
液体試料導入板32、光照射部33及び光信号検出部35は、第3の実施形態の標的物質検出装置20における液体試料導入板22、光照射部23及び光信号検出部25と同様に構成することができ、標的物質検出装置30は、第1の磁場印加部24に代えて第2の磁場印加部38を配する点で標的物質検出装置20と相違する。以下、相違点について説明する。
第2の磁場印加部38は、液体試料導入板32の前記裏面側に配されるとともに液体試料導入板32の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板32の前記表面上に引き寄せ可能とされるとともに前記磁場を印加した状態で液体試料導入板32の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動可能とされる。ここで、第2の磁場印加部38は、永久磁石と前記永久磁石をX又はXの方向にスライド移動させるスライド移動部材(不図示)とで形成される。
前記結合体の移動は、第2の磁場印加部38を磁場印加部として、第2の磁場印加部38からの前記磁場の印加により液体試料導入板32の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を液体試料導入板32の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で第2の磁場印加部38を液体試料導入板32の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、第2の磁場印加部38の移動に追従させて前記結合体を移動させることにより行う(第2の結合体移動工程)。また、第2の磁場印加部38を、環状に配置された複数の部材により構成した場合、各部材毎に磁場印加状態を制御することでスライド移動部材を用いずに第2の結合体移動工程を行うことも可能である。
この第2の磁場印加部38を用いる場合、前記第2の結合体移動工程において、前記磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を液体試料導入板32の表面上に引き寄せるため、前記液体試料導入保持工程後、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板2の前記表面上に重力沈降することを待つ必要がない。
このように実施される第4の実施形態では、前記光信号検出工程における前記第2の結合体移動工程前後における光信号が、前掲図6,15のように得られ、前記標的物質に基づく光信号を、液体試料導入板32の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号と明確に区別して検出することができる。
なお、図15では、物質a’及び物質b’が観察視野内で移動する例を示しているが、第2の磁場印加部38を液体試料導入板32の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向で、かつ、矩形状の観察視野を律するいずれかの一辺の方向と平行な方向に、前記一辺の長さよりも長い距離で移動させると、前記観察視野の物質a’及び物質b’を観察視野外まで移動させることができ、光信号a,bの消失に基づく高精度の検出を行うことができる。
なお、前記結合体に基づく光信号の態様として、図6,8,12,15に例を挙げ、前記散乱光、前記反射光、蛍光等に起因する光信号であることの説明をしたが、これは、図面表示の便宜ためであり、前記光信号の態様としては、前記位相差、前記微分干渉などによる前記透過光に起因する光信号であってもよい。
また、前記結合体に基づく光信号の変化の態様として、図8,12,15に例を挙げ、前記位置移動、前記焦点ずれ、前記消失として説明をしたが、前記光信号の変化の態様としては、強度の増減(前記焦点ずれに基づく強度低下等)、位相変化(位置移動後の位相変化)、出現(観察視野外からの位置移動)も挙げることができる。
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態を図20等を参照しつつ説明する。第5の実施形態では、標的物質検出装置40を用いる。なお、図20は、標的物質検出装置40の説明図である。
図20に示すように標的物質検出装置40は、公知の導波モードセンサに準じて構成され、液体試料導入板42と、光源43a及び光学プリズム43bで構成される光照射部と、第3の磁場印加部46と第1の磁場印加部47と、光信号検出部45(撮像デバイス)とで構成される。なお、前記撮像デバイスは、例えば、公知のCCDイメージセンサ等で構成され、2次元画像の取得が可能とされる。
第3の磁場印加部46は、永久磁石と、永久磁石を光学プリズム43bから遠ざけたり近づけたりする(図20中の方向Y,Y参照)ことによって磁場印加のオン-オフを制御するスライド移動部材(不図示)で形成され、液体試料導入板42の裏面側に配されるとともに液体試料導入板42に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板42の前記表面上に引き寄せ可能とされる。
液体試料導入板42は、前記液体試料Eが前記表面上に導入されるとともに前記表面に対して全反射条件で照射される光Lの照射を受け、前記表面上方に近接場光を発生可能な検出板で形成される。また、液体試料導入板42は、自身で前記液体試料保持部を構成し、前記表面上に前記液体試料Eが導入された後、前記液体試料を覆うようにカバーガラスGを配することで前記液体試料Eを保持する。
前記光照射部は、光源43aから照射される光Lを光学プリズム43bを介して液体試料導入板42の前記表面に対して全反射条件で照射可能とされる全反射光照射部として構成される。なお、前記全反射光照射部は、例えば前記光学プリズム43bに代わり、グレーティングを介して前記液体試料導入板42の前記表面に対して全反射条件で前記光源43aから照射される光Lを導入する構成とすることもできる。
また、第1の磁場印加部47は、永久磁石と、永久磁石を光学プリズム43bから遠ざけたり近づけたりする(図20中の方向X,X参照)ことによって磁場印加のオン-オフを制御するスライド移動部材(不図示)で形成され、液体試料導入板42の側方に配され、液体試料導入板42の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板42の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させるように構成される。
標的物質検出装置40を用いて、第5の実施形態に係る標的物質検出方法を実施する。
先ず、液体試料導入板42の前記表面上に前記液体試料を導入し、保持させる(液体試料導入保持工程)。
ここで、前記液体試料としては、それぞれ前記標的物質と結合体を形成する前記磁性粒子及び前記光応答性物質と、前記磁性粒子を前記標的物質に結合させる前記第1の結合物質と、前記光応答性物質を前記標的物質に結合させる前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることが肝要である(図1~図3参照)。
次に、第3の磁場印加部46におけるスライド移動部材を操作して磁場を印加し、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板42の前記表面上に引き寄せた後、光源43aから照射される光Lを光学プリズム43bを介して液体試料導入板42の前記表面に対して全反射条件で照射し(光照射工程)、光信号検出部45で前記表面上の前記近接場光に基づく光信号Sを取得する(光信号検出工程)。
次に、第3の磁場印加部46におけるスライド移動部材を操作して第3の磁場印加部46からの磁場をオフし、第1の磁場印加部47におけるスライド移動部材を操作して第1の磁場印加部47からの磁場をオンにして液体試料導入板42の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により第1の磁場印加部47に向けて引き寄せ、前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板42の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させる(第1の結合体移動工程)。
次に、観察視野を維持したまま前記結合体を移動させた後の液体試料導入板42の前記表面上の光信号を光信号検出部45で取得する(光信号検出工程)。
このように実施される第5の実施形態では、前記光信号検出工程における前記第1の結合体移動工程前後における光信号が、図21,22のように得られ、前記標的物質に基づく光信号e,gを、液体試料導入板42の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号fと明確に区別して検出することができる。なお、図21が結合体移動工程前における、液体試料導入板42の前記表面上の様子を示す図であり、図22が結合体移動工程後における、液体試料導入板42の前記表面上の様子を示す図である。
図21,22に示すように前記近接場光を利用して得られる光信号は、前記近接場光の減衰によりバックグランドが暗視野とされ、第5の実施形態では、光点の光信号に基づき、前記標的物質を検出する。また、図示しないが、観察視野外からの移動に基づく、光信号の出現も検出対象とすることができる。
また、液体試料導入板42の前記表面上に前記夾雑物が吸着している場合でも、その存在を無視した検出を行うことができるため、必ずしも検出ごとに液体試料導入板42に対する前記洗浄処理を行う必要がなく、効率的な検出を行うことができる。また、前記散乱光、前記蛍光等の現象に基づいて発生する光信号を識別信号として取り扱うことができる。また、光信号の変化の態様として、位置移動に加え、出現・消失の現象を利用することもできるため、明確に光信号の変化を捉えることができる。
加えて、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の前記結合物質が用いられることから、効率的で、高精度かつ安定的に標的物質を検出することができる。
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態を図23等を参照しつつ説明する。第6の実施形態では、標的物質検出装置50を用いる。なお、図23は、標的物質検出装置50の説明図である。
図23に示すように、標的物質検出装置50は、公知の導波モードセンサに準じて構成され、液体試料導入板52と、光源53a及び光学プリズム53bで構成される光照射部と、第2の磁場印加部58と、光信号検出部55とで構成される。
液体試料導入板52、前記光照射部及び光信号検出部55は、第5の実施形態の標的物質検出装置40における液体試料導入板42、前記光照射部及び光信号検出部45と同様に構成することができ、標的物質検出装置50は、第1の磁場印加部47及び第3の磁場印加部46に代えて第2の磁場印加部58を配する点で標的物質検出装置40と相違する。以下、相違点について説明する。
第2の磁場印加部58は、液体試料導入板52の前記裏面側に配されるとともに液体試料導入板52の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により液体試料導入板52の前記表面上に引き寄せ可能とされるとともに前記磁場を印加した状態で液体試料導入板52の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動可能とされる。ここで、第2の磁場印加部58は、永久磁石と前記永久磁石をX又はXの方向にスライド移動させるスライド移動部材(不図示)とで形成される。
前記結合体の移動は、第2の磁場印加部58を磁場印加部として、第2の磁場印加部58からの前記磁場の印加により液体試料導入板52の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を液体試料導入板52の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で第2の磁場印加部58を液体試料導入板52の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、第2の磁場印加部58の移動に追従させて前記結合体を移動させることにより行う(第2の結合体移動工程)。また、第2の磁場印加部58を、環状に配置された複数の部材により構成した場合、各部材毎に磁場印加状態を制御することでスライド移動部材を用いずに第2の結合体移動工程を行うことも可能である。
この第2の磁場印加部58を用いる場合、前記第2の結合体移動工程において、前記磁場の印加により前記液体試料中の前記結合体の全部又は一部を液体試料導入板52の表面上に引き寄せるため、前記液体試料導入保持工程後、前記液体試料の液層中を浮遊する前記結合体が液体試料導入板52の前記表面上に重力沈降することを待つ必要がない。
このように実施される第6の実施形態では、前記光信号検出工程における前記第2の結合体移動工程前後における光信号が、図24,25のように得られ、前記標的物質に基づく光信号hを、液体試料導入板52の前記表面上のキズ、前記表面に吸着ないし前記表面上に存在する夾雑物、光源出力の揺らぎなどのノイズ信号iと明確に区別して検出することができる。なお、図24が結合体移動工程前における、液体試料導入板52の前記表面上の様子を示す図であり、図25が結合体移動工程後における、液体試料導入板52の前記表面上の様子を示す図である。
なお、第5及び第6の実施形態の標的物質検出装置では、前記導波モードセンサの構成にしたがって構成されることとしたが、これら実施形態の変形例として、液体試料導入板42,52を前記表面プラズモン共鳴センサで用いられる前記検出板とし、光学系を前記表面プラズモン共鳴センサで用いられる光学系とすることで、これら実施形態と同様に、前記結合体の移動に基づく前記標的物質の検出を行うことができる。また、公知の全反射顕微鏡の光学系をはじめとする、全反射により生じる近接場光を照明に利用する光学系を用いることもできる。
なお、上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
また、前掲の各標的物質検出装置においては、前記液体試料導入板として、前記透光板、前記反射板、前記検出板を用いた構成とされるが、前記導入板を用いて構成してもよい。この場合、前記光照射部として前記側面側光照射部を採用し、前記液体試料導入板の前記表面側又は前記裏面側に配された前記光信号検出部において、前記結合体からの散乱光、反射光等を検出する構成とすることができる。或いは、前記液体試料導入板の前記側面(前記液体試料導入板の前記側面側光照射部が配される側と反対側の側面)側に配された前記光信号検出部において、前記結合体の光吸収、透過光等を検出する構成とすることができる。
(実施例1)
実施例1として前記標的物質検出装置(外力支援型センサ)を用いた前記標的物質の検出試験を次のように行った。
実施例1では、図20に示す第5の実施形態の標的物質検出装置40の構成に準じて作製した標的物質検出装置を用いる。以下では、説明の便宜上、標的物質検出装置40の説明に用いた符号と同一の符号で実施例1に用いた標的物質検出装置の各構成部を説明する。
具体的に、液体試料導入板42としては、厚さ0.725mmのSiO基板上に厚さ25nmのSi層と厚さ343nmのSiO層とをこの順番で積層した平面導波路チップを用いた。光源43aには緑色LED光源(Thorlabs社、型番M530F2)に対して、出射端にコリメートレンズを装着した600μmコア径の光ファイバを接続し、出射端の先に500μm幅のエアスリットを配置したものを用いた。液体試料導入板42の裏面には底角35度のSiOガラス製のプリズム43bを光学的に密着させて配し、液体試料導入板42の表面に対して平行な角度でプリズム43bの入射面に光源43aからの光を入射させることとした。
前記標的物質としては、ノロウイルスのウイルス様粒子を用いた。
前記磁性粒子としては、25nm径の磁性ビーズ(NANOCS社製,Magnetic Nanoparticles,Protein G Labeled,型番MP25-PG)を用いた。
前記光応答性物質としては、60nm径の金ナノ粒子(Cytodiagnostics社製,60nm NHS-Activated Gold Nanoparticle Conjugation Kit,型番CGN10K-60)を用いた。
前記結合物質としては、抗ノロウイルスモノクローナル抗体を用いた。
前記液体試料としては、それぞれに前記結合物質を結合させた前記磁性粒子及び前記光応答性物質を含む前記検出液(一液)を予め調製し、この検出液を前記標的物質の被検体液に混合して調製した。
なお、前記検出液の使用量は、100μLであり、前記検出液中の前記結合物質の濃度は、1.3pg/Lである。また、前記被検体液の使用量は、100μLであり、前記被検体液中の前記標的物質の濃度は、1fg/Lである。
前記標的物質の具体的な検出方法は、次の通りである。
先ず、前記液体試料30μLを液体試料導入板42上に直径6mmの貫通穴を持つ厚さ1mmのシリコンゴムシートを設置することで形成した前記液体試料保持部に導入した。
前記液体試料を導入後、カバーガラスGを配して前記液体試料保持部に蓋をし、プリズム43bの底面側に配した第3の磁場印加部46をオンすることによって、前記磁性粒子を液体試料導入板42の表面上に引き寄せた。第3の磁場印加部46にはスライド部材に固定したネオジウム磁石を用いた。
第3の磁場印加部46による引き寄せ後、前記入射光の照射によって液体試料導入板42の表面に近接場を形成させるとともに、プリズム43bの側面に配した、スライド部材に固定したネオジウム磁石を用いて、第1の磁場印加部47をオンにして、光信号検出部45により液体試料導入板42の表面上の様子を動画で観測し、光信号の検出を行った。
光信号検出部45による前記光信号の観測には、4倍の対物レンズを備えた光学顕微鏡と、非冷却CMOSカメラ(Basler社製、型番acA2440-35uc)とを用いた。つまり、光信号検出部45(撮像デバイス)として、4倍の対物レンズを備えたCMOSカメラを用いたこととなる。
前記光応答性物質として用いた金ナノ粒子は、光源43aによる光照射に起因して局在プラズモン共鳴を起こすため、前記撮像デバイスでは、前記局在プラズモン共鳴により増強された前記光応答性物質からの散乱光が観測される。
以上の実施例1に係る標的物質検出方法による前記標的物質の検出は、前記検出液を前記標的物質の被検体液に混合してから5分以内に行う1回目検出と、調製した前記液体試料を冷蔵庫で一晩保存して行う2回目検出とで2回行った。
(比較例1)
前記結合物質として、前記抗ノロウイルスモノクローナル抗体に加え、抗ノロウイルスポリクローナル抗体を用い、前記抗ノロウイルスポリクローナル抗体を前記磁性粒子に結合させ、前記抗ノロウイルスモノクローナル抗体を前記光応答性物質に結合させたこと以外は、実施例1に係る標的物質検出方法と同様の物質構成で前記液体試料を調製した。
また、前記光信号の検出は、実施例1に係る標的物質検出方法と同様の方法で行うこととし、前記標的物質の被検体液に対し、先に前記抗ノロウイルスポリクローナル抗体を結合させた前記磁性粒子を加え、反応時間として15分間経過後、前記抗ノロウイルスモノクローナル抗体を結合させた前記光応答性物質を加えて前記液体試料を調製し、反応時間として15分経過後に行う1回目検出と、調製した前記液体試料を冷蔵庫で一晩保存して行う2回目検出とで2回行った。
なお、前記磁性粒子と結合させた前記抗ノロウイルスポリクローナル抗体を含む第1液の使用量は、50μLであり、前記第1液中の前記抗ノロウイルスポリクローナル抗体の濃度は、0.1pg/Lである。また、前記光応答性物質と結合させた前記抗ノロウイルスモノクローナル抗体を含む第2液の使用量は、50μLであり、前記第2液中の前記抗ノロウイルスモノクローナル抗体の濃度は、2.5pg/Lである。また、前記被検体液の使用量及び前記被検体液中の前記標的物質の濃度は、実施例1と同じである。
実施例1及び比較例1に係る各標的物質検出方法により、それぞれ2回ずつ行った検出の結果として、前記磁石の移動前後の様子を露光時間0.3秒で撮像した画像を図26(a)~図29(b)に示す。
図26(a)が実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の動画中の一の時点での画像を示し、図26(b)が実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記動画中の前記一の時点から7秒経過後の画像を示している。
また、図27(a)が実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の動画中の一の時点での画像を示し、図27(b)が実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の前記動画中の前記一の時点から5.3秒経過後の画像を示している。
また、図28(a)が比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の動画中の一の時点での画像を示し、図28(b)が比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記動画中の前記一の時点から6.3秒経過後の画像を示している。
また、図29(a)が比較例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の動画中の一の時点での画像を示し、図29(b)が比較例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の前記動画中の前記一の時点から2.7秒経過後の画像を示している。
なお、説明の簡単化のため、図26(a)~図29(b)の各図は、バックグラウンドを白、光信号検出位置を黒としている。
また、図26(a)~図29(b)の各図における視野は、大凡1.9mm×1.6mmである。
また、図26(a)~図29(b)の各図における円で囲んだ部分は、前記磁石の移動前後で移動があった光点を示しており、いずれの図においても、図の左方向(第1の磁場印加部47により前記磁性粒子が引き寄せられる方向)に光点が移動していることが確認される。
また、図26(a)~図29(b)における、各図(b)で示す画像を取得するタイミングがランダムであるが、これは、経過時間毎に取得した複数の画像のうち、移動する光点が明瞭に確認できるものを選択したためである。
更に、これら図26(a)~図29(b)に示す観察状況と同様の観察状況で、実施例1及び比較例1に係る各標的物質検出方法により、それぞれ2回ずつ行った合計4回の検出試験に関し、視野が異なる任意の3箇所に対し前記磁石の移動前後の様子を観察する3点測定法により得られた測定結果を説明する。
なお、前記3点測定法では、40秒間のカメラ観察の中で移動した光点数を測定することとし、測定結果は、3箇所における移動した光点数の平均値により評価する。
先ず、実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出では、前記平均値を2.7とする測定結果が得られた。
次に、実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出では、1回目検出と同様に、前記平均値を2.7とする測定結果が得られた。
次に、比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出では、前記平均値を3.0とする測定結果が得られた。
次に、比較例1に係る標的物質検出方法による2回目検出では、1回目検出の前記平均値を大きく下回り、前記平均値を0.3とする測定結果が得られた。
なお、全ての検出において、前記標的物質を含まないりん酸緩衝液を前記標的物質の前記被検体液の代わりとした対照用液体試料を用いて対照試験を行ったが、いずれの対照試験においても移動する光点が確認されないことから、移動した光点は、前記標的物質に前記結合物質を介して前記磁性粒子及び前記光応答性物質が結合した結合体に基づく光点であると結論付けることができる。
前記測定結果について、前記磁性粒子と前記光応答性物質とで、同じ前記結合物質(抗ノロウイルスモノクローナル抗体)を結合させた前記液体試料を用いる実施例1に係る標的物質検出方法では、前記平均値が1回目検出と2回目検出とで同じであることから(いずれも2.7)、時間経過に伴う変動がなく、安定的な検出結果を得ることができている。
一方、前記磁性粒子と前記光応答性物質とで、異なる前記結合物質(抗ノロモノクローナル抗体と抗ノロウイルスポリクローナル抗体)を結合させた前記液体試料を用いる比較例1に係る標的物質検出方法では、2回目検出の前記平均値(0.3)が1回目検出の前記平均値(3.0)を大きく下回り、ほぼ0となったことから、時間経過に伴う変動を受け、不安定的な検出結果となっていることが分かる。
また、比較例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記平均値(3.0)と比べて実施例1に係る標的物質検出方法による1回目検出の前記平均値(2.7)は遜色がなく、同時に実施例1に係る標的物質検出方法による2回目検出の前記平均値(2.7)も遜色がないことから、実施例1に係る標的物質検出方法では、高精度の検出結果を安定的に得られることが分かる。
加えて、実施例1に係る標的物質検出方法では、前記磁性粒子と前記光応答性物質とで同じ前記結合物質(抗ノロウイルスモノクローナル抗体)を結合させた前記液体試料を用いることから、前記結合物質間の親和性の相違を考慮する必要がなく、延いては、前記結合物質を結合させた状態の前記磁性粒子と前記光応答性物質とを加える際における、いずれを先に加えるかといった手順の問題や、前記液体試料の調製後、いつまでに検出を終えなければならないかといった時間管理の問題からの制約を受けず、単に、前記標的物質の被検体液に前記結合物質を結合させた状態の前記磁性粒子と前記光応答性物質とを加えるだけで検出の前処理を完了させることができることから、前記外力支援型センサを用いた前記標的物質の検出プロセスの高効率化を図ることができる。
更に、実施例1に係る標的物質検出方法の1回目検出及び2回目検出における前記平均値が同じである結果(いずれも2.7)は、裏返せば、前記液体試料の調製を極めて短時間(前記結合物質を結合させた状態の前記磁性粒子と前記光応答性物質とを前記標的物質の被検体液に混合してから5分以内)で完了させることができることを意味しており、前記外力支援型センサを用いた前記標的物質の検出プロセスの高効率化を、より一層顕著なものとする。
T 標的物質
第1の結合物質
第2の結合物質
M 磁性粒子
O 光応答性物質
1,1A,1B,10,20,20A,30,40,50 標的物質検出装置
2,12,22,32,42,52 液体試料導入板
3,13,23,33 光照射部
4,7,24,27,47 第1の磁場印加部
5a,15a,25a,35a 撮像デバイス
5b,15b,25b,35b 対物レンズ
25c,35c ハーフミラー
5,15,25,35,45,55 光信号検出部
6,26,46 第3の磁場印加部
18,38,58 第2の磁場印加部
43a,53a 光源
43b,53b 光学プリズム
L 光
透過光
反射光
a~i 光信号
a’,b’ 物質
,X,Y,Y 方向
,x,y,y ベクトル成分
G カバーガラス
E 液体試料
S 光信号

Claims (10)

  1. 標的物質に第1の結合物質を介して磁性粒子を結合させ、かつ、前記標的物質に第2の結合物質を介して光応答性物質を結合させた結合体を用いて前記標的物質を検出する方法であって、
    液体試料が表面上に導入されるとともに裏面側又は前記表面側から照射される光の透過光を伝搬光として前記光が照射される側と反対の面側に伝搬可能とされる透光板、前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面側から照射される光の反射光を前記伝搬光として前記表面上方に伝搬可能な反射板、前記液体試料が前記表面上に導入される導入板及び前記液体試料が前記表面上に導入されるとともに前記表面に対して全反射条件で照射される光により前記表面上に近接場光を発生可能な検出板のいずれかで形成される液体試料導入板が配され、かつ、前記液体試料が前記液体試料導入板の前記表面上に保持可能とされる液体試料保持部に対し、前記液体試料導入板の表面上に前記液体試料を導入し保持する液体試料導入保持工程と、
    前記液体試料導入板が前記透光板で形成されるときに前記液体試料導入板の前記裏面側から前記光を照射する裏面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記透光板及び前記反射板のいずれかで形成されるときに前記液体試料導入板の前記表面側から前記光を照射する表面側光照射工程、前記液体試料導入板が前記導入板で形成されるときに前記液体試料導入板上に保持される前記液体試料に対して前記液体試料導入板の側面側から前記光を照射する側面側光照射工程及び前記液体試料導入板が前記検出板で形成されるときに前記表面に対して全反射条件で前記光を照射する全反射光照射工程のいずれかである光照射工程と、
    前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向及び前記液体試料導入板から遠ざかる方向のいずれかの方向に移動させる第1の結合体移動工程並びに前記液体試料導入板の前記裏面側に配される磁場印加部からの磁場の印加により前記液体試料導入板の前記表面上に導入された前記液体試料中の前記結合体を前記液体試料導入板の前記表面上に引き寄せるとともに前記磁場を印加した状態で前記磁場印加部を前記液体試料導入板の前記表面の面内方向と平行な方向のベクトル成分を持つ方向に移動させ、前記磁場印加部の移動に追従させて前記結合体を移動させる第2の結合体移動工程のいずれかである結合体移動工程と、
    前記結合体移動工程に伴う前記結合体の移動を前記伝搬光又は前記近接場光に基づく光信号の信号変化を2次元画像により検出する光信号検出工程と、を含み、
    前記液体試料が、前記標的物質と前記第1の結合物質を介して結合される前記磁性粒子と、前記標的物質と前記第2の結合物質を介して結合され、前記磁性粒子と異なる物質である前記光応答性物質と、前記磁性粒子が結合された状態の前記第1の結合物質と、前記光応答性物質が結合された状態の前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とで同一の結合物質が用いられることを特徴とする標的物質検出方法。
  2. 標的物質が同一型の被結合部位を複数有する物質であり、結合物質が前記被結合部位と特異的に結合可能な物質である請求項1に記載の標的物質検出方法。
  3. 液体試料が、標的物質の被検体液に対し、それぞれが結合物質と結合された状態の磁性粒子及び光応答性物質を含む一液の検出液を混合させて調製される請求項1から2のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  4. 光応答性物質が、伝搬光又は近接場光の照射を受けて散乱光を発生させる請求項1から3のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  5. 光応答性物質が、伝搬光又は近接場光の照射を受けて蛍光を発生させる請求項1から3のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  6. 光信号検出工程が伝搬光に基づく光信号の信号変化を検出する工程であるときに、光応答性物質が前記伝搬光の照射を受けて光吸収を生じる光吸収物質を含む請求項1から3のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  7. 磁性粒子が、直径5nm~6,500nmの球状粒子である請求項1から6のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  8. 光応答性物質が、直径50nm~6,500nmの球状粒子である請求項1から7のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  9. 結合体移動工程が第1の結合体移動工程であるときに、更に、液体試料導入保持工程後、結合体移動工程前に、引き寄せ磁場の印加により液体試料中の結合体の全部又は一部を一旦液体試料導入板の表面上に引き寄せる結合体引き寄せ工程を実施する請求項1から8のいずれかに記載の標的物質検出方法。
  10. 標的物質と第1の結合物質を介して結合される磁性粒子と、前記標的物質と第2の結合物質を介して結合され、前記磁性粒子と異なる物質である光応答性物質と、前記磁性粒子が結合された状態の前記第1の結合物質と、前記光応答性物質が結合された状態の前記第2の結合物質とを含み、前記第1の結合物質と前記第2の結合物質とが同一の結合物質で構成される一液の検出液を有することを特徴とする標的物質検出キット。
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