JP7320384B2 - インクジェット捺染用インク及びインクセット - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット捺染用インク及びインクセットに関する。
繊布、不織布などの布帛に文字、絵、図柄などの画像を捺染する方法として、スクリーン捺染法、ローラ捺染法などが用いられている。しかし、これら捺染法は、画像毎にスクリーン枠や彫刻ローラなどを用意しなければならず、多品種少量生産や画像を即時変更するには不向きであった。
これに対し、インクジェット記録方式を適用したインクジェット捺染法は、スクリーン
枠や彫刻ローラなどを使わずコンピュータによる画像処理によって所望する画像を即座に
変更することが可能なため多品種小量生産性に優れ、また布帛に対してインクジェットヘ
ッドからダイレクトにインクを吐出して高精細で高品位な画像を形成することができるこ
とから近年注目されている。
なお、このインクジェット捺染法に用いられるインクとしては、例えば下記特許文献1
、2に開示されているものが公知である。
特開2009-30014号公報 特開2010-31402号公報
ところで、繊維製品に印刷を行う捺染印刷に固有の課題として、被服などに用いられる
布帛に印刷を施す場合、画像部分が布帛から剥離しない程度の高い堅牢性が求められている。
特許文献1のインクは、堅牢性を得ることを目的としている。しかし、堅牢性が高い捺染印刷物を得ることを目的としたインクを用いても、例えばポリエステル繊維のように綿と比べて繊維表面の凹凸が少ない繊維を含む布帛に画像を印刷すると、インク皮膜が布帛の伸縮に追従できずに脱離してしまう場合があり、堅牢度にはさらなる改善の余地がある。
また、特許文献2は、滲みを抑えつつインク溢れを防ぎ、裏面画像描写性に優れたプリ
ントを得ることを目的として、カルボキシル基を有する不飽和ビニルモノマーを成分とし
て重合した共重合体をアミンにより中和溶解した水溶性共重合物を含有する水性顔料イン
クであるが、このインクは画質を課題としたものであるため、比較的伸度の高い布帛に画
像形成したときに十分な摩擦堅牢度が得られないという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、優れた堅牢性を有する捺染印刷物を得ることができるインクジェット捺染用インク及びインクセットを提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも顔料、水分散性樹
脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット捺染用インクにおいて、前記水分散性樹脂を皮膜伸度が600%~2000%のウレタン樹脂とし、前記顔料と前記水分散性樹脂の重量比を1:3~1:16とすることで、高い摩擦堅牢性を有する捺染印刷物が作製可能なインクジェット捺染用インクが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記のインクジェット捺染用インクを提供する。
[1]顔料、水分散性樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット捺染用インクであって、
前記水分散性樹脂は皮膜伸度が600%~2000%のウレタン樹脂であり、
前記顔料と前記水分散性樹脂の重量比が1:3~1:16である、インクジェット捺染用インク。
[2]前記水分散性樹脂が引張強度10N/mm2 以下である、前記[1]に記載のインクジェット捺染用インク。
[3]前記水分散性樹脂がアニオン性の樹脂である、前記[1]又は前記[2]記載のインクジェット捺染用インク。
[4]前記水分散性樹脂の皮膜伸度が1500~1800%である、前記[1]~前記[3]の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
[5]ポリエーテル変性シロキサンとポリエーテル変性アルキルシロキサンの何れか一方をさらに含む、前記[1]~前記[4]の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
[6]前記水溶性有機溶剤がベンジルジグリコールを含む、前記[1]~前記[5]の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
また、本発明は、下記のインクセットを提供する。
[7]前記[1]~前記[6]の何れかに記載のインクジェット捺染用インクと、
水と凝集剤を含む前処理液と、
を含む、インクセット。
[8]前記凝集剤がカチオン性化合物及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[7]に記載のインクセット。
[9]前記凝集剤がカチオン性ポリマーを含む、[8]に記載のインクセット。
[10]前記カチオン性ポリマーがポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド)を含む、前記[9]記載のインクセット。
本発明によれば、高い摩擦堅牢性を有する捺染印刷物を作製することができるインクジェット捺染用インク及びインクセットを提供することができる。
以下、本発明に係る実施形態について説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定さ
れるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であ
る。
[1.インクジェット捺染用インク]
本発明のインクジェット捺染用インク(以下、単に「インク」とも称する)は、インクジェット方式によって記録媒体となる基材(布帛など)の表面に吐出されるものである。このインクは、従来技術の課題であった摩擦堅牢性の向上を図るため、含有する水分散性樹脂として皮膜伸度が600~2000%の範囲のウレタン樹脂を用いるとともに、顔料と水分散性樹脂との重量比を1:3~1:16とする。
以下、本発明のインクジェット捺染用インクに含まれる各成分について詳細に説明する
<1-1.顔料>
本発明のインクジェット捺染用インクには、色材として顔料が配合されている。この顔料は、当該技術分野で一般に用いられるものを任意に使用することができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料などの有
機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物などの無機顔料を用いることができる。ア
ゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料などが挙げられ
る。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔
料などが挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリ
ノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チ
オインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケ
トピロロピロール(DPP)などが挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネス
カーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどが挙
げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
これらの顔料は、何れか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用し
てもよい。
また、インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤や界面活性剤に代表さ
れる公知の顔料分散剤を使用することが好ましい。
高分子分散剤の市販品の具体例としては、TEGOディスパース740W、TEGOデ
ィスパース750W、TEGOディスパース755W、TEGOディスパース757W、
TEGOディスパース760などのTEGOディスパースシリーズ(何れもEVONIK
社製の商品名)、ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース41
000、ソルスパース41090、ソルスパース43000、ソルスパース44000、
ソルスパース46000などのソルスパースシリーズ(何れも日本ルーブリゾール株式会
社製の商品名)、ジョンクリル57、ジョンクリル60、ジョンクリル62、ジョンクリ
ル63、ジョンクリル71、ジョンクリル501などのジョンクリルシリーズ(何れもジ
ョンソンポリマー社製の商品名)、DISPERBYK-102、DISPERBYK-
185、DISPERBYK-190、DISPERBYK-193、DISPERBY
K-199(何れもBYK製の商品名)、FUJI SP A-54(冨士色素製の商品
名)、ポリビニルピロリドンK-30、ポリビニルピロリドンK-90(何れも第一工業
製薬株式会社製の商品名)などが挙げられる。
界面活性剤型分散剤としては、例えば、デモールEP、デモールN、デモールRN、デ
モールNL、デモールRNL、デモールT-45などのデモールシリーズ(何れも花王株
式会社製の商品名)などのアニオン性界面活性剤、エマルゲンA-60、エマルゲンA-
90、エマルゲンA-500、エマルゲンB-40、エマルゲンL-40、エマルゲン4
20などのエマルゲンシリーズ(何れも花王株式会社製の商品名)などの非イオン性界面
活性剤が挙げられる。
これらの顔料分散剤は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
顔料分散剤を使用する場合のインク中の配合量は、その種類によって異なり特に限定は
されないが、一般に、有効成分(固形分)の重量比で顔料1に対し、0.005~0.8
の範囲で使用されることが好ましい。
また、顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散顔料を使用してもよい。
自己分散性顔料としては、顔料表面にイオン性を有する親水性官能基が導入されたもの
であることが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、
静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基
としては、スルホン酸基、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、
リン酸基などが好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホ
スホニウム基などが好ましい。
自己分散顔料の市販品の具体例として、FUJI SP BLACK 8154(冨士
色素株式会社製の商品名)、CAB-O-JET200、CAB-O-JET300、C
AB-O-JET250C、CAB-O-JET260M、CAB-O-JET270な
どのCAB-O-JETシリーズ(何れもキャボット社製の商品名)、BONJET B
LACK CW-1S、CW-2、CW-3(何れもオリヱント化学工業株式会社製の商品名)などが挙げられる。
顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
インク中における顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的
光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、300nm以下であ
ることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であるこ
とがさらに好ましい。
顔料の配合量は、使用する顔料の種類によっても異なるが、インクの発色性やインク吐
出性の観点から、インク全質量に対して、例えば、0.3質量%以上5質量%以下の範囲で調整してよく、0.3質量%以上5質量%未満の範囲で調整するのが好ましい。
ここで、顔料の配合量をインク全量に対して0.3質量%以上とすると、インク転移量を過度に増加させることなく視認性を確保することができるため、良好な風合いを得やすい。また、顔料の配合量をインク全量に対して5質量%以下とすると、インク粘度が過度に高くなりにくく、吐出異常を生じにくい傾向がある。これは、一般的なインクジェットヘッドのノズルからの吐出に適するインク粘度として3~10mPa・s(常温時)の範囲で設定されていることから、顔料の配合量がインク全量に対して5質量%以下であると、このインク粘度の範囲内としやすく、ノズル詰まりによる吐出異常を起こしにくいと推測される。
<1-2.水分散性樹脂>
本発明のインクジェット捺染用インクには、水分散性樹脂が配合されている。
水分散性樹脂は、水中に樹脂が溶解するのでなく、水中に溶解しない樹脂が粒子状で分
散している状態のものをいう。
水分散性樹脂であれば特に制限はないが、インクジェット吐出性の観点から、平均粒子
径が300nm以下のものが好ましい。
水分散性樹脂としてウレタン樹脂を好ましく用いる。好適な水分散性ウレタン樹脂としては、ウレタン骨格を有し水分散性を有するものであれば特に限定はされないが、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基などのアニオン性の官能基を有する、アニオン性のウレタン樹脂が好ましい。
ウレタン骨格を有する樹脂の市販品の例としては、インプラニールDLP-R、インプ
ラニールDLC-F、インプラニールDLU、インプラニールDL2611、インプラニ
ールDLH、インプラニールDL1537(何れも住化コベストロウレタン株式会社製の
商品名)、スーパーフレックス130、スーパーフレックス460、スーパーフレックス
460S、スーパーフレックス470、スーパーフレックス500M(何れも第一工業製
薬株式会社製の商品名)、ハイドランWLS-201(DIC株式会社製の商品名)など
が挙げられる。
これらの水分散性ウレタン樹脂は、複数種を組み合わせて使用することができる。
水分散性樹脂は、基材として用いられる布帛の伸縮に対する追従性向上の観点から、皮
膜伸度が600%~2000%の範囲が好ましく、1500~1800%の範囲がより好
ましい。実施形態において、水分散性ウレタン樹脂は、基材として用いられる布帛の伸縮に対する追従性向上の観点から、皮膜伸度が600~2000%の範囲が好ましく、1500~1800%の範囲がより好ましい。
水分散性樹脂の皮膜伸度は、次のようにして測定することができる。まず、乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に水分散性樹脂を塗布し、23℃で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、及び120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを幅2cm、長さ4cmの柱状に切断して試験片とする。引張試験機を用い、測定温度20℃、測定スピード200mm/minで、得られた樹脂フィルム試験片を伸長させて樹脂フィルム試験片が破断するまでに伸長する長さを測定し、もとの長さに対するその割合をパーセントで表した値を皮膜伸度とする。引張試験機としては、テンシロン万能試験機RTC-1225A(株式会社オリエンテック製)を用いることができる。
また、水分散性樹脂は、インクに含まれる顔料を十分に被覆して優れた堅牢性を得るた
め、顔料と水分散性樹脂との重量比を1:3~1:16とするのが好ましい。実施形態において、顔料と水分散性ウレタン樹脂との重量比を1:3~1:16とするのが好ましい。
さらに、水分散性樹脂の引張強度は10N/mm2 以下の樹脂が好ましい。実施形態において、水分散性ウレタン樹脂の引張強度は10N/mm2 以下の樹脂が好ましい。これは、布帛の伸縮が大きすぎた場合でも樹脂自体が破断することでインク皮膜が布帛表面から剥離することを抑制し、優れた堅牢性が確保できるためである。
水分散性樹脂の引張強度は、次のようにして測定することができる。まず、乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に水分散性樹脂を塗布し、23℃で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、及び120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを幅2cm、長さ4cmの柱状に切断して試験片とする。引張試験機を用い、測定温度20℃、測定スピード200mm/minで、得られた樹脂フィルム試験片を伸長させて樹脂フィルム試験片が破断するまでの最大荷重を測定し、樹脂フィルム試験片の断面積で除した値を引張強度とする。引張試験機としては、テンシロン万能試験機RTC-1225A(株式会社オリエンテック製)を用いることができる。
<1-3.水溶性溶剤>
本発明のインクジェット捺染用インクには、水溶性の有機溶剤(以下、「水溶性溶剤」という場合もある。)が配合されている。
水溶性溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することが
でき、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが
好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノ
ール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノールなどの低級アル
コール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テト
ラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレン
グリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどのジオール類;1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオールなどのトリオール類、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類;モノアセチン、ジアセチンなどのアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホランなどを用いることができる。
水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であるこ
とがより好ましい。
これらの水溶性溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上
を組み合わせて使用することもできる。水溶性溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用
いられる場合はその合計含有量として、5~50質量%であることが好ましく、10~3
5質量%であることがより好ましい。
これら水溶性溶剤のうち、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルを用いると、構
造式中のフェニル基が作用して親和性が向上して摩擦堅牢性が高まる。これは、特に布帛
としてポリエステル繊維を含む布帛を使用したときにその効果が顕著に現れる。
<1-4.水>
本発明のインクジェット捺染用インクは、好ましくは水を含む。水としては、特に制限
されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの保存安定
性の観点から、カルシウムなどの多価金属イオンの含有量が低いことが好ましい。水とし
ては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水などが挙げられる。
水は、粘度調整の観点から、インク中に20質量%~80質量%含まれていることが好
ましく、30質量%~70質量%含まれていることがより好ましい。
<1-5.その他の含有成分について>
また、本発明のインクジェット捺染用インクには、インクの効果を損なわない範囲で、
表面張力調整剤(界面活性剤)、添加剤、増粘助剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤な
どの添加剤成分を、必要となるインク性能に応じて適宜含有させることができる。
表面張力調整剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性
剤、非イオン性界面活性剤、又は高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤を使用
できる。
この界面活性剤を配合することにより、インクジェット方式でインクを安定に吐出させ
ることがより容易となり、且つインクの浸透を適切に制御しやすくすることができるため
に好ましい。その添加量は(顔料分散剤として界面活性剤が使用される場合はその合計量
として)、界面活性剤の種類によっても異なるが、インクの表面張力、及び、布帛などの
基材への浸透速度の観点から、インク中に0.1~10質量%の範囲であることが好まし
い。
添加剤として使用するシリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエ
ーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性アルキルシロキサンなどのポリシロキサン系化
合物が好ましく挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品の具体例としては、BYK-307、BYK-347
(何れもBYK社製の商品名)などが挙げられる。
ポリシロキサン系化合物はシロキサンを含んでいるため疎水性が高く、界面活性剤とし
て表面に表出する部分が疎水基となるため、疎水性が向上するものと推測される。よって
、表面張力調整剤としてポリシロキサン系化合物を用いると、印刷物の湿潤摩擦堅牢性を
向上させることができる。
インクの粘度やpHを調整するために、インクに電解質を配合することもできる。電解
質としては、例えば硫酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸
カリウム、ホウ酸ナトリウムが挙げられ、2種以上を併用してもよい。硫酸、硝酸、酢酸
、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミンなど
も、インクの増粘助剤やpH調整剤として用いることができる。
酸化防止剤を配合することにより、インク成分の酸化を防止し、インクの保存安定性を
向上させることができる。酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸、L-アス
コルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリ
ウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いるこ
とができる。
防腐剤を配合することにより、インクの腐敗を防止して保存安定性を向上させることが
できる。防腐剤としては、例えば5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オ
ン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリ
ン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンなどのイソチアゾロン系防腐剤
;ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジンなどの
トリアジン系防腐剤;2-ピリジンチオールナトリウム-1-オキシド、8-オキシキノ
リンなどのピリジン・キノリン系防腐剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどの
ジチオカルバメート系防腐剤;2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2-
ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノ
ール、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタンなどの有機臭素系防腐剤;p-ヒドロ
キシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢
酸ナトリウム、サリチル酸を用いることができる。
[2.インクジェット捺染用インクの製法]
本発明のインクジェット捺染用インクは、上記各成分を適宜選択して容器内に混合し、
マグネティックスターラーやスリーワンモーターなどの攪拌機を用いて均一になるまで攪
拌して製造することができる。また、使用する成分によっては、反応速度を促進させるた
め、必要に応じて所定温度まで加温した状態で攪拌してもよい。
[3.印刷物の製造方法]
本発明のインクジェット捺染用インクを用いた印刷物の製造方法について説明する。
インクジェット捺染用インクを用いた印刷物の製造方法は、特に限定されない。本実施形態のインクジェット捺染用インクは、布帛などの基材に対して、インクジェット記録法により印刷されることが好ましい。使用するインクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、何れの方式のものであってもよく、例えば、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出されたインク液滴を基材上に付着させる。
記録媒体となる基材としては、布帛が好ましく用いられる。布帛としては、綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、キュプラなどの任意の天然・合成繊維からなる布帛を用いることができる。また、これら天然・合成繊維を用いた織物に限らず、編み物などであってもよい。例えば、ポリエステル繊維を含む布帛を用いてもよい。
また、本実施形態の捺染用インクジェットインクを用いた印刷物の製造方法において、
インクジェット捺染用インクによる印刷の前に、基材に前処理液を付与する工程を行ってもよい。前処理液は、例えば塗布等により付与してよい。前処理液は、例えば、基材表面の少なくとも印刷領域に、例えば塗布等により付与されることが好ましい。
本発明の実施形態のインクセットは、上述したインクジェット捺染用インクと前処理液を含んでよい。上述したインクジェット捺染用インクと前処理液とを含むインクセットを用いた場合、印刷前の前処理として前処理液を基材に塗布してよい。
[3-1.前処理液]
前処理液の塗布領域としては、基材における印刷領域や該領域を含めた基材表面全体と
してもよい。前処理液の塗布量は、基材の単位面積あたり、1g/m2 ~500g/m2
であることが好ましく、10g/m2 ~200g/m2 であることがより好ましい。
前処理液としては、特に限定されず、例としては、金属塩又はカチオン性化合物などの
凝集剤や、シリカなどの目止め剤を含むものが挙げられる。前処理液は、発色性向上の観点から、凝集剤を含むことが好ましく、金属塩及びカチオン性化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。前処理液塗布量は、堅牢性及び発色性の観点から、凝集剤の質量で0.1~50g/m2 が好ましく、1~25g/m2 がより好ましく、3~15g/m2 がより一層好ましい。
凝集剤として前処理液中に用いることができる金属塩としては、例えば多価金属塩が挙
げられる。多価金属塩としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜
鉛、バリウムなどの塩が挙げられるが、前処理液を布などの基材上に噴霧しアイロンで定
着する場合には、前処理液自身は無色であることが好ましく、また皮膚などに触れる可能
性を考慮すれば、影響のないカルシウム塩がより好ましい。
多価金属塩の前処理液中の濃度は、インク膜の形成及び定着性の観点から、1質量%~
25質量%程度であることが好ましく、2質量%~15質量%程度であることがより好ま
しい。
カチオン性化合物としては、例えば水溶性カチオン性化合物を用いてもよい。カチオン性化合物は、例えば、カチオン性ポリマーであってよく、水溶性カチオン性ポリマーが好ましい。カチオン性化合物としては、例えば、ポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド)等のカチオン性ポリマー等が挙げられる。カチオン性化合物は1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性化合物の前処理液中の濃度は、発色性及び風合いの観点から、0.1質量%~20質量%程度であることが好ましく、1質量%~15質量%程度であることがより好ましい。
前処理液には基材の毛羽立ち低減やインク密着性の観点で水分散性樹脂を含むことが好
ましい。水分散性樹脂は、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリル-スチ
レン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル-酢酸ビニル樹脂など、及びこれら
の2種以上の組み合わせを使用することができる。
具体的には、例えばスーパーフレックス107M、スーパーフレックス300、スーパ
ーフレックス361、スーパーフレックスE2000、スーパーフレックスE4000、
スーパーフレックスE4800などのスーパーフレックスシリーズ(何れも第一工業製薬
株式会社製の商品名)、アデカボンタイターHUX-950、アデカボンタイターHUX
-290Hなどのアデカボンタイターシリーズ(何れも株式会社アデカ製の商品名)、タ
ケラックW-512A6(三井化学ポリウレタン株式会社製の商品名)、ビニブラン12
25、ビニブラン1245L(何れも日信化学工業株式会社製の商品名)などが挙げられ
、それぞれ単独で用いられる他、複数種を併用してもよい。
前処理液に含まれる水は特に限定されないが、イオン交換水や蒸留水などの純水、超純
水など、不純物の少ない水が好ましい。水の含有量は、特に制限されず、粘度調整の観点
から、適宜調整することが好ましい。
なお、粘度調整と保湿効果の観点から、水溶性有機溶剤を添加することもできる。前処
理液に使用することができる水溶性有機溶剤として、前述のインクジェット捺染用インクに配合される水溶性有機溶剤と同様のものを使用することができる。
さらに前処理液には、防腐剤、粘度調整剤、酸化防止剤、界面活性剤などの、一般的に
インクに配合される添加剤を任意で加えてもよい。このような添加剤としては、前述のインクジェット捺染用インクに配合され得るものと同様のものを使用することができる。
また、前処理液の凝集剤として金属塩を使用した場合、基材としてポリエステル繊維を含む布帛を使用すると、金属塩の結晶は巨大化して粒子になりやすくインク皮膜に凹凸が生じてしまい擦過に弱くなる傾向がある。
これに対し、凝集剤としてポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリ
ド)のようなカチオン性化合物を使用すると、インクの凝集量が強く粒子になりにくいた
め堅牢度が悪化しにくい。そのため、印刷物の画像濃度が向上するとともに摩擦堅牢性を高める効果を奏することができる。
[4.作用・効果]
以上のように、本発明のインクジェット捺染用インクは、記録媒体である布帛に対して
インクジェット捺染法により印刷を行うためのインクであり、水分散性樹脂として、皮膜
伸度が600%~2000%の範囲、より好ましくは1500~1800%の範囲の水分散性ウレタン樹脂を配合する。これにより、基材である布帛に印刷されたインクが布帛
の伸縮に追従可能な堅牢性に優れた印刷物を得ることができる。
また、顔料と皮膜伸度が600%~2000%水分散性ウレタン樹脂との重量比を1:3~1:16とすると、水分散性樹脂によってインクに含まれる顔料を十分に被覆することができるため、優れた堅牢性を得ることができる。
さらに、水分散性ウレタン樹脂の引張強度を10N/mm2 以下にすることで、基材として布帛を使用する際に、布帛の伸縮が大きい場合であっても樹脂自体が破断してインク皮膜が布帛表面から剥離するのが抑制され、優れた堅牢性を確保することができる。
また、水分散性ウレタン樹脂としてアニオン性水分散性ウレタン樹脂を用いると、凝集により基材表面に樹脂成分が残りやすいため、顔料の定着性を向上させることができる。
さらに、添加剤としてポリシロキサン系化合物を使用すると、含有されるシロキサンの疎水性が高いため疎水性が向上し、結果として印刷物の湿潤摩擦堅牢性を向上させることができる。
また、水溶性溶剤のうち、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(ベンジルジグ
リコール)を用いると、構造式中のフェニル基が作用して親和性が向上して摩擦堅牢性が
高めることができる。これは、特に布帛としてポリエステル繊維を含む布帛使用したときにその効果が顕著に現れる。
さらに、前処理液に少なくともカチオン性化合物を配合することで、粒子になりにくく
堅牢性が悪化しにくいため、少量で発色性を向上させることができる。特に、カチオン性
化合物としてポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド)を用いると
、凝集力が強いためより好ましい。
また、顔料の配合量をインク全質量に対して0.3質量%以上5質量%未満の範囲で調
整すると、インクの発色性やインク吐出性を向上させることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
本発明のインクジェット捺染用インクを用いた印刷物に対する発色性、風合い、乾燥摩
擦堅牢性及び湿潤摩擦堅牢性についての評価試験を行った。
下記表1には、本評価試験で使用した前処理液A~Cの各成分及び配合量、下記表2に
は、本発明のインクジェット捺染用インクの実施例1~22で使用するインク1~17の
各成分及び配合量、下記表3には比較例1~4で使用するインク18~21の各成分及び
配合量、下記表4には実施例1~22の評価結果、下記表5には比較例1~4の評価結果
について示している。
<前処理液の調製>
表1に示す各成分を容器に入れ、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて
目視で均一になるまで十分に攪拌させ、表1に示す前処理液を得た。
表中における各成分は質量%で示し、カチオンポリマーにおける固形分及び有効成分で
あるカチオン性化合物の割合を共にパーセントで示した。
表1に記載の各成分の詳細については、下記の通りである。
-カチオン性ポリマー(凝集剤)-
・ポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド):第一工業製薬株式会
社製
-界面活性剤-
・サーフィノール465:日信化学工業株式会社製、非イオン性界面活性剤(固形分10
0質量%)
-金属塩-
・硝酸カルシウム4水和物:富士フイルム和光純薬株式会社製
-水-
・イオン交換水
<インクジェット捺染用インクの調製>
表2、3に示す各成分を容器に入れ、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用
いて目視で均一になるまで十分に攪拌させた後、孔径0.8μmのメンブレンフィルター
で濾過して粗粒を除去し、表2及び表3に示すインクジェット捺染用インクを得た。
表中における各成分は質量%で示し、皮膜伸度は破断するまでに伸長する長さの割合をパ
ーセント(%)で示し、水分散性樹脂の強度を引張強度(N/mm2 )で示した。
表2、3に記載の各成分の詳細については、下記の通りである。なお、表2は実施例1
~22で使用したインク1~17に関する成分表であり、表3は比較例1~4で使用した
インク18~21に関する成分表である。
(表2の成分詳細)
-顔料分散体-
・FUJI SP BLACK 8154:冨士色素株式会社製、自己分散顔料分散体(
顔料成分19.0%)
・BONJET BLACK CW-2:オリヱント化学工業株式会社製、自己分散顔料分散体(顔料成分15.0%)(表2には「CW2」として記載)
-水分散性樹脂-
・スーパーフレックス460:第一工業製薬株式会社製、ウレタン系水分散性樹脂(アニ
オン性)
・スーパーフレックス500M:第一工業製薬株式会社製、ウレタン系水分散性樹脂(ノ
ニオン性)
・インプラニールDLP-R:住化コベストロウレタン株式会社製、ウレタン系水分散性
樹脂(アニオン性)
・インプラニールDLH:住化コベストロウレタン株式会社製、ウレタン系水分散性樹脂
(アニオン性)
-界面活性剤-
・オルフィンE1010:日信化学工業株式会社製、非イオン性界面活性剤
-添加剤-
・BYK-307:BYK社製、ポリエーテル変性アルキルシロキサン
・BYK-347:BYK社製、ポリエーテル変性シロキサン
-水溶性溶剤-
・1,2ヘキサンジオール:富士フイルム和光純薬株式会社製
・ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
・ベンジルジグリコール:日本乳化剤株式会社製
・トリエチレングリコール:関東化学株式会社製
・グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
-水-
・イオン交換水
(表3の成分詳細)
-顔料分散体-
・FUJI SP BLACK 8154:冨士色素株式会社製、自己分散顔料分散体(
顔料成分19.0%)
-水分散性樹脂-
・スーパーフレックス460:第一工業製薬株式会社製、ウレタン系水分散性樹脂(アニ
オン性)
・スーパーフレックス420:第一工業製薬株式会社製、ウレタン系水分散性樹脂(アニ
オン性)
・Neocryl XK-190XP:楠本化成株式会社製、アクリル系水分散性樹脂(
アニオン性)
・インプラニールDL2611:住化コベストロウレタン株式会社製、ウレタン系水分散
性樹脂(アニオン性)
-界面活性剤-
・オルフィンE1010:日信化学工業株式会社製、非イオン性界面活性剤
-水溶性溶剤-
・グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
-水-
・イオン交換水
表2及び3に記載される水分散性ウレタン樹脂の皮膜伸度及び引張強度は、以下のようにして得られた値である。
乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に水分散性ウレタン樹脂を塗布し、23℃で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、及び120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを幅2cm、長さ4cmの柱状に切断して樹脂フィルム試験片とした。得られた樹脂フィルム試験片を用いて、以下のように皮膜伸度及び引張強度を測定した。
テンシロン万能試験機RTC-1225A(株式会社オリエンテック製)を用い、測定温度20℃、測定スピード200mm/minで、樹脂フィルム試験片を伸長させて樹脂フィルム試験片が破断するまでに伸長する長さを測定し、もとの長さに対するその割合をパーセントで表した値を皮膜伸度とした。
テンシロン万能試験機RTC-1225A(株式会社オリエンテック製)を用い、測定温度20℃、測定スピード200mm/minで、樹脂フィルム試験片を伸長させて樹脂フィルム試験片が破断するまでの最大荷重を測定し、樹脂フィルム試験片の断面積で除した値を引張強度とした。
<前処理工程>
210mm×74mmに裁断したポリエステル100%の白色ニットTシャツを試験片
として表1に示す配合量で作製した前処理液A~Cをエアブラシで試験片全面に塗布した
。前処理液の塗工量は、布重量の70%とした。前処理液塗布後、HotronixFu
sionヒートプレスを用いて180℃で60秒間加熱乾燥した。
<捺染印刷物の作製>
表2、3に示す配合量で作製したインク1~21を、インクジェットプリンタ「MMP
813BT-C」(マスターマインド社製)に導入し、前処理工程済みの試験片に印刷を
した。印刷画像は単色ベタとし、インク転移量は約20g/m2 とした。印刷後、Hot
ronixFusionヒートプレスを用いて150℃で60秒間加熱乾燥した。
<評価方法>
作製した印刷物に関する発色、風合い、乾燥摩擦堅牢度、湿潤摩擦堅牢度の各評価を行
った。評価結果は表4、5に示す。
-発色-
「X-Rite eXact」(X-Rite製)を用いて作製した印刷物のベタ画像
部分のOD値を測定した。ここでは、作製した印刷物の画像部分の発色を以下の評価基準
に従って評価した。
(評価基準)
A:OD値1.2以上
B:OD値1.1以上1.2未満
C:OD値1.0以上1.1未満
D:OD値1.0未満
-風合い-
作製した印刷物のベタ画像部分の風合いについて官能検査を行った。ここでは、作製し
た印刷物の画像部分を触診し、画像部分の風合いを以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:布地の風合いは損なわれていない
B:布地の風合いは若干異なるものの柔らかさを維持している
C:布地の風合いは多少異なるものの柔らかさを維持している
D:ごわごわとした感触がある
-乾燥摩擦堅牢度-
作製された捺染印刷物をJIS L0849に規定の方法に従い、学振型摩擦試験機R
T-200(大栄化学精器製作所製)を用いて乾燥摩擦試験を行った。試験内容は、綿1
00%カナキン3号を取り付け、重り無しの状態で100往復擦過し、変退色グレースケ
ールを用いて退色の度合いを評価した。
S:4-5級以上
A:4級以上4-5級未満
B:3-4級以上4級未満
C:3級以上3-4級未満
D:3級未満
-湿潤摩擦堅牢度-
作製された捺染印刷物をJIS L0849に規定の方法に従い、学振型摩擦試験機R
T-200(大栄化学精器製作所製)を用いて湿潤摩擦試験を行った。試験内容は、布帛
と同重量のイオン交換水で湿らせた綿100%カナキン3号を取り付け、重り無しの状態
で100往復擦過し、変退色グレースケールを用いて退色の度合いを評価した。
S:4-5級以上
A:4級以上4-5級未満
B:3-4級以上4級未満
C:3級以上3-4級未満
D:3級未満
<評価結果>
―実施例1~22の評価結果―
まず、実施例1~22の評価結果について考察する。
表4に示すように、実施例1~22のインクジェット捺染用インクは、発色、風合い、乾燥摩擦堅牢度及び湿潤摩擦堅牢度の評価について、各実施例は実用上問題なく良好な結果が得られていることがわかる。
実施例1~22は、共通して皮膜伸度が600%~2000%の範囲の水分散性ウレタン樹脂を使用し、顔料と水分散性樹脂との重量比を1:3~1:16にしたことで、基材の伸縮に追従してインク皮膜の破壊が生じにくく、また顔料が樹脂に十分被覆されるため、摩擦堅牢性に優れた捺染印刷物が得られることが確認された。実施例1~22は、発色、及び風合いの評価においても良好な結果が得られた。
実施例6は、乾燥摩擦堅牢度がC評価となっているが、これは実施例6で使用したインク6に配合した水分散性樹脂がノニオン性であり、インク1~5、7~17で使用したアニオン性水分散性樹脂と比べて凝集による試験片の表面における顔料定着性が若干劣っているものと推測される。
実施例12、15は、湿潤摩擦堅牢度がS評価となっているが、これは、実施例で使用
したインク9、12に皮膜伸度が1600%、引張強度が10N/mm2 以下の水分散性
樹脂が添加されているため、インク皮膜が試験片である布帛の伸縮に追従して脱離が抑制
され湿潤摩擦堅牢度が高まったものと推測される。
実施例16~19は、湿潤摩擦堅牢度がS評価となっているが、これは実施例で使用し
たインク13~16に添加剤としてポリシロキサン系化合物(ポリエーテル変性シロキサ
ン又はポリエーテル変性アルキルシロキサン)を配合したことで疎水性が向上して湿潤摩
擦堅牢度が高まったものと推測される。
実施例20は、湿潤摩擦堅牢度がS評価となっているが、これは水溶性溶剤としてベン
ジルジグリコール(ジエチレングリコールモノベンジルエーテル)を使用したことで、試
験片のポリエステル繊維との親和性が向上して湿潤摩擦堅牢度が高まったものと推測される。
前処理液を塗布した実施例1~20及び22は、前処理液を塗布していない実施例21に比べて発色の評価で優れていた。実施例1~20及び22は、試験片に前処理液を塗布しているため、画像濃度が向上したもの推測される。
実施例22は、乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度が共にC評価であり、これに対して、実施例22で用いられたインクと同じインク1を用いた実施例1の乾燥摩擦堅牢度及び湿潤摩擦堅牢度の評価は、実施例22より優れていた。実施例22では、ポリエステル繊維を含む試験片に金属塩を配合した前処理液を使用したことで、金属塩の結晶が巨大化して粒子になりやすくインク皮膜に凹凸が生じたことで、乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度が実施例1より低下したものと推測される。
また、比較例1~4は、発色と風合いについての評価は何れもA評価と優れているが、
乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度の評価がD評価と実施例1~22と比べてかなり低く、
実用上満足する結果が得られなかった。
―比較例1~4の評価結果―
次に、比較例1~4の評価結果について考察する。
比較例1で使用したインク18とインク1~17とを比較すると、インク18は顔料と
水分散性樹脂の配合比が1:2であるのに対し、インク1~17は顔料と水分散性樹脂の
配合比が1:3~1:16となっている。
このことから、比較例1は、水分散性樹脂の配合量が少なく顔料が水分散性樹脂に十分
被覆されないため、乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度が悪化したものと推測される。
比較例2、4で使用したインク19,21とインク1~17とを比較すると、インク1
9,21は配合される水分散性樹脂の皮膜伸度が600%未満であるのに対し、インク1
~17は水分散性樹脂の皮膜伸度が600%以上となっている。
このことから、比較例2、4は、水分散性樹脂の皮膜伸度が低くインク皮膜が破断しや
すいことで乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度が悪化したものと推測される。
比較例3で使用したインク20とインク1~17とを比較すると、インク20は水分散
性樹脂としてウレタン樹脂ではなくアクリル樹脂を使用しているのに対し、インク1~17はウレタン樹脂を使用している。
このことから、比較例3は、水分散性樹脂が皮膜伸度600~2000%の範囲のウレタン樹脂でないため試験片である布帛の伸縮に追従できず、乾燥摩擦堅牢度と湿潤摩擦堅牢度が悪化したものと推測される。

Claims (10)

  1. 顔料、水分散性樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット捺染用インクであって、
    前記水分散性樹脂は皮膜伸度が600%~2000%のウレタン樹脂であり、
    前記水分散性樹脂は引張強度10N/mm 2 以下であり、
    前記顔料と前記水分散性樹脂の重量比が1:~1:16である、インクジェット捺染用インク。
  2. 前記水分散性樹脂の皮膜伸度が1100%~2000%である、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク。
  3. 前記水分散性樹脂がアニオン性の樹脂である、請求項1又は請求項2記載のインクジェット捺染用インク。
  4. 前記水分散性樹脂の皮膜伸度が1500~1800%である、請求項1~請求項3の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
  5. ポリエーテル変性シロキサンとポリエーテル変性アルキルシロキサンの何れか一方をさらに含む、請求項1~請求項4の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
  6. 顔料、水分散性樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット捺染用インクであって、
    前記水分散性樹脂は皮膜伸度が600%~2000%のウレタン樹脂であり、
    前記顔料と前記水分散性樹脂の重量比が1:3~1:16であり、
    前記水溶性有機溶剤がベンジルジグリコールを含むインクジェット捺染用インク。
  7. 請求項1~請求項6の何れかに記載のインクジェット捺染用インクと、
    水と凝集剤を含む前処理液と、
    を含むことを特徴とするインクセット。
  8. 前記凝集剤がカチオン性化合物及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項7に記載のインクセット。
  9. 前記凝集剤がカチオン性ポリマーを含む、請求項8に記載のインクセット。
  10. 顔料、水分散性樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット捺染用インクと、水と凝集剤を含む前処理液と、を含むインクセットであって、
    前記水分散性樹脂は皮膜伸度が600%~2000%のウレタン樹脂であり、
    前記顔料と前記水分散性樹脂の重量比が1:3~1:16であり、
    前記凝集剤がポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド)を含むインクセット。
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