JP2010150454A - 捺染インクジェット用インクセット - Google Patents

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Abstract

【課題】各種繊維から構成される被印刷物において、洗濯堅牢度はもとより、摩擦堅牢度にも優れた捺染物を提供することができる捺染インクジェット用インクセットを提供する。
【解決手段】(1)ガラス転移点温度が10℃以下である水分散性樹脂(A)、及び水を含む前処理剤と、(2)顔料、皮膜伸度が400%〜1500%である水分散性樹脂(B)、及び水を含むインクジェット用インクと、(3)皮膜伸度が400%〜1500%である樹脂(C)を含むミドルコート剤と、(4)皮膜伸度が100%〜400%である樹脂(D)を含むオーバーコート剤と、の組み合わせである、捺染インクジェット用インクセットである。
【選択図】なし

Description

本発明は、捺染インクジェット用インクセット、及び捺染物の製法方法に関する。
繊布、不繊布等の布帛に、文字、絵、図柄等の画像を捺染する方法として、スクリーン捺染法やローラー捺染法の他に、近年では、コンピュタで画像処理して実質無版で捺染することができる捺染インクジェット方法が注目されている。
捺染用インクの色材として、染料と顔料がある。染料を用いる場合、発色の良さに加え、繊維の官能基との反応を利用して染着するために染色堅牢度が高いといった利点がある。しかし、染料自体の耐光性が低い、繊維の種類に合わせて染料を選定する必要があるとの問題がある。さらに、にじみ抑制のための前処理、ならびに、染料を定着させるための蒸し工程や未固着分の染料を洗浄する洗濯工程といった後処理が必要であって、これらの作業負担が生じるとともに、水質汚染やコスト高を引き起こす、といった問題が残されている。
これに対し、顔料を用いる場合、耐光性が高い、複数の繊維種に対応できる、色材除去工程が不要である、といった利点があり、染料に比べ、その簡便さが好まれている。
顔料インクでは、顔料を定着させるためのバインダー成分が必要となる。スクリーン方式の場合は、バインダーとなる樹脂の添加量を多くすることで堅牢性を確保することができるが、インクジェット方式の場合、インクの粘度、吐出性の観点から、樹脂の添加量には制約があるため、顔料定着性と堅牢性に問題が残っている。
特許文献1は、布帛への印字を複数回重ね、かつ複数回印字を重ねる間に少なくとも1回仮加熱定着を行い、最終回の印字後に本加熱定着を行う方法を開示する。この方法は、強固な洗濯堅牢性を付与するとともに、濃色布帛への視認性に優れた白色のインクジェット画像を得ることを目的としている。しかし、複数回の印字や途中の加熱定着等の工程増加から、生産性の点で課題を残している。
特許文献2は、記録媒体に、多価金属塩を含む反応液と、顔料と樹脂エマルジョンとを含むインク組成物とを付着させて印字を行う、二液を用いたインクジェット記録方法を開示する。この方法によれば、印字のにじみや印字ムラをおさえ、カラーブリードを有効に防止できることが記載されている。しかし、この方法は、洗濯及び摩擦堅牢度に改善が必要である。
特開2005−161583号公報 特開昭61−215787号公報
本発明は、各種繊維から構成される被印刷物において、洗濯堅牢度はもとより、摩擦堅牢度にも優れた捺染物を提供することができる捺染インクジェット用インクセット、及び捺染物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の一側面としては、(1)ガラス転移点温度が10℃以下である水分散性樹脂(A)、及び水を含む前処理剤と、(2)顔料、皮膜伸度が400%〜1500%である水分散性樹脂(B)、及び水を含むインクジェット用インクと、(3)皮膜伸度が400%〜1500%である樹脂(C)を含むミドルコート剤と、(4)皮膜伸度が100%〜400%である樹脂(D)を含むオーバーコート剤と、の組み合わせである、捺染インクジェット用インクセットである。
本発明の他の側面としては、上記捺染インクジェット用インクセットを用いる捺染物の製造方法であって、以下の工程を含む、捺染物の製造方法である:(1)布帛の少なくとも印刷領域に前記前処理剤を塗布する工程、(2)インクジェット記録法により、前記インクジェット用インクによって前記布帛を印刷する工程、(3)前記布帛の少なくとも印刷領域に前記ミドルコート剤を塗布する工程、及び(4)前記布帛の少なくとも印刷領域に前記オーバーコート剤を塗布する工程。
本発明の捺染インクジェット用インクセット、及び捺染物の製造方法によれば、各種繊維から構成される被印刷物において、洗濯堅牢度はもとより、摩擦堅牢度にも優れた捺染物を提供することができる。
以下、本発明に係る実施の形態について説明するが、本実施の形態における例示が本発明を限定することはない。
本発明の捺染インクジェット用インクセット(以下、単に「インクセット」と称することがある)としては、(1)ガラス転移点温度が10℃以下である水分散性樹脂(A)、及び水を含む前処理剤と、(2)顔料、皮膜伸度が400%〜1500%である水分散性樹脂(B)、及び水を含むインクジェット用インク(以下、単に「インク」と称することがある)と、(3)皮膜伸度が400%〜1500%である樹脂(C)を含むミドルコート剤と、(4)皮膜伸度が100%〜400%である樹脂(D)を含むオーバーコート剤と、の組み合わせである。
本発明のインクセットによれば、比較的軟らかい樹脂の前処理剤を介すことで、被印刷物とインクとの定着性を向上させ、洗濯堅牢度を向上させることができる。また、最表面が比較的硬い樹脂のオーバーコート剤であることで、相対的に軟らかい樹脂のインクがこすれ落ちることを防止し、摩擦堅牢度を向上させることができる。ここで、軟らかい樹脂のインクと、硬い樹脂のオーバーコート剤との接着性を向上させるために、ミドルコート剤を介している。これによって、各種繊維から構成される被印刷物において、洗濯・摩擦堅牢度を向上させることができる。
このような前処理剤、インク、ミドルコート剤、及びオーバーコート剤を用いることで、あらゆる種類の繊維から構成される布帛に対して、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる。例えば、綿は、短繊維のため繊維間の隙間が多く、また、OH基を有するため水分を保有しやすく、顔料が浸透しやすい。これに対し、ポリエステルは、長繊維のため繊維間の隙間が少なく、顔料が浸透しにくいため、強固な洗濯堅牢度を得ることが難しい。ポリエステルは繊維自体が水を吸収しにくい特性でもある。本発明のインクセットによれば、ポリエステルのようなインクが浸透しにくい繊維からなる布帛に対しても、前処理剤とインクの処方によってインクが強固に定着することができ、このインク膜に本発明のミドルコート剤及びオーバーコート剤を順に塗布することで、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる。
特に、本発明のインクセットは、ポリエステル製の織物のように繊維間の空隙が少なく、繊維自体の親水性も低いため、インク膜の接着性が得られにくい布帛に対しても、前処理剤とインクの処方によって、被印刷物とインク膜の接着性を向上させることができ、ミドルコート剤とオーバーコート剤の処方によって、印刷面の洗濯・摩擦堅牢度を向上させることができる。本発明は、綿や、編物においてももちろん効果的に適用することができ、その他の繊維に対しても同様である。
(1)前処理剤としては、ガラス転移点温度(以下、「Tg」と称することがある)が10℃以下である水分散性樹脂(A)、及び水を含む組成である。
水分散性樹脂(A)は、Tgが10℃以下であり、さらに、5℃以下であることがより好ましい。このような前処理剤をインクによる印刷の前に被印刷物に塗布することで、被印刷物とインク膜の接着性が向上し、優れた洗濯・摩擦堅牢度を得ることができる。また、布帛の毛羽立ちを抑制することもできる。
水分散性樹脂(A)は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。
水分散性樹脂(A)の種類は、上記Tgを有するものであれば、本発明の目的に鑑み特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−酢酸ビニル樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。具体的には、例えば、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックスシリーズのなかの107M、300、361、E2000、E4000、E4800、株式会社アデカ製アデカボンタイターシリーズのなかのアデカボンタイターHUX−950、290H、及び三井化学ポリウレタン株式会社製のタケラックW−512A6等が挙げられ、それぞれ単独で用いられる他、複数種を併用してもよい。
前処理剤全量に対し、水分散性樹脂の含有量(本発明で規定する物性を備えた樹脂以外の水分散性樹脂を前処理剤中に含む場合はそれらを含む合計量)は、その効果を適切に発揮させるために、前処理剤全量に対し、1質量%〜20質量%であることが好ましい。20質量%を超えて多量に配合すると、非印字部に付着させた前処理剤を洗濯によって除去することが困難となり、出来上がりの捺染物の商品性を低下させる恐れがある。
水としては、特に限定されないが、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等、不純物の少ない水が好ましい。水の含有量は、特に制限されず、粘度調整の観点から、適宜調整することが好ましい。
前処理剤には、多価金属塩を含ませてもよい。前処理剤中の多価金属塩は、インク中の顔料を凝集させるとともに樹脂エマルジョンを析出させて、被印刷物上にインク膜を形成させる作用を促進させることができる。
多価金属塩は、2価以上の多価金属イオンとアニオンから構成されることが好ましい。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+が挙げられる。アニオンとしては、Cl、NO 、CHCOO、I、Br、ClO が例示できる。塩として具体的には、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。これらの金属塩は、単独で使用しても、複数種を混合して用いてもよい。
多価金属塩の前処理剤中の濃度は、インク膜を適切に形成する観点から1質量%〜25質量%程度であることが好ましい。25質量%を超えてあまり多く入れすぎても、それ以上の効果を期待することはできない。
前処理剤に多価金属塩が含まれる場合、前処理剤の水分散性樹脂(A)は、共存する多価金属塩との安定性の観点から、ゼータ電位の絶対値が10mV未満のものであることが好ましい。
前処理剤は、水を含む水性溶液であるが、粘度調整と保湿効果の観点から、水溶性有機溶剤を添加することができる。前処理剤に使用することができる水溶性有機溶剤は、後述するインクに配合される水溶性有機溶剤と同様である。
さらに前処理剤には、防腐剤、粘度調製剤、酸化防止剤、界面活性剤等の、一般的にインクに配合される添加剤を任意で加えてもよい。このような添加剤としては、後述するインクに配合されるものと同様のものを使用することができる。
(2)インクとしては、顔料、皮膜伸度が400%〜1500%である水分散性樹脂(B)、及び水を含む組成である。
布帛のような伸縮しやすい被印刷物に対して洗濯・摩擦堅牢度を確保するためには、インク膜の伸縮のしやすさ、すなわち皮膜伸度が重要である。すなわち、インク膜が布帛の伸縮に追随して伸縮することができる伸度を有することにより、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる。一方、樹脂の伸度が大きすぎると、インク膜の被印刷物への密着性が減少し、洗濯・摩擦堅牢度が低下するため好ましくない。これは、インク膜の粘性が強くなりすぎて、繊維表面への充分なアンカー効果を発揮することができないことによると考えられる。
こうした観点から、水分散性樹脂(B)の皮膜伸度は400%〜1500%の範囲が好ましいく、さらに、500%〜1100%であることがより好ましく、400%〜1000%であることが一層好ましい。
水分散性樹脂(B)は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。
水分散性樹脂(B)の種類は、上記皮膜伸度を有するものであれば、本発明の目的に鑑み特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−酢酸ビニル樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。具体的には、例えば、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックスシリーズのなかのスーパーフレックス460、460s、470、500M、610、700、株式会社アデカ製アデカボンタイターシリーズのなかのアデカボンタイターHUX−380、290K、290H、三井化学ポリウレタン株式会社製タケラックW−512A6等が挙げられる。これらは、ウレタン骨格を有する水分散性樹脂である。これらの樹脂は単独で、又は2種以上の組み合わせとして使用することができる。
インク全量に対し、水分散性樹脂の含有量(本発明で規定する物性を備えた樹脂以外の水分散性樹脂をインク中に含む場合はそれらを含む合計量)は、質量比で、顔料1に対し0.5〜2.5の範囲であることが好ましい。これにより、水分散性樹脂(B)の配合効果を適切に発揮させることができる。すなわち、質量比で顔料1に対し0.5未満であると、充分な洗濯・摩擦堅牢度が確保できない恐れがある。一方、2.5を超えると、インクの粘度に影響を与えて印刷性を阻害する恐れがある。
さらに、インク放置後のヘッド目詰まりを回避し、復帰しやすさを確保する観点から、水分散性樹脂(B)の含有量は、インク全量に対し、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。
前処理剤に多価金属塩が含まれる場合、水分散性樹脂(B)は、ゼータ電位の絶対値が40mV以上という特性を有するアニオン性樹脂であることが好ましい。このようなゼータ電位を有することにより、前処理剤の多価金属塩との接触により樹脂が析出しやすく、隠蔽性や洗濯・摩擦堅牢度を向上させることができる。アニオン性樹脂が有するアニオン性基は、前処理剤を使用した際の多価金属塩の作用による析出のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
顔料は、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。白インクには白色顔料が、色インクには、白以外の色顔料が使用される。
具体的には、白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム等の無機顔料が挙げられる。無機顔料以外に、中空樹脂微粒子や、高分子微粒子を使用することもできる。
顔料の平均粒径は100nm〜500nmであることが好ましい。顔料の平均粒径が100nm未満の場合は隠蔽力が不充分となる傾向がみられ、500nmを超える場合は吐出安定性が不充分となる傾向にある。
なかでも、隠蔽力の観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの平均粒径も、同様に100nm〜500nmであることが好ましい。酸化チタンを使用する場合は、光触媒作用を抑制するために、アルミナやシリカで表面処理されたものを使用することが好ましい。表面処理量は、顔料中に5質量%〜20質量%程度であることが好ましい。
色顔料としては、例えば、アゾ系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等)、コバルト、鉄、クロム同、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。これらの顔料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
顔料の含有量(固形分量)は、使用する顔料の種類によっても異なるが、必要な発色を確保する等の観点から、インク中に1質量%〜30質量%含まれていることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましい。
インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤や界面活性剤に代表される顔料分散剤を使用することが好ましい。
高分子分散剤としては、例えば市販品として、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ(ソルスパース20000、27000、41000、41090、43000、44000)、ジョンソンポリマー社製のジョンクリルシリーズ(ジョンクリル57、60、62、63、71、501)、第一工業製薬株式会社製のポリビニルピロリドンK−30、K−90等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製デモールシリーズ(デモールN、RN、NL、RNL、T−45)等のアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ(エマルゲンA−60、A−90、A−500、B−40、L−40、420)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
前処理剤に多価金属塩が含まれる場合では、多価金属塩との相互作用を考慮すると、顔料分散剤はアニオン性であることが好ましい。
これらの顔料分散剤は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
顔料分散剤を使用する場合のインク中の配合量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般的に、有効成分(固形分量)の質量比で顔料1に対し、0.005〜0.5の範囲で使用されることが好ましい。
さらに、顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散性顔料を使用することもできる。市販品としては、例えば、キャボット社製CAB−O−JETシリーズ(CAB−O−JET200、300、250C、260M、270C)、オリエント化学工業株式会社製CW−1、CW−2等が挙げられる。
顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
インクに含まれる水としては、特に限定されないが、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等、不純物の少ない水が好ましい。水は、粘度調整の観点から、インク中に、20質量%〜80質量%含まれていることが好ましく、30質量%〜70質量%含まれていることがより好ましい。
本発明のインクには、粘度調整と保湿効果の観点から、室温で液体であって水に溶解可能な水溶性有機溶剤が含まれていることが好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、などのグリコール類、グリセリン、アセチン類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコール誘導体、トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、β−チオグリコール、スルホランなどを用いることができる。これらの水溶性溶剤は単独で、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
水溶性有機溶剤は、粘度調整と保湿効果の観点から、インク中に1質量%〜80質量%含まれていることが好ましく、10質量%〜60質量%であることがより好ましい。
本発明のインクには、上記の成分に加え、本発明の効果を阻害しない範囲で、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(界面活性剤)、消泡剤、定着剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を任意に含有させることができる。
湿潤剤としては、多価アルコール類を使用することができる。
表面張力調整剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤を使用することができる。
この界面活性剤を配合することにより、インクジェット方式でインクを安定に吐出させることができ、かつ、インクの浸透を適切に制御することができるために好ましい。その添加量は、界面活性剤の種類によっても異なるが、インク中に0.1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を超えて界面活性剤を多く配合すると、インクの表面張力を低下させ、その結果布帛上でのインクの浸透が速くなりすぎて、隠蔽性や発色性を妨げる恐れがある。
具体的には、アニオン性界面活性剤としては、花王株式会社製エマールシリーズ(エマール0、10、2F、40、20C)、ネオペレックスシリーズ(ネオペレックスGS、G−15、G−25、G−65)、ペレックスシリーズ(ペレックスOT−P、TR、CS、TA、SS−L、SS−H)、デモールシリーズ(デモールN、NL、RN、MS)等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ(アセタミン24、86)、コータミンシリーズ(コータミン24P、86P、60W、86W)、サニゾールシリーズ(サニゾールC、B−50)等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、エアプロダクツ社製サーフィノールシリーズ(サーフィノール104E、104H、420、440、465、485)等のアセチレングリコール系界面活性剤や、花王株式会社製エマルゲンシリーズ(エマルゲン102KG、103、104P、105、106、108、120、147、150、220、350、404、420、705、707、709、1108、4085、2025G)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、花王株式会社製アンヒトールシリーズ(アンヒトール20BS、24B、86B、20YB、20N)等が挙げられる。
インクの粘度やpHを調整するために、インクに電解質を配合することもできる。電解質としては、例えば、硫酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウムが挙げられ、2種以上を併用してもよい。硫酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン等も、インクの増粘助剤やpH調整剤として用いることができる。
酸化防止剤を配合することにより、インク成分の酸化を防止し、インクの保存安定性を向上させることができる。酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いることができる。
防腐剤を配合することにより、インクの腐敗を防止して保存安定性を向上させることができる。防腐剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系防腐剤;2−ピリジンチオールナトリウム−1−オキシド、8−オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤;2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸を用いることができる。
インクの粘度は、適宜調節することができるが、例えば吐出性の観点から、1mPa・s〜30mPa・sであることが好ましい。この粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおけるインク粘度である。
(3)ミドルコート剤は、皮膜伸度が400%〜1500%である樹脂(C)を含む組成である。
ミドルコート剤は、被印刷物に上記インクを印刷した後に、少なくとも印刷領域を含む印刷面に塗布して使用するためのものである。
本発明のインクは、インクのみでも洗濯・摩擦堅牢度をある程度は高めることができるが、後述するオーバーコート剤で印刷面を保護することによって摩擦堅牢度をさらに高めることができる。
しかし、オーバーコート剤の樹脂の皮膜伸度を低く設定するため、オーバーコート剤がインク膜に追従することができず、洗濯によって剥落が生じることがある。そこで、インク膜とオーバーコート剤との間にミドルコート剤を介することで、剥落を防止することができる。
このような作用は、ミドルコート剤とオーバーコート剤の樹脂を混同し一層とした場合には得ることができず、別々に樹脂層を形成することが重要である。また、インク中にミドルコート剤の成分を含有させることも考えられるが、インクに添加することができる樹脂の量は粘度の観点から限界があるため、ミドルコート剤として独立した層を設けることが好ましい。
ミドルコート剤の樹脂(C)の皮膜伸度は、400%〜1500%が好ましく、さらに、500%〜1100%がより好ましく、400%〜1000%が一層好ましい。400%以上であることで、ミドルコート剤が布帛及びインク膜の伸縮に追従して伸縮することができるため、ミドルコート剤の破断やひび割れを防ぐことができる。1500%を超えると、ミドルコート剤とインク膜の接着性の観点から、洗濯・摩擦堅牢度を充分に確保することができないため好ましくない。
ミドルコート剤は、環境負荷や安全性の観点から、水系であることが好ましい。また、ミドルコート剤に用いる樹脂(C)は、耐水性の観点から水分散性樹脂が好ましく、この場合、ミドルコート剤は、水分散性樹脂と水とを含む。水分散性樹脂は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。
ミドルコート剤の樹脂(C)の種類は、上記皮膜伸度を有するものであれば、本発明の目的に鑑み特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−酢酸ビニル樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。具体的には、例えば、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックスシリーズのなかのスーパーフレックス460、460s、470、610、700、株式会社アデカ製アデカボンタイターシリーズのなかのアデカボンタイターHUX−380、290K、290H、三井化学ポリウレタン株式会社製タケラックW−512A等が挙げられる。これらは、ウレタン骨格を有する水分散性樹脂である。これらの樹脂は単独で、又は2種以上の組み合わせとして使用することができる。
ミドルコート剤全量に対し、樹脂の含有量(本発明で規定する物性を備えた樹脂以外の樹脂をミドルコート剤中に含む場合はそれらを含む合計量)は、その効果を適切に発揮させるために、1質量%〜60質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましい。60質量%を超えて多量に配合すると、布帛に均一に塗布するのが困難となり、出来上がりの捺染物の商品性を低下させる恐れがある。
水としては、特に限定されないが、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等、不純物の少ない水が好ましい。水の含有量は、特に制限されず、粘度調整の観点から、適宜調整することが好ましい。
ミドルコート剤には、粘度調整と保湿効果の観点から、水溶性有機溶剤を添加することができる。このような水溶性有機溶剤としては、上記インクに配合されるものと同様のものを使用することができる。
本発明のミドルコート剤には、防腐剤、粘度調製剤、酸化防止剤、界面活性剤等の、一般的にインクに配合される添加剤を任意で加えてもよい。このような添加剤としては、上記インクに配合されるものと同様のものを使用することができる。
(4)オーバーコート剤は、皮膜伸度が100%〜400%である樹脂(D)を含む組成である。
オーバーコート剤は、被印刷物に上記したミドルコート剤を塗布した後に、少なくとも印刷領域を含む印刷面に塗布して使用するためのものである。
オーバーコート剤の樹脂(D)の皮膜頻度は、100%〜400%であり、さらに、150%〜350%がより好ましい。400%以下であることで、摩擦力によってインク膜が削られてしまうことを防止し、摩擦堅牢度を向上させることができる。一方、100%未満であると、インク膜の柔軟性が悪化し、風合いが低下することがあるため、好ましくない。また、オーバーコート膜の皮膜伸度が低すぎると、インク膜が布帛とともに伸縮するときに、オーバーコート膜が追従して伸縮することができずに、インク膜の方が破断し、ひび割れてしまうことがある。そのためにも、100%以上であることが好ましい。
オーバーコート剤の樹脂(D)は、環境負荷や安全性の観点から、水系であることが好ましい。また、オーバーコート剤に用いる樹脂(D)は、耐水性の観点から水分散性樹脂が好ましく、この場合、オーバーコート剤は、水分散性樹脂と水とを含む。水分散性樹脂は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。
オーバーコート剤の樹脂(D)の種類は、上記皮膜伸度を有するものであれば、本発明の目的に鑑み特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−酢酸ビニル樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。具体的には、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックスシリーズのなかのスーパーフレックス150、410、420、650、E2500、R5002、三井化学ポリウレタン株式会社製タケラックW615、W6010、W405、W635、WS5100等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
オーバーコート剤全量に対し、樹脂の含有量(本発明で規定する物性を備えた樹脂以外の樹脂をオーバーコート剤中に含む場合はそれらを含む合計量)は、その効果を適切に発揮させるために、1質量%〜60質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましい。60質量%を超えて多量に配合すると、布帛に均一に塗布するのが困難となり、出来上がりの捺染物の商品性を低下させる恐れがある。
水としては、特に限定されないが、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等、不純物の少ない水が好ましい。水の含有量は、特に制限されず、粘度調整の観点から、適宜調整することが好ましい。
オーバーコート剤には、粘度調整と保湿効果の観点から、水溶性有機溶剤を添加することができる。このような水溶性有機溶剤としては、上記インクに配合されるものと同様のものを使用することができる。
本発明のオーバーコート剤には、防腐剤、粘度調製剤、酸化防止剤、界面活性剤等の、一般的にインクに配合される添加剤を任意で加えてもよい。このような添加剤としては、上記インクに配合されるものと同様のものを使用することができる。
次に、本発明のインクを用いた捺染物(捺染印刷物)の製造方法について説明する。布帛としては、綿、絹、羊毛、麻、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アセテート、キュプラ等の任意の天然・合成繊維からなる布帛を用いることができる。本発明のインクは、様々な素材の布帛に対し、洗濯・摩擦堅牢度の優れた捺染物を提供することができる。特に、本発明によれば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アセテート、キュプラ等の長繊維から構成される織物を布帛として用いても、優れた洗濯・摩擦堅牢度を得ることができる。
本発明の捺染物の製造方法は、上記した捺染インクジェット用インクセットを用いる捺染物の製造方法であって、(1)布帛の少なくとも印刷領域に前処理剤を塗布する工程、(2)インクジェット記録法により、インクジェット用インクによって布帛を印刷する工程、(3)布帛の少なくとも印刷領域にミドルコート剤を塗布する工程、及び(4)布帛の少なくとも印刷領域にオーバーコート剤を塗布する工程を含む。このような製造方法によれば、洗濯・摩擦堅牢度の優れた捺染物を得ることができる。
工程(1)では、被印刷物である布帛の少なくとも印刷領域に前処理剤を塗布する。塗布領域は、印刷領域を含めた布帛全体としてもよい。
前処理剤の塗布量は、布帛の単位面積あたり、1g/m〜500g/mであることが好ましく、10g/m〜200g/mであることがより好ましい。200g/mを超えて多量に塗布すると、非印字部に付着させた前処理剤を選択によって除去することが困難となり、出来上がりの捺染物の商品性を低下させる恐れがある。
工程(2)では、印刷はインクジェット記録法により行われる。使用するインクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等、いずれの方式のものであってもよく、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクの液滴を吐出させ、吐出されたインク液滴を、前処理剤が塗布された布帛上に付着させるようにすることができる。
布帛が濃色である場合は、インクの発色性が低下する恐れがある。したがって、布帛上の印刷領域に、まず白インクを印刷し、そこに色インクを重ねることで、発色性のよい捺染物を得ることができる。一方、布帛が白色である場合に対しては、色インクを印刷するだけで、発色性にも優れた捺染物を得ることができ、この場合は、インクを重ねる必要がないため、捺先部分の風合いや通気性にも優れている。
インクの塗布量は、特に制限されないが、布帛の単位面積あたり、500g/m以下であることが、風合いの観点から好ましい。
工程(3)では、工程(2)でインクが印刷された布帛の少なくとも印刷領域にミドルコート剤を塗布する。塗布領域は、印刷領域を含む布帛全面としてもよい。
ミドルコート剤の塗布量は、布帛の単位面積あたり、1g/m〜500g/mであることが好ましく、10g/m〜100g/mであることがより好ましい。この範囲であることで、堅牢度の向上と風合い悪化の抑制を両立することができる。
工程(4)では、工程(3)でミドルコート剤が塗布された布帛の少なくとも印刷領域にオーバーコート剤を塗布する。オーバーコート剤の塗布領域は、印刷領域を含む布帛全体としてもよい。
オーバーコート剤の塗布量は、布帛の単位面積あたり、1g/m〜500g/mであることが好ましく、10g/m〜100g/mであることがより好ましい。この範囲であることで、堅牢度の向上と風合い悪化の抑制を両立することができる。
上記した前処理剤、ミドルコート剤、及びオーバーコート剤を布帛に塗布する方法は、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法等の任意の方法を使用することができ、インクジェット記録法やスクリーン印刷法を用いてもよい。
工程(1)の前処理工程後、工程(2)の印刷工程後、及び工程(4)のオーバーコート剤の塗布後に、それぞれ、布帛に対し100℃〜180℃程度の熱処理を行うことが好ましい。工程(3)のミドルコート剤の塗布後は、熱処理を行わずに、そのままオーバーコート剤を塗布してよい。
工程(1)の後の熱処理は、前処理剤中の水分を乾燥させるものであり、それにより、前処理剤中の水分が、インクを印刷した際のインクと混ざって画像を滲ませる恐れを回避するとともに、布表面の毛羽立ちを矯正することもできる。工程(2)の後の熱処理により、インクを乾燥させるとともに、水分散性樹脂を成膜させて強固なインク膜を形成させることができる。工程(4)の後の熱処理は、ミドルコート剤及びオーバーコート剤の樹脂を成膜させて強固な樹脂膜を形成させるためであり、また、ミドルコート剤及びオーバーコート剤に水が含まれる場合は水分を乾燥させるためでもある。
工程(2)で、白インクと色インクを印刷する場合は、色インク印刷後に熱処理を行うだけでよい。
熱処理条件は、特に限定されないが、例えば、工程(1)の後の熱処理は160℃で30秒間程度、工程(2)の後の熱処理、及び工程(4)の後の熱処理はともに、160℃で60秒間程度で行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1及び表2に示す成分を使用して、実施例及び比較例の前処理剤、インク、ミドルコート剤、及びオーバーコート剤を調製した。使用した水分散性樹脂を表3に示す。その他の成分は以下のものを使用した。
硝酸カルシウム・四水和物(和光純薬工業株式会社製)
自己分散性顔料(自己分散顔料CW−2、固形分15%、オリヱント化学工業株式会社製)
サーフィノール465(表面張力調整剤として使用、エアプロダクツ社製)
エチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)
グリセリン(和光純薬工業株式会社製)
前処理剤の水分散性樹脂のTg、インクの水分散性樹脂の皮膜伸度、ミドルコート剤の水分散性樹脂の皮膜伸度、及びオーバーコート剤の水分散性樹脂の皮膜伸度について、各物性を次の手順に従って測定した。結果を表1及び表2に併せて示す。
<Tg>
Tgは、乾燥後の樹脂について、示差走査熱量計(DSC8230L2、株式会社リガク製)を用い、昇温速度10℃/分にて測定した。
<皮膜伸度>
乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に水分散性樹脂を塗布し、常温で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、及び120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して、水分散性樹脂フィルムを作製した。
テンシロン万能試験機RTC−1225A(株式会社オリエンテック製)を用い、測定温度20℃、測定スピード200mm/minで、水分散性樹脂フィルムを伸長させて水分散性樹脂フィルムが破断するまでに伸長する長さを測定し、その割合をパーセントで皮膜伸度として表した。
<前処理剤の調製>
表1及び表2に示した配合(どちらも固形分量で表示)となるように各成分を混合し、実施例及び比較例の前処理剤を調製した。
<色(黒)インクの調製>
表1及び表2に示した配合(どちらも固形分量で表示)となるように各成分を混合し、5μmのメンブレンフィルターで粗粒子を除去して、実施例及び比較例の黒インクを調製した。
<ミドルコート剤の調製>
表1及び表2に示した配合(どちらも固形分量で表示)となるように各成分を混合し、実施例及び比較例のミドルコート剤を調製した。
<オーバーコート剤の調製>
表1及び表2に示した配合(どちらも固形分量で表示)となるように各成分を混合し、実施例及び比較例のオーバーコート剤を調製した。
<捺染物の作製>
得られた各前処理剤、インク、ミドルコート剤、及びオーバーコート剤を使用して、次のように捺染印刷を行った。
布帛として、JIS L 0803準拠、染色堅牢度試験用添付白布(ポリエステル100%の織物)を用いた。
布帛に対して、60g/mとなるように、エアスプレーを用いて前処理剤を塗布し、160℃で30秒で熱処理をした。
マスターマインド社製テキスタイルプリンタ「MMP813BT」にインクを導入し、前処理をした布帛に対し、黒インクで1440dpi×720dpi、80mm×80mmのベタ印刷を行い、160℃で60秒の熱処理を行った。
捺染物に対して60g/mとなるように、エアスプレーを用いてミドルコート剤を塗布した。
捺染物に対して60g/mとなるように、エアスプレーを用いてオーバーコート剤を塗布し、160℃で60秒の熱処理を行った。
なお、比較例7として、ミドルコート剤を塗布しないものを作製した。また、比較例8として、ミドルコート剤に適する水分散性樹脂(9)とオーバーコート剤に適する水溶性樹脂(8)とを混合後に、オーバーコート剤と同様にして塗布したものを作製した。その他の工程は、上記した捺染物の作製方法と同様に作製した。
得られた捺染物の評価を、次のように行った。結果を表1及び表2に併せて示す。
<洗濯堅牢度>
三洋電機株式会社製全自動洗濯機ASW−45A1型を用いて、各印捺物を10回洗濯し、捺染部分の剥落の有無を目視で観察した。
○:捺染部分の剥落がなかった
×:捺染部分の剥落があった
<摩擦堅牢度>
JIS L0849に規定の方法に従い、I型試験機を用いて試験を行った。乾摩擦はJIS L0849に規定される乾燥試験、湿摩擦はJIS L0849に規定される湿潤試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて評価した。
◎:4−5級〜5級
○:3−4級〜4級
△:2−3級〜3級
×:2級以下
Figure 2010150454
Figure 2010150454
Figure 2010150454
表1及び表2に示すように、実施例のインクでは、強固な洗濯堅牢度と摩擦堅牢度が得られた。これに対し、比較例のインクでは、いずれも充分な堅牢度が得られなかった。なお、比較例7は、ミドルコート剤を塗布しなかったものであり、洗濯堅牢度が低下した。比較例8は、ミドルコート剤とオーバーコート剤にそれぞれ適する2種類の樹脂を混合後に塗布したものであり、洗濯及び摩擦堅牢度のいずれも十分な効果が得られなかった。これらの実施例及び比較例より、前処理剤の水分散性樹脂のTg、インクの水分散性樹脂の皮膜伸度、ミドルコート剤の樹脂の皮膜伸度、及びオーバーコート剤の樹脂の皮膜伸度が重要であることがわかった。

Claims (5)

  1. (1)ガラス転移点温度が10℃以下である水分散性樹脂(A)、及び水を含む前処理剤と、
    (2)顔料、皮膜伸度が400%〜1500%である水分散性樹脂(B)、及び水を含むインクジェット用インクと、
    (3)皮膜伸度が400%〜1500%である樹脂(C)を含むミドルコート剤と、
    (4)皮膜伸度が100%〜400%である樹脂(D)を含むオーバーコート剤と、の組み合わせである、
    捺染インクジェット用インクセット。
  2. 前記ミドルコート剤の樹脂(C)は水分散性樹脂であり、前記ミドルコート剤は水をさらに含む、請求項1に記載された捺染インクジェット用インクセット。
  3. 前記オーバーコート剤の樹脂(D)は水分散性樹脂であり、前記オーバーコート剤は水をさらに含む、請求項1又は2に記載された捺染インクジェット用インクセット。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載された捺染インクジェット用インクセットを用いる捺染物の製造方法であって、以下の工程を含む、捺染物の製造方法:
    (1)布帛の少なくとも印刷領域に前記前処理剤を塗布する工程、
    (2)インクジェット記録法により、前記インクジェット用インクによって前記布帛を印刷する工程、
    (3)前記布帛の少なくとも印刷領域に前記ミドルコート剤を塗布する工程、及び
    (4)前記布帛の少なくとも印刷領域に前記オーバーコート剤を塗布する工程。
  5. 前記布帛が長繊維から構成される織物である、請求項4に記載された捺染物の製造方法。
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