以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
本開示において、バッテリは、複数のモジュール(複数のブロックとも呼ばれる)を含む組電池である。複数のモジュールは、直列に接続されていてもよいし並列に接続されていてもよい。複数のモジュールの各々は、直列または並列に接続された複数のセル(単電池)を含む。
本実施の形態では、複数の車両から使用済みのバッテリが回収され、回収されたバッテリが再利用される。以下では、使用済みのバッテリの回収から、再利用されたバッテリの販売までの物流の態様を「電池物流モデル」と称する。
一般に、バッテリの「再利用」は、リユース、リビルドおよび資源リサイクルに大別される。リユースの場合、回収されたバッテリは、必要な出荷検査を経て、そのままリユース品として出荷される。リビルトの場合、回収されたバッテリは、たとえば一旦、モジュールに分解される。そして、分解されたモジュールのうち、性能回復後に利用可能となるモジュール(そのままで利用可能なモジュールであってもよい)が組み合わされ、新たなバッテリが製造される。新たに製造されたバッテリは、出荷検査を経て、リビルト品として出荷される。これに対し、資源リサイクルでは、各セルから再生可能な材料が取り出されるため、回収されたバッテリが他のバッテリとして使用されることはない。
本開示におけるバッテリの「再利用」とは、バッテリのリユースまたはリビルドを意味する。なお、リビルドの場合、バッテリを構成する複数のモジュールのうちの少なくとも一部が別のモジュール(交換用モジュール)に交換される。交換用モジュールは、基本的には、回収されたバッテリから取り出された再利用可能なモジュールであるが、新品のモジュールであってもよい。
[実施の形態1]
<電池物流モデル>
図1は、本実施の形態における電池物流モデルを示す図である。図1を参照して、この電池物流モデルでは、車両71~73にそれぞれ搭載された使用済みのバッテリ710~730が回収される。回収されたバッテリ710~730は、回収業者81、検査業者82、性能回復業者83、製造業者84、販売店85(またはリサイクル業者86)による工程を経て再利用される。この工程では、バッテリに関する各種情報が再利用サーバ9により管理される。そして、あるユーザの車両7に搭載されたバッテリが、再利用されたバッテリに交換される。
より詳細には、回収業者81は、車両71~73から使用済みのバッテリ710~730を回収する。なお、図1では、紙面の都合上、3台の車両のみを示すが、実際には、より多くの車両からバッテリが回収される。回収業者81は、回収されたバッテリを分解し、バッテリから複数のモジュールを取り出す。各モジュールには、当該モジュールを特定するための識別情報(ID)が付与されており、各モジュールの情報が再利用サーバ9によって管理されている。そのため、回収業者81は、バッテリから取り出された各モジュールのIDを、端末(図示せず)を用いて再利用サーバ9へ送信する。
検査業者82は、回収業者81によって回収された各モジュールの性能検査を行なう。具体的には、検査業者82は、回収されたモジュールの特性を検査する。たとえば、検査業者82は、満充電容量、抵抗値、OCV(Open Circuit Voltage)、SOC(State Of Charge)等の電気的特性を検査する。そして、検査業者82は、検査結果に基づいて、再利用可能なモジュールと再利用不可能なモジュールとを分別し、再利用可能なモジュールについては性能回復業者83へ引き渡し、再利用不可能なモジュールについてはリサイクル業者86へ引き渡す。なお、各モジュールの検査結果は、検査業者82の端末(図示せず)を用いて再利用サーバ9へ送信される。
性能回復業者83は、検査業者82によって再利用可能とされたモジュールの性能を回復させるための処理を行なう。一例として、性能回復業者83は、過充電状態までモジュールを充電することによって、モジュールの満充電容量を回復させる。ただし、検査業者82による検査において性能低下が小さいと判断されたモジュールについては、性能回復業者83による性能回復処理を省略してもよい。各モジュールの性能回復結果は、性能回復業者83の端末(図示せず)を用いて再利用サーバ9へ送信される。
製造業者84は、性能回復業者83によって性能が回復されたモジュールを用いてバッテリを製造する。本実施の形態では、バッテリを製造するための情報(組立情報)が再利用サーバ9において生成され、製造業者84の端末(図示せず)へ送信される。製造業者84は、その組立情報に従って、車両7のバッテリに含まれるモジュールを交換して、車両7のバッテリを製造(リビルド)する。
販売店85は、製造業者84によって製造されたバッテリを車両用として販売したり、住宅等で利用可能な定置用として販売したりする。本実施の形態では、車両7が販売店85に持ち込まれ、販売店85において、車両7のバッテリが製造業者84により製造されたリユース品またはリビルド品に交換される。
リサイクル業者86は、検査業者82によって再利用不可能とされたモジュールを解体し、新たなセルやその他製品の原料として利用するための再資源化を行なう。
なお、図1では、回収業者81、検査業者82、性能回復業者83、製造業者84および販売店85は、互いに異なる業者としたが、業者の区分はこれに限定されるものではない。たとえば、検査業者82と性能回復業者83とが一の業者であってもよい。あるいは、回収業者81は、バッテリを回収する業者と、回収されたバッテリを解体する業者とに分かれていてもよい。また、各業者および販売店の拠点は、特に限定されるものではない。各業者および販売店の拠点は別々であってもよいし、複数の業者あるいは販売店が同一拠点にあってもよい。
<電池リースシステム>
本実施の形態では、バッテリの価値の低下を防ぐととともに、再利用可能なバッテリの回収量を増加させるべく、バッテリをユーザにリースするシステムが構築される。このシステムを「電池リースシステム」と称する。
なお、機器や設備等の物品の所有権を自身が有したまま、その物品を他者に貸し出す取引として、リースとレンタルとが知られている。一般に、リースとは、貸出先の個人や企業が選択した物品をリース会社が購入し、その物品を貸出先に対して比較的長期(通常、数年間程度)に亘り賃貸する取引のことを言う。レンタルとは、レンタル会社が既に所有している物品を貸出先が必要とする期間(通常、リース期間よりも短い期間)、賃貸する取引のことを言う。以下ではバッテリのリースを例に説明するが、リースに代えてバッテリをレンタルしてもよい。
図2は、実施の形態1に係る電池リースシステムの全体構成を概略的に示す図である。図2を参照して、電池リースシステム100は、複数の車両1と、課金サーバ2とを備える。複数の車両1の各々と課金サーバ2とは、双方向の通信が可能に構成されている。
以下では説明の簡略化のため、ある特定の1台の車両1(図中左側の車両1)に注目して説明する。この車両1は、車両1のユーザのスマートホン3とも双方向通信が可能に構成されている。さらに、課金サーバ2とスマートホン3とも双方向通信が可能に構成されている。
図3は、車両1および課金サーバ2の構成をより詳細に示す図である。図3を参照して、本実施の形態では、車両1が電気自動車である構成を例に説明する。しかし、車両1は、他の電動車両(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車または燃料電池車)であってもよい。車両1は、充電ケーブル4により車両外部の充電器5に電気的に接続することが可能に構成されている。
車両1は、モータジェネレータ11と、動力伝達ギヤ121と、駆動輪122と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)13と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)14と、バッテリ15と、インレット161と、AC/DCコンバータ162と、充電リレー163と、ユーザインタフェイス17と、DCM(Data Communication Module)18と、車載ネットワーク19と、ECU(Electronic Control Unit)10とを備える。
モータジェネレータ11は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ11の出力トルクは、動力伝達ギヤ121を通じて駆動輪122に伝達され、車両1を走行させる。また、モータジェネレータ11は、車両1の制動動作時には、駆動輪122の回転力によって発電することができる。モータジェネレータ11による発電電力は、PCU13によってバッテリ15の充電電力に変換される。
PCU13は、コンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含んで構成される。PCU13は、ECU10からの指令に従って、バッテリ15に蓄えられた直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ11に供給する。また、PCU13は、モータジェネレータ11が発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ15に供給する。
SMR14は、PCU13とバッテリ15とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR14は、ECU10からの指令に従って、PCU13とバッテリ15との間での電力の供給と遮断とを切り替える。
バッテリ15は、車両1の駆動力を発生させるための電力を供給する。また、バッテリ15は、モータジェネレータ11により発電された電力を蓄える。バッテリ15は、複数のモジュールを含んで構成された組電池である。複数のモジュールの各々は、複数のセルを含む。本実施の形態において、各セルはリチウムイオン二次電池である。なお、リチウムイオン二次電池の電解質は、たとえば液系であるが、液系に限らず、ポリマー系であってもよいし全固体系であってもよい。
バッテリ15には、バッテリ15の状態を監視する監視ユニット151が設けられている。具体的には、監視ユニット151は、いずれも図示しないが、電圧センサと、電流センサと、温度センサとを含む。電圧センサは、バッテリ15の電圧を検出する。電流センサは、バッテリ15に入出力される電流を検出する。温度センサは、バッテリ15の温度を検出する。各センサは、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、各センサによる検出結果に基づいて、バッテリ15の劣化状態を示す指標を算出する。この指標については後述する。
インレット161は、充電ケーブル4の充電プラグ(図示せず)が接続可能に構成されている。
AC/DCコンバータ162は、インレット161と充電リレー163とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。AC/DCコンバータ162は、充電器5から充電ケーブル4およびインレット161を介して供給される交流電力を直流電力に変換して充電リレー163に出力する。
充電リレー163は、AC/DCコンバータ162とバッテリ15とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。充電リレー163は、ECU10からの指令に従って、AC/DCコンバータ162とバッテリ15との間での電力の供給と遮断とを切り替える。
なお、充電器5から供給される電力により車両1の充電(外部充電)のための構成は、図3に示した構成に限定されるものではない。たとえば、充電器5が直流電力を供給する充電器(いわゆる急速充電器)である場合には、AC/DCコンバータ162を設けなくてもよいし、AC/DCコンバータ162に代えてDC/DCコンバータ(図示せず)を設けてもよい。
ユーザインタフェイス17は、車両1に関する各種情報をユーザに提供したり、ユーザの様々な操作を受け付けたりすることが可能に構成されている。ユーザインタフェイス17は、たとえばカーナビゲーションシステムのタッチパネル付きモニタにより実現される。
DCM18は、課金サーバ2と無線での双方向通信が可能に構成されている。また、DCM18は、車両1のユーザのスマートホン3とも無線で通信することが可能に構成されている。
車載ネットワーク19は、たとえばCAN(Controller Area Network)などの有線ネットワークであり、ユーザインタフェイス17とDCM18とECU10とを互いに接続する。
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、入出力ポート103とを含んで構成されている。ECU10は、各センサからの信号の入力ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1が所望の状態となるように各機器を制御する。実施の形態1においてECU10により実行される主要な処理としては、バッテリ15の劣化状態を示す指標の算出が挙げられる。この処理については後述する。
課金サーバ2は、複数の車両1に関するデータに基づいて、後述する演算処理を実行するように構成されている。課金サーバ2は、各々がデータベースサーバである電池情報データベース21およびリース契約情報データベース22と、通信モジュール23と、サーバ内ネットワーク24と、アプリケーションサーバ20とを備える。なお、課金サーバ2は、本開示に係る「サーバ」に相当する。
電池情報データベース21は、各車両1に搭載されたバッテリ15の状態を示す情報である「電池情報」(図14参照)を格納する。リース契約情報データベース22は、各車両1に搭載されたバッテリ15に関するリース契約を締結する際に取得される情報である「リース契約情報」(図15参照)を格納する。
通信モジュール23は、車両1に搭載されたDCM18との無線での双方向通信が可能に構成されている。また、通信モジュール23は、車両1のユーザのスマートホン3とも無線で通信することが可能に構成されている。なお、通信モジュール23は、本開示に係る「通信装置」に相当する。
サーバ内ネットワーク24は、電池情報データベース21とリース契約情報データベース22と通信モジュール23とアプリケーションサーバ20とを互いに接続する。
アプリケーションサーバ20は、ECU10と同様に、CPU201と、メモリ202と、入出力ポート203とを含んで構成されている。アプリケーションサーバ20は、バッテリ15をユーザにリースするための各種演算処理を実行する。アプリケーションサーバ20により実行される主要な処理は、バッテリ15のリースに対してユーザが支払うリース単価Uを管理する処理であるが、この処理については後に詳細に説明する。なお、アプリケーションサーバ20は、本開示に係る「演算装置」および「課金装置」に相当する。
<電池劣化>
以上のように構成された電池リースシステム100においては、時間が経過するに従って、あるいは車両1の走行距離が長くなるに従って、バッテリ15が劣化する。よって、ECU10は、バッテリ15の劣化の進行度合いを把握するため、バッテリ15の劣化状態を示す指標を算出する。本実施の形態では、バッテリ15の容量維持率Qが指標として用いられる。バッテリ15の容量維持率Qとは、初期状態(たとえば製造時)におけるバッテリ15の満充電容量C0に対する、現時点におけるバッテリ15の満充電容量Cの割合を表す(Q=C/C0)。
初期状態における満充電容量C0は、バッテリ15の仕様により既知である。一方、現時点における満充電容量Cは以下のように算出することができる。たとえば車両1の外部充電時に、ECU10は、監視ユニット151から、充電開始時におけるバッテリ15のOCVと、充電終了時におけるバッテリ15のOCVと、充電開始時から充電終了時までの間のバッテリ15の充電電流量ΔAhとを取得する。さらに、ECU10は、メモリ102に予め記憶されたSOC-OCV曲線を参照することで、充電開始時におけるOCVと充電終了時におけるOCVとの差をSOC差ΔSOCに換算する。そして、ECU10は、SOC差ΔSOCに対する充電電流量ΔAhとの比率と、SOC差=100%に対する満充電容量Cとの比率とが等しいとする下記式(1)に従って、バッテリ15の満充電容量Cを算出する。
C=ΔAh/ΔSOC×100 ・・・(1)
バッテリ15の容量維持率Qの算出タイミングは、車両1の外部充電時に限定されず、外部充電時以外(車両1の通常走行時など)であってもよい。たとえば、バッテリ15の温度頻度分布、バッテリ15のSOC頻度分布、車両1がバッテリ15に蓄えられた電力を用いて走行可能な距離(いわゆるEV走行距離)、ならびに、バッテリ15の電流負荷および充電電流量ΔAh等に関する情報をECU10が取得し、順次メモリ102に格納する。これらのパラメータが容量維持率Qに及ぼす影響(各パラメータと容量維持率Qとの間の相関関係)を事前実験により求めておくことで、上記各パラメータから容量維持率Qの低下量を算出し、現時点での容量維持率Qを算出することができる。
なお、バッテリ15の劣化状態を示す指標として、バッテリ15の容量維持率Qに代えてまたは加えて、バッテリ15の満充電容量C(単位:AhまたはWh)を用いてもよいし、車両1のEV走行距離(単位:km)を用いてもよい。これらの指標は、いずれも本開示に係る「満充電容量」を示すものである。
図4は、バッテリ15の劣化態様の一例を示す図である。図4において、横軸は、バッテリ15の初期状態からの経過時間を表す。横軸を車両1の走行距離に読み替えてもよい。縦軸は、バッテリ15の容量維持率Qを表す。
図4には、ある車両1に搭載されたバッテリ15の容量維持率Qが低下する様子が実線で示されている。しかし、容量維持率Qの低下レート(単位時間当たりの低下量)は、バッテリ15の使用態様に応じて異なり得る。たとえば、点線で示すように、ユーザの運転の仕方によってはバッテリ15の大電流での充放電が行われ、容量維持率Qの低下レートが速くなる。あるいは、車両1が置かれた環境が高温であるほど容量維持率Qの低下レートが速くなる。
容量維持率Qが低下するに従って、バッテリ15に蓄えられた電力で車両1のEV走行距離が短くなる。また、容量維持率Qが低下に伴い、外部充電の回数(充電頻度)が増加し得るので、ユーザにとっては外部充電の手間が余計にかかるようになる。よって、容量維持率Qが低下するに従って車両1の利便性も低下する点において、ユーザにとっては、バッテリ15の価値が低下すると言える。しかしながら、たとえば特開2002-291110号公報では、バッテリに充放電された電力量に応じてリース料金が算出されることしか記載されておらず、リース料金の算出に際してバッテリの劣化は特に考慮されていない。そうすると、電池リースシステムに対するユーザの不満がたまりやすくなり、ユーザの満足度が低下する可能性がある。
そこで、実施の形態1においては、バッテリ15の容量維持率Qに応じて、バッテリ15のリース料金の単価を決定するものとする。バッテリ15のリース料金の単価とは、一定期間毎または一定距離毎のバッテリ15のリース料金であり、以下では「リース単価U」とも略す。リース単価Uは、本開示に係る「貸出料金」に相当する。
<リース料金体系>
リース単価Uの料金体系として、以下に説明するように複数の体系(プラン)を導入することができる。実施の形態1では、一例として、3つの料金プラン(料金プランA~C)が導入される。
図5は、料金プランAを説明するための図である。図5において、横軸は経過時間を表す。左側の縦軸は、バッテリ15の容量維持率Qを表す。右側の縦軸は、バッテリ15のリース単価Uを表す。
図6は、料金プランAにおけるバッテリ15の容量維持率Qとリース単価Uとの関係を示す図である。図6ならびに後述する図7および図8において、横軸は、バッテリ15の容量維持率Qを表す。縦軸は、バッテリ15のリース単価Uを表す。
図5および図6に示すように、料金プランAでは、バッテリ15の容量維持率Qが低下するに従ってリース単価Uが低額になる。より詳細には、容量維持率Qが100%から95%までの期間のリース単価UはZ1に設定される。容量維持率Qが95%から90%までの期間のリース単価Uは、Z1よりも低いZ2に設定される(Z1>Z2)。容量維持率Qが90%から85%までの期間のリース単価Uは、Z2よりもさらに低いZ3に設定される(Z1>Z2>Z3)。容量維持率Qが85%を下回ってからのリース単価Uは、Z3よりもさらに低いZ4に設定される(Z1>Z2>Z3>Z4)。以降も同様に、容量維持率Qが低いほどリース単価Uが低くなる。
このように、料金プランAでは、バッテリ15の容量維持率Qが低くなるほど、リース単価Uが低く決定される。バッテリ15の容量維持率Qが低くなるほど、車両1のEV走行距離が短くなるとともに充電頻度が増加し得るので、バッテリ15の価値が低くなる。したがって、料金プランAのように容量維持率Qが低下するに従ってリース単価Uも低く設定することで、リース単価Uに関するユーザの納得感を高めることができる。
図7は、料金プランBにおけるバッテリ15の容量維持率Qとリース単価Uとの関係を示す図である。図8は、料金プランCにおけるバッテリ15の容量維持率Qとリース単価Uとの関係を示す図である。
図7および図8を参照して、料金プランB,Cの各々では、バッテリ15の劣化初期においては料金プランAと同様に、バッテリ15の容量維持率Qが低下するに従ってリース単価Uが低額になる。この例では、容量維持率Qが100%から95%までの期間のリース単価UはZ1に設定される。容量維持率Qが95%から90%までの期間のリース単価Uは、Z1よりも低いZ2に設定される。容量維持率Qが90%から85%までの期間のリース単価Uは、Z2よりも低いZ3に設定される。容量維持率Qが85%から80%までの期間のリース単価Uは、Z3よりも低いZ4に設定される。
料金プランAでは、容量維持率Qが80%を下回ってからもリース単価Uが低下を続ける。これに対し、料金プランBにおいては、容量維持率Qが80%を下回って以降はリース単価UがZ4に維持される。また、料金プランCにおいては、容量維持率Qが80%を下回ってから75%に達するまでの間のリース単価Uは、Z4よりも高く設定され、図78示す例ではZ3に設定される。さらに、容量維持率Qが75%から70%まで低下する間のリース単価UはZ2に設定され、容量維持率Qが70%を下回ってからのリース単価UはZ1に設定される。
このように、バッテリ15の容量維持率Qの低下が進み、バッテリ15の価値が低下しているにも拘わらず、リース単価Uを維持または高くすることは、ユーザにとっては、バッテリ15の価値に見合う金額よりも高い料金を支払っていることになる。そうすると、車両1のリースを中止(あるいは中断)し、たとえば新たなバッテリへの交換のために車両1をリース会社に返却する動機付けがユーザに生じる。これにより、リース会社は、過度に劣化が進行する前にバッテリ15を回収し、回収したバッテリ15を再利用することが可能になる。
なお、本実施の形態のように3つの料金プランA~Cを準備することは必須ではなく、料金プランAのみを準備してもよいし、料金プランBのみを準備してもよいし、料金プランCのみを準備してもよいし、いずれか2つの料金プランのみを準備してもよい。あるいは、別の料金プランを準備してもよい。
<リース単価の決定>
たとえば特開2003-288539号公報では、バッテリの充電回数または放電回数に応じてリース単価が決定される(たとえば特開2003-288539号公報の段落[0018]~[0020]参照)。これに対し、実施の形態1においては、バッテリ15の容量維持率Qに応じてリース単価Uが決定される。これらのリース単価の決定手法の違いについて説明する。
図9は、2台の車両V1,V2におけるバッテリの容量維持率の違いを説明するための図である。図9において、横軸は充電回数(外部充電の回数)を表す。縦軸は、バッテリの容量維持率Qを表す。
図9には、製造後に互いに等しい期間(この例では36ヶ月)が経過した同一車種の2台の車両V1,V2(図3に示した車両1と同様の構成を有する車両)に対して同一回数の外部充電を行った場合のバッテリの容量維持率が示されている。図9より、製造後の経過期間が等しく、かつ充電回数も等しかったとしても、バッテリの容量維持率は大きく異なり得ることが分かる。その理由としては、以下に説明するように、バッテリのSOCの影響と、バッテリの温度の影響と、バッテリの負荷の影響とが挙げられる。
図10は、バッテリのSOCが容量維持率Qに及ぼす影響を説明するための図である。図10において、横軸は、車両V1,V2の各々がイグニッションオフであった期間(IG-OFF期間)におけるバッテリのSOCを表す。縦軸は、全IG-OFF期間に対する、各SOCでのIG-OFF期間の割合を表す。
IG-OFF期間中における高SOC状態での割合が高いということは、満充電状態に近い状態でバッテリが放置されていた期間が長いことを意味する。図10に示す例では、車両V2の方が車両V1と比べて、高SOC状態で放置された割合が高い。これにより、車両V2の方がバッテリの容量維持率Qの低下が進みやすかったと考えられる。
図11は、バッテリの温度が容量維持率Qに及ぼす影響を説明するための図である。図11において、横軸は、車両V1,V2の各々がイグニッションオンであった期間(IG-ON)におけるバッテリの温度を表す。縦軸は、全IG-ON期間に対する、各温度でのIG-ON期間の割合を表す。
IG-ON期間中に高温である割合が高いほど、バッテリの劣化が進行しやすい。図11に示す例では、車両V2の平均温度の方が車両V1の平均温度よりも高い。これによっても、車両V2の方がバッテリの容量維持率Qの低下が進みやすかったと考えられる。
図12は、バッテリの負荷が容量維持率Qに及ぼす影響を説明するための図である。図12には、バッテリに充放電された電流を2乗した値がバッテリの負荷として記載されている。車両の急加速および/または急減速の回数が多いほど、バッテリに充放電される電流が大きくなり、劣化が進行しやすくなる。図12に示す例では、車両V2の電流積算値の方が車両V1の電流積算値よりも大きい。この点も車両V2の方がバッテリの容量維持率Qの低下が進みやすかった要因の1つと考えられる。
このように、バッテリ15の劣化の進行度合いは、バッテリ15の充放電回数だけで決まるものではなく、バッテリ15のSOC、温度、電流等の様々な要因の影響を受け得る。したがって、バッテリ15のリース単価Uの決定には、バッテリ15の満充電容量に関連し、バッテリ15の劣化の進行度合いが適切に反映されるパラメータである容量維持率Qを用いることが望ましい。
<電池リースフロー>
図13は、実施の形態1における電池リースに関する処理を示すフローチャートである。図13では、図中左側に車両1のECU10により実行される一連の処理を示し、図中右側に課金サーバ2のアプリケーションサーバ20により実行される一連の処理を示す。なお、以下では簡単のため、ECU10により実行されるステップの実行主体を車両1と記載し、アプリケーションサーバ20により実行されるステップの実行主体を課金サーバ2と記載する場合がある。各ステップは、車両1(ECU10)または課金サーバ2(アプリケーションサーバ20)によるソフトウェア処理によって実現されるが、車両1または課金サーバ2内に作製された専用のハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図2、図3および図13を参照して、図中左側に示す車両1による一連の処理は、たとえば所定条件が成立した場合(たとえば、車両1のユーザがタッチパネル付きモニタ等であるユーザインタフェイス17を用いて車両1のリースを希望する旨の操作を行った場合)に実行される。図中右側に示す課金サーバ2による一連の処理は、たとえば所定の制御周期が経過する毎に定期的に実行される。
まず、車両1と課金サーバ2とは、必要な情報を相互に通信することによって、車両1のリース契約を締結するための処理を実行する(S101,S201)。より具体的には、課金サーバ2では前述のように、電池情報が電池情報データベース21に格納されているとともに、リース契約情報がリース契約情報データベース22に格納されている。
図14は、電池情報のデータ構造の一例を示す概念図である。図14を参照して、電池情報は、たとえば、バッテリ15を識別するための識別番号(電池ID)と、バッテリ15の仕様(たとえば、バッテリ15のメーカ、型番、直列/並列の接続数および接続関係、最高許容電圧、最高許容電流および使用温度範囲など)に関する情報(電池仕様)と、バッテリ15の容量維持率Qに関する情報とを含む。容量維持率Qに関する情報は、車両1(バッテリ15が中古品である場合には以前にバッテリ15が搭載されていた車両)の外部充電時等に受信した情報に基づいて適宜更新されている。
図15は、リース契約情報のデータ構造の一例を示す概念図である。図15を参照して、リース契約情報は、たとえば、車両1を識別するための識別番号(車両ID)と、電池IDと、リース契約の開始日に関する情報と、リース契約の満了日に関する情報と、リース契約の料金体系に関する情報と、ユーザの支払い情報とを含む。料金体系に関する情報とは、容量維持率Qとリース単価Uとの関係を規定した情報であり、具体的には料金プランA、料金プランBなどの情報である。ユーザの支払い情報とは、車両1のリース料金を支払うためのユーザの銀行口座やクレジットカードなどの登録情報である。
図13に戻り、ユーザは、自身が希望する契約開始日および契約満了日を入力するとともに、希望する料金体系(料金プラン)を選択する。また、ユーザは、自身の支払い情報を登録する。そうすると、車両1は、車両IDおよび電池IDとともに、ユーザにより入力された上記の各情報を課金サーバ2に送信する。課金サーバ2は、車両1からの情報に基づき、新規のユーザに関してはリース契約情報を登録する。あるいは、課金サーバ2は、既に登録済みのユーザに関してはリース契約情報を更新する。S101,S201の処理が正常に終了すると、車両1は、たとえば車両1の使用開始を許可する認証を課金サーバ2から受け、それにより車両1のリースが開始される。
S202において、課金サーバ2は、リース単価Uの更新条件が成立したか否かを判定する。たとえば、車両1の使用開始時(リース契約の締結時またはリース契約の前回の更新時であってもよい)から所定期間が経過する毎に、リース単価Uの更新条件が成立したと判定される。あるいは、車両1の使用開始時から車両1が所定距離を走行する毎に、リース単価Uの更新条件が成立したと判定されてもよい。
リース単価Uの更新条件が成立した場合(S202においてYES)、課金サーバ2は、車両1に搭載されたバッテリ15の容量維持率Qの送信を車両1に要求する(図示せず)。車両1は、課金サーバ2からの要求に応答して、バッテリ15の容量維持率Qを算出し、その算出結果を課金サーバ2に送信する(S102)。これにより、課金サーバ2は、バッテリ15の容量維持率Qを取得する(S203)。
ただし、課金サーバ2は、リース単価Uの更新とは無関係に、定期的にバッテリ15の容量維持率Qを取得してもよい。そして、容量維持率Qが規定量(前述の例では5%)だけ低下する毎に、以下のS204に処理を進めてもよい。
S204において、課金サーバ2は、ユーザと契約した料金プラン(料金プランA、BまたはC)に応じて、リース単価Uを算出し、その算出結果を通信モジュール23を用いて車両1に送信する。リース単価Uの算出手法については図5~図8にて詳細に説明したため、ここでの説明は繰り返さない。車両1は、課金サーバ2から受信したリース単価Uをユーザインタフェイス17によりユーザに提供(たとえば表示)する(S103)。この情報提供はユーザのスマートホン3に対して行われてもよい。これにより、ユーザがリース単価を把握することが可能になる。ただし、S103の処理は必須ではない。なお、リース単価Uの更新条件が成立していない場合(S202においてNO)には、S203,S204の処理はスキップされる。
S205において、課金サーバ2は、ユーザに課金する条件(課金条件)が成立したか否かを判定する。一例として、毎月1回の決められた日付(たとえば毎月末日)に課金条件が成立する。あるいは、車両1が予め定められた距離(たとえば1000km)を走行する度に課金条件が成立する。課金条件が成立すると(S205においてYES)、課金サーバ2は、処理をS206に進める。
S206において、課金サーバ2は、リース契約情報に含まれるユーザの支払い情報(ユーザの登録口座やクレジットカード等の情報)を参照することで、リース単価Uをユーザに対して課金する。課金額は、課金サーバ2から通信モジュール23を介して車両1に送信され、ユーザインタフェイス17に表示される(S104)。なお、実際の課金タイミングは、ユーザの支払い条件等に応じて適宜設定することができる。課金条件が成立していない場合(S205においてNO)には、処理がS202に戻される。
その後、課金サーバ2は、予めS201にて設定されたリース契約が満了したか否かを判定する(S207)。たとえば、リース契約の満了日が到来した場合(余裕を見て、リース契約の満了日よりも数日~数週間前であってもよい)に、リース契約が満了したと判定される。なお、車両1の走行距離に基づいてリース契約が締結されている場合には、車両1の走行距離が予め定められた走行距離に達した場合にリース契約が満了したと判定される。
リース契約が満了していない場合(S207においてNO)、課金サーバ2は、処理をS202に戻す。これにより、リース契約が満了するまでS202~S207の処理が繰り返し実行される。リース契約が満了すると(S207においてYES)、課金サーバ2は、リース契約が満了した旨を車両1に対して通知する(S208)。車両1は、リース契約が満了した旨の通知を課金サーバ2から受けると(S105においてYES)、その通知をユーザに提供(たとえば表示)する(S106)。これをきっかけに、ユーザは、車両1をリース会社に返却することができる。
以上のように、実施の形態1において、課金サーバ2は、バッテリ15の劣化を考慮して、バッテリ15の容量維持率Qが低くなるほどリース単価Uを低く決定する。つまり、課金サーバ2は、バッテリ15の劣化の進行度合いをリース単価Uに反映させる。これにより、ユーザは、バッテリ15に応じて車両1が発揮し得る性能(EV走行距離または充電頻度)に見合った料金を支払うこととなる。よって、実施の形態1によれば、車両1のリースに際してのユーザの不満を生じにくくさせるとともに、ユーザの満足度低下を抑制することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2においては、課金サーバ2から車両1(ユーザ)に対して、バッテリ15のリース単価Uの変更時期に関する情報を提供したり、車両1のEV距離を増加させるための情報を提供したりする構成について説明する。
図16は、実施の形態2における電池リースに関する処理を示すフローチャートである。図16を参照して、このフローチャートは、S405にて実行される情報提供処理と、その処理結果を表示する処理(S304)とをさらに含む点において、実施の形態1におけるフローチャート(図13参照)と異なる。それ以外の処理は、実施の形態1における対応する処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
S302において、車両1は、バッテリ15の容量維持率Qを算出し、その算出結果を課金サーバ2に送信する。課金サーバ2は、バッテリ15の容量維持率Qを取得する(S403)。また、課金サーバ2は、ユーザと契約した料金プランに応じてリース単価Uを算出し、その算出結果を車両1に送信する(S404)。課金サーバ2は、さらに情報提供処理を実行し、その結果として得られた情報を車両1に送信する(S405)。情報提供処理の詳細については図17にて説明する。
なお、情報提供処理の実行タイミングは、容量維持率Qの受信時に限られない。情報提供処理は、たとえば予め定められた期間が経過する毎(毎日、1週間毎、1ヶ月毎、半年毎など)に実行されてもよい。情報提供処理により得られた情報の送信先は、車両1に限られず、ユーザのスマートホン3であってよい。また、ユーザが自宅等でPC(Personal Computer)を用いて閲覧可能なウェブサービスによって上記情報をユーザに提供してもよい。
図17は、情報提供処理の一例を示すフローチャートである。図示しないが、バッテリ15のSOCに関する情報が車両1から課金サーバ2に定期的に送信されている。
図17を参照して、S501において、課金サーバ2は、現在のリース単価Uでのリースが終了する時期(すなわちリース単価Uの変更時期)を予測する。以下、この時期を「単価変更時期」とも呼ぶ。単価変更時期は、たとえば以下のように予測できる。
課金サーバ2は、バッテリ15の容量維持率Qが減少する典型的な様子を表す予想曲線Lpreを予めメモリ202に有している(図4参照)。課金サーバ2は、車両1から受けた実際の容量維持率Qに基づいて予想曲線Lpreを補正する。たとえば、ある時刻での実際の容量維持率Qが同時刻での予想曲線Lpre上の容量維持率Qよりも低い場合、課金サーバ2は、予想曲線Lpreを下方に(今後の容量維持率Qの減少レートが大きくなる方向に)補正する。逆に、同じ時刻で比較した場合に実際の容量維持率Qが予想曲線Lpre上の容量維持率Qよりも高い場合、課金サーバ2は、予想曲線Lpreを上方に(今後の容量維持率Qの減少レートが小さくなる方向に)補正する。そして、課金サーバ2は、補正後の予想曲線Lpreに基づいて、容量維持率Qが規定量だけ減少する時期(=単価変更時期)を予測する。課金サーバ2は、予測した単価変更時期を車両1に送信する。
S502~S507の処理は、バッテリ15の推奨充電頻度に関するアドバイスを車両1に提供するための処理である。S502において、課金サーバ2は、車両1のEV走行距離に対する、車両1の1日当たりの走行距離の実績値の比率R1を算出する。
車両1のEV走行距離とは、バッテリ15に蓄えられた電力を用いて(もし、車両1がエンジンを備える場合にはエンジンを動作させずに)車両1が走行可能な距離である。車両1のEV走行距離としては、バッテリ15の容量および車両1の電費に基づく仕様値(カタログ値)を用いてもよいし、車両1において計測された実績値を用いてもよい。車両1の1日当たりの走行距離の実績値としては、たとえば、過去の1日当たりの走行距離の平均値を用いることができる。あるいは、曜日や外気温などの条件が類似している過去の1日当たりの走行距離を用いてもよい。
課金サーバ2は、算出した比率R1を1未満の2つの判定値(この例では1/3および1/2)と比較する。比率R1が1未満である場合、車両1の1日当たりの走行距離の実績値が車両1のEV走行距離よりも短い。そのため、車両1の全ての走行をEV走行によって賄うことが可能であり得る。そして、全ての走行をEV走行によって行ってもなお、バッテリ15に蓄えられた電力に余裕がある可能性がある。
一般に、バッテリは、SOCが基準値(たとえば80%)よりも高い状態で放置された時間が長いと、その分だけ劣化が進行しやすい。よって、バッテリ15の劣化を抑制するためには、バッテリ15の充電頻度を過度に高くしないことが望ましい。バッテリ15の蓄電電力に余裕がある場合には、バッテリ15の充電を敢えて非実施とすることで、バッテリ15が高SOC状態となるのを避けることができるためである。
比率R1が(1/3)未満である場合(S503においてYES)、課金サーバ2は、処理をS505に進める。S505において、課金サーバ2は、ユーザによる車両1の典型的な使い方であれば、3日に1回程度の充電頻度とすればよい旨の情報を車両1に提供する。
また、比率R1が(1/3)以上かつ(1/2)未満である場合(S504においてYES)、課金サーバ2は、処理をS506に進める。S506において、課金サーバ2は、ユーザによる車両1の典型的な使い方であれば、2日に1回程度の充電頻度とすればよい旨の情報を車両1に提供する。
一方、比率R1が(1/2)以上である場合(S504においてNO)には、課金サーバ2は、推奨する充電頻度の目安となる値を車両1に送信しない。比率R1が(1/2)以上であるなど1に比較的近い場合には毎日充電することで、車両1の走行中にバッテリ15の電力が枯渇する状況を防止できる。
続くS508~S513の処理は、バッテリ15の推奨充電態様に関するアドバイスを車両1に提供するための処理である。具体的には、課金サーバ2は、バッテリ15の劣化の進行を抑制する観点から、車両1におけるバッテリ15の充電態様としてタイマー充電が好ましいか通常充電が好ましいか(あるいは、それらの充電をどのように組み合わせればよいか)を判断し、その判断結果を車両1に送信する。
なお、タイマー充電とは、ユーザが設定するなどした時間スケジュールに従ってバッテリ15を充電する充電態様である。通常充電とは、車両1に充電ケーブル4が接続されるなどしてバッテリ15が充電可能な状態となると、時間スケジュールに従うことなく(いわば成り行きで)バッテリ15の充電を開始する充電態様である。
前述のように、バッテリ15の劣化を抑制するためには、バッテリ15が高SOC状態で放置される時間をできるだけ短くすることが望ましい。したがって、S508において、課金サーバ2は、バッテリ15の総使用時間に対する高SOC状態での放置時間の比率R2を算出する。バッテリ15の総使用時間の長さは、バッテリ15の製造時(車両1の製造時であってもよい)から現在までの経過時間を計時することにより取得され得る。高SOC状態での放置時間は、バッテリ15が高SOC状態である時間の現在までの累積値を算出することにより算出され得る。課金サーバ2は、算出した比率R2を2つの判定値(この例では20%および40%)と比較する。
比率R2が20%未満である場合(S509においてYES)、課金サーバ2は、処理をS511に進める。S511において、課金サーバ2は、車両1におけるそれまでのバッテリ15の充電態様(タイマー充電および通常充電の使い分け)でバッテリ15の劣化の進行を好適に(高いレベルで)抑制できているとして、現在の充電態様を継続することが望ましい旨の情報を車両1に提供する。
また、比率R2が20%以上かつ40%未満である場合(S510においてYES)、課金サーバ2は、処理をS512に進める。S512においても、課金サーバ2は、車両1における現在の充電態様を継続することが望ましい旨の情報を車両1に提供する。それまでのバッテリ15の充電態様でバッテリ15の劣化の進行をある程度は(平均レベルには)抑制できているためである。
一方、比率R2が40%以上である場合(S510においてNO)には、バッテリ15が高SOC状態で放置される期間が長過ぎ、バッテリ15の劣化が進行しやすい状況にある。したがって、課金サーバ2は、処理をS513に進め、タイマー充電をより活用することが望ましい旨の情報を車両1に提供する。通常充電では、バッテリ15の充電が完了してから次に車両1が走行開始するまでの期間が長くなり得る。この間、バッテリ15が高SOC状態で放置されるので、バッテリ15の劣化が進行しやすい。これに対し、タイマー充電を活用し、車両1が走行開始する直前にバッテリ15の充電が完了するように時間スケジュールを設定すると、タイマー充電を活用しない場合と比べて、バッテリ15が高SOC状態で放置される期間が短くなる。よって、バッテリ15の劣化の進行を抑制できる。S511~S513のいずれかの処理が終了すると、課金サーバ2は、図16に示したフローチャートに処理を戻す。
以上のように、実施の形態2においては、課金サーバ2からユーザに、現在のリース単価Uでのリースが終了し、リース単価Uが変更される時期に関する情報(本開示に係る「第1の情報」に相当)が提供されたり、バッテリ15の劣化を抑制するための推奨充電頻度または推奨充電態様に関する情報(本開示に係る「第2の情報」に相当)が提供されたりする。ここでは3種類の情報を提供する例について説明したが、いずれか1種類または2種類の情報のみを提供してもよい。
実施の形態2に係る電池リースシステムでは、バッテリ15の劣化の度合いがリース単価Uに反映され得る。しかし、バッテリ15の劣化がどの程度進行しているかをユーザ自身で把握することは難しいので、リース単価Uの変更時期が不透明であるとユーザが不満を抱く可能性がある。そこで、リース単価Uの変更時期に関する情報を前もってユーザに案内することで、リース単価Uが急に変更される、いわば不意打ちの状況を防止できる。これにより、ユーザの満足度を向上させることができる。
また、推奨充電頻度または推奨充電態様に関する情報をユーザに提供することで、ユーザは、バッテリ15の充電頻度を不必要に高くしないようにしたり、バッテリ15の充電にタイマー充電を活用したりすることができる。これによりバッテリ15の劣化の進行を抑制できるので、リース単価Uの上昇を防止し、バッテリ15のリース料金を低減できる。その結果、ユーザの満足度を向上させることができる。
本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。