JP7317875B2 - 充填材、及びそれを用いたインバート部材の固定方法 - Google Patents

充填材、及びそれを用いたインバート部材の固定方法 Download PDF

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Description

本発明は、充填材、及びそれを用いたインバート部材の固定方法に関する。
シールドトンネルのインバート部材は、円筒状のシールドトンネル本体(具体的には、構成単位である円環状のセグメントを多数、連結させてなるもの)の内周面の底部に、シールドトンネル本体の軸線方向(長さ方向)に延びるように、多数、連結させて敷設されるものである。インバート部材は、シールドトンネルの点検、補修等における作業員の歩行用の通路などの用途に用いられる。
インバート部材を、シールドトンネルのセグメントの底部に固定するための方法として、セグメントの底部(シールドトンネル本体の内周面の底部)と、インバート部材の下面の間に、所定の厚さを有する隙間を設け、この隙間に水硬性の充填材を充填して、充填後に硬化させる方法が挙げられる。
その一例として、特許文献1に、セグメント2(トンネルの構成単位)の内面と、インバートブロック11,21(インバートを複数に分割した形状を有するもの)の下面および/またはインバートブロックどうしの間の隙間31a,31bに、充填材41を充填することが、記載されている。
特開2006-233538号公報
セグメントとインバート部材の間の隙間における厚さ方向の寸法は、通常、1~5cm程度である。
このような厚さ方向の寸法が小さい板状の空間に対して、該空間の隅々まで満たすように充填材を供給するためには、充填材の中の水の割合を大きくして、流動性を高めればよい。
しかし、水の割合を大きくして充填材の流動性を高めると、固化後の充填材の圧縮強度(以下、「固化強度」ともいう。)が低下するという問題がある。
本発明の目的は、シールドトンネルにおけるセグメントとインバート部材の間の隙間に充填するための充填材であって、充填材を構成するA液及びB液の混合前に、A液及びB液を別々に長距離圧送することができ、また、A液及びB液の混合後は、優れた流動性を有しかつ固化後に十分な大きさの固化強度(例えば、材齢28日の圧縮強度)を発現することができる充填材、及び、該充填材を用いた、インバートの固定方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、充填材の単位体積当たりの水の量が、特定の範囲内であり、A液とB液を混合した場合におけるゲルタイムが、特定の範囲内であり、材齢28日の圧縮強度が特定の値以上である充填材によれば、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の[1]~[8]を提供するものである。
[1] シールドトンネルの円筒状の本体部分の構成単位であるセグメントと、上記セグメントの内周面の底部に配設されるインバート部材の間の隙間に充填するための充填材であって、セメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、上記充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、上記A液と上記B液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分の範囲内であり、材齢28日の圧縮強度が18N/mm以上であることを特徴とする充填材。
[2] 上記A液のPロート流下時間が、13.0秒以下である、上記[1]に記載の充填材。
[3] 上記A液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、高炉セメントを10~250kg、及び、上記高炉スラグ微粉末を600~1,200kgの各量で含み、かつ、遅延剤を含まない、または、10kg以下の量で含むものであり、上記B液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、上記水ガラスを30~300リットルの量で含むものである、上記[1]又は[2]に記載の充填材。
[4] 上記A液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを10~100kg、上記高炉スラグ微粉末を400~900kg、及び、フライアッシュを200~500kgの各量で含み、かつ、遅延剤を含まない、または、10kg以下の量で含むものであり、上記B液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、上記水ガラスを20~150リットルの量で含むものである、上記[1]又は[2]に記載の充填材。
[5] 上記A液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを10~150kg、上記高炉スラグ微粉末を600~1,200kg、及び、ベントナイトを0.1~30kgの各量で含み、かつ、フライアッシュを含まない、または、フライアッシュを200kg未満の量で含み、遅延剤を含まない、または、10kg以下の量で含むものであり、上記B液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、上記水ガラスを50~200リットルの量で含むものである、上記[1]又は[2]に記載の充填材。
[6] 上記A液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、早強ポルトランドセメントを5~80kg、上記高炉スラグ微粉末を100~1,500kg、及び、フライアッシュを5~500kgの各量で含み、かつ、ベントナイトを含まない、または、ベントナイトを20kg以下の量で含み、遅延剤を含まない、または、10kg以下の量で含むものであり、上記B液が、上記充填材の単位体積1m当たりの量として、上記水ガラスを10~200リットルの量で含むものである、上記[1]又は[2]に記載の充填材。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載の充填材を用いた、インバート部材の固定方法であって、上記A液と上記B液を混合して、上記充填材を調製する充填材調製工程と、上記セグメントと、上記インバート部材の間に形成された隙間に、上記充填材を充填する充填工程と、上記充填材を硬化させて、上記隙間に充填材硬化層を形成させる硬化工程、を含むことを特徴とするインバートの固定方法。
[8] 上記インバート部材は、上記セグメントの内周面との間に5~100mmの厚さ寸法の隙間を形成させるための突起部を有するものである、上記[7]に記載のインバートの固定方法。
本発明によれば、A液とB液の混合前(充填材の調製前)に、A液及びB液の各液を別々に長距離圧送することができる。このため、A液及びB液の各供給箇所(各液を調製する場所)と、充填材の施工箇所(A液とB液を混合する場所の近くの充填材の注入場所)の間が遠く隔てられている場合であっても、充填材の使用が可能である。
また、充填材を充填(注入)する施工箇所の直前の地点で、A液とB液を混合して充填材を調製した際、該充填材は、優れた流動性を有するため、シールドトンネルにおけるセグメントとインバート部材の間の隙間の隅々まで、容易かつ迅速に充填することができる。
さらに、施工箇所であるセグメントとインバート部材の間の隙間に充填(注入)された充填材は、硬化後に、十分な大きさの固化強度(例えば、材齢28日の圧縮強度)を発現することができる。これによって、インバート部材は、シールドトンネルのセグメントに対して長期間、強固に固定される。
本発明の充填材を適用する対象であるインバート部材を含む、シールドトンネルの全体の構造を示す断面図である。 図1に示すシールドトンネルにおけるセグメントの一部(インバート部材を載置した部分のみ)とインバート部材の積層構造(充填材を充填する前の状態)を示す斜視図である。
図1~図2に示す実施形態例を参照しつつ、本発明の充填材を説明する。
図1~図2中、本発明の充填材は、シールドトンネル1の円筒状の本体部分の構成単位であるセグメント2と、セグメント2の内周面の底部に配設されるインバート部材3の間の隙間に充填するための充填材である。
本発明の充填材が硬化してなる充填材硬化層4(図1参照)は、セグメント2とインバート部材3の間の隙間に、本発明の充填材を充填した後、水硬性を有する該充填材が時間の経過によって硬化することによって、層状に形成される。
図1中、PC道路床版(プレキャスト道路床版)5は、車両が通行するための床版である。PC道路床版5の下方には、作業用の空間6が形成されている。PC道路床版5の上方には、車両通行用の空間7が形成されている。
本明細書中、「シールドトンネルの円筒状の本体部分」(以下、円筒状の本体部分と略すことがある。)とは、その構成単位である円環状の形状を有するセグメント(本明細書中、「セグメント」と略すことがある。)を多数、シールドトンネルの軸線方向に連結して配設してなるものであり、全体として、シールドトンネルの円柱状の内部空間(通常、地下鉄の車両等の通行のための空間を上部に含み、かつ、シールドトンネルの点検等における作業員の歩行等のための空間を下部に含むもの)を形成している構造物をいう。
本明細書中、「インバート部材」とは、セグメントの内周面の底部に配設される部材であって、下面が、セグメントの内周面の形状に合わせて、湾曲した形状を有するものをいう。
「インバート部材」の上面は、通常、略平面状に形成されている。この場合、インバート部材を鉛直方向に切断した断面は、概ね、円の下端付近における、円弧(セグメントの形状に対応する部分;下側の部分)と、該円弧の両端を結ぶ弦(作業員の歩行用通路等の用途に用いられる水平面を形成する部分;上側の部分)とで囲まれた部分の形状を有する。
次に、本発明の充填材を構成する材料等について、説明する。
本発明の充填材は、セメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、当該充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、A液とB液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分の範囲内のものである。
本発明で用いるA液は、セメント、高炉スラグ微粉末及び水を含む。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。
高炉スラグ微粉末としては、例えば、「JIS A6206」に規定されているコンクリート用高炉スラグ微粉末を用いることができる。
A液は、セメント、高炉スラグ微粉末及び水に加えて、他の材料を含むことができる。
A液の他の材料の例としては、フライアッシュ、ベントナイト、遅延剤(例えば、モルタル用の遅延剤)等が挙げられる。
本発明で用いるB液は、水ガラスを含む。
水ガラスの例としては、「JIS K1408」に規定されている各種の「けい酸ナトリウム」(例えば、3号、4号等)や、「JIS K1408」に規定されていないものが挙げられる。
B液は、水ガラスに加えて、他の材料を含むことができる。
B液の他の材料としては、水、遅延剤等が挙げられる。
本発明の充填材(A液とB液の混合液)を構成する水の量は、充填材の単位体積1m当たり、400~700リットル、より好ましくは420~670リットル、特に好ましくは440~650リットルである。
該量が400リットル未満であると、セグメント2とインバート部材3の間の隙間の隅々まで十分に充填材を充填させることが困難になる。該量が700リットルを超えると、固化後の充填材について、十分に大きな固化強度(例えば、材齢28日の圧縮強度)を得ることが困難になる。
本発明において、A液とB液を混合した場合におけるゲルタイムは、30秒~20分、好ましくは40秒~18分、より好ましくは50秒~17分、特に好ましくは60秒(1分)~16分である。
ゲルタイムが30秒未満であると、シールドトンネルのセグメントとインバート部材の間の隙間の隅々(特に、狭小な空隙)まで十分に充填材を充填させることが困難となる。ゲルタイムが20分を超えると、充填材が上記隙間に留まらずに、逸走しやすくなる。
本発明において、ゲルタイムとは、カップ倒立法によって測定される値をいう。
本発明において、カップ倒立法とは、以下の手順によって、ゲルタイムとしての時間を測定することをいう。
まず、20℃の温度下で、A液を100ミリリットルの量で収容したA液用ビーカー(容量:300ミリリットル)と、B液を100ミリリットルの量で収容したB液用ビーカー(容量:300ミリリットル)を用意する。
次に、A液用ビーカー内のA液を、B液用ビーカー内のB液に供給する。この際、A液としては、セメント、水等を混合して、A液(セメント含有スラリー)を調製した時点から、1分以内のものを用いる。
なお、供給の速度は、2秒以内に終えるように調整する。また、供給を終えた時点を、ゲルタイムの始点とする。
その後、直ちに、B液用ビーカー(A液とB液の合計量:200ミリリットル)を手で振とうして、A液とB液の混合液を得る。この際、手で振とうする時間は、2秒以内である。
次いで、B液用ビーカー内の混合液の液流がほぼ消滅した時点で、B液用ビーカー内の混合液を、A液用ビーカー内に供給する。その後、直ちに、A液用ビーカーを手で振とうする。
なお、供給の速度は、2秒以内に終えるように調整する。また、手で振とうする時間は、2秒以内である。
次いで、A液用ビーカー内の混合液の液流がほぼ消滅した時点で、A液用ビーカー内の混合液を、B液用ビーカー内に供給する。その後、直ちに、B液用ビーカーを手で振とうする。
以後、以上の操作と同じ操作を繰り返す。その過程で、混合液の流動性が急速に低下した時点を、終点として測定する。始点から終点までの時間が、ゲルタイムである。
本発明において、A液のPロート流下時間は、好ましくは13.0秒以下、より好ましくは12.5秒以下、さらに好ましくは12.0秒以下、特に好ましくは11.5秒以下である。
Pロート流下時間が13.0秒を超えると、A液の長距離圧送が困難となる。
Pロート流下時間の下限値は、特に限定されないが、A液の材料組成を考慮すると、通常、8.5秒である。
本発明において、Pロート流下時間とは、土木学会規格である「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」(JSCE-F521-1999)に準拠して測定される値をいう。
本発明の充填材の材齢28日の圧縮強度は、18N/mm以上、好ましくは21N/mm以上、より好ましくは24N/mm以上、さらに好ましくは30N/mm以上、さらに好ましくは35N/mm以上、特に好ましくは40N/mm以上である。
圧縮強度が18N/mm未満であると、インバート部材を長期間に亘って、堅固に固定することが困難となる。
本発明において、圧縮強度とは、「JIS A1107:2012」(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に準拠して測定される値をいう。
本発明の充填材の実施形態例としては、(a)A液中のセメントが高炉セメントである充填材、(b)A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液がフライアッシュを含む充填材、(c)A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液がベントナイトを含む充填材、(d)A液中のセメントが早強ポルトランドセメントであり、かつ、A液がフライアッシュを含む充填材、等が挙げられる。
これら(a)~(d)の実施形態例における好ましい例は、以下のとおりである。
(a)A液中のセメントが高炉セメントである充填材
A液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、高炉セメントを10~250kg(好ましくは50~230kg、より好ましくは80~210kg)、及び、高炉スラグ微粉末を600~1,200kg(好ましくは630~1,100kg、より好ましくは660~1,000kg)の各量で含むものが挙げられる。
B液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを30~300リットル(好ましくは60~270リットル)の量で含むものが挙げられる。
(b)A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液がフライアッシュを含む充填材
A液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを10~100kg(好ましくは20~70kg、より好ましくは25~40kg)、高炉スラグ微粉末を400~900kg(好ましくは450~850kg、より好ましくは500~800kg)、及び、フライアッシュを200~500kg(好ましくは230~470kg、より好ましくは260~440kg)の各量で含むものが挙げられる。
B液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを20~150リットル(好ましくは30~120リットル、より好ましくは40~100リットル)の量で含むものが挙げられる。
(c)A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液がベントナイトを含む充填材
A液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを10~150kg(好ましくは20~120kg、より好ましくは30~100kg、さらに好ましくは40~80kg、特に好ましくは45~75kg)、高炉スラグ微粉末を600~1,200kg(好ましくは650~1,150kg、より好ましくは700~1,100kg、さらに好ましくは750~1,050kg、特に好ましくは800~1,000kg)、及び、ベントナイトを0.1~30kg(好ましくは0.3~20kg、より好ましくは0.5~15kg)の各量で含み、かつ、フライアッシュを含まない、または、フライアッシュを200kg未満(好ましくは100kg以下、より好ましくは50kg以下、さらに好ましくは30kg以下、特に好ましくは10kg以下)の量で含むものが挙げられる。
B液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを50~200リットル(好ましくは70~180リットル、より好ましくは90~160リットル、特に好ましくは110~140リットル)の量で含むものが挙げられる。
(d)A液中のセメントが早強ポルトランドセメントであり、かつ、A液がフライアッシュを含む充填材
A液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、早強ポルトランドセメントを5~80kg(好ましくは6~70kg、より好ましくは7~60kg、特に好ましくは8~50kg)、高炉スラグ微粉末を100~1,500kg(好ましくは150~1,400kg、より好ましくは200~1,300kg、特に好ましくは250~1,250kg)、及び、フライアッシュを5~500kg(好ましくは10~450kg、より好ましくは14~400kg、特に好ましくは17~370kg)の各量で含み、かつ、ベントナイトを含まない、または、ベントナイトを20kg以下(好ましくは15kg、より好ましくは10kg以下)の量で含むものが挙げられる。
B液の好ましい例としては、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを10~200リットル(好ましくは15~180リットル、より好ましくは20~140リットル、特に好ましくは30~120リットル)の量で含むものが挙げられる。
次に、本発明の充填材を用いた、インバート部材の固定方法について、説明する。
インバート部材の固定方法は、A液とB液を混合して、充填材を調製する充填材調製工程と、セグメント2とインバート部材3の間に形成された隙間に、充填材調製工程で得た充填材を充填する充填工程と、充填された充填材を硬化させて、上記隙間に充填材硬化層を形成させる硬化工程を含む。
図2中、セグメント2とインバート部材3の間の隙間は、インバート部材3の突起部3aによって、形成されている。突起部3aの高さ(セグメント2の内周面とインバート部材3の間の隙間の厚さ寸法)は、好ましくは5~100mm、より好ましくは8~60mm、さらに好ましくは12~40mm、特に好ましくは15~25mmである。
充填材の充填は、好ましくは、セグメント1~10個毎、より好ましくは、セグメント2~8個毎、特に好ましくは、セグメント3~6個毎に行われる。該個数が多いほど、充填材の充填作業の効率を高めることができる。逆に、該個数が少ないほど、隙間の隅々まで、より確実に充填することができる。
使用した材料は、以下のとおりである。
[A液の材料]
(a)セメント:高炉セメントB種
(b)高炉スラグ微粉末:「JIS A6206」に規定されているコンクリート用高炉スラグ微粉末である「高炉スラグ微粉末4000」(ブレーン比表面積:3,500cm/g以上、5,000cm/g未満)
(c)フライアッシュ:ブレーン比表面積が4,000cm/gのフライアッシュ
(d)ベントナイト:250メッシュのベントナイト(小野田ケミコ社製)
(e)遅延剤:グルコン酸ナトリウム;モルタル用の遅延剤「SP-R(商品名)」(小野田ケミコ社製)
(f)水
[B液の材料]
(a)水ガラス:「JIS K 1408-1966 けい酸ナトリウム(けい酸ソーダ)」に規定されている「3号」(本明細書中、「水ガラス3号」ともいう。)
(b)水
[実施例1]
以下のように、A液中のセメントが高炉セメントである充填材を調製し、得られた充填材の物性を測定した。
充填材の単位体積1m当たりの量として、高炉セメントB種を100kg、高炉スラグ微粉末を800kg、及び、水を441kgの各量で混合し、A液を調製した。
一方、B液として、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを250リットルの量で用意した。
A液及びB液を用いて、以下の物性を測定した。
(1)A液のPロート流下時間
調製直後のA液について、「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」(JSCE-F521-1999)に準拠して、Pロート流下時間を測定した。
(2)充填材のゲルタイム
上述のカップ倒立法によって、充填材(A液とB液の混合物)のゲルタイムを測定した。
(3)充填材の材齢28日の圧縮強度
「JIS A1107:2012」(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に準拠して、充填材(A液とB液の混合物)の材齢28日の圧縮強度を測定した。
[実施例2~10、比較例1~4]
表1に示す材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実験を行った。
以上の結果を表1に示す。
なお、以下の表1~表4中、「高炉スラグ」は、高炉スラグ微粉末を意味する。
表1中、「高炉セメント」は、高炉セメントB種を意味する。
表2~表3中、「普通セメント」は、普通ポルトランドセメントを意味する。
表4中、「早強セメント」は、早強ポルトランドセメントを意味する。
Figure 0007317875000001
[実施例11]
以下のように、A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液が混和材として高炉スラグ微粉末以外にフライアッシュを含む充填材を調製し、得られた充填材の物性を測定した。
充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを30kg、高炉スラグ微粉末を600kg、フライアッシュを300kg、遅延剤を1kg、及び、水を495kgの各量で混合し、A液を調製した。
一方、B液として、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを80リットル、及び、水を80リットルの各量で混合し、B液を調製した。
A液及びB液を用いて、実施例1と同様にして、各物性を測定した。
[実施例12~13]
表2に示す材料を用いた以外は実施例11と同様にして、実験を行った。
以上の結果を表2に示す。
Figure 0007317875000002
[実施例14]
以下のように、A液中のセメントが普通ポルトランドセメントであり、かつ、A液が混和材として高炉スラグ微粉末以外にベントナイトを含む充填材を調製し、得られた充填材の物性を測定した。
充填材の単位体積1m当たりの量として、普通ポルトランドセメントを55kg、高炉スラグ微粉末を845kg、ベントナイトを1kg、遅延剤を6kg、及び、水を438kgの各量で混合し、A液を調製した。
一方、B液として、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを125リットル、及び、水を125リットルの各量で混合し、B液を調製した。
A液及びB液を用いて、実施例1と同様にして、各物性を測定した。
[実施例15~17、比較例5~8]
表3に示す材料を用いた以外は実施例14と同様にして、実験を行った。
以上の結果を表3に示す。
Figure 0007317875000003
[実施例18]
以下のように、A液中のセメントが早強ポルトランドセメントであり、かつ、A液が混和材として高炉スラグ微粉末以外に少なくともフライアッシュを含む充填材を調製し、得られた充填材の物性を測定した。
充填材の単位体積1m当たりの量として、早強ポルトランドセメントを40kg、高炉スラグ微粉末を1,040kg、フライアッシュを20kg、遅延剤を1kg、及び、水を520kgの各量で混合し、A液を調製した。
一方、B液として、充填材の単位体積1m当たりの量として、水ガラスを100リットルの量で用意した。
A液及びB液を用いて、実施例1と同様にして、各物性を測定した。
[実施例19~23、比較例9~10]
表4に示す材料を用いた以外は実施例18と同様にして、実験を行った。
以上の結果を表4に示す。
Figure 0007317875000004
実施例1~23の充填材を用いた場合、優れた長距離圧送性を確保しつつ、5個のセグメント(内径:11.5m)と、インバート部材の間の隙間(厚さ寸法:20mm)の隅々まで、充填材を充填させうることを確認した。
表1~4中、材齢28日の圧縮強度の欄を見ると、実施例1~23では、18.1N/mm(実施例20)~41.3N/mm(実施例19)の値を得ているのに対し、比較例1~10では、7.2N/mm(比較例5)~17.5N/mm(比較例1、9)の値を得ていることがわかる。
1 シールドトンネル
2 セグメント
3 インバート部材
3a 突起部
4 充填材硬化層
5 PC道路床版
6 作業用の空間
7 車両通行用の空間

Claims (7)

  1. シールドトンネルの円筒状の本体部分の構成単位であるセグメントと、上記セグメントの内周面の底部に配設されるインバート部材の間の隙間に充填するための充填材(ただし、骨材を含むものを除く。)であって、
    高炉セメントB種、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、
    上記充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、
    上記A液と上記B液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分であり、
    材齢28日の圧縮強度が21N/mm以上であり、
    上記A液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記高炉セメントB種を10~250kg、及び、上記高炉スラグ微粉末を600~1,200kgの各量で含み、かつ、遅延剤を含まない、または、遅延剤を10kg以下の量で含むものであり、
    上記B液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記水ガラスを30~300リットルの量で含むものであることを特徴とする充填材。
  2. シールドトンネルの円筒状の本体部分の構成単位であるセグメントと、上記セグメントの内周面の底部に配設されるインバート部材の間の隙間に充填するための充填材(ただし、骨材を含むものを除く。)であって、
    普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、
    上記充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、
    上記A液と上記B液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分であり、
    材齢28日の圧縮強度が21N/mm以上であり、
    上記A液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記普通ポルトランドセメントを10~100kg、上記高炉スラグ微粉末を400~900kg、及び、フライアッシュを200~500kgの各量で含み、かつ、遅延剤を含まない、または、遅延剤を10kg以下の量で含むものであり、
    上記B液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記水ガラスを20~150リットルの量で含むものであることを特徴とする充填材。
  3. シールドトンネルの円筒状の本体部分の構成単位であるセグメントと、上記セグメントの内周面の底部に配設されるインバート部材の間の隙間に充填するための充填材(ただし、骨材を含むものを除く。)であって、
    普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、
    上記充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、
    上記A液と上記B液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分であり、
    材齢28日の圧縮強度が21N/mm以上であり、
    上記A液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記普通ポルトランドセメントを10~150kg、上記高炉スラグ微粉末を600~1,200kg、及び、ベントナイトを0.1~30kgの各量で含み、かつ、フライアッシュを含まない、または、フライアッシュを200kg未満の量で含み、遅延剤を含まない、または、遅延剤を10kg以下の量で含むものであり、
    上記B液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記水ガラスを50~200リットルの量で含むものであることを特徴とする充填材。
  4. シールドトンネルの円筒状の本体部分の構成単位であるセグメントと、上記セグメントの内周面の底部に配設されるインバート部材の間の隙間に充填するための充填材(ただし、骨材を含むものを除く。)であって、
    早強ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末及び水を含むA液と、水ガラスを含むB液の組み合わせからなり、
    上記充填材の単位体積1m当たりの水の量が、400~700リットルであり、
    上記A液と上記B液を混合した場合におけるゲルタイムが、30秒~20分であり、
    材齢28日の圧縮強度が21N/mm以上であり、
    上記A液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記早強ポルトランドセメントを5~80kg、上記高炉スラグ微粉末を100~1,500kg、及び、フライアッシュを5~500kgの各量で含み、かつ、ベントナイトを含まない、または、ベントナイトを20kg以下の量で含み、遅延剤を含まない、または、遅延剤を10kg以下の量で含むものであり、
    上記B液が、上記充填材の単位体積1m 当たりの量として、上記水ガラスを10~200リットルの量で含むものであることを特徴とする充填材。
  5. 上記A液のPロート流下時間が13.0秒以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の充填材。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の充填材を用いた、インバート部材の固定方法であって、
    上記A液と上記B液を混合して、上記充填材を調製する充填材調製工程と、
    上記セグメントと上記インバート部材の間に形成された隙間に、上記充填材を充填する充填工程と、
    上記充填材を硬化させて、上記隙間に充填材硬化層を形成させる硬化工程、
    を含むことを特徴とするインバート部材の固定方法。
  7. 上記インバート部材は、上記セグメントの内周面との間に5~100mmの厚さ寸法の隙間を形成させるための突起部を有するものである請求項に記載のインバート部材の固定方法。
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