以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
[システムの構成]
図1に本実施形態による無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。本システムは、一例において、受電装置101と送電装置102を含んで構成される。以下では、受電装置101をRXと呼び、送電装置102をTXと呼ぶ場合がある。RXは、TXから受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。TXは、充電台103に載置されたRXに対して無線で送電する電子機器である。RXは、TXから範囲104において受電することが可能である。RXの一例はスマートフォンであり、TXの一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。なお、RXとTXは、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RXとTXは、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TXがスマートフォンであってもよい。この場合、RXは、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、RXは、自動車であってもよい。また、TXは、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。また、RXとTXは、無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有してもよい。
本システムは、WPC(Wireless Power Consortium)が規定する無線充電のための規格(WPC規格)に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行うものとする。すなわち、RXとTXは、RXの受電コイルとTXの送電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、無線電力伝送方式は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
WPC規格では、RXがTXから受電する際に保証される電力の大きさがGuaranteed Power(保証電力)(以下、「GP」と呼ぶ。)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRXとTXの位置関係が変動して受電コイルと送電コイルとの間の送電効率が低下したとしても、RX内の負荷(充電用の回路等)へ出力されることが保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電コイルと送電コイルの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TXは、RX内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
本実施形態によるRXとTXは、WPC規格に基づく送受電制御のための通信と、機器認証のための通信とを行う。ここで、送受電制御のための通信について説明する。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと、電力伝送が行われる前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定される。
電力伝送が行われる前のフェーズは、(1)Selectionフェーズ、(2)Pingフェーズ、(3)Configurationフェーズ、(4)Negotiationフェーズ、(5)Calibrationフェーズを含む。
(1)Selectionフェーズでは、TXが、Analog Pingを間欠送信し、送電可能範囲内に物体が存在すること(例えば充電台103に受電装置101や導体片等が載置されたこと)を検出する。
(2)Pingフェーズでは、TXが、Digital Pingを送信し、そのDigital Pingを受信したRXからの応答を受信することにより、検出された物体がRXであることを認識する。
(3)Configurationフェーズでは、RXが識別情報と能力情報をTXへ通知する。
(4)Negotiationフェーズでは、RXが要求するGPの値やTXの送電能力等に基づいてGPの値を決定する。
(5)Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RXが受電電力値をTXへ通知し、TXが送電中に異物検出処理を行うための調整を行う。
実際の電力伝送が実行されるPower Transferフェーズでは、送電の継続、およびエラーや満充電による送電停止等のための制御を行う。
TXとRXは、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて信号を重畳するインバンド(In-band)通信により行う。なお、TXとRXとの間で、WPC規格に基づくインバンド通信が可能な範囲は、送電可能範囲とほぼ同様である。すなわち、図1において、範囲104は、TXとRXの送受電コイルにより無線電力伝送とインバンド通信が可能な範囲を表している。なお、以下の説明において、RXが「載置された」とは、RXが範囲104の内側に進入したことを意味し、実際には充電台103の上にRXが載置されない状態をも含むものとする。
TXとRXは、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いて、送受電制御のための通信(アウトオブバンド(Out-of-band)通信)を行ってもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信の一例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠する通信方式が挙げられる。また、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee、NFC(Near Field Communication)等の他の通信方式によって行われてもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信は、無線電力伝送で用いられる周波数とは異なる周波数により行われるようにしてもよい。
本実施形態では、RXは、GPの値を決定することに先立って、TXとの間で電子証明書を用いたチャレンジ・レスポンス型の通信を行い、TXを機器認証する。すなわち、RXは機器認証のための通信を行い、機器認証の結果に基づいて、NegotiationフェーズにおいてTXに要求するGPを決定する。例えば、RXは、機器認証に成功したTXに対してはGPを15ワットとするように要求し、そうでないTXに対してはGPを5ワットとするように要求する。なお、GPは15ワットと5ワット以外の組み合わせに限られず、機器認証が成功したTXとのGPが、そうでない場合のGPより大きい限りにおいて、どのような値が用いられてもよい。すなわち、RXは、機器認証に成功したTXとの間においてのみ、大きなGPでの送受電が行われるようにする。このように、機器認証の結果に基づいてGPを決定することにより、WPC規格等で定められた所定の試験に合格し、大きなGPでの送電が可能であると認められるTXからのみ大きなGPで受電可能とすることができる。
[装置の構成]
続いて、本実施形態による受電装置101(RX)と送電装置102(TX)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
(装置構成)
続いて、本実施形態に係る受電装置101(RX)および送電装置102(TX)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
図2は、本実施形態による受電装置101(RX)の構成例を示す図である。RXは、一例において、制御部201、バッテリ202、受電部203、検出部204、受電コイル205、通信部206、表示部207、操作部208、メモリ209、タイマ210、および、充電部211を有する。
制御部201は、例えばメモリ209に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RXの全体を制御する。制御部201は、一例において、RXにおける機器認証と受電に必要な制御を行う。制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ209に記憶させる。また、制御部201は、タイマ210を用いて時間を計測しうる。
バッテリ202は、RX全体に対して、制御と受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ202は、受電コイル205を介して受電された電力を蓄電する。受電コイル205において、TXの送電コイル305から放射された電磁波により誘導起電力が発生し、受電部203は、受電コイル205において発生した電力を取得する。
受電部203は、受電コイル205において電磁誘導により生じた交流電力を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流または所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ202を充電するための処理を行う充電部211に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RXにおける負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力量である。
検出部204は、RXがTXから受電可能な範囲104に載置されているか否かの検出を行う。検出部204は、例えば、受電部203が受電コイル205を介してWPC規格に従うDigital Pingを受電した時の受電コイル205の電圧値または電流値を検出する。そして、検出部204は、例えば、検出した電圧値が所定の電圧閾値を下回る場合、又は、検出した電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RXが範囲104に載置されていると判定し得る。
通信部206は、TXとの間で、インバンド通信(WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて信号を重畳する通信)によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部206は、受電コイル205から入力された電磁波を復調することにより、TXから送信された情報を取得する。通信部206は、更にその電磁波を負荷変調することでTXへ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TXとの間で通信を行う。すなわち、通信部206による通信は、TXの送電コイル305(図3)からの送電に重畳されて行われ得る。また、通信部206は、TXとの間で、アウトオブバンド通信を行ってもよい。
表示部207は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を提示する。表示部207は、例えば、RXの状態や、図1のようなTXおよびRXを含む無線電力伝送システムの状態を、ユーザに通知する。表示部207は、例えば、液晶ディスプレイやLED(Light Emitting Diode)、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
操作部208は、ユーザからのRXに対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部208は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部207と操作部208とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
メモリ209は、各種情報を記憶する。なお、メモリ209は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ210は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
図3は、本実施形態による送電装置102(TX)の構成例を示す図である。TXは、一例において、制御部301、電源部302、送電部303、検出部304、送電コイル305、通信部306、表示部307、操作部308、メモリ309、および、タイマ310を有する。
制御部301は、例えばメモリ309に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TXの全体を制御する。制御部301は、一例において、TXにおける機器認証と送電に必要な制御とを行う。制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPUやMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、ASIC等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ309に記憶させる。また制御部301は、タイマ310を用いて時間を計測し得る。電源部302は、TX全体に対して、制御と送電と通信に必要な電力を供給する。電源部302は、例えば、商用電源またはバッテリである。
送電部303は、電源部302から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換する。さらにその交流周波数電力を送電コイル305へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部303によって生成される交流電力の周波数は数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度である。
送電部303は、制御部301の指示に基づいて、RXに送電を行うための電磁波を送電コイル305から出力させるように、交流周波数電力を送電コイル305へ入力する。また、送電部303は、送電コイル305に入力する電圧(送電電圧)または電流(送電電流)を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧または送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧または送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部303は、制御部301の指示に基づいて、送電コイル305からの送電が開始または停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。
検出部304は、範囲104に物体が存在する載置されているかを検出する。検出部304は、例えば、送電部303が、送電コイル305を介してWPC規格のAnalog Pingを送電した時の送電コイル305の電圧値または電流値を検出する。そして、検出部304は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、範囲104に物体が存在すると判定し得る。なお、この物体がRXであるかその他の異物であるかは、続いて通信部306によってインバンド通信で送信されるDigital Pingに対して所定の応答を受信した場合に、その物体がRXであると判定される。
通信部306は、RXとの間で、インバンド通信によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部306は、送電コイル305から出力される電磁波を変調して、RXへ情報を伝送する。また、通信部306は、送電コイル305から出力されてRXにおいて変調された電磁波を復調してRXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部306で行う通信は、送電コイル305からの送電に重畳されて行われる。また、通信部306は、RXとの間で、アウトオブバンド通信を行ってもよい。
表示部307は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を提示する。表示部307は、例えば、TXの状態や、図1のようなTXとRXとを含む無線電力伝送システムの状態を示す情報を、ユーザに通知する。表示部307は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
操作部308は、ユーザからのTXに対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部308は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部307と操作部308とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
メモリ309は、上述のように、各種情報を記憶する。なお、メモリ309は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ310は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
[処理の流れ]
(送電装置における処理)
図4は、本実施形態における送電装置102(TX)により実行される処理を示すフローチャートである。本処理は、例えばTXの制御部301がメモリ309から読み出したプログラムを実行することによって実現され得る。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現され得る。また、本処理は、TXの電源がオンとされたことに応じて、TXのユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、TXが商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、実行され得る。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
本処理において、TXの制御部301は、まず、通信部306を介したWPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理により、RXが載置されるのを待ち受ける(S401)。TXの通信部306は、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し間欠送信し、送電可能範囲内に存在する物体を検出する。そして、TXの制御部301は、送電可能範囲内に物体が存在することを検出した場合、通信部306を介してDigital Pingを送信し、そのDigital Pingに対する所定の応答があった場合に、検出された物体がRXであり、RXが充電台103に載置されたと判定する。TXの制御部301は、RXの載置を検出すると、通信部306を介したWPC規格で規定されたConfigurationフェーズの通信により、当該RXから識別情報と能力情報を取得する(S402)。ここで、RXの識別情報は、Manufacturer CodeとBasic Device IDが含められる。また、RXの能力情報には、対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素や、RXが負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するか否かを示す情報が含められる。なお、TXは、WPC規格のConfigurationフェーズの通信以外の方法でRXの識別情報と能力情報を取得してもよい。また、識別情報は、Wireless Power ID等の、RXの個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。また、能力情報として、上記以外の情報を含んでいてもよい。
続いて、TXの制御部301は、通信部306を介したWPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、RXとGPの値を決定する(S403)。なお、S403では、WPC規格のNegotiationフェーズの通信に限らず、GPを決定する他の手順が実行されてもよい。また、TXは、RXがNegotiationフェーズに対応していないことを示す情報を(例えばF402において)取得した場合に、Negotiationフェーズの通信は行わず、GPの値を(例えばWPC規格で予め規定された)小さな値としてもよい。
TXの制御部301は、GPの決定後、当該GPに基づいてキャリブレーションを行う(S404)。キャリブレーションとは、TXがRXへ送電した電力について、TXが、TXの内部で測定した値である送電出力の値とRXの内部で測定した受電電力の値との相関を較正する処理である。具体的に、TXの制御部301は、送電出力の値と受電電力の値の差分である電力損失を、RXから受信した受電電力の基準値と当該基準値を受信した時点での送電出力の値に基づいて推定する。
また、キャリブレーション処理において、RXが異なる2つの状態それぞれにおいて、TXの送電電力とRXの受電電力とが取得されてもよい。そして、この2組の送電電力と受電電力を用いて、実際に無線で送電されている際の受電電力又は送電電力に対して、キャリブレーションするためのパラメータが算出されてもよい。このパラメータは、送電電力と受電電力の相関を一次関数でグラフ化した場合、傾きの値と切片の値を指す。また、このようなパラメータを算出するために用いられる組み合わせは、送電電力と受電電力の組に限られず、送電電力と電力損失の組でもよいし、受電電力と電力損失の組でも構わない。
キャリブレーションにおいては、TXとRX間でWPC規格のCalibrationフェーズの通信が行われる。図9(A)に、WPC規格のCalibrationフェーズにおける通信シーケンスを示す。図9(A)において、まずRXの通信部206は、TXに対して第1の較正基準値となる受電電力情報(以降、第1較正基準値と呼ぶ。)であるmode1のReceived Power(受信電力の値)を送信する(F901)。TXの制御部301は、通信部306を介して受信した第1較正基準値を、自装置の送電状態に基づいて、受け入れるか否かを判定する。TXの通信部306は、第1較正基準値を受け入れる場合はACKを、受け入れない場合はNAKを、RXへ送信する(F902)。ここで、TXは、自装置の送電状態が安定していると判断した場合には通知を受け入れる。一方、TXは、自装置の送電状態が不安定であると判断した場合には通知を受け入れない。RXの通信部206は、TXからNAKを受信した場合には、mode1のReceived Powerを再度送信する。一方、RXの通信部206は、TXからACKを受信すると、TXに対して第2の較正基準値として受電電力情報(以降、第2較正基準値と呼ぶ)であるmode2のReceived Powerを送信する(F903)。TXの制御部301は、通信部306を介して受信した第2較正基準値を、自装置の送電状態に基づいて、受け入れるか否かを判定する。F902と同様に、TXの通信部306は、第2較正基準値を受け入れる場合はACKを、受け入れない場合はNAKを、RXへ送信する(F904)。RXの通信部206は、TXからNAKを受信した場合には、mode2のReceived Powerを再度送信する。TXは、RXに対してACKを送信すると、第1および第2較正基準値の受電電力に基づいて当該区間における電力損失の推定値を算出する。一方、TXは、Negotiationフェーズ(S403)の終了後、RXに対してReceived Power(mode2)への応答としてACKを所定時間送信できない場合は、キャリブレーションに失敗したと判断し、送電を停止する。なお、キャリブレーションは、WPC規格以外の方法で行われてもよい。
キャリブレーションの終了後、TXは、送電を開始する(S405)。送電は、WPC規格のPower Transferフェーズの処理により行われるが、WPC規格以外の方法で行われてもよい。続いてTXは、RXと機器認証のための通信を行う(S406)。図9(B)に、機器認証のための通信シーケンスを示す。なお、本実施形態の機器認証は、電子証明書を用いたチャレンジ・レスポンス型の機器認証とし、RXがTXを認証するものとする。なお、TXがRXを認証するようにしても良いし、双方が相手を認証するようにしてもよい。RXは、TXに対してチャレンジテキストを送信するイニシエータとして動作し、TXはRXから受信したチャレンジテキストを暗号化してRXに送信するレスポンダとして動作する。図9(B)において、まずRXの通信部206は、GET_DIGESTSメッセージをTXに送信する(F911)。GET_DIGESTSは、その受信者(TX)が有する電子証明書に関する情報を要求するメッセージである。TXの通信部306は、GET_DIGESTSに応答して、DIGESTSをRXへ送信する(F912)。DIGESTSとは、その送信者(TX)が所有する電子証明書に関する情報である。続いて、RXの通信部206は、電子証明書に関する詳細な情報を要求するGET_CETTIFICATEメッセージを、TXへ送信する(F913)。TXの通信部306は、RXからのGET_CERTIFICATEに応答して、CERTIFICATEをRXへ送信する(F914)。そして、RXの通信部206は、チャレンジテキストを含むCHALLENGEメッセージをTXへ送信し(F915)、TXの通信部306は、RXから受信したチャレンジテキストを暗号化したCHALLENGE_AUTHを、RXへ送信する(F916)。RXの制御部201は、TXから受信したCHALLENGE_AUTHの正当性が確認された場合は機器認証が成功したと判定し、正当性が確認できなかった場合は機器認証が失敗したと判定して、機器認証処理が終了する。なお、イニシエータ(RX)は、相手装置(TX)が機器認証の通信に対応していないことを示すメッセージを受信した場合には、相手装置が機器認証に非対応であると判定する。また、イニシエータ(RX)は、通信の途中で応答を受信しなかった場合は、その応答を得るためのメッセージを再送すること等によってリトライしてもよいし、相手装置が機器認証に非対応であると判定してもよい。RXは、機器認証に非対応であるTXとは機器認証のための通信を行わず、機器認証の結果は成功ではないと判定するようにしてもよい。
続いて、TXの制御部301は、通信部306を介したWPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、RXとGPの値を再決定する(S407)。S07では、機器認証に成功しているため、GPは5ワットよりも大きい値(例えば15ワット)に決定される。TXの制御部301は、GPの再決定後、送電制御処理を繰り返し実行する(S408)。TXの制御部301は、通信部306によりWPC規格のEnd Power TransferをRXから受信された場合に、WPC規格に従って、いずれの処理フェーズにおいてもその処理を終了させ、送電を停止する。その上で、処理はS401のSelectionフェーズに戻る。なお、満充電となった場合にもRXからEnd Power Transferが送信されるため、処理はS401のSelectionフェーズに戻る。S408の送電制御処理中に、TXの通信部306は、送電出力変更指示の受信及び拡張較正基準値の受信を行う。ここで、拡張較正基準値は、電力損失の推定値を算出するための追加の較正の基準値となる負荷接続状態における受電電力を含む情報(較正情報)である。TXの制御部301は、送電出力変更指示の受信を契機に、指示された変更量に基づいて送電出力を変更する。送電出力変更指示は、WPC規格のControl Errorであり、電圧の変更量を示す値であるControl Error Valueが含まれている。Control Error Valueには、送電出力を上げる場合は正の値、送電出力を下げる場合は負の値、送電出力を変更しない場合は0が格納される。また、TXの制御部301は、拡張較正基準値の受信を契機に電力損失較正処理を実行する。電力損失較正処理については図5を用いて後述する。S408の送電制御処理後に、TXの制御部301は、送電中に送電を停止するか否かの判断を行う(S409)。例えば、RXが充電台から取り除かれたり、TXが異物を検出したりした場合(S409でYES)、送電を停止し処理を終了する。
ここで、図4におけるS408で実行される電力損失較正処理について説明する。図5は、TXが送電制御処理中に実行する電力損失較正処理の例を示すフローチャートである。本処理は、例えばTXの制御部301がメモリ309から読み出したプログラムを実行することによって、実現され得る。尚、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現され得る。
TXの制御部301は、RXからの拡張較正基準値受信を契機に、電力損失較正処理を実行する。TXの制御部301は、受信した拡張較正基準値を受け入れるか否かの判定を行う(S501)。ここで、受け入れるか否かの判定は、自装置の送電状態が安定しているか否かにより行われ得る、これに限らない。例えば、拡張較正基準値の示す受電電力における電力損失が、算出済みである電力損失の推定値から所定値以上離れている場合に受け入れないと判定してもよい。拡張較正基準値を受け入れる場合(S501でYES)、TXの通信部306は、RXへ承諾応答=ACKを送信し(S503)、制御部301は、拡張較正基準値の示す受電電力に基づいて電力損失の推定値の算出を行い(S504)、処理を終了する。ここで、電力損失の推定値は、受信した拡張較正基準値の示す受電電力における電力損失と前回推定値を算出した際の較正基準値の示す受電電力における電力損失に基づき、当該電力損失間を線形補間することにより算出を行うが、これに限らない。例えば、Calibrationフェーズ以降で受信した少なくとも1つ以上の較正基準値に基づいて、線形近似や多項式近似等の統計解析により電力損失の推定値を算出してもよい。また、これらの推定方法は、利用可能な較正基準値の数やTXの計算資源に応じて選択されてもよい。これにより、TXは、計算資源に余裕がある場合は、より多くの較正基準値を用いて統計解析を行うことで高精度な推定値を算出することができ、また、計算資源が少ない場合は線形補間等の簡易的な推定を行うことで算出にかかる計算時間を短くすることができる。一方、拡張較正基準値を受け入れない場合(S501でNO)、TXの通信部306は、RXへ拒否応答=NAKを送信し(S502)、本処理を終了する。
[受電装置における処理]
図6は、本実施形態における受電装置101(RX)により実行される処理を示すフローチャートである。本処理は、例えばRXの制御部201がメモリ209から読み出したプログラムを実行することによって、実現され得る。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現され得る。また、本処理は、RXの電源がオンとされたことに応じてバッテリ202またはTXからの給電によりRXが起動したことに応じて、RXのユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、実行され得る。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
RXは、処理の開始後、通信部206を介したWPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理により、RX(自装置)がTXに載置されるのを待つ(S601)。RXの制御部201は、例えば、TXからのDigital Pingを検出することによって、RXがTXに載置されたことを検出する。RXがTXに載置されたことを検出すると、RXの通信部206は、WPC規格で規定されたConfigurationフェーズの通信により、TXへ識別情報と能力情報を送信する(S602)。RXの通信部206が識別情報と能力情報を送信すると、制御部201は、WPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、GPを決定する(S603)。ここでは、機器認証のための通信を実施していないため、RXの制御部201はGP=5ワットとなるようネゴシエーションを行う。GPの決定後、RXの通信部206は、当該GPに基づいて図9(A)で説明したWPC規格のCalibrationフェーズの通信を行う(S604)。
RXは、キャリブレーションが完了すると、WPC規格で規定されたPower transferフェーズの通信により、受電を開始する(S605)。受電を開始すると、RXの通信部206は、図9(B)で説明した機器認証のための通信を行う(S606)。その後、RXの制御部201はネゴシエーションを行い、GPの値をTXと再決定する(S607)。S607では、機器認証に成功しているため、GPは5ワットよりも大きい値(例えば15ワット)に決定される。RXの制御部201は、GPの再決定後、受電制御処理を繰り返し実行する(S608)。受電制御処理においてRXは、受電電力の制御及び所定の送信タイミング(時間間隔)での拡張較正基準値送信処理を行う。拡張較正基準値送信処理については図7を用いて後述する。受電電力の制御において、RXの制御部201は、バッテリ202の消費電力に対し受電電力が不足していると判定した場合、通信部206を介してTXに正の値を含む送電出力変更指示を送信する。また、RXの制御部201が、バッテリ202の消費電力に対し受電入力が必要以上に高いと判定した場合、通信部206を介してTXに負の値を含む送電出力変更指示を送信する。また、RXの制御部201は、バッテリ202の消費電力に対し受電入力が適当であると判定した場合、消費電力は変更せず、通信部206を介してTXに0を含む送電出力変更指示を送信し、処理を進める。S608の受電制御処理後に、RXの制御部201は、Power transferフェーズ中に受電を停止するか否かの判断を行う(S609)。例えば、RXが充電台から取り除かれたり、TXの送電停止を検出したりした場合(S609でYES)、受電を停止し処理を終了する。なお、RXの制御部201は、エラー発生を検知した場合や満充電に達したことを検知した場合は、通信部206を介してWPT規格のEnd Power Transferを送信する。これによりTXからの送電が停止され、無線充電のための一連の処理が終了となる。
ここで、図6におけるS608で実行される拡張較正基準値送信処理について説明する。図7は、RXが受電制御処理中に実行する拡張較正基準値送信処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、例えばRXの制御部201がメモリ209から読み出したプログラムを実行することによって、実現され得る。尚、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現され得る。
本処理は、所定のタイミングでPower transferフェーズ中に繰り返し実行される。RXは、ネゴシエーション完了後所定時間が経過したことを契機に本フローを開始するがこれに限らない。例えば、ネゴシエーションが完了した時点の受電電力と現在の受電電力との差分が閾値以上変化したことを契機に開始してもよいし、最後にACKを受信した較正基準値の受電電力と現在の受電電力との差分が一定以上変化したことを契機に開始してもよい。これにより、受電電力に一定以上の変化があった、すなわち、TXにおける電力損失の推定値の誤差が大きくなる場合に、確実に拡張較正基準値を送信することができる。
図7において、RXの通信部206はTXに対し、拡張較正基準値の送信タイミングで、現在の受電電力を含む拡張較正基準値を送信する(S701)。RXの通信部206は、拡張較正基準値の送信を行った後、拒否応答を受信したか否かの判定を行う(S702)。拡張較正基準値に対して受諾応答を受信した場合(S702でNO)、何もせずに本フローを終了する。一方、拡張較正基準値に対して拒否応答を受信した場合(S702でYES)、通信部206は、拒否応答を所定回数連続で受信したか否かを判定する(S703)。拒否応答を所定回数連続で受信したと判定された場合、RXの制御部201は受電電力を変更するための制御を行う(S704)。一例として、RXの制御部201は、受電電力を下げるための制御を行う。受電電力を下げることによって、TXが拡張較正基準値の受諾する確率を上げることができる。なお、RXの制御部201は、受電電力を上げるための制御を行ってもよい。受電電力を上げることによって、給電の効率を下げずに、送電装置による拡張較正基準値の受諾確率を高めることができる。
拡張較正基準値が送電装置によって受諾されることにより、電力損失の推定が較正され、異物の誤検出や未検出による温度上昇を低減しつつ安全に受電を継続することができる。一方、拒否応答の連続受信回数が所定の回数に満たないと判断された場合、RXは何もせず本処理を終了し、受諾応答を受信するまで繰り返し拡張較正基準値送信処理(S701~S704)を実行する。
[システムの動作]
図8に、送電装置102(TX)と受電装置101(RX)の動作シーケンスを示す。なお、初期状態としてRXはTXに載置されておらず、TXはRXの要求するGPが送電できるだけの十分な送電能力を持つものとする。
図8に示す処理例の概要について説明する。まず、最初のネゴシエーションでGPが5ワットに決定され、TXは送電を開始する。送電開始後、TXとRXは機器認証が成功し、ネゴシエーションの再実行によりGPが15ワットに再決定される。その後、RXにおける受電電力を5ワットから15ワットに変化させるために、RXはTXに対して送電出力変更指示を送信する。しかしながら、受電電力の変化の過程で、現在の受電電力を含む拡張較正基準値が所定回数連続で、TXに受け入れられない事象が発生する。これは、TXの特性によって引き起こされる事象であり得る。例えば、TXの送電部303はスイッチング素子(例えばField Effect Transister、以後FETと呼ぶ)で構成され、スイッチング回路を使用して、直流電圧乃至電流を交流電圧乃至電流に変換する。スイッチング回路には2個のFETで構成されるハーフブリッジ回路や4つのFETで構成されるフルブリッジ回路があるが、送電部303のスイッチング回路は送電電力の大きさによってハーフブリッジ回路とフルブリッジ回路を切り替えて動作することが広く知られている。そして、当該動作によって送電部のスイッチング回路が消費する電力乃至送電コイルが送電する電力(送電電力)が一時的に大きく変動し送電電力が安定しないことがある。例えば、送電電力が3ワット以下の場合はハーフブリッジ回路を使用し3ワットを超えるとフルブリッジ回路に切り替える場合、当該切り替えの際にスイッチング回路の消費電力値乃至送電電力値が一時的に大きく変動する。このようにTXの送電電力が安定しない状態では、RXは拡張較正基準値が受諾されるまで受電電力を変更する。
図8において、まずTXは、Analog Pingによって物体が載置されるのを待つ(F801)。RXが載置されると(F802)、Analog Pingに変化が生じ(F803)、TXは物体の載置を検知する(F804)。続くDigital PingによりRXは自装置がTXに載置されたことを検知する(F805、F806)。また、TXはDigital Pingの応答により載置された物体がRXであることを検知する。続いて、Configurationフェーズの通信により、TXはRXから識別情報および能力情報を取得する(F807)。次に、この時点では機器認証が成功していないため、Negotiationフェーズの通信により、GP=5ワットと決定される(F808)。次に、RXはTXに対し、正の値を含む送電出力変更指示を送信する(F809)。TXはRXから正の値を含む送電出力変更指示を受信し、指示に従って送電出力を上げる(F810)。続いて、Calibrationフェーズの通信を開始すると、RXはTXに対し第1較正基準値を送信する(F811)。TXはRXから受電電力=500ミリワットである第1較正基準値を受信し、自身の送電状態が安定しているため、ACKを送信する(F812)。
次に、RXはTXに対し、正の値を含む送電出力変更指示を送信する(F813)。TXはRXから正の値を含む送電出力変更指示を受信し、指示に従って送電出力を上げる(F814)。その後、RXはTXに対し第2較正基準値を送信する(F815)。TXはRXから受電電力=5ワットである第2較正基準値を受信し、自身の送電状態が安定しているため、第1および第2較正基準値に基づいて電力損失の推定値を算出し、ACKを送信してPower transferフェーズを開始する(F816、F817)。
続いて、TXとRXは、機器認証のための通信が行い、これに成功する(F818)。機器認証に成功したため、Negotiationフェーズの通信により、GP=15ワットに再決定される(F819)。GPが再決定されると、RXおよびTXは、それぞれ、送電制御処理および受電制御処理を開始する。RXがTXに対し正の値を含む送電出力変更指示を送信すると、TXは、指示に従って送電出力を上げる(F820、F821)。ここで、RXにおける受電電力が10ワットにまで上がると、例えば、送電回路のモードの切り替えや、送電装置の温度上昇、その他の外部的な要因でTXの送電状態が不安定になったとする。TXが不安定な状態において、RXはTXに対し拡張較正基準値を送信すると、TXはRXに対して、NAKを送信する(F822、F823)。その後、RXが送信する拡張較正基準値に対して所定の回数連続して(図8の例では3回)NAKが返されると、RXはTXに対して送電出力変更指示を行う(F824~F827)。図8の例では、RXはTXに対して1ワット送電出力を下げるように指示するものとする。
なお、RXの電力変更指示は所定回数連続でNAKを受信したことを契機に行われるが、これに限らない。例えば、RXが拡張較正基準値を送信し始めてから(最初に送信してから)TXによって拡張較正基準値が受諾されるまでの時間にタイムアウトが予め設定されている場合、RXはタイムアウトまでの時間と拡張較正基準値を送信する時間間隔を基に較正基準値の送信が行える回数を算出する。そしてRXは、算出した較正基準値の送信可能回数を基に電力変更をするか否かの判断を行ってもよい。これにより、タイムアウトの直前まで同じ電力で拡張較正基準値を送信することができ、受電効率を下げずに受電を続けることができる。
また、本実施形態に係るRXは、較正基準値が受諾されるまでに連続で受信したNAKの回数記憶しておき、前記回数の平均値などを基に電力変更をするか否かの判断をしてもよい。これにより、送電装置の特性に応じて電力変更のタイミングを決定することが可能になり、受電電力を変更せずに受電を続けることが可能になる。
また、本実施形態によるRXは、電力変更指示を行うか否かの判断を、時間を基準に行ってもよい。例えば、RXは、最初にNAKを受信したことを契機に、時間計測を開始する。所定の時間を経過するまでにACK応答を受信できない場合、送電電力変更指示を送信し受電電力を変更する。これにより、拡張較正基準値に対する応答を受信しないタイミングで電力の変更処理が可能になる。
送電出力変更指示を受信したTXは、指示に従って送電出力を下げる(F828)。その後、RXにおける受電電力が10ワットに下がってから再度、拡張較正基準値を送信する(F829)。TXは第1較正基準値および拡張較正基準値に基づいて電力損失の推定値を算出する(F830)が、TXは受信した拡張較正基準値を受け入れない場合、NAKを送信する(F831)。これに応じて、RXTXに対して送電出力変更指示を行う(F832)。送電出力変更指示を受信したTXは、指示に従って送電出力を下げる(F833)。その後、RXにおける受電電力が6ワットに下がってから再度、拡張較正基準値を送信する(F834)。TXは第1較正基準値および拡張較正基準値に基づいて電力損失の推定値を算出し(F835)、受信した拡張較正基準値を受け入れる場合、ACKを送信する(F836)。
このように、RXは、受電電力を変更するために送電出力変更指示を送信することで、TXは送電回路のモードの切り替えや、TXの温度上昇、その他の外部的な要因による不安定な送電状態を抜け出す。そして、TXは、拡張較正基準値を新たな基準値として受け入れ、RXに対してACKを送信する。本実施形態によるRXは、最後に較正基準値が受け入れられた受電電力を記憶しておき、記憶した値と同じになるように受電電力を変更してもよい。これにより、TXによる較正基準値の受諾確率を高めることができる。また、本実施形態によるRXは、機器認証が行われるより前のネゴシエーションによって決められたGPの値以下まで受電電力を下げてもよい。これにより、安全な受電電力で受電を続けることができる。以上に説明した動作によれば、RXが送電装置の送電電力を変更することによって、送電装置は不安定な送電状態を抜け出し、拡張較正基準値を受け入れることにより、安全に充電を継続することができる。
本実施形態によるRXは、受電電力を変更するために送電出力変更指示を送信しているが、再度ネゴシエーションを行い、GPを下げることで受電電力を変更してもよい。ネゴシエーションによりGPを引き下げることにより、一度電力を引き下げた後、拡張較正基準値が受け入れられない受電電力で再び給電されるのを回避することができる。
また、本実施形態によるRXは、受電電力を変更するために、送電装置に対しEnd Power Transferを送信し給電を一度終了するか、送電装置に再度ネゴシエーション(交渉)を要求してもよい。これにより、送電装置に設けられたタイムアウトや異物の誤検出などが起こり、送電装置の判断で給電が停止され、電力の再供給が行われない状態に陥ることを防ぐことができる。
このように、本実施形態によれば、送電装置が較正基準値を受け入れられる値に受電電力を変更することで、送電装置に較正基準値が受け入れられ、電力損失推定が較正される。電力損失推定が較正されることにより異物検出の精度が向上し、異物の誤検出や未検出を抑制し、安全に受電を行うことができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。