JP7316505B2 - 発熱体、発熱体の製造方法、および加熱装置 - Google Patents

発熱体、発熱体の製造方法、および加熱装置 Download PDF

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本発明は、マイクロ波を用いた加熱装置に関し、特に、マイクロ波を吸収して発熱する発熱体に関する。
金属やセラミックスなどを焼成する炉として、マイクロ波を利用した焼成炉が知られている。そこでは、断熱材からなる容器の内壁に、マイクロ波を吸収して発熱する発熱体を塗布する。そして、容器内に金属粉末あるいはセラミック粉末を含有する被加熱物を設置し、電子レンジ内に容器を所定時間入れて焼成する(特許文献1参照)。発熱体としては、例えば、耐熱性の高い2種類の炭化ケイ素粉末と、水ガラス、粘土物質などの耐熱性材とを混合したものが使用される。
特開2001-284039号公報
発熱体の加熱処理時間を短縮することが被加熱物の短時間による高速焼成をもたらすことから、マイクロ波を利用して熱源となる発熱体をできる限り高速昇温させることが必要となる。しかしながら、容器内壁に発熱体を塗布する上記マイクロ波加熱装置では、電気抵抗が大きいケイ素が発熱体に含まれるため、今まで以上の高速昇温で昇温し、発熱温度を高く維持することが難しい。
したがって、高速で昇温し、高い発熱温度を維持する発熱体を提供することが求められる。
本発明の発熱体は、マイクロ波を吸収して発熱するカーボンを含む発熱材と、マイクロ波を透過し、発熱材が配置される容器とを備え、発熱材に対して不活性な気体が、容器内に含まれ、容器の直径が、3mm以上である。例えば、カーボン粉粒体と気体は、容器に封入すればよい。
例えば、発熱材が、カーボン粉粒体を含み、その充填率が0.05~0.17の範囲に定められ、容器の直径が、3mm~30mmの範囲に定められる。特に、容器の直径が、3mm~10mmの範囲に定めるのがよい。また、粉粒体が、カーボン粉粒体によって構成することが可能であり、その充填率は、0.05~0.11の範囲に定めるのがよい。
例えば気体は、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Xe(キセノン)、CO2(二酸化炭素)、CF4(四フッ化メタン)、SF6(六フッ化硫黄)、N2O(一酸化二窒素)、HFCS(ハイドロフルオロカーボン類)、PFCS(パーフルオロカーボン類)、NF3(三フッ化窒素)の1つもしくは複数から成る。
例えば、容器が、石英ガラスから成る。この場合、その端部は石英ガラスで覆われる。すなわち、給電線を通す孔などが設けられていない。
本発明の他の態様である発熱体の製造方法は、マイクロ波を透過する素材を加熱して、直径が3mm~30mmの範囲にある容器を成形し、マイクロ波を吸収して発熱するカーボン粉粒体を含む粉粒体を、充填率が0.05~0.17となるように、容器内に入れ、粉粒体に対して不活性な気体を容器に導入し、容器を封止する。
本発明によれば、高速で昇温し、高い発熱温度を維持する発熱体を提供することができる。
本実施形態であるマイクロ波加熱装置の概略的構成図である。 本実施形態である発熱体の概略的断面図である。 発熱体の直径を変えたときの最大温度上昇率(最大昇温速度)および60秒後の発熱体温度(60秒後上昇温度)を示したグラフである。 カーボン粉粒体の充填率(Packing density of carbon powders)を変えたときの加熱ピーク温度(Peak temperature)を示したグラフである。 発熱体の全長を変えたときの最大温度上昇率(最大昇温速度)および60秒後の発熱体温度(60秒後上昇温度)を示したグラフである。
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態であるマイクロ波加熱装置の概略的構成図である。図2は、発熱管の概略的断面図である。
マイクロ波多重反射型加熱装置(マイクロ波焼成炉ともいう。以下では、「マイクロ波加熱装置」と称す)10は、マイクロ波を利用して被加熱物を加熱、焼成あるいは乾燥する装置であり、耐熱性のある矩形状のマイクロ波反射容器(以下、反射容器という)40を備える。反射容器40の異なる側面にはマイクロ波発振機(マグネトロン)50が装着されており、反射容器内の発熱管20に向けてマイクロ波が発振される。
反射容器40の空間領域40Mにおける中央部には、発熱管20が支持部材(図示せず)によって設置されており、その傍には、被加熱物30が保持部材(図示せず)によって保持されている。被加熱物としては、例えば、セラミックス、半導体、有機物である。さらに、マイクロ波加熱装置10は、マイクロ波発振機50を制御可能な電源回路(図示せず)と、発熱管20の温度を測定するサーモメータ(放射温度計)(図示せず)を備え、電源回路は、サーモメータによって検出される発熱管20の温度に基づいてマイクロ波発振機50を制御する。
図2に示すように、発熱管(以下、発熱体ともいう)20は、発熱材を配置する容器であり、ここでは、一方の端部に導入管22が形成された密閉性のある有底管状容器で構成され、マイクロ波を透過する石英材によって加熱成形されている。ただし、容器構成はこれに限らず、例えば軸長さに対して内径が大きい円板状容器にしてもよい。発熱管20内には、カーボン発熱材70が発熱管20内部全体をほぼ満たすように充填されている。
カーボン発熱材70は、ここでは流動可能なカーボン粉粒体70Mで構成されている。カーボン粉粒体70Mは、塊状のカーボン素材を粉砕することで得られ、いわゆる粗砕あるいは中砕によって、所定の粒径をもつ粒子の集合体であるカーボン粉粒体70Mを生成する。
カーボン粉粒体70Mの各粒子は不規則な凹凸表面を有するため、カーボン粉粒体70Mを発熱管20内に入れたとき、粒子間に隙間が生じる。粒子間の隙間はカーボン発熱材70全体に存在する。発熱管20の内径、カーボン粉粒体70Mの充填率は、後述するように、マイクロ波吸収による発熱が支配的となるように定められている。
図2に示すように、カーボン発熱材70と発熱管内面20Uの鉛直方向に沿った上端面との間には、管軸方向全体に渡って希ガスで満たされた空間領域Sが形成されている。ただし、図2では空間領域Sのサイズを誇張して描いているため、カーボン粉粒体70Mから構成されるカーボン発熱材70の全体厚さは発熱管20の内径と略等しい。また、発熱管20の端部に形成された導入管22の内部には、カーボン粉粒体70Mを充填させておらず、希ガスで満たされた空間領域が形成されている。
カーボン発熱材70を除く発熱管20内の残余の空間領域は、希ガスによって満たされている。ここでは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンのいずれかのガス、あるいはこれら二種類以上のガスが封入されている。希ガスは、カーボン発熱材70に対して不活性であり、石英ガラスから成る発熱管20に対しても不活性である。
粒子間に隙間のあるカーボン粉粒体70Mおよび希ガスを気密封入した発熱管20に対してマイクロ波を照射すると、マイクロ波がカーボン粉粒体70M全体に対して到達する。特に、発熱管20の中心(軸)付近にあるカーボン粉粒体にも到達する。
その結果、短時間で高温状態に到達することができる。特に、希ガスが発熱管20内に封入されることによって、カーボン粉粒体70Mが大気中の酸素との反応により二酸化炭素化して減量し充填量が少なくなることを防止できる。
カーボン粉粒体70Mが発熱すると、中心付近のカーボン粉粒体70Mで発生する熱が発熱管20外部へ放出される。その結果、発熱管20全体としての熱放射が高まり、被加熱物を短時間で高温状態に到達させることができる。
発熱管20の直径は、短時間による昇温(高速昇温)および所定時間経過した後に高温状態で発熱する(高温発熱)のを実現するように定められている。ただし、発熱管20の直径は、発熱管20の外径を表し、発熱管20の内径はおよそ1mm~28mm程度に定められる。また、カーボン粉粒体70Mの充填率は、このような高速昇温、高温発熱を実現する直径に従って定められている。ただし、充填率は、発熱管20内の空間体積に対するカーボン粉粒体70Mの体積割合を表す。
発熱管20の直径が大きすぎると、発熱管20の中心付近までマイクロ波が届かず、熱伝導による昇温が支配的となって短時間で高温状態にならない。また、発熱管20の直径が大きくなるほど熱容量も大きくなり、短時間による昇温が困難となる。一方、発熱管20の直径が小さすぎると、熱容量は小さいが、カーボン粉粒体70Mの量が少なくなり、発熱効果が小さくなる(高温状態にならない)。また、発熱管20の直径が小さすぎると、発熱管20の製造が困難になる。
一方、カーボン粉粒体70Mの充填率が小さすぎると、充填量の少なさによって熱放射が低下するとともに、発熱管20内でのカーボン粉粒体70Mの径方向あるいは軸方向の偏りによって不均一な高温状態となり、発熱管20への負荷が大きくなる。一方、充填率が大き過ぎると、発熱管20の中心付近へマイクロ波が届きにくくなり、短時間での高温状態への到達が難しい。
本実施形態では、高速昇温、高温発熱を実現するため、発熱管20の直径が、3mm以上、好ましくは3mm~30mmの範囲に定められている。ただし、ここでの高速昇温は、発熱管20が昇温して目標温度に達するまでの最大の昇温速度(1秒間に上昇する温度)が10℃以上(≧10℃/s)あることを示す。また、高温発熱は、加熱開始から60秒後の発熱管20の温度が500℃以上あることを示す。一方、カーボン粉粒体70Mの充填率は、0.05~0.17の範囲に定められる。
なお、発熱管20の全長が長くなるほど体積が増えるが、発熱管20の直径、カーボン粉粒体70Mの充填率が上記範囲に定められれば、ある程度の全長(300mm)以下が好ましい。ただし、ここでの全長は、発熱材が配置された領域を指す。
このような希ガス、カーボン発熱材70を封入した発熱管20は、以下のように製造することができる。マイクロ波を透過する石英材を加熱して一端に導入管を設けた有底筒状容器に対し、マイクロ波を吸収して発熱するカーボン材(カーボン粉粒体)を導入管から容器内に充填する。その後、カーボン材に対して不活性である希ガスを、所定範囲となるように導入管から封入する。例えば、1kPa~40kPaの範囲に定められる。そして、導入管を加熱軟化させて封止することで容器を密閉する。
希ガスの封入ガス圧は容器の耐圧特性と気圧がガスの絶対温度に比例する関係から決めることができる。例えば、最初常温300Kの発熱管をマイクロ波加熱して2000Kの高温度に上げ、そのときの発熱管内の圧力が大気圧と同じにする設計条件のときは、発熱管の常温でのガス圧力は15.195kPaとなる。また、常温300Kの発熱管をマイクロ波加熱して800Kの中温度に上げ、そのときの発熱管内の圧力が大気圧と同じにする設計条件のときは、発熱管の常温でのガス圧力を37.988kPaと大きくすることができる。
このように本実施形態のマイクロ波加熱装置は、気密性のある石英製の発熱管20と、発熱管20を格納する反射容器40と、反射容器40内にマイクロ波を発振するマイクロ波発振機50とを備え、発熱管20の管内には、カーボン粉粒体70Mからなるカーボン発熱材70が充填されるとともに、希ガスが封入されている。
発熱管20の両端は、石英材で覆われ、両端から給電線のような給電構造が延びていない。マイクロ波照射によって発熱可能なため、給電線、電極を必要としない。このような構成により、発熱管20が短時間で昇温し、被加熱物30を高速加熱、焼成することが可能となる。
また、従来の電気炉などと比べて消費電力の低減をもたらす。さらに、熱源となる発熱管20を容易に交換する構成が可能となり、メンテナンスが簡素化する。特に、発熱管20の直径を3mm以上、好ましくは3~30mmの範囲、充填率を0.05~0.17に定めることにより、高速昇温、高温発熱を実現することができる。
上述したマイクロ波加熱装置(マイクロ波焼成炉)では、矩形状の反射容器が採用されているが、円筒状や略球状であってもよい。また、反射容器内では発熱体である発熱管20の傍に被加熱物を配置する構成であるが、発熱管20に囲われた状態で被加熱物を設置する構成にしてもよい。例えば、複数の発熱管20に囲まれたマッフル炉として構成することが可能である。あるいは、他の熱処理装置の熱源としても使用可能である。
発熱管の素材は石英以外でもよく、マイクロ波を透過し、希ガスなどの気体に反応しなければよい。発熱管20の形状はリング状、半リング状(半円状)などで形成することも可能である。この場合、発熱管20の直径は、径の大きさなどそのサイズを示す。発熱材としては、カーボン粉粒体が高速昇温、高温発熱に関して支配的な発熱材となる範囲で、カーボン粉粒体に他の粉粒体を組み合わせたものを適用することも可能である。
容器内に封入するガスは、希ガス以外であってもよく、マイクロ波に不活性なガスなどの気体を適用することも可能である。例えば、温室効果ガスとして、CO2(二酸化炭素)、CF4(四フッ化メタン)、SF6(六フッ化硫黄)、N2O(一酸化二窒素)、HFCS(ハイドロフルオロカーボン類)、PFCS(パーフルオロカーボン類)、NF3(三フッ化窒素)いずれかを封入してもよく、あるいはHe(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Xe(キセノン)を含めて2つ以上組み合わせて封入してもよい。さらに、容器内に含まれるガスとしては、カーボン発熱材に対して不活性なガスで満たさず、一部活性なガスが含まれるように構成してもよい。
上述したような構成の発熱体に対し、高速昇温、高温発熱の実現を確かめる実験(シミュレーションを含む)を行った。
実施例1の発熱体は、実施形態相応の発熱体であって、コンピュータ上でモデル化したものである。管状容器の全長を150mmと定め、直径は3mm~30mmの範囲でいくつか選択してモデル化した。また、管状容器を石英ガラスとして比熱を設定した。
図3は、発熱体の直径を変えたときの最大温度上昇率(最大昇温速度)および60秒後の発熱体温度(60秒後上昇温度)を示したグラフである。1本のモデル化した発熱体に対してマイクロ波実行パワー1000Wで加熱すると想定して、熱解析シミュレーションソフトウェアを用いてシミュレーションを行った。図3に示すように、直径3mm~30mmの範囲では、最大昇温速度10℃/s以上、高温発熱500℃以上になることが、シミュレーションにおいて確認された。特に、直径10mm以下では、最大昇温速度がおよそ100℃/s以上、60秒後の発熱体温度が1000℃以上を維持することが確認された。
実施例2の発熱体は、直径が30mmで充填率が0.055~0.16の範囲にある。0.055~0.16の範囲のいくつかの充填率を選び、1gのカーボンに機械的圧力をかけながら充填率を変え、マイクロ波照射時(1000W)の放射温度計を用いて加熱温度を測定した。
図4は、カーボン粉粒体の充填率(Packing density of carbon powders)を変えたときの加熱ピーク温度(Peak temperature)を示したグラフである。図4に示すように、充填率が0.05~0.17の範囲では、ピーク加熱温度が500℃以上になることが確認された。特に、充填率が0.05~0.11の範囲では、ピーク温度が800℃以上になることが実証された。
実施例3の発熱体は、実施形態相応の発熱体であって、コンピュータ上でモデル化したものである。直径を6mmと定め、全長は300mm以下の範囲でいくつか選択してモデル化した。また、管状容器を石英ガラスとして比熱を設定した。
図5は、発熱体の全長を変えたときの最大温度上昇率(最大昇温速度)および60秒後の発熱体温度(60秒後上昇温度)を示したグラフである。1本のモデル化した発熱体に対してマイクロ波実行パワー1000Wで加熱すると想定して、熱解析シミュレーションソフトウェアを用いてシミュレーションを行った。図5に示すように、少なくとも全長が300mm以下では、高速昇温、高温発熱が達成できることがシミュレーション上確認された。
10 マイクロ波加熱装置
20 発熱管(発熱体)
30 被加熱物
40 反射容器
70 カーボン発熱材(発熱材)
70M カーボン粉粒体

Claims (8)

  1. マイクロ波を吸収して発熱するカーボンを含む発熱材と、
    マイクロ波を透過し、前記発熱材が配置される管状の容器とを備え、
    流動可能なカーボン粉粒体から成る前記発熱材が、前記容器内に充填されており、
    前記発熱材に対して不活性な気体が、前記容器内に含まれ、
    前記容器の直径が、3mm~30mmの範囲に定められ、
    前記カーボン粉粒体充填率が、0.05~0.17の範囲に定められていることを特徴とする発熱体。
  2. 前記容器の直径が、3mm~10mmの範囲にあることを特徴とする請求項に記載の発熱体。
  3. 前記カーボン粉粒体の充填率が、0.05~0.11の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の発熱体。
  4. 前記カーボン粉粒体と前記気体が、前記容器に封入されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の発熱体。
  5. 前記気体が、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Xe(キセノン)、CO2(二酸化炭素)、CF4(四フッ化メタン)、SF6(六フッ化硫黄)、N2O(一酸化二窒素)、HFCS(ハイドロフルオロカーボン類)、PFCS(パーフルオロカーボン類)、NF3(三フッ化窒素)の1つもしくは複数から成ることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の発熱体。
  6. 前記容器が、石英ガラスから成り、その端部は前記石英ガラスで覆われていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の発熱体。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載の発熱体を備えたことを特徴とする加熱装置。
  8. マイクロ波を透過する素材を加熱して、直径が3mm~30mmの範囲にある管状の容器を成形し、
    マイクロ波を吸収して発熱する、流動可能なカーボン粉粒体を、充填率が0.05~0.17となるように、前記容器内に充填し、
    前記粉粒体に対して不活性な気体を前記容器に導入し、
    前記容器を封止することを特徴とする発熱体の製造方法。
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