JP7316151B2 - コンクリート構造物の劣化診断ツール - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート構造物の劣化診断ツールに関する。
これまでコンクリート構造物の劣化診断技術について様々な開発がなされてきた。
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が一般的に知られている。特許文献1には、コンクリート構造物からコンクリートをコアリングして分析する破壊型検査方法が記載されている。
しかしながら、コアリング作業によってコンクリート構造物を部分的に破壊する必要がある。また、より簡便な手法が要求されている。
現在、非壊型検査方法の開発が進められている。例えば、特許文献2には、モルタルパネルをコンクリート構造物に液状のエポキシ系接着剤で取り付けて、それを一定期間後に剥ぎ取って回収し、塩分量を測定することにより、コンクリート構造物が設置されている箇所の塩分量を評価する方法が提案されている。
特開2010-230383号公報 特開2014-105136号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献2に記載のモルタルパネルにおいて、強度、製造安定性、ひび割れ防止の点で改善の余地があることが判明した。
一般的に、モルタルパネルはモルタル組成物を蒸気養生により硬化することで得られる。
発明者の知見によれば、蒸気養生の温度や湿度などの条件によっては、モルタルパネルの表面にひび割れなどが生じる可能性があることが判明した。
そこで、硬化方法として、蒸気養生ではなく、急硬材を使用する方法について検討を進めた。
セメント急硬材には、通常、カルシウムアルミネートが用いられる。
しかしながら、カルシウムアルミネートは、可使時間が短く、製造安定性が低下する結果を示した。
カルシウムアルミネートにカルボン酸を併用することを検討したところ、可使時間を比較的長くすることが可能であるが、急硬性が不十分となり、強度が低下する恐れがあった。
さらに検討を進めた結果、カルボン酸に代えて、カルボン酸の塩をカルシウムアルミネートと併用することで、可使時間を比較的長くしつつも、ゲルタイムを短く、すなわち急硬性を高められることが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩をカルシウムアルミネートと併用することで、水と調合しただけでは固まりにくい(すなわち可使時間が長い)が、セメントと混合するとセメントを急硬化させることが可能な(急硬性が高い)急硬材を用いることによって、強度や製造安定性に優れ、ひび割れが抑制されたモルタルパネルを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
コンクリート構造物のおかれた環境に曝露される主面と、前記コンクリート構造物またはその近傍に存在する構造体に対する貼り付け面となる裏面とを有する、板状のモルタルパネルで構成されるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルは、急硬材およびセメントを含むモルタル組成物の硬化体で構成されており、
前記急硬材が、カルシウムアルミネートと、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩とを含む、
コンクリート構造物の劣化診断ツールが提供される。
本発明によれば、強度、製造安定性に優れており、ひび割れが抑制されたコンクリート構造物の劣化診断ツールが提供される。
(a)は、本実施形態の劣化診断ツールの一例を模式的に示す斜視図、(b)は、図1(a)のA-A矢視の断面図である。 劣化診断ツールを用いたコンクリート構造物の劣化診断方法について説明するための図である。 (a)は、本実施形態の劣化診断ツールの変形例を模式的に表す側面図、(b)は、(a)の裏面側の上面図である。 モルタルパネルの製造に用いる型枠の一例を模式的に示す斜視図である。 劣化診断ツールを包装袋に収容してなるパッケージの一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
本実施形態のコンクリート構造物の劣化診断ツールの概要を説明する。
図1(a)は、劣化診断ツールの一例を模式的に示す斜視図、図1(b)は、図1(a)のA-A矢視の断面図である。
図1の劣化診断ツール100は、板状のモルタルパネル10と、モルタルパネル10の裏面14に設けられた密着層20とを備える。
モルタルパネル10は、コンクリート構造物のおかれた環境に曝露される主面12と、コンクリート構造物またはその近傍に存在する構造体に対する貼り付け面となる裏面14とを有する。
密着層20は、その両面が接着可能な接着面で構成され、モルタルパネル10の裏面14に接着する主面22と、構造物に接着可能な裏面24とを有する。
本実施形態の劣化診断ツール100を用いることにより、コンクリート構造物への密着安定性を向上させ、被着体の劣化を抑制できるため、コンクリート構造物の劣化診断を安定的に行うことができる。また、劣化診断時に、劣化診断ツール100の取り付け作業や回収作業が容易となる。
図2は、劣化診断ツールを用いたコンクリート構造物の劣化診断方法について説明するための図である。
劣化診断方法の概要は、例えば、図2のコンクリート構造物200や構造体210の表面に、劣化診断ツール100を貼付固定し、一定の測定期間の後、回収し、分析するものである。
劣化診断は、例えば、道路、鉄道、橋梁、土木構造物、建築物、港湾設備、プラント、および電力施設等の長期間維持管理されるコンクリート構造物を対象とする。海岸付近、湾岸付近、海洋中等の塩害環境に曝露されるコンクリート構造体の劣化度合いについて評価できる。
劣化診断ツール100が設置場所は、コンクリート構造物200の表面や、コンクリート構造物200の近傍に存在する構造体210(例えば、土研式飛散塩分捕集器等)の表面としてもよい。設置面には、曲面や段差、凹凸部分がなく、平坦面がよい。設置面において、劣化診断ツール100を取り付ける前に、水分や汚れを洗浄により除去してもよい。
具体的な設置場所について、コンクリート構造物200が橋である場合について説明すると、コンクリート構造物200として、橋梁の桁202、橋脚床板204、橋脚壁面206等が挙げられる。コンクリート構造物200の近傍に存在する構造体210の壁面に劣化診断ツール100を設置してもよい。あるいは、コンクリート構造物200中のいずれかの部位について、海側と山側とのそれぞれに設置してもよい。調査対象における設置数は、特に限定されないが、複数(例えば、3個以上)としてもよい。
固定期間は、例えば、1ヶ月程度としてもよいが、数ヶ月~1年程度としてもよい。
分析において、環境曝露後における劣化診断ツール100の塩化物イオン量および/または中性化深さを測定し、設置したコンクリート構造物200の劣化度合いについて、精度良く推定できる。
<劣化診断ツール100>
劣化診断ツール100を構成するモルタルパネル10は、板状であれば形状を特に限定せずに使用できるが、裏面14の垂直方向から見たときの形状が、略正方形状または略長方形状としてもよい。ロット間の製造バラツキを抑制できる。
モルタルパネル10の厚みは、例えば、3mm~20mm、好ましくは4mm~15mm、より好ましくは5mm~10mmである。上記下限値以上とすることで、長い測定期間にも使用可能となる。一方、上記上限値以下とすることで、狭い場所にも設置することができるため、実環境に近い状態での評価が可能となる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
モルタルパネル10の主面12および裏面14の面積は、例えば、5cm~100cm、好ましくは10cm~50cmとしてもよい。上記下限値以上とすることで、分析精度が向上する。また、製造安定性も高くできる。一方、上記上限値以下とすることで、取扱性が良好となる。
モルタルパネル10の圧縮強度は、例えば、15N/mm~30N/mm、好ましくは16N/mm~28N/mm、より好ましくは17N/mm~25N/mmである。上記下限値以上とすることで、回収時におけるモルタルパネル10の破損を抑制できる。一方、上記上限値以下とすることで、塩化物イオン量の測定などの分析時に、モルタルパネル10を微粉砕しやすくなり、測定サンプルの準備が容易となる。
モルタルパネル10の圧縮強度は、JIS A 1108に準拠して測定される。
モルタルパネル10にける塩化物イオンの見掛けの拡散係数は、例えば、10cm/年以上50cm/年以下、好ましくは20cm/年以上45cm/年以下である。これにより、コンクリート構造物の状態を安定的に評価できる。
モルタルパネル10にける塩化物イオンの見掛けの拡散係数は、JSCE-G 572-2018
モルタルパネル10の裏面14に設置される密着層20は、シート状であればよく、その両面が接着可能な接着面を有する両面テープで構成されてもよい。
密着層20は、粘着剤からなる粘着層を備えてもよい。粘着層は、少なくとも主面22および裏面24のそれぞれに設けられていればよく、単層または複数層で構成されてもよい。密着層20は、複数層の粘着層の間に不織布やアクリルフォームなどの基材を有してもよい。
粘着剤は、公知の粘着材料が用いられるが、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが用いられる。この中でも、コンクリート構造物への接着性や耐久性の観点から、アクリル系粘着剤が用いられる。
密着層20は、裏面14に対して垂直な方向から見たとき、1個のモルタルパネル10の面内方向において、単体で構成されてもよいが、複数枚で構成されていてもよい。
密着層20の形状は、裏面14に対して垂直な方向から見たとき、モルタルパネル10の外形に沿った形状でもよく、例えば、略正方形状または略長方形状でもよい。
密着層20の厚みは、例えば、0.3mm~3.0mm、好ましくは0.4mm~2.5mm、より好ましくは0.5mm~2.0mmである。上記下限値以上とすることで、長い測定期間にも使用可能となる。一方、上記上限値以下とすることで、狭い場所にも設置することができるため、実環境に近い状態での評価が可能となる。
密着層20は、モルタルパネル10の裏面14の全体を被覆してもよい、部分的に被覆してもよい。すなわち、モルタルパネル10の裏面14に対して垂直な方向から見たときに、裏面14の周縁領域の少なくとも一部に、密着層20が貼り付けされていない部分が形成されていてもよい。さらには、裏面14の周縁領域の全周囲に密着層20が形成されない領域があってもよい。
これにより、コンクリート構造物200に密着層20を介してモルタルパネル10を貼り付けたときに、コンクリート構造物200とモルタルパネル10との間に間隙が形成されるため、モルタルパネル10の引き剥がしが容易となる。よって、劣化診断ツール100の作業性を高めることができる。
モルタルパネル10の裏面14に対して垂直な方向から見たときに、裏面14を被覆する密着層20の被覆面積は、裏面14の全面積に対して、例えば、85%~95%、好ましくは87%~93%である。上記下限値以上とすることで、長い測定期間にも使用可能となる。一方、上記上限値以下とすることで、測定期間経過後、モルタルパネル10の取り外し作業が容易となる。
図3は、劣化診断ツール100の変形例の模式図であり、(a)は、劣化診断ツール100の側面図、(b)は、裏面側の上面図である。
劣化診断ツール100は、密着層20の裏面24に剥離可能な剥離層50を備えてもよい。
裏面24側の密着層20(両面テープ)から剥離層50(カバーフィルム)を剥がすことで、劣化診断ツール100の設置が可能な状態となる。よって、劣化診断ツール100の作業性を高められる。
なお、密着層20の裏面24とは、モルタルパネル10裏面と密着した主面22とは反対側に位置する面である。また、剥離層50により密着層20の接着面を保護することにより、使用の前にかかる接着面(裏面24)が汚染されることを抑制できる。
剥離層50は、公知の材料で構成されるが、例えば、シリコーン処理平面紙(剥離紙)、ポリエステル等で構成されてもよい。
また、劣化診断ツール100において、曝露面である劣化診断ツール100の主面12が露出されていればよく、その他の面、例えば、劣化診断ツール100の側面16に遮蔽層30が設けられてもよい。
例えば、略正方形状または直方形状を有するモルタルパネル10の4つの側面16のすべてに、遮蔽層30が被覆されてもよい。
遮蔽層30は、塩化物イオンまたは二酸化炭素を遮蔽するものであればよく、金属層に粘着材層が積層した金属シールテープ、例えばアルミテープを用いてもよい。側面16の全体がアルミテープで被覆されていてよい。これにより、環境曝露面を1面(主面12)とすることで、安定的な評価が可能な劣化診断ツール100を実現できる。
遮蔽層30には、図3(a)に示すように、ラベル40が形成されていてもよい。ラベル40は、印刷や筆記されたものでもよいが、刻印であってもよい。刻印のラベル40は、長期の測定期間後も認識性に優れる。例えば、アルミテープに刻印を施したものを遮蔽層30に使用できる。
ラベル40は、ロット番号、製造年月日などの各種情報を示すものとしてもよい。あるいは、設置前の初期のモルタルパネル10の質量などの初期情報を含んでもよい。これにより、トレーサビリティ性に優れた劣化診断ツール100となる。
モルタルパネル10は、セメントおよび急硬材を含むモルタル組成物の硬化体で構成されてもよい。
以下、モルタル組成物の原料や添加剤について説明する。
本実施形態に係るモルタル組成物は、原料として、急硬材、セメント、細骨材、および水を含むものである。
本実施形態の急硬材は、カルシウムアルミネートと、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩とを含む。
炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩をカルシウムアルミネートと併用することで、特異的に、水と調合しただけでは固まりにくい(すなわち可使時間が長い)が、セメントと混合するとセメントを急硬化させることが可能な(急硬性が高い)急硬材を製造することができる。したがって、モルタル組成物の製造安定性および強度を向上できる。
(カルシウムアルミネート)
カルシウムアルミネートとは、水硬性材料の技術分野において、酸化アルミニウム(Al)と酸化カルシウム(CaO)を主成分として含み、水和活性を有する物質を総称するものである。ここで、「主成分」とは、カルシウムアルミネート全体中の酸化アルミニウムと酸化カルシウムの合計含量が、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることを意味する。
カルシウムアルミネートとしては、結晶質、非晶質のいずれも使用可能である。急硬性をより高める観点からは、非晶質のもの、例えば、溶融後に急冷して製造した非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。
カルシウムアルミネート中のCaO/Alモル比は、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.7以上2.5以下である。このモル比を適切に調整することで、急硬性を一層高めることができ、また、得られるセメント組成物の初期強度をより高めうる。
カルシウムアルミネート中の不純物(CaOとAl以外の成分)の含有率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。不純物が15質量%以下であることで、急硬性を一層高めることができ、また、得られるセメント組成物の初期強度をより高めうる。
ここで、不純物としては、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化硫黄などが代表的に挙げられる。その他、有機物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、これらがCaOやAlの一部に置換又は固溶したものなども不純物として挙げられる。もちろん、不純物はこれらのみに限定されない。
カルシウムアルミネートのガラス化率は、反応活性の面で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。この値を適切とすることで、得られるセメント組成物の初期強度をより高めうる。
ガラス化率は、測定サンプルについて、粉末X線回折法により結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、その後1000℃で2時間加熱後、(1から10℃)/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積Sを求め、これらのS及びSの値を用い、次の式を用いてガラス化率χを算出する。
ガラス化率χ(%)=100×(1-S/S
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積値3000cm/g以上が好ましく、5000cm/g以上がより好ましい。上限は、例えば9000cm/g以下である。この値を適度に大きくすることで、急硬性を一層高めることができ、そして得られるセメント組成物の初期強度をより高めうる。また、この値を適度に小さくすることで、可使時間を一層長くしうる。
カルシウムアルミネートの具体例として、アルミナセメントを挙げることができる。すなわち、急硬材を製造するためのカルシウムアルミネート原料として、市販のアルミナセメントなどを利用してもよい。
アルミナセメントの具体例としては、アルミナセメント1号、アルミナセメント2号などを挙げることができる。これらは、デンカ株式会社やAGC株式会社から購入可能である。
本実施形態の急硬材においては、1種のみのカルシウムアルミネートを用いてもよいし、性状/物性等が異なる2種以上のカルシウムアルミネートを組み合わせて用いてもよい。
(炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩)
本明細書において、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩とは、炭素数1以上10以下のカルボン酸のカルボキシ基のプロトンが、陽イオンで置換された化合物のことをいう。換言すると、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩は、出発物質として炭素数1以上10以下のカルボン酸を準備し、これを適当な塩基性物質などと反応(中和反応)させて得られるものである。
炭素数は、より好ましくは1以上8以下、さらに好ましくは1以上5以下、特に好ましくは1以上3以下、とりわけ好ましくは1または2である。
炭素数1以上10以下のカルボン酸は、モノカルボン酸であってもよいし、ポリカルボン酸(例えばジカルボン酸やトリカルボン酸)であってもよい。コスト等の観点からはモノカルボン酸であることが好ましい。
炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩における「炭素数1以上10以下のカルボン酸」としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ヒドロキシカルボン酸(ヒドロキシ基を有するカルボン酸)などを挙げることができる。これらのうち、入手容易性、コスト、効果等の兼ね合いから、ギ酸または酢酸が好ましい。
なお、急硬性を特に高めたり、急硬剤の可使時間を特に長くしたりする観点からは、炭素数1以上10以下のカルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸ではないことが好ましい。
カルボン酸塩は、好ましくはカルボン酸の金属塩である。具体的には、カルボン酸塩は、カルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などでありうる。これらの中でも、カルボン酸塩は、カルボン酸のカルシウム塩であることが好ましい。
別観点として、カルボン酸塩は、前述のように、炭素数が比較的小さいカルボン酸の塩であることが好ましい。より具体的には、カルボン酸塩は、好ましくはギ酸の塩または酢酸の塩、より好ましくはギ酸の金属塩または酢酸の金属塩である。
本発明者らの知見として、ギ酸や酢酸の如き炭素数が比較的少ないカルボン酸の塩は、公知の炭素数が多い(炭素数10超の)カルボン酸の塩に比べ、急硬剤の可使時間を長くしやすく、また、セメントと混合したときの急硬性に優れる傾向を示す。
カルボン酸塩として最も好ましくは、酢酸カルシウムまたはギ酸カルシウムである。
カルボン酸塩の量は、所望する可使時間や急硬性などのバランスを考慮して適宜調整すればよい。
セメントとの混合前の可使時間の長さと、セメントとの混合後の急硬性とのバランスの点などからは、カルボン酸塩の量は、カルシウムアルミネート100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上50質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは0.15質量部以上10質量部以下である。
本実施形態の急硬材は、カルボン酸塩を1種のみ含んでも、2種以上含んでもよい。後者の場合、2種以上のカルボン酸塩の合計量が上記数値範囲内であることが好ましい。
(石膏)
本実施形態の急硬材は、好ましくは、さらに石膏を含んでもよい。石膏を含むことにより、セメントと混合する前の可使時間をより長く設計しやすい。
使用可能な石膏は特に限定されない。また、種類の異なる石膏を併用することも排除されない。
石膏の例としては、半水石膏や無水石膏を挙げることができる。強度発現性の面では無水石膏が好ましい。無水石膏としてより具体的には、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏を挙げることができる。
石膏を水に浸漬させたときのpHについては、pH8以下の弱アルカリから酸性のものが好ましい。このpHが適度に低いことで、石膏成分の溶解度を低くすることができ、初期の強度発現性をより高めることができる。なお、ここでのpHは、石膏/イオン交換水=1g/100gの20℃における希釈スラリーのpHをイオン交換電極等により測定したものである。pHは、3以上8以下がより好ましく、5以上7以下がさらに好ましい。
石膏の粒度は、初期強度発現性と、一層長い可使時間の観点から、ブレーン比表面積値で3000cm/g以上が好ましく、5000cm/g以上がより好ましい。また、一層長い可使時間の観点から、この値は30000cm/g以下が好ましく、20000cm/g以下がより好ましい。
石膏の量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、好ましくは50質量部以上250質量部以下、より好ましくは70質量部以上200質量部以下である。
石膏の量を50質量部以上とすることで、より長い可使時間を得ることができる。また、石膏の量を250質量部以下とすることで、急硬剤とセメントを混合して得られる硬化物(コンクリート)の初期強度を高めうる。
(その他成分)
本実施形態の急硬材は、所望の効果を著しく損なわない範囲で、上記以外の任意の成分を含んでもよい。
一例として、本実施形態の急硬材は、可使時間や急硬性の微調整などの目的で、比較的少量の有機酸またはその塩(炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩に該当しないもの)、炭酸塩、重金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルカリ、硫酸塩、亜硫酸塩などを含んでもよい。もちろん、本実施形態の急硬材は、これら成分を含まなくてもよい。
なお、本実施形態の急硬材は、通常、ポルトランドセメントなどの、カルシウムアルミネート以外の(アルミナセメント以外の)水硬性のセメント成分は含まない。
本実施形態の急硬材は、通常、(1)まず、水に対し、凝結調整剤(任意)と、急硬材とを投入して第一液を調合し、(2)その第一液を、水で練ったセメント(第二液)と混合する、という手順で使用してもよい。
セメントとして、公知の普通セメント、高炉セメントなどを使用できる。
細骨材として、ケイ石系細骨材(硅砂、セメント強さ用標準砂等)、アルミナ質細骨材等を使用できる。ケイ石系骨材やアルミナ質系骨材はセメントや塩化物イオンとほとんど反応しない。このため、モルタルパネルを用いた劣化診断安定性を向上できる。
細骨材には、石灰石系骨材を含まない構成としてもよい。石灰石系骨材を用いると、カルシウムアルミネートモノカーボネート水和物やカルシウムアルミネートヘミカーボネート水和物が生成し、モルタルパネルを用いた劣化診断安定性が低下する恐れがある。
水は、特に限定されないが、水道水などを使用してもよい。
水/セメント比(W/C比)は、適度に調整すればよいが、例えば、30%~70%としてもよい。上記下限値以上とすることで、モルタルパネルの緻密さが適度になり、上記上限値以下とすることで、過度なポーラス化を抑制できる。
セメントと細骨材との比率は、例えば、質量比で、1:0.5~1:4としてもよい。細骨材の比率を0.5以上とすることで、均一なモルタルパネルの製造が可能となる。また、モルタルパネルの緻密さを適度に調整できる。一方、細骨材の比率を4以下とすることで、均一なモルタルパネルの製造が可能となり、モルタルパネルを用いた劣化診断安定性を向上できる。
モルタル組成物は、必要に応じて、減水剤、増粘材、消泡剤などの添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、分散剤、硬化促進剤、遅延剤等の他の添加剤を含んでもよい。
減水剤は、特に限定されないが、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系減水剤等を使用できる。
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系減水剤として、例えば、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物等の塩等が挙げられる。
その他、リグニンスルホン酸塩系減水剤、ポリオール系減水剤、及びオキシカルボン酸塩系減水剤等の一般減水剤を使用してもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
減水剤は、セメント100質量部に対して、例えば、0.05質量部~2.0質量部含まれていてもよい。減水剤を添加することで、モルタルが劣化し、大きくバラツキがあるポーラス構造が形成されることを抑制できる。
増粘剤は、特に限定されないが、メチルセルロース系、ポリエチレングリコールやエチレンオキサイド系、ポリアクリルアマイド等のアクリル系、及びポリビニルアルコール系等が挙げられるが、既に、水中不分離性混和剤として市販されているものを使用できる。増粘剤は、セメント100質量部に対して、例えば、0.05質量部~2.0質量部含まれていてもよい。
消泡剤は、特に限定されないが、オキシアルキレン系消泡剤(ポリエーテル系消泡剤)、シリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤、鉱油系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤等を使用できる。消泡剤は、セメント100質量部に対して、例えば、0.05質量部~2.0質量部含まれていてもよい。
減水剤、増粘材および消泡剤の配合比率を適切に制御することで、ポーラス構造のバラツキが抑制されたモルタルパネルを実現することが可能になる。
原料(セメント、水、細骨材)や添加剤、W/C比を調整することで、コンクリートに比べて塩化物イオンの拡散係数が高いモルタルパネルを実現できる。これにより、飛来塩分を効率的に取り込むことが可能となり、短期間での分析や劣化診断が可能となる。
モルタル組成物は、上述の各材料(原料および添加剤)を混合する方法により得ることができる。混合方法は、特に限定されないが、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。材料の混練には混合装置を用いてもよい。混練時の回転速度や混練時間、材料の投入順序を、適宜設定する。
混合装置として、公知の装置を使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、プロシェアミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー及びナウターミキサー等が挙げられる。
<モルタルパネルの製造方法>
本実施形態に係るモルタルパネル10は、上記モルタル組成物を硬化することで得られる。
モルタルパネルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、モルタル組成物を型枠内に流し入れる工程、モルタル組成物を硬化する工程を含んでもよい。
図4は、モルタルパネルの製造に用いる型枠60の一例を模式的に示す斜視図である。
図4の型枠60は、モルタルパネル成形用型枠であり、型枠60内の成形空間66内にモルタル組成物を充填して、主面12、裏面14および側面16を備えるモルタルパネル10を成型できる。成形空間66は、モルタルパネル10の立体形状に合わせた構造を有してよく、例えば、略正方形や略直方体で構成されていてもよい。
型枠60の成形空間66は、モルタルパネル1枚分の体積で構成されてもよく、複数枚分の体積で構成されてもよい。成形空間66は、複数の仕切り板64で区画されてもよい。区画された個々の成形空間66は、モルタルパネル1枚分の体積で構成される。
型枠60は、金属材料で構成されていてもよく、繰り返し使用時の耐久性や製造安定性の観点から、金属材料として、鋼材を用いてもよい。
型枠60は、1または複数の金属部材で構成されてもよい。複数の金属部材が固定治具により固定されて、型枠60が構成される。固定治具を外すと脱型できるため、脱型が容易となる。
仕切り板64は、型枠60に固定されていればよく、型枠60と一体化して設けられてもよく、取り外し自在の可動板でもよい。型枠60を可動板で構成することで、脱型が容易となる。
上記の型枠60を用いてモルタル組成物の流し込みを行う。モルタルパネル10の側面16の一面に対応する枠を有しない型枠60の上面開口から、モルタル組成物を流し込み、成形空間66を充填させる。上面開口からはみ出たものは、スキージなどの器具を使用して除去してよい。また、上面開口部分のモルタル組成物に平滑処理を施してもよい。
振動装置を用いて型枠60を振動させてもよい。モルタル組成物の流し込み時や、流し込み後に型枠60を振動させてもよい。これにより、ロット間のバラツキを抑制できる。
次に、モルタル組成物が充填された型枠60を室温で所定時間、静置することによりモルタル組成物を硬化することができる。硬化条件として、例えば、15℃~25℃、相対湿度70%~85%で、3時間~5時間静置してもよい。
その後、型枠60の脱型を行い、1個または複数個のモルタルパネル10が得られる。
1個のモルタルバーからダイヤモンドカッターで切断して、複数個のモルタルパネル10を得てもよい。モルタルパネル10におけるロット間のバラツキを抑制する観点から、仕切り板64を用いて、1つの型枠60から複数のモルタルパネル10を成形する手法が好ましい。
得られたモルタルパネル10に密着層20を貼付けて劣化診断ツール100を得る。
劣化診断ツール100は、包装袋に収容して保管してもよい。モルタルパネル10の諸特性のバラツキが少ないものを複数個選別し、それを同じ包装袋に収容してもよい。
図5は、劣化診断ツール100を包装袋310に収容してなるパッケージ300の模式図を示す。
図5のパッケージ300は、1枚または2枚以上の劣化診断ツール100と、劣化診断ツール100を収容する包装袋310とを備えるものである。
包装袋310は、例えば、3枚の劣化診断ツール100を収容してもよい。複数枚の劣化診断ツール100は、包装袋310中で積層した状態で収容されてもよい。モルタルパネル10の間には密着層20の裏面24上に設けられた剥離層50が、緩衝材の機能を発揮し得る。積層することでモルタルパネル10が互いに接触して破損してしまうことを抑制できる。
包装袋310は、アルミラミネートフィルムで構成されたアルミパウチでもよい。アルミラミネートフィルムは、アルミニウム層と樹脂層とが積層されたラミネートフィルムであってもよい。なお、包装袋310は、アルミニウムや樹脂以外にも、ガスバリア性を高め、水蒸気透過率を低くする目的で、他の材料を含んでもよい。
包装袋310の厚みは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であり、より好ましくは80μm以上250μm以下であり、さらに好ましくは100μm以上200μm以下である。上記下限値以上とすることで、包装袋310の機械的強度やガスバリア性を向上できる。上記上限値以下とすることで、包装袋310の取扱性が向上する。
包装袋310の形態としては、例えば、スタンディングパウチ、2方シール、3方シール、4方シール等が用いられる。
包装袋310の内部は、脱気されていてもよく、不活性ガス雰囲気に保たれていてもよい。
包装袋310には、開閉自在なチャック320が設けられていてもよい。包装袋310から取り出した劣化診断ツール100を、測定期間経過後に再度、包装袋310に収容できる。
また、チャック320付きの包装袋310には、表面に筆記可能なシール(ラベル)が設けられていてもよい。これにより、回収時にも、劣化診断ツール100の識別が容易となる。
パッケージ300は、段ボール箱やプラスチックケースなどの箱に梱包される。すなわち、梱包箱は、複数のパッケージ300と、これを収容する箱を備える。これにより、パッケージ300の搬送効率を高めることができる。
梱包箱中、パッケージ300の周囲の少なくとも一部が緩衝材で覆われていてもよい。緩衝材には、公知の緩衝材、例えば、気泡緩衝シートや紙などが使用し得る。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
<急硬材の調製>
下記の表1の原料比率に基づいて、カルシウムアルミネート、石膏およびカルボン酸の塩を、プロシェアミキサ(WB型、太平洋機工株式会社製)を用いて混合し、急硬材A~Eを得た。
Figure 0007316151000001
得られた急硬材A~Eのそれぞれと、凝結調整剤(デンカ株式会社製、デンカセッターD-100)0.375gと、水474gとを十分に練り合わせ、第一液A~Eを調合した。
<モルタル組成物の調製>
(試験例1)
得られた第一液A 3g、セメント(デンカ社製、普通セメント)628.0g、減水剤(第一工業製薬社製、セルフロー110P、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系減水剤)2.4g、増粘剤(信越化学工業社製、MH4000P2、メチルセルロース系増粘剤)3.4g、消泡剤(サンノプコ社製、SN デフォーマー 14HP、ポリエーテル系消泡剤)3.4gを秤量し、混合した。
これらの混合物に、標準砂((一社)セメント協会、セメント強さ試験用標準砂)1350.0g、水(水道水)376.8gを加え(水/セメント比:60%)、ミキサーを用いて、混練を行い、モルタル組成物Aを得た。
(試験例2~5)
第一液Aに代えて、第一液B~Eを用いた以外は、モルタル組成物Aと同様にして、モルタル組成物B~Eを得た。
(試験例6)
セメント(デンカ社製、普通セメント)628.0g、増粘剤(信越化学工業社製、MH4000P2、メチルセルロース系増粘剤)3.4g、消泡剤(サンノプコ社製、SN デフォーマー 14HP、ポリエーテル系消泡剤)3.4gを秤量し、混合した。これらの混合物に、標準砂((一社)セメント協会、セメント強さ試験用標準砂)1350.0g、水(水道水)376.8gを加え(水/セメント比:60%)、ミキサーを用いて、混練を行い、モルタル組成物Fを得た。
<モルタルパネルの作製>
(実施例1)
可動式の仕切り板64で仕切られた複数の成形空間66を備える図4の型枠60を準備する。
テーブルバイブレータを用いて、型枠60を下記の条件で振動させつつ、調製直後のモルタル組成物Aを、型枠60の成形空間66のそれぞれに流し込んだ。
テーブルバイブレータの振動条件:
・時間:6分
・振動電動機の回転数:2800±50rpm
・振動台:全振幅0.8±0.05mm
流し込みの後、モルタル組成物Aの調製直後を起点として3時間、25℃、相対湿度80%の室内中で型枠60を静置した。
静置後、型枠60の固定治具を取り外し、型枠60を脱型して、板状のモルタルパネルAを得た。
モルタルパネルAは、厚み:約5mm×縦:約4cm×横:約4cmの略直方形状を有していた。
(実施例2、3)
モルタル組成物Aに代えて、モルタル組成物B、Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、板状のモルタルパネルB、Cを得た。
(比較例1、2)
モルタル組成物Aに代えて、モルタル組成物D、Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、板状のモルタルパネルD、Eを得た。
(比較例3)
モルタル組成物Aに代えて、モルタル組成物Fを用い、室内で静置することに代えて、下記の蒸気養生を行った以外は、実施例1と同様にして、板状のモルタルパネルFを得た。
20℃、相対湿度80%の恒温恒湿室内に、型枠を静置し、下記の条件で蒸気養生を行った。
蒸気養生の条件:
・20℃を、4時間保持する。
・20℃から80℃まで、1時間かけて昇温する。
・80℃を、8時間保持する。
・自然冷却で、20℃まで降温する。
得られたモルタルパネルについて、以下の評価項目について評価を行った。結果を表2に示す。
表2中、「-」は評価を行わなかったことを示す。
Figure 0007316151000002
(強度)
モルタル組成物を型枠60に流し込み、未だ硬化が十分進行していない段階での強度を指触で測定した。そして、以下3段階で評価した。
◎:型枠を脱型しても形は崩れず、また、セメント組成物を指で押しても凹まなかった。
○:型枠を脱型しても形は崩れなかったが、セメント組成物を指で押すとやや凹む状態であった。あるいは、型枠を脱型しても形は崩れなかったが、セメント組成物を指で押すと凹む状態であった。
×:型枠を脱型すると形が崩れてしまう状態であった。
実施例1~3のモルタルパネルは、比較例2と比べて、初期硬度に優れる結果を示すことが分かった。比較例2の急硬材Eを用いると、ゲルタイム(急硬材をセメントと混合した後、その混合物が流動性を失うまでの時間)が比較的長くなるためと推察される。
(製造安定性)
所定量のモルタル組成物を3つ個の型枠60に、順次流し込んだ。最初と最後の型枠60から得られたモルタルパネルについて、密度、質量のバラツキを評価した。
モルタルパネルの密度・質量のバラツキが抑制されており、実用上問題ない範囲である場合を○、モルタルパネルの密度・質量のバラツキが大きく、実用上使用できない場合を×と評価した。
実施例1~3のモルタルパネルは、比較例1と比べて、製造安定性に優れる結果を示すことが分かった。また、比較例1に用いたモルタル組成物Dは、比較的短時間で硬化が進むため、型枠への充填作業性が、実施例1~3と比べて低くなる結果を示した。
比較例1の急硬材Dを用いると、急硬材を水や凝結調整剤と混合して調合した液を静置し、固形分(粗大粒子)の生成が認められるまでの可使時間が比較的短くなるためと推察される。
(モルタルパネルの表面状態:ひび割れ・変色)
得られたモルタルパネルの表面外観を目視で観察し、状態を確認した。
モルタルパネルにおいて、ひび割れや変色が生じていない場合を○、ひび割れ・変色の少なくとも一方が生じた場合を×と評価した。
実施例1~3のモルタルパネルは、比較例3と比べて、表面に割れや変色が抑制される結果を示すことが分かった。比較例3の蒸気養生の場合、ボイラー等で発生させた水蒸気により表面に変色が生じること、水蒸気の湿度や温度条件によっては表面にひび割れが生じる可能性があることが推察される。
また、実施例1~3のモルタルパネルは、比較例3と比べて短時間に硬化させることが可能であった。
<劣化診断ツールの作製>
実施例1~3のモルタルパネルA~Cを用いて劣化診断ツールを作製した。
まず、アクリル系粘着両面テープ(3M社製、4485、テープ厚み:0.5mm、片面に剥離紙付き)を、縦:3.8cm×横:3.8cmにカットした。カットしたテープの粘着面を、モルタルパネルの裏面に図1(a)に示すように貼り付けた。
続いて、アルミ製シールの粘着面を、モルタルパネルの側面の4面の全体に、図3(b)に示すように貼り付けた。以上より、劣化診断ツールA~Cを得た。
得られた劣化診断ツールA~Cの両面テープから剥離紙を剥離して、その粘着面を、屋外のコンクリート構造物の平坦面に接着させた。劣化診断ツールA~Cを、数ヶ月(1ヶ月以上、1年未満)の間暴露した後、回収して、分析することにより、各モルタルパネル中に含まれる全塩化物イオン量について分析することができた。また、設置後から回収まで、モルタルパネルの割れも抑制されており、設置耐久性に優れることが分かった。
したがって、実施例の劣化診断ツールを用いることで、劣化診断ツールを固定した付近のコンクリートの状況を安定的に推定することができる。
10 モルタルパネル
12 主面
14 裏面
16 側面
20 密着層
22 主面
24 裏面
30 遮蔽層
40 ラベル
50 剥離層
60 型枠
64 仕切り板
66 成形空間
100 劣化診断ツール
200 コンクリート構造物
202 桁
204 橋脚床板
210 構造体
300 パッケージ
310 包装袋
320 チャック

Claims (9)

  1. コンクリート構造物のおかれた環境に曝露される主面と、前記コンクリート構造物またはその近傍に存在する構造体に対する貼り付け面となる裏面とを有する、板状のモルタルパネルで構成されるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記モルタルパネルは、急硬材およびセメントを含むモルタル組成物の硬化体で構成されており、
    前記急硬材が、カルシウムアルミネートと、炭素数1以上10以下のカルボン酸の塩とを含む、
    コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  2. 請求項1に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記急硬材中、前記カルボン酸の塩が、カルボン酸の金属塩を含む、
    コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  3. 請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記急硬材中、前記カルシウムアルミネート中のCaO/Alモル比が1.0以上3.0以下である、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記急硬材が石膏を含む、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記急硬材中、前記カルシウムアルミネート100質量部に対する前記カルボン酸の塩の量が0.1質量部以上50質量部以下である、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記モルタルパネルの前記裏面に密着層を備える、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    JIS A 1108に準拠して測定される、前記モルタルパネルの圧縮強度は、15N/mm以上30N/mm以下である、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記モルタルパネルの厚みは、3mm以上20mm以下である、コンクリート構造物の劣化診断ツール。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
    前記モルタルパネルの側面に、塩化物イオンまたは二酸化炭素を遮蔽する遮蔽層が設けられている、
    コンクリート構造物の劣化診断ツール。
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