JP7138068B2 - コンクリート構造物の劣化診断ツール - Google Patents
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Description
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が一般的に知られている。特許文献1には、コンクリート構造物からコンクリートをコアリングして分析する破壊型検査方法が記載されている。
現在、非壊型検査方法の開発が進められている。例えば、特許文献2には、モルタルパンルをコンクリート構造物に液状のエポキシ系接着剤で取り付けて、それを一定期間後に剥ぎ取って回収し、塩分量を測定することにより、コンクリート構造物が設置されている箇所の塩分量を評価する方法が提案されている。
このような事情を踏まえて検討を進めた結果、モルタルパネルの単位面積S当たりの質量Wと密着層の剪断密着力Fとを指標とすることで、コンクリート構造物への密着安定性とともに被着体の劣化具合について安定的に評価できることが判明した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、F/(W/S)を指標として採用し、この数値範囲を適切に制御することによって、密着安定性および被着体の劣化防止が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
コンクリート構造物のおかれた環境に曝露される主面と、前記コンクリート構造物またはその近傍に存在する構造体に対する貼り付け面となる裏面とを有する、板状のモルタルパネルで構成されるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの前記裏面に密着層を備え、
前記裏面の面積をS(cm2)
前記モルタルパネルの質量をW(g)
下記の手順に従って測定される、前記密着層の23℃における剪断密着力をF1(N/cm2)としたとき、
F1/(W/S)が、4.0以上1.0×103以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツールが提供される。
(手順)
SUS304、BA仕上げの2枚のステンレス板を準備し、前記密着層を2枚のステンレス板の間に配置した後、質量2kgの圧着ローラーを用いて、1往復ローラー圧着する。室温24時間養生した後、23℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、前記密着層の剪断密着力(F1)を測定する。
劣化診断ツール100を構成するモルタルパネル10は、板状であれば形状を特に限定せずに使用できるが、裏面14の垂直方向から見たときの形状が、略正方形状または略長方形状としてもよい。ロット間の製造バラツキを抑制できる。
モルタルパネル10の圧縮強度は、JIS A 1108に準拠して測定される。
モルタルパネル10にける塩化物イオンの見掛けの拡散係数は、JSCE-G 572-2018に準拠して測定される。
これにより、コンクリート構造物200に密着層20を介してモルタルパネル10を貼り付けたときに、コンクリート構造物200とモルタルパネル10との間に間隙が形成されるため、モルタルパネル10の引き剥がしが容易となる。よって、劣化診断ツール100の作業性を高めることができる。
裏面24側の密着層20(両面テープ)から剥離層50(カバーフィルム)を剥がすことで、劣化診断ツール100の設置が可能な状態となる。よって、劣化診断ツール100の作業性を高められる。
なお、密着層20の裏面24とは、モルタルパネル10裏面と密着した主面22とは反対側に位置する面である。また、剥離層50により密着層20の接着面を保護することにより、使用の前にかかる接着面(裏面24)が汚染されることを抑制できる。
例えば、略正方形状または直方形状を有するモルタルパネル10の4つの側面16のすべてに、遮蔽層30が被覆されてもよい。
本実施形態に係るモルタル組成物は、原料として、セメント、細骨材、および水を含むものである。
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系減水剤として、例えば、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物等の塩等が挙げられる。
その他、リグニンスルホン酸塩系減水剤、ポリオール系減水剤、及びオキシカルボン酸塩系減水剤等の一般減水剤を使用してもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係るモルタルパネル10は、上記モルタル組成物を硬化することで得られる。
モルタルパネルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、モルタル組成物を型枠内に流し入れる工程、モルタル組成物を硬化養生する工程を含んでもよい。
蒸気養生において、加熱時間、昇温・降温速度を適切に調整する。これによって、モルタル組成物を硬化養生する。
劣化診断ツール100は、包装袋に収容して保管してもよい。モルタルパネル10の諸特性のバラツキが少ないものを複数個選別し、それを同じ包装袋に収容してもよい。
(手順)
SUS304、BA仕上げの2枚のステンレス板を準備し、密着層20を2枚のステンレス板の間に配置した後、質量2kgの圧着ローラーを用いて、1往復ローラー圧着する。室温24時間養生した後、23℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、密着層20の剪断密着力(F1)を測定する。
50℃雰囲気下とした以外は、F1と同様にして、密着層20の剪断密着力(F2)を測定する。
(試験例1)
セメント(デンカ社製、普通セメント)628.0g、減水剤(第一工業製薬社製、セルフロー110P、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系減水剤)2.4g、増粘剤(信越化学工業社製、MH4000P2、メチルセルロース系増粘剤)3.4g、消泡剤(サンノプコ社製、SN デフォーマー 14HP、ポリエーテル系消泡剤)3.4gを秤量し、混合した。これらの混合物に、標準砂((一社)セメント協会、セメント強さ試験用標準砂)1350.0g、水(水道水)376.8gを加え(水/セメント比:60%)、ミキサーを用いて、低速、停止、低速の順で回転条件を変更しながら混練を行い、モルタル組成物Aを得た。
減水剤を使用せず、回転条件を低速、高速の順に変更した点以外は、上記の試験例1と同様にして、モルタル組成物Bを得た。
(実施例1)
可動式の仕切り板64で仕切られた複数の成形空間66を備える図4の型枠60を準備する。
テーブルバイブレータを用いて、型枠60を下記の条件で振動させつつ、得られたモルタル組成物Aを、型枠60の成形空間66のそれぞれに流し込んだ。
テーブルバイブレータの振動条件:
・時間:6分
・振動電動機の回転数:2800±50rpm
・振動台:全振幅0.8±0.05mm
蒸気養生の条件:
・25℃から85℃まで、6時間かけて昇温する。
・85℃を、3時間保持する。
・自然冷却で、25℃まで降温する。
・25℃で1時間静置する。
アクリル系粘着両面テープ(3M社製、4481MH、テープ厚み:1.0mm、片面に剥離紙付き)を使用した以外は、実施例1と同様にして、劣化診断ツールa2を得た。
アクリル系粘着両面テープ(3M社製、4425-20、テープ厚み:2.0mm、片面に剥離紙付き)を使用した以外は、実施例1と同様にして、劣化診断ツールa3を得た。
仕切り板64による仕切り位置を変動させ、型枠60の成形空間66を拡張することにより、得られたモルタルパネルAの厚みを15.00mm、その質量を48.00gとした以外は、実施例1と同様にして、劣化診断ツールa4を得た。
仕切り板64による仕切り位置を変動させ、型枠60の成形空間66を縮小することにより、得られたモルタルパネルAの厚みを2.00mm、その質量を6.40gとした以外は、実施例1と同様にして、劣化診断ツールa5を得た。
仕切り板を有さずに一つの成形空間を備える型枠を準備する。
得られたモルタル組成物Bを、振動させずに、型枠の成形空間に流し込んだ。
蒸気養生の条件:
・20℃を、4時間保持する。
・20℃から80℃まで、4時間かけて昇温する。
・80℃を、4時間保持する。
・自然冷却で、20℃まで降温する。
得られたモルタルバーを、ダイヤモンドカッターにて所定の厚みに切断して、板状のモルタルパネルBを得た。
モルタルパネルBは、厚み:25.0mm×縦:4.0cm×横:4.0cmの略直方形状、80.00gの質量を有していた。ノギスを用いて寸法を測定し、精密天秤を用いて質量を計量した。
(手順)
SUS304、BA仕上げの2枚のステンレス板を準備し、剥離紙を除去した両面テープ(密着層)を2枚のステンレス板の間に配置した後、質量2kgの圧着ローラーを用いて、1往復ローラー圧着する。室温24時間養生した。その後、23℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、両面テープの剪断密着力(F1)を測定した。
同様にして、50℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、両面テープの剪断密着力(F2)を測定した。
各実施例・比較例の劣化診断ツールの両面テープから剥離紙を剥離した後、所定厚みを有する板状の透明性基板(ポリプロピレンフィルム)の表面に、その両面テープの粘着面を貼り付けた。
平面台の平面に、表面とのなす角が90度となるように透明性基板を90度設置した。劣化診断ツールが貼り付けられた面とは反対側の面から透明性基板を観察し、90度設置前後における鉛直方向での両面テープの長さの変形量(mm)の最大値を測定した。また測定を3回行い、その平均値を算出した。
これに対して、実施例1~5のモルタルパネルa1~a5においては、鉛直方向での両面テープの長さの変形量の最大値は、平均値が比較的小さく、測定毎の測定値のバラツキも小さいことが示された。また、変形量の平均値は、実施例4、実施例3、実施例2、実施例1、実施例5の順に小さくなった。
(比較例2)
試験例2のモルタル組成物Bの水/セメント比を調整して、モルタルペーストを得た。
比較例1と同様にして、厚み:約5mm×縦:約4cm×横:約4cmの略直方形状のモルタルパネルb2を得た。
このモルタルパネルb2を、モルタルペーストを介してコンクリートパネル構造物の平坦面に貼り付け、該モルタルペーストを硬化させることによって強固に接着させた。その後、コンクリートパネル構造物からモルタルパネルb2を引き剥がし、モルタルペーストの被着体の状態について観察した。
この引き剥がし試験を複数回行った結果、モルタルパネルb2の一部に破損や割れが発生すること、あるいは、コンクリートパネル構造物の表面に剥離が生じることが分かった。
実施例1~5の劣化診断ツールにおいて、アルミ製シールの粘着面を、モルタルパネルの側面の4面の全体に、図3(b)に示すように貼り付けた。
この劣化診断ツールの両面テープから剥離紙を剥離して、その粘着面を、屋外のコンクリート構造物の平坦面に接着させた。劣化診断ツールを、数ヶ月(1ヶ月以上、1年未満)の間暴露した後、回収して、分析することにより、各モルタルパネル中に含まれる全塩化物イオン量を分析した。実施例1~5の劣化診断ツールは、コンクリート構造物からのモルタルパネルの設置、および回収が容易であり、曝露期間中、安定して設置面に固定されていた。また、各モルタルパネル中の全塩化物イオン量についても、安定的に測定できた。
したがって、各実施例の劣化診断ツールを用いることで、劣化診断ツールを固定した付近のコンクリートの状況を安定的に推定することができる。
12 主面
14 裏面
16 側面
20 密着層
22 主面
24 裏面
30 遮蔽層
40 ラベル
50 剥離層
60 型枠
64 仕切り板
66 成形空間
100 劣化診断ツール
200 コンクリート構造物
202 桁
204 橋脚床板
210 構造体
300 パッケージ
310 包装袋
320 チャック
Claims (11)
- コンクリート構造物のおかれた環境に曝露される主面と、前記コンクリート構造物またはその近傍に存在する構造体に対する貼り付け面となる裏面とを有する、板状のモルタルパネルで構成されるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの前記裏面に密着層を備え、
前記裏面の面積をS(cm2)
前記モルタルパネルの質量をW(g)
下記の手順に従って測定される、前記密着層の23℃における剪断密着力をF1(N/cm2)としたとき、
F1/(W/S)が、4.0以上1.0×103以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。
(手順)
SUS304、BA仕上げの2枚のステンレス板を準備し、前記密着層を2枚のステンレス板の間に配置した後、質量2kgの圧着ローラーを用いて、1往復ローラー圧着する。室温24時間養生した後、23℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、前記密着層の剪断密着力(F1)を測定する。 - 請求項1に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
下記の手順に従って測定される、前記密着層の50℃における剪断密着力をF2(N/cm2)
としたとき、
F2/(W/S)が、3.0以上5.0×102以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。
(手順)
SUS304、BA仕上げの2枚のステンレス板を準備し、前記密着層を2枚のステンレス板の間に配置した後、質量2kgの圧着ローラーを用いて、1往復ローラー圧着する。室温24時間養生した後、50℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件で、前記密着層の剪断密着力(F2)を測定する。 - 請求項1または2に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの前記裏面に対して垂直な方向から見たときに、前記裏面の周縁領域の少なくとも一部に、前記密着層が貼り付けされていない部分がある、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの前記裏面に対して垂直な方向から見たときに、前記裏面を被覆する前記密着層の被覆面積は、前記裏面の全面積に対して、85%以上95%以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記密着層の厚みは、0.3mm以上3.0mm以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記密着層は、粘着剤からなる粘着層を備える、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネル前記裏面と密着した主面とは反対側の、前記密着層の裏面に剥離可能な剥離層を備える、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
JIS A 1108に準拠して測定される、前記モルタルパネルの圧縮強度は、15N/mm2以上30N/mm2以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~8のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの厚みは、3mm以上20mm以下である、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~9のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルの側面に、塩化物イオンまたは二酸化炭素を遮蔽する遮蔽層が設けられている、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。 - 請求項1~10のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、
前記モルタルパネルは、セメントおよび細骨材を含むモルタル組成物の硬化体で構成される、
コンクリート構造物の劣化診断ツール。
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永井崇之,外4名,ITシステム向け障害対処プラン自動生成システムの検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,電子情報通信学会,2013年03月07日,第112巻、第492号,p.125-130 |
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