本件開示者らが鋭意検討した結果、本件開示者らは、基板の表面に設けられた凹部内を膜で埋め込む際に、凹部内の少なくとも上部に、成膜阻害剤に対してある特定の特性を有する下地膜を予め形成することで、凹部内の上部に対応する部分に成膜阻害層を適正かつ選択的に形成することが可能となることを見い出した。また、これにより、凹部内に膜を凹部内の底部から上方に向かって適正にボトムアップ成長させることができ、埋め込み特性を向上させることが可能となることを、本件開示者らは見い出した。本開示は本件開示者らが見いだした上記知見に基づくものである。以下、本開示における2通り(第1実施形態、第2実施形態)の手法について説明する。
<本開示における第1実施形態>
以下、本開示における第1実施形態について、主に、図1~図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232f,232hがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232gが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガスをプラズマ状態に励起するプラズマ励起部(プラズマ発生部、プラズマ発生器)であるリモートプラズマユニット(以下、RPU)500が設けられている。ガス供給管232b,232hの接続部よりも下流側には、RPU502が設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
ガス供給管232aからは、原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
ガス供給管232bからは、反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
ガス供給管232cからは、フッ素含有ガス、または、触媒ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
ガス供給管232dからは、アミノシラン系ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。なお、アミノシラン系ガスは、アルキル基等の炭化水素基を含む場合もあり、この場合、このガスを炭化水素基含有ガスと称することもできる。
ガス供給管232e~232gからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e~241g、バルブ243e~243g、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。
ガス供給管232hからは、酸化ガスが、MFC241h、バルブ243h、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、フッ素含有ガス供給系、または、触媒ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、アミノシラン系ガス供給系(炭化水素基含有ガス供給系)が構成される。アミノシラン系ガス供給系をSi含有ガス供給系と称することもできる。主に、ガス供給管232e~232g、MFC241e~241g、バルブ243e~243gにより、不活性ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232h、MFC241h、バルブ243hにより、酸化ガス供給系が構成される。
ここで、原料ガスおよび反応ガスは、成膜ガスとして作用することから、原料ガス供給系および反応ガス供給系のうち一方または両方を、成膜ガス供給系と称することもできる。また、原料ガスおよび酸化ガスは、前処理ガスとして作用することから、原料ガス供給系および酸化ガス供給系を、前処理ガス供給系と称することもできる。また、フッ素含有ガスおよびアミノシラン系ガス(炭化水素基含有ガス)は、成膜阻害剤として作用することから、フッ素含有ガス供給系およびアミノシラン系ガス供給系(炭化水素基含有ガス供給系)を成膜阻害剤供給系とも称する。また、反応ガスまたは酸化ガスには、後述する添加ガスとして作用するガスも含まれるため、反応ガス供給系および酸化ガス供給系のうち一方または両方を、添加ガス供給系と称することもできる。
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
記憶装置121cは、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200の表面に設けられたトレンチやホール等の凹部内に膜をボトムアップ成長させる工程の一例について、主に、図4(a)~図4(g)および図5(a)~図5(i)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
図4(a)~図4(g)および図5(a)~図5(i)に示す処理シーケンスでは、
表面に凹部300が設けられたウエハ200に対して前処理ガスを供給することで、凹部300内の少なくとも上部に、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高い下地膜304を形成するステップAと、
ウエハ200に対して成膜阻害剤を供給することで、凹部300内の少なくとも上部に形成した下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306を形成するステップBと、
ウエハ200に対して成膜ガスを供給することで、凹部300内の成膜阻害層306が形成されていない部分を起点として膜308を成長させるステップCと、
を行い、ステップAを行った後、ステップBと、ステップCと、を所定回数(m回、mは1以上の整数)行う。
ステップAを下地膜形成とも称する。ステップBを成膜阻害層形成とも称する。ステップCを選択成長(選択成膜)、または、ボトムアップ成長(ボトムアップ成膜)とも称する。
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様、変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
ステップA→(ステップB→ステップC)×m
ここで、m=1であるケースが、図4(a)~図4(g)に示す処理シーケンスに該当し、m>1であるケース、すなわち、m≧2であるケースが、図5(a)~図5(i)に示す処理シーケンスに該当する。図5(a)~図5(i)に示す処理シーケンスでは、m=3であるケースを例示している。m=1であるケース、すなわち、図4(a)~図4(g)に示す処理シーケンスを、以下のように示すこともできる。
ステップA→ステップB→ステップC
なお、図4(a)~図4(g)や図5(a)~図5(i)に示す処理シーケンスは、ステップAにおいて、凹部300内の全体に下地膜304を形成し、ステップBにおいて、下地膜304の一部である上部に選択的に成膜阻害層306を形成する例を示している。
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」や基板の一部である「凹部」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
ここで、ボート217に装填されるウエハ200としては、単結晶シリコン(Si)ウエハを用いることができる。また、上述のように、ボート217に装填されるウエハ200の表面には、図4(a)、図5(a)に示すように、凹部300が設けられている。凹部300内の表面(最表面)、すなわち、凹部300の内壁の表面の材質は、特に制限はなく、例えば、単結晶Si(単結晶Siウエハそのもの)、シリコン膜(Si膜)、ゲルマニウム膜(Ge膜)、シリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)シリコン酸窒化膜(SiON)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、硼窒化膜(BN膜)等が挙げられ、例えば、これらのうち少なくともいずれか1つである場合がある。
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
その後、ステップA、ステップB、ステップCをこの順に実行する。以下、これらの各ステップについて説明する。
〔ステップA(下地膜形成)〕
本ステップでは、ウエハ200に対して前処理ガスを供給することで、凹部300内の少なくとも上部に、ここでは、図4(b)、図5(b)に示すように、凹部300内の全体に、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高い下地膜304を形成する。
例えば、本ステップでは、ウエハ200に対して、前処理ガスとして原料ガスと改質ガスとを交互に供給することで、凹部300内の全体に下地膜304を堆積させることができる(方法1-A1)。もしくは、ウエハ200に対して、前処理ガスとして改質ガスを供給することで、凹部300内の表面を改質させて、凹部300内の全体に下地膜304を形成することができる(方法1-A2)。いずれの方法によっても、凹部300内の全体にコンフォーマルな下地膜304を形成することができる。
下地膜304としては、例えば、SiO膜、SiON膜、SiOC膜、SiOCN膜等の酸素(O)含有膜、すなわち、酸化膜系の膜を形成することができる。下地膜304としては、O含有膜の中でも、SiおよびO含有膜が好ましく、SiO膜がより好ましい。以下では、下地膜304として、例えば、SiO膜を形成する例について説明する。なお、下地膜304としては、凹部300内の表面の材質と同様の材質の膜を用いることもできるが、凹部300内の表面の材質とは異なる材質の膜を用いることが好ましい。
例えば、下地膜304としてSiO膜を形成する場合、改質ガスとしては、酸化ガスを用いることができる。すなわち、この場合、ウエハ200に対して、前処理ガスとして、原料ガスと、酸化ガス(改質ガス)と、を交互に供給することで、凹部300内に下地膜304としてSiO膜を堆積させることができる(方法1-A1)。
また例えば、ウエハ200に対して、前処理ガスとして酸化ガス(改質ガス)を供給することで、凹部300内の表面を酸化(改質)させて、凹部300内に下地膜304としてSiO膜を形成することができる(方法1-A2)。
方法1-A1のように、ウエハ200に対して、前処理ガスとして、原料ガスと、酸化ガスと、を交互に供給する場合、それらの間に、不活性ガスによる処理室201内のパージを挟むようにすることが好ましい。すなわち、本ステップでは、ウエハ200に対して原料ガスを供給するステップと、処理室201内をパージするステップと、酸化ガスを供給するステップと、処理室201内をパージするステップと、を非同時に行うサイクルを所定回数(d回、dは1以上の整数)行うことが好ましい。また、原料ガスおよび酸化ガスのうち少なくともいずれかと一緒に触媒ガスを供給することもできる。この場合、処理温度の低温化を図ることが可能となり、室温での成膜も可能となる。方法1-A1の処理シーケンスは、以下のように表すことができ、以下の4通りの処理シーケンスのうちいずれかを行うことができる。
(原料ガス→パージ→酸化ガス→パージ)×d
(原料ガス+触媒ガス→パージ→酸化ガス→パージ)×d
(原料ガス→パージ→酸化ガス+触媒ガス→パージ)×d
(原料ガス+触媒ガス→パージ→酸化ガス+触媒ガス→パージ)×d
前処理ガスとして、酸化ガスを用いる場合は、バルブ243hを開き、ガス供給管232h内へ酸化ガスを供給する。酸化ガスは、MFC241hにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して酸化ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
前処理ガスとして、更に、原料ガスを用いる場合は、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを供給する。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
前処理ガスとして、更に、触媒ガスを用いる場合は、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ触媒ガスを供給する。触媒ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して触媒ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
原料ガスと、酸化ガスと、を交互に供給する場合に、それらの間に、不活性ガスによる処理室201内のパージを行う場合は、バルブ243e~243gを開き、ガス供給管232e~232g内のそれぞれへ不活性ガスを供給する。不活性ガスは、MFC241e~241gにより流量調整され、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、不活性ガスによる処理室201内のパージが行われる。
本ステップにおいて、方法1-A1により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における原料ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~700℃、好ましくは200~650℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは5~1000Pa
原料ガス供給流量:1~3000sccm、好ましくは1~500sccm
原料ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-A1により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における酸化ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~700℃、好ましくは200~650℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
酸化ガス供給流量:1~10000sccm、好ましくは100~2000sccm
酸化ガス供給時間:10~120秒、好ましくは15~60秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-A1により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における処理室201内をパージする際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~700℃、好ましくは200~650℃
処理圧力:1~100Pa、好ましくは1~20Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):500~20000sccm
不活性ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-A2により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における酸化ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:350~1200℃、好ましくは400~800℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
酸化ガス供給流量:1~10000sccm、好ましくは100~2000sccm
酸化ガス供給時間:1~120分、好ましくは3~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
なお、本明細書における「350~1200℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「350~1200℃」とは「350℃以上1200℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。なお、処理温度とはウエハ200の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0sccmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガス、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガス、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス、(エチルメチルアミノ)シラン(SiH3[N(CH3)(C2H5)])ガス、(ジメチルアミノ)シラン(SiH3[N(CH3)2])ガス、(ジセカンダリブチルアミノ)シラン(SiH3[H(C4H9)2])ガス、(ジメチルピペリジノ)シラン(SiH3[NC5H8(CH3)2])ガス、(ジエチルピペリジノ)シラン(SiH3[NC5H8(C2H5)2])ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
酸化ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、O2ガス+水素(H2)ガス、O3ガス+H2ガス、H2Oガス+H2ガス等を用いることができる。酸化ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
なお、本明細書において「O3ガス+H2ガス」のような2つのガスの併記記載は、O3ガスとH2ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)した後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
上述の各方法により、上述の各ガスを用い、上述の各処理条件下で本ステップを行うことにより、図4(b)、図5(b)に示すように、凹部300内の全体に、下地膜304として、コンフォーマルなSiO膜を形成することができる。
なお、後述するステップBにおいて、成膜阻害層306として、フッ素(F)終端層や炭化水素基終端層を形成する場合であって、凹部300内の表面にSiO膜以外の材質の膜が露出している場合に、凹部300内の表面に、下地膜304を形成することなく、成膜阻害層306を直接形成しようとすると、凹部300内に形成される成膜阻害層306としてのF終端層や炭化水素基終端層による成膜阻害効果が低下してしまうことがある。すなわち、F終端層や炭化水素基終端層による成膜阻害効果が不充分または限定的となることがある。
これは、凹部300内の表面にSi,O以外の元素、例えば、N,C等の元素が含まれている場合に、例えば、凹部300内の表面におけるSi,O以外の元素に起因して、F終端層や炭化水素基終端層の密度が低下することが1つの要因と考えられる。また、例えば、凹部300内の表面におけるSi,O以外の元素に起因して、F終端層や炭化水素基終端層が形成される際に、成膜阻害剤が下地膜304へ吸着するエネルギーが弱くなり、下地膜304へ吸着した成膜阻害剤、すなわち、F終端や炭化水素基終端が脱離し易くなることが他の1つの要因として考えられる。
これに対して、本実施形態によれば、凹部300内の表面にSi,O以外の元素、例えば、N,C等の元素が含まれている場合であっても、その凹部300内の表面の全体に下地膜304として、例えばSiO膜を形成し、そのSiO膜の上に、成膜阻害層306としてF終端層や炭化水素基終端層を形成するようにしている。これにより、F終端層や炭化水素基終端層を形成する際における凹部300内の表面に含まれるSi,O以外の元素による影響を防止することができ、F終端層や炭化水素基終端層による成膜阻害効果を高めることが可能となる。
以上のことから、ステップBにおいて、成膜阻害層306として、F終端層や炭化水素基終端層を形成する場合、下地膜304としてはO含有膜を用いることが好ましく、O含有膜の中でもSiおよびO含有膜を用いることがより好ましく、SiおよびO含有膜の中でもSiO膜を用いることが更に好ましい。
下地膜304にSi,O以外の元素が含まれていない場合、下地膜304上に形成される成膜阻害層306としてのF終端層や炭化水素基終端層の密度の低下を抑制することができる。また、F終端層や炭化水素基終端層が形成される際に、成膜阻害剤が下地膜304へ吸着するエネルギーが充分に高くなり、下地膜304へ吸着した成膜阻害剤の脱離、すなわち、F終端や炭化水素基終端の脱離を抑制することが可能となる。
また、成膜阻害層306としてF終端層を形成する場合に、F含有ラジカルが生じるが、下地膜304に含まれる強固なSi-O結合により、F含有ラジカルに起因する下地膜304や凹部300内表面へのエッチングダメージを抑制することも可能となる。この効果は、下地膜304がSi-O結合を含んでいる場合に得られるが、更に、下地膜304にSi,O以外の元素が含まれていない場合に、より顕著に生じることとなる。
(パージ)
凹部300内に下地膜304を形成した後、ノズル249a~249cのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される。
〔ステップB(成膜阻害層形成)〕
ステップAが終了し、処理室201内のパージを行った後、ステップBを行う。ステップBでは、ウエハ200に対して成膜阻害剤を供給することで、図4(c)、図5(c)に示すように、凹部300内の全体に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306を形成する。本ステップでは、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、選択的に(優先的に)、成膜阻害層306を形成することが好ましい。
例えば、本ステップでは、成膜阻害剤を、成膜阻害剤の凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で供給することができる。ここで、成膜阻害剤の凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件とは、成膜阻害剤の凹部300内の上部での消費が生じる条件、成膜阻害剤の凹部300内の上部での失活が生じる条件、または、成膜阻害剤の凹部300内の上部での消費および失活が生じる条件を意味する。このような条件下で成膜阻害剤を供給することにより、成膜阻害剤は、凹部300内の上部で消費され、凹部300内の下部まで到達しないか、凹部300内の上部で失活し、活性な状態では凹部300内の下部まで到達しないか、あるいは、それらの挙動の両方が生じることとなる。
このような条件下で、成膜阻害剤としてフッ素(F)含有ガスを供給することにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、選択的に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することができる。
例えば、成膜阻害剤としてF含有ガスを、F含有ガスが熱分解する条件下で供給することで、成膜阻害剤、すなわち、F含有ガスやF含有ガスを熱分解させることで生じさせたF含有ラジカルを、凹部300内の上部で消費および/または失活させることができる。これにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、F含有ラジカルの作用により、選択的に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することが可能となる(方法1-B1)。
また例えば、成膜阻害剤としてF含有ガスを、プラズマ励起させて供給することで、成膜阻害剤、すなわち、F含有ガスやF含有ガスをプラズマ励起させることで生じさせたF含有ラジカルを、凹部300内の上部で消費および/または失活させることができる。これにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、F含有ラジカルの作用により、選択的に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することが可能となる(方法1-B2)。
また例えば、成膜阻害剤としてF含有ガスと、F含有ガスと反応する添加ガスと、を供給することで、成膜阻害剤、すなわち、F含有ガスやF含有ガスと添加ガスとの反応により生じさせたF含有ラジカルを、凹部300内の上部で消費および/または失活させることができる。これにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、F含有ラジカルの作用により、選択的に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することが可能となる(方法1-B3)。
また、このような条件下で、成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを供給することにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、選択的に、成膜阻害層306として炭化水素基終端層を形成することができる。
例えば、成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを、凹部300内の底部に届きにくくなる条件、すなわち、ガス欠となる条件下で供給することで、成膜阻害剤を、凹部300内の上部で消費および/または失活させることができる。これにより、凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に、選択的に、炭化水素基含有ガスを化学吸着させて、成膜阻害層306として炭化水素基終端層を形成することが可能となる(方法1-B4)。
成膜阻害剤としてF含有ガスを用いる場合は、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へF含有ガスを供給する。F含有ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してF含有ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。なお、F含有ガスを、ガス供給管232cを介して処理室201内へ供給する際に、RPU500に高周波電力(RF電力)を印加することで、F含有ガスをプラズマ励起させて供給することができる。
成膜阻害剤としてF含有ガスと一緒に添加ガスを用いる場合は、バルブ243bまたはバルブ243hを開き、ガス供給管232bまたはガス供給管232h内へ添加ガスを供給する。添加ガスは、MFC241bまたはMFC241hにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して添加ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを用いる場合は、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ炭化水素基含有ガスを供給する。炭化水素基含有ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して炭化水素基含有ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
本ステップにおいて、方法1-B1により、F含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:200~600℃、好ましくは350~500℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
F含有ガス供給流量:1~100sccm、好ましくは10~100sccm
F含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-B2により、F含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは100~300℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
F含有ガス供給流量:1~3000sccm、好ましくは1~500sccm
F含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
高周波電力(RF電力):25~1500W
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-B3により、F含有ガス+添加ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは室温~300℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
F含有ガス供給流量:1~3000sccm、好ましくは1~500sccm
添加ガス供給流量:1~3000sccm、好ましくは1~500sccm
F含有ガス+添加ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて、方法1-B4により、炭化水素基含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは100~500℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
炭化水素基含有ガス供給流量:1~100sccm、好ましくは10~100sccm
炭化水素基含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
F含有ガスとしては、例えば、三フッ化窒素(NF3)ガス、フッ化塩素(ClF)ガス、三フッ化塩素(ClF3)ガス、フッ素(F2)ガス、フッ化ニトロシル(FNO)ガス、四フッ化メタン(CF4)ガス、六フッ化エタン(C2F6)ガス、八フッ化プロパン(C3F8)ガス等を用いることもできる。F含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
添加ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、水素(H2)ガス、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、イソプロピルアルコール((CH3)2CHOH、略称:IPA)ガス、メタノール(CH3OH)ガス、水蒸気(H2Oガス)等を用いることもできる。添加ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
炭化水素基含有ガスとしては、例えば、アルキル基を含むガスを用いることができる。アルキル基を含むガスとしては、例えば、Siにアルキル基が配位したアルキルシリル基を含むガス、すなわち、アルキルシラン系ガスを用いることができる。アルキル基とは、アルカン(一般式CnH2n+2であらわされる鎖式飽和炭化水素)から水素(H)原子を1個除いた残りの原子団の総称であり、一般式CnH2n+1であらわされる官能基のことである。アルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。アルキル基は、アルキルシラン分子の中心原子であるSiに結合していることから、アルキルシランにおけるアルキル基を、リガンド(配位子)またはアルキルリガンドと称することもできる。
炭化水素基含有ガスは、更に、アミノ基を含んでいてもよい。すなわち、炭化水素基含有ガスは、炭化水素基と、アミノ基と、を含んでいてもよい。炭化水素基およびアミノ基含有ガスとしては、例えば、中心原子であるSiに直接結合したアルキル基と、中心原子であるSiに直接結合したアミノ基と、を含むアルキルアミノシラン系ガスを用いることができる。アミノ基とは、1つの窒素(N)原子に、炭化水素基が1つまたは2つ配位した官能基(-NH2で表されるアミノ基の水素(H)原子の一方または両方を炭化水素基で置換した官能基)のことである。アミノ基の一部を構成する炭化水素基が1つのNに2つ配位している場合は、その2つが同一の炭化水素基であってもよいし、異なる炭化水素基であってもよい。アミノ基の一部を構成する炭化水素基は、上述の炭化水素基と同様である。また、アミノ基は環状構造を有していてもよい。アルキルアミノシランにおける中心原子であるSiに直接結合するアミノ基を、リガンドまたはアミノリガンドと称することもできる。また、アルキルアミノシランにおける中心原子であるSiに直接結合するアルキル基を、リガンドまたはアルキルリガンドと称することもできる。
アルキルアミノシラン系ガスとしては、例えば、下記式[1]で表されるアミノシラン化合物のガスを用いることができる。
SiAx[(NB2)(4-x)] [1]
式[1]中、Aは、水素(H)原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、Bは、H原子、またはアルキル基を表し、xは1~3の整数を表す。ただし、xが1の場合、Aはアルキル基を表し、xが2または3の場合、Aの少なくとも一方はアルキル基を表す。
式[1]において、Aで表されるアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。Aで表されるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。Aで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。Aで表されるアルコキシ基は、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。Aで表されるアルコキシ基中のアルキル基は、上記Aで表されるアルキル基と同様である。xが2または3の場合、2つまたは3つのAは、同一であってよいし、異なっていてもよい。Bで表されるアルキル基は、上記Aで表されるアルキル基と同様である。また、2つのBは同一であってもよいし、異なっていてもよく、xが1または2の場合、複数の(NB2)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。更に、2つのBが結合して環構造を形成していてもよいし、形成された環構造は更にアルキル基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミノシラン系ガスとしては、例えば、1分子中に1つのアミノ基と3つのアルキル基とを含む化合物のガスを用いることができる。すなわち、式[1]中のAがアルキル基であり、xが3である化合物のガスを用いることができる。アルキルアミノシラン系ガスとしては、(アルキルアミノ)アルキルシラン系ガスを用いることができ、具体的には、例えば、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン((CH3)2NSi(CH3)3、略称:DMATMS)ガス、(ジエチルアミノ)トリメチルシラン((C2H5)2NSi(CH3)3、略称:DEATMS)ガス、(ジエチルアミノ)トリエチルシラン((C2H5)2NSi(C2H5)3、略称:DEATES)ガス、(ジメチルアミノ)トリエチルシラン((CH3)2NSi(C2H5)3、略称:DMATES)ガス等の(ジアルキルアミノ)トリアルキルシラン系ガスを用いることができる。なお、DMATMS,DEATMS,DEATES,DMATES等の中心原子であるSiには、1つのアミノ基(ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基)が結合している他、3つのアルキル基(メチル基やエチル基)が結合している。すなわち、DMATMS,DEATMS,DEATES,DMATES等は、1つのアミノリガンドと、3つのアルキルリガンドと、を含んでいる。
上述の各方法により、上述の各ガスを用い、上述の各処理条件下で本ステップを行うことにより、図4(c)、図5(c)に示すように、凹部300内の全体に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306として、F終端層または炭化水素基終端層を、選択的に(優先的に)、形成することができる。
(パージ)
凹部300内に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306を形成した後、ノズル249a~249cのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される。
〔ステップC(選択成長、ボトムアップ成長)〕
ステップBが終了し、処理室201内のパージを行った後、ステップCを行う。ステップCでは、ウエハ200に対して成膜ガスを供給することで、図4(d)、図5(d)に示すように、凹部300内の成膜阻害層306が形成されていない部分、すなわち、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない部分を起点として膜308を成長させる。
例えば、本ステップでは、ウエハ200に対して、成膜ガスとして原料ガスと反応ガスとを交互に供給することで、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない部分を起点として膜308を成長させることができる。すなわち、本ステップでは、ウエハ200に対して原料ガスを供給するステップと、反応ガスを供給するステップと、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない部分、すなわち、凹部300内に形成された下地膜304の底部を起点として、凹部300内の底部から上方に向かって膜308をボトムアップ成長させることができる。この場合、それらのステップの間に、不活性ガスによる処理室201内のパージを挟むようにすることが好ましい。すなわち、本ステップでは、ウエハ200に対して原料ガスを供給するステップと、処理室201内をパージするステップと、反応ガスを供給するステップと、処理室201内をパージするステップと、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことが好ましい。また、原料ガスおよび反応ガスのうち少なくともいずれかと一緒に触媒ガスを供給することもできる。この場合、処理温度の低温化を図ることが可能となり、室温での成膜も可能となる。本ステップの処理シーケンスは、以下のように表すことができ、以下の4通りの処理シーケンスのうちいずれかを行うことができる。
(原料ガス→パージ→反応ガス→パージ)×n
(原料ガス+触媒ガス→パージ→反応ガス→パージ)×n
(原料ガス→パージ→反応ガス+触媒ガス→パージ)×n
(原料ガス+触媒ガス→パージ→反応ガス+触媒ガス→パージ)×n
成膜ガスとして原料ガスを用いる場合は、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを供給する。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
成膜ガスとして反応ガスを用いる場合は、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ反応ガスを供給する。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
成膜ガスとして触媒ガスを用いる場合は、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ触媒ガスを供給する。触媒ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して触媒ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
原料ガスと、反応ガスと、を交互に供給する場合に、それらの間に、不活性ガスによる処理室201内のパージを行う場合は、バルブ243e~243gを開き、ガス供給管232e~232g内のそれぞれへ不活性ガスを供給する。不活性ガスは、MFC241e~241gにより流量調整され、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、不活性ガスによる処理室201内のパージが行われる。
本ステップにおいて原料ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは50~550℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは10~1333Pa
原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは10~1000sccm
原料ガス供給時間:1~180秒、好ましくは10~120秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて反応ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは50~550℃
処理圧力:1~5000Pa、好ましくは10~3000Pa
反応ガス供給流量:1~20000sccm、好ましくは10~2000sccm
反応ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
本ステップにおいて処理室201内をパージする際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは50~550℃
処理圧力:1~10Pa、好ましくは1~20Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):500~20000sccm
不活性ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
原料ガスとしては、例えば、ステップAの説明で例示した上述のクロロシラン系ガス、フルオロシラン系ガス、ブロモシラン系ガス、ヨードシラン系ガス等のハロシラン系ガスや、アミノシラン系ガス等を用いることができる。原料ガスとしては、この他、例えば、1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン((CH3)2Si2Cl4、略称:TCDMDS)ガス、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン((CH3)4Si2Cl2、略称:DCTMDS)ガス等のアルキルハロシラン(アルキルクロロシラン)系ガスや、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiCl3)2CH2、略称:BTCSM)ガス、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl3)2C2H4、略称:BTCSE)ガス、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン(C2H4Cl4Si2、略称:TCDSCB)ガス等のアルキレンクロロシラン系ガス等を用いることもできる。すなわち、ハロシラン(クロロシラン)系ガスとしては、炭化水素基すなわちCを含有するハロシラン(クロロシラン)系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
反応ガスとしては、例えば、ステップAの説明で例示した上述の酸化ガス(O含有ガス)を用いることができる。反応ガスとしては、この他、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、N3H8ガス等のN-H結合を含む窒化ガス(NおよびH含有ガス)を用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
触媒ガスとしては、例えば、C、NおよびHを含むアミン系ガスを用いることができる。アミン系ガスとしては、例えば、ピリジンガス(C5H5N、略称:py)ガス、アミノピリジン(C5H6N2)ガス、ピコリン(C6H7N)ガス、ルチジン(C7H9N)ガス、ピペラジン(C4H10N2)ガス、ピペリジン(C5H11N)ガス等の環状アミン系ガスや、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)ガス等の鎖状アミン系ガス等を用いることができる。
上述の各ガスを用い、上述の処理条件下でウエハ200に対して原料ガス(+触媒ガス)を供給することにより、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に、Si含有層が形成される。すなわち、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域、すなわち、下地膜304のうち凹部300内の底部に対応する領域を起点として、Si含有層が形成される。
本ステップでは、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面上へのSi含有層の形成を抑制しつつ、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上にSi含有層を選択的に形成することが可能である。なお、何らかの要因により、成膜阻害層306による成膜阻害効果が不充分となる場合等においては、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面上に、ごく僅かにSi含有層が形成される場合もあるが、この場合であっても、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面上に形成されるSi含有層の厚さは、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に形成されるSi含有層の厚さに比べて、はるかに薄くなる。このようなSi含有層の選択的な形成が可能となるのは、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面に存在するF終端または炭化水素基終端が、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面上へのSi含有層の形成(Siの吸着)を阻害する要因、すなわち、成膜阻害剤として作用するためである。なお、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面に存在するF終端または炭化水素基終端は、本ステップを実施する際も、消滅することなく安定的に維持される。ただし、処理条件によっては、上述のサイクルを繰り返すにつれ、徐々に、成膜阻害層306が形成された領域の表面に存在するF終端または炭化水素基終端が脱離することもある。
上述の各ガスを用い、上述の処理条件下でウエハ200に対して反応ガスとして、例えば、窒化ガス(+触媒ガス)を供給することにより、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。Si含有層が窒化されることで、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に、SiとNとを含む層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。なお、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面は、本ステップを実施する際も、窒化されることなく維持される。すなわち、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面は、窒化されることなく、F終端または炭化水素基終端されたまま安定的に維持される。ただし、処理条件によっては、上述のサイクルを繰り返すにつれ、徐々に、成膜阻害層306が形成された領域の表面に存在するF終端または炭化水素基終端が脱離することもある。
上述の条件下でウエハ200に対して反応ガスとして、例えば、窒化ガス+酸化ガス(+触媒ガス)を供給することにより、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が酸窒化(改質)される。Si含有層が酸窒化されることで、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域の表面上に、SiとOとNとを含む層、すなわち、シリコン酸窒化層(SiON層)が形成される。なお、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面は、本ステップを実施する際も、酸窒化されることなく維持される。すなわち、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成された領域の表面は、酸窒化されることなく、F終端または炭化水素基終端されたまま安定的に維持される。ただし、処理条件によっては、上述のサイクルを繰り返すにつれ、徐々に、成膜阻害層306が形成された領域の表面に存在するF終端または炭化水素基終端が脱離することもある。
上述のウエハ200に対して原料ガスを供給するステップと、上述のウエハ200に対して反応ガスを供給するステップと、を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面における凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていない領域を起点として、その領域の表面上に膜308として、例えば、シリコン窒化膜(SiN膜)またはシリコン酸窒化膜(SiON膜)を選択的に成長させることができる。そして、このサイクルを繰り返すことにより、図4(d)~図4(g)、図5(d)~図5(i)に示すように、凹部300内の底部から上方に向かって膜308として、例えば、SiN膜またはSiON膜をボトムアップ成長させることが可能となる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層またはSiON層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層またはSiON層を積層することで形成される膜308の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
なお、成膜終盤、図4(e)~図4(g)、図5(g)~図5(i)に示すように、膜308が凹部300内の上部まで成長する前に、成膜ガス(原料ガス、反応ガス等)の作用により、成膜阻害層306(F終端層や炭化水素基終端層)が除去および/または無効化されるようにすることが好ましい。これにより、凹部300内に形成された下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていた領域の表面状態をリセットすることができる。ここで、成膜阻害層306の無効化とは、下地膜304の表面に形成された成膜阻害層306の分子構造や成膜阻害層306の表面における原子の配列構造等を化学的に変化させ、下地膜304の表面への成膜ガス(原料ガス、反応ガス等)の吸着や、下地膜304の表面と成膜ガス(原料ガス、反応ガス等)との反応を可能とすることを意味する。
例えば、成膜終盤に選択破れが生じるような成膜阻害層306を、ステップBにおいて形成しておくことで、上述の作用を実現することができる。具体的には、例えば、成膜終盤に脱離して消失するような成膜阻害層306を、ステップBにおいて形成しておくことで、上述の作用を実現することができる。また例えば、成膜終盤に成膜阻害効果が消失するような成膜阻害層306を、ステップBにおいて形成しておくことで、上述の作用を実現することができる。また例えば、成膜終盤に成膜阻害効果が不充分または限定的となるような成膜阻害層306を、ステップBにおいて形成しておくことで、上述の作用を実現することができる。なお、これらの成膜阻害層306は、予め、ステップBにおける各処理条件(処理温度、処理圧力、成膜阻害剤供給流量、成膜阻害剤供給時間)と、選択破れ等が生じるまでのステップCにおけるサイクル数と、の関係を求めておくことで、それに基づき、適宜形成することができる。これらにより、下地膜304と、膜308と、の界面に成膜阻害層306や成膜阻害層306を構成する成分が取り込まれることを抑制することが可能となる。
また例えば、成膜終盤に、成膜阻害層306の除去および無効化のうち少なくともいずれかがなされる処理条件下でステップCを行うことで、上述の作用を実現することができる。具体的には、例えば、成膜終盤に、成膜阻害層306が脱離して消失するような処理条件下で、ウエハ200に対して反応ガスを供給することで、上述の作用を実現することができる。また例えば、成膜終盤に、成膜阻害層306による成膜阻害効果が消失するような処理条件下で、ウエハ200に対して反応ガスを供給することで、上述の作用を実現することができる。また例えば、成膜終盤に、成膜阻害層306による成膜阻害効果が低下するような処理条件下で、ウエハ200に対して反応ガスを供給することで、上述の作用を実現することができる。例えば、成膜終盤においてウエハ200に対して反応ガスを供給する際の処理温度、処理圧力、反応ガス供給流量のうち少なくともいずれかを、成膜序盤、成膜中盤におけるそれ、もしくは、それらよりも大きくすることで、反応ガスによる酸化力または窒化力を高めることができ、このような処理条件を実現することができる。また例えば、成膜終盤においてウエハ200に対して反応ガスを供給する際の反応ガス供給時間を、成膜序盤、成膜中盤におけるそれよりも長くすることで、反応ガスによる酸化時間または窒化時間を長くすることができ、このような処理条件を実現することができる。これらにより、下地膜304と、膜308と、の界面に成膜阻害層306や成膜阻害層306を構成する成分が取り込まれることを抑制することが可能となる。
これらの場合において、膜308がSiON膜である場合は、成膜終盤に供給する反応ガスとして、例えば、O含有ガスやO含有ガス+H含有ガス等の酸化ガスを用いることが好ましい。この場合、酸化ガスをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。酸化ガスを処理室201内へ供給する際に、RPU502にRF電力を印加することで、酸化ガスをプラズマ励起させて供給することができる。この場合、成膜阻害層306の除去および無効化のうち少なくともいずれかを、効率的かつ効果的に行うことが可能となる。ただし、この場合に、膜308の組成を維持する必要がある場合は、膜308からNが脱離しない条件下で、酸化ガスをプラズマ励起させて供給することが好ましい。
また、膜308がSiN膜である場合は、成膜終盤に供給する反応ガスとして、例えば、NおよびH含有ガス等の窒化ガスを用いることが好ましい。この場合、窒化ガスをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。窒化ガスを処理室201内へ供給する際に、RPU502にRF電力を印加することで、窒化ガスをプラズマ励起させて供給することができる。この場合、成膜阻害層306の除去および無効化のうち少なくともいずれかを、効率的かつ効果的に行うことが可能となる。
なお、上述のような、成膜終盤に除去されるような成膜阻害層306の形成や、成膜終盤に無効化されるような成膜阻害層306の形成や、成膜終盤における成膜阻害層306の除去や、成膜終盤における成膜阻害層306の無効化等については、後述する第2実施形態においても同様に行うことができる。
なお、図5(d)や図5(f)に示すように、成膜の途中で、成膜ガス(原料ガス、反応ガス等)の作用により、成膜阻害層306(F終端層や炭化水素基終端層)が除去および/または無効化される場合もある。例えば、反応ガスとして、O含有ガス+H含有ガス等の酸化ガスを用いる場合、高い酸化力により、成膜阻害層306の脱離や、成膜阻害層306における成膜阻害効果の消失、低下などが生じることがある。この場合、図5(e)や図5(g)に示すように、再度、ステップBを行い、成膜阻害層306を修復するか、もしくは、成膜阻害層306を再度形成するようにすればよい。
また、以下に示す処理シーケンスのように、ステップCにおけるサイクルを行う前に、毎回、成膜阻害剤を供給して成膜阻害層306を形成するようにしてもよい。この場合、以下の4通りの処理シーケンスのうちいずれかを行うことができる。なお、以下に示す処理シーケンスは、便宜上、ステップBおよびステップCだけを、抜き出して示したものである。
(成膜阻害剤→パージ→原料ガス→パージ→反応ガス→パージ)×n
(成膜阻害剤→パージ→原料ガス+触媒ガス→パージ→反応ガス→パージ)×n
(成膜阻害剤→パージ→原料ガス→パージ→反応ガス+触媒ガス→パージ)×n
(成膜阻害剤→パージ→原料ガス+触媒ガス→パージ→反応ガス+触媒ガス→パージ)×n
この処理シーケンスによれば、ステップCで除去および/または無効化された成膜阻害層306を、毎サイクル修復または形成することができ、例えば、上述のように、高い酸化力を有する酸化ガスを用いる場合に、特に有効となる。この場合、下地膜304と、膜308と、は材質が異なることが好ましい。下地膜304と、膜308と、の材質が同一である場合、2サイクル目以降に、1サイクル目に形成した膜308(または膜308を構成する層)の表面上にも成膜阻害層306が形成され、それ以降、成膜できなくなることがあるからである。
また、成膜の途中で、選択破れが生じた場合、下地膜304がエッチングされる場合もある。例えば、選択破れが生じた場合、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていた領域の表面上に膜308が形成されることがある。この場合、F含有ガス等を用いたエッチング処理により、下地膜304のうち成膜阻害層306が形成されていた領域の表面上に形成された膜308を除去する必要がある。しかしながら、このとき、下地膜304も一緒にエッチングされることがある。このような場合、以下に示す処理シーケンスのように、再度、ステップAを行い、下地膜304を修復するか、もしくは、下地膜304を再度形成するようにすればよい。この場合、ステップAを行うことと、ステップBとステップCとを所定回数(m1回、m1は1以上の整数)行うことと、を所定回数(m2回、m2は1以上の整数)行うこととなる。
〔ステップA→(ステップB→ステップC)×m1〕×m2
なお、上述のような、成膜阻害層306の修復や、成膜阻害層306の再形成や、下地膜304の修復や、下地膜304の再形成や、それらを行うための各処理シーケンスについては、後述する第2実施形態においても同様に行うことができる。
(アフターパージおよび大気圧復帰)
図4(g)や図5(i)に示すように、膜308による凹部300内の埋め込みが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
なお、凹部300内を膜308により埋め込んだ状態において、下地膜304として形成したSiO膜は、凹部300内の表面と膜308との界面に残ることとなるが、下地膜304として形成するSiO膜の厚さを、例えば、10~20Å(1~2nm)以下の自然酸化膜レベル以下の厚さとすれば、問題となることはない。また、下地膜304として形成するSiO膜の厚さを、自然酸化膜レベルの厚さよりも厚くすることもできるが、それが許容される工程、デバイスであれば、この技術を用いることが可能となる。
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
ステップAにおいて、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内に、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高い下地膜304を形成することにより、凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を向上させることが可能となる。これにより、シームレスかつボイドフリーなギャップフィルが可能となる。
ステップAにおいて、下地膜304としてO含有膜を形成することにより、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、より向上させることが可能となる。
ステップAにおいて、下地膜304として酸化膜を形成することにより、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、より向上させることが可能となる。
ステップAにおいて、下地膜304としてSiおよびO含有膜を形成することにより、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、更に向上させることが可能となる。
ステップAにおいて、下地膜304としてSiO膜を形成することにより、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、よりいっそう向上させることが可能となる。
ステップAにおいて、凹部300内の全体に、下地膜304を形成することにより、下地膜304を特定の部分に選択的に形成する必要がないため、下地膜304を形成する際の制御を簡素化することができる。
ステップAにおいて、前処理ガスとして原料ガスと改質ガスとを交互に供給することで、凹部300内に下地膜304を堆積させるか、もしくは、前処理ガスとして改質ガスを供給することで、凹部300内の表面を改質させて、凹部300内に下地膜304を形成することにより、凹部内の全体にわたり、均一な下地膜304を形成することが可能となる。
ステップAにおいて、凹部300内の全体に、下地膜304を形成することにより、それ以降のステップにおいて、凹部300内の表面が反応性物質に晒されることを防止することができ、凹部300内の表面を化学的作用および物理的作用から保護することが可能となる。
ステップBにおいて、成膜阻害剤としてF含有ガスを用いることで、成膜阻害層306としてF終端層を形成することができ、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、より向上させることが可能となる。なお、この場合、成膜ガス(原料ガス、反応ガス等)としては、OおよびH含有ガス以外のガスを用いることが好ましい。反応ガスとして、例えば、OおよびH含有ガスを用いた場合、成膜阻害層306として形成されたF終端層が脱離することがあるからである。この場合、反応ガスとしては、例えば、NおよびH含有ガス等の窒化ガスを用いることが好ましい。ただし、上述のように、成膜終盤に、成膜阻害層306を脱離させて消失させる場合等においては、反応ガスとして、OおよびH含有ガスを用いることができる。また、上述のように、成膜阻害層306が脱離して消失した場合に、適宜、成膜阻害層306を再度形成するようにすれば、反応ガスとして、OおよびH含有ガスを用いることができる。
ステップBにおいて、成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを用いることで、成膜阻害層306として炭化水素基終端層を形成することができ、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層306を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を、より向上させることが可能となる。なお、この場合、例えば、500℃以上の温度下では、成膜阻害層306として形成された炭化水素基終端層が脱離することがあるため、それよりも低い温度下で、成膜することが好ましい。この場合、例えば、ステップCにおける処理温度を低下させるために、原料ガスおよび反応ガスのうち少なくともいずれかと一緒に触媒ガスを供給することが好ましい。これにより、例えば、処理温度を、室温~200℃とすることも可能となり、さらには、室温~120℃とすることも可能となる。
<本開示における第2実施形態>
以下、本開示における第2実施形態について、主に、図1~図3、図6~図9を参照しながら説明する。なお、第2実施形態における基板処理装置の構成は、上述の第1実施形態における基板処理装置の構成と同様であり、また、第2実施形態における後述する態様以外の態様は、上述の第1実施形態における態様と同様である。以下、第2実施形態における基板処理工程について説明する。
ここでは、上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200の表面に設けられたトレンチやホール等の凹部内に膜をボトムアップ成長させる工程の一例について、主に、図6(a)~図6(g)、図7(a)~図7(i)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
図6(a)~図6(g)、図7(a)~図7(i)に示す処理シーケンスでは、
表面に凹部300が設けられたウエハ200に対して前処理ガスを供給することで、凹部300内の少なくとも上部に、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高い下地膜304を形成するステップAと、
ウエハ200に対して成膜阻害剤を供給することで、凹部300内の少なくとも上部に形成された下地膜304の表面のうち凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306を形成するステップBと、
ウエハ200に対して成膜ガスを供給することで、凹部300内の成膜阻害層306が形成されていない部分を起点として膜308を成長させるステップCと、
を行い、ステップAを行った後、ステップBと、ステップCと、を所定回数(m回、mは1以上の整数)行う。
本実施形態では、上述の第1実施形態と同様、ステップAを下地膜形成とも称し、ステップBを成膜阻害層形成とも称し、ステップCを選択成長(選択成膜)、または、ボトムアップ成長(ボトムアップ成膜)とも称する。上述の処理シーケンスは、上述の第1実施形態と同様、下記のように表すことができる。
ステップA→(ステップB→ステップC)×m
ここで、m=1であるケースが、図6(a)~図6(g)に示す処理シーケンスに該当し、m>1であるケース、すなわち、m≧2であるケースが、図7(a)~図7(i)に示す処理シーケンスに該当する。図7(a)~図7(i)に示す処理シーケンスでは、m=3であるケースを例示している。m=1であるケース、すなわち、図6(a)~図6(g)に示す処理シーケンスを、以下のように示すこともできる。
ステップA→ステップB→ステップC
なお、図6(a)~図6(g)や図7(a)~図7(i)に示す処理シーケンスは、ステップAにおいて、凹部300内の上部に選択的に下地膜304を形成し、ステップBにおいて、下地膜304の全体に成膜阻害層306を形成する例を示している。この場合、結果として、凹部300内の上部に対応する部分に成膜阻害層306が形成されることとなる。
本実施形態におけるウエハチャージ、ボートロード、圧力調整、温度調整、アフターパージ、大気圧復帰は、それぞれ、上述の第1実施形態におけるそれらと同様に行うことができる。以下では、本実施形態におけるステップA、ステップB、ステップCについて説明する。
〔ステップA(下地膜形成)〕
本ステップでは、ウエハ200に対して前処理ガスを供給することで、凹部300内の少なくとも上部に、ここでは、図6(b)、図7(b)、図8に示すように、凹部300内の上部に、選択的に(優先的に)、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高い下地膜304を形成する。
例えば、本ステップでは、ウエハ200に対して、前処理ガスとして原料ガス(+改質ガス)を、気相反応が支配的に生じる条件下で供給することで、凹部300内の上部に、選択的に下地膜304を堆積させることができる(方法2-A1)。もしくは、前処理ガスとして原料ガスと改質ガスとを、原料ガスおよび/または改質ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で、交互に供給することで、凹部300内の上部に、選択的に下地膜304を堆積させることができる(方法2-A2)。もしくは、前処理ガスを、ステップカバレッジが悪くなる条件下で供給し、凹部300内に下地膜304を堆積させた後、下地膜304をコンフォーマルにエッチング可能な条件下でエッチングガスを供給することで、凹部300内の上部に下地膜304を残し、凹部300内の上部以外の部分の表面を露出させることができる(方法2-A3)。もしくは、前処理ガスとして改質ガスを、改質ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で供給することで、凹部内300の上部表面を選択的に改質させて、凹部300内の上部に、選択的に下地膜304を形成することができる(方法2-A4)。なお、本実施形態における下地膜304の材質は、上述の第1実施形態と同様である。
下地膜304としてSiO膜を形成する場合、上述の第1実施形態と同様、改質ガスとしては、酸化ガスを用いることができる。原料ガスとしては、上述の原料ガスの他、O含有原料ガスを用いることができる。
すなわち、この場合、例えば、ウエハ200に対して、前処理ガスとして原料ガス(+酸化ガス)を、気相反応が支配的に生じる条件下で供給することで、図6(b)、図7(b)、図8に示すように、凹部300内の上部に、選択的に下地膜304としてSiO膜を堆積させることができる(方法2-A1)。
また例えば、前処理ガスとして原料ガスと酸化ガス(改質ガス)とを、原料ガスおよび/または酸化ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で、交互に供給することで、図6(b)、図7(b)、図8に示すように、凹部300内の上部に、選択的に、下地膜304としてSiO膜を堆積させることができる(方法2-A2)。
この場合、それらの間に、不活性ガスによる処理室201内のパージを挟むようにすることが好ましい。また、酸化ガスをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。また、原料ガスおよび酸化ガスのうち少なくともいずれかと一緒に触媒ガスを供給するようにしてもよい。これらの場合、処理温度の低温化を図ることが可能となり、室温での成膜も可能となる。
また例えば、前処理ガスを、ステップカバレッジが悪くなる条件下で供給し、図9(a)に示すように、凹部300内に下地膜304としてSiO膜を堆積させた後、下地膜304をコンフォーマルにエッチング可能な条件下でエッチングガスを供給することで、図6(b)、図7(b)、図9(b)に示すように、凹部300内の上部に下地膜304としてSiO膜を残し、凹部300内の上部以外の部分の表面を露出させることができる(方法2-A3)。
また例えば、前処理ガスとして酸化ガス(改質ガス)を、酸化ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で供給することで、図6(b)、図7(b)、図8に示すように、凹部内300の上部の表面を選択的に酸化(改質)させて、凹部300内の上部に、選択的に、下地膜304としてSiO膜を形成することができる(方法2-A4)。
原料ガス、酸化ガス、触媒ガス、不活性ガスを供給する方法、処理室201内をパージする方法は、上述の第1実施形態におけるそれらと同様である。なお、酸化ガスを処理室201内へ供給する際に、RPU502にRF電力を印加することで、酸化ガスをプラズマ励起させて供給することができる。
本ステップにおいて、方法2-A1により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における原料ガス(+酸化ガス)を供給する際の処理条件としては、
処理温度:500~750℃
処理圧力:1~1000Pa、好ましくは10~500Pa
原料ガス供給流量:10~1000sccm、好ましくは100~500sccm
原料ガス供給時間:1~60分、好ましくは1~30分
酸化ガス供給流量:0~500sccm、好ましくは0~300sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。
この処理条件は、CVD(Chemical Vapor Deposition)挙動の強い処理条件ということもできる。この場合、原料ガスとしては、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OCH2CH3)4、略称:TEOS)ガス等のO含有原料ガスを用いることができる。この場合、O含有原料ガス単体でSiO膜を堆積させることもできるが、O含有原料ガス+酸化ガスを用いることもできる。また、O非含有原料ガス+酸化ガスを用いることもでき、この場合、O非含有原料ガスとしては、上述の第1実施形態における原料ガスの他、モノシラン(SiH4)ガスやジシラン(Si2H6)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることもできる。酸化ガスとしては、上述の第1実施形態における酸化ガスを用いることができる。
本ステップにおいて、方法2-A2により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における原料ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~700℃、好ましくは200~650℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは5~1000Pa
原料ガス供給流量:1~3000sccm、好ましくは1~500sccm
原料ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。原料ガス、触媒ガスとしては、それぞれ、上述の第1実施形態における原料ガス、触媒ガスと同様のガスを用いることができる。
本ステップにおいて、方法2-A2により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における酸化ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~700℃、好ましくは200~650℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
酸化ガス供給流量:1~10000sccm、好ましくは100~2000sccm
酸化ガス供給時間:0.1~10秒、好ましくは1~10秒
触媒ガス供給流量:0~2000sccm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
高周波電力(RF電力):0~1500W
が例示される。酸化ガス、触媒ガスとしては、それぞれ、上述の第1実施形態における酸化ガス、触媒ガスと同様のガスを用いることができる。
この場合、酸化ガスをノンプラズマの雰囲気下で供給するようにしてもよく、酸化ガスをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。なお、高周波電力(RF電力):0Wとは、プラズマを用いないこと、すなわち、ノンプラズマであることを意味する。酸化ガスをプラズマ励起させて供給する場合は、酸化ガスをプラズマ励起させることで発生させたO含有ラジカルの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で酸化ガスを供給することとなる。なお、ここでは、酸化ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で酸化ガスを供給する処理条件を例示しているが、原料ガスの凹部300内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で原料ガスを供給するようにしてもよい。
本ステップにおいて、方法2-A3により、ステップカバレッジが悪くなる条件下で、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における前処理ガス、処理方法、処理条件としては、上述の方法2-A1または方法2-A2のそれらを用いることができる。なお、方法2-A3では、例えば、原料ガス供給時間や反応ガス供給時間を、上述の方法2-A1や方法2-A2における原料ガス供給時間や反応ガス供給時間よりも長くすることができる。
本ステップにおいて、方法2-A3により、下地膜304としてSiO膜を形成した後に、エッチングガスとしてF含有ガスを用い、下地膜304をコンフォーマルにエッチングする際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~300℃
処理圧力:1~1000Pa、好ましくは10~500Pa
F含有ガス供給流量:10~1000sccm、好ましくは100~500sccm
F含有ガス供給時間:1~60分、好ましくは1~30分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。F含有ガスとしては、例えば、HFガスを用いることが好ましい。
本ステップにおいて、方法2-A4により、下地膜304としてSiO膜を形成する場合における酸化ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:350~1200℃、好ましくは400~800℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
酸化ガス供給流量:1~10000sccm、好ましくは100~2000sccm
酸化ガス供給時間:0.1~60秒、好ましくは1~40秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。酸化ガスとしては、上述の第1実施形態における酸化ガスを用いることができる。
上述の各方法により、上述の各ガスを用い、上述の各処理条件下で本ステップを行うことにより、図6(b)、図7(b)、図8、図9(b)に示すように、凹部300内の上部に、選択的に(優先的に)、下地膜304としてSiO膜を形成することができる。
(パージ)
凹部300内の上部に、選択的に、下地膜304を形成した後、上述の第1実施形態におけるステップAにおけるパージと同様に処理室201内のパージが行われる。
〔ステップB(成膜阻害層形成)〕
ステップAが終了し、処理室201内のパージを行った後、ステップBを行う。ステップBでは、ウエハ200に対して成膜阻害剤を供給することで、図6(c)、図7(c)に示すように、凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面に、成膜阻害層306を形成する。結果として、成膜阻害層306は、凹部300内の上部に対応する部分に形成されることとなる。
例えば、成膜阻害剤としてF含有ガスを供給することにより、F含有ラジカルを生成させ、生成させたF含有ラジカルの作用により、凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面の全体に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することができる。結果として、成膜阻害層306としてのF終端層は、凹部300内の上部に対応する部分に形成されることとなる(方法2-B1)。
また例えば、成膜阻害剤として、Si含有ガスと、F含有ガスと、をこの順に供給することにより、凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面の全体に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することができる(方法2-B2)。
この場合、Si含有ガスを供給した後、F含有ガスを供給する前に、不活性ガスによる処理室201内のパージを行うことが好ましい。方法2-B2の場合、Si含有ガスを供給することで、凹部300内の上部に形成された下地膜304の表面の全体に、Si含有ガスを化学吸着させることができる。その後、F含有ガスを供給することで、下地膜304の表面の全体に吸着したSi含有ガスとF含有ガスとを反応させて、F含有ラジカルを生成させ、生成させたF含有ラジカルの作用により、下地膜304の表面の全体に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することができる。この場合、Si含有ガスを、下地膜304の表面へのSi含有ガスの化学吸着が飽和する条件下で、すなわち、下地膜304の表面へのSi含有ガスの化学吸着にセルフリミットが生じる条件下で、供給することにより、下地膜304の表面の全体にわたり、均一に、Si含有ガスの化学吸着層を形成することができる。その後に、F含有ガスを供給することで、下地膜304の表面の全体にわたり、均一に、F含有ラジカルを生成させることができ、下地膜304の表面の全体にわたり、均一に、成膜阻害層306としてF終端層を形成することが可能となる。この場合も、結果として、成膜阻害層306としての炭化水素基終端層は、凹部300内の上部に対応する部分に形成されることとなる。なお、Si含有ガスとしては、下地膜304の表面への吸着性の点で、アミノシラン系ガスを用いることが好ましい。
また例えば、成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを供給することにより、凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面の全体に、炭化水素基含有ガスを化学吸着させることができ、成膜阻害層306として炭化水素基終端層を形成することができる(方法2-B3)。
この場合、炭化水素基含有ガスを、下地膜304の表面への炭化水素基含有ガスの化学吸着が飽和する条件下で、すなわち、下地膜304の表面への炭化水素基含有ガスの化学吸着にセルフリミットが生じる条件下で、供給することにより、下地膜304の表面の全体にわたり、均一に、炭化水素基含有ガスの化学吸着層を形成することができる。この場合も、結果として、成膜阻害層306としての炭化水素基終端層は、凹部300内の上部に対応する部分に形成されることとなる。
F含有ガス、炭化水素基含有ガス、不活性ガスを供給する方法、処理室201内をパージする方法は、上述の第1実施形態におけるそれらと同様である。
Si含有ガスを用いる場合は、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へSi含有ガスを供給する。Si含有ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してSi含有ガスが供給される。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
本ステップにおいて、方法2-B1により、F含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:200~600℃、好ましくは350~500℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
F含有ガス供給流量:100~3000sccm、好ましくは100~500sccm
F含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。F含有ガスとしては、上述の第1実施形態におけるF含有ガスと同様のガスを用いることができる。
本ステップにおいて、方法2-B2により、Si含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~600℃、好ましくは室温~450℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
Si含有ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは1~500sccm
Si含有ガス供給時間:1秒~60分
不活性ガスガス供給流量(ガス供給管毎):0~10000sccm
が例示される。Si含有ガスとしては、上述の第1実施形態における原料ガスを用いることができる。Si含有ガスとしては、例えば、アミノシラン系ガスを用いることが好ましい。
本ステップにおいて、方法2-B2により、F含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~450℃、好ましくは75~450℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
F含有ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは1~500sccm
F含有ガス供給時間:1秒~60分
不活性ガスガス供給流量(ガス供給管毎):0~10000sccm
が例示される。F含有ガスとしては、上述の第1実施形態におけるF含有ガスと同様のガスを用いることができる。
本ステップにおいて、方法2-B3により、炭化水素基含有ガスを供給する際の処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~500℃、好ましくは室温~250℃
処理圧力:5~1000Pa
炭化水素基含有ガス供給流量:100~3000sccm、好ましくは100~500sccm
炭化水素基含有ガス供給時間:1秒~120分、好ましくは30秒~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20000sccm
が例示される。炭化水素基含有ガスとしては、上述の第1実施形態における炭化水素基含有ガスと同様のガスを用いることができる。
上述の各方法により、上述の各ガスを用い、上述の各処理条件下で本ステップを行うことにより、図6(c)、図7(c)に示すように、凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面に、成膜阻害層306を形成することができる。
(パージ)
凹部300内の上部に選択的に形成された下地膜304の表面に、成膜阻害層306を形成した後、上述の第1実施形態におけるステップBにおけるパージと同様に処理室201内のパージが行われる。
〔ステップC(選択成長、ボトムアップ成長)〕
本実施形態におけるステップCは、上述の第1実施形態におけるステップCと同様に行うことができる。これにより、図6(d)~図6(g)、図7(d)~図7(i)に示すように、凹部300内の底部から上方に向かって膜308として、例えば、SiN膜またはSiON膜をボトムアップ成長させることが可能となる。ただし、上述の第1実施形態においては、凹部300内の全体に形成された下地膜304の上に膜308が形成されるのに対し、本実施形成においては、凹部300内の中央部および下部では、凹部300内の表面上に膜308が形成され、凹部300内の上部では、凹部300内に形成された下地膜304の表面上に膜308が形成されることとなる。
なお、成膜終盤に除去されるような成膜阻害層306の形成や、成膜終盤に無効化されるような成膜阻害層306の形成や、成膜終盤における成膜阻害層306の除去や、成膜終盤における成膜阻害層306の無効化等については、上述の第1実施形態と同様に行うことができる。また、成膜阻害層306の修復や、成膜阻害層306の再形成や、下地膜304の修復や、下地膜304の再形成や、それらを行うための各処理シーケンスについても、上述の第1実施形態と同様に行うことができる。
本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、ステップAにおいて、ウエハ200の表面に設けられた凹部300内の上部に、選択的に、下地膜304を形成することにより、凹部300内の上部に対応する部分に、高密度で、成膜阻害効果が高い、適正な成膜阻害層を、選択的かつ効率的に形成することが可能となり、埋め込み特性を向上させることが可能となる。これにより、シームレスかつボイドフリーなギャップフィルが可能となる。
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、ステップAにおいて形成する下地膜304は、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と凹部300内の表面との反応性よりも高く、その表面に、成膜阻害層を形成可能な材料であればよい。例えば、下地膜304としては、上述のSiO膜の他、SiOCN膜、SiON膜、SiOC膜、SiN膜等を用いるようにしてもよい。この場合であっても、上述の態様と同傾向の効果が得られる。ただし、上述のように、下地膜304としては、O含有膜や酸化膜を用いることが好ましく、SiおよびO含有膜を用いることがより好ましく、SiO膜を用いることが更に好ましい。
また例えば、ステップCでは、SiN膜やSiON膜などのシリコン系絶縁膜だけでなく、例えば、SiCN、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、SiO膜等のシリコン系絶縁膜を形成するようにしてもよい。また例えば、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、チタニウム酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、モリブデン酸化膜(MoO)、タングステン酸化膜(WO)等の金属系酸化膜や、アルミニウム窒化膜(AlN膜)、チタニウム窒化膜(TiN膜)、ハフニウム窒化膜(HfN膜)、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)、タンタル窒化膜(TaN膜)、モリブデン窒化膜(MoN)、タングステン窒化膜(WN)等の金属系窒化膜を形成するようにしてもよい。これらの場合、上述の前処理ガスと、上述の成膜阻害剤と、上述の反応ガスと、原料ガスとしてのAl,Ti,Hf,Zr,Ta,Mo,W等の金属元素を含む原料ガスとを用い、上述の第1,2実施形態における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、ステップA~ステップCを行うことができる。これらの場合においても上述の態様と同様の効果が得られる。
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
なお、上述の第1実施形態や第2実施形態における各ステップにおける各処理条件は、単に一例を示したに過ぎず、基板の表面に設けられたトレンチやホール等の凹部の深さに応じて、適宜調整することができる。
以下、好ましい態様について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)表面に凹部が設けられた基板に対して前処理ガスを供給することで、前記凹部内の少なくとも上部に、成膜阻害剤との反応性が該成膜阻害剤と前記凹部内の表面との反応性よりも高い下地膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して前記成膜阻害剤を供給することで、前記凹部内の少なくとも上部に形成した前記下地膜の表面のうち前記凹部内の上部に対応する部分に成膜阻害層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記凹部内の前記成膜阻害層が形成されていない部分を起点として膜を成長させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(a)では、前記下地膜として酸素含有膜を形成する。
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(a)では、前記下地膜として酸化膜を形成する。
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、前記下地膜としてシリコンおよび酸素含有膜を形成する。
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、前記下地膜としてシリコン酸化膜を形成する。
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、前記凹部内の上部に、選択的に前記下地膜を形成する。
(付記7)
付記6に記載の方法であって、
(a)では、前記前処理ガスとして原料ガスを、気相反応が支配的に生じる条件下で供給することで、前記凹部内の上部に、選択的に前記下地膜を堆積させる。
(付記8)
付記6に記載の方法であって、
(a)では、前記前処理ガスとして原料ガスと改質ガスとを、前記原料ガスおよび/または前記改質ガスの前記凹部内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で、交互に供給することで、前記凹部内の上部に、選択的に前記下地膜を堆積させる。
(付記9)
付記6に記載の方法であって、
(a)では、前記前処理ガスを、ステップカバレッジが悪くなる条件下で供給し、前記凹部内に前記下地膜を堆積させた後、前記下地膜をコンフォーマルにエッチング可能な条件下でエッチングガスを供給することで、前記凹部内の上部に前記下地膜を残し、前記凹部内の上部以外の部分の表面を露出させる。
(付記10)
付記6に記載の方法であって、
(a)では、前記前処理ガスとして改質ガスを、前記改質ガスの前記凹部内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で供給することで、前記凹部内の上部表面を選択的に改質させて、前記凹部内の上部に、選択的に前記下地膜を形成する。
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤としてフッ素含有ガスを供給することで、前記成膜阻害層としてフッ素終端層を形成する。
(付記12)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを供給することで、前記成膜阻害層として炭化水素基終端層を形成する。
(付記13)
付記1~5のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、前記凹部内の全体に、前記下地膜を形成する。
(付記14)
付記13に記載の方法であって、
(a)では、前記前処理ガスとして原料ガスと改質ガスとを交互に供給することで、前記凹部内に前記下地膜を堆積させるか、もしくは、前記前処理ガスとして改質ガスを供給することで、前記凹部内の表面を改質させて、前記凹部内に前記下地膜を形成する。
(付記15)
付記13または14に記載の方法であって、
(b)では、前記凹部内に形成した前記下地膜の表面のうち前記凹部内の上部に対応する部分に選択的に前記成膜阻害層を形成する。
(付記16)
付記15に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤を、前記成膜阻害剤の前記凹部内の上部での消費および/または失活が生じる条件下で供給する。
(付記17)
付記15または16に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤としてフッ素含有ガスを供給することで、前記成膜阻害層としてフッ素終端層を形成する。
(付記18)
付記15または16に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤としてフッ素含有ガスを、前記フッ素含有ガスが熱分解する条件下で供給することで、前記成膜阻害層としてフッ素終端層を形成する。
(付記19)
付記15または16に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤としてフッ素含有ガスを、プラズマ励起させて供給することで、前記成膜阻害層としてフッ素終端層を形成する。
(付記20)
付記15または16に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤としてフッ素含有ガスと、前記フッ素含有ガスと反応する添加ガスと、を供給することで、前記成膜阻害層としてフッ素終端層を形成する。
(付記21)
付記15または16に記載の方法であって、
(b)では、前記成膜阻害剤として炭化水素基含有ガスを供給することで、前記成膜阻害層として炭化水素基終端層を形成する。
(付記22)
付記1~21のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)において、前記膜が前記凹部内の上部まで成長する前に、前記成膜ガスの作用により、除去および/または無効化されるような前記成膜阻害層を、(b)において形成する。
(付記23)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して前処理ガスを供給する前処理ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して成膜阻害剤を供給する成膜阻害剤供給系と、
前記処理室内の基板に対して成膜ガスを供給する成膜ガス供給系と、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記前処理ガス供給系、前記成膜阻害剤供給系、および成膜ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
(付記24)
本開示の更に他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。