JP7314726B2 - 結晶組織評価方法および結晶組織評価装置 - Google Patents

結晶組織評価方法および結晶組織評価装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7314726B2
JP7314726B2 JP2019160800A JP2019160800A JP7314726B2 JP 7314726 B2 JP7314726 B2 JP 7314726B2 JP 2019160800 A JP2019160800 A JP 2019160800A JP 2019160800 A JP2019160800 A JP 2019160800A JP 7314726 B2 JP7314726 B2 JP 7314726B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scattering intensity
crystal structure
inspected
function
uniformity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019160800A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020085888A (ja
Inventor
武 森永
大輔 森
隆夫 湯籐
晃彦 岡本
崇 佐古
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daido Steel Co Ltd filed Critical Daido Steel Co Ltd
Publication of JP2020085888A publication Critical patent/JP2020085888A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7314726B2 publication Critical patent/JP7314726B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Ultrasonic Waves (AREA)

Description

本発明は、結晶組織評価方法および結晶組織評価装置に関し、さらに詳しくは、超音波を利用して、材料の結晶組織の不均一性を評価するための結晶組織評価方法および結晶組織評価装置に関する。
金属材料等、結晶粒を含む材料において、結晶組織の状態を検査によって判定することが、所望の材料特性を確保するために、重要となる。非破壊で結晶粒の状態を判定する方法として、超音波による検査が利用されている。
例えば、特許文献1に、超音波を利用して結晶粒の異方性を判定するための方法が開示されている。ここでは、被測定材中に超音波を発振し、受振された反射波のうちから所定時間範囲の反射波を取り出して、取り出した反射波の周波数分析を行い、全周波数の反射波パワーの合計値に対する所定周波数以上の反射波パワーの合計値の割合に基づいて被測定材の結晶粒が変形を生じているか否かを判定している。被測定材内部の結晶粒に異方性を生じていると高調波や波形の歪みが生じることを利用して、上記割合が一定値以上になったときに結晶粒の異方性を生じていると判定するものである。
特開2013-257146号公報
上記特許文献1に開示されている判定方法のように、超音波を利用することで、異方性等、結晶粒の状態を判定することができる。しかし、特許文献1の方法のように、単一の測定における反射波を分析する方法においては、超音波が通過する領域に存在する材料組織の平均としての状態を検出できるのみであり、結晶組織の状態が不均一に変化した領域が局所的に存在する場合には、そのような領域の存在を検出することは困難である。例えば、特許文献1の方法では、組織内に含まれる結晶粒全体が高い異方性を有している場合には、その異方性を検出することができるものの、異方性の低い結晶粒の中に、局所的に異方性の高い結晶粒が生成していたとしても、そのような異方性の高い結晶粒の存在を検出することは難しい。
金属等の材料においては、組織内の大部分の結晶粒が、粒径や異方性等の特性において、よく揃っていたとしても、それらの大部分の結晶粒とは粒径や異方性が異なる領域が、局所的に生じ、組織が不均一になる場合がある。そのような局所的な組織の不均一性が、材料の特性に大きな影響を与える可能性がある。また、微細な結晶粒よりなる均一な組織が求められる場合には、その品質保証においても、高い精度が求められる。そこで、局所的な結晶組織の不均一性を非破壊で検出することができる方法が望まれる。
本発明が解決しようとする課題は、結晶粒を含む材料において、結晶組織に不均一性を有する部位が、材料全体のうちの一部のみに存在する場合でも、超音波を用いて、その不均一性を評価することができる結晶組織評価方法および結晶組織評価装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明にかかる結晶組織評価方法は、結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、表面の複数の入射点から、超音波を入射し、検出される散乱波の強度を、散乱強度として、前記入射点ごとに計測する計測工程と、前記計測工程において所定の散乱強度が得られた前記入射点の数を、前記散乱強度の関数として整理して、散乱強度関数を作成する統計処理工程と、前記統計処理工程において得られた前記散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、前記被検査材において、結晶組織の不均一性が高いとみなす評価工程と、を有するものである。
ここで、前記評価工程において、前記結晶組織の不均一性として、前記被検査材における結晶粒の粒径、成分組成、異方性のいずれか少なくとも1つにおける不均一性を評価するとよい。
前記計測工程では、入射した前記超音波の反射方向において、超音波信号の強度を、時間の関数として測定し、前記被検査材の表面で反射された反射波と、前記表面に対向する底面で反射された反射波との間の時間に観測される、前記超音波信号の強度を積分することで、前記散乱強度を求めるとよい。この場合に、前記評価工程において、前記散乱強度関数のピークの中央値の散乱強度が大きいほど、前記結晶粒の平均粒径が大きいとみなすとよい。前記計測工程では、時間の関数として測定した前記超音波信号を、周波数分析し、入射した前記超音波と同じ周波数の信号に基づいて、前記散乱強度を求めるとよい。また、前記計測工程では、超音波の発生と検出を行う超音波検査装置が、前記被検査材の周囲を、前記被検査材に対して相対的に運動することで、前記複数の入射点に対して、前記超音波の入射と検出を行うとよい。
前記被検査材は、棒材よりなり、前記計測工程において、前記棒材の周方向に沿って少なくとも180°にわたり、かつ前記棒材の長手方向に沿って少なくとも一部の領域にわたるように、前記複数の入射点を設定するとよい。
前記評価工程では、前記ピーク幅が、予め定めた閾値より大きくなった場合に、結晶組織が不均一であると評価するとよい。
また、前記評価工程において、前記散乱強度関数を、中央値の散乱強度が異なる複数のピークに分離するとよい。この場合に、前記評価工程において、前記散乱強度関数を、主ピークと、前記主ピークよりもピーク高さが小さい副ピークと、の2つのピークに分離するとよい。さらに、前記散乱強度関数の最頻値を中心として、分布幅が小さい側の前記散乱強度関数を対称に複製したものを、前記主ピークとし、前記散乱強度関数から前記主ピークの寄与を除いたものを、前記副ピークとするとよい。そして、前記副ピークを、前記散乱強度関数の最頻値からの隔たりによって重みづけして積分し、得られた積分値が大きいほど、結晶組織の不均一性が高いと評価するとよい。
本発明にかかる結晶組織評価装置は、超音波の発生と検出を行う超音波検査装置を備え、結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、上記のような結晶組織評価方法を実行するものである。
ここで、前記結晶組織評価装置は、前記超音波検査装置を、前記被検査材に対して相対的に運動させる運動装置をさらに備えるとよい。
上記発明にかかる結晶組織評価方法においては、結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、表面の複数の入射点から、超音波を入射し、散乱強度を、入射点ごとに計測する。この際、散乱に寄与する結晶組織の不均一性が低い(均一性が高い)と、各入射点において得られる散乱強度のばらつきが小さくなる。一方、散乱に寄与する結晶組織の不均一性が高いと、入射点によって、得られる散乱強度のばらつきが大きくなる。よって、結晶組織の不均一性が高いほど、所定の散乱強度が得られた入射点の数を、散乱強度の関数として整理した散乱強度関数において、ピーク幅が大きくなる。このように、多数の入射点に対して散乱強度を測定して得られた散乱強度関数のピーク幅に着目することで、結晶組織に不均一性を有する部位が、材料全体のうちの一部のみに存在する場合でも、超音波を用いた測定の結果から、結晶組織の不均一性を評価することができる。この際、測定結果に対して、複雑な演算処理やシミュレーション等を行うことなく、所定の散乱強度が得られた入射点の数を集計する単純な統計処理のみで、簡便に、測定結果を結晶組織の不均一性に対応づけることができる。
ここで、評価工程において、結晶組織の不均一性として、被検査材における結晶粒の粒径、成分組成、異方性のいずれか少なくとも1つにおける不均一性を評価する場合には、被検査材における結晶粒の粒径、成分組成、異方性は、いずれも、超音波の散乱強度に大きな影響を与える特性であるため、超音波測定によって得られた散乱強度関数のピーク幅の大きさを指標として、それらの特性における不均一性を、敏感に検出することができる。
計測工程で、入射した超音波の反射方向において、超音波信号の強度を、時間の関数として測定し、被検査材の表面で反射された反射波と、表面に対向する底面で反射された反射波との間の時間に観測される、超音波信号の強度を積分することで、散乱強度を求める場合には、被検査材の表面や底面で反射された反射波と区別して、散乱による超音波信号を検出して、散乱強度関数を作成することができる。
この場合に、評価工程において、散乱強度関数のピークの中央値の散乱強度が大きいほど、結晶粒の平均粒径が大きいとみなす形態によれば、結晶粒の粒径が大きくなるほど、散乱強度が大きくなることを利用して、結晶組織の不均一性のみならず、結晶粒の平均粒径についても、超音波測定によって得られた散乱強度関数に基づいて、評価することができる。
計測工程で、時間の関数として測定した超音波信号を、周波数分析し、入射した超音波と同じ周波数の信号に基づいて、散乱強度を求める形態によれば、散乱波は、入射した超音波と同じ周波数において、強く観測されるので、その周波数の信号から散乱強度を求めることで、散乱波を、感度良く、また他の成分の寄与と区別して検出し、結晶組織の不均一性と正確に対応付けやすくなる。
また、計測工程で、超音波の発生と検出を行う超音波検査装置が、被検査材の周囲を、被検査材に対して相対的に運動することで、複数の入射点に対して、超音波の入射と検出を行う場合には、従来一般に探傷装置として利用されているような超音波検査装置を用いて、複数の入射点での超音波の入射と検出を行い、結晶組織の不均一性を評価することが可能となる。
被検査材が、棒材よりなり、計測工程において、棒材の周方向に沿って少なくとも180°にわたり、かつ棒材の長手方向に沿って少なくとも一部の領域にわたるように、複数の入射点を設定する場合には、棒材の断面の全域にわたり、かつ長手方向の所定領域にわたる範囲の中に、結晶組織が不均一になった部位が存在するか否かを、検査することができる。
評価工程で、ピーク幅が、予め定めた閾値より大きくなった場合に、結晶組織が不均一であると評価する場合には、許容できる不均一性の上限に対応する散乱強度関数のピーク幅を、閾値として定めておくことで、散乱強度関数のピーク幅と結晶組織の不均一性との間の詳細な対応関係に関する情報がなくても、許容されない不均一性を結晶組織に含む被検査材を発見し、除去する等の対策を施すことができる。
また、評価工程において、散乱強度関数を、中央値の散乱強度が異なる複数のピークに分離する場合には、結晶粒径等の異なる複数種の結晶組織が混在している場合に、それらの結晶組織の種類ごとに寄与を分離して、散乱強度関数の解析を行い、結晶組織の状態に関する情報を得ることができる。
この場合に、評価工程において、散乱強度関数を、主ピークと、主ピークよりもピーク高さが小さい副ピークと、の2つのピークに分離する形態によれば、簡便な解析により、散乱強度関数を分離することができる。この形態においては、主ピークを、結晶組織の大部分を占める均一性の高い領域に対応づけるとともに、副ピークを、その均一性の高い結晶組織の中に混在する、不均一な結晶組織に対応づけることができる。
さらに、散乱強度関数の最頻値を中心として、分布幅が小さい側の散乱強度関数を対称に複製したものを、主ピークとし、散乱強度関数から主ピークの寄与を除いたものを、副ピークとする形態によれば、特に簡便な解析によって、主ピークと副ピークの寄与を分離することができる。
そして、副ピークを、散乱強度関数の最頻値からの隔たりによって重みづけして積分し、得られた積分値が大きいほど、前記結晶組織の不均一性が高いと評価する場合には、結晶組織の不均一性の程度に関する定量的な評価を、簡便に行うことができる。
上記発明にかかる結晶組織評価装置においては、超音波検査装置によって、被検査材上の各入射点に対して超音波を入射し、散乱の寄与を含む信号を検出することができる。そして、得られた散乱強度をもとに、上記発明にかかる結晶組織評価方法を実行することで、被検査材の結晶組織の不均一性を、簡便に評価することができる。超音波検査装置は、探傷装置等として広く利用されており、そのような装置を転用して、結晶組織評価装置を構築することができる。
ここで、結晶組織評価装置が、超音波検査装置を、被検査材に対して相対的に運動させる運動装置をさらに備える場合には、共通の超音波検査装置を用いて、被検査材上の複数の入射点において、測定を行い、結晶組織の不均一性を評価することができる。
本発明の一実施形態にかかる結晶組織評価装置の構成を示す図である。 上記結晶組織評価装置において得られるデータ群の一例を示している。 被検査材内での超音波の挙動を説明する図であり、(a)は被検査材全体、(b)は組織の拡大図を示している。 超音波検査装置によって検出される超音波信号の一例である。 結晶粒径が大きい場合について、(a)結晶組織のSEM像、(b)超音波の挙動、(c)得られる超音波信号の一例を示している。 結晶粒径が小さい場合について、(a)結晶組織のSEM像、(b)超音波の挙動、(c)得られる超音波信号の一例を示している。 結晶組織の例を、超音波の経路および得られる散乱波とともに、模式的に示す図であり、(a)は均一・微細組織、(b)は粗大な結晶粒を含む不均一・微細組織、(c)は特に微小な結晶粒を含む不均一・微細組織、(d)は均一・粗大組織を示している。 散乱強度関数と結晶組織の状態の間の対応付けについて説明する図であり、(a)は散乱強度関数の作成について説明し、(b)は散乱強度関数のピーク幅および中央値と結晶組織の状態の関係性を示している。 散乱強度関数の2つのピークへの分離を説明する図である。(a)は分離前の左右非対称な散乱強度関数を示し、(b)はさらに、分離された2つのピークも表示している。 結晶組織の不均一性の程度が異なる場合の副ピークの寄与について説明する図である。(a)は結晶組織の均一性が高い場合、(b)は部分的に不均一組織が生成している場合について、散乱強度関数を、分離された副ピークとともに示している。 Ti基合金に対して、熱処理温度を変化させた際に得られる散乱強度関数の変化を示しており、(a)は散乱強度関数自体、(b)は散乱強度関数における標準偏差を示している。 Ti基合金に対して、鍛錬比を変化させた際に得られる散乱強度関数の変化を示している。 SEM像における画素のばらつきと、不均一性評価値との関係を示す図である。図中には各プロット点に対応する試料番号も表示している。
以下に、本発明の実施形態にかかる結晶組織評価方法および結晶組織評価装置について説明する。本発明の一実施形態にかかる結晶組織評価方法は、結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、結晶組織の不均一性を評価する方法であり、本発明の一実施形態にかかる結晶組織評価装置を用いて、実行することができる。
[結晶組織評価装置]
まず、本発明の一実施形態にかかる結晶組織評価装置について、説明する。図1に、本実施形態にかかる結晶組織評価装置1の概略を示す。
結晶組織評価装置1は、超音波検査装置11と、運動装置12と、演算・制御装置13と、を有しており、被検査材Sに対して、被検査材Sを構成する結晶組織の不均一性の評価を行う。
まず、本結晶組織評価装置1において検査対象となる被検査材Sは、多結晶材料等、結晶粒を含む材料よりなれば、どのようなものであってもよく、材質、形状等を限定されるものではない。材質としては、金属および非金属のいずれであってもよく、それらを共に含むものであってもよいが、以下においては、金属材料よりなる場合を主に想定している。なかでも、例として示すデータは、チタン基合金よりなる被検査材Sを対象として取得したものとなっている。チタン基合金は、α相およびβ相を形成しうる金属であり、熱処理時や鍛造時の条件によって、形成される相の状態が変化しやすいため、所望の材料特性を得るために、結晶組織の状態を評価することが重要である。なかでも、チタン基合金よりなるα+β型合金においてはα相の結晶粒とβ相の結晶粒が安定に共存し、結晶組織の評価が特に重要となる。なお、二相SUS合金をはじめとして、鉄基合金等においても、結晶組織の状態を評価するのに、本結晶組織評価装置1を、好適に用いることができる。被検査材Sの形状としては、以下では、棒材、特に丸棒材を対象として想定している。
超音波検査装置11は、超音波を発生させ、対象物に入射するとともに、対象物において反射、散乱等された超音波を検出する装置である。ここでは、超音波検査装置11は、運動装置12に載置した被検査材Sの表面に設定した入射点Pに対して、被検査材Sの表面から離れた位置から、略垂直に、パルス状の超音波Uを照射し、被検査材に入射させる。そして、超音波Uの反射方向において、被検査材Sによって反射や散乱を受けて戻ってきた超音波信号を検出するものである。この種の超音波検査装置11は、超音波探触子として、材料内の傷を検出する探傷装置において汎用されており、本実施形態においても、そのような超音波探触子を、超音波検査装置11として利用することができる。超音波検査装置11が発生する超音波Uの周波数としては、一般的な超音波探触子において利用される周波数を適用することができるが、結晶粒による散乱の強度を大きくする観点から、1~30MHz程度の周波数を用いることが好ましい。また、より具体的には、材料の平均結晶粒径dと超音波の波長λとの関係として、(1/30)λ<d<(1/3)λの関係を充足する条件において、本実施形態にかかる検査を好適に適用でき、当該条件を満たす周波数を選択することが好ましい。
運動装置12は、超音波検査装置11に対して、被検査材Sを運動させるものである。ここでは、運動装置12は、軸回転Rと、並進運動Tを行いうる台状の装置として構成されている。被検査材Sは、運動装置12の上面に載置される。被検査材Sが丸棒材等、棒状(柱状)である場合、被検査材Sは、端面の一方において、運動装置12の上面に立てて載置される。運動装置12は、軸回転Rを行うことで、被検査材Sを、超音波検査装置11に対して回転運動させることができる。運動装置12は、被検査材Sを1周にわたって、軸回転させられるものであることが好ましい。また、運動装置12は、並進運動Tを行うことで、被検査材Sを、超音波検査装置11に対して、並進方向に移動させることができる。棒状の被検査材Sが運動装置12の上面に立てられている場合、並進運動Tとしては、被検査材Sを、長手方向に沿って移動させることになる。
演算・制御装置13は、超音波検査装置11および運動装置12を制御するとともに、超音波検査装置11で得られたデータに対して、演算による解析を行う装置であり、例えばコンピュータより構成することができる。具体的には、演算・制御装置13は、超音波検査装置11による超音波測定の制御と、運動装置12による被検査材Sの運動の制御を行う。そして、検出した超音波の強度に対応する電気信号として、超音波検査装置11が出力する超音波信号の入力を受け、その超音波信号に対して、解析を行う。解析の内容については、結晶組織評価方法として、後に詳しく説明するが、得られた超音波信号から散乱強度を抽出するとともに、その散乱強度をもとにした統計的解析を行って、結晶組織の不均一性に関する評価を行う。
被検査材Sに対して、結晶組織の不均一性を評価するために、超音波測定を行うに際し、演算・制御装置13は、運動装置12の軸回転Rおよび並進運動Tを駆動して、被検査材Sの表面(側面)に設定された、ある1つの入射点Pに、超音波検査装置11から超音波Uを入射することができるように、被検査材Sの回転位置および並進位置を調整し、停止させる。そして、超音波検査装置11を制御して、超音波Uを、入射点Pから、被検査材Sの内部に、略垂直に入射させるとともに、被検査材Sによって反射等を受けた超音波を検出する。この際、検出された超音波の強度を示す超音波信号が、時間の関数の形で、演算・制御装置13に入力され、記憶される。
1つの入射点Pに対して測定を完了すると、演算・制御装置13は、運動装置12の軸回転Rを駆動し、別の1つの入射点Pに超音波Uを入射することができるように、被検査材Sを回転させ、停止させる。そして、先の入射点Pに対して行ったのと同様の測定を行い、超音波信号を取得する。1°間隔等、所定の角度間隔で被検査材Sの全周に設定された入射点Pに対して、同様の測定を行うと、次に、演算・制御装置13は、運動装置12の並進運動Tを駆動する。そして、所定の角度間隔で回転させながら、同様の測定を繰り返す。このようにして、被検査材Sの長手方向に沿って、0.5mm等、所定の長さ間隔で、全周に対する所定の角度間隔での測定を繰り返す。その結果、所定の角度間隔および長さ間隔で、被検査材Sの表面(側面)全体に設定された多数の入射点Pに対して、それぞれ、超音波信号が取得される。超音波信号は、入射点Pの数だけ取得され、図2に示すように、入射点Pの数と同じだけの超音波信号よりなるデータ群を構成する。図2では、各グラフが、1つの入射点Pにおいて検出された超音波強度を、時間の関数として表現したものとなっている。このようなデータ群に対して、後述する解析を行う。
以上で説明した結晶組織評価装置1では、超音波検査装置11を固定し、運動装置12によって、被検査材Sを運動させて、複数の入射点Pに対する測定を行っているが、超音波検査装置11を被検査材Sに対して相対的に運動させることができれば、そのような構成に限定されず、被検査材Sを固定し、運動装置12を、被検査材Sの外周で運動させるものとしてもよい。超音波検査装置11を、被検査材Sに対して、周方向と並進方向の両方に、相対運動させることで、1つの超音波検査装置11を用いて、多数の入射点Pに対する測定を行うことができる。あるいは、多数のチャンネルを有する検査装置のように、超音波検査装置11を被検査材Sの全周を囲んで配置すれば、回転運動を行わなくても、被検査材Sの全周に設定した入射点Pに対して、一度に測定を行うことができる。
また、上記で説明した結晶組織評価装置1では、被検査材Sに垂直に入射した超音波Uを、反射方向において検出しているが、透過方向において、透過波を検出するものであってもよい。さらに、超音波Uの入射方向は、垂直方向でなくてもよく、例えば、斜め方向とすることもできる。
上記のように、超音波検査装置11は、材料内の探傷にも用いられるものであり、本実施形態にかかる結晶組織評価装置1を、探傷装置としても用いることができる。つまり、結晶組織評価装置1を用いて、被検査材Sの結晶組織の不均一性を評価する際に、それと同時に、あるいは独立した工程として、被検査材Sの探傷を行うことができる。
[結晶組織評価方法]
次に、上記のような結晶組織評価装置1を用いて、本発明の一実施形態にかかる結晶組織評価方法を実行し、被検査材Sの結晶組織の不均一性を評価する方法について説明する。
(結晶組織の状態と超音波の散乱)
結晶組織評価方法における各工程について説明する前に、結晶組織の状態と、超音波の散乱の関係について説明する。
図3(a)に、被検査材Sに入射された超音波Uの挙動を模式的に示している。また、図3(b)に、被検査材Sの内部の組織の拡大図を示している。図4には、超音波検査装置11によって得られる超音波信号の例を示している。なお、図4および後に説明する図5(c),図6(c)に示す超音波信号は、周波数分析により、入射した超音波Uの基本波と同じ周波数の成分を抜き出したものである。
図3(a)に示すように、入射した超音波Uの多くの部分は、被検査材Sの表面S1で反射され、表面反射波U1となる。表面反射波U1は、図4中に成分A1として示すように、超音波信号が検出される時間の初期に、非常に大きな振幅で検出される。また、被検査材Sにおいて、表面S1に対向する底面S2に達した超音波Uの大部分は、底面S2で反射され、底面反射波U2となる。底面反射波U2は、図4中に成分A2として示すように、超音波信号が検出される時間の終盤に、比較的大きな振幅で検出される。
超音波信号においては、図4中に成分A3として示すように、表面反射波U1による成分A1と底面反射波U2による成分A2の他に、それらの間の時間領域に、小さな振幅の信号が、長時間連続して観測される。この成分A3は、被検査材Sの内部で超音波Uが散乱されて生じる、散乱波U3に対応するものである。
図3(b)に、図3(a)中に破線で表示した領域の拡大図を、模式的に示すように、被検査材Sを構成する金属材料中には、多数の結晶粒S3が含まれている。結晶粒S3の外縁は、結晶粒界S4となっている。結晶組織中に入射された超音波Uは、結晶粒界S4で散乱を受ける。多結晶金属材料における結晶粒S3の大きさは、典型的には、サブミクロンからミクロンオーダーであり、超音波Uの散乱においては、後方散乱(レイリー散乱)の寄与が大きくなる。結晶粒界S4で生じた散乱波U3の少なくとも一部は、超音波検査装置11に到達し、検出される。超音波検査装置11に到達した散乱波U3は、超音波信号において、表面反射波U1と底面反射波U2の間の時間に観測される成分A3となる。被検査材Sの表面S1から底面S2に至る経路の全域で、結晶粒界S4による散乱が起こるため、散乱波U3による信号成分A3は、長い時間に亘って観測される。
結晶粒界における超音波の散乱強度は、結晶粒の粒径の6乗に比例することが知られている。つまり、図5(a)に走査電子顕微鏡像(SEM)像を示すように、全体として、結晶粒S3の粒径が大きい場合には、図5(b)のように、結晶粒界S4で散乱が強く起こる。そして、図5(c)に示すように、超音波検査装置11で検出される超音波信号において、散乱波U3による成分A3の強度が大きくなる。一方、図6(a)にSEM像を示すように、全体として、結晶粒S3の粒径が小さい場合には、図6(b)のように、結晶粒界S4での散乱が弱くなる。図6(b)では、散乱がほとんど起こっていない形態を示している。そして、図6(c)に示すように、超音波検査装置11で検出される超音波信号において、散乱波U3による成分A3の強度が小さくなる。このように、結晶組織を構成する結晶粒S3の粒径は、超音波の散乱強度に反映され、粒径が大きくなるほど、散乱強度が大きくなる。
図7に、結晶粒径の均一度と、結晶粒径の大きさの異なる4とおりの組織を示す。なお、ここでは、各結晶粒を実際よりも拡大して表示している。上で説明したとおり、図7(a)のように、微細な結晶が均一に生成している場合には(均一・微細組織)、小さな散乱強度が観測され、図7(d)のように、粗大な結晶が均一に生成している場合には、(均一・粗大組織)、大きな散乱強度が観測される。
被検査材Sにおいて、異なる入射点P(図では入射点P1,P2)から、それぞれ超音波Uを入射し、信号検出を行う場合を考える。図7(a)の均一・微細組織においては、入射点Pによらず、超音波Uが通過する経路に、粒径のよく揃った小さな結晶粒S3が分布している。よって、図中で超音波の経路の先に散乱波U3の信号強度を模式的に示すように、入射点Pによらず、同程度に小さな散乱強度が観測される。一方、図7(d)の均一・粗大組織においては、入射点Pによらず、超音波Uが通過する経路に、粒径のよく揃った大きな結晶粒S3が分布している。よって、入射点Pによらず、同程度に大きな散乱強度が観測される。このように、粒径の均一性が高い(不均一性が低い)場合には、入射点P間で散乱強度が大きく変化せず、入射点Pによらず粒径を反映した散乱強度が得られる。その結果、入射点Pの間で、散乱強度が大きくばらつくことはない。
これらに対し、図7(b)では、微小な結晶粒S3よりなる組織の中に、粗大な結晶粒M1(斜線にて表示)が不均一に生じた、不均一・微細組織が形成されている。また、図7(c)では、微小な結晶粒S3よりなる組織の中に、それら結晶粒S3よりもさらに微細な結晶粒M2(斜線にて表示)が不均一に生じた、不均一・微細組織が形成されている。例えば、チタン基合金において、大部分がα相の微細な結晶よりなる組織の中に、粗大なα相の生成や、β相の偏析が起こる場合に、それらのような不均一・微細組織が形成されうる。
図7(b)および(c)のように、不均一・微細組織に対して、異なる入射点Pから、それぞれ超音波Uを入射する場合には、入射点Pによって、超音波Uが通過する経路に存在する結晶粒の粒径の分布が、変化しうる。例えば、図7(b)においては、図中の入射点P1から入射された超音波Uは、微細な結晶粒S3が生成している領域のみを通過するため、経路において、強い散乱を起こさない。一方、入射点P2から入射された超音波Uは、粗大な結晶粒M1が生成した領域を、途中に通過する。よって、通過経路の中に、超音波が強い散乱を起こす部位が存在する。そのため、被検査材Sの表面の各位置に設定された入射点Pから超音波Uを入射し、散乱強度を計測した際に、入射点P1から入射した場合のように、微細な結晶粒S3のみが生成した領域を超音波Uが通過する場合には、散乱強度が小さくなり、入射点P2から入射した場合のように、粗大な結晶粒M1が生成した領域を超音波Uが通過する場合には、散乱強度が大きくなる。その結果、入射点Pによって、散乱強度が変化し、入射点Pの間で散乱強度におけるばらつきが大きくなる。
一方、図7(c)においては、図中の入射点P2から入射された超音波Uは、特に微小な結晶粒M2が生成した領域を、途中に通過する。よって、通過経路の中に、超音波がほとんど散乱を起こさない(あるいは、弱くしか起こさない)部位が存在する。そのため、被検査材Sの表面の各位置に設定された入射点Pから超音波Uを入射し、散乱強度を計測した際に、入射点P2から入射した場合のように、特に微小な結晶粒M2が生成した領域を超音波Uが通過する場合には、入射点P1から入射した場合のように、特に微小な結晶粒M2が生成した領域を通過しない場合よりも、散乱強度が小さくなる。このように、特に微小な結晶粒M2が混在する場合にも、粗大な結晶粒M2が混在する場合と同様に、入射点Pによって、散乱強度が変化し、入射点Pの間で散乱強度におけるばらつきが大きくなる。
このように、入射点Pによる散乱強度のばらつきが、組織内における結晶粒径の不均一性を反映したものとなる。そこで、粒径の不均一性を定量的に解析するために、各入射点Pで得られた散乱強度に対して、統計分析を行う。具体的には、図8(a)に示すように、所定の散乱強度が得られた入射点Pの数を、散乱強度の関数として整理し、散乱強度関数を作成する。図8(a)において、横軸が、散乱強度を示し、縦軸が、データ数、つまり所定の散乱強度が観測された入射点Pの数を示している。丸印によって示すデータ点の1つ1つが、各入射点Pに対応しており、図示した形態では、例えば、散乱強度「6」が観測された入射点Pが16か所であることが、示されている。
結晶組織における粒径の均一性が高く(不均一性が低く)、各入射点Pに対して得られた散乱強度のばらつきが小さい場合には、図8(a)のような散乱強度関数において、データ点が、狭い散乱強度の領域に集中して分布し、幅の小さなピークを与えるはずである。一方、粒径の不均一性が高く、各入射点Pに対して得られた散乱強度のばらつきが大きい場合には、散乱強度関数において、データ点が、広い散乱強度に広がって分布し、幅の大きなピークを与えるはずである。つまり、散乱強度関数において、ピーク幅は、結晶組織の不均一性に高い相関を示し、ピーク幅が大きいほど、結晶組織の不均一性が高くなっていると評価することができる。
さらに、上記のように、結晶組織全体として粒径が大きくなっているほど、散乱強度が大きくなるので、データ点が、散乱強度の大きな領域に分布するはずである。よって、散乱強度関数のピークの中央値(ピークトップ)における散乱強度が、粒径の平均値との間に高い相関を示し、中央値における散乱強度が大きいほど、結晶組織における平均粒径が大きくなっていると評価することができる。このように、各入射点Pに対して得られた散乱強度を統計分析して作成される散乱強度関数において、ピーク幅と中央値の散乱強度に着目することで、結晶組織における粒径分布の不均一性と、平均粒径の両方を評価することができる。
図8(b)に、図7に示した各結晶組織に対して得られる散乱強度関数を、模式的に示す。まず、図7(a)に示す均一・微細組織に対しては、粒径の均一性が高いことを反映して、ピーク幅の小さい散乱強度関数が得られる。また、平均粒径が小さいことと対応して、ピークの中央値の散乱強度が小さくなる。図7(d)に示す均一・粗大組織についても、粒径の均一性が高いことを反映して、均一・微細組織の場合と同様に、ピーク幅の小さい散乱強度関数が得られる。一方、平均粒径が大きいことと対応して、ピークの中央値の散乱強度は大きくなる。
図7(b)および(c)に示す不均一・微細組織に対しては、粒径の不均一性が高いことを反映して、ピーク幅の大きい散乱強度関数が得られる。また、一部に粗大粒や特に微小な結晶粒は存在するものの、それらの数が少ないことから、平均粒径としては小さくなっていることを反映して、ピークの中央値の散乱強度は小さくなる。つまり、図7(a)の均一・微細組織の場合と、図7(b),(c)の不均一・微細組織の場合で、平均粒径としては同程度であることから、ピークの中央値の散乱強度は、ほぼ同じとなっているが、粒径の不均一性の差異により、不均一・微細組織の場合の方が、ピーク幅が広くなる。
ここまでは、結晶組織の不均一性として、粒径分布における不均一性に着目して、散乱強度関数のピーク幅と結晶組織の不均一性の関係について説明した。しかし、粒径に限らず、結晶粒S3の特性の分布における不均一性と相関を有する指標として、散乱強度関数のピーク幅を用いることができ、散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、結晶組織の不均一性が高いと評価することができる。つまり、散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、結晶組織を構成する多数の結晶粒S3の間で、特性のばらつきが大きいとみなすことができる。
着目する結晶粒S3の特性としては、その特性の差異によって、超音波の散乱強度が変化するような特性であれば、特に限定されないが、超音波の散乱強度に大きな影響を与える特性として、粒径の他に、成分組成および異方性を挙げることができる。粒径、成分組成、異方性のいずれか少なくとも1つに、不均一性が存在していれば、超音波測定によって得られる散乱強度のピーク幅に、その不均一性が反映される可能性がある。
成分組成における不均一性としては、成分組成の異なる結晶粒S3の混在の有無を挙げることができる。例えば、大部分の結晶粒S3が均一な成分組成を有している合金組織の中に、偏析等によって、成分組成の異なる合金よりなる結晶粒S3や、非金属よりなる結晶粒S3が、一部生成している場合に、成分組成における不均一性が高くなる。結晶粒S3の成分組成によって、超音波に対する散乱因子が異なるため、成分組成における不均一性が高いほど、散乱強度関数のピーク幅が広くなる。
異方性における不均一性としては、各結晶粒S3の形状の異方性の程度が揃っているか否か、また、異方性の高い形状を有する結晶粒S3の配向方向が、結晶粒間で揃っているか否かを挙げることができる。例えば、大部分の異方性の高い形状を有する結晶粒S3の中に、異方性の低い形状を有する結晶粒S3が一部生成している場合や、各結晶粒S3が異方性の高い形状を有しているものの、大部分の配向方向が揃った結晶粒S3の中に、配向方向の異なる結晶粒S3が一部生成している場合に、異方性における不均一性が高くなる。結晶粒S3の具体的な形状や配置方向によって、超音波に対する散乱因子が異なるため、形状や配向の異方性における不均一性が高いほど、散乱強度関数のピーク幅が広くなる。
(結晶組織評価方法の各工程)
次に、本発明の実施形態にかかる結晶組織評価方法において、上記で説明したような散乱強度関数と結晶組織の状態の相関を利用して実行する、各工程について説明する。本実施形態にかかる評価方法においては、計測工程、統計処理工程、評価工程を、この順に実施する。
(1)計測工程
計測工程においては、被検査材Sの表面(側面)に設定した複数の入射点Pから、超音波Uを入射し、検出される散乱波U3の強度(散乱強度)を、入射点Pごとに計測する。計測工程においては、まず、上記で、結晶組織評価装置1について説明したように、演算・制御装置13によって、運動装置12と超音波検査装置11を制御して、所定の角度間隔および長さ間隔で、被検査材Sの表面に設定した複数の入射点Pに対して、それぞれ、超音波Uを入射して、超音波信号を取得する。測定により、図2に示したようなデータ群が得られる。
ここで、被検査材Sの表面において、入射点Pを設定して計測を行う範囲は、被検査材Sの中で、周囲と異なる結晶組織が不均一に生成している可能性のある領域よりも十分に大きな体積の領域に、いずれかの入射点Pから入射した超音波Uを到達させることができれば、どのように設定してもよい。被検査材S全体に対して、結晶組織が不均一になった領域が生成していないかどうかを十分に検査する観点からは、被検査材Sの中の略全域に超音波Uを到達させられるように、入射点Pを設定する範囲を設けることが好ましい。被検査材Sが、棒状材よりなる場合には、周方向に沿って全周にわたり、また長手方向に沿って少なくとも一部の領域、好ましくは全域にわたって、入射点Pを設定するとよい。なお、入射点Pは、必ずしも全周にわたって設定する必要はなく、少なくとも180°にわたって設定されていれば、断面全体にわたって組織の検査を行うことが可能である。特に、被検査材Sが、丸棒材等、中心軸を挟んで鏡面対称な形状を有している場合には、180°(半周)にわたって入射点Pを設定すれば十分である。
設定した各入射点Pに対して、順次、超音波測定を行い、図2のようなデータ群が得られれば、次に、データ群を構成する、各入射点Pに対して得られた超音波信号のそれぞれに対して、散乱強度の抽出を行う。散乱強度は、被検査材Sの内部において発生した散乱波U3の強度を示す量である。
この際、まず、超音波強度の時間変化として記録された各超音波信号に対して、周波数分析を行い、以降の解析に用いる特定の周波数の信号を抜き出す。例えば、各超音波信号に対して、短時間フーリエ変換(STFT)を行い、入射した超音波Uの基本波と同じ周波数の成分について、時間変化を抜き出せばよい。図4や図5(c),図6(c)に示すグラフは、そのように、STFTによって、基本波と同じ周波数の成分の時間変化を抜き出したものである。
上記でも説明したが、図4に示すように、超音波信号の初期に観測される振幅の大きな成分A1は、表面反射波U1によるものであり、終盤に観測されるある程度大きな振幅を有する成分A2は、底面反射波U2によるものである。そして、成分A1,A2の間に観測される、振幅の小さな成分A3が、散乱波U3によるものである。そこで、表面反射波U1および底面反射波U2による信号の影響を十分に除外できるように、両成分A1,A2の間の時間に、評価領域Gを設定し、評価領域Gにおいて、散乱波U3による超音波信号の強度を評価すればよい。
散乱波U3の強度は、例えば、散乱波U3のエネルギーによって評価することができる。超音波のエネルギーは、振幅の2乗に比例するので、設定した評価領域Gにおいて、振幅の2乗の値を積分して、散乱波U3の強度、つまり散乱強度とすることができる。演算・制御装置13は、このような積分によって得られた散乱強度の値を、入射点Pに対応付けて記憶する。なお、エネルギーに限らず、散乱波U3の強度と正の相関を有する量であれば、散乱強度として、解析に用いることができる。例えば、評価領域Gにおいて、振幅の絶対値を積分したものを、散乱強度として用いることができる。
このようにして、ある入射点Pで得られた超音波信号に対して散乱強度を抽出することができれば、演算・制御装置13は、図2に示すように、複数の入射点Pに対して得られたデータ群を構成する超音波信号のそれぞれに対して、同様の処理を行って、散乱強度を抽出し、記憶する。なお、ここでは、散乱強度を抽出するための処理を、STFTによる周波数分析によって抜き出した、基本周波数と同じ周波数成分の信号に対して行っているが、これは、散乱波U3が、基本周波数において最も強く観測され、検出感度の確保、および他の現象の寄与との区別を行いやすいことによる。しかし、散乱強度を十分な精度で抽出できる方法であれば、超音波信号の処理方法は、上記のものに限られない。例えば、散乱波U3の寄与が十分に大きい場合等には、周波数分析を省略して、検出された超音波の全強度の時間変化信号に対して、積分等を行って、散乱強度を抽出してもよい。あるいは、周波数分析で得られた、基本周波数以外の周波数の信号に対して、散乱強度を抽出してもよい。また、周波数分析を行う場合に、具体的な手法は、STFTに限られず、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いることもできる。
(2)統計処理工程
統計処理工程においては、上記計測工程で、各入射点Pに対応付けて得られた散乱強度の情報をもとに、統計処理を行って、散乱強度関数を作成する。
散乱強度関数の作成は、上記で、結晶組織の状態と超音波の散乱について、図8(a)を参照しながら説明したように、所定の散乱強度が得られた入射点Pの数を、散乱強度の関数として整理することによって行う。この際、散乱強度の値を、一定の間隔に区分し、各区分内の散乱強度が得られた入射点Pの数を集計すればよい。
この際、被検査材Sの表面に設定した全入射点Pに対するデータ点を、1つの散乱強度関数にまとめてもよいが、被検査材Sの表面の領域を複数の部位に区画し、部位ごとにデータ点を整理して、複数の散乱強度関数を作成してもよい。すると、被検査材Sの部位ごとに、結晶組織の不均一性を評価することができる。例えば、被検査材Sが、丸棒材のように、棒状材よりなる場合に、長手方向に沿って、所定長さを有する複数の部位に被検査材Sを区画し、各部位ごとに、上記所定長さにわたって全周に設定された入射点Pに対応するデータ点を整理して、その部位の散乱強度関数を作成することができる。すると、部位ごとに、その部位内における結晶組織の不均一性を評価することができる。
(3)評価工程
評価工程においては、上記統計処理工程において得られた散乱強度関数を用いて、被検査材Sにおける結晶組織の不均一性を評価する。
上記で、結晶組織の状態と超音波の散乱について、図7および図8(b)を参照しながら説明したように、各入射点Pに対して得られた散乱強度を統計処理して得られた散乱強度関数のピーク幅は、結晶組織の不均一性と高い相関性を示し、ピーク幅が大きいほど、結晶組織の不均一性が高いとみなすことができる。そこで評価工程においては、散乱強度関数のピーク幅を求め、その幅が大きいほど、結晶組織の不均一性が高くなっていると評価する。
散乱強度関数のピーク幅を求める方法は、特に限定されるものではなく、例えば、半値全幅(FWHM)を、ピーク幅とすることができる。あるいは、ピーク幅と正の相関を有する量を代わりに用いてもよい。図8(a)中に実線で示すように、散乱強度関数を正規分布に近似できる場合には、標準偏差(σ)を、ピーク幅に対応する量として、評価に用いることができる。
散乱強度関数のピーク幅を見積もると、次に、そのピーク幅をもとに、結晶組織における不均一性の程度を評価する。具体的には、ピーク幅が大きいほど、不均一性が高いと評価する。ここで、散乱強度関数のピーク幅に不均一性が反映される結晶粒S3の特性としては、結晶粒径、成分組成、異方性等を挙げることができるが、事前の試験等により、対象としている被検査材Sを構成する材料において、不均一性が生じる可能性のある特性がいずれであるかが分かっていれば、散乱強度関数のピーク幅を、その特性における不均一性の程度に変換することができる。例えば、材料製造時の条件の揺らぎ等による結晶組織の不均一性として、結晶粒径の不均一性が最も出現しやすい場合には、散乱強度関数のピーク幅を、結晶粒径における不均一性の程度に変換することができる。
散乱強度関数のピーク幅をもとに、結晶組織における不均一性の程度を評価するに際し、結晶組織の不均一性の程度とピーク幅の間の対応関係を示す参照データを、事前の試験等によって収集しておけば、被検査材Sに対する測定で得られたピーク幅を、結晶組織の不均一性の程度に、対応付けることができる。例えば、事前に、種々の条件で製造し、結晶粒径の不均一性の程度を変化させた参照試料を多数準備し、それぞれに対して、断面のSEM観察等によって、結晶組織の不均一性の程度を確認するとともに、散乱強度関数のピーク幅を見積もっておけばよい。そして、検査対象となる被検査材Sに対して実際に得られた散乱強度関数のピーク幅を、各参照試料に対して得られたピーク幅と比較する。ピーク幅が近い参照試料があれば、被検査材Sは、その参照試料と同程度の粒径の不均一性を有していると評価することができる。
あるいは、金属材料の製造工程等において、製造された各個体が、材料特性等の観点から許容できない不均一性を、結晶組織に有しているか否かを判定する場合には、被検査材Sの粒径の不均一性がどの程度であるかを、詳細に評価することまでは必要でない。このような場合には、複数種の参照試料を用いた参照データの収集を行う必要はなく、許容される不均一性の上限となる参照試料を1種類作製し、その参照試料に対して、散乱強度関数のピーク幅を、閾値として予め見積もっておくだけで十分である。そして、見積もられた閾値と、検査対象となる被検査材Sに対して実際に得られた散乱強度関数のピーク幅を比較すればよい。得られたピーク幅が、設定した閾値以下である場合には、許容できない水準の結晶組織の不均一性は、発生しておらず、十分に高い均一性を有する結晶組織が得られていると評価することができる。一方、得られたピーク幅が、閾値よりも大きい場合には、許容できない水準の不均一性を有する結晶組織が生じていると評価される。
金属材料の製造工程において、許容できない水準の不均一性を有する結晶組織が生じていると判定された個体は、以降の工程における加工や出荷の対象から除外すればよい。また、製造装置の点検や製造条件の見直し等を行い、その後製造される個体において、結晶組織の均一性を高められるように、対策を施すことができる。
統計処理工程において、被検査材Sの表面を複数の部位に区画して、部位ごとに散乱強度関数を作成している場合には、それら部位ごとに、結晶組織の不均一性を評価することができる。例えば、各部位の中に、許容できない水準の不均一性を有する結晶組織が生じているか否かを、判定することができる。もし、棒状の被検査材Sの長手方向に沿って、一部の部位にのみ、許容できない水準の不均一性が発見された場合には、切断等によって、その部位のみ除去する等の対応も行いうる。
以上のように、本実施形態にかかる結晶組織評価方法においては、結晶粒S3の状態によって超音波の散乱強度が異なることを利用して、被検査材Sの表面の複数の入射点Pから超音波を入射した際に観測される散乱強度に基づいて、結晶組織の不均一性を、非破壊で、簡便に評価することができる。多結晶金属材料の結晶粒S3の粒径は、典型的には、サブミクロンからミクロンオーダーであり、超音波の波長よりも小さいが、散乱現象、特に後方散乱を利用して、評価を行うことで、粒径等、結晶組織が有する特性における不均一性を、高感度に検出できる。
1点のみに超音波を入射して検査を行う場合や、広い領域に一括して超音波を照射して検査を行う場合とは異なり、多数の入射点Pに対して個別に測定した散乱強度のデータを、統計的に解析することで、結晶組織全体の中で、構造が不均一になった領域が、ごく一部であったとしても、そのような領域の存在を、敏感に検知することができる。また、図4等に示されるように、散乱波U3の強度は、表面反射波U1や底面反射波U2に比べて弱いが、統計処理を利用することで、ノイズの影響を低減して、散乱波U3の強度に基づいて、精度の高い解析を行うことができる。ノイズの影響は、統計処理の基礎となる散乱強度を、積分によって求めることで、一層低減される。このように、ノイズの影響の低減によって、測定の感度および精度を高めることで、金属材料等の製造工程において、多数の個体が連続的に製造される場合に、一部の個体の、ごく限られた領域に、結晶組織が不均一になった部位が存在する場合でも、そのような不均一な結晶組織を、高感度、また高精度に発見し、所望の材料特性を与えるような結晶組織を均一に有する個体を、正確に選別することができる。
本実施形態にかかる結晶組織評価方法においては、各入射点Pに対して得られた超音波信号に対して、適宜、周波数解析や積分を行ったうえで、散乱強度のデータを統計処理し、そのピーク幅を評価するだけで、結晶組織の不均一性に関する情報を得ることができる。検出された超音波信号に対して、波形の解析等の複雑な演算処理や、結晶組織のモデルを仮定してのシミュレーション等を行う必要がない。各入射点Pでの超音波の入射と検出という簡素な計測と、統計処理を中心とした単純な演算処理のみで、結晶組織の不均一性を簡便に評価することができる。その結果、多数の個体に対して検査を行う場合等にも、各個体に対する検査を、短時間で完了することができる。
(4)その他の工程
(4-1)平均結晶粒径の評価
本実施形態にかかる結晶組織評価方法においては、上記の評価工程において、散乱強度関数のピーク幅に基づいて、結晶粒径の不均一性等、結晶組織における不均一性を評価している。評価工程においては、散乱強度関数のピーク幅の他に、ピークの中央値の散乱強度に注目することで、結晶粒S3の平均粒径に関する情報も、結晶組織の不均一性に関する情報と合わせて、得ることができる。
上記で説明したように、散乱強度関数のピークの中央値における散乱強度が大きいほど、結晶粒S3の平均粒径が大きいと評価すればよい。結晶組織の不均一性と、平均結晶粒径を合わせて評価することで、例えば、金属材料等の製造工程において、所望の材料特性を与えるような、所定の範囲の粒径を有する結晶粒S3が均一性高く生成した個体を、高度に選別することができる。
(4-2)散乱強度関数の複数成分への分離と不均一性の定量評価
上記のように、散乱強度関数において、散乱強度(横軸)の値は、結晶粒径を反映し、結晶粒径が大きいほど、散乱強度値が大きくなるが、結晶粒径の分布範囲の異なる複数の種類の結晶組織が混在している場合には、散乱強度関数は、それら複数種の結晶組織の寄与を足し合わせたものとなる。この場合に、得られる散乱強度関数が、左右非対称な形状をとる場合がある。例えば、図7(b),(c)に示したように、均一性の高い微小な結晶粒S3よりなる組織の中に、粗大な結晶粒M1、またはそれら微細な結晶粒S3よりもさらに小さな結晶粒M2が、不均一に混在している場合に、それら混在した結晶粒M1,M2の占める領域が小さければ、図8を参照しながら既に説明したように、それら混在した結晶粒M1,M2の寄与による散乱強度関数の不均一性を無視して、散乱強度関数を、ピーク中央値を挟んで対称な関数として扱うことができる。しかし、混在した不均一な結晶粒M1,M2の占める領域が大きければ、それら結晶粒M1,M2の寄与による散乱強度関数の不均一性が無視できない場合がある。そのような場合には、評価工程において、散乱強度関数を、散乱強度の中央値が異なる複数のピーク成分に分離することが好ましい。
例えば、図7(b)に示すように、均一性の高い微細な結晶粒S3が大部分の領域を占める中に、少量の粗大な結晶粒M1が、不均一に混在している場合に、得られる散乱強度関数は、図9(a)に示すように、高散乱強度側の分布幅が、低散乱強度側の分布幅よりも大きくなった、左右非対称な分布をとる。この場合に、非対称な散乱強度関数を、図9(b)に示すように、2つのピーク成分に分離することができる。図9(b)では、図9(a)に示した散乱強度関数の全成分を、破線で示した主ピークと、細い実線で示した副ピークの2つのピーク成分に分離している。副ピークは、主ピークよりもピーク高さ(ピーク中央における縦軸の値)が小さくなっており、かつ、ピーク中央の散乱強度(横軸の値)が大きくなっている。このように分離された2つのピークのうち、主ピークは、結晶粒径が小さく、かつ大きな領域を占める結晶組織、つまり均一性の高い微細な結晶粒S3よりなる組織に、帰属することができる。一方、副ピークは、結晶粒径が大きく、かつ占有する領域が狭い結晶組織、つまり粗大な結晶粒M1が不均一に生成した組織に、帰属することができる。主ピークおよび副ピークをそれぞれ解析することで、それら2種の組織における結晶粒径や組織の不均一性等、結晶組織に関する情報を、組織間で分離して得ることができる。なお、図7(c)のように、均一性の高い結晶粒S3よりなる組織の中に、それらの結晶粒S3よりもさらに結晶粒径が小さくなった結晶粒M2が局所的に生成している場合には、散乱強度関数は、低散乱強度側の分布幅が、高散乱強度側の分布幅よりも大きくなった、左右非対称な分布をとる。この場合にも、同様にピーク分離を行うことができ、主ピークよりも低散乱強度側に、副ピークが出現することになる。
散乱強度関数の複数のピーク成分への分離は、公知のデータ解析法によって行うことができ、例えば、複数のガウス関数を用いたカーブフィッティング法を利用することができる。しかし、散乱強度関数を、主ピークと副ピークの2つのピーク成分のみの重ね合わせに近似することができ、かつ、副ピークの寄与が過度に大きくない場合には、簡素な手法によって、ピーク分離を行うことができる。まず、散乱強度関数の最頻値(縦軸の値が最大となった時の横軸の値;図9(a)中に一点鎖線にて表示)を中心として、分布幅が小さい側の散乱強度関数、つまり図9(a)では低散乱強度側の散乱強度関数を、対称に複製し、それを主ピークとする。換言すると、最頻値よりも低散乱強度側の散乱強度関数を、最頻値を境として高散乱強度側に折り返して、それを低散乱強度側の散乱強度関数と接合したものを、主ピークとする。そして、全体の散乱強度関数から、得られた主ピークの寄与を除いたもの、つまり得られた主ピークの強度を減じたものを、副ピークとする。このようにして、簡便に、主ピークと副ピークの分離を行うことができる。
散乱強度関数は、2つのピーク成分のみならず、さらに多数のピーク成分に分離してもよいが、主ピークと副ピークの2つの成分に分離できる場合には、ピーク分離の結果を用いて、結晶組織の不均一性の程度を、簡便に定量化することができる。例として、図10に、結晶組織の不均一性の程度が異なる場合について、得られる散乱強度関数(太線)と、そこから分離される副ピーク(細線)を示す。図10(a)は、結晶組織の均一性が高い場合を示しており、図7(a)のように、微細な結晶粒S3が均一性高く形成されている状態に近い。この場合には、対称性の高い散乱強度関数が得られ、副ピークの寄与がわずかとなっている。一方、図10(b)は、結晶組織が局所的に不均一になった領域が存在する場合を示しており、図7(b)のように、微細な結晶粒S3が均一性高く形成された領域の中に、部分的に、無視できない量の粗大な結晶粒M1が生成した状態に対応している。この場合には、高散乱強度側に広がった散乱強度関数が得られ、副ピークの寄与が大きくなっている。このように、副ピークの寄与の大きさは、結晶組織の不均一性の程度の指標となり、副ピークの寄与が大きいほど、結晶組織の不均一性が高いと評価することができる。
さらに結晶組織の不均一性を定量的に評価できるパラメータとして、不均一性評価値を導入することができる。不均一性評価値は、副ピークを、散乱強度関数の最頻値(あるいは主ピークの中央値)からの隔たり(横軸における距離)で重みづけして積分することで、算出できる。例えば、散乱強度の値をxとし、副ピークを表す関数をf(x)とし、さらに散乱強度関数の最頻値をx=mとした場合に、不均一性評価値は、f(x)・|x-m|を、副ピークが出現しているxの全領域について積分した値として、算出することができる。その不均一性評価値は、最頻値からの隔たりである|x-m|によって重みづけされたものとなる。このようにして求められる不均一性評価値は、副ピークのピーク高さやピーク幅が大きいほど、つまり不均一に生成した結晶粒M1(M2)が占める領域の割合が大きいほど、大きくなる。加えて、不均一性評価値は、主ピークを与える結晶組織と、副ピークを与える結晶組織の間で、結晶粒径が大きく離れているほど、大きくなる。つまり、均一性の高い組織を構成する結晶粒S3から、粒径が大きく異なる結晶粒M1(M2)が生成しているほど、不均一性評価値が大きくなる。よって、不均一性評価値は、結晶組織の不均一性を定量的に評価できる良い指標となり、不均一性評価値が大きいほど、結晶組織の不均一性が高いと評価することができる。
(4-3)材料の探傷
さらに、結晶組織評価装置1に備えられる超音波検査装置11は、材料の探傷にも用いることができるため、被検査材Sに対して、結晶組織の不均一性の評価に加えて、傷や欠陥の有無も検査することができる。ここで、傷や欠陥とは、結晶粒オーダーでない大きなサイズのもの、おおむねサブミリメートル以上のものを指す。
もし、被検査材Sの内部に傷が存在しているとすれば、計測工程で、各入射点Pに対応して得られる、図4に示すような超音波信号において、表面反射波U1による成分A1と底面反射波U2による成分A2の間に、傷で反射された反射波による成分が観測されるはずである。そのような成分が観測された場合には、被検査材Sにおいて、その入射点Pから内部に入った位置に、傷が存在すると判定することができる。傷に由来する信号成分から外して評価領域Gを設定し、散乱強度を求めれば、探傷と結晶組織の不均一性の評価の両方を、共通のデータを用いて行うことができる。さらに、得られた超音波信号に対して、底面反射波U2の解析や、音速、速度分散、減衰等の解析を実施し、被検査材Sを構成する材料の各種特性の分析を、合わせて行ってもよい。
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。ここでは、チタン基合金を試料として用い、上記実施形態にかかる結晶組織評価方法の妥当性を検証した。また、不均一性評価値の有効性についても検証した。
[1]結晶組織評価方法の妥当性
[1-1]熱処理温度を変化させる場合
(試験方法)
試験においては、チタン基よりなるα+β型合金(α相およびβ相を形成する合金)を試料として用いた。具体的には、上記の合金よりなるφ55mmの丸棒材を鋳造し、所定の温度で3時間の熱処理を行ったあと、空冷した。熱処理の温度は、800℃~950℃の範囲で5とおりに変化させた。
各温度で熱処理した試料に対して、断面を切り出し、SEMによる観察を行って、組織の状態を観察した。
さらに、各温度で熱処理した試料に対して、上記で、本発明の実施形態にかかる結晶組織評価方法として説明したのと同様の方法で、計測工程および統計処理工程を実行し、散乱強度関数を作成した。そして、散乱強度関数の標準偏差を求めた。ここで、超音波として、20MHzの周波数のパルスを用い、試料の全周に沿って1°間隔、また長手方向に沿って50mmの領域にわたって0.2mm間隔で入射点を設定して、計測工程を実施した。得られた超音波信号に対しては、STFTによる周波数分析を行い、入射した基本波と同じ周波数の成分に対して、エネルギーの積分値を算出して、散乱強度とした。
(結果)
SEM観察によって、熱処理温度を高くするほど、α相およびβ相がより均一に生成し、結晶組織がより均一となることが確認された。
図11(a)に、各温度での熱処理を経た試料に対して得られた、散乱強度関数を示す。これによると、熱処理温度が上昇するのに伴い、低散乱強度側にピークが移動している。また、熱処理温度が上昇するのに伴い、ピークの幅が狭まっている。
さらに、図11(b)に、図11(a)の各散乱強度関数に対して得られた標準偏差の値を、熱処理温度に対してプロットしている。ここでは、最小の標準偏差(処理温度950℃)の値を100%として規格化して、各熱処理温度における値を示している。図11(b)によると、熱処理温度が上昇するのに伴い、標準偏差が小さくなること、つまり散乱強度関数のピークの幅が狭まることが、一層明瞭に示されている。
高温で熱処理を行うほど、散乱強度関数の中央値の散乱強度が小さくなるとともに、散乱強度関数のピーク幅が狭まるという結果から、熱処理温度の上昇に伴い、結晶粒の平均粒径が小さくなるとともに、結晶組織の不均一性が低くなっている、つまり均一性が高まっていると解釈できる。この傾向は、SEM観察で見られた傾向と一致している。以上より、本発明の実施形態にかかる評価方法において、超音波測定に基づく散乱強度関数のピークの中央値およびピーク幅に基づいて、結晶粒径の大きさおよび結晶組織の不均一性を評価することの妥当性が、確認される。
[1-2]鍛錬比を変化させる場合
(試験方法)
ここでも、チタン基よりなるα+β型合金を試料として用いた。具体的には、上記試験[1-1]と同様に鋳造した丸棒材に対して、鍛造を施した。鍛造に際し、鍛錬比を3とおりに変化させた。試料A,B,Cの順に、鍛錬比を大きくしている。
各鍛錬比の試料に対して、上記試験[1-1]と同様に、SEM観察と、超音波測定に基づく散乱強度関数の作成を行った。
(結果)
SEM観察によって、鍛錬比を大きくするほど、粗大な結晶粒が増加するとともに、結晶粒の大きさが不均一になることが確認された。
図12に、各鍛錬比の試料に対して得られた、散乱強度関数を示す。これによると、試料A,B,Cの順に鍛錬比が上昇するのに伴い、高散乱強度側にピークが移動している。また、鍛錬比が上昇するのに伴い、ピークの幅が広がっている。
鍛錬比を大きくするほど、散乱強度関数の中央値の散乱強度が大きくなるとともに、散乱強度関数のピーク幅が広がるという結果から、鍛錬比の上昇に伴い、結晶粒の平均粒径が大きくなるとともに、結晶組織の不均一性が高まっていると解釈できる。この傾向は、SEM観察で見られた傾向と一致している。この試験[1-2]の結果からも、試験[1-1]の結果と同様に、本発明の実施形態にかかる評価方法において、超音波測定に基づく散乱強度関数のピークの中央値およびピーク幅に基づいて、結晶粒径の大きさおよび結晶組織の不均一性を評価することの妥当性が、確認される。
試験[1-1]のように熱処理温度を変化させた場合と、試験[1-2]のように鍛錬比を変化させた場合で、結晶組織の構造およびその変化の詳細は異なっているが、いずれの試験においても、結晶粒径が大きくなるほど、散乱強度関数において、ピークの中央値の散乱強度が大きくなるとともに、ピーク幅が広がるという傾向が確認されている。つまり、結晶組織の構造の詳細によらず、散乱強度関数を、結晶粒径および結晶組織の不均一性の評価に利用可能であると言える。
[2]不均一性評価値の有効性
(試験方法)
上記試験[1-2]と同様に、チタン基よりなるα+β型合金に対して、異なる鍛錬比で鍛造を行い、結晶組織の不均一性の程度が異なる3種の試料を作製した。

SEM観察により、試料(1)→(2)→(3)の順に、結晶組織の不均一性が高くなり(試料(3)が最も高い)、微細な結晶粒の中に、粗大な結晶粒が多く混在するようになっていることが確認された。
試料(1)~(3)のそれぞれについて、試験[1-1]と同様に超音波測定に基づく散乱強度関数の作成を行った。そして、得られた散乱強度関数を、それぞれ、主ピークと、主ピークよりも高散乱強度側に位置する副ピークに分離した。そして、副ピーク(f(x))を、散乱強度関数の最頻値(m)からの隔たりによって重みづけし(f(x)・|x-m|)、その値を散乱強度の全領域で積分することで、不均一性評価値を得た。
(結果)
図13に、試料(1)~(3)のそれぞれについて、SEM像における画素のばらつきと、得られた不均一性評価値との関係を示す。不均一性評価値は、最も値が小さくなった試料(1)の場合を「1」として、規格化して示している。SEM像における画素のばらつきの評価としては、SEM像を二値化したうえで、縦方向および横方向への移動平均を求め、得られた画像における強度分布のヒストグラムの尖度を、画素のばらつきとして、図13の横軸に表示した。
図13によると、結晶組織の不均一性と、不均一性評価値の間に、正の相関が見られる。つまり、試料(1)→(2)→(3)と結晶組織の不均一性が高くなり、SEM像における画素のばらつきが大きくなるのに伴って、散乱強度関数から得られた不均一性評価値が、大きくなっている。このことより、不均一性評価値を、結晶組織の不均一性を定量的に表すパラメータとして、有効に利用できることが、示される。
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明は、これらの実施形態に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。上で説明したように、結晶組織評価装置を、透過方向にて透過波を検出する形態で構成することもできるが、透過波の強度は、散乱波の強度が大きいほど、小さくなる。よって、この場合には、所定の透過強度が得られた入射点の数を、透過強度の関数として整理して作成した散乱強度関数において、ピーク幅と結晶粒の不均一性の対応付けは、上記実施形態のように反射方向で散乱波を直接検出する場合と、同様に行うことができるが、散乱強度関数のピークの中央値の散乱強度と、平均粒径との関係は逆になり、中央値の強度が大きいほど、結晶粒の平均粒径が小さくなっていると、対応付けることができる。
1 結晶組織評価装置
11 超音波検査装置
12 運動装置
13 演算・制御装置
M1 粗大な結晶粒
M2 特に微小な結晶粒
P,P1,P2 入射点
S 被検査材
S1 表面
S2 底面
S3 結晶粒
S4 結晶粒界
U 入射する超音波
U1 表面反射波
U2 底面反射波
U3 散乱波

Claims (13)

  1. 結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、表面の複数の入射点から、超音波を入射し、検出される散乱波の強度を、散乱強度として、前記入射点ごとに計測する計測工程と、
    前記計測工程において所定の散乱強度が得られた前記入射点の数を、前記散乱強度の関数として整理して、散乱強度関数を作成する統計処理工程と、
    前記統計処理工程において得られた前記散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、前記被検査材において、結晶組織の不均一性が高いとみなす評価工程と、を有し、
    前記計測工程では、入射した前記超音波の反射方向において、超音波信号の強度を、時間の関数として測定し、前記被検査材の表面で反射された反射波と、前記表面に対向する底面で反射された反射波との間の時間に観測される、前記超音波信号の強度を積分することで、前記散乱強度を求めることを特徴とする結晶組織評価方法。
  2. 前記評価工程において、前記散乱強度関数のピークの中央値の散乱強度が大きいほど、前記結晶粒の平均粒径が大きいとみなすことを特徴とする請求項に記載の結晶組織評価方法。
  3. 結晶粒を含む棒材よりなる被検査材に対して、表面の複数の入射点から、超音波を入射し、検出される散乱波の強度を、散乱強度として、前記入射点ごとに計測する計測工程と、
    前記計測工程において所定の散乱強度が得られた前記入射点の数を、前記散乱強度の関数として整理して、散乱強度関数を作成する統計処理工程と、
    前記統計処理工程において得られた前記散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、前記被検査材において、結晶組織の不均一性が高いとみなす評価工程と、を有し、
    前記計測工程において、前記棒材の周方向に沿って少なくとも180°にわたり、かつ前記棒材の長手方向に沿って少なくとも一部の領域にわたるように、前記複数の入射点を設定することを特徴とする結晶組織評価方法。
  4. 結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、表面の複数の入射点から、超音波を入射し、検出される散乱波の強度を、散乱強度として、前記入射点ごとに計測する計測工程と、
    前記計測工程において所定の散乱強度が得られた前記入射点の数を、前記散乱強度の関数として整理して、散乱強度関数を作成する統計処理工程と、
    前記統計処理工程において得られた前記散乱強度関数のピーク幅が大きいほど、前記被検査材において、結晶組織の不均一性が高いとみなす評価工程と、を有し、
    前記評価工程において、前記散乱強度関数を、中央値の散乱強度が異なる複数のピークに分離することを特徴とする結晶組織評価方法。
  5. 前記評価工程において、前記散乱強度関数を、主ピークと、前記主ピークよりもピーク高さが小さい副ピークと、の2つのピークに分離することを特徴とする請求項に記載の結晶組織評価方法。
  6. 前記散乱強度関数の最頻値を中心として、分布幅が小さい側の前記散乱強度関数を対称に複製したものを、前記主ピークとし、前記散乱強度関数から前記主ピークの寄与を除いたものを、前記副ピークとすることを特徴とする請求項に記載の結晶組織評価方法。
  7. 前記副ピークを、前記散乱強度関数の最頻値からの隔たりによって重みづけして積分し、得られた積分値が大きいほど、前記結晶組織の不均一性が高いと評価することを特徴とする請求項またはに記載の結晶組織評価方法。
  8. 前記評価工程において、前記結晶組織の不均一性として、前記被検査材における結晶粒の粒径、成分組成、異方性のいずれか少なくとも1つにおける不均一性を評価することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の結晶組織評価方法。
  9. 前記計測工程では、時間の関数として測定した超音波信号を、周波数分析し、入射した前記超音波と同じ周波数の信号に基づいて、前記散乱強度を求めることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の結晶組織評価方法。
  10. 前記計測工程では、超音波の発生と検出を行う超音波検査装置が、前記被検査材の周囲を、前記被検査材に対して相対的に運動することで、前記複数の入射点に対して、前記超音波の入射と検出を行うことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の結晶組織評価方法。
  11. 前記評価工程では、前記ピーク幅が、予め定めた閾値より大きくなった場合に、結晶組織が不均一であると評価することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の結晶組織評価方法。
  12. 超音波の発生と検出を行う超音波検査装置を備え、
    結晶粒を含む材料よりなる被検査材に対して、請求項1から11のいずれか1項に記載の結晶組織評価方法を実行することを特徴とする結晶組織評価装置。
  13. 前記超音波検査装置を、前記被検査材に対して相対的に運動させる運動装置をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の結晶組織評価装置。
JP2019160800A 2018-11-19 2019-09-04 結晶組織評価方法および結晶組織評価装置 Active JP7314726B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018216288 2018-11-19
JP2018216288 2018-11-19

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020085888A JP2020085888A (ja) 2020-06-04
JP7314726B2 true JP7314726B2 (ja) 2023-07-26

Family

ID=70907694

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019160800A Active JP7314726B2 (ja) 2018-11-19 2019-09-04 結晶組織評価方法および結晶組織評価装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7314726B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7363462B2 (ja) * 2019-12-23 2023-10-18 大同特殊鋼株式会社 材料評価方法
CN113362909B (zh) * 2021-06-02 2022-07-01 燕山大学 用于评价合金钢锻件中晶粒组织均匀性的方法
CN114544445B (zh) * 2022-02-24 2022-09-16 北京领示科技有限公司 基于相控阵超声和背散射法的拉长晶晶粒尺寸确定方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011252807A (ja) 2010-06-02 2011-12-15 Nsk Ltd 熱処理異常検出方法及び転がり軸受
JP2013253914A (ja) 2012-06-08 2013-12-19 Nuclear Fuel Ind Ltd 材料診断方法
JP2013257146A (ja) 2012-06-09 2013-12-26 Daido Steel Co Ltd 結晶粒異方性判定方法
US20140123761A1 (en) 2012-03-21 2014-05-08 Board Of Regents Of The University Of Nebraska Systems and Methods to Determine and Monitor Changes in Rail Conditions
CN107037131A (zh) 2017-05-04 2017-08-11 中南大学 一种基于极值分布理论的微小缺陷超声检测方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999036769A1 (en) * 1998-01-16 1999-07-22 Tosoh Smd, Inc. Method of ultrasonic on-line texture characterization

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011252807A (ja) 2010-06-02 2011-12-15 Nsk Ltd 熱処理異常検出方法及び転がり軸受
US20140123761A1 (en) 2012-03-21 2014-05-08 Board Of Regents Of The University Of Nebraska Systems and Methods to Determine and Monitor Changes in Rail Conditions
JP2013253914A (ja) 2012-06-08 2013-12-19 Nuclear Fuel Ind Ltd 材料診断方法
JP2013257146A (ja) 2012-06-09 2013-12-26 Daido Steel Co Ltd 結晶粒異方性判定方法
CN107037131A (zh) 2017-05-04 2017-08-11 中南大学 一种基于极值分布理论的微小缺陷超声检测方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020085888A (ja) 2020-06-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7314726B2 (ja) 結晶組織評価方法および結晶組織評価装置
Felice et al. Accurate depth measurement of small surface-breaking cracks using an ultrasonic array post-processing technique
Safizadeh et al. Time-frequency analysis of pulsed eddy current signals
Jeon et al. 2D-wavelet wavenumber filtering for structural damage detection using full steady-state wavefield laser scanning
KR101833467B1 (ko) 초음파를 통해 불균일 재료 내의 결함을 검출하고 특징화하는 방법
Li et al. Acoustic microscopy signal processing method for detecting near-surface defects in metal materials
Qin et al. 3D ultrasonic imaging based on synthetic aperture focusing technique and space-dependent threshold for detecting submillimetre flaws in strongly scattering metallic materials
Xu et al. Automatic X-ray crack inspection for aircraft wing fastener holes
Senck et al. Quantification of surface-near porosity in additively manufactured aluminum brackets using X-ray microcomputed tomography
Felice et al. Depth measurement of small surface-breaking cracks using the half-skip total focusing method
Davis et al. Near-surface defect detection in additively manufactured components using laser induced phased arrays with surface acoustic wave crosstalk suppression
Jin et al. Profile reconstruction of irregular planar defects by mirrored composite-mode total focusing method
JP5742513B2 (ja) 超音波探傷方法および超音波探傷装置
Habibalahi et al. Forward to residual stress measurement by using pulsed eddy current technique
Cherry et al. Eddy current analysis of cracks grown from surface defects and non-metallic particles
JP2010236886A (ja) 金属材料の結晶粒度分布の測定方法
JP7196581B2 (ja) 被検査材の組織検査方法
Khan et al. Automated flaw detection scheme for cast austenitic stainless steel weld specimens using Hilbert-Huang transform of ultrasonic phased array data
RU2498263C1 (ru) Способ обнаружения в металле микротрещин
Graja et al. Determination of the Case Depth by Ultrasonic Backscatter of Case and Induction Hardened Steel With a Soft Hardness Gradient
Zhao et al. Wavelet analysis of poorly-focused ultrasonic signal of pressure tube inspection in nuclear industry
Salazar et al. Studies of the effect of surface roughness in the behaviour of ultrasonic signals in AISI-SAE-4340 steel: spectral and wavelets analysis
Kassis et al. Ultrasound array probe
Dierken et al. Progress in defect quantification in multi-layered structures using ultrasonic inspection
JP2002286702A (ja) 鋼材のマクロ偏析評価方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220714

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230327

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230602

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230613

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230626

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7314726

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150