JP7313270B2 - 高純度トリクロロシランの精製方法 - Google Patents
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Description
本発明はこの三塩化ジシランのホウ素吸着性を利用してトリクロロシラン中のホウ素を極限まで低減するトリクロロシランの精製方法を提供する。
〔1〕粗トリクロロシランを含む原料液の蒸留精製において、該原料液に三塩化ジシランを混合して蒸留することによって、該原料液に含まれるホウ素を三塩化ジシランに吸着させて蒸留残にして除去し、高純度トリクロロシランを蒸留回収することを特徴とするトリクロロシランの精製方法。
〔2〕上記原料液に含まれるホウ素量に対して、三塩化ジシラン量が10質量倍~100質量倍である上記[1]に記載するトリクロロシランの精製方法。
〔3〕高純度シリコン製造工程において副生する高沸点クロロシランに含まれる三塩化ジシランをホウ素の吸着材として用い、高沸点クロロシラン中の三塩化ジシラン量が、上記原料液に含まれるホウ素量に対して、10質量倍~100質量倍になるように、高沸点クロロシランの導入量を定め、該高沸点クロロシラン中の三塩化ジシランに上記原料液のホウ素を吸着させる上記[1]または上記[2]に記載するトリクロロシランの精製方法。
〔4〕六塩化二ケイ素の含有量に対して、三塩化ジシランの含有量が1/100質量倍以上である上記高沸点クロロシランを用いる上記[3]に記載するトリクロロシランの精製方法。
本発明の精製方法は、粗トリクロロシランを含む原料液(以下、粗TCS原料液と云う)の蒸留精製において、該粗TCS原料液に三塩化ジシランを混合して蒸留することによって、該粗TCS原料液に含まれるホウ素を三塩化ジシランに吸着させて蒸留残にして除去し、高純度トリクロロシランを蒸留回収することを特徴とするトリクロロシランの精製方法である。
Si+3HCl→SiHCl3+H2 ・・・[1]
TCSを原料とする高純度シリコンの製造プロセス例を図1に示す。図示するプロセスにおいて、TCSは金属シリコンの塩化反応によって製造される。微粒子ないし粉状の金属シリコンが塩化水素ガスと共に塩化反応炉10に導入され、300℃以上に加熱され、上記式[1]に示すように反応して粗TCSが製造される。この反応では、四塩化ケイ素 (SiCl4)、六塩化二ケイ素 (Si2Cl6)、ジクロロシラン (H2SiCl2)などが副生し、さらに、生成した粗TCSガスには原料の金属シリコンに由来するホウ素が三塩化ホウ素(BCl3)として含まれている。
ホウ素濃度30ppmの金属シリコン粉と、塩化水素ガスを流動層の塩化反応炉に導入して反応させ、TCS濃度約90質量%、ホウ素濃度約2ppmwの粗TCS原料液を得た。
この粗TCS原料液に、STC濃度50質量%(残りはSTCより高沸成分)に調整した高沸点クロロシラン液(三塩化ジシラン濃度0.5質量%、六塩化二ケイ素濃度18質量%)を、上記粗TCS原料液に対して1/100の液量比で混合し(ホウ素濃度に対する三塩化ジシランの濃度比25)、約80℃で単蒸留し、回収した液を約50℃で精密蒸留し、高純度TCSを得た。この高純度TCSを用いて製造した高純度シリコン中のホウ素濃度および単蒸留における高沸点不純物量を測定した。この高沸点不純物量は同一温度・圧力条件で蒸留塔を運転した際のカット液量である。この結果を表1に示した。なお、シリコン中のホウ素濃度はフォトルミネッセンス法によって測定した。粗TCS原料液中のホウ素濃度はICP発光分析によって測定した。
粗TCS原料液に対する高沸点クロロシラン液の液量比を、1/30~1/200に変えた以外は実施例1と同様にして高純度TCSを製造し、この高純度TCSを用いて製造したシリコン中のホウ素濃度および単蒸留における高沸点不純物量を測定した。この結果を表1に示した。
粗TCS原料液に対する高沸点クロロシラン液の液量比を、1/500、1/20に変えた以外は実施例1と同様にして高純度TCSを製造し、この高純度TCSを用いて製造したシリコン中のホウ素濃度および単蒸留における高沸点不純物量を測定した。この結果を表1に示した。
一方、比較例1では、粗TCS原料液のホウ素濃度に対する三塩化ジシラン濃度が低いので、シリコン中のホウ素濃度が高い。また、比較例2では、ホウ素濃度に対する三塩化ジシラン濃度が高すぎるので、六塩化二ケイ素の混入量も多くなり、シリコン中のホウ素濃度は3ppta未満に低減されるが、高沸点不純物量が実施例1の2倍以上に増加した。
このように、表1に示す結果から、ホウ素の高い除去効果を得るには、ホウ素濃度に対する三塩化ジシラン濃度は10質量倍~100質量倍の範囲が好ましい。
多段蒸留塔(図1の18)の中段から回収した、STC濃度約92%の高沸点クロロシラン液(三塩化ジシラン濃度約0.1質量%および六塩化二ケイ素濃度3質量%)を用い、実施例1と同様の粗TCS原料液(TCS濃度約90質量%、ホウ素濃度約2ppmw)に、液量比(高沸点液/粗TCS液)1/40、1/20の割合で混合し、実施例1と同様にして高純度シリコンを製造した。この高純度シリコン中のホウ素濃度および不純物濃度を測定した。この結果を表2に示した。
表2に示すように、六塩化二ケイ素濃度が実施例1よりも低い高沸点クロロシラン液を用いることによって、粗TCS原料液に含まれるホウ素量に対する三塩化ジシラン量の比が実施例1、2と同様に12.5、25であるとき、高純度シリコン中のホウ素濃度は3ppta未満に低減されると共に、高沸点不純物量が実施例1の0.6~0.8に低減された。
STC濃度50質量%に調整した高沸点クロロシラン液(三塩化ジシランの濃度0.1質量%、六塩化二ケイ素濃度は19質量%)を用い、実施例1と同様の高沸点液/粗TCS比(1/100)で粗TCS原料液に混合し、実施例1と同様の蒸留条件で粗TCS原料液の蒸留精製を行った。この結果を表3に示す。
この比較例3では、高沸点クロロシラン液に含まれる六塩化二ケイ素量は実施例1と大差ない(約18質量%~約19質量%)ので、蒸留精製工程に導入される六塩化二ケイ素量は実施例1と同水準である(高沸点不純物量1)。
ところが、シリコン中のホウ素濃度は格段に高い(30ppta)。これは、高沸点クロロシラン液に含まれる三塩化ジシランの濃度が低い(TC2S/B比5)ためであり、このことから、ホウ素の吸着は専ら三塩化ジシランに依存しており、六塩化二ケイ素はホウ素吸着効果が殆ど無いか、あるいは極めて小さいことを示している。
Claims (4)
- 粗トリクロロシランを含む原料液の蒸留精製において、該原料液に三塩化ジシランを混合して蒸留することによって、該原料液に含まれるホウ素を三塩化ジシランに吸着させて蒸留残にして除去し、高純度トリクロロシランを蒸留回収することを特徴とするトリクロロシランの精製方法。
- 上記原料液に含まれるホウ素量に対して、三塩化ジシラン量が10質量倍~100質量倍である請求項1に記載するトリクロロシランの精製方法。
- 高純度シリコン製造工程において副生する高沸点クロロシランに含まれる三塩化ジシランをホウ素の吸着材として用い、高沸点クロロシラン中の三塩化ジシラン量が、上記原料液に含まれるホウ素量に対して、10質量倍~100質量倍になるように、高沸点クロロシランの導入量を定め、該高沸点クロロシラン中の三塩化ジシランに上記原料液のホウ素を吸着させる請求項1または請求項2に記載するトリクロロシランの精製方法。
- 六塩化二ケイ素の含有量に対して、三塩化ジシランの含有量が1/100質量倍以上である上記高沸点クロロシランを用いる請求項3に記載するトリクロロシランの精製方法。
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