JP7313033B2 - Ikzf1遺伝子変異を検出するための核酸プローブセット及び当該プローブセットを用いたikzf1遺伝子変異の検出方法 - Google Patents

Ikzf1遺伝子変異を検出するための核酸プローブセット及び当該プローブセットを用いたikzf1遺伝子変異の検出方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 平成30年5月18日に、下記のウェブサイト(https://learningcenter.ehaweb.org/eha/2018/stockholm/216159/junichi.hashiguchi.development.or.a.fluorescence.in-situ.hybridization.probe.html?f=listing%3D0%2Abrowseby%3D8%2Asortby%3D1%2Asearch%3Dhashiguchi)で公開された23rd European Hematology Association Congress(第23回欧州血液学会)、発表番号PB1595にて、急性リンパ性白血病患者におけるIKZF1欠失変異検出のためのFISHプローブの開発について公開
特許法第30条第2項適用 平成30年6月25日に、下記のウェブサイト(https://jmd.amjpathol.org/article/S1525-1578(17)30412-9/abstract、https://jmd.amjpathol.org/article/S1525-1578(17)30412-9/fulltext、https://jmd.amjpathol.org/action/showFullTextImages?pii=S1525-1578%2817%2930412-9、https://jmd.amjpathol.org/article/S1525-1578(17)30412-9/addons、及びhttps://jmd.amjpathol.org/article/S1525-1578(17)30412-9/pdf)で公開された学術雑誌the Journal of Molecular Diagnostics.2018 July;Vol.20,No.4,p.446-454(出版元Elsevier Inc.)にて、急性リンパ性白血病患者におけるIKZF1欠失変異検出のためのFISHプローブの開発について公開
特許法第30条第2項適用 平成30年9月28日に、下記のウェブサイト(https://confit.atlas.jp/guide/event/jshem80/subject/PS1-7-2/advanced)で公開された第80回日本血液学会学術集会抄録、発表番号PS1-7-2にて、成人急性リンパ性白血病におけるIKZF1欠失およびCRLF2発現の解析について公開
特許法第30条第2項適用 平成30年10月12日に大阪国際会議場において開催された第80回日本血液学会学術集会、発表番号PS1-7-2にて、成人急性リンパ性白血病におけるIKZF1欠失およびCRLF2発現の解析について公開
本発明は、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するための核酸プローブセット、及び当該核酸プローブセットを用いたIKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座を検出する方法に関する。
白血病は、造血幹細胞の悪性化(がん化)により生じる血液のがんである。白血病は、リンパ球に分化するリンパ球系前駆細胞ががん化するリンパ性白血病と、骨髄球細胞に分化する骨髄球系前駆細胞ががん化する骨髄性白血病とに大別され、さらにそれぞれが、成熟能を持たない幼若細胞が異常増殖する急性白血病と分化能を有する細胞が異常増殖する慢性白血病とに分けられる。
白血病と遺伝子又は染色体の変異(遺伝子変異)との関係が多数報告されている。例えば、慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia、CML)についてはフィラデルフィア(Ph)染色体と呼ばれる9番染色体と22番染色体の転座が知られている。また、急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia、ALL)についてもPh染色体が認められるほか染色体数が増加する高2倍体や第12染色体と第21染色体の転座等が知られている。
また、染色体検査では検出されないが、急性リンパ性白血病においてはIKZF1遺伝子の異常も知られている。例えば、小児のB細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の約15~20%(非特許文献1及び2)及び小児のBCR-ABL陽性ALLの75%超(非特許文献2及び3)においてIKZF1遺伝子の異常が確認されている。また成人のB-ALLにおけるIKZF1遺伝子変異の発生率は50%(非特許文献4及び5)、成人のBCR-ABL陽性ALLでの同発生率は約65%(非特許文献6及び7)であるとの報告がある。さらに、Ph染色体を有さないがPh-ALLと同様の遺伝子発現プロファイルを示す予後不良な一群であるPh-like ALLの70~80%において、IKZF1遺伝子の異常が報告されている(非特許文献8)。
IKZF1遺伝子は、複数のZnフィンガー構造を有するIkarosとよばれる転写因子をコードする、第7染色体に存在する遺伝子である。急性リンパ性白血病におけるIKZF1遺伝子の異常のほとんど(94%)は欠失変異であり、同遺伝子のエクソン2からエクソン8が4つのパターンで欠失することで、Ikarosの機能喪失がもたらされる。IKZF1遺伝子のエクソン欠失を、エクソンを単位としてエクソン2からエクソン8までの欠失をΔ2-8と表すと、他の欠失パターンは、Δ2-7、Δ4-7及びΔ4-8と表される。
IKZF1遺伝子のエクソン欠失は、白血病、特にB-ALLの予後不良及び高い再発リスクとの相関があり、その欠失パターン毎に予後不良の程度が異なることが報告されている(非特許文献9)。したがって、IKZF1遺伝子のエクソン欠失の情報は、それらに基づいた白血病の診断、予後不良又は再発リスクの予測に関して有益であり得る。
IKZF1遺伝子のエクソン欠失は、次世代シーケンシング、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション、多重ライゲーション依存性プローブ増幅又はマルチプレックスPCR等によって検出することが、理論上可能である。しかし、これらの方法の実施には高額な装置や長い解析時間等が求められるため、臨床診療への適用には適していない。
C. G. Mullighan et al., Nature 2008, 453, pp. 110-114. A. Caye, et al., Haematologica 2013, 98, pp. 597-601. C. G. Mullighan et al., New England J. Med. 2009, 360, pp. 470-480. A. Dupuis, et al., Leukemia 2013, 27, pp. 503-507. J. Q. Mi, et al., Leukemia 2012, 26, pp. 1507-1516. I. Iacobucci, et al., Blood 2009, 114, pp. 2159-2167. G. Martinelli, et al., J. Clin. Oncol. 2009, 27, pp. 5202-5207. K.G. Roberts, et al., New England J. Med. 2014. 371, pp. 1005-1015. J. M. Boer, et al., Leukemia 2016, 30, pp. 32-38
本発明は、迅速、簡便にIKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出することができる核酸プローブ、及びそれを用いたIKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、IKZF1遺伝子の特定の領域にハイブリダイズする核酸プローブと、当該領域の近傍に存在する領域にハイブリダイズする核酸プローブとを組み合わせて使用することで上記課題を解決し得ることを見いだし、以下の発明を完成させた。
(1)ヒト第7染色体の50,345,203~50,395,925番目までの領域内に存在する長さ30kbp以上の領域である第1のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第1の核酸プローブと、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側の領域又は50,416,749番目の塩基の3'下流側の領域である第2のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第2の核酸プローブとからなる、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するための核酸プローブセット。
(2)第1のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,345,365~50,394,617番目の領域である、(1)に記載の核酸プローブセット。
(3)第1のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,346,304~50,394,617番目の領域である、(1)に記載の核酸プローブセット。
(4)第1のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,364,601~50,394,617番目の領域である、(1)に記載の核酸プローブセット。
(5)第2のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側500kbp以内の領域内に又は50,416,749番目の塩基の3'下流側500kbp以内の領域内に存在する30kbp以上の長さの領域である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の核酸プローブセット。
(6)第2のヒトゲノム領域が、30kbp~200kbpの長さの領域である、(1)~(5)のいずれか一項に記載の核酸プローブセット。
(7)第2のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,436,268~50,606,123番目の領域である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の核酸プローブセット。
(8)第2のヒトゲノム領域が、ヒト第7染色体の50,417,095~50,447,237番目の領域である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の核酸プローブセット。
(9)第1及び第2の核酸プローブが、互いに異なる波長の蛍光を発する蛍光物質で標識されている、(1)~(8)のいずれか一項に記載の核酸プローブセット。
(10)1)ヒト骨髄又は血液由来の細胞の染色体に対して(9)に記載の核酸プローブセットを用いたハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程、
2)染色体上の第1及び第2の核酸プローブの蛍光を観察する観察工程、並びに
3)第1及び第2の核酸プローブの蛍光が隣接して又は混ざった色として観察されたときはIKZF1遺伝子は正常であると判定し、第1の核酸プローブの蛍光が観察されないときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が欠失していると判定し、第1及び第2の核酸プローブの蛍光が離隔して観察されたときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が転座していると判定する判定工程
を含む、ヒトゲノムにおけるIKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座を検出する方法。
本発明の核酸プローブセットを使用することにより、高額な検査機器を必要とせずにIKZF1遺伝子の欠失又は転座を迅速、簡便かつ安価に検出することができる。
本発明における第1の核酸プローブの作製方法の1態様を模式的に示した図である。 IKZF1欠失ネガティブコントロール(パネルA)及び白血病細胞又は白血病患者由来の検体(パネルB~F)に対して本発明の核酸プローブセット1を用いたin situ hybridizationを行い、蛍光顕微鏡(倍率1000倍)で核酸プローブの蛍光を観察した写真である。 IKZF1欠失ネガティブコントロール(パネルA)及び白血病細胞(パネルB)に対して本発明の核酸プローブセット3を用いたin situ hybridizationを行い、蛍光顕微鏡(倍率1000倍)で核酸プローブの蛍光を観察した写真である。
本発明の第1の態様は、ヒト第7染色体の50,345,203~50,395,925番目までの領域内に存在する長さ30kbp以上の領域である第1のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第1の核酸プローブと、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側の領域又は50,416,749番目の塩基の3'下流側の領域である第2のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第2の核酸プローブとからなる、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するための核酸プローブセットに関する。なお、本明細書において、ゲノム上の遺伝子位置の記載は、ヒトリファレンスゲノムDec.2013(GRCh38/hg38)に基づいて表記される。
本発明において「核酸プローブ」とは、特定のゲノム領域に特異的にハイブリダイズする能力を持つポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド混合物を意味する。また、「特異的にハイブリダイズする」とは、核酸プローブがストリンジェントな条件下で特定の塩基配列(標的配列)に選択的に結合することを意味する。
本発明において「ストリンジェントな条件」とは、核酸プローブがその標的配列に選択的にハイブリダイズするが非標的配列にはより弱くハイブリダイズするか又はハイブリダイズすることができない条件を指す。当業者は、核酸プローブ及び標的配列の塩基配列並びにそれらの長さ、バッファーの塩濃度、溶媒組成、反応温度及び時間等の種々の要素を考慮して、ストリンジェントな条件を適宜設定することができる。高ストリンジェントな条件は、核酸プローブの融解温度(Tm)よりも約5℃低くあるように、非常にストリンジェントな条件は、特定の核酸プローブのTmと等しいように選択することができる。ここでTmは、二本鎖核酸分子の50%が解離して一本鎖核酸となる温度であり、標的配列を有する核酸分子の50%が、標的配列と完全マッチのプローブにハイブリダイズする温度である。
転写因子IkarosをコードするIKZF1遺伝子は、ヒト第7染色体の50,303,453~50,405,101番目に位置する遺伝子であり、以下の8つのエクソンを有する。
Exon 1 range: 50,304,669 - 50,304,922
Exon 2 cds range: 50,319,062 - 50,319,101, range: 50,319,048 - 50,319,101
Exon 3 cds range: 50,327,638 - 50,327,757
Exon 4 cds range: 50,376,533 - 50,376,793
Exon 5 cds range: 50,382,540 - 50,382,707
Exon 6 cds range: 50,387,345 - 50,387,470
Exon 7 cds range: 50,391,729 - 50,391,863
Exon 8 cds range: 50,399,918 - 50,400,627, range: 50,399,918 - 50,405,101
(cds:コーディング配列)
エクソン2には開始コドンが、エクソン4~6にはDNAとの結合に関与する4つのZnフィンガーが、エクソン8には他のIkarosファミリーメンバーとのダイマー形成に関与する2つのZnフィンガーがそれぞれコードされている。エクソン2又はエクソン8の欠失はIKZF1の機能喪失をもたらし、またエクソン4~6にコードされるZnフィンガーのうちの2つ以上の欠失は、IKZF1のドミナントネガティブをもたらすことが知られている。
前述のように、IKZF1遺伝子のエクソン欠失のパターンは、エクソンを単位として表せばΔ2-8、Δ2-7、Δ4-7及びΔ4-8の4種類あり、それらに共通する欠失領域はΔ4-7で生じる欠失領域である。この領域は、ヒト第7染色体の50,345,203~50,395,925番目までの約50kbpのゲノム領域に相当する。
第1の核酸プローブ
本発明における第1の核酸プローブは、ヒト第7染色体の50,345,203~50,395,925番目までの領域内に存在する長さ30kbp以上の領域であるヒトゲノム領域(第1のヒトゲノム領域)に特異的にハイブリダイズする核酸プローブである。
第1のヒトゲノム領域は、例えばヒト第7染色体の50,345,365~50,394,617番目までの約49kbpの領域、50,346,304~50,394,617番目までの約48kbpの領域、又は50,364,601~50,394,617番目までの約30kbpの領域であり、好ましくはヒト第7染色体の50,345,365~50,394,617番目までの約49kbpの領域、又は50,346,304~50,394,617番目までの約48kbpの領域である。
第1の核酸プローブは、第1のヒトゲノム領域又はその一部に特異的にハイブリダイズすることができる核酸であればよく、典型的には第1のヒトゲノム領域又はその一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなる。
第1の核酸プローブの例は、第1のヒトゲノム領域全体に特異的にハイブリダイズすることができる、第1のヒトゲノム領域と同じ長さの1種類の長鎖DNAである。そのような長鎖DNAは、例えば第1のヒトゲノム領域に相当するゲノムDNAの断片が組み込まれたコスミド(cosmid)クローン又はフォスミド(fosmid)クローンを標準的なプロトコルに従って培養し、DNAを抽出することで調製することができる。
第1の核酸プローブの好ましい例は、第1のヒトゲノム領域の一部に特異的にハイブリダイズすることができる複数種DNAの混合物であって、このDNA混合物全体で第1のヒトゲノム領域全体をカバーすることができるものである。そのような複数種DNAの混合物は、例えば図1に示されるように、IKZF1遺伝子のエクソン欠失変異に共通する欠失領域(図中の一組の三角で囲まれた領域)を含む適当なDNA、好ましくはヒトIKZF1遺伝子全体を含むゲノムDNAを鋳型とし、第1のヒトゲノム領域内の任意の配列からなるDNA断片を増幅することができる複数のプライマーセットを用いてPCRを行い、得られた複数の増幅DNAを混合することにより調製することができる。
また、複数種DNAの混合物は、上記長鎖DNA及び/又は上記複数の増幅DNAを超音波処理、ニックトランスレーションその他の方法で断片化することで得られるDNAの混合物であってもよい。
核酸プローブとしてのDNA混合物に含まれるDNAの長さ(本明細書では便宜上核酸の長さを塩基数(bp又はkbp)で表す)は、50bp~20kbpであり得て、例えば50bp~10kbp、好ましくは100bp~5kbp、より好ましくは150bp~2.5kbp、さらにより好ましくは200bp~1kbpである。また、混合物に含まれるDNAの塩基配列は互いに完全に異なっていても、又は一部が重複していてもよい。
第2の核酸プローブ
上記第1の核酸プローブと共にセットを構成する第2の核酸プローブは、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側の領域又は50,416,749番目の塩基の3'下流側の領域であるヒトゲノム領域(第2のヒトゲノム領域)に特異的にハイブリダイズする核酸プローブである。
第2のゲノム領域は、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側の領域又は50,416,749番目の塩基の3'下流側の領域であって、好ましくはその長さは30kbp以上、例えば30kbp~200kbpである。第2のゲノム領域のより好ましい例は、ヒト第7染色体の50,307,800番目の塩基の5'上流側500kbp以内の領域内に又は50,416,749番目の塩基の3'下流側500kbp以内の領域内に存在する、30kbp以上の長さの、例えば30kbp~200kbpの長さの領域であり、特に好ましい例は、ヒト第7染色体の50,417,095~50,447,237番目までの約30kbpの領域、又は50,436,268~50,606,123番目までの約170kbpの領域である。
第2の核酸プローブは、第2のヒトゲノム領域又はその一部に特異的にハイブリダイズすることができる核酸であればよく、典型的には第2のヒトゲノム領域又はその一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなる。
第2の核酸プローブの例は、第2のヒトゲノム領域全体に特異的にハイブリダイズすることができる1種類の長鎖DNAである。長鎖DNAの長さは、好ましくは20kbp~200kbp、より好ましくは30kbp~170kbpであり、また50kbp~100kbpであってもよい。そのような長鎖DNAは、例えば第2のゲノム領域に相当するゲノムDNAの断片が組み込まれたコスミドクローン又はフォスミドクローンを標準的なプロトコルに従って培養し、DNAを抽出することで調製することができる。例えば、コスミドクローンの一例であるBACクローンRP11-248J17は、ヒト第7染色体の50,436,268~50,606,123番目までの約170kbpの領域に相当するDNAを含んでおり、当該クローンを標準的なプロトコルに従って培養し、上記約170kbpのDNAを抽出することで、第2の核酸プローブを調製することができる。
第2の核酸プローブの好ましい例は、第2のヒトゲノム領域の一部に特異的にハイブリダイズすることができる複数種DNAの混合物であって、このDNA混合物全体で第2のヒトゲノム領域全体をカバーすることができるものである。そのような複数種DNAの混合物は、例えば、IKZF1遺伝子のエクソン1の5'上流側500kbp以内の領域又はエクソン8の3'下流側500kbp以内の領域を含む適当なDNA、好ましくはヒトIKZF1遺伝子全体を含むゲノムDNAを鋳型とし、第2のヒトゲノム領域内の任意の配列からなるDNA断片を増幅することができる複数のプライマーセットを用いてPCRを行い、得られた複数の増幅DNAを混合することにより調製することができる。増幅DNAの塩基配列は互いに完全に異なっていても、又は一部が重複していてもよい。
また、複数種DNAの混合物は、上記長鎖DNA及び/又は上記複数の増幅DNAを超音波処理、ニックトランスレーションにおけるDNase処理その他の方法で断片化することで得られるDNAの混合物であってもよい。
核酸プローブとしてのDNA混合物に含まれるDNAの長さは、50bp~20kbpであり得て、例えば50bp~10kbp、好ましくは100bp~5kbp、より好ましくは150bp~2.5kbp、さらにより好ましくは200bp~1kbpである。また、混合物に含まれるDNAの塩基配列は互いに完全に異なっていても、又は一部が重複していてもよい。
第1又は第2の核酸プローブが第1のヒトゲノム領域若しくは第2のヒトゲノム領域又はそれらの一部と相補的な塩基配列を有する場合、各核酸プローブは、特異的なハイブリダイゼーションが達成される限り、その塩基配列において1又はそれ以上、例えば1~20塩基の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。また、第1又は第2の核酸プローブが第1のヒトゲノム領域又は第2のヒトゲノム領域の末端近傍にハイブリダイズする場合、各核酸プローブは、本発明におけるIKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するという目的において偽陽性を生じさせるものでない限り、その末端に前述の第1又は第2のゲノム領域の外側の塩基配列に相補的な塩基配列が付加されていてもよい。具体的には、例えば、第1のゲノム領域の5'末端近傍にハイブリダイズする第1の核酸プローブの末端に1又はそれ以上の塩基が付加され、その結果、第1の核酸プローブが第1のゲノム領域の5'末端のみならず、その5'上流に連続して存在する1又はそれ以上の塩基と相補的であることは、その相補性によってIKZF1遺伝子のエクソンの存在について偽陽性をもたらさない限り、本発明において許容される。
核酸プローブの標識
本発明の第1及び第2の核酸プローブは、当該技術分野において既知の標識物質を用いて、特に互いに区別して検出可能となるように標識されることが好ましい。標識は、核酸プローブと標識物質とが直接的に結合することで、又は標識物質がリンカー等を介して核酸プローブに間接的に結合することでそれぞれ行われてもよい。また標識されたヌクレオチドモノマーを用いて核酸プローブを合成することで、核酸プローブ全体を標識してもよい。
本発明において、標識物質は、標的配列への核酸プローブのハイブリダイズを妨げるものでない限り、核酸に対して利用可能な任意のものを適宜選択して用いることができる。そのような標識物質の例としては、蛍光、放射能、酵素(例えばペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、燐光、化学発光、着色などを利用した標識物質を挙げることができ、それ自体励起されると蛍光を発する蛍光物質などの各種色素であってもよいし、さらに酵素反応や抗原抗体反応により第2成分と組み合わせて各種シグナルを発する物質であってもよい。
本発明において好ましい標識物質は、視覚的に検出可能な発光又は発色を提示する発光物質又は発色物質であり、緑色~赤色(概ね400nm~700nm)として視認される蛍光波長を有する蛍光物質が特に好ましい。蛍光物質の例としては、DyLight 488(518nm)、Alexa Fluor 488(519nm)、5-FAM(520nm)、Fluorescein(521nm)、FITC(522nm)、Spectrum Green(538nm)、Alexa Fluor 555(565nm)、Cy3(570nm)、Rhodamine(570nm)、Alexa Fluor 546(573nm)、Spectrum Orange(588nm),Texas Red(615nm)、Alexa Fluor 594(619nm)、Cy5(667nm)等を挙げることができるが、これらには限定されない。
標識物質による核酸プローブの標識方法は、当該技術分野において周知である任意の方法によって行うことができる。標識物質は、核酸プローブ中の特定のヌクレオチドに共有結合で結合されてもよく、また標識されたヌクレオチドモノマーを用いたニックトランスレーション、ランダムプライミング又はPCR標識化といった技術を用いて核酸プローブ中に組み入れてもよい。また標識物質は、アミノ基転移された核酸プローブのデオキシシチジンヌクレオチドに対してリンカーを介して共有結合されてもよい。これらの手法はいずれも公知であり、また当該標識のためのキットも多数市販され、標識物質と共に、当業者に入手可能である。
核酸プローブの検出は、標識物質の種類によって採用される標準的な検出方法によって行われる。蛍光物質による標識の場合には、蛍光顕微鏡その他の蛍光検出装置を用いた方法により核酸プローブを検出することができる。蛍光顕微鏡を用いた検出では、蛍光物質の種類に応じた励起光を照射し、適当なフィルターを使用して、核酸プローブの蛍光を検出することができる。
本発明の第1及び第2の核酸プローブは、上記の任意の標識物質によって標識されて使用されることが好ましいが、互いに異なる標識物質によって、特に視覚的に互いに容易に識別可能な蛍光を発する蛍光物質によって別々に標識されることが好ましい。かかる蛍光物質の組み合わせの例は、Spectrum Green及びCy3である。組み合わせに含まれる蛍光物質のうち、より蛍光強度の強い蛍光物質を用いて第1の核酸プローブを標識することが好ましく、上述の例では、第1の核酸プローブをCy3で、第2の核酸プローブをSpectrum Greenで標識することが好ましい。
核酸プローブセット
第1の核酸プローブと第2の核酸プローブは、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するための核酸プローブセットとして使用される。用語「セット」は、核酸プローブがIKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するために組み合わせて使用されるものであることを意味し、両核酸プローブが1つにパッケージされている態様には必ずしも限定されない。両プローブは、適当な容器に別々に収納され、互いに独立して取り扱われてもよく、それら容器がパッケージングされて取り扱われてもよく、又は両核酸プローブは混合物の状態で取り扱われてもよい。また、核酸プローブセットは、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出する方法に用いることができる緩衝液その他の試薬、試薬等を保存するための容器、スライドガラス等その他の器具等を含んでいてもよい。
IKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座の検出方法
本発明の別の態様は、
1)ヒト骨髄又は血液由来の細胞の染色体に対して蛍光物質で標識されている上述の核酸プローブセットを用いたハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程、
2)染色体上の第1及び第2の核酸プローブの蛍光を観察する観察工程、並びに
3)第1及び第2の核酸プローブの蛍光が隣接して又は混ざった色として観察されたときはIKZF1遺伝子は正常であると判定し、第1の核酸プローブの蛍光が観察されないときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が欠失していると判定し、第1及び第2の核酸プローブの蛍光が離隔して観察されたときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が転座していると判定する判定工程
を含む、ヒトゲノムにおけるIKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座を検出する方法に関する。
本態様の発明は、第1の態様において説明した蛍光物質で標識された核酸プローブセットを用い、対象から採取された細胞の染色体に対してハイブリダイゼーションを行い、核酸プローブに由来する蛍光を観察することでヒトゲノムにおけるIKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座を検出する方法である。
本態様の発明は、ヒト、特に白血病患者、より詳細には急性リンパ性白血病(ALL)患者から採取された骨髄又は血液由来の細胞の染色体に対して蛍光標識された核酸プローブセットを用いてハイブリダイゼーションを行う、いわゆるFISH(Fluorescent In situ Hybridization)法を採用する。FISH法は組織中の原位置(in situ)における標的配列を含む核酸の存在を、核酸ハイブリダイゼーション及び蛍光観察により検出する方法であり、その原理及び一般的な実験プロトコルは当業者に広く知られている。本発明においては、原位置の核酸は染色体すなわちDNAであり、核酸プローブはDNA、RNA又はそれらのハイブリッドであり得るが、好ましくはDNAである。
本態様の発明において、対象から採取されたヒト骨髄又は血液由来の細胞の染色体をFISH法における標的配列を含む核酸として利用することができるように調製することは、一般的な実験プロトコルに従って行うことができ、特別な条件又は方法は必要とはされない。また染色体は、核酸プローブの蛍光観察及び核酸プローブが染色体にハイブリダイズしていることの確認を容易にするために、核酸プローブの標識に用いた蛍光物質の蛍光色と視認により識別することができる標識物質、例えば核酸プローブの標識に用いた蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する蛍光色素、典型例としてはDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)等で染色しておくことが好ましい。
本態様の発明におけるハイブリダイゼーション工程は、ヒト骨髄又は血液由来の細胞の染色体に対して、蛍光物質で標識されている第1の態様の核酸プローブセットを用いたハイブリダイゼーションを行う工程である。ここで、核酸プローブセット並びにこれを構成する第1及び第2の核酸プローブ、並びにこれらの標識の説明は、上で述べた通りである。核酸プローブのハイブリダイゼーションは、第1の態様において説明したストリンジェントな条件で行われることが好ましい。
本態様の発明における観察工程は、染色体上の第1及び第2の核酸プローブの蛍光を観察する工程である。この工程は、核酸プローブ又は染色体を標識した蛍光物質の種類に応じた励起光をハイブリダイゼーション後の染色体に照射し、発せられた蛍光を観察することにより行われる。観察は、適当なフィルターを使用した顕微鏡下で行うことが好ましい。
判定工程は、IKZF1遺伝子におけるエクソン4からエクソン7までの欠失及び/又は転座の有無を判定する工程である。具体的には、観察工程において第1及び第2の核酸プローブの蛍光が隣接して又はそれらの混色すなわちそれらの発色が混ざった色が観察されたときは、第1及び第2の核酸プローブは第7染色体上において隣接又は近接した位置にハイブリダイズしている、したがってIKZF1遺伝子のエクソン4からエクソン7までは当初の位置で保持されており、同遺伝子は正常であると判定することができる。一方、第2の核酸プローブの蛍光が観察されるが第1の核酸プローブの蛍光が観察されないときは、IKZF1遺伝子のエクソン4からエクソン7までの領域がゲノム上に存在しない、したがってIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が欠失していると判定することができる。さらに、第1及び第2の核酸プローブの蛍光がそれぞれ離隔して観察されたときは、IKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が第7染色体の当初の位置とは異なる位置に存在する、したがって同領域は転座していると判定することができる。
なお、上記は対立遺伝子の一方についての説明であり、実際には、例えば一方の対立遺伝子は正常でもう一方においてエクソン欠失が存在する、両方の対立遺伝子でエクソン欠失が生じている又は両方の対立遺伝子とも正常である等の状態が観察される。
IKZF1遺伝子のエクソン欠失が検出された対象については、さらにエクソン欠失のパターンを塩基配列解析その他の方法によって確認することで、その対象に関するIKZF1遺伝子変異のさらに詳細な情報を得ることができる。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:核酸プローブセット1の調製
1)第1の核酸プローブの作製
IKZF1遺伝子の全長を含むヒトゲノムDNAを鋳型として、以下の5組のプライマーセット及びLongAmp Taq DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を用いたPCRを行い、長さがそれぞれ9kbp~10kbpである5種類の増幅産物を得た。プライマーセット1はヒト第7染色体の50,345,365~50,354,571番目までの領域を、プライマーセット2はヒト第7染色体の50,354,550~50,364,592番目までの領域を、プライマーセット3はヒト第7染色体の50,364,601~50,374,563番目までの領域を、プライマーセット4はヒト第7染色体の50,374,695~50,384,651番目までの領域を、プライマーセット5はヒト第7染色体の50,384,713~50,394,617番目までの領域を増幅するためのプライマーセットである。
プライマーセット1
IKZF1ΔF00:5'-GAGATCATGGCAAATCAGAGG-3'(forward) 配列番号1
IKZF1ΔR00:5'-CGTACAGTACAAAGACTGCTGC-3'(reverse) 配列番号2
プライマーセット2
IKZF1ΔF0 :5'-GCAGCAGTCTTTGTACTGTACG-3'(forward) 配列番号3
IKZF1ΔR0 :5'-CCTCTTGCTTGTCATAAGAAGC-3'(reverse) 配列番号4
プライマーセット3
IKZF1ΔF1 :5'-AGAGGCAGGACTGTCTTCAG-3'(forward) 配列番号5
IKZF1ΔR1 :5'-CCTTCACAAGGACTCCATAAGG-3'(reverse) 配列番号6
プライマーセット4
IKZF1ΔF2 :5'-CTTGTCTGTCAGTGTTAGGCTG-3'(forward) 配列番号7
IKZF1ΔR2 :5'-GTACCACCTTTGTCTCCAGG-3'(reverse) 配列番号8
プライマーセット5
IKZF1ΔF3 :5'-CATGCTAACCAGTGGTCTAGG-3'(forward) 配列番号9
IKZF1ΔR3 :5'-GAGCCTCAGAATAGCTCTGG-3'(reverse) 配列番号10
増幅産物をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製した後、Cy3-dUTP(Chromoscience )の存在下でのニックトランスレーション(Nick translation kit, Chromoscience)によって、増幅産物の断片化及びCy3での蛍光標識を行った。ニックトランスレーション後のCy3標識DNAフラグメントの混合物は、長さが概ね200bp~1kbpであった。この混合物中のDNAフラグメントは、ヒト第7染色体の50,345,365~50,394,617番目までの約49 kbpの領域にハイブリダイズすることができるプローブ(第1の核酸プローブ)として利用することができる。
2)第2の核酸プローブの作製
BACPACリソースセンター(https://bacpacresources.org)から入手したBACクローン:RP11-248J17(ヒト第7染色体の50,436,268~50,606,123番目までの領域を含む。)を標準的なプロトコルに従って培養し、PhasePrep BAC DNAキット(Sigma-Aldrich)を用いてBAC-DNAを抽出した。Green-dUTP(Abbot Molecular)の存在下でのニックトランスレーションによってBAC-DNAの断片化及びGreen-dUTPでの蛍光標識を行った。ニックトランスレーション後のSpectrum Green標識DNAフラグメントの混合物は、長さが概ね200bp~1kbpであった。この混合物中のDNAフラグメントは、第7染色体の50,436,268~50,606,123番目までの約170kbpの領域にハイブリダイズすることができ、第2の核酸プローブとして利用することができる。等量の上記1)の第1の核酸プローブ及び第2の核酸プローブを混合した後、さらに超音波処理されたサケ精子DNA(Stratagene)及びcot-1 DNA(Invitrogen)と混合し、核酸プローブセット1とした。
実施例2:核酸プローブセット2の調製
BACPAC Resources Centerから入手したFosmidクローン:G248P800745C8(ヒト第7染色体の50,346,304~50,387,146番目までの40,842bpの領域を含む。)を標準的なプロトコルに従って培養し、PhasePrep BAC DNA Kit(Sigma-Aldrich)を用いてfosmid-DNAを抽出した。
さらに、IKZF1遺伝子の全長を含むヒトゲノムDNAを鋳型として、実施例1の1)のプライマーセット3(IKZF1ΔF3及びIKZF1ΔR3)及びLongAmp Taq DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を用いたPCRを行い、長さ9,979bpの増幅産物を得て、これをQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製した。
fosmid-DNA及び増幅DNAに対して、Cy3-dUTP(Chromoscience)の存在下でのニックトランスレーション(Nick translation kit, Chromoscience)によって、増幅産物の断片化及びCy3での蛍光標識を行った。ニックトランスレーション後のCy3標識DNAフラグメントの混合物は、長さが概ね200bp~1kbpであった。この混合物中のDNAフラグメントは、ヒト第7染色体の50,346,304~50,394,617番目までの約48kbpの領域にハイブリダイズすることができ、第1の核酸プローブとして利用することができる。等量の第1の核酸プローブ及び実施例1の2)で作製された第2の核酸プローブを混合した後、さらに超音波処理されたサケ精子DNA(Stratagene)及びcot-1 DNA(Invitrogen)と混合し、核酸プローブセット2とした。
実施例3:核酸プローブセット3の調製
1)第1の核酸プローブ
IKZF1遺伝子の全長を含むヒトゲノムDNAを鋳型として、実施例1の1)のプライマーセット3~5(IKZFΔF1+IKZFΔR1、IKZFΔF2+IKZFΔR2、IKZF1ΔF3+IKZFΔR3)及びLongAmp Taq DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を用いたPCRを行い、3種類の増幅産物を得た。
増幅産物をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製した後、Green-dUTP(Abbot Molecular)の存在下でのニックトランスレーション(Nick translation kit, Chromoscience)によって、増幅産物の断片化及びSpectrum Greenでの蛍光標識を行った。ニックトランスレーション後のSpectrum Green標識DNAフラグメントの混合物は、長さが概ね200bp~1kbpであった。この混合物中のDNAフラグメントは、ヒト第7染色体の50,364,601~50,394,617番目の領域約30kbpにハイブリダイズすることができ、第1の核酸プローブとして利用することができる。
2)第2の核酸プローブ
IKZF1遺伝子の3'末端下流(第7染色体の50,417,095~50,447,237番目までの領域)を含むヒトゲノムDNAを鋳型として、以下の3組のプライマーセット及びLongAmp Taq DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を用いたPCRを行い、3種類の増幅産物を得た。プライマーセット6はヒト第7染色体の50,417,095~50,427,216番目までの領域を、プライマーセット7はヒト第7染色体の50,427,403~50,437,322番目までの領域を、プライマーセット8はヒト第7染色体の50,437,521~50,447,237番目までの領域を増幅するためのプライマーセットである。
プライマーセット6
IKZF3'F1:5'-CCTTGTGAAAGCTGCTATTTCC-3'(forward) 配列番号11
IKZF3'R1:5'-TCCCAAATTCTACTGGCAGG-3'(reverse) 配列番号12
プライマーセット7
IKZF3'F2:5'-GCATGAAAGACAGATAGTGCC-3'(forward) 配列番号13
IKZF3'R2:5'-TGAGTTGTATGAACTGCTTCTGC-3'(reverse) 配列番号14
プライマーセット8
IKZF3'F3:5'-CACAATCAGAAAGGTGGGAG-3'(forward) 配列番号15
IKZF3'R3:5'-TTACTTCGCAATTACATCTGGC-3'(reverse) 配列番号16
増幅産物をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製した後、Cy3-dUTP(Chromoscience)の存在下でのニックトランスレーション(Nick translation kit, Chromoscience)によって、増幅産物の断片化及びCy3での蛍光標識を行った。ニックトランスレーション後のCy3標識DNAフラグメントの混合物は、長さが概ね200bp~1kbpであった。この混合物中のDNAフラグメントは、ヒト第7染色体の50,417,095~50,447,237番目の約30kbpの領域(IKZF1遺伝子の3'下流側)にハイブリダイズすることができ、第2の核酸プローブとして利用することができる。等量の上記1)の第1の核酸プローブ及び第2の核酸プローブを混合した後、さらに超音波処理されたサケ精子DNA(Stratagene)及びcot-1 DNA(Invitrogen)と混合し、核酸プローブセット3とした。
実施例4 核酸プローブセット1を用いたIKZF1遺伝子のエクソン欠失の検出
北海道大学病院の倫理委員会の承認の下で、北海道大学病院で保存されていた白血病22症例のカルノア固定(Carnoy's fixed)骨髄液を被験試料として使用した。22症例(Unique Patient Number 1-22、UPN-1などと表す。)は、19症例の白血病(9例のフィラデルフィア(Ph)染色体陽性急性リンパ性白血病Ph+B-ALL、7例のPh染色体陰性急性リンパ性白血病Ph-B-ALL及び3例の慢性骨髄性白血病CML-LC)、並びにIKZF1欠失ネガティブコントロールとしての3例の急性骨髄性白血病AMLを含んでいた。また、カットオフを確立するためのネガティブコントロールとして、10例の正常末梢血試料を用意した。
Ph陽性B細胞性急性リンパ性白血病細胞(PALL2)及びPh陽性急性混合型白血病細胞(MY)はJCRB細胞バンクから購入した。NALM-6細胞(B-ALL)、BALL-1細胞(B-ALL)及びP30/OHK細胞(non-T non-B-ALL)は東北大学加齢医学研究所の医用細胞資源センター・細胞バンクから入手した。全ての細胞は10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI 1640培地で5%CO2中で培養した。染色体分析は標準的な手順を用いて実施した。
スライドガラス上にIKZF1欠失ネガティブコントロール及び被験試料の適度に濃度調整した細胞浮遊液20μl(3000-5000細胞)をそれぞれ滴下して乾燥した後、実施例1の核酸プローブセット1 1μL、インテリバッファー(Vysis) 12μL及び水 2μLを含む試薬を2μL/スライドを添加し、80℃で2分間の変性、次いで37℃で一晩のハイブリダイゼーションを行った。0.4×standard saline citrate(Invitrogen)/0.3% CA -630(Sigma Aldrich)を用いて76℃で40秒間洗浄を行い、次いで2×standard saline citrate(Invitrogen)/0.1% CA -630を用いて76℃で15秒間洗浄した後、10% DAPI II(Vysis)を用いて核染色を行った。
Spectrum Green、Cy3及びDAPI対比染色を可視化するための適切なフィルタセット(Leica Micro-Systems)を装備したオリンパスBX50顕微鏡(オリンパス)及びCyto-vision(Applied Imaging Corp.)を使用して1試料あたり100個の間期の細胞の蛍光画像を倍率1,000倍で撮影した。
蛍光画像の代表例を図2に示す。図中、1個の細胞核内で観察された赤色スポット数をRで、緑色スポット数をGで、赤色と緑色の隣接又は混色スポット数をFで表す。IKZF1欠失ネガティブコントロール(図2、パネルA)では、孤立した赤(第1の核酸プローブ)又は緑(第2の核酸プローブ)はなく、2組の隣接する赤と緑が観察され(0R0G2F)、IKZF1遺伝子の対立遺伝子がいずれも正常であることが確認された。
一方、白血病細胞株及び白血病患者の検体試料(図2、パネルB~F)では、様々なIKZF1遺伝子の異常が確認された。
PALL2(Ph+B-ALL細胞株、図2、パネルB)では隣接する赤と緑及び孤立した緑が観察され、IKZF1遺伝子の対立遺伝子の一方は正常であるが、もう一方ではエクソン欠失が生じていることが確認された。
また、UPN18(CML-LC、図2、パネルC)では隣接する赤と緑が1つだけ観察され、第7染色体の欠失(7 monosomy)が生じていることが確認された。
さらに、UPN22(AML、図2、パネルD)では、隣接する赤と緑又はそれらの混色が4つ観察され、高倍数化が生じていることが確認された。
UPN7(Ph+B-ALL、図2、パネルE)では2つの孤立した緑が観察され、IKZF1遺伝子の対立遺伝子の両方においてエクソン欠失が生じていることが確認された。
またUPN1(Ph+B-ALL、図2、パネルF)では1組の隣接する赤と緑、孤立した赤及び孤立した緑が観察され、IKZF1遺伝子の一方の対立遺伝子において遺伝子転座が生じていることが確認された。
次いで、10例の正常末梢血試料を同様に分析して、偽陽性シグナルパターンの正常範囲を計算した。分析した500個の核のうち0.4%~1.6%の偽陽性核が観察されたことから、二項分布による片側95%信頼区間の上限を計算して正常カットオフを1.5%に設定した。
5つの白血病細胞株及び22例の臨床サンプルを分析した結果を表1に示す。表中、「IKZF1 intragenic deletion positive, %」は蛍光顕微鏡で観察した100個の細胞のうちIKZF1遺伝子のエクソン欠失が確認された細胞の割合を表し、「IKZF1 intragenic deletion」は既報(C. G. Mullighan et al., New England J. Med. 2009, 360, pp. 470-480.)に従ったマルチプレックスPCRによって同定されたIKZF1遺伝子の欠失パターンを表す。IKZF1欠失は2つのPh+B-ALL細胞株で検出された一方、3つのPh-B-ALL細胞株では検出されなかった。臨床サンプルでは、IKZF1欠失はPh+B-ALLで頻繁に見られ(7/9、77.8%)、CML-LC(1/3、33.3%)およびPh-B-ALL(2/7、28.6%)では比較的まれであった。IKZF1欠失はいずれのAMLにおいても検出されなかった。核酸プローブセット1を用いたFISHの結果とマルチプレックスPCRの結果は同傾向を示しており、核酸プローブセット1によってIKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出可能であることが確認された。また、核酸プローブセット1の発する蛍光は、レンズ倍率200倍でも容易に視認可能であった。
Figure 0007313033000001
実施例5 核酸プローブセット3を用いたIKZF1遺伝子のエクソン欠失の検出
スライドガラス上にIKZF1欠失ネガティブコントロール試料及びIKZF1遺伝子のエクソン欠失が生じていることが予め確認されたIKZF1欠失ポジティブコントロール試料(PALL2)をそれぞれ滴下して乾燥した後、核酸プローブセット1を実施例3で作製した核酸プローブセット3に代えた以外は実施例4と同様にして、ハイブリダイゼーション及び蛍光観察を行った。撮影した画像の代表例を図3に示す。核酸プローブセット3では、第1の核酸プローブは緑色に、第2の核酸プローブは赤色として観察される。
核酸プローブセット1を用いた実施例4と同様に、IKZF1欠失ネガティブコントロール試料(図3、パネルA)では2組の隣接する赤と緑が観察され、IKZF1遺伝子の対立遺伝子がいずれも正常であることが確認された。一方、PALL2(Ph+B-ALL細胞株、図3、パネルB)では隣接する赤と緑及び孤立した赤が観察され、IKZF1遺伝子の対立遺伝子の一方が正常でもう一方でエクソン欠失が生じていることが確認された。

Claims (3)

  1. 配列番号17で示される塩基配列からなる第1のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第1の核酸プローブと、配列番号18で示される塩基配列からなる第2のヒトゲノム領域に特異的にハイブリダイズする第2の核酸プローブとからなる、IKZF1遺伝子のエクソン欠失を検出するための核酸プローブセットであって、第1及び第2の核酸プローブが、視覚的に互いに識別可能な異なる波長の蛍光を発する蛍光物質で標識されている、前記核酸プローブセット
  2. 第1の核酸プローブがCy3で、第2の核酸プローブがSpectrum Greenで標識されている、請求項1に記載の核酸プローブセット
  3. 1)ヒト骨髄又は血液由来の細胞の染色体に対して請求項1又は2に記載の核酸プローブセットを用いたハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程、
    2)染色体上の第1及び第2の核酸プローブの蛍光を観察する観察工程、並びに
    3)第1及び第2の核酸プローブの蛍光が隣接して又は混ざった色として観察されたときはIKZF1遺伝子は正常であると判定し、第1の核酸プローブの蛍光が観察されないときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が欠失していると判定し、第1及び第2の核酸プローブの蛍光が離隔して観察されたときはIKZF1遺伝子の少なくともエクソン4からエクソン7までの領域が転座していると判定する判定工程
    を含む、ヒトゲノムにおけるIKZF1遺伝子のエクソン欠失又は転座を検出する方法。
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