I.定義
特に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を持つ。単数形の「ある(a、an)」及び「該(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限りは複数の指示対象を含む。同様に、「又は(or)」という単語も、文脈が明らかに他を示さない限りは「及び」を含むことが意図される。「含む(comprising)」は「含む(including)」を意味する。よって、「A又はBを含む(comprising A or B)」は、「Aを含む(including A)」か、又は「Bを含む(including B)」か、又は「A及びBを含む(including A and B)」を意味する。
本開示の実施態様の実施及び/又は試験のための適切な方法並びに材料は後述する。このような方法及び材料は例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書に記載のものと類似又は同等の他の方法及び材料も使用することができる。例えば、本開示に関する技術分野でよく知られている従来の方法は、様々な一般的な参考文献及びより詳細な参考文献、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press, 2001; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, 199(及び2000年までの増補版);; Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 4th ed., Wiley & Sons, 1999; Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990; 及びHarlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999等に記載されている。
本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体がすべての目的のために援用される。
本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料は、本開示の技術を実施又は試験するのに使用されうるが、適切な方法及び材料を下記に記載する。材料、方法、及び例は、単なる例示であって、限定を意図するものではない。
本開示の様々な実施態様の検討を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される。
コンジュゲート、連結、結合:ある分子を別の分子に共有結合的に連結して、より大きな分子を作ること。例えば、二つのポリペプチドを一つの連続したポリペプチド分子にするか、又は質量タグ、ハプテン、核酸若しくは他の分子を共有結合的にscFv抗体などのポリペプチドに付着させるなど。
接触させること:二つ以上の部分の結合を可能にする配置、特に、例えば固体及び/又は液体の両形態での直接的物理的結合(例えば、スライドに付着させた生体試料などの生体試料が本明細書に開示の組成物を含む溶液などの組成物と接触するような配置)を指す。
検出する:例えば試料中の、(シグナル又は特定の抗原、タンパク質又は核酸などの)因子の有無を決定すること。いくつかの例では、これは、定量化及び/又は局在化、例えば細胞又は特定の細胞区画内での局在化をさらに含みうる。「検出すること」とは、標的分子が生体試料中に存在するかどうか決定するなどの、何かが存在するか存在しないかを決定する任意の方法を意味する。例えば、「検出すること」は、試料が特定の特性を示すかどうかを決定するために、視覚又は機械的装置を使用することを含みうる。ある例では、光学顕微鏡及び他の顕微鏡手段が、標的に結合しているか又は近位で標的に結合している検出可能な標識を検出するのに使用される。
検出可能な標識:組織試料などの試料中の標的分子などの標的の存在及び/又は濃度を示す、(視覚的、電子的又はその他の方法で)検出可能なシグナルを生産できる分子又は物質。標的に直接的に又は近位で結合可能な分子にコンジュゲートした場合、検出可能な標識は、標的の位置を突き止め及び/又は標的を定量化するのに使用されうる。これにより、試料中の標的の存在及び/又は濃度は、検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出することによって検出されうる。検出可能な標識は、直接又は間接的に検出することができ、異なる分子にコンジュゲートされた複数の異なる検出可能な標識は、組み合わせて一又は複数の標識を検出するのに使用されうる。別々に検出されうる複数の検出可能な標識は、異なる標的に直接的に又は近位で結合する異なる分子とコンジュゲートし、試料中の複数の標的を検出するマルチプレックスアッセイを提供しうる。標識の具体的な、非限定的な例は、蛍光及び蛍光及び蛍光発生部分、発色部分、ハプテン、親和性タグ、及び放射性同位体を含む。標識は、直接的に検出可能(例えば光学的に検出可能)な場合もあり、間接的に検出可能(例えば検出可能になる一又は複数のさらなる分子との相互作用を介して)な場合もある。本明細書で開示されるプローブの文脈における例示的な標識については後述する。核酸を標識化するための方法、及び様々な目的に有用な標識の選択における指針は、例えばSambrook and Russell, in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)及びAusubel et al., in Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley-Intersciences (1987、最新版を含む)で論じられている。
ハプテン:抗体と特異的に結合できるが、典型的には担体分子との組み合わせでなければ免疫原性となることが実質的に不可能な分子、典型的には小分子。
HER2:v−erb−b2トリ赤芽球性白血病ウイルス性がん遺伝子ホモログ2(ErbB2)、ヒト上皮増殖因子受容体2、Her2/neu、c−erb B2/neu、及び神経芽細胞腫/神経膠芽細胞腫由来がん遺伝子ホモログとしても知られており、GenBank Gene IDアクセッション番号2064。上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバー。Her2は、リガンド結合ドメインを欠いており、それ自体でリガンドに結合することができないが、他のリガンド結合EGF受容体ファミリーのメンバーと二量体化する。HER2の増幅及び/又は過剰発現は、乳がん及び卵巣がんを含むいくつかのタイプのがんで起こる。
Her2核酸配列及びタンパク質配列は、公的に入手可能である。例えば、HER2遺伝子は、染色体 17q12上に位置し、その配列はGenBankアクセッション番号NC_000017.10(37844167−37884915)で開示されている。GenBankアクセッション番号NM_001005862、NM_004448、XM_005257139、及びXM_005257140は、Her2核酸配列を開示し、またGenBankアクセッション番号NP_001005862、NP_004439、XP_005257196、及びXP_005257197は、Her2タンパク質配列を開示し、これらのすべては2013年10月4日にGenBankより提供された通りに、参照により援用される。
ハイブリダイゼーション:DNA、RNAの2本の鎖の相補的領域の間か、又はDNAとRNAとの間に塩基対を形成し、それによって二重鎖分子を形成すること。特定の度のストリンジェンシー度をもたらすハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション法の特質並びにハイブリダイズする核酸配列の組成及び長さに応じて変動する。一般に、ハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(Na+濃度など)が、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する。ハイブリダイゼーション緩衝液中でハイブリダイゼーションを減少させる化学物質の存在(ホルムアミドなど)もまたストリンジェンシーを決定するであろう(Sadhu et al., J. Biosci., 6:817-821, 1984)。特定のストリンジェンシー度を得るためのハイブリダイゼーション条件に関する計算が、Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, NY (chapters 9 and 11)で論じられている。ISHのハイブリダイゼーション条件もまたLandegent et al., Hum. Genet., 77:366-370, 1987; Lichter et al., Hum. Genet.,80:224-234, 1988;及びPinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:9138-9142, 1988で論じられている。
単離された:「単離された」生体成分(例えば核酸分子、タンパク質又は細胞)は、調製物中のその他の生体成分、生物の細胞又は生物それ自体(ここでは他の染色体並びに染色体外DNA及びRNA、タンパク質及び細胞などの成分が生じる)から実質的に分離又は精製されている。「単離された」核酸分子及びタンパク質は、標準的な精製方法により精製された核酸分子及びタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞において組換え発現により調製された核酸分子及びタンパク質、並びに化学的に合成された核酸分子及びタンパク質も包含する。いくつかの例では、本明細書に開示の核酸プローブは、単離された核酸プローブである。
リンカー:本明細書用いられる場合、リンカーは、二つの部分間に位置する分子又は原子の群である。例えば、質量タグコンジュゲートは、質量タグと特異的結合部分の間のリンカーを含みうる。典型的には、リンカーは二官能基であり、すなわちリンカーは各末端に官能基を含み、官能基は二つの部分にリンカーを結合させるために使用される。二つの官能基は、同じ、つまりホモ二官能性リンカーでも、又は異なっている、つまりヘテロ二官能性リンカーでもよい。
マルチプレックス、マルチプレックスした、マルチプレックスする:本発明の実施態様は、複数の異なるコンジュゲートを使用して、所望に応じて、試料中の複数の標的を実質的に同時に、又は逐次的に検出することを可能にする。マルチプレックスは、核酸一般、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質を個々にまたすべての組合せで同定及び/又は定量化することを含みうる。マルチプレックスはまた、その解剖学的文脈での細胞内の二又はそれ以上の遺伝子、メッセンジャー、及びタンパク質を検出することも含みうる。
プローブ:標的核酸分子(例えばゲノム標的核酸分子)とハイブリダイズすることが可能であり、標的にハイブリダイズした場合、直接的又は間接的に検出可能な核酸分子。したがって、プローブは、標的核酸分子の検出を、またいくつかの例では、その定量化を可能にする。特定の例において、プローブは、標的核酸分子の一意的に特異的な核酸配列に相補的な少なくとも二つのセグメントを含み、したがって、標的核酸分子の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズすることができる。一般的には、少なくとも一つのセグメント又は一つのセグメントの一部が標的核酸分子にハイブリダイズしてしまえば(そしてそのままであれば)、プローブの他の部分は、標的内の他の部分の同族結合部位とハイブリダイズすることを物理的に(必須ではないが)制約されうる(例えば、そのような他の部分はそれらの同族結合部位から遠く離れている)。ただし、プローブ中に存在する他の核酸分子は互いに結合することができ、したがってプローブからのシグナルを増幅する。プローブは、「標識核酸プローブ」と称されうる。これは、プローブが直接的又は間接的に検出可能な部分又は「標識」へ結合され、プローブを検出可能な状態にすることを示している。
試料:対象から得られる、DNA(例えばゲノムDNA)、RNA(mRNAを含む)、タンパク質又はこれらの組み合わせを含有する標本。例としては、染色体調製物、末梢血、尿、唾液、組織生検、細針吸引液、外科標本、骨髄、羊水穿刺試料、及び剖検材料を含むがこれらに限定されるものではない。一例では、試料は、ゲノムDNAを含む。いくつかの例では、試料は、細胞遺伝学的調製物であり、例えば顕微鏡スライド上に配置することができる。特定の例では、試料は、そのまま使用するか、又は例えば固定する(ホルマリンを用いるなど)ことによって使用前に操作可能である。
配列同一性:二以上の核酸配列間の同一性(又は類似性)は、配列間の同一性又は類似性を単位として表される。配列同一性は、同一性パーセンテージを単位として測定され、該パーセンテージが高いほど、配列はより一致している。配列類似性は、類似性パーセンテージ(保存的アミノ酸置換を考慮に入れたもの)を単位tして測定され、該パーセンテージが高いほど、配列はより類似している。
比較のための配列アライメント法は、当該分野で周知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482, 1981; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443, 1970; Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444, 1988; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS5:151-3, 1989; Corpet et al., Nuc. Acids Res., 16:10881-90, 1988; Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences, 8:155-65, 1992; 及び Pearson et al., Meth. Mol. Bio., 24:307-31, 1994に記載されている。Altschulら、J. Mol. Biol., 215:403-10, 1990には、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考慮事項が提示されている。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、National Center for Biotechnologyを含むいくつかの供給源から入手可能であり、配列解析プログラムであるblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxと接続して使用する場合は、インターネット上で利用可能である。追加情報は、NCBIのウェブサイトで見ることができる。
BLASTNは核酸配列を比較するために使用することができ、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用することができる。比較した二つの配列が相同性を共有する場合、指定した出力ファイルには、アラインメントした配列として相同性領域が表示されるだろう。比較した二つの配列が相同性を共有しない場合、指定した出力ファイルには、アラインメントした配列が表示されないだろう。
BLASTのようなアライメントツール(BLAT)もまた、核酸配列を比較するために使用されうる(る (Kent, Genome Res. 12:656-664, 2002)。BLATは、Kent Informatics(Santa Cruz、CA)を含むいくつかの供給源から入手可能であり、また、インターネット上でも利用可能である(genome.ucsc.edu)。
アラインメントされたら、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が両配列に存在する位置の数を数えることによって、マッチ数が決定される。配列同一性パーセントは、そのマッチ数を、同定された配列に示される配列の長さで除すか、又は区切られた長さ(例えば同定された配列に示される配列からの100個の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基)で除した後、得られた値に100を乗じることによって決定される。例えば、1554個のヌクレオチドを有する試験配列とアラインメントされたときに1166個のマッチを有する核酸配列は、試験配列と75.0パーセント同一である(1166÷1554*100=75.0)。配列同一性パーセント値は、四捨五入して小数点第1位までの概数にされる。例えば、75.11、75.12、75.13、及び75.14は、75.1に丸められ、75.15、75.16、75.17、75.18、及び75.19は、75.2に丸められる。長さの値は、常に整数である。別の例では、同定された配列からの15の連続したヌクレオチドと整列する20のヌクレオチドからなる領域を含む標的配列は、次の通り、その同定された配列と75パーセントの配列同一性を共有する領域を含む(すなわち、15÷20*100=75)。
対象:ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば獣医学的対象)といった任意の多細胞性脊椎生物。
標的核酸配列又は標的核酸分子:核酸分子の定義された領域又は特定の部分、例えばゲノムの一部(遺伝子、又は目的の遺伝子を含有する哺乳動物のゲノムDNAの領域など)。標的核酸配列が標的ゲノム配列である例において、このような標的は、(例えば正常細胞内で)染色体上のその位置により定義することができ、例えば細胞遺伝学的命名法に従い、染色体上の特定の位置への参照により;遺伝地図上の位置への参照により;仮想コンティグ又はアセンブルしたコンティグへの参照により;その特異的な配列又は機能により、その遺伝子名又はタンパク質名により;あるいはゲノムの他の遺伝子配列の中からそれを一意的に同定する他の任意の手段によって定義することができる。いくつかの例では、標的核酸配列は、哺乳動物のゲノム配列(例えばヒトゲノム配列)である。
いくつかの例において、標的核酸配列(例えばゲノム核酸配列)の変化は、疾患又は病態と「関連付け」られる。いくつかの例において、標的核酸配列の検出は、疾患又は病態に関して試料の状態を推定するために用いられうる。例えば、標的核酸配列は、二(又はそれ以上)の同定可能な形態で存在することができ、その第一の形態は疾患又は病態の非存在と相関関係があり、第二の(又は異なる)形態は疾患又は病態の存在と相関関係がある。この二の異なる形態は、例えばポリヌクレオチド多型により定性的に同定可能であり、かつ/又はこの二の異なる形態は、例えば細胞中に存在する標的核酸配列のコピー数により定量的に同定可能である。
一意的に特異的な配列:生物の半数体ゲノム中に一回だけ存在している核酸配列(例えば少なくとも20bp(例えば少なくとも20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp又はそれ以上)。特定の実施態様において、一意的に特異的な核酸配列は、標的核酸と100%の配列同一性を有し、かつ標的核酸を含む特異的な半数体ゲノム中に存在する他の任意の核酸配列に対して有意な同一性を全く有しない標的核酸の核酸配列である。
ベクター:ベクターにとって天然ではない、他の(「外来の」)核酸配列のための担体として働く任意の核酸。適切な宿主細胞に導入されると、ベクターは、それ自身(また、それによって、外来の核酸配列)を複製するか、又は外来核酸配列の少なくとも一部を発現しうる。一つの文脈において、ベクターは、直鎖状又は環状核酸であって、その中へ、複製(例えば生産)及び/又は標準的な組換え核酸技術(例えば制限消化)を用いて操作する目的のため、目的の核酸配列が導入(例えばクローニング)される)。ベクターは、宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列、例えば複製起点を含みうる。ベクターはまた、当該技術分野で知られている一又は複数の選択マーカー遺伝子及び他の遺伝子要素を含みうる。一般的なベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、人工染色体(例えばBAC、PAC、HAC、YAC)、及びこれらのタイプのベクターの一以上の特徴を組み込むハイブリッドを含む。典型的には、ベクターは、標的核酸配列の挿入を容易にする1カ所又は複数の固有の制限部位(場合によってはマルチクローニングサイト)を含む。
II.染色体計数のためのin situハイブリダイゼーションのシステム
本開示は、一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを使用する遺伝子標的(例えばHER2)とセントロメア標的(例えばCHR17)の同時検出のための自動明視野二重ISHアッセイを説明する。本アッセイの一態様は、セントロメアプローブと遺伝子プローブとの両立性を実現する特定のプローブの発見である。特に、遺伝子標的に対する一本鎖オリゴヌクレオチドプローブのプールと非常に両立性であるセントロメア標的に対する一本鎖オリゴヌクレオチドプローブのプールが見出された。セントロメアオリゴヌクレオチド配列は、ヒトのブロッキングDNA使用の必要性を回避するように選択される。これらのプローブは、二重in situハイブリダイゼーション(DISH)アッセイにおいて用いた場合、市販の二本鎖プローブ製品と同等の染色性能を得た。しかし、一本鎖プローブは1時間以内でハイブリダイズする一方、二本鎖プローブは長時間(例えば6時間)を要した。この二つのプローブタイプは遺伝子状態の診断では高い一致が見られたものの、一本鎖プローブの方がより低いアッセイ不合格率を得た。未知の解析前の条件及び組織品質の標本で試験した場合、非常にかけ離れたハイブリダイゼーション時間(例えば1時間に対して6時間)を用いたとしても、一本鎖プローブの方が二本鎖プローブ よりも堅牢であることが証明された。
遺伝子コピ−数評価は、細胞遺伝学及び解剖病理学研究室の双方においてISHの主な用途である。例えば、HER2の遺伝子状態の決定には17番染色体セントロメア(CEN17)の計数を使用する必要があるため、HER2/CEN17比率を計算することができる。しかし、本願に一本鎖オリゴヌクレオチドプローブ手法を利用するためには、いくつかの技術的ハードルを越える必要があった。第一に、CHR17オリゴヌクレオチドプローブはHER2オリゴヌクレオチドプローブ用のアッセイ条件に適応している必要があり、第二に、CHR17オリゴヌクレオチドプローブは適切な感度のために十分に堅牢でなくてはならず、第三に、CHR17オリゴヌクレオチドプローブはCHR17セントロメアに対して十分に特異的でなければならず、したがってヒト胎盤DNA又はCot1 DNAなどのハイブリダイゼーション抑制試薬はまったく必要ない。
現在、市販のすべてのHER2 ISH アッセイは、細菌人工染色体(BAC)を原供給源として得られる二本鎖DNAの標識されたセグメントを用いる(HER2 FISH PHARMDX Kit Interpretation guide - breast cancer, PATHVYSIONHER2 DNA Probe Kit及びInterpretation Guide Ventana INFORM HER2 Dual ISH DNA Probe Cocktail Assay参照)。BACは、プローブとして(HER2 FISH PHARMDX Kit、Dako及びPATHVYSION HER2 DNA Probe Kit、Abbott Molecular Inc.)、又は物理学的減算若しくは反復配列の回避によってより特異的な配列を生成するためのテンプレートとして(SPOT-LIGHT HER2 CISH Kit, Life Technologies, Inc.及びINFORM HER2 Dual ISH assay, Ventana Medical Systems, Inc.)フルオロフォア分子で直接的に標識される。これらの二本鎖プローブは、標的に対する十分なハイブリダイゼーションを確実にするために、長いハイブリダイゼーション時間を要する(すなわち6時間〜18時間)ことがよく知られている。この長いハイブリダイゼーション時間は、低いハイブリダイゼーション効率を示す。重要なことは、組織ベースのISHアッセイに関連するこの長い所要時間のために、診断を待たなければならない患者に対して悪影響があるということである。表1の基準は、特定のDISHアッセイが許容可能か否かを評価するために通常用いられるものである。
これらのアッセイの所要時間を短縮するために、ハイブリダイゼーション効率を向上させるいくつかのアプローチがなされてきた。ハイブリダイゼーション反応速度を加速するための一つのアプローチは、ハイブリダイゼーション緩衝液の組成を変更することであった。現在、ホルムアミドは、核酸鎖の融点及びアニーリング温度を下げるために常套的に使用される。該温度を下げることの利点は、より良好な組織形態を維持することである(McConaughy BL, et al., Biochemistry 8: 3289-3295 (1969)及びBlake RD, Delcourt SG, Nucleic Acids Res 24: 2095-2103 (1996)を参照。これらの開示の全内容は参照により本明細書に援用される)。しかし、ホルムアミドはハイブリダイゼーション速度を下げるため、十分なシグナル強度を得るためには長時間のハイブリダイゼーションが必要になる。最近、Matthiesen SH et al., PLoS One. 2012; 7(7に、FISHハイブリダイゼーション時間を1時間に短縮した効果と共に、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミドの代替としてエチレンカーボネート(EC)が報告された。新製品HER2 IQFISH PHARMDX(Dako)を支えるのがこの技術である。
もう一つのアプローチは、二本鎖プローブから一本鎖プローブへ切り替えることである。おそらく変性二本鎖プローブの一部が再生してホモ二本鎖プローブを形成し、それゆえ試験試料中のゲノム標的に対する二本鎖プローブによるハイブリダイゼーションが妨げられることから、一本鎖プローブは、二本鎖プローブよりも高い感度を有すると理解される(Taneja K and Singer RH, ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 166.389-398 (1987), Lewis ME, et al., Peptides. 6 Suppl 2:75-87 (1985) 及び Strachan T, Read AP. Human Molecular Genetics. 2nd edition. New York: Wiley-Liss (1999)参照)。
Kourilsky P, et al., Biochimie. 56 (9): 1215-21 (1974)では、プレハイブリダイゼーション工程で溶液中の一本鎖ヌクレオチド(プローブとして利用可能)の割合が、競合鎖ヌクレオチドの量に半比例していることが見出された。本試験で開発された数学モデルは、相同競合がDNA標的ハイブリダイゼーションの強力な競合相手であることを明らかにした。いくつかの研究室は、一本鎖プローブが二本鎖プローブよりも高いハイブリダイゼーション感度を呈することを報告している(An SF, et al., Mol Cell Probes. Jun;6(3):193-200 (1992), Hannon K, et al,. Anal Biochem. Aug 1;212(2):421-7 (1993)、及びCox KH, et al., Dev Biol. Feb;101(2):485-502 (1984)参照)。特に、Anらの著作は、ドットブロットハイブリダイゼーションにおいて、ジゴキシゲニン(DIG)標識一本鎖プローブ が同じサイズの二本鎖DIG PCR標識プローブよりも感度が少なくとも二倍高く、同じサイズのニックトランスレーションされた二本鎖プローブよりも感度が10倍高いことを実証した。ISH用途では、一本鎖プローブはより感度が高く、すなわち同じサイズの二本鎖プローブよりも約二倍から4倍の数の感染細胞を検出した。さらに、ISHで同じサイズの二本鎖プローブよりもはるかに少ないバックグラウンド染色を呈した。一本鎖プローブはISHでの使用前に精製の必要がなかったが、それに対して二本鎖PCRプローブは精製を必要とし、そうでない場合には大量の非特異的バックグラウンド染色が存在した。さらに、Hannonらは、DIG標識一本鎖DNAプローブは、DIG−二本鎖プローブを用いて得られた(画像解析プログラムによる)強度よりも強度が約27%高いことを実証した。Cox KHら、Dev Biol. Feb;101(2):485-502 (1984)は、8倍多い一本鎖プローブが明らかな飽和状態で標的配列にハイブリダイズしたのに対し、二本鎖プローブとの観察されたハイブリダイゼーション反応は、使用可能な標的部位の飽和状態をかなり下回るレベルで終了したことを見出した。これは、ほとんどの二本鎖プローブが比較的早くISH反応から除去されたことを意味した。上記の知見と一致して、本出願人らは、1時間ハイブリダイゼーションの一本鎖HER2/CHR17プローブが6時間ハイブリダイゼーションの二本鎖プローブと同等の染色性能を得たことを見出した。驚くべきことに、1時間ハイブリダイゼーションの一本鎖プローブはまた、扱いにくい組織のコホート(TMA)に対する優れた堅牢性を実証した。本出願人らのデータは、一本鎖プローブが二本鎖プローブよりも高いハイブリダイゼーション効率を有する傾向があるという過去の観察と合致する。
特定の理論に限定されるわけではないが、本出願人らは、より容易に組織に浸透するという、一本鎖プローブのもう一つの利点も認識している。通常、二本鎖プローブは、酵素的DNA合成反応において標識dNTPを組み込むことにより標識される。標識プローブは、DNase処理又は機械的超音波処理によって、より小さな断片にサイズ変更される。標識ISHプローブの最適な長さは、Cox, et al., Dev Biol. Feb;101(2):485-502 (1984)及びHaase et al. (Haase, A. et al.のMethods in Virology(Maramorosch, K., and Koprowski, Eds), Vol. 7, pp. 189-226, Academic Press, San Diego, CA (1984)参照)によれば、典型的には100〜400ヌクレオチドである。しかし、標識プローブのサイズダウンプロセスの「ランダム」な性質は、大部分のプローブを正しいサイズの範囲内にするものの、多様なサイズの集団を生成する。オリゴヌクレオチド合成によって生成された一本鎖プローブは、特に扱いにくい(例えば過固定の)組織標本上で、大きな二本鎖プローブよりも良好に組織へ浸透する該プローブの能力を促進するような明確に定義された短めの長さを有する。本明細書に記載の一本鎖プローブは、扱いにくい組織のコホート(TMA)で優れた染色を示し、これは部分的には短くかつ均一のプローブの良好な組織浸透力により説明されうる。
さらに、製造及び品質管理の観点から、正確な構造を有する一本鎖プローブは、オリゴヌクレオチド合成を用い、PCR、ニックトランスレーション又は他のランダム合成法に基づいたアプローチと比較してより再現性良く製造される。
オリゴヌクレオチドプローブは、理想的には、標的と最大限に、非標的と最小限にハイブリダイズする( Li X, et al., Nucleic Acids Res., Oct 24; 33(19): 6114-23 (2005)参照)。溶液又はアレイベースのハイブリダイゼーションに適用可能なこれらの参照を検討することは適切でありうるが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)された組織でのゲノム標的へのハイブリダイゼーション速度は比較的高度に予測不可能である。この予測不可能性は、ヒト組織の、特に溶液又はアレイと比較して非常に複雑で可変性のある性質により付与されると理解される。マイクロアレイの用途では、非標的との75%の同一性を示すか、あるいは15−、20−又は35塩基ストレッチを有する50−merのプローブが、Kane MD, et al., Nucleic Acids Res. Nov 15;28(22):4552-7 (2000)で交差反応を示した。非標的との80%の同一性を有する60−merのプローブは、Hughes TR, et al., Nat Biotechnol. Apr;19(4):342-7 (2001)で非標的に対する交差反応を示した。70−merに関して同様の結果が、Wang X, Seed B., Bioinformatics.May 1;19(7):796-802 (2003)により示された。
Li X, et al., Nucleic Acids Res., Oct 24; 33(19): 6114-23 (2005)は、50−merのオリゴヌクレオチドを設計するための最適な選択、すなわち<87%の同一性、<17塩基の連続ストレッチ、及び>29kcal/molの自由エネルギーを提案したようである。各標的と90%を超える同一性を有するプローブに対するシグナル強度が実質的に増加した一方、50−mer及び70−merのプローブの双方は、各標的と85%未満の同一性を有する配列と最小限のクロスハイブリダイゼーションを有することが観察された(He Z, et al., Appl Environ Microbiol.Jul;71(7):3753-60 (2005)参照)。He Zらは、検討した条件下で、遺伝子特異的プローブが非標的と<85%の同一性を有するはずだと示唆した。
合成オリゴヌクレオチドプローブはメッセンジャーRNA ISHのために広く使用されてきたが、最近までゲノム標的には使用されていなかった(Bergstrom Lucas A, Ruvolo M, Kulkarni V, Chen S, Mullinax B, Venneri J, Barboza J, Happe S, Fulmer-Smentek S, Srinivasan M. Designing Custom Oligonucleotide FISH Probes for the Detection of Chromosomal Rearrangements in FFPE Tissues. 米国人類遺伝学会議2013(American Society of Human Genetics 2013 Meeting)参照)。Bergstromらは、数千のユニークなオリゴヌクレオチドを含むと理解される蛍光標識を有するSureFISHプローブを報告した。このオリゴヌクレオチド配列は、染色体再編成を検出するための転座ブレークポイントの対象となる染色体領域にわたりタイル状になっていた。これらのプローブに対し、短いハイブリダイゼーション時間(75分)が報告された。
17番染色体 ISHの最も一般的な標的はセントロメア領域である。すべてのヒト染色体のセントロメア領域は、多様な縦列反復DNAファミリーであるアルファサテライトの異なる複数のサブセットによって特徴づけられる。アルファサテライトの基本単位は、分岐した171bpモノマーであり、これにより高次の染色体特異的反復単位が組織化される。ヒト17番染色体特異的アルファサテライトは、11から16のモノマー範囲の約1000の多型の高次反復単位を含有する。17番染色体アルファサテライトの主な形態は、17番染色体あたり500から1000コピーで存在している、16のモノマーからなる〜2700塩基対の反復単位である。アルファサテライトDNAクラスターはほとんどの場合最大40%コンセンサス配列と異なるモノマー変異体を含有するため(Rosandi? M, Paar V, Glunci? M, Basar I, Pavin N, Croat Med J. 2003 Aug; 44(4):386-406)、ブロッキングDNAは、他の染色体に共通する標的遺伝子座の中に含まれる配列を抑制するためにプローブに通常含まれる。本開示の一態様は、80−merの一本鎖遺伝子プローブと同等の融解温度(Tm)範囲での、2700塩基対の反復単位からの一本鎖オリゴヌクレオチドの発見である。特に、17番染色体セントロメアに特異的な14の特定の一本鎖オリゴヌクレオチドが、80−merの遺伝子プローブを用いた遺伝子/セントロメアDISHアッセイを確実に可能にしたことが見出された。14のオリゴヌクレオチド配列は、16のモノマーのうちの10からのものであり、したがってそれらは集団におけるハプロタイプに特異的な配列変化を認識する確率を高める。
本明細書の例は、特に一本鎖オリゴヌクレオチドベースのCHR17(又はHER2/CHR17二重)ISHアッセイを説明するが、当業者であれば目的の任意の遺伝子/セントロメアの組み合わせに本明細書に開示の発見を適用することができるであろう。
IHC及びISH試験双方においてしばしば遭遇する困難は、組織が一般的に保存される方法に起因する。何十年もの間、診断病理学研究室の主力は、切片化され、ガラススライドにマウントされた、組織のホルマリン固定、パラフィン包埋ブロックであった。このような防腐剤中での固定は、アミノ酸及び核酸双方の巨大分子の架橋を生じさせる。これらの架橋成分は、標的核酸へのプローブの接近を許容して、抗体が対応する抗原を認識できるようにするためには除去されなければならない。抗原及び/又は核酸の「アンマスキング」は、典型的には複数の前処理、タンパク質消化、及び洗浄工程を使用して手作業で達成される。染色の前に、パラフィンが抗体又はプローブ結合を妨害しないようにパラフィンの完全な除去も必要とされる。脱パラフィンは、パラフィン系溶剤(例えばキシレン、キシレン代替品又はトルエン)である複数(例えば二又は三)の逐次の透徹試薬の使用によって達成されうる。
例示的な実施態様では、調製は細胞コンディショニングの工程を含む。細胞コンディショニングは、出典明示によりその主題事項が援用される米国特許第6855552号のTowne, et al. 「Automated immunohistochemical and in situ hybridization assay formulations」で詳細に論じられている例示的な細胞コンディショニング工程では、細胞コンディショニング試薬が適用され、試料が適切な時間の間、適切な温度で接触させられて、抗原標的及び/又は核酸標的が検出のために十分に発現されるようになる。本開示の一態様は、自動機器が、ユーザーの入力に応じて細胞コンディショニングの継続時間及び/又は温度を自動的に調整することができることである。細胞コンディショニングは、プロテアーゼ試薬を適用することをさらに含みうる。例示的には、プロテアーゼ処理は、生体試料にプロテアーゼ溶液を接触させる工程を伴いうる。プロテアーゼ処理は、細胞コンディショニングと同様に、標的抗原及び/又は標的核酸の発現を増加させることが意図されている。
例示的な細胞コンディショニング試薬は、核酸標的(ISH)用としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む溶液を含む。接触は、約2から約90分間、約95℃の温度でなされうる。タンパク質標的(IHC)では、細胞コンディショニング溶液はホウ酸緩衝液であってもよい。接触は、約2から約90分間、約100℃の温度でなされうる。考えられる試薬の部分的なリストが、 Analytical Morphology, Gu編., Eaton Publishing Co. (1997)の1〜40頁にある。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はエチレングリコールがコンディショニング溶液に含まれていてもよい。さらに、金属イオン又は他の物質をこれらの試薬に添加して、細胞コンディショニングの効果を高めてもよい。例示的な細胞コンディショニング溶液は、アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手できる(Cell Conditioning 1(CC1) カタログ#:950−124;Cell Conditioning 2(CC2) カタログ#:950−123;SSC(10X) カタログ#:950−110;ULTRA Cell Conditioning(ULTRA CC1) カタログ#:950−224;ULTRA Cell Conditioning(ULTRA CC2) カタログ#:950−223、Protease 1 カタログ#:760−2018;Protease 2 カタログ#:760−2019;Protease 3 カタログ#:760−2020)。一実施態様では、免疫組織化学的結合試薬又はin situハイブリダイゼーション結合試薬の適用は、細胞コンディショニング試薬の適用後で発色試薬の適用前に発生する。
例示的な実施態様では、該方法はすすぎ試薬を適用することを含む。本明細書に記載の様々な工程の合間に、また本明細書に記載のシステムの一部として、すすぎ工程が先の工程からの未反応残留試薬を除去するために加えられうる。すすぎ工程は、混合を伴って又は混合を伴わないで予め決められた温度で予め決められた時間、試料上にすすぎ試薬を維持することを含むインキュベーションをさらに含みうる。このすすぎ工程に適した条件は、様々な工程間で異なっていてもよい。例示的なすすぎ試薬は、アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手可能である(Reaction Buffer(10x) カタログ#:950−300;Special Stains Wash(10x) カタログ#:860−015)。
アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手可能である例示的な自動システムは、SYMPHONY(登録商標)Staining System、カタログ#:900−SYM3、VENTANA(登録商標)BenchMark Automated Slide Preparation Systems、カタログ#:N750−BMKXT−FS、N750−BMKU−FS、VENTANA、及びVENTANA(登録商標)BenchMark Special Stains自動化スライド染色装置を含む。これらのシステムは、放射状に配置されたスライドを支持する回転カルーセルを含むマイクロプロセッサ制御システムを用いている。ステッパモータがカルーセルを回転させ、スライド上方に位置する一連の試薬ディスペンサーのうちの一つの下に各スライドを配置する。スライド及び試薬ディスペンサー上のバーコードは、コンピュータの適切なプログラミングによって、様々な組織試料のそれぞれについて異なる試薬処理を行うことができるように、ディスペンサーとスライドのコンピュータ制御された位置決めを可能にする。
A.17番染色体
前述のように、17番染色体(CHR17)ISHのコントロール領域の最も一般的な標的は、セントロメア領域である。すべてのヒト染色体のセントロメア領域は、多様な縦列反復DNAファミリーであるアルファサテライトの異なる複数のサブセットによって特徴づけられる。アルファサテライトDNAクラスターはほとんどの場合最大40%コンセンサス配列と異なるモノマー変異体を含有するため、ブロッキングDNAは、他の染色体に共通する標的遺伝子座の中に含まれる配列を抑制するためにプローブに通常含まれる。
本出願人らは、1時間以内のハイブリダイゼーションでブロッキングDNAの使用なしで、許容可能なシグナル強度レベル及びバックグラウンドレベルを得た、17番染色体のコントロールプローブコントロール領域(セントロメア領域)に対する一本鎖プローブを設計した(実施例1の表3を参照)。例えば、該プローブは、2以上の染色強度及び核の50%以上の染色範囲を得るように構成されている。本出願人らは、同じく1時間以内のハイブリダイゼーションでブロッキングDNAの使用なしで、許容可能なシグナル強度レベル及びバックグラウンドレベルを得た、HER2遺伝子座の近傍及び内部の標的領域に対する一本鎖プローブも設計した。
製造及び品質管理の観点から、正確な構造を有する一本鎖プローブは、オリゴヌクレオチド合成を用い、PCR、ニックトランスレーション又は他のランダム合成法に基づいたアプローチと比較してより再現性良く製造される。コスト分析の観点から、DNAをブロックする必要がないプローブは、より安価なアッセイを提供する。
本開示は、染色体のコントロール領域、例えば染色体のセントロメア標的に特異的なコントロールプローブを特徴とする、ISHためのシステムを説明している。検出される染色体は、17番染色体又はその他の任意の適切な染色体.でありうる。コントロールプローブは、対照試料に適用された場合、3時間以内に2以上染色強度及び核数の50%以上の染色範囲を得るように構成されている(例えば上記の表1参照)。いくつかの実施態様では、本発明は、3時間以内に核数の≧55%の染色範囲、例えば核数の≧60%、核数の≧65%、核数の≧70%、核数の≧75%、核数の≧80%、核数の≧85%、核数の≧90%を達成する。
いくつかの実施態様では、FISHのためのシステムは、対応する染色体上の(例えば標的遺伝子を検出するための)標的領域に特異的な標的プローブも特徴とする。
いくつかの実施態様では、コントロールプローブは、第一の複数(例えば複数の単一プローブ、プローブのセット又はプールのような異なる複数のプローブ)の一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む。複数のプローブの一又は複数は、配列番号3〜16からなる群より選択される配列を含みうる(下記の表3を参照)。いくつかの実施態様では、この一又は複数の第一のプローブは、表3の配列(配列番号3〜16)のうちの一つの配列の切断型例えば少なくとも30個の連続bp、少なくとも35個の連続bp、少なくとも40個の連続bp、少なくとも45個の連続bp、少なくとも50個の連続bp、少なくとも55個の連続bp、少なくとも60個の連続bp、少なくとも65個の連続bp、少なくとも70個の連続bp、少なくとも75個の連続bp等)を含む。いくつかの実施態様では、この一又は複数の第一のプローブは、表3の配列(配列番号3〜16)と少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。この複数の第一の一本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、ヒト17番染色体のコントロール領域の一部に一意的にかつ特異的にハイブリダイズするように構成されているため、その他の染色体又はその一部は明らかに標識されない。
本明細書で使用される場合、配列番号3〜16の使用への言及は、配列番号3〜16の相補配列の使用も含みうる。
いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の2〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の4〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の6〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コンtのロール領域内の8〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の10〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の12〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の14〜16の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の2〜12の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の4〜12の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の6〜12の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の8〜12の異なる部分を標的とする。いくつかの実施態様では、該プローブは、コントロール領域内の10〜12の異なる部分を標的とする。
いずれの理論又は機構にも本発明を限定することは望まないが、該プローブは、17番染色体の多型の少なくとも60%、17番染色体の多型の少なくとも70%、17番染色体の多型の少なくとも80%、17番染色体の多型の少なくとも90%、17番染色体の多型の少なくとも95%、17番染色体の多型の少なくとも99%等を同定することができると考えられる。いくつのモノマーを、17番染色体の多型の少なくとも60%、17番染色体の多型少なくとも70%、17番染色体の多型少なくとも80%、17番染色体の多型少なくとも90%、17番染色体の多型の少なくとも95%、17番染色体の多型少なくとも99%等を同定するのに十分であるように探索する必要があるのかは、明らかではない。
第一の複数の一本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、様々な長さで構成されてもよい。例えば、いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ40〜100個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ50〜100個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ60〜110個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ40〜120個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ少なくとも40個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ少なくとも50個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ少なくとも60個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、該プローブはそれぞれ少なくとも70個のヌクレオチドを含む。
本発明はまた、染色体の制御(例えばCHR17の制御)のために染色された複数の核を伴うスライドを特徴とする。該スライドは、一又は複数の上記のシステム(例えばプローブ)と接触していてもよい。該スライドは、細胞中に存在する17番染色体セントロメア領域の数を示す計数可能なシグナルを特徴とし、例えば細胞は通常、CHR17セントロメアのコピーを二つ示すはずである。
いくつかの実施態様では、核の50%超が染色体の計数可能なシグナルを有する。計数可能なシグナルは、一般的に円形である。図16に示すようにこの円形を定義することができる。図16では、円形は第一の領域内に収まる単純閉曲線であり、この第一の領域は内側の円の円上及び外側、並びに外側の同心円の円上及び内側にあり、この内側の円は内半径(Rin)を有し、この外側の円は外半径(Rout)を有し、ここで単純閉曲線は半径Rsimpleを有し、Rin≦Rsimple≦Routであり、またRinはRoutの≧50%である。単純閉曲線は、それ自体と交差せず、開始点と同じ点で終わる曲線である。
いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の40%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の50%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の55%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の60%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の65%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の70%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の75%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の80%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の85%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の90%以上である。
いくつかの実施態様では、核の60%超が染色体の計数可能なシグナルを有する。いくつかの実施態様では、核の70%超が染色体の計数可能なシグナルを有する。いくつかの実施態様では、核の80%超が染色体の計数可能なシグナルを有する。いくつかの実施態様では、核の90%超が染色体の計数可能なシグナルを有する。核は、組織切片プロセスが細胞のその部分を破壊した場合、細胞のその部分が二のスライドに分割される場合、又は細胞のその部分が丸ごと別のスライドにある場合には、計数不可能でありうる。また、核は、組織状態がその特定の結合部位へのプローブの浸透を妨げる(すなわち、細胞がプローブに十分に接近できない)場合、又はDNAの標的領域が実質的に劣化している場合には、計数可能でありうる。
いくつかの実施態様では、染色シグナルで覆われている表面面積の和が計算され、100%の値が割り当てられ、その表面面積の和の少なくとも50%は個別の丸い(又は円形の)シグナルに由来する。
図16に示すように円形を定義することができる。図16では、円形は第一の領域内に収まる単純閉曲線であり、この第一の領域は内側の円の円上及び外側、並びに外側の同心円の円上及び内側にあり、この内側の円は内半径(Rin)を有し、この外側の円は外半径(Rout)を有し、ここで単純閉曲線は半径Rsimpleを有し、Rin≦Rsimple≦Routであり、またRinはRoutの≧50%である。
いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の50%以上である。いくつかの実施態様では、前記表面面積の60%超が、個別のラウンドシグナルに由来する。いくつかの実施態様では、前記表面面積の70%超が、個別のラウンドシグナルに由来する。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の60%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の75%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の90%以上である。
いくつかの実施態様では、外半径は、約0.25〜0.675μmである。いくつかの実施態様では、外半径は、約0.2〜0.75μmである。いくつかの実施態様では、外半径は、約0.15〜1μmである。いくつかの実施態様では、計数可能なシグナルの平均外半径は、約0.2〜0.75μmである。いくつかの実施態様では、計数可能なシグナルの平均外半径は、約0.5μm未満の標準偏差を有する。いくつかの実施態様では、計数可能なシグナルの平均外半径は、約0.25μm未満の標準偏差を有する。
いくつかの実施態様では、計数可能なラウンドシグナルは単一粒径である。本明細書で使用される場合、「単一粒径の」ラウンドシグナルの集団は、互いのプラス又はマイナス15%以内のRsimpleを有する。いくつかの実施態様では、「単一粒径の」ラウンドシグナルの集団は、互いのプラス又はマイナス10%以内のRsimpleを有する。いくつかの実施態様では、「単一粒径の」ラウンドシグナルの集団は、互いのプラス又はマイナス5%以内のRsimpleを有する。
B.標的遺伝子(HER2)
いくつかの実施態様では、FISHのためのシステムは、対応する染色体上の(例えば標的遺伝子を検出するための、遺伝子コピー計数のための)標的領域に特異的な標的プローブも特徴とする。
この標的領域は、HER2遺伝子座(又は近傍のヌクレオチド)を含みうる。本明細書で開示されるのは、ヒトHER2遺伝子に対するプローブである(GenBankアクセッション番号の項参照)。下記の実施例1で詳細に説明するように、HER2標的プローブは、ヒト17番染色体のヌクレオチド35,027,979と35,355,516の間の領域に特異的である。
いくつかの実施態様では、標的プローブは、第二の複数(例えば複数の単一プローブ、プローブのセット又はプールのような異なる複数のプローブ)の一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含む。この第二の複数の一本鎖オリゴヌクレオチドプローブは対応する染色体の標的領域の一部に一意的にかつ特異的にハイブリダイズするように構成されているため、その他の遺伝子又は染色体又はそれらの一部は明らかに標識されない。
本発明はまた、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段を特徴とする。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、プローブに特異的な検出試薬とプローブを接触させる工程を含む。検出試薬は当該技術分野でよく知られている。例えば、検出試薬は、抗体又は他のプローブを含むことができ、これがコントロールプローブに結合する。検出試薬は、プローブの第一の標識を可視化する分子(例えば酵素、基質、タグ)を含んでもよい。検出試薬は、プローブを可視化するのに有効な複数の試薬(例えば複数の抗体、酵素、基質、色素原等)を含んでもよい。いくつかの実施態様では、検出試薬は発色性である。追加の検出試薬(標識、タグ、酵素、基質、色素原、抗体等)が本明細書でさらに開示される。本発明はまた、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段を特徴とし、ここで、プローブ(例えば第一の標識)は検出試薬により可視化され、第一の標識の可視性は17番染色体のコントロール領域を示唆する。標識されたプローブの可視化の手段は、当業者によく知られている。例えば、いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、顕微鏡(例えば明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、倒立顕微鏡)を含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、照度計を含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、放射分析検出器(例えばガンマカウンター等)を含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、分光計を含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、リアルタイムPCR機器を含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコントロール領域を可視化する手段は、シンチレーション及び/又は発光カウンターを含む。いくつかの実施態様では、17番染色体のコンtのロール領域を可視化する手段は、測色計を含む。17番染色体のコントロール領域を可視化するその他の手段は、当該技術分野で知られている。
C.キット
一又は複数のオリゴヌクレオチドプローブ(例えば配列番号3〜16のうちの一又は複数)を含むキットも開示される。例えば、キットは、本明細書に記載の少なくとも一のプローブ(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のプローブ)又は少なくとも一のプローブセット(例えば少なくとも1、2、3、4又は5のプローブセット)を含みうる。一例では、このキットは、例えば配列番号3〜16の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又はすべて(又は配列番号3〜16と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%同一である配列、又は配列番号3〜16の切断型)のプローブを含む。その他の例では、該プローブ(又は該プローブセット)は、単一の容器に入っている。
キットはまた、(例えばin situ ハイブリダイゼーションにより)プローブを検出するための、又は検出可能に標識されたプローブを製造するための、一又は複数の試薬を含んでもよい。例えば、キットは、一又は複数の緩衝液、標識dNTP、標識酵素(例えばポリメラーゼ)、プライマー、ヌクレアーゼを含まない水、及び標識プローブを製造するための使用説明書の他に、開示の核酸プローブ又はプローブセットのうちの少なくとも一を含みうる。他の例では、該キットは、in situハイブリダイゼーションを実施するための緩衝液及び他の試薬の他に、一又は複数の開示の核酸プローブ(非標識又は標識されている)を含む。例えば、一又は複数の非標識プローブがキットに含まれる場合、特異的検出剤(例えば蛍光性、発色性、発光性及び/又はラジオメトリック)及びin situハイブリダイゼーションアッセイを実施するための他の試薬、例えばパラフィン前処理緩衝液、プロテアーゼ及びプロテアーゼ緩衝液、プレハイブリダイゼーション緩衝液、ハイブリダイゼーション緩衝液、洗浄緩衝液、対比染色料、封入剤又はこれらの組み合わせの他に、標識試薬もキットに含まれうる。いくつかの例では、このようなキットの構成要素は別々の容器内に存在する。キットは場合によって、プローブのハイブリダイゼーション及びシグナルを評価するための対照スライド(例えば陽性又は陰性対照)をさらに含みうる。
ある例では、該キットはアビジン、抗体、及び/又は受容体(又は他の抗リガンド)を含む。一又は複数の検出剤(一次検出剤及び、任意選択的に、二次、三次又は追加の検出試薬)は、例えばハプテン又はフルオロフォア(蛍光色素又は量子ドットなど)で標識されている。いくつかの例では、検出試薬は、異なる検出可能な部分(例えば異なる蛍光色素、スペクトル的に識別可能な量子ドット、異なるハプテン等)で標識されている。例えば、キットは、異なる標的核酸(例えば本明細書に開示の任意の標的核酸)に対応し、ハイブリダイズすることができる二以上の核酸プローブ又はプローブセットを含みうる。第一のプローブ又はプローブセットは、第一の検出可能な標識(例えばハプテン、フルオロフォアなど)で標識することができ、第二のプローブ又はプローブセットは、第二の検出可能な標識で標識することができ、また任意の追加の(例えば第三、第四、第五、第六の)プローブ又はプローブセットは追加の検出可能な標識で標識することができる。他の検出スキームが可能ではあるが、第一、第二、及びそれに続く任意のプローブ又はプローブセットは、異なる検出可能な標識で標識することができる。プローブ(単数又は複数)がハプテンのような間接的に検出可能な標識で標識されている場合、該キットは、いくつか又はすべてのプローブ用の検出剤(例えば標識されたアビジン、抗体又は他の特異的結合剤)を含みうる。一実施態様では、該キットは、マルチプレックスISHに適したプローブ及び検出試薬を含む。
一例では、該キットはまた、標識(例えば酵素、フルオロフォア又は蛍光ナノ粒子)にコンジュゲートした抗体などの抗体コンジュゲートを含む。いくつかの例では、該抗体は、PEG、6X−His、ストレプトアビジン又はGSTのようなリンカーを介して標識にコンジュゲートしている。
検出可能な標識及び標識方法
本明細書に開示のプローブは、例えば目的のプローブ/核酸配列(又は領域)の検出を可能にするために、一又は複数の標識(例えば少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6等)を含みうる。In situハイブリダイゼーション法などの様々な用途において、核酸プローブは標識(例えば検出可能な標識)を含む。「検出可能な標識」は、試料中のプローブ(特に結合又はハイブリダイズドプローブ)の存在又は濃度を示す検出可能なシグナルを生成するために使用されうる分子又は物質である。したがって、標識された核酸分子は、試料中の(標識された一意的で特異的な核酸分子に結合又はハイブリダイズされる)標的核酸の存在又は量(例えば遺伝子コピ−数)の指標を提供する。例が示されているものの、本開示は、特定の標識の使用に限定されるものではない。
一又は複数の核酸分子(例えば開示のプローブ)に関連する標識は、直接的に又は間接的に検出することができる。標識は、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視周波数、及び紫外線周波数の光子を含む)の吸収、発光及び/又は散乱を含む既知の又はまだ見出されていない任意の機構によって検出することができる。検出可能な標識は、着色、蛍光、リン光、及び発光分子並びに物質、検出可能な差異を提供するために(例えば無色の物質を着色物質に変換することにより若しくはその逆により、又は沈殿物を生成するか若しくは試料濁度を上げることにより)一つの物質を別の物質に変換する触媒(酵素など)、抗体結合相互作用により検出することができるハプテン、並びに常磁性及び磁性分子又は物質を含む。
検出可能な標識の特定の例は、蛍光分子(又は蛍光色素)を含む。多くの蛍光色素が当業者に知られており、例えばLife Technologiesから選択することができる。核酸分子(例えば一意的に特異的な結合領域)に付着(例えば化学的にコンジュゲート)することができる特定のフルオロフォアの例は、Nazarenko et al.の米国特許第5866366号に提供され、例えば4−アセトアミド−4’−イソチオシアネートスチルベン−2,2’ジスルホン酸、アクリジン及び誘導体、例えばアクリジン及びアクリジンイソシアネート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5 ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニラミド、Brilliant Yellow、クマリン及び誘導体、例えばクマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、Coumarin 120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルコウルアリン(7−amino−4−trifluoromethylcouluarin)(Coumarin 151);シアノシン;4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI);5’、5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(Bromopyrogallol Red);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸;4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸;5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC);エオシン及び誘導体、例えばエオシン及びエオシンイソチオシアネート;エリスロシン及び誘導体、例えばエリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセイン及び誘導体、例えば5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、及びQFITC(XRITC);2’、7’−ジフルオロフルオレセイン(OREGON GREEN(登録商標));フルオレスカミン;IR144;IR1446;Malachite Greenイソチオシアネート;4−メチルウンベリフェロン;オルト−クレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;Phenol Red;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレン及び誘導体、例えばピレン、ピレンブチレート、及びスクシンイミジル 1−ピレンブチレート;Reactive Red 4(Cibacron Brilliant Red 3B−A);ローダミン及び誘導体、例えば6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101、及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(Texas Red);N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸及びテルビウムキレート誘導体である。
他の適切なフルオロフォアは、約617nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(Heyduk and Heyduk, Analyt. Biochem., 248:216-27, 1997; J. Biol. Chem., 274:3315-22, 1999)、並びにGFP、リサミンTM、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7−ジクロロローダミン、及びキサンテン(Lee et al.の米国特許第5800996号に記載)及びその誘導体を含む。例えば、Life Technologies(Carlsbad、CA)から入手可能なものなど、当業者に知られているその他のフルオロフォアも使用することができ、これには、ALEXA FLUOR(登録商標)シリーズの染料(例えば米国特許第5696157号、第6130101号、及び第6716979号に記載)、BODIPYシリーズの染料(例えば米国特許第4774339号、第5187288号、第5248782号、第5274113号、第5338854号、第5451663号、及び第5433896号に記載のようなジピロメテンホウ素ジフルオリド染料)、Cascade Blue(米国特許第5132432号に記載のスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)、及びMarina Blue(米国特許第5830912号)が含まれる。上記の蛍光色素に加えて、蛍光標識は、半導体ナノ結晶などの蛍光ナノ粒子、例えば量子ドットであってもよい。追加の標識は、例えば放射性同位体(3Hなど)、金属キレート(放射性金属イオン又はGD3+のような常磁性金属イオンのDOTAキレート及びDPTAキレートなど)、及びリポソームを含む。
核酸分子(例えば本開示のプローブ)と共に使用することができる検出可能な標識は、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ又はβ−ラクタマーゼも含む。検出可能な標識が酵素を含む場合、発色性化合物、蛍光性化合物又は発光性化合物は、検出可能なシグナルを生成する酵素と組み合わせて使用することができる(多くのこのような化合物が、例えばLife Technologiesから市販されている)。発色性化合物の特定の例は、ジアミノベンジジン(DAB)、4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ファーストブルー、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o−ジアニシジン、4−クロロナフトール(4−CN)、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)、o−フェニレンジアミン(OPD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β-ガラクトピラノシド(X−Gal)、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gal)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(PNP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β-D−グルクロニド(X−Gluc)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、及びテトラゾリウムバイオレットを含む。
あるいは、酵素は、金属組織検出スキームにおいて使用することができる。例えば、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)法は、ハイブリダイズされたゲノム標的核酸配列の同定及び局在化のための金属組織検出スキームを伴う。金属組織検出法は、水溶性金属イオン及び酵素のレドックス不活性な基質と組み合わせて、アルカリホスファターゼなどの酵素を使用することを含む。該基質は、酵素によりレドックス活性剤に変換され、該レドックス活性剤は金属イオンを還元し、それにより検出可能な沈殿物が形成される(例えば米国特許第7632652号参照)。金属組織検出法は、やはり検出可能な沈殿物を形成するために、水溶性金属イオン、酸化剤、及び還元剤と併せてオキシドレダクターゼ酵素を使用することも含む(例えば米国特許第6670113号参照)。
非限定的な例では、本開示の核酸プローブは、ハプテン分子(例えば芳香族ニトロ化合物(2,4−ジニトロフェニル(DNP)など)、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン(DIG)等)に共有結合的に付着したdNTPで標識される。本開示のプローブを標識するのに適した追加のハプテンは、ニトロピラゾール、3−ヒドロキシキノキサリン、チアゾールスルホンアミド、ニトロケイ皮酸、ロテノン、7−(ジエチルアミノ)クマリン−3−カルボン酸、ベンゾジアゼピン又はベンゾフランハプテンを含む(例えば、参照により本明細書に援用される国際特許出願公開第2012/003476号を参照)。(例えば標識プローブへの組み込みを容易にするために)ハプテン及び他の標識をdNTPにコンジュゲートするための方法は、当該技術分野でよく知られている。手順の例については、例えば米国特許第5258507号、第4772691号、第5328824号、及び第4711955号を参照のこと。実際に、多くの標識dNTPが、例えばLife Technologies(Carlsbad、CA)から市販されている。標識は、リン酸(例えばα、β又はγリン酸)又は糖などのdNTP上の任意の位置で直接的に又は間接的にdNTPに付着しうる。
標識核酸分子の検出は、ゲノム標的核酸に結合したハプテン標識核酸分子を一次抗ハプテン抗体と接触させることによって得ることができる。一例では、一次抗ハプテン抗体(例えばマウス抗ハプテン抗体)が、酵素で直接的に標識される。別の例では、酵素にコンジュゲートした二次抗種抗体(例えばヤギ抗マウスIgG抗体)が、シグナル増幅のために使用される。発色性in situハイブリダイゼーション(CISH)においては発色性基質が添加され、SISHの場合には、参照の特許/出願で概説されるように、銀イオン及び他の試薬が添加される。
いくつかの例では、プローブは、酵素(重合)反応を使用して一又は複数の標識されたdNTPを組み込むことにより標識される。例えば、(例えばプラスミドベクターに組み込まれた)本開示の核酸プローブは、(例えばビオチン、DNP、ジゴキシゲニン等を使用する)ニックトランスレーションによって、又はターミナルトランスフェラーゼによるランダムプライマー伸長(例えば3’末端テーリング)によって標識されうる。いくつかの例では、核酸プローブは、DNAポリメラーゼIのデオキシリボヌクレアーゼI(DNaseI)に対する比率が出発物質の100%超を生産するように改良されている改良ニックトランスレーション反応によって標識される。特定の例では、このニックトランスレーション反応は、DNAポリメラーゼIをDNase Iに対して少なくとも約800:1、例えば少なくとも2000:1、少なくとも4000:1、少なくとも8000:1、少なくとも10000:1、少なくとも12000:1、少なくとも16000:1、例えば約800:1から24000:1の比率で含み、また、該反応は、実質的に等温度、例えば約 16℃から25oC(例えば室温)で一晩(例えば約16〜22時間)実施される。プローブセットにプローブが含まれる場合(例えば複数のプラスミド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上のプラスミド)、該プラスミドは、標識反応(例えばニックトランスレーション又は改良ニックトランスレーション)を実施する前に等モル比で混合されてもよい。
他の例では、化学標識法も用いられうる。多くの試薬(ハプテン、フルオロフォア、及び他の標識ヌクレオチドを含む)並びに他のキットが、本開示の核酸プローブを含む核酸の酵素標識用に市販されている。当業者には明らかであるように、上に開示された標識及び検出方法のいずれも、(例えばin situハイブリダイゼーション反応における使用のための)プローブを標識化する文脈において適用可能である。例えば、Amersham MULTIPRIME(登録商標)DNA標識システム、Molecular Probes/Life Technologiesより入手可能な種々の特異的な試薬及びキット又は他の任意の類似の試薬及びキットが本明細書に開示の核酸を標識するために使用されうる。特定の例において、本開示のプローブは、直接的又は間接的に、ハプテン、リガンド、蛍光部分(例えばフルオロフォア又は半導体ナノ結晶)、発色性部分又は放射性同位体で標識されうる。例えば、間接的な標識化の場合、標識は、リンカー(例えばPEG又はビオチン)を介して核酸分子に付着しうる。プローブ核酸分子を標識するために使用されうる追加の方法が、米国特許第7541455号に提供されている。
E.染色体計数のためのin situハイブリダイゼーション法
本発明はまた、一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを用いる遺伝子標的及び染色体(例えば染色体のセントロメア標的)の検出のための、in situハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、例えば明視野ISHアッセイを特徴とする。例えば、方法は、染色体(例えば17番染色体)のコントロール領域に特異的なコントロールプローブと組織試料を接触させることを含み、ここでコントロールプローブは少なくとも一の第一の標識で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブである。コントロールプローブは、対照試料に適用した場合に、3時間以内に≧2の染色強度及び核の≧50%の染色範囲を得るように構成されてもよい。該方法は、約3時間未満(例えば≦約2.5時間、≦約2時間、≦約 1.5時間又は≦約1時間)の時間条件下でコントロールプローブをコントロール領域にハイブリダイスすること、試料をすすいで非結合プローブを除去すること、及びハイブリダイズされたプローブの存在を検出することをさらに含む。
いくつかの実施態様において、本方法は、染色体のコントロール領域(例えばHER2)に特異的なコントロールプローブと組織試料を接触させることをさらに含み、ここでコントロールプローブは少なくとも一の第二の標識で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブである。
いくつかの実施態様において、該方法は、第一の標識を認識する発色性検出試薬を適用すること、及び前記第一の標識に関連するシグナルを増幅させることをさらに含む。該方法は、本明細書に記載の一又は複数のプローブ(例えば配列番号3〜16)又はシステムの使用を特徴としうる。
ゲノム特異的なブロッキングDNA(例えばヒトDNA、例えば全ヒト胎盤DNA又はCot−1TMDNA)は、ヒトゲノム標的核酸と相補的なプローブを利用する場合に反復DNA配列へのハイブリダイゼーションを抑制するために、又は高度に相同の(しばしば同じ)オフ・ターゲット配列へのプローブのハイブリダイゼーションを妨ぐために、ハイブリダイゼーション溶液(例えばin situハイブリダイゼーション用)中に通常含まれる。ゲノム特異的なブロッキングDNAの非存在下で標準的プローブを用いるハイブリダイゼーションでは、「無反復」プローブを使用する場合であっても、許容できないほど高レベルのバックグラウンド染色(例えば非標的核酸配列へのハイブリダイゼーションのような非特異的結合)が、通常存在する。本開示の核酸プローブは、ブロッキングDNAの非存在下でも、低減されたバックグラウンド染色を示す。特定の例では、本開示のプローブを含むハイブリダイゼーション溶液は、ゲノム特異的なブロッキングDNA(該プローブがヒトゲノム標的核酸に相補的である場合、例えば全ヒト胎盤DNA又はCot−1TMDNA)を含まない。この利点は、核酸プローブに含まれる標的配列の一意的に特異的な性質に由来し、各標識プローブ配列は、同族の一意的に特異的なゲノム配列にしか結合しない。これは、ISH法のシグナル対ノイズ比の劇的な増加をもたらす。
このように、本明細書中のいくつかの方法は、ブロッキングDNAの使用を免れうる。しかし、いくつかの実施態様では、ブロッキングDNAを使用してもよい。いくつかの実施態様では、ある量のブロッキングDNAiが使用されるが、その量は、非特異的結合の特定のパーセント、例えば50%、40%、30%、20%又は10%未満だけを遮断するのに十分な量である。
非特異的結合の特定のパーセント(例えば50%)以下を遮断するのに十分なブロッキングDNAの量を決定するために、以下の試験が実施されうる。In situハイブリダイゼーションアッセイを設定し、染色体のコントロール領域に特異的な二本鎖コントロールプローブと組織試料を(ゼロから連続的に、徐々に増加する量のブロッキングDNAと組み合わせて)接触させ、二本鎖コントロールプローブをコントロール領域にハイブリダイズさせ、試料をすすいで非結合二本鎖プローブを除去し、ハイブリダイズされたプローブの存在を検出する。次いで、各アッセイにおいて連続的にブロッキングDNAを増加させることによりブロックされるバックグラウンドの量を観察する。バックグラウンドの特定のパーセントのブロッキングを得るブロッキングDNAの量は、非特異的結合の特定のパーセント(例えば50%)以下を遮断するのに十分なブロッキングDNAの量に相当する。例えば、バックグラウンドの50%を遮断することを得るブロッキングDNAの量は、非特異的結合の50%以下を遮断するのに十分なブロッキングDNAの量に相当する。
いくつかの実施態様では、前記ブロッキングDNAの量は、約1pg/mlから1mg/mlである。いくつかの実施態様では、前記ブロッキングDNAの量は、約1pg/mlから0.5mg/mlである。いくつかの実施態様では、前記ブロッキングDNAの量は、約1pg/mlから0.25mg/mlである。いくつかの実施態様では、前記ブロッキングDNAの量は、約1pg/mlから1μg/mlである。
いくつかの例示的な実施態様では、細胞あたり二の明視野発色性in situハイブリダイゼーションシグナルを得るための方法は、単一の染色体のコントロール領域に特異的なコントロールプローブ(これはブロッキングDNAの非存在下で明らかに非特異的に結合しないように選択されている)と複数の細胞を含有する組織試料を接触させること、該コントロールプローブを前記染色体のコントロール領域にハイブリダイズさせること、試料をすすいで非結合プローブを除去すること、及び細胞あたり二の明視野発色性in situハイブリダイゼーションシグナルを生成するために、ハイブリダイズされたプローブの存在を発色試薬を介して検出することを含みうる。選択されたプローブがブロッキングDNAの非存在下で明らかに非特異的に結合しないことを決定するために、前記のアッセイ(アッセイ1)と併せて、比較アッセイ(アッセイ2)を実施することができ、アッセイ1とアッセイ2の両方で同じ選択されたプローブが使用される。アッセイ1はブロッキングDNAなしで、アッセイ2はブロッキングDNAを用いる。次いで、この二つのアッセイのそれぞれのデータが比較される。二つのそれぞれのアッセイのデータが同じか又は実質的に同じである場合、選択されたプローブは、ブロッキングDNAの非存在下で、明らかに非特異的に結合しない。
いくつかの例では、ハイブリダイゼーション溶液は、負に帯電したプローブDNAに非特異的に結合することができる高い正味正電荷を有する非DNA物質(例えば反応容器又はスライド)に対するプローブの非特異的結合を減少させるために、異なる生物からのキャリアDNA(ゲノム標的核酸がヒトゲノム標的核酸である場合、例えばサケ精子DNA又はニシン精子DNA)を含有してもよい。
本発明の方法は、シグナルを検出することを含むことができ、ここで、組織試料の核の50%超が前記染色体の計数可能なシグナルを有し、計数可能なシグナルは一般に、(例えば上記のように)円形である。いくつかの実施態様では、バックグランドシグナルは、組織試料の細胞の>70%において観察されない。いくつかの実施態様では、バックグランドシグナルは、組織試料の細胞の>80%において観察されない。いくつかの実施態様では、バックグランドシグナルは、組織試料の細胞の>90%において観察されない。いくつかの実施態様では、バックグランドシグナルは存在するが、核の>50%において計数可能なシグナルの識別を可能にするほど十分弱い。
いくつかの実施態様では、核の60%超が計数可能な染色体シグナルを有する。いくつかの実施態様では、核の70%超が計数可能な染色体シグナルを有する。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の60%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の75%以上である。いくつかの実施態様では、内半径は、外半径の90%以上である。
In situハイブリダイゼーション(ISH)は、中期又は間期の染色体調製物(例えばスライドにマウントされた細胞又は組織試料)の文脈で、標的核酸(例えばゲノム標的核酸)を含む試料を、標的核酸に対して特異的であるか又は特異的にハイブリダイズ可能な標識されたプローブ(例えば本明細書に開示のプローブの一又は複数)と接触させることを伴う。スライドは、例えば均一なハイブリダイゼーションを妨害しうるパラフィン又は他の物質を除去するために、前処理されてもよい。二本鎖核酸を変性させるために、染色体試料及びプローブは両方とも、例えば加熱により処理される。プローブ(適切なハイブリダイゼーション緩衝液中で調製されたもの)及び試料は、ハイブリダイゼーションが起こるのを可能にするような条件下でかつ十分な時間(典型的には、平衡に到達するまで)混合される。染色体調製物は過剰のプローブを除去するために洗浄され、標的の特異的標識の検出が標準的な技術を用いて実施される。
例えば、ビオチン化プローブは、蛍光標識アビジン又はアビジン−アルカリホスファターゼを用いて検出されうる。蛍光色素検出については、蛍光色素を直接的に検出することができ、又は試料を、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合アビジンと共にインキュベートすることができる。必要であれば、FITCシグナルの増幅を、ビオチン結合ヤギ抗アビジン抗体とのインキュベーション、洗浄、及びFITC結合アビジンとの第二のインキュベーションにより行うことができる。酵素活性による検出のために、試料を、例えばストレプトアビジンとインキュベートし、洗浄し、ビオチン結合アルカリホスファターゼとインキュベートし、再度洗浄し、(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)緩衝液中で)プレ平衡化することができる。酵素反応は、例えば NBT/BCIP含有AP緩衝液中で実施し、2X SSC中でのインキュベーションにより停止することができる。In situハイブリダイゼーション法の一般的な説明については、例えば、米国特許第4888278号(その開示はその全内容が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
FISH、CISH、及びSISHのための多くの手順が当技術分野で知られている。例えば、FISHを実施するための手順が米国特許第5447841号;第5472842号;及び第5427932号に記載されており、CISHが米国特許第6942970号に記載されており、また追加の検出方法が米国特許第6280929号で提供され、これらの開示はその全内容が参照により本明細書に援用される。
感度、解像度又は他の所望の特性を改善するために、多くの試薬及び検出スキームがFISH、CISH、及びSISH法と組み合わせて使用されうる。上述のように、FISHを実施する場合、フルオロフォア(蛍光染料及び量子ドットを含む)で標識されたプローブを、直接的に光学的に検出することができる。あるいは、プローブは、例えばハプテンのような非蛍光性分子(例えば、次の非限定的例:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、及び種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオウレア、ロテノン、
クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物、及びそれらの組み合わせ)、リガンド又は他の間接的に検出可能な部分で標識されうる。このような非蛍光性分子(及びそれらが結合する標的核酸配列)で標識されたプローブは、次いで試料(例えばプローブが結合する細胞又は組織試料)を、選択したハプテン又はリガンドに特異的な抗体(又は受容体若しくは他の特異的な結合パートナー)などの標識された検出試薬と接触させることにより検出されうる。検出試薬は、フルオロフォア(例えば量子ドット)又は他の間接的に検出可能な部分で標識することができ、又は一若しくは複数の追加の特異的結合剤(例えば二次抗体又は特異的抗体)と接触させて、その結果としてフルオロフォアで標識することができる。場合によって、検出可能な標識は、抗体、受容体(又は他の特異的結合剤)に直接的に付着している。
あるいは、検出可能な標識は、ヒドラジドチオールリンカー、ポリエチレングリコールリンカーなどのリンカーを介して、又は同等の反応性を有するその他の任意のフレキシブルな付着部分を介して接合剤に付着する。例えば、抗体、受容体(又は他の抗リガンド)、アビジン等の特異的な結合剤は、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーなどのヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介して、フルオロフォア(又は他の標識)で共有結合的に修飾されうる。ヘテロ二官能性リンカーは、例えばカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基、及び光反応性基から選択される二の異なる反応性基を結合し、これらのうちの第一のものは標識に付着し、第二のものは特異的な結合剤に付着する。
他の例では、プローブ又は特異的結合剤(例えば一次抗体などの抗体、受容体又は他の結合剤など)は、蛍光発生組成物又は発色性組成物を検出可能な蛍光シグナル、着色シグナル又は(例えばSISHで検出可能な金属粒子の沈着などのような)他の検出可能なシグナルに変換することが可能な酵素で標識されている。上記のように、酵素は、リンカーを介して関連するプローブ又は検出試薬に直接的又は間接的に付着しうる。適切な試薬(例えば結合試薬)及び化学物質(例えばリンカー及び連結化学物質)の例は米国特許出願公開第2006/0246524号、第2006/0246523号、及び第2007/0117153号に記載されており、これらの開示はその全内容が参照により本明細書に援用される。
さらなる例において、プローブの感度を上げるために、例えばシグナル増幅法が利用される。例えば、チラミドシグナル増幅を利用してもよい(開示の全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第5196306号参照)。この方法の一つの変形例において、ビオチン化核酸プローブは、標的に結合することにより標的の存在を検出する。次に、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートが加えられる。ストレプトアビジンは、ビオチンに結合する。ビオチン化チラミドの基質(チラミンは4−(2−アミノエチル)フェノールである)が使用され、それはペルオキシダーゼ酵素と相互作用する際、恐らくフリーラジカルになる。フェノール系ラジカルは、次いで周囲の物質と素早く反応し、それゆえ近傍にビオチンを沈着させるか又は固定する。このプロセスはさらなる基質(ビオチン化チラミド)を与え、さらに局在化されたビオチンを増大させることにより繰り返される。最後に、「増幅された」ビオチン沈着物が、蛍光分子に付着したストレプトアビジンで検出される。あるいは、増幅されたビオチン沈着物は、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体で検出することができ、次いで3,3’−ジアミノベンジジンが供給され、褐色の色が生成される。蛍光分子に付着したチラミドは、酵素の基質としても働くことが判明しており、ゆえに工程を除外することによってこの方法は簡略化される。さらに別の増幅法が米国特許出願公開第2013/0260379号に記載されており、その開示の全内容は参照により本明細書に援用される。
他の例において、シグナル増幅法は、分岐DNA(bDNA)シグナル増幅を利用する。いくつかの例において、標的特異的オリゴヌクレオチド(標識増量剤(label extender)及び捕捉増量剤(capture extender)が高ストリンジェンシーで標的核酸にハイブリダイズされる。捕捉増量剤は、標的にハイブリダイズしてプローブを捕捉するように設計されており、プローブがマイクロウェルプレートに付着する。標識増量剤は、標的の連続した領域にハイブリダイズし、前置増幅器オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのための配列を提供するように設計されている。次いで、シグナル増幅が標識増量剤にハイブリダイズする前置増幅器プローブから始まる。前置増幅器は、二の隣接する標識増量剤にハイブリダイズする場合にのみ、安定なハイブリッドを形成する。前置増幅器の他の領域は、分岐構造を作成する多数のbDNA増幅分子にハイブリダイズするように設計されている。最後に、bDNA増幅配列に相補的なアルカリホスファターゼ(AP)標識オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションによってbDNA分子に結合する。bDNAシグナルは、AP反応の化学発光生成物である(例えば、開示の全内容が参照により本明細書に援用される、Tsongalis、Microbiol. Inf. Dis.、126:448-453、2006;米国特許第7033758号を参照のこと)。
さらなる例において、シグナル増幅法は、重合抗体を利用する。いくつかの例において、標識プローブは、標識に対する一次抗体(例えば抗DIG又は抗DNP抗体)を用いることにより検出される。一次抗体は、重合二次抗体(例えば重合HRP−コンジュゲート二次抗体又はAP−コンジュゲート二次抗体)によって検出される。AP又はHRPの酵素反応は、可視化することができる強力なシグナルの形成をもたらす。
標識プローブに特異的な結合剤の対を適切に選択することによってマルチプレックス検出スキームを作成し、(例えば単一の細胞若しくは組織試料又は二以上の細胞若しくは組織試料での)単一のアッセイにおいて複数の標的核酸(例えばゲノム標的核酸)の検出を容易にすることができることが当業者によって理解されるだろう。例えば、第一標的核酸に対応する第一のプローブをビオチンなどの第一のハプテンで標識化することができ、一方、第二の標的核酸に対応する第二のプローブをDNPなどの第二のハプテンで標識化することができる。試料をプローブに曝露した後、試料を第一の特異的な結合剤(この場合、第一のフルオロフォア(例えば585nmで発光する第一のスペクトル的にはっきりした量子ドット)で標識化されたアビジン)と第二の特異的な結合剤(この場合、第二のフルオロフォア(例えば705nmで発光する第二のスペクトル的にはっきりした量子ドット)で標識化された抗DNP抗体又は抗体断片)とを接触させることによって、結合されたプローブを検出することができる。追加のプローブ/結合剤の対も、他のスペクトル的にはっきりしたフルオロフォアを使用してマルチプレックス検出スキームに加えることができる。直接的及び間接的な数多くの変形例(一つの工程、二つの工程又はそれ以上)を想定することができ、そのすべてが、本開示のプローブ及びアッセイの文脈において適切である。
例えばCISH法及びSISH法に利用されるような特定の検出方法に関するさらなる詳細は、Dako Corporation(Santa Barbara, CA)刊、Bourne, The Handbook of Immunoperoxidase Staining Methodsに見出される。
ISH試験においてしばしば遭遇する困難は、組織が典型的に保存される方法に起因しうる。何十年もの間、診断病理学研究室の主力は、切片化され、ガラススライドにマウントされた、組織のホルマリン固定、パラフィン包埋ブロックであった。このような防腐剤中での固定は、アミノ酸及び核酸双方の巨大分子の架橋を生じさせる。これらの架橋成分は、標的核酸へのプローブの接近を許容して、抗体が対応する抗原を認識できるようにするためには除去されなければならない。抗原及び/又は核酸の「アンマスキング」は、典型的には複数の前処理、タンパク質消化、及び洗浄工程を使用して手作業で達成される。染色の前に、パラフィンが抗体又はプローブ結合を妨害しないように、パラフィンの完全な除去が必要とされる。脱パラフィンは、パラフィン系溶剤(例えばキシレン、キシレン代替品又はトルエン)である複数(例えば二又は三)の逐次の透徹試薬の使用によって達成されうる。
いくつかの実施態様では、準備は細胞コンディショニング工程を含む。細胞コンディショニングは、出典明示によりその主題事項が援用される米国特許第6855552号のTowne, et al. 「Automated immunohistochemical and in situ hybridization assay formulations」で詳細に論じられている例示的な細胞コンディショニング工程では、細胞コンディショニング試薬が適用され、試料が適切な時間の間、適切な温度で接触させられて、抗原標的及び/又は核酸標的が検出のために十分に発現されるようになる。本開示の一態様は、自動機器が、ユーザーの入力に応じて細胞コンディショニングの継続時間及び/又は温度を自動的に調整することができることである。細胞コンディショニングは、プロテアーゼ試薬を適用することをさらに含みうる。例示的には、プロテアーゼ処理は、生体試料にプロテアーゼ溶液を接触させる工程を伴いうる。プロテアーゼ処理は、細胞コンディショニングと同様に、標的抗原及び/又は標的核酸の発現を増加させることが意図されている。
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの核酸標的(ISH)用の細胞コンディショニング試薬が使用されうる。接触は、約2から約90分間、約95℃の温度でなされうる。考えられる試薬の部分的なリストが、Analytical Morphology, Gu編., Eaton Publishing Co. (1997)の1〜40頁にある。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はエチレングリコールがコンディショニング溶液に含まれていてもよい。さらに、金属イオン又は他の物質をこれらの試薬に添加して、細胞コンディショニングの効果を高めてもよい。例示的な細胞コンディショニング溶液は、アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手できる(Cell Conditioning 1(CC1) カタログ#:950−124;Cell Conditioning 2(CC2) カタログ#:950−123;SSC (10X) カタログ#:950−110;ULTRA Cell Conditioning(ULTRA CC1) カタログ#:950−224;ULTRA Cell Conditioning(ULTRA CC2) カタログ#:950−223、Protease 1 カタログ#:760−2018;Protease 2 カタログ#:760−2019;Protease 3 カタログ#:760−2020)。いくつかの実施態様では、in situハイブリダイゼーション結合試薬の適用は、細胞コンディショニング試薬の適用後で発色試薬の適用前に発生する。
例示的な実施態様では、該方法はすすぎ試薬を適用することを含む。本明細書に記載の様々な工程の合間に、また本明細書に記載のシステムの一部として、すすぎ工程が先の工程からの未反応残留試薬を除去するために加えられうる。すすぎ工程は、混合を伴って又は混合を伴わないで予め決められた温度で予め決められた時間、試料上にすすぎ試薬を維持することを含むインキュベーションをさらに含みうる。このすすぎ工程に適した条件は、様々な工程間で異なっていてもよい。例示的なすすぎ試薬は、アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手可能である(Reaction Buffer (10x) カタログ#:950−300;Special Stains Wash(10x) カタログ#:860−015)。
アリゾナ州ツーソンのヴェンタナメディカルシステムズ社から入手可能である例示的な自動システムは、SYMPHONY(登録商標)Staining System、カタログ#:900−SYM3、VENTANA(登録商標)BenchMark Automated Slide Preparation Systems、カタログ#:N750−BMKXT−FS、N750−BMKU−FS、VENTANA、及びVENTANA(登録商標)BenchMark Special Stains自動化スライド染色装置を含む。これらのシステムは、放射状に配置されたスライドを支持する回転カルーセルを含むマイクロプロセッサ制御システムを用いている。ステッパモータがカルーセルを回転させ、スライド上方に位置する一連の試薬ディスペンサーのうちの一つの下に各スライドを配置する。スライド及び試薬ディスペンサー上のバーコードは、コンピュータの適切なプログラミングによって、様々な組織試料のそれぞれについて異なる試薬処理を行うことができるように、ディスペンサーとスライドのコンピュータ制御された位置決めを可能にする。
本発明は、一本鎖オリゴヌクレオチドベースのHER2/CHR17二重ISHアッセイを説明するが、当業者であれば他の目的の遺伝子/セントロメアの組み合わせに本明細書に開示の発見を適用することができるであろう。
いくつかの実施態様では、本開示のシステム(例えばプローブ)は、生物学的試料(例えば組織試料)中の標的核酸(例えばHER2)のコピー数を決定する方法において使用することができる。遺伝子又は染色体領域のコピー数を決定する方法は、当業者によく知られている。いくつかの例では、該方法は、in situハイブリダイゼーション(例えば蛍光、発色性又は銀in situハイブリダイゼーション)、比較ゲノムハイブリダイゼーション又はポリメラーゼ連鎖反応(例えばリアルタイム定量的PCR)を含む。いくつかの例では、遺伝子のコピ−数を決定する方法は、一又は複数の個々の細胞中の標的核酸に対するISHシグナルの数(蛍光、着色又は銀スポット)をカウントすることを含む。該方法はまた、該細胞中の参照(例えば染色体特異的プローブ)に対するISHシグナルの数(蛍光、着色又は銀スポット)をカウントすることも含む。特定の例では、遺伝子(又は染色体)のコピ−数は、スライドをスコアリングする人(自動化法の場合にはコンピュータ−)により見積もられる。いくつかの例では、対照と比較して増加したコピー数(例えば対照試料又は参照値と比較して約1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍又はそれ以上)は、標的核酸コピー数の増加を示す。
いくつかの例では、該方法は、異常でないことがわかっている染色体遺伝子座、例えばセントロメアなどの参照細胞又は核当たりのコピー数をカウントすることを含む。いくつかの例では、該参照は目的の遺伝子と同じ染色体上にある。目的の特定のヒト遺伝子のために使用されうる例示的な参照染色体を表2に示す。特定の例では、参照遺伝子座は、セントロメア特異的プローブを用いることにより検出される。そのようなプローブは当該技術分野で知られており、例えばVysis CEPプローブ(Abbott Molecular、Des Plaines、IL)及びSPOTLIGHTセントロメアプローブ(Invitrogen、Carlsbad、CA)のように、市販されている。いくつかの例では、約2を上回る(例えば2、3、4、5、10、20又はそれ以上)参照コピー数に対する標的核酸コピー数の比率は、標的核酸コピー数の増加を示す。
F.スコアリングの方法
本発明はまた、標的領域の遺伝子コピ−数のスコアリング方法及び場合によっては標的領域の遺伝子コピ−数をコントロール領域の該コピー数と比較する方法を特徴とする。本明細書に記載の方法と共に使用することができる追加のスコアリングの方法については、ISHスコアリングに関する開示のために参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0141472号が参照される。
いくつかの例では、増加した遺伝子コピ−数は、約2コピー以上の(例えば2、3、4、5、10又は20コピー)、試料中の核あたりの遺伝子コピー数(例えば核当たりの平均遺伝子コピ−数)を含む。他の例では、増加した遺伝子コピ−数は、約2以上の、試料中の遺伝子コピ−数のそれに対応する染色体コピー数に対する比率(例えば2、3、4、5、10又は20以上の比率)を含む。さらなる例では、増加した遺伝子コピ−数は、対照と比較した遺伝子コピー数の増加(例えば約1.5倍、約2倍、約3倍、約5倍、約10倍、約20倍又はそれ以上の増加)を含む。したがって、いくつかの例では、該方法は、対象の試料中の遺伝子コピ−数を対照又は参照値又は適切な正常組織中の遺伝子コピ−数の予測値の範囲と比較することを含む。
また、本明細書で開示されるのは、対象由来の試料中の遺伝子コピ−数のスコアリング法(例えば計数すること)であって、ここで試料はISH(例えばFISH、SISH、CISH又はこれらの二若しくはそれ以上の組み合わせ)により目的の遺伝子が染色され、遺伝子の個々のコピーは試料中の細胞において区別可能である。特定の例において、試料は、腫瘍試料のような、対象由来の生体試料(例えば腫瘍生検)である。ISHにより遺伝子コピ−数を決定する方法は、当該技術分野でよく知られている。
いくつかの実施態様では、該方法は、核あたりの遺伝子のシグナル数の最大数(例えば試料中の最も強いシグナル)を有する試料中の個々の細胞を同定すること、同定された細胞中の遺伝子のシグナル数をカウントすること、及び細胞あたりのシグナルの平均数を決定し、それにより試料中の遺伝子コピ−数をスコアリングすることを含む。さらなる実施態様において、該方法は、参照(例えばセントロメアDNAのような、異常でないことが分かっている染色体遺伝子座)へのシグナル数をカウントすること、及び細胞あたりの参照へのシグナル数に対する遺伝子へのシグナル数の平均比率を決定することをさらに含む。
本スコアリング方法は、試料中の細胞の目的の遺伝子のシグナル数が最も多い(例えば細胞あたりのスポットが最大数又は最も明るい染色強度)試料(例えば組織切片又は腫瘍コア)中の個々の細胞を同定することを含みうる。したがって、本開示の方法は、試料中の細胞のランダム抽出における遺伝子コピ−数を決定することではない。むしろ、該方法は、試料中の遺伝子コピー数の最大数を有する細胞における遺伝子コピー数を明確にカウントすることを含む。いくつかの例では、遺伝子のシグナル数の最大数を有する個々の細胞を同定することは、弱拡大顕微鏡下(例えば約20><倍率)でISHにより遺伝子を染色された試料を調べることを含む。最強シグナル(例えば強拡大下での最高の増幅シグナル)を有する細胞は、視覚又は自動撮像システムによってカウントのために同定される。試料が組織切片である場合などのいくつかの例において、試料は、腫瘍細胞が集中し、遺伝子増幅を有する領域を同定するために(例えば視覚的走査で)調べられる。次いで、選択した領域で最大の増幅度を有する細胞における遺伝子コピ−数をカウントする。試料が腫瘍コア(腫瘍マイクロアレイなど)であるような他の例において、試料の大半は弱拡大顕微鏡下の視野で目視でき、最強シグナル(例えば強拡大下での最高の増幅シグナル)を有する個々の細胞(腫瘍細胞など)がカウントのために別々に同定される。特定の例では、遺伝子コピー数のカウントのために選択される細胞は、互いに隣接せず又は接触していない細胞など、非連続細胞であってもよい。他の例では、遺伝子コピー数のカウントのために選ばれる細胞のうちの少なくともいくつかは、互いに隣接又は接触している細胞など、連続的細胞であってもよい。
本開示の方法は、同定された細胞中の遺伝子に対するISHシグナルの数(蛍光、着色又は銀スポット等)をカウントすることを含む。本方法はまた、同定された細胞中の参照(例えば染色体特異的プローブ)に対するISHシグナルの数(蛍光、着色又は銀スポット)をカウントすることも含む。いくつかの例では、細胞あたりのスポット数は同定された細胞において区別可能であり、スポットの数がカウント(又は計数)され、記録される。他の例において、一又は複数の同定された細胞は、カウント(又は計数)できない核の中の複数の重なったシグナルの存在であるクラスターを含みうる。特定の例では、遺伝子(又は染色体)のコピ−数は、スライドをスコアリングする人(自動化法の場合にはコンピュータ−)により見積もられる。例えば、病理学の当業者は、試料中の遺伝子コピー数の計数経験に基づいて、クラスターが特定の数の遺伝子コピー(例えば10、20又はそれ以上のコピー)を含有することを見積もることができる。他の例では、クラスターの存在は、クラスターに存在するコピー数を見積もることなしに、一つのクラスターとして記録されうる。
カウントのために同定された細胞数は、遺伝子コピー数の変化(例えば増加又は減少)の検出を行うのに十分な細胞数である。いくつかの例では、カウントのために同定された細胞数は、少なくとも約20、例えば少なくとも25、30、40、50、75、100、200、500、1000細胞又はそれ以上である。特定の例では、約50細胞がカウントされる。他の例では、目的の遺伝子の3以上のコピー(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又はそれ以上)を含有する、試料中のすべての細胞又は顕微鏡視野内のすべての細胞、又は複数の顕微鏡視野(少なくとも2つの顕微鏡の視野、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの顕微鏡視野等)内のすべての細胞がカウントされる。
方法は、本明細書に開示の方法に従ってISHが実施された試料を得ることを特徴としうる。最多のコピー数を有する腫瘍核の領域が同定され、計数可能な染色体/標的のシグナルが50〜100の腫瘍核及び、50の隣接する間葉核又は50の隣接する正常上皮核のいずれかにカウントされる。
次のようなスコアリング基準であってもよい:染色なし又は<1ドット/10細胞はスコア0;1〜3ドット/細胞はスコア1;4〜9ドット/細胞、ドットなし又はごく少数のドットのクラスターはスコア2;10〜15ドット/細胞かつ<10%のドットがクラスターに存在はスコア3;及び>15ドット/細胞かつ>10%のドットがクラスターに存在はスコア4としてスコア化される。
いくつかの実施態様では、核あたりの標的シグナル(例えばHER2)の平均数が計算される。いくつかの実施態様では、核あたりの染色体(例えばCHR17)コピーの平均数が計算される。いくつかの実施態様では、標的シグナル対染色体シグナル比率が計算される。
本開示は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
実施例1
A.標本
乳房組織試料は、一本鎖オリゴヌクレオチドHER2並びに/又はCHR17単一及び二重ISHアッセイを開発し、最適化するために利用された。試料は、Ventana Medical Systems,Inc.(Tucson,AZ)にて維持されていた組織標本アーカイブから入手した。これらの試料は、デアイデンティファイされていて患者情報からのリンクがなく、ゆえに患者のインフォームドコンセントが必要ない(6)、余剰臨床標本であった。ホルマリン固定、パラフィン包埋された乳房組織の組織コアを含有するパラフィン切片(4μm)をSUPERFROST Plusガラススライド上に配した。
B.プローブ
INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe試薬は、ジゴキシゲニン標識(DIG)Chr17プローブと4mg/mlヒトブロッキングDNAが入ったホルムアミドベースの緩衝液と、12μg/mlのジニトロフェニル(DNP)標識HER2プローブとのカクテルを含有するプローブディスペンサーを含む。
一本鎖オリゴヌクレオチドHER2プローブ(HER2オリゴヌクレオチドプローブ)は、特異的にHER2遺伝子領域を標的とする、ジニトロフェニル(DNP)標識、無反復ゲノムプローブである。INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeと同様に、HER2オリゴヌクレオチドプローブは、HER2標的領域を包含する、ヒト17番染色体のヒトゲノムDNAの>327,000のヌクレオチド(nt)(35,027,979〜35,355,516)にまたがる(UCSC Genome Browser on Human May 2004(NCBI35/hg17)Assembly)。HER2オリゴヌクレオチド配列は、INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにおける配列から設計された。HER2オリゴヌクレオチドの各々は、80−merの長さで設計された。それゆえ、非標的結合のためのストリンジェンシーレベルは、上記オリゴヌクレオチドプローブの設計基準に応じて上げられた。HER2オリゴヌクレオチドプローブの特異性は、ISHアッセイ試験条件下で中期スプレッドについて実験的に検証された。
HER2標的領域周辺のHER2に特異的な核酸配列を同定するために、バイオインフォマティクス検索を使用した。選択されたゲノム標的核酸配列は、連続した非重複80ntセグメントに分けられる。1196の〜80merオリゴヌクレオチドが合成され、各々が一つの脱塩基性ホスホラミダイト上に20nt分の間隔を空けて5のDNPハプテンを有する。このようなオリゴヌクレオチドの代表的な構造を図1(A)〜(B)に示す。図1(A)の太字部分(配列番号1でもある)を図1(B)においてより詳細に示す。該オリゴヌクレオチドをアフィニティー精製し、質量分析及びゲル電気泳動により解析した。HER2オリゴヌクレオチドプローブは、ヒトブロッキングDNAなしでホルムアミドベースの緩衝液へまとめられた。最初のスクリーニング工程では、オリゴヌクレオチドの数、DNPハプテンの数及び間隔が、HER2遺伝子の感度及び特異性のために、ヒトブロッキングDNAなしでホルムアミドベースの緩衝液中で機能的に試験された。
二本鎖HER2プローブ(HER2 dsプローブ)は、INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにおいて、同じHER2 DNAテンプレートを用いてDNP標識された。HER2 dsプローブは、ホルムアミドベースの緩衝液中に4mg/mlのヒトブロッキングDNAを用いて製剤化された。HER2 dsプローブは、単一のISHアッセイでのみ使用された。
上記の市販品のINFORM HER2 DUAL ISH DNAは、DIG標識Chr17プローブとDNP標識HER2とのカクテルを0.75ug/ml含有するディスペンサーを含む。
一本鎖オリゴヌクレオチドChr17プローブ(Chr17オリゴヌクレオチドプローブ)は、58bpから87bpの長さの14のオリゴヌクレオチドからなるプールで作られた。各オリゴヌクレオチドは、その5’末端に配列 TATTTTTATTTTを有する非結合テール上の二のDIGハプテン分子で標識された(図2(A)〜(C)参照。図2(A)は、5’テールを含む例示的なChr17プローブ配列(配列番号2)を示し、図2(B)は、図2(A)の太字のアミノC6+Dig領域のさらに詳しい構造を示し、及び図2(B)は、太字のAm〜Uni+Dig領域のより詳しい構造を示す)。このようなオリゴヌクレオチドは、PAGE精製され、質量分析で解析された。Chr17オリゴヌクレオチドプローブは、ヒトブロッキングDNAなしでホルムアミドベースの緩衝液中で製剤化された。最初のスクリーニング工程では、総計28のオリゴヌクレオチドの、17番染色体セントロメアに対する特異性が試験された。これらは、DISHアッセイと同様にテスト用プールとして、この最初のスクリーニングのためにヒトブロッキングDNAなしで、ホルムアミドベースの緩衝液中で個別に製剤化された。HER2オリゴヌクレオチドプローブ(15μg/ml)及びCHR17オリゴヌクレオチドプローブ(0.5μg/ml)が、ヒトブロッキングDNAなしで、ホルムアミドベースの緩衝液中で製剤化された。例示的実施態様では、Chr 17プローブは、表3に挙げた配列のうちの一又は複数を含む。
C.間期スライドの自動明視野in situハイブリダイゼーション
BenchMark ULTRA自動スライド処理システム(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,Arizona,Arizona)が、一本鎖オリゴヌクレオチドHER2の発見及び性能評価、並びに/又はHER2とCHR17 DNA標的のためのCHR17単一及び二重ISHアッセイのために用いられた。FDA認可のINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe Assayプロトコールを組織染色のために用いた。短いハイブリダイゼーション時間(すなわち16分、32分、及び1時間)のために修正が行われた。特定の試験シナリオでは、一本鎖オリゴヌクレオチドHER2及び/又はChr17プローブを過剰標識INFORM HER2/Chr17プローブディスペンサーにおいて用いた。INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe Assay試薬は、ジニトロフェニル(DNP)標識HER2及びジゴキシゲニン標識(DIG)Chr17プローブカクテル、ultraView SISH及びultraView Alkaline Phosphatase Red ISH検出キット(Ventana Medical Systems,Inc.)を含む。スライドは69℃で脱パラフィン化され、これにpH6のクエン酸緩衝液との82℃でのインキュベーション、次にISH Protease 3による20分間の消化が続いた。プローブ(単数又は複数)は、最初に80℃で8分間変性され、次いで設定時間(6時間がFDA認可プロトコールのデフォルド)の間44℃でハイブリダイズされ、これにpH6.0のクエン酸緩衝液を用いた72℃での3回のストリンジェンシー洗浄が続いた。ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ウサギ抗DNP抗体リンカーの適用後に、その標的へのDNP結合HER2プローブの特異的ハイブリダイゼーションが銀クロモゲンの不溶性沈殿物によって可視化された。アルカリホスファターゼ標識マウス抗ジゴキシゲニン抗体リンカーの適用後、ジゴキシゲニン結合Chr17プローブの可視化が、アルカリホスファターゼ系Fast Red発色系の水溶性沈殿物によって検出された。組織の全体的な形態を可視化するために、スライドをヘマトキシリンで4分間対比染色し、次にブルーイング試薬で4分間ポスト対比染色した。
D.自動明視野染色体中期スプレッドISH染色:
中期染色体(CGH Metaphase Target Slides、Abbott Molecular)を、200mJのエネルギーレベルでStratalinker 2400(Stratagene Model # C00518)にUV架橋した。次いで、それらのスライドを室温で5秒間、1%トリプシン(Sigma カタログ#T1426)を用いて処理した。次いで、ベーキング、脱パラフィン、細胞コンディショニング、及び対比染色の工程を抜かす以外は上記と同じ条件下で、該スライドをISH染色のために処理した。染色が該機器で完了した後、スライドを、Gurr緩衝液(Gibco、カタログ#10582−013)で希釈した4%Giemsa(Gibco、カタログ#10092−03)を用いて室温で5分間染色し、その染色を通常の光学顕微鏡で可視化した。
E.解析スライドのスコアリング基準:
HER2/Chr17 DISH染色スライドの読影経験がある委員会認定病理医(P.B.)が該スライドを評価し、スコア化した。各スライドは、シグナル強度及びバックグラウンドについてスコア化された。解析スライドのスコアリング基準(表1)は、「許容可能」又は「許容不可能」な染色を記載している。「許容可能」又は「許容不可能」の基準は、シグナルのHER2又はChr17対が一のスライド上の20個の細胞中で計数可能か否かの可能性に対応している。このスコアリング基準は、アッセイ最適化のためにストリンジェント分析ツール(stringent analytical tool)として開発され、用いられた。
F.HER2及びChr17のシグナル計数
適切な標的領域が同定されると、読影者は20の代表的な核に存在するHER2及びChr17コピー数のスコアを記録した。得られるHER2/Chr17比率が1.8〜2.2の範囲内にある場合、読影者はさらに20の核をスコア化することが推奨され、得られる比率は、合計40の核から計算される。HER2遺伝子の状態は、非増幅(HER2/Chr17<2.0)又は増幅(HER2/Chr17>2.0)と報告されている。Interpretation Guide Ventana INFORM HER2 Dual ISH DNA Probe Cocktail Assayが参照されるが、これは該アッセイに関連する開示のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
G.HER2オリゴヌクレオチドプローブ性能評価:
HER2のオリゴヌクレオチドプローブは、速くハイブリダイズする。INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe(FDA認可のプロトコール、6時間ハイブリダイゼーション)による弱いHER2シグナルを有する乳房の症例が選択された。複製スライドを、短いハイブリダイゼーション時間(16、32、及び60分)でHER2オリゴヌクレオチドプローブ及びHER2 dsプローブ(各6.0μg/ml)で染色した。16分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル強度1.0&1.5(図3(A)及び(C))を示し、一方、HER2 dsプローブの染色強度は0.5&0.5(図3(B)及び(D))である。32分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル強度1.5&1.5を示し、一方、HER2 dsプローブの染色強度は1.0&1.5(図3(A))である。60分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル強度2.0&2.0を示し、一方、HER2 dsプローブの染色強度は2.0&1.5(図3(A))である。
16分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル範囲40%&30%(図3(B)及び(C))を示し、一方、HER2 dsプローブ染色のシグナル範囲は5%&20%(図3(B)及び(D))である。32分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル範囲50%&50%を示し、一方、HER2 dsプローブ染色のシグナル範囲は30%&25%(図3(B))である。60分間のハイブリダイゼーションの場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2シグナル範囲55%&60%を示し、一方、HER2 dsプローブ染色のシグナル範囲は50%&50%(図3(B))である。
HER2オリゴヌクレオチドプローブは、試験したすべてのハイブリダイゼーション時点でバックグラウンドシグナルを示さなかった。一方、HER2 dsプローブの染色は、弱いバックグラウンドを有する(32分時点で0.75及び0.25、60分時点で0.25及び0)。
2時間のハイブリダイゼーションの場合、INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeの染色は、HER2シグナル強度2&2.5及びシグナル範囲60%&65%を示す。6時間のハイブリダイゼーションの場合、INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeの染色は、HER2シグナル強度2&2.5及びシグナル範囲65%&65%を示す。これらのスライドでバックグラウンドは観察されなかった。
上記のデータは、HER2オリゴヌクレオチドがHER2 dsプローブよりも速くハイブリダイズすることを示唆している。より強いシグナル強度及びより良好なシグナル範囲が、ハイブリダイゼーション処理の早い時点で実証された。
HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色は、HER2 dsプローブと比較した場合、同じ濃度(3、6、9、及び12μg/ml)、ハイブリダイゼーション時間(1&2時間)、ストリンジェンシー洗浄の温度(68、70、及び72℃)で好ましい染色を示した。6μg/mlのHER2オリゴヌクレオチドプローブは、12μg/mlのHER2 dsプローブと同等か又はそれより良好な染色を得ることができた。
HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色(12.0μg/ml)は均一サイズを有する規則的な形状のシグナルを生成し(図4(A))、一方、HER2 dsプローブの染色(12.0μg/ml)は異なるサイズの不規則なシグナル形状を有する(図4(B))。HER2オリゴヌクレオチドプローブ は最小のバックグラウンドシグナルを生成し(図4(A))、一方、HER2 dsプローブの染色はいくらか核の粉塵の(nuclear dusting)バックグラウンド(図4(B))を有する。通常の濃度範囲で使用した場合、HER2オリゴヌクレオチドプローブの染色が最小のバックグラウンドシグナルを示したことから、本出願人らは、非常に高い濃度(24μg/ml)でそれに挑んだ。HER2オリゴヌクレオチドプローブ染色は核の境界を取り囲む茶色がかったバックグラウンドを示したものの、このバックグラウンドパターンはシグナル計数の邪魔にならない。24μg/mlでのHER2 dsプローブ染色は、非特異的バックグラウンドシグナルから微弱な特異的シグナルを混同させうる核の粉塵を示した。
1時間ハイブリダイゼーションのHER2オリゴヌクレオチドプローブ染色は、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeの性能レベルに達するのに十分なほど堅牢である。具体的には、109の乳房組織がHER2オリゴヌクレオチドプローブの性能評価のために選択された。これらの試料は、最初にINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeで染色され(FDA認可のプロトコール、6時間ハイブリダイゼーション)、十分な又は「ボーダーライン」の染色強度(許容範囲としては2がカットオフ、1.5がボーダーライン)が実証された。このプレスクリーニングは、解析前の条件に起因する低品質の組織を排除する助けとなった。79の組織(72.5%)がINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにより合格したと考えられた。表4参照。
1時間ハイブリダイゼーションのHER2オリゴヌクレオチドプローブ(12μg/ml)染色は、94(86.2%)の組織を合格させた。一方、1時間ハイブリダイゼーションのHER2 dsプローブは、32(29.3%)の組織を合格させた(表4)。データは、HER2オリゴヌクレオチドプローブ染色が6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeの性能レベルに達するのに十分なほど堅牢であることを示唆している。INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeによる強度≧2を有する79の組織(図5(A))のうち、HER2オリゴヌクレオチドプローブが類似の性能(77が合格)を得た。INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeによる強度1.5を有する30の組織(図5(B))のうち、17の組織の染色が強度2に向上した(したがって合格した)。
H.17番染色体オリゴヌクレオチドプローブ性能評価:
17番染色体特異的オリゴヌクレオチドの選択
28の17番染色体オリゴヌクレオチド(1.0μg/ml)の各々を、ストリンジェンシー洗浄の温度70℃及び/又は72℃で、2の乳房組織上で染色した。余分な交差反応シグナルのため、14のオリゴヌクレオチド、すなわちM4.5(2.0&2.5)、M6.1(0&0.25)、M6.2(0.5&2.5)、M7.2(1.0&1.5)、M8.1(2.0&2.0)、M10.1(1.5&2)、M10.2(2&2.5)、M11.1(0&2)、M14.1(0.75&1.0)、M14.2(1.5&1.5)、M15.1(0&0.25)、及びM15.2(2.0&2.0)を除外した(図6(B))。図6(D)は、M11.2染色スライドの一例であり、十分な強度を有する1〜2の特異的なchr17シグナルが各細胞内に存在する。図6(C)は、M7.2染色スライドの一例を示し、余分なかすかな交差反応シグナルが、強いchr17特異的シグナルの他に細胞内に存在していた。極めて弱いシグナルのために、2のオリゴヌクレオチド、すなわちM1.2(0.25&0.25)及びM2.2(0&0.25)を除外した(図6(A))。合計14のオリゴヌクレオチド(M1.1、M2.1、M2.2、M3.1、M5.1、M5.2、M8.2、M9.1、M9.2、M11.2、M12.1、M13.1、M16.1、及びM16.2)が、本明細書にリスト化されているChr17オリゴヌクレオチドプローブのプールに入れるために選択された。
15の乳房組織が、Chr17オリゴヌクレオチドプローブ性能評価のために選択された。これより先に17番染色体染色を、INFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe(FDA認可のプロトコール、6時間ハイブリダイゼーション)で実施した。これらの試料における17番染色体シグナル(各々重複スライド)は、強い強度から弱い強度までの範囲(0−3スケール)にある。1時間ハイブリダイゼーションのChr17オリゴヌクレオチドプローブ(0.5μg/ml)染色は、Chr17 PMAプローブと同等の染色強度(2.60±0.61 vs 2.54±0.84、p>0.05、図7(A))、染色範囲(70.50±14.46 vs 66.93±24.61、p>0.05、図5B)、及びバックグラウンド(0.04±0.16 vs 0.02±0.07、p>0.05、図7(C))を有する。すべての非許容chr17染色は不十分なchr17 シグナル強度に起因しており、そのうち2つはChr17 オリゴヌクレオチドプローブにより、5つはChr17 PMAプローブにより不合格となった(図7(D))。データは、1時間ハイブリダイゼーションのChr17オリゴヌクレオチドプローブ染色が6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeの性能レベルに達するのに十分なほど堅牢であることを示唆している。
HER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHアッセイの解析的特徴付け
染色体中期スプレッド上のHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHの解析的な特異性を試験した。HER2オリゴヌクレオチドプローブ(黒いシグナル)及びCHR17 オリゴヌクレオチドプローブ(赤いシグナル)を同じ染色体に局在化させた。HER2プローブ又はCHR17プローブの他の染色体へのクロスハイブリダイゼーションもまったく観察されなかった(図8)。
必要最小数のHER2オリゴヌクレオチドで機能試験を実施した。総数(1196)の48、72、及び100%のHER2オリゴヌクレオチドが、5の乳房症例からの30のスライド上で機能上の試験をされた。HER2染色についてすべてのスライドが(基準強度≧2で)合格した。1196のHER2オリゴヌクレオチドのうちの48%がHER2強度2.00±0を有し、72%がHER2強度2.45±0.16を有し、100%がHER2強度2.75±0.35を有した。100%(1196のオリゴヌクレオチド)が、48%及び72%のものと比べて最も堅牢なHER2染色を有した(p<0.05)。1196のHER2オリゴヌクレオチドのうちの48%がHER2範囲69.00±4.60を有し、72%がHER2範囲73.50±2.42を有し、100%がHER2範囲77.50±5.89を有した。100%(1196のオリゴヌクレオチド)が、48%のものよりも有意に広いHER2染色範囲を有した(p<0.05)(図9)。
フルセット(1196)Her2オリゴヌクレオチドの経時変化(1、2、及び6時間)の機能試験を実施した。4の乳房症例からの16のスライドで、フルセット(1196)Her2 オリゴヌクレオチドの1、2、及び6時間ハイブリダイゼーションについて試験した。1時間ハイブリダイゼーションのHER2オリゴヌクレオチド染色は、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeと同等の染色性能を得た。本出願人らは、長いハイブリダイゼーション時間(例えば2及び6時間)と改善された染色強度との間に一貫した関連性を見出すことはなかった(図10)。
個々の乳房組織での1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHの同等性研究が、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeと比べた染色妥当性を比較するために実施された。89の乳房組織がHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH性能評価のために選択された。上と同様に、これらの試料は、十分な又は「ボーダーライン」の染色強度、すなわち6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにより染色した少なくとも一のスライド上で、HER2シグナル強度が≧1.5、CHR17シグナル強度が≧1.5を示した。このプレスクリーニングは、解析前の条件に起因する低品質の組織を排除する助けとなった。128のスライド(128/146、85.5%)が1時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA ProbeによるHER2染色で「合格」とみなされた。一方、156のスライド(156/174、87.67%)が1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHによるHER2染色で「合格」とみなされた(p=0.578)。103のスライド(103/149、69.13%)が6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA ProbeによるCHR17染色で合格とみなされた。一方、129のスライド(129/175、73.71%)が1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHによるCHR17染色で合格とみなされた(p=0.363)。HER2及びCHR17染色に関して、この二のアッセイ間で有意な差異は見られなかった。重度のスペックリング又はスライド乾燥アーチファクトは1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHでは見つからなかったものの、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeで染色した6のスライドは、重度のスペックリングバックグラウンド(speckling background)のために評価で不合格となり、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにより染色した5のスライドも、スライド乾燥で不合格だった(11/175、6.3%)。表5参照。
図11(A)は、症例#709の染色の一例である。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe ISH染色は、HER2強度2.5、範囲70%、バックグラウンド0;Chr1強度2.5、範囲70%、及びバックグラウンド0を有した。一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色は、HER2強度1、範囲40%、バックグラウンド0;Chr17強度1、範囲35%、バックグラウンド0を有した。丸で囲んだ間質領域では、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeに染色がなかった。ゆえにHER2とCHR17の染色強度は1に割り当てられた。データは、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色性能が6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeのそれと同等であることを示唆している。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色は、染色の不合格発生率(すなわち重度のスペックリング及びスライド乾燥)が6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeによるそれよりも低い。
1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色と6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色間のHER2遺伝子状態の一致
1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH及び6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA ProbeによるHER2とCHR17双方について強度≧2の対のスライドを有する63の症例が、シグナル計数のために選択された。50の症例が、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色及び6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色の双方によるHER2の増幅はないと診断された。12の症例が、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色及び6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色の双方によりHER2が増幅されていると診断された。一つの症例(ILS32554)は、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色(HER2/Chr17比率:2.08)によりHER2が増幅されていると診断された一方で、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色では非増幅である(HER2/Chr17比:1.92)。陽性一致率(PPA)は100%(95%スコアCI:77.1−100%)で、陰性一致率(PNA)は98.04%(95%スコアCI:92.7−98.0%)である。対のスライドの(HER2及びCHR17の)非クラスター化シグナルカウントの変動係数の割合(CV%)は、5.66±4.84(<20%が許容可能)である。表6参照。
図11(B)は、症例#731の染色の例である。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色は、HER2強度3、範囲80%、バックグラウンド0;Chr17強度2.5、範囲75%、バックグラウンド0;HER2カウント46、Chr17カウント34、比率1.35を有した。一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色は、HER2強度3、範囲80%、バックグラウンド0.5;CHR17強度3、範囲80%、バックグラウンド0を有した。双方の染色がHER2とCHR17の同じようなシグナルカウントを生成したため、同じようなHER2/CHR17比率である。銀の粉塵のバックグラウンドが、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色で観察された。データは、1時間ハイブリダイゼーション のHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色及び6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Prob染色がHER2遺伝子状態.の診断について高い一致を有することを示唆している。
6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeによってプレスクリーニングしなかった組織マイクロアレイ(TMA)のコホートに対する、この二のアッセイの堅牢性の評価が完了した。解析前の条件及び組織品質についての情報なしに、このような組織に対するアッセイの堅牢性の評価のために1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH及び6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA ProbeでTMAスライドにおける95の乳房組織コアを染色した。アーカイブされたTMA組織が一般的にISHアッセイでは扱いにくい標本と見なされていることから、本試験は、そのアッセイ堅牢性を評価するために設計された。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHは、73のコア(76.8%)をHER2強度2以上に染色し、一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeは、57のコア(60.0%)をHER2強度2以上に染色した。HER2強度に関するこの二のアッセイ間の差異は、90%CIで有意性あり(p=0.011)にほぼ達する。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHは、53のコア(55.8%)をCHR17強度2以上に染色し、一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeは、35のコア(36.80%)をCHR17強度2以上に染色した。CHR17強度に関するこの二のアッセイ間の差異は、90%CIで有意性あり(p=0.012)にほぼ達する。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色スライドはHER2強度1.89±0.76を有し、一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色スライドはHER2強度1.58±0.76を有した(p=0.005)。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色スライドはCHR17強度1.49±0.83を有し、一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色スライドはCHR17強度1.04±0.87を有した(p=0.000)。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHのバックグラウンド(0.11±0.18)と6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeのバックグラウンド(0.04±0.11)の双方とも許容可能なレベル(<2)からかなり低い。表7参照。
データは、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHが6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeよりも、扱いにくい組織でより堅牢な染色を有することを示唆している。
乳房組織での試験に加えて、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHの実現可能性は、肺(一本鎖プローブを示す図12(A)及び二本鎖プローブを示す12(B))及び胃組織(一本鎖プローブを示す図13(A)及び二本鎖プローブを示す図13(B))でも実証された。本出願人らはさらに、1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHを10の肺組織及び10の胃組織の重複スライドで試験した。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHは、HER2では65%、CHR17では50%の合格を有し(基準強度≧2に基づく)、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA ProbeによるHER2で55%の合格、CHR17で50%の合格(HER2でp=0.516、CHR17でp=1.000)と類似している。図12(A)〜(B)は、症例#F101411A1の染色の一例である。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色は、HER2強度3、範囲80%、バックグラウンド0;Chr17強度3.0、範囲80%、バックグラウンド0を有した。一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色は、HER2強度3、範囲80%、バックグラウンド0.5;CHR17強度3、範囲80%、バックグラウンド0を有した。いくらかの銀の粉塵のバックグラウンドが、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにより染色された組織で観察された。
本出願人らは、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probeにより十分に染色された10の胃組織の症例を選択した。各症例の重複スライドを1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHで染色した。HER2/CHR17Oligonucleotide Probe DISHにより染色された18のスライドが合格した(基準強度≧2に基づく)。2の症例については、重複スライドの一方が1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISHによる不十分な染色を有した。図13(A)〜(B)は、症例#I−5189−C8aの染色の一例である。1時間ハイブリダイゼーションのHER2/CHR17 Oligonucleotide Probe DISH染色は、HER2強度3、範囲80%、バックグラウンド0;Chr17強度3.0、範囲80%、バックグラウンド0を有した。一方、6時間ハイブリダイゼーションのINFORM HER2 DUAL ISH DNA Probe染色は、HER2強度2.5、範囲70%、バックグラウンド0.5;CHR17強度2.5、範囲75%、バックグラウンド0を有した。
実施例2
実施例2は、p17H8プラスミドと42merのCHR17オリゴヌクレオチドプローブを比較する(また、42merのCHR17オリゴヌクレオチドプローブのHER2オリゴヌクレオチドプローブとの両立性を決定する)。
p17H8プラスミド(PMA):p17H8プラスミドプローブは、この全配列を含有する。166bp配列の反復が16ある。このプローブは、他の染色体へのクロスハイブリダイゼーションからの弱いシグナルを生じさせるため、ヒト胎盤DNAを必要する。
CHR17(42mer)オリゴ:42merのCHR17オリゴヌクレオチドプローブ(Ventana P/N:90682、10760、95221)は、CHR17に対して良好な特異性を有し、ヒト胎盤DNAを必要としない。ただし、最適なハイブリダイゼーション条件は、HER2プローブ2(INFORM PCR産物から作られるFDA認可の製品)と異なる。HER2オリゴヌクレオチドプローブとのその両立性が、ここで評価される。
定型アッセイ条件:StdCC2、P3 20分、変性 8分、銀及び赤色検出 8分、H&E 8分
試験条件:
(1)Chr17オリゴヌクレオチド(42mer)濃度:0.35μg/ml、0.5μg/ml、0.75μg/ml、1.5μg/ml、及び3.0μg/ml
(2)ハイブリダイゼーション温度:42℃、44℃、及び46℃
(3)ハイブリダイゼーション時間:1時間、2時間、及び6時間
(4)ストリンジェンシー洗浄温度:54℃、59℃、及び65℃
(5)ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミド濃度:22.8%及び33.2%
結果:図14(A)は、42merのCHR17オリゴヌクレオチドプローブのかすかな染色を示す(条件は次の通り:Chr17オリゴヌクレオチド(42mer)0.75μg/ml、46℃、及び6時間Hyb(ハイブリダイゼーション)、59℃ストリンジェンシー洗浄、ホルムアミド濃度:33.2%)。図14(B)は、Chr17(42mer)染色が33.2%ホルムアミドでPMAよりも薄いことを示す。濃度及びハイブリダイゼーション時間を増やしても、シグナルは増加しなかった。(条件には59℃ストリンジェンシー洗浄、33.2%ホルムアミドが含まれる)。図14(C)は、22.8%ホルムアミドがより良好なCHR17シグナルを生じさせたが、それでもPMAより弱かったことを示す。濃度及びハイブリダイゼーション時間を増やしても、シグナル強度は増加しなかった。59°Cのストリンジェンシー洗浄ではバックブラウンドは観察されなかった。しかし、22.8%ホルムアミドはHER2 Oligonμcleotide ISHに最適ではない(両立しない)。図14(D)は、CHR17オリゴヌクレオチド(42mer)に対するストリンジェンシー洗浄温度がHER2オリゴヌクレオチド(68〜72°C)とは一致しないこと;65°Cのストリンジェンシー温度がCHR17シグナルを削減させたことを示す。
要約すると、42mer CHR17オリゴヌクレオチドプローブは特異的なシグナルを生成し、0.75及び1.5μg/mlで1時間が最も良好な染色をもたらす。しかし、この染色はPMA対照よりも薄い。濃度及びハイブリダイゼーション時間を増やしても、シグナル強度は改善しなかった。この42mer CHR17オリゴヌクレオチドプローブ用のハイブリダイゼーションアッセイ条件は、HER2オリゴヌクレオチドプローブ用の条件と両立可能ではない:HER2オリゴヌクレオチドに対するストリンジェンシー洗浄温度の最適範囲は68〜72℃であり;該温度が65℃まで上昇すると、CHR17オリゴヌクレオチド(42mer)の染色強度の低下が顕著になる。
本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体がすべての目的のために援用される。対立が生じた場合には、用語の説明を含む本明細書が支配する。次の他の特許はその全体が参照により本明細書に援用される:米国特許第7807356号;米国特許第8445206号。
多くの例示的な態様及び実施態様を上述してきたが、当業者は、その特定の変更、並べ替え、追加、及び部分的組合わせが本開示に存在していることを認識するであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び今後導入される特許請求の範囲は、それらの真の精神及び範囲の内に入るすべての並べ替え、追加、及び部分的組合わせを含むと解釈されることが意図される。