以下、図面を参照して実施形態を説明する。
本実施形態では、試料及び試薬を分注して試料及び試薬の混合液を測定する分析部と、分析部で使用される液体を収容する収容容器と、収容容器に収容された液体を濃縮する濃縮部と、液体中の特定の成分を検出させる分析制御部とを備え、分析制御部は濃縮部により濃縮された液体中の特定の成分を検出させる。
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目に対応する標準試料、被検試料等の各試料及び当該検査項目に対応する試薬の分注、当該試料及び当該試薬の混合液の測定等により各試料を分析する分析部10を備えている。また、自動分析装置100は、分析部10の各試料や各試薬の分注等を行う複数のユニットを駆動する駆動部40を備えている。
また、自動分析装置100は、駆動部40を制御して分析部10の各ユニットを作動させる分析制御部41を備えている。この分析制御部41は、分析部10で各試料及び各試薬の分注等に使用される純水等の液体(分析用液)の検査を実行させ、各検査項目の分析に影響を及ぼす分析用液中の特定の成分を検出させる。また、分析制御部41は、各検査項目のキャリブレーションや被検試料の検査を実行させる。
また、自動分析装置100は、分析部10で各検査項目の標準試料及び試薬の混合液の測定により生成された標準データから当該検査項目の検量線を作成し、被検試料及び当該検査項目の試薬の混合液の測定により生成された被検データから当該検査項目の分析データを生成する演算部42を備えている。また、自動分析装置100は、演算部42で作成された検量線や、演算部42で生成された分析データを保存するデータ記憶部43を備えている。
また、自動分析装置100は、被検試料の検査に対して分析用液の適不適を判定する判定部44を備えている。また、自動分析装置100は、演算部42で作成された検量線や、演算部42で生成された分析データ等を表示する表示部45を備えている。また、自動分析装置100は、各試料の識別情報や検査項目情報を設定するための入力等を行う入力部46を備えている。また、自動分析装置100は、分析制御部41、演算部42、データ記憶部43、判定部44及び表示部45を制御するシステム制御部47を備えている。
図2は、分析部10の構成の一例を示した斜視図である。この分析部10は、標準試料及び被検試料等の各試料を収容する試料容器11と、試料容器11を保持する試料ラック12とを備えている。また、分析部10は、各試料中の検査項目の成分と反応する試薬である例えば1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する第1試薬容器13と、複数の第1試薬容器13を移動可能に保持する第1試薬ラック14とを備えている。また、分析部10は、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する第2試薬容器15と、複数の第2試薬容器15を移動可能に保持する第2試薬ラック16とを備えている。
また、分析部10は、円周上に配置された複数の反応容器17と、この反応容器17を回転移動可能に保持する反応ディスク18とを備えている。また、分析部10は、各試料容器11内の試料を吸引して反応容器17内に吐出する分注を行う試料分注プローブ19と、試料分注プローブ19を上下及び回転移動可能に支持する試料分注アーム20とを備えている。また、分析用液を圧力伝達媒体として利用して試料分注プローブ19に試料の吸引及び吐出を行わせる試料分注ポンプユニット21を備えている。また、分析部10は、試料と接触した試料分注プローブ19の洗浄が行われる洗浄槽22を備えている。
また、分析部10は、各第1試薬容器13内の第1試薬を吸引して反応容器17内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ23と、第1試薬分注プローブ23を上下及び回転移動可能に支持する第1試薬分注アーム24とを備えている。また、分析用液を圧力伝達媒体として利用して第1試薬分注プローブ23に第1試薬の吸引及び吐出を行わせる第1試薬分注ポンプユニット25を備えている。また、分析部10は、第1試薬と接触した第1試薬分注プローブ23の洗浄が行われる洗浄槽(図示せず)を備えている。
また、分析部10は、各第2試薬容器15内の第2試薬を吸引して反応容器17に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ26と、第2試薬分注プローブ26を上下及び回転移動可能に支持する第2試薬分注アーム27とを備えている。また、分析用液を圧力伝達媒体として利用して第2試薬分注プローブ26に第2試薬の吸引及び吐出を行わせる第2試薬分注ポンプユニット28を備えている。また、分析部10は、第2試薬と接触した第2試薬分注プローブ26の洗浄が行われる洗浄槽(図示せず)を備えている。
また、分析部10は、反応容器17内の混合液を加温して一定の温度に保つ熱媒体を保持する恒温槽29を備えている。また、分析部10は、各反応容器17内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬及び第2試薬の混合液を撹拌する撹拌ユニット30と、撹拌が行われた各混合液を光学的に測定する測定部31とを備えている。また、分析部10は、各混合液の測定が行われた反応容器17内を洗浄して空にする洗浄ユニット32を備えている。
また、分析部10は、試料分注プローブ19及び試料分注ポンプユニット21、第1試薬分注プローブ23及び第1試薬分注ポンプユニット25、第2試薬分注プローブ26及び第2試薬分注ポンプユニット28、洗浄ユニット32等に分析用液を送給する送給部36を備えている。また、分析部10は、分析用液の検査で試料分注プローブ19により吐出される分析用液の前処理を行う前処理部37を備えている。
また、分析部10は、試料分注プローブ19と試料容器11内の試料との接触により当該試料の液面を検出し、試料分注プローブ19と前処理部37に吐出された分析用液との接触により当該分析用液の液面を検出する第1液面検出器33を備えている。また、分析部10は、第1試薬分注プローブ23と第1試薬容器13内の第1試薬との接触により当該第1試薬の液面を検出する第2液面検出器34と、第2試薬分注プローブ26と第2試薬容器15内の第2試薬との接触により当該第2試薬の液面を検出する第3液面検出器35とを備えている。
そして、測定部31は、各検査項目の標準試料及び試薬の混合液の測定により例えば吸光度で示される当該検査項目の標準データを生成する。また、測定部31は、被検試料及び各検査項目の試薬の混合液の測定により吸光度で示される当該検査項目の被検データを生成する。
図1に戻り、駆動部40は、搬送機構及びこの搬送機構を駆動するモータを有し、分析部10の試料ラック12を搬送させる。また、駆動部40は、第1及び第2試薬ラック14,16をそれぞれ駆動するモータを有し、各第1及び第2試薬容器13,15を回転移動させる。また、駆動部40は、反応ディスク18を駆動するモータを有し、各反応容器17を回転移動させる。
また、駆動部40は試料分注アーム20を回転駆動するモータを有し、試料容器11上方と反応容器17上方との間で回転移動させる。また、駆動部40は試料分注アーム20を上下駆動するモータを有し、試料分注プローブ19を試料容器11上方と第1液面検出器33が当該試料容器11内の試料の液面を検出する位置との間で上下移動させ、試料分注プローブ19を反応容器17上方と反応容器17内の底面に接触する位置との間で上下移動させる。また、駆動部40は試料分注ポンプユニット21を駆動する回路やモータを有し、試料分注プローブ19に試料の吸引及び吐出を行わせる。
また、駆動部40は第1試薬分注アーム24を回転駆動するモータを有し、第1試薬容器13上方と反応容器17上方との間で回転移動させる。また駆動部40は第1試薬分注アーム24を上下駆動するモータを有し、第1試薬分注プローブ23を第1試薬容器13上方と第2液面検出器34が当該第1試薬容器13内の第1試薬の液面を検出する位置との間で上下移動させる。また、駆動部40は第1試薬分注ポンプユニット25を駆動する回路やモータを有し、第1試薬分注プローブ23に第1試薬の吸引及び吐出を行わせる。
また、駆動部40は第2試薬分注アーム27を回転駆動するモータを有し、第2試薬容器15上方と反応容器17上方との間で回転移動させる。また駆動部40は第2試薬分注アーム27を上下駆動するモータを有し、第2試薬分注プローブ26を第2試薬容器15上方と第3液面検出器35が当該第2試薬容器15内の第2試薬液面を検出する位置との間で上下移動させる。また、駆動部40は第2試薬分注ポンプユニット28を駆動する回路やモータを有し、第2試薬分注プローブ26に第2試薬の吸引及び吐出を行わせる。
また、駆動部40は送給部36を駆動する回路やモータを有し、試料分注ポンプユニット21、第1試薬分注ポンプユニット25、第2試薬分注ポンプユニット28、洗浄ユニット32等へ分析用液の送給を行わせる。また、駆動部40は前処理部37を駆動する回路を有し、分析用液の前処理を行わせる。
分析制御部41はCPU及び記憶回路を有し、入力部46からの入力に基づいて駆動部40の制御により分析部10の各ユニットを作動させる。そして、分析制御部41は、入力部46より分析用液の検査を開始させる入力が行われると、試料ラック12の搬送、第1試薬容器13や第2試薬容器15の移動、特定の成分を所定の濃度含有する標準試料の分注、各検査項目のうちの特定の成分の検出に用いる特定項目の第1試薬や第2試薬の分注、当該標準試料と当該第1及び第2試薬との混合液の撹拌、当該混合液の測定等による特定項目のキャリブレーションを実行させる。次いで、分析制御部41は、前処理部37への分析用液の吐出、分析用液の前処理、前処理された分析用液の量の計測、前処理された分析用液の分注、特定項目の第1及び第2試薬の分注、当該分析用液と当該第1試薬と第2試薬との混合液の撹拌、当該混合液の測定等による分析用液の検査を実行させる。
また、分析制御部41は、入力部46より各検査項目のキャリブレーションを開始させる入力が行われると、試料ラック12の搬送、第1試薬容器13や第2試薬容器15の移動、各検査項目の標準試料の分注、各検査項目の第1試薬や第2試薬の分注、混合液の撹拌、混合液の測定等による各検査項目のキャリブレーションを実行させる。
また、分析制御部41は、入力部46より各被検試料の検査を開始させる入力が行われると、試料ラック12の搬送、第1試薬容器13や第2試薬容器15の移動、被検試料の分注、各検査項目の第1試薬や第2試薬の分注、混合液の撹拌、混合液の測定等による各被検試料の検査を実行させる。
演算部42はCPU及び記憶回路を備え、特定項目のキャリブレーションのときに分析部10の測定部31での混合液の測定により生成された特定項目の標準データと標準試料に対して予め設定された特定の成分の濃度を示す標準値とに基づいて、特定項目の検量線を作成する。次いで、演算部42は、分析用液の検査のときに測定部31で前処理された分析用液と特定項目の第1及び第2試薬との混合液の測定により生成された特定項目のデータから、特定項目の検量線を用いて特定の成分の濃度値を算出する。
また、演算部42は、各検査項目のキャリブレーションのときに測定部31で生成された標準データと標準試料に対して設定された当該検査項目の成分の濃度を示す標準値とに基づいて、各検査項目の検量線を作成する。また、演算部42は、被検試料の検査のときに測定部31で生成された当該検査項目の被検データから、当該検査項目の検量線を用いて活性値や濃度値で表される分析データを生成する。
データ記憶部43は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等のストレージを備えている。そして、データ記憶部43は、各検査項目の標準試料に対して設定された識別情報及び標準値、分析部10で生成された各検査項目の標準データ及び被検データ、演算部42で作成された検量線、演算部42で生成された分析データ等を保存する。
判定部44はCPU及び記憶回路を備え、演算部42で算出された前処理前の分析用液中の特定の成分の濃度値及び予め設定された閾値に基づいて、分析用液の適不適を判定する。そして、判定部44は、特定の成分の濃度値が予め設定された閾値以下である場合、分析用液が特定の成分に汚染されておらず、被検試料の検査に好適であると判定する。また、判定部44は、特定の成分の濃度値が予め設定された閾値を超えている場合、分析用液が汚染されて特定の成分の影響を受けやすい検査項目の分析データが悪化するため、被検試料の検査に不適であると判定する。
表示部45は液晶パネルなどのモニタを備えている。そして、表示部45は、各検査項目の標準試料の識別情報及び標準値等を設定するための標準試料設定画面、被検試料毎に識別情報及び検査項目を設定するための被検試料設定画面等を表示する。また、表示部45は、判定部44の判定結果を表示する。また、表示部45は、分析部10で生成された標準データや被検データ、演算部42で生成された検量線や分析データ等を表示する。
入力部46は例えばキーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備えている。そして、入力部46は、各検査項目の標準試料の識別情報、標準値等を設定するため入力を行なう。また、入力部46は、分析用液の検査を開始させる入力を行う。また、入力部46は、各検査項目のキャリブレーションを開始させる入力を行う。また、入力部46は、被検試料の識別情報及び検査項目を設定するための入力を行う。また、入力部46は、被検試料の検査を開始させる入力を行う。
システム制御部47はCPU及び記憶回路を備え、入力部46から入力されたコマンド信号や、入力情報を記憶回路に記憶する。そして、システム制御部47は、入力情報に基づいて、分析制御部41、演算部42、データ記憶部43、判定部44及び表示部45を統括してシステム全体を制御する。
以下、分析用液に関わる分析部10の各ユニットの構成と、分析用液の検査を行う自動分析装置の動作との一例について説明する。
先ず、図1乃至図3を参照して、分析部10の前処理部37の構成の一例を説明する。
図3は、前処理部37の構成を示した図である。この前処理部37は、図2に示すように、試料分注プローブ19により試料の吸引が行われる試料容器11と、試料の吐出が行われる反応容器17との間に配置される。そして、前処理部37は、分析用液を収容する収容容器371と、収容容器371に収容された分析用液を前処理する濃縮部372と、収容容器371及び濃縮部372を支持する支持部373とにより構成される。
収容容器371は、検査項目の成分と試薬との反応に例えば酵素活性を阻害して悪影響を及ぼす例えば鉄、銅、重金属等のイオンなどの特定の成分を含有しないガラス、プラスチック等の部材により構成される。そして、収容容器371は、上下方向に着脱自在に支持部373に支持され、図4(a)に示すように、試料分注プローブ19より吐出された所定の量V1の分析用液を収容する。
濃縮部372は、支持部373に支持された収容容器371の下側に配置され、ヒータを備えている。そして、濃縮部372は、収容容器371を加熱して収容容器371内の分析用液の主成分である例えば水を蒸発させて、図4(b)に示すように、収容容器371内の分析用液が上限量VH以下になるまで濃縮する前処理を行う。
なお、支持部373をアルミニウム材等の熱伝導性を有する部材にし、恒温槽29の熱媒体を引き回して支持部373を熱媒体で加熱する構造の濃縮部372にし、収容容器371を加熱して分析用液を濃縮するように実施してもよい。また、上方に向けて超音波を発生する振動子を備える濃縮部372とし、収容容器371に超音波を照射することにより、分析用液の主成分である水を霧化させて分析用液を濃縮するように実施してもよい。
このように、濃縮部372では、特定の成分に対して溶媒となる分析用液の主成分を濃縮させることができる。これにより、分析用液中の特定の成分の濃度を高濃度化することができる。
次に、図1乃至図4を参照して、分析部10の試料分注ポンプユニット21、第1試薬分注ポンプユニット25、第2試薬分注ポンプユニット28及び送給部36の構成の一例を説明する。
図5は、試料分注ポンプユニット21及び送給部36の構成を示した図である。
試料分注ポンプユニット21は、シリンジ211及びプランジャ212により構成されるシリンジポンプを備えている。また、試料分注ポンプユニット21は、3つのチューブ213,214,215と、駆動部40により開閉する電磁弁216とを備えている。
シリンジ211は、圧力伝達媒体としての分析用液を保持する中空部と、この中空部に連通する下面に設けた第1の開口部、側面に設けた第2の開口部及び上面に設けた第3の開口部とを有する。また、プランジャ212は、シリンジ211の第1の開口部を封止して、駆動部40により矢印L1方向及び矢印L2方向に移動可能に配置される。
3つのチューブ213,214,215は、内部の流路に圧力伝達媒体としての分析用液を保持している。そして、チューブ213は、一端部が電磁弁216の一端部に接続され、他端部が分析用液を送給する送給部36に接続されている。また、チューブ214は、一端部がシリンジ211の第2の開口部に接続され、他端部が電磁弁216の他端部に接続されている。また、チューブ215は、一端部がシリンジ211の第3の開口部に接続され、他端部が試料分注プローブ19に接続されている。また、電磁弁216は、チューブ213とチューブ214との間の分析用液が通る流路を開閉する。
そして、試料分注ポンプユニット21は、電磁弁216が閉鎖した状態でプランジャ212がL1方向に移動する吸引駆動により試料分注プローブ19に試料容器11内の試料を吸引させ、電磁弁216が閉鎖した状態でプランジャ212がL2方向に移動する吐出駆動により試料分注プローブ19に反応容器17内へ試料を吸引させる。
ここで、分析用液の検査が実行されたときの試料分注ポンプユニット21及び試料分注プローブ19の動作について説明する。分析用液の検査が実行されると、分析用液は前処理部37で前処理されてから分析用液の検査が行われる。
先ず、前処理部37で分析用液の前処理を行うために、試料分注プローブ19は、洗浄槽22まで移動する。プランジャ212が収容容器371へ前処理を行う量に対応する所定の距離L1方向へ移動してから、送給部36が試料分注ポンプユニット21を経由して分析用液を送給することにより、試料分注プローブ19は分析用液を洗浄槽22内へ吐出する。これにより、試料分注プローブ19内が分析用液で満たされる。試料分注プローブ19は、図4(a)に示すように、収容容器371上方の上停止位置P1まで回転移動し、プランジャ212が前処理を行う量に対応する所定の距離L2方向へ移動することにより、収容容器371内へ所定の量V1の分析用液を吐出する。
次いで、前処理された分析用液の検査を行うために、試料分注プローブ19は、収容容器371内の前処理された分析用液を反応容器17に分注する。ここでは、試料分注プローブ19は、上停止位置P1より第1液面検出器33により収容容器371内の分析用液の液面が検出される位置(検出位置)まで下へ移動する。そして、試料分注プローブ19は、試料分注ポンプユニット21の吸引動作により、収容容器371内の特定項目の分注量に対応する量の分析用液を吸引する。
分析用液を吸引した試料分注プローブ19は、上停止位置P1まで上に移動してから反応容器17の上方まで回転移動した後、反応容器17の例えば底面と接触する位置(吐出位置)まで下へ移動する。そして、試料分注プローブ19は、試料分注ポンプユニット21の吐出動作により、反応容器17内へ特定項目の分注量の分析用液を吐出する。
次に、キャリブレーション又は被検試料の検査が実行されたときの試料分注ポンプユニット21及び試料分注プローブ19の動作について説明する。試料分注プローブ19は、試料容器11の上方まで回転移動した後、第1液面検出器33により試料容器11内の試料の液面が検出される位置まで下へ移動する。そして、試料分注プローブ19は、試料分注ポンプユニット21の吸引駆動により、試料容器11内の各検査項目の分注量に対応する量の試料を吸引する。試料を吸引した試料分注プローブ19は、反応容器17の吐出位置まで移動してから、試料分注ポンプユニット21の吐出駆動により、反応容器17内へ各検査項目の分注量の試料を吐出する。
次に、同一試料の分注を終了してから行われる試料分注プローブ19の洗浄について説明する。同一試料の分注を終了した試料分注プローブ19は、洗浄槽22まで移動する。そして、電磁弁216が開放した状態で、送給部36が試料分注ポンプユニット21へ分析用液を送給することにより、試料分注プローブ19は、洗浄槽22内へ分析用液を吐出する。これにより、試料分注プローブ19は、試料と接触した内面の洗浄が行われる。また、試料分注プローブ19は、洗浄槽22で試料と接触した外面の洗浄が行われる。
第1試薬分注ポンプユニット25は送給部36と接続されているチューブ251を備え、試料分注ポンプユニット21と同様に構成される。そして、第1試薬分注プローブ23は、第1試薬分注ポンプユニット25の吸引及び吐出動作により第1試薬容器13内の第1試薬を吸引して反応容器17内に吐出する。また、第1試薬分注プローブ23は各検査項目の第1試薬の分注終了毎に、送給部36より送給される分析用液により内面の洗浄が行われる。また、第1試薬分注プローブ23は、洗浄槽により内面の洗浄が行われる。
第2試薬分注ポンプユニット28は送給部36と接続されているチューブ281を備え、第1試薬分注ポンプユニット25と同様に構成される。そして、第2試薬分注プローブ26は、第2試薬分注ポンプユニット28の吸引及び吐出動作により第2試薬容器15内の第2試薬を吸引して反応容器17内に吐出する。また、第2試薬分注プローブ26は各検査項目の第2試薬の分注終了毎に、送給部36より送給される分析用液により内面の洗浄が行われる。また、第2試薬分注プローブ26は、洗浄槽により内面の洗浄が行われる。
送給部36は、分析用液の製造装置で製造された分析用液を貯留する貯留タンク361と、入力管及び出力管を有する例えばダイアフラムポンプなどの送給ポンプ362と、第1乃至第4の管を有する分岐管363とを備えている。また、送給部36は、一端部が貯留タンク361に接続されて他端部が送給ポンプ362の入力管に接続されたチューブ364と、一端部が送給ポンプ362の出力管に接続されて他端部が分岐管363の第1の管に接続されたチューブ365とを備えている。
分岐管363は、第2の管が試料分注ポンプユニット21と接続され、第3の管が第1試薬分注ポンプユニット25と接続され、第4の管が第2試薬分注ポンプユニット28と接続されている。
そして、送給部36は、送給ポンプ362の送給動作により、貯留タンク361に貯留している分析用液を、試料分注ポンプユニット21、第1試薬分注ポンプユニット25及び第2試薬分注ポンプユニット28の各分注ユニットに送給する。
なお、図示はしないが、洗浄ユニット32は貯留タンク361とチューブで接続されている。そして、洗浄ユニット32は、貯留タンク361の分析用液を吸引して測定部31の測定が終了した反応容器17内に吐出させてから排出させて、反応容器17内の洗浄を行う。
次に、図1乃至図8を参照して、自動分析装置100の動作の一例を説明する。
被検試料の特定項目の成分を分析する検査では、被検試料と特定項目の試薬との混合液の測定により被検試料中の特定の成分を検出する。この通常の検出方法では検出不可能な微量の特定の成分が分析用液に含まれていると、被検試料と特定項目以外の検査項目の試薬との混合液に特定の成分が混入して反応を阻害し、当該検査項目の分析データを悪化させることがある。
この問題を未然に防ぐため、各検査項目のキャリブレーション及び被検試料の検査を行う前に分析用液の検査を行う。以下では、分析用液の検査に関する自動分析装置100の動作の一例を説明する。
図6は、分析用液の検査を行う自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。
分析部10は、特定項目の標準試料を収容する試料容器11が試料ラック12に保持され、特定項目の第1試薬容器13が第1試薬ラック14に保持され、特定項目の第2試薬容器15が第2試薬ラック16に保持されている。また、入力部46からの標準試料に含まれる特定の成分の濃度値の入力により、データ記憶部43に特定項目の標準試料の濃度値が保存される。そして、入力部46より分析用液の検査を開始させる入力が行われると、自動分析装置100は動作を開始する(ステップS1)。
システム制御部47は、分析制御部41、演算部42及び判定部44等に分析用液の検査の開始を指示する。分析制御部41は、駆動部40を制御して、特定項目のキャリブレーションを実行させる。
試料分注プローブ19は、試料容器11内の特定項目の標準試料を、洗浄ユニット32により洗浄が行われた反応容器17に分注する。第1試薬分注プローブ23は、第1試薬容器13内の特定項目の第1試薬を、標準試料が分注された反応容器17に分注する。第2試薬分注プローブ26は、第2試薬容器15内の特定項目の第2試薬を、特定項目の第1試薬が分注された反応容器17に分注する。
測定部31は、撹拌ユニット30により撹拌された反応容器17内の標準試料、第1試薬及び第2試薬の混合液を測定して標準データを生成する。演算部42は、測定部31により生成された標準データと標準試料に対して設定された濃度値とに基づいて、特定項目の検量線を作成する。
試料分注プローブ19は洗浄槽22に移動する。試料分注ポンプユニット21の電磁弁216は、チューブ213とチューブ214の間を開放する。プランジャ212は、所定の距離L1方向へ移動する。試料分注プローブ19は、送給部36の送給動作により内面の洗浄が行われて内部が分析用液で満たされる。また、試料分注プローブ19は、洗浄槽22で外面の洗浄が行われる。
洗浄が行われた試料分注プローブ19は上停止位置P1まで移動した後、プランジャ212が所定の距離L2方向へ移動することにより、収容容器371へ所定の量V1の分析用液を吐出する(ステップS2)。
濃縮部372は、図7(a)に示すように、収容容器371内の所定の量V1の分析用液を所定の時間T1加熱して、収容容器371内の分析用液を前処理する(ステップS3)。
分析制御部41は、図7(b)に示すように、濃縮部372により時間T1前処理された収容容器371内の分析用液の量を計測する(ステップS4)。
ここで、収容容器371内の分析用液の量の計測方法について説明する。分析制御部41は、図8に示すように、試料分注プローブ19を上停止位置P1より第1液面検出器33が収容容器371内の分析用液の液面を検出する検出位置P2まで下へ移動させてから、上停止位置P1まで上へ移動させる。次いで、分析制御部41は、上停止位置P1から検出位置P2までの試料分注プローブ19の移動に要した例えば駆動パルス数より分析用液の液面の高さを算出し、液面の高さに基づいて収容容器371内の分析用液の量V2を計測する。
そして、計測された分析用液の量V2が上限量VH以下である場合(ステップS5のはい)、分析制御部41は、前処理を終了させて分析用液の検査を実行させる(ステップS6)。また、収容容器371内の分析用液の量V2が上限量VHよりも多い場合(ステップS5のはい)、濃縮部372は、引き続き時間T1よりも短い時間前処理を行う(ステップS7)。その後、ステップSS4に戻る。
ステップS5の「はい」の後のステップS6において、試料分注プローブ19は、収容容器371内の分析用液を洗浄が行われた反応容器17に分注する。第1試薬分注プローブ23は、分析用液が分注された反応容器17に特定項目の第1試薬を分注する。第2試薬分注プローブ26は、特定項目の第1試薬が分注された反応容器17に特定項目の第2試薬を分注する。測定部31は、撹拌ユニット30により撹拌された反応容器17内の分析用液、第1試薬及び第2試薬の混合液を測定して特定項目のデータを生成する。
ステップS6の後、演算部42は、測定部31で生成された特定項目のデータ及び検量線を用いて前処理後の分析用液中の特定の成分の濃度を算出し、濃縮された量に基づいて前処理前の特定の成分の濃度値を算出する。判定部44は、予め設定された閾値に基づいて、前処理前の分析用液の分析部10への適不適の判定を行なう。
そして、前処理前の分析液中の特定の成分の濃度値が予め設定された閾値以下である場合(ステップS8のはい)、ステップS9へ移行する。また、前処理前の分析液中の特定の成分の濃度値が予め設定された閾値を超えている場合(ステップS8のいいえ)、ステップS10へ移行する。
このように、前処理部37での分析用液中の特定の成分の高濃度化により、分析部10で使用される前処理前の分析用液中の微量の特定の成分を精度よく検出することができる。
なお、判定部44の判定に用いる閾値は、特定の成分の濃度が異なる複数の分析用液を準備して貯留タンク361に供給し、準備した分析用液毎に特定の成分の最も影響を受ける検査項目の分析データを生成させて求める。影響を受ける検査項目の分析データが許容値から外れる特定の成分の濃度を閾値とする。
ステップS8の「はい」の後、判定部44は、分析用液が被検試料の検査に好適であると判定する。表示部45は、分析用液の好適情報を表示する(ステップS9)。また、ステップS8の「いいえ」の後、判定部44は、分析用液が特定の成分で汚染されて各検査項目のキャリブレーション及び被検試料の検査に不適であると判定する。表示部45は、分析用液の不適情報を表示する。
ステップS9又はステップS10の後、システム制御部47が分析制御部41、演算部42及び判定部44等に指示して分析用液の検査の終了を指示することにより、自動分析装置100は動作を終了する(ステップS11)。
表示部45に分析用液の不適情報が表示された後、各検査項目のキャリブレーション又は被検試料の検査のいずれか一方を開始させる入力が行われると、分析制御部41は入力された一方の動作の実行を停止させ、表示部45は再度、分析用液の不適情報を表示する。
特定の成分が例えば鉄である場合、自動分析装置100や分析用液の製造装置の分析用液が流れる流路を形成しているチューブや接続部に用いられる例えばステンレススチールからの鉄の溶出などの汚染源を取り除く。そして、再度、分析用液の検査を開始させ、分析用液の検査が終了して表示部45に分析用液の好適情報が表示されると、入力部46からの各検査項目のキャリブレーション又は被検試料の検査のいずれか一方を開始させる入力により、分析制御部41は入力された一方の動作を実行させる。
このように、分析用液に特定の成分が含まれている場合、各検査項目のキャリブレーション及び被検試料の検査を停止させることができる。これにより、特定の成分が試料中の成分と試薬との反応に影響を及ぼすような検査項目の分析データの悪化を未然に防ぐことができる。
上記実施形態に限定されるものではなく、分析用液の電気伝導度が低いイオン交換水や蒸留水のような液体であって、特定の成分がイオンである場合、前処理部37に電気伝導度計を設け、前処理後の分析用液の電気伝導度を計測して分析用液の適不適の判定を行うようにしてもよい。
以上述べた実施形態によれば、分析部10で使用される分析用液を前処理することにより分析用液中の特定の成分の濃度を高濃度化して前処理後の分析用液中の特定の成分を検出することにより、前処理前の分析用液中の微量の特定の成分を精度よく検出することができる。そして、前処理前の分析用液中に閾値を超える濃度の特定の成分が含まれている場合に表示部45に分析用液の不適情報を表示させ、入力部46から各検査項目のキャリブレーション及び被検試料の検査を開始させる入力が行われても、各検査項目のキャリブレーション及び被検試料の検査を停止させることができる。これにより、特定の成分の影響を受ける分析データの悪化を未然に防ぐことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。