JP7307474B2 - シール部材およびその製造方法、並びに気密摺動機構 - Google Patents

シール部材およびその製造方法、並びに気密摺動機構 Download PDF

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Description

本発明は、シール部材およびその製造方法、並びに気密摺動機構に関し、特に、液体、または気体に対するシール部材およびその製造方法、並びに気密摺動機構に関するものである。
従来から、密封容器の容器本体とその蓋部材との間、回転するシャフトとシャフトを支持するケースとの間などの隙間には、液体や気体などの流体がその隙間から侵入したり漏れたりするのを防止するためにシール部材が用いられている。
ところが、従来は、相互に摺動する2つの部材の隙間で高い液圧、または気圧に対して十分なシール効果を発揮することができるシール部材はなかった。
本発明は、相互に摺動する2つの部材の隙間で高い液圧、または気圧に対して十分なシール効果を発揮することを可能にするシール部材およびその製造方法、並びにこのようなシール部材を備えた気密摺動機構を提供することを目的とする。
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
外周面と内周面とを有する筒状体からなるシール部材であって、
前記シール部材はフッ素樹脂を含み、
前記外周面または前記内周面の少なくとも一方の周面に、少なくとも一つのリング状の突出部を備えている、シール部材。
(項目2)
前記少なくとも一つのリング状突出部の各々は、前記筒状体の軸方向の幅が前記リング状突出部の先端側ほど小さくなる形状を有する、項目1に記載のシール部材。
(項目3)
前記少なくとも一つのリング状突出部の各々は、その先端部が前記筒状体の軸方向に約0.1mm~約1.0mmの平坦な面を有する、項目1または項目2に記載のシール部材。
(項目4)
前記少なくとも一つのリング状突出部は、隣接するリング状突出部同士が接するように配置されている、項目3に記載のシール部材。
(項目5)
項目1~項目4のいずれか一項に記載のシール部材を含む気密摺動機構であって、
内周面を有する中空の第1部材と、
外周面を有し、前記第1部材の内部で摺動する第2部材と
を備え、
前記シール部材は、前記筒状体を前記第2部材の外周面に固定することにより、前記筒状体の外周側の前記リング状突出部が前記第1部材の内周面に摺動可能に接触するように、前記第1部材と前記第2部材との間に組み込まれている、気密摺動機構。
(項目6)
前記気密摺動機構は、
少なくとも、前記少なくとも一つのリング状突出部の個数と、
前記シール部材を前記第1部材と前記第2部材との間に組み込む前の前記リング状突出部の内径および前記第2部材の外径と
を調整することにより、
前記シール部材により前記第1部材と前記第2部材との隙間で約1MPa以上の気密状態を保持可能である、項目5に記載の気密摺動機構。
(項目7)
項目1~項目4のいずれか一項に記載のシール部材を含む気密摺動機構であって、
内周面を有する中空の第1部材と、
外周面を有し、前記第1部材の内部で摺動する第2部材と
を備え、
前記シール部材は、前記筒状体を前記第1部材の内周面に固定することにより、前記筒状体の内周側の前記リング状突出部が前記第2部材の外周面に摺動可能に接触するように、前記第1部材と前記第2部材との間に組み込まれている、気密摺動機構。
(項目8)
前記気密摺動機構は、
少なくとも、前記少なくとも一つのリング状突出部の個数と、
前記シール部材を前記第1部材と前記第2部材との間に組み込む前の前記リング状突出部の内径および前記第2部材の外径と
を調整することにより、前記シール部材により前記第1部材と前記第2部材との隙間で約1MPa以上とする気密状態を保持可能である、項目7に記載の気密摺動機構。
(項目9)
シール部材を製造する方法であって、
フッ素樹脂の成形により成形体を形成することと、
前記成形体を切削加工することにより外周面と内周面とを有する筒状体を形成することと
を含み、
前記成形体を切削加工することは、前記筒状体の前記外周面または前記内周面の少なくとも一方の周面に、少なくとも一つのリング状の突出部を形成することを含む、シール部材の製造方法。
本発明によれば、相互に摺動する2つの部材の隙間で高い液圧、または気圧に対して十分なシール効果を発揮することを可能にするシール部材およびその製造方法、並びにこのようなシール部材を備えた気密摺動機構を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態1によるシール部材100(リップリング)を説明するための図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)のB方向から見たシール部材100(リップリング)の構造を示す平面図、図1(c)は図1(a)のC方向から見たシール部材100(リップリング)の構造を示す側面図、図1(d)は図1(b)のId-Id線断面図、図1(e)は図1(d)に示すシール部材100(リップリング)のR1部分の断面形状S1を拡大して示す図である。 図2は、図1に示すシール部材100(リップリング)を含む気密摺動機構1000を説明するための断面図である。 図3は、本発明の実施形態1の変形例によるシール部材101(リップリング)を説明するための図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は図3(a)のB方向から見たシール部材101(リップリング)の構造を示す平面図、図3(c)は図3(a)のC方向から見たシール部材101の構造を示す側面図、図3(d)は図3(b)のIIId-IIId線断面図であり、図3(e)は図3(d)に示すシール部材101(リップリング)のR1部分の断面形状S1を拡大して示す図である。 図4は、図3に示すシール部材101(リップリング)を含む気密摺動機構1001を説明するための断面図である。 図5は、本発明の実施形態2によるシール部材200(リップリング)を説明するための図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は図5(a)のB方向から見たシール部材200(リップリング)の構造を示す平面図、図5(c)は図5(a)のC方向から見たシール部材200(リップリング)の構造を示す側面図、図5(d)は図5(b)のVd-Vd線断面図、図5(e)は図5(d)に示すシール部材200(リップリング)のR2部分の断面形状S3を拡大して示す図である。 図6は、図5に示すシール部材200(リップリング)を含む気密摺動機構2000を説明するための断面図である。 図7は、本発明の実施形態2の変形例によるシール部材201(リップリング)を説明するための図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は図7(a)のB方向から見たシール部材201(リップリング)の構造を示す平面図、図7(c)は図7(a)のC方向から見たシール部材201の構造を示す側面図、図7(d)は図7(b)のVIId-VIId線断面図、図7(e)は図7(d)に示すシール部材201(リップリング)のR2部分の断面形状S3を拡大して示す図である。 図8は、図7に示すシール部材201(リップリング)を含む気密摺動機構2001を説明するための断面図である。
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
本発明は、相互に摺動する2つの部材の隙間で高い液圧または気圧に対して十分なシール効果を発揮することを可能にするシール部材およびその製造方法、並びにこのようなシール部材を備えた気密摺動機構を得ることを課題とし、
外周面と内周面とを有する筒状体からなるシール部材であって、
シール部材はフッ素樹脂を含み、
外周面または内周面の少なくとも一方の周面に、少なくとも一つのリング状の突出部を備えている、シール部材を提供することにより、上記課題を解決したものである。
従って、本発明のシール部材は、外周面と内周面とを有する筒状体からなり、フッ素樹脂を含み、外周面または内周面の少なくとも一方の周面に、少なくとも一つのリング状の突出部を備えているものであれば、特に限定されるものではない。本発明におけるシール部材の具体的な形態として、リップリングである。
〔シール部材の材料〕
ここで、シール部材の材料は、フッ素樹脂を含んでいれば任意であり得る。好ましくは、シール部材全体はフッ素樹脂から形成されるが、本発明はこれに限定されない。少なくともシール部材が有するリング状突出部はフッ素樹脂で形成される。リング状突出部を撥水性に富んだフッ素樹脂で構成されることで、撥水性に起因するシール効果を最低限発揮できるものである。シール部材は、フッ素樹脂以外の樹脂、あるいは樹脂以外の材料(セラミック、金属、あるいはゴムなど)を含んでいてもよい。
フッ素樹脂の材料としては、フッ素原子を含むプラスチック原料の総称であり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)をはじめとして、PCTFE(ポリ・クロロ・トリフル・オロ・エチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)などがある。フッ素樹脂は、熱性、滑り性、非粘着性、耐薬品性、低摩擦性、絶縁性に優れた性質を同時に兼ね備えたプラスチックである。
〔シール部材の形状〕
シール部材100は、その外観形状は、外周面と内周面とを有する筒状体であれば、シール面の形状に合わせて任意の寸法、形状であり得る。
筒状体は、一つの実施形態において円筒体であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、筒状体の中心軸に垂直な面内での断面形状が、三角形、四角形、楕円形、あるいは多角形である筒状体でもあってもよい。
例えば、シール部材の形状は、任意の大きさであり得る。一つの実施形態において、外径が約20mm、内径が約14.9mm~約15.7mm、高さが約2.15mm~約2.55mmの円筒体である。
〔リング状の突出部の形状〕
本発明のシール部材において、少なくとも一つのリング状突出部の形状は任意であり得る。例えば、少なくとも一つのリング状突出部の各々は、筒状体の軸方向における幅がリング状突出部の先端側ほど小さくなる形状を有するものであってもよいし、あるいは、筒状体の軸方向における幅がリング状突出部の先端側か根元側かに拘わらず一定の寸法であるものであってもよい。好ましくは、少なくとも一つのリング状突出部の各々は、筒状体の軸方向における幅がリング状突出部の先端側ほど小さくなる形状を有する。このようにすることで、シール部材の使用時にかかるシール圧によりシール部材が若干変形したときにシール面に接触する面積を増やすことができるため、シール効果を増加させることが可能となる。
具体的には、1つの実施形態において、リング状突出部の周方向に垂直な断面でのリング状突出部の形状は、長方形形状の長辺を挟んで対向する角部を面取りして円弧状にした略台形形状である。ただし、リング状突出部の断面形状はこのような略台形形状に限定されるものではなく、その他の形状、例えば、三角形形状、台形形状、半円形状、あるいは半楕円形状などであってもよい。
少なくとも一つのリング状突出部の各々は、好ましくは先端部が前記シール部材の軸方向に約0.1mm~約1.0mmの平坦な面を有している。一つの実施形態において、先端部が前記シール部材の軸方向に約0.3mmの平坦な面を有している。平坦な面が約0.1mm以下であると、摩擦が小さくなり摺動性は向上するが気密性が低くなるため、摺動性と気密性の両立が難しくなる。また、平坦な面が約1.0mm以上であると、気密性は向上するが摺動性が低くなり、摺動性と気密性の両立が難しくなる。
先端部が平坦な面を有することにより、シール面の面積を確保することが可能となりシール効果を向上させることが可能である。しかし、本件発明はこれに限定されない。先端部が平坦な面を有していなくても、しばりばめにより接触時に接触面でリング状突出部が変形することで、点接触ではなく面接触することで高いシール面の面積を得るようにすることも可能である。
また、少なくとも一つのリング状突出部の各々は、好ましくは、高さが約0.1mm~約0.5mmであり得る。一つの実施形態において、高さは約0.2mmである。リング状突出部の高さを上記範囲にすることにより、リング状突出部が摺動軸内径と接触する際に、接触面でリング状突出部が横方向に多少変形される。
〔リング状突出部の配置〕
本発明のシール部材において、筒状体の軸方向における少なくとも一つのリング状突出部の配置間隔は任意であり得る。例えば、少なくとも一つのリング状突出部は、隣接するリング状突出部同士が一定間隔隔たるように筒状体の軸方向に沿って配置してもよいし、リング状突出部同士の間隔をランダムに配置してもよい。一方、少なくとも一つのリング状突出部は、隣接するリング状突出部同士が接するように筒状体の軸方向に沿って配置されていてもよい。
〔リング状突出部の個数〕
本発明のシール部材において、少なくとも一つのリング状突出部の個数は、特に限定されるものではなく、任意であり得る。例えば、1つの実施形態において、少なくとも一つのリング状突出部の個数は3つである。ただし、少なくとも一つのリング状突出部の個数は1つであってもよいし、2つであっても、4つ以上であってもよい。
〔シール部材を用いた気密摺動機構〕
さらに、本発明のシール部材は、相互に摺動する2つの部材を備えた気密摺動機構において、2つの部材の隙間をシールするのに用いることができる。本発明の気密摺動機構は、様々な用途の気密摺動部に用いることが可能である。例えば、浮力調整機器、ロボット腕部の伸縮ロッド、医療用機器や特に静寂性が求められる摺動部などに用いることが可能である。
このような気密摺動機構は、相互に摺動する2つの部材と、2つの部材の隙間をシールする上述したシール部材とを有し、2つの部材の一方が、内周面を有する中空の第1部材であり、2つの部材のもう一方が、第1部材の内部で摺動する、外周面を有する第2部材であれば、その他の構成は任意であり得る。
ただし、シール部材のリング状突出部が摺動可能に接する周面が、第2部材を摺動可能に収容する第1部材の内周面であるか、第2部材の外周面であるか、あるいは第1部材の内周面および第2部材の外周面の両方であるか、によって、気密摺動機構は大きく3つのタイプに分けられる。
(第1のタイプの気密摺動機構)
第1のタイプの気密摺動機構は、シール部材を構成する筒状体の外周面に形成されたリング状突出部が、第1部材の内周面に接するとともに、シール部材の筒状体の内周面を第2部材の外周面に固定することにより、リング状突出部が第1部材の内周面に相対的に摺動可能な状態で、シール部材を第1部材と第2部材との間に組み込んだものである。
シール部材の外周面に形成されたリング状突出部を第1部材の内周面に接するように装着する方法は、任意の方法であり得る。例えば、リング状突出部の外径が第1部材の内径よりも若干小さい(隙間ばめ)場合であってもよいし、リング状突出部の外径の最大許容寸法より第1部材の内径の最小許容寸法が小さく、リング状突出部の外径の最小許容寸法より第1部材の内径の最大許容寸法が大きい(中間ばめ)場合であってもよいし、リング状突出部の外径が第1部材の内径よりも若干大きい(しまりばめ)場合であってもよい。
好ましくはしまりばめである。このようにすることで、リング状突出部の外径の面と第1の部材の内径の面との密着度が高まり、気密性を向上させることが可能となる。
また、シール部材の内周面を第2部材の外周面に固定する手段は、任意の手段であり得る。例えば、第2部材の外周面に凹を設け、その凹部にシール部材の内周面を収納固定してもよいし、シール部材の内周面と第2部材の外周面とを、化学的または物理的に接着させる場合であってもよい。
本件発明のシール部材を用いることにより、気密状態を保持可能な液圧または気圧を、約1Mpa以上とすることが可能となる。また、本件発明のシール部材を摺動機構ではなく固定機構で用いた場合、約40MPa~約70MPaの気密状態を保持可能であり得る。
(第2のタイプの気密摺動機構)
第2のタイプの気密摺動機構は、シール部材を構成する筒状体の内周面に形成されたリング状突出部が、第2部材の外周面に接するとともに、シール部材の筒状体の外周面を第1部材の内周面に固定することにより、筒状体の内周側のリング状突出部が第2部材の外周面に相対的に摺動可能な状態で、シール部材を第1部材と第2部材との間に組み込んだものである。
シール部材の内周面に形成されたリング状突出部を第2部材の外周面に接するように装着する方法は、任意の方法であり得る。例えば、リング状突出部の内径が第2部材の外径よりも若干大きい(隙間ばめ)場合であってもよいし、リング状突出部の内径の最大許容寸法より第2部材の外径の最小許容寸法が小さく、リング状突出部の内径の最小許容寸法より第2部材の外径の最大許容寸法が大きい(中間ばめ)場合であってもよいし、リング状突出部の内径が第2部材の外径よりも若干小さい(しまりばめ)場合であってもよい。
好ましくはしまりばめである。このようにすることで、リング状突出部の内径の面と第2の部材の外周面との密着度が高まり、気密性を向上させることが可能となる。
本件発明のシール部材を用いることにより、気密状態を保持可能な液圧または気圧は、約1Mpa以上とすることが可能となる。
(第3のタイプの気密摺動機構)
第3のタイプの気密摺動機構は、シール部材を構成する筒状体の外周面に形成されたリング状突出部が第1部材の内周面に相対的に摺動可能に接触し、かつ、シール部材を構成する筒状体の内周面に形成されたリング状突出部が第2部材の外周面に相対的に摺動可能な状態で、シール部材を第1部材と第2部材との間に組み込んだものである。
本件発明のシール部材を用いることにより、気密状態を保持可能な液圧または気圧は、約1Mpa以上とすることが可能となる。
〔シール部材の製造方法〕
本発明のシール部材の製造は、シール部材を構成する筒状体の外周面に形成されたリング状突出部の外径、あるいはシール部材を構成する筒状体の内周面に形成されたリング状突出部の内径を高い寸法精度で加工する必要があり、筒状体の形成あるいはその仕上げには切削加工が用いられる。切削加工で形成することにより、シール部材(20個)のリング状突出部の寸法誤差を±0.050mm以内という優れた寸法精度に収めることが可能となる。
本発明のシール部材は、外周面と内周面とを有する筒状体からなり、フッ素樹脂を含み、外周面または内周面の少なくとも一方の周面に、少なくとも一つのリング状の突出部を備えているものであれば、特に限定されるものではないが、以下の実施形態では、シール部材は、筒状体およびリング状突出部がフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で構成されているものとする。
また、実施形態1では、シール部材は、筒状体が第2部材の外周面に固定され、筒状体の外周面に形成された3つのリング状突出部がシール面として第1部材の内周面に接するものとし、実施形態1の変形例では、シール部材として、実施形態1のシール部材における3つのリング状突出部を2つのリング状突出部に置き換えたものを示す。
また、実施形態2では、シール部材は、筒状体が第1部材の内周面に固定され、筒状体の内周面に形成された3つのリング状突出部がシール面として第2部材の外周面に接するものとし、実施形態2の変形例では、シール部材として、実施形態2のシール部材における3つのリング状突出部を2つのリング状突出部に置き換えたものを示す。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1によるシール部材100を説明するための図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)のB方向から見たシール部材100の構造を示す平面図、図1(c)は図1(a)のC方向から見たシール部材100の構造を示す側面図、図1(d)は図1(b)のId-Id線断面図、図1(e)は図1(d)に示すシール部材100のR1部分の断面形状S1を拡大して示す図である。
この実施形態1のシール部材100は、外周面110aと内周面110bとを有する筒状体110を含むシール部材(リップリング)である。このシール部材100(リップリング)はフッ素樹脂を含み、筒状体110の外周面110aに形成された少なくとも一つのリング状の突出部120を備えている。
ここでは、シール部材100(リップリング)は、フッ素樹脂の一種であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる円筒形状の樹脂成形体を切削加工して作製したものであり、筒状体110と少なくとも一つのリング状突出部120とは共にPTFEで構成されている。
この筒状体110は、具体的には、図1(a)に示すように、中心軸Axを有する円筒体である。
少なくとも一つのリング状突出部120の各々は、筒状体110の軸方向Axにおける幅W(図1(d)参照)がリング状突出部120の先端側ほど小さくなる形状を有する。具体的には、リング状突出部10の周方向に垂直な断面(図1(d)のR1部分)でのリング状突出部120の形状は、図1(e)に示すように、長方形形状S2の長辺を挟んで対向する角部(ドット表示の部分)S2aをこれが円弧状になるように面取りした略台形形状S1である。
また、少なくとも一つのリング状突出部120は、筒状体110の軸方向Axに沿って、隣接するもの同士が一定間隔隔たるように配置されている。
さらに、この実施形態1のシール部材100では、少なくとも一つのリング状突出部120は、筒状体110の外表面110aの上端位置、下端位置、およびこれらの中間の位置に配置された3つのリング状突出部120である。
このようなシール部材100は、例えば、以下の手順で製造することができる。
まず、フッ素樹脂の成形により切削加工の対象となる筒状の成形体を形成する。
次に、この筒状の成形体に切削加工を施すことにより、筒状体110として、外周面110aと内周面110bとを有し、かつ、筒状体110の外周面110aの表面に少なくとも一つのリング状突出部120が形成された円筒体を形成する。
次に、実施形態1のシール部材100(リップリング)を用いた気密摺動機構1000を説明する。
図2は、図1に示すシール部材100(リップリング)を含む気密摺動機構1000を説明するための断面図である。
この気密摺動機構1000は、内周面10aを有する中空の第1部材10と、外周面20aを有し、第1部材10の内部で摺動する第2部材20とを備え、第1部材10と第2部材20との隙間が図1に示すシール部材100(リップリング)によりシールされている。ここで、第1部材10は管状部材であり、より具体的には、中心軸L1を有する円筒形(つまり断面が円形)の管状部材である。第2部材20は柱状部材であり、より具体的には円柱状部材(断面が円形の柱状部材)である。ここでは、円柱状部材20の中心軸は、円筒形の管状部材10の中心軸L1と一致するようにこれらの部材10および20が配置されている。
ただし、第1部材10は断面が円形の管状部材に限らず、断面が楕円形、三角形、四角形、あるいは多角形の管状部材でもよく、さらには管状部材に限らず、中実部材の一部に第2部材20を摺動させるための穴部などの中空スペースを形成したものでもよい。また、第2部材20は断面が円形の柱状部材に限らず、断面が楕円形、三角形、四角形、あるいは多角形の柱状部材でもよく、さらには柱状部材に限らず、管状部材の少なくとも一方の端の開口を塞いだものでもよい。さらに、第1部材10および第2部材20の構成材料は任意であり得る。例えば、鉄、ステンレスなどの金属材料、セラミック材料、あるいは樹脂材料などを用いることができる。
この気密摺動機構1000では、シール部材100(リップリング)は、その筒状体110の内周面110bを第2部材20の外周面20aに固定することにより、筒状体110の外周面110aに形成された3つのリング状突出部120が第1部材10の内周面10aに摺動可能に接触するように、第1部材10と第2部材20との間に組み込まれている。ここで、シール部材100(リップリング)の筒状体110の内周面110bと第2部材20の外周面20aとの固定は、接着材によるものでも、嵌合によるものでも、あるいは、その他の機械的な固定手段によるものでもよい。
このように、気密摺動機構1000では、シール部材100(リップリング)の3つのリング状突出部120の先端が第1部材10の内周面10aに摺動可能に接することにより、相対的にスライドする第1部材10と第2部材20との間で高い液圧または気圧に対する気密シールが実現されている。
より具体的には、この気密摺動機構1000には、シール部材100(リップリング)により第1部材10と第2部材20との隙間で気密状態を保持可能な液圧または気圧を設定する少なくとも一つのパラメータが存在している。
少なくとも一つのパラメータは、例えば、リング状突出部120および第1部材10の撥水性と、少なくとも一つのリング状突出部120の形状と、シール部材100(リップリング)を第1部材10と第2部材20との間に組み込む前のリング状突出部120の外径および第1部材10の内径のいずれか2つ以上が含まれる。
この気密摺動機構1000では、第1部材10と第2部材20との隙間で気密状態を保持可能な液圧または気圧は、これらの少なくとも一つのパラメータの組み合わせにより、約1Mpa以上とすることが可能である。
例えば、シール部材100(リップリング)が3つのリング状突出部120を有し、リング状突出部120および第1部材10にPTFEが用いられている場合、シール部材100を第1部材10と第2部材20との間に組み込む前のリング状突出部120の外径を、筒状の第1部材10の内周面10aの内径よりも約0.1mm~約0.2mm小さくすることで、第1部材10とシール部材100(リップリング)との摩擦係数を約10~約30と低く抑えつつ、約1Mpa以上の高い液圧または気圧に対する気密シールが実現可能となる。
このようにシール部材100(リップリング)を用いた気密摺動機構1000では、図2に示すようにシール部材100(リップリング)の3つのリング状突出部120が第1部材10の内周面10aに接するようにシール部材100の筒状体110の内周面110bが第2部材20の外周面20aに固定されている。
この状態では、第1部材10の内部領域のうちのシール部材100(リップリング)の一方側(紙面上側)の領域が高圧の水で満たされている場合でも、第1部材10と第2部材20との隙間は、シール部材100(リップリング)の3つのリング状突出部120の先端が第1部材10の内周面10aに圧接することと、リング状突出部120および第1部材10の構成部材による撥水作用とにより、高圧の水がリング状突出部120の先端と第1部材10の内周面との間を通過して第1部材10の内部領域のうちのシール部材100の他方側(紙面下側)の領域に漏れるのが抑制される。これにより、気密摺動機構1000において、シール部材100(リップリング)は、管状の第1部材10の内周面10aと柱状の第2部材20の外周面20aとの隙間で高い液圧または気圧に対するシール効果を発揮することができる。
(実施形態1の変形例)
なお、実施形態1では、シール部材100(リップリング)として、3つのリング状突出部を有するものを示したが、シール部材100(リップリング)に設けられている少なくとも一つのリング状突出部120の個数は3つに限らず、2つでも、4つ以上でもよい。少なくとも一つのリング状突出部120の個数が多いほど、より高い液圧または気圧に対する気密シールを実現することができ、少なくとも一つのリング状突出部120の個数が少ないほど、第1部材10と第2部材20との摺動抵抗を低減することができる。以下、本発明の実施形態1によるシール部材の変形例として、2つのリング状突出部を備えたシール部材101(リップリング)を説明する。
図3は、このように2つのリング状突出部を有するシール部材101(リップリング)を実施形態1の変形例として説明するための図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は図3(a)のB方向から見たシール部材101(リップリング)の構造を示す平面図、図3(c)は図3(a)のC方向から見たシール部材101(リップリング)の構造を示す側面図、図3(d)は図3(b)のIIId-IIId線断面図、図3(e)は図3(d)に示すシール部材101(リップリング)のR1部分の断面形状S1を拡大して示す図である。
この実施形態1の変形例によるシール部材101(リップリング)は、実施形態1のシール部材100(リップリング)における3つのリング状突出部120に代えて、2つのリング状突出部120を備えたものである。
すなわち、この実施形態1の変形例のシール部材101(リップリング)では、2つのリング状突出部120の一方が筒状体110の外表面110aの上端に配置され、その他方が筒状体110の外表面110aの下端に位置するように配置されている。この実施形態1の変形例のシール部材101(リップリング)におけるその他の構成は、実施形態1のシール部材100(リップリング)におけるものと同一である。
また、図4は、図3に示すシール部材101を用いた気密摺動機構1001を説明するための断面図である。
図4に示す気密摺動機構1001は、図2に示す気密摺動機構1000にける実施形態1のシール部材100(リップリング)に代えて、実施形態1の変形例によるシール部材101(リップリング)を用いたものである。この気密摺動機構1001では、図4に示すように、シール部材101(リップリング)の2つのリング状突出部120と第1部材10の内周面10aとの接触箇所は2箇所となり、第1部材10に対する第2部材20の摺動抵抗を実施形態1のものに比べて低減できる点で有利である。
なお、実施形態1では、シール部材100(リップリング)として、筒状体110の外周面110aにリング状突出部120を形成したものを挙げたが、シール部材は、筒状体の内周面にリング状突出部を形成したものでもよく、以下このようなシール部材を実施形態2として説明する。
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2によるシール部材200(リップリング)を説明するための図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は図5(a)のB方向から見たシール部材200の構造を示す平面図、図5(c)は図5(a)のC方向から見たシール部材200(リップリング)の構造を示す側面図、図5(d)は図5(b)のVd-Vd線断面図、図5(e)は図5(d)に示すシール部材200(リップリング)のR2部分の断面形状S3を拡大して示す図である。
この実施形態2のシール部材200(リップリング)は、外周面210aと内周面210bとを有する筒状体210を含むシール部材である。このシール部材200(リップリング)はフッ素樹脂を含み、筒状体210の内周面210bに形成された少なくとも一つのリング状の突出部220を備えている。
ここでは、シール部材200(リップリング)は、フッ素樹脂の一種であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる円筒形状の樹脂成形体を切削加工して作製したものであり、筒状体210と少なくとも一つのリング状突出部220とは共にPTFEで構成されている。
なお、実施形態2のシール部材200(リップリング)では、筒状体210は、実施形態1のシール部材100の筒状体110と同様、中心軸Bxを有する円筒体である。ただし、実施形態1の筒状体110と同様、円筒体に限定されるものではない。また、リング状突出部220は、実施形態1のリング状突出部120のように筒状体110の外周面110aに形成されているのではなく、筒状体210の内周面210bに形成されている点でのみ、実施形態1のリング状突出部120とは異なる。従って、筒状体210の周方向に垂直な断面(図5(d)のR2部分)でのリング状突出部220の形状S3は、図5(e)に示すように、実施形態1のリング状突出部120の断面形状(図1(e)参照)と同じである。すなわち、リング状突出部220の形状S3は、長方形形状S4の長辺を挟んで対向する角部(ドット表示の部分)S4aをこれが円弧状になるように面取りした略台形形状S3である。ただし、リング状突出部220の断面形状S3は、実施形態1のリング状突出部120と同様、このような略台形形状に限定されるものではない。
さらに、この実施形態2のシール部材200(リップリング)においても、3つのリング状突出部220が、筒状体210の軸方向Bxに沿って、隣接するもの同士が一定間隔隔たるように配置されている。ただし、少なくとも一つのリング状突出部は、隣接するもの同士が接するように配置されていてもよい。
さらに、この実施形態2のシール部材200(リップリング)においても、少なくとも一つのリング状突出部220は、筒状体210の内表面210bの上端位置、下端位置、およびこれらの中間の位置に配置された3つのリング状突出部220である。ただし、少なくとも一つのリング状突出部220の軸方向Bxにおける配置および個数は限定されるものではない。このようなシール部材200(リップリング)は、実施形態1のシール部材100と同じ手順で製造することができる。
すなわち、フッ素樹脂の成形により切削加工の対象となる成形体を形成し、その後、この成形体に切削加工を施すことにより、筒状体210として、外周面210aと内周面210bとを有し、かつ、筒状体210の内周面210bの表面に少なくとも一つのリング状突出部220が形成された円筒体を形成する。
次に、実施形態2のシール部材200(リップリング)を用いた気密摺動機構2000を説明する。
図6は、図5に示すシール部材200(リップリング)を含む気密摺動機構2000を説明するための断面図である。
この気密摺動機構2000は、内周面30aを有する中空の第1部材30と、外周面40aを有し、第1部材30の内部で摺動する第2部材40とを備え、第1部材30と第2部材40との隙間が図3に示すシール部材200(リップリング)によりシールされている。
ここで、実施形態2で示す気密摺動機構2000における管状の第1部材30は、実施形態1で示す気密摺動機構1000における管状の第1部材10に相当するものであるが、2つの筒体31および32に分れている点でのみ実施形態1の第1部材10とは異なる。
すなわち、この実施形態2の管状の第1部材30は、中心軸L2を有する円筒体であり、この円筒体は、リング状のシール部材200(リップリング)を載せるリング状の載置部32aを有する一端側円筒体32(紙面下側の円筒体)と、リング状のシール部材200(リップリング)を押圧するリング状の押圧部31aを有する他端側円筒体31(紙面上側の円筒体)とで構成されている。
さらに、第1部材30は、これらの2つの筒体31および32を図6に示すように結合した状態では、一端側筒体32の載置部32aに置かれたシール部材200(リップリング)が他端側筒体31の押圧部31aで押圧されることで、シール部材200(リップリング)が第1部材30に固定され、2つの筒体31および32の接合面は気密シールされるように構成されている。ただし、第1部材30の内周面30aにシール部材200(リップリング)を固定する構造は、上述した一端側筒体32と他端側筒体31とを含む第1部材30の構造に限定されるものではく、管状の第1部材30は、その内周面30aに対して嵌合などにより、接着材により、あるいはその他の固定手段によりシール部材200(リップリング)が固定されるものでもよい。なお、柱状の第2部材40は、実施形態1における柱状の第2部材20と同一のものであり、第2部材40の中心軸は、第1部材30の中心軸L2と一致するようにこれらの部材30および40が配置されている。また、第1部材30および第2部材40の構成材料や形状は実施形態1における第1部材10および第2部材20と同様に限定されるものではない。
このように、気密摺動機構2000では、シール部材200(リップリング)の3つのリング状突出部220の先端が第2部材30の外周面40aに摺動可能に接することにより、相対的にスライドする第1部材30と第2部材40との間で高い液圧または気圧に対する気密シールが実現されている。
より具体的には、この気密摺動機構2000には、シール部材200(リップリング)により第1部材30と第2部材40との隙間で気密状態を保持可能な液圧または気圧を設定する複数パラメータが存在している。
複数のパラメータは、例えば、リング状突出部220および第2部材40の撥水性と、少なくとも一つのリング状突出部220の形状と、シール部材200(リップリング)を第1部材30と第2部材40との間に組み込む前のリング状突出部220の内径および第2部材40の外径のいずれか2つ以上が含まれる。
この気密摺動機構2000では、第1部材30と第2部材40との隙間で気密状態を保持可能な液圧または気圧は、これらの複数のパラメータの組み合わせにより、約1Mpa以上とすることが可能である。
例えば、シール部材200(リップリング)が3つのリング状突出部220を有し、リング状突出部220および第2部材40にPTFEが用いられている場合、シール部材200を第1部材30と第2部材40との間に組み込む前のリング状突出部220の内周径を、柱状の第2部材40の外周面40aの外径よりも約0.1mm~約0.2mm小さくすることで、第1部材30とシール部材200(リップリング)との摩擦係数を約10~約30と低く抑えつつ、約1Mpa以上の高い液圧または気圧に対する気密シールが実現可能となる。
このようにシール部材200(リップリング)を用いた気密摺動機構2000では、図6に示すようにシール部材200(リップリング)の3つのリング状突出部220が第2部材40の外周面40aに接するようにシール部材200(リップリング)の筒状体210の外周面210aが第1部材30の内周面30aに固定されている。
この状態では、第1部材30の内部領域のうちのシール部材200(リップリング)の一方側(紙面上側)の領域が高圧の水で満たされている場合でも、第1部材30と第2部材40との隙間は、シール部材200(リップリング)の3つのリング状突出部220の先端が第2部材40の外周面40aに圧接することと、リング状突出部220および第2部材40の構成部材による撥水作用とにより、高圧の水がリング状突出部220の先端と第2部材40の外周面40aとの間を通過して第1部材30の内部領域のうちのシール部材200(リップリング)の他方側(紙面下側)の領域に漏れるのが抑制される。これにより、気密摺動機構2000において、シール部材200(リップリング)は、管状の第1部材30の内周面30aと柱状の第2部材40の外周面40aとの隙間で高い液圧または気圧に対するシール効果を発揮することができる。
(実験結果)
第2部材20の外径15mmに対して、シール部材100(リップリング)のリング状突出部120の内径を14.9mmとし、両者をしまりばめにより装着した気密摺動機構1000において、目標気密である約1MPa以上の気密性が得られた。また、その際のシール部材100(リップリング)と第2部材20との摺動における摩擦力は、リング状突出部が一つの場合11.55N、リング状突出部が二つの場合16.10N、リング状突出部が三つの場合21.04Nであった。
第2部材20の外径15mmに対して、シール部材100(リップリング)のリング状突出部120の内径を14.8mmとし、両者をしまりばめにより装着した気密摺動機構1000において、目標気密である約1MPa以上の気密性が得られた。また、その際のシール部材100(リップリング)と第2部材20との摺動における摩擦力は、リング状突出部が一つの場合18.57Nであった。
さらに、第2部材20の外径15mmに対して、シール部材100(リップリング)のリング状突出部120の内径が15mmの中間ばめの場合およびシール部材100のリング状突出部120の内径が15.1mm以上の隙間ばめの場合には、所望気密である約1MPaの気密性が得られなかった。
なお、気密性の測定には、耐圧試験機(アテナ工央製、アテナステンレスチャンバ・ベーシックSS)のハッチ本体にPTFE製の第2部材20とシール部材100を取り付けた摺動部と水圧センサ(Keller America製、30X)を取り付けて、試験装置内部の圧力を段階的に上昇させることで摺動部からの水漏れの発生を確認した。
また、摩擦力の測定には、耐圧試験機に装着した第2の部材20にロードセル(イマダ製、ZTS-LM-500N)を取り付けて行った。試験装置内部の圧力を約1MPaに保った状態で第2の部材20へ徐々に荷重を加え、第2の部材20が摺動した瞬間の第2の部材に加わっていた荷重と圧力センサの値とから摩擦力を算出した。
この結果から、リング状突出部の数を増やすと摩擦力が上昇し、しまりばめ(第2の部材の外径と対するリング状突出部の内径との差)が大きくなると、摩擦力が上昇することがわかった。シール部材のしまりばめの条件やリング状突出部の数を考慮することで、所望の気密性を担保しつつ、摩擦力をちいさくできることがわかった。
(実施形態2の変形例)
なお、実施形態2では、シール部材200(リップリング)として、3つのリング状突出部を有するものを示したが、シール部材200(リップリング)に設けられている少なくとも一つのリング状突出部220の個数は3つに限らず、1つでも、2つでも、4つ以上でもよい。少なくとも一つのリング状突出部220の個数が多いほど、より高い液圧または気圧に対する気密シールを実現することができ、少なくとも一つのリング状突出部220の個数が少ないほど、第1部材30と第2部材40との摺動抵抗を低減することができる。以下、本発明の実施形態2によるシール部材の変形例として、2つのリング状突出部を備えたシール部材201(リップリング)を説明する。
図7は、このように2つのリング状突出部を有するシール部材201(リップリング)を本発明の実施形態2の変形例として説明するための図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は図7(a)のB方向から見たシール部材201(リップリング)の構造を示す平面図、図7(c)は図7(a)のC方向から見たシール部材201(リップリング)の構造を示す側面図、図7(d)は図7(b)のVIId-VIId線断面図、図7(e)は図7(d)に示すシール部材201のR2部分の断面形状を拡大して示す図である。
この実施形態2の変形例によるシール部材201(リップリング)は、実施形態2のシール部材200(リップリング)における3つのリング状突出部220に代えて、2つのリング状突出部220を備えたものである。
すなわち、この実施形態2の変形例のシール部材201(リップリング)では、2つのリング状突出部220は、その一方が筒状体210の内表面210aの上端に配置され、その他方が筒状体210の内表面210aの下端に位置するように配置されている。この実施形態2の変形例のシール部材201(リップリング)におけるその他の構成は、実施形態2のシール部材200(リップリング)におけるものと同一である。
また、図8は、図7に示すシール部材201を用いた気密摺動機構2001を説明するための断面図である。
図8に示す気密摺動機構2001は、図6に示す気密摺動機構2000にける実施形態2のシール部材200(リップリング)に代えて、実施形態2の変形例によるシール部材201(リップリング)を用いたものである。この気密摺動機構2001では、図8に示すように、シール部材201(リップリング)の2つのリング状突出部220と第2部材40の外周面40aとの接触箇所は2箇所となり、第1部材30に対する第2部材40の摺動抵抗を実施形態2のものに比べて低減できる点で有利である。
なお、上述した実施形態1では、シール部材100(リップリング)として、その筒状体110が第2部材20の外周面に取り付けられ、そのリング状突出部120が第1部材10の内周面10aに摺動可能に接するものを挙げ、さらに、実施形態2では、シール部材200(リップリング)として、その筒状体210が第1部材30の内周面に取り付けられ、そのリング状突出部220が第2部材40の外周面に摺動可能に接するものを挙げたが、本発明のシール部材は、シール部材の筒状体の外周側に形成されたリング状突出部が第1部材の内周面に摺動可能に接触し、かつ、シール部材の筒状体の内周側に形成されたリング状突出部が第2部材の外周面に摺動可能に接触するものでもよく、さらには、実施形態1および2で示した気密摺動機構は、このように筒状体の内周面および外周面の両方にリング状突出部が形成されたシール部材を含むものでもよい。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、シール部材およびその製造方法、並びに気密摺動機構の分野において、相互に摺動する2つの部材の隙間で高い液圧または気圧に対して十分なシール効果を発揮することを可能にするシール部材およびその製造方法、並びにこのようなシール部材を備えた気密摺動機構を提供することができるものとして有用である。
10、30 第1部材
10a、30a 第1部材の内周面
20、40 第2部材
20a、40a 第2部材の外周面
100、101、200、201 シール部材(リップリング)
110、210 本体部
110a 本体部の外周面
120、220 リング状突出部
210a 本体部の内周面

Claims (8)

  1. 外周面と内周面とを有する筒状体からなるシール部材であって、
    前記シール部材はフッ素樹脂からなる単一の部材からなり、
    前記外周面または前記内周面の少なくとも一方の周面に、複数のリング状突出部を備え、
    前記外周面の周面に備わる前記複数のリング状突出部は、内周面を有する中空の第1部材に摺動可能に接触されるためのものであるか、または、前記内周面に備わる前記複数のリング状突出部は、外周面を有し、前記第1部材の内部で摺動する第2部材に摺動可能に接続されるためのものであって、
    前記複数のリング状突出部の高さは、それぞれ約0.1mm~約0.5mmであり、
    前記複数のリング状突出部の各々は、その先端部が前記筒状体の軸方向に約0.1mm~約1.0mmの平坦な面を有する、シール部材。
  2. 前記平坦な面の端部はなだらかに傾斜する略円弧状に面取りされている、請求項1に記載のシール部材。
  3. 前記複数のリング状突出部の各々は、前記筒状体の軸方向の幅が前記リング状突出部の先端側ほど小さくなる形状を有する、請求項1に記載のシール部材。
  4. 前記複数のリング状突出部は、隣接するリング状突出部同士が接するように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール部材。
  5. 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシール部材を含む気密摺動機構であって、
    記シール部材は、前記筒状体を前記第2部材の外周面に固定することにより、前記筒状体の外周側の前記リング状の突出部が前記第1部材の内周面に摺動可能に接触するように、前記第1部材と前記第2部材との間に組み込まれている、気密摺動機構。
  6. 前記気密摺動機構は、
    少なくとも、前記複数のリング状突出部の個数と、
    前記シール部材を前記第1部材と前記第2部材との間に組み込む前の前記リング状突出部の内径および前記第2部材の外径と
    を調整することにより、
    前記シール部材により前記第1部材と前記第2部材との隙間で約1MPa以上の気密状態を保持可能である、請求項5に記載の気密摺動機構。
  7. 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシール部材を含む気密摺動機構であって、
    記シール部材は、前記筒状体を前記第1部材の内周面に固定することにより、前記筒状体の内周側の前記リング状突出部が前記第2部材の外周面に摺動可能に接触するように、前記第1部材と前記第2部材との間に組み込まれている、気密摺動機構。
  8. 前記気密摺動機構は、
    少なくとも、前記複数のリング状突出部の個数と、
    前記シール部材を前記第1部材と前記第2部材との間に組み込む前の前記リング状突出部の内径および前記第2部材の外径と
    を調整することにより、前記シール部材により前記第1部材と前記第2部材との隙間で約1MPa以上とする気密状態を保持可能である、請求項7に記載の気密摺動機構。
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