本発明の好ましい実施の形態である第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1A及び車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aを、図1~図6に基づいて説明する。なお、図6は、3点ゲージによる計測結果を示すものである。また、後述の比較例、第2の実施の形態及び変形例の説明において、第1の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略するものとする。また、本明細書では、車両前後方向X及び車幅方向Yからなる方向を、車両水平方向と定義する。また、以下の記載では、車両がセダンタイプであるものとして説明を行っているが、他の車両タイプであっても、本発明が成立することは、言うまでもない。
図1及び図2には、車両用ルーフパネル1Aを下側から支持するために、車両用ルーフパネル1Aが接合される車両上部構造部材BSが示されている。なお、図1及び図2では、図示されていない車両において車幅方向の中央位置に配置される車両対称面PSに対して車両上部構造部材BSの左側部分のみを示している。以下の図では、X方向は車両前後方向であり、X軸の先端方向が車両の進行方向であり、Y方向は車幅方向であり、Y軸の先端方向が車幅方向の左方を向いており、Z軸は車両上下方向である。
車両上部構造部材BSは、車両の上部を構成する部材である。車両上部構造部材BSは、通常、鋼材により形成される。車両上部構造部材BSは、ルーフサイドレールrsrと、フロントルーフレールfrrと、リアルーフレールrrrと、ルーフクロスメンバrcmと、BピラーBPと、を備える。車両上部構造部材BSは、鋼材で形成されているので、後述するアルミニウム製の車両用ルーフパネルよりも、それぞれの材料が有する線膨張係数の差から、熱膨張による変形が生じにくい。
ルーフサイドレールrsrは、車両の上部において車幅方向Yの両側に配置され車両前後方向Xに延びる部材である。ルーフサイドレールrsrは、衝突安全性の観点から、車両フレームの一部として機能する部材である。そのため、ルーフサイドレールrsrは、大きな強度及び剛性を有している。そして、ルーフサイドレールrsrは、大きな強度及び剛性を有しており、更に線膨張係数が小さい鋼材で形成されているため、加熱されても、熱膨張による変形がほとんど生じない部材である。本実施の形態では、ルーフサイドレールrsrは、2枚の鋼板を内側に空間を形成するように重ね合わせて、2枚の鋼板の端縁が接合されて、形成される。
ルーフサイドレールrsrの前側部分は、Aピラーに相当し、後ろ側部分は、Cピラーに相当する。ルーフサイドレールrsrのAピラー部分及びCピラー部分を除く中間部分は、後述する車両用ルーフパネル1Aのサイドレール側ルーフパネル縁部42Aが接合される部分である。
フロントルーフレールfrrは、車両用ルーフパネル1Aの後述するフロントレール側ルーフパネル縁部41Aが接合されて、車両用ルーフパネル1Aを下側から支持する部材である。フロントルーフレールfrrは、ルーフサイドレールrsrのAピラー部分と中間部分との境目に接続され、車幅方向Yに延びる部材である。
リアルーフレールrrrは、車両用ルーフパネル1Aの後述するリアレール側ルーフパネル縁部43Aが接合されて、車両用ルーフパネル1Aを下側から支持する部材である。リアルーフレールrrrは、ルーフサイドレールrsrのCピラー部分と中間部分との境目に接続され、車幅方向Yに延びる部材である。
ルーフクロスメンバrcmは、フロントルーフレールfrrとリアルーフレールrrrとの車両前後方向Xにおける間で車両用ルーフパネル1を下側から支持する部材である。ルーフクロスメンバrcmは、ルーフサイドレールrsrの中間部分において間隔をおいて接続され、車幅方向Yに延びる部材である。
BピラーBPは、ルーフサイドレールrsrをその略中央位置で車両上下方向Zに支持するとともに、側面衝突に対抗するための車両フレームの一部として機能する部材である。なお、BピラーBPが存在しなくても、車両上部構造部材BSは、機能する。
図3には、車両用ルーフパネル1Aが示されている。車両用ルーフパネル1Aは、車両の上部を構成する部材であり、車両の上面を構成し、車両の屋根に相当する。車両用ルーフパネル1Aは、アルミニウム製の板材で形成されている。なお、本明細書で、「アルミニウム製」とは、アルミニウム合金製を含み、アルミニウムを主たる材料とする金属で製造されることである。車両用ルーフパネル1Aは、ルーフサイドレールrsr、フロントルーフレールfrr及びリアルーフレールrrrに覆いかぶさるような形状である略方形状に形成されている。
車両用ルーフパネル1Aは、ルーフパネル本体部2と、ルーフパネル縁部4Aと、を備える。
ルーフパネル本体部2は、車両用ルーフパネル1Aにおいて、車両前後方向X及び車幅方向Yの中央位置から所定の範囲に位置し、面積比で大半の面積を占める部分である。そして、ルーフパネル本体部2は、車両の最上面を構成する。したがって、ルーフパネル本体部2は、車両用ルーフパネル1における目立つ部分であり、車両用ルーフパネル1の意匠面を構成する。ルーフパネル本体部2は、アルミニウム製の板材で形成されている。
ルーフパネル縁部4Aは、車両用ルーフパネル1Aにおいて、ルーフパネル本体部2の周りに配置される部分である。すなわち、ルーフパネル縁部4Aは、ルーフパネル本体部2を車両前後方向X及び車幅方向Yに取り囲むように配置されている。すなわち、ルーフパネル縁部4Aの内側の周端縁は、ルーフパネル本体部2の周端縁と一体に形成されている。ルーフパネル縁部4Aは、ルーフパネル本体部2よりも車両上下方向Zの下方に位置するように形成されている。
ルーフパネル縁部4Aは、ルーフパネル本体部2に対して車両前後方向Xの前側で車幅方向Yに延びるフロントレール側ルーフパネル縁部41Aと、ルーフパネル本体部2に対して車幅方向Yの両側で車両前後方向Xに延びるサイドレール側ルーフパネル縁部42Aと、ルーフパネル本体部2に対して車両前後方向Xの後ろ側で車幅方向Yに延びるリアレール側ルーフパネル縁部43Aと、を有する。
ルーフパネル縁部4Aは、車両上部構造部材BSと接合されるための複数の被接合点を有する。具体的には、フロントレール側ルーフパネル縁部41Aはフロントルーフレールfrrと、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aはルーフサイドレールrsrと、リアレール側ルーフパネル縁部43Aはリアルーフレールrrrと、複数の被接合点において機械的接合手段により接合される。なお、図3以降の図において、説明の簡略化のために、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aに配置される複数の被接合点c1~cNのみを示し、フロントレール側ルーフパネル縁部41A及びリアレール側ルーフパネル縁部43Aに配置される複数の被接合点は、図示されていない。なお、Nは、1以上の整数であり、被接合点cの間隔とサイドレール側ルーフパネル縁部42Aの長さとの関係に応じて定まる整数である。また、本実施の形態では、機械的接合手段はリベットである。
ルーフパネル縁部4Aは、縁部縦壁部と、縁部横壁部と、を有する。例えば、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aは、その斜視断面図が示されている図4を見るとわかるように、縁部縦壁部420と、縁部横壁部422Aと、を有する。なお、図4では、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aの構造を見やすくするために、図5に示されているシール剤WS及びモールMを省略して図示されている。
縁部縦壁部は、ルーフパネル本体部2の周端縁から一定の高さで車両上下方向の下方に延びるように配置されている。
縁部横壁部は、縁部縦壁部の下端縁から一定の幅で車両水平方向に延びる。図4に示されるように、例えば縁部横壁部422A及び縁部縦壁部420すなわちルーフパネル縁部4Aは、断面形状がL字状になるように形成されている。
縁部横壁部は、車両用ルーフパネル1Aを車両上部構造部材BSが備えるルーフサイドレールrsr、フロントルーフレールfrr及びリアルーフレールrrrと接合するための面を形成する部分である。そして、L字の下辺に相当する縁部横壁部に、複数の被接合点は、配置されている。すなわち、縁部横壁部422Aに、複数の被接合点c1~cNは、配置されている。
ルーフパネル本体部2に対して車両前後方向Xの前側に位置する縁部縦壁部及び縁部横壁部は、フロントレール側ルーフパネル縁部41Aを構成する。ルーフパネル本体部2に対して車幅方向Yの両側に位置する縁部縦壁部420及び縁部横壁部422Aは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aを構成する。ルーフパネル本体部2に対して車両前後方向Xの後側に位置する縁部縦壁部及び縁部横壁部は、リアレール側ルーフパネル縁部43Aを構成する。
複数の被接合点は、縁部横壁部が長く延びる方向に配置されている。すなわち、複数の被接合点c1~cNは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aにおける縁部横壁部422Aにおいて、車両前後方向Xに、並ぶように配置されている。同様に、複数の被接合点は、フロントレール側ルーフパネル縁部41A及びリアレール側ルーフパネル縁部43Aにおける縁部横壁部において、車幅方向Yに、並ぶように配置されている。なお、本実施の形態では、複数の被接合点は一定間隔で並んでいるが、一定間隔であることは必須ではない。
複数の被接合点は、前述の通り、ルーフパネル縁部4Aが車両上部構造部材BSと接合されるための点である。すなわち、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aの縁部横壁部422Aにおける複数の被接合点c1~cNは、縁部横壁部422Aとルーフサイドレールrsrとが重ね合わされた状態で、例えばリベットが貫通されるなどして機械的接合手段により、ルーフサイドレールrsrに点接合される点である。
図3及び図4には、複数の被接合点のうちの、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aに配置される複数の被接合点c1~cNが示されている。サイドレール側ルーフパネル縁部42Aに配置される複数の被接合点c1~cNは、車両前後方向Xの後側から前側に向かって順に並ぶ、第1の被接合点c1から第Nの被接合点cNまでの被接合点を有している。
以下の説明のため、第nの被接合点cnは、複数の被接合点cのうちの車両前後方向Xの略中央位置に配置されている被接合点とする。なお、nは、1以上の整数である。
縁部横壁部422Aは、複数のサイドレール側スリットs1~sMを有する。なお、Mは、1以上の整数であり、サイドレール側スリットsの長さ及び間隔とサイドレール側ルーフパネル縁部42Aの長さとの関係に応じて定まる整数である。
同様に、図示していないが、フロントレール側ルーフパネル縁部41Aの縁部横壁部は、複数のフロントレール側スリットを有する。
同様に、図示していないが、リアレール側ルーフパネル縁部43Aの縁部横壁部は、複数のリアレール側スリットを有する。
複数のフロントレール側スリットと複数のサイドレール側スリットsと複数のリアレール側スリットとは、複数のスリットsを構成する。
複数のスリットsは、縁部横壁部において、複数の被接合点の並ぶ方向と平行に延びるように、配置されている。複数のスリットsの各スリットは、一文字状に穿孔されて、形成されている。複数のスリットsは、縁部横壁部における複数の被接合点の位置よりも車両水平方向の内側に配置されている。複数のスリットsは、図示されていないが、ルーフパネル縁部4Aの全周にわたり間隔をおいて配置されている。なお、本実施の形態では、複数のスリットsは一定間隔で並んでいるが、一定間隔であることは必須ではない。
複数のサイドレール側スリットs1~sMは、車両前後方向Xの後側から前側に向かって順に並ぶ、第1のサイドレール側スリットs1から第Mのサイドレール側スリットsMまでのサイドレール側スリットを有する。
すなわち、複数のサイドレール側スリットs1~sMは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aのうち車幅方向Yに見てルーフパネル本体部2のルーフサイドレール側の周端縁(符号なし)と重なる領域の全域にわたり間隔をおいて配置されている。
本実施の形態では、複数のスリットsの各スリットは、縁部横壁部において、隣り合う4つの被接合点を跨ぐように、配置されている。
具体的には、第mのサイドレール側スリットsmは、複数の被接合点のうちの隣り合う第nの被接合点cn、第n+1の被接合点cn+1、第n+2の被接合点cn+2及び第n+3の被接合点cn+3を跨ぐように、第nの被接合点cn、第n+1の被接合点cn+1、第n+2の被接合点cn+2及び第n+3の被接合点cn+3の並ぶ方向と平行に延びているスリットである。したがって、第mのサイドレール側スリットsmは、第nの被接合点cn、第n+1の被接合点cn+1、第n+2の被接合点cn+2及び第n+3の被接合点cn+3並びにそれらの被接合点の間の部位と、ルーフパネル本体部2との連結を切断する。なお、mは、1以上の整数である。
第mのサイドレール側スリットsmの前側の隣に位置する第m+1のサイドレール側スリットsm+1は、同様に、第n+5の被接合点cn+5から始まる4つの被接合点cを跨ぐように、4つの被接合点cの並ぶ方向と平行に延びているスリットである。
隣り合うサイドレール側スリットs同士の間には、スリット間連続部tが形成されている。例えば、隣り合う第mのサイドレール側スリットsmと第m+1のサイドレール側スリットsm+1との間には、第mのスリット間連続部tmが形成されている。
スリット間連続部tは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aが車幅方向Yに連続する部分である。すなわち、スリット間連続部tは、複数の被接合点とルーフパネル本体部2との間においてスリットsが存在しない部分である。
第mのスリット間連続部tmは、1つの被接合点、例えば第n+4の被接合点cn+4を有している。
すなわち、複数の被接合点c1~cNのうちスリット間連続部tに位置する被接合点の個数が1つ以下となるように、それぞれのサイドレール側スリットsが間隔をおいて形成されている。
したがって、スリット間連続部tでは、スリット間連続部tに位置する1つの被接合点及びその周辺のサイドレール側ルーフパネル縁部42Aとルーフパネル本体部2との連結が切断されていない。
図3には示されていないが、フロントレール側ルーフパネル縁部41A、リアレール側ルーフパネル縁部43Aにおいても、同様に、複数のスリットsが、複数の被接合点の並ぶ方向と平行に延びるように、配置されている。そして、隣り合うスリットs同士の間には、スリット間連続部tが形成されている。
次に、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aを、図4及び図5に基づいて説明する。
車両用ルーフパネル1Aは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aの縁部横壁部422Aに配置された複数の被接合点c1~cNを貫通する機械的接合手段例えばリベット(図示しない)によって、車両上部構造部材BSのルーフサイドレールrsrの車幅方向内側に配置されるフランジ部(符号なし)と接合されている。
図示されていないが、同様に、車両用ルーフパネル1Aは、フロントレール側ルーフパネル縁部41Aに配置された複数の被接合点を貫通する機械的接合手段によって、フロントルーフレールfrrと接合されている。同様に、車両用ルーフパネル1Aは、リアレール側ルーフパネル縁部43Aに配置された複数の被接合点を貫通する機械的接合手段によって、リアルーフレールrrrと接合されている。
さらに、本実施の形態では、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aは、車両上部構造部材BSとルーフパネル本体部2との間に、車両前後方向Xに延びる凹部(符号なし)を有している。
そして、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aは、前記凹部に、シール剤WSと、モールMと、を有している。
シール剤WSは、例えば、樹脂硬化剤であり、車両用ルーフパネル1Aの縁部横壁部422Aに形成されている複数のスリットsと被接合点cnにおける機械的接合手段とをシールするためのものである。
モールMは、前記凹部を、樹脂硬化剤の上側で、ルーフパネル本体部2及びルーフサイドレールrsrの上面高さまで埋めるための部材である。
シール剤WSにより、車両用ルーフパネル1Aの縁部横壁部422Aに形成されている複数のスリットs等を通じて、雨水等の水が車両用ルーフパネル1Aとルーフサイドレールrsrとの間に浸入し、アルミニウム製の車両用ルーフパネル1Aと鋼製のルーフサイドレールrsrとの間で起電力が生じることにより、それらに電解腐食が発生することを防止することができる。
モールMにより、前記凹部に雨水等が溜まることを防止することができる。
このようにして、車両用ルーフパネル1Aが車両上部構造部材BSと一体化されて、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aは、構成される。
次に、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1A及び前記接合体10Aによる作用効果を説明する。
図6に示されるシミュレーション結果からわかるように、前記接合体10Aの状態で加熱されても、車両用ルーフパネル1Aには、顕著な歪みが表れなかった。すなわち、複数の被接合点c1~cNのうちの略中央位置に配置されている第nの被接合点cnの近傍に位置するルーフパネル本体部2の一定領域のみならず、ルーフパネル本体部2の全域にわたって、顕著な歪みが表れなかった。すなわち、車両用ルーフパネル1Aに表れた歪み高さδは、最大でも0.01mmである。なお、以下で示される複数のシミュレーション結果は、焼付塗装を想定し、常温20℃から190℃まで加熱し再度20℃まで冷却するという条件で行われたシミュレーションの結果である。
このシミュレーション結果は、車両用ルーフパネル1Aによれば、車両の焼付塗装等を目的とする加熱により車両用ルーフパネル1Aが熱膨張しても、車両用ルーフパネル1Aの意匠面を構成するルーフパネル本体部2において、複数のスリットsにより、自由膨張が可能となり、塑性変形が抑制され、外観品質不良が抑制されることを示している。
詳細には、車両用ルーフパネル1Aは、複数の被接合点を介して、車両上部構造部材BSと、接合される。そして、車両上部構造部材BSに接合された車両用ルーフパネル1Aは、塗装等を目的として加熱されると、鋼材からなる車両上部構造部材BSと、鋼材の線膨張係数よりも3倍大きな線膨張係数を有するアルミニウムからなる車両用ルーフパネル1Aとは、共に、熱膨張する。ここで、それぞれの線膨張係数の違いにより、車両用ルーフパネル1Aの方が、車両上部構造部材BSよりも大きく熱膨張する。しかし、ルーフパネル縁部4Aが複数のスリットsを有するので、複数のスリットsにより、スリットsに跨がれる隣り合う4つの被接合点c及び当該4つの被接合点cの間の部位とルーフパネル本体部2との連結が切断される。すなわち、ルーフパネル本体部2は、車両上部構造部材BSと接合された当該4つの被接合点cの並ぶ方向において、当該4つの被接合点c及び当該4つの被接合点の間で拘束力が及んでいる部位に対して自由に膨張することができる。したがって、車両用ルーフパネル1Aによれば、加熱時に、複数のスリットsにより、当該4つの被接合点cの間の部位と平行に並ぶルーフパネル本体部2に形成される領域において、車両上部構造部材BSとの線膨張差による伸び変形が抑制されることにより車両用ルーフパネル1Aが塑性変形することが抑制される。
言い換えると、線膨張係数が小さい鋼材で形成され大きな強度及び剛性を有し熱膨張による変形がほとんど生じないルーフサイドレールrsrに複数の被接合点c1~cNを介して機械的接合手段によって接合されているサイドレール側ルーフパネル縁部42Aにおいて、複数の被接合点c1~cNの間には、熱膨張による車両前後方向Xの伸びを制限する大きな拘束力が生じている。ここで、複数のスリットsを有していない以下に説明する比較例のルーフパネル1においては、当該拘束力がルーフパネル本体部2にまで及んでいる。しかし、複数のサイドレール側スリットsを有している第1の実施の形態に係るルーフパネル1Aにおいては、サイドレール側スリットsに跨がれる隣り合う4つの被接合点c及び当該4つの被接合点cの間の部位とルーフパネル本体部2との連結が切断されていることから、当該4つの被接合点間の車両前後方向Xの拘束力は、当該4つの被接合点の間の部位と平行に並ぶルーフパネル本体部2の一定領域には及んでいない。さらに付け加えると、スリット間連続部tに位置する被接合点cの個数が1つであるので、スリット間連続部tを通じても、熱膨張による伸びに対して最も制限を生じさせる隣接する2つの被接合点間の拘束力は、ルーフパネル本体部2の当該一定領域には及んでいない。したがって、車両用ルーフパネル1Aによれば、ルーフパネル本体部2の当該一定領域には、弾性域を超えて塑性域まで変形を進行させる程の拘束力が及ばず、塑性変形が生じない。
ここで、本発明によって上記作用効果が奏されることを説明するために、比較例として、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aと異なり、スリットを有していない車両用ルーフパネル1を説明する。
比較例の車両用ルーフパネル1を、図7~図9に基づいて説明する。
車両用ルーフパネル1は、ルーフパネル本体部2の周りに、ルーフパネル縁部4を有している。
ルーフパネル縁部4は、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aと同様に、車両上部構造部材BSと接合されるための複数の被接合点を有している。
ルーフパネル縁部4は、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aと同様に、フロントレール側ルーフパネル縁部41とサイドレール側ルーフパネル縁部42とリアレール側ルーフパネル縁部43とを有しているが、いずれにおいても、スリットが形成されていない。
すなわち、ルーフパネル縁部4における、複数の被接合点及び複数の被接合点の間の部位とルーフパネル本体部2とは、連結している状態である。
ここで、車両上部構造部材BSと複数の被接合点で接合された比較例の車両用ルーフパネル1が、塗装等を目的として加熱された時に、以下のような塑性変形を発生させることを説明する。
図8及び図9に示されるシミュレーション結果からわかるように、加熱された車両用ルーフパネル1のルーフパネル本体部2は、第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1の周りに車両前後方向Xに波打つように、歪み高さδが+方向で0.10mm以上、-方向で0.50mmを超えるような、歪みを発生する。
これは、次の理由による。
車両用ルーフパネル1は、アルミニウム製である。車両上部構造部材BSは、鋼材で形成されている。線膨張係数比で、アルミニウムと鉄は、3:1である。したがって、車両用ルーフパネル1は、車両上部構造部材BSよりも、熱膨張して大きく伸びようとする。また、車両用ルーフパネル1は、略板状であることと相まって、車両上部構造部材と比較して剛性及び強度が低い。
車両用ルーフパネル1が車両上部構造部材BSと複数の被接合点で機械的接合手段で接合されているところ、車両用ルーフパネル1が車両上部構造部材BSよりも大きく熱膨張することにより、車両用ルーフパネル1が車両上部構造部材BSに接合される被接合点の周りにおいて、車両上部構造部材BSと比較して剛性及び強度が低い車両用ルーフパネル1に変形が集中する。
ここで、車両用ルーフパネル1が備えるルーフパネル縁部4とルーフパネル本体部2とを比較すると、ルーフパネル縁部4は、外側の周端縁が自由であるのに対し、ルーフパネル本体部2は、ルーフパネル縁部4に囲まれていて自由な周端縁を有していない。
また、ルーフパネル縁部4の中でもサイドレール側ルーフパネル縁部42は、熱膨張による変形がほとんど生じないルーフサイドレールrsrに接合されている。
そして、サイドレール側ルーフパネル縁部42に配置される複数の被接合点に打たれる機械的接合手段による車両前後方向Xの拘束力は、サイドレール側ルーフパネル縁部42のみならず、ルーフパネル本体部2における前記複数の被接合点と平行な一定領域にも及んでいる。
一方、加熱により、車両用ルーフパネル1全体は、全方向に熱膨張し伸びようとする。
したがって、前記複数の被接合点間に働く車両前後方向Xの拘束力が、ルーフパネル本体部2における前記複数の被接合点と平行な一定領域における熱膨張による車両前後方向Xの伸びを拘束し、拘束されることによる前記一定領域における変形を弾性域を超えて塑性域まで進行させて、前記一定領域に冷却後も残る塑性変形を生じさせる。
この現象は、前記一定領域において、車両前後方向の荷重が抜けやすい車両前後方向の端から最も離れている中央位置近傍で起こりやすい。
したがって、スリットを有しない車両用ルーフパネル1の意匠面であるルーフパネル本体部2に塑性変形が発生する。特に、ルーフパネル本体部2の中でも、サイドレール側ルーフパネル縁部42に配置される複数の被接合点の近傍の前記一定領域内であって車両前後方向Xの中央位置近傍、すなわち、複数の被接合点のうちの車両前後方向Xの略中央位置に配置されている第nの被接合点cnの近傍かつ前記一定領域内に、塑性変形が発生する。
一方、上記のとおり、本発明の第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aによれば、複数のスリットsを有していることにより、ルーフパネル本体部2において、塑性変形が抑制される。
なお、車両用ルーフパネル1Aのルーフパネル縁部4Aには塑性変形が発生しうるが、ルーフパネル縁部4Aは、ルーフパネル本体部2よりも車両上下方向Zの下方に位置し、目立たない位置に配置されているので、塑性変形が発生しても、車両用ルーフパネル1Aの外観品質上問題はない。
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aによる作用効果を説明する。
車両用ルーフパネル1Aによれば、ルーフパネル本体部2は、スリット間連続部tを除いて、ルーフパネル縁部4Aの全周にわたり配置されている複数の被接合点及び複数の被接合点の間の部位と連結が切断される。したがって、ルーフパネル本体部2は、ルーフパネル縁部4Aの全周にわたる領域と平行に並ぶルーフパネル本体部2に形成される一定領域において、塑性変形することが抑制される。
また、車両用ルーフパネル1Aによれば、複数のスリットsは、意匠面ではないルーフパネル縁部4Aに配置されているので、車両用ルーフパネル1Aの意匠性の自由度を低下させることがない。
すなわち、車両用ルーフパネル1Aによれば、複数のスリットsは、意匠面である前記ルーフパネル本体部2に対して車両上下方向Zの下方の位置すなわちより目立たない位置に配置される縁部横壁部422Aに配置されるので、車両用ルーフパネル1Aの意匠性の自由度を低下させることがない。
また、ルーフパネル本体部2は、車両上部構造部材BSに複数の被接合点を介して接合されているルーフパネル縁部4Aにスリット間連続部tを介して隣り合うスリットsの並ぶ方向と交差する方向に連結されている。したがって、車両用ルーフパネル1Aによれば、車両走行時における風圧によるルーフパネル本体部2の浮き上がりを防止することができる。
また、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aによれば、車両上部構造部材BSを形成する材料が鋼材であるので、車両上部構造部材BSを備える車両の剛性が向上することができるとともに、ルーフパネル1Aを形成する材料がアルミニウムであるので、車両の上部における重量が低減され、車両全体が軽量化されるとともに車両の重心が低下して走行安定性を向上することができる。
また、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合体10Aは、車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとが複数の被接合点において機械的接合手段によって接合されて形成されるので、複数の被接合点における車両用ルーフパネル1Aと車両上部構造部材BSとの接合強度を大きくすることができる。
本発明は、スリットが隣り合う4つの被接合点を跨ぐように形成されたものに限定されず、スリットが跨ぐ被接合点の個数について限定されない。例えば、スリットが隣り合う2つの被接合点を跨ぐように形成されたものであってもよい。
このことを説明するために、本発明の第2の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Bを、図10に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態において、上記の参考例及び第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を用いて説明を省略することとし、主に異なる構成要素について説明を行うものとする。
車両用ルーフパネル1Bは、ルーフパネル縁部4Bを備える。
ルーフパネル縁部4Bには、第1の実施の形態に係るルーフパネル縁部4Aの複数のスリットsと同様に、複数のスリットsBが、全周にわたって間隔をおいて配置されている。
一方、複数のスリットsBは、第1の実施の形態に係るルーフパネル縁部4Aの複数のスリットsと異なり、隣り合う2つの被接合点を跨ぐように、ルーフパネル縁部4Bの縁部横壁部に配置されている。
具体的には、第mのサイドレール側スリットsBmは、複数の被接合点c1~cNのうちの隣り合う第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1を跨ぐように、第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1の並ぶ方向と平行に延びているスリットである。したがって、第mのサイドレール側スリットsBmは、第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1並びにそれらの被接合点cの間の部位と、ルーフパネル本体部2との連結を切断する。
第1の実施の形態におけるスリット間連続部tと同様に、第mのサイドレール側スリットsBmと第m+1のサイドレール側スリットsBm+1との間には、第mのスリット間連続部tmが形成されている。
複数のスリットsB及び複数のスリット間連続部tの構成は、サイドレール側ルーフパネル縁部42Bのみならず、フロントレール側ルーフパネル縁部41B及びリアレール側ルーフパネル縁部43Bにおいても、同様である。
次に、第2の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Bによる作用効果を説明する。
車両用ルーフパネル1Bには、車両上部構造部材BSと接合された状態において、加熱されても、ルーフパネル本体部2の全域にわたって、顕著な歪みは表れない。
この作用効果は、第1の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Aと同様である。
すなわち、複数のスリットsBにより、加熱によるルーフパネル本体部2の塑性変形が抑制される。
すなわち、隣り合う2つの被接合点を跨ぐような複数のスリットsBであっても、加熱によるルーフパネル本体部2の塑性変形を抑制するという効果を奏する。
したがって、本発明において、スリットsには、隣り合う2つの被接合点を跨ぐように形成されたものも、含まれる。
本発明は、複数のスリットが形成されたものに限定されず、1つのスリットが、車両前後方向Xの中央位置を含む領域内に形成されたものであってもよい。
また、本発明は、スリットが被接合点を跨ぐような形状であれば、スリットが一文字状に形成されたものに限定されない。
このことを説明するために、第2の実施の形態に係る車両用ルーフパネル1Bの変形例である車両用ルーフパネル1Cを、図11に基づいて説明する。なお、上記の説明と同一の構成要素については同一の符号を用いて説明を省略することとし、主に異なる構成要素について説明を行うものとする。
車両用ルーフパネル1Cは、ルーフパネル縁部4Cを備える。
ルーフパネル縁部4Cには、1つのスリットsCが、形成されている。
具体的には、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cの縁部横壁部において、複数の被接合点c1~cNのうちの車両前後方向Xの略中央位置に配置されている第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1を跨ぐような1つのスリットsCが、形成されている。
すなわち、1つのスリットsCは、1つのサイドレール側スリットsCである。そして、1つのサイドレール側スリットsCは、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cにおける車両前後方向Xの中央位置を含む領域内に配置されている。
スリットsCは、スリット本体部sCaと、被接合点間スリット部sCbと、を有している。
スリット本体部sCaは、第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1を跨ぐように、隣り合う第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1の並ぶ方向と平行に延びる部分である。
被接合点間スリット部sCbは、スリット本体部sCaから車幅方向Yのルーフパネル本体部2から見て外方に向かって延び、隣り合う2つの被接合点を分断する部分である。被接合点間スリット部sCbは、少なくとも隣り合う2つの被接合点を分断する程度に延びていればよく、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cを分断しない限度でサイドレール側ルーフパネル縁部42Cの外周付近にまで到達していてもよい。すなわち、図11に示すように、被接合点間スリット部sCbは、被接合点cn-1と被接合点cnとを分断し、被接合点cn+1と被接合点cn+2とを分断する。
スリットsCは、スリット本体部sCaと被接合点間スリット部sCbとにより、例えばコの字状に形成されているスリットである。
車両用ルーフパネル1Cによる作用効果を説明する。
車両用ルーフパネル1Cによれば、ルーフパネル本体部2は、車両前後方向Xの中央位置近傍において熱膨張がより制限されるところ、1つのサイドレール側スリットsCにより、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cにおける車両前後方向Xの中央位置を含む領域と平行に並ぶルーフパネル本体部2に形成される領域において、塑性変形することが抑制される。
詳細には、サイドレール側ルーフパネル縁部42C及びルーフパネル本体部2は、ルーフサイドレールrsrにより熱膨張がより制限されているが、それらの中でも、熱膨張による変形荷重を逃がすことができる車両前後方向Xの端から最も離れている中央位置近傍において、車両前後方向Xの熱膨張がより制限されている。しかし、1つのサイドレール側スリットsCが、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cにおける車両前後方向の中央位置を含む領域内に配置されているので、1つのサイドレール側スリットsCによって、中央位置を含む領域に配置される隣り合う2つの被接合点である第nの被接合点cn及び第n+1の被接合点cn+1並びに当該隣り合う2つの被接合点の間の部位とルーフパネル本体部2との連結が切断される。したがって、車両用ルーフパネル1Cによれば、ルーフパネル本体部2は、サイドレール側ルーフパネル縁部42Cにおける車両前後方向Xの中央位置を含む領域と平行に並ぶルーフパネル本体部2に形成される領域において、自由に膨張することができ、塑性変形することが抑制される。
また、車両用ルーフパネル1Cによれば、被接合点間スリット部sCbが、車両前後方向の中央位置を含む領域内に配置され隣り合う2つの被接合点を分断するので、当該隣り合う2つの被接合点の間において、熱膨張による車両前後方向Xの伸びを制限する拘束力が働かない。そのため、当該隣り合う2つの被接合点cの間の部位における塑性変形が抑制される。
したがって、本発明には、複数のスリットが形成されたものに限定されず、1つのスリットが、車両前後方向Xの中央位置を含む領域内に形成されたものであっても、含まれる。
次に、本発明に係る車両上部の製造方法を説明する。
車両上部は、車両上部構造部材BSと前記車両用ルーフパネルとを含む車両の上部である。
まず、車両上部構造部材BSと前記車両用ルーフパネルとを、それぞれ用意する工程を行う。
ここで、スリットsは、一枚のアルミニウムの板材を車両用ルーフパネルの形状にプレス成形する際に打ち抜いて形成されていてもよいし、プレス成形された後に穿孔されて形成されていてもよい。
そして、前記車両用ルーフパネルを車両上部構造部材BSと機械的接合手段により複数の被接合点cにおいて接合する工程を行う。
そして、車両上部構造部材BSに接合された前記車両用ルーフパネルの表面および車両上部構造部材BSの表面に、焼付塗装用の塗料を塗布する工程を行う。
そして、塗布された前記塗料を前記車両用ルーフパネルおよび車両上部構造部材BSの表面に焼き付けるために前記車両用ルーフパネル及び車両上部構造部材BSを加熱炉で加熱する工程を行う。
前記車両上部の製造方法によれば、前記加熱する工程において前記車両用ルーフパネルが熱膨張しても、車両用ルーフパネルの意匠面を構成するルーフパネル本体部2において、前記少なくとも1つのスリットsにより、自由膨張が可能となり、塑性変形が抑制され、外観品質不良が抑制されることとなる。
次に、本発明には、上述した実施形態や変形例とは異なる変形例も含まれることを説明する。
本発明において、スリットsの配置は、縁部横壁部に限定されない。すなわち、スリットsは、縁部横壁部における複数の被接合点cの位置よりも車両水平方向の内側、または、縁部縦壁部に配置されていればよい。すなわち、スリットsは、縁部縦壁部に形成されていてもよい。
本発明において、スリットsの形状は、上述の一文字状やコの字状に限定されず、例えば、隣り合う2つの被接合点c及び当該隣り合う2つの被接合点cの間の部位とルーフパネル本体部2との連結が切断されるような形状であってもよい。例えば、スリットsの形状は、波状やジグザグ状であってもよい。
本発明において、スリットsの長さは限定されず、例えば、隣り合う2つの被接合点cを跨ぐことができる長さであってもよいし、1つのスリットsが、サイドレール側ルーフパネル縁部42Aのうち車幅方向Yに見てルーフパネル本体部2のルーフサイドレールrsr側の周端縁(符号なし)と重なる領域の全域にわたって形成されていてもよい。同様に、1つのスリットsが、フロントレール側ルーフパネル縁部41A又はリアレール側ルーフパネル縁部43Aのうち車両前後方向Xに見てルーフパネル本体部2のフロントルーフレールfrr側又はリアルーフレールrrr側の周端縁(符号なし)と重なる領域の全域にわたって形成されていてもよい。さらに、1つのスリットsが、ルーフパネル縁部4Aを分断しない限度で、ルーフパネル縁部4Aの全周にわたる領域において、被接合点cを跨ぐことができる任意の長さで形成されていてもよい。
さらに、本発明は、スリットsが隣り合う2つの被接合点cを跨ぐように形成されたものに限定されず、1つの被接合点cのみを跨ぐように形成されたものであってもよい。
これは、次の理由による。例えば、被接合点cn+1のみを跨ぐスリットsが形成される場合、当該スリットsは、ルーフパネル本体部2から見た被接合点の見かけ上の間隔を被接合点cnから被接合点cn+2にまで広げることとなる。具体的には、被接合点cn+1のみを跨ぐスリットsが形成されることにより、ルーフパネル本体部2に被接合点cn+1からの拘束力が及ばない。一方、被接合点cn及び被接合点cn+2からの拘束力は、ルーフパネル本体部2に及ぶ。したがって、ルーフパネル本体部2に拘束力を及ぼす被接合点の見かけ上の間隔は、被接合点cnと被接合点cn+2との間隔である。
そして、当該接合点cn及び被接合点cn+2からの拘束力は、被接合点cnと被接合点cn+2との間隔が一定長さを超える場合、熱膨張したルーフパネル本体部2を塑性域にまで変形させるように作用しない。変形モードの波長が長くなるからである。このため、少なくとも1つの被接合点cを跨ぐように形成されたスリットsであっても、車両用ルーフパネル1及び車両上部構造部材BSが加熱されたときに、当該スリットsと平行に並ぶルーフパネル本体部2に形成される領域において、車両上部構造BSとの線膨張差による伸び変形が抑制されることにより車両用ルーフパネル1が塑性変形することが抑制される。
本発明において、機械的接合手段は、リベットに限定されず、ボルト、かしめ接合手段及び接着剤のいずれかであってもよいし、それらが複合的に用いられてもよい。また、機械的接合に限定されず、溶融接合であってもよい。
本発明において、車両上部構造部材BSが鋼製からなり車両用ルーフパネルがアルミニウム製からなる構成に限定されない。すなわち、車両上部構造部材BSが第1の材料からなり、車両用ルーフパネルが第1の材料の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する第2の材料からなる構成であってもよい。例えば、車両上部構造部材BSがアルミニウム製からなり、車両用ルーフパネルが樹脂からなる構成であってもよい。