次に、本発明の実施形態について説明する。
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係るレーダ装置10は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両の周囲に存在する他の車両、歩行者、障害物等の対象物を検出する。
ここで、レーダ装置10は、制御部11、発振部12、パルス整形部13、可変増幅部14、選択部15、送信アンテナ16-1~16-2、受信アンテナ17-1~17-4、選択部18、増幅部19、乗算部20、IF(Intermediate Frequency)増幅部21、A/D(Analog to Digital)変換部22、記憶部23、および、演算部24を主要な構成要素としている。
ここで、制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、装置の各部を制御する。なお、図中破線の矢印は、制御線を示している。
発振部12は、制御部11の制御に応じて所定の周波数の局発信号を生成して出力する。
パルス整形部13は、制御部11から供給される矩形波を、後述するパルス波形を有する信号に整形して出力する。
可変増幅部14は、電圧制御増幅回路によって構成され、パルス整形部13から供給されるパルス波形の電圧に応じて局発信号を増幅して出力する。
選択部15は、制御部11の制御に応じて、送信アンテナ16-1~16-2の一方を選択し、可変増幅部14からの出力信号を供給する。
送信アンテナ16-1~16-2は、可変増幅部14からの出力信号を電磁波として対象物に向けて送信する。
受信アンテナ17-1~17-4は、送信アンテナ16-1~16-2によって送信され、対象物によって反射された反射信号を受信し、RF(Radio Frequency)信号に変換して選択部18に供給する。
選択部18は、受信アンテナ17-1~17-4から供給されるRF信号のいずれか一つを選択して増幅部19に出力する。
増幅部19は、選択部18から出力されるRF信号を所定のゲインで増幅して乗算部20に供給する。
乗算部20は、発振部12から供給される局発信号と、増幅部19から供給されるRF信号とを乗算し、IF(Intermediate Frequency)信号を生成して出力する。
IF増幅部21は、乗算部20から出力されるIF信号を所定のゲインで増幅して出力する。
A/D変換部22は、IF増幅部21から出力されるIF信号をデジタルデータに変換して出力する。
記憶部23は、例えば、RAM等によって構成され、A/D変換部22から供給されるデジタルデータを記憶する。
演算部24は、処理部241、水平方向検出部242、垂直方向検出部243、および、処理部244を有している。
処理部241は、記憶部23に記憶されているデジタルデータに対して、FFT(Fast Fourier Transform)処理を施し、周波数および距離に関する2次元データを生成して出力する。
水平方向検出部242は、処理部241から供給される、アレイアンテナ8系統のデータを用いて、角度FFT処理を施し、対象物の水平方向の角度を特定する。
垂直方向検出部243は、処理部241から供給されるデータから送信アンテナ16-1,16-2のそれぞれに係るアレイアンテナ4系統のデータを用いて角度FFT処理を施す。また、垂直方向検出部243は、水平方向検出部242によって特定された対象物の水平方向の角度(方位角)における送信アンテナ16-1,16-2のそれぞれに係るアレイアンテナ4系統のデータの強度比を計算する。さらに、垂直方向検出部243は、水平方向検出部242によって特定された対象物の方位角に対応する、垂直方向の角度(仰俯角)と強度比との関係を示す情報をテーブル群243aから取得し、この情報に基づいて対象物の仰俯角を特定する。
処理部244は、処理部241で取得した距離情報、ならびに、水平方向検出部242および垂直方向検出部243によって取得した方位角、仰俯角をもとに特定した対象物の位置および速度等に基づいて、自車両との衝突または接触の有無を判定し、判定結果を図示しない上位の装置(例えば、同レーダ装置10内のアプリケーション処理部、または、レーダ装置10外のECU(Electric Control Unit)等)に供給する。あるいは、対象物の位置および速度情報をECUに供給し、自動車との衝突または接触の有無の判定はECUで実施する。
なお、図1では図面を簡略化するために図示を省略しているが、乗算部20は増幅部19から出力される信号を直交復調してIQ信号として出力する。このため、乗算部20以降は、I,Qの2つの成分が伝達される。
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作を説明する。以下では、図2~図23を参照して本発明の実施形態の動作について説明した後、図24~図27のフローチャートを参照して詳細な動作を説明する。
図2~図8は、本発明の動作原理を示す図である。一例として、図2に示す車両の後部バンパー内にレーダ装置を装備した場合を考える。この場合、従来のレーダ装置は、図3に示すような指向特性を有する送信信号を車両の後方に向けて送信する。図3において、横軸は利得[dB]を示し、縦軸は仰俯角を示す。図3の例では、送信信号は仰俯角0度の軸を中心として線対称の指向特性を有している。従来のレーダ装置は、仰俯角方向の角度を検出することができないため、図2(A)に示す対象物O1(例えば、地面に設置されたポール)と、図2(B)に示す対象物O2(例えば、地面に設置された車止め)とを識別することができない。このため、従来のレーダ装置では、対象物O2に対しても警告を発したり、ブレーキを動作させて停車したりする場合があった。
本実施形態では、図4に示すような、垂直方向に異なる指向特性を有する送信信号を異なるタイミングで送信する。そして、対象物で反射されたこれらの反射信号の電力(例えば、強度、振幅等)の差異から、垂直方向の角度を求める。より詳細には、図4に示す例では、実線の曲線は第1指向特性を有する送信信号の指向特性を示し、破線の曲線は第2指向特性を有する送信信号の指向特性を示している。本発明の実施形態では、例えば、送信アンテナ16-1から第1指向特性を有する実線の送信信号を送信し、対象物で反射された第1反射信号を受信する。また、送信アンテナ16-2から第2指向特性を有する破線の送信信号を送信し、対象物で反射された第2反射信号を受信する。
水平方向検出部242は、処理部241から供給される距離および周波数で定義されるデータから全ての送信アンテナ16-1、16-2に係るアレイアンテナ8系統のデータを取得し、角度FFT処理を実行することで、例えば図5に実線で示す処理結果を得る。なお、図5において、横軸はFFT処理後の角度インデックスを示し、縦軸は振幅を示す。
水平方向検出部242は、処理結果のデータのピークを検出することで、対象物の水平方向の位置を特定し、そのピーク位置である角度インデックスi1を特定する。水平方向検出部242は、図6に示す、角度インデックスと方位角との対応関係を示す情報を参照し、特定した角度インデックスを方位角に変換する。そして、角度インデックスと方位角とを垂直方向検出部243に出力する。なお、図6の横軸は方位角を示し、縦軸は角度インデックスを示す。図6では、複数の曲線が描画されているが、これらについはて後述する。
垂直方向検出部243は、処理部241から供給される距離および周波数で定義されるデータから送信アンテナ16-1に係るアレイアンテナ4系統のデータに角度FFT処理を施すことで、図5において間隔が長い破線で示す処理結果を得る。また、垂直方向検出部243は、同様に、送信アンテナ16-2に係るアレイアンテナ4系統のデータに角度FFT処理を施すことで、図5において間隔が短い破線で示す処理結果を得る。
垂直方向検出部243は、図5に間隔が長い破線で示す処理結果において水平方向検出部242から供給される角度インデックスに対応する振幅値a1を取得するとともに、図5に間隔が短い破線で示す処理結果において水平方向検出部242から供給される角度インデックスに対応する振幅値a2を取得する。そして、振幅値a1,a2の強度比(a1/a2)を求める。
垂直方向検出部243は、振幅値の比と仰俯角の対応関係に基づいて、仰俯角を特定する。例えば、図2(B)に示す対象物O2の場合、第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号はある程度の強度(電力)を有するが、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号の強度は第2反射信号に比較して小さい(第2反射信号>第1反射信号である)ため、この場合a1/a2<1となる。
一方、図2(A)に示す対象物O1の場合、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号も第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号の強度も略ある程度の大きさを有することから、a1/a2は、図2(B)に比較して大きくなる。すなわち強度比において対象物のおおむねの区別が可能となる。
さらに、a1/a2と、対象物の仰俯角との関係性を対応付けしたテーブルを予め格納しておき、このテーブルを参照することで、a1/a2から対象物の仰俯角を求めることができる。
ところで、強度比と仰俯角との関係は、方位角によって必ずしも一定とはならない。図7は、利得差(Tx1-Tx2)と仰俯角の関係を示す図である。図7において、折れ線のそれぞれは、図7の左上に示す方位角における仰俯角と利得差の関係を示している。図7に示すように、実際のレーダ装置では、回路基板やレドーム等により、仰俯角特性は方位角に依存することがある。特に、車載のレーダ装置においては仰俯角範囲と比較して方位角範囲が広いことが一般的であるため、広い方位角を1つの仰俯角特性で定義することは困難である。
そこで、本実施形態では、垂直方向検出部243は、図7に示す利得差と仰俯角の関係を示す情報または図8に示すように図7に示す特性を直線近似した特性を、それぞれの方位角と対応付けられた複数のテーブルで構成されるテーブル群243aとして予め格納しており、水平方向検出部242によって検出された方位角に対応するテーブルをテーブル群243aから取得し、当該テーブルにおいて対応づけられた利得差(または強度比)と仰俯角との関係に基づいて、仰俯角を特定する。なお、図8では、1つのテーブルとして、切片情報と2種の傾き情報を有する折れ線を用い、当該折れ線を参照して利得差(または強度比)から仰俯角度を特定するようにしているが、仰俯角度の範囲が比較的狭いことから、記憶容量抑制の観点では、このように切片と2種の傾きの情報、あるいはさらに少ない情報(例えば、切片と1種の傾きの情報)を用いて近似的に仰俯角を特定するのが好ましい。なお、図8では、-60度から+60度の範囲を15度刻みの9本の折れ線としているが、これ以外の角度範囲を、これ以外の刻みの折れ線、例えば、3度刻みとしてもよい。また、折れ線ではなく、直線としたり、曲線としたり、あるいは、折れ線、直線、または、曲線を示す近似式を用いるようにしてもよい。また、該当する角度の折れ線が存在しない場合には、近い角度の折れ線から補間処理によって目的とする角度に対する値を求めるようにしてもよい。例えば、55度の場合には、45度と60度の折れ線から補間処理によって求めるようにしてもよい。
処理部244は、垂直方向検出部243から供給される仰俯角に基づいて対象物の高さを検出する。そして、図2(A)に示すように、車両に接触(または衝突)する高さである場合には警告または制御を行い、図2(B)に示すように、車両に接触しない高さである場合には警告または制御を行わないようにすることができる。
つぎに、図1~図23を参照して、本発明の実施形態の詳細な動作について説明する。
レーダ装置10が装備されている車両(不図示)のエンジンが始動されると、図1に示すレーダ装置10の各部に対して電源電力の供給が開始され、動作が可能な状態になる。
電源電力の供給が開始されると、制御部11は、発振部12に対して局発信号の出力を開始させるとともに、パルス整形部13に対して矩形波を供給し、パルス信号を生成させる。この結果、送信アンテナ16-1~16-2からは図9に示すパルス信号が出力される。
図9は、図1に示すレーダ装置10から送信される送信信号の例を示す図である。図9(A)に示すように、送信信号には繰り返し周期T0でパルスPが含まれている。パルスPは、図9(B)に拡大して示すように、振幅がAとされている。
図9(C)は、制御部11からパルス整形部13に供給される信号の一例を示している。パルス整形部13は、制御部11から供給される図9(C)に示す矩形波を、図9(B)に示すように整形して出力する。可変増幅部14は、パルス整形部13から供給される信号の振幅に基づいて発振部12から供給される局発信号を増幅して出力する。図9(C)に示すように、制御部11から供給される信号は、可変増幅部14から出力されるパルス信号の振幅が図9(B)に示すAとなるように、パルス幅Wが調整されている。
送信アンテナ16-1,16-2のいずれか一方から送信されたパルスPは、対象物によって反射され、反射信号として受信アンテナ17-1~17-4に受信され、RF信号に変換されて出力される。
選択部18は、受信アンテナ17-1~17-4のいずれか1つを選択するので、選択部18によって選択された受信アンテナ17-1~17-4によって受信された反射信号はRF信号に変換されて増幅部19に供給される。
増幅部19は、選択部18から供給されるRF信号を所定のゲインで増幅して出力する。乗算部20は、増幅部19から供給される受信信号と、発振部12から供給される局発信号とを乗算してIF信号に変換(ダウンコンバート)して出力する。
IF増幅部21は、乗算部20から供給されるIF信号を増幅して出力する。A/D変換部22は、IF増幅部21から供給されるIF信号をA/D変換して出力する。なお、A/D変換部22は、図22を参照して後述するように、IF増幅部21から供給される受信信号を、等価時間サンプリングして出力する。
記憶部23は、A/D変換部22から出力されるデジタルデータを記憶し、演算部24の処理部241に供給する。
処理部241は、後述するように、記憶部23から供給されるデジタルデータに対してFFT処理を施し、距離および周波数に係る2次元データを生成して、水平方向検出部242および垂直方向検出部243に供給する。
水平方向検出部242は、従来のレーダ装置と同様に、水平方向における対象物の位置および速度を検出する処理を実行する。なお、水平方向検出部242は、送信アンテナ16-1~16-2および受信アンテナ17-1~17-4を用いて、仮想アレイアンテナの原理を用いることで、水平方向の位置の分解能を高めることができる。
以下では、仮想アレイアンテナの原理について説明する。図10に示すように、間隔dを隔てて、三角形で示す8つの受信アンテナRx(0)~Rx(7)が配置され、受信アンテナRx(7)から所定の距離を隔てて、同じく三角形で示す送信アンテナTxが配置されているとする。このとき、図10に示すように、各アンテナの正面方向に対する電波の入射角度をθとするとき、受信アンテナRx(0)に対する受信アンテナRx(1)の行路差は、以下の式(1)で表される。なお、符号のプラスは行路差の距離が長いことを示し、マイナスは短いことを示す。
ΔL=-d・sin(θ) ・・・(1)
また、電波の波長をλとするとき、受信アンテナRx(0)に対する受信アンテナRx(1)の位相差Δφは、以下の式(2)で表される。
Δφ=-2πd/λ・sin(θ) ・・・(2)
以上から、各受信アンテナRx(m)(m=0,1,・・・,7)の受信信号v_Rx(m,Tx1)は、以下の式(3)で表される。なお、jは虚数である。
v_Rx(m,Tx1)=v_Rx(0,Tx1)・exp(j・m・Δφ)
・・・(3)
ここで以上の式(2),(3)より、各々受信アンテナにおける位相回転成分が電波の入射角に対応することがわかる。これら受信信号をフーリエ変換することで受信信号回転成分の抽出、すなわち電波の入射角を特定することが可能となる。またフーリエ変換に限らずそれ以外の高分解能処理により入射角の特定するようにしてもよい。
つぎに、図11に示すように、送信アンテナTx2を新たに設けるとともに、受信アンテナRx(4)~Rx(7)を除外する場合を考える。このとき、Tx2から対象物までの距離はTx1に比べてN/2・d・sin(θ)だけ長く、また、受信アンテナRx(4)に対し受信アンテナRx(0)から対象物までの距離もN/2・d・sin(θ)だけ長い。このとき、以下の式(4)および式(5)が成立する。但し、Nは受信アンテナの個数を示す(図11の例ではN=8)。
v_Rx(m,Tx1)=v_Rx(m,Tx1) ・・・(4)
但し、m≦N/2-1の場合
v_Rx(m,Tx1)=v_Rx(m-N/2,Tx2)・exp(j・N・Δφ)
・・・(5)
但し、m>N/2-1の場合
以上の式(4)および式(5)から、往路と復路の角度が同じである場合、1つの送信アンテナTx1だけの系と、2つの送信アンテナTx1,Tx2の系は等価であることが分かる。
ここで、式(5)の右辺にあるexp(j・N・Δφ)は、位相補正項であり、N分だけアンテナを移動させたのと等価になる項である。このため、図12(A)に示す1つのTx1を有する系と、図12(B)に示す2つのTx1,Tx2を有する系とを等価にする場合、図12(C)に示すように、受信アンテナRx(-4)~Rx(3)が配置されていると想定して計算することで、以下の式(6)~式(13)に示すように、位相補正項であるexp(j・N・Δφ)については考慮する必要がなくなる。
v_Rx(-4,Tx)=v_Rx(0,Tx2) ・・・(6)
v_Rx(-3,Tx)=v_Rx(1,Tx2) ・・・(7)
v_Rx(-2,Tx)=v_Rx(2,Tx2) ・・・(8)
v_Rx(-1,Tx)=v_Rx(3,Tx2) ・・・(9)
v_Rx( 0,Tx)=v_Rx(0,Tx1) ・・・(10)
v_Rx( 1,Tx)=v_Rx(1,Tx1) ・・・(11)
v_Rx( 2,Tx)=v_Rx(2,Tx1) ・・・(12)
v_Rx( 3,Tx)=v_Rx(3,Tx1) ・・・(13)
すなわち、2つの送信アンテナを用いることで、4つの受信アンテナを仮想的に8つに拡張することができる。本実施形態では、このような仮想アレイアンテナの原理を利用している。
図13は、図1に示す送信アンテナ16-1~16-2および受信アンテナ17-1~17-4の詳細な構成例を示している。図13に示す例では、送信アンテナ16-1~16-2は、それぞれ4つの素子アンテナ、具体的にはパッチアンテナを有するアレイアンテナによって構成されている。また、受信アンテナ17-1~17-4は、それぞれ8つの素子アンテナ、具体的にはパッチアンテナを有するアレイアンテナによって構成されている。受信アンテナ17-1~17-4は、例えば、誘電体基板等の表面に形成され、図13に示すように、上下方向であるY方向に8つのパッチが所定の間隔を隔てて直線状に配置されて構成される。また、受信アンテナ17-1~17-4は、左右方向であるX方向に所定の間隔を隔てて配置され、受信アンテナ17-1~17-4を構成するパッチがマトリクス状に配置される。送信アンテナ16-1は、受信アンテナ17-1の右下方に配置され、送信アンテナ16-2は、受信アンテナ17-4の左下方に配置される。なお、受信アンテナ17-1~17-4のそれぞれの距離をdとすると、送信アンテナ16-1~16-2の距離は4×dで表される。また、送信アンテナ16-1と受信アンテナ17-1とは、X方向に距離D離間して配置され、送信アンテナ16-2と受信アンテナ17-4とは、X方向に距離D離間して配置されている。
なお、図13に示すアンテナの配置は、図11とは異なっているが、図14に示すように、仮想アレイアンテナとして動作することができる。すなわち、送信アンテナ16-1~16-2を用いることで、受信アンテナ17-1~17-4が、受信アンテナ17-1~17-8の8アレイのアンテナに仮想的に拡張される。
図15は、図13に示す送信アンテナ16-1~16-2の詳細な構成例を示している。なお、図15では、図面を簡略化するために送信アンテナ16-1~16-2の距離を実際よりも狭めて描画している。図15の例では、送信アンテナ16-1は、4つのパッチアンテナ1611~1614を有している。また、パッチアンテナ1611~1614は、給電線L11~L13によって相互に接続され、給電点Fp1から送信信号が供給される。また、送信アンテナ16-2も同様に、4つのパッチアンテナ1621~1624を有している。また、パッチアンテナ1621~1624は、給電線L21~L23によって相互に接続され、給電点Fp2から送信信号が供給される。
ここで、送信アンテナ16-1を構成する給電線L11~L13の長さは、L13>L12>L11となるように設定されている。送信アンテナ16-2を構成する給電線L21~L23の長さは、L23>L22>L21となるように設定されている。
このように設定することで、給電線の長さに応じた位相遅れが生じることから、送信アンテナ16-1では、給電点Fp1に送信信号が供給されると、パッチアンテナ1611~1614の順に位相が進んだ電磁波が送信されることから、電磁波が下向きに放射される、送信アンテナ16-2では、パッチアンテナ1624~1621の順に位相が進んだ電磁波が送信されることから、電磁波が上向きに放射される。これにより、図4に示す指向特性を実現することができる。
また、本実施形態では、図13に示すように、送信アンテナ16-1~16-2を構成するパッチアンテナの数は4とされ、受信アンテナ17-1~17-4を構成するパッチアンテナの数は8とされ、送信アンテナ16-1~16-2を構成するパッチアンテナの数の方が少なく設定されている。これは、以下の理由による。すなわち、送信アンテナ16-1~16-2のビームの幅(例えば、半値幅)が広い場合には、ビームが重複する領域が広く、また、ビームの幅が狭い場合には、ビームが重複する領域が狭い。図16は、ビームが広い場合と狭い場合による重複する領域を模式的に示す図である。より詳細には、図16は垂直方向に上向きと下向きの2つのビームの重複する様子を示す模式図であり、図16(A)はビームの幅が広い場合を示し、図16(B)はビームの幅が狭い場合を示している。なお、図16(A)と図16(B)において、ビームの照射する角度(垂直方向の角度)は同じである。2つの送信アンテナ16-1~16-2を用いて対象物を検出する場合、対象物を検出可能な範囲は2つのビームが重複する範囲であることから、図16(A)では利得G1に対応する範囲であり、図16(B)では利得G2に対応する範囲である。このため、ビーム幅が広い方が遠くまで対象物の検出が可能になる。
そこで、本実施形態では、送信アンテナ16-1~16-2をそれぞれ構成する素子の数を受信アンテナ17-1~17-4の8よりも少ない4とすることで、垂直方向のビーム幅を広くし、検出可能な距離の変動を、垂直方向のビーム幅が狭い場合に比較して小さくしている。具体的には同様のチルト角であっても仰俯角正面方向の利得低下が小さく、また、車両搭載時のピッチ角変動に対しても利得低下を小さくすることができる。また、送信される電波の他の機器に与える影響は、アンテナのピーク利得と供給電力との積に比例して増減する(例えば、電波法の規制は、アンテナのピーク利得と供給電力との積によって定められる)。このため、ビーム幅を広くすると、アンテナのピーク利得は減少するが、供給される電力をピーク利得の減少に応じて増加することで、仰俯角に係る電力低下を抑えることが可能となる。また、その際、他の機器に与える影響は、増加前と同じである。かつ当然ながら送信アンテナの素子数が少ない分のレーダ装置の小型化が図れる。
なお、以上は、送信アンテナ16-1~16-2の送信利得についての説明であるが、受信アンテナ17-1~17-4も受信利得を有しており、送信アンテナ16-1~16-2の送信利得と受信アンテナ17-1~17-4の受信利得の積によってトータルの利得が計算できる。図17は、送信アンテナ16-1~16-2と受信アンテナ17-1~17-4の積によって得られるトータルの利得を示す図である。この図において、破線は図18(A)に示す受信アンテナを使用した場合の利得を示し、実線は図18(B)に示す受信アンテナを使用した場合の利得を示している。
図18(A)に示す受信アンテナでは、パッチアンテナ1711~1718同士を接続する給電線L31~L36の幅は略一定とされている。一方、図18(B)に示す受信アンテナでは、パッチアンテナ1721~1728同士を接続する給電線L41~L46の一部に隘路が整形されて幅が調整されており、この結果として、図17に実線で示す曲線のように、破線で示す曲線に比較して、サイドローブが抑圧されている。より具体的には、例えば、図18(B)のアンテナの上下方向中央からパッチアンテナ1721~1724を見た際の、各パッチアンテナのインピーダンスが互いに異なる値となるように、各パッチアンテナを接続する給電線の一部の幅が調整される。パッチアンテナ1725~1728についても同様である。サイドローブが存在する角度範囲は利得を有しているため、誤検知が発生する虞がある。破線で示す利得曲線の場合、実線の利得曲線に比較してサイドローブの利得が大きく、数も多いことから、メインローブ範囲外の対象物をサイドローブで誤って検出する可能性が高い。一方、実線の利得曲線では、サイドローブが抑圧されている(利得が小さく、数も少ない)ことで、対象物の誤検知を低減することができる。
なお、前述したように、送信アンテナ16-1~16-2と受信アンテナ17-1~17-4の積によってトータルの利得が得られるので、送信アンテナ16-1~16-2を調整することでもサイドローブを抑圧することは可能である。しかしながら、送信アンテナ16-1~16-2は、パッチアンテナの数が少ないことから、設計の自由度が低い。一方、受信アンテナ17-1~17-4は、パッチアンテナの数が多いことから、設計の自由度が高い。そこで、本実施形態では、受信アンテナ17-1~17-4において、サイドローブを抑圧するようにしている。
図19は、送信アンテナ16-1および受信アンテナ17-1を構成する素子に供給される電力を示す図である。なお、送信アンテナ16-2と受信アンテナ17-2~17-4も、図19と同様の電力が供給されるが、図面の簡略化のために省略している。図19に示すように、受信アンテナ17-1は、両端に近づくにつれて素子の電力が低くなり、電力勾配を有するように設定されている。このようにして、送信アンテナ16-1に最も近接する素子に供給される電力は、当該素子に隣接する素子、およびその素子に隣接する素子等、互いに隣接する複数の素子に供給される電力以下となっている。送信アンテナ16-1から送信された電波の一部は、受信アンテナ17-1に回り込んで受信される。特に、送信アンテナと受信アンテナの最も近接した箇所において回り込みの大きさが顕著となる。このため、例えば、図19に示すように受信アンテナ17-1の電力を設定することで、サイドローブを低減しつつ、送信アンテナ16-1と近接した箇所における電力を抑えることでこのような回り込みを低減することができる。また、これとともにアンテナの偏波方向とアンテナのレイアウト方向を直交させることでも、回り込みを抑制する。これらにより、より近接した対象物の検出と仰俯角の検知が可能となる。また、送信アンテナと受信アンテナと距離を接近させることができるので、装置を小型化することができる。
また、本発明の実施形態では、2つの送信アンテナから送信される電波をチルトさせ、受信信号の振幅の差に基づいて仰俯角を検出するようにしている。なお、位相差によって仰俯角を検出することも可能である。すなわち、2つの送信アンテナから送信される電波に位相差を持たせ、受信信号の位相の差に基づいて仰俯角を検出することもできる。位相差に基づいて仰俯角を検出する場合、送信アンテナ16-1~16-2を垂直方向(Y)方向に位置をずらして配置する必要があるが、角度判別性能を高めるためには、このずれを大きくする必要がある。その場合、送信アンテナ16-1~16-2が占有するY方向の領域が大きくなるため、装置のサイズが大きくなる。一方、本発明の実施形態の場合、電波をチルトさせるためには、アンテナの位置を変更せず、各アンテナ素子への給電を調整することで達成できるので、チルト角度を大きくしても装置のサイズが大型化しないという特徴もある。
つぎに、等価時間サンプリングについて説明する。図22は、パルスPに関する等価時間サンプリング処理の一例を示す図である。図22(A)は、送信されるパルスPを示している。また、図22(B)~(G)は、等価時間サンプリングにおけるフィールドを示している。より詳細には、図22(A)に示すパルスPが送信されると、図22(B)に示すように、第1フィールドでは、パルスPのピーク位置からA/D変換部22が周期t1でサンプリングを実行する。なお、図22の例では、各フィールドでは、矢印で示すように5回のサンプリングが実行されている。図22(C)に示すように、第2フィールドでは、第1フィールドに比較すると、時間τ1だけオフセットされてサンプリングが開始される。なお、サンプリング周期は、第1フィールドと同様にt1である。図22(D)に示すように、第3フィールドでは、第2フィールドに比較して時間τ1だけオフセットされサンプリングが開始され、同様に、図22(E)~(G)に示すように、第3~6フィールドでは直前のフィールドに比べて時間τ1だけオフセットされてサンプリングが開始される。
なお、図22では、詳細は示していないが、各フィールドでは、送信アンテナ16-1,16-2および受信アンテナ17-1~17-4のそれぞれについて、例えば、1回の高周波パルス信号が送受信され、同じオフセットでサンプリングが実行される。すなわち、第1フィールドでは、例えば、送信アンテナ16-1からパルスが送信され、受信アンテナ17-1により図22(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つぎに、受信アンテナ17-2に切り替えられ、図22(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つぎに、受信アンテナ17-3~17-4によって、同様に、図22(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つづいて、送信アンテナ16-2に切り替えられ、受信アンテナ17-1~17-4によって、図22(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。以上の動作を1サイクルとすると、このようなサイクルを、例えば、第1フィールドについて1回行い(高周波パルス信号を合計8(=2×4×1)回送信し)、第1フィールドにおけるデータが取得される。第1フィールドのサンプリングが終了すると、続いて、第2~第6フィールドのサンプリングが実行される。そして全てのフィールドのサンプリングが完了すると、再度、第1フィールドのサンプリングに戻る。このような等価時間サンプリング処理を所定回数(例えば、2,048回)繰り返した後、対象物を検出する処理その他が実行される。なお、図22では、各フィールドのサンプリング回数は5回とされているが、これ以外の回数としてもよい。また、各フィールドでは、1サイクルを1回行うようにしているが、これ以外の回数繰り返すようにしてもよい。
つぎに、演算部24の処理について詳細に説明する。処理部241は、A/D変換部22によって等価時間サンプリングされ、記憶部23において各距離情報を記憶する。また、これら各距離情報を一定時間において繰り返し複数回取得することによって、上記一定時間ごとの各距離情報を記憶部23において記憶する。記憶部23において記憶した各距離における時間ごとのデータを読み出してFFT処理を施すことで、対象物までの距離だけでなく、周波数に係る2次元データを生成する。これにより、送信アンテナ16-1と受信アンテナ17-1~17-4による4系統の2次元データと、送信アンテナ16-2と受信アンテナ17-1~17-4による4系統の2次元データ、合計8系統における距離と周波数の2次元データを得る。なお、複数のアンテナ系列、複数の距離系列、周波数成分取得のための繰り返し系列、これらの取得の順番は設計によって任意に決定づけることができる。また、以下の角度処理の前に、何等かしきいを用い、距離と周波数で定義される2次元データのうち、十分な振幅をもつデータを対象物の候補となる信号として絞るような検出処理を行うことも可能である。これにより、以下の角度処理の数量を低減することが可能である。
水平方向検出部242は、図23の左側に破線で囲んだ処理P1を実行する。すなわち、水平方向検出部242は、前述した合計で8系統のデータを8ポイントのデータとし、ゼロパディングを行うことで、例えば、128ポイントまたは256ポイント(2のべき乗ポイント)等のデータを生成する。水平方向検出部242は、ゼロパディングを行って得たデータに対して、8アレイ角度FFT処理(P10)を実行することで、例えば、図5に実線で示すような処理結果、いわゆる角度スペクトラムを得る。
つぎに、水平方向検出部242は、8アレイ角度FFT処理によって得られた結果、角度スペクトラムに対して、ピークインデックスサーチ処理(P11)を実行する。この結果、図5の例では、実線で示す曲線におけるピーク位置の角度インデックスi1が取得される。取得したピーク振幅値と、なんらかのしきい値との比較により、対象物の候補となる信号の判定を行うことも可能である。この段階で得られたピーク振幅は、送信アンテナ受信アンテナ全チャンネル情報が積分された結果となっており、S/N(Signal Noise)比が高い結果に基づいて判定することで、精度良く対象物の信号を特定することができる。またこの段階でノイズ成分を対象物から除外することで、処理する回数低減をはかり、以降の処理負荷をさらに軽減することも可能である。また水平面方向における角度検出に全チャンネルの情報を用いることで、広い範囲に高い分解能が要求される水平面において分解能を向上させることが可能である。
つぎに、水平方向検出部242は、あらかじめ格納された角度インデックスと方位角との関係を示すテーブル(TA1)を参照し、対象物の方位角を特定する処理(P12)を実行する。より詳細には、図6に示すような角度インデックスと方位角の関係を示すテーブルを参照して方位角を特定する。例えば、図5の例では、実線の曲線のピーク位置における角度インデックスは“65”程度であり、図6に“65”を適用すると、方位角として約-30度を得る。
なお、送信アンテナ16-1,16-2は垂直方向の指向特性が図4に示すように異なっているため、送信アンテナ16-1,16-2のそれぞれについて角度インデックスと方位角との関係が異なることも想定される。しかしながら、図6に示すように、レーダ装置の取り付け角が水平方向に対して0度の場合(図6の実線で示す場合)と、水平方向に対して+6度の場合(図6に間隔の長い破線で示す場合)と、水平方向に対して-6度の場合(図6に間隔の短い破線で示す場合)とで、ほとんど特性の変化がない。このため、取り付け角や異なる仰俯角に応じて、それぞれについてテーブルを設けるのではなく、1種類のテーブルを用いて判定することができる。もちろん、取り付け角や異なる仰俯角に応じて、それぞれに対してテーブルを有するようにしてもよい。
つぎに、垂直方向検出部243の動作について説明する。垂直方向検出部243は、図23の右側に破線で囲んだ処理P2を実行する。すなわち、垂直方向検出部243は、前述した合計で8系統のデータから送信アンテナ16-1に関する4ポイントのデータを取得し、ゼロパディングを行うことで、例えば、128ポイントまたは256ポイントのデータを生成し、このようなデータに対して4アレイ角度FFT処理(P20)を実行する。これにより、例えば、図5に間隔の長い破線で示す処理結果、4アレイによる角度スペクトラムを得る。
また、垂直方向検出部243は、送信アンテナ16-2に関する4ポイントのデータに対して同様に4アレイ角度FFT処理(P21)を実行する。これにより、例えば、図5に間隔の短い破線で示す処理結果、4アレイによる角度スペクトラムを得る。
つぎに、垂直方向検出部243は、水平方向検出部242のP11の処理によって特定された角度インデックスに基づいて、4アレイ角度FFT処理(P20,P21)で得られた処理結果からピーク値を特定し、それぞれのピーク値を第1振幅a1および第2振幅a2とする。より詳細には、垂直方向検出部243は、P11の処理によって特定された角度インデックスが、図5に示すようにi1である場合、4アレイ角度FFT処理(P20)で得られた間隔が長い破線において角度インデックスがi1である場合の第1振幅値a1を取得する処理(P22)を実行し、4アレイ角度FFT処理(P21)で得られた間隔が短い破線において角度インデックスがi1である場合の第1振幅値a2を取得する処理(P23)を実行する。このように、水平方向検出部242で特定されたピーク位置を用いて垂直方向検出部243において4アレイによる角度スペクトラムの振幅値を特定することにより、ピークサーチ処理回数を低減することができる。
つぎに、垂直方向検出部243は、P22,P23の処理によって得られた第1振幅a1および第2振幅a2の比を求める。例えば、a1/a2によってこれらの比を求めることができる。なお、比ではなく、差分値としてもよい。また、複素FFTが実行され、I成分とQ成分が得られる場合には、これらの振幅AI,AQに基づいてAI2+AQ2を送信アンテナ16-1および送信アンテナ16-2の受信信号について計算し、垂直方向検出部243は、送信アンテナ16-1に関するAI2+AQ2を、送信アンテナ16-2に関するAI2+AQ2で除して、これらの比を計算するようにしてもよい。要は、第1振幅および第2振幅の大小関係を求めるようにすることができる。
つぎに、垂直方向検出部243は、あらかじめ格納されたテーブルTA2(テーブル群243aを構成する1つのテーブルに対応)を参照し、仰俯角を特定する処理(P25)を実行する。より詳細には、垂直方向検出部243は、水平方向検出部242がP12の処理によって特定した方位角に対応する線分を、例えば、図8に示すテーブル群から選択して取得する。例えば、図5および図6の例では、角度インデックスi1に対する方位角は約-30度であるので、図8に細線の間隔が短い破線で示す折れ線(方位角-30度と対応付けられた、a1/a2の値に対して仰俯角を特定するテーブル)を取得する。そして、垂直方向検出部243は、取得した折れ線に対して、P24の処理で求めた強度比を適用し、仰俯角を特定する。例えば、利得差が-6dBである場合には、仰俯角として約-7度を得ることができる。
なお、以上では、8アレイ角度FFT処理と4アレイ角度FFT処理の結果に対して、ゼロパディングを行って例として128ポイントまたは256ポイントのデータとなるようにしたが、4アレイ角度FFT処理については8アレイ角度FFT処理よりも少ないポイントとなるようにゼロパディングを行うようにしてもよい。なお、少ないポイントによるゼロパディングを行う場合には、角度インデックスの対応関係において割り算および四捨五入等によって、ポイント数を合わせることができる。また、ポイント数増加させることなく、特に8アレイ角度FFT処理結果に対して、ラグランジュ補間等によって補間するようにしてもよい。これらは、8アレイ角度FFTにおいては角度インデックスの特定が方位角の精度に寄与し、4アレイ角度FFTにおいては振幅値の特定が仰俯角の精度に寄与する状況で、それぞれの角度算出精度を担保した上で処理軽減する手段である。
処理部244は、処理部241による距離情報と水平方向検出部242と、垂直方向検出部243との検出結果を統合する処理を実行する。より詳細には、車両が後退している際に、水平方向検出部242によって車両の後方に対象物候補となる信号が検出されたとする。この場合、処理部244は、処理部241において定義づけられた距離情報、垂直方向検出部243の処理結果を参照し、存在する対象物の候補となる信号の位置を特定する。そして、信号の位置情報をもとにクラスタリング処理やトラッキング処理等を実施し、対象物としての位置や速度の特定を行う。対象物が、車両に接触する高さでない場合には警告ないし制御を行わない。また、接触する高さである場合には警告ないし制御を行うことが可能となる。
以上に説明したように、本発明の実施形態では、垂直方向に指向性が異なる送信信号を送信し、対象物によって反射された反射信号の強度比に基づいて、垂直方向(仰俯角方向)の対象物の位置を検出するようにしたので、簡易な構成によって、垂直方向の対象物の位置を検出することができる。
また、本実施形態では、対象物の水平方向の位置を検出した後に、垂直方向の位置を特定するようにしたので、水平方向に応じた校正を垂直方向の位置の検出において実施することで垂直方向の位置精度を担保することが可能である。また、水平方向における角度を先に検出し、垂直方向における検出処理の際に、水平方向での検出角度を参照することで、検出に係る計算負荷を軽減することができる。
また、本実施形態では、図13に示すように、受信アンテナ17-1~17-4と送信アンテナ16-1~16-2を水平方向に並べて配置するようにしたので、水平方向に高い分解能を要求される車両に好適なレーダ装置10を構築することができる。
つぎに、図24~図27を参照して、図1に示す実施形態において実行される処理の一例について説明する。
図24は、図1に示す実施形態において実行されるメインの処理の流れを説明するためのフローチャートの例である。図24に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS10では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数kに初期値1を代入する。
ステップS11では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数jに初期値1を代入する。
ステップS12では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数iに初期値1を代入する。
ステップS13では、制御部11は、選択部15を制御して、第j送信アンテナを選択させる。なお、送信アンテナ16-1および送信アンテナ16-2のそれぞれを第1送信アンテナおよび第2送信アンテナと定義する。そして、j=1の場合には送信アンテナ16-1が選択され、j=2の場合には送信アンテナ16-2が選択される。
ステップS14では、制御部11は、選択部18を制御して、第i受信アンテナを選択させる。なお、受信アンテナ17-1~受信アンテナ17-4のそれぞれを第1受信アンテナ~第4受信アンテナと定義する。そして、i=1の場合には受信アンテナ17-1が、i=2の場合には受信アンテナ17-2が、i=3の場合には受信アンテナ17-3が、i=4の場合には受信アンテナ17-4が選択される。
ステップS15では、制御部11は、パルスを送信させる。より詳細には、制御部11は、発振部12を制御して局発信号を出力させるとともに、パルス整形部13に対して図9(C)に示す幅がWの矩形波を供給する。この結果、発振部12から供給される局発信号は、可変増幅部14において、パルス整形部13から供給されるパルスPの波形を有する信号によって変調され、図9(B)に示す振幅がAのパルスPが生成される。このようなパルスPは、ステップS13で選択部15によって選択されている送信アンテナから送信される。
ステップS16では、パルス受信処理が実行される。なお、パルス受信処理の詳細は、図25を参照して後述する。
ステップS17では、制御部11は、処理回数をカウントする変数iを1インクリメントする。
ステップS18では、制御部11は、変数iの値が4よりも大きいか否かを判定し、4よりも大きいと判定した場合(ステップS18:Y)にはステップS19に進み、それ以外の場合にはステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS14~ステップS18の処理を繰り返すことで、受信アンテナ17-1~17-4が順次選択されて受信処理が実行される。
ステップS19では、制御部11は、処理回数をカウントする変数jを1インクリメントする。
ステップS20では、制御部11は、変数jの値が2よりも大きいか否かを判定し、2よりも大きいと判定した場合(ステップS20:Y)にはステップS21に進み、それ以外の場合にはステップS12に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS12~ステップS20の処理を繰り返すことで、送信アンテナ16-1~16-2が順次選択されて送信処理が実行される。
ステップS21では、制御部11は、処理回数をカウントする変数kを1インクリメントする。
ステップS22では、制御部11は、変数kの値がnよりも大きいか否かを判定し、nよりも大きいと判定した場合(ステップS22:Y)には処理を終了し、それ以外の場合にはステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS11~ステップS22の処理を繰り返すことで、図22に示す等価時間サンプリングが実行される。なお、nは、繰り返し回数であり、本実施形態では、12,288とされる。すなわち、サイクルおよびフィールドの数は、2,048回×6フィールドが繰り返し回数であることから、これらの積は12,288となるからである。
つぎに、図25を参照して、図24に示すパルス受信処理の詳細について説明する。図25に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS30では、制御部11は、処理回数をカウントする変数mに初期値1を代入する。
ステップS31では、反射信号を受信する。より詳細には、選択部18によって選択された受信アンテナによって受信されたRF信号は、増幅部19によって増幅され、乗算部20によって局発信号と乗算されてIF信号とされ、A/D変換部22に供給される。
ステップS32では、制御部11は、A/D変換部22を制御し、反射信号(IF信号)をA/D変換により、デジタルデータに変換させる。
ステップS33では、制御部11は、A/D変換部22から出力されるデータを記憶部23に記憶させる。
ステップS34では、制御部11は、処理回数をカウントする変数mを1インクリメントする。
ステップS35では、制御部11は、変数mの値が5よりも大きいか否かを判定し、m>5を満たす場合(ステップS35:Y)にはステップS36に進み、それ以外の場合(ステップS35:N)にはステップS32に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、ステップS32~ステップS35の処理により、図22に示すように、5回のサンプリングが実行される。
ステップS36では、制御部11は、(k mod 6)の結果が0か否かを判定し、0である場合(ステップS36:Y)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS36:N)にはステップS38に進む。なお、modは、kを6で割った余りを求める演算子である。ここで、kは、図18に示す1サイクル(送信アンテナ16-1~16-2の双方による送信処理および受信アンテナ17-1~17-4の全てによる受信処理が1サイクル)が実行されると値が1インクリメントされる変数である。パルス受信処理では、1フィールドでは、1サイクルが1回実行されてつぎのフィールドに進み、第6フィールドまで進むと第1フィールドに戻って同じ処理を繰り返す。このため、(k mod 6)が0になる場合には、第1フィールドに戻り、それ以外の場合にはつぎのフィールドに進む。
ステップS37では、制御部11は、第1フィールドに復帰する。例えば、現在、図22の第6フィールドの処理が完了した場合には、第1フィールドに復帰する。
ステップS38では、制御部11は、つぎのフィールドの処理に移行する。例えば、現在、図22の第1フィールドの処理が完了した場合には、第2フィールドに移行する。
つぎに、図26を参照して、図1に示す処理部241、水平方向検出部242、および、垂直方向検出部243において実行される処理について説明する。図26に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS50では、処理部241は、8つのアンテナ系統によって得られた距離と時間に係るデータに対して、FFT処理を施すことで、対象物までの距離と周波数に係る2次元データを得る。
ステップS51では、水平方向検出部242は、ステップS50のFFT処理によって得られたデータから対象物が存在する領域について8ポイント分のデータを取得し、8アレイ角度FFT処理を施す。より詳細には、8ポイント分のデータに対して、ゼロパディングを実施し、128または256ポイントのデータとし、これらのデータに対して角度FFT処理を実行する。
ステップS52では、水平方向検出部242は、ステップS51の処理によって得られた結果に対して、ピークインデックス検出処理を実行する。例えば、図5の実線の場合では、実線のピーク値に対応する角度インデックスとしてi1(約“65”)が特定される。
ステップS53では、水平方向検出部242は、水平方向のテーブルを参照し、ステップS52で特定した角度インデックスに対応する方位角を特定する。例えば、いまの例では、角度インデックスである“65”に対応する方位角として約“-30度”が特定される。
ステップS54では、垂直方向検出部243は、ステップS50の処理によって得られたデータのうち、送信アンテナ16-1に対応する4ポイント分のデータに対して角度FFT処理を実行する。より詳細には、4ポイント分のデータに対して、ゼロパディングを実施し、128または256ポイントのデータとし、これらのデータに対して角度FFT処理を実行する。
ステップS55では、垂直方向検出部243は、ステップS50の処理によって得られたデータのうち、送信アンテナ16-2に対応する4ポイント分のデータに対して角度FFT処理を実行する。より詳細には、4ポイント分のデータに対して、ゼロパディングを実施し、128または256ポイントのデータとし、これらのデータに対して角度FFT処理を実行する。
ステップS56では、垂直方向検出部243は、ステップS52で特定されたピーク値に対応する角度インデックスにおける、送信アンテナ16-1に対応するFFT処理結果の振幅値と、送信アンテナ16-2に対応するFFT処理結果の強度比を算出する。例えば、図5の例では、送信アンテナ16-1に対応するFFT処理結果の角度インデックスi1における振幅値と、送信アンテナ16-2に対応するFFT処理結果の角度インデックスi1における振幅値との比を算出する。この結果、振幅比として約“-6”dBが特定される。
ステップS57では、垂直方向検出部243は、ステップS53において取得された角度における強度比と仰俯角との関係を示す情報をテーブル群243aから取得する。例えば、いまの例では、ステップS53で特定された角度は-30度であるので、図8の細線の間隔が短い破線で示す折れ線が取得される。
ステップS58では、垂直方向検出部243は、ステップS57で取得した強度比と仰俯角との関係を示す情報に基づいて、仰俯角を特定する。例えば、いまの例では、図8の細線の間隔が短い破線で示す折れ線において、ステップS56で特定された振幅比“-6”dBに対応する仰俯角として約“-7”度が特定される。
ステップS59では、垂直方向検出部243は、ステップS58で特定した仰俯角を、処理部244に出力する。
つぎに、図27を参照して図1に示す処理部244において実行される処理の一例について説明する。図27に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS90では、処理部241は、距離と周波数で定義づけられる信号情報を取得する。振幅情報によって対象物の1次的な検出を行う。
ステップS91では、処理部244は、水平方向検出部242の処理結果を取得する。より詳細には、処理部244は、水平方向検出部242から対象物の水平方向の角度を示す情報(方位角)を取得する。また、振幅情報によって対象物の2次的な検出を行う。
ステップS92では、処理部244は、垂直方向検出部243から処理結果を取得する。より詳細には、処理部244は、垂直方向検出部243から対象物の垂直方向の角度を示す情報(仰俯角)を取得する。
ステップS93では、処理部244は、処理部241における距離情報、水平方向検出部242からの方位角情報、垂直方向検出部243からの仰俯角情報から、センサないし自車から検出された信号の位置を特定する。
ステップS94では、処理部244は、ステップS93で検出された信号の位置情報をもとにクラスタリング処理やトラッキング処理等を実施し、対象物の位置や速度の特定を行う。
ステップS95では、処理部244は、ステップS94で特定した対象物の位置や速度が所定の時間内に衝突の可能性がない安全な対象物か否かを判定し、安全と判定した場合(ステップS95:Y)には処理を終了し、それ以外の衝突の可能性がある場合(ステップS95:N)にはステップS96に進む。
ステップS96では、処理部244は、対象物に衝突(または接触)する危険があることから、運転者に対して警告を発する処理を実行する。あるいは、処理部244における対象物の位置や速度情報を元に、上位装置であるECUにおいて上記処理、ないし、車両制御を行う。この結果、ECUは、警告音等によって衝突の可能性があることを通知したり、ECUがブレーキを動作させて停車させたりするようにしてもよい。
以上の処理によれば、前述した動作を実現することができる。
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、パルスPは、図22に示すように、6フィールドを有するとともに、各フィールドが5回のサンプリングを行うようにしたが、これ以外の数のフィールドを有するとともに、これ以外のサンプリング回数としてもよい。
さらに、図2の例では、対象物O1,O2はともに地面に接地された状態としたが、例えば、図28に示すように、地面に接地されない対象物O3(例えば、中空に配置されたポール等)を検出対象とすることもできる。このような対象物O3の場合、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号は、第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号の強度よりもおおむね同等ないし大きい(第1反射信号≧第2反射信号)。このような対象物O3の場合、仰俯角検出の結果、対象物が所定の高さ範囲と想定される場合には衝突の可能性があると判定すれば、図28に示す対象物O3への衝突も回避できる。またO4(例えば、上方に存在する橋桁等)を非検出対象とすることもできる。このような対象物O4の場合、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号は、第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号の強度よりも大きい(第1反射信号>第2反射信号)。このような場合、仰俯角検出の結果、対象物が所定の高さ範囲以上と想定される場合には衝突の可能性がないため、警報や制御に反映する必要がない。このようにして、誤検出の虞を低減することができる。
また、以上の実施形態では、2つの送信アンテナ16-1~16-2から垂直方向の指向特性が異なる2種類の電磁波を送信するようにしたが、3つ以上の送信アンテナから垂直方向の指向特性が異なる3種類以上の電磁波を送信するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、2つの特性が異なる送信アンテナ16-1~16-2によって垂直方向の指向特性が異なる電磁波を送信するようにしたが、例えば、特性が変更できる送信アンテナを用いて、送信のたびに特性を変化させることで、垂直方向の指向特性が異なる複数の電磁波を送信するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、送信アンテナ16-1~16-2は2個とし、受信アンテナ17-1~17-4を4個の2×4の構成としたが、これ以外のn×m(n,m>1)の構成としてもよい。
また、以上の実施形態では、図9に示すパルスの繰り返し周期T0は固定としたが、例えば、繰り返し周期T0をサンプリング毎に変化させることで、その直前の繰り返し周期において送信されるパルスに対する反射信号による誤検出を防止するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、パルス方式に基づいて対象物を検出するようにしたが、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダ装置に本発明を適用するようにしてもよい。また、複素信号ではなく実信号であってもよい。
また、以上の実施形態では、給電線の長さを調整することで送信アンテナ16-1~16-2の指向性を変更するようにしたが、これ以外にも、パッチアンテナの形状を変更したりするようにしてもよい。また素子アンテナは図示したようなパッチ形状に限るものではない。また、送信アンテナ、受信アンテナとも例示しているような中央から分岐した給電に限るものではなく、端から素子アンテナに対して直列に給電するもので構わない。また、図15、図18のように1列状の給電構成に限るものではない。
また、以上の実施形態では、対象物からの反射信号の電力の比に基づいて高さを特定するようにしたが、例えば、反射信号の電力の差に基づいて高さを特定するようにしてもよい。また、電力次元でなく振幅次元であったり、厳密値でなく近似的な値であったりしても構わない。
また、図1の例では、水平方向検出部242と垂直方向検出部243を直列に接続するようにしたが、図29に示すように、水平方向検出部242と垂直方向検出部243を並列に接続するようにしてもよい。このような構成によれば、例えば、図23における8アレイ角度FFT処理(P10)と、4アレイ角度FFT処理(P20,P21)と、を並列に処理することで、処理に要する時間を短縮することができる。なお、フーリエ変換として簡易で高速なFFT処理を例示したが、DFT(Discrete Fourier Transform)処理等や、高分解能処理であっても構わない。
また、以上の実施形態では、何らかのしきい値をもちい比較し、すべての信号のうち十分な振幅をもつデータのみに対して、対象物の候補となる信号として、好適な段階で絞る検出処理を例示したが、対象物の判定処理はこれらに限らず、任意の段階で入れることも可能である。
また、以上の実施形態では、車両として自動四輪車を例に挙げて説明したが、これ以外にも自動二輪車や自転車等を検出するようにしてもよい。すなわち、本明細書中において、車両とは自動四輪車には限定されない。
また、以上の実施形態では、車両の後方にレーダ装置を搭載する場合を例に挙げて説明したが、前方に搭載するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、垂直方向に指向性が異なる複数の送信信号を異なるタイミングで送信し、受信電力の差異に基づいて対象物の垂直方向の位置を検出するようにしたが、垂直方向以外の所定の方向(例えば、水平方向等)に指向性が異なる複数の送信信号を異なるタイミングで送信し、受信電力の差異に基づいて対象物の所定の方向の位置を検出するようにしてもよい。
また、図24~図27に示すフローチャートの処理は一例であって、本発明がこれらフローチャートの処理に限定されるものではないことはいうまでもない。