以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る建具1の正面図である。図2は本実施形態の建具1の縦断面図であり、図3は建具1の横断面図である。なお、以下の説明において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具1の障子3~6(ガラスG)の面内方向を意味し、「見込方向」とは、屋内外方向(すなわち、奥行き方向)を意味する。
図1に示す建具1は、上横枠21と下横枠22と左右一対の縦枠23、23とで矩形に枠組みされた枠体2の内側に、4枚の障子3~6を備える。また、建具1は、4枚の障子3~6よりも屋外側には網戸7が配置される。
障子4、5は、上横枠21及び下横枠22の長さ方向に沿って形成された障子用の屋内側レール211、221にスライド移動可能に取り付けられ、障子3、6は、上横枠21及び下横枠22の長さ方向に沿って、屋内側レール211、221よりも屋外側に平行に配置された障子用の屋外側レール212、222にスライド移動可能に取り付けられている。即ち、障子4、5は、見込方向の屋内側(一側)に位置し、障子3、6は、見込方向の屋外側(他側)に位置する。網戸7は、上横枠21及び下横枠22の最も屋外側に形成された網戸用レール213、223にスライド移動可能に取り付けられている。
上横枠21は、主としてアルミ等の金属材により押出し成形されてなるが、図2に示すように、屋内側レール211と屋外側レール212との間、及び、屋内側レール211よりも屋内側に、それぞれ、塩化ビニル等の樹脂材により成形された樹脂枠部214、215を有している。樹脂枠部214、215は、上横枠21の内周側に配置されている。このため、上横枠21は、優れた断熱性を有する。
また、下横枠22も、主としてアルミ等の金属材により押出し成形されてなるが、図2に示すように、屋内側レール211と屋外側レール222との間、及び、屋内側レール221よりも屋内側に、それぞれ、塩化ビニル等の樹脂材により成形された樹脂枠部224、225を有している。樹脂枠部224、225も、下横枠22の内周側に配置されている。このため、下横枠22も、優れた断熱性を有する。
図1では、4枚の障子3~6が全て閉じられた状態を示している。建具1は、4枚の障子3~6が閉じられることにより、屋内側と屋外側とを隔てるように構成される。4枚の障子3~6のうち、中央に配置される2枚の障子4、5は、同一の屋内側レール211、221上を左右にスライド移動するように枠体2に取り付けられている。また、両端に配置される2枚の障子3、6は、同一の屋外側レール212、222上を左右にスライド移動するように枠体2に取り付けられている。
この建具1は、両端の障子3、6がそれぞれ縦枠23、23に突き当てられるとともに、これらの障子3、6の屋内側に配置される障子4、5が、建具1の中央部で突き合わされることにより閉じられる。図1に示すように、閉じられた状態において、建具1の中央部に、障子4と障子5との突合せ部10が構成される。この建具1において、中央に配置される2枚の障子4、5のうちの一側(図1における左側)の障子4が、第1の障子に対応し、他側(図1における右側)の障子5が、第2の障子に対応する。
障子4は、それぞれ横方向に延びる上框41と下框42と、障子4の戸先側(図1における右側)に縦方向に延びる縦框からなる突合せ框43と、障子4の戸尻側(図1における左側)に縦方向に延びる縦框44とで矩形に枠組みされた内側に、スペーサSを挟んで複数枚のガラスGが収容されている。図2に示すように、障子4の上端部のガイド溝411は、上横枠21の屋内側レール211とスライド移動可能に係合し、障子4の下端部のガイド溝421は、下横枠22の屋内側レール221とスライド移動可能に係合し、戸車422を介して、屋内側レール221上に載置されている。
障子5は、それぞれ横方向に延びる上框51と下框52と、障子5の戸先側(図1における左側)に縦方向に延びる縦框からなる突合せ框53と、障子5の戸尻側(図1における右側)に縦方向に延びる縦框54とで矩形に枠組みされた内側に、スペーサSを挟んで複数枚のガラスGが収容されている。障子5の上端部のガイド溝(図示せず)は、上横枠21の屋内側レール211とスライド移動可能に係合し、障子5の下端部のガイド溝(図示せず)は、下横枠22の屋内側レール221とスライド移動可能に係合し、戸車(図示せず)を介して、屋内側レール221上に載置されている。
障子3は、横方向に延びる上框31と下框32と、それぞれ縦方向に延びる縦框33、34とで矩形に枠組みされた内側に、スペーサSを挟んで複数枚のガラスGが収容されている。障子3の上端部のガイド溝311は、上横枠21の屋外側レール212とスライド移動可能に係合し、障子3の下端部のガイド溝321は、下横枠22の屋内側レール221とスライド移動可能に係合し、戸車322を介して、屋外側レール222上に載置されている。
障子6は、横方向に延びる上框61と下框62と、それぞれ縦方向に延びる縦框63、64とで矩形に枠組みされた内側に、スペーサSを挟んで複数枚のガラスGが収容されている。障子6の上端部のガイド溝(図示せず)は、上横枠21の屋外側レール212とスライド移動可能に係合し、障子6の下端部のガイド溝(図示せず)は、下横枠22の屋外側レール222とスライド移動可能に係合し、戸車(図示せず)を介して、屋外側レール222上に載置されている。
なお、図1において、障子4の突合せ框43は、障子5の突合せ框53に隠れて見えていない。中央の障子4と障子5とは、それぞれの突合せ框43、53同士が突き合わされることにより閉じられ、中央部で突き合わされた突合せ框43、53により、突合せ部10が構成される。また、図1において、障子3の戸先側(図1における右側)に配置される縦框33は、障子4の縦框44に隠れて見えていない。障子6の戸先側(図1における左側)に配置される縦框63は、障子5の縦框54に隠れて見えていない。障子3、6のそれぞれ縦框34、64の屋内側及び屋外側には、開閉操作のための手掛け部35、65が、縦框34、64の延び方向(図1における上下方向)に沿って凹設されている。
建具1の縦方向の中ほどには、障子3と障子4とに亘り、及び障子5と障子6とに亘り、それぞれ両者を施錠するクレセント錠8a、8aが取り付けられている。また、障子3、6の下框32、62には、それぞれ障子4及び障子5を施錠する補助ロック機構8b、8bが取り付けられている。
次に、突合せ部10を構成する障子4の突合せ框43及び障子5の突合せ框53の構成について説明する。図4は、本実施形態の建具1の突合せ部10の構成を示す拡大横断面図である。図5は、本実施形態の建具1の障子4が備える突合せ框43の構成を示す拡大斜視図である。
まず、障子4の突合せ框43について説明する。本実施形態の突合せ框43は、框本体部430と、屋外側レール212、222を越えて屋外側に張り出す形状の框被覆部431と、突合せ框53(障子5)側に延出する延出片435と、を有する。
框本体部430は、ガラスGの端部が差し込まれるガラス溝を形成する。框本体部430の屋外側に框被覆部431が配置される。框本体部430のガラス溝を形成する部位の反対側の面であって障子5の突合せ框53に対向する見込面に、延出片435が配置される。
框被覆部431は、平面視において屋外側に向けて略垂直方向に張り出すとともに、障子5側に向けて変位した形状に形成される。本実施形態の框被覆部431は、障子5の突合せ框53の屋外側の見付面53aの全体を実質的に覆い隠している。これにより、建具1を屋外側から観察した場合、突合せ部10の幅は、実質的に突合せ框43の框被覆部431の屋外側の見付面43aだけの細幅状となり、建具1の意匠性向上が図られる。
突合せ框43の框被覆部431は上横枠21及び下横枠22のそれぞれに向けて上下方向に延びるように形成されている。框被覆部431は、その上部に屋外側レール212の下端部を収容する図示省略の溝が形成される。下部には屋外側レール222の上端部を収容する図示省略の溝が形成される。
従って、この障子4は、風圧を受けた際に、突合せ框43の框被覆部431が屋外側レール212、222と接触して係合するので、見込み方向の強度を高めることができる。具体的には、障子4が屋外側から屋内側へ向けた風圧(正圧)を受けた場合は、障子4が僅かに屋内側に変位することにより、框被覆部431の一部が屋外側レール212や222に接触して係合し、障子4が屋内側から屋外側へ向けた風圧(負圧)を受けた場合は、障子4が僅かに屋外側に変位することにより、框被覆部431の一部が、屋外側レール212、222と接触して係合し、それぞれ風圧を受け止めるように機能する。このため、障子4は、正負のいずれの風圧に対しても耐風圧性能を高めることができる。
また、本実施形態のように、障子4と障子5とが、建具1の中央部で突き合わされるように構成される場合、障子4の見込み方向の強度が高められる結果、もう一方の障子5の見込み方向の強度を補うことができるため、建具1の全体としての耐風圧性能を向上させることができる。なお、風圧を受けていない平常時においては、框被覆部431の溝は、屋外側レール212、222とは接触していない。このため、平常時において、框被覆部431が、障子4のスライド操作に影響を及ぼすことはない。
延出片435は、突合せ框43の延びる方向である上下方向に沿って延びている。延出片435は、突合せ状態において突合せ框53に呑み込まれた状態となる。なお、本実施形態の突合せ状態とは、障子4と障子5が突き合わされて障子4と障子5の間が閉じられた状態のことを示す。4枚の障子3~6が全て閉じられた場合、障子4と障子5は突合せ状態となる。
次に、突合せ框53について説明する。図4及び図5に示すように、障子5の戸先側に配置される突合せ框53は、框本体部531と、屋内側に向けて張り出す形状の框被覆部530と、障子4の延出片435とともに気密ライン100を形成する気密材535と、框本体部531の障子4側の見込面に配置されるガイドブロック70と、を有する。
框本体部531は、その屋内側に框被覆部530が配置され、該框被覆部530とともにガラスGの端部が差し込まれるガラス溝を形成する。框本体部531のガラス溝を形成する部位の反対側の面であって障子4の突合せ框43に対向する見込面には、障子4側に開口する凹部531bが形成される。この凹部531bの屋内側に框被覆部530が配置される。
框被覆部530は、障子4の突合せ框43の框被覆部431とは逆の方向に、屋内側に向けて突出するように張り出している。また、突合せ框53の屋内側は、張り出した部位が、障子4の突合せ框43の屋内側の見付面43bを覆うように、障子4側に変位した形状に形成されている。これにより、建具1を屋内側から観察した場合、突合せ部10の幅は、実質的に突合せ框53の第2框被覆部533の見付面だけの細幅状となり、建具1の意匠性向上が図られる。
本実施形態の框被覆部530は、框本体部531に樹脂部材534を介して連結される第1框被覆部532と、第1框被覆部532に連結され、当該第1框被覆部532の屋内側を覆う第2框被覆部533と、からなる。框本体部531と第1框被覆部532は、樹脂部材534を介して連結されているので屋外側に位置する框本体部531と屋内側に位置する第1框被覆部532の間の熱移動が妨げられ、高い断熱性が実現されている。
第1框被覆部532及び第2框被覆部533は、何れも、突合せ框53の延び方向である上下方向に沿って延びている。
第1框被覆部532の屋外側の見付面には気密材536が配置される。突合せ状態において、気密材536は突合せ框43の屋内側の見付面43bに接触する。これにより、突合せ框43と突合せ框53の屋内側での見込方向の隙間が閉じられ、気密材536と見付面43bによって突合せ部10の屋内側に上下方向の気密ラインが形成されるとともに、突合せ状態になるときに使用者の指が突合せ框43と突合せ框53に挟まれる事態の発生を防止できる。
次に、気密材535について説明する。気密材535は、凹部531bにおける屋外側に固定されており、凹部531bの内側の面から屋内側に突出するヒレ状に形成される。気密材535は、突合せ框53の延びる方向である上下方向に沿って延びている。
突合せ状態では、気密材535の先端が突合せ框43の延出片435に接触し、突合せ框43と突合せ框53の屋外側の気密ラインを形成する。本実施形態では、気密材535の先端が延出片435の屋外側の見付面435aに接触しており、気密材535と延出片435の接触方向が見込方向となっている。
次に、突合せ框53に配置されるガイドブロック70について説明する。図5は、本実施形態の建具1の障子5が備える突合せ框53を示す拡大斜視図である。図5に示すように、ガイドブロック70は、突合せ框53の凹部531bの内側に配置される。
図6は、本実施形態のガイドブロック70の表側を示す斜視図である。図7は、本実施形態のガイドブロック70の裏側を示す斜視図である。図6及び図7に示すように、ガイドブロック70は、ガイド溝71と、2つの保持片72と、2つの突起73と、凸部74と、を備える。
ガイド溝71は、突合せ框43の延出片435が差し込まれる溝状に形成される。ガイド溝71の内面は、延出片435の先端を奥側にスムーズにガイドできるようにテーパー状に形成される。
2つの保持片72は、弾性変形可能に形成される。2つの保持片72が凹部531bの内側で突っ張るように付勢力を作用させることで、凹部531bからガイドブロック70の離脱を妨げる。
2つの突起73は、2つの保持片72の反対側に形成される。本実施形態では、凹部531bの見込方向の屋内側には、見込方向の屋外側に延びる凹部側延出片537が形成される。この凹部側延出片537に2つの突起73が内側から引っ掛かる状態となることで、ガイドブロック70の凹部531bからの離脱が妨げられる。
凸部74は、2つの突起73の突起の間に形成される。本実施形態では、突合せ框53の凹部531bの内側にガイドブロック70の位置を決める嵌合凹部538が形成される。この嵌合凹部538に凸部74が嵌合することで、凹部531bにおけるガイドブロック70の上下方向の位置が決まる。
ガイドブロック70は、複数の保持片72、複数の突起73及び凸部74によって上下左右に移動することなく、突合せ框53に強固に固定された状態となる。
ここで、図4を参照して突合せ状態におけるガイドブロック70の機能について説明する。突合せ状態において、突合せ框43の延出片435がガイド溝71に差し込まれた状態となる。この状態では、障子4、障子5又はその両方が見込方向で離れる方向に移動したとしても、ガイド溝71によって延出片435の見込方向の移動が規制される。
屋内側レール211,221の存在によって離間が妨げられる突合せ框43,53の上下に比べ、上下方向の中央側では風圧等の影響により隙間が生じやすくなる。この点、本実施形態のガイドブロック70は、突合せ框53の上端及び下端から離れた位置で凹部531bに固定されているので、上下方向の中央側での突合せ框43と突合せ框53の隙間の発生を効果的に防止できる。
本実施形態の建具1は、突合せ框43と突合せ框53の上下の振れ止めを防止する構成を更に備える。
まず、突合せ框43と突合せ框53の上部の振れ止めを防止するための構成について説明する。図8は、本実施形態の建具1の突合せ部10の構成を示す平面図である。図8において、突合せ框43及び突合せ框53は二点鎖線で示される。
図8に示すように、突合せ框43の上端には上端キャップ81が嵌め込まれるとともに、突合せ框53の上端にも上端キャップ91が嵌め込まれる。上端キャップ81と上端キャップ91は、対応する形状となっており、突合せ状態で嵌合可能に構成される。
突合せ框43側の上端キャップ81について説明する。図9は本実施形態の左右方向一側に位置する障子4の突合せ框43の上端キャップ81を上から示す斜視図であり、図10は上端キャップ81を下から示す斜視図である。
図8から図10に示すように、上端キャップ81は、差込部82と、屋内側レールガイド溝83と、2つ1組の嵌合凸部84と、屋外側レールガイド溝85と、貫通孔86と、水抜き孔87と、取付孔88と、突当部89a,89bを備える。
差込部82は、突合せ框43の内側に嵌め込まれる部位である。屋内側レールガイド溝83は、屋内側レール211をガイドするガイド溝411を覆う部位であり、上端が開放された溝状に形成される。
2つ1組の嵌合凸部84は、屋内側レールガイド溝83の両側のそれぞれに形成される。見込方向屋外側に位置する嵌合凸部84は見込方向屋外側の面は、基端側から先端側に進むにつれて屋内側に近づくように傾斜している。見込方向屋内側に位置する嵌合凸部84は見込方向屋内側の面が、基端側から先端側に進むにつれて屋外側に近づくように傾斜している。2つ1組の嵌合凸部84は、全体として基端側から先端側に先細るテーパー状となっている。
屋外側レールガイド溝85は、屋外側レール212をガイドする図示省略のガイド溝を覆う部位であり、上端が開放された溝状に形成される。貫通孔86は肉盗みとして機能し、水抜き孔87は貫通孔86から入った水を外側に排出する排出口として機能する。取付孔88は、ネジ等の締結部材によって上端キャップ81を突合せ框43に固定するためのものである。
突当部89aは、左右方向で障子6側に突出する。突当部89aの左右方向の長さを調整することで障子4と障子6の最近接距離を調整できる。突当部89bは、左右方向で障子3側に突出する。突当部89bの左右方向の長さを調整することで障子4と障子3の最近接距離を調整できる。余裕をもって障子4と各障子3,6との最近接距離を設定することで使用者の指詰めを防止できる。
突合せ框53側の上端キャップ91について説明する。図11は本実施形態の左右方向他側に位置する障子5の突合せ框53の上端キャップ91を上から示す斜視図であり、図12は上端キャップ91を下から示す斜視図である。
図11及び図12に示すように、上端キャップ91は、差込部92と、屋内側レールガイド溝93と、嵌合凹部94と、蓋部95と、調整溝96と、取付孔97と、を備える。
差込部92は、突合せ框53の内側に嵌め込まれる部位である。屋内側レールガイド溝93は、屋内側レール211をガイドする図示省略のガイド溝を覆う部位であり、上端が開放された溝状に形成される。屋内側レールガイド溝93は屋内側レールガイド溝83に対応している。
嵌合凹部94は、2つ1組の嵌合凸部84に嵌合する部位であり、屋内側レールガイド溝93の両側に形成される。蓋部95は突合せ框53の屋内側の上端面を覆う部位である。
調整溝96は、上端キャップ91の下端部に形成される上下方向の溝である。調整溝96は、突合せ框43の延出片435の上下方向のずれを許容する溝である。取付孔97は、ネジ等の締結部材によって上端キャップ91を突合せ框53に固定するためのものである。
本実施形態では、突合せ框43と突合せ框53が付き合わされるときに、突合せ框43の上端キャップ81と突合せ框53の上端キャップ91の嵌合構造によって突合せ框43と突合せ框53の位置がガイドされる。従って、突合せ框43と突合せ框53のそれぞれが、突合せ部10の上部が揺れることなく適切な位置に収まる。
次に、突合せ框43と突合せ框53の下部の振れ止めを防止するための機能について説明する。図13は、本実施形態の建具1の突合せ部10の構成を示す底面図である。図13においても、突合せ框43及び突合せ框53は二点鎖線で示される。また、図13は底面図であるため、図8とは紙面方向が上下逆向きになっている。
図13に示すように、突合せ框43の下端には下端キャップ181が嵌め込まれるとともに、突合せ框53の下端にも下端キャップ191が嵌め込まれる。下端キャップ181と下端キャップ191は、対応する形状となっており、突合せ状態で嵌合可能に構成される。
突合せ框43側の下端キャップ181について説明する。図14は本実施形態の左右方向一側に位置する障子4の突合せ框43の下端キャップ181を表側から示す斜視図であり、図15は下端キャップ181を裏側から示す斜視図である。
図13から図15に示すように、下端キャップ181は、差込部182と、屋内側レールガイド溝183と、嵌合凸部184と、屋外側レールガイド溝185と、貫通穴186と、取付孔187と、戸車調整孔188と、突当部189a,189bと、を備える。
差込部182は、突合せ框43の内側に嵌め込まれる部位である。屋内側レールガイド溝183は、屋内側レール221をガイドする溝を覆う部位であり、上端が開放された溝状に形成される。
嵌合凸部184は、左右方向に突出している。嵌合凸部184は、基端側から先端側に先細るテーパー状となっている。屋外側レールガイド溝185は、屋外側レール222をガイドするガイド溝421を覆う部位であり、下端が開放された溝状に形成される。複数の貫通穴186は肉盗みとして機能する。取付孔187は、ネジ等の締結部材によって下端キャップ181を突合せ框43に固定するためのものである。
戸車調整孔188は、障子4の戸車422(図2参照)の高さを調整するための孔である。戸車調整孔188から工具を差し入れることにより、戸車422の高さを調整して障子4の高さを変更することができる。
突当部189aは、左右方向で障子6側に突出する。突当部189aの左右方向の長さを調整することで障子4と障子6の最近接距離を調整できる。突当部189bは、左右方向で障子3側に突出する。突当部89bの左右方向の長さを調整することで障子4と障子3の最近接距離を調整できる。余裕をもって障子4と各障子3,6との最近接距離を設定することで使用者の指詰めを防止できる。
突合せ框53側の下端キャップ191について説明する。図16は本実施形態の左右方向他側に位置する障子5の突合せ框53の下端キャップ191を表側から示す斜視図であり、図17は下端キャップ191を裏側から示す斜視図である。
図16及び図17に示すように、下端キャップ191は、差込部192と、屋内側レールガイド溝193と、嵌合凹部194と、蓋部195と、調整溝196と、取付孔197と、戸車調整孔198と、を備える。
差込部192は、突合せ框53の内側に嵌め込まれる部位である。屋内側レールガイド溝193は、屋内側レール211をガイドする溝を覆う部位であり、下端が開放された溝状に形成される。屋内側レールガイド溝193は屋内側レールガイド溝183に対応している。
嵌合凹部194は、嵌合凸部184に嵌合する部位である。蓋部195は突合せ框53の屋内側の下端面を覆う部位である。
調整溝196は、下端キャップ191の下端部に形成される上下方向の溝である。調整溝196は、嵌合凹部194の内側に形成される。調整溝196は、突合せ框43の延出片435の上下方向のずれを許容する溝である。
取付孔197は、ネジ等の締結部材によって下端キャップ191を突合せ框53に固定するためのものである。戸車調整孔198は、障子5の戸車(図示省略)の高さを調整するための孔である。戸車調整孔198から工具を差し入れることにより、戸車422の高さを調整して障子5の高さを変更することができる。
次に、突合せ部10の見込方向中央で上下方向に形成される気密ライン100について説明する。図18は、本実施形態の左右方向一側に位置する障子4の突合せ框43の屋内側の部位を示す側面図である。図18では、突合せ部10の見込方向中央に形成される気密ライン100が白抜きの矢印で示されている。
図18に示すように、気密ライン100は、その中央が障子5の気密材535が接触する障子4の延出片435によって形成される。気密ライン100の上部は、障子5の上端キャップ91に嵌合する障子4の上端キャップ81によって形成される。気密ライン100の上部は、屋内側レールガイド溝83を避けるように、延出片435よりも見込方向屋外側にオフセットされている。気密ライン100の下部は、障子5の下端キャップ191に嵌合する障子4の下端キャップ181によって形成される。気密ライン100の下部も、屋内側レールガイド溝183を避けるように、延出片435よりも見込方向屋外側にオフセットされている。
次に、上端キャップ91の調整溝96と下端キャップ191の調整溝196の機能について説明する。図19は、本実施形態の左右方向他側に位置する障子5の突合せ框53の屋外側の部位を示す側面図である。図19では、障子4の延出片435が二点鎖線で示されている。
図19に示すように、上端キャップ91の調整溝96及び下端キャップ191の調整溝196は、何れも延出片435の見込方向の位置に対応しており、上下方向に並んだ状態となっている。
突合せ状態において、延出片435の上端部が上端キャップ91の調整溝96に一部入り込む構成となっている。この状態においても、調整溝96の上端と延出片435の上端の間に隙間L1が生じるように調整溝96の上下方向の長さが余裕をもって設定されている。これにより、図19に示す状態から戸車の高さ調整が行われて延出片435が上方に移動した場合でもL1の移動量を許容できる。同様に、戸車の高さ調整が行われて延出片435が下方に移動した場合でも下端キャップ191の調整溝196によってL2の移動量を許容できる。
次に、図20に示すように適正な突合せ状態から距離d1だけ突合せ框43と突合せ框53が離れた場合について説明する。図20は、本実施形態の建具1の突合せ部10において左右方向の隙間が生じた様子を示す拡大横断面図である。図20において、突合せ框43及び突合せ框53は二点鎖線で示される。
障子4側の延出片435は左右方向に延び出る板状である。障子5側から見込方向屋外側から見込方向屋内側に突出する気密材535の先端が延出片435の屋外側の見付面435aに対して接触することで気密ライン100の中央側が形成されている。
本実施形態では、延出片435の長さd2が適切な突合せ状態から突合せ框43と突合せ框53が距離d1離れた場合であっても、延出片435と気密材535の接触が維持されるように、延出片435の左右方向の長さd2に余裕を持たせている。距離d1だけ突合せ框43と突合せ框53が離れたとしても、気密ライン100の中央側の気密性は維持される。従って、建付調整によって障子4と障子5の位置が斜めになる等したとしても、延出片435と気密材535の接触を維持することができる。
また、気密ライン100の上部においても、突合せ框43と突合せ框53が距離d1離れた場合であっても、上端キャップ81と上端キャップ91が見込方向では互い違いに重なっており、隙間が僅かとなる。気密ライン100の下部の下端キャップ181と下端キャップ191の位置関係も同様である。即ち、気密ライン100の上下において、突合せ框43と突合せ框53が距離d1離れた場合であっても気密性の低下を効果的に抑制できる。
以上説明したように、本実施形態の建具1は、同一の屋内側レール211,221上を移動する第1の障子である障子4と第2の障子である障子5を備え、障子4と障子5との突合せ框43,53同士が突き合わされて閉じられるように構成される。障子4の突合せ框43は障子5側の見込面から障子5側に延出する延出片435を有し、障子5の突合せ框53は、見込方向の一側(屋内側)に張り出すとともに、障子4と障子5が閉じられた状態で障子4の突合せ框43の見込方向の一側の見付面431bを覆うように配置される框被覆部530と、障子4側の見込面に形成される凹部531bに配置され、見込方向の一側に延出するとともに、障子4と障子5が閉じられた状態で延出片435に接触する気密材535と、凹部531bに配置されるとともに、障子4と障子5が閉じられた状態で延出片435の先端が差し込まれるガイド溝71を有するガイド部材としてのガイドブロック70と、を有する。
これにより、障子5の気密材535が見込方向で障子4の延出片435に接触しているので、突合せ状態において左右方向でずれが生じたり、障子4と障子5の何れかが斜めになったりしたとしても、気密材535と延出片435の接触を維持することができる当て代を確保できる。従って、建付調整の影響を受けにくく、従来品よりも高い気密・水密性を確保できる。また、突合せ状態における障子4と障子5の見込方向の移動をガイドブロック70によって規制することができる。従って、障子4と障子5の合体締結力を効果的に高めることができ、耐風圧性能を向上させることができる。即ち、建付の影響を受け難く、高い耐風圧性能及び気密性を有する建具1を実現できる。
本実施形態では、障子4の突合せ框43は、長手方向の端部に配置される第1端部部材としての上端キャップ81及び下端キャップ181を有し、障子5の突合せ框53は、長手方向の端部に配置される第2端部部材としての上端キャップ91及び下端キャップ191を有する。長手方向一側(上側)の上端キャップ81と上端キャップ91は、障子4と障子5が閉じられた状態で嵌合するように構成され、長手方向他側(下側)下端キャップ181と下端キャップ191は、障子4と障子5が閉じられた状態で嵌合するように構成される。
これにより、上端キャップ81と上端キャップ91の嵌合構造により、突合せ状態にするときに障子4と障子5の上部が適正な位置に案内されるとともに、突合せ状態における突合せ部10上部の振れの発生も効果的に防止できる。同様に、下端キャップ181と下端キャップ191の嵌合構造により、突合せ状態にするときに障子4と障子5の下部が適正な位置に案内されるとともに、突合せ状態における突合せ部10下部の振れの発生も効果的に防止できる。
また、本実施形態では、上端キャップ81は屋内側レール211を挟み込む屋内側レールガイド溝83を有するとともに延出片435に隣接又は見込方向で重なるように形成され、上端キャップ91は、屋内側レール211を挟み込む屋内側レールガイド溝93を有する。下端キャップ181は、屋内側レール221を挟み込む屋内側レールガイド溝183を有するとともに延出片435に隣接又は見込方向で重なるように形成され、下端キャップ191は、屋内側レール221を挟み込む屋内側レールガイド溝193を有する。
これにより、延出片435と上端キャップ81及び下端キャップ181が上下方向に連続するので、障子4と障子5の間の気密ライン100を上下方向全域に形成することができる。また、上端キャップ81と上端キャップ91の嵌合構造を利用できるので、屋内側レールガイド溝93を避けるように延出片435の上方の気密ライン100を見込方向にオフセットできる。同様に、下端キャップ181と下端キャップ191の嵌合構造を利用できるので、屋内側レールガイド溝193を避けるように延出片435の下方の気密ライン100を見込方向にオフセットできる。従って、同一の屋内側レール211,221を移動する障子4と障子5を突き合わせる構成においても、上下方向の全域又は略全域に気密ライン100を途切れることなく形成できる。
また、本実施形態では、上端キャップ91は、障子4と障子5が閉じられた状態の延出片435の位置に対応し、突合せ框53の長手方向で端部側に延びる調整溝96が形成される。下端キャップ191は、障子4と障子5が閉じられた状態の延出片435の位置に対応し、突合せ框53の長手方向で端部側に延びる調整溝196が形成される。
これにより、戸車調整孔188,198を通じて障子4の戸車422や障子5の戸車(図示省略)の高さが調整され、障子4と障子5の上下方向の相対的な位置関係が変わったとしても、調整溝96又は調整溝196によって延出片435の変位を許容することができる。建付調整を更に容易化することができる。
上端キャップ81は、障子4の移動方向に突出する突当部89a,89bを更に有し、下端キャップ181は、障子4の移動方向に突出する突当部189a,189bを更に有する。
これにより、上端キャップ81及び下端キャップ181によって障子3,4,5,6の移動に伴う指詰めの発生を防止できる機能を果たすことができる。別途指詰めを防止する部材を追加する必要がなくなり、製造コストの低減及び製造工程の単純化を実現できる。
なお、図3に示すように、障子4の戸尻側の縦框44は、屋内側に向けて張り出す形状に形成されている。具体的には、縦框44は、突合せ框43とは逆に、屋内側に向けて略垂直方向に突出して張り出している。この縦框44は、障子3の縦框33とオーバーラップする位置に配置されることにより、障子3の縦框33を屋内側から覆い隠すように配置されている。また、障子5の戸尻側の縦框54も、突合せ框53と同様に、屋内側に向けて張り出す形状に形成されている。具体的には、縦框54は、突合せ框53と同様に、屋内側に向けて略垂直方向に突出するように張り出している。この障子5の縦框54は、障子6の縦框63とオーバーラップする位置に配置されることにより、障子6の縦框63を屋内側から覆い隠すように配置されている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
上記実施形態で説明したガイドブロック70、上端キャップ81,91及び下端キャップ181,191の構成は一例であり、事情に応じて適宜変更できる。また、上記実施形態の建具1から上端キャップ81,91及び下端キャップ181,191を省略することもできる。
上記形態では、障子4が屋内側レール211、221上をスライド移動し、框被覆部431を有する突合せ框43が、屋外側レール212、222を跨ぐように配置されているが、障子4が屋外側レール212、222上をスライド移動し、框被覆部431を有する突合せ框43が、屋内側レール211、221を跨ぐように配置されてもよい。
図1に示した建具1の両端に配置される障子3、6は、枠体2に移動不能に固定されていてもよい。また、本発明の建具は、屋内側レール211、221と屋外側レール212、222とにそれぞれ2枚ずつの障子4、5と障子3、6がスライド移動可能に設けられる建具1に限定されず、屋内側と屋外側のいずれか一方のレール上をスライド移動する障子を有する建具であればよい。従って、本発明の建具は、例えば障子4、5の2枚のみであってもよい。この場合、屋外側レール212、222は、框被覆部431が跨るためだけの機能を有するものであってもよい。