図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。以下においては、互いに直交する3方向をX方向、Y方向、Z方向と示す。
第1実施形態
電子装置1は、負荷と負荷を電気的に制御するための回路とを備えている装置である。電子装置1は、例えば、駆動部品であるモータとこのモータを電気的に制御するための制御基板とが一体に構成されている機電一体型の回転電機装置である。以下では、電子装置1が機電一体型の回転電機装置である場合を例に説明を行う。
図1において、電子装置1は、モータ装置20と、収納ケース40と、多層基板50とを備えている。モータ装置20は、回転子21と、固定子22と、シャフト23と、センターピース25とを備えたブラシレスモータである。回転子21は、複数の永久磁石と、この永久磁石を保持する磁石保持部とを備えている。回転子21は、少なくとも一部が金属製である。複数の永久磁石は、全体で略環状をなしている。固定子22は、固定子巻線と、固定子巻線を保持する巻線保持部とを備えている。固定子22は、少なくとも一部が金属製である。
回転子21と固定子22とは、永久磁石と固定子巻線とが所定のエアギャップを挟んで互いに対向するように配置される。モータ装置20は、回転子21が固定子22の外側に位置しているアウターロータタイプのモータである。ただし、モータ装置20として、インナーロータタイプのモータを採用してもよい。回転子21は、負荷金属部の一例を提供する。固定子22は、負荷金属部の一例を提供する。モータ装置20は、電気負荷の一例を提供する。
シャフト23は、回転子21が回転する際の回転軸をなす部品である。回転子21と固定子22とは、ともにシャフト23を軸とする互いに同軸な部品である。外部コネクタ27は、多層基板50と外部電源とを接続するための端子である。外部コネクタ27は、正極と負極との2つの端子を有している。外部コネクタ27は、コネクタターミナルとも呼ばれる。
センターピース25は、金属製の板状部品である。ただし、センターピース25の全体を金属で構成するのではなく、一部を樹脂などの金属ではない材料で構成してもよい。センターピース25は、回転子21と固定子22とシャフト23と外部コネクタ27とを固定して、各部品の相対的な位置関係を決めるための部品である。センターピース25には、回転子21などのモータ装置20を構成する各部品だけでなく、収納ケース40と多層基板50との部品も固定される。言い換えると、電子装置1を構成する各部品は、センターピース25の適切な位置に固定されることで、センターピース25を基準として部品同士の相対的な位置を適切に保っている。センターピース25は、負荷金属部の一例を提供する。
収納ケース40は、多層基板50を収納するためのケース部材である。収納ケース40は、ほこりや水などの異物や、外力による衝撃などから多層基板50を保護するための部品である。収納ケース40は、中央部分が周縁部分に比べて凹んだ箱型をなしている。収納ケース40は、例えばアルミなどの金属製である。ただし、収納ケース40の全体を金属で構成するのではなく、一部を樹脂などの金属ではない材料で構成してもよい。
多層基板50は、モータ装置20の駆動を制御するための回路基板である。多層基板50は、1枚の基板に複数の層が形成されている。多層基板50を構成している複数の層には、様々な形状の電極パターンや電子部品が実装されている電極層と、絶縁性を有する絶縁層55とが含まれている。電極層の電極パターンは、例えば銅箔などの導電性部材によって構成されている。
センターピース25において、固定子22などが固定される側とは反対側の面に多層基板50が固定される。さらに、センターピース25において、多層基板50が固定されている側と同じ側の面に収納ケース40が固定されることとなる。電子装置1において、多層基板50は、収納ケース40とセンターピース25とによって形成される収納空間の内部に収納されることとなる。言い換えると、多層基板50の一方の面は、センターピース25と対向し、多層基板50の他方の面は、収納ケース40と対向することとなる。
図2において、第1コイル層60には、電源側正極部61pと電源側負極部61nと負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとが設けられている。電源側正極部61pと電源側負極部61nと負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとは、高い導電性を有する電極パターンである。電源側正極部61pと電源側負極部61nとは、外部コネクタ27を介して外部電源と接続している。負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとは、モータ装置20と接続している。
電源側正極部61pと電源側負極部61nとは、電源側コンデンサ51を介して接続している。負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとは、負荷側コンデンサ52を介して接続している。電源側コンデンサ51と負荷側コンデンサ52は、電解コンデンサである。電源側正極部61pと負荷側正極部62pとは、インダクタンス素子53を介して接続している。
第1コイル層60には、第1コイル部65が設けられている。第1コイル部65は、矩形環状をなすように形成された電極パターンである。ただし、第1コイル部65は、完全な環状をなしているのではなく、第1コイル部65の環状をなしている部分の始端部と終端部とは、互いにずれた位置に設けられている。言い換えると、第1コイル部65は、一部が途切れた環状の電極パターンである。
第1コイル層60には、ノイズ導電パターン57が設けられている。ノイズ導電パターン57は、矩形状の多層基板50の角部に位置して設けられた電極パターンである。ノイズ導電パターン57が形成されている部分を貫通するように固定用ネジ58が設けられている。固定用ネジ58は、金属製であり、ノイズ導電パターン57と電気的に接続している。固定用ネジ58は、多層基板50をセンターピース25に対する適切な位置に固定するための部品である。固定用ネジ58は、矩形状の多層基板50の4箇所の角部のそれぞれに設けられている。
第1コイル部65は、電源側負極部61nと接続している。第1コイル部65は、接地コンデンサ56を介してノイズ導電パターン57と接続している。接地コンデンサ56は、第1コイル部65を流れる電流のうち、周波数の高い成分をノイズ導電パターン57に流している。接地コンデンサ56とノイズ導電パターン57と固定用ネジ58とは、ノイズ電流を電源側負極部61n以外の部分に導くノイズ導電部59を構成している。
図3において、第2コイル層70には、第2コイル部75が設けられている。第2コイル部75は、矩形環状をなすように形成されている。ただし、第2コイル部75は、完全な環状をなしているのではなく、第2コイル部75の環状をなしている部分の始端部と終端部とは、互いにずれた位置に設けられている。言い換えると、第2コイル部75は、一部が途切れた環状の電極パターンである。第2コイル部75は、多層基板50の各層の積層方向において、第1コイル部65と半分以上が重なる位置に設けられている。
第2コイル部75の始端部は、ビアホールを介して第1コイル層60の負荷側負極部62nと接続している。第2コイル部75の終端部は、ビアホールを介して第1コイル層60の第1コイル部65の始端部と接続している。まとめると、負荷側負極部62nと電源側負極部61nとは、第2コイル部75と第1コイル部65とを介して電気的に接続している。
第2コイル層70には、小型負極部72nが設けられている。小型負極部72nは、矩形状の電極パターンである。小型負極部72nは、複数のビアホールによって第1コイル層60の負荷側負極部62nと電気的に接続している。小型負極部72nの面積は、第1コイル層60の負荷側負極部62nの面積と等しい。小型負極部72nは、多層基板50の各層の積層方向において、負荷側負極部62nと重なる位置に設けられている。小型負極部72nは、多層基板50の各層の積層方向において、電源側負極部61nと第1コイル部65とに重ならない位置に設けられている。
図4において、大型負極層80には、大型負極部82nが設けられている。大型負極部82nは、負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとの2つの電極パターンを合わせた面積よりも大きな面積の電極パターンである。大型負極部82nは、多層基板50の各層の積層方向において、負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとに半分以上重なる位置に設けられている。大型負極部82nは、多層基板50の各層の積層方向において、電源側正極部61pと電源側負極部61nとに重ならない位置に設けられている。大型負極部82nは、多層基板50の各層の積層方向において、第1コイル部65と第2コイル部75とに重ならない位置に設けられている。
図5において、信号線層90には、信号線部93が設けられている。信号線部93には、例えば、トランジスタのスイッチング指令の信号を送るための信号線が含まれる。信号線部93には、例えば、電子装置1の制御に用いるセンサの信号出力を送るためのセンサ線が含まれる。信号線層90には、ビアホールが設けられていない。言い換えると、信号線層90は、第1コイル層60と第2コイル層70と大型負極層80との電極層には、接続していない。ただし、信号線層90は、他の電極層と接続するようにビアホールを設けてもよい。また、信号線層90以外の電極層に一部の信号線を形成してもよい。あるいは、信号線層90に、大型負極部82nのように負極として機能する電極パターンを形成してもよい。信号線部93は、多層基板50の各層の積層方向において、第1コイル部65と第2コイル部75とに重ならない位置に設けられている。
図6において、多層基板50は、第1コイル層60と、第2コイル層70と大型負極層80と信号線層90との4つの電極層を備えている。多層基板50は、4つの電極層同士の間に絶縁層55を備えている。絶縁層55は、高い電気絶縁性を有する基材である。絶縁層55を構成する材料としては、エポキシ樹脂などの樹脂材料や、アルミナなどを採用することができる。
多層基板50は、4つの電極層と3つの絶縁層55とを備える7層構造である。多層基板50の表面に位置している第1層目の電極層が第1コイル層60である。第2層目の電極層が第2コイル層70である。第1コイル層60と第2コイル層70とは、1つの絶縁層55を介して隣接している。第3層目の電極層が大型負極層80である。多層基板50の裏面に位置している第4層目の電極層が信号線層90である。言い換えると、信号線層90は、第1コイル層60から最も離れた位置に設けられた電極層である。第2層目の電極層である第2コイル層70と、第3層目の電極層である大型負極層80とは、多層基板50の内部に形成された内層である。
多層基板50の構成は、上述の例に限られない。例えば、第1層目の電極層を第1コイル層60、第2層目の電極層を大型負極層80、第3層目を第2コイル層70としてもよい。この場合、第1コイル層60と第2コイル層70との間に、2つの絶縁層55と大型負極層80とが介在することになる。また、多層基板50としては、電極層が2つ以上設けられていればよく、電極層が5つ以上設けられていてもよい。
各電極層は、多層基板50の積層方向に重なって設けられている。多層基板50の積層方向は、Z方向に相当する。固定用ネジ58は、4つの電極層と3つの絶縁層55とを貫通している。固定用ネジ58の貫通方向は、多層基板50の積層方向と一致する方向である。
図7においては、各電極層に形成されている電極パターンは図示しているが、インダクタンス素子53などの電気素子や固定用ネジ58などの部品は図示を省略している。第1コイル部65と第2コイル部75とは、多層基板50の積層方向に重なっている。一方、第1コイル部65は、第2コイル部75以外の電極パターンとは重なっていない。言い換えると、小型負極部72nと大型負極部82nと信号線部93とは、多層基板50の積層方向において第1コイル部65や第2コイル部75の投影位置を避けた位置に形成されている。
第1コイル部65と第2コイル部75とは、磁気的結合によって相互インダクタンスを生じさせている。第1コイル部65と第2コイル部75とにおいては、電流が流れることで磁界が発生する。この発生した磁界は、第1コイル部65と第2コイル部75との重なり方向である多層基板50の積層方向において強く作用することになる。仮に、多層基板50の積層方向において第1コイル部65や第2コイル部75の投影位置に電極パターンが形成されていると、第1コイル部65と第2コイル部75とで発生した磁界の影響を受けて電極パターンに誘導電流が流れてしまうこととなる。したがって、多層基板50の積層方向において第1コイル部65や第2コイル部75との投影位置を避けて電極パターンを形成することで、第1コイル部65と第2コイル部75とで発生した磁界から電極パターンが受ける影響を小さくできる。
小型負極部72nと大型負極部82nとは、多層基板50の積層方向において、電源側負極部61nの投影位置を避けた位置に形成されている。仮に、大型負極部82nが電源側負極部61nと重なる位置に設けられていると、電源側負極部61nに大型負極層80まで延びるビアホールを形成することで、電源側負極部61nと大型負極部82nとが接続されてしまう。言い換えると、大型負極部82nに対して電源側負極部61nと負荷側負極部62nとの両方の電極パターンが接続され得る。大型負極部82nに対して電源側負極部61nと負荷側負極部62nとの両方の電極パターンが接続された状態では、大型負極部82nを介して負荷側負極部62nと電源側負極部61nとが導通している。言い換えると、負荷側負極部62nに加えられたノイズ電流が第1コイル部65と第2コイル部75とを流れることなく、大型負極部82nを流れて電源側負極部61nに到達し得る。
小型負極部72nと大型負極部82nとは、多層基板50の積層方向において、電源側正極部61pの投影位置を避けた位置に形成されている。小型負極部72nは、多層基板50の積層方向において、負荷側正極部62pの投影位置を避けた位置に形成されている。大型負極部82nは、多層基板50の積層方向において、負荷側正極部62pの投影位置と重なる位置に形成されている。ただし、大型負極部82nは、負荷側負極部62nおよび小型負極部72nとのみ複数のビアホールを用いて接続しており、負荷側正極部62pとは接続していない。
図8において、電源側正極部61pと負荷側正極部62pとの間には、インダクタンス素子53が設けられている。電源側負極部61nと負荷側負極部62nとの間には、第1コイル部65と第2コイル部75とが直列に設けられている。第1コイル部65と第2コイル部75とは、ノイズ低減部105を構成している。電源側正極部61pと電源側負極部61nとの間には、電源側コンデンサ51が設けられている。負荷側正極部62pと負荷側負極部62nとの間には、負荷側コンデンサ52が設けられている。電源側コンデンサ51と負荷側コンデンサ52とインダクタンス素子53とは、いわゆるπ型フィルタを構成している。これにより、電源側正極部61pや負荷側正極部62pを流れている電流のうち周波数の高いノイズ電流を電源側負極部61nや負荷側負極部62nに流すことができる。
第1コイル部65と第2コイル部75とは、電源側コンデンサ51と電源側負極部61nとの接続点である電源側接続点63と、負荷側コンデンサ52と負荷側負極部62nとの接続点である負荷側接続点64との間に位置している。第1コイル部65と第2コイル部75とを電源側接続点63と負荷側接続点64との間に設けることで、高周波特性が良好な状態とすることができる。言い換えると、第1コイル部65と第2コイル部75とを他の場所に設けた場合に比べて効果的にノイズ電流の影響を低減させやすい。ただし、第1コイル部65と第2コイル部75とを電源側接続点63と外部コネクタ27との間に設けてもよい。あるいは、第1コイル部65と第2コイル部75とを負荷側接続点64とモータ装置20との間に設けてもよい。
大型負極部82nは、負荷側負極部62nと直接接続しているが、電源側負極部61nとは直接接続していない。言い換えると、電源側負極部61nと負荷側負極部62nとは、ノイズ低減部105を介して接続されている。
ノイズ導電パターン57や固定用ネジ58は、第1コイル部65と第2コイル部75との間からグランドまでを接続している。ノイズ導電パターン57や固定用ネジ58は、ノイズ導電部59の一部である。ノイズ導電部59は、接地コンデンサ56とノイズ導電パターン57と固定用ネジ58とを備えている。ノイズ導電部59は、静電容量成分59Cとインダクタンス成分59Lと抵抗成分59Rとの3つの成分を直列に接続することで表現できる。ここで、静電容量成分59Cには、接地コンデンサ56の静電容量が含まれる。インダクタンス成分59Lには、ノイズ導電パターン57の寄生インダクタンスや接地コンデンサ56の等価直列インダクタンスが含まれる。抵抗成分59Rには、ノイズ導電パターン57や固定用ネジ58の抵抗や接地コンデンサ56の等価直列抵抗が含まれる。
ノイズ低減部105は、ノイズ導電部59におけるインダクタンス成分59Lを構成する接地コンデンサ56の等価直列インダクタンスよりも大きな相互インダクタンスを発生させている。ただし、相互インダクタンスの値を設定する際には、接地コンデンサ56の等価直列インダクタンスだけでなく、ノイズ導電パターン57の寄生インダクタンスの値なども考慮することが好ましい。
ノイズ低減部105において、磁気的結合により相互インダクタンスが形成されると、相互インダクタンスに対応して負のインダクタンスが生じることとなる。この負のインダクタンスが、ノイズ導電部59におけるインダクタンス成分59Lを打ち消すことで、ノイズ導電部59からグランドに向かって、効果的にノイズ電流を導くことができる。
図9において、横軸は、ノイズ電流の周波数fを対数表示で示しており、縦軸は、ノイズ電流における入力と出力との電力の比であるSパラメータSccを示している。ここで、SパラメータSccは、入力されたノイズ電流の電力が、どの程度出力されるかを示している。SパラメータSccの値が小さいほど、入力されたノイズが出力されにくい状態である。SパラメータSccが0の場合には、入力されたノイズが低減されず、そのまま出力されてしまう状態である。まとめると、SパラメータSccの値が小さいほどノイズ電流が低減されていることを示している。
図9において、本例のグラフを実線で示し、比較例のグラフを破線で示している。比較例は、電源側負極部61nと負荷側負極部62nとを接続する電極パターンがノイズ低減部105以外にも存在する場合の例である。言い換えると、比較例では、一部のノイズ電流がノイズ低減部105を流れることなく負荷側負極部62nから電源側負極部61nに伝播している状態である。それに対して、本例では、全てのノイズ電流がノイズ低減部105を流れている。
2MHzから200MHzまでの周波数領域においては、比較例に比べて本例におけるSパラメータSccが小さな値である。これは、2MHz以上の周波数領域において、インダクタンス成分59Lが大きくなっていることに起因している。本例では、ノイズ低減部105の相互インダクタンスを大きく確保することで、インダクタンス成分59Lの増大に対応し、比較例に比べて良好にノイズ電流を低減している。
2MHzから200MHzの間には、76MHzから108MHzまでのFM帯と呼ばれる周波数帯域が含まれている。このため、本例においては、FM帯を含む周波数帯域のノイズ電流に対して、比較例に比べて高いノイズ低減効果が得られることになる。
上述した実施形態によると、負荷側負極部62nと電源側負極部61nとに導通して設けられ、磁気的結合によって相互インダクタンスを生じさせる第1コイル部65と第2コイル部75とを有している。さらに、負荷側負極部62nを流れるノイズ電流を電源側負極部61n以外の部分に導くノイズ導電部59を備えている。このため、負荷側負極部62nにノイズ電流が流れた場合であっても、ノイズ低減部105とノイズ導電部59によって、ノイズ電流が電源側負極部61nに伝播されてしまうことを抑制できる。電源側負極部61nにノイズ電流が流れた場合であっても、同様にノイズ電流が負荷側負極部62nに伝播してしまうことを抑制できる。したがって、ノイズ電流の影響を抑制可能な電子装置1を提供することができる。
ノイズ低減部105から外部コネクタ27までの電源側負極部61nの長さは、モータ装置20からノイズ低減部105までの負荷側負極部62nの長さよりも短い。このため、ノイズ低減部105でノイズ電流が低減されてから、外部電源に至るまでの経路を短くできる。言い換えると、ノイズ低減部105から外部電源までの距離を、ノイズ低減部105からモータ装置20までの距離よりも短くしやすい。したがって、外部電源の負極側にノイズ電流が影響することを抑制しやすい。
ノイズ導電部59は、接地コンデンサ56を備えている。このため、所定の周波数よりも周波数の高いノイズ電流をノイズ導電パターン57に流すことができる。
ノイズ低減部105の相互インダクタンスは、ノイズ導電部59のインダクタンス成分59Lよりも大きい。言い換えると、ノイズ低減部105の相互インダクタンスは、接地コンデンサ56の等価直列インダクタンスよりも大きい。このため、ノイズ低減部105に比べてノイズ導電部59の方が電流の流れやすい状態にしやすい。したがって、ノイズ電流をノイズ導電部59からグランドに導きやすい。
ノイズ導電部59は、負荷側負極部62nを流れるノイズ電流を金属製のセンターピース25に導いている。言い換えると、ノイズ導電部59は、負荷側負極部62nを流れるノイズ電流を少なくとも一部が金属製の負荷金属部に導いている。このため、ノイズ電流を電子装置1の構成部品を用いて処理することができる。したがって、ノイズ電流を車体などの電子装置1を構成する部品以外の部品に流す場合に比べて、ノイズ電流の流れる経路を短く設定しやすい。
ノイズ導電部59は、負荷側負極部62nに流れるノイズ電流を固定用ネジ58を介してセンターピース25に導いている。このため、固定用ネジ58によって多層基板50とセンターピース25とを固定すると同時に、ノイズ導電パターン57とセンターピース25とを電気的に接続することができる。
多層基板50は、負荷側負極部62nよりも大きな面積を有する大型負極部82nを備えている。このため、大型負極部82nによって、モータ装置20の負極と接続する電極の面積を大きく確保することができる。言い換えると、負極側の電極パターン全体での電気抵抗を低くすることができる。
大型負極部82nは、負荷側負極部62nと導通しており、電源側負極部61nとは導通していない。このため、大型負極部82nを介して負荷側負極部62nから電源側負極部61nにノイズ電流が伝播されてしまうことを防ぐことができる。
第1コイル層60は、インダクタンス素子53と電源側コンデンサ51と負荷側コンデンサ52とを備えている。このため、電源側正極部61pと負荷側正極部62pとの間で周波数の高いノイズ電流が流れることを抑制しやすい。
大型負極部82nは、多層基板50の積層方向において、電源側正極部61pと重ならない位置に設けられている。このため、電源側正極部61pと大型負極部82nとの2つの電極パターンが結合することによるノイズの伝播を抑制できる。言い換えると、電源側正極部61pと大型負極部82nとの間でのクロストークを抑制できる。
信号線部93は、多層基板50の積層方向において、第1コイル部65および第2コイル部75と重ならない位置に設けられている。このため、第1コイル部65や第2コイル部75で発生した磁界が信号線部93に大きな影響を与えることを抑制しやすい。
多層基板50において、第1コイル層60と第2コイル層70とは、1つの絶縁層55を介して隣接している。このため、互いに対向している第1コイル部65と第2コイル部75との距離を短くしやすい。したがって、ノイズ低減部105における漏れ磁束を少なくしやすい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、コンタクト部品257を用いて、負荷側負極部62nを流れるノイズ電流を収納ケース40に導いている。
図10において、第1コイル層60には、第1コイル部65と接続しているコンタクト部品257を備えている。コンタクト部品257は、第1コイル層60に実装されている電子部品であって、多層基板50の各層の積層方向に突出している。言い換えると、コンタクト部品257は、多層基板50の表面から外側に向かって突出している。収納ケース40と多層基板50とが適切にセンターピース25に固定された状態において、コンタクト部品257は、収納ケース40と接触して電気的に接続した状態となる。コンタクト部品257は、ノイズ電流を収納ケース40に導くノイズ導電部259を構成している。
第1コイル部65とコンタクト部品257とは、接地コンデンサ56を介することなく接続している。ただし、ノイズ導電部259をコンタクト部品257と接地コンデンサ56とで構成してもよい。
図11において、コンタクト部品257は、第1コイル部65と第2コイル部75との間からグランドまでを接続している。コンタクト部品257は、ノイズ導電部259の一部である。ノイズ導電部259は、インダクタンス成分259Lと抵抗成分259Rとの2つの成分を直列に接続することで表現できる。ここで、インダクタンス成分259Lには、コンタクト部品257の寄生インダクタンスが含まれる。抵抗成分259Rには、コンタクト部品257の抵抗が含まれる。ノイズ低減部105は、ノイズ導電部259におけるインダクタンス成分259Lよりも大きな相互インダクタンスを発生させている。
上述した実施形態によると、ノイズ導電部259は、負荷側負極部62nを流れるノイズ電流を収納ケース40に導いている。このため、多層基板50を覆っている収納ケース40にノイズ電流を流すことで、電源側負極部61nにノイズ電流が伝播されることを抑制できる。
センターピース25にノイズ電流を導くノイズ導電部59と、収納ケース40にノイズ電流を導くノイズ導電部259との2つの経路を備えてもよい。これによると、複数の経路を用いてノイズ電流をグランドに導くことができる。したがって、1つのノイズ電流経路に不具合が生じた場合であっても、残りのノイズ電流経路からノイズ電流をグランドに導くことができる。言い換えると、冗長性を高めやすい。
コンタクト部品257を用いて、ノイズ電流を収納ケース40に導いている。このため、多層基板50の積層方向にノイズ電流の経路を設けることができる。したがって、第1コイル部65に近い位置からノイズ電流を収納ケース40に導くことができる。よって、電子装置1の設計自由度を高めやすい。
ノイズ電流を収納ケース40に導く方法は、多層基板50の積層方向に突出しているコンタクト部品257に限られない。例えば、多層基板50の積層方向と直交する方向に突出しているターミナル部品などを用いてノイズ電流を収納ケース40に導いてもよい。
他の実施形態
ノイズ電流を導く先は、センターピース25などの負荷金属部や、収納ケース40に限られない。例えば、電子装置1の外壁をなす金属製のハウジング部品を備え、このハウジング部品にノイズ電流を導くことで電子装置1におけるノイズ電流の影響を抑制してもよい。あるいは、電子装置1が車両に搭載されている場合には、車両のボデーにノイズ電流を導くことで電子装置1におけるノイズ電流の影響を抑制してもよい。
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。