JP7300172B2 - 複合金属粒子及びその製造方法、複合金属粒子含有組成物、並びに物品の製造方法 - Google Patents
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Description
数十nm以下の金属ナノ粒子は、粒子径が小さくなるにつれて、バルクの金属とは異なる種々の物理的、化学的特性を示すことが知られている。例えば、金属粒子の融点は、粒子径が小さくなると、バルクの金属の融点よりも低くなることが知られている。そのため、焼結時の温度を低温化する点から、粒子径の小さい金属ナノ粒子を用いることが検討されている。
特許文献2には、特定の銅フィラー表面に特定の銅ナノ粒子で被覆された銅ナノ粒子被覆銅フィラーが開示されている。特許文献2においては、当該銅ナノ粒子被覆銅フィラーは樹脂バインダーにより分散されている。
金属粉と金属ナノ粒子との混合物を準備する工程と、
前記混合物をメカノケミカル処理する工程とを有し、
前記メカノケミカル処理により、前記金属粉を扁平金属粉に変形させながら、当該扁平金属粉の表面に金属ナノ粒子を固着させる。
図1の例に示されるように、本発明に係る複合金属粒子10(以下、本複合金属粒子ともいう)は、扁平金属粉1と、前記扁平金属粉の表面の少なくとも一部に金属ナノ粒子2が固着した金属ナノ粒子層を有する。
更に、本複合金属粒子は、金属ナノ粒子が扁平金属粉に固着しており、当該複合金属粒子を溶媒等に分散しても金属ナノ粒子の脱離は抑制される。そのため、樹脂バインダー等を有しない組成物を調製することができ、焼結体の電気伝導性をより向上することができる。また、本発明に係る複合金属粒子含有組成物は、印刷方法に応じて種々の溶媒を適宜選択して用いることができる。
扁平金属粉は、球状の金属粉に対してやや平面的な形状を有する金属粉をいい、例えば楕円球状や平板状の形状を有するものである。当該扁平金属粉としては、長径(a)と短径(b)との比(a/b)(以下、アスペクト比ともいう)が2~10であることが、中でも、扁平金属粉の(a/b)の平均値が2~10であることが、導電性や接合強度の点から好ましく、2.5~8.0がより好ましく、3.0~7.0が更に好ましい。
本発明においては、体積の異なる2種以上の扁平金属粉を組み合わせて用いてもよい。ひび割れを抑制する点から、例えば、体積が0.01~0.5μm3、好ましくは体積が0.05~0.45μm3の小サイズ扁平金属粉と、体積が0.55~180μm3、好ましくは体積が0.6~15μm3の大サイズ扁平金属粉との組み合わせが好ましい。
複合金属粒子の結晶子径は、メカノケミカル処理の条件により調整することができる。
本発明において、複合金属粒子の結晶子径は、X線回折装置(XRD)用いてX線回折を測定し、この回折結果から、Scherrer法を用いて算出することができる。
電気伝導性の点から、中でも、銅、銀、金、及びニッケルより選択される1種以上の金属を含むことが好ましく、銀、又は銅であることがより好ましい。
本実施の複合金属粒子は、前記扁平金属粉の表面の少なくとも一部に金属ナノ粒子が固着した金属ナノ粒子層を有する。
金属ナノ粒子層を構成する金属ナノ粒子は、低温焼結性などの点から、平均一次粒径が10~200nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましく、50~130nmであれば更に好ましい。金属ナノ粒子の平均一次粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準粒度分布から算出される平均粒径である。
金属ナノ粒子は1種単独で、又は2種以上の金属を組み合わせて用いることができる。また、前記扁平金属粉の金属種と、金属ナノ粒子の金属種は同一であっても異なっていてもよい。
被覆層を構成する被覆材としては、脂肪酸、脂肪族アルデヒド、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステル、アミノアルコールなどが挙げられ、耐酸化性や低温焼結性の点から、中でも、脂肪酸、脂肪族アルデヒド、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステルが好ましい。
上記脂肪酸及び脂肪族アルデヒド(以下、脂肪酸等ともいう)は、カルボキシ基側が金属ナノ粒子表面に吸着して単分子膜を形成している。このため、金属核粒子の表面は、脂肪族カルボン酸等によって保護されて酸化が抑制され、高い耐酸化性を有するものと推定される。
脂肪酸等は、前記金属ナノ粒子の表面に1nm2当り、2.5~5.2分子の密度で配置されていることが好ましい。当該密度で配置されていることにより、金属ナノ粒子の分散性および酸化抑制効果を有するとともに、焼結時においては、容易に金属核粒子表面から除去され、更に分解又は揮発するため、焼結体中の残留が抑制されて、電気伝導性に優れた物品が得られる。
当該脂肪酸において、脂肪族基の炭素原子数は、被覆金属ナノ粒子の分散性や、耐酸化性の点から、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることが更により好ましい。一方、不飽和結合を有しない脂肪族基においては、炭素原子数が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。炭素原子数が上記上限値以下であることにより、被覆金属ナノ粒子の焼結時に除去されやすく、電気伝導性に優れ、ひび割れがより抑制された焼結体を得ることができる。なお、本発明において、脂肪族基の炭素原子数は、カルボキシ基を構成する炭素原子は含まないものとする。
また、好ましい脂肪族アルデヒドの具体例としては、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ヘキサデセニルアルデヒドなどが挙げられる。脂肪酸等は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、被覆金属ナノ粒子について、特開2012-88242号公報に記載される方法に従って、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて表面に付着している有機成分を抽出し、成分分析を行う。また、TG-DTA測定(熱質量測定・示差熱分析)を行い、被覆金属ナノ粒子に含まれる有機成分量を測定する。次いでLCの分析結果と合わせて被覆金属ナノ粒子に含まれる脂肪酸の量(質量)を求め、脂肪酸等の分子数を算出する。
また、SEM画像観察により金属核粒子の平均一次粒子径を測定し、金属核粒子の表面積を算出する。これらの結果から下記の式により被覆密度が求められる。
[被覆密度]=[脂肪酸等の分子数]/[金属ナノ粒子の表面積]
また前記被覆金属ナノ粒子における被覆材として、脂肪酸アルカノールアミド又は脂肪酸アミノアルキルエステルを用いることも好ましい。これらの被覆材を用いることで本複合金属粒子の低温焼結性が向上する。
上記脂肪酸アルカノールアミドは、例えば、脂肪酸のカルボキシ基と、アミノアルコールのアミノ基とがアミド結合した構造をもつ化合物が挙げられる。被覆金属ナノ粒子の分散性や低温焼結性の点から、脂肪酸アルカノールアミドは、中でも下記式(1)で表される化合物が好ましい。
R1の具体例としては、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、9-ヘキサデセニル基などが挙げられる。
R2の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などが挙げられる。
脂肪酸アルカノールアミドは市販品を用いてもよく、また、例えば脂肪酸のカルボキシ基とアミノアルコールのアミノ基とを反応させて合成してもよい。
上記脂肪酸アミノアルキルエステルは、例えば、脂肪酸のカルボキシ基と、アミノアルコールの水酸基がエステル結合した構造をもつ化合物が挙げられる。被覆銅ナノ粒子の分散性や低温焼結性の点から、脂肪酸アミノアルキルエステルは、中でも下記式(2)で表される化合物が好ましい。
また、R4の炭素数1~6の炭化水素基は、前記R2と同様のものが挙げられる。
脂肪酸アミノアルキルエステルは市販品を用いてもよく、また、例えば脂肪酸のカルボキシ基とアミノアルコールの水酸基とを反応させて合成してもよい。
複合金属粒子の製造方法は、上記本実施の複合金属粒子を製造可能な方法の中から適宜選択することができる。中でも、下記の製造方法により好適に製造することができる。
即ち、本実施の複合金属粒子の製造方法は、
金属粉と金属ナノ粒子との混合物を準備する工程と、
前記混合物をメカノケミカル処理する工程とを有し、
前記メカノケミカル処理により、前記金属粉を扁平金属粉に変形させながら、当該扁平金属粉の表面に金属ナノ粒子を固着させる、
前記金属粉は、後述するメカノケミカル処理により扁平金属粉となるものである。当該金属粉の形状は特に限定されず、扁平金属粉であっても、球状、略球状、棒状などであってもよい。粒径などはメカノケミカル処理後に所望の扁平金属粉となるように選択すればよい。また、金属粉の材質としては、前記扁平金属粉と同様のものが挙げられる。金属粉は、市販品を用いてもよい。例えば銅粉として、三井金属鉱業株式会社製の1200Y、1050Yなどが挙げられる。
前記金属ナノ粒子は、後述するメカノケミカル処理により、前記扁平金属粉の表面に固着するものである。金属ナノ粒子の材質としては、前記扁平金属粉と同様のものが挙げられる。
上記混合物は必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、分散剤や溶媒等が挙げられる。
分散剤としては、公知のポリエステル系分散剤、ポリアクリル酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。本発明においてはポリカルボン酸系分散剤が好適に用いられる。ポリカルボン酸系分散剤としては、たとえば日油株式会社製マリアリムSC-0505Kなどを用いることができる。
分散剤を用いる場合、その含有割合は特に限定されないが、ひび割れ抑制、及び導電性、接合強度の点から、金属粉及び金属ナノ粒子の合計質量100質量部に対し、0.2~0.5質量部の範囲で用いることが好ましい。
溶媒の含有割合は、混合物全量100質量部に対して、5質量部~40質量部とすることができ、8質量部~30質量部とすることが好ましい。
本発明に係る複合金属粒子含有組成物(以下、本複合金属粒子含有組成物ともいう)は、前記複合金属粒子と、溶媒とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。本発明の複合金属粒子含有組成物は、前記本複合金属粒子を含有することにより、ひび割れが抑制され、低温焼結でも接合強度や導電性に優れる焼結体が得られる。
以下、複合金属粒子に含まれ得る各成分について説明するが、複合金属粒子については前述の通りであるため、ここでの説明は省略する。
溶媒は、前記複合金属粒子を分散可能な溶媒の中から、塗膜形成方法(印刷方法)などに応じて適宜選択できる。溶媒は1種単独であっても2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。溶媒としては、中でも、脂肪族アミン系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族アミノアルコール系溶媒、テルピンアセテート系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、カルビトール系溶媒や、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)などが挙げられる。
脂肪族アミノアルコール系溶媒としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、オクタノールアミン、デカノールアミン、ドデカノールアミン、オレイルアルコールアミン等が挙げられる。
脂肪族アルコール系溶媒としては、例えば、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
テルピンアセテート系溶媒としては、例えば、1,8-テルピン-1-アセテート、1,8-テルピン-8-アセテート、1,8-テルピン-1,8-ジアセテート等が挙げられる。
脂肪族アルカン系溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、ドデカン、流動パラフィン等が挙げられる。
また、カルビトール系溶媒としては、例えば、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、デシルカルビトール等が挙げられる。
複合金属粒子含有組成物は、必要に応じて更に他の成分を含有してもよい、他の成分としては、金属粉、分散剤、バインダー樹脂、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤等の各種添加剤などが挙げられる。
また、本発明において複合金属粒子含有組成物は、更に金属ナノ粒子を含有してもよい。金属ナノ粒子を組み合わせることにより、導電性や接合高度がさらに向上する。金属ナノ粒子としては、前記複合金属粒子の項で挙げられたものと同様のものとすることができる。
本発明に係る物品(以下、本物品ともいう)は、前記本複合金属粒子、又は、前記複合金属粒子含有組成物の焼結体を有することを特徴とする。本物品は前記複合金属粒子の焼結体を有するため、接合強度や導電性に優れている。以下本物品について具体例を挙げて説明する。
パターン状の焼結体は、例えば、基材上に、本被覆銅ナノ粒子含有組成物を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンス法等、公知の印刷方法により、所望のパターン状に印刷し、必要に応じて溶媒を除去した後、加熱により被覆銅ナノ粒子を焼結することにより得ることができる。焼結体の厚みは特に限定されないが、回路に求められる導電性などに応じて、例えば、1~100μm程度となるように調整する。
接合体の製造方法は、例えば、公知の印刷方法により、基材の接合面に本被覆銅ナノ粒子含有組成物を塗布し、当該銅ナノ粒子含有組成物の塗膜上に接合する部材を配置した後、必要に応じて加圧しながら焼結する方法などが挙げられる。
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコをオイルバス内に設置した。
上記フラスコ内に、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、ラウリン酸(関東化学社製)68g(0.1当量/ギ酸銅無水物)と、溶媒(補助媒体)としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)150g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(主媒体)としての石油系炭化水素(C9アルキルシクロヘキサン混合物)(ゴードー社製「スワクリーン150」)562g(1.4当量/ギ酸銅無水物)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、上記フラスコ内の内容物をオイルバスで加温しながら、液温度が50℃になるまで、攪拌しながら、混合した。
上記混合物に対して、錯化剤として3-アミノ-1-プロパノール(東京化成社製)712g(3.0当量/ギ酸銅無水物)をゆっくり滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物をオイルバスで加温して、液温度が120℃付近になるまで、攪拌しながら、混合した。反応終了後、室温まで自然冷却した。
室温まで冷却した上記反応液に対して、メタノール(関東化学社製)1200gを添加し、混合した。上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、メタノールとアセトンで洗浄し、次いで、沈殿物に対して、キョーワノールM(関東化学社製)18gを添加し内容物を減圧乾燥(真空乾燥)して、ラウリン酸で被覆された被覆銅ナノ粒子を得た。当該被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は75.0nmであり、被覆層の割合は、1.27質量%であった。
特開2013-047365号公報の実施例1に記載の方法に準じて、以下のようにして被覆銅粒子を合成した。
銅化合物として亜酸化銅(I)(古河ケミカルズ社製)を0.5モル相当、被覆材としてプロピオン酸0.25モル相当、還元剤としてヒドラジン・一水和物(和光純薬工業製)0.5モル相当、溶媒としてイソプロパノールを500ml混合し、1,000mlの4ツ口フラスコに加えた。フラスコには、冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた。窒素を200ml/minを通気しながら、攪拌しつつ70℃まで昇温させ、2時間加熱・攪拌を継続して亜酸化銅(I)を還元させ、被覆銅ナノ粒子分散液を得た。当該被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は144.0nmであり、被覆層の割合は、0.52質量%であった。
被覆銅ナノ粒子分散液を減圧濾過して、粉体を濾別した。濾別した粉体をメタノール(関東化学工業製)で洗浄し、減圧乾燥させ、プロピオン酸が被覆した被覆銅ナノ粒子Cu2を得た。
無水ギ酸銅1800質量部、トリデシル酸64質量部、プロピレングリコール360質量部、スワクリーン#150(丸善石油製、溶媒)1800質量部を混合した、次いで、当該混合液に3-アミノプロパノール2700質量部を添加した。
次いで、トリデシル酸64質量部、プロピレングリコール120質量部、スワクリーン#150 120質量部の混合液を加え、減圧化105℃以下で2時間加熱した。その後、窒素雰囲気下112℃以下で更に21時間加熱した。得られた反応液を濃縮後、メタノールで洗浄し、乾燥し、解砕して、トリデシル酸プロパノールアミドが被覆した被覆銅ナノ粒子を得た。当該被覆銅ナノ粒子の平均粒子径は82.7nmであり、被覆層の割合は、1.60質量%であった。
粒径約2μmの銅紛(三井金属鉱業社製:1200Y)33質量部、粒径約0.8μm銅の紛(三井金属鉱業社製:1050Y)9質量部、製造例1で得られた被覆銅ナノ粒子35.1質量部、分散剤SC-0505K(日油株式会社社製)0.23質量部、キョーワノールM(溶媒、関東化学社製)9.1質量部を混合した。その混合物をミルポットへ移送し遊星型ボールミル(フリッチュ社製、PL-7)でメカニカルアロイ処理を実施した。メカニカルアロイ処理は、混合物に1mmφのジルコニアビーズを100質量部入れて、アルゴン雰囲気下、回転数1000rpmで7分間処理後、室温まで冷却し、この操作を6回繰り返し行った。当ナイロンメッシュを用いて混合物からジルコニアビーズをろ別し、実施例1の複合金属粒子含有組成物を得た。実施例1の複合金属粒子含有組成物は、扁平金属粉の表面の少なくとも一部に金属ナノ粒子が固着した金属ナノ粒子層を有する複合金属粒子が含まれることが確認された。
実施例1において、製造例1の被覆銅ナノ粒子の代わりに製造例2の被覆銅ナノ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合金属粒子含有組成物を得た。
製造例3の被覆銅ナノ粒子10.59質量部、平均粒子径が約2μmの銅紛(三井金属社製、1200Y)35.31質量部を混合した。その混合物をミルポットへ移送し遊星型ボールミル(フリッチュ社製、PL-7)でメカニカルアロイ処理を実施した。メカニカルアロイ処理は、混合物に1mmφのジルコニアビーズを100質量部入れて、アルゴン雰囲気下、回転数300rpmで15分間処理後、室温まで冷却し、この操作を15回繰り返し行った。当ナイロンメッシュを用いて混合物からジルコニアビーズをろ別し、本被覆銅ナノ粒子が表面に固着した銅紛MA1200YPを得た。得られたMA1200YP45.9質量部、実施例3の被覆銅ナノ粒子30質量部、平均粒子径が0.4μmの銅紛(三井金属社製、1020Y)15質量部、分散剤(日油株式会社製、マリアリムSC-0505K)0.16質量部、樹脂バインダー(共栄社化学株式会社製、オリコックスKC-1100)0.11質量部、溶媒(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)10質量部を混合し、実施例3の複合金属粒子含有組成物を得た。
粒径約2μmの銅紛(三井金属鉱業社製:1200Y)33質量部、粒径約0.8μm銅紛(三井金属鉱業社製:1050Y)9質量部、製造例1で得られた被覆銅ナノ粒子35.1質量部、分散剤SC-0505K(日油株式会社社製)0.23質量部、キョーワノールM(関東化学社製)9.1質量部を混合し、銅粉と、金属ナノ粒子とを含む組成物を得た。比較例1の組成物中では金属ナノ粒子は銅紛に固着していなかった。
粒径約1μmの扁平銅紛(三井金属鉱業社製:1100Y)42質量部、製造例1で得られた被覆銅ナノ粒子35.1質量部、分散剤SC-0505K(日油株式会社社製)0.23質量部、キョーワノールM(溶媒、関東化学社製)9.1質量部とを混合し、銅粉と、金属ナノ粒子とを含む組成物を得た。比較例2の組成物中では金属ナノ粒子は銅紛に固着していなかった。
結晶粒子径を粉体X線の回折角度と半値幅からScherrerの式より算出した。S
cherrerの式は式(1)で表される。
D=Kλ/(βcosθ)・・・(1)
ここで、Dは結晶粒子径、KはScherrer定数(ピーク幅として半値幅を用いたため、K=0.9として代入)、λは測定X線の波長(CuKα:1.5418A)、βは式(2)で表される。
β=b-B・・・(2)
ここで、bはピークの半値幅、Bは装置の補正係数(B=0.114)である。
結果を表1に示す。
実施例及び比較例の複合金属粒子含有組成物中の扁平金属粉のアスペクト比を以下の方法で算出した。
まず、白板ガラス上に9mm×9mmの正方形のメタルマスクを乗せ、メタルスキージを用いてステンシル印刷により、複合金属粒子含有組成物を塗布した。これを真空リフロー装置(アユミ工業社製、RF-400)にセットし、窒素雰囲気下100℃で1時間乾燥処理した後、350℃で1時間焼成し、焼結被膜を得た。当該焼結被膜を埋め込み用クリアカップ(三啓社製)内にプラスチッククリップ(三啓社製)で固定し、周囲にあらかじめ調製しておいたエポキシ樹脂を焼結被膜全体が埋まるまで流し込み、室温で10時間静置した後、エポキシ樹脂を硬化させてサンプルとした。得られたサンプルを、耐水研磨紙をつけた研磨装置で焼結被膜の中央付近まで削り、研磨面をSEMにより観察した。SEM像の一例(比較例2)を図5に示す。上記の方法により扁平金属粉は図5のように観察される。当該SEM像から、100個の扁平金属粉を抽出し、長径(a)と短径(b)を求め、アスペクト比を算出した。結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得られた複合金属粒子含有組成物を、それぞれAu(金)メッキされた素子上に5mg塗布し、当該塗布面にAuメッキされた別の素子をのせ、組成物の厚みが50μmになるまで押し込んだ。次いで、100℃で1時間乾燥処理した後、350℃で1時間焼結し、素子同士を接合し素子接合体を得た。得られた素子接合体について素子の厚み方向に対して下記の条件で透過X線観察を行い非破壊の接合層のひび割れ評価を行った。結果を表1に示す。
<観察条件>
観察装置:XGT-5000(HORIBA社製)
X線管電圧:50KV
電流:1.0mA
ターゲット:Rh
<ひび割れ評価基準>
〇:接合層のひび割れが観察されなかった。
△:接合層に亀裂が観察された。
×:接合層に大きな亀裂又はボイドが観察された。
実施例及び比較例で得られた複合金属粒子含有組成物を、それぞれ開口部が9mm×6.5mm×厚みが0.15mmのメタルマスクを用いてTO-247型銅フレーム上に塗工し、次いで、窒素条件下、200℃で30分間塗膜を加熱乾燥した。加熱終了後、乾燥塗膜の上に素子を置き、真空条件下、塗膜の厚み方向に20MPaの圧力をかけながら、250℃10分間加熱焼結し、素子と銅フレームを接合し素子接合体を得た。
<ダイシェア強度評価>
前記方法により得られた素子接合体について、下記の測定条件によりダイシェアテストを行い、接合強度を評価した。結果を表2に示す。
(測定条件)
測定装置:ボンドテスター Conder Sigma(XYZTEC社製)
測定条件:シェア高さ10μm、シェア移動速度25μm/s
実施例1~2及び比較例1~2の組成物を、それぞれ白板ガラス上に9mm×9mmの正方形のメタルマスクを乗せたメタルスキージを用いてステンシル印刷により塗布した。これを真空リフロー装置(アユミ工業社製、RF-400)にセットし、窒素雰囲気下100℃で1時間乾燥処理した後、350℃で1時間焼成し、焼結膜を得た。得られた焼結体の体積固有抵抗値を測定した。また焼成温度を350℃から250℃に変更した以外は上記と同様の方法で焼結膜を形成し、同様に体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
2 金属ナノ粒子
3 金属粉
10 複合金属粒子
11 焼結体
12 基材
13 部材
20 導電回路
30 接合体
Claims (7)
- 扁平金属粉と、
前記扁平金属粉の表面の少なくとも一部に金属ナノ粒子が固着した金属ナノ粒子層を有し、
前記金属ナノ粒子の平均一次粒径が、10~200nmであり、
前記金属ナノ粒子が、表面に、脂肪酸、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステル、及び、脂肪族アルデヒドよりなる群から選択される1種以上の被覆材が被覆した被覆層を有する被覆金属ナノ粒子である、複合金属粒子。 - 前記扁平金属粉の長径(a)と短径(b)との比(a/b)が、2~10である、請求項1に記載の複合金属粒子。
- 前記複合金属粒子の平均結晶子径が20~100nmである、請求項1又は2に記載の複合金属粒子。
- 金属粉と金属ナノ粒子との混合物を準備する工程と、
前記混合物をメカノケミカル処理する工程とを有し、
前記金属ナノ粒子の平均一次粒径が、10~200nmであり、
前記金属ナノ粒子が、表面に、脂肪酸、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミノアルキルエステル、及び、脂肪族アルデヒドよりなる群から選択される1種以上の被覆材が被覆した被覆層を有する被覆金属ナノ粒子であり、
前記メカノケミカル処理により、前記金属粉を扁平金属粉に変形させながら、当該扁平金属粉の表面に金属ナノ粒子を固着させる、複合金属粒子の製造方法。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合金属粒子と、溶媒とを含有する、複合金属粒子含有組成物。
- 更に、平均一次粒径が10~200nmの金属ナノ粒子を含有する、請求項5に記載の複合金属粒子含有組成物。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合金属粒子、又は、請求項5又は6に記載の複合金属粒子含有組成物を焼結して焼結体を得る工程を有する、物品の製造方法。
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JP2019185855A JP7300172B2 (ja) | 2019-10-09 | 2019-10-09 | 複合金属粒子及びその製造方法、複合金属粒子含有組成物、並びに物品の製造方法 |
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