特許文献1に開示の保護キャップは、筒状の側壁部と、側壁部の先端側に設けられた蓋部と、側壁部および蓋部を接続する角部とを備えているが、角部の内表面および外表面がそれぞれ直角に屈曲する直角部を有する。そのため、蓋部の厚みに比べて角部の厚みが必然的に大きくなってしまう。
ここで、保護キャップを構成するガラスの材質を如何に調整しても、ガラスの厚みが大きくなれば、光の吸収は必然的に大きくなる。つまり、特許文献1に開示の保護キャップでは、角部における光の吸収が大きくなり、保護キャップを通じた光の取出効率が悪くなるという問題がある。特に紫外域などの短波長域において、角部における光の吸収の問題が生じ易い。
本発明は、保護キャップにおける光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることを課題とする。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、基端に接合開口端を有する筒状の側壁部と、側壁部の先端側に設けられた蓋部と、側壁部および蓋部を接続する角部とを備えたガラス製の保護キャップであって、角部の内表面が、角部の外表面に向かって凹んだ第一凹面部を有するとともに、角部の外表面が、角部の内表面に向かって凹んだ第二凹面部を有することを特徴とする。
このようにすれば、角部の内表面に第一凹面部が形成され、角部の外表面に第二凹面部が形成されるため、角部の内表面と外表面とが互いに接近して角部の厚みが小さくなる。その結果、角部における光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることができる。
上記の構成において、側壁部の筒軸方向から見た場合に、第二凹面部の内周縁が、接合開口端の内周縁で区画される範囲以内に位置していることが好ましい。
このようにすれば、角部の厚みを効率よく小さくできるため、角部における光の吸収をより確実に低減できる。
上記の構成において、側壁部の筒軸方向と直交する方向から見た場合に、第二凹面部の外周縁が、蓋部の内表面から接合開口端に至るまでの範囲以内に位置していることが好ましい。
このようにすれば、角部の厚みを効率よく小さくできるため、角部における光の吸収をより確実に低減できる。
上記の構成において、第一凹面部および第二凹面部のそれぞれが、エッチング面で構成されていることが好ましい。
このようにすれば、第一凹面部および第二凹面部のそれぞれが、破損の原因となり得る欠陥(例えばマイクロクラック)の極めて少ない平滑な面で構成されるため、保護キャップの強度を高めることができる。
上記の構成において、第一凹面部および第二凹面部のそれぞれの算術平均粗さRaが、100nm以下であることが好ましい。ここで、算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠して測定した値とする(以下、同様)。
このようにすれば、第一凹面部および第二凹面部のそれぞれが、微小欠陥(例えばマイクロクラック)などが除去された平滑面で構成されるため、保護キャップの強度を高めることができる。
上記の構成において、保護キャップの頂部を構成する蓋部の外表面が、研磨面または火造り面であり、蓋部の外表面の算術平均粗さRaが、100nm以下であることが好ましい。ここで、火造り面とは、ガラスが溶融した後に、ローラなどの他部材と接触することなく固化した未研磨面を意味する(以下、同様)。
このようにすれば、蓋部の外表面が、微小欠陥(例えばマイクロクラック)などが除去された平滑面で構成されるため、保護キャップの強度を高めることができる。
上記の構成において、ガラスが、厚み0.7mm、波長200nmにおける内部透過率が10%以上である紫外線透過ガラスであることが好ましい。
このようにすれば、紫外域などの短波長域において、保護キャップにおける光の吸収を効率よく抑制できる。
上記の構成において、接合開口端にメタライズ層が形成されていてもよい。あるいは、接合開口端にメタライズ層を介してはんだ層が形成されていてもよい。
このようにすれば、メタライズ層によって、ガラス製の保護キャップとはんだ層の密着力が向上する。そのため、はんだ層を用いて、保護キャップの接合開口端を基材に確実に接合できる。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、発光装置であって、上記の構成を適宜備えた保護キャップと、保護キャップの接合開口端が接合された基材と、保護キャップおよび基材により囲まれた空間内に収容された発光素子とを備えていることを特徴とする。
このようにすれば、保護キャップにおける光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることができる。
上記の構成において、発光素子が、紫外線LED素子であってもよい。
このようにすれば、光の吸収が特に問題となる紫外域の光が発光素子から出射される。そのため、保護キャップにおける光の吸収を低減できるという本発明に係る発光装置の効果がより有用となる。なお、この場合、発光装置は、紫外線の効果により、例えば所定の対象物の殺菌を行う殺菌装置として利用できる。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、基端に接合開口端を有する筒状の側壁部と、側壁部の先端側に設けられた蓋部と、側壁部および蓋部を接続する角部とを備えたガラス製の保護キャップの製造方法であって、角部の内表面に第一凹面部をエッチングにより形成するとともに、角部の外表面に第二凹面部をエッチングにより形成するエッチング工程を備えることを特徴とする。
このようにすれば、保護キャップの角部の内表面に第一凹面部が形成されるとともに、保護キャップの角部の外表面に第二凹面部が形成されるため、角部の内表面と外表面とが互いに接近して、角部の厚みが小さくなる。その結果、保護キャップの角部における光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることができる。また、第一凹面部および第二凹面部のそれぞれが、破損の原因となり得る欠陥(例えばマイクロクラック)の極めて少ない平滑なエッチング面で構成されるため、角部の厚みの減少に伴う保護キャップの強度低下も抑制できる。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、基端に接合開口端を有する筒状の側壁部と、側壁部の先端側に設けられた蓋部と、側壁部および蓋部を接続する角部とを備えたガラス製の保護キャップの製造方法であって、対をなす第一主面および第二主面を有する板状のガラス母材を準備する準備工程と、ガラス母材の第一主面に、保護キャップの側壁部、蓋部および角部のそれぞれの内表面を構成する第一凹部をエッチングにより形成する第一エッチング工程と、ガラス母材の第二主面における第一凹部の周囲に対応する位置に、保護キャップの角部の外表面を構成する第二凹部をエッチングにより形成する第二エッチング工程と、第二凹部に対応する位置でガラス母材を切断する切断工程とを備えることを特徴とする。
このようにすれば、保護キャップの角部の内表面に第一凹面部が形成されるとともに、保護キャップの角部の外表面に第二凹面部が形成されるため、角部の内表面と外表面とが互いに接近して、角部の厚みが小さくなる。その結果、保護キャップの角部における光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることができる。また、第一凹面部を含む保護キャップの内表面および第二凹面部のそれぞれが、破損の原因となり得る欠陥(例えばマイクロクラック)の極めて少ない平滑なエッチング面で構成されるため、角部の厚みの減少に伴う保護キャップの強度低下も抑制できる。
上記の構成において、ガラス母材の第一主面および第二主面が、研磨面または火造り面で構成され、第一エッチング工程でエッチングを行う前に、ガラス母材の第一主面のうちの第一凹部の形成領域を除く部分がエッチングされないように第一保護マスクを予め形成するとともに、第二エッチング工程でエッチングを行う前に、ガラス母材の第二主面のうちの第二凹部の形成領域を除く部分がエッチングされないように第二保護マスクを予め形成することが好ましい。
このようにすれば、保護マスクを形成した部分では、保護キャップにおいて研磨面または火造り面が残る。そのため、保護キャップの内表面および外表面の大部分を、研磨面または火造り面と、エッチング面とで構成できる。
上記の構成において、第一保護マスクとして第一主面にメタライズ層を形成することが好ましい。
このようにすれば、エッチング工程の終了後に、保護マスクをメタライズ層としてそのまま利用できるため、第一主面の保護マスクの剥離が不要になる。
上記の構成において、第一凹部および第二凹部をエッチングのみにより掘設することが好ましい。
このようにすれば、第一凹部および第二凹部のそれぞれが、非常に平滑な面となる。
この場合、ガラス母材は、オーバーフローダウンドロー法で板状に成形されたものであることが好ましい。
このようにすれば、ガラス母材の第一主面および第二主面が、非常に平滑な火造り面となり、保護キャップの強度が向上する。
本発明によれば、保護キャップにおける光の吸収を低減し、保護キャップを通じた光の取出効率を高めることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係る発光装置1は、保護キャップ2と、保護キャップ2が接合された基材3と、保護キャップ2および基材3により囲まれた空間S内に収容された発光素子4とを備えている。
保護キャップ2は、筒状の側壁部5と、側壁部5の先端側(図面では上端側)に設けられた蓋部6と、側壁部5および蓋部6を接続する角部7とを備えている。保護キャップ2は、これら側壁部5、蓋部6および角部7が一体形成された単一のガラス部品である。
側壁部5の基端(図面では下端)は、保護キャップ2を基材3と接合するための接合開口端5cとされる。本実施形態では、接合開口端5cには、接合開口端5c側から順に、メタライズ層8と、はんだ層9とが形成されている。メタライズ層8は、蒸着やスパッタなどにより、接合開口端5cのガラス面に形成された金属膜であり、はんだ層9との密着性を向上させる役割を有する。メタライズ層8の材質としては、例えばCr、Ti、Ni、Pt、Au、Coおよびこれらを含む合金層、或いはこれら金属、合金の多層膜などが利用できる。はんだ層9の材質としては、例えばAu、Sn、Ag、Pb、およびこれら金属を含む合金、すなわち、Au-Sn系はんだ、Sn-Ag系はんだ、Pb系はんだなどが利用できる。
なお、保護キャップ2と基材3は、メタライズ層8およびはんだ層9によって接合されているが、接合方法はこれに限定されない。例えば、保護キャップ2と基材3は、発光素子4から出射される光などによる劣化が問題にならない場合には、樹脂接着層によって接合されていてもよい。
蓋部6の内表面6aおよび外表面6bのそれぞれは、側壁部5の筒軸方向Aと直交する方向に沿って延びる平面部を有する。
角部7の内表面7aは、角部7の外表面7bに向かって凹んだ第一凹面部10を有する。角部7の外表面7bは、角部7の内表面7aに向かって凹んだ第二凹面部11を有する。つまり、第一凹面部10および第二凹面部11により、角部7の内表面7aおよび外表面7bが互いに接近し、角部7の厚みが小さくなっている。したがって、発光素子4から出射された光が角部7で吸収され難くなり、保護キャップ2を通じた光の取出効率を高めることができる。
なお、本実施形態では、第一凹面部10は、曲面部のみで構成されているが、第一凹面部10は、曲面部と平面部とを有していてもよい。また、本実施形態では、第二凹面部11は、曲面部と平面部とで構成されているが、第二凹面部11は、曲面部のみで構成されていてもよい。さらに、本実施形態では、側壁部5の内表面5aが、第一凹面部10に滑らかに連続する曲面部で構成されているが、側壁部5の内表面5aは、その外表面5bと同様に、側壁部5の筒軸方向Aに沿って延びる平面部で構成されていてもよい。
図2および図3に示すように、第二凹面部11の内周縁Pは、保護キャップ2を平面視した場合(図3)、つまり側壁部5の筒軸方向A(図2では真上又は真下)から見た場合に、側壁部5の接合開口端5cの内周縁Qで区画される範囲X以内(接合開口端5cの内周縁Qと一致する位置を含む)に位置していることが好ましい。このようにすれば、角部7の厚みを効率よく小さくできる。もちろん、第二凹面部11の内周縁Pは、側壁部5の筒軸方向Aから見た場合に、範囲X外に位置していてもよい。
また、第二凹面部11の外周縁Rは、保護キャップ2を側面視した場合、つまり側壁部5の筒軸方向Aと直交する方向(図面では真横)から見た場合に、蓋部6の内表面6aから接合開口端5cに至るまでの範囲Y以内(蓋部6の内表面6aと一致する位置を含む)に位置していることが好ましい。換言すれば、第二凹面部11の外周縁Rは、蓋部6の内表面6aの高さよりも低位に位置していることが好ましい。このようにすれば、角部7の厚みを効率よく小さくできる。もちろん、第二凹面部11の外周縁Rは、側壁部5の筒軸方向Aと直交する方向から見た場合に、範囲Y外に位置していてもよい。
本実施形態では、第一凹面部10および第二凹面部11のそれぞれは、エッチング面で構成されている。また、蓋部6の内表面6aはエッチング面で構成され、蓋部6の外表面6bは、例えば、研磨面または火造り面などの非エッチング面で構成されている。蓋部6の外表面6bが、火造り面で構成される場合、第一凹面部10、第二凹面部11、蓋部6の内表面6aおよび蓋部6の外表面6bは、破損の原因となり得る欠陥(例えばマイクロクラック)の極めて少ない平滑面となる。また、蓋部6の外表面6bが、研磨面から成る場合、鏡面研磨面で構成されることが好ましい。なお、本実施形態では、側壁部5の内表面5aもエッチング面で構成されている。
蓋部6の外表面6bの算術平均粗さRaは、例えば、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。一方、エッチング面、つまり、第一凹面部10、第二凹面部11および蓋部6の内表面6aの算術平均粗さRaは、例えば、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが最も好ましく、更には10nm以下であることが好ましい。
基材3は、発光素子4が実装された板状部材である。基材3は、例えば、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムなどのセラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、シリコンなどのケイ素化合物、或いはこれらとAg、Cuなどの金属との複合材などで構成される。
発光素子4は、特に限定されるものではないが、本実施形態では紫外線LED素子である。紫外線LED素子は、紫外波長帯の光線を出射する光源装置である。この場合、保護キャップ2は、紫外線透過ガラスから構成されることが好ましい。紫外線透過ガラスとしては、厚み0.7mm、波長200nmにおける内部透過率が10%以上であることが好ましい。
このような特性を実現し得る紫外線透過ガラスのガラス組成としては、質量%で、SiO2 50~80%、Al2O3+B2O3 1~45%、Li2O+Na2O+K2O 0~25%、MgO+CaO+SrO+BaO 0~25%であることが好ましい。上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を表す。
SiO2は、ガラスの骨格を形成する主成分である。SiO2の含有量は、好ましくは50~80%、55~75%、58~70%、特に60~68%である。SiO2の含有量が少な過ぎると、ヤング率、耐酸性が低下し易くなる。一方、SiO2の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなることに加えて、クリストバライト等の失透結晶が析出し易くなって、液相温度が上昇し易くなる。
Al2O3とB2O3は、耐失透性を高める成分である。Al2O3+B2O3の含有量は、好ましくは1~40%、5~35%、10~30%、特に15~25%である。Al2O3+B2O3の含有量が少な過ぎると、ガラスが失透し易くなる。一方、Al2O3+B2O3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスが失透し易くなる。
Al2O3は、ヤング率を高める成分であると共に、分相、失透を抑制する成分である。Al2O3の含有量は、好ましくは1~20%、3~18%、特に5~16%である。Al2O3の含有量が少な過ぎると、ヤング率が低下し易くなり、またガラスが分相、失透し易くなる。一方、Al2O3の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなる。
B2O3は、溶融性、耐失透性を高める成分であり、また傷の付き易さを改善して、強度を高める成分である。B2O3の含有量は、好ましくは3~25%、5~22%、7~19%、特に9~16%である。B2O3の含有量が少な過ぎると、溶融性、耐失透性が低下し易くなり、またフッ酸系の薬液に対する耐性が低下し易くなる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、ヤング率、耐酸性が低下し易くなる。
Li2O、Na2O及びK2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。Li2O+Na2O+K2Oの含有量は、好ましくは0~25%、1~20%、4~15%、特に7~13%である。Li2O+Na2O+K2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなる。一方、Na2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなるおそれがある。
Li2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。Li2Oの含有量は、好ましくは0~5%、0~3%、0~1%、特に0~0.1%である。Li2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が不当に低くなるおそれがある。一方、Li2Oの含有量が多過ぎると、ガラスが分相し易くなる。
Na2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。また熱膨張係数を調整するための成分である。Na2Oの含有量は、好ましくは0~25%、1~20%、3~18%、5~15%、特に7~13%である。Na2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が不当に低くなるおそれがある。一方、Na2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなるおそれがある。
K2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。また熱膨張係数を調整するための成分である。K2Oの含有量は、好ましくは0~15%、0.1~10%、特に1~5%である。K2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなるおそれがある。
MgO、CaO、SrO及びBaOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは0~25%、0~15%、0.1~12%、1~5%である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
MgOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、ヤング率を顕著に高める成分である。MgOの含有量は、好ましくは0~10%、0~8%、0~5%、特に0~1%である。MgOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。
CaOは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分である。またアルカリ土類金属酸化物の中では、導入原料が比較的安価であるため、原料コストを低廉化する成分である。CaOの含有量は、好ましくは0~15%、0.5~10%、特に1~5%である。CaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。なお、CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。
SrOは、耐失透性を高める成分である。SrOの含有量は、好ましくは0~7%、0~5%、0~3%、特に0~1%未満である。SrOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
BaOは、耐失透性を高める成分である。BaOの含有量は、好ましくは0~7%、0~5%、0~3%、0~1%未満である。BaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
上記成分以外にも、任意成分として、他の成分を導入してもよい。なお、上記成分以外の他の成分の含有量は、本発明の効果を的確に享受する観点から、合量で10%以下、5%以下、特に3%以下が好ましい。
ZnOは、溶融性を高める成分であるが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスが失透し易くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0~5%、0~3%、0~1%、0~1%未満、特に0~0.1%である。
ZrO2は、耐酸性を高める成分であるが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスが失透し易くなる。よって、ZrO2の含有量は、好ましくは0~5%、0~3%、0~1%、0~0.5%、特に0.001~0.2%である。
Fe2O3とTiO2は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。Fe2O3+TiO2の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、0.1~40ppm以下、特に1~20ppmである。Fe2O3+TiO2の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、Fe2O3+TiO2の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
Fe2O3は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。Fe2O3の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、40ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、特に1~8ppmである。Fe2O3の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、Fe2O3の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
酸化鉄中のFeイオンは、Fe2+又はFe3+の状態で存在する。Fe2+の割合が少な過ぎると、換言すれば、Fe3+の割合が多いと、深紫外光の吸収率が高くなり、深紫外線での透過率が低下し易くなる。よって、酸化鉄中のFe2+/(Fe2++Fe3+)の質量割合は、好ましくは0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、特に0.5以上である。
TiO2は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。TiO2の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、40ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、特に0.5~5ppmである。TiO2の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、TiO2の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
Sb2O3は、清澄剤として作用する成分である。Sb2O3の含有量は、好ましくは1000ppm以下、800ppm以下、600ppm以下、400ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、特に50ppm未満である。Sb2O3の含有量が多過ぎると、深紫外域での透過率が低下し易くなる。
SnO2は、清澄剤として作用する成分である。SnO2の含有量は、好ましくは2000ppm以下、1700ppm以下、1400ppm以下、1100ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、200ppm以下、特に100ppm以下である。SnO2の含有量が多過ぎると、深紫外域での透過率が低下し易くなる。
F2、Cl2及びSO3は、清澄剤として作用する成分である。F2+Cl2+SO3の含有量は10~10000ppmであることが好ましい。F2+Cl2+SO3の好適な下限範囲は10ppm以上、20ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、300ppm以上、特に500ppm以上であり、好適な上限範囲は3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、特に800ppm以下である。また、F2、Cl2、SO3の各々の好適な下限範囲は10ppm以上、20ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、300ppm以上、特に500ppm以上であり、好適な上限範囲は3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、特に800ppm以下である。これらの成分の含有量が少な過ぎると、清澄効果を発揮し難くなる。一方、これらの成分の含有量が多過ぎると、清澄ガスがガラス中に泡として残存するおそれがある。
次に、以上のように構成された発光装置1に含まれる保護キャップ2の製造方法を説明する。
図4(a)~(f)に示すように、第一実施形態に係る保護キャップ2の製造方法は、準備工程S1(同図(a))と、第一保護マスク形成工程S2(同図(b))と、第一エッチング工程S3(同図(c))と、第二保護マスク形成工程S4(同図(d))と、第二エッチング工程S5(同図(e))と、切断工程S6(同図(f))とを備えている。なお、本実施形態では、ガラス母材12から複数の保護キャップ2を製造する場合を例示するが、これに限定されない。つまり、ガラス母材12から一つの保護キャップ2のみを製造してもよい。
図4(a)に示すように、準備工程S1では、対をなす第一主面12aおよび第二主面12bを有する板状のガラス母材12を準備する。ガラス母材12は、例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法などのダウンドロー法や、フロート法、或いはインゴットをスライスする手法などにより成形できる。オーバーフローダウンドロー法によりガラス母材12が成形される場合、第一主面12aおよび第二主面12bが共に平滑な火造り面となるため好ましい。
なお、ガラス母材12をガラスインゴットから成形する場合、例えば、カーボン等から成る型に溶融ガラスを流入固化させた後、ワイヤソーやブレードスライサーにより板状に切断し、粗研磨工程、鏡面研磨工程などを経ることにより、板状のガラス母材12を得ることができる。この場合、ガラス母材12の第一主面12aおよび第二主面12bは、各々研磨面により構成される。
図4(b)に示すように、第一保護マスク形成工程S2では、第一主面12aのうちの第一凹部13の形成領域を除く部分に第一保護マスクとして第一保護膜14が形成される。
図4(c)に示すように、第一エッチング工程S3では、エッチング液(例えばフッ化水素酸など)を用いたエッチングにより、ガラス母材12の第一主面12aに複数の第一凹部13を形成する。それぞれの第一凹部13は、一つの保護キャップ2の側壁部5、蓋部6および角部7のそれぞれの内表面5a,6a,7aを構成する。第一エッチング工程S3では、第一主面12aの一部が第一保護膜14によりエッチング液から保護されるため、第一主面12aのうちの第一凹部13の形成領域(第一保護膜14の非形成領域)のみがエッチングされる。これにより、第一凹部13に対応する、保護キャップ2の側壁部5、蓋部6および角部7のそれぞれの内表面5a,6a,7aは、エッチング面により構成される。また、第一凹部13の形成領域を除く部分に対応する、保護キャップ2の側壁部5の接合開口端5cは、エッチングされずに元の研磨面や火造り面などの非エッチング面により構成される。
図4(d)に示すように、第二保護マスク形成工程S4では、第二主面12bのうちの第二凹部15の形成領域を除く部分に第二保護マスクとして第二保護膜16が形成される。
図4(e)に示すように、第二エッチング工程S5では、エッチング液(例えばフッ化水素酸など)を用いたエッチングにより、ガラス母材12の第二主面12bにおけるそれぞれの第一凹部13の周囲に対応する位置に第二凹部15を形成する。それぞれの第二凹部15は、保護キャップ2の角部7の外表面7bを構成する。第二エッチング工程S5では、第二主面12bの一部が第二保護膜16によりエッチング液から保護されるため、第二主面12bのうちの第二凹部15の形成領域(第二保護膜16の非形成領域)のみがエッチングされる。これにより、第二凹部15に対応する、保護キャップ2の角部7の外表面7bは、エッチング面により構成される。また、第二主面12bのうちの第二凹部15の形成領域を除く部分に対応する、保護キャップ2の蓋部6の外表面6bは、エッチングされずに残された元の研磨面や火造り面などの非エッチング面により構成される。
ここで、上記の第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5では、凹部13,15がエッチングのみで形成されるため、凹部13,15の表面が非常に平滑になる。つまり、凹部13,15の表面の算術平均粗さRaが非常に小さくなる。これに対し、例えば、ドリルやリーマ、サンドブラストなどの機械加工により凹部を粗加工した後に、その凹部表面をエッチングにより仕上げ加工する場合、粗加工で形成される凹部表面の凹凸の影響を受けて、凹部表面の平滑性が悪化する。したがって、凹部13,15は、エッチングのみで形成することが好ましい。
なお、第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5は、別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5を別々に行う場合には、いずれの工程を先に行ってもよい。この場合、例えば、ガラス母材12の一方の主面をエッチング液に浸漬した後に、ガラス母材12の表裏を反転させて、ガラス母材12の他方の主面をエッチング液に浸漬してもよい。第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5を同時に行う場合には、例えば、ガラス母材12全体をエッチング液に浸漬してエッチングしてもよい。第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5では、エッチング液を塗布するなどの他の方法により、エッチングしてもよい。
第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5では、保護膜14,16の形成パターンやエッチング時間を調整することで、凹部13,15の深さや幅が調整できる。
第一保護マスク形成工程S2および第二保護マスク形成工程S4は、第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5の前に併せて行ってもよい。つまり、第一保護膜14および第二保護膜16は、ガラス母材12の両主面12a,12bに予め形成しておき、その後に、第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5を開始してもよい。
第一保護膜14および第二保護膜16は、第一エッチング工程S3および第二エッチング工程S5の終了後に剥離剤(例えばアルカリ薬品)により剥離される。なお、第一保護膜14および第二保護膜16は、いわゆるマスク材料から成る。マスク材料としては、例えば、合成樹脂から成るレジストや、金属材料から成るメタルマスクなどを用いることができる。
図4(f)に示すように、切断工程S6では、例えばダイヤモンドブレード等のカッター17により、それぞれの第二凹部15の底部に対応する位置でガラス母材12をフルカット(切断分離)する。カッター17としては、ダイヤモンドブレード以外にも、例えばワイヤソー切断、レーザー切断、エッチング切断などの任意の切断手段を使用できる。
なお、保護キャップ2の側壁部5の外表面5bは、切断面により構成されるが、破損の原因となり得る欠陥を除去するために、切断面に切断後にエッチングしてもよい。つまり、保護キャップ2の側壁部5の外表面5bは、エッチング面で構成されていてもよい。
(第二実施形態)
図5に示すように、第二実施形態では、保護キャップ2の接合開口端5cにメタライズ層8およびはんだ層9を形成する場合の保護キャップ2の製造方法を例示する。
本実施形態に係る保護キャップ2の製造方法は、準備工程T1と、エッチング工程T2と、メタライズ層形成工程T3と、はんだ層形成工程T4と、切断工程T5とを、この順に備えている。なお、準備工程T1、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程を含む)T2および切断工程T5は、第一実施形態で説明した対応する各工程と同様である。
メタライズ層形成工程T3およびはんだ層形成工程T4では、エッチングにより形成された凹部13,15の位置を基準として、ガラス母材12にメタライズ層8およびはんだ層9のパターンを形成する。
このようにすれば、はんだ層形成工程T4が、エッチング工程T2の後に行われる。そのため、はんだ層9に含まれるフラックスなどが、エッチング液(例えばフッ化水素酸)や保護膜14,16の剥離液(例えばアルカリ薬品)に溶出し、はんだ層9の効果が失われるという事態を確実に防止できる。
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
(第三実施形態)
図6に示すように、第三実施形態では、保護キャップ2の接合開口端5cにメタライズ層8およびはんだ層9を形成する場合の保護キャップ2の製造方法を例示する。
本実施形態に係る保護キャップ2の製造方法は、準備工程U1と、メタライズ層形成工程U2と、エッチング工程U3と、はんだ層形成工程U4と、切断工程U5とを、この順に備えている。なお、準備工程U1、エッチング工程U3および切断工程U5は、第一実施形態で説明した対応する各工程と同様である。
エッチング工程U3では、メタライズ層8のパターンを基準として、ガラス母材12に保護膜14,16を形成する。はんだ層形成工程U4では、メタライズ層8のパターン及び/又はエッチングにより形成された凹部13,15の位置を基準として、はんだ層9のパターンを形成する。
このようにすれば、はんだ層形成工程U4がエッチング工程U3の後に行われるため、第二実施形態で説明した同様の理由により、はんだ層9を確実に保護できる。一方、メタライズ層形成工程U2はエッチング工程U3の前に行われるが、メタライズ層8はエッチング工程U3で使用されるエッチング液や剥離液に対して耐性がある場合が多い。したがって、メタライズ層形成工程U2は、エッチング工程U3の前に行ってもよい。この場合、メタライズ層8を保護マスクとして利用し得るため、エッチング工程U3における第一保護膜14の形成を省略することができる。なお、メタライズ層形成工程U2をエッチング工程U3の前に行う場合に、メタライズ層8上に第一保護膜14の形成を行っても構わない。
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
(第四実施形態)
図7に示すように、第四実施形態では、保護キャップ2の接合開口端5cに樹脂接着層を形成する場合の保護キャップ2の製造方法を例示する。
本実施形態に係る保護キャップ2の製造方法は、準備工程V1と、エッチング工程V2と、樹脂接着層形成工程V3と、切断工程V4とを、この順に備えている。なお、準備工程V1、エッチング工程V2および切断工程V4は、第一実施形態で説明した対応する各工程と同様である。
樹脂接着層形成工程V3では、エッチングにより形成された凹部13,15の位置を基準として、ガラス母材12に樹脂接着層(図示省略)のパターンを形成する。なお、この場合、保護キャップ2を基材3に接着する際に、はんだ層9の代わりに樹脂接着層が用いられる。
(第五実施形態)
図8に示すように、第五実施形態に係る発光装置1が、第一実施形態に係る発光装置1と相違するところは、基材3の構成である。
本実施形態では、基材3は、底面部3aと枠部3bとを有する容器形状である。つまり、上記の実施形態では、保護キャップ2が接合される基材3が平板形状である場合を例示したが、基材3の構成はこれに限定されず、適宜変更できる。
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、保護キャップ2の内部に収容する電子部品として、発光素子4を例示したが、保護キャップ2の内部に収容される電子部品はこれに限定されない。つまり、例えば、発光素子以外にも圧電素子や水晶振動子などの電子部品にも利用できる。詳細には、保護キャップと、保護キャップが接合された基材と、保護キャップおよび基材により囲まれた空間内に収容された電子部品とを備えた電子部品パッケージとして利用できる。
上記実施形態では保護マスクとして所定の孔パターンを有する保護膜14,16を形成する場合を例示したが、所定の孔パターンが形成されたプレートやシートをガラス母材12の主面12a,12bに載置あるいは貼り付けて設けることにより保護マスクを構成してもよい。