JP7295600B1 - 主軸装置、主軸装置を搭載した工作機械及びバランシングマシン - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、例えばシリンダ装置のような押動手段を1つだけ使用して上記のようなホルダーの内側と外側の2箇所をクランプする機構が求められていた。
本発明は、このような問題点に鑑み主たる目的として、1つの押動手段を駆動させることで多機能ホルダーの内外の2箇所をクランプすることができる主軸装置、主軸装置を搭載した工作機械及びバランシングマシン等を提供するものである。
前記押動手段による押圧力の解除に伴って前記所定の進出位置にある前記第1のドローバー及び前記第2のドローバーは、それぞれ前記第1の付勢手段及び前記第2の付勢手段の付勢力によって前記主軸筒基部方向に後退し、前記第1のドローバーの前記第1のクランプ機構と前記第2のドローバーの前記第2のクランプ機構が作動されるようにした。
これによって、押動手段によって押すだけで第1のクランプ機構と第2のクランプ機構の解除ができる。また、押動手段を退避させることで第1の付勢手段及び第2の付勢手段の付勢力の作用のみで第1のクランプ機構と第2のクランプ機構を作動させことができ、ホルダーの2つの被クランプ部をクランプし、またアンクランプする構造が簡単になり、主軸装置の小型化・低コスト化に貢献することとなる。
「第2のドローバー」はホルダーの第2の被クランプ部をクランプする第2のクランプ機構を前端側に備えている。第2のドローバーは第1のドローバーの前進に伴って記第1のドローバーに直接的又は間接的に押動される関係にある。第1のドローバーと第2のドローバーは直列に配置させられるが一部重複していてもよい。
「押動手段」は例えば、油圧シリンダ装置、エアシリンダ装置、モータ装置等を駆動源とする例えばラム(ピストン)のような押圧部材を備えることがよい。押動手段(押圧部材)は第1のドローバーと連結されていても、連結されていなくてもよい。連結されていない場合には単に押動のために接するだけであるため主軸筒が回転する際の負荷にならない。
「第1の付勢手段」は、押動手段が第1のドローバーを押圧して第1のドローバーを進出させる際に、その進出に伴って圧縮され付勢力を内在することとなる。押動手段からの押圧力が解除されることで付勢力によって第1のドローバーを主軸筒基部方向に後退させることとなる。第1の付勢手段は当初からある程度の付勢力をすでに内在していることがよく、その付勢力によって常に第1のドローバーを主軸筒基部方向に押すような構成であることがよい。
「第2の付勢手段」は、第1のドローバーが押動手段によって押動されて前進し、それに伴って第2のドローバーも前進する際に第2のドローバーに圧縮され付勢力を内在することとなる。押動手段からの押圧力が解除されることで付勢力によって第2のドローバーを主軸筒基部方向に後退させることとなる。第2の付勢手段は当初からある程度の付勢力をすでに内在していることがよく、その付勢力によって第2のドローバーを主軸筒基部方向に押すような構成であることがよい。
第1及び第2の付勢手段は例えば、バネ装置であれば例えばコイルばね、皿ばね、板ばね等がよい。エアシリンダ装置、油圧シリンダ装置を使用するようにしてもよい。
「被クランプ部」は、クランプ機構によってクランプ(掴む)できる形状である必要がある。被クランプ部は、例えば張り出し部を有していたり、クランプ側の部材が嵌まり込む形状であることがよい。それによって被クランプ部がクランプ機構と干渉してホルダーの取り出し方向への移動が阻止されるためである。
「クランプ機構」は、被クランプ部に対して、例えば主軸の径方向に進退する干渉体を有する構造であることがよい。そして、被クランプ部が挿通される通路内に出没して被クランプ部をクランプすることがよい。干渉体の形状は例えばボール状、円筒状、樽状であることがよい。あるいは干渉体を例えばコレットのような軸を中心に揺動して主軸の径方向に進退するようにしてもよい。
「第2のドローバーが第1のドローバーに直接的又は間接的に押動される」ため、第1のドローバーが第2のドローバーに接して押動してもよく、他の部材を介して押動してもよい。
多機能ホルダーとした場合に、工具用としては、例えば、マシニングセンタのATC(自動工具交換装置:Automatic Tool Change)において用意される例えばフライス、ドリル、エンドミル、バイト、リーマ等の種々の加工工具を先端側にチャック機構によってチャッキングして装着して使用することができる。ワークの場合にはワークを直接的又は間接的に先端側にチャック機構によってチャッキングして装着し、例えばNC旋盤加工機でこのワークを加工することができる。チャック機構にはクランプ機構も含む。例えば、第1の被クランプ部をプルスタッドのようなレバー部材に形成させ、第1の被クランプ部を押引することでチャック機構を開閉させる。第2の被クランプ部はホルダー装着穴に装着される装着部に形成し、第2の被クランプ部によってホルダーを主軸筒の先端に装着するようにするとよい。
これによって第1のクランプ機構と第2のドローバーの前記第2のクランプ機構が作動してホルダーがクランプされた場合に押動手段が主軸筒側の負荷となることがないため、主軸装置が回転する際のエネルギーロスや回転むらが軽減されることとなる。
また、第3の手段として、前記第2の付勢手段を付勢した際に得られる付勢力は前記第1の付勢手段を付勢した際に得られる付勢力よりも大きくなるようにした。
これによって押動手段の押動によって第1のクランプ機構と第2のドローバーが解除されている状態から押動手段による押圧力が解除される場合に、まず第2の付勢手段の付勢力によって第2のドローバーの第2のクランプ機構が作動され、その後に時間差で第1のドローバーの第1のクランプ機構が作動されることとなる。
また、第4の手段として、前記所定の進出位置から前記第1のドローバーが後退する際には、前記第2のドローバーの前記第2のクランプ機構が作動された後に前記第1のドローバーの前記第1のクランプ機構が作動するようにした。
このように時間差で第2のクランプ機構が作動された後に第1のクランプ機構が作動されるようにすることで、ホルダーの誤装着を防止することができる。
第3の手段及び第4の手段では、例えばホルダーが正しく主軸装置に装着されて第2のクランプ機構によってクランプされ、その後に第1のクランプ機構が可動式のプルスタッドのヘッドをクランプするというような二段階のクランプ動作が可能となるため、ホルダーが正しく主軸装置に装着される前の例えば傾いた状態でプルスタッドをクランプしてしまったり、第1のクランプ機構がうまく作動しなかったりというような不具合が生じにくくなる。
これによって、第1のドローバーが進退する際に、あるいは第1のドローバーに押動されて第2のドローバーが進出する際等の両者の相対的な進退動作において中心軸を一致させてがたつかずに移動させることができる。
また、第6の手段として、前記第1のクランプ機構と前記第2のクランプ機構とは前後方向にずれた位置に配置されている前記第1のクランプ機構よりも前記第2のクランプ機構は前記主軸先端寄りに配置されているようにした。
これによって、例えばホルダーの第1の被クランプ部と第2の被クランプ部の位置が前後にずれている場合に対応しやすく、第1のクランプ機構と第2のクランプ機構が同じ位置にないため両者が干渉してしまうこともない。
具体的な第1のクランプ機構のクランプ状態からの解除構造の構成である。これによって、第1のクランプ機構のホルダーの第1の被クランプ部へのクランプ状態から解除(アンクランプ)することができる。
また、第8の手段として、前記第2のクランプ機構は前記主軸の径方向に進退する干渉体を有し、前記第1のドローバーが前記第1の進出位置に配置された状態において、前記第2の被クランプ部をクランプする前記干渉体が、前記主軸筒の内周面に形成された収容部に面した位置に配置されることによって前記第2のクランプ機構が解除されるようにした。
具体的な第2のクランプ機構のクランプ状態からの解除構造の構成である。これによって、第2のクランプ機構のホルダーの第2の被クランプ部へのクランプ状態から解除(アンクランプ)することができる。
ここでは干渉体が径方向に進出して被クランプ部をクランプし、そのクランプ状態が保持されることでホルダーは装着される。ホルダーの取り外し方向への移動を阻止する係合部があるとなおよい。径方向に進退する干渉体としては、例えば上記のようなボール等やコレットや割爪を配置してもよい。
つまり、ホルダーが主軸装置のホルダー装着穴に装着され、自身の第1の被クランプ部と第2の被クランプ部が第1のクランプ機構と第2のクランプ機構にクランプされている状態である。
また、第10の手段として、ワーク用の前記ホルダーは進退可能なレバー部材に前記第1の被クランプ部が形成される構造とされ、前記主軸先端に装着された前記ホルダーに前記第2のクランプ機構が作動した状態で前記第1の被クランプ部を介して前記レバー部材が引き出されてアンクランプ状態の前記ワークがクランプされ、前記第1のドローバーが前進することで前記レバー部材は押し戻されクランプ状態の前記ワークがアンクランプされるようにした。
これによって、第2のクランプ機構を作動させてワーク用のホルダーをクランプした状態で第1のドローバーによってレバー部材を進退させることができるため、第1のドローバーの第1のクランプ機構のみでワークのクランプ・アンクランプが可能となっている。レバー部材とは例えばプルスタッドやプルボルト等である。
また、第11の手段として、前記前記第1の付勢手段及び前記第2の付勢手段は圧縮バネ装置であり、前記第1のドローバー及び前記第2のドローバーを後退方向に付勢するようにした。
このように圧縮バネ装置を使用することで、第1のドローバー及び第2のドローバーを後退方向に付勢するための付勢手段の軽量化・コンパクト化に貢献する。
また、第12の手段として、第1~第11の手段のいずれかに記載の主軸装置を搭載した工作機械とすることがよい。
また、第13の手段として、第1~第13の手段のいずれかに記載の主軸装置を搭載したバランシングマシンとすることがよい。
工作機械としては、例えばNC旋盤工作機械やマシニングセンタ、更にATC付きNC旋盤工作機械がよい。マシニングセンタでは特にATC(自動工具交換装置)の主軸装置として使用することがよい。
上述した第1~第13の手段の各発明は、任意に組み合わせることができる。特に、第1の手段の構成を備えて、第2~第13の手段の各発明の少なくともいずれか1つの構成と組み合わせを備えるとよい。第1~第13の手段の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
<実施の形態1>
図1に示すように、自動工具交換装置としての主軸ユニット1は、主軸装置2と、主軸装置2の周囲に配設されたハウジング3に包囲されたベアリングユニット4、主軸回転機構5及びシリンダ装置6とを主要な構成としている。まず、主軸ユニット1の概要について説明する。以下の説明では、主軸ユニット1は鉛直方向に主軸装置2が配置されるものとして、主軸装置2の先端側は下部側とする。主軸ユニット1は図示しない主軸用フレームによって支持されている。
図1及び図2A~図2Fに示すように、合金製の主軸装置2は略円筒形形状の主軸筒7を備えている。主軸筒7は上下方向に連通された通路を備え、外周形状が真円形状とされている。主軸筒7内には第1のドローバー8と第2のドローバー9が収容されている。第1のドローバー8と主軸筒7の間には第1の付勢手段としての第1の皿バネ集合体10が配設されている。第2のドローバー9と主軸筒7の間には第2の付勢手段としての第2の皿バネ集合体11が配設されている。
主軸筒7上部の第1の筒部7Aの外周には主軸回転機構5を構成する第1のプーリー12が固着されている。第1のプーリー12から離間した側方位置には第2のプーリー13が図示しない主軸用フレーム側に固定された軸受によって支持されている。第1のプーリー12と第2のプーリー13の外周には駆動伝達用のベルト14が巻回されている。第2のプーリー13と同軸にモータ装置15の出力軸15aが接続されている。モータ装置15は図示しない主軸用フレーム側において支持されている。
主軸筒7の上部位置にはシリンダ装置6が配設されている。シリンダ装置6は図示しない主軸用フレーム側において支持されている。シリンダ装置6は図示しないエアコンプレッサーによって駆動させられたピストンロッド6aが進出する。ピストンロッド6aは下方に向かって出没するように配置され、ピストンロッド6a先端には円柱形状の当て金17が連結されている。
図1、図2A~図2Fに示すように、主軸筒7の前端側には主軸キャップ18が連結されている。主軸キャップ18は上下方向に連通した横断面円形となる筒体である。主軸キャップ18は主軸筒7の前端に嵌挿された状態で固定される。主軸筒7は3つの異なる内径寸法の領域を有し、上方から順に第1の筒部7A~第3の筒部7Cとされている。主軸筒7はこの順で徐々に内径が大きく構成されている。主軸キャップ18の内周面には下方ほど大径となるようなテーパ面形状のホルダー装着穴19が形成されている。主軸キャップ18は主軸筒7とともに主軸装置2の筺体20を構成する。
筺体20の内部空間には第1のドローバー8と第2のドローバー9が一部重複するように直列に配設されている。
主軸筒7の第2の筒部7B内には固定リング21が固着されている。固定リング21の中央には上下方向に連通する通路23が形成されている。
第1のドローバー8の第1の大径部8Aの周囲には第1の皿バネ集合体10が配設されている。第1の皿バネ集合体10は第1の大径部8Aと主軸筒7との間に配置されるとともに、上下方向においては第1の大径部8Aの上端に固着されたナット25と固定リング21との間に付勢された状態で挟まれるように配置されている。
第2のドローバー9も横断面における外形が円形形状となるように構成されている。第2のドローバー9は筒状の本体9Aと、本体9Aの上部寄り外周に張り出して形成されたフランジ部9Bと、本体9Aとフランジ部9Bとの間にある隔壁9Cと、上方にリング状に突出したリング部9Dとから構成されている。隔壁9Cには通路26が形成されている。
第2のドローバー9は本体9Aの下部寄り部分が主軸キャップ18内に収容されて内周面18aと密着させられ、フランジ部9B外周が主軸筒7の第2の筒部7Bと密着させられている。このような密着構造によって第2のドローバー9が上下方向に直線的にスライド移動する際の案内がされることとなる。本体9Aの先端寄りの内部空間は後述するチャックホルダー51のフランジ部57を収容しくびれ部58をクランプする位置となる。
第2のドローバー9の本体9Aの周囲には第2の皿バネ集合体11が配設されている。第2の皿バネ集合体11は本体9Aと主軸筒7との間に配置されるとともに、上下方向においてはフランジ部9Bと主軸キャップ18との間に付勢された状態で挟まれるように配置されている。第2のドローバー9と固定リング21の間には第2のドローバー9の周方向の回転を防止するためのピン27が配設されている。ホルダー装着穴19先端にはチャックホルダー51を主軸装置2に取り付けた際にチャックホルダー51側と噛み合ってチャックホルダー51の周方向への回転を阻止するためのキー28が装着されている。
第2のドローバー9は筒状の筺体20内においてスライド移動可能に配置されるとともに、自身も筒状に構成されて第1のドローバー8を収容して第1のドローバー8のスライド移動を許容する。第1のドローバー8は下部寄りにおいて第2のドローバー9内にスライド移動可能に収容される。つまり、筺体20と第1のドローバー8と第2のドローバー9によって内外に重複した二重のスライド機構が構成されることとなる。
第1のドローバー8は第1の大径部8Aの下端寄りが第2のドローバー9側のリング部9Dに収容され、小径部8Bが第2のドローバー9側の隔壁9Cの通路26を連通し、第2の大径部8Cが第2のドローバー9側の本体9A内に配置される。各部材とも密着状態で配置され第1のドローバー8が上下方向に直線的にスライド移動する際に案内がされることとなる。
第1のドローバー8は第1の大径部8Aの下端が第2のドローバー9側の隔壁9C上面に当接することでそれ以上の下動が規制されることとなる。その位置をもっとも下位置として上方側には隔壁9C下面に第2の大径部8Cの上端が当接することでそれ以上の上動が規制されることとなる。第2のドローバー9はフランジ部9B上面が主軸筒7の第2の筒部7Bの下面28と当接することでそれ以上の上動が規制されることとなる。また、第2のドローバー9は本体9Aの前端が主軸キャップ18内周において内方に張り出した棚部29に当接することでそれ以上の下動が規制されることとなる。第1のドローバー8の円筒部8D先端は第2のドローバー9の先端よりも常に後退した位置に配置される。
第1のドローバー8は後述するチャックホルダー51のプルスタッド55側をクランプし、第2のドローバー9は後述するチャックホルダー51の装着部53側をクランプする。
図5に示すように、第1のドローバー8の円筒部8Dには周方向に所定間隔で複数の第1の透孔31が形成されている。各第1の透孔31は第1のドローバー8の円筒部8Dの径方向内外に連通される円径の開口部を有している。各第1の透孔31は内側の開口部径が外側の開口部径よりも小さく内壁がテーパ状となるように構成されている。各第1の透孔31内には第1のボール32が収容されている。第1のボール32の径は第1の透孔31の内側の開口部径より大きく、外側の開口部径よりも小さく構成されている。
第2のドローバー9の先端寄り位置にも周方向に所定間隔で複数の第2の透孔33が形成されている。第2の透孔33の構成は第1の透孔31と同じであるため省略する。また、各第2の透孔33内には第2のボール34が収容されている。第2のボール34の構成・動作は第1のボール32と同じであるため詳しい説明は省略する。
第1の凹部35は円形の開口部形状とされ第1の透孔31の外側の開口部径と同じ径で構成されている。第1の凹部35は第1のボール32が第1の透孔31内でもっとも内側に進出した状態(図4Aや図4Eの状態)における第1のボール32の突出量よりもわずかに深い凹部形状となるように構成されている。つまり、第1の凹部35が第1の透孔31に照合された状態で第1のボール32は外側に後退し、もっとも第1の凹部35内に没した状態では第1のボール32は第1のドローバー8の面(つら)から突出することはない。第1の凹部35の壁面は第1の透孔31へ出没しやすいようにテーパ状に形成されている。
第1の凹部35は第1のドローバー8と第2のドローバー9との相対的な位置関係によって第1の透孔31に照合される。第1の凹部35と第1の透孔31が照合されると第1のボール32は遊嵌状態となるため外側に退避可能となり、アンクランプ状態となる。一方、照合されていない場合には第1のボール32が第1の透孔31の内側には若干先端側が突出した状態で内外に移動できず保持されるためクランプ状態となる。本実施の形態ではクランプとは複数の第1のボール32でチャックホルダー51のプルスタッド55や装着部53の軸状の部分をその周囲から押さえ込むことである。
第2の凹部37は第2のドローバー9が主軸筒7に干渉するのを避けるために第2の透孔33よりも大きな径に構成されている。また、第2の凹部37が第2の透孔33に照合された状態で第2のボール34がもっとも後退し、第2の凹部37に没した状態では第2のボール34が第2のドローバー9の面(つら)から突出することはないことは、第1のドローバー8側と同様である。第2の凹部37の壁面は第2の透孔33へ出没しやすいようにテーパ状に形成されている。
第2の凹部37は第2のドローバー9が所定の進出位置に配置されることで第2の透孔33に照合される。上記と同様に照合状態で第2のボール34は遊嵌状態となるため外側に退避可能となり、アンクランプ状態となる。一方、照合されていない場合には第2のボール34が若干先端側が突出した状態で内外に移動できず保持されるためクランプ状態となる。
第1の透孔31、第1のボール32、第1の凹部35等によって第1のドローバー8と第2のドローバー9間に第1のクランプ機構が構成される。
第2の透孔33、第2のボール34、第2の凹部37等によって主軸筒7と第2のドローバー9と間に第2のクランプ機構が構成される。
プルスタッド55の先端には係合部としての外方に張り出した略楕円体形状の膨出部56が一体的に形成されている。装着部53の先端は円板状に外方に張り出した係合部としてのフランジ部57が一体的に形成されている。フランジ部57に隣接した装着部53とフランジ部57と間には係合部としてのくびれ部58が形成されている。くびれ部58は装着部53の連続したテーパ形状に対して不連続な窪みが全周にわたって首輪状に形成された部分である。フランジ部57はチャックホルダー51のホルダー装着穴19への装着時(テーパ面同士の密着状態)でホルダー装着穴19よりも奥に配置される。
A.図2A及び図4Aは第1のドローバー8が第1の皿バネ集合体10の付勢力によってもっとも上方に押し上げられ、第2のドローバー9が第2の皿バネ集合体11の付勢力によってもっとも上方に押し上げられている状態である。第1のクランプ機構も第2のクランプ機構も解除された状態である。この進出位置は第1のドローバー8の初期進出位置となる。初期進出位置を図2AにおいてS1とし第1のドローバー8の末端位置を基準とする。尚、以下の第1のドローバー8の末端位置は図示しない近接センサで判断されている。
第1の皿バネ集合体10による第1のドローバー8への付勢状態と、第1の皿バネ集合体10による第1のドローバー8への付勢状態についてより詳しく説明する。第1の皿バネ集合体10は固定リング21を基準としてナット25を押圧している。そしてナット25を介して第1のドローバー8が上方に押し上げられることとなる。第1のドローバー8は第2の大径部8Cの上端がリング部9Cに当接することでそれ以上の上動は規制されることとなる。また、第2の皿バネ集合体11は主軸キャップ18を基準としてフランジ部9Bを押圧している。そしてフランジ部9Bを介して第2のドローバー9が上方に押し上げられることとなる。フランジ部9Bは第2の筒部7Bの下面28と当接するためそれ以上の上動が規制されることとなる。
このとき、図4Aに示すように、第1の透孔31内の第1のボール32は第1の凹部35方向への移動が許容されていないクランプ位置にロックされている。第2の透孔33内の第2のボール34も第2の凹部37方向への移動が許容されていないクランプ位置にロックされている。つまり、この状態ではチャックホルダー51は第1のボール32と第2のボール34と干渉するため未だ接続不能状態である。
図2Bは第1のドローバー8が下動し、第1の透孔31内の第1のボール32は第1の凹部35方向への移動が許容されアンクランプ状態となる。一方、第2の透孔33内の第2のボール34も第2の凹部37方向への移動が許容されていないクランプ位置のままである。
このとき、図4Bに示すように、第1の透孔31内の第1のボール32は第1の凹部35方向への移動が許容されアンクランプ位置にある。第2の透孔33内の第2のボール34も第2の凹部37方向への移動が許容されアンクランプ位置にある。つまり、チャックホルダー51が接続可能状態となる。
E.チャックホルダー51を主軸装置2のホルダー装着穴19に対して装着完了した状態で、所定の制御動作によって当て金17を上動させる。すると、図2Eのように加重の解除とともに圧縮されていた第2の皿バネ集合体11がその強い付勢力を解除し、第2のドローバー9を再び上方に押し上げることとなる。このときの位置をS3より上がったS4とする。第2のドローバー9の上動に伴ってチャックホルダー51の装着部53の後端のくびれ部58が第2のクランプ機構によって(第2のボール34によって)クランプされる。しかし、この段階では当て金17が上動している途中であるため、まだ第1のドローバー8は作動していない(図4Dの状態)。
このように第1のクランプ機構が作動してプルスタッド55がクランプされた状態で続いて(実際には当て金17上動に伴って瞬時に)第1のドローバー8の上方への押し上げ(つまり、上方への後退)によってプルスタッド55は後方(上方)に引き出されることとなり、チャックホルダー51の爪部54が閉じることとなる。このときの第1のドローバー8の位置をS4より上がったS5とする。チャックホルダー51をクランプしているため、S5はS1よりは下がった位置となる。図2Fでは図6(a)(b)の状態で図示しないワークをチャックしたと仮定し、爪部54がわずかに移動した場合を図示する。そのため、ここでは図7(a)(b)ほどには爪部54は閉じない。
主軸装置2にチャックホルダー51を装着した状態から逆にチャックホルダー51を取り外す場合には、上記とは逆に当て金17を進出(下降)させ、F.(G.)から順にA.に至るように制御する。上記では動きの各段階を説明するためにあえて第1のドローバー8や第2のドローバー9が別々に動作するような図を示したが、当て金17の動きや第1の皿バネ集合体10や第2の皿バネ集合体11の付勢力の解除等の動きは瞬時であるため、実際にはチャックホルダー51を装着した際の第1のクランプ機構と第2のクランプ機構の作動はほぼ同時に実行される。
(1)内側と外側(及び前後)の二重の被クランプ部を有するチャックホルダー51をクランプするために、押動手段として1つのシリンダ装置6のみを駆動させてクランプすることができる。1つのシリンダ装置6のみで実現しているため、主軸ユニット1及び主軸装置2を小型化、軽量化することができる。
(2)ピストンロッド21に連結された当て金17の進退だけで第1のドローバー8を介して第2のドローバー9を動作させるような機構であり、第1のドローバー8は第1の皿バネ集合体10で、第2のドローバー9は第2の皿バネ集合体11で進退するため、シンプルな構成で故障しにくい。
(3)第1の皿バネ集合体10の付勢力のみでチャックホルダー51のプルスタッド55を第1のクランプ機構によりクランプするとともに、上方(後方)に引っ張り上げることができるため、主軸装置2の小型化、軽量化に貢献する。
(4)第1のドローバー8と第2のドローバー9は直列に配置され、かつ一部重複しているため、主軸装置2の全長や全幅を小型化することができる。
(5)クランプ動作においては、先にチャックホルダー51の装着部53を第2のドローバー9による第2のクランプ機構が作動し、その後にチャックホルダー51のプルスタッド55を第1のドローバー8による第1のクランプ機構が作動してクランプするように時間差でクランプ動作が行われるため、確実に先にチャックホルダー51をホルダー装着穴19に固定することができ、プルスタッド55のクランプの誤動作、例えばプルスタッド55が動いていたり振動していたりして第2のボール34が所定位置でしっかりクランプできないようなクランプミスが生じにくい。
(6)チャックホルダー51をクランプする際には当て金17が後退して第1のドローバー8とは接触しなくなるため、その後に主軸装置2を回転させる際にシリンダ装置6側が負荷とならず回転する際のエネルギーロスや回転むらが軽減されることとなる。
(7)主軸装置2はシリンダ装置6が負荷とならず高速回転が可能であるため、例えばNC旋盤装置での加工だけではなくマシニングセンタでの加工にも適しており、どちらにも転用可能な境のない工作機械を提供することができる。
実施の形態2は実施の形態1のバリエーションであって主軸装置2を回転させるための主軸回転機構5としてモータ装置15とプーリー12、13を使用しない例である。また、第1のドローバー8を押動する手段として当て金17ではない例である。実施の形態1と同様の機能の部材については同じ符号を付すことで詳しい説明は省略する。
図8に示すように、実施の形態2の主軸ユニット71は主軸回転機構としての図示しないスピンドルモータ装置を備え、スピンドルモータ装置に連結されたカプリング72は主軸装置2の主軸筒7に直接連結されている。これによってカプリング72からの回転力が主軸装置2に伝達される。主軸ユニット71の上部位置には主軸筒7を包囲するようにシリンダ装置73が配設されている。シリンダ装置73はハウジング3側に固定され回転しない部分とされる。シリンダ装置73内には押動手段としてのピストン74が上下方向に進退可能に配設されている。ピストン74はシリンダ装置73の側方に形成された図示しない油圧ポンプ装置から供給される作動油を導入する第1のポート75と、第2のポート76とを備えている。ピストン74は油圧ポンプ装置からのシリンダ装置73内への作動油の供給に基づいて上下方向にスライド移動する。
第1のドローバー8の上端には第1のドローバー8の軸方向に対し直交する押しピン78が連結されている。押しピン78の両端にはスライダ79が固着されている。
実施の形態3は上記主軸装置2を自動工具交換装置ではなくバランシングマシンに適用した場合の例である。実施の形態1と同様の機能の部材については同じ符号を付すことで詳しい説明は省略する。
図10に説明するように、バランシングマシン80を構成する主たる構成要素である主軸装置2は上記実施の形態1及び2とは異なり上下反転されてベース81上に載置されている。第1のドローバー8を押動するシリンダ装置6と当て金17はベース81下方に配置されている。ベース81内にはモータ装置15、プーリー12、13、ベルト14が収容されている。ベース81上には主軸装置2の振動を検出する振動センサ82が配設されている。モータ装置15の出力軸15aにはロータリーエンコーダ83が配設されており、主軸装置2の回転位置を検出する。主軸装置2に装着されたチャックホルダー51のバランスを測定する第1の測定器84が取り付けられている。第1の測定器84の上部位置には製品のバランスを測定する第2の測定器85が取り付けられている。
このような構成のバランシングマシン80は図示しないアンバランス状態を発生させている位置を振動センサ82とロータリーエンコーダ83の情報に基づいてコンピュータ装置によって演算し、算出する。そして、その位置を削る(あるいは逆におもりを負荷する)ことでチャックホルダー51のバランスをとるようにする。この際に主軸装置2を用いるとチャックホルダー51の着脱が容易で、かつ主軸装置2の回転むらが少ないためバランシングマシン80として好適である。
・上記実施の形態ではチャック機能を備えたチャックホルダー51をクランプする対象とした例を説明したが、主軸装置2には他のホルダーを装着させるようにしてもよい。例えば、図9(a)(b)に示すような、工具ホルダー60を使用してもよい。工具ホルダー60はホルダー本体61と装着部62を備えている。ホルダー本体61内の取り付け穴61aには図示しない工具の基部が固定されるようになっている。装着部62後端からはスタッド63が突出させられている。スタッド63は進退しない構成である。スタッド63の先端には係合部としての外方に張り出した略楕円体形状の膨出部64が一体的に形成されている。装着部62の先端は円板状に外方に張り出した係合部としてのフランジ部65が一体的に形成されている。フランジ部65に隣接した装着部62とフランジ部65と間には係合部としてのくびれ部69が形成されている。この工具ホルダー60においては装着部62とスタッド63の形状はチャックホルダー51の装着部53と進出していない状態のプルスタッド55と同形状に構成されている。
このような工具ホルダー60も上記のように主軸装置2に2箇所の被クランプ位置で装着することができるため、工具ホルダー60を内外及び前後において主軸装置2にしっかりと取り付けることができる。
・第1及び第2のドローバー8、9を付勢する手段、装置として、他のバネ装置を使用してもよい。また、付勢する装置としてシリンダ装置を使用するようにしてもよい。
・モータ装置15として多相交流、例えば6相交流サーボモータを使用することがよいが、それ以外のモータや、交流方式ではなく直流方式のモータ装置を使用してもよい。
・クランプ機構の径方向に進退する干渉体として、上記では一例として第1及び第2のボール32、34を使用したが、それ以外にもコレットや割爪を配置して径方向に揺動するように進退するようなクランプ機構であってもよい。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
Claims (13)
- 内側と外側に二重に配置された第1の被クランプ部と第2の被クランプ部とをその基部側に有する工具用又はワーク用のホルダーを主軸先端に装着して使用する主軸装置において、
前記ホルダーの前記第1の被クランプ部をクランプする第1のクランプ機構を前端側に有する第1のドローバーと、前記ホルダーの前記第2の被クランプ部をクランプする第2のクランプ機構を前端側に有する第2のドローバーとを備え、前記第1のドローバーと前記第2のドローバーは前記主軸の主軸筒内に配置させられるとともに、進退可能に配置させられ、
前記第1のドローバーは、押動手段によって進出方向に押圧されることで第1の付勢手段による付勢力に抗して前進させられ、前記第2のドローバーは前記第1のドローバーの前進に伴って前記第1のドローバーに直接的又は間接的に押動されて第2の付勢手段による付勢力に抗して前進させられるように構成され、
前記押動手段によって前進させられた前記第1のドローバーは所定の進出位置で前記第1のクランプ機構が解除されるとともに、前記第1のドローバーに押動された前記第2のドローバーの前記第2のクランプ機構も解除され、
前記押動手段による押圧力の解除に伴って前記所定の進出位置にある前記第1のドローバー及び前記第2のドローバーは、それぞれ前記第1の付勢手段及び前記第2の付勢手段の付勢力によって前記主軸筒基部方向に後退し、前記第1のドローバーの前記第1のクランプ機構と前記第2のドローバーの前記第2のクランプ機構が作動されることを特徴とする主軸装置。 - 前記押動手段は前記第1のドローバーを押圧していない場合には第1のドローバーと接することのない位置に退避することを特徴とする請求項1に記載の主軸装置。
- 前記第2の付勢手段を付勢した際に得られる付勢力は前記第1の付勢手段を付勢した際に得られる付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記所定の進出位置から前記第1のドローバーが後退する際には、前記第2のドローバーの前記第2のクランプ機構が作動された後に前記第1のドローバーの前記第1のクランプ機構が作動することを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記第1のドローバーは前記第2のドローバーの内周面に接する外周面を備え、前記内周面と前記外周面に案内されて前後にスライド移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記第1のクランプ機構と前記第2のクランプ機構とは前後方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記第1のクランプ機構は前記主軸の径方向に進退する干渉体を有し、前記第1のドローバーが第1の進出位置に配置された状態において、前記第1の被クランプ部をクランプする前記干渉体が、前記第2のドローバーの内周面に形成された収容部に面した位置に配置されることによって前記第1のクランプ機構が解除されることを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記第2のクランプ機構は前記主軸の径方向に進退する干渉体を有し、前記第1のドローバーが前記第1の進出位置に配置された状態において、前記第2の被クランプ部をクランプする前記干渉体が、前記主軸筒の内周面に形成された収容部に面した位置に配置されることによって前記第2のクランプ機構が解除されることを特徴とする請求項7に記載の主軸装置。
- 前記ホルダーが前記主軸筒の先端に形成されたホルダー装着穴に装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- ワーク用の前記ホルダーは進退可能なレバー部材に前記第1の被クランプ部が形成される構造とされ、前記主軸先端に装着された前記ホルダーに前記第2のクランプ機構が作動した状態で前記第1の被クランプ部を介して前記レバー部材が引き出されてアンクランプ状態の前記ワークがクランプされ、前記第1のドローバーが前進することで前記レバー部材は押し戻されクランプ状態の前記ワークがアンクランプされることを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 前記第1の付勢手段及び前記第2の付勢手段は圧縮バネ装置であり、前記第1のドローバー及び前記第2のドローバーを後退方向に付勢することを特徴とする請求項1又は2に記載の主軸装置。
- 請求項1又は2に記載の主軸装置を搭載した工作機械。
- 請求項1又は2に記載の主軸装置を搭載したバランシングマシン。
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