以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。また、各方向を特定するため、前後・左右・上下の文言を使用するが、建物等の出入口Eの両側を構成する一対の出入口端部体が間隔を空けて設けられる方向(出入口の幅方向)を左右方向とし、これと水平面内で直交した方向を前後方向とし、左右方向及び前後方向と直交した方向を上下方向と定義している。
図1~図3に示すように、本実施形態の止水装置1は、例えば地下鉄駅や地下駐車場、建物などの構造物への水の侵入を防止するために、構造物等の出入口Eに設置されるものであり、出入口Eの左右の出入口端部体100に取り付けられる。左右の出入口端部体100は、上下方向に延びて設けられており、屋外側に位置するいわゆる見付面からなる屋外向き側面部101と、いわゆる見込面からなる左右対向側面部102を備えている。屋外向き側面部101と左右対向側面部102は互いに直交している。左右の出入口端部体100は、例えば出入口Eの開口部の縦枠や門柱などで構成される。
止水装置1は、左右の出入口端部体100同士の間を塞ぐように床面Fに起立設置される止水板本体3と、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに設けた左右のスライド支持体2と、出入口端部体100の屋外向き側面部101の下端部に連続して床面F上に配置されるコーナー部材126,126とを備えている。スライド支持体2は、止水板本体3の幅方向にスライド自在に設けられており、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら固定することで、止水板本体3が出入口端部体100に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
止水板本体3は、屋内向き面部31の左右の幅方向端部位31aが、左右の出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向して配置される。スライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに設けられた突起部材32を介して、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに移動自在に連結されている。左右のスライド支持体2は、対応する出入口端部体100の左右対向側面部102に近接して、左右の出入口端部体100の間に配置される。
止水板本体3は、矩形板状の形態を有し、屋内向き面部31における左右の幅方向端部位31a,31aのそれぞれに、突起部材32と側部止水部材33とを備えている。突起部材32は、屋内向き面部31から屋内向きに延びる軸部32bの先端に幅広の頭部32aを有している。側部止水部材33は、上下方向に延びる弾性体で形成されている。止水板本体3の底面部34には、左右方向に延びる弾性体からなる下部止水部材36が設けられている。
図1~図4に示すように、左右のスライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに対向配置される連結面部21と、連結面部21の左右方向外側端部から幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて延びる押圧面部23と、連結面部21及び押圧面部23を覆う支持体カバー28(図1参照)とを備えている。連結面部21には、止水板本体3の突起部材32を案内するための案内溝22が形成されている。案内溝22には、止水板本体3に設けられた突起部材32の軸部32bが挿通されている。
止水装置1が左右の出入口端部体100に取り付けられる際には、左右の出入口端部体100の左右対向側面部102同士の間に左右のスライド支持体2を配置するとともに、止水板本体3の幅方向端部位31aを出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向配置する。そして、左右のスライド支持体2同士の間隔が広がるように左右のスライド支持体2を左右方向外向きへ移動させて、押圧面部23を出入口端部体100の左右対向側面部102に向けて押圧して、スライド支持体2を出入口端部体100に固定する。一方、止水板本体3に設けた側部止水部材33を出入口端部体100の屋外向き側面部101に密着させ、下部止水部材36を床面Fに密着させるとともに、側部止水部材33の下側部33bをコーナー部材126に密接させる。これにより、止水板本体3と出入口端部体100及び床面Fとの間の水密性が確保される。
このように、止水装置1を高く持ち上げることなく左右の出入口端部体100に接続できるので、止水装置1を出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。また、止水装置1を高く持ち上げる必要がないので、年配者や女性などの非力な作業者であっても、止水装置1を出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。
図1~図5を参照しながら、止水装置1の詳細な構成について説明する。止水装置1の止水板本体3は、例えば炭素繊維強化プラスチック製又は金属製であり、矩形板状の形態を有し、屋内向き面部31と、底面部34と、屋外向き面部35と、上面部37と、左右の側面部38とを備えている。止水板本体3は、屋内向き面部31と底面部34とが交わる下端角部341が丸みを帯びている。屋内向き面部31と上面部37とが交わる角部、屋外向き面部35と底面部34とが交わる角部、及び屋外向き面部35と上面部37とが交わる角部は、略直角に形成されている。なお、止水板本体3は、中空部分を有する構造であってもよい。止水板本体3の上面部37には、左右一対の逆U字形の取っ手部39が設けられている。
止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31a,31aに、突起部材32と側部止水部材33とが設けられている。本実施形態では、幅方向端部位31aに、上下方向に間隔を空けて並ぶ3つの突起部材32が設けられおり、屋内向き面部31には合計6つの突起部材32が設けられている。各突起部材32は、屋内向き面部31の幅方向端部位31aに突設された軸部32bと、軸部32bの先端部に設けられた頭部32aとを備えている。本実施形態では、頭部32aは球形であり、軸部32bは円柱形(丸棒形)である。
側部止水部材33は、ゴムやスポンジ等の弾性体からなり、突起部材32よりも左右方向外側位置に設けられている。側部止水部材33の上側部33aは、屋内向き面部31の幅方向端部位31aの上端部位から下端部位に亘って設けられている。側部止水部材33の下側部33bは、幅方向端部位31aの下端部位から屋外向き面部35に向けて止水板本体3の下端角部341を覆うように湾曲している。側部止水部材33の底側部33cは下側部33bから底面部34に亘って設けられている。
止水板本体3の底面部34には、左右方向に延びる弾性体からなる下部止水部材36が設けられている。ゴムやスポンジ等の弾性体からなる下部止水部材36の左右方向両端部は、底面部34に延設された側部止水部材33の底側部33cに接続される。
本実施形態では、底面部34には、下部止水部材36の両端部と左右の側部止水部材33との間の隙間を塞ぐように、側部止水部材33及び下部止水部材36よりも屋外側(屋外向き面部35側)に補助止水部材36aが設けられる。具体的には、下部止水部材36は、幅が止水板本体3の前後方向厚みの3分の1程度であり、止水板本体3の概ね前後中央位置で左右に延びて配置されている。側部止水部材33の底側部33cは、下部止水部材36の左右外側位置まで延設されており、底側部33cの先端部の左右内側側面部と下部止水部材36の左右端面とが接着剤を介して連結されている。補助止水部材36aは、側部止水部材33及び下部止水部材36の屋外側で左右方向に横長に設けられており、補助止水部材36aの屋内側側面部が、側部止水部材33の底側部33cの先端面と、下部止水部材36の左右端部の屋外側側面部とに接着剤を介して連結されている。
補助止水部材36aは、下部止水部材36の端部と側部止水部材33の底側部33cの端部との隙間(連結部)を屋外側(前側)で覆うことにより、側部止水部材と下部止水部材36との隙間から屋内側へ水が浸入することを防止でき、止水装置1の水密性を向上させることができる。
なお、側部止水部材33と下部止水部材36は、下部止水部材36の左右方向両端部が底面部34に延設された側部止水部材33に継ぎ目なく連続した一体物で形成されているものとしてもよい。この場合、補助止水部材36aを設けなくても、止水板本体3の底面部34における漏水を抑制できる。
また、図13に示すように、下部止水部材36の左右方向両端部を側部止水部材33の下側部33bの前方まで延設し、側部止水部材33の下側部33bの端面と下部止水部材36の左右端部の屋内側側面部とを接着剤を介して連結するようにしてもよい。そして、止水板本体3の底面部34の左右端部位に、下部止水部材36の左右端部と側部止水部材33の端部との連結部を屋外側(左右外側)で覆う補助止水部材36bを設けてもよい。この場合、補助止水部材36bは、側部止水部材33及び下部止水部材36の左右外側で下端角部341から底面部34に亘って前後方向に延びて設けられており、補助止水部材36bの屋内側側面部(左右内側側面部)が、下部止水部材36の左右方向端面と、側部止水部材33の下側部33b先端部の屋外側側面部(左右外側側面部)とに接着剤を介して連結されている。
補助止水部材36bは、下部止水部材36の端部と側部止水部材33の下側部33bの端部との連結部を屋外側(左右外側)で覆うことにより、側部止水部材33と下部止水部材36との隙間から屋内側へ水が浸入することを防止でき、止水装置1の水密性を向上させることができる。
なお、側部止水部材33及び下部止水部材36は、出入口端部体100の屋外向き側面部101又は床面Fへ向けて押圧されて、屋外向き側面部101又は床面Fに密着して水密性を確保できる弾性体であればよい。
次に、コーナー部材126,126の詳細な構成について説明する。出入口端部体100の屋外向き側面部101には、屋外向きに突出するコーナー部材126が連結されている。コーナー部材126は、例えば金属製又は樹脂製であり、縦断面が略直角三角形の左右方向に延びる略直角三角柱の形態を有し、直角を挟む2面(2辺)の一方が屋外向き側面部101の下端部に連結され、他方が床面F上に配置される。また、コーナー部材126の傾斜面126a(斜辺)は、凹状に湾曲した湾曲傾斜状に形成され、屋外向き側面部101から床面Fに向けて斜め下向き姿勢で配置される。このように、コーナー部材126は、出入口端部体100の屋外向き側面部101と床面Fとが交わる角部に配設されている。なお、コーナー部材126と屋外向き側面部101及び床面Fとの間には、図示しない止水材(例えば接着剤や弾性体)が設けられており、コーナー部材126と屋外向き側面部101及び床面Fとの間の水密性が確保されている。
次に、スライド支持体2の構成について説明する。左右のスライド支持体2は、左右対称に設けられている。上述のように、左右のスライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに対向配置される連結面部21と、連結面部21の左右方向外側端部から幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて延びる押圧面部23を備えている。本実施形態では、スライド支持体2は、横断面がL型の山形鋼(いわゆるアングル)で形成されており、上下方向に延びて配置されている。連結面部21と押圧面部23は互いに直交している。
連結面部21には、上下方向に間隔を空けて並ぶ3つの案内溝22が形成されている。案内溝22は、止水板本体3の突起部材32を案内するための溝であり、3つの突起部材32に対応する位置に設けられている。3つの案内溝22は、同一形状を有し、それぞれ連結面部21を貫通している。
案内溝22の溝幅寸法は、突起部材32の軸部32bの径よりも大きく、かつ突起部材32の頭部32aの径よりも小さく設定されている。案内溝22は、出入口端部体100から離れるほど下方に位置するように斜め下向きに延びる傾斜溝部22aと、傾斜溝部22aの下端部から下向きに延びる上下溝部22bを備えている。
各案内溝22には、対応する突起部材32の軸部32bが挿通されており、スライド支持体2の連結面部21が突起部材32の頭部32aと止水板本体3の屋内向き面部31との間に配置されることで、スライド支持体2と止水板本体3とが抜け不能に連結されている。
スライド支持体2と止水板本体3は、案内溝22内を突起部材32の軸部32bが移動することで、相対移動自在に設けられている。突起部材32の軸部32bが案内溝22の上端部(傾斜溝部22aの上端部)に位置する状態で、スライド支持体2の下部が止水板本体3の下部よりも下方に位置するように構成されている。また、突起部材32の軸部32bが案内溝22の下端部(上下溝部22bの下端部)に位置する状態、厳密には突起部材32の頭部32aが後述する頭部保持部30の頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、スライド支持体2の下部と止水板本体3の下部(下部止水部材36)が概ね同じ高さ位置になるように構成されている。
スライド支持体2の連結面部21に、突起部材32の頭部32aを保持する頭部保持部30が設けられている。頭部保持部30は、連結面部21の止水板本体3に対向する面とは反対側の面に設けられており、3つの案内溝22のうち一番上の案内溝22と一番下の案内溝22の上下溝部22bの左右側方に設けられている。本実施形態では、1つの案内溝22に対して左右一対の頭部保持部30が設けられている。
頭部保持部30は、略楔形の形態を有し、下方側ほど連結面部21の上下溝部22bから離れるように傾斜する頭部スライド面部30aと、頭部スライド面部30aの下方に設けられて突起部材32の頭部32aが嵌り込む頭部保持凹部30bとを備えている。左右一対の頭部保持部30において、各頭部保持凹部30bは、頭部保持部30のうち頭部スライド面部30aの下方で互いに対向する角部に設けられている。頭部保持凹部30bは、当該角部を切り欠いて形成されており、凹球面を略半割した形状を有する。左右の頭部保持凹部30bは左右対称に形成されている。なお、頭部保持凹部30bの形状は、凹球面に限定されず、例えば横長凹溝形状など、突起部材32の頭部32aが嵌り込む形状であればよい。
また、スライド支持体2の押圧面部23には、出入口端部体100の左右対向側面部102に対向する面に、ゴムやスポンジ等の弾性体からなる押圧弾性部材24が設けられている。本実施形態では、押圧弾性部材24は、粘着性の高い板状ゴムで形成され、押圧面部23の上下長手方向に沿って上下縦長に設けられている。他の実施形態として、押圧弾性部材24は一体に形成されず、押圧面部23に設けた複数の弾性部材で形成されるものとしてもよい。
スライド支持体2の下部には、連結面部21の下端部から止水板本体3の幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて延びる四角板状の底面部25の下面に、左右一対の車輪26が設けられている。車輪26は、左右方向(出入口Eの幅方向と平行な方向)に転動可能に設けられている。なお、本実施形態では、スライド支持体2の左右方向移動をより円滑にするためにスライド支持体2の下部に車輪26を設けているが、車輪26に替えて、床面F表面を横滑り可能な硬質樹脂部材や金属部材をスライド支持体2の下部に設けることも可能である。
また、スライド支持体2には、連結面部21と押圧面部23とを連結する三角形状の補強リブ27が設けられている。補強リブ27は、上下方向で隣り合う案内溝22同士の間の位置に設けられており、上下2つの補強リブ27が設けられている。図1に示すように、スライド支持体2に取り付けられる支持体カバー28は、互いに直交する上下縦長の内側面部28a及び後面部28bと略水平な上面部28cとを備える。内側面部28aの後端部と後面部28bの左右内側端部とが連結され、内側面部28a及び後面部28bの上端部に上面部28cが連結されている。支持体カバー28は、内側面部28aが押圧面部23に対向し、後面部28bが連結面部21に対向し、かつ、上面部28cが底面部25に対向するようにしてスライド支持体2に取り付けられて、スライド支持体2の内部が露出しないようにしている。なお、図2~図4、図6~図10、図12及び図13において、支持体カバー28の図示は省略されている。
止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aと、スライド支持体2の連結面部21との間には、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢する弾性体からなる弾性部材40が設けられている。本実施形態では、弾性部材40は、圧縮コイルばねであり、上下に並ぶ3つの突起部材32のうち真ん中の突起部材32の軸部32bが挿通されている。
弾性部材40は、前後方向(軸部32bが延びる方向)で圧縮変形(弾性変形)した状態で配置される。スライド支持体2は、弾性部材40の復元力によって幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢される一方、突起部材32の頭部32aが案内溝22の傾斜溝部22aの周囲部又は頭部保持部30に当接することで、幅方向端部位31aとは離れる方向への移動が制限される。
また、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aと、スライド支持体2の連結面部21との間には、スライド支持体2の幅方向端部位31a側への移動を制限するスペーサ部材41が設けられている。本実施形態では、スペーサ部材41は、円筒状の形態を有し、金属、樹脂又はゴム等の弾性体からなり、幅方向端部位31aに固定されている。上下に並ぶ3つの突起部材32のうち上下2つの突起部材32の軸部32bはスペーサ部材41に挿通されている。スペーサ部材41は、スライド支持体2と止水板本体3との間の隙間を確保するためのものである。
次に、図6~図11を参照しながら、出入口Eへの止水装置1の取付け操作について説明する。なお、図6~図9では、左右のスライド支持体2のうち屋内側から見て右側のスライド支持体2のみを図示しているが、上述のようにスライド支持体2は左右対称に設けられるので、左側のスライド支持体2についても同様の動作が行われる。
図6及び図11(A)に示すように、初期状態では、止水板本体3に設けられた突起部材32の軸部32bは、スライド支持体2の連結面部21に設けられた案内溝22の傾斜溝部22aの上端部に位置している。取っ手部39を把持して止水板本体3を持ち上げた状態で、幅方向端部位31aが出入口Eの出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向するように屋内向き面部31を出入口Eの屋内側へ向けて止水板本体3を配置する。
左右のスライド支持体2を左右の出入口端部体100の間の位置に配置する。スライド支持体2の押圧面部23(押圧弾性部材24)が出入口端部体100の左右対向側面部102に対向するように配置される。止水板本体3を持ち上げる力を緩めて止水板本体3を下降させて、スライド支持体2の下部の車輪26を床面Fに接触させる。止水板本体3を下降させる際に、止水板本体3の側部止水部材33を出入口端部体100の屋外向き側面部101に接触させることが好ましいが、側部止水部材33が屋外向き側面部101に近接配置される状態で止水板本体3を下降させてもよい。
図6に示すように、止水板本体3の自重で、又は作業者が止水板本体3を下方へ押し込むことで、止水板本体3を下方へ移動させる。突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの上端側に位置する状態(初期状態)から、スライド支持体2の下部の車輪26を床面Fに接触させながら止水板本体3を下降させると、突起部材32の軸部32bは、下向きに移動しながら案内溝22の傾斜溝部22aの下側の傾斜面(下側の内壁)を下向きに付勢する。これにより、傾斜溝部22aの下側の傾斜面に出入口端部体100側へ向かう力が掛かり、スライド支持体2は、車輪26を転動させながら出入口端部体100に向けてスライドする。このように、簡単な構成でスライド支持体2を出入口端部体100に向けて確実にスライドさせることができる。
なお、弾性部材40は、真ん中の突起部材32の軸部32bに挿通されているので、止水板本体3とともに下方へ移動する。突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22a内を移動するときは、弾性部材40の復元力によって、突起部材32の頭部32aが連結面部21における傾斜溝部22aの周囲部位に当接する状態が維持されるので、スライド支持体2と止水板本体3との間隔は概ね一定である。
止水板本体3が下降するとともに、突起部材32の軸部32bが下降し、スライド支持体2が出入口端部体100に近づくようにスライドする。そして、突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの中途部に到達したときに、スライド支持体2の押圧面部23に設けた押圧弾性部材24が出入口端部体100の左右対向側面部102に接触する。
図7及び図11(B)に示すように、止水板本体3がさらに下降されて、突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの下端部(傾斜溝部22aと上下溝部22bとの接続部)近傍まで移動する。このとき、突起部材32の軸部32bは案内溝22の傾斜溝部22aを付勢しながら下降し、スライド支持体2が出入口端部体100側へさらにスライドする。押圧弾性部材24が押圧面部23と左右対向側面部102との間で圧縮変形するとともに左右対向側面部102に密着する。
図8に示すように、作業者が止水板本体3をさらに下方へ押し込むと、突起部材32の軸部32bは案内溝22の上下溝部22b内に移動する。これにより、スライド支持体2の左右方向への移動が規制され、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら位置固定できる。
一方、突起部材32の頭部32aは、頭部保持部30の頭部スライド面部30aに当接し、頭部スライド面部30aに沿って、スライド支持体2の連結面部21(上下溝部22b)から離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板本体3の屋内向き面部31はスライド支持体2及び出入口端部体100に近づくように変位し、側部止水部材33は、屋外向き側面部101に密着当接するとともに、その下側部33bが出入口端部体100の屋外向き側面部101に固定されたコーナー部材126の傾斜面126aに密着当接することによって圧縮変形する。これにより、止水板本体3と屋外向き側面部101及び床面Fとの間の水密性が確保される。
図9及び図10(C)に示すように、止水板本体3をさらに下方へ押し込むと、突起部材32の頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに到達して、頭部32aの軸部32b寄り部位が頭部保持凹部30bに嵌り込む。頭部32aは、弾性体からなる側部止水部材33の復元力によって頭部保持凹部30bに付勢されて、頭部保持凹部30b内に保持される。これにより、止水板本体3の上向き移動が規制されて、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。なお、頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、スライド支持体2と止水板本体3との間に設けられた弾性部材40は圧縮変形しているので、頭部32aは、弾性部材40の復元力によっても、頭部保持凹部30bに付勢される。
また、突起部材32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、止水板本体3の下側の下部止水部材36が床面Fに密着当接するとともに圧縮変形する。これにより、止水板本体3と床面Fとの間に高い水密性を確保できる。
このように、止水板本体3を下方へスライドさせるという簡単な操作で、止水板本体3をスライド支持体2に確実に接続できる。
また、止水装置1の取外し作業の際には、止水板本体3を持ち上げることで、突起部材32の頭部32aを頭部保持部30の頭部保持凹部30bから離脱させる。止水板本体3をさらに持ち上げることで、突起部材32の軸部32bが上向きに移動するとともに案内溝22の上下溝部22bから傾斜溝部22aへ移動する。軸部32bは上向きに移動しながら傾斜溝部22aの上側の傾斜面(上側の内壁)を上向きに付勢する。これにより、傾斜溝部22aの上側の傾斜面に出入口端部体100側へ向かう方向とは逆向きに力が掛かり、スライド支持体2は、車輪26を転動させながら出入口端部体100とは離れる方向へ向けてスライドし、スライド支持体2と出入口端部体100との連結が解除される。このように、止水装置1を簡単な操作で出入口Eから迅速且つ容易に取り外すことができる。
次に、図12を参照しながら、止水装置の他の実施形態について説明する。本実施形態の止水装置1Aにおいて、上記実施形態の止水装置1と同一部分には同じ符号を付し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
本実施形態の止水装置1Aでは、上記実施形態の止水装置1と比較して、止水装置1において上下に並ぶ3つの突起部材32及び案内溝22のうち真ん中の突起部材32及び案内溝22が設けられていない。すなわち、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに上下2つの突起部材32が設けられ、スライド支持体2の連結面部21に上下2つの案内溝22が設けられている。
また、上下の突起部材32の軸部32bには、スペーサ部材41(図4等参照)に替えて、圧縮コイルばねからなる弾性部材40が挿通されている。弾性部材40は、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢する。
本実施形態では、上下2つの弾性部材40によってスライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢するので、止水装置1を出入口Eに設置する際に、スライド支持体2と止水板本体3とが互いに平行に保たれやすくなり、止水装置1の設置作業の容易性を向上できる。
なお、弾性部材40は、圧縮コイルばねに限定されず、例えば板ばねやゴムなど、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢できる弾性体であればよい。また、弾性部材40は、突起部材32の周囲に配置される構成に限定されず、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢できる構成であればよい。
以上のように、止水装置1,1Aは、出入口Eの左右の出入口端部体100に水密性を確保しながら着脱可能に取り付けられるものであって、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに、止水板本体3の幅方向にスライド自在に設けたスライド支持体2を備えており、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら固定することで、止水板本体3を出入口端部体100に着脱可能に取り付ける。これにより、止水装置1,1Aを従来技術のようには持ち上げなくても出入口端部体100に接続できるので、止水装置1,1Aを出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。さらに、止水板本体3の下端角部341を覆う側部止水部材33の下側部33bが出入口端部体100の屋外向き側面部101の下端部位に連続して床面Fの上に配置されるコーナー部材126に密着するようにしたので、止水板本体3の下端角部341における漏水を抑制でき、止水板本体3と出入口端部体100及び床面Fとの間の良好な水密性が確保される。
また、止水装置1,1Aは、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに突設された突起部材32が、スライド支持体2に設けられた案内溝22に挿通されており、案内溝22は、出入口端部体100から離れるほど下方に位置するように斜め下向きに延びる傾斜溝部22aを備えている。これにより、突起部材32が案内溝22の傾斜溝部22aの上端側に位置する状態から、スライド支持体2の下部を床面Fに接触させながら止水板本体3を下降させると、突起部材32は下向きに移動しながら傾斜溝部22aの内周壁を下向きに付勢し、スライド支持体2は出入口端部体100に向けてスライドする。このように、簡単な構成でスライド支持体2を出入口端部体100に向けて確実にスライドさせることができる。また、止水装置1,1Aの取外し作業の際には、止水板本体3を持ち上げることで、突起部材32が上向きに移動して傾斜溝部22aの内周壁を上向きに付勢し、するとともにスライド支持体2が出入口端部体100から離れる方向へスライドするので、止水装置1,1Aを簡単な操作で出入口Eから迅速且つ容易に取り外すことができる。
また、突起部材32は、案内溝22に挿通される軸部32bと、軸部32bの先端部に設けられた頭部32aとを備え、案内溝22は、傾斜溝部22aの下端部から下向きに延びる上下溝部22bを備えており、スライド支持体2には、案内溝22の上下溝部22bの側方に、突起部材32の頭部32aを保持する頭部保持部30が設けられている。これにより、スライド支持体2を出入口端部体100へ向けて押圧した状態で突起部材32の軸部32bを案内溝22の上下溝部22bに位置させることで、スライド支持体2の左右方向移動を規制でき、スライド支持体2を出入口端部体100に強固に固定できる。さらに、突起部材32の頭部32aを頭部保持部30に保持させることで、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。
また、頭部保持部30は、下方側ほど上下溝部22bから離れるように傾斜する頭部スライド面部30aと、頭部スライド面部30aの下方に設けられて突起部材32の頭部32aが嵌り込む頭部保持凹部30bとを備えている。これにより、止水板本体3を下方へ向けて押し込む際に、突起部材32の頭部32aは、頭部保持部30の頭部スライド面部30aに当接し、頭部スライド面部30aに沿って、案内溝22の上下溝部22bから離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板本体3の屋内向き面部31は、スライド支持体2及び出入口端部体100に近づくように変位し、屋内向き面部31の幅方向端部位31aに設けた側部止水部材33が出入口端部体100の屋外向き側面部101に密着当接するとともに押圧変形する。止水板本体3がさらに下方へ向けて押し込まれて、突起部材32の頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに到達すると、弾性体からなる側部止水部材33の復元力によって突起部材32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込む。このように、止水板本体3を下方へ向けて押し込むという簡単な操作で、止水装置1を出入口端部体100に確実に接続できるとともに、止水板本体3の上向き移動が規制されて、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。
出入口端部体100への止水板本体3の取り付けが完了した状態では、止水板本体3の底面部34が床面Fに対向配置され、屋内向き面部31の幅方向端部位31aが出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向配置され、下端角部341がコーナー部材126に対向配置される。その場合、止水板本体3の下部止水部材36が床面Fに密接し、側部止水部材33が出入口端部体100の屋外向き側面部101に密接するとともに、側部止水部材33の下側部33bがコーナー部材126の傾斜面126aに密接する。これにより、止水板本体3の下端角部に設けた側部止水部材33の下側部33bは出入口端部体100と床面Fとが交わるコーナー部において十分な水密性を確保でき、当該コーナー部での漏水を効果的に低減することができる。
また、止水板本体3の下端角部341が丸みを帯びており、コーナー部材126は、出入口端部体100の屋外向き側面部101から床面Fに向けて傾斜するとともに凹状に湾曲した傾斜面126aを備え、傾斜面126aに側部止水部材33の下側部33bが密着される。止水板本体3の下端角部341が丸みを帯びているとともに、下端角部341の表面に配置される側部止水部材33の下側部33bも丸みを帯びている。これにより、止水板本体3の下端角部341に設けた側部止水部材33の下側部33bはコーナー部材126の傾斜面126aに確実に密着するので、止水板本体3の下端角部341における漏水をより確実に抑制できる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、コーナー部材126の傾斜面126aは平坦面で形成されてもよい。また、止水板本体3の下端角部341は略直角に設けられてもよい。この場合、側部止水部材33の下側部(下端角部341を覆う部分)は、止水板本体3の屋内向き面部31から底面部34にまたがって設けられて、天面(止水板本体3に接着される面とは反対側の面)が側面視で湾曲している(丸みを帯びている)ことが好ましい。
また、コーナー部材126の材料は、金属や樹脂、弾性材料(ゴム)など、特に限定されない。例えば、コーナー部材126は、出入口端部体100の屋外向き側面部101と床面Fとが交わる角部に塗布される弾性を有する止水剤(例えばコーキング剤など)で形成されてもよい。弾性を有するコーナー部材126を、図1~図13を参照して説明した出入口端部体100の屋外向き側面部101に配設するとともに、止水板本体3が出入口端部体100に取り付けられたときに、コーナー部材126を弾性変形させることで、止水板本体3の下端角部341における漏水をより確実に抑制できる。